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リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第13話

1 :名無し募集中。。。:2008/08/01(金) 19:56:00.60 0
<一体、何処に行くって言うんだ
   _, ,_
川*’ー’)<<胸の高鳴る方へ

前スレ
リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第12話
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1216453335/

まとめサイト
 PC:http://resonant.pockydiary.net/index.html
携帯:http://resonant.pockydiary.net/index.cgi

掲示板 (感想スレ、作品題名申請スレ、あとがきスレ他)
http://jbbs.livedoor.jp/music/22534/

テンプレ>>2-16ぐらいまで

139 :名無し募集中。。。:2008/08/03(日) 18:07:33.80 0
乙!
面白かったよー

140 :名無し募集中。。。:2008/08/03(日) 18:16:19.94 0
能力をそのままに違う世界設定と微妙に異なる性格設定がまた素敵でした
物語そのもののおもしろさは言うまでもなく
乙です!

141 :名無し募集中。。。:2008/08/03(日) 18:20:09.74 0
日曜出勤から帰って来たら、長いのが2本投下されてて嬉しい

>>118
かなり荒っぽいミティ様だけど、なんとなく勢いというか、熱いモノは伝わってきた

>>138
いやこの設定を考え付いた時点で、作者さんの勝ちだと思う
その想像力が羨ましいw

142 :名無し募集中。。。:2008/08/03(日) 18:41:45.66 0
>>138
乙でした
さゆが研究所の新人が好きな理由とか本筋に直接関係の無い
細やかな描写が、物語に命を与えてると思った
早速ビルゲイツに知らせます

143 :名無し募集中。。。:2008/08/03(日) 19:58:52.18 O
なんかキテるー!

144 :名無し募集中。。。:2008/08/03(日) 20:31:58.88 0
さゆ自身はコンプレックスを感じてたであろう目の色と肌の白さを愛でる
愛ちゃんの男前っぷりに惚れたw

新番組『アニマル戦隊リゾナンター』の設定考えてみようかな

145 :名無し募集中。。。:2008/08/03(日) 21:15:47.78 O
(ホ)

146 :名無し募集中。。。:2008/08/03(日) 21:53:17.70 0
>>84ことないやいです予告通り明日夜10時に一本投下します
よろしくお願いしますー

147 :名無し募集中。。。:2008/08/03(日) 22:17:05.89 0
期待してま〜す

148 :名無し募集中。。。:2008/08/03(日) 22:19:39.00 0
投下お疲れ様です。
>>130は想像を掻き立てられますね(薄笑
設定もですが、描写に文体、どれをとっても凄く楽しめました。

>>144
何だか面白そうですね、単発で書いてみたい様な気がします(笑)


149 :ギガサボリンヽ( ゚∀。)ノ:2008/08/03(日) 22:56:53.34 0
代々木昼の陣でジュンジュン&リンリンの歌唱力に度肝抜かれてきたぜホゼナント

150 :名無し募集中。。。:2008/08/03(日) 23:26:14.89 O
パンダ保全

151 :名無し募集中。。。:2008/08/03(日) 23:56:29.44 0
「はい、以上で秋からの新企画『アニマル戦隊リゾナンター』の説明を終わりたいと思います」

「ふーん、皆が超能力者という設定やねんのう」

「はい、それと同時に動物の精霊の力を借りてヒロインに変身するという設定です」

「さゆみ、うさちゃんがいい
 必殺技はうさちゃんビーム」

「ええ基本的には現在の@の設定をそのまま移行という形でいいと思うのですが、
 それだといくつか問題があるんです
 まず光井さんのパンダとジュンジュンさんのレッサーパンダとでは、音的にかぶってしまうので
 どちらかにポピュラーなパンダになっていただき、もう一人の方は新たに何か別の動物キャラを
 受け持っていただきたいと」

152 :名無し募集中。。。:2008/08/03(日) 23:57:20.11 0
「パンダは光井と決まってるたい」

「小春ホントはキツネ嫌だなあ」

「絵里はセーラームーンに変身したい」

「あっしはバンビかい、まあかわいいかのう」

「それじゃ一人がかわいそうなの」

「ハイ、リンリンはテディベアプードルがいいデす、バッチリです」

「はいはい、皆勝手に発言しないの
 で、二人はどうなの」

「光井、私はどっちデもいいダよ」

「私リゾナントドルフィンになります」

「それはまた飛躍しましたねえ」

光井はニヤッと笑うとおかっぱ頭のカツラを着け、歌いだした

「♪汽車を待つ君の横で僕は〜」

「イルカかよ」

「まあわかる人には最初からわかるオチやったのう」

153 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 00:05:56.88 0
どうせなら『サラダの国から来た娘』歌わんと・・・

154 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 00:12:23.23 0
PVのイメージだと『いつか冷たい雨が』を切々と歌ってそうな

155 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 00:46:35.80 0
ほぜ

156 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 01:44:46.54 0
なん

157 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 01:57:34.78 0
「じゃああっしは中大兄皇子で」
「イルカ違いですがな高橋さん」

158 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 04:23:05.52 0
>>118
美貴様の最期かっこいい!!
>>138
よく思いつくなぁ〜こういう話
すごい!
>>146
待たせるねぇ、王子様。


159 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 05:33:45.39 0
うえぇおぉうえぇー

160 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 06:02:09.35 0
さき東京☆女子アナクルーズ見ましたが
愛ちゃんは縄跳びに入る時i914しか見えなかったw
カッコよかったなぁ

161 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 07:35:36.45 0
朝のホゼナント

162 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 09:01:49.84 O
ホゼナントしとー

163 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 09:10:19.22 0
ほぼ2日間このスレを覗けなかったのは初めてでした
禁断症状が出ました

164 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 10:05:21.77 O
ホーゼホーゼホゼ魚の子〜♪
(崖の上のホゼ)

165 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 11:06:41.01 O


166 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 11:21:27.75 0


167 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 12:44:41.42 O
ホゼドン

168 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 12:45:32.58 0
>>118
これはいい亀美貴ですね
リゾナントしてくれてありがとう

169 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 13:41:26.14 0
最初は胸にあいた小さな穴だった
自分でも気付かないくらいの

やがてその穴は大きくなった
でもその向こうにあるものが何かは見えなかった

穴はどんどん大きくなった
それでも穴の向こう側は見えなかった

何も見えないのではない 漆黒の闇がずっと見えていたのだ

そう気付いたときにはそれはもう穴ではなくなっていた
闇そのものになっていた

あたしはその闇に飲み込まれた
そして闇そのものになった




保全 SIDE Darkness

170 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 14:43:55.24 O
ダダダ、ダークネスだーっ!!

171 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 15:46:14.54 O
楽しいホゼナント

172 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 16:36:25.08 0
シャニムニホゼナント

173 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 17:38:37.02 O
春ビューティフル ダークネス

174 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 17:48:20.44 0
>>169
戻って来い!

闇なら、あっしも抱えてる。

175 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 18:43:48.54 O
ほぜんき+

176 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 19:03:06.97 0
>>169
言葉は少ないのに
何か、闇に蝕まれていく様子が(速度が)リアリティあって怖いですね



177 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 19:25:12.90 0
小春が大怒りしているようだ

178 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 20:11:32.00 0
クライマックスはこれからだ

179 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 20:15:21.34 O
戦場での迷ゼリフ
ノリo`ロ´リ<愛佳に指一本でも振れてみろっ
雷様おとすぞ!!
( ・е・)ノ<様じゃない

180 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 20:51:10.38 0
キャワw

181 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 21:08:39.53 0
すごく昔に書きかけて長いこと放置していた話があるのですが
何とか形になりましたので載せさせて下さい
まだ少し手直しをしたい部分がありますので
ないやいさんの後 午前0時ごろを目安にうpしようと思います
よろしくお願いします

182 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 21:30:39.43 0
>>181
待ってました

183 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 21:47:21.55 0
>>181
待ってます
楽しみだ

184 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:00:10.39 0
それでは更新します注意事項は下記の通り

・そこそこの長さ(14レス
・こんなのガキカメじゃないやい(特に絵里がorz
・多分鬱…ではないはず
・単発作品

以上になりますそれではしばしお付き合い下さい

185 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:01:13.08 0
心弱き者は、闇に呑まれる運命。
心弱き者よ、我に身を委ねよ。

さすれば、お前に力を与えてやろう。

さぁ、その手を差し出すがいい。
この手を選んだその時、お前は最強の能力者に生まれ変わるだろう。

―――力が、欲しいのだろう?さぁ、この手を選ぶのだ。



亀井絵里がいなくなった。
手紙もメールも、何一つ手がかりとなるものは残さずに。
失踪する前から何らかの変化があったのなら、皆絶対に気付くことが出来た。

共鳴という得体の知れぬものによって深く繋がれた9人。
その感覚がある限り、どんな些細な変化も見逃すはずがない。
だが、それこそはただの思い上がった感情に過ぎなかったのかもしれないと。
絵里がいなくなった時に、残された8人はそう痛感した。

何も言わずにいなくなられたら、残された人は一体どうしたらいいというのだろう。
呼べど叫べど、応えを返すどころか。
全く聞こえない心の音。
何の手がかりもない人間をひたすら捜し続ける日々に、8人の体力も心もすり減るばかりで。

そんな中でも、ダークネスとの激しい戦いは続いていた。
少しずつ、少しずつ。
戦いの激しさに、徐々に絵里のことを考える余裕がなくなっていく8人。
絵里のことを忘れたわけじゃない、ただただ、皆何も考えられない程疲弊していた。

186 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:02:16.38 0
傷つきながらも何とか、今日も戦いに勝利したリゾナンター達。
次にいつ襲撃があるのかと思うと、勝利しても家に帰る足取りは重い。
片や巨大超能力者組織、こっちはそれなりのレベルの能力者であるとはいえ、たった10人に満たない少数組織。

毎日のように戦いが行わる度に、1人また1人と少しずつ怪我の度合いが大きくなっていく。
先週なら傷1つつけられることなく勝てたレベルの能力者に、今日は傷をいくつか付けられた。
傷つく者が増えれば増える程、リゾナンターたった1人の治癒能力者であるさゆみの負担が大きくなる。
このままだと、いずれ大きな怪我をさせられた時にはさゆみの回復が追いつかずに、戦線離脱者が出るに違いない。

ジリジリと追いつめられていっているのが分かるから、皆自然と無口になる。
こんな時だからこそ、心を強く持たないといけないのだが。
それが分かっていても、心の中に生まれる焦燥感は皆を苦しめた。
どうなっていくのか考えたくもないのに、嫌でも意識させられた―――やがてくる終わりの時を。

せめて9人揃っていたら、というのは気休めでしかなかった。
共鳴によって生まれる、火事場の馬鹿力で戦い続けるのはある種自傷行為とも言えることだから。
巨大な力で敵を打ち倒す代償は、気付かないうちに体を侵蝕する。
人が生み出すには大きすぎる力によって、少しずつ自分達の生命力が削り取られていると分かっていても。

闇に迎合してまで生き長らえることに、何の意味があるのか。
そう思ううちは、まだまだダークネスに屈服するわけにはいかない。
折れそうになる心を、必死に奮い立たせる。

―――リゾナンターのサブリーダーである新垣里沙も、折れそうな心と戦うリゾナンターの1人であった。


今日はまだ勝てた、明日もまだいける。
精神力も体力も消耗したが、まだ当分は大丈夫だろう。
問題はこの戦いをもっと長期的な目線で捉えた場合、よい方向に持って行く材料がないことだろうか。

187 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:03:08.98 0
こんな時でも冷静に分析してしまう自分が嫌になるが、皆が疲弊している今だからこそ落ち着いて考えなければいけない。
少しでも希望を見つけ出したい、その想いだけが里沙の平静さを保つ唯一の砦であった。
誰か1人でも心が折れれば、それは皆に連鎖する。
そうなったら、組織としてはおしまい。

皆の心のケアをしながら、同時に戦況を分析し今後の戦いに役立てる。
1人でやれること以上のことをやっている気がしなくもないが、それは皆同じ。
1人1人が互いを思いやり、何とかしていこうとしている。


(それにしても、こんな時だっていうのにあのバカ亀は何してるのかな)


絵里が失踪してから3ヶ月、ひょっとしたら激化していく一方の戦いに嫌気がさして出ていったのかもしれない。
元々、戦闘系能力は傷の共有という、回復能力者が隣にいることが前提でないと使いにくい能力を持った絵里。
このままではいずれ自分はリゾナンターにとってお荷物にしかならないと思って姿を消したとしても、
それを責める気には余りなれなかった。

ただ、絵里がいないことは無性に寂しいと想う。
そのふわふわとした空気で、皆を癒していた絵里。
いなくなってから気付く、ムードメーカーがいるのといないのとでは皆の士気が全然違うということを。
絵里が戻ってきたとしても戦況は大きくは変わらない、だが、それでも絵里はリゾナンターに必要な存在なのだ。

そして、気付いたことがもう一つ。
9人揃っていた時と比べると、明らかに今の8人では共鳴で得られる力が弱いのだ。
もちろん、共鳴で得られる力というのは普段の状態からは考えられないくらいの力である。
だが、1人欠けただけで驚くくらいその力が減った。

絵里が帰ってきてくれたら、リゾナンターは本来の共鳴を取り戻せる。
そうすれば、少しは楽に戦い続けることができるはずだ。
だが、それはこちらの一方的な想いであってそれを絵里に押しつけることはできない。
彼女が何故去ったのかは分からないが、戻ってくる気があるのならば呼びかけにだって応えてくれるはずなのだから。

188 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:04:21.85 0
ため息をつきながら、自分の住むマンションへの帰り道を歩く里沙。
疲れてはいるが、家に着いたら今日の戦いをまとめて分析しなければ。
曲がり角を曲がれば、マンションが見えてくる。

ようやく一息つけると里沙が安堵した瞬間、辺りに満ちる闇の気配。
瞬時に里沙は警戒態勢に入り、敵の姿を探して視線を右に左に散らす。
その姿を見た瞬間、里沙の動きは止まった。


「ガキさん、こんばんわ。
久し振りですけど、元気にしてましたか?」

「…カ、メ?」

「そんな驚いた顔で見なくたっていいじゃないですか。
あれ、ひょっとして絵里が死んだとか思ったりしてました?」

「そんなこと思ってないけど。
ねぇ、これはどういうこと?」


どういうことか分かっていながらも、問いかけてしまうのは。
目にした事実を認めたくないからに他ならない。
闇の力が溢れ、そして目の前には絵里がいる。
他に誰の姿も見えないのに闇の気配がするということは、すなわち。


「どういうことも何も、こういうことです。
力が欲しかったから、闇に手を伸ばした、それだけです」

「そ、んな…」

189 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:05:14.93 0
目の前で妖しく微笑む絵里の身を包むのは、闇色の服。
それは、絵里がダークネスの能力者として生まれ変わったということ。
共鳴で呼びかけても応えを返さないのは、もう絵里を呼ぶ声が聞こえない者に生まれ変わったから。
その事実に、里沙は唇を噛みしめる。


「ガキさん、絵里メチャクチャ強くなったんですよ。
この力があったら、誰にも負けないってくらい」

「それが…あんたの出した答え?
闇に手を染めて力を手に入れて、それで満足?」

「満足してますよ、これだけ強ければ大切な者を守り抜ける。
甘いんですよ、共鳴じゃどうやったって限界があることくらいガキさんも知ってますよね。
でも、この力は違う。
望めば望むだけ強くなれる、この力があれば」

「このバカ!
そんな力手に入れたってしょうがないでしょう!
どんなに強くなったって、そんな力にあたしも…皆も守られたいだなんて思わない。
だから、あたしは前のカメを取り戻す」


宣言して、里沙は自らの力を解き放つ。
いつの間にか、その両腕にはキラリと光るピアノ線。
絵里は鋭い目で睨み付けてくる里沙を見て、フッと鼻で笑ったかと思うと。
服のポケットから取り出した両刃のシースナイフを、迷うことなく己の腕に振り下ろした。

190 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:06:19.44 0
「あああっ!!」


傷の共有を使って攻撃してくるとは思っていなかった里沙は、傷が生まれた腕を掴んで上体を傾けた。
キツく掴んでも溢れてくる血が、その傷の深さを物語っている。
そんな里沙の様子を見て、絵里は微笑みながらナイフを引き抜くと。
今度はそのナイフを太ももへと躊躇することなく一気に振り下ろした。


「あああああ!!!」

「んー、さすがに今のはちょっと痛いかも。
…絵里、痛覚が鈍くなってるんですよ、だからこんな真似をしても殆ど痛みを感じないんです。
おかげで、嫌いだった自分の能力が戦闘に活かせるようになって嬉しいんですけど。
ふふ、何かガキさん蝶々みたいですね、ピンで固定されて動けないって感じで」


妖しい微笑みを絶やすことなく、絵里は地面に膝をつく里沙の姿を見つめる。
その瞳に宿るのは、狂気と愉悦。
片腕からも片足からも血を流しながら、絵里は悠然とした足取りで里沙に近づいてくる。
近づかせないように攻撃をしたくても、痛みがひどくて上手く集中できない里沙。

里沙の前に立った絵里は、ふわっと微笑むと里沙に向かって血の流れ続ける手を翳す。
瞬間、絵里の手から放たれたのは―――鎌鼬。
反射的に無事な方の手でその鎌鼬を受けた里沙は、声にならない悲鳴を上げる。
こんな能力が使えるようになったのかと、里沙は絵里を鋭く睨み付けながら想う。

里沙の鋭い視線を意にも介さず、絵里は妖しく微笑んだまま。
しゃがみこんで里沙の頬に手をかけ、唇が触れそうな位置で言葉を紡ぐ。

191 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:07:30.78 0
「ガキさんは可愛いなぁ。
ねぇ、ガキさん、絵里と一緒のモノになりましょうよ。
そうしたら、きっとガキさんもどれだけこの力がすごいか分かりますって」

「絶対、嫌。
あたしはそんな力欲しくない」

「んー、ガキさんって本当そういうところ融通きかないっていうか、頑固っていうか。
でも、そういうところ好きですよ」

「ありがとう、ってこの場面で言うと思う?」

「言ってほしかったんですけどね。
で、まだやるつもりですか?
ガキさんのこと好きだから、これ以上はちょっと傷つけたくないんですけど」


そう言って、愛おしそうに里沙を抱きしめる絵里。
以前と変わらない温もりと、攻撃をこれ以上加える気がないという発言。
間違いない、闇に染まったように見えるけれど、絵里の中にはまだリゾナンターとしての魂がある。

―――今なら、絵里を取り戻せる!


絵里が動けないように、痛む腕を気にすることなく里沙は腕を伸ばして絵里を抱きしめ返す。
傷ついた腕で精一杯、キツくキツく抱きしめながら。
里沙は己の持てる力を最大限に放つ。
里沙の持つ能力、マインドコントロール。

里沙の思惑に気付いた絵里が離れようとするより先に、里沙は絵里の意識へと侵入した。

192 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:08:33.97 0
深い深い闇に覆われた世界がそこにはあった。
荒廃しきった世界に佇むのは、絵里によく似た姿の女性。
ただ、その女性の瞳は蒼く澄んでいる。

この女性が、絵里の人格に深く侵入し主導権を握っているのか。
ゆっくりと地面に着地しながら、里沙は相手の強さを探る。
人の意識下における戦いならば、リゾナンター最強と言える里沙。
だが、自分の力でこの女性を倒せるのかは全く分からなかった。


「あなたが、絵里の隙をついて絵里を支配した人格ね?」

「隙をつくなんて失礼なことを言う。
絵里が望んだのだ、力が欲しいと。
それを叶えただけなのに、何故そんな目で私を見る?」

「カメの皆を守りたいという純粋な想いにつけこんでおいて、よくそんなこと言えるわね。
カメは確かに力を欲したのかもしれないけれど…断言してもいい。
カメが望んだのは皆を守る為の力。
皆の存在を切り捨て、共鳴の絆を断つことで得られるこんな邪悪な力なんかじゃない」

「何を分かったようなことを。
私には聞こえたぞ、強くなりたいという絵里の叫びが。
共鳴などという不安定なモノに左右されない、強い力が欲しいと」


闇色のローブに身を包む女性は、そう言ってニヤリと笑う。
嫌な微笑みだと反射的に思いながら、里沙はポケットに手を入れてピアノ線を取り出した。
この女性を倒せば絵里を取り戻すことが出来る。

―――負けるわけにはいかない。

193 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:09:38.66 0
仕掛けたのは、里沙が先だった。
自分の意識を半分だけピアノ線に乗せ、自在に操る戦闘術。
ピアノ線は瞬時に女性の手足を拘束し、後は力を入れるだけでトドメを刺せる状態になる。
ピアノ線を操作しながら、里沙は線に力を込めた。

手足をバラバラにされ、女性は力尽きるはずだったのに。
女性はニヤリと笑って、自らの動きを拘束するピアノ線を引きちぎった。
瞬間、里沙は片膝を付く。
自らの意識を半分乗せているピアノ線を引きちぎられたことによって、里沙の意識にダメージが与えられたのだ。

強い、里沙はゆっくりと立ち上がりながらそう想う。
おそらく、この女性は絵里の人格に同調しながら支配することによって、
2人分の力をその身に宿した状態なのだ。
女性1人の力だけならさっきの攻撃で片が付いていたに違いない。
厄介だなと思いながら、里沙は相手の様子を窺う。


「さすがに、マインドコントロールの使い手なだけあって強いね。
だけど、絵里の意識や人格を支配しているのはこの私。
私の世界で私に逆らうのは、無茶を通り越して無謀。
残念だけど、この勝負、私がもらうわ」

「…バカじゃないの?」

「何?」

「完全にあなたが支配仕切れているなら、あたしはここにいることなく死んでいたわ。
だけど、こうしてあたしがここにいるということは、カメを支配仕切れていないということ。
これって、どういうことか分かる?」

194 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:11:42.30 0
里沙は微笑みながら、大きく息を吸い込む。
里沙の言ったことの意味を女性が知るよりも早く、里沙は声を上げた。


「アホカメ!
聞こえてるんなら、こんな奴じゃなくてあたしに力を貸しなさい!
あんた、後悔してるんでしょ?
後悔してるからあたしの前に現れたんでしょ?
助けるから、絶対にあんたを助けるから。
だから、力を貸して!!!」


その声が辺りに響き渡った瞬間、里沙へと流れ込む温かな力。
リィリィと音を立て、里沙の身から放たれる黄緑色のオーラが深い闇を貫く1本の光の柱と化す。


「馬鹿な…意識下で共鳴出来るなんて…そんなことがあっていいのか!」

「…逆に、意識下だからこそより強く、より激しく共鳴出来るのかもよ?
悪いけど、これで終わりにさせてもらうわ」

「くそ、この世界は私の世界だ、お前なぞにやられて」


女性が全ての言葉を紡ぐより先に、女性の体はバラバラになる。
鮮やかな光を放つ里沙の腕には、いつの間にか新たなピアノ線が巻き付いていた。
女性が狼狽した隙をついて、里沙は先程と同じようにピアノ線による包囲網を展開し。
女性が気付くよりも早く、女性を瞬時に拘束、そしてバラバラにしたのだった。

闇が消えていく。
明るい太陽の光と、見る者を魅了する程の青空が広がり。
そして、里沙の目の前に立つのは、失踪する前と変わらない姿で立つ絵里。

195 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:17:21.15 0
「ガキさん…」

「アホカメ、本当あんたアホだわ。
あんたがいなくなって、皆がどれだけ辛い想いしたか分かってるの?
やっと会えたって思ったら、あんなのに意識乗っ取られてるしさー。
本当、勘弁してよね」

「ごめんなさい、ガキさん。
でも、絵里は力が欲しかったんです。
激しくなっていく戦いで傷を負う皆のことを考えたら。
絵里の力って、ただのお荷物にしかなってないって思ったから」

「荷物になるとかならないとか、そんなこと考えてどうするのよ!
そういう風に皆思ったことなんかただの一度だってないわよ。
…あんなものに手を伸ばすより先に、あんたはすることがあったでしょーが」


言いながら、里沙は絵里に駆け寄ると。
その体をキツくキツく抱きしめる。
おずおずと、絵里が里沙を抱きしめ返そうとした時に、里沙は再び口を開く。


「ちゃんと相談しなさい、そりゃ、あんたの欲しがってる答えを返せるかは分からないよ。
でも、あんたの苦痛を取り除くことなら出来る。
何も言わないでいなくなられるくらいなら、どう言ってあげれば苦痛を取り除いてあげれるのか
悩む方がよっぽど精神的に楽だわ」

「ガキさん、ごめんなさい」

196 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:18:33.26 0
「あたしにはもう謝らなくていいから。
それよりも、帰ったらちゃんと皆に謝ること。
1人で謝るのが怖いなら、あたしも一緒に謝ってあげるからさ」


その声に、ようやく絵里は里沙の体を抱きしめ返すと。
頬に涙を伝わらせながら、ふわっと微笑む。
皆がよく知っている、穏やかな微笑み。

どれだけ抱擁しあっていただろうか。
やがて、里沙は絵里の腕からそっと抜け出すと。
柔らかく微笑んで、帰るねと言った。

その声に、はい、また後でと返して。
里沙がゆっくりと意識から浮上していくのを、絵里は微笑みながら見送った。



「…あー、しんどかった」



言いながら自分の身を起こそうとして、里沙は苦痛に顔をしかめる。
程なく起きあがろうとした絵里もまた、苦痛に顔を歪めて。
お互い視線を合わせて吹き出して、また痛みに顔を歪めて地面を転がりながら。

2人は何を言うこともなく、手を繋ぐ。
伝わり合う温もりに、自然と微笑みを浮かべながら。
ようやく元の9人に戻れる。
そのことが嬉しくて、2人は皆が駆けつけるまでずっと微笑んでいた。

197 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:19:35.53 0
その後はと言うと。


「絵里のアホ、今度こういうことになったら許さんから覚悟しとくがし」

「さゆみに何も言わずにいなくなるとか…絵里、後で説教ね」

「アホやとは思っとったけど、まさかダークネスの手先になってたとか…ありえんと」

「戻ってきたから、まぁ、もういいカナ☆」

「よかったー、ほんまよかったわー」

「亀井サン、皆に心配かケたかラ、バナナ段ボール10箱は買っテもらウ」

「9人揃っタことでスし、これかラ頑張りマしょウ、バッチリデース!」



198 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:20:44.94 0
帰ってきて頭を下げた絵里と里沙に、それぞれがそれぞれの想いを乗せて言葉を紡いで。
その言葉達に込められた想いに涙しながら、絵里は小さく微笑む。
ようやく帰って来れた温かい場所、そして温かい仲間達。

先に見える未来が暗いものであったとしても。
それすら変えていけると思える程、皆から伝わる想いは温かくて強い。

忘れてはいけなかったのだ。
強くなることは大切なことかもしれないけれど。
皆を悲しませてまで力を得ようとすることは、愚かなことなのだと。

皆を守りたいという強い想いがあれば、闇に手を伸ばすことなくとも強くなれるのだ。
心に吹く一陣の風にそっと目を伏せて。
本当の強さを探していこう、そう想う絵里の背中を。


―――里沙は微笑みながら、静かに見つめていた。

199 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:21:21.89 0
>>185-198
更新は以上になります

200 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 22:24:12.37 0
>>199
乙です!
リアルタイムで読ませていただきました!
手に汗握る戦闘シーン超面白かったです!
さすがですね!
あと、心が通わないガキカメは読んでいてハラハラさせられました

201 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 23:02:18.72 0
ホゼナント

202 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 23:09:24.51 0
なんかきてたー!って予告通りでしたね
ガキカメいいわあ


203 :名無し募集中。。。:2008/08/04(月) 23:41:26.96 0
ないやいです感想をありがとうございました
ダークネスサイドに堕ちたリゾナンターを書いてみたくて書いてみた実験作ですが
反応があってホッとしていますw

このスレに最初にこはみつを投下してから今日で丸3ヶ月となりました
初投下でいきなり小春に新しい能力を追加するという暴挙をやらかしたものの
今となってはしっかり受け入れられているようで嬉しい限り
これからも色々書いていきますのでよろしくお願いします

>>181
どんな話だろうと今からwktkしております
楽しみにしてます

204 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 00:00:52.36 0
>>181です 0時になりましたが本編の前に今回の話について少し

3スレ目にて [Tanaka](03)128 の話が上がった後にこういうカキコがありました

> 487 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2008/05/01(木) 02:51:36.62 0
> ミティに殺された吉澤、
>
> @ ダークネスに死体を拾われて復活、中ボスになり襲いかかる。
> A 猫ボスに拾われ、さゆえりに癒される。ガキさんの苦悩を察知し、
>    組織から離れるように促す。後にミティやチャーミーと対決する。
> B 死んで守護霊的な存在になり、おもに愛ちゃんを導く。
> 
> こんなのを読みたいです。

この中のBのネタ つまりよっすぃが死んでしまっているという設定を元に
今回の話を書きました

・・・だがしかし愛ちゃんは出てこない罠


それでは 以下本編です

205 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 00:02:36.08 0
里沙が自分のマンションにたどり着いたのは、すでに真夜中をかなり回った頃だった。
暗い部屋に入ってバッグをそこらに放るなり、倒れこむようにしてベッドへと身を投げ出す。
夜食を摂る気にも風呂に入る気にもなれず、今はただひたすらに
戦闘で疲れた身体を休めたかった。
……もっとも最近の里沙にとっては、夜ごとのわずかな眠りすら
悪夢によって妨げられることもしばしばだったのだが。

「お疲れ」
「ぅえぇ!?」
不意に声を掛けられ、慌ててガバッと身を起こした。
そのまま上半身を声のした方へ向ける。部屋の向こう側にパソコン机があるのだが、
その椅子に一人の女性が座っていた。
亜麻色をしたストレートのショートヘア、スラックスを履いた長い脚を優雅に組み、
男物のジャケットを何気なく着こなしている、その女性。

片肘を突いた上に乗せた頭を少し傾け、こちらへ向けて軽く微笑んで再度口を開いた。
「せめてシャワーくらい浴びた方がいいんじゃないかなぁ、乙女のたしなみとして」
里沙はその姿を認めると、はぁ、と脱力し軽くため息をついた。


206 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 00:04:34.01 0
「もう……驚かせないで下さいよ」
「仕方ないじゃん、そろそろガキさんも慣れてよ」
「無理ですよそんなの」
諦めて里沙は寝床から完全に身を起こし、そのままベッドの端に腰かけて彼女の方を向き直った。

「こっちはこれから寝ようとしてたんですけど。
だいたい吉澤さんはいつも出てくるのが突然すぎます」
「いや〜何しろ幽霊だからさ、いきなり出てくるのが身上というか」
そう言って彼女――吉澤ひとみは組んでいだ脚をほどき、これ見よがしにブンブンと振ってみせる。
吉澤の脚は膝から下に向かうにつれ段々と色を失って透き通り、くるぶし辺りまで来ると
完全に空気に溶け込んだかのように見えなくなっていた。
その全身もよくよく見れば淡い燐光に包まれており、常夜灯しか点けていないこの部屋の中で、
その体の輪郭は蛍火のように微かな輝きを放っていた。

「ほらあれだ、守護霊みたいなもんだと思ってよ」
守護霊というよりも自縛霊じゃないですか、とつい軽口をたたきかけて、里沙はあわてて言葉を飲み込む。
吉澤の死の原因――藤本美貴、いやミティの裏切り――に里沙は直接絡んでいなかったとはいえ、
自分がダークネスと通じている以上、彼女の死に責任が無いとはとても思えなかったから。

ほぼ即死の状態でリゾナンダーの本拠地に運ばれてきた時そのままの、今の吉澤の服装。
ジャケットの下に着たシャツの胸許があの時のように鮮血に染まっていないことだけが、
里沙にとってはせめてもの慰めだった。


207 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 00:06:13.15 0
「守護霊なんだったら、ずっと愛ちゃんのところにいてあげればいいじゃないですか」
代わりにそう返すとほぅ、というように吉澤が片眉を上げた。
「知ってたんだ」
「愛ちゃん喜んでましたよ。『よしざーさんが夢に出てきてくれた』って」
夢じゃないんだけどなぁ、と吉澤は軽く苦笑いする。
「ま、可愛い後輩たちを草葉の陰から見守るくらいしかできないからね、今となっては。
この足じゃフットサルもできやしないし」
そう言って吉澤は、やれやれ参っちゃうよと大げさに首を振って再度ひとしきり笑った。

里沙はそれには応えずに、そのまま視線を落とす。
押し黙ったまま自分の膝を見つめ――少しして、俯いたままポツリと口を開いた。
「どうして愛ちゃんに言わなかったんですか、私のこと」
笑うのを止め、吉澤は里沙を見つめる。
口許にはまだ笑みを残していたが、そのまなざしは何を考えているのか分からないくらい、
ただ静かな光をたたえていた。

死んでこの世の人間とは異なる存在となった今となっては、全ての真実を吉澤は知っている。
里沙が実は、ダークネスの間諜であるということも。


208 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 00:08:29.83 0
「言えばよかったじゃないですか、新垣はダークネスの手先だって。
リゾナンダーの情報を敵に洩らしてる裏切り者、って」
膝に乗せた里沙の手に、思わず力が入る。
「みんなのことが心配なんだったら、どうして黙ってるんですか?」
「……言わないよ、あたしはね。
ガキさんが黙ってるのに、あたしがバラすわけにはいかないじゃない?」
当然のこと、とでもいうような吉澤の口調。

「命令さえあれば、私はいつダークネスのリゾナンダー襲撃を手引きするかもしれないんですよ?
なんでそんな呑気なこと言ってられるんです!?」
覚えず、里沙の口調は強くなる。
顔を上げて真っ向から吉澤を睨みつけた。
「私がリゾナンダーを壊滅させることになってもいいんですか?」
「ガキさんが、そうするのが正しいと考えたのなら」
静かに、だがはっきりと吉澤は宣する。
リゾナンダーの前リーダーとも思えぬその言葉に、里沙は一瞬息を飲んだ。
「本気で、言ってるんですか」
「勿論」
吉澤の真意を、里沙にはその表情から読み取ることができない。

「……じゃあ、何で吉澤さんは私の前にわざわざ何度も姿を見せたりするんです」
気を取り直して里沙は続ける。
「私のこと、憎いんじゃないんですか?さっさと呪い殺すなり何なりすれば、
それで済むじゃないですか。
いい加減にして下さい!私の前になんかもう出てこないで下さいよ!!
そんな暇があるんだったら一思いに私のことを」
「ガキさん」
強い鞭をビシリと鋭く打ち据えたかのような、吉澤の一喝。
瞬時にして里沙は気圧され、そのまま黙りこんだ。


209 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 00:10:19.91 0
「……死にたいの、ガキさんは」
「そんな――」
一転して口調を穏やかにした吉澤に対し、里沙は言葉を詰まらせる。
そんな訳無いじゃないですか、と返そうとし、けれども言葉を続けることが出来なかった。


こんなところで死ぬわけには行かない。自分には果たすべき任務があるのだから。
ダークネスに刃向かう組織リゾナンダーを内側から監視し、メンバーの――ことに高橋愛、i914の――
動向を逐次伝える。
各員の能力、特性、戦闘記録、性格や思考傾向に至るまで、事細かに。
全てはダークネスのため、そうして誰よりも敬愛するあの人の……≪天使≫の二つ名を持つ、あの人のために。
そう信じてきた。いや、それは今でも変わらない筈だ。

そして自分が潜入した、敵対組織リゾナンダー。
集まればいつも賑やかで騒がしい、時にひどく手の掛かる、それでいて敵に対する時には
抜群の団結力をもって戦う、リゾナンダーのメンバー達。
これだけ長いこと一緒にいればさすがにそれなりの情も湧かないでもないが、それはあくまで上辺だけのもの。
彼女らを欺く為の仮初めのものに過ぎない。
そう信じてきた。つい十日ほど前までは。


210 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 00:13:38.96 0
あの夜、小春の能力を試すために自ら掛かった“幻術”によって見せられた、里沙の裏切りを責めるリゾナンダー達の幻影。
それによって、里沙は気付かされてしまったのだ。
いつの日かリゾナンダーへの裏切りが知れることによって彼女らに失望され、彼女らに見放されるのを――
彼女らを失うことを自分は恐れている、ということに。

しっかり者のサブリーダー。仲間思いの頼れる良き先輩であり同志。
それらは全て、彼女らを利用するための偽りの姿。
全てはダークネスとしての使命を果たすため。例え何があろうと、彼女達に心を動かされることなどありはしない。
そう思い定めてきた筈だった。
……だがそんな心の仮面は、こんなにもあっけなく外れてしまった。


失いたくないと心の奥底で願ってしまうほどに、いつの間にか自分の中でリゾナンダー達の存在は
大きくなってしまっていたのだろうか?
あの人に――安倍さんに軽蔑され、見捨てられることを恐れるのと同じくらいに。
それとも、それ以上に?


211 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 00:15:24.31 0
その考えが、里沙の心にぞくりと冷たい刃のような恐怖を突きつける。
ダークネスの一員となってからずっと慕い憧れてきた、自分にとっては命の恩人にも等しい彼女。
あの人の為ならこの命も最後の血の一滴まで捧げると、裏切り者の汚名だって甘んじて受けると、そう誓ったはずなのに。
どうして今彼女の笑顔を思い浮かべようとすると、そこに愛や他のリゾナンダー達の笑顔まで重なってきてしまうのだろう?

何故自分の気持ちは、こんなにも揺らいでいるのだろうか。
他人の意思すら操りうる力を持っている筈の自分の心が、今わからない。
わからないことが、何よりも恐ろしかった。

ダークネスへの忠誠、安倍さんへの思慕。リゾナンダーへの愛着、共に戦ってきた者たちへの思い。
一体自分は、どれを取ればいい?
使命と絆とは絡み合う鎖となり、幾重にも里沙を縛り苦しめる。
……けれどもその狭間で狂気に堕ちることすら、自分には許されていない。
任務を途中で放棄することは、決してあってはならないのだから。


暗闇の内で絶望の声なき声で叫ぶ中、里沙の心はふと一つの考えに至る。
どちらをも片方を選び取ることが出来ないのなら、せめて。
自らに手を下すことも出来ないのならば――そう、例えば戦闘の中で。
使命を全うして命を落とせるのなら、それがいちばん良いのではないか?
そうすれば自分はもうこれ以上、大きすぎる選択を前に悩まずに済むのだから。

思い至り、里沙は吉澤を哀願の眼差しで見つめる。
生前強大な攻撃の能力を持っていた吉澤に、自分に最後の安楽をもたらしてもらうべく。


212 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 00:17:17.00 0
吉澤は、そんな里沙をしばし見つめる。
一瞬、憐れむような哀しみの表情がその顔をよぎり、それから静かに首を振った。
「今のあたしには、ガキさんをどうこうする力は無いよ。
もしあったとしても、そんなことはしないけど」
「何故、ですか」
何故って、と吉澤は穏やかに微笑みながら応える。あたしはもう、死んでるんだから。

「死んだ人間ていうのは、基本的にこっちの世界とはもう無関係の存在だからさ。
生きてる人間に関わったりとか、ほんとはあんまし出来ないっぽいんだよね」
「でも、吉澤さんは」
「うーん、そうなんだよねぇ。
何でかよく分からないけど、まぁ折角こうやって姿見せれるんだし?
アレだよ、テレビで野球とかサッカーの中継を見てたら、つい声援送ったり野次飛ばしたりしたくなるようなもんでさ。
まったく、さっさと成仏すればいいものをねぇ」
クスリと笑って、吉澤は続けた。
「……といったところで、いつまでこうしていられるのかも分かんないんだけど、さ」

言って吉澤は、椅子に坐ったまま身体をパソコン机の方に向ける。
キーボードの側に置いてあった飲みさしのグラスへ何気なく手を伸ばし掴んだ――正確には、掴もうとした。
吉澤の指はグラスに掛かることなく、そのまますり抜けていく。
その様子を吉澤は、ひどく冷静な眼差しでじっと見つめた。


213 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 00:19:45.40 0
「もしかしたら、こんな姿のあたしが何を言っても、意味なんか無いのかもしれない。
……それでも、苦しんでる姿を見て何もしないなんて、あたしには出来ない」
そうつぶやいて吉澤は、里沙を振り返った。

「今のあたしには、ガキさんにどうしろなんてことは言えない。
もしガキさんがダークネスに最後まで従うというのなら、それでも構わない。
けれどどうかその決断だけは、ガキさんが自分で納得がいく形で下してほしい。
どんなに辛くても……ガキさんはまだ、自分の道を選択することが出来るんだから」
選択、と里沙はつぶやく。
その選択をせねばならないこと自体が、今の里沙には苦悩の元であったのだけれど。

「たとえどちらを選んでも、ガキさんはその選んだ先の人生を生きることができる。
それが結果的に間違った選択だったとしても、どんなに後悔することになったとしても、
それでもそこからまたやり直すことだってできる。
……あたしはもう、この世界に自分が直接関わることはできない。自分の道を選ぼうにも、もう道は無いんだから。
今のあたしには、みんなのことを見守ることしかできない。
ガキさんのことも、高橋のことも、……美貴のことも」

最後の名を言うときも吉澤の表情はあくまでも穏やかで、自分の命を奪った相手に対する恨みの感情はどこにも見られなかった。
「藤本さんの、ことも?」
ミティという今の名を、里沙も敢えて口にはしなかった。
「彼女が彼女なりに考えて、ダークネスに付くと決めた。
そうするだけの理由が美貴にはあったんだから、あたしはそれを責めはしない」
少し黙った後、吉澤は苦笑めいた表情でボソッと付け加えた。
「――馬鹿だ、とは思うけど」


214 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 00:39:09.91 0
何を言えばいいのか決めかねて黙り込む里沙に、吉澤は軽く微笑みかけた。
「……ガキさんは、まだ生きているんだから。自分で決着を付けないうちに、死ぬのはダメだよ。
死んじゃったら何もかも、全部終わっちゃうんだからね」
死んだら全て終わり。月並みな言葉だ。
だが吉澤がその言葉を云う意味を、里沙は理解した気がした。

吉澤は今もまだ、戦っている。
里沙とはまた違った意味で孤独な――そして恐らくは勝ち目の無い、戦い。

「ダークネスに最後まで従うか、リゾナンダーとして戦うか。
最後までよく考えて、自分の心と戦い抜いて、自分で自分の道を切り開きなさい」
分かりました、と里沙は吉澤に頷いてみせた。

リゾナンダーでの吉澤は、普段はおちゃらけているようであってもその実は誰よりも強く、厳しく、そして心優しいリーダーであった。
たとえ敵対する組織に所属していても、そして吉澤が死んだ今となっても、里沙にとっての吉澤はやはり
尊敬すべき先輩、なのかもしれなかった。

215 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 00:40:05.55 0
「さて、と。ちょっと長居しちゃったかな。
ガキさん、お風呂でもシャワーでもいいから行っといでよ」
椅子から立ち上がり、吉澤はそう促した。
「体を温めた方が、よく眠れるよ」
「――ハイ」
思わず素直に返事をしてしまう。
それが、もう二度とその身体が温かくなることの無い人の言葉だったから。
「何なら、背中でも流そうか?」
「……そんなこと言ったって、出来ないじゃないですか吉澤さん」
「あーバレた?」
スポンジ一つ持てないなんて幽霊ってのはホント不便だよなーと、吉澤はケラケラと笑ってみせる。
つられて里沙も、こわばっていた頬がついゆるむのを感じた。

里沙はベッドから立ち上がり、バスタオルと寝間着を取って浴室へと向かった。
その背に掛けられる、吉澤ののどかな声。
「あーそうそう、寝る前にはちゃんと歯ぁ磨けYO!」
「もぅ、分かってますっ!」
里沙は思わず振り返り、そう叫び返した。
――声の先には、空になった椅子だけがぽつんと残されている。
現れたときと同様唐突に、吉澤の姿は消え失せていた。

216 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 00:41:03.07 0
耳に痛いほどの静寂が、室内に戻ってくる。
里沙は少しの間その椅子を見つめ、再度小さくため息をついて一人浴室へ向かった。
シャワーの蛇口をひねり、湯温が上がるまでしばし待つ。
浴槽の底を叩く水の流れを、見るとなく見つめた。

ダークネスのスパイとしての自分。リゾナンダーのサブリーダーとしての自分。
一方と対するとき、もう一方の自分を出すことは出来ない。それは常に隠してないといけない。もう一つの自分を、相手に悟られないように。
両方の自分を出すことが出来る相手が既にこの世の存在ではない吉澤だけであるというのは、何という皮肉だろうか。
……それとも、救いなのだろうか。

気がつくと、浴室には既に湯気が満ちていた。
里沙は着衣を脱いで脱衣所へ放り、そのまま浴槽に入った。
即座に無数の水滴が、里沙の体を包み込む。
その思いがけないほどの温かさに、自分の体が思っていた以上に冷え切っていたことに今更ながら気づかされた。

目を閉じたまま顔を上げて、里沙はシャワーの水勢を強めた。
全ての苦悩と葛藤を、たとえつかの間であっても押し流そうとするかのように。

217 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 00:42:10.65 0
>>205-216
以上です
なお途中で出てきた小春の幻影の話は [Gaki-Koha](03)425 よりリゾナントさせていただきました
ありがとうございました

作者さんがさるさん食らったようなので代理投下させてもらいました

218 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 00:52:59.48 0
作者さんも代理投下の方も乙です
面白かったです。
このスレの地下に脈々と流れるガキさんの苦悩がしっかり描かれていて切ないです

それにしても2分間隔・10レスでさるさんって厳しいですね・・・

219 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 01:40:09.46 0
乙です!

220 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 02:32:13.51 0
>>217
乙です
面白かったです
上手いなぁと思いました

221 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 02:44:51.56 0
ヒトの思想は個々に存在する。
例えば理想、例えば世界。
心理的空間を意味する多義的な其れは、いつしか"具現化"する事を望む。

"再生"と"破壊"という憂き世の迷宮を歩き続け。
蒼き世界へ渇仰した果ての先。

 『何してんの?そんな思いつめた顔してぼーっと立っちゃって』

―――『共鳴』とは、『光』にも『闇』にも成りえる奇蹟。
  そして同時に、それこそが世界の"抑止力"。

―――"抑止力"は佇み、微笑を浮かべた。


222 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 02:45:46.94 0

 治癒能力(ヒーリング)

身体の持つ自己治癒能力に精神力を掛け合わせて疲労や傷を癒す力。
それは魔法の類にも近い奇跡であり、現代の科学技術でも再現不可能だとされている。
実現不可能な出来事を可能とするのが『魔法』であり
時間と資金をかければ実現できる"結果"では『魔術』だ。

故に魔法という名の奇跡をさす。
ダークネスでさえも物質による変換で再現を可能としているが
機械の演算速度と人間の脳とでは格が違う。
異能力が万物の霊長と呼ばれるヒトの中に溢れる"可能性"であるなら尚更。

そしてこれにはもう一つ、"隠された要素"が在る。
その事を、本人自身はまだ自覚していない。

 「…さゆみ達は光を見つけた。かけがえのない光を」

言い放ち、ミティを見据えた。
瞳の中で輝く意志が貫かんとしているように。

 「やっと"出てきたな"。シゲさんじゃあ対等に話すのは難しいからね」
 「…だからその子を操り、この子を傷つけるようなマネをしたと?」
 「そう。アンタは言わばシゲさんの"別世界"だからね。
 そこから引きずり出すにはこれが一番効果的だったわけ。
 あとアンタには前のお礼が残ってる」
 「…最低ですね、アナタは」
 「それほどアンタには価値があるって事だよ、"さえみ"さん?」


223 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 02:47:21.09 0

解離性同一性障害というのがある。
人間は自我を守るために心的外傷を自分とは違う「別の誰か」に
起こったことだとして記憶や意識、知覚などを高度に解離してしまうことがある。

そしてその「誰か」は独立した性質を持ち、さゆみの"世界"で生まれた人格。
―――『破壊』という心理空間から成りえた血縁の無い"姉"として"具現化"した。

 物質崩壊(イクサシブ・ヒーリング)

それはまさに物質の消滅を司る破壊の総称。
対象は元素から構成される固体、液体あるいは気体の状態をとる物体。
果てには元素の根源となる素粒子にまで及ぶ。
当然、人体さえも対象内である。

自身で認識できる物質全てを破滅へと導くそれはまさに、『闇』の無限回廊。
世界を分解し消滅させる異能力。

 ―――全て消えてなくなればいいという願望から生まれた奇蹟の産物である。

 「アンタはつまるところシゲさんの『闇』の部分なんだから
 その気になれば内側から主人格の世界を潰すことだって出来るでしょ?」
 「それをあの子は望んでない」
 「シゲさんがじゃなくて、アンタはそう望んでないワケ?独立した存在なら
 そう願うことだってあると思うけど?」
 「…主人格が無くなればこの世界のバランスが崩れる。
 そうなれば遅かれ早かれ、私は消えるわ」
 「だからシゲさんを殺せない…と?」
 「それもあるけど…」
 「けど?」


224 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 02:48:06.77 0

"さえみ"は何かを思い出したように笑みを浮かべた。
それはあまりにも、小さな光。
小さ過ぎて、最初は全く気にも留めなかった。

だがさゆみの親友である彼女が自身への重みに耐えかねたあの時。
真っ先に気付いてくれたのが彼女だった。
そして、いつも気遣ってくれた仲間が居た。

小さな光はやがて大きなものへと輝きを増し、さゆみ達を導いた。
眩しくて目を閉じたくなるときもあった。
一緒に進むことも億劫になるときもあった。

それでも、いつも隣でその手を握り締めてくれた光が居た。
優しく、暖かく、包み込んでくれる大きな存在が。

 「私は見てみたいの。その光の先に何があるのか」

相克し相反する二つの真実。
『闇』と『光』の違い。
自身が『破壊』という闇を持っていたとしても、さゆみは必要としてくれた。
それは諦めなどでも、畏怖でもない。
"姉"として愛してくれたのだ。
 
 ―――お姉ちゃん・・・ありがとう・・・

ただ、それだけ。


225 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 02:49:14.31 0

 「『共存』…ね、まぁそっちからしてみれば、私達は『闇』みたいなモノなんだろうな」
 「…でも、どこか違う。貴方達には不明瞭な点が多すぎる」

巨大組織ダークネス。その内部はあまりにも異質だ。
統一性の欠片も無い犯罪の数々。
構成員の数さえも不明、首領さえも不明。
しかも決まってリゾナンターの出動範囲内で起こる。

 まるでそれは、"リゾナンターの為に"起こしているかのような。

 「一番気になったのは、組織の幹部達が元々『M。』であるのにも関わらず
 何故仲間を裏切ってまで『闇』に染まったのか」
 「なんだ、そこまで分かってるんだ?残念だけど、それに答える気はない。
 …元から『闇』なアンタには分かんないよ。人間はそんな簡単なものじゃない」
 「えっ?」

ヒュッ。  ドサッ。

 「……ぅっ……っ」
 「っ…絵里!」

ミティは絵里の服を掴み上げると、"さえみ"の居るゴンドラへと放り投げた。
受け止めた反動で態勢を崩し、強く腰を打ち付ける。
胸の中に居る彼女は微弱な息を吐き、肌の色は真っ青に変色していく。
同じ傷を受けていてもさゆみには治癒能力によって自己回復が早い。
だが対して絵里のダメージはあまりにも深く、それを止める術も彼女には無かった。


226 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 02:50:04.89 0

 「さっさとシゲさんに戻らないと死ぬよ?アンタには『破壊』しか無いんだから」
 「…っ、待って!まだ話は…っ!」
 「あとここに仕掛けた人避けの結界はあと10分しかもたないから
 今の内に降りた方が良いかもね」
 「っ、あなたたちのやっている事は決して赦されない。
 それを続けていくっていうなら、私も容赦はしない」
 「上等、別に赦されたいなんて思ってないから。アンタとは別の意味で気が合いそうだよ」

そう言って、ミティは黒いローブを翻したかと思うと、その姿を消していた。
まるで闇の中に同化したかのようだったが、何かの道具でも使ったのだろう。
同時に、さゆみ達の居るゴンドラが地上の近くへと迫っていることを知り、"さえみ"
は瞬時にさゆみへと戻った。

 「…あれ、私……っ!?絵里!」

補足として、解離性同一性障害は一度「誰か」になると、主人格への記憶には残らない。
記憶や意識の喪失が顕著し、高度な同一性の疾患な為に別人格へと移行するからだ。
それは心的外傷の被害を主人格が防ぐための抵抗とも言える。


227 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 02:51:03.78 0

 「…ん、ぁ……さゆ?」
 「絵里…良かった……ホントに…」

そこは観覧車からそう遠く離れていない場所にあるベンチ。
ミティの言う結界はその言葉どおり10分後にその機能を停止し、嘘のように人が集まり始めた。
だが傷を治したまでは良かったが、眠ったままの絵里を一人で運ぶのには無理がある。

 「!さゆ、傷は…っ!」
 「ん、大丈夫。すぐに治したから」
 「良かった……ごめんね、さゆ」
 「絵里が無事なら良いよ。それに全然悪くないんだから」
 「うん……」
 「まさかこんな接触方法を取るなんて、さすが行動が大胆というか…」

不意に聞こえたリーダーの声。
見ると、さゆみの隣で頬を掻く愛の姿があった。

 「愛ちゃん…なんで…」
 「や、まぁ、声が聞こえて、小春の念写で場所を特定して、瞬間移動でダッシュみたいな?」
 「アバウト…。でも愛ちゃんが来てくれてホントに良かった…」

ありがとうございます。
そうさゆみは頭を下げ、絵里もそれに習って頭を下げる。
ただ愛は苦笑いを浮かべるだけで、二人の傷があった所をソッと触れる。


228 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 02:53:07.72 0

 「ごめんな…。辛かったやろ…?」

 自分がもう少し早く来れていれば。

先程の能天気な声とは違う、あまりにも小さくて壊れてしまいそうなそれ。
さゆみは何か声を掛けようとしたが、その細い指が小さく震えている事に気付く。
心なしか瞳はいっそう輝きを増したようにも思えた。

 優しすぎるその心は、今も尚誰かの声を聞いているのだろうか。

それが混同したかのように流れる雫は小さな光のようで。
さゆみは愛の手を掴み、握り締めた。
絵里もまた、もう一つの手を掴んで握り締める。

 治癒能力は癒すことであり、また心への同調だ。

二人は『共鳴』する、たった一つの希望へと。
その儚く、脆い光へと少しでも近くに居て上げられるように。

 だが、さゆみは気付かない。
 優しさが自身を『孤独』へと誘った元凶であることを。

 絵里は気付かない。
 その『繋がり』を持つことで、更なる"チカラ"を求めることを。

そうして、運命の車輪は回転を始めた。
この世に幾重の絶望があることを知りながら。


229 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 03:02:59.24 0
>>221-228
書いている方もいつまで続くのだろうという思いで一杯一杯ですorz

>>203
>>217
秤スてハイレベルな物語…脱帽です(滝汗)
ガキカメに吉ガキ…まさか吉澤さんのあの設定を拝見できるとは(涙)
どちらともガキさんの葛藤が垣間見れた気がして楽しかったです。
お疲れ様でした。


230 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 03:56:16.45 0
>>229
乙です
『共鳴』、『光』と『闇』の物語・・・リゾナンターの大きなテーマのひとつですね



231 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 07:13:03.50 0
>>217
作者さんも代理投稿の方も乙でした
葛藤するガキさんの姿がリアルに想像できてちょっと目が潤みました

>>229
これからどうなっていくのか楽しみです
作者さんのペースで頑張って下さい

232 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 08:07:02.81 O
新作がいっぱいキテて嬉しい朝

233 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 08:51:04.54 0
それぞれの作者さんのそれぞれの世界観に嘆息するばかりです

234 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 10:18:09.25 O
決死のホゼナント

235 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 11:31:02.98 O
暑さで瀕死のホゼナント

236 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 12:28:57.50 0
死に水はとるぞ、ホゼナント

237 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 12:52:19.94 0
>>203

619 :名無し募集中。。。:2008/05/19(月) 18:01:50.44 0
ダークネスサイドに堕ちたリゾナントオレンジ
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/20/toro20552.jpg

第5話にてこれを貼ったのですが、こんな話が読みたい!という想いで貼ったものでした
実に2ケ月半越しの夢が叶いました!ありがとうございます!
今後ともないやいさんの作品を心待ちにしております

238 :名無し募集中。。。:2008/08/05(火) 14:20:38.93 O
ホゼホゼホゼ

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