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リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第11話

1 :名無し募集中。。。:2008/07/07(月) 21:11:51.19 0
<一体、何処に行くって言うんだ
   _, ,_
川*’ー’)<<胸の高鳴る方へ

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リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第10話
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テンプレ>>2-17ぐらいまで

776 :名無し募集中。。。:2008/07/17(木) 05:58:30.49 0
平和で幸せだと思っていた。
それを鳴らしている間は、とても心を落ち着かせる一人の赤ん坊。
それは、私だ。

母親に教わった曲が頭の中で鳴る。
譜面は見ずとも、まるで魂に刻まれたかのように覚えている一つの歌。
初めは片手で、次第にもう片方の手を添える。

白と黒の鍵盤の上を指先が滑ると、音になって跳ね返ってくる。
それが連なり、メロディと成っていく。
何度同じ曲を弾いても思い出した。

遠くの今と近くの今を、時間なんて関係なく。
この部屋はまるで別の空間のよう。
どこにでも繋がっている気がして、懐かしい。

初めて入った場所なのに、おかしいと分かっているのに。

 「…『娘』……」


777 :名無し募集中。。。:2008/07/17(木) 05:59:41.47 0
―――ふと、背後からの視線に振り返った。

 「ミチシゲ…」
 「道重『さん』ね。
 リンリンが「ジュンジュンが居ない」って寂しがってたの。
 で、探しに来たらピアノの音がして」

「こんな部屋があったんだね」
さゆみは部屋に入ると、意気揚々と鼻歌を歌って周りを見渡してみる。
ふと、ジュンジュンはその鼻歌に気付いた。

 「それ…」
 「あ、ごめんね。盗み聞きってワケじゃなかったんだけど……何ていう曲なの?」
 「…おカアさんからオシえてもらたキョクだから、ナマエはありませン」

ふとさゆみは、ジュンジュンから家族の話を聞いたことが無かったのを思い出す。
さゆみ自身も家族の事を口にした事は無いが、それでもたった一人で中国から
留学生として日本にやってきたジュンジュンの事は尊敬している。


778 :名無し募集中。。。:2008/07/17(木) 06:00:58.91 0
それを考えると、少しだけそんな彼女の家族の事も気になってしまうものだ。
本当に軽い気持ち。
ちょっとした好奇心。
空いていた椅子のスペースにさゆみは腰掛け、並ぶように座る。

 「ジュンジュンのお母さんって、どんな人だったの?」
 「…おカアさんはあんまりオボえてないデす。アカンボウの時にソボにアズけられたカラ」
 「あ…ごめん…」
 「ダイジョブですよー、もうナレましたカラ」

ジュンジュンは何事も無いように笑っていた。
だがさゆみには、その笑顔がどこか「諦めた」ような物のように感じていた。
リンリンにジュンジュンの能力は少しだけ聞いている。

  ―――代々一族に伝わるという特殊能力。

だがその力を制御する為に両親から引き離されての生活。
怪物だと自分を戒めた日々。
その中で、ジュンジュンはたった一人で戦いながら力を得た。


779 :名無し募集中。。。:2008/07/17(木) 06:02:09.05 0
考えれば考えるほど、さゆみは自分の弱さに落ち込む。
たった一人で戦ってきたジュンジュンとは違い、自分はすぐに追い込まれて。
果ては死のうとまでしたのだ。
諦めずに生きる選択をせずに、死ぬ選択をした。

あの時、絵里が居なかったらと思うと…。

 「ミチシゲさんのおカアさんは、どんな人ですカ?」
 「へ?あ、ええとぉ……」

突然のジュンジュンの問いかけにさゆみは戸惑った。
あまり思い出したくないものばかりだったが、一つだけ、たった一つだけ覚えているものがある。
それは、子供用の小さなピアノの玩具。
今目の前にある立派なものではないけれど、3歳の誕生日に父親が
買ってきてくれた、何の変哲も無い楽器。

一人では何の意味もなく叩いていたものの、母親がさゆみの手をソッと持ち
優しい声で呟きながら鍵盤を叩くことを教えてくれた。
そんな小さな想い出がまだあったという事は多分、無意識に忘れまいと思っていたのかもしれない。

もしかしたらその記憶があったから、即座にピアノの音に反応したのだろうか。
さゆみは自分の単純さに呆れそうになった。


780 :名無し募集中。。。:2008/07/17(木) 06:03:06.52 0
 「…優しい人だった、かな」
 「ミチシゲさんにニテますか?」
 「どうだろう、ね」

今では、自分がどっちに似ていたのかさえも確認することは難しい。
目さえも合わせてくれず、どう接していけば分からない「本当の家族」に
どうすればそれが叶うのだろう。

 「…ねぇ、さっきの曲、教えてくれる?」
 「エ?イいですけド…」

ジュンジュンは、微かな記憶と残像をメロディに宿して奏で始める。
時々思い出せなくなりそうになる母親の面影を乗せながら。

ふと、両親と子供の事件が多発しているのを思い出した。
最悪の場合、どちらが殺したり殺されたりという結末で終わることさえもある。
それを聞くと、皮肉にも自分達だけじゃないのだと思えた。

誰しもその気になれば同じ境遇になる。
自分達は少し特殊で、まだ「人間」なのだと思えた。


781 :名無し募集中。。。:2008/07/17(木) 06:03:33.27 0
仕方がない。
仕様が無い。
そう思ってしまえばそれまでだと知っていても。
考えることをやめればそこで終わると分かっていても。

同じ場所で生きて、同じ場所で暮らして、同じように呼吸して。
判っているはずなのに、何かの弾みで忘れてしまう。

思い出すのは、いつもそれを失ってから。

 「…ミチシゲさん?」


782 :名無し募集中。。。:2008/07/17(木) 06:04:08.38 0
さゆみは、瞼を閉じている。
溢れ出すものが直視できないから。
どこまでも弱い自分が、凄く空しくなるから。

徐々にその暗闇が、怖くなってくる。
いつもはそんな事を思わないはずの、寧ろ好きだったはずの暗闇が。
何も見えなくなって怖くなった。
手を伸ばそうにも自分の手が何処にあるのか判らない。
足を動かそうにも、自分の足が何処にあるのか判らない。

自分の存在が判らない。
あの日々のように、さゆみはどこに居れば良いのか分からない。

 ―――その時、音が鳴った。

それは遠いあの日にも、それはすぐ近くでも。
知ってる音。優しくて、暖かくて、懐かしいそれは―――。


783 :名無し募集中。。。:2008/07/17(木) 06:04:50.11 0
瞼を開けると、ジュンジュンがさゆみの手を握っていた。
ピアノの鍵盤から指を離し、そしてゆっくりと振り下ろす。

 ぽーん。

音符の余韻はやがて消える。
カタン、というペダルから足を離す音も聞こえる。
そして、ジュンジュンは笑った。

 「ミチシゲさんもヒいてください」
 「え、で、でもさゆみピアノは……」
 「ダイジョブです、ジュンジュンもヒきますから」

そう言い、ジュンジュンは弾き始める。
たどたどしいさゆみの奏でるものを後押しするように。
初めて弾くメロディは、それでも何かに共鳴するように響き合う。

 ♪〜♪♪


784 :名無し募集中。。。:2008/07/17(木) 06:05:16.26 0
 「絵里?何やっとるの?」
 「シー」

喫茶「リゾナント」の2階。
愛は何故か「魅惑の水さんルーム」の扉から何かを見ている絵里を発見した。
だが問い掛けても口元に人差し指を置いて注意を呼びかけるだけ。
ソッと、隙間から覗くとそこには見覚えのある二つの背中。

と、絵里が窓の隙間から風を滑り込ませると、奏でられる音の流れの道筋を形成し始めた。
いつの間にそんな器用が出来たのかと愛は思ったが
その流れに沿って、奏でる音がまるで風のように外へと吐き出される。

ふと、誰かが何処かで同じメロディを紡いだ。

踊るように弾むメロディは導き合って惹かれあう。
それは誰かの声と、誰かの物語を乗せて。


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