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リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第13話

1 :名無し募集中。。。:2008/08/01(金) 19:56:00.60 0
<一体、何処に行くって言うんだ
   _, ,_
川*’ー’)<<胸の高鳴る方へ

前スレ
リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第12話
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1216453335/

まとめサイト
 PC:http://resonant.pockydiary.net/index.html
携帯:http://resonant.pockydiary.net/index.cgi

掲示板 (感想スレ、作品題名申請スレ、あとがきスレ他)
http://jbbs.livedoor.jp/music/22534/

テンプレ>>2-16ぐらいまで

636 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 17:11:40.52 0
18時頃に1本投下させてもらいます
まとめサイトにあるみつジュンの話とリンリンカテゴリーの
最新作(みつジュン話とリンクされています)に続く話となります

注意事項は下記の通り

・7レス分(最新レスから10分以上経っても何もない場合はしたらばのアク禁スレを見てあげてください
・こんなのなちガキじゃないやい
・切ない系

以上となりますそれでは18時までもう少々お待ち下さい

637 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:00:38.77 0
その日、里沙は訓練を終えて自分の部屋へと向かっていた。
まだまだ、教えてもらった通りに動けているとは思えないけど、
努力すればした分だけ、思った自分に近づけている気がして。
また夜にでも訓練をしようと思いながらタオル片手に歩く里沙の耳に届く、優しい歌声。


(誰だろう、すごく綺麗で優しい声だなぁ)


その歌声はそっと、里沙の心を包み込むような温かさを持って辺りに響いている。
まるで歌手のような、聴く者の胸を打つ歌声に引き寄せられるように、里沙は声のする方へと歩みを進めた。
一歩一歩歩みを進めるごとに大きくなる歌声。
その歌声に酔いしれながら、里沙は基地の中にある中庭へと足を踏み入れた。

里沙の目に飛び込んできたのは、よく見慣れた後ろ姿。
短い栗色の髪の毛が風に揺れていた。
そして、風に乗って辺りに響く優しい歌声。

その歌を邪魔することは憚られて。
気配を殺しながら、里沙はその場に座り込む。
目を伏せて、その歌声に耳を傾ける里沙。
心地よいメロディは、疲れた里沙の心を静かに、確かに癒していく。

心の中の澱を拭い去るような歌声に、いつしか里沙の頬に光を反射しながら筋を描く涙。
悲しい時にだけ涙は流れるものではないのだと、その歌声は教えてくれているようだった。
やがて、途切れる歌声。

638 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:01:41.10 0
「あれ、ガキさん、いつの間にいたんだべ」


そう言って、里沙の方に歩いてくる彼女。
ともすれば、自分よりも年下に見える彼女。
出会った時の神々しさを感じさせないくらい幼い微笑みを浮かべながら、ゆっくりと歩み寄ってきて。
その微笑みに、自然と自分の口元に笑みが浮かぶのを感じながら、里沙は答えを返す。


「こんにちわ、安倍さん。
実はさっきからそこで、歌を聴かせてもらってました」


里沙の言葉に、もー、と言いながら里沙の肩をペシペシと叩く仕草。
その仕草は、同性であっても思わず可愛いと思ってしまうくらい、幼くて微笑ましい。
とてもじゃないが、あの日里沙を絶望から掬い上げた人とは思えなかった。

安倍さんと里沙が声をかけた彼女…安倍なつみは、微笑みを崩すことなく里沙の目を覗き込む。
綺麗な瞳だなと、自分で感じていることなのに他人事のように思いながら、その瞳を見つめ返す里沙。
里沙の肩に触れていた手が、そっと里沙の頭へと伸びる。
二度、三度、軽く頭をポンポンと叩かれる感触。


「んー、ガキさん、疲れてるんじゃない?
訓練はもちろん大事なことだけど、無理しすぎると自分のためにはならないよ」

「でも、早く、皆のためにも役に立ちたいですし」

639 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:02:52.51 0
心からの言葉だった。
あの日、里沙を絶望から掬い上げてくれたなつみが居る組織である、『M』。
そこに集う人達の優しさに、期待に応えたいと想う。
一日でも早く、皆の助けになりたい。

なつみは微笑みを崩すことなく、頭に置いていた手をそっと里沙の頬へと滑らせる。
そして、もう片方の手も里沙の頬へと沿えて。


「ちょっとぉ、あへさん、はなしてくらはいー」

「あのね、役に立ちたいとかそういう考えを持つことは確かに大事なんだけど。
でも、少しでも早くとか、そうやって自分を追いつめていこうとしなくてもいいんだよ。
自分のペースでいいの、今は緊迫した場面じゃないから」

「そうなのかもしれませんけろ、っていうか、はなしてくらはいよー」


なかなか自分の頬から手を離そうとしないなつみに、頬をつねられたまま声を出すものだから。
間抜けな返事になってしまうのは仕方がない。
仕方がないのに、里沙に対して遠慮することなくお腹を抱えて笑い出すなつみ。

心の底から楽しそうに笑うなつみの姿に。
頬をつねられて間抜けな姿を晒してしまうことになったことすら、何だか許せてしまう。
不思議な人だなと、改めて想った。

初めて出会った時、銀色の光をたなびかせて目の前に降り立った背中。
その時とはまるで違う、無邪気で幼い姿。
だけど、同じ人なのだと普通に思えるのは。
その背中に羽が生えているように見えるからかもしれないと、漠然と思った。

640 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:04:15.95 0
ようやく頬から手を離してもらった里沙。
お返ししてやろうと、手を伸ばせば。
笑いながら里沙の手を取って、ちょっと散歩に付き合ってもらおうかなと言うなつみ。
散歩って何処へと聞き返すよりも先に、なつみの体から放たれる銀色の光。


「ちょ、浮いてる浮いてる!何で!」

「地面を歩くのも好きなんだけどねー、あたし、空の散歩も好きなんだよねー。
と、いうわけで、ガキさんあたしの散歩に付き合って」


そう言って、なつみは里沙を抱えて上空目指して浮上する。
いつの間に、言霊能力を発動したというのだろうか。
言霊を発した様子はどこにもないのに、何故空を飛ぶことが出来るのだろう。
考え込む里沙を見て、なつみは微笑みながら口を開く。


「ふふ、言霊を発する時の力、それを応用させてもらったんだべ。
あたしの、事象を具現化する力、それを上昇する力に変換してるんだ」

「そんなこと出来るんですね…すごいなぁ…」

「といっても、さすがに本来の力の使い方を無理矢理変えてるから
浮いたり、ちょこっと動き回るくらいしか出来ないんだよねー。
マンガみたいにビューンって速度で飛び回るのはさすがに無理だなぁ」


なつみはそう言いながら、里沙が怖がらない程度の速度でゆっくりと上昇を続ける。
300メートルくらい上昇しただろうか、この辺でいいかなと言って。
里沙の体を支えてくれていた腕がスッと離れて、口をパクパク開いて焦る里沙。
だが、里沙が思ったような事態にはならなかった。

641 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:05:23.26 0
「あれ、何で」

「んー、自分だけじゃなくて他の人にも上昇する力を付与できるのかなって試してみたんだけど。
案外出来るもんだねぇ」


笑いながらサラッとすごいことを言ってのけるなつみ。
血の臭いなんて感じさせない、ともすればこの人は本当に能力者なのだろうかと思うくらいなのに。
あの字は本当なのだと、改めて思い知らされる。

「銀翼の天使」と、他の組織から恐怖と畏敬の念を込めてそう呼ばれるなつみ。
戦うことなくとも、そのすごさをこうして見せつけられて。

また、なつみだけではない、『M』に集う能力者達は少数精鋭と呼ぶに相応しい強い能力を持った者達の集まりなのだ。
ただの洗脳しか使えない自分が、本当にこの集まりの中にいていいのだろうかと心底想う。
圧倒的と呼べるような力を持たぬ自分は、ここにいる意味があるのだろうか、と。
落ち込む里沙の耳に届く、なつみの声。


「ガキさん、ほら、見て見て。
こんだけ高いところにいると、色んなものが見えるよね。
ほら、あそこの人洗濯物干してる。
あ、あっちの人は今から何処か出かけるのかな、楽しそうだよね」


なつみの声に、里沙は視線を右に左にとずらして。
自分も目がいい方だとは思っていたけど、よくそんなに見えるものだなと感心する。
その人達に視線を向けながら、なつみは再び口を開いた。

642 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:06:25.32 0
「こういう穏やかな世界で、能力者もそうでない人達も仲良く暮らしたいよね。
今はまだ難しいけれど、いつかはそういう風になったらいいなって想う。
ねぇ、ガキさん。
ガキさんは今、ここにいていいのかなとかそういう風に悩んでるみたいだけど。
力の強さだけが全てじゃない、ガキさんの気持ちがあたしや皆と同じならそれだけで充分ここにいる理由になるんだよ。
強いことは大事なことかも知れない、でもそれを全てにしたら大切なことを見失っちゃう。
今のガキさんに必要なのは力の強さじゃない、色んなことを経験して学んでいくことだよ」


なつみの言葉に、里沙の目元にこみ上げてくる熱い滴。
声を出すまいと唇を噛みしめる里沙の横で、なつみは再び歌い始める。
温もりに溢れる歌声に込められる想い。
あの日と同じように抱きしめられながら、あの日とは違った涙を流す里沙。

一緒に訓練をしているわけでもないのに、何で彼女はここまで自分が抱えていた悩みに気付くことが出来るのだろう。
そして、ここまで里沙の心に響く言葉を与えることが出来るのは何故なのだろうか。
なつみが精神感応の能力を持っているなんて話は聞いていない。
それなのに、まるで里沙の心を読めるかのように里沙の心に降り注ぐ、温かな想い。

この人の想いに応えられるだけの人間になりたい、改めてそう想う。
強くなることばかりに気を取られて、見失っていそうになっていた道。
口癖のようになつみの言う言葉の意味が、ようやく分かってきたような気がした。

強い力だけでは叶えられない大きな願いが、確かにある。
力はその願いを叶えるのに必要な要素かもしれないが、その力を使いこなすに充分なだけの心、
それを育てることの方が大事なのだ。
強い力はいとも簡単に人を狂わせる、だからこそ、その力を正しく使うために心を育てなければならない。


―――今はまだ、強い力を求めて自分を追い詰める時期ではないのだ。

643 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:07:21.82 0
髪を撫でられ、背中をさすってもらい。
落ち着いてきた里沙の耳に届く、もうちょっと一緒に散歩しようかという柔らかい声。

帰ったらきっと、2人揃って何処に行っていたんだと怒られるんだろうなと思いながら。
その声に、とびきりの笑顔で里沙ははい、と返事を返した。


* * *


報告書を書く手を止め、懐かしい記憶に目を細めていた里沙。
あの頃から随分時は流れて、今となってはあれは本当のことだったのだろうかと思うような日々が続いている。

『M』の崩壊、囚われたなつみ、何一つ変わることのない世界。
それでも時は流れ、今という時間を生きていかなければならない。

温かな声が離れていても聞こえてくる。
あの温かな日々によく似た、温かさ。
その温もりに心の全てを委ねて生きていけたらいいのに。

里沙の脳裏に蘇る、拘束具をつけられた痛ましいなつみの姿。
かつて「銀翼の天使」と恐れられた彼女は、その美しい羽根をもがれて飛ぶことはもう叶わなくなった。
自分に力があったのなら、そんな真似をさせたりはしなかったのに。

今も一人孤独に居住室で過ごしているであろうなつみ。
例え、なつみとは共鳴することは出来なくても、同じように孤独な環境に身を置くことが。
それが正しいことなのかはともかく、これが囚われているなつみに自分がしてあげられる唯一のことだから。
聞こえてくる温かな八つの声が奏でる旋律。


―――その旋律に耳を塞ぐように、里沙は音楽のボリュームを上げて再び報告書を書き始めた。

644 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:07:58.52 0
>>637-643
更新は以上となります

645 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:54:10.05 0
ふわふわでぽかぽかですね

646 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 20:09:19.91 0
まだこのスレを落とすわけには…!

647 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 20:37:50.97 0
>>644
空を散歩する二人が目に浮かびました


648 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 21:34:38.41 0
>>644
ええ話や

649 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 22:37:51.30 0
hozenanto

650 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 22:44:01.92 0
更新乙です!
ほのぼのしました…あれ、目から水が…(ごしごし

651 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 22:46:38.04 0
ないやいです感想をありがとうございました
本編の次の更新にてダークネスサイドや安倍さんに触れていく予定があったので
急遽こういう話を書いてみました

過去を思い返してリゾナンター達の温かさに流されまいときつく心を閉ざすガキさんの苦悩はいかばかりか
想像していただけたら幸いです(ほのぼのしているのは過去の記憶だけというよく分からない話で申し訳ない

この話のキーワードは「歌」なのですが…次回更新はこの「歌」というキーワードを入れた別の組み合わせをと考えています
バトル成分のない淡々とした展開の話が後2回続く予定ですがよろしくお願いします

652 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:13:25.57 O
保全保全

653 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:19:22.41 0
感動作の後にお邪魔します。作品投下します。

今回、[Niigaki](05)116 『孤独の死闘』の続きを勝手にリゾナントし、書かせて頂きました。
(作者様ありがとうございました。)
その他にも色々な作品から設定・名言等お借りしております。全ての方に感謝。

注意:某OGが出ます。

タイトルは全体として『Wingspan』
その中で全3章構成くらいで更新していこうかなと(予定は未定)

それでは、しばしお付き合いください。


654 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:20:25.49 0

「ううっ……」

真冬の海中へ引きずりこまれるような痛覚で目が覚めた時
まだこの体には鼓動が鳴り、かろうじて血が通っているのだと知った。
末端まで石のように冷えた身体。
己の腕できつく抱きしめ、それでもこの確かな痛みで現実なのだと、認識する。
痛みは襲ってくるものの思考回路がうまく回らない。
大切な事があった気がするのに、深いもやがかかったような……

ぼんやり辺りを見回すと、灰色を基調とした、殺風景でがらんとした部屋。
無機質な印象しか与えない机。パイプ椅子。
剥き出しのコンクリートに無造作に投げ出された身体をゆっくりと起こす。
肋骨がきしみ悲鳴を上げ、嫌な汗が背中を伝う感触は里沙の不快感を助長するしかない物であった。

この場所は里沙には見覚えがあった。
間違いなくここはダークネスの……



655 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:22:10.54 0

「……お目覚めかしら?」
「―――ひっ!!」

ぎしりとパイプ椅子が軋む音と共に、背後から急に声を掛けられ、里沙の体は驚きで跳ね上がる。
と、同時に全身に迸る、差し込むような激痛で再びうずくまった。

「そんな吃驚しないでよ、私、ずっとここに居たんだし」

いつか顔を合わせる日が来るだろうとは思っていたけど、こんな形とはね。

そう告げる、里沙にとっても聞き覚えのある低い声。
パイプ椅子に悠然と腰掛けたスーツ姿の女はただ、淡々と事務処理でも行うかの如く里沙に話しかける。

今まさに覚醒したばかり、自身の置かれている状況すら理解し得ない里沙を見やる
女の表情からは何らかの感情すら窺い知ることは出来ない。

「覚えているかしら?何故ここに居るか。どうやってここに来たか」

どうやって―――?

……素直に女の言葉どおりの行動を取るのは癪だが致し方ない、そう判断した。
記憶の最後には、ひと気のない夜道。
対峙する女。そして―――……


656 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:23:30.63 0
「っ……皆、はっ!!」

搾り出した声は、発生させた本人ですら驚くほど、悲痛な響きを含んでいた。

可能性は低い。だが―――もしもあの時。
己の心の声が誰かと共鳴していたならその人物は間違いなく動くだろう。
……そういう子たちだ。
そして探査中、粛清人と見合っていたとしたら―――


「さぁ、Rはあの通り、血の気が多くてね。
 手加減なんて出来ないの知ってるでしょ?
 ……それより目覚めてみれば、まっ先に自身の心配よりあの子達を心配をするのね、あなた」

これは可笑しな物を見た、といった風に薄く女は笑む。
実際は里沙の『生きたままでの回収』が目的だった。
任務を強制的にではあるが終了させた粛清人は帰還しリゾナンター達と相まみえる事はないのだが、
そういうことで里沙の心情を逆撫でできることを知っている。
女は嘘は言っていないけれど、真実も言っていない。


(仲間の心配をして何が悪いんだ―――……っ!!)


657 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:24:58.48 0
その笑みに不快感が胃の底から上がってくるのを感じる。
大切なものを貶された不快感。否定された嫌悪感。

ありったけの力を振り絞って睨みつける。無言の抵抗。

記憶の最後を覆い隠すような、薄ぼんやりとした霧が晴れていく。
あの時、粛清人が現れて、それから―――――負けた。
意識の触手を潜り込ませ、女の精神に孤独を思い出させ。
だが、決定的なとどめをさすことは出来なかった。

(お願い、どうか無事で居て……)

己が巻き込んでしまったかもしれない彼女たちを想うとなおさら今、ここでいいようにされるわけにはいかない。
必死で状況打破に繋がる糸口を探す。
女に対する最大限の警戒は解かぬまま。


「Rを止めるのが遅くなったけれど、随分洗脳の能力を使いこなせるようになっているようね。結構なこと。
 ……実は」

女が語りだす。里沙のその剥き出しの敵意には大して興味もない様子だ。

「新垣里沙、お前が改心し組織に戻るというなら
 先だっての無礼を赦す、という話が浮上している」


658 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:26:37.11 0
訪れる、静寂。

再び忠誠を尽し、駒と成れ。
頭を垂れ、主の前に傅け。

傍らに携えていた文庫本――里沙が目覚めるまでの退屈凌ぎだったのだろう――を机に伏せ置き、
女が持ちかけてきたのは唐突とも言える取引。

指先まで冷え付いているはずなのに、きつく握られた手は発汗し。
色んな想いがめまぐるしく里沙の中で暴風雨の如き凶暴さとなって暴れている。

赦す。……赦されて何になる?裏切る。……一体何を?
そもそも、自分はどちら側に帰属しているのだろう―――

「…………」
「だんまりか。まぁいいでしょう」

その一言が切欠となる。
先に仕掛けたのは里沙。
女に向け意識の触手を伸ばす。そこに込めるのは、紛れもない敵意。

だが女にもそれは気付かれているようで、心の入り口はロックされている。
無理矢理その先をこじあけようと懸命にもがく、里沙の思惟。

「ふぅん、成程。答えは聞かなくてもよさそうね」

組織に牙を剥いたものの末路を知らないわけでもないでしょうに。
それはまるで、手のかかる子供を窘めるかのような。


659 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:28:02.72 0
……だが、精神に入り込もうと牙をむく意識の触手、それは囮!


【 能力はね、イマジネーションなんだよ 】

(安倍、さん―――)

ギリギリの状況で思い浮かべたのはあの人。
あの日の言葉が里沙の心にフラッシュバックしたかのように舞い戻る。

イマジネーション。
想像することで全ては創造される、と手を取り指導してくれた。
心を鍛えることは、そのまま精神の基礎体力となり柔軟性になると。

想像。そして創造。形は違えども、精神系の能力者が辿り着く到達点。

ゆらゆらと里沙から立ち上るオーラ。
光を宿す眼光は、切り開くべき未来を見据える。

(負けない、負けたくない!死ぬわけにはいかない!こんな所で!)


660 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:29:21.64 0
イマジネーションは無限。全ては想像することで創造される。
里沙がイメージしたモノ。それは―――

太さで例えるならば、常々能力の行使に使用する、相手の精神を雁字搦めにし
支配権を握る為の拘束具がロープとすると、対してこちらは蜘蛛の糸。

細い、細い、銅線より、ピアノ線よりも細い、圧倒的不利な状況である里沙の活路にも似たそれ。

大きな標的に意識を裂かせ、伏兵の存在を隠蔽する。
ピンと張られたそれを、隙さえあれば弾丸のように撃ち込む!
気配を押し殺し、契機を待つ。
女の精神のロックが一瞬でも緩む、その瞬間を。


「そうそう……本来ならありえる筈もないと思わない?この話。
 実は裏があるのよ。
 上に持ちかけて強引に通した人物が居る―――新垣里沙、あなたもよく知っている筈」

裏ならばそんなに簡単に露見させていいのかという思いの外に
それに該当する人物を想像してしまう。
彼女なら言い出しかねない、と。


661 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:30:55.99 0
里沙は願う。まさか、そんな筈はないと。
ただの狂言であってほしいと。
がり、と爪がコンクリートを引っかく音が微かに響く。

「…………ま、さか」
「物わかりが早くて助かるわ。
 ―――安倍なつみを裏切る事ができるの?信奉者のあなたに」

安倍なつみ。
その名前を出されたとき、ピンと緊張に張り巡らされた里沙の心は揺らぐ。
ぐらりと地面が歪む感覚は錯覚だと理解はしているのに
反して足が崩れていきそうな感覚は正しく動揺から来ているのだろう。

彼女が、戻ってくることを望んでいると女は告げる。

憧れ、恋にも似た焦燥を抱く里沙にとっての恩人であり、唯一絶対神が。

「……嘘、だ!」
「残念ながら、事実。彼女はそれを望んでいる。
 全く、随分目を掛けてもらって、更に便宜を図ってもらって……」

そう、発した瞬間。
女の心の隙間がほんの少し、揺らいだ。

(……今っ!)

女の意識の入り口へ潜る弾を撃つ!
そして、マインドコントロールを開始。


662 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:32:19.48 0
>>654-661
以上、第一章の前編でした。
ないやいさんが偶然にもなちガキを書かれているのにこの差はなんだとorz

さて、ここまで読まれてお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが
真にリゾナントしているのは
テンプレの>>2
>でも悩んでるんだリゾナンダーたちの優しさに触れて
>そして最終回で彼女は決断を迫られることになる・・・

この部分です。
次回、第一章後編はまた近いうちに。

そして遅くなりましたが>>510の作者です。感想有難うございました。予想以上の反響に驚いております。
だからこの作者、英語は苦手だと何度言ったら(ry
ご指摘のあった部分の修正版を鋭意作成中です…まとめさんにこっそり差し替え掲載お願いするつもりです…
いつも本当にすいません…

663 :名無しじゃないやい:2008/08/12(火) 23:47:27.21 0
>>662
偶然って重なるものですねまさか自分も自作の後になちガキがくるとは
思っていなかったのでびっくりさせてもらいました

そして>>510の作者さんでもあったということにさらにびっくりです
どんだけ色々出来るんだと本気でびっくりさせてもらいました
話の方もまた読者をじらしまくるところで終わっているのが心憎いw
続きを心待ちにしています


664 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 00:15:45.01 0
いやぁ〜なちガキ良いですねぇ!
続きが気になる

665 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 00:51:14.97 0
作者さんはギャグもシリアルも書けるのですね
発想力と作風の広さに驚いている一人です

>そして最終回で彼女は決断を迫られることになる・・・

ということはこれ、最終回ですか・・・
続きに期待します

666 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 01:12:50.52 0
>>651ことないやいですが夜中の3時に「歌」をキーワードにした保全作を一本投下します
よろしくお願いします

667 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 01:33:08.93 0
ないやいさんの作品を楽しみにしつつホゼナント!

668 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 02:31:21.07 0
朝起きてから読みますのホゼナント

669 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 03:00:16.87 0
それでは投下します注意事項は下記の通り

・短い
・こんなの愛れなリンじゃないやい
・ようやく本編を補足するような番外編らしい番外編
・かなしみさんの作品の影響を受けているないやいが描くいつか到達するかもしれない未来への可能性(の一つ)
・読後感はきっとさわやか

以上となりますそれでは少しの間お付き合い下さい

670 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 03:01:31.90 0
トレーニングルームという部屋が喫茶リゾナントの建物の地下一階にはある。
その名の通り、能力を使った戦闘や肉弾戦の訓練をするようにと作られた部屋だが。
大抵は外界に影響を与えないような能力の行使と、肉弾戦の訓練にしか使われてはいない部屋。

喫茶リゾナントの営業が終わり、れいなはいつものようにトレーニングルームへと向かう。
早朝は数qのランニングをしてからリゾナントの手伝いをして、リゾナントの営業が終わればこうして自らの技を磨くれいな。
いずれ、愛もそのトレーニングに付き合うために部屋に降りてくるだろう。
それまでにウォーミングアップを済ませようとトレーニングルームのドアを開けようとして、れいなはその手を止めた。

僅かな隙間から漏れてくる、伸びやかで力強い歌声。
聞き慣れない歌声に、一体誰が歌っているのだろうという興味が沸いてきた。
だけど、今部屋に足を踏み入れたらその歌声の持ち主の邪魔になる。
歌が終わるまで少し待つか、とれいなは壁に寄りかかって目を伏せた。

楽しそうに響く歌声だが、さすがに部屋の外では何と歌っているのかまでは分からない。
ただ、本当に歌うことが好きなんだろうなというのが聴いていて伝わってくる。
自然と、聴こえてくる歌声に合わせて鼻歌を歌ってしまうれいな。


「…れいな、何してるの?」

「シー、静かにすると、愛ちゃん。
歌の邪魔になる」


後から現れた、ジャージ姿の愛はれいなの言葉にとりあえず口を閉じた。
愛の耳にも届く、優しくも力強い歌声。
ここに居るということは、間違いなくメンバーの誰かである。
メンバーの中にここまで歌が上手い子がいたんだと、愛はれいなと同じように聞き耳を立てながら想う。

671 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 03:02:20.04 0
歌が終わった。
何も聞こえなくなったのを確認して、れいながトレーニングルームのドアを開け。
れいな、愛の順に部屋に足を踏み入れる。


「歌ってたの、リンリンやったんか…」

「リンリン、歌めっちゃ上手いとー。
れーな、すごくびっくりした」


2人の驚いた声に、リンリンは振り返って照れくさそうに微笑む。
愛もれいなも、その微笑みに応えながら。
いつもとは違うリンリンの一面が見れたことに、自然と笑顔になる。

リンリンはというと。
2人がジャージ姿なのを見て、今が何時なのか知ったようだ。
2人がジャージ姿、イコール、リゾナントの営業はとっくに終わり。


「あー、高橋サン、田中サン、ごメんなさイ。
歌うノに夢中になっテいましタ…」


そう言って、耳を垂れた犬のように。
申し訳なさそうにその場に佇むリンリンに、愛は笑って声をかける。


「別に気にしなくていいんやよ。
何だったら、もっと歌っていけばいいがし。
ね、れいな」

672 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 03:03:30.34 0
「そうそう、ここはトレーニングルーム。
歌のトレーニングをしたって別にいいとれいなは思うっちゃ。
っていうか、歌ってた歌、あれってどういう曲なのか教えてほしいと」


愛とれいなの言葉に、リンリンの表情は申し訳なさそうなそれから穏やかな笑顔に変わる。
リンリンの笑顔に、愛もれいなも笑顔になって。
心と心が繋がって、温かな想いが溢れていく。
独特の感覚は、言葉に表すことが出来ない複雑な想いまでも繋ぐ「絆」。

リンリンは微笑みながら、曲のタイトルを言う。
そのタイトルを聞いて、聞いたことないという顔になる愛とれいなに。
中国の歌ですからと言って、小さく笑うリンリン。


「この曲、中国にイた時からズっと歌っテきた歌でス。
この歌にハ、未来への希望が込めラれていまス。
この歌を歌うト、心に力が沸いてクるんでス」


希望を噛みしめるように言葉を紡ぐリンリンの姿は。
いつか本当に、幸せな未来が訪れると信じて祈りを捧げる信仰者のようでもあり。
その希望を心の拠り所としながら日々を生きる、普通の一般人のようでもあった。

生まれ持った特異な力のために、リンリンもまた自分達と同じように苦しんできたのだろう。
あまり、中国に居た頃のことを話さないリンリン。
話さないのは、言いたくない何かがあるからかもしれない。
空気が少し変わったことに気付いたリンリンは、慌てて言葉を紡ぐ。

673 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 03:04:18.46 0
「いツになるカ分かりませんケど、リンリン、ダークネスを倒すこトが出来たラ。
そしタら、歌手になりたイって思っテるんでス。
ダークネスを倒スくらイ難しいこトかもシれませんけド、きっト、ダークネスを倒すコとが出来タら。
その夢モきっト、叶う気がスるんデす」


リンリンの言葉に、愛とれいなにそれぞれ生まれる想い。
生まれ持ってきた能力に気付かずに居た頃、今のリンリンと同じように未来の自分を夢見ていた。
愛は舞台で歌い踊りながら熱演する女優。
れいなはテレビ番組で皆を笑わせるバラエティタレント。

いつしか、そんな夢は見なくなった。
人と違うものを持って生まれてきたことに気付き、自分はけして他の人間と同じような人生は歩めないと気付いたその時。
その時に描いていた未来は跡形もなく消え去り、今はダークネスとの戦いに身を投じている。

人の夢と書いて儚という字になる。
人の夢は儚いのか。
叶うことなく消えてしまうから、儚いのか。

戦いに身を投じ、いつしか忘れていった想い描く理想の未来。
2人の胸に蘇ってくる、あの頃の純粋な想い。

ダークネスを倒すということは、とても困難なことかもしれない。
だけど、それをすることが出来たらきっと。
あの頃想い描いていた未来に向かって、新しい日々を始めることが出来るかも知れなかった。

れいなは微笑みながら、口を開く。

674 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 03:05:35.84 0
「歌手かぁ、それもいいね。
ていうか、皆でアイドルグループ結成して歌うってのも面白いと思わん?
ほら、アイドルって舞台も歌もバラエティも何でも出来るし」

「アイドルって…あ、身近にいたやよ、アイドルの仕事をしてる子が。
小春に色々聞いてみるのもいいかもしれないねー」

「てイうか、久住サンに言えバ今すぐデビューも出来ルかもしレないでス、バッチリデース!」


リンリンの無茶苦茶な物言いに、さすがにそれはないってと2人揃って答えを返して。
しょげかえるリンリンに苦笑いしながら、愛は声をかける。


「ねぇ、リンリン、さっきの歌もう一度歌ってよ。
で、今度はあーしとれいなにも、教えて欲しいな」

「れーなも、歌ってみたいと。
中国語の歌やけん、上手には歌えんかもしれんけど…歌ってみたい」


2人の言葉に、リンリンは微笑みながら頷く。
大きく息を吸い込んで。

トレーニングルームに響く、力強い歌声。
その声に耳を傾けながら、愛とれいなはそのメロディに交互に即興で言葉をのせて。
2つの異なる言語が織りなす、不思議な歌声が響くトレーニングルーム。

未だ見ぬ未来と自分への希望を描きながら、その歌声は何処までも続く。
この胸に宿る希望がある限り、闇と対峙することに躊躇いはなかった。

―――その歌声は終わらない。

675 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 03:06:17.87 0
>>670-674
更新は以上になります

676 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 03:10:40.84 0
更新乙です!
リンリンがいい子すぎる(´;ω;`)
ハロ紺の合唱曲…それのリンリンソロパートが頭の中に浮かんできました。

677 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 03:16:50.03 0
爽やかな良い夢見れそう
ありがとうないやいさん

678 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 05:18:59.80 O
ほぜんなんと

679 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 06:30:51.30 0
セミの声が共鳴する朝

680 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 07:25:00.95 O
(ホゼ)<これが能力者になれる果!?
‐・)/ο<そう、でも親友が一人死ぬ
(ホゼ)<俺に親友なんて、、、
‐・)<必ず死ぬわ、それでも彼女達を助ける?

681 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 08:51:59.42 0
>>675
リンリン!。゜゜(´□`。)°゜。

682 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 10:02:01.18 0
   _, ,_
川*’ー’)<誰かを犠牲にして得るものに価値などない!

683 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 10:53:02.67 O
>>675
かなしみの者っす ないやい様お疲れさまです
リンリンの純粋で曇りのない歌声心に響きましたよ
上の方が書いた感想の様に自分もあのコンサの合唱が思い浮かび上がってきました
あのリンリンの歌声のチカラ ダークネスの心をも・・・

684 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 10:55:23.12 O
( ^▽^)<ボエェ〜〜♪

685 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 11:19:40.06 0
>>684
ダクネス)<ぎゃゃゃゃーーーーぁ!

686 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 12:00:41.26 0
ないやいです感想ありがとうございました
注意書きにも書いたのですがかなしみさんが以前連載していた次回予告シリーズ

かなしみ戦隊リゾナンターR最終話「Never Forget」

この予告を含めかなしみさんの作品にはものすごい影響受けているないやいが描く
いつか到達するかも知れない未来への可能性というか布石の一つのような話をと思い立って書いてみました

ハロ紺でのリンリンの歌のうまさに感動したからこそ生まれた話です
それとかなしみさんの作品の設定と自作の設定とが複雑に混じり合って不思議なことになっていますがw

次の更新予定の話のキーワードは「名前」です
その話を書いた後存在自体を自分で忘れていた「スパイの憂鬱シリーズ」の続きを書いて
本編の世界を進めていく話を書いていきたいと思いますよろしくお願いします


687 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 12:47:36.32 O
ほぜなん斗

688 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 13:46:34.17 0
ホゼリンリン

689 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 14:49:40.09 0
川*^A^)<リンリンがキャンプファイヤーしナがラ保全しマース!
( ・e・)<ちょっとー、リンリン、燃やしすぎなんだけどー

690 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 15:16:20.15 0
ホゼナントー!

691 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 16:20:47.14 O
ほぜんします

692 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 17:45:01.11 0
保全!

693 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 18:41:17.91 0
ホゼナント

694 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 19:33:46.15 O
ぽせなんど

695 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 20:01:34.60 0
リゾナンターRU始まらないかな・・・

696 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 20:51:09.99 O
ホゼホゼ

697 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 21:32:09.63 0
保全


698 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 22:10:56.36 0
ほぜ

699 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 22:44:10.07 0
共鳴保全

700 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 22:58:25.24 O
ホゼナント

701 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 23:58:16.59 0
SIDE Darkness

702 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 00:09:59.44 0
ホゼナンター参上

703 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 00:12:06.16 0
ずっと歩いて来た気もするけど、まだ少しも歩いていないような気がする。
見上げれば、空はいつもそこにあって、太陽がいつも笑っているからかもしれない。
何がそんなに楽しいのだろうって、思ってた。

 ひとりぼっちは、そんなに楽しくないし、哀しくも無いんだから。

あれ?でも、なんか、入ってた。いつの間にか拾ってたもの。
たいせつなものなのかも分からない。
でも、どうしてか捨てられない。何でだろう?何で、懐かしくなるんだろう?

 ―――あ。いい匂い。


704 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 00:13:55.09 0

太陽が茂った緑の葉を柔らかに抜けて地面を緩める。
緩やかな日差しでも、見上げていると眩暈がしそうになっても
空は涼しそうに、透き通るような蒼い色だ。

ふと、青々とした草花の絨毯が現れて、遠くからやってきた赤目のうさぎに挨拶する。
森を抜けて尚も森だなんて変なのと思いながら。

淡い光と薄い影が描いたこの場所は、まるで八ミリフィルムで撮った映画のよう。

音楽にはポップで楽しげなやつ。
エレクトリックなメランコリィ、ディストーションギターはとりあえずいらないかな。
誰かのハミングが聴こえてきたなら唄えば良いや。
口とメロディで、愛しい誰かの為に唄を贈ろう。

ここは、いつも誰かの忘れてしまった想い出が、色彩溢れる華となって咲いているから。
当然名前は無いけれど、それでも、美しい花達がある。
ミツバチがせっせと甘い蜜を巣へ運び、光が待ち伏せしながら、風を待っていた。

ここは、ある赤い瞳のうさぎが作った想い出の森。

テーブルの上には紅茶が二人分、淡い白いティーポットに注がれている。
"彼女"は、そこで佇んでいた。


705 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 00:15:00.48 0

 「…こんにちわ」
 「こんにちわ」

珍しくやってきた客人に、長い黒髪の"彼女"は微笑んだ。
微笑んだ先に居るのは、茶髪のショートと透き通るような肌を持つ可愛らしい女性。
女性は、"彼女"に笑顔を浮かべて言った。

 「とてもいい天気ですね」
 「そうですね、ここは、いつも心地が良いから」
 「本当に、何か、安心します」
 「…ありがとう」

そして"彼女"は、どうぞというように片手で促して椅子へと招いた。

 「高橋さん…ですよね」
 「ああ、はい。えーと…別に愛って呼んでもらっても良いですよ」
 「そういえば、"あの子"は下の名前だったっけ」
 「あ、そんなつもりで言ったんじゃ…っ、それにあの子とは雰囲気から違うし…」

弁解しようとして慌てた愛を"彼女"は微笑んで見つめた。
少し恥ずかしそうにして視線を逸らし、頬を掻く愛。

 「…ここ、ホントに気持ちのいいところですね」
 「ええ」

"彼女"は頷く。
ふと、愛はその膝に乗っている小さなウサギを見つけた。
優しく撫でられている姿を見ていると"彼女"の腕の中はとても居心地が良さそうで
根拠は無いけれど、少しだけ、羨ましく思ってしまう。


706 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 00:16:45.31 0

充ち満ちているこの場所は、どこか愛に懐かしさを感じさせた。
それでも、いつも太陽が沈む事になるとそれを忘れてしまう。
多分、ずっと独りで居たからだ。

そして"彼女"と愛は、それすらも時々忘れてしまいそうになる。
酷く穏やかな気持ちにになり、寂しさが和らぐと、人は忘れていく。

優しいこと、穏やかなこと、愛しいこと、寂しいことや悲しいこと。
空しいことも迷うことも揺れることも流れることも。
花の色や、空の青ささえも。

それが、『闇』なのではないかと、思っていた。
でも、"彼女"を見ていると、それが本当なのか、分からなくなる。

 「ここで、ずっと、何をしてたんですか?」
 「何もしてないわ。ただ、この席に座って、この空を眺めてた」

そうしたら、貴方が来てくれた。

 「もしかしたら、そのおかげで高橋さんが来てくれたのかも」
 「…そうだったら、なんか光栄ですね」

"彼女"が笑うと、愛も素直に笑った。
そよぐ風が傍の樹から、ひとひら青葉がゆたって落ちてくる。
重力に引かれ、緑土に落ちたその姿を見て、時間が流れている事を思い出す。


707 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 00:17:40.99 0

 木漏れ陽の下で大好きな紅茶を入れたら、新しい味がするだろうか。
 懐かしい味がするだろうか。
 どちらにしても優しい香りがするはずなのは分かってるのに。

それはどこか季節の花が吹くと思い出すように。
新しく感じる色や匂いは、季節の風邪が吹いて想い出が巡ったからこそ感じられる。

それでも、"彼女"に透き通りながら染み込んで来るのは、ツギハギだらけの記憶だけ。

 「ここで、ずっと待っててくれたんですか?」

愛が言い、"彼女"の瞳の奥を覗き込む。
そっと、そのツギハギだらけの欠片に触れて。
繰り返してきた"彼女"は、昨日の事でも遠い昔に感じることがある。
過去も未来も、全ては"あの子"と共にあった。

 「…あの子は本を読むのが好きで、小さい頃はいつも本を読んでたみたい。
 とても難しそうで、私は全く読めなかったけれど」

カップの縁を指でなぞると、振動で紅茶に波紋が生まれる。

 「何となく分かるんですよ。あの子が文字を追いかける視線とか、頁の捲る音。
 時々居眠りをしていた静かな呼吸とか、私が傍らで感じた全てが幸せのように思えて」
 「今でも、そういう姿を見かけます」
 「いつも、毛布を掛けてくれる誰かが居て、あの子は凄く嬉しがってますよ」


708 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 00:18:57.35 0

照れ臭そうに笑う愛はそれでも、"彼女"から視線を逸らすようなことはしない。
表立って行動することは叶わないが、"彼女"も列記とした仲間である。

たとえ悲しみしか生まない戦いへと身を投じる"妹"が想像した"世界"であっても。
それでも、大切な人達が居るから、愛も、行かなければいけない。

 今日は、その為にここへ来たのかもしれない。

 「…だから、高橋さんにお願いしたいんです。あの子の事を」
 「……はい」

"彼女"はそれしか願うことが出来ない。
他の願い事など、この世界によって既に満ちたりているから。
だから、願い続ける。
この蒼い空の下で、"世界"の中で、ただ独り、願い続ける。

カップの中の紅茶は波紋を浮かべ続けている。
それは誰かの涙で。それは誰かのハミングで。

満たされた『光』は惹かれながら消えた。木漏れ陽の中へと消えた。
それでも此処に在ると告げている。ずっと。ずっと赤目のウサギと共に―――。


709 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 00:20:37.68 0

緩やかな日差しが差し込み、見上げていると眩暈がしそうになる。
空は涼しそうに、透き通るような蒼い色だ。

まだ夢の中?そう思いながら、愛はベットから身体を起こそうとした。
ふと、腕が何かに潰されていることを悟り、愛は気付いて起きるのを辞めた。

さゆみは静かに寝息を立てながら、身体を小さく丸めて眠っている。
自分よりも身長が高いことで、こんなにも真近くで見ることはあまり無かった。

 「…この寝顔はいつまでも変わらんやろね」

急に泊めてくださいなんて、理由も言わずに勝手に眠りこけて。
そんなになるまで考えるのは、彼女らしいと言えばそれまでだけれど。

思えば、彼女の涙なんて見た事が無かった。
人前で泣かないというのは愛自身も分かるような気がする上に、ここに集う彼女達は
全員感情を押し殺す事に慣れてしまっている。

心配させない為に、戦っていける為に、下を向かない為に、『闇』に染まらないために。
それに誰かが気付いてあげなければいけないと、"彼女"はそう言いたかったのだろう。
―――昔、遠い昔に、祖母が気付いてくれたように。

 「今度、ガキさんと話してどこか遊びに行こうかな…」


710 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 00:21:31.76 0

紅茶を飲んで一休みも悪くない。
コーヒーでも良し。
ちょっと寄り道して、ちょっと休息して、ちょっとだけここで居眠りすれば。

 ほら、また歩き出せるよね。

その為の居場所は、今日も蒼き空の下で開店を迎える。


711 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 00:36:46.50 0
>>703-710
以上です。
最近能力話ばかり書いていたもので、多少違和感が生じてます(滝汗)
愛ちゃんとシゲさんの姉は食事をする仲というのが某ラジオで発覚。

とりあえず愛さゆ…本当はガキカメを先に投下しようと思ったのですが
どうも少し長くなる感があったので(苦笑)有難う御座いました(平伏)

>>686
リンリンの歌声は残念ながら聞いていないのですが
どうもかなりの上達振りがあったそうですね。
お疲れ様でした、次回も楽しみにしてます。


712 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 00:45:54.84 0
>>711
全編リリカルな美しさと不思議な優しい空気に満ちていて・・・さすがという他ないです
それでいてどこか胸を締め付けるような切なさも漂っていてため息ため息で読ませていただきました

“姉”の存在がさゆみにとってプラスに描かれる話が多くてそれが嬉しいです
自分の中の言葉にならない漠然とした思いをすべて具現化していただいているような

今夜は素敵な夢が見られそうです

713 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 01:23:07.13 0
>>711
素敵なものを読ませてもらいました。
>「何もしてないわ。ただ、この席に座って、この空を眺めてた」

>そうしたら、貴方が来てくれた。 ←ココだけ括弧外すところが素敵・・・

>「もしかしたら、そのおかげで高橋さんが来てくれたのかも」

しっとりした文章に酔わせてもらいました。

このお話のトーンとは真逆の「闇」というキーワードをちりばめたのも
作品に陰影というか深みが与えられていて感動しました。

714 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 01:46:51.37 0
>>711
更新乙です
本当に文章から芳しい香りが漂ってくるような、微笑ましい情景が浮かんでくるような
そんな話ですね
一読者、一ホゼナンダーとしては素敵なお話ありがとうの言葉しか出ませんが
へっぽこ作家としてはハードル上げてくれるなよという恨み言がw

715 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 02:13:13.29 0
>>711
更新乙
詩のような文体が斬新で美しいですね
それだけに校正ミスがもったいない…
今後に期待しています


716 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 04:11:47.32 0
こちらホゼナンターB班 次の作者降臨予定地点を保全中どうぞー!

717 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 07:04:10.60 0
待たせたな!αポイントの保全部隊到着!


718 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 08:31:24.93 0
保全部隊

719 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 09:41:37.23 O
勇気を出して初めてのγ地点保全

720 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 11:06:12.52 O
保全

721 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 11:32:36.88 0
>>711
なんだか不思議と懐かしい気分になりました
子供のころに素敵なおとぎ話と出会ったときの感覚に似てるのかも
でもただのおとぎ話じゃないんですよね。悲しみとか現実とかが見え隠れしてて
すごく切ないんだけど、読んでて心地良かったです

722 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 12:48:40.62 0
>>711
改めて読ませていただきましたが・・・これは本当に色々な意味で凄い作品ですねえ
『光』と『闇』の織り込まれ方にも首を捻って感心します

723 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 13:40:20.03 0
次の作者がくるまで皆持ちこたえるんだ!
ここは絶対に保全しろ!!!

724 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 14:45:45.60 O
は〜い

725 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 15:41:06.94 O
保全しておこ

726 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 16:01:50.86 0
>>711
やわらかい情景の描写の中で『闇』を語ってるのが新感覚!
乙です

727 :テラサボリンヽ( ゚∀。)ノ:2008/08/14(木) 16:30:48.17 0
サボリンただいまお盆で移動中 これ車の中からパソコンです
バタバタしていて最近の作品全く読めていませんが
今日帰宅するので明日にはまとめちょっとやろっかなと思います

と、保全代わりに顔を出してみるテスト

728 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 16:35:33.63 0
テラオボリンですなあ

729 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 16:47:16.28 0
>>727
車の中でPC?
旅行中?
酔いまっせ


730 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 17:30:19.09 0
>>711です、感想有難う御座いました。
とりあえずシゲさんの脳内イメージを意識しながら文体は
妙に緩さを出してみました(苦笑)
校正ミスは目を瞑ってやって下さいorz

昨日と一昨日は珍しく作品が少なかったような…。
ただ、そういう日もありますよね。

サボリンさん乙です。


731 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 18:35:38.16 0
お盆休みのホゼナント

732 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 18:44:15.89 0
お盆も仕事のホゼナント

733 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 19:28:56.95 0

>昨日と一昨日は珍しく作品が少なかったような…。

こんだけ頻繁に作品投下が有るスレも珍しいと思いますよww


734 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 20:08:50.04 0
>>733
そうだよなー
他の狼の小説系スレとかと比べるとここは本当に投下が多い
先日がすごい多かったからここ2、3日の投下量が物足りない気になるのかもね…贅沢な悩みだ

735 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 20:25:23.54 0
>>734
なるほど。
軽い発言失礼致しました(平伏)


736 :名無し募集中。。。:2008/08/14(木) 20:39:41.47 0
ホゼナンターさんありがとう
保全完了S地点を最近ホゼナンター化している
かなしみの者が使わせていただきます!
>>695さんUとはいきませんが一応シリーズです
繋がってます・・でも2つだけで終わりです・・でわ

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