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リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第12話

1 :名無し募集中。。。:2008/07/19(土) 16:42:15.91 0
<一体、何処に行くって言うんだ
   _, ,_
川*’ー’)<<胸の高鳴る方へ

前スレ
リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第11話
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1215432711/

まとめサイト
 PC:http://resonant.pockydiary.net/index.html
携帯:http://resonant.pockydiary.net/index.cgi

掲示板 (感想スレ、作品題名申請スレ、あとがきスレ他)
http://jbbs.livedoor.jp/music/22534/

テンプレ>>2-16ぐらいまで

492 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 06:17:56.86 0
5.

「…なんで愛ちゃんは、わかっちゃうのかなぁ」

里沙は愛の目の前に立つ寸前、愛の記憶を書き換えていた。
里沙の声の記憶、顔や身体の特徴を、別の人間のそれへと。
顔や身体はこのローブで隠すことができる。
その上で声を書き換えてしまえば、とうてい気づかれないだろうと思っていた。

それなのに。

愛は、相手が里沙だとは気づかないまでも、何かを感じ取っていた。
虚ろな瞳に、必死に自分の姿を映して、探して。

全てのメンバーを術中に陥れることに成功した。
里沙に関する記憶を全て消し、私物やメールまで、あらゆる痕跡を消した。
案の定、翌日のメンバーの会話には里沙の話題はなかった。
だから、上手くいったと思っていた。

だけど、愛は行方不明になった。

まさか、と思った。
リゾナントの他のメンバーに顔は知られていない―――忘れられている―――のだから、
直接見に行って、確認するくらいはできないことはなかった。
だが、今さらあの中に戻って無関係を装えるほど、里沙は強くなかった。

里沙も、逃げていた。
断ち切った糸になるべく触れないように。
もう一度手にしてしまえば、絶対に戻れなくなるから。
やっとの思いでここまで離れたのに…それを無に返したくなかった。

たとえそれが、本心とは真逆の道を歩んでいるのだとわかっていても。

493 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 06:18:31.20 0
愛の記憶を操作することに躊躇いがなかったわけではない。
だが、実行しなければ自分だけではなく、愛をも傷つけることになる。
それは、避けたかった。
確実に愛の中にある里沙の記憶を抹消した―――はずだった。

それなのに、愛は確かに「ガキさん」と名前を呼んだ。
里沙が扱う能力のことさえ、狂いなく覚えていた。
それが記憶が消されず、いまだに愛の中で里沙が生き続けている、動かぬ証拠。

 …覚えてて、くれたんだね。

それを嬉しいと思ってしまう自分は、情けない人間だと里沙は思った。

もしかしたら、愛が里沙を想う心が、干渉を拒んだのかもしれない。
自覚は、あった。
いつだって近くには愛がいて、里沙がいた。
お互いを補い合い支え合って、何年も戦ってきたから。
里沙にとって、どうしても他のメンバーよりも大切な存在だった。
愛もまた自分に対しては同じような感情を持っていると、断言できた。

今まで数多くの敵を苦しめた自分の技をかいくぐってくれるほど、
愛が里沙を想ってくれているのだとすれば、それはこれ以上ない喜びであり…、
逆に、愛のような実力者に対しては自分の能力が発揮しきれないという、
まだ能力者としては未熟者であることを里沙は思い知らされ、落胆したのも事実。


愛がいなくなった原因が、里沙に見当がつかないわけではない。
里沙のことを覚えていないメンバー。里沙のことを覚えている愛。
その摩擦に加え、愛が頼りにしてきた自分が突然消えたとすれば―――

里沙は、力及ばぬ自分を責め続けた。
愛がすべてを忘れていれば、こんなことにはならなかった。

494 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 06:19:24.84 0
「…愛ちゃん、ごめんね」

小さなつぶやきは雨音にかき消される。
里沙は、胸につけられた小さなバッジに手を当てる。
それは、ダークネスの組織員である証。

ダークネスへ強制送還され、軟禁生活の日々が続いた。
得られる情報は少なかったが、幸運にもかつての仲間、あさ美に出会えた。
その知識と実績で、すでにダークネス内でも特別な科学者として一目置かれている。
そんなあさ美の元には、内外から様々な情報が集められる。
組織内部の指令、組織外部での事件、その他、特にリゾナンターに関する情報―――

―――その中に、愛の情報があった。

 [―――i914、拘束指令―――]

あさ美は、その指令書のコピーを里沙に見せた。
里沙はそれを読むとさっと顔色を変え、指令書を握りつぶした。

愛の居場所は、わかった。
しかし、ダークネスの指令に抗えるような立場にはないこともわかっていた。
自分は軟禁されている身。この施設を自由に抜け出すことなどできるはずもない。

それ以上に、リゾナンターのメンバーや愛に対してしたことを考えれば、
彼女の前にどんな顔をして出て行けばいいのかわからなかった。
愛とメンバーを引きはがすきっかけを作っておいて、
正義を気取って愛を助けに行くなんて、あまりにも都合が良すぎた。

…だからといって、このまま愛が捕らえられるさまを黙って眺めなければいけないのか。

途方に暮れている里沙に、あさ美はある物を無言で差し出した。
里沙はそれを受け取ると、部屋の外へと飛び出した。

495 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 06:19:58.74 0
あさ美が差し出した物の一つは、ワープ装置の鍵。
功績を認められて特例が下り、この研究施設内に設置された物だった。
これを使えば、他の組織員の目に留まることなく移動が可能になる。

指令書を目にして慌ててしまい、そのままあさ美の差し出す物を受け取ってはしまったが、
里沙は、あさ美に感謝しながらも疑問に思っていた。
なぜ、愛の情報を真っ先に自分に漏らしたのか。
なぜ、ダークネスの監視下にある自分を、簡単に施設外に逃したのか…

手渡された黒いローブと銀色の腕輪、そしていくつかの錠剤。
いずれも、里沙が研究室で目にしたことのあるものだった。

皮肉にもそれは、あさ美のリゾナンターに対する研究から生み出されたもので、
腕輪にはれいなの能力を模した力を、錠剤はさゆみの能力を結晶化させたものだった。

あさ美は、何も言わなかった。
だが手渡されたものを見て、すべきことが何なのかは自ずと理解できた。

黒のローブは、己の存在を隠す。
あの科学者はそうやってダークネス幹部としての任務を遂行していった。
あらゆるデータを集め、分析し、ダークネスの繁栄のためにと…


里沙がローブを纏った時、視界は開けた。
日の昇らぬ永遠の闇、荒廃の地。里沙は思わぬ光景に息をのむ。
だが、やがて耳に届いた男たちの怒号に、里沙は雑念を捨てて意識を集中させた。

増幅した力は男の神経へと攻撃を加え、その機能を停止させた。
数秒も経たぬうちに一切の行動はできなくなるだろう。

そして、瀕死の愛の意識下に潜り込み、里沙に関する記憶を書き換えた。
―――やはり、消えずに残っていた里沙の記憶に驚きながら。

496 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 06:20:41.83 0
>>492-495

497 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 07:26:12.04 0
>>496
更新乙です
ここからまた動きがあるのかな?
続き楽しみにしています

498 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 08:43:17.52 0
>>496
乙です
どうなるんやろ?これから
楽しみに待ってます

499 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 08:44:18.13 0
>>481
同一時系列の出来事が色んな視点で語られているので不思議な感覚です
この後それぞれの物語はどのように動いていくのでしょうねえ

>>496
鬱々としておりますね
2人の心に救いが来る日はあるのでしょうか

500 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 10:09:17.72 O
ほぜ

501 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 11:17:41.27 O
>>496
乙です
里沙の気持ちを思うと胸の中がぐちゃぐちゃになりそうですね…
次回も楽しみにしています

502 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 12:45:26.42 0
ホゼナント代わりの余談を
今週はずっと愛ガキ作品が投下され続けているという事に皆さんお気づきでしょうか?w
複数の作者さんがそれぞれの設定で描いておられますが、なんとも不思議な共鳴現象ですね

503 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 12:45:50.70 O


504 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 12:57:26.58 0
日曜日までに新作を投下します

505 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 13:22:07.06 O
>>502
自分も思ってました
これも一種の共鳴だったんですねぇ

506 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 14:40:33.14 0
りぞってるね

507 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 15:13:19.39 O
ほぜなんちゅ

508 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 16:34:45.52 O
第6章、投下します
またもやケータイ投稿

1.>>242-244
2.>>250-253
3.>>317-320
4.>>372-375
5.>>492-495


 ―――またすぐ、会おう。


葛藤と後悔の心理の中で…

509 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 16:35:50.64 O
6.

「…愛ちゃん」

ごめん。

その言葉は声にならない。
ローブの下に隠れた右手を探り当て、そっと指を絡める。
こんなことは卑怯だと思うけれど、彼女が意識を失っている今だからこその懺悔。

彼女の意図しないところで里沙の意識に触れてしまうこともあっただろう。
だから里沙がダークネスのスパイであることは気づいていないはずはなかったと思う。

だが彼女は一度もそのことに言及することはなかった。
いつだって笑って隣にいてくれた。些細な出来事も悩みも全部話してくれた。
決して、里沙を差別するようなことはなかった。
ダークネスの自分とリゾナンターの自分との葛藤。
すべてを包んで、里沙を里沙として見てくれていた。

それなのに。

「あたしは、結局最後の最後に…」

裏切って苦しめて傷つけて。
ダークネスに背反することよりも、結果的には愛の想いを踏みにじる方を選んだ自分。

自分の犯した罪を考えれば、何度謝ったところで足りるはずもないことはわかっていた。
ただ愛が目を閉じている姿を見ると、謝罪の言葉しか浮かび上がってこない。

自分が泣く権利などない。泣きたいのは、自分よりも愛だ。
それなのに溢れて止まらない、後悔と悔恨の涙。
里沙は、力なく横たわったままの愛の身体を強く抱きしめることしかできないでいた。

510 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 16:37:15.45 O
―――どれくらいの時間が経ったのか。
里沙は愛の体温を心に刻みつけるように、長い間そうしていた。

だが、これ以上の長居はできない。
ダークネスの監視下にある里沙は、毎日決まった時間までには自室にいなければならない。
タイムリミットが、刻一刻と迫っていた。

「…愛ちゃん、あたし、行くね」

里沙は愛の耳元で囁くように告げると、小さな機械箱を取り出した。
これも、あさ美から手渡されたもの。最近の研究で完成させたと言っていた。
いつか誇らしげにこの機械を手にして、あさ美がその性能を語っていたことを思い出す。

強い雨は、愛の顔に付いていた血を洗い流していた。
あの錠剤のおかげで、この雨に晒されていたとはいえ愛の身体に体温が戻ってきているのがわかった。
さすがは治癒能力の使い手…、そして、ダークネス最高の科学者、だと思う。

手のひらで愛の顔をそっと撫で、額と額を触れ合わせる。
一秒でも、惜しい。
できるならばずっと触れ合っていたい。
愛が目覚めたとき、それが受け入れられようと否定されようと、全てを吐き出す覚悟を持ってでもそばにいたい。

けれど、里沙はダークネスの組織員であり、軟禁を受ける者。
反逆は即刻の死。かつて凄惨な死に方をした反逆者を目の当たりにしてきた。
それを受け入れるのは、怖い。

愛の身体を包むローブを一度解き、愛の両手に機械箱を持たせた。
あとは里沙が持っているスイッチを押すことで全てが終わる。
 もう会えないと思っていた。会ってはいけないと思っていた。
 会うことがあったとしても、あなたはリゾナンターとして、あたしはダークネスとして。
 同じ死ぬなら、ダークネス反逆者の烙印を押されるよりも、いっそあなたの正義の光で私を貫いて。
 これでもう、あなたのよく知る新垣里沙は、二度とあなたの前には現れることはない―――

511 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 16:38:13.75 O
愛に背を向け、里沙は天を仰いだ。
目の奥が熱い。この涙を全て、冷たい雨が流してくれればいいのに。
目を閉じれば浮かんでくるのは、どうしたって愛の顔ばかりだった。
もう、忘れなければならない。これで終わりにしなければならない。

だから、せめて最後に一度だけ。

里沙は振り返るとひざまずいて愛の両手を包み、そっと頬を寄せた。
ありがとう、愛ちゃん。ずっとずっと、ありがとう―――


「…さよなら、愛ちゃ…、……?」


手を離した里沙は、ふと愛の身体のある部分が目に留まった。
身体の上に置かれていた手をそっと持ち上げたその拍子に、破れた愛の衣服の間から覗いたもの…
里沙は恐る恐る愛の衣服からそれを外し、手に取った。

紛れもなくそれは、見覚えのある白い布地と緑色の刺繍。

「…や、だ、…愛、ちゃ……」

薄汚れ、ところどころ破れてしまっている部分もあるけれど。
腰の辺りに提げられていた、愛と里沙をつなぐ大切な絆の証を。

「…こんな…、こんなの…って…」

だから、愛が自分を忘れるはずがなかったのだ。
愛は、里沙が思う以上に里沙を想っていたのだ。
守りたい絆を。途切れる事なき友情を。尽きる事なき信頼を。

すべてを、里沙の手渡したおそろいのお守りに込めて、肌身離さず身につけていたのだから。

512 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 16:39:04.70 O
「愛ちゃん…、あたし、あたしは……」

愛はどんな想いでこのお守りをずっとつけてくれていたのだろう。
どんな絶望の淵に落ちてもなお、手放さずにいたもの。
里沙は自分のポケットから色違いのそれを取り出し、二つを重ね合わせて胸に抱きしめた。

「さよならなんて…やっぱりイヤだよぉ…」

愛が、忘れないでいてくれるのならば。
里沙もまた、忘れてはいけないと思った。

「…愛ちゃん、約束するよ」

里沙は愛の手に、今まで自分が持っていた黄色い刺繍のお守りを持たせた。

「絶対に、また会おうね…
 その時はできれば…、…ううん、絶対に同じリゾナンターとして…
 実現したら、その時はまた、このお守りを…、さ」

“いつでも私があなたを守れるように”と願いを込めて、
お互いのイニシャルを刻んだお守りを持っていた。
今、自分のイニシャルのそれが手元にあることは、あの時の本意とは違ってしまうけれど。

愛がずっと込めていてくれた想いを、感じることができるように。
目を覚ました愛に、里沙の想いが届けられるように―――

「もう一度、交換しよう。
 それも、約束するから」

またすぐ、会おう。
それまでは少しの間、お別れだけど―――

513 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 16:40:08.85 O
 もう、こんな苦しみは味わいたくない。味わわせたくない。
 絶対に裏切るなんてしない。悲しませるなんてしない。

 だから。

里沙は愛の身体をもう一度抱きしめ、そして、自分の手の中にあるスイッチを押した。
機械箱が振動しだして淡い光を放ち始める。
あさ美が生み出したのは、愛の能力を擬似的に造り出し一度だけの瞬間移動を可能にする装置。
これを使えば、愛はこの闇から解放される。

里沙もまた自分のワープ装置のスイッチを入れ、愛の耳元で祈るようにささやく。
もう、逃げないから。迷わないから。
また会える。そう思うだけで、強くなれる気がした。

その瞬間、二人は強い光に包まれた。
二人がそれぞれの装置でワープに要する時間は一瞬。
互いの身体が光の粒となって消えゆく時、里沙の口元が動いた。
その声はかき消されながらも確かに届けられ―――目を閉じたままの愛が、小さく指先を動かす。

まるで爆発のようにひときわ強く辺りが照らされると、
愛と里沙の姿はほぼ同時に別の光の中へと消えた。


雨は上がり、雲は流れる。けれどそこに残るのは、闇。

二人がいたはずの場所は、愛の身体に無数に付けられていた傷からの血や、
里沙の目からこぼれた涙の跡さえも消え失せ、
辺りは何もなかったかのように、薄汚れた闇の世界に戻っていた。

風が吹き砂ぼこりが舞う中に、一片の布が浮き上がる。
それはボロボロに破れていた愛の衣服の一部だった。
今やそれだけが、愛がここにいたという事実を示していた。

514 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 16:42:49.68 O
>>509-513
改行多すぎエラーの対処に間違えて必要な改行削ってしまった
このスレ内で投下完了が密かな目標です

515 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 17:25:47.30 O
>>514
乙でした
倒れてもなおがきさんを動かす愛ちゃんの強い想いに泣けた…

516 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 17:28:12.46 0
ここであのお守りが出てくるとは・・・
ウマイ使い方ですね

517 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 18:31:46.27 0
>>514
更新乙です
強い想いがガキさんの心を動かす描写が素敵でした

518 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 19:11:34.54 0
>>514
乙です
泣けますね


519 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 19:59:33.53 0
週末のホゼナント

520 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 20:20:37.87 0
祭りでホゼナント

521 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 20:57:28.48 0
何の祭りかホゼナント

522 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 21:10:40.02 0
血祭りのリゾナント

523 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 21:23:53.72 0
コワスw

524 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 21:30:20.02 0
天神祭で人に酔いホゼナント

525 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 21:45:49.29 0
以前に[Niigaki](06)231 『里沙、孤島に囚われ(前編)』という作品がありました。

その作品は、ダークネスに裏切りがバレてしまったガキさんが、
孤島に囚われて拷問を受け、瀕死の状態を向かえ・・・危うし!ガキさん!ってところで一旦「続く」となります。

その時、私は“続き”が上げられるのを待ちきれずに自分で勝手に後編を書きました。
正に、人の褌で相撲を取るというヤツなんですが、保全の意味で上げさせて頂きます。

 *************注意事項*****************
 *                                 *
 *    少々エロ描写がありますので嫌な方はスルーして下さい    *
 *                                 *
 **********************************

『里沙、孤島に囚われ(前編)』ではエレクトロキネシスを使う女が里沙を手酷く拷問にかけます。
あ、ちなみにその女は仲間からも“電気うなぎ女”と揶揄されるほど性格が歪んでいる拷問のプロです。

私の書いた後編では“電気うなぎ女”が拷問を終えて一旦、独房を去り、
代わりに見回りの男が里沙の監禁される独房に入ってくるところから始まります。




526 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 21:47:50.61 0
独房の扉がきしみを上げて開くと、里沙はその音で目を覚ます。
男が入って来て、後ろ手に扉を閉め、ニヤリと笑って言った。

「注射の時間だ」

男は、里沙にモルヒネを打つ。
新垣里沙クラスのマインドコントローラーと対峙する場合、
数時間ごとに幻覚剤を投与し、その能力を抑制しておく必要がある。

男は、里沙の目が虚ろに変わるのを確認すると、ブラウスのボタンに手を掛けた。
薄っすらと汗をかいた里沙の胸元から腹にかけて、ゆっくりと舌を這わせる。
男は一度ブルっと身震いをして、ベルトを外し、自身の怒張したモノを握り締め、息を荒げる。
男は、己の欲情の高ぶりに合わせ、里沙の身体を何度も抱きしめた。
それでも、持て余し、男は里沙の唇に顔を寄せる。

その刹那、里沙の吐息が香った。

それは、綿菓子の様な甘く、懐かしい香りだった。
その香りは性衝動を瞬時に発火させ、図らずも射精してしまう。
男は自慰行為を終えると、そそくさと独房を出て行く。

527 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 21:49:10.47 0
監禁施設のあるエリアの、長く暗い通路を歩きながら男は考える。
(あれだけ大量のモルヒネを打たれて、まだ精神が崩壊していないなんて信じられない)
(ありゃ、化け物だな・・・・・・それにしても、あの肌。つや、きめの細かさ、もう一度、味わいたい)
(今、射精したばかりなのに・・・・・・また、股間がうずきやがる)

「オイッ!お前!何やってるんだ!」上階へと通じる階段を守っていた警備の者に、声を掛けられる。

「へッ?・・・俺?」男がまぬけに答える。

「その女を何処へ連れて行く?」

警備にそう言われて、男は自分が新垣里沙を抱きかかえて歩いていた事に、初めて気が付く。

‐――――――――――マインドコントロール!!!――――――――――――

男は、独房に入った後の記憶がまったく無い事に気付き、戦慄する。

警備の者が怒鳴る。「バカ野郎!操られたな。・・・モルヒネはちゃんと打ったのか?」
男は慌てて、里沙を床に投げ捨てると、ポケットをまさぐりモルヒネを取り出し言った。

「押さえて置いてくれ!・・・この女!舐めた真似しやがって!」

528 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 21:50:32.41 0
男達が里沙の身体に触れようとすると、だしぬけに里沙が言った。

「そうやって、怒るから……操られる」

「なっ、何ぃ!」

「原始的な感情は操作しやすい」

「頭きた!この女、ぶん殴ってやる」

「その怒りは誘導によるものだ。あなた達、さっきから喋ってばかりいて、動かないのは、どうして?」

「…………」

里沙は、男たちに“言葉の重り”を渡す。

「あなた達は、もう、動けない 」

その言葉を聞くと、二人は顔を見合わせて、鼻で笑った。が、それを最後に男達は、微動だにしなくなる。

里沙はふらふらと立ち上がり、階段を昇る。
数ヶ月ぶりに歩いたせいで、途中で何度も転び、最後には這う様にして階段を上がっていった。
重い鉄扉を肩で押し開け、倒れ込むようにして這い出る。

外の明るさに、視界が白く失われた。

波音が聞こえ、海鳥が鳴く。
戻りつつある視界に空と海の青が広がり、自分が伏している場所が、船上の甲板だとようやく気付く。
不帰(かえらず)の島――とは巨大な舟艇である事を知り、里沙は絶望する。


529 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 21:52:03.35 0
船内にサイレンが響き渡る。
大量の薬物によって、蝕まれた肉体は、もう立ち上がる余力さえ無い。
里沙は最後の力を振り絞り、甲板に仰向けになる。

もし、このまま果てるのなら、空を見ていたかった。

甲板に 軍靴の音が鳴り響き、たちまち取り囲まれる。
一人の男が里沙に歩み寄り、乱暴に幻覚剤を注射した。 鉛のような液体が、身体に染み込む。
やがて、里沙に、どんよりとした鬱が襲い掛かり、生へ向かう心を押し潰す。

すると人垣から、苦々しい表情をしたあの女が出てきて、里沙の顔を覗き込んで言った。
「上から命令が下った・・・もう、お前はいらないってさ。なぜ、死に急いだ?」
女はサバイバルナイフを取り出して、里沙の頬に滑らせる。頬が切れ、血がしたたる。
「どうした?得意のマインドコントロールは、もう打ち止めか?」

里沙の手に握られたお守りを、女が目ざとく見つける。
「何だ、コレ」そう言うと、女は、お守りを握り締めた手ごと、ナイフで突き刺す。
ナイフが骨にあたると、里沙は鈍痛に眉根を寄せる。
その表情を見た女は、満足気に笑い、今度は里沙の乳房に刃を突き立てた。
刃が肋骨にあたると、ナイフをひねり骨の隙間を探して肺に穴を開けた。
里沙は吐血し、薄れ行く意識の中、死を覚悟した。

里沙は深い、虚無に吸い込まれていくのを感じる。

周囲の歓声が遠のき、波音だけが聞こえる。

死への恐怖はもう、無い。

目に映る空がどこまでも、青い。

530 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 21:53:12.55 0
【これより先は、このBGMと共にお読み下さい】
http://jp.youtube.com/watch?v=4qjKk8BdyZ4

里沙が、深い眠りにつこうとした、その時。

空を、羽ばたく鳥影が見えた。

「まさか」

里沙が目を凝らすと、その影は、次第に大きくなり、人の形となる。

太陽を背にした人影は、やがて懐かしきシルエットを縁取る。

里沙の目が涙でいっぱいになる。

風を切り裂き、布のはためく音。

白と黒のブラウスをまとった高橋愛が 今、甲板に舞い降りた。

どよめく、船上。

高橋は、里沙を切り刻んでいた女の背中に取り付くと……消えた。
上空、数千メートル。 女を置き去りにして、船上に戻る。

高橋は、里沙の上にまたがると、
道重さゆみから託された、「治癒能力を封じ込めた布」を傷口にあてがう。

里沙が何か言おうとする。高橋は、その唇に人差し指をあて、黙らせる。
ふわりと、コーヒーの香りがした。
里沙は懐かしさに胸がいっぱいになる。

531 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 21:54:34.71 0
 高橋は優しげに微笑み「すぐに、良くなる」と、心とは裏腹に言った。
里沙の傷は深く、今は動かすことさえ出来ない。
見渡せば、甲板には100名近い敵。 里沙を守りながら闘うのは至難の業だ。
その上、何万キロと瞬間移動を繰り返し、ここに辿り着いた高橋に、闘う余力は残されて無かった。
瞬間移動する時には、いつも激しい痛みが伴う。高橋の身体はすでに、限界を迎えていた。

高橋は、取り囲む敵の心中を探る。

(i914だ!) (こいつが噂の化け物か) (電気ウナギ女を消しやがった)(次に動いた奴が消される)
             
(誰かが仕掛けるまで様子を見よう)(チャンスがあれば銃弾を撃ち込んでやる)
                                    ・・・・・
敵の能力者たちは、実態以上にi914の名前に恐れを抱いていた。高橋はそこに、付け入る隙を見出す。
高橋は取り囲む敵を、ゆっくりと見回した。
ライフル銃を向ける男と目が合う。 
高橋の姿がわずかに、瞬いた。 刹那、男の手にあったライフル銃は、消えた。

高橋が奪い取ったライフルを肩に担いで言った。

「次に、攻撃の意思を浮かべた者から・・・殺す」

能力者たちが震え上がる。

次の瞬間、上空から女の叫び声が聞こえた。皆が空を見上げると先程、高橋に連れ去られた女が落下して来るのが見えた。
女は大きな水柱を立てて、海面に落ちた。

(電気ウナギ女が、一度も能力を使わずにやられた!)(俺のかなう敵じゃねえ)(早く立ち去ってくれ)


532 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 21:55:57.55 0
敵の心は既に、この場から逃げ出している。
もう、瞬間移動は使えない。このチャンスを逃せば、この船から下りることは出来ない。
そう判断した高橋は、取り囲む敵に大声で尋ねた。
「異能の者たちに問う!何故、海へ出た?」
船上に集った男達の顔を見渡して言う。「声を出す必要は無い。  読み取る!」

(何を始めるつもりだ?)   (早く帰れよ)   (上からの命令だよ)
      (俺は志願した)(船に乗りたかった)(海で働きたかった)

「さらに問いたい。この船の行く先について……」

荒くれた海の男が肉声で叫ぶ。
「決まってんだろ!世界を奪いにいくんだよ」

「世界はお前の中にある。海になんかに、浮かんでない」

「女はこれだからな・・・男はみんな海賊なんだよ。世界を奪うため、七つの海を渡るんだ。わかる?」

「誰かから、何かを奪うために海に出たのなら、そう遠くには行けまい。すぐに陸が恋しくなる」

「何だと!」

「誰かに何かを与える旅なら、嵐に巻かれ、大波に飲まれようとも、その先を目指すだろう」

「…………………………」静まり返る船上。

「ねぇ、世界征服なんて止めにして、うちでコーヒーでも飲まない?」高橋は微笑んだ。

その笑顔があまりにも爽やかだったので、男たちはそこに真実のかけらを見た……様な気がした。

533 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 21:57:30.01 0
笑顔の下、高橋の肉体は悲鳴を上げていた。
船の揺れに合わせ、踏ん張る度に身体がきしみを上げる。
取り囲む能力者の何人かは、高橋の様子がおかしいのに気付き始めている。
〈時間が無い。誰か……早く。〉
高橋は、まだ傷口の塞がらない里沙を抱きかかえ立ち上がると、取り囲む敵に言った。

「道を開けろ!」前列に居た者たちが、後ずさり道が開かれる。

高橋はゆっくりと避難用のボートの前まで行き、振り返り、あらん限りの声で叫んだ。

「新垣里沙は、私が貰い受ける!異論のあるものは居るか?」

(薄汚い、マインドコントローラーか)(とっとと、連れて立ち去れ)  ((羨ましい……)) 

            (あんな、裏切り者の為によく敵艦に乗り込んでくるな)

 
     ((羨ましい……命掛けで助けに来る仲間がいて。 俺がもし、仲間だとしたら……))


「助けに来るさ!・・・あんたが仲間ならば」高橋は、一人の男の方に顔を向けて言った。

 甲板に海風が吹き抜ける。

里沙を抱きかかえる高橋がバランスを崩し、今にも転びそうに、よろけて歩く。 


534 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 21:59:10.35 0
人垣を掻き分け、出てきたその男が高橋の腕をつかんで、支えながら言った。
「あんたは、強いからそんなことが言えるんだ」

「私が、強い?・・・まさか・・・今だって震えてる」高橋はそう言うと、男の手を振り払う。

よく見ると、高橋の小さな肩は、小刻みに震えていた。

「怖いのなら、何だって、こんな大軍の中に一人で乗り込んでくる?」

「群れるとよけいに、怖くなる」
そう言うと高橋は、真剣な眼差しをして男を見据えた。

男が眼差しの強さに、思わず視線を下げると、高橋の足元に血溜りを発見する。
里沙の身体から、いまだ滴る血液が、高橋のブーツを濡らしていた。
高橋もそれに気付き、里沙を避難用の小型ボートに静かに乗せた。
自分も飛び乗ろうとしたが、腕に力は残されておらず、上手く這い上がれずにいた。
男はその様子を、唇を噛んで見つめていたが……やがて、男の瞳から迷いの色が消える。
男は高橋をヒョイと持ち上げ、ボートに乗せてやると、皆に聞こえる様な大声で言った。

「俺も乗せてくれ」

どよめく群集。
(裏切るのか!)(地の果てまで追われるぞ)(死ぬ気か?)(バカ野郎!何故!?)

「その船の方が、遠くに行けそうだ……それに……あんたの店のコーヒーが飲んでみたくなった!!」
そう言って男はボートに飛び乗り、固定具を素早く外すと、リフトの操作をし始める。

ボートが着水し、男がエンジンを掛けると、高橋は船に残された者達に叫ぶ。
「私たちを追う者は、煮えたぎる火口を見る事となるだろう!」
ボートは海面を滑り出し、地平線に消えて行く。

535 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 22:00:52.79 0
男はボートの舵を取りながら、興奮冷めやらぬ様子で言った。
「信じられない!ハハッ!俺がこんな事……あんたのせいだぜ。
 あんたって人間が気に入ったんだ。i914。俺は……えっ?え?え?え?え?え?え?」

 男が高橋の方を見ると先程までの、凛とした佇まいのi914は居なかった。
直射日光を避けるため、タオルでほっかむりをした高橋は、まるで農村の老女のようにも見えた。
「何か、悪かったのぉ〜あっしの為に巻き添えにしちゃって」
先程、見つめられたつぶらな瞳は消え、陽光にキツネ目をしばたたかせていた。

「えっ?……い、いやぁ……アレ?i914?なんか…………雰囲気、違うね…………」

「あっし、ほら、このボートをどうやって下ろすのかさえ分からんかったから」

「………………」

「エンジンの掛け方も分からんかったもんでのぉ。本当にすいやせん」

「ええええええええええええええええええええええええええ」

 高橋は、ニタリと照れ臭そうに笑って頭を掻く。
「あの場では、言えんかったもん。誰かボートで送ってくれる人いませんか?なんて……」

「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええぇえぇええええええ」

「ホント、すいやせん。あんな大きな組織を敵に回させちゃって!この通りやて。堪忍してのぉ〜」

「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」

 小型ボートの上、土下座する高橋の小さな背中が、波に揺れていた。           おわり



536 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 22:09:35.55 0
もしや連投規制ですか?

537 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 22:11:27.71 0
すいません
終わってます
お目汚し失礼致しました

538 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 22:14:15.04 0
いえいえ終わりなのは分かっておりましたw
レスアンカーを打っておくとまとめさんが喜ばれますよ

・・・リゾナントありがとうございました!

539 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 22:17:26.85 0
なるほど!
ありがとうございます
ではさっそく

>>526->>535



540 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 22:18:08.10 0
最後がw

541 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 22:22:47.30 0
>>538
って言うか
もしかしてあなた様は 『里沙、孤島に囚われ(前編)』を書いたご本人様ですか?

す、す、すいません!もう、本当に恐縮です。
リゾナントと言うよりもこれは他人の褌で相撲を取る・・・・・・イヤ、それどころじゃなく
他人のスパッツでエアロビを踊るくらい失礼なことなのに、寛大なお言葉ありがとうございます。


542 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 22:44:31.19 0
>>539

自分はこのスレではあからさまなエロは求めてないので、
導入部には正直抵抗を覚えたけど、高橋の登場から、男
達との心理戦、脱力感溢れるラストまで面白かったっす
機会があれば、また書いてねw

543 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 22:48:19.11 0
>>541
スパッツ・・・w
こんあとこまで台詞回しが素敵ですね
>>526-535
アンカーはこれで

544 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 23:07:33.37 0
>>541
農村の老女のところで吹いたw
エロ、シリアス、コメディ三拍子揃った怪作ですな

そもそも他人のスパッツでエアロビなど踊りたくないw

545 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 23:10:45.76 0
愛ちゃんのクサイ台詞回しに乗せられる男達
しかし終わってみればいつもの愛ちゃん
久しぶりの単発モノ(1作品として完結してるという意味)でじっくりと読んじゃいました
とても面白かったです
自分自身が始めのエログロで少し引いてしまったのが残念といえば残念

これもいつものBGMの人かな?最近は何の曲か先に当てようとしてるけど
外れましたw

546 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 23:42:29.60 0
ho

547 :名無し募集中。。。:2008/07/25(金) 23:55:22.92 0
ze

548 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 00:21:34.54 0
nan

549 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 00:44:01.94 0
tooo!

550 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 00:53:35.51 0
>>546-549
ナイスチームワーク!
…これ同じ人だったらどないしよ、のホゼナントw

551 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 01:05:29.68 0
第7章、投下します
スレ内に収まるようにペースアップ
週末だし

1.>>242-244
2.>>250-253
3.>>317-320
4.>>372-375
5.>>492-495
6.>>509-513


 ―――でも、リゾナントへと戻らなくてはならない。


圧倒的不利な心理戦。

552 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 01:06:20.55 0
7.

「…おかえり」

里沙が目を覚ますとそこはあさ美の研究室ではなく、自室のベッドの上だった。
機械の力を使ったとはいえ、非日常的な空間移動を二度も行ったせいで、
里沙の身体には目に見えぬ形でのダメージが残っていた。

ぼんやりとした頭で声のした方に顔を向けると、
そこには白衣をまとったままのあさ美がいた。

…ここは自分の部屋なのに、なぜ?

里沙は動かぬ頭を整理しようと何かを考え始めたが、
すぐにあの光の中の約束を思い出し、布団をはね除けて飛び起きた。
あさ美はそんな里沙の姿を見て、やれやれと首を横に振る。

「…まだ寝てないと、ずいぶん消耗してたんだよ?」
「あたしは、ここを出て行く」
「研究室に戻されたガキさんをここに連れてきてあげて、
 幹部の定時観察に間に合わせてあげたの、私だよ?」
「…あたしは、ここにいるべきじゃない。
 もっといるべき場所を見つけたの」
「そもそもいろんな道具だって渡してあげたのに、ガキさん全然お礼も―――」
「聞いてんの!?」

「聞いてるよ」

無表情のままに淡々と事実を並べていくあさ美。
交わした約束のために、己の意思をぶつける里沙。
一方的な言葉のぶつけ合いは平行線をたどるばかりだったが、より冷静だったのは、やはりあさ美の方だった。

553 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 01:07:10.47 0
里沙はぐっと言葉を飲み込んだ。
確かにあの時あさ美が手渡してくれた物がなかったとしたら、
愛を助け出すことも、愛と再会することすらできなかっただろう。

「…こんこんのおかげで愛ちゃんに会えたし、愛ちゃんを助けられた。
 …ありがとう。ホントに感謝してる。でも…」
「ガキさん、ちょっと落ち着いたら?」
「あたしには、大事な約束がある、だから…」
「この部屋から、そしてダークネスから逃げる、と」
「もう、自分の気持ちに、嘘はつけないんだよ」

ポケットの中に手を伸ばす。
このお守りを返すためにも、このままでいるわけにはいかない。
そうと決めたら、一刻も早く。

だが、里沙は内心焦っていた。
目の前にいるあさ美が、あまりにも冷徹な視線を自分に向けていることに。

愛の危機を知らせてくれたのは、他でもないこのあさ美だった。
あさ美が教えてくれなければ、そしてあの装置や錠剤が渡されなかったら。

きっとどこかで、あさ美はダークネスに戻された里沙の本心を見抜いているのだと思っていた。
だから、愛を助けるために協力してくれたのだと。

ダークネスの有力幹部でありながら、同期の絆を重んじてくれた。
そう思っていたから、この瞬間もあさ美は里沙の考えを後押ししてくれると思っていたのに。

「愛ちゃんを逃したのはあたしの実験のため。
 そうだったとしたら、どうする?」
「…!!!!」

その希望が、あさ美の言葉で打ち砕かれた。

554 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 01:07:55.54 0
「こっちの支配下に置いといて得るデータなんかより、
 実際にリゾナンターとして動いてるときのデータの方がよっぽど効果的だもん。
 所詮、あのままにしておいたら使い物にならないデータしか出ないしね」

あさ美は、あくまで静かに言い放った。
ダークネス最高の科学者。里沙が頭脳戦ではとうてい太刀打ちできるはずもない。
もし…本当に、あさ美の言うとおりに全てが計算の上で行われていたのだとしたら。

すーっと血の気が引くのを感じ、里沙はよろめくように一歩下がった。
先ほどまで寝ていたベッドに身体がぶつかり、改めてここには逃げ場がないことを思い知らされる。

一歩一歩近づくあさ美に対して、里沙はじり、じりと横に移動する。
あてがわれているこの自室も、そう広い部屋ではない。
飛びかかろうと思えば一瞬。飛びかかられれば一瞬。
軟禁されている身分だから、部屋には簡素な物しか置いていない。

対して、あさ美はどうだろう。
あの白衣の中に、何を隠し持っていたとしてもおかしくはない。

里沙は、圧倒的に不利だった。

「…全部が、罠だった、ってこと?」
「そういうことになるかな」

あさ美は不敵な笑みを浮かべながら答える。

里沙の視界に部屋の扉が映る。だが、脱出できるような状況ではない。
自分と扉との線上には、あさ美がいる。
おそらくはこの状態を作り出しているのも、あさ美の計算の上なのだろう。

555 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 01:09:41.69 0
「どうやってここを出るつもり?」

里沙の視線が不安げに部屋の中を彷徨っていたことを、あさ美は見逃さなかった。
相手に弱みを見せたらその時点で終わり。
そう言い聞かせていたのに、いとも簡単に指摘されるなんて。

「…こんこんを倒してでも行くよ」

里沙は、精一杯虚勢を張った。
マインドコントロールをかけてどうにかなる相手でもないことはわかっている。
里沙の力ではあさ美には通用しないだろう。
それでも何万分の一の確率でも可能性があるのならば、それに賭けるしかない。
だが、里沙の望みはあさ美の言葉でことごとく壊されていく。

「…ガキさん、甘いなぁ」

あさ美は里沙の退路を断つように距離を詰める。
里沙はその拍子に、床にぺたりと尻もちをついた。

「…私がガキさんにここで倒されたとしよう。
 でも、この部屋の外はダークネスの構成員ばっかりだよ?
 忘れたの? ガキさんは、軟禁の身。
 この施設から逃げ出すためには、何百人もの相手を倒さなくちゃいけない」

忘れていたわけではない。何もかも、頭には入ってはいる。
でも、リゾナントへと戻らなくてはならない。
仲間のためにも、正体を知ってなお信じてくれた愛のためにも。

二人の距離はもう、手を伸ばせば触れるくらいにまで迫っていた。
里沙は動けない。それでも、あさ美の目を見据え続けた。
待っているのは、反逆者としての拷問か、それとも凄惨な死に様か。
あさ美は小さなカプセルを取り出すと、里沙の顎をつかんで上を向かせた―――。

556 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 01:10:04.44 0
>>552-555

557 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 01:11:27.75 0
>>556
これからどうなるの!
すっごい気になるところで終わってしまって悶々しています
続き楽しみにしてます

558 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 01:14:56.68 0
>>556
おつかれさまです
ガキさんはこういう攻められ方は苦手だろうねw

559 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 01:37:40.64 0
天才が天才たる所以は演算能力のみに非ず。
ドクターマルシェを最高の科学者たらしめているのは、
閃きや発想力を司る右脳の働きが人並み外れて優れている点にある。
この能力が偏食、特殊な嗜好を招いたとか招かないとか。

560 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 01:40:30.12 0
>>556
乙です
黒い紺野さんもまた魅力的w
続き待ってるから

561 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 01:40:48.01 0
ゾクゾクします色んな意味でw
続きが気になります色んな意味でw

562 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 02:16:50.81 0
ホゼナ

563 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 02:35:06.45 0

  みんな狼に投票しようね

564 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 03:48:21.35 0
[Ai-Eri](09)900 にリゾナントさせて頂きました
テスト1日目が終了したので勢いで書いちゃいましたw
全て書けていますが長いのでとりあえず前半部分のみです

565 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 03:48:29.97 O
真夜中のホゼナンター

566 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 03:48:43.22 0
「愛ちゃーん、迎えに来ましたよー!」
「おー絵里!おはよぉー」
「おはようございます!」

リゾナントのドアを開けると、カランカランと鐘が鳴る。
絵里を安心させてくれる音だ。

「じゃあれいな、行ってくるね」
「愛ちゃんがおらん間は任せてくれたらいいけん、ゆっくり行ってきて」
「うん、ありがとう」

なんだかれーなも立派になったなぁ・・・。
愛ちゃんも、すっかりれーなを頼りにしてるみたいだし。
そうそう。そうやって頼ってくれたらいいんです。
いつも一人で考えて、勝手な答えばっかり出しちゃうんだから。

「あれー?亀井さん振られたんじゃなかったんですかー?」

その甲高い声のする方へと視線を向けると、
テーブルでみっつぃーと向かい合って座る小春が居た。

「だから、あれは違うってぇー!」

愛ちゃんは慌ててるけど、絵里は何も言わない。
こんなに可愛い絵里が振られたっていうのは気に入らないけど
仲間にいじられる愛ちゃんを見るの好きなんだよね。
なんていうか・・・上手く説明できないんだけど。

愛ちゃんが小春のそばまで行って、いろいろ説明している。
愛ちゃん・・・その説明するの、一体何回目なの?

567 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 03:49:35.71 0
小春とみっつぃーがニヤニヤ笑いながら、愛ちゃんに大きく相づちを打っている。
もうそろそろ終わる、かな。

「もー、絵里行くよ!」
「はい!」

たーのしいなぁ、本当。
ついでにれーなもからかっておこう。

「れーな、しっかりやるんだよー?」
「ちょ、絵里に言われたくないとー!」
「へへ、行ってきまーす!」

あんなこと言わなくても、れーながしっかりやるのはわかってる。
自分のやりたいことをやってる時のれーなと誰かの為に頑張るれーなは凄いんだ。
リゾナントの店番をするれーなは、その凄いれーな二人分だからもっと凄いんだよ。

そんなことを思いながら、愛ちゃんと並んで歩く。
いつもは忙しくて滅多に外に出られない愛ちゃん。
いつもは忙しくて滅多に休めない愛ちゃん。
いつもは忙しくて滅多に遊べない愛ちゃん。
そんな愛ちゃんを、今日は絵里が独り占め。
自然と笑顔になるのも仕方がない話だ。

568 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 03:50:20.27 0
「楽しそうやね」
「楽しいに決まってるじゃないですかぁ」
「それは良かった」

二人で無駄に笑いながら、足取りは前へ前へ。
太陽の光がジリジリと暑いけど、足取りは前へ前へ。
楽しい時は、足取りだって軽くなっちゃうんだよ。

「今日は絵里に全部任せるよ?」
「任せて下さいよー!今日のプランはバッチリです」
「はは、リンリンがおる」
「お、バッチリデース!」

やっぱり今日の絵里はテンションが高い。
その後も調子に乗ってみんなのモノマネをしたら、愛ちゃんは手を叩いて爆笑してくれた。
愛ちゃんは、いつも笑ってくれるなぁ。
それで、絵里おもしろいねーなんて褒め言葉をくれる。
その度にガキさんに「ええええ」みたいな顔で見られるけど。
それで愛ちゃんの心を少しでも癒してあげられるなら、
何回でも絵里は愛ちゃんを笑わせてあげたいと思う。

「今日は、絵里がいつもお世話になってるお店に行きます」
「そっか。絵里はコンタクトやもんね」
「そうですよー」

そう。今日は愛ちゃんのコンタクトを作りに行くのだ。

569 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 03:51:16.75 0
「ここです!」
「おぉ・・・ってここ、私が眼鏡買ったとこなんやけど」
「えー!?」
「や、いや、なんか・・・ごめん」
「いや、いいんですけど・・・いいんですけどー・・・」

なんかちょっと、残念。
この辺で眼鏡屋さんって言ったらここしかないし、当たり前と言えば当たり前なんだけど。
むー・・・この展開は考えてなかった。

「でもホラ、コンタクト初心者なのは変わり無いし・・・」
「・・・」
「絵里がおらんかったらコンタクトを作ろうとも思わんかったと思うし・・・」
「・・・本当ですか?」
「お、おぅ」

それなら・・・まぁ、いいか。

「よし、じゃあ行きましょー!」
「おー!」

自動扉をくぐると、ひんやりとした空気が身体を包んだ。

「涼しーい」
「リゾナントもクーラーの設定温度下げた方がいいやろか」
「うーん。もうちょっと下げてもいいかもしれないですね」

ちょっとひんやりしてる方が、コーヒーもおいしくなるんじゃないかな。
愛ちゃんの煎れるコーヒーはいつでもおいしいけど。
まぁ、絵里は飲めないんだけどさ。

570 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 03:52:38.46 0
そういえば風の温度って調節できるのかな・・・。
ふと疑問に思い、自分の手の平を見つめた。

「絵里?」
「はい!?」

思った以上に考え込んでしまっていたかもしれない。
愛ちゃんが心配そうに絵里の顔を覗き込んだ。

「どーした?」
「いや・・・絵里が出す風も、温度調節できるかなーって」

愛ちゃんと絵里は、意味もなく眼鏡が並べられている棚の間をウロウロと見て回った。
この話が終わるまで、きっとこのままだ。

「あぁ、なるほどなぁ。・・・できるんじゃない?」
「え、本当ですか!」

そんなあっさり!

「ほら、ドライヤーだって、あったかい風と冷たい風出せるし」
「はぁ・・・」
「できそうな気がするけどなぁ」

ドライヤー・・・。
んー、まぁ・・・確かになぁ。
今度みっつぃーにでも相談してみようかな。
ドライヤーの中身ってどうなってるの?って。

571 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 03:53:25.91 0
「じゃ、ちょっと行ってくるわ」
「あ、はい!」

前にここで眼鏡を作ったみたいだし、そんなに時間はかからないだろう。
店員さんと話している愛ちゃんに外へ行くことを告げて、絵里は店を出た。

「あっついなぁー、もー・・・」

自動扉をくぐった瞬間に、全身にじんわりと汗が浮かび上がる。
この不快感だけは、何年立っても好きになれそうにない。

「よーし」

大きく息を吐き出して、絵里は風を作った。
後ろから押し寄せる風が心地良い。
これは何℃ぐらいなのかな・・・。
ぼんやりとそんなことを考えながら、冷たくするイメージをしてみた。
イメージは・・・冷蔵庫を開けた時の、あの快感・・・!

572 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 03:54:55.07 0



「はぁ・・・っ」

どれぐらいそうしていただろうか。
少しだけ冷たくなったような気がするけど、気のせいのような気もする。
ううう・・・難しい。

「絵里ー?」
「!・・・はーい!!」

駐車場の裏手に行っていた絵里は、愛ちゃんの声に慌てて駆け出した。

駆け出し・・・た?
あ、れ・・・。
一瞬世界がぐるんと回った。
立っていられなくて、思わず地面に手をつく。

「絵里っ!!」

愛ちゃんが駆け寄ってくるのがわかる。
なんだか頭がガンガンする。
ちょっと気持ち悪いし。

「絵里!大丈夫!?」
「うー・・・」

これは大丈夫じゃない、かも・・・。

そのまま絵里は意識を手放した。


573 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 03:57:26.78 0
>>566-572 前半以上です
一気に上げたいところですけど規制が怖いので・・・
続きは昼過ぎにでも更新したいと思います

574 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 06:24:40.15 0
どうなる?
期待して待ってます

575 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 07:28:12.70 0
風使い待ち

576 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 08:14:32.56 O
新作きてたら嬉しい朝

577 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 09:51:10.38 0
>>573

お昼が楽しみ

578 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 10:26:43.91 0


579 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 11:10:03.85 0
ほ〜ぜほ〜ぜほぜ ほぜなんと
ほぜんの ために やってきた

580 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 12:14:01.27 0
>>573さん待ちホゼナント
テスト期間中にもかかわらず執筆&投下乙であります!

581 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 13:14:13.93 O
暑いなぁ…

582 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 13:37:26.42 0
仕事がいやになるよね暑くて

583 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 13:43:24.69 0
>>582
仕事乙
夏ばてにはうええおええ丼が聞くから夜にでも食べるといいよ

584 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 13:45:36.00 0
お待たせしてすみません
あんな時間に寝たので寝坊しました・・・
では>>566-572の続きです

585 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 13:46:09.52 0
―――
――


なんだか冷たい空気に包まれている。
これは・・・絵里が出してる?
とても涼しくて冷蔵庫の中にいるみたい。
風さん、絵里に力を貸してくれるの?

『絵里の頑張りには負けたよ』

へへへ。
絵里、頑張ったでしょ。

『・・・絵里!』

ん?どうしたの?

『絵里!!』

だからどうしたのって。

『絵里!・・・絵里!』

もー・・・

「聞こえてるってば!!」

―ゴンッ

586 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 13:46:39.36 0
「いったたたたた」
「いってぇー・・・」

・・・あれ、愛ちゃん?

「聞こえとるなら、もっと早く起きろ!アホ!」
「え、え、え?」

絵里がキョロキョロしている間も、愛ちゃんは痛そうにおでこを押さえていた。
絵里のおでこも、まだじんじんと痛みが残っていたけど・・・なんとなく我慢。

「あれからずっと外におったやろ。軽い日射病や」
「え、絵里がですか?」
「絵里以外に誰がおるんよ・・・」

愛ちゃんはやれやれと言うようにため息をついた。
うわー・・・やってしまった。

「まぁ、なんともなくて良かったよ。帰れるか?」
「あ、はい・・・。大丈夫です。すみません・・・」
「今度またあんな無茶したら怒るで」
「はい・・・」

どうも絵里は軽い日射病で倒れてしまったらしい。
それで、愛ちゃんが眼鏡屋さんに頼んで休憩室で寝かせてもらっていたみたいだ。
眼鏡屋さんの店員さんにお礼を言って、再び太陽の下に出た。

587 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 13:47:21.01 0
「あんなに長い間、何しとったん?」
「ちょっと特訓を・・・」
「こんな暑い中で、休み無しにやることないのに」
「すいません」

愛ちゃんと並んで歩く。
行きと違って、足取りは重い。

「結局できたんか?」
「うーん・・・夢の中では出来てたんですけどねぇ」

起きてみると、やっぱり出来る感じがしない。
もうちょっと練習してみないと。

「夢の中でもしてたの!?」

愛ちゃんは目と口を大きく開いて、絵里の顔を見た。
なんだか照れくさくて、絵里は笑いながら頷いた。

「まぁ、練習熱心なんはいいことなんやけどな・・・」

愛ちゃんは困ったように呟いて、頭を掻いた。

「絵里が倒れてしまったら、私はどうしたらいいんよ」
「・・・え?」
「絵里が倒れたら、私が今日休んだ意味もなくなるやろ」
「はい」
「みんなが強くなるのも嬉しいけど、みんなが元気でおる方が私にとっては大事やから」

・・・!
愛ちゃんの言葉に絵里は胸を打たれた。

588 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 13:47:45.40 0
大事なことを忘れてしまっていたみたいだ。
愛ちゃんに無理しないでって言ってばかりで、自分のことなんて考えてなかった。

「だから、今度からは気をつけるんやで?」
「・・・はい!」

リーダーのくせに、みんなにいじられてばかりでどっか抜けてて訛ってて
いつも一人で無茶するけど・・・やっぱり絵里のリーダーは最高だ。
最後には、いつも絵里に大事なことを伝えてくれる。
仲間のことを、信じてくれる。

「愛ちゃん、おでこ大丈夫ですか?」
「あ、あー・・・忘れとったけど、絵里に言われたら痛くなってきた」
「え!ご、ごめんなさい!」
「へへ、嘘だよ」

ニシシって笑う愛ちゃんは、全然年上っぽくないし頼れるリーダーっぽくもないけど
それでも絵里よりしっかりしてて、みんなのリーダーなんだ。

「ただいまー!」
「おかえりー!」

リゾナントの扉を開けると、絵里の安心する音と安心する笑顔に包まれる。

「デート楽しかったですかー?」

すぐさま声をかけてくるのは、やはり小春だ。
もちろん、楽しか・・・

589 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 13:48:28.68 0
「絵里が日射病で倒れて散々やったわ」
「え、絵里倒れたん!?」

ちょ、え、愛ちゃん。・・・え、え。
れいなの心配そうな目が絵里を見るのがわかる。
愛ちゃんの方を見ると、楽しそうに笑っていた。
愛ちゃんのバカ〜〜!!

「なんや、二人ともおでこ赤くないですか?」

―ギクッ
みっつぃーが自分のおでこを触りながら言った。

「あれー?今度は頭突きでもされちゃったんですかぁー?」

小春がニヤッニヤと笑い出した。
くそぉぉぉぉ。

「絵里」
「はい!?」

小春のほっぺをちみぎってやろうと一歩踏み出した時、愛ちゃんに呼び止められた。

「カフェオレ、飲まんか?」
「の・・・飲みますよ!飲むに決まってるじゃないですか!」

カウンター席にガタンと乱暴に座る。
絵里は怒りましたよというのを見せつける為にも、口はへの字に尖らせたままだ。
それでも・・・それでもこのカフェオレを飲むと、なんだか暖かい気持ちになる。
絵里の好みの甘さにしてくれてあるであろう、苦くないカフェオレ。
愛ちゃんの優しさが込められていると飲む度に思う。

590 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 13:48:57.21 0

「今日はありがとな」
「散々だったんじゃないんですか」

素直に答えるのが恥ずかしくて、素っ気なくそう答えた。

「そりゃまぁ、ね。目の前で仲間に倒れられるのは、理由がなんにせよ良いもんじゃない」

愛ちゃんはそう言うと、小さく苦笑した。
それはそうだろう。
絵里だって、仲間が傷つくのを見るだけで心臓が止まりそうになる。
こんなことを言うと・・・シャレにならないってガキさんに怒られちゃうな。

「おかげで助かったよ」
「え?」

愛ちゃんは何も言わずに、自分の右目を指さした。

「あぁ」
「おかげで、みんなの笑顔がはっきり見れる」

静かにそう言った愛ちゃんは、本当に嬉しそうで、
絵里には上手く返す言葉が見つからなかった。
でも、すごく嬉しかった。

591 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 13:49:22.49 0
「・・・絵里の顔も、ちゃんと可愛く見えますか?」
「絵里の可愛い顔もちゃんと見えるよ」

愛ちゃんが嬉しそうにしているのが嬉しくて、にやけそうになった。
それをごまかしたくて。

「うへへ」
「自分から言ったくせに」

違うんです。
今、絵里が緩む口元を抑えられないのは、そういうことじゃないんですよ。

「今日は、楽しかったですか?」
「楽しかったよ」
「なら良かったです」

それだけでも絵里は十分です。
次は、絶対倒れたりしませんから。
ずっと隣で笑ってますから。
だから・・・。

「次は、いつにしますか?」

また、どこかに出かけましょうよ。
次は・・・みんなで。


592 :名無し募集中。。。:2008/07/26(土) 13:50:54.85 0
>>585-591 以上です

まとめる際は>>566-572と合わせて『Smiles Maker』でお願いします
久しぶりに書けて楽しかったー!

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