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【2次】漫画SS総合スレへようこそpart68【創作】

1 :作者の都合により名無しです:2010/06/12(土) 22:18:09 ID:oYEZJb6C0
元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の作品は>>2以降テンプレで。

前スレ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1265680827/
まとめサイト(バレ氏)
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm
WIKIまとめ(ゴート氏)
http://www25.atwiki.jp/bakiss

2 :作者の都合により名無しです:2010/06/12(土) 22:41:33 ID:q+qcvY8uP
1段目2段目・戦闘神話  3段目・VP 4段目・カルマ (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/sento/1/01.htm (前サイト保管分)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/16.html (現サイト連載中分)       
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/501.html
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/860.html

永遠の扉  (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/eien/001/1.htm (前サイト保管分)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/552.html (現サイト連載中分)

ジョジョの奇妙な冒険第4部―平穏な生活は砕かせない― (邪神?氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/453.html

上・ロンギヌスの槍 中・チルノのパーフェクトさいきょー教室 
下・〈Lost chronicle〉未来のイヴの消失  (ハシ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/561.html  
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1020.html
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1057.html
 
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜 (サマサ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1110.html

上・ダイの大冒険AFTER  中・Hell's angel 下・邪神に魅入られて (ガモン氏)
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/902.html
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1008.html
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1065.html

カイカイ (名無し氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1071.html 

3 :作者の都合により名無しです:2010/06/12(土) 22:43:25 ID:q+qcvY8uP
1段目2段目・戦闘神話  3段目・VP 4段目・カルマ (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/sento/1/01.htm (前サイト保管分)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/16.html (現サイト連載中分)       
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/501.html
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/860.html

永遠の扉  (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/eien/001/1.htm (前サイト保管分)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/552.html (現サイト連載中分)

ジョジョの奇妙な冒険第4部―平穏な生活は砕かせない― (邪神?氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/453.html

上・ロンギヌスの槍 中・チルノのパーフェクトさいきょー教室 
下・〈Lost chronicle〉未来のイヴの消失  (ハシ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/561.html  
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1020.html
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1057.html
 
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜 (サマサ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1110.html

上・ダイの大冒険AFTER  中・Hell's angel 下・邪神に魅入られて (ガモン氏)
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/902.html
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1008.html
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1065.html

カイカイ (名無し氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1071.html 

聖少女風流記 上・ジャンヌ編 下・慶次編 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/114.html

4 : ◆5TKag9u//k :2010/06/12(土) 22:45:39 ID:q+qcvY8uP
なれないことはするもんじゃない orz
テンプレ貼り付けミス申し訳ありません。

日付変わったあたりから前スレで掲載したハガレンの後半投下します。
あと前半で「約束の日」から1ヶ月後と2ヶ月後両方の標記が出てますが
1ヶ月後に脳内修正をお願い致します。

5 :作者の都合により名無しです:2010/06/12(土) 22:59:24 ID:84VPIhB50
鋼の錬金術師 〜「後夜祭」〜 (◆5TKag9u//k氏)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1265680827/345-360

6 :作者の都合により名無しです:2010/06/12(土) 22:59:32 ID:oYEZJb6C0
1段目2段目・戦闘神話 3段目・VP 4段目カルマ( 銀杏丸氏)
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/sento/1/01.htm(前サイト保管分)
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/16.html(現サイト連載中分)
http://www25/atwiki.jp/bakiss/pages/501.html
http://www25/atwiki.jp/bakiss/pages/860.html

永遠の扉 (スターダスト氏)
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/eien/001/1.htm(前サイト保管分)
http://www25/atwiki.jp/bakiss/pages/552.html

ジョジョの奇妙な冒険第4部―平穏な生活は砕かせない― (邪神氏)
http://www25/atwiki.jp/bakiss/pages/453.html

上・ロンギヌスの槍 中・チルノのパーフェクトさいきょー教室
下・〈Lost chronicle〉未来のイヴの消失 (ハシ氏)
http://www25/atwiki.jp/bakiss/pages/561.html
http://www25/atwiki.jp/bakiss/pages/1020.html
http://www25/atwiki.jp/bakiss/pages/1057.html

天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊情の宴〜 (サマサ氏)
http://www25/atwiki.jp/bakiss/pages/1110.html

上・ダイの大冒険AFTER 中・Hell's angel 下・邪神に魅入られて (ガモン氏)
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/902.html
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1008.html
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1065.html

カイカイ (名無し氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1071.html 

聖少女風流記 上・ジャンヌ編 下・慶次編 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/114.html


7 :作者の都合により名無しです:2010/06/12(土) 23:04:11 ID:84VPIhB50
◆5TKag9u//kさん、スレ立て&新作、お疲れ様です。

ハガレンが今月で終わってしまい、寂しく思っていましたが
タイムリーな作品を読めてうれしく思います。
ハガレンの格キャラへの愛が溢れててニヤニヤ読んでました。
読み切りということで、次回かその次で終わりのようですが
もう少し読みたいなー、とも思います。


あとハイデッケさん、復活おめです。
本当に書いてくださいねw

8 : ◆5TKag9u//k :2010/06/12(土) 23:11:22 ID:q+qcvY8uP
>>1
言い忘れてすみません。乙&ありがとうございました。

>>7
スレ立ては別の方です。
「後夜祭」は先月〜今月の最終回を待つ間に
「こうなるんじゃないかなあ」というのを
せっせとこねくり回して書き上げた作品です。
感想いただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます。

9 :作者の都合により名無しです:2010/06/12(土) 23:52:28 ID:oYEZJb6C0
◆5TKag9u//kさん

一応1です。スレ立て失敗して迷惑かけて申し訳ありません。


10 : ◆5TKag9u//k :2010/06/13(日) 00:02:05 ID:q+qcvY8uP
>>9
こちらこそせっかく立てて頂いたスレにコピペミスすみません。

では次から後半部分投下します。おつきあいください。

11 :鋼の錬金術師 〜「後夜祭」〜:2010/06/13(日) 00:03:58 ID:q+qcvY8uP
そして日曜日。
東方司令部の空を震わせ、火矢が鳴った。
練兵場観客スタンドは満員。客席の間にはジュースやビール、軽食売りも出ている。
会場南側に設置された貴賓席テントの中、
今は見事大総統秘書官に出世したレベッカ・カタリナ中尉が主賓の前に珈琲を置きながら言った。
「今日は北方軍の人間もかなり来てるみたいですね、っ!」
現大総統グラマンが立ち去ろうとする彼女の臀部をつるりと撫で、悲鳴を上げさせる。
何事かと緊張し駆け寄る護衛たちに「何事もないない」と合図して見せ、
下がらせてから音を立てて珈琲をすする。
胸元に抱えた銀盆を怒りに震わせながらレベッカは内心思っていたことを問いただした。
「いいんですか、こんな馬鹿騒ぎ」
「みんな『約束の日』の後は酷使されてるからねえ。息抜きにいいじゃないか」
はっはっは、と声を立てて笑い、グラマンは時間を確認する。
「ほら、そろそろ始まるようだよ」
「レディースっ、アーンド、ジェントルメーン!」
司会の任を仰せつかったデニー・ブロッシュ曹長が放送席の側で声を張り上げた。
「えー、本日は東方司令部練兵場へようこそ、お越しくださいましたっ。
それでは、早速ただいまより、本日のメインイベントを開催致しますー!」
観客から大きな拍手と口笛がわき起こる。
東と西の入場口が開き、人影が現れた。
「我らが東方&北方軍司令官、『氷の女王』オリヴィエ・ミラ・アームストロング大将!」
進み出る、長身の女性。濃紺の軍服の背中に垂らしたまっすぐな金髪がまばゆく光り輝く。
「対するはシン国の「仮面の乙女」ランファン!」
つきそいらしい白い服の女性と別れ、仮面をつけた小柄な黒装束の人物が歩み出る。
「オリヴィエ様ー!」
「負けないでー!!」
女性兵士の黄色い声援と
「どうせ応援するならー」
「女の子ー!」
男性兵士の野太い声援が入り交じり場内を震わせた。
場の中央で2メートルほどの間を取って向かい合い、
「若は返してもらうゾ、女将軍…!」
低く身構えて唸るランファンに応え、オリヴィエが無言で愛刀を抜き放つ。
一呼吸分の沈黙の後。
「始めー!」
ブロッシュ曹長の声が響き渡った。

12 :鋼の錬金術師 〜「後夜祭」〜:2010/06/13(日) 00:06:08 ID:gZ/nyLOsP
「あ、賞品の紹介すっ飛ばされた」
「誰ガ賞品ダ」
貴賓席とは戦いの場を挟んで向かい側、地面に置かれた悪趣味な装飾付き檻の中で
あぐらをかいて座りこんだリンが唸る。
「だいたいエドワード君とは一緒にホムンクルスの腹の中から脱出した仲なんだシ、
ちょっとはこっちに味方してくれてもいいんじゃないかなア」
手でひらひらと自分を仰ぎながら、檻の制作者であるエドワードが白々しく答えた。
「だって僕『国家錬金術師』だしー。司令官様の命令には逆らえないしー」
こわいから。
「居心地の悪い場所で申し訳ないが、もうしばし我慢していただこうリン殿」
その隣で、今日もつやつやピカピカ朗らかな笑顔で
アレックス・ルイ・アームストロングが告げる。
「我がアームストロング家の未来のために、姉上が初めて興味を示された異性を
逃すわけにはいかんのでなあ」
「貴殿が当主位を取り返せば問題なかろウ」
「姉上はそんなにいかんか? まあ年上だし多少猛々しくあられるが文句なしの美人だぞ」
猛々しいのが一番いかんのだ、一番。
「そもそも名家ならば異国人の血が入るのは問題ではないのカ」
「優秀な血を積極的に取り入れてきたからこそ今のアームストロング家がある故、
それは特にたいした問題ではないな」
「あきらめたまえよシンの皇子殿」
一人パイプ椅子に腰掛け、リザ・ホークアイを背後に控えさせた
ロイ・マスタングが気障な笑顔を見せた。
「あの女王様に目を付けられたのが君の不運さ」
てめーはてめーでしっかり美人侍らせやがってこの野郎。
「ふン」
不機嫌に鼻を鳴らし、リンは戦いの場へ目を向けた。
最悪、この3人だけが相手なら少々傷を負おうとも脱出できないわけではないが、
この場には他にも軍人ばかりの大観衆の目がある。
とりあえずはおとなしく機をうかがうしかない。



皆が見つめる場の中央では、激しい戦いが繰り広げられていた。
地を蹴り、迫るランファン。
最小限の動きでかわしつつ斬りつけるオリヴィエ。
軍刀と機械鎧がぶつかり、火花を散らす。
早さは明らかにランファンの方が上だが、オリヴィエは長さのある軍刀を巧みに操り、
相手をその身に近寄せない。
最初は野次雑談混じりに見てい観客たちも、次第に二人の気迫に呑まれていく。

13 :鋼の錬金術師 〜「後夜祭」〜:2010/06/13(日) 00:08:12 ID:gZ/nyLOsP
貴賓席からやや離れてアルフォンスのために用意された小さなテントの中、
メイはひそかに焦っていた。
ここについてからずっと、アルフォンスの古い知り合いであるらしい
マリア・ロス中尉がずっとそばにいるというのは予想外だった。
頃合を見計らって抜け出し行動を起こすという手配だったのに、これでは動けない。
じりじりと時間ばかりが経っていく。
正面を見据え、じっと戦いに見入っているようだったアルフォンスが口を開いた。
「ロス中尉、僕、観客席で売ってるあの袋入りのジュース飲んでみたいです」
「そう? じゃあ買ってくるわね。何味がいい?」
「オレンジ、ありますか?」
「多分大丈夫だと思うわ」
できるだけ早く戻ってくるわねと優しい笑顔を残し、
マリアが日よけのため周囲に張られた幕をくぐって出て行く。
「…ありがとうございましタ」
アルフォンスの意をくんだメイが静かに声をかけた。
車椅子の前にひざまずき、彼の手を取り額に押し当てる。
「アル様、…シンに戻りまス」
別れの言葉を。
「どうぞお健やかニ」
心からの祈りを込めて告げ、未練を振り切るように勢いよく立ち上がり、身を翻す。

14 :鋼の錬金術師 〜「後夜祭」〜:2010/06/13(日) 00:09:27 ID:gZ/nyLOsP
走り去る足音。遠ざかる気配。
無人になったテントの中、アルフォンスは思わず手で口を押さえた。
…行ってしまった。
予想していたより激しく強い孤独感が胸を締め付ける。
肉体と魂の再融合を果たし戻ってきて数日間はそれこそ夢も見ずに眠れたものの、
それからは眠るたびに悪夢が待っていた。
扉に飲み込まれる感覚の再現。肉体に戻ってきたものの立ち上がることさえできず
ばらばらにちぎれ崩れる自分の肉体を別の視点からまざまざと見ることになったり、
誰も戻ってきた自分に気付かず結局死んだことにされてしまったり。
そんな悪夢にうなされ目を覚ますと、必ずメイがそこにいてくれた。
小さな温かい手でほおに額に手に触れ、
「大丈夫です、アルフォンス様はちゃんとここにいます」とささやいて、
また自分が眠りにつくまで他愛もない話をしたりシンの子守歌を歌ってくれて。
今夜から、眠れぬ夜を慰め、いたわり支えてくれた彼女の優しい手は、もう、ない。
ふと、心に影がよぎる。
今なら、誰かに言えば、メイの「計画」を止められるかもしれない。
そうすれば騒ぎは起きずこの場は混乱せず彼女は自分の側に戻って───
「…ダメだ」
頭を大きく横に振って黒い誘惑を振り払う。
そして考える。
メイが単に仲間と落ち合うためだけにわざわざ今この場所で自分と別れたということはないだろう。
そしてここで何が行われているかを考えれば、ねらいは何となく読めなくもない。
ならば周囲の目を自分に引きつけることは彼女の助けになっても邪魔にはならないはずだ。
テントに足音が近づいてくる。
「ごめんね、オレンジが売り切れてたから、レモンソーダで」
明るく言いながら袋を手にテントの後ろから幕をくぐったマリアは
車椅子の上で胸を押さえて体を折るアルフォンスの姿に悲鳴をあげた。
「アルフォンス君!?」
のぞき込んだ顔は蒼く、呼吸も荒い。
「ロス、大尉…兄さんを、呼」
ついさっきまで普通に観戦を楽しんでいたはずのアルフォンスが
何故急に体調を崩したのかは分からないけれどただごとではないと判断し、彼女は叫ぶ。
「誰か、誰かーっ! 鋼の錬金術師と医官を呼んで!」

15 :鋼の錬金術師 〜「後夜祭」〜:2010/06/13(日) 00:11:29 ID:gZ/nyLOsP
ランファンとオリヴィエの戦いの向こう、アルフォンスがいるはずのテントに
あわただしく人が出入りし始めたのを見とがめたエドワードは
続いて走ってきた伝令の知らせに顔色を変えて怒鳴った。
「あの豆粒どチビ、何やってんだっ」
駆けつけたいが、自分に命じられているのはリンの見張り。
迷う彼の心を見透かしたようにロイが声をかける。
「君の代わりはリザにさせる。ここは大丈夫だ、行きなさい」
エドワードは答える間も惜しんで駆けだしていった。
ややあって丈の長い白い上着を羽織った女性が夫を伴いその場に現れる。
アレックスが盟友、シグ・カーティスの姿を認めて目を輝かせた。
「久しぶりだ」
「我が友…!」
おたがいの筋肉を誇る暑苦しい友情の儀式が行われる横でロイとイズミは握手を交わす。
「マスタング大尉、お久しぶり」
「イズミ・カーティス殿か。ダブリスにいらっしゃるはずのあなたがどうしてここに?」
「オリヴィエちゃんのお願いで、ちょっとね」
…「ちゃん」付け、だと…?
畏怖する軍人2人民間人1人を横に、イズミはリンを捕らえている檻に近づいた。
見上げる彼と目を合わせ、にっこりと笑う。
「貴方がランファンちゃんのご主人ね?」
その呼び方には少々語弊がある気がするが、と思いながらリンはうなずく。
「何の用ダ」
「やーねえ、そこから出してあげようと思って来たのに」
「それはならぬ」
檻とイズミの間に割って入ろうとするアレックスをシグが押しとどめる。
「我らが友情に免じてこの場は見逃してくれないか、我が友アレックス」
「…友の頼みならば仕方ないな…!」
おいおいそれでいいのか暑苦しい。
何はともあれ障害のひとつは解消されたのを見てとったイズミがロイの方に振り返る。
「と、言うわけなんだけどいいわよね? マスタング大尉」
「私はこのとおりの盲目ですから何も見えておりませんよ」
「あら感謝」
交渉成立。
拳で檻の鉄棒をコンコンとたたきながらイズミは改めて周囲を見回した。
「この悪趣味な檻はエド製ね。で、あの子は?」
「アルフォンス君のところだ。急に体調を崩したらしい」
「なんですって」
もう一人の息子の名と状態を聞いた彼女が顔色を変えたその時。
さらにもう一人、招かれざる客がその場に姿を現した。
褐色の肌、赤い瞳、額から目にかけて大きな傷。筋肉が盛り上がる両腕には錬成陣の入れ墨。
「スカー? 何故ここに?」
リザが呼んだ名にロイがはっと反応する。
無表情のままスカーは一歩踏み出す。
「我が友の願いにて、その男もらいうける…!」
闘気がゆらりとそのたくましい体を覆い、その場の全員を身構えさせた。

16 :鋼の錬金術師 〜「後夜祭」〜:2010/06/13(日) 00:14:15 ID:gZ/nyLOsP
肩で息をつき、黒装束のあちこちを裂かれて白い肌をのぞかせるランファンに
オリヴィエは乱れたところ無く立ちはだかる。
…ふと、気付けばあちこちで妙な騒ぎが起きているようだ。
周囲に視線を流したオリヴィエにランファンがまなじりをつりあげた。
「よそ見をするナ!」
飛びかかる。
オリヴィエの軍刀がひらめき、飛びずさってかわしたランファンの服の胸元が大きく裂け、
さらしを巻いた胸元から引き締まった腹部までが一気にあらわになる。
女性兵士たちが思わず我が身に置き換えてあげた悲鳴を男どもの歓声がかき消した。わきあがるオリヴィエコール。
「無礼をわびるなら今のうちだぞ、小娘」
腕と闘志と根性は気に入った。他人のものながらいい部下だ。
「お前が私の足下にひざまずくならシンの皇子については考えてやろう」
「…誰ガ、おまえなどニ!」
上げた左腕で胸元を隠しながらもなおも闘志尽きぬ瞳のランファンからは
予想通りの答えが戻ってくる。
最初から全速力で飛ばしていた相手に比べこっちはまだ体力に余裕があるが、
そろそろ勝負をつける頃合いだろう。
オリヴィエは試合が始まって初めて自分から動いた。
一気に相手に迫り、鋭い突きを繰り出す。かわされればそのまま横に振るい、振り下ろし、斬り上げる。
それまでの防衛中心の剣技から一転、滑るような足裁きで縦横無尽に攻めていく。
ついに必殺の一撃がランファンの仮面を中心線で断ち割った。
だがランファンは止まらない。隙も作らない。
むしろ、弱点をとらえたと思いこんでいたオリヴィエの方に油断ができている。
一気に懐に飛び込んだランファンがとっさにかざされた刃を機械の左手でつかみ、
押さえながらオリヴィエのほおを思い切り右手で張り倒す。
「弱点が、いつまでもそうだと思うナ!」
水曜日の夕方、ホテルに「仮面のこと司令官に言っちまったすまん」と
わびを入れに来たエドワードをイズミと二人がかりで締めてからずっと
その克服に励んでいたのだ。
これで決まったか、と誰も思った次の瞬間、
オリヴィエが平手を張り返しランファンの腹に蹴りを入れ反動で体を引き離す。
「甘く見ていたのは私の方だとはな」
それまで余裕があった薄氷色の瞳に本気の殺気が宿った。
「だが、これ以上は許さん」
相手を圧してなおやまない怒気のすさまじさに、
いつのまにか場内を席巻していたランファンコールがぴたりと止まる。

17 :鋼の錬金術師 〜「後夜祭」〜:2010/06/13(日) 00:16:02 ID:gZ/nyLOsP
「遅いぞ、スカー」
ロイの言葉にはい?とあっけにとられる他の4人をよそに彼は続ける。
「リザ、距離を」
名を呼ばれ、あらかじめ聞かされていた手順を思い出した彼女は
改めて上司に問い返した。
「…いいんですか」
「あの女に一泡吹かせてやれるチャンスなんてそうないだろう」
全くこのひとは仕方ない、とため息をつき、リザ・ホークアイは振り返り
場内を見据えた。
「左45度、15メートル」
「鷹の目」が目標地点を見定め、告げる。
ロイが静かに両手を合わせた途端に、はるか前方でにらみ合う
オリヴィエとランファンの中間地点が爆発した。
「右30度17メートル、そこから2メートル間隔で3回」
指示は続き、次々と爆発が起きる。土埃がもうもうと舞い上がり、
観客たちがざわめき混乱しはじめる様子がここまで伝わってくる。
「彼の目的は貴方と同じですよ、イズミさん」
ロイの言葉にうなずいたスカーが檻に近づき、右手であっさり「分解」する。
リンは弾かれたように立ち上がった。
「何だか分からんガ、助かっタ」
「来い、近くに車が待っている」
「しかし、ランファンガ」
土煙に覆われたままの場内を見やってためらうリンにロイが声をかけた。
「彼女なら他の者が手引きする手はずになっているよ」
「…分かっタ」
踵を返しかけてじろり、と見据えるスカーの視線に、
軍人&民間人一同は口々に白々しく答える。
「私は盲目なので、誰も見えてないよ」
「私は…不審者に真っ先に倒されましたので何も分かりません」
「私たちは元々ここにいるはずのない一般市民だから関係ないわね、あんた」
「我が輩は…見逃そう」
友情と姉とを秤にかけ、結局友情を取ったアレックスだった。

18 :鋼の錬金術師 〜「後夜祭」〜:2010/06/13(日) 00:20:25 ID:gZ/nyLOsP
爆発の衝撃を身をかがめてやりすごし、オリヴィエは土煙の向こうに目をこらした。
神経をとぎすまして気配を探るが…土煙はともかく、
聴覚が多少おかしくなっているのが痛い。
「上に立つ者が敵を作りすぎるのはよくないでスよ、将軍さン」
どこからか、凛とした少女の声。
いつの間にか、足下を囲むように突き立つ5つの鏢。
その間を閃光が走り、衝撃がオリヴィエの体を灼いた。
容赦なく体力を奪う電撃に思わずひざをついた彼女の周りから
手早く鏢を回収したメイがランファンに駆け寄る。
「無様ですねランファン」
シン語。土煙を透かして見た姿にランファンは驚きの声を上げた。
「メイ・チャン!?」
「リン・ヤオはこちらで確保しました」
「何」
「話は後です。早く!」
オリヴィエとの勝負がついていないことには未練が残るものの、
確かにこの機を逃す訳にはいかない。
最後に一瞬だけ彼女がいるはずの方をにらみ据え、
ランファンはメイに手首をつかまれたまま土煙の中を走りだした。
混乱する練兵場の通路を一気に駆け抜け、
不幸にも出会った相手は的確に倒し、司令部を脱出した二人は
近くの路地に止めてあった「ハボック雑貨店」の大型トラックの荷台に転がり込む。
そこにはすでにリンとスカーが待っている。
「若…!」
別れたときと変わらぬ姿の彼を確認してランファンが安堵のあまり涙ぐむ。
メイが荷台の前方に走り、運転席との仕切窓をコンコンとたたいた。
「マルコーさん、揃いました。車出してくださイ」
エンジンが唸り、トラックが走り出す。
荷台の一同はそれぞれ壁にもたれて座り込み、しばし黙って呼吸を整えていた。
やがて暗がりに目が慣れ、おたがいの様子が見えてくる。
「ランファン」
リンが上着を脱ぎ、隣に座るランファンの肩にかけた。
「ずいぶん手ひどくやられたな」
腕、肩、胸元、腹、脚。今更ながら素肌のさらされっぷりに気付いて
赤面しながらランファンは襟元をかきよせる。
「はい。恐ろしい…相手でした」
正直もう二度と戦いたく…会いたくない。剣術もだが、あの気迫が何より恐ろしい。
「確かにな」
揃って身震いする主従に、反対側に座るメイが声をかけた。
「その恐ろしい相手から助けてあげたんですから、お礼を言っていただきたいところです」
リンに視線でうながされ、
「…感謝する」
ランファンは不承不承頭を下げた。
すまし顔で鷹揚にうなずいて返すメイの肩の上でシャオメイがガッツポーズを取る。

19 :鋼の錬金術師 〜「後夜祭」〜:2010/06/13(日) 00:21:20 ID:gZ/nyLOsP
「第十七皇女メイ・チャン」
しばらく後、リンが静かに口を開いた。
「同国人のよしみだけで助けてくれたわけはないな」
「取引をしましょう、第十二皇子リン・ヤオ」
メイの、常には「愛らしい」と評される黒目がちの瞳がしたたかに光る。
「何が望みだ」
「貴方が帝位につくことです」
「…ずいぶん大きく出るな」
「昨日、信用できる筋から皇帝の容態悪化の情報が入りました。
一日二日の間にどうこうとまではいかないですが、予断はできないと」
その言葉の意味を悟ったリンが顔色を変える。
「急ぎシンへ戻り、この機に乗じて次の皇帝に」
「勝手なことを」
「一人でやれとは言いません。皇帝に取り入るための人員は確保しています」
マルコーにもそのことは打ち明け、承知してもらっている。
「私自身も今度のことでかなりの知識を得ましたし、
もしも皇帝が死ぬ前に会うことができればどうにか延命できるかもですよ」
「…で、お前への褒賞は?」
「我がチャン族に妥当な地位を」
そう、メイの望みは自分が皇帝になることではない。
一族の地位が今より引き上げられればそれでいいのだ。
だから後ろ盾になる勢力のない自分が一人で動くよりは、
50万人からなるヤオ族の勢力を持つリンに協力し恩を売り
見返りを得る方が確実だと判断しての…今回の救出作戦だ。
おたがいの地位と誇りをかけ、二人の皇族の視線が火花を散らす。
ややあって、口を開いたのはリンの方だった。
「承知」
「若…!」
「わざわざ後で裏切るために手間暇かけてお前まで助ける者もいないだろうよ」
実際、最初は従者の一人も持たなかったはずの彼女がマルコー、スカーを味方に付け
ロイ・マスタングに通じアメストリス国脱出のための車まで手配するとは
たいした手際だ。仲間にすれば心強い相手であることは間違いない。
「皇位につけと言うからには、血まみれの道。存分に働いてもらうぞ、メイ」


オリヴィエが体の自由を取り戻したときには、
当然すでに敵の姿も賞品の姿も消えていた。
やっと周囲が見える程度に土煙も晴れ、係員観客の混乱っぷりも見えてくる。
…情けない。
「アテンション!」
気迫のこもった大音声が練兵場を震わせる。
軍刀を手に背筋を伸ばし、皆の視線にもひるまず一人立つ女将軍。
その姿は厳しく、りりしく。
「ぐだぐだ騒ぐな。総員、即座に自分の部署に戻り配置に付け!!」
「イエス・マム!」
声を揃えて答えたのは、オリヴィエの叱責に慣れている北方司令部の人間たち。
その迫力に引きずられるように東方司令部の人間たちもわたわたと動き出す。
「東方司令部。全員、あとでじっくり性根をたたき直す…!」
低く唸り、逃亡したシン国人捕獲の指揮を執るために彼女は軍服の裾を翻した。

20 :鋼の錬金術師 〜「後夜祭」〜:2010/06/13(日) 00:25:15 ID:gZ/nyLOsP
そして月曜日の早朝。
げっそりとやつれはてた顔で病室に現れたエドワードが、
起きたばかりのアルフォンスの脚の上にぱたりと倒れ込んだ。
「アールー」
「兄さん、重い」
「おまえさー…ほんっとにメイから昨日のこと何にも聞いてなかったんだよな…?」
アルフォンスは深々とため息を返す。
「聞いてたらいきなり『シンに戻ります』って出て行かれて
びっくりして具合悪くなったりしないって」
嘘じゃない。周囲の注意を引くための仮病の演技が結局本物の過呼吸を引き起こしてしまったのだから。
「じゃあ、結局メイたちはシンに帰れそうなのかな」
「今んとこ捕まってないってことは多分大丈夫だろ」
昨日、練兵場で急に起こった爆発の混乱が収まってすぐに
逃走したシン国人たちの追跡が司令官直々の指揮の下行われた。
しかし東方司令部必要最小限の人数をのぞいたほとんどが練兵場で観客と化していたため
街の警備はもののみごとに手薄になっており、
深夜になってやっと一行の構成と足取りが判明したときには、
彼らはすでに国境の大砂漠に入ってしまっていたのだ。
公的には単なる密入国者であるシン国人たちが、
自ら祖国へ帰還するというのをあえて追い捕らえようとする理由は私怨以外になく
…私欲で軍を動かすことを最も嫌うオリヴィエが、そうと分かっていて
必要以上の追跡を命じられるわけがない。
もちろん賞品の見張り役たちも厳しく尋問されたが、
ロイ・マスタング、リザ・ホークアイ、アレックス・ルイ・アームストロングの3名は
のらりくらりと言い逃れ、
エドワードだってリンやランファンと知り合いなうえに
真っ先にその場を離れたからあやしいと言われても何も知らない以上答えられることは何もなく。
…だというのに、怒気を隠そうともしないオリヴィエ直々に詰問され続けた夜明け前の3時間は、
無人島での1ヶ月および機械鎧をつけてからのリハビリ期間に勝るとも劣らぬ
苦難の時だったと断言する。
ちらりと思い返しただけで泥のような疲労がずしーんと全身にのしかかってくる。

21 :鋼の錬金術師 〜「後夜祭」〜:2010/06/13(日) 00:27:01 ID:gZ/nyLOsP
もうダメだ、とりあえず仮眠させてくれーと
エドワードが一昨日までメイが使っていた付添用ベッドにもぐりこもうとした、
その時。入り口がノックされた。
「アルフォンス・エルリックの病室だな?」
廊下から聞こえた声にエドワードは音を立てる勢いで凍り付く。
「入るぞ」
地獄のドアが開く音が聞こえる…!
ゆーっくりと振り返ると、つい1時間前まで自分をしつこく厳しくしつこくしつこく尋問していた
その相手、オリヴィエ・ミラ・アームストロングがアルフォンスのベッドへ近づくところだった。
「しっ司令官、なななななな、何故ここにっ」
「司令部内で体調を崩した民間人のもとに
司令官の私が直々に見舞いに来て何が悪い」
心臓に悪いです。ボクの。
昨日の激闘および激務の疲れをちらりとものぞかせず、
しわひとつない軍服をきっちりと着こんだオリヴィエは持っていた花束をアルフォンスに差し出す。
まだ朝露も消えていない白薔薇からつみたての緑の香りを秘めた芳香が匂い立つ。
「君がアルフォンス・エルリック、…あの鎧の中身か」
「はい」
いきなりの訪問に内心激しく狼狽しつつも、
それを面に出すわけにはいかないと覚悟を決めアルフォンスは笑顔を作る。
「お久しぶりです、オリヴィエ・ミラ・アームストロング大将」
「兄とはあまり似ていないな」
「僕は母親似なんです」
はらはらと見守るエドワードをよそに二人の会話は続く。
「そうか。昨日は大変だったそうだな」
「大将の戦いを最後まで見られなくて残念でした」
「ほう。昨日、東方司令部で君が倒れてから何があったかは知っているな」
一応「民間人」相手だからかオリヴィエの口調は多少柔らかいが、質問は的確だ。
「逃げたシン国人のうちの一人は君のつきそいだったそうだな」
「はい」
「まさか、君が奴らの手引きをしたわけではないだろうな?」
ここが正念場。
気力を振り絞り、アルフォンスはオリヴィエの目をまっすぐに見つめ返した。
「僕は何も知りません」
簡潔に言い切る。
「そうか。朝早くからすまなかった」
呼吸5つ分の沈黙の後、オリヴィエはそう言って踵を返した。
アルフォンスよくがんばった、兄はおまえを誇りに思うぞ…! と
感激するエドワードにちらりと視線を投げて。
「エドワード・エルリック、お前にはまだ聞きたいことがある。
9時に司令室に来い。遅れるなよ」
言い残し、軍靴の足音を響かせ部屋を出て行く。
揃ってぐったりと脱力したエルリック兄弟を、
窓から差し込む朝日が明るく照らし出していた。

22 :鋼の錬金術師 〜「後夜祭」〜:2010/06/13(日) 00:28:44 ID:gZ/nyLOsP
以上です。
おつきあいありがとうございました。

ちなみに作中の軍人さんたちはそれぞれ1〜2階級昇進してる設定です。
そのへんで変換ミスがあっても突っ込まないでやってください。

23 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/06/13(日) 08:45:22 ID:SKO7T7Q40
〜太陽の戦士・出陣〜

総勢32名の全選手入場を終え、選手達が一旦引き揚げてからも、闘技場を包む興奮は一向に収まる気配がない。
誰もがこれから始まる凄まじい激闘の予感に高揚し、酔い痴れる。
「いやあー。賑やかで、まるでお祭りみたいですね」
「幻想郷の奴らなんて皆、理由を付けては騒ぐのが大好きだからな。一種のお祭りみたいなもんだろ」
と、魔理沙。
「お祭りというより、これもある種の異変じゃないの?」
「そうね。これだけの連中が一同に介して闘うなんて、普通じゃないわ」
そう言ったのはアリスとパチュリーだ。
「でも、優勝は絶対レッドさんだよ」
「あーら、このガキったら何言ってんのかしら。勝つのは幽香に決まってるでしょ」
「ふーんだ、君はレッドさんの強さを知らないからそんな事言えるんだよ!」
「あんただって、幽香がどれだけヤバいか知らないでしょ!」
「何だい、へちゃむくれ!」
「何さ、間抜け面!」
そしてどんどん会話の知的レベルを下げていくコタロウとメディスン。
十人十色の面々を尻目にしながら、ヴァンプ様は不安げに呟く。
「それにしてもレッドさん…大丈夫でしょうか?」
「心配いりませんよ、ヴァンプ将軍」
ジローは全幅の信頼を置いて、頷く。
「彼の強さは本物だ。それは、あなたもよく分かっているでしょう?」
「あ、いえ。そういう心配じゃなくて」
手をヒラヒラさせるヴァンプ様である。
「明らかにレッドさん一人だけ、浮いちゃってるじゃないですか」
「え…」
「他の選手はみんな綺麗なお嬢さんばかりなのに、レッドさんだけムサ苦しい男って…正直、ないですよね」
「うわあ…それは言っちゃダメだよ、ヴァンプさん。みんな薄々気付いてるけど黙ってるのに」
「でもね、コタロウくん。魔界の神様とか何とか凄い肩書きばっかの中で、あの人ったらアレだよ?チンピラでヒモ
でヤカラのヒーローだよ?場違いというか、何というか…」
「むー、確かに」
「―――なあ。私はそのサンレッドだかレッドサンだかの事はよく知らないけどさ。アレだろ?さっきの入場で最後
に出てきた、あの赤いのだろ?」
「ええ、そうですよ。それがどうかしたんですか?」
「いや、あのさ…言いにくいんだけど」
魔理沙はそう前置きして、後方を指差す。
「さっきからその赤いのが、後ろにいるんだけど」
「え!?」
「え!?」
異口同音である。二人が恐る恐る振り向くと、そこにはいました、赤い奴。
その能面のような顔からは、如何なる感情も読み取れない(マスクなので当然だが)。
「あ、あの、レッドさん、ど、どうしてここに…」
「自分の出番が来るまでは控え室でも客席でもどこにいてもいいって言われたからよー。とりあえずお前らの様子
を見に来てみたら、お前らって奴は…」

24 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/06/13(日) 08:46:24 ID:SKO7T7Q40
「レ…レッドさん!悪いのは私なんです!コタロウくんは何も言ってません!」
「そ、そんな…違うよ、レッドさん!ヴァンプさんじゃない、ぼくが悪いんだよ!」
お互いを庇い合う悪の将軍と吸血鬼少年。美しい友情だった。
「うるせー!」
しかし、それで感動してくれるような相手ではないのが誤算であった。レッドさんのゲンコツを喰らい、大きなコブを
こさえた二人はうずくまって悶絶する。
それを見つめて、妖夢は真面目くさった顔で顎に手を当て重々しく呟いた。
「人を悪く言えば、それは己に返ってくる―――因果応報ということですね」
「そうですね。貴女にだけはそれを言われたくないものですが」
ジローが皮肉を返したその時。

「―――では、皆様。まずは日程から説明いたします!」

バイオレンスかつグダグダな空気を断ち切るように、幽々子の声が会場に響く。
「本日は二回戦まで行い、本戦出場者32名を更に8名にまで絞ります―――そして三日後、その8名によって決勝
トーナメントを行い、優勝者を決定します!」
「へえ。今日で全部終わらせちまうわけじゃないんだな」
「多分、三日の間に幕間劇とかいれてなるべく話数を稼ごうという大人の事情ですよ」
分かったような事を口にする妖夢である。
その間も幽々子による各種説明は続く。
「ルールは規則・反則一切なしのバーリ・トゥード方式!武器も道具もガンガン使用しちゃってOK!」
「ルール無用ですか…レッドさん有利ですよ、ねっ!」
「どういう意味だよ、ヴァンプ…」
しかめっ面のレッドさんだった。
「勝敗はギブアップか、もしくは審判である四季映姫・ヤマザナドゥの判定によって決まります!ちなみに、万一
相手を死に至らしめてしまった場合は失格となりますのでご注意願います!」
「ギブアップって…そんな簡単に負けを認めるような奴もいないだろうに」
「となると判定か、でなきゃ死か…いずれにしろ、血を見る事になりそうね」
「ちょ、そんな事言わないでくださいよ!怖いなあ、もう…」
物騒な事を口にする魔理沙とアリス。ヴァンプ様はおっかながって震えるばかりである。
「なお観客席には防御結界が張り巡らされています。ちょっとやそっとでは破れないので、どうか御安心を―――
しかし、選手の力がちょっとやそっとじゃなかったら破れるかもしれないのでその辺は御容赦を!」
「あ、フラグ立った」
と、パチュリー。ちなみに、破れるフラグである。
「―――では!早速ですが、開幕戦となる一回戦・第一試合の組み合わせを決めるとしましょうか!」
一際声を張り上げる幽々子。いつの間にやら、彼女の傍らには巨大な箱が置かれていた。
その背後には、32枠が用意されたトーナメント表。

『さあ、選手&観客の皆さん!ここからは私が説明しましょう!』

実況・射命丸文の声が会場を揺るがす。しかしこの鴉天狗、ノリノリである。
『もうお気付きの方も多いと存じ上げますが、あの箱の中には、選手の名が書かれた札が入っております!それを
今から、西行寺幽々子様が二枚引きます―――即ち、その二人が対戦相手!』
では、と文は幽々子を促す。

25 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/06/13(日) 08:47:19 ID:SKO7T7Q40
『幽々子様!それではよろしくお願いします!』
「はい!ではお待ちかね、最初の対戦カードは!?」
箱に手を突っ込み、勢いよく二枚のカードを引き抜き、天に翳す。
そこに記されていた名は。

「―――サンレッド!そして、星熊勇儀!」
『決定です!幻想郷最大トーナメント一回戦・第一試合は―――サンレッドVS星熊勇儀!』

おおー!と、会場中がどよめく。その中で、ヴァンプ様とコタロウはレッドさんの肩を掴んで揺する。
「ほら、レッドさん!いきなり出番ですよ!」
「頑張って、レッドさん!」
「何でお前らがはしゃぐんだよ、ったく…」
纏わりついてくる二人をあしらいつつ、レッドは思い出していた。
(星熊勇儀…あいつか)
予選終了後に、彼女とは少しばかり<挨拶>を交わしている―――その短い邂逅で、彼女は垣間見せた。
力。そして才気。
それも圧倒的容量を確信させる器。
「あらら…気の毒に。いきなり星熊勇儀とは相手が悪かったな、レッドサン」
「サンレッドだ、白黒」
茶化すような物言いの魔理沙に対し、レッドは肩を竦めてみせる。
「ま、ここの連中にいっちょ見せてやんよ…俺のケンカをな」
そう言い残し、レッドは悠然と去っていく。その背には確かに、壮絶な闘いへ向かう漢の頼もしさが滲み出ていた
のだった。
そんな彼の後ろ姿を見つめ、妖夢はポツリと呟いた。
「…これが私達が、彼と言葉を交わした最後の瞬間でした」
「そこ。不謹慎且つ不吉な発言は控えなさい」


―――選手には控え室として、一人ずつ個室が用意されている。
星熊勇儀は彼女に与えられた一室で、ソファに身を横たえていた。
その姿はさながら昼食後の睡魔にまどろむ虎のように獰猛で、野性的な美しさに満ちている。
視線の先には、会場の様子が映し出されたモニター。
西行寺幽々子の手に握られた二枚のカード。その名を呼ばれると同時に、勇儀は身を起こした。
「…へえ。奇縁だね、こりゃ」
こと戦闘において、鬼より優れた種族は幻想郷にも存在しない。ましてや彼女は、現時点で実在が確認されている
鬼の中でも、伊吹萃香と並ぶ二強と称されている。
その研ぎ澄まされた戦闘感覚が告げていた。天体戦士サンレッドの秘める、膨大な力量を。
「景気づけに、やるかね」
愛用の巨大な杯を右手に取り、瓢箪からなみなみと酒を注ぐ。人間ならば酒豪を称する者でも一口で昏倒する、鬼
特製の酒。勇儀はそれを軽々と飲み干し、旨そうに息をつく。
「さて、いくか」
その時、控え室のドアが遠慮がちにノックされた。

26 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/06/13(日) 08:48:26 ID:SKO7T7Q40
「ん…?何だい。あたしなら」
「次に貴女は<今から出るところだよ>と言います」
「今から出るところだよ…はっ!」
くすくすと、ドア越しに忍び笑いの気配。
「貴女のノリのいい性格、私は大好きですよ?」
「…入ってきなよ、古明地(こめいじ)」
「では、失礼して」
ドアが開かれ、<古明地>と呼ばれた訪問者の姿が露わになる。
幼いながらも端正な顔立ちは、氷の如く表情がない。やや癖っけのある、薄い紫色の短髪。淡い空色の部屋着の
胸元では、ギョロリとした第三の瞳が勇儀を値踏みするように見つめている。

彼女こそは古明地さとり。旧灼熱地獄跡に建造された地霊殿に棲む、地上を追われた妖怪達の総元締め。
<心を読む程度の能力>を持つ妖怪・覚(さとり)。
誰からも忌まれ、誰からも嫌われ、誰からも呪われた、この世で最もおぞましい妖怪として知られる存在である。

そんな彼女だが、星熊勇儀とは不思議と仲が良かった。
捻くれ者で繊細な所のあるさとりと、豪放磊落で単純一途・姉御肌の勇儀。
対極だからこそ、互いに惹かれるものがあったのかもしれない。
「<よくここまで入ってこれたな>ですって?こう見えても隠れ忍ぶのは得意技です。無意識を操る我が愚妹ほど
ではありませんが、ね…おっと<この不法侵入者め>ときましたか。そんな固いことを仰らないでください」
「言ってないよ、思っただけさ」
「それはその通り。おや<どうしてここに来たんだ。あんたの可愛いお燐とお空の応援かい?>まあ、そういう事
ですよ」
「あのさあ、古明地」
げんなりした様子で、勇儀は大げさに溜息をつく。
「ちょっとは言葉のキャッチボールを楽しもうじゃないの。そうポンポンと頭を覗かれちゃたまったもんじゃない」
「そう申しましても、私の能力は自動的ですので」
「前にも聞いたよ、それ…」
「確かホワイトデーの時でしたよね」
「そうだよ。バレンタインを犠牲にした、アレだ」
「アレですね。で、勇儀さん。貴女への用件はそれに関する事でして」
さとりはスカートのポケットから、小さな布切れを取り出す。
「ん?それは…」
布切れに見えたのは、御守りだった。どうやら手作りのようで、市販のものに比べると不格好な長方形だ。
御世辞にも丁寧とは言い難い刺繍で、糸が所々ほつれてしまっている。
「<彼女>が勇儀さんのためにと作ったんですよ」
「…………」
勇儀は御守りを受け取り、胸元に仕舞い込む。その顔は、何やら深く考え込んでいるようだった。
「ふむ…<何て可愛い事をしてくれるんだあいつはああもう可愛過ぎる今すぐ帰ってイチャイチャしたい>」
「読むんじゃねーよ」
「自動的です」
「ちぇっ…」
「…<嬉しいけど、本当はここに来て応援してほしかった>それはまだ、無理ですよ」
さとりは不意に、表情を曇らせる。
「彼女にかけられた<呪い>は―――まだまだ、解けてはいないのですから」
「…分かってるよ」
だったら、と勇儀は笑う。
彼女らしい、明け透けで、豪快で、裏表のない、地底さえも照らす太陽のような笑顔だった。

27 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/06/13(日) 08:49:37 ID:SKO7T7Q40
「優勝を手土産に、あたしの方からあいつに会いにいくさ」
「そして18禁レベルのイチャイチャを繰り広げるのですね。ああやだやだ。小五ロリで乙女の私にはそんな猥雑
な思考は心に毒です」
「うるさいね。お前、あたしより年上だろうが」
「…頑張ってくださいね、勇儀さん」
忌み嫌われし妖怪・覚は、その悪名に似つかわしくない、まるでただの少女のように微笑んだ。
「私も地底の仲間として、貴女を応援していますから」


―――星熊勇儀が去った後、さとりは<こちら側>に向き直った。
「…え?<さっきの会話がさっぱり意味分からん>ですって?ではハシさんが書かれたこちらのお話をどうぞ」

つ http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1112.html

「これを見れば星熊勇儀さんと私、そして<彼女>の事を理解していただけるかと。ではでは」


―――そして。
闘技場に今、両雄が降り立つ。
『さあ、まずは天体戦士サンレッドが東の入場門より姿を見せました!』
真っ赤なバトルスーツに身を包み、太陽の戦士が大地を踏み締める。
『外の世界より来たる正義のヒーロー…その実力は全くの未知数!トーナメントの台風の目となるか!?それとも
力及ばず果てるか!?答えはその鋼の拳に訊け!』
期せずして、大歓声が巻き起こる。闘技場の中央に立ったレッドは、それに応えるように両手を高々と上げる。
『おっと、続いて星熊勇儀が西の入場門から登場だぁっ!』
その姿、まさしく威風堂々。地に足を付けて歩む仕草が、ただそれだけで苛烈にして華麗だ。
『妖怪の頂点に君臨する戦闘種族―――即ち鬼!その中でも最強と名高い星熊勇儀!<語られる怪力乱神>と
異名を取る彼女の力には疑う余地なし!このトーナメントにおいても文句なしの優勝候補です!』
ポキポキと拳を鳴らしながら、勇儀はサンレッドへと向かう。
勇壮なる両者は、闘技場中央で睨み合った。
「―――あんたも理解しているだろう、サンレッド」
「あん?何をだよ」
「強い者を見ると力比べせずにいられない、我々の習性さ」
分かっているはずさ―――と、勇儀は繰り返す。
「同類のあんたなら、分かるはずだ…あんたも、強い奴との闘いを求めてる」
「…かもしれねえな」
「あたしはさあ、サンレッド。あんたを強い男と見込んで期待してるんだ…」
だから。
「落胆させんじゃないよ」
「誰に向かってくっちゃべってんだ、メスゴリラ」
レッドは中指を立て、不敵に言い返す。
「そっちこそ、一撃二撃で沈むんじゃねーぞ」

「―――さあ。二人とも、一度離れて」

審判の四季映姫・ヤマザナドゥが一触即発の二人を制して、距離を取らせる。
「それでは存分に、白黒はっきり付けなさい―――」

「幻想郷最大トーナメント一回戦・第一試合―――始め!」

28 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2010/06/13(日) 09:14:10 ID:SKO7T7Q40
投下完了。前回は前スレ324より。
鋼の錬金術師作者様の投稿後、間をおかずに失礼いたしました。
そして、>>1さん乙であります。

>>ガモンさん
お帰りなさいませ!あなたのダイ大&ドラクエワールドをまた堪能させていただきます。
>>な、なんかいきなり喋り方変わりすぎじゃねえか?
ですよねーw僕がドラクエ5やった時も全く同じ事を突っ込みました。
マスタードラゴン、強い味方になってくれるか否か?
しかし、バラモスブロスとか懐かしすぎる…どんだけドラクエネタ仕込むつもりですか、あんたw
バラモスの弟(名前的には)という大物ポジションの割には、もう普通の雑魚的扱いですよね、彼…
それはそうと、僕もヴァンプ様の元で働きたいものです…。マジ理想の上司。

>>ふら〜りさん
ヴァンプ様、その辺は結構正統派の思考です。原作でもレッドさんの命を狙うフロシャイムとは別の
怪人が現れた時「レッドさんは私達の手で抹殺したいんです!」と助太刀を申し出たほどですし。
まあ結果は手助けするまでもなくいつも通りレッドさんがワンパンチ瞬殺でお終いでしたがw

>>332 我ながら、正直酷い出来ですわw
>>334 褒めてくれて、正直嬉しい…

>>鋼の錬金術師〜「後夜祭」〜作者様
期待の新人の登場にワクワク…これからも色々書いてくださればと思います。
鋼の錬金術師はチラ見くらいしかしたことがなかったけれど、登場人物たちが魅力的で楽しそうで、
原作もきっちり見てみようかな、と思わされました。
エドワードとアルフォンスの仲良し兄弟ぶりが、いい感じです。こういうネタに弱いのですよ…!

29 :ふら〜り:2010/06/13(日) 09:57:56 ID:1p5atKK20
>>1さん&ハイデッカさん
おつ華麗さまです! 古参の復帰に新人さん来訪にと、久々に上向いてきたところでの
新スレ、縁起が良いなぁと。テンプレ増量に貢献したいと思いつつ、出だしだけ書いて
行き詰って捨ててるのが複数。えらく長いスランプだ……

>>ハガレン作者さん(おいでませっ!)
原作は全く全然知らないのですが、本作についてはランファン主役として見ると……余裕
たっぷりの敵の懐中で、主君の身を案じて健気な忠義心を燃やしてる武人だなあという印象。
こういう人は報われて欲しいと思う一方、主君を救って華々しく散るのも似合うなとか思います。

>>サマサさん
いきなりのレッド出陣! これはライタイの勇次郎を思い出す展開ですね。とりあえず負けは
しないでしょうが、どの程度の戦いになるのか、観客たちの評価がどうなるかが楽しみなところ。
で相手(敗北予定)側の事情説明は、お約束ながらバトル前のわくわくを盛り上げる必須要素!

>>最後にちょいとハイデッカさん
私にとって漫画の中のジャンヌ・ダルクといえば、以前は「ワールドヒーローズ2」一択
でしたが、最近になって「メビウスジャンパー」が加わりました。なかなか可愛くて凛々しくて
良いですぞ。……それはともかく、SSお待ちしてます!

30 :作者の都合により名無しです:2010/06/13(日) 13:39:08 ID:81wLLT7LO
乙一

最近のじゃないけど、安彦先生のジャンヌも中々
平野先生のジャンヌは色んな意味でハジけすぎw

さて、復活ブームにのれるかな
久々にふら〜りさんのレスが欲しいので

31 :作者の都合により名無しです:2010/06/13(日) 14:30:55 ID:zZkrWaPa0
ハガレン作者さん、力作書いて下さって嬉しいですー。
原作終わってちょっと寂しかったんで、読んでて楽しかったです。


アルフォンスが中心にみんな原作通りに魅力的と書かれていますが
個人的には大佐と中尉がもう少し活躍してほしかったかな?
また、機会があればお願いできたら嬉しいです。

32 :作者の都合により名無しです:2010/06/13(日) 18:44:35 ID:Bdy49d2y0
>鋼の錬金術師作者さん
最終回前を想像して書いたという事で、ほのぼのとした中にも
緊張感とどこか侘しさみたいなものが感じられますね。
だけどそれ以上に、エドとアルたちはじめとするみんなの
「希望」を感じられます。また、何か書いて下さいね。

>サマサさん
お祭りとはいえども、超絶の強者たちが集まったトーナメントだから
死人が出てもおかしくないような・・。闘技場大丈夫かな?
やはり主役が一番に出て盛り上げないと駄目ですよね!

33 : ◆5TKag9u//k :2010/06/13(日) 22:50:41 ID:gZ/nyLOsP
ハガレン作者です。
皆様の暖かい感想、本当に嬉しいです。ありがとうございます。
自分のメモ帳とは別の形で掲載してから改めて読み返すと
いろいろとあらが見えてきて恥ずかしいものですね。
お祭り騒ぎ的オールスターな話のつもりだったのですが、
個人的なキャラクターのひいきが色濃く出ていることに気付いたり…


>>28 サマサ ◆2NA38J2XJMさん
仲良し兄弟がお好みでしたら是非、原作も一読ください。
「兄弟の絆」が柱の作品ですので。

>>29 ふら〜りさん
ランファンが主役というのは新鮮な見方ですね!
主君を救って華々しく散るのも…うん、似合うかもです。

>>31
大佐と中尉は登場予定はなかったのに書いてるうちに
いつのまにか動きだしていたキャラクターです。魅力的ですよね。
いつかこの二人がメインの話を思いつけたらいいなと思います。

>>32
「最終回が来たあともみんなこんな感じであってほしいな」という
希望を込めて書き上げた話です。
感じ取っていただけたことに感激です。


昨日から時間があるときに過去ログを読ませていただいています。
先輩方の愛のこもった文章にはただただ感心するばかりです。


一応この「後夜祭」を受け継いだ設定で
2〜3年後のシン国編の構想もありますので
もし書けたらまたスレを借りて公表させていただければと思います。


このたびは本当にありがとうございました。

34 :作者の都合により名無しです:2010/06/14(月) 11:55:46 ID:zlCDYHtj0
ハガレン作者さん、好作をうぷして頂きありがとうございました。

私はハガレンをあまり知りませんが、「原作読んでみようかな」と
思わせる、良い出来のSSだったと思います。
続編楽しみにしてます。その時までには、原作も読んでおきます。
次のうぷの時には、名前を名乗っていただけると呼び易いかな、と。


>>30さん、どなたか存じませんが楽しみにしております。
ハイデッカさんも復活するし、ふらーりさんも書いてくれそうだし
久しぶりにスレが活気付くかなあ、と。
サマサさん、ハシさん、邪神さんたちに負担がかかり過ぎだからw

サマサさんは特に絶好調でいよいよトーナメントに突入ですね。
レッドが決勝まで進んでくれれば俺は満足です。
相手が人外(当たり前か)ばかりだけど、レッドさんもチンピラ超人だからw


35 :作者の都合により名無しです:2010/06/15(火) 16:50:46 ID:hnheUzOx0
>5TKag9u//k氏(次は是非お名前を)
書き慣れている感じだから、以前どこかで書いていたんでしょうな。
みんな魅力的ですが、アルとランファンが作中では美味しいですね。
今回はどこかしみじみとした雰囲気を味わうSSでしたので、
次はバリバリのアクションも呼んで見たいかなー、と思います。

>サマサさん
東方はちょっとしか知らないけど、星熊勇儀というのは
東方キャラの中でどのくらいの強さを誇るキャラなのだろう?
レッドさんは作中最強ですが、周りはろくなのいないからなw
一回戦はレッドさんの強さが際立ってほしいな。

>30さん
誰ぞ?とにかく復帰宣言は嬉しいな。
でも名前を名乗らず復帰宣言する人って、復帰しないパターンを多いからなw
いや、超期待しております。


36 :作者の都合により名無しです:2010/06/21(月) 13:33:53 ID:948UCWvn0
好スタートをきったと思ったのに・・
前スレ落ちちゃった?

37 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/06/22(火) 09:15:11 ID:VbT/ZKkj0
〜天体戦士サンレッドVS星熊勇儀〜

「ああ〜…いよいよ始まっちゃいましたね」
ヴァンプ様は落ち着きなくそわそわしながら、闘技場に立つレッドを見つめる。
「ね、ね。大丈夫ですよね、レッドさん。ああ〜、あの人の強さを疑うわけじゃないけれど心配だなあ…もし殺られ
ちゃったりしたら大変だよ。抹殺すべきヒーローを他の人に倒されたなんてなったら、皆にどう言えばいいのか…
あ、そうなったらなったで世界征服に一歩近づくわけだし、ここはむしろあっちの星熊勇儀さんを応援すべきかも。
でも私達以外の誰かがレッドさんに勝っちゃうってのも複雑な気分だし…あ〜も〜、ホントどうしよう、私」
「…とりあえず、静かに観戦してはいかがでしょう」
「そ、そうですね、ジローさん!よーし、見るぞー!」
身を乗り出し、食い入るように闘技場を睨み付けるヴァンプ様である。
そんな彼を呆れ顔で見つめて、魔理沙はジローとコタロウに小声で問うた。
「なあ。このオッサン、ちゃんと世界征服できてるのか?」
「…ノーコメントとさせていただきます」
「…ま、毎日頑張ってるんだよ、ヴァンプさんは」
「そっか…」
それで全てを察した魔理沙は、静かに口を閉ざしたのだった…。
「それにしても、いきなり星熊勇儀とは…サンレッドも運がないわね」
「ふむ。それは聞き捨てなりませんね」
パチュリーのその言葉に、ジローは少々気分を害したように反論する。
「身内贔屓と誹られるかもしれませんが、私はレッドの戦闘力は幻想郷に在ってもそうそう並ぶ者はいないと見て
いますよ」
「そうですよ。レッドさん、おっそろしいくらい強いんですから!」
ヴァンプ様もジローに続くが、パチュリーは首を横に振った。
「別に、彼が弱いなんて誰も言ってないわ…レミィが気にかけているくらいだもの。相当の力の持ち主なのは確か
でしょうね。だけど<語られる怪力乱神>星熊勇儀が相手となれば、分が悪いと私は見るわ」
「その、星熊勇儀さんって…そこまで強いんですか?」
「まあ、口で説明したってピンと来ないでしょうけど―――」

「―――見りゃ分かるさ。嫌でもね」

答えたのは、幼い少女の声。一同が振り向けば、そこには長い二対の角を備えた小さな鬼。
彼女―――伊吹萃香は瓢箪に口を付け、酒を煽りながら語る。
「百聞は一見に如かず。千聞とてまた然り。いくら言葉を重ねようと、あいつの―――星熊勇儀の力を計り知る事
は出来ないさ。ま、それを知るのは…あの赤マスクが大地に沈む瞬間だろうけどね」
「あ、あの…」
ヴァンプ様は、遠慮がちに萃香に話しかける。
「確か、トーナメントに出ていらっしゃる…伊吹メロンさんでしたっけ?」
「…あん?」
ぴくりと、萃香は眉を持ち上げた。
「あんた…今、なんつった?」
「え?伊吹メロンさんじゃ…」
「違います…伊吹萃香ですよ、ヴァンプさん」
妖夢が、冷汗と共に訂正した。
星熊勇儀と並び称される伊吹萃香―――彼女がその気になれば、ここにいる全員が束になっても敵うまい。
この場において怒らせてはならない危険人物1は、間違いなく彼女である。

38 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/06/22(火) 09:17:02 ID:VbT/ZKkj0
「す、すいません!人様の名前を間違えるだなんて、とんだ失礼を…<スイカ>と<メロン>を間違えるなんて…
ぷ、ぷぷ…ご、ごめんなさい…スイカとメロンって…ぷーっ!す、すいませんすいません!笑ったりして私ったら
ほんと…で、でも…ひーひひひ!すいません萃香さん!」
謝りつつ、自分の発言に大ウケするヴァンプ様。彼は今、自分がすごい勢いで地雷を踏み抜いている事に気づいて
いない。萃香はといえば、身体をぷるぷると震わせて今にも噴火寸前といった有様である。
誰もが血の海に倒れ込むヴァンプ様の無残な姿を思い浮かべたその時。
「ぎゃははははっははははっはははははははははっはっはははひぃぃーーーひひひひっひっひいひいいいい!」
当のメロン、もとい萃香は、腹を抱えて笑い転げた。
「い…い…<いぶきスイカ>だから<いぶきメロン>ってか…ぷ、ぷ…あはははは!ダメだぁ、可笑しすぎるぅ!
さてはあんた、私を笑い殺す気だね!?うわははははははは!は、腹がヤバい、捩れるぅ!スイカにメロンって…
これはイケる!今世紀一番の大ヒット!あははははは!よーし、後で勇儀や天子ちゃんにも教えてやろうっと!」
見てる方がドン引きするような勢いで大笑いする萃香。
どうやら震えていたのは怒っていたのではなく、バカ受けしていたからのようであった。
恐るべきは、鬼のギャグセンスである。
とにもかくにも、ヴァンプ様は生命の危機を乗り切ったのであった。めでたしめでたし。
「…まあ、こいつはほっとくとして。一回戦からヤバい相手に当たったって事だけは確かだぜ?」
「そうね。はるばる外の世界から参戦したっていうのに、気の毒に」
「大丈夫」
悲観的な意見を述べる魔理沙とアリスに対し、コタロウはにっこりと笑った。
「レッドさんだって、ムチャクチャ強いもの」
「―――そうだよね」
ヴァンプ様はコタロウを見つめ、しっかりと頷いた。
「相手が誰だって…レッドさんなら、きっと勝ってくれるよ!」
「私は心配など、これっぽっちもしていませんよ」
ジローは不安の欠片も見せず、牙を見せて不敵に言い放つ。
「我々が星熊勇儀の力を知らぬように、貴女方とてサンレッドの強さを知らない―――予告しましょう。彼はこの
闘いに必ずや勝利し、皆を驚かせると」
「ふーん…これも美しい友情ってやつかね」
意地悪く言いながらも、魔理沙はどこか優しげに顔を綻ばせた。
「ま、ここで知り合えたのも縁か。この試合、私もサンレッドを応援してやるよ」
「うん!バッチリ応援よろしくね、魔理沙ちゃん!」
コタロウがグイっと立てた親指に、魔理沙も笑って親指を立て返す。
それを横目に、アリスは呟いた。
「それにしても、長々と話し込んで大丈夫なの?試合はもう始まってるのに」
「そうよ!こんなバカ話してる間に見逃したなんてなったらいい笑い者だわ」
「アリス、そしてメディスン。それについては無問題ですよ」
やたら自信ありげに妖夢が言い放つ。
「漫画的時空の発生によりまして、我々がさっきまでだらだらとくっちゃべっていたのは現実時間にしてたったの
2〜3秒ということになっております」
「私達、すごい早口だったんだ…」
(※このセリフはメディスン・メランコリーのものですが、これも現実時間にして0.01秒の間に放たれました)


―――と、いうわけで。試合開始から数秒。
先に動いたのは、勇儀だ。
「ここは、先手必勝でいかせてもらうよ―――」
空に舞い上がり、抑えていた妖力を解き放つ。漏れ出した強大な気配は竜巻の如き圧力を伴い、勇儀を中心に
うねり、渦巻き、蹂躙する。この勢力圏内に迂闊に立ち入ろうものなら、それなりに力のある妖怪であっても瞬時
に灰と化すだろう。

39 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/06/22(火) 09:18:39 ID:VbT/ZKkj0
だがレッドはそれを、微動だにする事なく受け止めていた。荒れ狂う大蛇を思わせる力の奔流をかわすのではなく、
むしろ真正面から迎え撃ち、己の闘気で逆に抑え込む。
ひゅう、と勇儀は口を鳴らした。
「そう来ないとね。これくらいの脅しで顔色を変えるようなら、興醒めしてたところだ」
「ガタガタ言ってんじゃねー。さっさと来いよ」
「ははは、急くな急くな。勝負はこれから、これから―――」
勇儀は指先に妖力を込め、宙に円を描くようにくるくると回す。
その軌跡は、光を纏う無数の円輪と化す。

「怪輪―――<地獄の苦輪>」

数十、数百の光輪が一斉にサンレッド目掛けて飛来する。レッドは一瞬でその動きを読み切った。
最小限の動きでかわし、掻い潜り、避けられぬなら自らの拳で粉砕する。
「いい動きだね―――なら、これはどうだ?」
「っ!」
見れば、レッドの周囲を取り囲むように光輪が集まっていた。それは次々に融け合い、混ざり合い、一つの巨大な
円環となる。

「枷符―――<咎人の外さぬ枷>」

勇儀が右拳を強く握り締めると同時に、光の円環が収縮し、レッドを締め上げ、身動きを封じる。
『おっと、サンレッド油断したか!これでは動けないぞ!』
「ちっ…!好き勝手言ってんじゃねー!」
忌々しげに実況席を睨み付けるが、相手はその間も待ってはくれない。
「続けていくよ…今度はちょっと、派手にね」
動けないレッドに向けて、その両掌を向ける。それはまるで、標的を捉えた砲門だった。

「力業―――<大江山嵐>」

掌から放たれた、無限に等しい妖力弾がレッドに叩きこまれる。
大地が抉られ、巻き上がる土砂が、レッドの姿を覆い隠した。
『こ…これは終わったか!?星熊勇儀、試合開始早々の怒涛の攻撃だ!サンレッド、果たして無事か!?第一
試合からいきなり死者が出てしまうのかっ!?』
実況アナ・射命丸文の解説にも力が入る。だが、次の瞬間。
「―――っらぁぁぁぁぁぁぁっ!」
土砂の中から飛び出す、赤い影。レッドは全身の力を込めて己を縛る枷を引き千切り、鬼へと迫る。
「しゃあっ!」
強烈なヒジ打ちが、勇儀の顎を捉えた。さしもの鬼も衝撃を殺せず、地に落ちる。
間髪入れず、太陽の戦士が追撃する。
「ダララララァッ!」
目にも止まらぬ左のハイキックの三連撃。
「かはっ…」
「おおおおおっ!」
渾身の力を以て、鳩尾に右のショートアッパー。たまらず膝を折り、体を折り曲げる。
その隙に、既にサンレッドは勇儀の目の前から消えていた。
垂直にジャンプし、太陽闘気(コロナ)を燃え上がらせる。
「―――コロナアタック!」
火花を散らして猛る大火球を、大地目掛けて投げつける。
破壊をもたらす光が激しく明滅し、世界は真紅に染まり、轟音が闘技場を揺さぶった。
跡には、隕石が激突したかのようなクレーター。星熊勇儀はその中心で倒れ伏し、指一本動かない。
『サンレッド、防戦から一転して凄まじいまでの猛攻!最強妖怪の一角・星熊勇儀がまさかの大苦戦だぁ!勝負
はここで決まるの』

40 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/06/22(火) 09:19:48 ID:VbT/ZKkj0
かぁ!?と、言い切る事は出来なかった。倒れていた勇儀がバネ仕掛けの如く飛び起きたからだ。
首をコキコキと鳴らしながら、口に溜まった血をぺっと吐き出す。
全身に傷を負い、衣服は既に襤褸切れと化していたが、その覇気に満ちた横顔には一切の翳りがない。
「今のはちょっと、効いたよ。けど、これで終わりと思ってもらっちゃ困るね」
笑ってそう言ってのける。
その頑強さに観客達はどよめくが、闘技場に立つサンレッドには動揺は見えなかった。
「だろうな…アレで決まってたら、ガックリくるトコだ」
「そりゃあ杞憂というものさ」
肩を回しながら、美しき鬼は天体戦士の前に立つ。
瞬間、レッドの全身を貫くような悪寒が奔った。
「サンレッド…あんたは、確かに強い」
勇儀の全身から、暴風雨の如く鬼気が漏れ出していた。
それは永き時の中で熟成された、不動にして不滅の鬼気だ。
「久々だよ。あたしの全部を見せられる相手は…全力で闘える敵は―――!」
勇儀が放つ妖力が膨れ上がり、大地が揺れる。天には乱雲が渦巻き、雷鳴が轟く。
「とくと見よ…鬼族が四天王・星熊勇儀―――<怪力乱神を持つ程度の能力>を!」

<怪力乱神>

<怪>即ち、怪異にして超常たる存在。

<力>即ち、並ぶものなき剛力。

<乱>即ち、天地を乱すが如く。

<神>即ち、神妙不可思議なる全て。

総じて人智を、理解を、現実を超越せし概念。
古の賢人が語らざる物語。
その体現者にして語り部こそが星熊勇儀。
故に、彼女を知る者はこう謳う―――<語られる怪力乱神>!

獅子の鬣(たてがみ)の如く逆立つ金の髪。
大きく、長く伸びていく爪牙。
血のように紅く染まる瞳が、大きく見開かれた―――


「…ここまでだね」
観客席で、伊吹萃香はそう呟いた。
「勇儀がああなった以上、サンレッドにはもう、勝ち目はない」
「な、何を言ってるんです!まだ分かりませんよ!」
「そうだよ!レッドさんは負けないもん!」
「分かるさ」
ヴァンプとコタロウの抗議を遮り、短くそう答えた。

41 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/06/22(火) 09:23:59 ID:VbT/ZKkj0
「あいつの<怪力乱神を持つ程度の能力>ってのは、妖力を使って説明のつかない、不可思議な現象を起こす
能力―――今の勇儀の姿は、それを純粋に戦闘能力の強化につぎ込んだ状態だ」
そして、続けた。
「あいつがこの世に生まれ落ちて数百年―――誰が相手だろうと、あれを使った勇儀が力勝負で負けた事なんざ
一度もないんだよ」


変貌した星熊勇儀の姿を目にしたサンレッドが次に視界に捉えたのは、迫り来る拳だった。
「くっ…!」
両腕を上げてガードするが、何の意味もなかった。
身体そのものが力任せに吹き飛ばされ、世界がぐらりと回る。
音を置き去りにする速度で弾き出されたレッドに、勇儀は一瞬で追い付いた。

「力業―――<大江山颪(おろし)>!」

妖力を全身に纏わせ、一撃で山をも砕く拳を、雨霰と降らせる。
散々に打ち据えられたレッドは耐え切れずに苦鳴を洩らす。
その首元を右手で掴まれ、宙吊りにされた。
不意に、その手が離され―――

「四天王奥義―――」

右の一撃が、サンレッドの脇腹を砕いた。
身悶える暇も与えてくれず、左の拳が側頭部(テンプル)を痛打。
そして、最後の三撃目。
地球の核をブチ抜くような踏み込みから放たれたのは、天を貫くような右のアッパーカット。
レッドはたっぷり十秒もの間、発射されるロケットの気分を味わい―――
同じ時間をかけて、飛び降り自殺者の気分を味わい―――
大地に、叩き付けられた。

「―――<三歩必殺>!」

破壊的にして圧倒的。
太陽は今、恐るべき力を持つ鬼の前に、砕かれた―――
誰もがそう思い、ある者は星熊勇儀に歓声を送り、またある者は必死にサンレッドの名を呼んだ。
文は興奮を隠しきれない様子で叫ぶ。
『星熊勇儀、恐るべし!その真の力の前にサンレッド、手も足も出ず!今度こそ勝負ありか!?』
「…いや。まだだな」
呟き、戦況を見守る審判・映姫に目をやった。
「決着が付いたなら、あんたが黙って見てやしないさ―――なあ、閻魔様」
「その通りです。まだ、白黒はっきり付いてはいない」
幻想郷の審判全てを司る存在は、答えた。
「彼にはまだ、闘う意志がある―――白か黒かは、まだ分かりません」
「どっちでもねえ。赤だよ、俺は」
そう言って。
サンレッドは、立ち上がった。

42 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/06/22(火) 09:52:35 ID:VbT/ZKkj0
「一見かっこよさげですが、よく考えると何を言いたいのかよく分からないセリフですね」
「ほっとけよ。あんたと話してる暇はねー」
相当なダメージを被ったはずだが、その言葉に怯えの響きは一切ない。
絶望的なまでの力の差を見せつけられたにも関わらず―――まるで、心が折れていない。
眼光鋭く、星熊勇儀を睨み付けた。人差し指を、彼女に向けて力強く突き付ける。
「こちとら、あのバケモンを倒さなくちゃならねーんだからな」
『お…驚きました!サンレッド、まだやる気だ!しかし、彼我の力の差は歴然としている!何か策があるのか!?
それとも自棄になったのか!?彼の真意はどっちだ!』
「策なんざ、ねーよ」
レッドはそう吐き捨てる。
「へえ…けど、自棄になったって顔でもないね」
勇儀は、楽しげに口の端を吊り上げる。
「全力で、やるだけだ」
熱い風が、吹き抜ける。
「星熊勇儀―――俺はきっと、期待してた。テメーみたいな奴が現れるのを、待ってたんだ」
異常なまでの力を持て余す日々。
ヒーローとしてこれ以上なく恵まれた才能を持ちながら、それを発揮する機会もなかった。
強敵が欲しい―――
その思いは彼の中で、ずっと燻っていた。
そして、今。

「ありがとよ―――おかげでやっと…本気のブン殴り合いができるぜ!」

サンレッドの太陽闘気(コロナ)が、極限まで高まった。
より真紅(あか)く。
更に灼熱(あつ)く。
遥か頂点(たか)く。
何処までも強靭(つよ)く!
荒ぶる太陽神(ヒュペリオン)の名を受けて、今、紅き勇者は焔の戦神と化した!

「雄々しく激しく、正義が吼える―――!」

情熱が漲る。灼熱が溢れる。爆熱が荒ぶる。
日輪の煌きの中、サンレッドがその姿を変えていく。
両腕と両脚に、古代ギリシャ神殿の支柱を模した装甲。
胸部を覆う、頑強な鎧(アーマー)。
頭部には、無骨な兜を思わせるオーバーメットが装着された。
今まさに、天体戦士サンレッドがその真の力を解き放つ時が来たのだ!

「天体戦士サンレッド・剛力形態―――<ヒュペリオンフォーム>!」

43 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2010/06/22(火) 10:05:56 ID:h3rt7VvJ0
投下完了。前回は>>27より。
アクセス規制マジかんべん。そしてそれ以上に納得いかない今週のオリコンランキング。
ちくしょう…大人ってマジ汚ねえよ!
デイリー一位を三日連続で取ったのはサンホラなのに、土日でTOKIOが謎の界王拳で逆転一位って…!
なんだよあの疑惑の売り上げ!いくらキャンペーンしたからってあんなに伸びるわけねーだろうが!
くそっくそっくそっ!舐めてんのか人を!
…申し訳ありません。大人気ないと謗られようとも、これだけは本当に言いたかったもので。

まあそれはそうとSoundHorizon新曲「イドへ至る森へ至るイド」大好評発売中。
素晴らしいの一言です。

今回登場の「ヒュペリオンフォーム」原作では10巻で姿だけ出たフォームですが、作者ブログの裏設定では
「パワー重視のフォーム」とのことなので、勝手に剛力形態としました。


>>ふら〜りさん
通常レッドさんがついに負けました。うーん、作品間で強さの格差が酷すぎる気もします…。
作者の贔屓でキャラを優遇するって、ホントはやっちゃいけないんですが…うーん…。

>>30 復活、待っております。

>>32 まあ死人は出ないけど、闘技場は涙目です(笑)

>>ハガレン作者さん
では、漫喫に行った時などに読んでみます。

>>34 地上最強のチンピラパワー、レッドさんならば必ずや見せ付けてくれるはずです。

>>35 強さ的に上位に位置するのは間違いないかと…いや、レッドさんの周りにいる連中も弱かないんですよ!


44 :作者の都合により名無しです:2010/06/22(火) 11:29:51 ID:7qYqK/FR0
お疲れ様ですー
アクセス禁止はもうどうにもならない所まで来てますね。
おかげで2chに来る回数も減った・・

パワー馬鹿のレッドさん以上の怪力を誇るんですか、勇儀は。
東方知らないけど、勇次郎みたいな感じなのかな?
通常フォームで太刀打ちできないから変身したようですが
まだ一回戦なのに結構ぎりぎりですね、いきなり。
決勝までなんとか頑張ってほしいです。

45 :作者の都合により名無しです:2010/06/22(火) 17:19:11 ID:k5BPPz5L0
イドイドはママン無双で吹いた そしてマジ泣けた
次のアルバムがもう楽しみすぎる

勇儀VSサンレッドすげぇwww
初戦でこれって最終戦どうなるんだwww
ていうか、レッドさんのフォームって何種類あるんだっけ・・・



46 :作者の都合により名無しです:2010/06/22(火) 18:12:12 ID:FH+RfpE10
サンレッドはギャグ漫画だからある意味無敵
対して東方は萌えだけど、厨二設定がいっぱいある
互角だな


ところでサンホラって俺の大好きな
マーティフリードマンがゲストに参加したところだっけ?


47 :ふら〜り:2010/06/23(水) 19:44:47 ID:W+Dnlb980
>>サマサさん
清々しいまでにタネも仕掛けもない、パワーとスピードどころかスピードさえない、本っっ当に
パワーだけのブン殴り合い、でレッドを圧してしまいましたね。恐るべし、しかしまだ一回戦。
先が心配=楽しみです。んでこの試合、試合後はタイマンはったらダチじゃ〜になりそうな。

>>予告
軽いものですが準備を進めております。次来る時には何とか。

48 :作者の都合により名無しです:2010/06/25(金) 15:42:58 ID:NqE5d8aA0
サマサさんの以前の作品を読んでみたけど
文章力は格段に上がってるなあ

49 :SSライター募集:2010/06/25(金) 15:59:07 ID:lQdwOnzy0
「描きたいけどネタが無い」という人に朗報(?)です
大まかな脚本を箇条書きにします。
どんな結末になるかは貴方次第。
クロスオーバーものです。

案1 空条承太郎(第三部終了直後)VS豪鬼(SFIV時点)
案2 ケンシロウ(初期)VS勇次郎(範馬刃牙時点)

「我こそは!」という人、よろしければお願いします。




50 :作者の都合により名無しです:2010/06/26(土) 21:25:35 ID:qT5dcvjq0
しかし誰か復活してくれんものか
このままじゃ事実上サマサさんの単独スレになっちまうぞ

51 : ◆qUi3yTFCmP8i :2010/06/26(土) 21:50:30 ID:fvcyaiaBO
もうちょっと待ってて
長編は無理だが短編なら今月中になんとか…

52 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/06/27(日) 00:00:59 ID:uR7jKGUk0
〜一回戦第一試合・決着〜

天体戦士サンレッド・剛力形態<ヒュペリオンフォーム>。
それはサンレッドの太陽闘気(コロナ)が極限にまで達した時にのみ装着される戦闘形態の一つ。
古の太陽神の名を冠するこのフォームの主眼に置かれるのはただ一つ―――<パワー>。
純粋な肉弾戦に関しては究極形態すら凌駕するヒュペリオンフォームを纏ったサンレッドは、まさに真紅の破壊神
となりて、あらゆる敵を打ち砕くのだ!

「―――なんつー、どうでもいい解説は脇に置いて…」
サンレッドは、右足を大きく上げて。
「ラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」
勢いよく大地を、踏み付けた。
その瞬間、闘技場が―――否。
世界そのものが、震えた。

ZUUUUUUUUNッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!

『お、おおっ!?ゆ、揺れる揺れるっ!』
「あ、兄者ぁ!」
「コ、コタロウくん!イ、イスの下に隠れないと!」
「ええい、落ち着きなさい二人とも!」
「ま、まさかこの闘技場、耐震強度偽装してやがんのか!?」
「責任者出て来ーい!」
「ち、ちがぁうっ!このにとりが設計した闘技場はテポ○ンの直撃にも耐えうるはずなんだぁっ!」
そんな諸々のどよめきを余所に、レッドと勇儀は再び対峙する。
言葉は何もない。
二人とも、知っているのだ。
この闘いを語るのは、唯一つ―――互いの拳だけだということを。
「おおおおおおおおおっ!」
その咆哮は、絡みつく鎖から解き放たれた獣。
その躍動は、狭い鳥籠から解き放たれた翼。
放たれた豪熱の拳は、勇儀の身体を枯葉の如くに撥ね飛ばす。そのまま壁に激突するかに見えた瞬間に身を翻し、
壁を蹴って弾丸の如くレッドに迫る。
だが、レッドの姿は瞬時に消える。
「こっちだボケっ!」
虚を突かれた勇儀の背後に現れたレッドが、その背を蹴り飛ばす。
吹き飛ばされる勇儀を追って即座に跳躍し、追撃。
「甘いよっ!」
蹴り足を掴まれた。そのままミキサーの如き勢いでレッドの身体がブン回される。
「ぐっ…らぁぁっ!」
身を捩じらせ、足を無理矢理に引っぺがす。着地と同時に四肢の全てを駆使してのラッシュ。
勇儀もそれに応える。防御は微塵も考えない。一意専心、ただひたすらに拳を繰り出す。
天体戦士サンレッド。そして星熊勇儀。
二人の一挙手一投足ごとに、闘技場は激しく揺れ動いていた―――


「―――って、このままじゃ私達の方が危ないですよぉっ!」
コタロウと共にイスの下に潜り込んだヴァンプ様はいきなり泣き言である。
「確かに…これじゃ、闘技場がもたないぜ!」
「ああもう、にとりの奴!もっと頑丈に造りなさいよ!」

53 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/06/27(日) 00:03:53 ID:uR7jKGUk0
魔理沙達は魔法によって空を飛ぶ事が出来るので、揺れそのものは脅威ではない。
しかし頭上にパラパラと降り注ぐ瓦礫は、闘技場大崩壊という最悪の想像を喚起させるに余りある。
皆が一様に顔色を失くす中で、しかしジローと萃香だけは身じろぎする事なく闘いを見守っていた。
「冷静じゃないか、吸血鬼のボーヤ」
「…私には、彼の闘いを見届ける義務がありますからね。目を逸らすわけにはいかない」
「へ、カッコつけちゃってさ…しかして」
萃香は、サンレッドを見つめていた。
その瞳の奥には隠しきれぬ戦慄と驚嘆が浮かんでいる。
「何者なんだ、あいつは…勇儀が殴り合いであそこまで苦戦するなんて、今までなかったぞ」
「私とて初めて見ますよ―――彼の、あんな姿は」
ジローの額を、冷たい汗が滴り落ちる。
眼前で繰り広げられる闘いは、彼の想像を遥かに超えていた。
「サンレッドの戦闘形態…話だけは聞いた事がありましたが、まさかこれほどとは…」

ジローとて、伊達に吸血鬼として百年を生きたわけではない。
それこそ怪物としか形容できない存在ならば、いくらでも見てきた―――
だが、彼をしたところで今のサンレッドに匹敵する程の力の持ち主となると、そうそう思い浮かばない。
<黒蛇>の異名を取る魔女がその魔力・知略・策謀の全てを駆使したとしても、もはやレッドには届くまい。
今は亡き<聖騎士>や世界の敵と成り果てた<舞踏戦士>ですらも、己の肉体一つでここまでの闘いは出来ない
だろう。
月下最凶の狂戦士<緋眼の虐殺者>だろうと、この闘争に割って入れるだろうか?
吸血鬼の原初にして原点なる<真祖混沌>の直系―――<東の龍王>や<北の黒姫>であっても、純粋に戦闘
能力というだけならば、レッドの後塵を拝する事になるやもしれない。
或いは<鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼>ハートアンダーブレードなら?
もしくはどんな二つ名を付けた所で形容など到底不可能な、ただただ驚異と畏敬を以てその名を語られる者―――
究極にして至高にして無比なる吸血鬼・アーカードは?
―――その誰であっても、レッドに勝てるかと問えば、即答はできない。

「間違いなく、言い切れますよ―――彼は…サンレッドは、私が知る限り最強の男だ」
「だったら…勇儀だって私の知る限り、最強の女さ」
萃香の声に、不思議と揺らぎはない。
ジローがレッドを信じるように、彼女もまた、勇儀を信じている。
親友(とも)の力を、誰よりも信じているのだ。
「あいつが…あの勇儀が、負けるかよ…!」


―――生まれた時から、あたしは力が強かった。
まだほんの小さな子供の頃から、既にあたしはそこいらの大人の鬼に負けないくらい強かった。
皆、褒めてくれた。
すごいって言ってくれた。
嬉しかった。誇らしかった。
だから、もっともっと強くなって、もっともっと褒めてもらいたかった。
そんなあたしが大人になる頃には―――誰一人、あたしに敵わなくなっていた。
ケンカなら勝ったり負けたりの萃香が相手でも、腕相撲ならあたしは一度も負けた事はない。
天下無双の怪力の持ち主<力の勇儀>。
いつしかあたしは、そう呼ばれるようになった。
相変わらず、皆はあたしを称えてくれる。
星熊勇儀は鬼の誇りだと、誰もが口々に語った。

54 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/06/27(日) 00:04:50 ID:uR7jKGUk0
嬉しかった。誇らしかった。
だけど―――少しだけ、寂しかった。
もう誰も―――あたしと真っ向から力勝負してくれる奴は、いなくなったからだ。
真正面から、拳と拳だけで語るようなケンカは、あたしとは出来なくなったからだ。
<力>という一面だけであっても頂点に登り詰めた気分は、悪いものじゃなかったけれど―――
だけど、退屈で。
少しだけ、寂しかった。

だけど―――今は退屈も寂しさも、何も感じない。
絶えて久しいはずの燃えるような高揚感が、あたしの全身全霊を支配している。
拳が目の前だ。
己の存在、その全てを乗せるような重い拳だ。
あたしもまた、己の全てを乗せて拳を振るう。
拳骨二つがぶつかった。知らない間に身体に埋め込まれた爆弾が一斉に起爆したような激しい衝撃が襲う。
けれど、痛みよりも強く感じるものがあった。
歓喜。
そして、感謝だ。
『大地が揺らぐ!天が震える!二人は今まさに闘う震源地と化したぁ〜〜〜〜っ!この人力大震災を生き残るのは
星熊勇儀か!?それともサンレッドか!?』
実況が何か言ってるけど、上手く聴き取れない。
そんな事より、今はこの闘いだ。
サンレッド―――あたしはあんたを、心の底から尊敬する。
そしてあんたに感謝する。
よくぞここまで―――拳一つで、あたしに付き合ってくれた。
馬鹿正直に、力と力だけで勝負をしてくれた。
真正面から、ぶつかってくれた―――


「でもさ…それはそうとして、勝ちを譲るつもりもないよ」
勇儀は両の脚でしっかりと地を踏み締め、両の拳を組み、突き出す。
組み合わさった拳に、全妖力を集中させていく。
「譲ってくれなんて言ってねーよ。ブン取ってやらあ」
レッドは左足を前に半身に構え、弓矢を引き絞るように右手を引く。
その右拳を中心に、太陽闘気を熱く、激しく燃焼させる。
地鳴りが止んだ。
嵐の前の、微かな静寂のように。
『ふ…二人の動きが止まりました!あの構えから、一体どんな技が繰り出されるのか!?二人の、そして闘技場の
運命や如何に!』
―――そして。
両雄、同時に動いた。
全身をバネに変えて疾駆し、己の全てを凝縮させて組み合わせた両拳を、真っ直ぐに撃ち込んだ。

「超力業―――<大江山崩(くずし)>!」

対して、サンレッドは左足を更に大きく踏み込ませて。
足の指先から足首、膝、股関節、腰、肩、肘、手首までの全細胞を総動員し。
渾身の力と闘気を込めた右拳を、勇儀の両拳に叩き付けた。

「太陽神拳―――<ヒュペリオン・クラッシャー>!」

どういう具合か、激突の瞬間には、予想されていたような地震は起きなかった。
ただ、輝いた。

55 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/06/27(日) 00:06:50 ID:uR7jKGUk0
二つの超級闘気のぶつかり合いは、日の落ちた世界を一瞬、太陽のように眩く煌かせた。
その光の中で。
「…っくっ…!」
勇儀の両拳が弾き返され、態勢を崩す―――
その時既に、サンレッドは追撃の準備を終えていた。
今度は先程と、完全に真逆の体勢―――
右足を前に半身に構え、弓矢を引き絞るように左手を引く。
「いくぜ、もう一発―――!」
白熱の閃光が、再び世界を照らした―――

―――光が消えた時、そこには勝者と敗者がいた。
爆心地と化した闘技場中央。
敗者は勝者の肩にもたれかかり、どこか満足げに息をついた。
「あー…負けちった。カッコわりー」
「…んなこたーねーよ」

「あんた、最高にカッコいいぜ―――星熊勇儀」

「はは…勝った奴が負けた奴を褒めるんじゃないよ。余計に惨めになるだろうが」
「何だよ、じゃあ思いっきり心を抉る悪口かましたろか、コラ」
「うわ、それはそれでやだな…」
ははは、と勇儀は、爽やかに笑ってのける。
「まあ…次からも頑張れよ、サンレッド。幻想郷は…あたし以外も、強い奴ばっかりだからさ…」
ぐらり―――と。その肢体がよろめいたかと思うと、勇儀は滑り落ちるように大地に倒れ込んだ。
(…ごめん、パルスィ。せっかく御守り作ってくれたのに…ダメだったわ…)
それは、誰にも聞こえる事のない、小さな独り言だった。
審判である四季映姫・ヤマザナドゥが即座に駆け寄り、そして、その手を高々と掲げた。

「白黒はっきり付きました―――勝者・サンレッド!!!」

大歓声が巻き起こった。
サンレッドの名を呼ぶ者がいた。
星熊勇儀を称える者もいた。
勝者にも敗者にも分け隔てなく、偉大な二人の戦士に対して、ただ心からの声援と拍手が送られたのだった。

―――天体戦士サンレッド・幻想郷最大トーナメント一回戦突破!

56 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2010/06/27(日) 00:19:40 ID:uR7jKGUk0
投下完了。前回は>>42より。
レッドさん、堂々の二回戦進出。まあ、負けたら話が終わっちゃいますしw
ツイッターやりだしてから、ここに書くネタがなくなって困る…。

>>44 勇儀姐さんも基本パワーキャラなんで。パワーVSパワー、上手く書けたかな?
>>45 第七の地平線、マジ楽しみです。最終戦は、レッドさんの地球一周パンチが炸裂します(多分)
>>46 ギャグVS厨二病なら…うーん、どっちが強いんだろ?興味があるならサンホラも一度お試しあれ。

>>ふら〜りさん
>>タイマンはったらダチじゃ〜
流石に分かってらっしゃるw新作の準備もなされているようで、楽しみにしてます!

>>48 昔の作品は…ははは、正直、今読み返すと赤面ものです(苦笑)
>>50 <サマサがSSを書くスレ>…うん、ないな。

>>銀杏丸さん
新作、お待ちしてます!

57 :作者の都合により名無しです:2010/06/27(日) 00:39:58 ID:trSt63kC0
噂をすればサマサさん乙!
やべぇ・・・・鬼の生き様マジかっこいい
「俺はずっとこんな風に俺を殴ってくれる奴を待ってたんだ!」ってことですね分かります

そして
>どういう具合か、激突の瞬間には、予想されていたような地震は起きなかった。
>ただ、輝いた。
ここでイチ○ーのレーザービームを想像してしまったのは俺だけでいい



58 :作者の都合により名無しです:2010/06/27(日) 03:32:13 ID:nB6Hi6f+0
纏めサイトに元ネタ別に見られるページが有ればいいのに

59 :作者の都合により名無しです:2010/06/27(日) 22:32:22 ID:qkBEw2Zi0
お疲れ様です。
レッドさん一回戦突破おめでとう。
決勝までは残ってほしいな。
優勝はしなくてもいいけど。

レッドさんみたいなタイプは
特殊系というか、ハメ技タイプに弱そう。
頭悪いし。
東方知らないけど、そういう技使いいるかな?

60 :作者の都合により名無しです:2010/06/29(火) 15:25:52 ID:sq8+BN3g0
まっすぐな力戦の熱闘でしたな
熱い鬼2匹を見られて満足です。
ところでサンレッドってフォームあといくつあるんだ?
ファイアバードフォームとプロミネンスフォームくらいしか
知らなかった。


しかし1ヶ月のうち書き込める日が2日くらいしかない・・
感想書くためにネカフェに行くってのは辛いなあ

61 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/06/30(水) 17:40:44 ID:D26PWt6j0
最大トーナメントが終わって、加藤清澄は悩んでいた。
自分は、独歩以外なら誰であろうと負ける気はしなかった。刃牙も克巳もブッ倒してやる
つもりだった。
が、結果はどうだ。克巳には格の差を見せ付けられ、その克巳も烈に完敗、その烈は
刃牙に敗北。自分はと言うと、一回戦負け未満と言っていい惨めな負けっぷり。
聞くところによると、ミ昇も似たような悩みを抱えたらしい。で、そんな自分に
喝を入れるべく、まだ見ぬ達人に試合を申し込んだという。そしてその結果、
見事に立ち直って発奮し、今の自分は烈より強いと息巻いているとか。

ttp://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/733.html

「……」
光成の屋敷。加藤は、自分も光成から試合相手を紹介してもらおうと思ってやってきた。
そしてとりあえず、ミ昇と試合をしたという柔術家の資料を見せてもらったら、絶句した。
「……ミ昇のヤロウ……」
「羨ましい、とか思っておるか?」
加藤と向かい合っている光成は、資料を覗き込むようにしている加藤を、ニヤニヤして
見ている。
「刃牙から聞いたが、本物の彼女はその資料以上の人物だったとか。顔よしスタイルよし
物腰丁寧、見ての通りのメイドさん、しかもコスプレではなく本職」
「……(ごくり)」
「お前さんも、そんな人を紹介して欲しいというのか? まあ女性格闘家の資料
というのもなくはないが、流石にそう多くはないぞ。で、好みのタイプは?」
「そ、そうだな。やっぱり、ナヨナヨした奴よりは気が強い女がいいな。こう、キリッとした
顔立ちで目元鋭く、それでいて時々女の子らしさも見せ……って、ちがああぁぁうっ!」
加藤は、柔術家の資料を畳に叩き付けて吼えた。
「なんでそんな話になってんだ! 大体、アンタは本来そういう人じゃねえだろ!」
「いや、今、その資料を見てたお前さんの表情から察してじゃな。ワシとて、年がら年中
格闘家のことばかり考えておるわけではないから」
「だからって、他人のお見合いの仲立ちが最高の趣味だ、と断言するオバハンみたいな
ことホザいてんじゃねえっ!」
「さてさて。え〜、キリッとした顔立ちの、と」

62 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/06/30(水) 17:42:30 ID:D26PWt6j0
「人の話を聞けええええぇぇぇぇ! ……よーしわかった、だったら女を紹介してもらおう!
但し、『刃牙みたいな女』だ! そんなのがいたら紹介しろ! してみやがれ!」
どーだムリだろへへんっ、と加藤が胸を張ったのも束の間、光成は分厚い資料ファイルの
中から、ひと束を選んで取り出した。
「あったあった。お前さんの注文通りの女の子。キリッとした顔立ちで目元鋭く、時々
女の子らしさを見せる」
「ジジイっ! だからそれは、」
「そしてこの子は、刃牙の得意技を刃牙以上の強さで使える。というか刃牙なんぞ
比較にならん。遥かに越えておる」
加藤の目が、点になった。
「……え?」
「無論、この技に関しては刃牙以下である独歩や克巳など論外じゃな。
二人が十年修行しても、この子の足元にも及ぶまい」
資料を見ながらスラスラと語る光成の言葉を、加藤は信じ難い思いで耳に入れていた。
「な、なあ。それ、料理の腕前とかそういうオチじゃねえだろうな?」
「もちろん。この技をもって、この子はとてつもない強さを振るっておる」
「刃牙以上の、か」
「遥かに越える、じゃ。それでもこの子は宿敵に勝てんということで、
現在は山にこもって修行しておるとか」
刃牙よりも強いのに。宿敵には勝てないから。山にこもって修行中?
……それだ!
「ジジイ! いや、あの、ご老公! その子を紹介してくれ! できれば
試合をしたい! おっと、今、その子についてこれ以上の詳しい説明はしないでくれ。
事前知識無し、情報のハンデなしでぶつかってみたい」
「連絡は取ってやってもいいが、お前さん理解しておるのか? 刃牙よりも、
克巳よりも独歩よりも強いんじゃぞ? まあ、総合力では逆転するかもしれんが、
この子の得意技に限って言えば、その三人が束になっても勝てん」
「そういう強さの、女の子なんだろ?」
加藤がニヤリと笑みを浮かべた。
刃牙よりも強い相手。そんな奴と試合をする。考えただけで、ほら、肩が腕が
足が震える。怖い。だが怖いだけではない。これは、武者震いも含めての震えだ。

63 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/06/30(水) 17:43:41 ID:D26PWt6j0
「ヘタなプロレスラーなんざ腕相撲で負かせる刃牙。それを超える強さの女の子だ。
つまり腕力の差を完全に制することのできる、とんでもない技の使い手に違いない。
だったら勝てずとも、この身で味わうだけで、きっと何か掴めるさ」
「その結果、大ケガをしてもか」
「それぐらいの技でねえと、学ぶ価値もねえよ」
「ふむ、なるほど。それは道理じゃな」
光成がようやく、真面目な顔つきになった。
「よかろう、先方にはワシから連絡を入れておく。技を教わるのではなく、
試合の申し込みでいいんじゃな?」
「おうよ!」

数日後、とある山の奥深く。
加藤は、ひいひい言いながら暑い山道を登っていた。
だがその胸の中は、照りつける太陽以上に熱くなっている。
『待ってろよぉ〜!』
光成は件の女の子に連絡をしたのだが、試合の申し込みも技の教授も
断られたのだ。自分の修行が忙しいからと。そして加藤のことを説明したところ、
そんな相手では練習相手にすらならないから時間のムダ、と言い切られたとか。
そこまで言われて平気でいられる加藤ではない。だったらケンカを売りに行ってやる、
いや、そいつが俺にケンカを売ったんだ! ということで今、
山道を登っているわけである。
「ふうっ、だいぶ奥まで来たな。確かこの当たりのはずだが……んっ?」
木々の途切れた岩場に出てきた。正面には高いガケがあって、辺りには巨岩が
ゴロゴロしているも、それなりに平地もある。修行の場としてはうってつけだ。
が、異様だ。あっちこっちに転がっている岩が、どう考えても自然にこうはならない
だろうという砕け散り方をしている。
見上げれば、ガケの中腹が不自然に抉れていたりする。足元を見れば、
ところどころ溝のようなものが、これまた不自然に地面に刻まれている。
「ち、ちょっと待て。まさかこれ、修行の跡なのか?」
いくらなんでも、人間が素手でできることではない。
だが、光成の情報網に入っている以上、武器や兵器を使うはずはない。
ということは、素手でこんなことを? どんなバケモノだ? 一体どんな技だ?

64 :ふら〜り ◆rXl0RuLrAVdZ :2010/06/30(水) 17:45:16 ID:D26PWt6j0
というわけで、いやぁ清々しいまでに前作と同じ展開ですなわははは。……ご容赦を。
今回のヒロインも、例によってマイナー作品から引っ張ってきてます。いや、意図的に
狙ってるわけではないんですよ決して。たまたま私が好きになる作品はそういうのが多い
だけでして。ほんとに。なぜか。こうなるんです。

>>サマサさん
バトルの内容も、両者の胸中・性格も、バキではなくDBって感じで迫力&爽快でした! で、
>「間違いなく、言い切れますよ―――彼は…サンレッドは、私が知る限り最強の男だ」
>「だったら…勇儀だって私の知る限り、最強の女さ」
ここが何か、すごく気持ちいい。KOF94で龍虎チームVS餓狼チームを観戦してるユリと舞
のような。各々が知る最強者の、各々が見たことない苦戦。独特の緊迫感、そして連帯感。

>>60
規制のことでしたら、私も少し前から使い始めてますこれ↓
ttp://www.geocities.jp/shirangana_boushi/tips/p2/p2.html
で回避できますよ〜。少しだけお金はかかりますが、ネカフェ代を払わず
家で好きなだけ読み書きできる、と思えば安いものです。

65 :作者の都合により名無しです:2010/06/30(水) 22:48:57 ID:uozQ4lnh0
おおふらーりさん新作乙!
バキスレだもの、バキ物が無いのはおかしいですよね。
加藤の活躍楽しみです。
ただ、前作も確か結構早く終わったようなw
出来れば2スレくらい続いてほしいな。

66 :作者の都合により名無しです:2010/07/01(木) 14:31:08 ID:5DvLD5qQ0
ふら〜りさんが連載してくれると
バキスレは大丈夫な気がしてくるから不思議

ふら〜りさんの書く加藤はどことなくかわいらしいね

67 :作者の都合により名無しです:2010/07/04(日) 19:17:27 ID:A9WC3d1n0
やっと規制が解けたが、またすぐ規制なんだろうなあ

ふら〜りさん新作お疲れです。
前作実は読んでないですけど、一度前のも読んでみます
原作ではお亡くなりになった加藤の活躍を楽しみにしてます。

>規制のことでしたら、私も少し前から使い始めてますこれ
正直、そこまでして2ちゃんやる気はないなあ・・
掲示板使うのに金を使うのはおかしい気がします



68 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/07/06(火) 00:05:27 ID:rIAVSdCa0
>>63
恐る恐る、砕けた岩や地面の溝を加藤が調べていると、
「誰?」
女の子の声がした。
顔を上げると前方に、予想外の……いや、ある意味バッチリ予想通りの女の子がいた。
つやつやした綺麗な髪を、可愛らしくツインテールにしている。それでも腰の辺りまで
届いている辺り、ほどいた時の長さはかなりのもののようだ。
キリッとした顔立ちに、いかにも意志の強そうな目つき。怒っていなくても、素の顔が
それっぽく見える、鋭くつり上がった目だ。可愛いというより、凛々しい。
服装は黒いミニのワンピースに、同じく黒いニーソックス。上も下も黒いので、いわゆる
絶対領域(ミニスカートの裾とニーソックスの間に見える太もも)の肌の白さが、
眩しく艶かしい。
と、まあこの辺りは別にいい。意外過ぎるのは年齢だ。
どう見てもこの子、十歳程度である。絶対に小学生だ。
「もしかして、徳川さんって人から連絡のあった、加藤さん?」
「お、おう」
ここで圧されるわけにはいかない。加藤は動揺を押さえ込んで、堂々とした態度を取った。
女の子は、ふうっと小さくため息をつく。
「わたしと戦いたいとか言ってるそうだけど、わざわざここまで来たってことは、
断ってもムリみたいね?」
「ああ、その通りだ。何だか随分と、俺のことをナメてくれてるみたいだからな。
その認識を、とりあえず改めてもらおうと思ってよ」
「はいはい解りました。だったら、相手してあげるわよ。で、さっさと山を降りて。
わたしは自分の修行で忙しいの」
言いながら女の子は、自分の長いツインテールを手櫛で梳いた。
「じゃ、こうしましょ。この髪でもいいし、服でもいいし、手足でも頭でもどこでもいい。
加藤さんが、指一本でも掠ったら、わたしの負けでいいわ」
「……はあ?」
思わず、ぽかぁんとマヌケに口を開けて。
たっぷり五秒ほど経ってから、加藤は叫んだ。

69 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/07/06(火) 00:06:08 ID:rIAVSdCa0
「ふ、ふ、ふ、ふ、ふざけんじゃねえっっ! バカにするのもいい加減にしろっ!」
叫びながら、足元にあった石に拳を振り下ろす。小気味いい音がして、石は
粉々に砕け散った。
手についた石の粉を、ふっと吹き散らして加藤は言う。
「ま、しかし、確かにな。こんな威力の拳を、女の子に叩き込むなんて俺にはできねぇ。
その可愛い顔に傷でもつけて、泣かれたりしたら面倒だ。という理由で、そのルールに
乗ってやるよ」
周りにある、砕け散った岩や地面の溝がこの子の仕業なら、こんな石を砕いて見せても、
鼻で笑われるだけだろう。だが、それは攻撃力比較だけの話だ。
いくらなんでも、体や顔が鋼鉄でできているわけではあるまい。この子がどんな技の
使い手でも、女の子の体を殴ったり蹴ったりというのは、流石に非常識だ。
と、加藤はそう考えたのだが。当の女の子は、予想通り鼻で笑った。
「ふん。もしかして、私のことを気遣ってるの? たとえあなたの攻撃力が、今見せた
石砕きの百倍あったとしても……」
女の子は、ワンピースの胸元にある小さなポケットから眼帯を取り出した。
何の装飾もない、ただ真っ黒でまん丸なそれを、左目にかける。
「当たらなければ、どうということはない」
その言葉と眼帯で、何かのスイッチが入ったのか。女の子の気迫が、一気に巨大化した。
これは、来る。加藤は腰を落として、構えをとった。
その加藤を見据えて女の子も、腰を深く落とす。と、

グオオオオオオオオォォォォ!

低く重い機械音がして、女の子の足元の砂が風に舞い散った。だが風なんか吹いていない。
足の裏(靴底)から、風が吹き出ている。そうとしか思えない。しかもその風は、
女の子の体を数センチ持ち上げて浮かせている。
加藤が目を見張り、驚きの声を上げようとした時にはもう、女の子は突進してきた。
足は全く動かさず、走っても歩いてもいない。まるで氷の上を滑るように、いや、
アイススケートのような動きもしていない。本当に全く全然、体は動いていないのだ。
両拳を握って、両膝を曲げたその姿勢のまま、足の裏からの風だけで浮かんで、
向かってくる。例えるならリニアモーターカーか、ホバークラフトのような。

70 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/07/06(火) 00:06:53 ID:rIAVSdCa0
『ん? なんだ、これってどこかで見たような……』
何かを思い出しかけた加藤に、女の子が肉薄した。右手を肩越しに背中に回して、
まるで背負った刀を抜くような、忍者のような動きをする。
そして抜いて、その刀で加藤を斬りにくる。もちろんその手には何も持っていないのだが、
「……何か、ヤバい!」
加藤は身をかわし、大きく間合いを取った。女の子の、目に見えない刀は空振りさせられて
地面に叩きつけられる。くどいようだが女の子の手には何もない、のだが。
ジュジュジュジュッ! と音がして地面が抉れた。竹刀の三倍ぐらいは太さのある棒で
抉ったように。それも、単純な力で抉ったのではない。今の音と、地面から立ち上る
湯気から察するに、熱だ。高温で抉ったのである。
何も持っていないのに。
「な、な、なんだああああぁぁ?!」
「隙ありっ!」
女の子は今度は、左手を前にして右手は顔の横、両手で何か長い棒を支え持つ
ようなポーズを取った。右手の人差し指の曲がり具合は、引き金にかけてるような
感じだ。するとライフル、いやバズーカか?
その加藤の予想は大当たりだった。今度は、

ドウッ!

重々しい音がして、見えないバズーカから砲弾が撃ち放たれた。かめはめ波とか波動拳とか
ではない、実体をもった砲弾だ。ご丁寧に、見えない砲口から煙まで上がっている。
あまりにも予想外だったその一撃を加藤はかわせず、直撃、爆発!
「うぐわああああぁぁぁぁっ!」
どこぞの黒い羽と黒い十字架を持つ空手家ではないので、加藤にはバズーカの砲弾を
素手で受け止めるなんて芸当は無理。咄嗟にガードはしたものの、あっけなく弾かれて、
爆炎で焼かれながら吹っ飛ばされた。
高く浮いてから岩場に叩き付けられ、慌てて転がって火を消して、息を荒げて立ち上がる。
「ふうん、まだ立てるの。言うだけあってタフね。けど、これで解ったでしょ?」
常人離れどころか、人間離れした技(?)で加藤をブッ飛ばした女の子は、ホバー上昇を
解いて地面に降り立ち、冷ややかに言った。

71 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/07/06(火) 00:07:38 ID:rIAVSdCa0
「わたしのこの技、この程度では、まだ『アイツ』に勝てないの。だからもっともっと、私は強く
ならなきゃいけない。その為に今、修行してるのよ。そんな私にとって普通の格闘家、
そこいらの柔道家だの空手家だの如きでは、練習相手にもならないってこと」
「……なる、ほどな……刃牙の得意技を、刃牙を遥かに越えて使えるってのは、
こういうことか……」
コゲコゲの体で、加藤がよろめきながら不敵に笑う。
「あいつの、リアルシャドーの上位版……妄想の現実化を、他人に対しての
直接攻撃に使える、ってか……ヘッ、オタクの中でもかなり強力な一派だとは聞いてたが、
噂以上だな。えぇおい?」
ぴくっ、と女の子の眉が揺れ動く。
「ホバー走行、背中に背負ったヒート・サーベル、360ミリ砲弾を撃ち出すジャイアント・バズ。
その眼帯はモノアイのつもりか。そうだろ? 俺もガキの頃見てたぜ」
「それは少し嬉しいけど、驚きはしないわよ。加藤さんぐらいの年代の男の人なら、
誰でも少しは知ってるわよね」
「ああ。俺もプラモ作ったりしたもんだ。お前の『それ』も作ったぜ。重MS、ドムをな」
加藤が口にしたその名を聞いて、女の子は相変わらず目つきだけは鋭いまま、
口元には微笑を浮かべた。
「そう、わたしはドム。そこまで解ってくれてるなら、もう説明の必要はないと思うけど」
「そうだな。生身の人間が、ドム相手にケンカ売るなんて正気じゃねえ。
勝ち目なんかあるわけねぇ。だが、」
加藤は、拳を突き出して言い放った。
「神心会空手は、敵に後ろを見せねえんだよ! たとえ相手がバケモノでも、猛獣でも、
そして黒い三連星でもだ!」
もう加藤は、本来の目的をキレイさっぱり忘れ去っていた。この以上この子と戦った
ところで、こんなインチキ技(そもそも技と言えるのか?)を学び取れるわけがない。
が、そんなものはどうでもいい。今、この子に神心会空手が見下されているのだ。
それはすなわち敬愛する師・愚地独歩が、そして加藤自身が見下されたのと同じこと。
ならば、一歩も退くわけにはいかない。
「……そう」
女の子が、口元の笑みを消した。

72 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/07/06(火) 00:08:19 ID:rIAVSdCa0
「私も、私の宿敵に勝つ為には、あなた程度の相手にてこずっていられないからね。
そっちがその気なら、こっちも本気で相手してあげるわ」
「望むところだ!」
重い音がして、再び女の子の体が数センチ浮いた。そして、滑るように向かってくる。
これは紛れもなく、『機動戦士ガンダム』の中に出てくる、ドムのホバー走行だ。
ここからヒート・サーベルとジャイアント・バズが来る。それに空手で対抗する……いや、
空手で勝つ!
コオオオオォォッと息吹を入れて気合を高めて、加藤は女の子を迎え撃つ。
「神心会空手三段、加藤清澄の実力を見せてやるぜっ!」
気迫充分の加藤に対し、臆した様子は微塵もなく、女の子も闘志を高める。
「兄さんの為に……兄さんの大好きな『ガンダム』の為に!
木槍保 留二亜(きやりほ るにあ)、いっきまーす!」

73 :ふら〜り ◆rXl0RuLrAVdZ :2010/07/06(火) 00:14:24 ID:rIAVSdCa0
むう、私が続いてしまったか……なんの、これはきっと一時のこと!

『妹ガンダム』から、主人公を遥か置き去りにして一番人気の留二亜ちぁんです。
ドムな彼女が「いっきまーす」なのについては、後々触れますのでお待ちあれ。
ちなみにこの子、原作では一人称「わたし」以外ほぼ完璧に男言葉なんですけど、
なにしろ「同年代の女の子かつ打倒すべき敵」以外とはロクに会話してません。
なので、特に敵意のない大人の男性に対してもそんな言葉遣いなのか? と
悩んでこのような形になりました。

……そういえば、前に斗貴子を描いたときにも同じようなことで悩んだ私。
こういう子は好きなんですけど、描くのは難しいです。

>>65
すみません、前と同じくらいです……長編は、出だしを少々だけ書いて
行き詰ってるのはあるんですが……面目ない。

74 :作者の都合により名無しです:2010/07/06(火) 01:13:46 ID:ieQFXaqlO
ガンダムエースのアレか!
凄いトコ突いてきましたね
ジャイアントバズといえばドムよりジョニー・ライデンの06R2が印象深いです

75 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/07/06(火) 08:47:06 ID:f6yOHlty0
〜第一試合終了、そして〜

一回戦第一試合―――勝者・サンレッド。

『幻想郷最大トーナメント、第一試合から波乱の幕開け!天体戦士サンレッドが、幻想郷一の怪力を誇る星熊勇儀
を真っ向から撃ち破りましたぁっ!溝ノ口発の真っ赤なチンピラヒーローが、衝撃の幻想郷デビューを我々に見せ
付けた!この男は何処まで往くのか!?これから目が離せません!』
射命丸文の絶叫と化した実況と鳴り止まぬ歓声の中、彼は地に伏したままの勇儀に手を差し伸べた。
「立ちな。手を貸してやるよ」
「…心配すんな」
よ、っと声を上げて、勇儀が立ち上がる。
「おいおい、無理すんなよ?」
「なに。そこらの奴とは鍛え方が違うさ…ほら。勝ったんだから、観客に愛想良くしなよ」
勇儀はレッドの右腕を掴み、高々と持ち上げさせる。
歓声が、一際大きくなった。
「…ちっ。こういうガラじゃねーんだけどなー」
そう言いつつ、満更でもない様子で左手も高々と突き上げ、観客に向けて大きく手を振った。
「レッドさーん!カッコよかったよーっ!」
「感動しましたぁ!でも忘れないで下さいよ!あなたを抹殺するのは我々フロシャイムですからねーっ!」
―――とりわけ大声を張り上げるこの二人が誰なのか、言うまでもないだろう。
「…あのバカ共。後で殴ってやる…」
「ははは、照れちゃって。あんたはツンデレさんだなあ。ツンデレッドめ」
「そ、そんなんじゃねーよ!あいつらなんか、うっとーしいだけだからな!」
「まあ、そういう事にしといてやるか…ほら」
開けっ広げな仕草で、勇儀は握手を求めた。レッドはというと、胡乱な目である。
「そんなに嫌うなよ。もう握り砕こうとなんてしないさ」
「…へっ。どうだかな」
悪態をつきながらも、レッドはその手を握り返す。
『見てください、何という美しい光景でしょう!死闘を終えて、互いが健闘を称え合う!今や二人は強敵と書いて
<とも>と呼ぶ!さあ皆さん!彼等にもう一度、盛大な拍手を!』
文の音頭取りで、嵐のような拍手が巻き起こる。
二人はそれに向けて手を振りながら、ゆっくりと闘技場を後にしていくのだった。


―――拍手と歓声を背に退場し、通路に出た瞬間、勇儀は糸が切れたようにその場に膝から崩れ落ちた。
そのまま大の字に寝転がり、ぜーぜーと荒く息をつく。
「ったく。やっぱ無理してやがったのか」
「へへ…こんなみっともない姿、知り合い達にはちょっと見せたくないからね…」
「見栄っ張りな奴だな、テメーも」
しょーがねーな、とボヤきながらもレッドは勇儀を助け起こし、鍛え上げた肢体を背に負う。

76 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/07/06(火) 08:50:46 ID:f6yOHlty0
「俺もちょっくら殴られたんで、一応医務室に行くからよ。ついでに連れてってやらあ」
「はっ。親切な振りして、あたしのおっぱいの感触を背中で楽しむのが目的なんじゃないのかい?」
「なっ…んなわけあるか!俺のたまにしか見せない善意を何だと思ってやがる!?」
「何、仕方ないさ。あたしもこれで乳にはちょいと自信がある。だからさっきのケンカの最中、あんたがパンチを撃つ
そのついでにあたしのおっぱいを触りまくっていた事実も、むしろ誇らしいというものさ」
「ありゃ不可効力だろうが!」
「エロいのは男の罪…それを許すのが女の器」
「じゃかましいわ!その口閉じねーとマジで発禁処分かかるレベルで揉みしだくぞテメー!」
「あはは、これは失礼した。冗談を言うなんて、あたしらしく…というか、鬼らしくないんだけどね」
「あん?何だ、そりゃ」
「鬼は、嘘を吐かないのさ―――だから、冗談もあまり言わない。広い意味じゃ、それも嘘だからね―――まあ、
今はそれが思わず口から出ちまうほど、気分がいいって事で」
そう言って、勇儀は屈託なく笑う。

「いいケンカだった。今のあたしは最高の気分さ、サンレッド」

「フン…褒めたって何も出ねーぞ」
レッドはちょっと照れた様子で鼻を鳴らす。
「こんな俺でも待っててくれる、出来た女がいるんでね。惚れたりすんなよ?」
「ふーん。あんたもスミに置けないもんだ。ま、確かに中々いい男だもんね」
「へ、そうだろ?」
「ああ。あたしがレズじゃなかったら確実に惚れてるレベルだね」
「…おい。それも冗談か?」
「いや、これはガチ」
「…………」
最後の最後で、嫌なカミングアウトを聞いてしまったレッドさんであった。


―――その頃、観客席では。

「やったぁ〜っ!兄者、レッドさんが勝ったよ!」
「ええ…やりましたね」
未だ興奮覚めやらぬコタロウに対し、ジローは感慨深げに微笑む。
「レッドも、星熊勇儀も…本当に、いい闘いでした」
「ふふ…確かに。中々愉快な暇潰しでしたよ。死すべき定めを背負うちっぽけな存在が必死にあがく有様は、実に
見物でした」
「…妖夢さん。傲慢系大ボス的な言動はやめてください。感動が台無しじゃないですか」
「てへっ☆ごめんちゃ〜い」
妖夢はウインクしながらペロっと舌を出して自分の頭をコツン☆と叩いた。
ジローさんの中に妖夢への殺意がふつふつと湧き上がったが、それを突き詰めてしまうとこのSSがヴァンプ将軍
の事件簿〜幻想郷・半人半霊殺人事件〜になってしまうので、彼は自制心を総動員して怒りを抑えた。
最終話で涙ながらに自分の身の上話をして<俺って可哀想アピール>なんてジローさんだってしたくないのだ。
どうでもいいけど、そろそろ<黒幕は地獄の傀儡子でした>パターンはやめた方がいいと思うの、私。

77 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/07/06(火) 08:51:45 ID:f6yOHlty0
「しかし貴女、一体全体どんなキャラになろうとしてるんですか…」
「いや、何。私の場合はキャラと言動が一貫してブレまくりなのがウリでして。登場作品ごとに性格やしゃべり方
が違うとかザラなんですよ?まあ、私に限ったこっちゃありませんが」
「またしても各方面を敵に回しそうな発言ですね…」
「まあまあ、そんなに突っ掛からなくてもいいじゃないですかジローさん。いやー、それにしても感無量ですよ。
私がレッドさんに求めていたのは、ああいう闘いなんです。必殺技使ってフォームも使って…そういうヒーロー的
なバトルを、何だって我々が相手の時にはやってくれないんですかねー?」
ヴァンプ様の言葉に、誰も答える者はいなかった。
彼を傷つけることなくその場を誤魔化す、上手で優しい嘘がつける人材は、残念ながらいなかったのである。
「こほん。ともかく…確かにとんでもない強さだよな、あのサンレッドってのは。なあ、萃香。お前だって危ない
んじゃないか?星熊勇儀って、お前と同格なんだろ」
気を取り直すように魔理沙が咳払いし、萃香に話を振る。
しかし、返答はない。
「あれ?おーい、萃香?」
「…勇儀…」
魔理沙に応じる事なく、どこか放心したように、耐え難い何かを堪えるように、萃香は無二の友の名を呼ぶ。
「まさか…あんたが負けるなんてね…」
「あー…悪い。ショックだったんだ」
「え…ああ、こっちこそすまないね。ぼんやりしてたよ…ええと、そう。そうだね―――力なら、私より勇儀の方
が上さね。それは、疑いようがない」
「へえ。じゃあ、お前じゃサンレッドとやり合ったら勝てないって事?」
「そうは言わないよ」
萃香は、不敵に答える。その自信に満ちた顔立ちには、先程までの弱々しさはまるでない。
「闘いには相性もある。勇儀やサンレッドは、ジャンケンで言うなら間違いなくグーだ。グー同士でぶつかれば、
より強い方が勝つ―――けれど」

「どれだけ強いグーであろうと―――パーには勝てないさ」

よっ、と。
大きく背伸びをして、萃香は歩き出した。
「さーて…私の出番までは、勇儀の見舞いにでも行ってやるか」


<小さな百鬼夜行>伊吹萃香。
彼女は準々決勝にて、サンレッドの前に文字通りの巨大な存在として立ちはだかる事となる。


―――観客席の別の一角には、三人の少女の姿があった。
「へえ…あれがサンレッドねえ…」
興味があるのかないのか、テンション低く呟いたのは<楽園の素敵な巫女>博麗霊夢。
「あんたが目をかけてるだけあって、確かに相当なもんね―――紫」
「あら、分かるかしら?」
楽しげに笑うのは<境界の妖怪>八雲紫。
相も変わらず、本当に面白がっているのかどうかすら判然としない、胡散臭い笑顔だった。

78 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/07/06(火) 08:53:10 ID:f6yOHlty0
「中々に楽しいヤツでしょう?見ていて飽きないわ」
「ふむ…私にはどうも、単なるチンピラにしか思えないのですが」
そう言ったのは、紫の傍に控えていた少女。
怜悧な知性を宿す切れ長の瞳が、見る者の印象に強く残る。
抜群のスタイルを誇る肢体を包むのは、東国の導師を思わせる、奇妙な紋様が施されたローブ。
その腰辺りからは、ふさふさとした毛に覆われた九本の尾が飛び出していた。
彼女は<スキマ妖怪の式>八雲藍(やくも・らん)。
正体は金色の九尾狐である藍の、これが人間に変化した姿だ。
「確かに、あの戦闘力は目を瞠るものがありますが…何というか、少々、品がなさすぎるかと」
「藍は真面目ねえ。ああいう野性的な男は嫌いかしら?」
「野性的というか、野蛮なだけではないかと存じ上げます」
「まあ、随分な言い草だこと。霊夢、貴女はどう思うかしら?」
「どうもこうも、特に」
霊夢は肩を竦める。
「ま―――勝ち上がっていけば、いずれ当たる相手でしょ。負けるつもりはないとだけ言っとくわ」

―――しかし、その対決が実現する事はなかった。
博麗霊夢は準々決勝において、レミリア・スカーレットとの激闘の果て、壮絶に散る事となる。

「―――って、負けるの確定なの!?しかもレミリアのカマセ!?うわ、急激にやる気がなくなってきたわ…」
「はいはい、地の文を読まないの」
「な…納得いかない…私、東方の主人公なのに…」
「哀れだな、博麗の巫女よ…」
「心底同情した目で言うなー!」
「ありきたりなツッコミだな…」
「更に同情を深めるなー!」
「二人とも、そんなコントをやってないで。ほら、次の試合の組み合わせが決まるわよ」
紫の言葉に振り向けば、闘技場には西行寺幽々子が立ち、第二試合対戦者のカードを引く所であった。


『さあ、開幕戦の余韻も静まらぬ中、西行寺幽々子様が第二試合のカードを引く!果たして次は、どんな悪鬼悪霊
が壮絶な闘いを繰り広げるのか!?さあ幽々子様、引いちゃってください!』
「えいっ!」
まずは、一枚。そこに記されていた名は。

「―――風見幽香!」

観客達がどよめく。幻想郷で、風見幽香の名前と恐ろしさを知らぬ者など皆無だ。
どのような残虐な闘いとなるのか、想像すらも憚られる。
「幽香だ!みんな、次は幽香が出るよ!」
そんな空気を読まずに、メディスンがはしゃぎ声を上げる。
魔理沙はメディスンを呆れたように見つめ、溜息をつく。

79 :天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/07/06(火) 08:53:57 ID:f6yOHlty0
「お前、ホント幽香が好きだなー…私は正直、あいつの闘いは好かん」
「私も、あんまり見たくないかな」
「確かに…心臓に悪いわね」
アリスとパチュリーも、魔理沙と似たような態度だ。
「えー、何で?」
「何でって…お前だって知ってるだろうが」
不満げに口を尖らせるメディスンに、魔理沙は答える。
「―――えげつなすぎるんだよ、あいつの闘争は」
「もー。それがいいんじゃない!」
「お前、趣味がおかしいよ…」
魔理沙はまたもや、嘆息するのだった。
「さーて…お次は誰かな!?」
そして幽々子が引いた、二枚目のカードは。

「―――蓬莱山輝夜!」


―――大勢の客でごった返す売店。
「…ふう。どうやら、出番のようね」
藤原妹紅の焼鳥屋台で砂肝を食べていた蓬莱山輝夜は、備え付けのモニターから響く声を合図に、顔をパンパン
と叩いて席を立つ。
ちなみに彼女の隣では、上白沢慧音が真っ赤な顔で酔い潰れている。
半端に酔わせるとセクハラ攻撃を行うきもけーねと化すので、妹紅が速攻で一升瓶を口に突っ込んだのだ。
「しかし…風見幽香かよ。大丈夫なのか、輝夜。あのドSが相手じゃ、お前の不死性も逆効果だ。最悪、死ぬ事も
出来ずに試合とは名ばかりの凄惨な拷問を…」
「心配しないで、もこたん」
輝夜は、決意を秘めた眼差しで語る。
「私…この闘いが終わったら、必ずここに戻って来て、またもこたんの焼鳥を食べるわ」
「輝夜…そんな事言うなよ…」
「ふふ…思えばもこたんは、私にとって唯一の対等な友達だったのかもね…」
「おい…急にいい奴っぽくなるなよ…」
後は過去を語り始めたりしたら完璧だった。
「そうね、湿っぽい話はよくないわ。さて…あら?やだ、いけない。靴紐が切れたわ」
「もうよせぇぇぇぇぇっ!」
「もう、何よそんなに大声出して。じゃ、行ってくるわ」
「ああ…なあ、輝夜」
「なあに、もこたん」
妹紅は唇を噛み締め、言った。
「勝たなくてもいい…どうか、無事に戻ってきてくれ…!」
果たして輝夜は、月光のように美しく、儚く微笑み、死闘の場へと旅立っていったのだった。
その後姿を見送りながら、妹紅は思った。
さらば、我が宿敵―――蓬莱山輝夜…と…。

―――風見幽香VS蓬莱山輝夜。
幻想郷最大トーナメントで行われた全31試合の中でも屈指の名勝負として語り継がれる熱闘の始まりであった。

80 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2010/07/06(火) 09:20:49 ID:f6yOHlty0
投下完了。前回は>>55より。
次回、読者が怒り出すかもしれない。
西尾維新ファンなら「まあサマサさんだし仕方ないな」と生暖かい目で見てくれるかもしれない。

サマサはハシさんに酷い事をしたよね…
(ツイッターで操作を間違えてハシさんをブロックした男サマサ)
許してくださるというなら何でもしよう…指を詰めろと言われたなら詰める!クソを喰えというなら迷わず喰うぜ!
ここでもう一度陳謝させていただきます。申し訳ありませんでした orz(土下座)

>>57 高千穂先輩…も気になるけど、カマセ臭プンプンの都城先輩の明日が気になる。
>>59 ハメ技使いもたくさんいます。時を止める、狂気を操る、運命を操るetc…でもレッドさんなら腕力だけでも
    闘えるはず!
>>60 現在作中で判明しているのはファイアーバード・プロミネンス・ヒュペリオンの三種類。でも、原作では
    レッドさんが強すぎて実際に使う機会がない…。
>>ふら〜りさん
妹ガンダム…!僕は一巻を流し読みした程度ですが、確かに彼女らの妄想力はバキすら上回るかもしれませんね。
いくらバキでも巨大カマキリを実際に召喚して相手を攻撃できるわけじゃないですし(更に修行を積めば出来るか?)
果たして加藤の運命や如何に!次回、いきなりサンドバッグ詰めにされてない事を祈るばかりです(待て)

81 :作者の都合により名無しです:2010/07/07(水) 12:59:07 ID:Sw3XBnH70
サマサさん、ふらーりさんお疲れ様です!

>ふらーりさん
また俺の知らないところからすごいキャラを絡ませるなあw
短編とは少し残念ですが、長編も考えているみたいで嬉しいです。

>サマサさん
全31試合って本当にバキ最大トーナメント波じゃないですかw
まあ、全部やったら連載5年かかると思うんでwサンレッドさんの
試合主体でしょうが、まずは幽香期待しております。

82 :ジョジョの奇妙な冒険第4部:2010/07/07(水) 14:15:00 ID:GcF22AQX0
眠気にふら付く帰り道、次に店を訪れる日を心待ちにしながら歩いていた。

「ほらっ、早人! フラフラしないでちゃんと歩きなさい!」
「ハッハッハ、眠いのかな? よぉーし、またパパがおぶってやろう」

店に来たときと同じように、奴が僕の前に立ち背を向ける。
だがこの背にもたれ掛かることを恐れる日々も、きっと終わる。
希望を胸に、今度は震えることなく獣の背に身を任せる。

「フフフ、震えないのか? やはりそういうことか……『でかしたぞ』早人」

ドクン、僕の心臓が強く脈打つ。
『でかしたぞ』とは何に対していっているのだ?
『バイツァ・ダスト』は発動していない、時間は巻き戻っていない。
トニオさんが奴の正体を掴んだとは知られていない筈だ。

「私にも見えない『スタンド』だったのか、それともあの料理がスタンドの正体か?
お前が見破ったのか操られたのかは判らないが、お前の変化には気付いていたよ」

僕の変化? 料理を食べた後のあの異常に気付いていたのか?
いや、もしそうなら何が起こるか判らない料理など口に含むはずがない。

「サラダやパスタ、お前は必ず私たちに先に料理を食べさせていたな……親を毒見に使うとは悪い子だ。
だがトイレから帰ってきた時、お前の怯える様子は消えた………こう言ってしまうとお前が怯えてしまうかな?」

体に震えが戻ってくる、奴が怖いんじゃあない。
僕はまた同じ過ちを繰り返してしまったのではないだろうか。
僕の心を見透かしたように殺人鬼が口の端を吊り上げて笑う、奴の一言が不安を確信へと変えた。

「彼はもう始末されているよ……後片付けをしている筈だ、爆弾になった皿が磨かれているってことさ」

僕は殺人鬼の背から飛び降り、トニオさんの店へと駆け出した。

「ちょっと? 早人!?」
「どうやら忘れ物をしたようだ、私は早人と一緒に行くから先に帰ってくれ」

不思議そうにしながらも、しのぶは言われた通りに一人で帰る。
惜しい事をした、最高の料理を安価で気軽に楽しめる名店だった。
だが、私に仇なす者が存在することは許されない。

吉良吉影は『トラサルディー』に向かう道へ振り返り、早人を追うようにトニオの店へ向かった。

83 :ジョジョの奇妙な冒険第4部:2010/07/07(水) 14:16:11 ID:GcF22AQX0
僕は忘れない、今日という日を。
僕のせいで罪のない人の命が、また奪われたこの日を。
強く握られた拳の中で、真っ白なコック帽がしわくちゃになっていた。

トニオ・トラサルディーはもう居ない、僕のせいで殺された。

「トニオさん……僕のせいだ………」

血の一滴も残さず、帽子だけがこの場に残っている。
奴が殺した証拠は何もない、完璧な殺人を可能にする能力。
この能力に抗える人は、後どのくらい居るのだろう。

生きていることが辛い、奴と戦うことの孤独に耐え切れない。
『バイツァ・ダスト』によって自殺もままならない僕はやり場のない怒りに掻き立てられる。
地面に這い蹲り、頭を床に叩きつけるべく振り下ろす。

額に強い衝撃が走る、目眩と痛みに視界が揺れるがそれどころではない。
奴の『バイツァ・ダスト』が僕を守っている筈。
この痛みはどういうことだろうか。

テーブルの上からフォークを取り、自分の腕に突き刺す。
カッターの先端を止めたあの力は現れない、真っ赤な血が流れる。

「『バイツァ・ダスト』はもう……居ない」

忌まわしい力から解放されたが、そこに喜びは無く虚しいだけだった。
彼が死んだのは僕のせいだ、『バイツァ・ダスト』は関係なかった。

自責の念に押しつぶされそうになる僕を腕から流れる血が支えてくれていた。
奴の企みを潰せることを、この血が証明してくれている。
恐怖は消えた……心に残るのは復讐の意志。

トニオさんの言っていた『ジョースター』という人物と連絡を取るべく家屋を調べる。
まずは厨房からだ、血を吐いていた筈の子犬が尻尾を振り息を荒げながらこちらを見ている。

彼の飼い主を思い浮かべ、再びこみ上げて来る涙を拭う。
主人を失った彼はこの先どうなるのか、行方不明として警察の捜査が入れば保健所行きだろう。
こうなった責任を取らねばならないが、家はペット禁止だ……にも関わらずママはネコを飼っているが。
取り合えず飼い主となってくれる人物を探すまでは何とかして自分で面倒を見なければならない。
彼の住まいと思わしき小さな檻に鍵をかけると、不安そうに辺りを見回している。
それはまるで、この世から去った主人を探しているようだった。

84 :ジョジョの奇妙な冒険第4部:2010/07/07(水) 14:17:23 ID:GcF22AQX0
一通り店を探し終え冷静になった僕は時計を見て就寝時間が迫っている事に気づく。
表の表札を閉店にしておけばすぐに行方不明の届けが出る事は無いだろう。
ママを心配させないためにも一度、家へ帰ることにした。

店を出ようとドアノブに手をかける、扉を開くと反対側から押し返されるような圧力を感じた。
扉に物理的干渉を受けているわけではない、ドス黒い威圧感に押されているのだ。
初めて『バイツァ・ダスト』を取り憑けられた日と同じ、奴が扉の裏で僕を待ち構えていた。

「探し物は見つかったのか早人? まさか彼のペットを取りにここまで時間を掛けた訳じゃないだろう」

暗闇に、ピアニストを連想させる白い肌が光ると女性とは違った妖しい色気が奴から際立つ。
だがそれは獲物を引き寄せる撒き餌にすぎず、こいつの内面はこの世のどんな物より醜悪なのだ。
肌は薄明かりに照らされても、その漆黒に包まれた目に決して光は通らなかった。

「フフフ、そうか探し物はペットだったか……私はこっちだとばかり思っていたよ」

ポケットからノートのような物を取り出す、表紙にはこう書かれていた……『電話帳』と。
奴は知っている、奴を倒せる最後の希望が存在する事を。
一体、どこまで――「ジョセフ・ジョースター」――知って……。
奴の言葉が僕の思考を遮る、考えても無駄な事を悟ってしまった。

「死んだ億泰の父はジョセフや承太郎に敵対するディオという人物の手下だった。
私の父がこの世を去る前に調べておいてくれたよ……お前にとって残念な知らせだがジョセフの『能力』は戦闘用ではない。
更に言うと現在は79歳の老人、耳は遠くなり白内障を患い杖が無くては歩けないほど足腰は弱りおまけにボケているらしい」

電話帳が地面に投げ捨てられる、拾おうと手を伸ばすと目の前で粉々に砕け散った。
膝を突き地面に突っ伏すと冷えた大地に体が沈んでいくような感覚に囚われる。
内側からの衝撃で膨れ上がり、ひび割れてバラバラに弾け飛んだ最後の希望。
薄っぺらな紙の中に爆薬でも詰め込んだように吹き飛ばす、現実にありえない事を可能とする異能。

「諦めたか……それでいい、心配しなくても私はお前やしのぶに危害は加えないさ」

絶望の淵で奴の冷たい手が慰めるように僕の背をさすると、ゾッとする寒気と吐き気に襲われる。
静寂に包まれた闇の中、僕の頭には勝ち誇る奴の高笑いが響いていた。
ここまでだ、僕にできる事は何も無い……奴の気分が変わらないことを願うしかない。

「そうじゃな、アンタが諦めて檻に繋がれば彼や母親にも危害は及ばんじゃろう」

突然に響くしわがれ声、その隠者は足音一つなく現れた。

85 :ジョジョの奇妙な冒険第4部:2010/07/07(水) 14:20:58 ID:GcF22AQX0
闇夜に目を凝らすと屈強な体つきの老人が発したようで、地味な服装に時代遅れのカウボーイの被るような汚い帽子。
帽子の下から輝きに満ちた瞳が覗く、その眼差しは月の光より強く……太陽の様に煌いていた。
輝かしい黄金が僕の暗闇を取り払っていく、この人が町の闇に立ち向かう最後の戦士。

「この服も、帽子も久々じゃわい……難聴で聞いててもサッパリだったビートルズの『ゲットバック』も久々に聞けたしの」
「貴様がジョセフ!? ありえん……DIOという吸血鬼を討伐した際、既に七十の老人だったのにその若さは!?」
「バカをいうな! 当時はまだ六十八だったわい!」
「た……大して変わらないんじゃ………」

助けに現れたと思われる聖戦士は僕の余計な一言に気分を害したのか冷たい視線を送る。
少しの沈黙が続くと気まずい空気を振り払うように咳払いして視線を殺人鬼へと向ける。

「ワシも妻と同じ時の流れに生きたかった……ストレイツォのように若さの充実に餓える事なく天命に身を委ねたかった。
もう二度と『波紋の呼吸』は使いたくなかったがこの町の人々、そして孫………更には息子までも殺した貴様だけは許さん」

彼の人物像がユーモラスな老人から一転、この世の邪悪に立ち向かう救世主へと変わる。
彼から感じ取れる怒りは復讐の怒りではあったがこの世に存在する白と黒の存在の中で彼は間違いなく『白』にいた。

「訳の分からんことをゴチャゴチャと言ってくれるが要するに復讐ということか。
念写しか取り柄のないスタンドで、どうやって私と戦う気なのかな?」

奴が余裕の笑みを浮かべている、僕に取り憑いていた『バイツァ・ダスト』は奴に戻っている。
直々に手を下す勝負で相手を侮るタイプではない……もしやと思い耳を済ませると謎の空気音が確かに聞こえた。

「ジョセフさん! 逃げてッッ! 奴の爆弾が飛んでくる!」
「もう遅い、着弾地点に到達した! 貴様のスタンドに仗助のようなパワーとスピードはないッ!」

隠者の目の前で爆発が起こる、颯爽と現れた希望はこんなにも脆いものだったのか?
辛うじて生き延びていても深刻なダメージを負っている筈だ、勝負は決してしまったのか?

「フハハハハハ! 最期の断末魔すら上げず吹っ飛んだぞ!」
「ほぉ〜ワシにはそんなの見えなかったが……誰が吹っ飛んだって?」

頭上から声が響く、隠者は一瞬にして屋根の上に乗っていた。
あの爆発を避けつつ一瞬で屋根まで飛べて、パワーのないスタンド?
僕は彼の能力の謎が全くわからなかったが、奴には何をしたのか見えていたのだろうか。

「バ、バカな……『ハーミット・パープル』を伸ばして跳躍することは可能だろうが爆破を回避するそのスピードは!?」
「フフフ……このジョセフ・ジョースター老いて益々健在というところか」

86 :ジョジョの奇妙な冒険第4部:2010/07/07(水) 14:23:29 ID:GcF22AQX0
アンサイクロペディアのトニオさんが歪みすぎててワロタ。邪神です( 0w0)
ジョセフは三部当時の肉体まで若返り、実際老いてから波紋で若返れるかは不明ですけれど。
ちなみに二部までの若返りも母親を考えれば出来なくはないと思いますが、波紋を練る期間不足と余り若返るのは嫌ということで。

>>ふら〜りさん 平穏状態! の吉影さんに慌てるだとか焦るだとかの感情はなかろうなのだァ――!
          食事を楽しみつつ早人のことに注意を払う、両方やらなきゃいけないのが殺人鬼の辛い所。
          妹ガンダムは名前だけなら聞いたことが……こういう内容だったのか(;0w0)
          みんな大好きジュアゾゴッジュの出番はあるのだろうか!

>>サマサさん >>某ピンク
         ニコニコの某TAS(TAP)さんのせいでスラムピンクが真っ先に出てきた……アレはいいゲームだ。
         レッドイヤーは地獄耳……なんだかデビルマンの替え歌っぽい響きで素敵ですね。
         コタロウへの折檻は私もアニメの方でしか見てませんが確かにヒドイ、ヒモヒドイ。

  スパイラル!
    人   .ミ∩
  ( 0w0 ) ⊂⌒ |
  | つ==☆|⊃ |つ
  人  Y/  ミ(   ) <ウワァァァァァァァ
 し(__)   ∨ ∨彡

         この位ヒドかったですね、自分も機会があればBBB読んでみようと思います( 0w0)
         そしてBBBでググったらトップにでてきたのは自転車でした。

>>ハガレンさん  ついに新人きた!これでかつる!
           心情映写の濃さが個人的にツボりました、単行本しか見てないんですがゴリさんたちは? もしや鬼籍に?
           ハガレンといえば最近ウォッチマンの映画を見てシャッハさんに入れ込んでるので「豆」繋がりでこんなネタが。
              「やぁ豆、ドアをブチ破ってついでに冷蔵庫の豆を失敬したよ」「誰が豆だよ上げ底野郎!」
              この後エドワードの小指はシャッハさんが美味しく圧し折りました。
           吉良とキャプテンに追われ披露する機会が未来永劫なさそうなのでこの場をお借りして失礼しました( 0w0)

>>前スレ266氏 残念ながらそうは行きませんでした……トニオさんには生きてて欲しかった。
           非戦闘員だし杜王追放ぐらいにしたかったのですが、国外からの刺客に吉影さんが怯える日々を迎えてしまう。
           このSSでは吉影さんにとっての危険人物は排除されてしまう『運命』にあるのです。

>>前スレ267氏 なぜラスボスがバレ……ってことはないです〔 0H0〕
           スタンド使い同士は惹かれあうっていうし国を超えて来てもおかしくはなさそうな。
           そうなると理由を付けやすいのは日本人の血を引いてるジョルノ………逃げて! 吉影さん逃げて!
           レクイエム習得前なら勝機はありそうですが仗助と同じく『治す・生み出す』といったキラークイーンとは逆の能力。
           うっかりカエルを爆弾にしようものなら………やはり相性は悪そうです(;0w0)

87 :作者の都合により名無しです:2010/07/09(金) 21:11:02 ID:L5Q9OHst0
>>サマサさん
妖夢のキャラがどんどん酷くなっていくなあ、いや、いい意味でw
もっとやっちまってくれて構わない…しかしサマサさんはハシさんに土下座すべき。
全裸で。

>>邪神さん
トニオさん…よし、ちょっと葬式スレ立ててくる(号泣)
そして絶望からの救世主・ジョセフ参上!
頑張れ、世界最強(多分)のお爺ちゃん!


88 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 21:37:54 ID:Z3WePxeK0
・ふらーりさん
ふらーりさんは相変わらず常人には分からないところから持ってくるなあw
でもこういう女にかなわない加藤もらしくていいかなw

・サマサさん
博麗霊夢って確か主人公でしたっけ?東方の。結構早く消えちゃうのかあ。
しかし真の主人公のレッドさんがその分頑張ってくれると期待。

・邪神さん
トニオさんは性格は歪んでいるけど、情熱にあふれた良い料理人なんだけどw
確かに戦闘には使えない能力だから、戦えませんな。


89 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 21:53:26 ID:5dcSVmRK0
トニオさんはDCSで身体を強化すれば問題なし

90 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 22:30:57 ID:yTzIH0Hh0
邪神さんもBBBに興味があるみたいだけど、ガチで超オススメだよ。
ちなみにコタロウ折檻ネタで一番酷いと思うのは短編集に収録されてる
「強い吸血鬼の育て方」という話だと思う。修行と称してコタロウを鍛えまくるという話で、
コンクリート詰めで遠泳・100kgのバーベルで素振り1万回・火の輪くぐり…
恐ろしいのはこれをジローさんは、全く虐待などと思っていない事だ。

91 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/07/11(日) 18:20:42 ID:JkOXWZYz0
>>72
砲弾が発射される爆音、着弾して地面が抉れる轟音。
爆音、轟音、爆音、轟音。
耳をつんざき大地を揺るがす大音響と、荒れ狂う熱風強風、そして舞い上がる土煙の中を、
加藤は駆けていた。その加藤の視線の先では、ホバー走行により地面、というか文字通り
「地上」を滑りながら、留二亜が撃ちまくっている。
見えないジャイアント・バズから撃ち出される、見える砲弾。既に加藤は一撃食らっているし、
今次々と地面を抉っていることからも、その破壊力は嫌になるほど解っている。
だから食らうわけにはいかないのだが、なにしろ炸裂砲弾だ。かわしても、地面に当たれば
爆発して、爆風が襲ってくる。それを近距離から受ければ当然、体勢が崩れる。
そうなれば走る速度が落ちるどころか、ほぼ停止してしまう。もちろんそんな状態では
ガードもできない。そこを狙い撃たれてしまえば……一撃受けて、飛ばされたところに
更に追い討ちも受けて……終わりだ。
だから、砲弾そのものをかわすだけではなく、かわした後に来る爆風の有効射程外
まで出なくてはならない。必然、「紙一重でかわす」どころではなく、思いっきり
大きな動きで逃げ回らねばならない。
そして留二亜の方は、どうやらホバー走行も砲弾撃ちも全くスタミナを消費しないらしく、
遠慮なく駆け回り、乱射してくる。
「くそっ、分が悪いな。逃げ回ってちゃジリ貧だ。こっちの体力がある内に、勝負を
かけるしかねえ!」
加藤は左右に大きく動いていたのを一変、留二亜に向かって一直線に走った。
その加藤を見て留二亜は、バズーカの構えを解く。
「来る? 望むところ。わたしは本気で相手する、と言ったよね加藤さん。だから、
見せてあげる。わたしの、ドムの必殺技を!」
バズーカを撃たなくなったので、加藤は何にも阻まれることなく走ることができた。
留二亜の方からも向かってくるので、あっという間に二人は肉薄する。
先手は留二亜だった。背中に手を回し、見えないヒート・サーベルを抜き放ち、振り下ろす。
なにしろ見えないので長さはわからないが、一直線の棒であることは間違いない。
留二亜の手の位置と角度からサーベルの軌道を読んで、加藤は振り下ろされてきた
その一撃を、真上に跳んでかわした……と思ったら、
「えっ!?」

92 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/07/11(日) 18:21:38 ID:JkOXWZYz0
その目の前に、留二亜がいた。サーベルを振り下ろした姿勢の留二亜の後ろで、
サーベルを振り下ろした姿勢の留二亜の肩越しに、もう一人の留二亜がバズーカを
構えている。
「え? なに? 二人? 残像……じゃない、本物が二人?」
混乱する加藤に向かって、二人目の留二亜がバズーカを撃つ。空中で不安定な
体勢ながらも、加藤はムリヤリに体をひねって、これも何とか回避した……と思ったら、
その加藤に、ふっと影がかかった。
「まさか三人目っっ!?」
驚いた加藤が視線を上に向けるよりも速く、第三の留二亜が、二人目留二亜の頭上を
跳び越えて襲ってきた。
今度はバズーカもサーベルもない。神に祈りを捧げるように組み合わせた両手を、
自らの頭上に大きく振りかぶり、そこから加藤の脳天へと振り下ろす!
「オルテガ・ハンマー!」
留二亜の、渾身のハンマーパンチが、まだ上を向いていなかった加藤の頭頂部に
叩き込まれた。バズーカでもサーベルでもない素手の攻撃だが、それでも
今の留二亜はドムなのである。これは、少女留二亜の打撃ではなく、
重MS・ドムの打撃なのだ。
「がっ……!」
加藤は、まず顎、そして胸、腹の順に地面に激突した。
辛うじて意識は失わなかったものの、頭の中がぐわんぐわんして、全身が
痺れる。まるで上から背中も手足も押さえつけられているみたいで、
とても立ち上がれそうにない。
懸命に首を捻って前方を見れば、小学生女児の靴が六つ、足が六本見える。
三人の留二亜が、そこにいるのだ。
「「「どう? 完璧なドムは」」」
と言った直後、足が二本になった。
歯を食いしばって胸と腹を地面から引き剥がし、両腕を踏ん張って上体を
持ち上げた加藤の目の前に立っているのは、留二亜が一人だけ。
「これがわたしの、ドムの必殺技よ」
見れば見るほど、確かに顔立ちが整った美少女ではあるが、何の変哲もない
10歳ぐらいの女の子だ。それがこの強さ。この力。この攻撃方法。

93 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/07/11(日) 18:22:20 ID:JkOXWZYz0
「ぶ……分身してのジェット・ストリーム・アタック……たった一人で、
黒い三連星を……完璧に再現しやがるとは……」
「当然。それが、わたしに求められたものなのだから」
留二亜は、(全くと言っていいほど膨らみのない)胸を張った。
「兄さんは、ガンダムが大好きでね。わたしが何度、遊んでほしいってお願い
しても、ガンダムごっこ以外は絶対ダメなの。そして兄さんはいつもガンダム役、
わたしはその相手としてドム役」
「ガ、ガンダムごっこ?」
「そう。ちゃんとホバー走行して、ジャイアント・バズやヒート・サーベルを使って、
ジェット・ストリーム・アタックもできるドムでないと、遊んであげないぞってね。
だったら、やるしかないでしょう? だから、やったの」
やった、とか軽く言われても加藤は困る。
しかし実際にやってる以上、否定のしようもなく。
「わたしのドムの強さは、兄さんが好きなガンダムの、ガンダムごっこの為の強さ。
わたしの、兄さんへの愛の強さ。『アイツ』もまた、わたしと方向性は違うけど、
『アイツ』の兄さんへの愛ゆえに強さを得ている。だから……」
留二亜は、ぐっと拳を握り締めた。
「アイツの、最終目的を阻む為だけではなくて。わたしの、愛の強さを
証明する為に。わたしは、アイツに勝たなきゃダメなの」
「……それだけか?」
「ええ、それだけよ。アイツに対して個人的な恨みはないし、兄さんが認めてくれる
以上の強さにも興味はない。わたしの全ては、兄さんへの愛だけ。でも、
それは何よりも大きく強い。それに対抗できるとしたら、わたしと同じ『兄さんへの愛』
で戦ってるアイツだけ。だから、加藤さんはわたしに勝てない」
「は、ははははっ。なるほど、な。そう言われちゃあ……」
加藤は、笑いながら眉を吊り上げながら、ぐぐぐぐっとリキを込めて片膝立ちになった。
「負けるわけにはいかねぇよ、俺は」

94 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/07/11(日) 18:23:09 ID:JkOXWZYz0
「ふうん? わたしの、兄さんへの愛よりも強い愛が、あなたにはあるとでもいうの? 
そういえば、神心会空手がどうとか言ってたわね」
留二亜は考えた。
『空手道場か。もしかして、そこの先輩のことを愛してるとか? でも、
この人って彼女がいるようには見えないし。ということは……』
留二亜は、大きく後ずさって加藤を指差し、大声を上げた。
「変態! 不潔! 近寄らないでっ!」
「何をどう考えてそういう結論に至ったっ!? 多分、思いっきり誤解だ! が、」
まだ脳ミソが揺れてる感覚を引きずりながら、加藤は立ち上がった。
「お前の、兄貴への愛を上回ってみせるってのはその通りだぜ」
「……何ですって?」
「そうでなきゃ、お前には勝てないんだろ? だったら、上回ってやるよ」
留二亜の顔に、初めてはっきりと『怒り』が浮かんだ。
「あなたに、兄さんがいようが姉さんがいようが、あるいは恋人がいようが。
わたしの、兄さんへの愛は誰にも負けないっ!」
「そりゃそうだろうな。その一念で、一人ジェット・ストリーム・アタックまでできて
しまうんだから。でもな、それでもお前は『足りない』んだよ。そのことを今、
教えてやる。……来い!」

95 :ふら〜り ◆rXl0RuLrAVdZ :2010/07/11(日) 18:24:29 ID:JkOXWZYz0
こんな留二亜ちぁんですが、原作の最終戦ではかなりマジメに苦戦し、痛めつけられ、流血し、
倒され、そして後の主人公の大逆転に貢献するという熱血ぶりを魅せてくれます。
カッコいいですよー。……そういえば最終話の扉絵はこの子一人でした。主人公の立場……

>>サマサさん
勇儀、言い回しこそガラッパチながら、ちゃんと艶っぽいことも言える=考えられる女ですな。
うむ、よろしい。意中の人がしっかり存在して、かつ子供でもないからかレッド側の反応が大人しめ
なのは少し寂しいところですが。今度はレッドが観客として、幻想勢同士の戦いに何を見るか?

>>邪神さん
吉良って、スタンドと性格こそ恐ろしいものの、承太郎やジョセフ的な意味で「有能」って印象は
ないんですが、本作の吉良は鋭いですね。狙った獲物は逃がさないどころか、掠った小石も
見逃さない。原作以上に絶望的なラスボスを前に、原作にはいなかった救世主が来たっっ!

>>74
うお、いきなりご存知の方にブチ当たるとは。私はガンダムもプロレスもサクラ大戦も
殆ど知りませんが、それでも徳光先生の一連のヲタ漫画は大好きです。元ネタ知らなくても
充分面白い!

96 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 18:29:03 ID:Yjb+kksA0
ふらーりさんはいったい何者だよw
ガンダムごっことか笑ったw

97 :さい ◆2i3ClolIvA :2010/07/17(土) 00:30:12 ID:HigCykbcP
お久し振りです。さいです。
平野耕太先生作『ドリフターズ』一巻発売記念と、ある映画の公開記念に、少し短編的なのをひとつ。
アナザー『ドリフターズ』という感じなのですが、キャラも設定も原形留めてんのが与一くらいで……
それにしても与一はカワイイですよね。もうホントあのケツをガチ犯し以下略
もうあまりにも与一がカワイ過ぎて一巻92ページ目でオナ以下略
とっととOVA化で、声は白石涼子か真綾た以下略
あとアナルスタシアの声は能登以下略
じゃ、どーぞ

98 :DRIFTERS VERSUS ...:2010/07/17(土) 00:31:38 ID:HigCykbcP
 
落ちる。

落ちる。
落ちる。
落ちる。

土方歳三は凄まじい落下感の中、目を覚ました。
落ちている。自分は落ちている。
何故?
どこから?
どこへ向かって?

眼前には青い空が広がっている。
首を捻って下を見れば、緑の森が絨毯のようだ。
何故?

疑問は雲霞の如く湧いて止まらないが、それよりも考えたのは「どうする」の一事。
このままでは死ぬ。死なぬにはどうする?
良い思案も浮かばぬまま、木々がずんずんと近づいてくる。
これまでか、と覚悟を決める間もあれば、身体を揺らす大きな衝撃と共に落ちる速度が緩んだ。
己の真上に白い大きな布が広がる。
これが為に勢いが緩まったか? そもこれは何か?
新たな疑問が湧くと同時に、土方は五体をしたたかに木々へと打ちつけ、意識を断ってしまった。



再び土方が覚醒した時。
どういう訳か、後頭部に柔らかな感触を感じていた。
手足を草の茂る地に投げ出し、仰臥していたが、頭だけが安楽な温かみに包まれている。
「気がつかれましたか?」
青年の声、否、童子と言っても良い程の明るさを含んだ声が土方に語りかけた。
眼を開けると、さっきまでの切迫した状況では感じられなかった眩しさが眼を刺す。
やがて、光に目が慣れると、自分に語りかけてきた声の主が網膜に映り始めた。
たっぷりの前髪を湛えた総髪。切れ長だが大きな眼。愛らしい曲線を描いた唇。
その顔貌が記憶の水面を波立たせる。
「総司……?」
呟いたが早いか、土方はハッと顔を、全身を強張らせ、今ある場所より飛び退いた。
彼が生きている筈が無いからだ。
そして、自分はどうやら、この沖田に似た若者に膝枕をされていたらしい。

99 :DRIFTERS VERSUS ...:2010/07/17(土) 00:34:14 ID:HigCykbcP
「誰か」
「おやおや、存外にお元気なご様子。重畳重畳」
「誰かっ!」
何千と繰り返し、身に染みついた動作で和泉守兼定を半ばまで鞘走らせる。
「……?」
鞘走らせてから、土方は違和感を覚えた。
あまりにも慣れすぎていて気づかなかった事実に。
自分の今の姿格好。
不自然な自分の今の自然さ。
「俺は……」
しばし、目の前の怪しげな若者の事も忘れ、己の身体の方々に手を遣る。
髷を切り落として後ろへ撫でつけた頭髪、実戦主義を優先させた洋装、幾度の危難を斬り払った
和泉守兼定と堀川国広の大小。
何もかも、同じだ。何もかも、あの時のままだ。

蝦夷。榎本武揚。箱館戦争。官軍。一本木関門。我が身を貫いた銃弾。

今も痛みと熱さを錯覚させる腹部の辺りを、衣服の上から強く掴む。
「何故、俺は生きているのだ……」
そう、自分は死んだ筈だった。
北へ北へと喧嘩を続け、榎本や大鳥ら旧幕臣と共に築いた蝦夷共和国箱館政府。
押し寄せる官軍。敗北の色が濃くなりつつあった五稜郭。
籠城も降伏も否とし、長州薩摩の連中に己の屍をくれてやるつもりだった。
事実、自分は撃たれて死んだのだ。

愕然と立ち尽くす土方であったが、例の若者は微笑を崩さず、なだめるように言葉を掛ける。
「んん、そうでしょうなぁ。私も同じです。死んだ筈が、何故か生きて、不見不知(ミズシラズ)の
地に立っていました」
若者の言葉にも、土方は警戒を解かず、太刀の柄に手を掛けている。
そして、彼への第一声に二つ目、三つ目の問いを付け加えた。
「お前は誰か。ここはどこだ。何故、俺はここにいる」
「ここがどこで、何故あなたがここにおわすかは、私にはわかりませぬ。ただ、私が何者かは
お教え出来ますが」
「名乗れ」
「私は与一。那須資隆与一で御座います」
この名を聞いた土方はおかしみも不可思議も覚えず、ただ怒気だけを覚えた。
嘘にしては途方も無さ過ぎる嘘だ。騙す気すらも無く、嘲弄したいだけではないのか。
「なぶるか」
「いいえ、滅相も無い」

100 :DRIFTERS VERSUS ...:2010/07/17(土) 00:35:42 ID:HigCykbcP
「俺は文字には明るくないが、源平の軍記くらいは知っている。七百年も昔に生きた那須与一が、
俺の眼の前に立っているものか」
与一を名乗る若者はまた笑う。困惑と同情の入り混じる呆れ気味の色で。
「左様に申されましても、私とてつい先程死に、つい先程眼を覚ましたところで御座いますれば」
土方は埒が明かぬ、とばかりに苦々しげに顔を歪ませた。

その時。

「きゃああああああああああ!!!!」

女のものと思しき悲鳴が響き渡った。
前後でも、左右でもなく、真上から。
二人が素早く空を見上げると、何者かが大きな白い布をなびかせ、樹木の枝々に身体を打ちつけながら
落ちてくるではないか。
落下地点が向かい合う土方と与一の間だったのは、運が良いと言う他は無い。
間も無く落下してきたその者は、二人の手によってしっかと受け止められた。
先刻の土方の如く、木々に身を打たれた衝撃で気絶している人物は、悲鳴から察した通り、女性である。
だが、ただの女性ではなかった。異人である。紅毛白皙の異人の女である。
年の頃はまだ娘と言っても良いのではないか。
それだけではなく、男と見紛うばかりの短髪に、全身を西洋甲冑で覆っている。
どこからどう見ても尋常の風体、人物ではない。
娘を挟んだ向こうの与一が、若干の興奮混じりに感心している。
「私達三人では終わらず、今度は異人の娘ですか。このままでは何人落ちてくるか、わかりませぬなぁ」
「待て」
危うく聞き流すところだった。
「今、“三人”と申したか?」
「ええ、あなたが……――」
ここまで言うと、与一は土方の顔を覗き込み、口を尖らせた。まだ名乗ってもらっていない、
と言いたいのであろう。
土方は閉口したように、早口で名乗る。
「京都守護職会津藩主松平容保中将様御預新選組副長、土方歳三」
どういう訳か、箱館政府陸軍奉行並、とは言いたくなかった。
与一はまた笑顔に戻り、皮肉を込めて土方の名前を音声高くし、話を続けた。
「歳三殿、があまりの剣幕だったので、つい申し遅れたのです。私は悪くありませぬぞ」
そう言いながら、土方の背後を指差す。
指し示す先、二人からしばらく離れた場所に、見慣れぬ武者鎧を着込んだ大男が草むらへどしりと
胡坐をかいていた。眼も口もむっつりと閉じられている。少なくとも顔形が異人には見えないのが救いか。
「私が眼を覚ました時には、もう既にあそこにおりました。それからずっとあのままです」
聞いているのか、いないのか、土方は娘を与一に預けると、男へと近づいた。

101 :DRIFTERS VERSUS ...:2010/07/17(土) 00:38:47 ID:HigCykbcP
それにしても、異様なまでの巨漢だ。新選組十番隊組長の原田も巨漢ではあったが、目の前の
男に比べれば、童に等しい。
土方は大分、男の近くに来た。刀に手を掛けてはいないが、警戒していない訳ではない。少しでも
怪しげな動きをすれば、即座に抜き打ちに斬って捨てるつもりだ。
「その方、名を申せ」
男は土方の言葉に、横目を向けるだけ。口は閉じられたまま。
「私が話しかけても口を開きませんでした。もしかしたら日本人(ヒノモトビト)ではないのかもしれませぬ」
与一の助け舟に、うむ、と土方は頷くと、しゃがみ込んで土に、

“土方歳三”

と指で書いた。それから胸に手を当て、
「俺は土方歳三だ。その方の名は何と申す」
と再度問い掛けた。
男はしばらく土方を見つめた後、倣うように土へ名前らしき文字を書いた。

“呂布”

土方はいい加減、驚き疲れた。
那須与一と名乗る沖田に似た美少年。空から降ってきた南蛮異国の小娘。更に今度は呂布奉先と来た。
「おぬしが唐土(モロコシ)の武将、呂布だと?」
『三国志』は近藤勇も愛していた物語で、自分も小さい頃は年長者から聞かされ、長じては自ら
読んだものだ。
水関での猛将呂布と劉備三兄弟の戦いは、今でも諳んじられる。
その呂布が今、自分の目の前にいる。
土方は意識せず、僅かに後ずさった。これは悪い夢なのか。
「歳三殿……!」
甲冑を着込んだ娘を重そうに抱える“悪い夢”の一部が、後方から呼び掛ける。
「な、なんだ」
「何か聞こえませぬか?」
与一の注進に、気を取り直して耳を澄ますと、確かに何か声らしきものが聞こえる。
大分離れているのか、微かにしか聞こえないが、どうやら怒鳴り声のようだ。それもひとつではない。
「うむ、聞こえる。あちらの方に幾人かいるらしいな」
「行ってみましょう」
土方は与一の顔を見直した。
「ここに居たところで、何も始まりませぬ。誰かがいるのなら、行って話を聞けば、何かわかる事が
あるやもしれませぬ。それに――」
ここで初めて、与一の眼がギラリと、武将らしく光った。
「――害を成して来るのならば、討ち果たせば良いだけの事」
土方はしばらくの間、まじまじと与一の顔を見つめていたが、やがてフッと低く笑った。

102 :DRIFTERS VERSUS ...:2010/07/17(土) 00:40:23 ID:HigCykbcP
「その通りだ、那須与一。いや、そうあるべきである」
急に肩が軽くなったようだ。単純で、わかりやすい。これまでの己の人生もそうであった。そして、
傍らにいるこの若者は“同類”だ。
「行くか、与一」
返事も待たず、薄笑みの土方は歩き出している。一体にこの男は決断が早く、しかも足が達者である。
弓矢と異人の娘を抱えた与一は慌てて歩き出したが、座り込む呂布にふと顔を向けて言った。
「あなたも一緒に行きませぬか? 座っているだけは退屈ですよ」
言葉が通じる筈も無いのだが、呂布は少し考えるように与一を見つめた後、のそりと立ち上がった。
立ち上がっただけではなく、与一が重そうに抱えていた娘を取り上げ、軽々と左脇に抱えた。
右の手に握り締めた方天画戟と思しき長大な戟は肩に担がれる。
「かたじけのう御座います」
身軽になった与一は呂布に礼を述べると、彼と並んで、土方の後を追った。



それにしても暑い。暑すぎる。
土方は袖で額の汗をぐいとひとつ拭うと、眉をしかめて中天の太陽を見上げた。
「暑くてかなわぬな」
生まれ育った武州多摩の夏や、斬り合いに明け暮れた京都の暑さなぞ比べ物にならない。
「まことに」
与一は同意しながら、周囲の草木へ珍しげに眼を遣る。
緑の森林そのものは珍しくもないのだが、そこに生える木も草も花も、これまでに見た事も無い
くらいの奇怪極まる姿形をしていた。
これには土方も同意見である。一方の呂布は黙して語らず、異人娘は気絶したまま。
しばらくの間、声の聞こえる方角へ歩を進めていたが、やがて繁る草木が途切れ、比較的見晴らしの
良い場所に出た。
そこには、六人の男達が、声の主達がいる。

「テメーみてーなオヤジがなんで“キッド”なんだよ! “キャプテン・キッド”とかフザケてん
じゃねーよ! いいトシして海賊ゴッコか!」

「俺の“キッド”は『William Kidd』でれっきとした名字だ! お前こそ“ビリー・ザ・キッド”って
芸名丸出しじゃねえか! 本名教えろ!」

「オレはこっちの名前の方が知られてるんですー! つか21人殺してマジ有名人なんですけど!」

「うるせえ! 鉄バケツぶつけんぞ! 略奪許可証舐めんな!」

「うっせえ! 死ね! クソオヤジ!」

「お前が死ね! 糞餓鬼!」

「バーカバーカ!」

「アホーアホー!」

103 :DRIFTERS VERSUS ...:2010/07/17(土) 00:43:18 ID:HigCykbcP
 
年若い男と初老の男が掴み合い、やかましく罵り合っている。聞こえてきたのは、この二人の口喧嘩
だったようだ。
一人はカウボーイハットにウェスタンシャツ、ブーツ。腰には古めかしい回転式拳銃(リボルバー)が光る。
もう一人はゴワゴワとした厚手のジャケットに亜麻布のシャツ、帆布のズボン。こちらは腰に
海賊刀(カトラス)を下げている。

また、そこから少し離れた大木の根元に二人の人物が座っていた。こちらは中年男と老人だ。
「アウトローと海賊の誇大妄想か。馬鹿は悩みが少なそうで羨ましいわい。なあ、そう思わんか?」
老人は皺だらけの底意地の悪そうな顔を、更に歪めて吐き捨てる。カジュアルな格子縞(チェック)の
半袖シャツとスラックスは年相応に洒落ているが、この密林にはまったく似つかわしくない。
紺のツナギ服を着た中年男は、自分に向けられた言葉にオドオドと遠慮がちに笑うだけ。だらしの無い
ボサボサ頭と無精髭、それに大きな眼鏡が、その卑屈な態度を三割増しにさせる。
「お前さん、名前は何と言うんだね」
「あの、えっと、僕はジェフリーです。ジェフリー・ダーマー。ぼ、僕の事なんか、知りませんよね?」
「知らんな」
こちらを見向きもせず、興味無さげに答える老人。
しかし、ダーマーと名乗った男は少しホッとしているようにも見える。
「あ、あの、おじいさんのお名前は?」
「ヨーゼフ・メンゲレだ」
老人の名を聞いた瞬間、ダーマーは眼を剥き、彼の横顔を食い入るように見つめた。
「し、し、知ってる。ナ、ナチスの殺人医師(ドクター・デス)…… 死の天使……」
「ほう、私はなかなか有名なようだ。としたら、私が知らないだけで、いや知りようが無いだけで、
お前さんもなかなかの有名人かもしれんな。囚人君(ミスター・プリズナー)」
二人共、それきり口を開こうとしない。

更に、二人の殺人者が背を預ける大木の上。地上より7m程の枝に若い白人男性が一人。緊張に顔を
強張らせ、ライフルを両手に抱えている。
最後に、彼ら一団に背を向けるようにして、一人の騎士らしき男が力強く両腕を組んでいた。
全身を西洋甲冑と兜で覆い、赤いマントを羽織った威風堂々たる構えだ。

そして、彼ら六人の男達を呆然と眺めながら、土方と与一が立ち尽くす。

「全員、異人だな……」

「ええ……」

「話は聞けぬな……」

「ええ……」



[続]

104 :作者の都合により名無しです:2010/07/17(土) 13:37:37 ID:mWBsHedW0
出るのは武将かと思いきや、ナチス、90年代の食人鬼やらまで登場とはどんな展開になるのか楽しみだ。

というか、通訳いないのかwww

105 :作者の都合により名無しです:2010/07/17(土) 17:40:56 ID:WH5HT+VV0
おお、さいさんマジでお久しぶり。
ブログも一年ぶりに更新してたんだ。知らなかった・・。
体になにかあったのかと心配しておりましたが良かったです。

原作は存じませんが土方、呂布、那須与一と大好きな人物が
そろってて楽しみです。こいつらがどうナチスを退治ていくのか。
ゆっくりとでも良いんで、続きを待っております。


しかしここだけでなく、お気に入りのスレが本当に人いなくなってるなw
2chも3年持つかなあ。

106 :作者の都合により名無しです:2010/07/18(日) 09:52:28 ID:MdH03HaL0
NBさん帰ってこないのかなぁ…
AABCの続き、いつまでも待ってます

107 :作者の都合により名無しです:2010/07/18(日) 14:53:06 ID:btUKyzvi0
復帰おつですさいさん。あと、ご家族増えるみたいで本当におめ。
復帰、それも新連載ということで、2重に嬉しいです
さいさんの疾走感のある描写で、土方や呂不をかっこよく書いてください

前スレであった復活宣言ってさい氏の事だったのかな?
「ふらーりさんの感想もほしいし」ってあったやつ
やはりふらーりさんはバキスレの守り神なんだな


108 :さい ◆2i3ClolIvA :2010/07/18(日) 17:08:55 ID:+8GkxrWVP
>>107
復活宣言は私ではありません。
私は基本、書き込む際は名乗りますし、そもそも不必要というか無意味な書き込みはしません。

109 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/07/21(水) 00:03:00 ID:rp++tFzB0
>>94
後ずさった位置から、留二亜がホバー走行で向かってきた。
右手を肩越しに背中へ回した、ヒート・サーベルの構え。おそらくまた、
一人ジェット・ストリーム・アタックで来るだろう。三分身しての、ヒート・サーベルと
ジャイアント・バズとオルテガ・ハンマーの三連攻撃。
機動戦士のガンダムはこれを見事に破ってみせたが、ガンダムと違って5倍の
ゲインを持たず誰の援護もない加藤に、同じ破り方はできない。
加藤にあるのは神心会空手と、培われた実戦経験のみ。その二つで留二亜のドムを、
黒い三連星のジェット・ストリーム・アタックを破る!
「コオオオオオオオオォォォォッ!」
試合開始の時と同じく、息吹によって気合を高める。呼吸を整え、余分な力みを
なくし、身体能力を最大限引き出せるようにする。
準備はできた。後はやるだけだ。
「いくぞおおぉぉ!」
さっきは気付かなかったが、今、落ち着いて見ればわかる。この時点で既に
留二亜は三分身しており、縦一列に並んで突進してきているのだ。
ドムに、黒い三連星そのものになって。
まず一撃目、先頭の留二亜がヒート・サーベルを振り下ろす。これを加藤は、
先ほどと同じように真上に跳んでかわした。
留二亜の移動速度は加藤より明らかに速いので、横や後ろにかわすのはムリ。
また、それでは反撃ができない。なにしろ留二亜には強力な飛び道具がある。
だから加藤は、自分の攻撃圏内で一撃目を対処するしかない。しかしヒート・サーベルは
見えない上に高熱だから、真剣白刃取りや受け流しは不可能。となれば、
これ以外に手段はないのである。
「さっきと同じ? 芸がないわね!」
二人目の留二亜が、ジャイアント・バズを……
「そこだああああぁぁぁぁっ!」
空中で加藤が、見えないジャイアント・バズの砲口に右正拳を突っ込んだ。
「どうだ! 胸や腹ならともかく、この俺の鍛え上げた正拳ならば、砲弾の一発ぐらい
耐えるぜ! だがここで暴発したら、お前はどうかな!?」

110 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/07/21(水) 00:04:35 ID:rp++tFzB0
「宙に浮いて、利き腕を封じられて、それでどうして勝ち誇れるのか理解できないわね!」
三人目の留二亜が、二人目を跳び越えた。そして組み合わせた両手による
ハンマーパンチ、オルテガ・ハンマーを繰り出す。
それに対し加藤は、今度はしっかりと上を向いて、思いっきり背中を逸らせてしならせて、
「キャオラアアアアァァァァッ!」
裂帛の気合と共に放った頭突きを、留二亜のオルテガ・ハンマーにぶつけた。
予想外の動きにヒットポイントをずらされたこと、また加藤の頭突きが想像以上の威力だった
こともあって、留二亜のオルテガ・ハンマーは完全に打ち返され、まるで映像の巻き戻し再生
のように戻っていく。いや、それでも勢い止まらず、まるで後ろから引き倒されるように、
後方へと倒れていった。
一人目・二人目の上にいた、つまり結構な高さから、三人目の留二亜は背中で着地する。
「あぐぅっ!」
投げ技で叩きつけられたわけではないが、なにしろ下は岩場。ドム化により多少は
耐久力が増しているとはいえ、鍛えているわけではない小学生の女の子。留二亜は
小さくないダメージを受け、分身が解けて一人に戻ってしまう。
そこに、着地した加藤が走ってくる。留二亜は両手を後ろについて体を起こそうとするも、
間に合わない。加藤が速い。
加藤の、人差し指と中指が、ぴんと伸ばされて矢のように突き出された!
『目潰し? だめ、かわせない!』

ピシッ!

「……っ」
固く目を閉じた留二亜が、こわごわ目を開けてみると。
目の前に、ニヤリと笑った加藤がいた。その手の人差し指と中指で、黒い眼帯を
摘んでいる。
留二亜が、左目にかけていたものだ。
「ジオンのMSたるもの、モノアイじゃないってのは、いけねぇよな?」
言いながら加藤は、眼帯を留二亜に返した。
留二亜はそれを受け取って、俯いた。もう左目にはかけない。
「わたしの……負けよ」

111 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/07/21(水) 00:05:42 ID:rp++tFzB0
「いや、一回目のジェット・ストリーム・アタックで俺は完全にKOされてただろ。
だからまあ、一勝一敗の引き分けってとこだな」
ほら、と差し出された加藤の手を握って、留二亜は立ち上がった。
加藤はほりほりと頭をかいて、
「けど、流石にもうくたびれたから、三本目の決定戦はカンベンしてくれな。
それはまた機会があったらってことで……おい?」
留二亜は立ち上がってもまだ俯いていて、そして、
「……ひっ……く……っ……」
泣いていた。ぽろぽろぽろぽろ、小さな涙の雫が、つるんとした頬を伝って、
岩の地面に落ちていく。
「また、負けた……アイツにもまだ勝ててないのに……」
「まてまてまてまて! そこは今、納得いくように説明してやるから!
だから泣き止んでくれ! な? 頼むから!」
誰も見ていない山奥とはいえ、加藤は慌てまくった。ヤクザ生活をそこそこ送った
彼だが、流石に小学生の女の子を泣かせたことは一度もない。
加藤の慌てっぷりが大げさ過ぎたおかげか、留二亜は逆に、少し落ち着いた。
それでもまだ、涙はゆっくりと滲んできているが。
「納得……? 何が……? わたしの強さは、兄さんへの愛の強さって
言ったでしょ。それが敗れたのは、わたしの愛が弱かったせい……」
「違う! いいか留二亜、よく聞け。モノにはなんでも、質と量ってのがある。
お前の、兄貴への愛は確かに極上だ。質に問題はない。けど、量としては
『1』なんだよ。それに対して俺は、『2』」
加藤はまた、人差し指と中指を立てた。もちろん今度は目突きではなく、
Vサインのように立てて留二亜に見せている。
留二亜は、涙に潤んだ目でそれを見ている。
「まず、俺は神心会空手を愛している。師匠を尊敬し、同輩と磨き合い、
更に道場の外の奴らとも、神心会空手家として拳を交えている。その俺が
負けることは、神心会空手家が負けること。それは我慢できん。これが『1』」
「……」

112 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/07/21(水) 00:06:27 ID:rp++tFzB0
「そして『2』だ。当たり前だが、俺だって生まれた時から空手家だったわけ
じゃねえ。強くなりたいから、始めたんだ。加藤清澄が強くなるため、その
道具として、神心会空手を選んだ」
「ちょっと待って! 加藤さん今、愛してるっていったでしょ? それを道具って」
「ああ。道具として愛してるぜ。一生をその為に捧げても惜しくないくらいにな」
淀みなく加藤に言い切られ、留二亜は言葉を返せない。
「だがな、道具は道具だ。俺は神心会空手家として誇りを持ってるが、
同時に『男一匹加藤清澄』でもあるからな。そいつが強くなれないようなら、
空手の練習なんて無意味だと断じる。これが、『2』ってことだ。で留二亜よ」
加藤は中指を曲げ、人差し指だけ立て、それで留二亜を指差した。
「お前はどうだ? 兄貴のことが大好きだってのはわかった。だがそれは
それとして、『女一匹木槍保留二亜』はどうなってる?」
「え、え?」
ちょっと意表を突かれて、留二亜は混乱する。
「お前、俺と戦い始めた時、『いっきまーす!』って言ったな。その出典は?」
「もちろん、『ガンダム』の主人公アムロ・レイのセリフよ。わたしは
兄さんとのガンダムごっこの為に、隅から隅まで勉強したんだから」
「そこで止まってるから、だ。お前のそこに、愛や誇りはあるか?」
「そこで……止まってる? 愛や誇り……」
そういえば。加藤は『自分』が強くなる道具として『空手』を選んだと言った。
『自分』と『空手』の両方に愛や誇りがある。だから『2』だと。
翻って自分は、『兄さんの愛』を得たいが為にガンダムを勉強し、『ドム』を……
「あっ!」
思わず、大声が出た。そうだ、確かに自分は『1』なのだ。
『兄さんの愛』以外のものがない。『ドム』はその為の道具だが、
加藤の空手のような、愛や誇りはない。
そして、そう、あの憎い宿敵たる『アイツ』はどうかというと。

「拳にガルマ様の御無念をお乗せして……ギレン閣下の
『ジーク・ジオン!』が聞こえてから……打つべし! ジーク・ジオン!」
「黒い三連星が二部隊いれば、オデッサ背後とレビルとを手分けして
攻撃できたのに……という思いが可能にした奥義! 黒い六連星っっ!」
「怖くなんかないよ。だって、ガトー大尉が大活躍してるんだよ!」

113 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/07/21(水) 00:07:15 ID:rp++tFzB0
「アイツは、アイツも、兄さんへの想いを胸に戦ってる。でもそれだけじゃなく、
アイツ自身が、ジオンを深く熱く強く愛している……」
というか、連邦軍を憎んでいる。『アイツ』なら口が裂けても、
「いっきまーす!」なんて言わないだろう。絶対に。
「なるほどな。つまりそいつも、『2』ってことだ」
いつの間にか涙の止まった留二亜は、がっくりと肩を落とした。
自分の敗因に、納得しきってしまったからだ。
「確かに、わたしには『1』しかなかった。わたし自身が、
ドムやジオンを愛せるようにならないとダメなのね」
「ああ。そうすれば、お前のドムはもっと強くなるだろうな。
とはいえお前の目的は、もう達成できてるかもしれんが」
「?」
きょとん、と加藤を見上げる留二亜。
「だってそうだろ。自分が『ガンダム』を好きなわけでもないのに、
兄貴の為にっていう健気な思いだけで、ドムにまでなっちまってるんだぜ? 
もし、俺がお前の兄貴だったら、」
ぽん、と加藤の手が留二亜の頭に置かれる。
「こんな可愛い妹にそこまで慕われて、悪い気するはずねえよ」
「……え……」
留二亜の小さな頭を、覆いつくさんばかりの、加藤の大きな手。
鍛え上げられた固いその手の温もりが、ゆっくりと伝わってくる。
その温かさが、留二亜を見つめる眼差しの優しさと重なって……
「っっっっ!」
ばっ! と留二亜はその手から離れ、顔を真っ赤にして後ずさった。
「ち、ち、ち、ち、違うっ! わた、わたしが好きなのは兄さんだけっ! 
ほ、他の、他の男の人なんて、全然、その、あの、」
「いやあの、おーい? 俺だって流石に、小学生を相手にどうこうって気は」
加藤が何を言っても、頭から湯気の出ている留二亜には伝わりそうになくて。

114 :強くなるのは、なれるのは その2:2010/07/21(水) 00:21:49 ID:rp++tFzB0
「やれやれ。ま、いいや。また、縁があったら会おうぜ。そん時にはお前の
兄貴も交えて、三人でガンダム話をするのもいいかもな。じゃ、あばよ!」
軽く手を振って、加藤は留二亜に背を向けて、歩き出した。
それほど大柄ではないが、逞しさは充分なその背中を見送りながら、留二亜は思う。
『わたしは必ず、ドムを好きになってみせる。兄さんだって、わたしが本気で
ドムを好きになった方が、喜んでくれると思うしね。……ありがとう、加藤さん。
大切なことに気付かせてくれて』
留二亜が、兄以外の男性に対して、ここまで柔らかな表情を見せたのは、
後にも先にもこの時だけあった。



後に、留二亜は。
宿敵『アイツ』と手を組み、この世のものとも思えぬ強大な敵と対峙することとなる。
留二亜が力尽き、『アイツ』もまた窮地に陥った時、最後の最後で大逆転を
もたらしたのは、『ドム』であった。

「きっと、このドムが『留二亜ちゃんのドム』だから……だよ」

115 :ふら〜り ◆rXl0RuLrAVdZ :2010/07/21(水) 00:23:23 ID:rp++tFzB0
完結です! ご覧頂き、ありがとうございましたっ!
対象が恋人であれ家族であれ、こういう、ヒロインの「健気」とヒーローの「正義」がありゃあ
私は生きて行けそうな気がします。

>>さいさん(お帰りなさいませっっっっ!)
歴史人物大集合といえば、「ワールドヒーローズ2」を思い出します。本作の場合、誰が
どういう基準・目的でどこに集めたのかがまだ謎ですが……メンツを見る限り、なかなかに
キナ臭そうな。今のところ女の子は一人だけ(やはりジャンヌか)ですが、他には来るかな?

>>96
愛は奇跡を起こすということでひとつ。

>>106
俺、NBさんが連載再開されたら、「ブラックキャット」第一巻を買うんだ……と
フラグらしきものを立ててみる。
あと、私が「ネウロ」を知り全巻購入したのは電車魚さんの影響なので、
ご報告したいんですけどねぇ。
「武装錬金」はさいさんやスターダストさんやその他大勢、「殺し屋1」は外伝さんで、
「アカギ」はパオさんとVSさん……多分、まだ他にもあったかと。

116 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2010/07/21(水) 11:43:26 ID:LCGwQAVp0
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1147.html

ちょっくら時間に余裕がないので、まとめの方に直接保管しました。
よろしければ見てくださいな。

前回>>79からちょっと間が空いちゃったなあ…。
次はもっとスピードアップせねば!

>>81 全部は無理。今回みたいな形にしても、相当な量になるので、基本はキンクリ発動です。

>>邪神?さん
トニオさん…哀悼…
そして救世主・聖戦士ジョセフキターーーーー!
殺人鬼とおじいちゃん、勝つのはどっちだ!?
BBB、原作だと更に虐待が加速しています。特に短編集は酷い。
どう見てもジローさんはコタロウを殺す気だとしか思えません。

>>87
   //   , -─;┬:─‐- 、        )
. //   /  ヽ  i  r'    \     (  ………
 /   .,'     , -─- 、    ヽ     ) ハシさん……
     /    /      ヽ    .ヽ     (
      |{:    l           l     }|    ) ………
  E''ー-|{    {  ,ィノl人トヽ、 トi   }l-‐'''ヨ {  マジ……
. E..三l| {   l. (l'≧ ll ≦゙l) :| |   n;|三..ヨ ) すんませんでしたっ…!
.     |.! {  |! ト∈ゞ'∋イ | :!   4!!:   (
    | | '  || |:::::`ー'´::::| |:::|.   !:!:    `フ'⌒`ー-‐
     |. }   { W::::::::::::::::::::W:::::}   { |::
     ヽ|.   |/:::::::::::::::::::::::::\|.   |ノ::://
.      |   |::::::::::::::::::::::::::::::::::l   |//
      !  |::::::::::::::::::::::::::::::::::::!. //
      |   |:::::::::::::::::::::::::::::::::://!、      /
    /, r- ヽ::::: :::::::::::::::://  、、\  //
     !L{」_厂ゝ):  ::::::://:(.{⌒)_},},リ://
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
             ヽ     \    ヽ ̄

>>88 最初はレッドさんと闘わせるつもりだったから出したけど…プロットの変更で…
    霊夢は犠牲になったのだ…路線変更の犠牲にな…
>>90 あれは酷い…本当に酷すぎる。

>>ふら〜りさん
加藤、男前…!ドムなのに<いっきまーす!>なのは、そういう理由だったのね。
しかし<空手は道具にすぎないけれど、それを心から愛している>というのは心を打たれました。
SSにも繋がるものがあると思う。意味もなくネタを乱発してるだけのどこかの誰かに言ってやりたい。
(僕の事です)
妹ガンダム、ちょっと見てみようかなあ…。

>>さいさん
復活、おめでとうございます!
時代を越えて集められた英雄・豪傑…ワクワクするじゃないですか!しかしジェフリー、希代の殺人鬼の
くせにおどおどしすぎだろう…これからブチ切れていくんでしょうか?
一癖も二癖もある連中ですが、これからどうなっていくのかマジ期待です。

117 :作者の都合により名無しです:2010/07/21(水) 20:00:40 ID:S14tYS8v0
             ,,/'゙ ヽ'゙  ヽ| ゙ ヽ、
            /,. !.  '゙      ゙ヽ、ヽ、
           ///\ ゙ 、        ゙ヽ ヽ   ヴォォォォッ!
.         ////ヽヽ、 ゙ヽ、       )/、
.       //////! 、゙ヽ、゙ヽ、.   ,.ノノミミ、
      ////,'//彡i:.;:;:ヾ゙!、゙ヽ、 ゙''''゙゙ ,ノヾ、))!、.
     /////,'/彡彡i;:.':i  '゙、''ヽ、___,/..',!ヽ、//!iヾヽ-‐'''ツ-..,,
   ////l///////゙,';:;:/゙ヽ、 ゙''''゙ヾ゙゙ヽノヾ/ノ/ !,゙゙/゙゙ヽ,‐'゙/ヽ、.
  ////////// /.ヽ    ゙ヽ、 i   iノ゙゙゙゙゙゙/! !‐‐゙ヽ,./\/、.
//////,/..................,-‐'゙、_ヽ、.,_   )|   |-‐'゙ヾ'゙ i゙゙ ヽ、 ヽ-'゙ヽー--ゝ
// /////‐'゙゙ ヽ......i ヾ゙゙'i::ヽ,,,,,,゙''ー-'ー--‐' //  i ヾヽ,,,,,ヽ...ヾ、  ヽ,,_
./'  // //'゙,,__/゙ ,,...'゙   ゙'''|ノ,__ |  ,、  lノ_ /' ‐‐゚ |゙o'l. _,<,_ ,; \\'` ゙' ,/゙゙゙゙ヾヽ、_
  /' ///),,,_/;::;/゙ ,'    l,'゙ヾヾ)___|‐ 、 ll、、ヽ 、,,,,....l ゙ '<_  ,.)''‐-..,,  ゙'v''゙ ,.'゙;:'゙ヾ...,,,__)
 /'  i.-/, _,(,,../ ヾl    (,,.. _,.ノ-,:!ヽ| |||ヽヽ,_     ヾ'i''゙ ,.!'-‐)、゙''ー=ヾ、'゙''ー==ヾ==ヽ
プレデター


118 :作者の都合により名無しです:2010/07/22(木) 13:17:37 ID:7ekzOxm60
ふらーりさん完結お疲れ様です。でももう終わっちゃうのか・・。
前回と最終回は本当にふらーりさんの作風だなあw余人は真似できん。
次スレに久しぶりにふらーりさんの作品名が載ると思ったのにw


サマサさんお疲れ様です。
レッドさん、次戦ではベストコンディションに近い状況で戦えるのかな?
それでも幽香は難敵ですな。実力ではハッキリレッドさんより上だし。
ある意味、「2回戦あたりでラスボス並の強敵とあたる」というのは
トーナメントを盛り上げの王道かも。


119 :作者の都合により名無しです:2010/07/22(木) 23:00:04 ID:upXmROOt0
短かったけど久しぶりにふら〜りさんワールドが見れて楽しかった
また、なんか書いてください

それにしても東方の世界って強いんだね
レッドさんより普通に戦えば強いやつばかりかな

120 :作者の都合により名無しです:2010/07/23(金) 01:10:18 ID:Nw8M33Sd0
ふらーりさんの連載が終わってしまったのは痛いけど
サマサさんもペース上げてくれるみたいだし、
さいさんも復活したしハイデッケさんも書くみたいだし
復帰宣言してる人もいるし、まだ持ちそうだねバキスレ
ふらーりさんお疲れ様。
短編だったけど、加藤も結構男らしくてよかった。
瑠二亜とかぜんぜんわからんけど…w


>幻想郷最強の一角―――風見幽香!
化け物揃いの中でも上位クラスだからな。
レッドも化け物だけど、化け物の度合いが違うからな。
ヴァンプと愉快な仲間たちと遊んでいるのとは訳が違う。

121 :永遠の扉:2010/07/24(土) 05:21:32 ID:jLeyiEpW0
第094話 「斗貴子が防人に任務報告をする。そして迫る影……」

【報告書】

 9月10日午後6時頃、銀成市北東山林部にてホムンクルス30体を確認。これを撃破。
 人質となっていた開盟学園生徒(男性・17)は無事保護。

 そう締めくくられた事務的文章満載のA4用紙から目を上げると、防人衛は深い溜息をついた。
「何か不備でもありましたか」
 すかさず卓袱台の向こうで鋭い瞳が輝いた。津村斗貴子。後頭部から肩めがけ急降下するショートボブは切り揃えたと
いうより「長いと邪魔なので自ら背後から斬り捨てた」という方が適切だ。そういう物騒な形容が似合う一直線の髪が揺ら
めいたのは姿勢を正し、卓袱台の縁から防人を直視するためである。続く釈明。曰く、人質に怪我はない。曰く、錬金術に
ついての一切合切については口止め済み。湯呑をごとりと置いてからこっち、凛々しい唇は歌のように報告を口ずさむ。
「人質となった少年やその友人たちの住所も把握済みです。あとはいつも通り戦団に事後処理を──…」
「いや」
 歯切れの悪い言葉を漏らすと、その裏に潜む言葉を彼女なりに想像したのだろう。凛々しくも美しい顔がフと微妙な不安
に曇った。同時に細く白い指──編み物でもやっている方がお似合いで、可憐な。とてもそれが常在戦場で目つぶし眼球
摘出なんでもござれの屈強赤手とは想像しがたい──が報告書に伸びた。貸して欲しい。そんな手つきだった。
「記入に不備があれば言って下さい。すぐに直します」
「いや。ブラボーだ。いつもどおり完璧なんだが」
 防人は視線を彷徨わせながら「とりあえず」という手つきで報告書を卓袱台に置いた。
 何といっていいか分からない。そんな任務の結果は本日2度目である。
(あの事件は仮面の戦士たち……ディケイドとディエンドだったか。別の世界の者たちの協力で解決したというが──…)
 2時間ほど前に中村剛太から受けた「LXE残党+αによるメイドカフェ襲撃事件」も大概だったが、いま斗貴子から報告
を受けている事件もなかなか負けず劣らずの奇抜さを秘めている。率直にいえばそれが感想だった

 言葉を探しながら時計を見る。寄宿舎はそろそろ老朽化の時期にあるのだろう。黒ずみと蜘蛛の巣が目立つ鴨居の上で
丸い時計が午後10時を指している。
 9月10日。戦士に「ちょっとした騒ぎ」がよく降りかかった日だ。それもそろそろ終わりに近づいている。

 とにかく、防人は言葉を探していた。生真面目な空手部主将がそのまま年を食ったような顔の彼は御世辞にも美形とは
言い難い。「いい男」との評もあるがそれは刻苦修練に耐えてきた男ゆえの精悍さゆえであろう。
 無造作に切り詰めたギザギザ髪、太い眉毛。顎にはゴマのような無精ひげが生えている。
 そんな顔が先ほどから小難しげに歪んだまま卓袱台を睨んでいるのは、やはり言葉を探しているせいだ。
 戦士長なる役職にある以上感想以上の──厳然とした物。部下に聞かせても役職相応の権威が失墜しない、威厳の
ある言葉を吐き続けねば組織は持続しない。役職ある者が軽んじられるようになればいずれ役職とそれが帰属する組織
自体までもが軽く見られ、緩やかな瓦解へ向かう──感想以上の言葉を吐かねばならぬ。
 決意と共に防人の眉根の肉が盛り上がる。引き締まった顔立ちが更に粛然と引き締まる。
「俺が聞きたいのはキミに協力したという者たちの事だ。その、だな」
 とても20代とは思えぬ深みのある渋い声を若干震わせながら報告書の中腹を指で2度叩く。ツルツルと編み込まれた
繊維たちが小気味のよい音を立て、斗貴子もそれに誘われるように身を乗り出した。
「はい。殺し屋ですね」
 指差された箇所を事務的に──どこか千歳に似ていると思った。女性はみな戦闘またはそれに準ずる任務をこなすうち
事務的感情ばかりを発達させるのだろうか──反復すると、斗貴子は不思議そうな表情を浮かべた。
「殺し屋たちについては私と協力してホムンクルスを斃した後、どこかへ去って行きました。しかし職業が職業です。私達
のコトを口外する心配はありません。……例え口外してもあんなフザけた連中のいうコトなんか誰が信じるか」


122 :永遠の扉:2010/07/24(土) 05:23:03 ID:jLeyiEpW0
 やや荒ぶった最後の言葉は斗貴子なりの心情吐露なのだろう。ふっと視線をやって斗貴子はお得意の不機嫌そうな半眼
で腰に手を当てていたが、防人に気付くと慌てて居住まいを正した。報告時にその態度は頂けないと思うがまだ若い戦士で
付き合いも長いので追及はしない。むしろ聴きたいのは……。
「えーとだな。戦士・斗貴子。話を整理しよう」
「はい」
「キミは今日、LXEの残党を探しているうち、銀成市に遊びに来た別の学校の生徒と知り合いになった」
「はい。先日『あの共同体』の副長が引き起こした時間促進事件。彼らはあれがもう一度起こらないか好奇心に駆られて
この街にきたようです」
「ウム。そこまでは報告書に書いてある通りだ」
「彼らは道が分からないとの事でした。そこで先日の舞台の1つとなった大交差点へ道案内した所」
「運がいいのか悪いのか。度重なる残党狩りに怯えた残党たちが最後の食事とばかり大交差点に繰り出してきていた」
「もちろん全部ブチ撒けてやりました。一般人の被害はゼロです。しかし」
「キミを恐れた残党がたまたま近くにいた他校の生徒を人質に取り、逃げた。アジトの場所を教えてな」
「はい。助けたくばこの街にいる戦士の持つ核鉄総てを持ってこい。それが要求でした。だが私の答えは一つ。『聞けるか。
貴様たちに核鉄を渡せばより多くの人たちが犠牲になる! ここは人質を何とか助けた上で全員ブチ撒ける!』です」
「アジトの場所をばらすのは幾らなんでもマズかったな。お前が相手なら尚更だ」
 流れるような展開である。もっともその程度の事は戦士をやっていると珍しくもない。ただし。
「だがなぜ、そこで殺し屋が出てくるんだ?」
「さらわれた生徒の友人の友人が、殺し屋のサイトのオーナーだったからです」
 事も投げにいう斗貴子に防人は言葉を失くした。いやに現実離れしている。いやそれをいうなら防人が平素使役する武装
錬金や戦う相手たるホムンクルスもとっくに現実離れしているが、いちおう「錬金術」というケミカルな術理の集合体としての
説明はつけられる。一方、「殺し屋」。戦闘に身を置く防人でさえ全くお目にかかった事のない代物だ。金品その他の対価
を受け取り人命を奪う職業。戦団の奇兵はおろかホムンクルスにさえいるかどうか。
「さらわれた生徒の名前は藤崎佑助。所属は私立開盟学園。学園生活支援部部長です」
「それは報告を受けている。あだ名はボッスン……だったな。そしてその友人が鬼塚一愛(ひめ)と」
「笛吹和義。所属は藤崎佑助と同じであだ名はスイッチ。重度のネットマニアです。弟の仇を殺す相手を求めネットサーフィ
ンをしている内、殺し屋のサイトを見つけたとか」
「ええと」
 防人は頬にうっすらと汗をかいた。インターネットには詳しくないが、現代社会の病理を垣間見た気がした。
「そのサイトの名は『職業・殺し屋』。殺人依頼が集まる場所です。その依頼を殺し屋たちは逆オークションでどれだけ安く
請け負えるか……競うようです」
「そ、そこのオーナーと生徒・笛吹は知り合いだったのか」
 つまらない反問だと防人は思った。だが口の中が心持ち渇いている。喋らなければ口腔粘膜が罅われそうな気がした。
「オーナーの名前は宮内啓だそうです。本名かどうかは知りませんし彼と知り合った笛吹和義が目的を遂げたかどうかも
知りません。重要なのはホムンクルスに攫われた人がいて、その人を助けるには手勢が必要だったという事です」
「戦士・剛太や桜花、秋水はその頃メイドカフェで別件を調査していたしな」
「ええまったく。人手がいるっていう時にたかが2体に手をかけ過ぎです」
「……すまん。俺の采配ミスだ」
「大丈夫です。戦士長の采配が悪いのは昔からです。私は大交差点で10体ばかり斃しましたから。一人で」
 斗貴子は相当怒っているらしい。冷えた目でプイと顔を背けた。
「だからこの街をいつまでも苛み続けるホムンクルス。そして信奉者。奴らを全員ブチ撒けられるなら殺し屋の手を借りて
も構わない! というか剛太はあのクソ忙しい時に何やってたんだ! メイドカフェぇ!? 桜花に骨を抜かれ過ぎだ! 新
人ならもっとシャキっとしろ! シャキっと!!」

123 :永遠の扉:2010/07/24(土) 05:24:16 ID:jLeyiEpW0
 卓袱台が揺れた。斗貴子が立ち上がりがてら両手で叩いたのはいうまでもない。
 ボルテージが上がりかけている。ここで油を注ぐと火渡以上の炎が燃えあがって手に負えなくなるのは重々承知の防人
だ。話題を変える事にした。
「逆オークション、という事はやってきた殺し屋は1人か2人なのか?」
「10人ぐらいです。オーナーの友人の友人を助けるため特別に招集されたとか」
「はあ」
 斗貴子の目が冷えて行くのを防人は見逃さなかった。

「色々いました。紆余曲折を経てたどり着いた奴らのアジトでは30体ばかりの襲撃を受けました。しかしまず人質を取っ
ていたホムンクルスが攻撃を受けました。やったのは左目の周囲に蜘蛛の刺青をした男です。鞭のようにしなる剣がホム
ンクルスの目を打ちました。もちろん錬金術の産物じゃありませんからダメージはありません。しかし怯ますには十分でし
た。すかさず飛び込んできた青年……後で聴きましたが鎌倉時代から続く武術の継承者だそうですね。彼が人質を素早く
安全な場所へと運びました。ホムンクルスたちの運命はここで決定した……?。ええそうです。後はもう殺し屋たちのやりた
い放題でした。白状しますが私でもあれだけの殺戮はできません。私は信奉者以外の人間は殺しませんし、信奉者でさえ
殺すためだけに殺します。ですが彼らは違う。愉悦の為だけに相手の命を奪う。それは例え相手が人間をやめた存在でも、
錬金術以外の攻撃では決して斃せないとしても、です。『どうすれば殺せるか』。まずそれを考え、戦いの中で実行します。ひ
どい戦いでした。私が斬り飛ばしたホムンクルスの牙、爪、そして装甲。何か分かりますか? はい。彼らが争って奪い合った
物です。彼らは一瞬にして同じ結論に達しました。

”錬金術以外の攻撃で斃せないなら錬金術製の化け物の体を使えばいい”

戦士でもない人間に何ができる。当初こそ下卑た笑いを浮かべていた残党たちが悲鳴を上げ、逃げ始めるのにさほどの
時間は要しませんでした。それほど手口は鮮やかでした。殺したホムンクルスの体が消滅する事に気付いた者は敢えて
『武器』の持ち主を放置しました。生殺しです。口の中と両手足のド真ん中に自分の長い針を突き刺され、地面に張りつけ
られたハリセンボン型は結局仲間によって殺されましたね。お前のせいで相手が強くなっている、と。『ああ、自分が助かる
ために仲間を殺すとか、なんて卑しいんだ』……卑しい笑いを浮かべ踊ったのは銀髪の蜘蛛です。鎌に死骸の粉をまぶし
狂笑を浮かべる女の横でホムンクルスが次々と解体され、それは別の女の用意した鍋の中で煮込まれ異臭を上げました。
拳闘と古武術の使い手がホムンクルスの下顎……私が斬り飛ばした人間型の物です。それをメリケンサック代わりにし
てホムンクルスの頭蓋を割り、章印を貫く姿に人質の男子生徒は震えあがりました。信奉者も何人かいました。さっき戦
士長も死体写真で確認したと思いますが、いずれも報酬目当ての手引きの名手たちです。複数の共同体を渡り歩いて
は勤務先……学校や寮の構造などの情報を横流しし莫大な報酬を手にし続けてきた、それでいてホムンクルスへの格上
げは一切望まない奇妙な連中です。しかし彼らも殺し屋の手にかかり無残な死を遂げました。木の上から大きな石を投げ
落とされ頭を潰された奴もいれば何らかの手段で首を絞められた者もいました。やったのは2人だそうですが、気弱なサラ
リーマン風の男以外には誰も見当たりませんでした。顔を見られたくない、そんな殺し屋だそうです。戦闘も中盤に差し掛
かるとホムンクルスの体で作った即興のアーチェリーが私の周囲を飛び交い、それはしばしばバルキリースカートを傷つけ
ました。跳ね上がった矢は三重人格の殺し屋の手に渡り、それは決まって性別が明らかに男であるホムンクルスの……
その、臀部に突き立てられました。私でもやらない拷問です。私ならせいぜい爪の間にバルキリースカートを刺し、1時間
かけてゆっくり剥がすだけですから。3枚剥がす頃には必要な情報はほぼ総て手に入っています。それから鉄パイプで残
る信奉者を殴り続けている教師風の女もいました。あ、はい。数少ない生き残りの安藤と古畑です。様子はどうですか。
そうですか。脳に深刻な障害が。手足の麻痺は取れない……。そうですか。感情の方もおかしくなり、時おり希望の船がど
うとかカイジさんがどうとか叫んでいる……と。そうですか。人間を殺してホムンクルスになろうとした報いですね」


124 :永遠の扉:2010/07/24(土) 05:26:01 ID:jLeyiEpW0
 責められる方が可哀相だ。防人はつくづくそう思った。

 斗貴子にとって残党などというものはつまり、上記のような10人分の観察をしながらでも殲滅できるほど大したものでも
ないらしい。実際、彼女は傷一つない。11対30(プラス信奉者数人)。そんな乱戦をくぐり抜けてなお無傷なのである。
「殺し方は様々でしたが、みな楽しそうに笑っていました」
「なあ、そのサイトはどこなんだ。一刻も早く警察に連絡した方がいいような……」
「無駄です。彼らは警視庁警備局公安課の課長とつながりがあります」
「…………」
「とにかく、です。ホムンクルスは全滅し、人質も無事解放されました。信奉者が何人か死んだのはカズキの言葉を考えると
簡単に切り捨てていいものではなかったとも思いますが、しかし彼らに償わせたところで殺された学生たちが戻ってくる訳
でもなし、自業自得です」
「それは……キミの本音なのか?」
「…………」
 斗貴子は俯いた。ややトーンダウンした声が漏れた。
「彼らが殺すのはほとんど悪人だそうです。何故ならそうじゃないと漫画的に盛り上がらないからです」
「うーむ。確かに善人を殺すだけの漫画にブラボーな読後感はないだろうし、そもそも売れないだろうが……」
「そしてホムンクルスに進んで関わるのは悪人か狂人のどちらかだけ……。むしろそういう人間たちこそ信奉者やホムンクル
スになる前にいなくなる方がこの世界の為です」
 防人は軽く呻き、両腕をねじり合わせた。正論ではあるが人間的ではない。
「もちろん、今回の一件で殺し屋たちがホムンクルスに憧れ、格上げを望むようになれば斃します」
 継ぎ足すように漏れた声音は凛としつつも防人の表情を曲解したふうである。
(やはり戦士・カズキの不在のせいで心が渇いているようだ)
 いやに斗貴子らしからぬ淡々とした報告の様子もおかしい。防人相手の敬語。報告用の事務的態度。2つ差し引いたと
してもまるで何かを無理に抑えているような調子に見える。


「どうしたものか」


 報告はこれでよろしい。斗貴子を退室させた防人は顎に手を当てフムと考え込む仕草をした。


(今日のメイドカフェの騒ぎで鈴木震洋の保護観察処分は戦団での拘束に切り替わった。先日下水道処理場で秋水に斃さ
れなかったLXE残党もほぼ総てが殺し屋たちと戦士・斗貴子によって始末されたとみていい。となると彼女の心のケアをす
る余裕ぐらいは出てきたかも知れない)

 どうしたものか。

(信奉者といえど同じ人間ではある。それが殺し屋に蹂躙されている姿を見て何の感情をも示さない……というのはなあ)

 そこまで考えた防人の顔が何かに気付いた。やがて精悍な顔つきはこれまで全ての修練を台無しにするようなだらしの
ない笑みを頬一面にニンマリと広げた。ツナギのポケットに伸ばした手はやがて携帯電話を引き抜いた。

「あぁ、もしもし。俺だが。一つ、頼みがある」
















125 :永遠の扉:2010/07/24(土) 05:29:46 ID:jLeyiEpW0
「というコトで斗貴子さんは今日から演劇部員になったのでしたー!」
 翌日。突如自室に来たまひろと彼女が撒く紙吹雪を交互に見比べながら斗貴子はとりあえず声を上げた。
「ちょっと待て!? 演劇部ぅ!? なんで私が入らなきゃいけないんだ! そりゃ確かにこの前、演劇部のドレス破いて核鉄
取りだしはしたが幾らなんでも唐突だ!」
「えー、いいじゃない。部活はいいよ。楽しいよ? おぉおぉ……熱く燃えたぎる情熱の炎! みんなで目指す栄光の頂点!
青春だよっ! 部活と言うのはつまり青春なんだよ斗貴子さん!」
 豊かな胸の前で拳を固めて力説するまひろはいちいち妙な抑揚をつけたり可愛らしく叫んだりしている。つくづく天真爛漫
な少女だと斗貴子は思った。
「いい! 私はそういうのは苦手だ! だいたいこの学校にいるのはホムンクルスを斃すためだ! 部活なんかやって時間
が潰されるのは好ましくない! 結構だ!」
「んっふっふっふ」
 叫びもつかの間、突如目を細めて笑いだしたまひろに斗貴子は唖然とした。
「何をいってももう逃げられないよ斗貴子さん! ネタはとっくに上がってるんだから!」
 じゃーん! 片手持ちで突き出された一枚の藁ばんし。その内実を理解するのに1秒と掛からなかった。
「入部届ぇ!? ちょっと待て! 書いた覚えなんかないぞ!」
「でも実印付きだよ! ほらっ! ほら! 筆跡もぴったり!」
「うへへへ!?」
 世にも情けない叫びとともに眺める入部届けには……確かに「書いた覚えのない」自分のサインがあった。サインというより
「何か報告書の氏名欄に書いた奴をスキャナか何かでパソコンに取り込んで印刷した」という感じだ。
(ふふふ。そういえば昨日戦士長に報告書を出した覚えがある。成程。犯人はだいぶ絞られてきた)
 実印にも見憶えがある。斗貴子の記憶が確かなら、同じ物を防人が戦団の諸行動に必要だとかで預かっていた筈だ。
「ふ、ふふふ。誰が押してくれたかは知らないがよくもまあこんな仕打ちを……!!」
 前髪の奥で片目が怪しい光を放つのを禁じ得なかった。
「ちなみに桜花先輩の許可も貰っているよ! 帰宅部所属もサボりも不可! っていってたよ!」
(あの生徒会長いつかブチ撒けてやる)
 怒りに戦慄く拳を必死に抑える。
「でもだなまひろちゃん。私は本当、団体行動とかは苦手なんだ。だから──…」
「ほう。ヒマ潰しがてらからかいに来てやってみれば。貴様もあの演劇部に入るとはな」
 嫌な声がした。例えるならヘドロとマグマをごった煮にしている声。決して晴れない何事かを抱えている者だけが発する嫌な
声だ。振り返る。窓の外に異様な物が浮遊していた。物と言うかそれは蝶々で、胸が大きく肌蹴たエレガントなスーツの背中
からドス黒い翅を2つ生やして浮いていた。顔にはおなじみ蝶々覆面。とくれば誰か言うまでもない。
「パピ──…」
「監督!」
 斗貴子がずっこけたのは咄嗟にまひろを守ろうとしたからである。守ろうとしたのはパピヨンがホムンクルスだからで一方
まひろはそのエサたる人間だ。だから守ろうとしたのだが、しかしはてさて「監督」? どうやらまひろの広い交友範囲には
パピヨンも含まれているらしかった。
 ドブ川が腐ったような目。かつてそう形容した瞳が蝶々覆面の奥でぎょろりとまひろを捉えた。
「フン。武藤の妹も一緒か。まあいい。貴様はあのボンクラ揃いの演劇部の中でまだ比較的筋がいい。多少のサボリは特別
に大目に見てやろう」
「ありがとう監督!」
「だが忘れるな! 日々の腹筋と発声練習! その2つの基本を怠る者に決して栄光のスポットライトは当たらない!」
「はい監督!」
「そして演ずる時は優雅に! そして華麗に! 誰もが目を見はらずにいられない蝶のように! 舞台と言う名の空を羽撃け!」
「はいっ! 監督!」
「じゃなくて、なんでキミたちが知り合いになってるんだ!」
「あー。それはだね。昨日突然監督が演劇部に来て、なんやかんやで監督になったんだよ」
(いまいちよく分からない)
「フン。最近研究室に引きこもりが1人、頼みもしないのに飛び込んできてね。俺の体調について口うるさくがなって来る。
もちろんあの研究室は俺の所有物だ。よって出ていくよう脅した。だが奴ときたらちっとも言う事を聴かん。ついに腹が立っ
た俺はあんな引きこもりの相手などやめ俺らしく空へ羽撃いた!」
「……相手が誰かは分からないが、要するに説教に不貞腐れてうろついてただけじゃないか」

126 :作者の都合により名無しです:2010/07/24(土) 05:31:45 ID:Q1zUg5v+P
「そして俺は格好のストレス解消の場所を見つけたという訳だ。あの演劇部……揃いも揃ってボンクラ揃いだがそれだけに
このパ・ピ・ヨ・ンの色に染めがいがある!」
「!! 貴様! まさか!?」
「そう、そのまさかだ! 俺はあの演劇部を支配する! ゆくゆくは全員に俺と同じ格好をさせてやろう! あの口うるさい
引きこもりが大事にしている演劇部を滅茶苦茶にしてやる!」
「え! 同じ格好! それはちょっと恥ずかしいかも……」
 大きく胸が開いたパピヨンスーツを見るまひろに斗貴子は鋭く叫んだ。
「というか人間として最も恥ずべき行為だ!」
「ででででも頑張るよ。監督がやるべきだーっていうなら恥ずかしいのもガマンして一生懸命頑張るよ!」
「そう言う問題じゃない! そもそもだな……」
「フン。入部を辞退せんとする腰砕けの貴様には関係のない話だろう」
「何!?」
 パピヨンときたらいつの間にか部屋に入り込み、机の上で足さえ組んでいる。嫌な男だ、斗貴子はそう思った。人が慌て
ふためく様子を楽しんでいる。だから余裕があるのだろう。
「部外者の貴様はせいぜい指を咥え外から演劇部が麗しきパピヨン祭りを催すのを観ているがいい!」
 牙も露に嘲笑するパピヨンに向きなおった斗貴子は、やがて──…

「入部するって怒鳴っちゃった訳ですか」
「ああ。まひろちゃんはカズキの妹だ。パピヨンの格好なんかさせてたまるか」
 ロッテリやのテーブルの向こう側で乾いた笑いが巻き起こる。剛太。後輩は「どうかなー」って思っているらしい。
「とにかくパピヨンの目論見は絶対に阻止だ! 逆らっていればその内飽きてどっか行くだろう」
「ま、戦いにならないのは平和な証ですね」
「まあな」
 ガラス越しに外を見る。笑み。焦り。怒り。楽しさ。行き交う人達は思い思いの表情を浮かべ歩いている。
 ビラを配っている女性看護師もいる。献血の誘いかと思ったが、どうやら新しくできた病院の宣伝らしい。運良くガラスの
傍を通る人がそのチラシを持っていたので内容が分かった。
「昨日の2つの騒動で残党は全滅したとみていい」
「キャプテンブラボーもそういってましたよ。後は何か変わったコトがあり次第、対応していけばいいって」
「……フン。私が演劇部に入るコトになったのが一番変わってるがな。どうもタイミングが良すぎる。パピヨンの監督就任を
見計らったように私が勧誘……どう考えてもおかしいだろ」
「まあ、キャプテンブラボーには何か考えがあるんでしょ。他はどうです。学校の付近に不審者が出たりとかは」
「そういったコトは特にない。強いて変わったコトを上げるなら──…」
「なら?」
「銀成学園の理事長が、最近交代した」
 剛太は目を丸くした。
「それのどこが変わったコトなんですか先輩?」





「ねー秋水先輩」
「なんだ」
 工作室で板を切りながら秋水は無愛想に答えた。入院中という事もあり激しい運動を禁じられている彼だが、根は剣客
である。動かぬと却って調子が悪い。だからヌっと病院を抜け出してはまひろ属する演劇部の大道具を作る手伝いをする
のが目下のところの日課である。
「新しい理事長さんって可愛いよねー。ちっちゃくて、でも何だかおばあちゃんみたいで」




「前の理事長の孫らしい」
「孫が理事長やってるんですか?」
 ああ、と斗貴子は頷いた。
「後継者としていろいろ勉強させたいというコトらしいが、まだ子供の理事長なんて生徒にとっては迷惑だ。これだから権力者
の考えるコトは分からない」
 斗貴子は(でたくもなかった)全校集会を思い出していた。



127 :作者の都合により名無しです:2010/07/24(土) 05:35:47 ID:Q1zUg5v+P
.

 壇上に上がった少女はおどおどと生徒たちを見渡し、机の前でマイク片手にこう呟いた。
「おうおう。ヌシらとかく活きが良さそうで結構結構。わしがしばらく理事長を務めるコトと相成った木錫(きしゃく)というもの
じゃ。名字はじさまのと同じじゃよ。しばらく宜しく頼むぞえ」
 いかにも特別にしつらえたという感じの女子制服を小さな体の周りでぶかつかせる彼女の姿に、斗貴子はなぜかちょっと
した嫌悪を覚えた。特別職にある者の勝手な人事に対する憤りだろうか? 分からない。
 とはいえ目下のところこの髪を後ろで括ってフェレットのついたかんざしを差している新理事長の受けはいい。
 男子生徒も女子生徒もこぞって世話を焼く始末だ。




「とにかく」




「パピヨンの事さえ除けばこの街はもう大丈夫だ」


 斗貴子の呟きに剛太も頷いた。








 とある市民は見た。


「ほーら。もう大丈夫でしてよ。歯の痛いの直ったでしょ?」
 銅色の横髪をくるくると巻いた女医さんに頭をなでられた娘が嬉しそうに微笑んでいる。
 不思議な病院だ。患者達がみな一様に首を傾げていたのが今ならよく分かる。
 放置に放置を重ねたせいで悪化した虫歯。素人目でも抜くしかないほどボロボロだった歯。
 それが、再生している。
「でも痛いのには懲りたでしょん? 病気は予防が大事ですの。だから歯磨きなさい。分かりました? そう。お分かり」
 じゃあコレ上げる。娘にハシビロコウのぬいぐるみを与え、輝くような笑みを浮かべた女医さんには目が眩む思いだった。

「んふ。ウチは老若男女問わずでしてよ。泌尿器科でも肛門科でもアリアリ……何か困った事がおありでしたら夜でもどうぞ」

 キツネ目の中で好色な炎が灯るのを見た時、とある市民は決意した。

 また、来よう。

 銀成市のビル街の中に新しくできたこの病院に……と。


「さーて。患者さんたちは全員帰りましたわね。出てきて結構ですわよ」

 誰もいなくなった待合室にぽつぽつと黒い影が現れた。
 雰囲気づくり。艶然と微笑む女医が消灯したのを合図に、影たちは思い思いに喋り出した。


128 :作者の都合により名無しです:2010/07/24(土) 05:36:56 ID:Q1zUg5v+P

「ぬぬ。そうですそうです、そのようです! しかし簡単に欠如が治るとかこの上なく妬ましいです!」

 1人は長い髪を持つ女性のようだった。影の状態でも冴えない感じがにじみ出ているようだった。

「……行き違いだね。時間促進事件の最中撮られた写真を手掛かりにきたけど……光ちゃんは戦団に護送されてるみたい」

 2人目に喋った影の声はひどく小さかった、暗闇の中で白く輝く髪は短く、ウェーブがかかっている。

「鐶光。妹の心配をするとか青っちは相変わらず優しいっ! イヨ! 惚れがいがあるってもんでさあ!」

 いやに太鼓持ちの気配がある3人目の横で、いかにも人間離れした──先ほど女医が患者に与えたぬいぐるみそっくり
のフォルムだった──4人目が「憂鬱だあ憂鬱だあ」と身震いした。

「オイラはさっさと戦いを終えたいのにどうしてまだ本格的に戦わないんだあ。栴檀貴信どものような奴らはもうこりゴリだあ」

 影たちを見回した女医は満足げにうなずいた。

「なかなか豪華な顔ぶれねん。盟主様の守護に当たっている『月』と『水星』『土星』、それから好き勝手動いてるご老人の『木
星』が居ればワタクシたち幹部が勢揃い……さーて『ディプレス』。いまの質問の答えだけどん、何事も前戯って奴が必要よん」
「し、下準備っていうべきなのよそこは! 卑猥なのは嫌だよ私」
「ふふん。サブマシンガンで文字書くの自重してくれてありがと『リバース』。おかげで新しい病院に弾痕できずに済むわん」
「要するに来るべき決戦の時のための下準備とか下調べが必要って訳で? いやー流石は『グレイズィング』女史。なかなか
マネできる考えじゃあありやせんね。へへ」
「あらん恐縮。でもワタクシは盟主様のご意思を伝えてるだけよ『ブレイク』。褒めるなら盟主様におし」
「ととととにかくっ! 私はこの上なく銀成市が周囲何kmか調べなくてはいかませんよね! よねっ?」
「そ。デカさだけが取り柄のあなたの武装錬金ならアレが可能よ。『クライマックス』
 女医は……いや、グレイズィングは白い歯を見せてニンガリと頬をひきつらせた。

「さーて。いずれこの街を滅茶苦茶にしてやるための下準備。頑張りましょうかあ」

 4つの影が掻き消え、待合室に狂笑と荒い息遣いが響いた。

129 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2010/07/24(土) 05:46:48 ID:l31WVlRk0
以上ここまで

ふら〜りさん
その昔マガジンZで濃爆おたく大統領って奴がありまして。以来あの作者さんは好きなんですがその漫画のキャラが加藤と
絡むっつーのは「まさか!」って感じですがグッときたぜですよ。のみならずバキファンにはやや抵抗のある「空手は道具」
発言を上手く昇華しているのが流石の職人芸。で、それ使って留二亜の現状総て否定するんじゃあなく「だいたい正しい
けどここがちょっとだけ足りないよ」みたいなコーチするのがいい。差ですね。一人で妄想(リアルシャドー)してた留二亜と
みんなで空手やって切磋琢磨してきた加藤との。導かれた事があるから導けるっていう。個人的にはこの2人のコンビが
色々事件解決していくのもみたい。お兄ちゃんじゃない年上の男性に徐々に惹かれてくっつーのはロマンじゃないですか。

さいさん(復帰、おめでとうございます)
ああ! この土方! すっごい燃えよ剣の匂いがする! 「誰か」って警戒の仕方は下巻にありましたし「京都守護職〜」は
池田屋直前の近藤と一緒だし、あと陸軍奉行並って言いたがらないのは正に終盤、死の直前の心理だし! それでいて
キッド2人の言い争いは平野作品ですよねー。21人殺しとか略奪許可証のセリフは例の黒い文字(フキダシに入ってない
マジックで書いたようなアレ)で浮かびます。で、頭蓋骨に穴ぁ開けて塩酸流し込んでロボトミー! っつーなかなか素敵な
所業やらかしたダーマーくん。気弱っぽいけど多分一番外道でしょうね。メンゲレはメンゲレで多分めっちゃ渋い。ヘルシング
の円卓のじいさんみたいな。で、武力以外の部分でめっちゃ強い。そして渋い。脇役萌えの自分としてはメンゲレに期待。

130 :作者の都合により名無しです:2010/07/24(土) 12:33:42 ID:yz7RkL/70
おお、スターダストさんお久しぶりです。
防人は鍛え抜かれた日本兵のような筋金入りで好きです。
これだけ長期連載だと、ちょっと作風変わってきたかな?
初期はボッスンとか職コロとか出てくるとは思わんかったw



131 :作者の都合により名無しです:2010/07/24(土) 23:45:28 ID:KjR/5HW00
俺が投げ出し一番困るダストさんきたw

しばらく間が空いたのでちょっと内容忘れたけど
相変わらずパピヨンたちの会話が洒脱で良い感じだ
まひろと秋水はごく自然な距離になってるかな
新展開っぽいかな?もう一度ざっと読み直すか

132 :作者の都合により名無しです:2010/07/25(日) 00:34:26 ID:7v3O8NpB0
スターダストさんの文体が好きだ。さらさらとして読みやすい。たまに表現がくどい時があるけど。
途中で入るうんちくみたいなのも好きだな。なんにせよバキスレまた盛り返してきそうでよかった。

133 :作者の都合により名無しです:2010/07/27(火) 13:37:59 ID:VoV+2Hpd0
せっかくさいさんスターダストさんと復活してくれたのに
あとが続かないなあ

134 :ふら〜り:2010/07/27(火) 18:45:17 ID:Ip9S4Qzq0
>>サマサさん
むう。BLならばむしろ好物の一つですが、流石に男の座薬では萌えはしませんな。代わりに
笑えましたけど。勇儀の忠告を素直に聞き入れて大人しくする辺り、勇儀個人のみならず、
「彼女ら」を認めたんでしょうね。まあもともと、パッと見ほどワガママな人でもないですが。

>>スターダストさん(大統領も先生もファン列伝も好き。「そこにワンダーはあるのかい」は至言!)
凄惨に楽しそうな殺し屋たち。あっさりとホム対策をやってのけてしまう辺り、ただ凄惨な
だけではなく武力も知力も超一流ってことですな。……そして! そしてそして来ましたね、
過去編の面々! 斗貴子やブラボーや剛太たちとの出会い、そして戦いが楽しみですっっ!

>>スターダストさんに連絡。
話数のナンバリング、どうしましょう……どこかズレてしまっているとか、何か忘れてるとか
あれば直しますんでご連絡orご自由に訂正を。

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