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リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第13話
- 1 :名無し募集中。。。:2008/08/01(金) 19:56:00.60 0
- <一体、何処に行くって言うんだ
_, ,_
川*’ー’)<<胸の高鳴る方へ
前スレ
リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第12話
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1216453335/
まとめサイト
PC:http://resonant.pockydiary.net/index.html
携帯:http://resonant.pockydiary.net/index.cgi
掲示板 (感想スレ、作品題名申請スレ、あとがきスレ他)
http://jbbs.livedoor.jp/music/22534/
テンプレ>>2-16ぐらいまで
- 569 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 03:38:58.95 0
- 数分後、高度1万メートルの上空で高橋と久住は見事にミサイルを撃墜した
快哉の声を上げる他のメンバー
「やったよ愛ちゃん、小春、早く戻っておいで」
次の瞬間高橋と久住の姿が皆の前に現れる
「やったね」
「二人ともご苦労様」
「皆が力を送ってくれたから出来たんだ」
「それに上空でも皆の声がはっきりと聞こえました」
抱擁とハイタッチを繰り返すメンバーを微笑みながら見ていた光井だったが、不意に不吉なビジョンに襲われる
それは過去一度も垣間見たことのない終末のビジョン
説明の付かない不安に突き動かされながら、ダークネスの玉座の方に吸い寄せられていく
そこには大型のディスプレイがあり、世界地図が表示されていた
「ああっ」
悲痛な声を上げる光井の様子を見て新垣が歓喜の輪から離れて、近づいてきた
「どうしたの、愛佳」
優しく話しかける新垣に、光井はディスプレイを指差す
そこに映し出されたもの
米大陸から、ユーラシアの内陸部から、太平洋の真ん中から、欧州の国々から
中近東から、核保有を宣言している国、疑惑を持たれている国から多くの光点が突き進んでいる光景
「こ、これは」
二人のただならぬ様子に他のメンバーも近づいてくる
- 570 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 03:40:35.73 0
- 「どうしたんや」
「なにがあったと」
「光井、どうシた」
口々に話しかけるメンバーもディスプレイを見ると黙り込んでしまう
誰もが不吉な考えを抱いた
だがそれを口にすれば本当の不幸が訪れるのではとの思いが口を重くする
最初に言ったのはリンリンだった
「これは核ミサイルの自動報復装置だと思います
以前、私のいた組織でその存在を聞いたことあります
敵の先制攻撃や、テロで味方の兵士がいなくなっても、敵に報復するという…」
「そ、そんな馬鹿なことを」
「まさか」
「フハハハ、そのまさかなのだよリゾナンター諸君」
「お前はダークネス、さっき倒したはずなのに」
「確かに身体は滅ぼされた、だが人間の心の中に暗闇がある限り、私は復活できる
今はこの電脳空間に意識を委ねてるがね
そちらの中国のお嬢さんが言ったとおりだ
先ほど発射したミサイルは上空で強力な電子パルスを発射した
各国の戦略コンピュータが核攻撃を受けたと誤認し、自動報復装置を起動させるほどの
世界中の核保有国から仮想敵国に向けて発射された核兵器は人類の9割を即死させるだろう
残りの1割は核という悪魔の兵器をなぜ廃絶しなかったという悔恨と、閉ざされた未来への絶望 で、明けることの無い暗闇を彷徨う事になる
これがナイト・オブ・ダークネス
- 571 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 03:41:53.33 0
- 「黙れえーーっ」
れいなは拳でディスプレイを割り砕いた
吹き出る血を気に止めず「何とかせんと」と声を振り絞る
「無理や、ダークネスに放った必殺技、ミサイルを落とす時使ったエネルギー
もうどうすることもできん、終わったんや」
「愛ちゃん」
「すいません、うちがもっと早くこのことを予知できていたら」
「愛佳は悪くないよ、悪いのはダークネス
それと核の自動報復装置なんて悪魔の兵器を開発した人間の心」
小春が吐き捨てる
そんな誰もが絶望にとらわれ、下を向いている中ただ一人天空に向かい念を送っている者がいた
「カメ、何してるの」
「ガキさん、私の風でミサイルの方向を人のいない場所へ」
予想外の回答に一瞬口元を緩めた新垣だったが、次の瞬間声を荒げる
「いい加減にしなさい、あんたの吹かせる風程度ではどうにもならないよ」
「だって、ガキさん
こんなことで終わりになるなんて悔しすぎます
あたしは最後の最後まであきらめたくありません」
メンバーの中で一番頼りないと内心思っていた絵里の反撃に言葉を失う新垣
- 572 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 03:43:33.43 0
- 「亀井、その話乗ったあるよ」
ジュンジュンが近づいてきた
「そう、私らの念動力もあわせれば一発ぐらいは何とかなるかもです」
リンリンが続いた
「しょうがないね、もうちょっとだけ頑張ってみる☆カナ」
久住小春が眼差しを上げた
「私もやります」
光井が涙を拭い立ち上がった
「いやいやっ、私もなの」
道重さゆみが覚悟を決めた
「まさか絵里がそういうこと言うとは思わんかった」
田中れいなが腕を撫した
「…みんな」
新垣里沙が皆を抱きしめた
自然と円陣を組んだ八人は高橋愛を見つめた
皆のリーダー
人生に光を与えてくれた人
「み、みんな こんな頼りないリーダーですまんかった」
高橋愛は嗚咽が止められなかった
「何を言うてるっちゃ」
「私達がここまで来れたのは愛ちゃんがいたからだよ
皆そう思ってる」
- 573 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 03:44:49.16 0
- あーしは、あーしらは、リゾナンターや」
「おーっ」
全員が手を繋いでできた円陣から九色の光彩が立ち昇る
それはやがて一つに解け合って上空に昇っていく
世界にとって最後の希望の光
それは美しかったが、何百発の核ミサイルの前にはあまりにも無力に思えた
「だめか、やっぱり力が足りんのか」
「もっとたくさんの人と共鳴しなければ、誰かいないの、ねえねえ誰か」
黒田麗奈は友人と待ち合わせていた
あの時、あの人と出会わなければこんな日々は来なかっただろう
楽しい時や哀しい時、生きることの喜びに心が震える時、麗奈は思い出す
自分を忌まわしい因習の残る村から救い出してくれた人、高橋愛のことを
「誰か、ねえね誰か」
傍で誰かに囁かれたような気がして周囲を見回す
やがて何かに突き動かされるように空を見上げる
穂村厚志はご先祖様代々のお墓を掃除していた
ミュージカルを見に上京する為に、盆供養の際には不在なので父親から仰せつかったのだ
夏の日差しに焼かれ、草むしりをしながらふと最近会っていない同級生のことが頭に浮かんだ
「あの時は酷い目にあったよなあ
あいつの吐いたゲロを俺が吐いたことにしてくれって言われて
お陰でそれ以来あだ名はゲロ男だからなあ
そんなあいつも今じゃ月島きらりというアイドルなんだから」
芸能界のスターと片田舎に住む自分との一瞬の邂逅
人の縁の不思議に思いを寄せていると、それは聞こえた
- 574 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 03:46:32.14 0
- 「誰か、ねえねえ誰か」
場所が場所だけに一瞬驚いた厚志だったがやがて空を見上げその日差しの眩しさに掌で光を遮る
やがて恐る恐る指を広げていく
斉藤舞子は南海の無人島で大爆発があったという臨時ニュースを読む為にスタジオ入りした
ニュース原稿を頭の中に入れるために、ある少女のことを思考から遮断しようとしたが、無理だった
田中れいな―生き別れた、いや自分が捨てたも同然なのに、そのことを許してくれた妹のことを
常に一緒にいられるわけではないが、自分と同じ血の通っている人間がこの世界のどこかにいて、真っ直ぐ育っているという事実は舞子にとって何物にも換えがたい宝物となった
「しばらくあの店にも行っていないから、今度の休みの時にでも行ってみようかな」
「誰か、ねえねえ誰か」
スタジオ特有のざわめきの中、頭の中でクリアに響いたその声は、れいなの声にそっくりだった
急に胸騒ぎがしてきた舞子は、見えるはずも無いのに空を見上げた
スタジオの天井に遮られた空を
「あちゃー、今日も休業か」
行きつけの喫茶リゾナントの前であなたは落胆する
ボーイッシュで、ロリで、お姫様な店主と、ヤンキーの入ったウエイトレス
空気を和ませるアルバイト、疲れを癒してくれるリゾットに本格派のコーヒー
ある日偶然入ったその日から行きつけとなったその店に休業のボードが掲げられて
早くも5日
「まさか、もうあの娘たちに会えないなんて無いよな」と思いながら、踵を返して家に帰ろうとした時、その声を感じた
「誰か、ねえねえ誰か」
- 575 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 03:47:55.46 0
- 日本中で、世界中で
リゾナンターと関った人達からそうでない人たちへその声は伝わっていった
最初は不審に思った人たちも、空を見上げた時、そのことを感じた
9人の少女達の物語を
能力ゆえに受けた迫害の日々を
少女達が果敢にも運命から逃げなかったことを
世界の為に人知れず苦闘の日々を送っていた事を
そして現在も南海の無人島で、傷だらけになりながら戦っていることを
頭で考えたら到底受け入れられない真実を、人々は心で感じ、涙した
やがて世界中の人々は右手を高々と上げた
そうすれば少女達に感謝と共感が伝わるかと信じているかのように
もしその瞬間、宇宙空間から地球を観察している人がいたなら目撃しただろう
無数の核兵器が生み出す破滅の閃光を
その直前に地表を蒼い光が覆ったことを
殺戮から命を守るかのように
世界中は孤独な魂で満ちている
孤独な魂は暗闇に魅せられていく
でもたとえ暗闇に囚われても、誰かの声に耳を傾ければ
誰かの為に声を上げれば、心に一筋の光は生まれるだろう
絶望と悲しみから立ち上がった彼女達、リゾナンターのように
- 576 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 03:53:44.43 0
- >>568-575
何このドラゴンボールオチ(爆
「共鳴者」の作者さんの話、普通の人間がヒーローを助けるっていうのを
自分なりにやってみようとしたら、こんな風に暴走してしまった
ああ、あとないやいさんの最新の話、リゾナンターが共鳴して多数の人の
心を読むという話にも影響を受けたのかなあ
あれとは逆向きですね
何にせよすまんでしたホゼナント
- 577 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 04:59:32.28 0
- イメージとは認識だ。
人の認識の原風景。
意思や感情、思想、論理の集合体。
始まりも終わりもない、混沌の世界。
変容し続けることで認識し、人の意識でそれは形成される。
理解するものではなく、感じるものだった其れ。
やがて其れは、狂暴な存在となって人間に固定化されて理解する。
理解しながらも変容し、イメージは次々と書き換えられていく。
「心」に刻まれたイメージは二重、三重へと膨張し、合成され、徐々に形を求めるようになった。
―――それが、人々が抱く『人間』の本質なのかもしれない。
- 578 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 05:00:29.48 0
-
念写能力(ソートグラフィー)
心の中に思い浮かべている観念を印画紙などに画像として焼き付けるチカラ。
それは超心理学において透視能力とも酷似する。
現前していない感覚の経験をしていない現象や物体が対象となるが、決して予知ではない。
心的イメージは、様々な意識的コントロールの度合いを持つ存在。
やがてそれは一つの"世界"となり、精神的空間の中で生まれ、"具現"した。
幻術(ハルシネーション)
広範囲に存在する対象者の精神を支配するチカラ。
人間の精神面における隙を突いた暗示であり、相手の行動を精神面から抑制してしまう。
精妙な幻術は、見る者にあたかも本物のような感覚を植えつける。
鍛錬を積めばその幻を本物にする事も可能。
だが里沙の精神干渉とは違い、あくまで"後押し"をするモノだ。
それが、小春が初めて発現した異能力であり、"世界"と向き合った瞬間だった。
「…ではこれから取材に入りますので、準備お願いしまーす」
「はーい!」
楽屋のドアが開き、スタッフの姿を確認すると、小春は満面の笑顔で受けた。
ふと、スタッフと入れ違いで入ってきたマネージャーが小春の前にある写真に目を留めた。
その視線に気付いたのか、小春は素早く机の裏へと隠す。
- 579 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 05:02:00.76 0
-
「何だかたくさんあるわね。どこか行ったの?」
「あ、はい。この前のお休みに遊びに行ったんです♪
でも恥ずかしいから見ないで下さいよぉっ」
「へぇ、良かったらその話も記事に載せてもらわない?
今回は日常的な話も入れ込んでもらおうと思ってたところだから」
「ホントですか?じゃあどれか貼り付けてもらっちゃおうかなぁ♪」
「じゃああっちで待ってるから、なるべく早くね」
「はーい☆」
ドアが閉まる音が鳴った途端、小春は満面の笑顔を文字通り"消した"。
再び写真へと視線を落とし、溜息を吐く。
"此れ"をあんな子供向けの雑誌になんかに載せたら刺激が強いだろうな。
他人事のように思い、一枚を手に取る。それは、"世界"に存在する有り触れた情景。
ダークネスという『闇』が生み出すイメージ。久住小春の"具現化した"空間。
―――それは、まさに地獄絵図のよう。
鉛色の雲に覆われ、果てしない砂埃に閉ざされた戦場。
誰も彼もが死んで、死んで、ただ死んでいった。
血に染まる世界に吹き荒れていた激しい風はいつしか止み、静寂に包まれている。
異能力によってすり鉢状に陥没する幾つもの地面。
建ち並ぶコンクリートの残骸はガラス状に融解したまま尚も赤熱し
この地に叩きつけられた攻撃の凄まじさを物語っていた。
- 580 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 05:04:29.55 0
-
戦場跡を歩くと、爆発に巻き込まれて炭化した亡骸があちらの構成員によって運ばれていく。
銃殺や刺殺、撲殺に絞殺という何十もの「殺し合い」。
闇に取り込まれたような黒い服を血に染め、苦悶に見開かれた目を空に向け
小さな手を必死に伸ばして事切れた、まだ幼い『敵』
だが、これは戦闘なんかではない。異能力自体の『虐殺』だ。
自分と全く変わらない、子供たちの亡骸が其処には映し出されていた。
これが、―――小春が感じているイメージ。いつか来るかもしれない、『闇』のイメージ。
「力を貸してほしい。私たちには仲間が必要なの」
そういった"リーダー"は、この映像を見たらどう思うだろう。
またあの時の、"逆念写"と偽ったあの時のように。
何も言わずに、この先の"未来"を信じようとするだろうか。
正直言えば、小春はまだあの時を忘れては居ない。
『闇』を消すためのリゾナンターの中に居ると思われる『裏切り者』。
あの時は大半が小春に対して良くは思って居なかった。
それでも、それを分かっていながらあの提案をしたのだ。
"仲間"の居る中で抱き続ける孤独が、そう叫んでいたから。
「…私は、皆とは違うんだから…」
写真を無造作に鞄へと押し入れると、小春は部屋を出た。
今は仕事だけを考えよう。今は、今だけは『久住小春』ではないのだ。
- 581 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 05:05:33.33 0
-
―――不穏な気配は、そのスタジオ全体を覆い尽くしていた。
これが、ダークネスが科学的に開発したという『結界』だろうか。
「…久住小春ちゃんだね」
「貴方がダークネスの人?」
「別にそんなに警戒しなくても良いよ。私は何もしないから」
作られたセットの椅子に、笑みを浮かべる白衣を着た女性が座っている。
照明や家具もそのままな上に、女性の趣味なのだろうか。
テーブルには二人分の紅茶とケーキが置かれてあった。
「何だか喫茶店チックで良いね。こういうところで食べるのなんていつ振りだろ」
「…用件を早く言ってください」
「毒物なんて入れてないよ。糖分は脳にとって重要な栄養源。
無粋な真似をするなんて愚かだと思わない?」
そう言い、女性はフォークで切り取り、口に入れる。
それでも小春は一切の油断を見せないように椅子へと座り、ただ見据えた。
「しょうがない」とでも言いたそうに溜息を吐くと、紅茶を一口含む。
「何かアレだね。肝が据わってるって言うか、私が居たことの疑問とか、動揺が全く無いね」
「…そっちがリゾナンターに対して何かあるとしたら、一つしかないじゃない」
「あーうん、普通に考えればそうなんだろうけど。あのさゆが"教育係"とは思えないなって」
―――ピクリと、小春の顔が曇る。
あさ美は何事も無かったかのようにケーキへとフォークを刺す。
気を緩むな。警戒しろ。そう自身に言い聞かせながら、小春は苛立つのを堪える。
相手は科学者。人間という一つの実験体を知り尽くしている存在。
呑まれれば、負ける。
- 582 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 05:06:20.17 0
-
「…道重さんを、知ってるんですね」
「うん。知ってるよ、あの子のクセとか性格とか、能力とか全部」
「自慢みたいに聞こえるんですけど」
「悔しい?」
「そんな訳ないじゃないですか、ただの教育係ですよ?」
「そっか。あとれいなも知ってるよ。あの子は人見知りだから、貴方の扱い
もそうとう不器用なんじゃない?」
「…そうですね。もう完全に嫌われたほうがスッキリするんですけど」
「でもあの子は優しいから、戦いでも前線で戦ってるんだろうね。
貴方達を守ろうって躍起になる姿が簡単に浮かぶよ」
動揺を誘うための心理的言動。この場作りもその為。
嫌な性格、小春はそう思い、わざと溜息を大きく吐いた。
「…まさかそんな話をするためにこんな事をしたんですか?」
「怒ってる?」
「理解が出来ないだけです」
「じゃあここからは別に独り言だって思っても良いよ。強制はしないから」
「……」
「小春ちゃんはさ、トッペルゲンガーって知ってる?」
ドッペルケンガー。二重の歩く者。
生きている人間の霊的な生き写しであり、自身と瓜二つの身なりを持つ存在。
そして、邪悪なモノだとされている。
自分の姿を第三者が違うところで見たり、自分で違う自分を見る現象が此れの成り立ち。
「「寿命が尽きる寸前の証」っていう伝承があったから、人間は
『闇』だって恐れていたんだろうね、まるで自分が自分を殺しに来るって」
だがこの現象にはある科学者の研究によって解明された結果が在る。
- 583 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 05:11:07.52 0
-
それは脳のある領域に脳腫瘍ができた患者が見るというもの。
この脳の領域は身体的心像を司ると考えられ、機能が損なわれると認識上の感覚を消失する。
そしてあたかも「もう一人の自分」が存在するかのように錯覚するというモノだ。
他にも脳腫瘍に限らず、血流の変動による脳の機能の低下によっても起こる事が判明されている。
「このように脳がなんらかの機能障害を患い、死期が近い人がドッペルゲンガーを見る
っていう事からその伝承が生まれた、で終われば良いんだけど、第三者の目撃が
認められているうちは、まだオカルト的見解が残ってるってワケ」
「…それが、何なんですか?」
「うん、まぁこれからが本番なんだけど、そもそもこの研究の大本って何だと思う?」
「おおもと…?」
「このトッペルゲンガーっていう存在が出来た理由…みたいなものかな」
「それは、その脳の病気が…」
「それは結果だよ。トッペルゲンガーっていうものが『闇』だって思われたそもそもの理由」
自身と同じ存在を第三者が見たり、自分自身で見る現象の成り立ち。
人の中で歪んだ混沌の世界という心理的空間から生まれた感情。―――それは、恐怖。
「先入観、いえば固定観念だよ。人は『闇』が恐ろしいものだっていうのが当たり前になってるんだ。
それが通常ありえないものへと変えて、人へ人へと巡っていく。小春ちゃんに近いものだと、イメージかな」
「イメージ…」
「人は自分で認識しないと納得しない。認識できないものが怖いから。
そしてイメージは人の形をしていく、それがトッペルゲンガーが出来た理由だと私は思ってる」
「…でもそれはあなたの仮説ですよね?」
「多重人格っていうのがあるほどだから、間違っては無いんじゃない?
それに、小春ちゃんも分からないことは無いでしょ?」
「……」
「心の中に思い浮かべている観念を映し出す念写能力の保持者であり
他者のイメージの中で生まれた『月島きらり』という人間が居る貴方なら」
「……っ」
- 584 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 05:13:51.40 0
-
『月島きらり』
それは、この"世界"の『久住小春』の名前だ。
デビューからわずかな時間で芸能界におけるトップアイドルの座に上り詰めたという経歴によって
普通の田舎者の女の子がトップアイドルへというその道に誰もが憧れ、希望を抱く。
―――それが、小春に"世界"が示したイメージそのものだった。
「常識?非常識?そんなのは自分の中にある心が決めるんだよ。
全ての科学も解明者によって結果付けられたものに過ぎない。
だから貴方にも興味はあるんだよね、心像世界と現実世界を行き来して尚も『光』を求め続けてるその心が」
「…小春は…」
「『闇』が怖いっていうのは貴方の固定観念だよ。
トッペルゲンガーという自身ではない自分に怖がるように、『光』という常識に
捉われてる内は、ただただ怯え続けるだけ。
まぁ違いがあるとすれば、貴方の異能力は病的なものじゃないって事かな」
「……」
「同時に、『光』がまた希望だっていうのも、人の固定観念だと思わない?」
「ぇ…?」
「光に頼ったままだと、頼りすぎて自分ひとりじゃ『闇』の中も歩けない。
だからだよね、貴方がまだ、あそこに慣れてないのは」
―――言葉が、出てこなかった。
小春は愛のように精神感応は持っていない。
だがこの職業についてから、人間の中にある意識、思想なモノは手に取るように分かった。
だから信じられない、信じるのが怖い。
自分にとって『光』だと思っていた道が、結果的には『闇』だった事に気付かされた。
- 585 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 05:15:41.99 0
-
だから、"仲間"なんてものに執着心を感じたのかもしれない。
自分を裏切らない、信じられるかもしれない、分かり合えるかもしれない。
そこに形となって出来た『光』ならまだ、救いがあるかもしれない。
―――そして出てきたのは、『裏切り者』という『闇』
「…じゃ、そろそろ予定時刻だから帰るね」
気付くと、女性の前にあったケーキは全て無くなり、お皿さえも消えていた。
立ち上がり、耳に手をかざして何かを呟くのを見て小春は慌てて立ち上がると、女性に叫んだ。
「だからって、闇が希望だなんて思わない!」
「それも先入観だよ。『光』の中でただただ見てるだけだからそう言えるの。
『闇』だけに全部押し付けてる間は、チカラを完全に使いこなせる事は絶対に無いんだよ」
「…っ、私、貴方が嫌いです」
「……私は紺野あさ美って言うの、久住小春ちゃん。それと、その気の強さがアダにならない様にね。」
笑みを浮かべて、あさ美は消えた。
瞬間、異様な空気は無くなり、何事も無かったかのように人が集まってきた。
マネージャーがスタッフと話をしていた後、小春に気付く。
「ごめんなさい。ちょっと手違いがあって時間が遅く……?どうしたの?」
「…なんでも、ない」
「…?あら、何でケーキがここに……」
- 586 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 05:16:12.43 0
-
―――それはあなた自身が向き合わなければいけない問題だから
あの時の感情に似たモノが、身体の中で沸き立つ。
「小春だって、分かってるよ…そんなこと…」
下唇を噛み、小春が呟いた言葉は誰にも知られること無く闇に消えた。
一瞬パチリと、手に煌く一筋の光さえも。
- 587 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 05:27:10.98 0
- >>577-586
以上です。
何だかいろんな作品とリゾナントさせて頂きながら迷走しているのがバレb(ry
しかもいろいろと消化しにくい駄文で申し訳ないですorz
>>576
お疲れ様です。
普通の人間がヒーローを助けるというのはなかなか魅力的ですよね(笑)
自分も共鳴者の作者さんの作品にはかなり影響を受けているような…。
ではもう一眠り…は出来ませんね(苦笑)仕事の準備します。
- 588 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 06:36:00.22 0
- うわぁ〜!
たくさん来てる!!嬉しい!
通勤の電車の中で読ませてもらいます!
- 589 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 06:44:30.65 0
- 止まらぬラッシュ 鳴り止まぬ共鳴
このところ作品投下の勢いすごすぎやしませんか?w
>>576
最終回っぽくていいですね
過去にリゾナンターと関わった人たちが出てきたところでテンション上がりました
共鳴の力はリゾナンターだけでなく、全ての人に降り注ぐ
お約束かもしれませんが、胸が熱くなりました
>>587
相変わらずレベルたっけーですねw
念写と幻術って別個の能力だと思ってたけど関連し合ってたんですね
そこからもうひとりの自分とドッペルゲンガーの話に繋げたり
さらに光と闇の話に繋げたり…ほんと発想がすごいです
- 590 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 07:23:45.33 0
- す、睡眠不足なんかじゃ「ないやい」!
>>576
共鳴者さんの話は本当人に影響を与えてくれましたね
ドラゴンボール的な話とのことですがこういう話大好きです
アレンジリゾナント?ありがとうございました
>>587
相変わらず丁寧に練り込まれた能力設定に人物達の魅力が
詰まってますねいやはやどこからその発想がわくのか教えて欲しいものですw
今日も1日頑張っていきまっしょい!
- 591 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 09:23:45.79 O
- うぉっと!
- 592 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 11:11:41.13 0
- >>587
既存の設定を上手く使いながら独自の発想で流麗な文章・・・
人物描写も魅力的でまさに完璧です!な作品具合に嘆息します
嫉ましいくらいの才能ですねえw
色んな作品にリゾナントして・・・という部分は特にこのスレにおける理想形と言えるかもしれませんね
- 593 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 12:11:57.20 0
- 今日も元気にホゼナント
- 594 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 13:15:40.41 0
- こちら後方支援部保全班、予定通りポイントαに到着
これより現場の保全を開始します
- 595 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 14:17:23.49 O
- こちらポイントβ班
引き続き保全します
- 596 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 14:22:34.33 0
- なんか急に圧倒的にかっこよくなったなホゼナンターw
- 597 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 15:02:48.24 O
- ホーゼニャンター(*´∀`)ノ
カッコぃぃ?
- 598 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 15:05:32.98 0
- ポイントαよりポイントβへ。迅速な保全、感謝します
リゾナンターの受け入れ準備完了、待機中
>>596
職務意識にちょっとした変化が起きただけさ
- 599 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 15:39:54.04 0
- 了解
周辺エリアの保全をダブルチェックで確認・・
リゾナンターを新宿へ転送開始
- 600 :テラサボリンヽ( ゚∀。)ノ:2008/08/11(月) 16:40:40.83 O
- 規制解除らしいぜやったぜホゼナント!!
- 601 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 17:29:43.68 0
- これでホゼナンターD班が長期収容から帰ってこれるのか!
- 602 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 18:23:45.88 O
- ホゼナンターD班到着
- 603 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 18:53:29.09 O
- き、奇襲だぁ!
E班の連中がダークネスの奇襲を受けて大変な事に…!
- 604 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 19:50:51.86 0
- E班より本部!E班より本部!
至急応答願う! ダークネスの小隊に奇襲攻撃を受けた!
銃火器にて応戦中だが、持ちこたえられそうにない!
本隊の応援を要請する!
被害状況は、負傷者5名、死者3名!
至急応援ねがう!至急応援ねが・・・・・・・・
- 605 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 20:41:53.78 0
- リゾナンター
- 606 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 20:53:04.85 0
- ホゼナンターにも異変が(震)
>>587です。
ご感想有難う御座います(平伏)
能力に関してはほぼ自分の推測の中の産物なのですが
>>9にまとめてくださっているのを拝見すると
どこか複数能力保持には共通点があるような気がしまして。
こうして能力の見解をさせて頂けるのは、作者さんや作品のおかげ
だと思ってます、改めてお礼を申し上げます。
…作品のタイトルなのですが、さてどうしよう(滝汗)
- 607 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 21:06:52.67 0
- E班からの通信途絶より1分。
後方支援本部の司令を担当する准尉はその頭脳を巡らせ知識と経験から
部隊に出すべき指示を検討していた。
「准尉! ご決断を!」
逸る下士官を制し、准尉は忙しく動き回る人員を睥睨し、口を開いた。
「諸君に尋ねる。報告によれば敵は一個小隊、場合によっては中隊以上を
投入している懸念もある。対して我々から出せる戦闘要員は分隊がせいぜいだ。
圧倒的な火力の不利もあるだろう」
「では准尉は、部下を見捨てるおつもりですか?!」
「そう急くな。その前に、我々後方支援部の任務はなんだ。そこの士長、答えろ」
「はっ! 現場の保全、及び"異常"収束までの前線戦闘員への支援であります!」
「その通りだ。では諸君、敵の小隊はその任務を担った我々にとって何だ?」
「保全の妨げになる危険度の著しく高い、排除すべき要因と考えます!」
「よろしい。ではやることは決まっている。通信、衛生、その他非戦闘員も今すぐ
予備の火器を装備しろ。私も含め全員で出る。敵は保全区域から一人残らず排除だ。
生死は問わん! 以上だ!」
『了解しましたッ!』
- 608 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 21:10:17.40 O
- こちらD班
下痢に侵されながら到着
- 609 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 21:20:26.23 0
- >>607
准尉に惚れた!
- 610 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 21:21:28.24 0
- 「Rあなたには思想がない、感情だけ」
「ドクターマルシェそれは違うわ、思想は感情に宿るのよ」
・・・
一人のホゼナンターは言う。
「新しい波が生まれたよ、共鳴によって。闇の波動は打ち消される」
ダークネスホゼナンターは空虚な心を隠そうともせずに吐き捨てる。
「無意味だね、ヌーヴェルヴァーグも過去の遺物になる」
保全
- 611 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 21:52:45.39 O
- おまいらどんだけかっけーんだよぉw
E班の生存者は一体何を見たのか・・・!?気になるぜぇ
- 612 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 22:48:10.33 O
- バスに揺られてホゼナント…とか書くの恥ずかしいね
- 613 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 22:48:57.01 0
- ┃
■ 良スレじゃ
oノハヽo
从*・゚。゚・) /ヽ
(゚。ヽy/。゚jつX) ●.)
<,,ノ∞ヽ,,> \ノ バッ
.( # # # # # # )
- 614 :名無しじゃないやい:2008/08/11(月) 22:58:33.09 0
- ……誰か…誰か聞こ…えますか?
リ…ゾナントイ…エローです……こちらの情勢は現在不…利な状況です…
…生存者が居るのなら……援軍を…援軍という名のリクを…お願…いしま…す…
- 615 :名無し募集中。。。:2008/08/11(月) 23:24:13.54 0
- >>614
「保全 SIDE Darkness」にリゾナントと言うか、対抗した作品が読んでみたいです
闇に魅了されて取り込まれてゆく人を救うような話が読んでみたいです
自分で書いてみようとしたけど上手く書けなかったので放り出してしまいましたもので・・・
ないやいさんならどう書くのかなぁなんて思ったりして・・・
>>577-586
この作品の闇に対する問答も最高に面白かったもので
なんかそれぞれの作者さんの闇に対する回答が読んでみたくなったりしました
- 616 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 00:06:11.57 0
- 保全!
- 617 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 00:54:12.16 0
- ホゼット
- 618 :名無しじゃないやい:2008/08/12(火) 01:00:58.76 0
- >>615
了解です…あえて自作の中で明確な正義・悪を書いていない自分ですが
この話を書くことは自分自身へのステップアップとなるだろうと思うので
今までの中で最高難度のリクエストでありますが受けさせてもらいます
まったりとお待ち下さい(そしてまだまだリクは受付中ですと言っておくw
- 619 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 01:32:34.84 O
- おやすみリゾナンター
- 620 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 02:25:26.89 0
- おやすみ戦士達
- 621 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 02:49:36.73 0
- >>618
ありがとうございます!
楽しみに待ってます!
- 622 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 04:14:16.43 0
- 後方支援部夜間保全班
- 623 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 05:26:29.70 0
- 朝のうえぇおうぅえぇ
- 624 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 07:11:26.48 O
- おまいらが前線で命をかけていると言うのに…俺ときたら。
ちくしょうめ。・゚・(ノД`)・゚・
- 625 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 08:06:09.84 0
- 後方支援も大切なんだ
お前がいなきゃ前線も安心して戦えない
全員で戦ってるんだよ
- 626 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 08:21:21.97 O
- 規制解除にさっき気付きました
解除後初ホゼナント
- 627 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 09:30:05.71 0
- 仕事先からホゼナント
- 628 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 10:54:20.98 0
- プレザーベイション ―保全能力―
それはあまりに弱いチカラ
しかしそのチカラがあればこそ世界は保たれる
そしてそれは・・・全ての者がが持つチカラ
- 629 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 12:20:19.02 0
- 今、ホゼナンターが熱い
- 630 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 12:50:41.94 O
- 負けられない保全が…そこにある…!
- 631 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 13:49:49.57 0
- 保全の火を絶やすな!
彼女達が駆けつけてくれるその瞬間まで持ちこたえろ!!!
- 632 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 15:14:52.51 O
- うぉぉおおお!!
- 633 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 16:17:15.97 0
- 微力ながらホゼナントするであります!!!
- 634 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 16:18:07.29 0
- 一人ひとりのチカラは小さくとも・・・
共鳴しあったとき それは強く・・・蒼い光を放つ
- 635 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 17:01:45.64 O
- プレザーベイション能力発動!
- 636 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 17:11:40.52 0
- 18時頃に1本投下させてもらいます
まとめサイトにあるみつジュンの話とリンリンカテゴリーの
最新作(みつジュン話とリンクされています)に続く話となります
注意事項は下記の通り
・7レス分(最新レスから10分以上経っても何もない場合はしたらばのアク禁スレを見てあげてください
・こんなのなちガキじゃないやい
・切ない系
以上となりますそれでは18時までもう少々お待ち下さい
- 637 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:00:38.77 0
- その日、里沙は訓練を終えて自分の部屋へと向かっていた。
まだまだ、教えてもらった通りに動けているとは思えないけど、
努力すればした分だけ、思った自分に近づけている気がして。
また夜にでも訓練をしようと思いながらタオル片手に歩く里沙の耳に届く、優しい歌声。
(誰だろう、すごく綺麗で優しい声だなぁ)
その歌声はそっと、里沙の心を包み込むような温かさを持って辺りに響いている。
まるで歌手のような、聴く者の胸を打つ歌声に引き寄せられるように、里沙は声のする方へと歩みを進めた。
一歩一歩歩みを進めるごとに大きくなる歌声。
その歌声に酔いしれながら、里沙は基地の中にある中庭へと足を踏み入れた。
里沙の目に飛び込んできたのは、よく見慣れた後ろ姿。
短い栗色の髪の毛が風に揺れていた。
そして、風に乗って辺りに響く優しい歌声。
その歌を邪魔することは憚られて。
気配を殺しながら、里沙はその場に座り込む。
目を伏せて、その歌声に耳を傾ける里沙。
心地よいメロディは、疲れた里沙の心を静かに、確かに癒していく。
心の中の澱を拭い去るような歌声に、いつしか里沙の頬に光を反射しながら筋を描く涙。
悲しい時にだけ涙は流れるものではないのだと、その歌声は教えてくれているようだった。
やがて、途切れる歌声。
- 638 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:01:41.10 0
- 「あれ、ガキさん、いつの間にいたんだべ」
そう言って、里沙の方に歩いてくる彼女。
ともすれば、自分よりも年下に見える彼女。
出会った時の神々しさを感じさせないくらい幼い微笑みを浮かべながら、ゆっくりと歩み寄ってきて。
その微笑みに、自然と自分の口元に笑みが浮かぶのを感じながら、里沙は答えを返す。
「こんにちわ、安倍さん。
実はさっきからそこで、歌を聴かせてもらってました」
里沙の言葉に、もー、と言いながら里沙の肩をペシペシと叩く仕草。
その仕草は、同性であっても思わず可愛いと思ってしまうくらい、幼くて微笑ましい。
とてもじゃないが、あの日里沙を絶望から掬い上げた人とは思えなかった。
安倍さんと里沙が声をかけた彼女…安倍なつみは、微笑みを崩すことなく里沙の目を覗き込む。
綺麗な瞳だなと、自分で感じていることなのに他人事のように思いながら、その瞳を見つめ返す里沙。
里沙の肩に触れていた手が、そっと里沙の頭へと伸びる。
二度、三度、軽く頭をポンポンと叩かれる感触。
「んー、ガキさん、疲れてるんじゃない?
訓練はもちろん大事なことだけど、無理しすぎると自分のためにはならないよ」
「でも、早く、皆のためにも役に立ちたいですし」
- 639 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:02:52.51 0
- 心からの言葉だった。
あの日、里沙を絶望から掬い上げてくれたなつみが居る組織である、『M』。
そこに集う人達の優しさに、期待に応えたいと想う。
一日でも早く、皆の助けになりたい。
なつみは微笑みを崩すことなく、頭に置いていた手をそっと里沙の頬へと滑らせる。
そして、もう片方の手も里沙の頬へと沿えて。
「ちょっとぉ、あへさん、はなしてくらはいー」
「あのね、役に立ちたいとかそういう考えを持つことは確かに大事なんだけど。
でも、少しでも早くとか、そうやって自分を追いつめていこうとしなくてもいいんだよ。
自分のペースでいいの、今は緊迫した場面じゃないから」
「そうなのかもしれませんけろ、っていうか、はなしてくらはいよー」
なかなか自分の頬から手を離そうとしないなつみに、頬をつねられたまま声を出すものだから。
間抜けな返事になってしまうのは仕方がない。
仕方がないのに、里沙に対して遠慮することなくお腹を抱えて笑い出すなつみ。
心の底から楽しそうに笑うなつみの姿に。
頬をつねられて間抜けな姿を晒してしまうことになったことすら、何だか許せてしまう。
不思議な人だなと、改めて想った。
初めて出会った時、銀色の光をたなびかせて目の前に降り立った背中。
その時とはまるで違う、無邪気で幼い姿。
だけど、同じ人なのだと普通に思えるのは。
その背中に羽が生えているように見えるからかもしれないと、漠然と思った。
- 640 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:04:15.95 0
- ようやく頬から手を離してもらった里沙。
お返ししてやろうと、手を伸ばせば。
笑いながら里沙の手を取って、ちょっと散歩に付き合ってもらおうかなと言うなつみ。
散歩って何処へと聞き返すよりも先に、なつみの体から放たれる銀色の光。
「ちょ、浮いてる浮いてる!何で!」
「地面を歩くのも好きなんだけどねー、あたし、空の散歩も好きなんだよねー。
と、いうわけで、ガキさんあたしの散歩に付き合って」
そう言って、なつみは里沙を抱えて上空目指して浮上する。
いつの間に、言霊能力を発動したというのだろうか。
言霊を発した様子はどこにもないのに、何故空を飛ぶことが出来るのだろう。
考え込む里沙を見て、なつみは微笑みながら口を開く。
「ふふ、言霊を発する時の力、それを応用させてもらったんだべ。
あたしの、事象を具現化する力、それを上昇する力に変換してるんだ」
「そんなこと出来るんですね…すごいなぁ…」
「といっても、さすがに本来の力の使い方を無理矢理変えてるから
浮いたり、ちょこっと動き回るくらいしか出来ないんだよねー。
マンガみたいにビューンって速度で飛び回るのはさすがに無理だなぁ」
なつみはそう言いながら、里沙が怖がらない程度の速度でゆっくりと上昇を続ける。
300メートルくらい上昇しただろうか、この辺でいいかなと言って。
里沙の体を支えてくれていた腕がスッと離れて、口をパクパク開いて焦る里沙。
だが、里沙が思ったような事態にはならなかった。
- 641 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:05:23.26 0
- 「あれ、何で」
「んー、自分だけじゃなくて他の人にも上昇する力を付与できるのかなって試してみたんだけど。
案外出来るもんだねぇ」
笑いながらサラッとすごいことを言ってのけるなつみ。
血の臭いなんて感じさせない、ともすればこの人は本当に能力者なのだろうかと思うくらいなのに。
あの字は本当なのだと、改めて思い知らされる。
「銀翼の天使」と、他の組織から恐怖と畏敬の念を込めてそう呼ばれるなつみ。
戦うことなくとも、そのすごさをこうして見せつけられて。
また、なつみだけではない、『M』に集う能力者達は少数精鋭と呼ぶに相応しい強い能力を持った者達の集まりなのだ。
ただの洗脳しか使えない自分が、本当にこの集まりの中にいていいのだろうかと心底想う。
圧倒的と呼べるような力を持たぬ自分は、ここにいる意味があるのだろうか、と。
落ち込む里沙の耳に届く、なつみの声。
「ガキさん、ほら、見て見て。
こんだけ高いところにいると、色んなものが見えるよね。
ほら、あそこの人洗濯物干してる。
あ、あっちの人は今から何処か出かけるのかな、楽しそうだよね」
なつみの声に、里沙は視線を右に左にとずらして。
自分も目がいい方だとは思っていたけど、よくそんなに見えるものだなと感心する。
その人達に視線を向けながら、なつみは再び口を開いた。
- 642 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:06:25.32 0
- 「こういう穏やかな世界で、能力者もそうでない人達も仲良く暮らしたいよね。
今はまだ難しいけれど、いつかはそういう風になったらいいなって想う。
ねぇ、ガキさん。
ガキさんは今、ここにいていいのかなとかそういう風に悩んでるみたいだけど。
力の強さだけが全てじゃない、ガキさんの気持ちがあたしや皆と同じならそれだけで充分ここにいる理由になるんだよ。
強いことは大事なことかも知れない、でもそれを全てにしたら大切なことを見失っちゃう。
今のガキさんに必要なのは力の強さじゃない、色んなことを経験して学んでいくことだよ」
なつみの言葉に、里沙の目元にこみ上げてくる熱い滴。
声を出すまいと唇を噛みしめる里沙の横で、なつみは再び歌い始める。
温もりに溢れる歌声に込められる想い。
あの日と同じように抱きしめられながら、あの日とは違った涙を流す里沙。
一緒に訓練をしているわけでもないのに、何で彼女はここまで自分が抱えていた悩みに気付くことが出来るのだろう。
そして、ここまで里沙の心に響く言葉を与えることが出来るのは何故なのだろうか。
なつみが精神感応の能力を持っているなんて話は聞いていない。
それなのに、まるで里沙の心を読めるかのように里沙の心に降り注ぐ、温かな想い。
この人の想いに応えられるだけの人間になりたい、改めてそう想う。
強くなることばかりに気を取られて、見失っていそうになっていた道。
口癖のようになつみの言う言葉の意味が、ようやく分かってきたような気がした。
強い力だけでは叶えられない大きな願いが、確かにある。
力はその願いを叶えるのに必要な要素かもしれないが、その力を使いこなすに充分なだけの心、
それを育てることの方が大事なのだ。
強い力はいとも簡単に人を狂わせる、だからこそ、その力を正しく使うために心を育てなければならない。
―――今はまだ、強い力を求めて自分を追い詰める時期ではないのだ。
- 643 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:07:21.82 0
- 髪を撫でられ、背中をさすってもらい。
落ち着いてきた里沙の耳に届く、もうちょっと一緒に散歩しようかという柔らかい声。
帰ったらきっと、2人揃って何処に行っていたんだと怒られるんだろうなと思いながら。
その声に、とびきりの笑顔で里沙ははい、と返事を返した。
* * *
報告書を書く手を止め、懐かしい記憶に目を細めていた里沙。
あの頃から随分時は流れて、今となってはあれは本当のことだったのだろうかと思うような日々が続いている。
『M』の崩壊、囚われたなつみ、何一つ変わることのない世界。
それでも時は流れ、今という時間を生きていかなければならない。
温かな声が離れていても聞こえてくる。
あの温かな日々によく似た、温かさ。
その温もりに心の全てを委ねて生きていけたらいいのに。
里沙の脳裏に蘇る、拘束具をつけられた痛ましいなつみの姿。
かつて「銀翼の天使」と恐れられた彼女は、その美しい羽根をもがれて飛ぶことはもう叶わなくなった。
自分に力があったのなら、そんな真似をさせたりはしなかったのに。
今も一人孤独に居住室で過ごしているであろうなつみ。
例え、なつみとは共鳴することは出来なくても、同じように孤独な環境に身を置くことが。
それが正しいことなのかはともかく、これが囚われているなつみに自分がしてあげられる唯一のことだから。
聞こえてくる温かな八つの声が奏でる旋律。
―――その旋律に耳を塞ぐように、里沙は音楽のボリュームを上げて再び報告書を書き始めた。
- 644 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:07:58.52 0
- >>637-643
更新は以上となります
- 645 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 18:54:10.05 0
- ふわふわでぽかぽかですね
- 646 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 20:09:19.91 0
- まだこのスレを落とすわけには…!
- 647 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 20:37:50.97 0
- >>644
空を散歩する二人が目に浮かびました
- 648 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 21:34:38.41 0
- >>644
ええ話や
- 649 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 22:37:51.30 0
- hozenanto
- 650 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 22:44:01.92 0
- 更新乙です!
ほのぼのしました…あれ、目から水が…(ごしごし
- 651 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 22:46:38.04 0
- ないやいです感想をありがとうございました
本編の次の更新にてダークネスサイドや安倍さんに触れていく予定があったので
急遽こういう話を書いてみました
過去を思い返してリゾナンター達の温かさに流されまいときつく心を閉ざすガキさんの苦悩はいかばかりか
想像していただけたら幸いです(ほのぼのしているのは過去の記憶だけというよく分からない話で申し訳ない
この話のキーワードは「歌」なのですが…次回更新はこの「歌」というキーワードを入れた別の組み合わせをと考えています
バトル成分のない淡々とした展開の話が後2回続く予定ですがよろしくお願いします
- 652 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:13:25.57 O
- 保全保全
- 653 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:19:22.41 0
- 感動作の後にお邪魔します。作品投下します。
今回、[Niigaki](05)116 『孤独の死闘』の続きを勝手にリゾナントし、書かせて頂きました。
(作者様ありがとうございました。)
その他にも色々な作品から設定・名言等お借りしております。全ての方に感謝。
注意:某OGが出ます。
タイトルは全体として『Wingspan』
その中で全3章構成くらいで更新していこうかなと(予定は未定)
それでは、しばしお付き合いください。
- 654 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:20:25.49 0
-
「ううっ……」
真冬の海中へ引きずりこまれるような痛覚で目が覚めた時
まだこの体には鼓動が鳴り、かろうじて血が通っているのだと知った。
末端まで石のように冷えた身体。
己の腕できつく抱きしめ、それでもこの確かな痛みで現実なのだと、認識する。
痛みは襲ってくるものの思考回路がうまく回らない。
大切な事があった気がするのに、深いもやがかかったような……
ぼんやり辺りを見回すと、灰色を基調とした、殺風景でがらんとした部屋。
無機質な印象しか与えない机。パイプ椅子。
剥き出しのコンクリートに無造作に投げ出された身体をゆっくりと起こす。
肋骨がきしみ悲鳴を上げ、嫌な汗が背中を伝う感触は里沙の不快感を助長するしかない物であった。
この場所は里沙には見覚えがあった。
間違いなくここはダークネスの……
- 655 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:22:10.54 0
-
「……お目覚めかしら?」
「―――ひっ!!」
ぎしりとパイプ椅子が軋む音と共に、背後から急に声を掛けられ、里沙の体は驚きで跳ね上がる。
と、同時に全身に迸る、差し込むような激痛で再びうずくまった。
「そんな吃驚しないでよ、私、ずっとここに居たんだし」
いつか顔を合わせる日が来るだろうとは思っていたけど、こんな形とはね。
そう告げる、里沙にとっても聞き覚えのある低い声。
パイプ椅子に悠然と腰掛けたスーツ姿の女はただ、淡々と事務処理でも行うかの如く里沙に話しかける。
今まさに覚醒したばかり、自身の置かれている状況すら理解し得ない里沙を見やる
女の表情からは何らかの感情すら窺い知ることは出来ない。
「覚えているかしら?何故ここに居るか。どうやってここに来たか」
どうやって―――?
……素直に女の言葉どおりの行動を取るのは癪だが致し方ない、そう判断した。
記憶の最後には、ひと気のない夜道。
対峙する女。そして―――……
- 656 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:23:30.63 0
- 「っ……皆、はっ!!」
搾り出した声は、発生させた本人ですら驚くほど、悲痛な響きを含んでいた。
可能性は低い。だが―――もしもあの時。
己の心の声が誰かと共鳴していたならその人物は間違いなく動くだろう。
……そういう子たちだ。
そして探査中、粛清人と見合っていたとしたら―――
「さぁ、Rはあの通り、血の気が多くてね。
手加減なんて出来ないの知ってるでしょ?
……それより目覚めてみれば、まっ先に自身の心配よりあの子達を心配をするのね、あなた」
これは可笑しな物を見た、といった風に薄く女は笑む。
実際は里沙の『生きたままでの回収』が目的だった。
任務を強制的にではあるが終了させた粛清人は帰還しリゾナンター達と相まみえる事はないのだが、
そういうことで里沙の心情を逆撫でできることを知っている。
女は嘘は言っていないけれど、真実も言っていない。
(仲間の心配をして何が悪いんだ―――……っ!!)
- 657 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:24:58.48 0
- その笑みに不快感が胃の底から上がってくるのを感じる。
大切なものを貶された不快感。否定された嫌悪感。
ありったけの力を振り絞って睨みつける。無言の抵抗。
記憶の最後を覆い隠すような、薄ぼんやりとした霧が晴れていく。
あの時、粛清人が現れて、それから―――――負けた。
意識の触手を潜り込ませ、女の精神に孤独を思い出させ。
だが、決定的なとどめをさすことは出来なかった。
(お願い、どうか無事で居て……)
己が巻き込んでしまったかもしれない彼女たちを想うとなおさら今、ここでいいようにされるわけにはいかない。
必死で状況打破に繋がる糸口を探す。
女に対する最大限の警戒は解かぬまま。
「Rを止めるのが遅くなったけれど、随分洗脳の能力を使いこなせるようになっているようね。結構なこと。
……実は」
女が語りだす。里沙のその剥き出しの敵意には大して興味もない様子だ。
「新垣里沙、お前が改心し組織に戻るというなら
先だっての無礼を赦す、という話が浮上している」
- 658 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:26:37.11 0
- 訪れる、静寂。
再び忠誠を尽し、駒と成れ。
頭を垂れ、主の前に傅け。
傍らに携えていた文庫本――里沙が目覚めるまでの退屈凌ぎだったのだろう――を机に伏せ置き、
女が持ちかけてきたのは唐突とも言える取引。
指先まで冷え付いているはずなのに、きつく握られた手は発汗し。
色んな想いがめまぐるしく里沙の中で暴風雨の如き凶暴さとなって暴れている。
赦す。……赦されて何になる?裏切る。……一体何を?
そもそも、自分はどちら側に帰属しているのだろう―――
「…………」
「だんまりか。まぁいいでしょう」
その一言が切欠となる。
先に仕掛けたのは里沙。
女に向け意識の触手を伸ばす。そこに込めるのは、紛れもない敵意。
だが女にもそれは気付かれているようで、心の入り口はロックされている。
無理矢理その先をこじあけようと懸命にもがく、里沙の思惟。
「ふぅん、成程。答えは聞かなくてもよさそうね」
組織に牙を剥いたものの末路を知らないわけでもないでしょうに。
それはまるで、手のかかる子供を窘めるかのような。
- 659 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:28:02.72 0
- ……だが、精神に入り込もうと牙をむく意識の触手、それは囮!
【 能力はね、イマジネーションなんだよ 】
(安倍、さん―――)
ギリギリの状況で思い浮かべたのはあの人。
あの日の言葉が里沙の心にフラッシュバックしたかのように舞い戻る。
イマジネーション。
想像することで全ては創造される、と手を取り指導してくれた。
心を鍛えることは、そのまま精神の基礎体力となり柔軟性になると。
想像。そして創造。形は違えども、精神系の能力者が辿り着く到達点。
ゆらゆらと里沙から立ち上るオーラ。
光を宿す眼光は、切り開くべき未来を見据える。
(負けない、負けたくない!死ぬわけにはいかない!こんな所で!)
- 660 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:29:21.64 0
- イマジネーションは無限。全ては想像することで創造される。
里沙がイメージしたモノ。それは―――
太さで例えるならば、常々能力の行使に使用する、相手の精神を雁字搦めにし
支配権を握る為の拘束具がロープとすると、対してこちらは蜘蛛の糸。
細い、細い、銅線より、ピアノ線よりも細い、圧倒的不利な状況である里沙の活路にも似たそれ。
大きな標的に意識を裂かせ、伏兵の存在を隠蔽する。
ピンと張られたそれを、隙さえあれば弾丸のように撃ち込む!
気配を押し殺し、契機を待つ。
女の精神のロックが一瞬でも緩む、その瞬間を。
「そうそう……本来ならありえる筈もないと思わない?この話。
実は裏があるのよ。
上に持ちかけて強引に通した人物が居る―――新垣里沙、あなたもよく知っている筈」
裏ならばそんなに簡単に露見させていいのかという思いの外に
それに該当する人物を想像してしまう。
彼女なら言い出しかねない、と。
- 661 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:30:55.99 0
- 里沙は願う。まさか、そんな筈はないと。
ただの狂言であってほしいと。
がり、と爪がコンクリートを引っかく音が微かに響く。
「…………ま、さか」
「物わかりが早くて助かるわ。
―――安倍なつみを裏切る事ができるの?信奉者のあなたに」
安倍なつみ。
その名前を出されたとき、ピンと緊張に張り巡らされた里沙の心は揺らぐ。
ぐらりと地面が歪む感覚は錯覚だと理解はしているのに
反して足が崩れていきそうな感覚は正しく動揺から来ているのだろう。
彼女が、戻ってくることを望んでいると女は告げる。
憧れ、恋にも似た焦燥を抱く里沙にとっての恩人であり、唯一絶対神が。
「……嘘、だ!」
「残念ながら、事実。彼女はそれを望んでいる。
全く、随分目を掛けてもらって、更に便宜を図ってもらって……」
そう、発した瞬間。
女の心の隙間がほんの少し、揺らいだ。
(……今っ!)
女の意識の入り口へ潜る弾を撃つ!
そして、マインドコントロールを開始。
- 662 :名無し募集中。。。:2008/08/12(火) 23:32:19.48 0
- >>654-661
以上、第一章の前編でした。
ないやいさんが偶然にもなちガキを書かれているのにこの差はなんだとorz
さて、ここまで読まれてお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが
真にリゾナントしているのは
テンプレの>>2
>でも悩んでるんだリゾナンダーたちの優しさに触れて
>そして最終回で彼女は決断を迫られることになる・・・
この部分です。
次回、第一章後編はまた近いうちに。
そして遅くなりましたが>>510の作者です。感想有難うございました。予想以上の反響に驚いております。
だからこの作者、英語は苦手だと何度言ったら(ry
ご指摘のあった部分の修正版を鋭意作成中です…まとめさんにこっそり差し替え掲載お願いするつもりです…
いつも本当にすいません…
- 663 :名無しじゃないやい:2008/08/12(火) 23:47:27.21 0
- >>662
偶然って重なるものですねまさか自分も自作の後になちガキがくるとは
思っていなかったのでびっくりさせてもらいました
そして>>510の作者さんでもあったということにさらにびっくりです
どんだけ色々出来るんだと本気でびっくりさせてもらいました
話の方もまた読者をじらしまくるところで終わっているのが心憎いw
続きを心待ちにしています
- 664 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 00:15:45.01 0
- いやぁ〜なちガキ良いですねぇ!
続きが気になる
- 665 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 00:51:14.97 0
- 作者さんはギャグもシリアルも書けるのですね
発想力と作風の広さに驚いている一人です
>そして最終回で彼女は決断を迫られることになる・・・
ということはこれ、最終回ですか・・・
続きに期待します
- 666 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 01:12:50.52 0
- >>651ことないやいですが夜中の3時に「歌」をキーワードにした保全作を一本投下します
よろしくお願いします
- 667 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 01:33:08.93 0
- ないやいさんの作品を楽しみにしつつホゼナント!
- 668 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 02:31:21.07 0
- 朝起きてから読みますのホゼナント
- 669 :名無し募集中。。。:2008/08/13(水) 03:00:16.87 0
- それでは投下します注意事項は下記の通り
・短い
・こんなの愛れなリンじゃないやい
・ようやく本編を補足するような番外編らしい番外編
・かなしみさんの作品の影響を受けているないやいが描くいつか到達するかもしれない未来への可能性(の一つ)
・読後感はきっとさわやか
以上となりますそれでは少しの間お付き合い下さい
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