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リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第11話
- 1 :名無し募集中。。。:2008/07/07(月) 21:11:51.19 0
- <一体、何処に行くって言うんだ
_, ,_
川*’ー’)<<胸の高鳴る方へ
前スレ
リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第10話
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1215179792/
まとめサイト
PC:http://resonant.pockydiary.net/index.html
携帯:http://resonant.pockydiary.net/index.cgi
掲示板 (感想スレ、作品題名申請スレ、あとがきスレ他)
http://jbbs.livedoor.jp/music/22534/
テンプレ>>2-17ぐらいまで
- 264 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 01:44:13.88 0
- ホゼナント
>>263
楽しみにしてます!
- 265 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 01:51:38.84 0
- ないやいさんの書く物語は個人的にすごく好きっす
メンバーの特徴とらえててうまく表現されてる感じが読んでて画が頭に浮かびますw
- 266 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 02:38:39.76 0
- 真夜中のリゾナント
- 267 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 02:53:42.85 0
- お話を投下します。
【注意】
@おんめーだれだよ…って、オリジナルキャラクターが出ます。
A長いので今宵、前半の9レスを投下します。
- 268 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 02:54:55.66 0
-
「愛ちゃん最近溜まっとーと?」
店の営業も終え、みんなでまったりと売れ残りをつついていたら、
れいながそう、口を開いた。ざわめく一同。
なぜか誰よりも慌てふためくガキさん。
「ち、違う!そういう意味じゃなかよ?ほら、最近開放しに行ってないっちゃろ?」
「意味わかんない!」
そう言い始めたジュンジュンを始めとする最近入ったメンバーに説明するれいな。
なんていうか、結構あーしの能力は生きる上で邪魔になる。
だから無意識に、また意識的に能力の制限を行っている。
言わば、高圧力で噴き出そうとする間歇泉に無理やり蓋をしている状態だ。
それは見えない、感じない形でストレスになってるようで
時たま全て発散しないといけなくなる。能力のほぼ全開放という形で。
結構これが厄介な代物で、知りたくないもんまで流れ込むようになってまうから
とても人のいるところで行使することじゃない
こころ酔い、なんてわからんよなー。
とにかくどっか違うとこで一日がかりでしないといけない。
一年に一回くらいすれば十分やけど、ほやの、最近はしてなかった。
「あーでも、今はだいじょぶよ。」
今は繁盛期でとてもあーしが抜けて回せるもんじゃない。
- 269 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 02:55:39.89 0
-
「アイタタタタ…」
なんかお腹痛くなってきた。と、さゆ。どうしたん、大丈夫け?
そしたらさゆは隣の絵里に肘鉄をする。
「あ、あ、なんか絵里ちゃんも痛くなってちゃったなー」
その声を皮切りに皆お腹を抱え始めた。
どうしよどうしよ?食中毒?
「こんなに痛かったら明日は休まないと〜」
そう言って携帯で明日の予定の変更の連絡を各々が始めた。
あーしもそうや、保健所に電話せんと!自己申告やよ!えと…電話帳…
「なんか治るマシタ」
電話の後口々に言うメンバー。
あかんって、食中毒や、新種やって。一度治っといて後でドンや!
そう焦ってたら、ガキさんが深くため息をついた
「あんたたち、芝居がクサい」
私たちでお店はなんとかするから、愛ちゃんは自分のこと考えて、
そう言われて、やっと気付く。あーしを休ませるために、ウソを?
「お土産きたいしてまーす」
キラキラ輝くメンバーの表情。もう否定の言葉は浮かばなかった。
- 270 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 02:56:26.92 0
-
能力のほとんど全てを開放すると、時計の長針が30度動いていた
軽い、体が軽い。重い鎖かたびらを脱ぎ捨てたような、そんな心地。
ここはどこだろうか。
適当に選んだ電車で突き進み、瞬間移動を繰り返し何時間もかけてここまで来た
人に会わないことはこの状態になる第一条件だ。
小さな瞬間移動を繰り返してついた、山の奥地の切り株に腰掛けている。
後ろの茂みがガサガサと揺れ始めた。
なにかの動物かな?パンダやったら面白いな…面白くはないわな…
今の状態なら何が来てもすぐ逃げられるけどの。
『ここまで来たら…誰にも見つからない』
不意に流れこんできた声にパニックになりかける。そんな、こんなところに、人?
落ち着いて感応を止めようとしたのに、
次に聞こえてきた声にその行為を中断せずにはいれなくなった。
『わたしは死ぬ…』
慌てて茂みに駆け寄り、覗くと「きゃあ」と声をあげて一人の少女がこちらを向いていた。
『な、なに?』『女の人?』『ど、どうしてこんなとこに?』
あーしは流れ込む声に少し不快な気分になる。
あれだけ時間をかけて開けた、簡単には閉めれない。
- 271 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 02:57:47.66 0
-
少女はそんなあーしの顔を少し怯えながら見つめた
『なんか睨まれてる』『でも、綺麗、とても』
「あ、あの、ここいらへんの人、かな?」
あーし、迷子になってもうて…
心の声はその言い訳に少々疑問を感じたようだが、
表面上少女は同情してくれ、自身の村に案内してくれることになった
村なんてあるんやな、こんなとこに。ま、あーしも人の事は言えんがの
「あ、でも、今大事な風習の時期なので…」
たいしたお構いも、できないと思います。あまり長居も…
【風習】その言葉を発した時、少女の声は大きくなった。心の声の方だ。
帰りたくない まだ、考えたいことがあるのに
そう聞こえてきて、あーしは弱る。
どうしたらええんやろ。聞こえすぎるのはこういう時に困る。
そのくせ後先考えず飛び出したから、このような事態になったのだ。
死ぬ気?なんて聞けるわけないし、明確に助けを求める声だったわけじゃない
とりあえず、もう少しこの子と一緒にいよう
「あーし、高橋愛。あ、えと…」
「黒田麗奈です。」
- 272 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 02:59:10.17 0
-
『麗奈がかわいいねーちゃん連れてるぞ』『うわーすげえな』『しちーガールじゃね?』
『今日…か。』『かわいいそうにね…』『どうしようもない』
村に入って数人の村人の心と接したが、得られた情報は少ない
客人は珍しい。今日、麗奈は13歳の誕生日…だから何かがある。
「とりあえず、うちに来てください」
促されて質素な家に通された。
「麗奈!あんたどこ…お客さん?」
麗奈の両親が玄関に飛び出してきて、あーしを見回した。
『一体、誰なんだ』『どうしてこんな日に』
「この人、迷子になっちゃったらしくて…父さん、街まで送ってあげて。」
『…なんで今日』『早く追い出さないと』
明確に拒絶されたわけではないが、歓迎はされていない。
両親の心には、なにかはわからないがドス黒いものが渦巻いていた。
それを意識しないようにしているようだ。それは麗奈も同様に。
心の根底は揺らめくのに、表面はそれを意識しまいと必死になっている。
普段なら覗こうとはしないのだ
だが今日は違う。聞こえてしまうのだ、知ってしまったのだ
黒田麗奈は、生まれる以前から、生け贄に選ばれていた
そして、その役目を果たし、今日人生に幕を下ろす
- 273 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 02:59:48.93 0
-
この力を持ってみて初めてわかる。
人間はいくつもの鎖に縛られている。
むしろ、その鎖がないと生きていけない。縛られていたいとさえ思っている。
この村を縛る鎖、それは風習。
生け贄と呼ばれる名のそれで、一体感を得る。形式的にも、実質的にも。
まだ日本にこのような儀式をしているところがあったのか。
自分のような人間もいるのだ、世の常識なんてないに等しい。
だから驚きというより、悲しみが勝った。
『今日、私は死ぬ。この村の為に私は死ぬ』
なんて悲しい決意だろうか。いや、それを決意と呼んで良いのか。
生きることを否定された私たちと死ぬことを望まれるこの子。
似ている気がした。助けたいと、心から思う。
でも、どうしたらいいかわからない。
ガキさんならどうした?れいなは?みんなは?
この子を助ける力はある。
手を掴んで、光になって、あの喫茶店に飛んで行けばいい。
でも…それで良いの?それが最善策?
- 274 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 03:00:49.86 0
-
「…愛さん」
帰られる前にお話させて下さい。両親は麗奈のその言葉に動揺する。
すこしだけやで、そう言って彼女の部屋に入った。
「わかってるんですよね?私がこれからどうなるか…」
どうも、顔に出やすい性格だとは思っていたがまさかそれまでバレていたとは…
「逃げたくないんですか?」
「…ダメです。私が儀式に成功すれば、もうあと60年は誰も犠牲にならない
両親も…この村で生きることができる…」
麗奈は力なく、でも真剣な目で笑った。
「わかってます、こんなの間違ってるって。」
でも、抜け出せない。その中で出来ることはこれだけなんです。
泣かないで下さい。そう言われて慌てる。
なんやの、涙。あかんて。この子が、この子がホントは泣きたいのに。
「代わりに泣いて下さってるんですね…」
ありがとう、そう言われて思わず麗奈を抱きしめた。
電気でも流れるように、夥しい量の感情が流れ込む。
あーしはその全てを受け止めた。悲しみも恐怖も全部全部。
- 275 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 03:02:04.25 0
-
「また、良かったら来て下さいね」
運転席の麗奈の父は、囁くように、心無くそう言った。
ああ、むしゃくしゃする。この親父をぶん殴ってやりたい。娘一人助けられないのか
それをしないのは、彼の心の声もまた悲しみに満ち溢れているから
車から降りると、見たことも無い駅だった。
彼はあーしが帰るのを見届けようとしたが、それを断る
「一秒でも長く、娘さんといてあげて下さい」
そう言うと、彼は強く拳を握り、車に乗り込んだ。
なんだか酷く虚しい気持ちになって、無人の駅を見回す。
そこに飾られた、一枚の仮面。神の遣いを模したとされる、それ。
彼が滝つぼに落ちた生け贄を神の御許に運ぶそうだ。
60年に一人、滝つぼに女を求める神とは、どのようなものか。
家族とは、親とはなんなのだろう。
親。自分には親はない。あの手紙によれば、組織から逃がす為に命をかけてくれた。
それなのに記憶を探っても、何の思い出も出てこない。
いないことに悲しみはないが、記憶の無いことに悲しみを覚える日はある
家族。その言葉を考えた時に浮かぶのは、リゾナンターの面々。
一人ひとりの顔を思い返して、れいなのところにきた時、先ほどの麗奈の顔とだぶった。
- 276 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 03:02:58.87 0
-
そうか、あの子は、初めて逢った時のれいなに似ている。
もちろん、あの子はれいなみたいに攻撃的じゃない。
でも、目に見えない苦しみを抱えながら、それをごまかして生きていた。
悲しみを表現して泣き叫ぶこともせず、表面では普通を装って生きる。
自分の体に溢れた、彼女の本心。
死にたくない。
酷く不快な気持ちになって目を瞑った。
心の中が凝り固まって、息苦しい。
自分を乗せる電車はすぐそこまで迫ってきた。
あれに乗れば、いや、あるいは乗らずとも自分は帰れる。あったかいみんなのもとへ。
「あーし、何やってんのやろ…ほーやん、今日はストレス発散にきたんやで」
- 277 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 03:05:50.37 0
-
以上>>268-276
これにて前半です。
後半も近々投下させて頂きます。
- 278 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 03:07:03.12 0
- どわぁぁぁぁぁぁ
激しく待ってるから
- 279 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 04:33:48.41 0
- ほ
- 280 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 05:18:35.70 0
- wktk
- 281 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 07:13:11.25 0
- おはようのホゼナント
>>277さんの続きwktk
- 282 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 08:11:59.21 O
- おはようリゾナンター!
- 283 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 08:29:38.14 0
- うわぁぁぁ 乙です これは新しい
話のシリアス具合に似合わず麗奈ちゃんの服装が
どうしてもどピンク&ショーパンでイメージされるw
- 284 :DDダイナマイト ◆DDD.J.l5nQ :2008/07/11(金) 08:38:06.91 O
- ここそういうスレになってたんだw
- 285 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 09:49:19.75 O
- 続きが気になるぅぅぅ
- 286 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 11:15:17.70 0
- ホゼナント
- 287 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 12:16:43.88 0
- うええおええ丼1丁
- 288 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 12:17:30.82 0
- 愛さんの内面が描かれるのが楽しみです
閉鎖的な村って舞台設定がうまいなあと思います
そこに舞台を持っていくための話も
- 289 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 12:54:42.70 0
- うなぎやに入ってマラカイトグリーンと叫ぶ
- 290 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 13:01:02.40 0
- やっと書けたー・・・けど他の方の投稿がしばらく多そうだからもう少し推敲してみようかな
- 291 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 14:42:27.41 O
- そんなこと言わずに投下しちゃってよw
- 292 :名無し募集中。。。::2008/07/11(金) 15:59:05.32 0
- 昼寝前のほぜなんとzzz
- 293 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 16:07:38.94 0
- >>277です
みなさんありがとうございます。
近々とか書きましたが、近々っていつよ!?って感じですね…
結構先になりそうですスミマセン
どっちにしろホゼナントタイムを狙いますから
>>290様私のことはお気になさらないで下さい。楽しみにまってます!
- 294 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 16:50:47.40 0
- ttp://musume-rakuen.sakura.ne.jp/pallet05/imgdir/4221.jpg
- 295 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 17:47:20.18 0
- >>291>>293
ありがとうございます
では仕事中の合間をぬってこっそりw
以前に[Darkness](7)338 『未来はこの手の中に ―SIDE Darkness―』を書いた者です
続編として あまりにも素敵な[Darkness](9)803(圭織が未来を救う話)を他の作者様に書いていただいたわけですが
今度はこちらがその作品に逆リゾナントをさせていただきました
長すぎてカットしたとあとがきで書かれていたシーンを 勝手に考えて書いたものになっています
おそらく元の作者様の書いておられたものとは全く違ったものになっているかとは思いますが・・・
それ故 せめてもの配慮に圭織の視点ではなく愛佳の視点から書いてあります
[Gaki-Aika](3)188 『幽霊ビルと“未来”』
[Mitsui] (5)479 『未来はこの手の中に』
[Darkness] (7)338 『未来はこの手の中に ―SIDE Darkness―』
[Darkness] (9)803 『タイトル未定』
・・・とリンクする内容になっていますので 既読の方は思い出しながら読んでいただけるとありがたいです
11レス分あるのですが・・・規制はどうなんでしょうね
万一途中で引っかかったらしたらばヘルプを願いたく思います
- 296 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 17:47:55.88 0
- ――― ・・・・・・!?
喫茶「リゾナント」のテーブル席で、いつものようにノートを広げて勉強していた光井愛佳は、たった今頭の中をよぎったビジョンに驚いて、ペンを走らせていた手を止めた。
手元の注意がおろそかになったことで、ノートには Pn= と書かれた後、不規則な線が引かれる。
だが、愛佳の意識はもう数式からは離れていた。
そんなことに構っている場合ではなかったから。
「今の人は・・・」
思わず口に出して呟くと、カウンター席の向こうで座って本を読んでいた高橋愛が顔を上げた。
「んー?何か“視え”たん?」
「あ、はい。あの・・・」
田中れいなが休みを取って遠出しており、そのこともあって今日は臨時休業している喫茶「リゾナント」。
入り口のドアにはその旨を書いた紙が貼られ、「CLOSED」の札が掛けられている。
ふとそのドアが開き、来客を知らせるベルが静かな店内に鳴り響く。
今日も朝から降っている雨が地面を叩く音が、それに続いて聞こえてくる。
それらの音をバックに立っているのは一人の長身の女性。
自分と同じく“未来”を“視る”ことのできる、黒く深い瞳が印象的な・・・
愛佳が、つい今しがた“視た”そのビジョンを愛に伝えようとしたとき、ドアの外に気配がした。
- 297 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 17:48:40.64 0
-
静かに開かれるドア。
店内に響くベルの音。
雨音。
そして・・・
愛佳がほんの少し前に“視た”光景が、今また目の前にあった。
かつて、例の幽霊ビルの件のときに出遭った長身の予知能力者が、雨のそぼ降る街並みを背景にして悠然と立っているその光景が。
「今日、お店お休みみたいだけどちょっといいかしら?」
意外に礼儀正しく、でも限りなく無愛想にそう訊ねる長身の女に対し、愛はやや警戒と困惑の表情を浮かべながらも頷いた。
ガードされているらしいその心は覗けなかったが、敵意や害意は不思議と全く感じられなかったから。
「ありがと。・・・心配しなくていいわよ。今日は組織とは関わりなく個人的な用事で来ただけだから」
「個人的な用事?」
「そ。ちょっとこの子と話がしたくて」
静かにドアを閉め、傘立てに傘を入れた女は、テーブル席で固まったままの愛佳に視線を移した。
愛佳の肩がビクッと動いたのを見て、女はほんの微かに表情を動かした。
「心配しなくていいって言ってるのに。・・・同席させてもらってもいい?」
「あ・・・・・・はい、どうぞ」
頷きを返し、愛佳は慌ててテーブルの上に広げられた教科書やノートを片付け始める。
その向かい側の席に歩み寄った女は、愛佳の手でテーブルの端に移動された教科書に目を向けながら呟くように言った。
- 298 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 17:49:09.44 0
-
「確率・・・か。箱の中に入ってる赤い玉6個と白い玉3個を取り出すとき・・・とかいうやつでしょ?バカバカしい問題よね。意味があるとは思えない」
「はい、まあ・・・そうですね」
向かいの席に着く女に対し、愛佳は曖昧に頷いた。
一般的な意味で言っているのか、予知能力者だからこその言葉なのか・・・それとも何かそれ以上の意味があるのか分からなかったから。
「何か飲みますか?」
気付くと、すぐ隣に愛が立っていて愛佳は驚いた。
「そんなに慌てて飛んでこなくても大丈夫って言ってるのに。この子がびっくりしてるわよ」
表情一つ変えずにそう言う女に対し、愛も真顔で答える。
「カウンターまわってくるの結構面倒なんで。日頃はできんからこんなときくらいと思って」
(この人らどっちもどこまで本気か分からへんから心臓に悪いわ・・・)
緊張感で既に疲労してきている愛佳は、一人胸の中でそう呟いた。
「じゃブレンドコーヒーを1つ。・・・あ、この子の分も。もう随分冷めてるみたいだから」
愛佳の前に置かれた飲みかけのカップを示しながら、女はそう言ってメニューを置く。
「承知しました」
愛は再び瞬間移動でカウンターの向こうに戻り、コーヒーを淹れる準備を始めた。
- 299 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 17:49:38.31 0
-
しばらく気詰まりな沈黙の中、サイフォンの音だけが店内に響く。
(高橋さん、間違えて普段も注文のとき瞬間移動しはらへんか心配やな・・・)
(話てなんやろ・・・やっぱり予知能力に関することやろか)
(あーコーヒーのええ匂いがしてきた)
耐え切れない緊張感の中、愛佳の思考は視線とともに色んなところに飛んだ。
それとは対照的に、向かいに座る女の視線は一点を・・・どこか遠い世界の映像を見ているかのように動かない。
(なんかまたどっか遠いとこ見てはる感じやなあ・・・“未来”やろか)
思わずまじまじとその目を見ていると、遠くに行っていた視線が愛佳の顔に焦点を結んだ。
「光井さん・・・って言ったわよね。あなた・・・最近何か大きな予知を“視た”?同じ予知を繰り返して・・・とか」
突然目が合ったことにうろたえていた愛佳は、質問の意味が一瞬分からずに首を傾げた。
「大きな予知?繰り返して?それはどういう・・・」
「見てないか。まあそうでしょうね。いえ、だったらいいんだけど。やっぱりあたしだけの問題ってわけだ」
最後は呟くようにして言うと、女は再び口をつぐんだ。
「お待たせしました」
ちょうどそこに、湯気と香りの立ち上るカップを載せたトレイを持った愛がやってきた。
今回ばかりは普通にカウンターを迂回して。
- 300 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 17:50:07.90 0
-
「いい香りね。あ、ちなみにあたしの名前も“カオリ”って言うの。土二つの圭に織る」
「圭織さん・・・ですか」
「“羽織り”みたいに発音しないでほしいの。そうね“タオル”を言うときの発音で」
「タ・・・タオル?えっと、カオリさん・・・でええんでしょうか?」
本当にどこまで本気か分からないと思いながら、愛佳はその名を呼んだ。
「ま、そんな感じ。ところで・・・本題に入らせてもらいたいんだけど」
「はい」
「いつだったか、あたしがあなたのこと殺そうとしたの覚えてる?」
「・・・そら・・・まあ」
覚えているかも何もないものだ。
いったん言葉を切って無表情にカップを口に運ぶ圭織を見ていると、あのときの恐怖が改めてよみがえってくる。
瓦礫の下敷きになり、血まみれになって息絶えている自分のビジョン。
それは結局自身の予知能力によるものではなかったが、あんな映像はできれば二度と見たくはない。
「あなたはあのとき何を思って里沙を助けたの?助ければ自分が死ぬと分かっていて」
「何をって言われましても・・・」
- 301 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 17:50:35.97 0
-
あのとき――
愛佳は崩れ落ちる瓦礫の下敷きになりかけた新垣里沙を突き飛ばし、その身代わりとなった。
“予知”の中で“視た”ように、それが自分の死を意味することを知りながら。
無我夢中だったとはいえ、我ながらあんなことがよくできたと思う。
・・・でも、同じ場面に行き逢ったならば自分はきっと同じ行動を取るに違いない。
そんな思いもあった。
「何ていうか・・・『私しか今の新垣さんを助けられる人はおらん』って思ったんです」
愛佳は、あのときのことを思い出しながらゆっくりと語った。
少し離れた席に座って話を聞いている愛がかつて自分に言ってくれた、「明日を知ってるのはあなただけ。自分で変えるんだよ」という言葉。
その言葉について自分なりに色々と考えてみたこと。
そして自分のこのチカラで――ずっと忌むべきものでしかなかったこのチカラで、誰かを救えるかもしれないと思えるようになったこと。
でも、もしかしたらそれは未来を好き勝手に弄ぶ行為であり、そんなことが本当に許されるのかと懊悩したこと。
「そやけど・・・とにかくここで新垣さんを助けな、一生後悔しながら生きていかなあかん・・・って思たんです」
「自分の命を犠牲にしても?自分が死んじゃったら後悔も何もないじゃない」
時折カップに口を付けながらしばらく黙って話を聞いていた圭織が口を挟む。
- 302 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 17:51:05.10 0
-
「確かにそうですけど・・・でもここで“未来”を変えられへんかったら自分も変えられへんと思たんです」
「つまり、“変われなかった自分”が“変えられなかった未来”の中を生きていても意味がない・・・と?」
「それは自分でもよう分かりませんけど・・・とにかく最初に言うたように『私しか今の新垣さんを助けられる人はおらん』って思たのが全てなんかもしれません」
「『私しかいない』・・・か。なるほどね。神にも変えられない“未来”を自分だけが変えられる・・・か」
ひとり言のようにそう呟く圭織に、愛佳は「それは違う」と言いかけた。
「未来をも自由に選べるこの能力は神そのもの」
あのとき、圭織が未来予知の能力をそんな風に表現していたのを思い出す。
自分たちは決して神なんかではない。
ましてや神を超える存在なんかではなおさらない。
一人の人間に過ぎない。
だが、口を開きかけた愛佳はその言葉を飲み込んだ。
言っても無駄だと思ったわけではない。
一瞬、頭の中を“未来”のビジョンがよぎったからだった。
薄暗く、広々としたどこかの廃墟の中。
天井から射し込む一条の光の下、椅子に座り、机に向かって作業をしている圭織。
色鉛筆を持ち、机の上の画用紙に絵を描く圭織のその表情は、穏やかで・・・美しい・・・
「あなたはあのとき言ったわね」
圭織の声で愛佳は我に返る。
- 303 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 17:51:33.29 0
-
「『自分の意志で選んだと思った“未来”も、元々選ぶようにできているだけの話だ』って」
「はい、言いました。私はそう思います。今でも」
愛佳はキッパリと頷き、言った。
“未来”を“視た”自分が行動することにきっと意味があるのだと。
その意味で、自分たちは未来に「選ばれた人間」であると思うと。
「なるほど。・・・で、選ばれた人間たるあなたは“未来”を変えるためならば、自分が犠牲になると分かっていてもその行動を取るわけだ」
「それは・・・・・・はい、それが必要なことならば」
「低レベルな思考ね、相変わらず」
突然立ち上がった圭織を、愛佳は驚いて見上げた。
「“未来”のために自分を犠牲にするなんて浅慮もいいところ。あなたの・・・・・・まあいいわ。ごちそうさま。おいくらかしら?」
何かを言いかけてやめた圭織は、愛の方に目をやると何事もなかったかのようにそう訊ねた。
「いえ、お代はええです。今日は休みやし」
「・・・そ。じゃあお言葉に甘えようかしら。おいしいコーヒーだったわ。ごちそうさま」
そう言うと、圭織はもう愛佳の方を見ようともせずに出口に向かった。
- 304 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 18:02:35.77 0
- カランカラ〜ン
ドアが開き、その上部に取り付けられたベルが音を立てる。
「さようなら。もう二度と出会う事もないでしょう」
振り返りもせずにそう言うと、圭織は小降りになった雨の中へ足を踏み出した。
背筋を伸ばした独特の姿勢で、手には畳んだままの傘を持って。
ドアが閉まり、喫茶「リゾナント」には再び静寂が訪れた。
テーブルの上に残されたカップをぼんやりと眺めながら、愛佳は考えていた。
唐突に現れ、唐突に去っていったあの長身の予知能力者が残した言葉の意味を。
そして先ほど一瞬見えたビジョンの意味を。
「高橋さん・・・あの人の・・・圭織さんの心の声は聞こえました?」
カップを片付けに来た愛にそう訊ねてみたが、愛はゆっくりと首を横に振った。
「聞こえんかった。やけど・・・あのとき言うのをやめた言葉は分かる気がする。多分あっしが言いたかったことと同じやから」
「高橋さんと・・・?・・・・・・そうですか。なんか私にも・・・分かった気がします」
自分の前に置かれたカップをようやく口に運びながら、愛佳はそう呟いた。
- 305 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 18:03:19.37 0
-
圭織は・・・もしかするとこう言いたかったのではないだろうか。
あなたの犠牲の上に築かれた“未来”を、残された者が喜ぶと思うのか。
それはただの自己満足に過ぎない。
本当に自分が未来に選ばれた人間だと思うのならば、安易な自己犠牲の道を選ぶべきではない・・・と。
だがそれと同時に、愛佳には他ならぬ圭織が今からその道を往こうとしているように思えてならなかった。
去り際の圭織の言葉と、その決然とした後ろ姿がそれを何よりも物語っているように。
「神にも変えられない“未来”を自分だけが変えられる・・・」
呟くように圭織がそう言った際に浮かんだあのビジョン。
あの“未来”の映像が意味するのは・・・・・・
表情らしい表情を浮かべているのを見たことがない圭織が、あのビジョンの中では優しく穏やかに微笑んでいた。
その様は息を飲むほどに美しく、射し込む光と相まって神々しさすら感じさせたが、同時に掻き消えそうな儚さも併せ持っていた。
「何か大きな予知を繰り返して“視て”いるか」
先ほど、圭織は愛佳にそう訊ねた。
おそらく、圭織には何らかの大きな予知が繰り返し“視え”ているのだろう。
もしかすると一人で抱え込むには大きすぎる“未来”のビジョンが。
だから圭織は同じ力を持つ自分のところへやってきた。
苦しみを共有できるかもしれないと考えたのか、他に理由があるのかは分からない。
とにかく、圭織は何かを求めて自分に会いに来たのだ。
そして、あの会話の中で自らの往くべき道を決めたのではないだろうか。
たった一人でその道を往くことを。
- 306 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 18:04:01.92 0
-
愛佳は思わず立ち上がり、入り口のドアへと走った。
カランカランカラ〜ン
ドアの勢いに合わせ、ベルが激しく打ち鳴らされる。
開け放たれたドアの向こうには雨に濡れた街並みが見える。
だが、その中に圭織の姿はもうなかった。
ただ・・・空を覆っていた雲にようやくできた切れ間から射し込む日の光が、先ほど“視た”ビジョンの中の圭織を思わせた。
満足そうな・・・安らかな微笑みを浮かべた圭織の姿を。
- 307 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 18:07:08.60 0
- 作者さんのお言葉:
以上です
この後どなたかが直に貼っていただけるならば>>296-306ということになります
申し訳ありません
あとがき(言い訳)をまた近いうちに書きたいと思います
さるさんになられたとのことでアク禁スレより途中から代理投下致しました
- 308 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 19:13:39.48 O
- >>307
乙でした
家に帰ってからじっくり読みたいと思います
代理の人もナイスリリーフw
- 309 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 19:27:49.89 0
- >>307
更新、転載乙でした
まず『未来はこの手の中に 』という作品があって、それにリゾナントして
[Darkness](9)803が書かれ、再リゾナントされてこの作品が生まれ、
それを代理投稿された方がいてw
このスレの魅力が如実に顕れた作品だと思います
- 310 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 19:42:21.67 0
- >>307
上手いなあ・・・
正直前作読んでないので全体像は掴めてないんですけど
予知能力者同士の会話ってこんな感じなんだろうね
なんかリアリティあった
- 311 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 19:45:42.52 0
- 愛ちゃんが戦闘態勢とってるのがいいね
瞬間移動で圭織を牽制してるとこが
- 312 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 20:12:01.44 0
- >>307
作者さん、代理の方、お疲れさまでした
[Darkness](9)803の作者さんがカットしたというこのシーンを『未来はこの手の中に』の作者さんの筆で読めて嬉しいです
『幽霊ビルと“未来”』から[Darkness](9)803までの圭織の物語がひとつの作品として繋がった、という気がします
すばらしいリゾナント作品をありがとうございました
- 313 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 20:54:17.17 O
- ほぜなんと
- 314 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 20:56:38.90 0
- ないやいですが23時くらいに1本投下します
ないやいの本編の[Koha-Mitsu](3)888 『守るべきモノ 前編−無垢な温もり−』以降の作品及び
現行スレ>>118-126及び>>244-250の作品を斜め読みしながらマターリお待ちください
- 315 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 21:16:02.04 0
- >>314
楽しみにしてます
ちょっと皆さんの意見聞きたいんですけど
軍人って若干怪我してるほうが雰囲気出るかな?
- 316 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 21:35:58.80 0
- >>315
イラスト?文章?
それによっても答えが変わってくると思うよ
イラストなら怪我ありの方が個人的にはインパクトあっていいかもって思う
文章なら書き方によるかな
- 317 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 21:39:32.78 0
- 皆さん感想をありがとうございました
何より素早い転載をしていただいた「代理の御方」に心から感謝いたします
全レスさせてください
>>308
じっくり読むほどのものでもないですが 「圭織」の話のサイドストーリーだと思ってお読みください
>>309
[Darkness](9)803を書かれた作者さんはそもそも「第1話」で愛佳の能力設定をされた方ですので
もうその時点からリゾナントは始まっていたわけで 本当にこのスレはすごいなと心から思います
>>310
前作といいますと[Darkness](9)803のことでしょうか?
ダークネスサイドの話に抵抗があったとしても・・・読んでいただきたいですねえこれは
>>311
牽制してるのか素なのかは実のところ作者にも分かりませんw
>>312
あの圭織の話が素晴らしすぎたのでかなり躊躇いがあったのですが そう言っていただけると嬉しいです
こちらこそありがとうございます
>>314
ないやいさん楽しみにしています
なんとかお邪魔にならない時間帯に上げられてよかったです
- 318 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 21:40:49.65 0
- >>316
イラストですよ
- 319 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 21:53:56.06 0
- イラストかー
怪我がどんなのかにもよるけど個人的な好みは眼帯してるとか包帯巻いてるとか
切れた服の隙間からうっすら血が滲んでるとかだったりw
- 320 :サボリンちゃんヽ( ▼∀▼)ノ:2008/07/11(金) 22:34:44.80 0
- サボリン保全中。。。
- 321 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 22:40:27.91 0
- ミイラ男みたいなの想像しちゃったごめんw
- 322 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 22:51:12.85 0
- >>296-306のあとがき書きましたのでおヒマな方はよろしければ・・・
ところで軍人のイラストってどういうあれなんですかね?
今までに出てきましたっけ?
軍人ぽいのって「the revenger」の吉澤さんくらいしか思いつきませんが
- 323 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 23:00:19.12 0
- それでは更新します注意事項は下記の通り
・短め(前編その3
・こんなのさゆみじゃないやい
・これからどうなるんだろう?(鬱的な意味で
以上ですしばしお付き合いください
以上ですそれではしばしお付き合いください
- 324 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 23:01:30.57 0
- 早く、1秒でも早く。
絵里から連絡を受けたさゆみは、大学からタクシーで病院へと直行する。
病院に着く頃には、タクシーの料金計に表示された金額は4000円を超えていた。
タクシーに乗ることは滅多にないが、まさか自分がドラマのようにお釣りはいいですと言うことになるなんて。
お世辞にも速そうには見えないフォームで、さゆみは走り出す。
正面玄関を駆け抜け、エレベーター前に行くも。
なかなか来る気配がないことに苛立ったさゆみは、勢いよく階段を駆け上がっていく。
ジュンジュンとリンリンが入院している階と同じ階の突き当たりの個室に居る、と。
絵里からのメールには書かれていた。
心臓がバクバク音を立てているのが内耳に聞こえて、うるさい。
あぁ、何で自分の足はもっと思うように動いてくれないのだろう。
悔しくて、情けなくて。
それでも必死に駆け上がり、里沙の居る個室を目指して走る。
看護師さんの走らないでくださいという声が聞こえても、減速なんて出来ない。
走らずにいられるわけがなかった、仲間が倒れたというのに。
突き当たりの部屋の前に着いたさゆみは、勢いよくドアを開けた。
「ガキさん!」
「ちょ、さゆ、静かにして」
絵里の普段滅多に聞くことが出来ない低く鋭い声に、さゆみは慌てて口を閉じる。
呼吸を整えながら、さゆみは里沙の寝ているベッドに視線を移した。
意識が戻ったのか、ジュンジュンとリンリンが泣きそうな顔でベッドの側に立っている。
それとは逆の方に、絵里が唇を噛みしめながら立っていた。
悔しそうな顔のまま、絵里が口を開く。
- 325 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 23:02:25.71 0
-
「ガキさん、ここ数日まともに寝てないしご飯も殆ど食べてなかったみたい。
看護師さんから聞いたんだけど、ガキさん夕方からさゆや絵里が来る時間まで
ずっと付き添ってたんだって…それを3日間も。
絵里達に見つからないように朝早めの時間に帰って、そこから会社行って、
また夕方になったら来て。…本当、ガキさんって馬鹿だよね」
「絵里、そんなこと言っちゃ」
「言うよ、だって絵里、今すごく怒ってる。
絵里達ってそんなに頼りないわけ?
1人でこんな無茶して、挙げ句倒れて。
何でこんな風になる前に一言何か言うってことをしてくれないわけ」
「絵里、もういいから。
分かったから、落ち着こう、ね?」
さゆみは、そっと絵里の隣に立って絵里の肩をしっかりと抱き寄せる。
触れた肩から伝わってくる、絵里の悔しさと悲しさにさゆみも唇を噛みしめた。
絵里の肩を抱きながら、さゆみは視線を里沙の顔へと移す。
目元にうっすらと出来た隈、青白い顔、血の気の引いた唇。
絵里に落ち着けと言ったのは自分なのに、悔しくて悲しくて胸がキリキリと痛む。
どうしてこんな風になるまで、何も言ってくれなかったのか。
絵里にしてもさゆみにしても、泊まり込んで付き添いしようと思えばすることが出来る環境なのに。
それを知ってるくせに、何故何も言わずに1人で抱え込んだのだろう。
目の前の里沙は、起きた時にその問いに答えてくれるのだろうか。
―――答える気がなくても、聞くつもりだった。
- 326 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 23:03:45.65 0
- 重苦しい沈黙が流れる室内に、1人また1人と連絡を受けたリゾナンター達が駆けつける。
制服姿の小春と愛佳、リゾナントを閉めて駆けつけたのであろう、ウエイター姿の愛とれいな。
数日ぶりに皆揃ったというのに。
里沙だけが1人、深い眠りの中にいた。
「昨日帰る時にタクシーに乗って帰ってたから気づかなかったけど、
あの後、ガキさんひょっとしたら病院に戻ったのかもしれん」
「で、今朝は絵里に勘づかれないようにわざわざ、
一旦病院を後にしてから合流したってわけね。
全く、里沙ちゃんの考えてることは分からんわ」
「愛佳には、何で新垣さんが1人でそこまでするのか分からへん。
意識が戻らんって言うても、外傷はない状態なんやから
夜の付き添い時は別に寝ててもええんちゃうって思う。
新垣さんのせいで2人が大怪我したって言うなら、眠れへん気持ちも分かるけど」
愛佳のその言葉に、れいなの心が微かに震えたのが分かる。
れいな、絵里、そしてさゆみ。
ジュンジュンとリンリン、小春と愛佳のように3人は共鳴の相性が良い者同士。
他の人には分からないくらいの心の震えも、絵里とさゆみには伝わった。
今の愛佳の言葉の何に反応したのか分からないが、れいなの心はずっと微かに震え続けている。
多分、誰にも聞かせたくないのだろう。
一生懸命、れいなが自分の心の動揺を抑えようとしているのが手に取るように分かって。
さゆみは、絵里とれいなの手を取ってドアの方に歩き出す、心の中で3人にしか分からない声をかけながら。
- 327 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 23:05:11.61 0
- (れーな、絵里、悪いけどちょっと付き合って)
(ちょ、さゆ、いきなり何?)
(いいから、れーなもいいよね?っていうか嫌でも引っ張っていくけど)
(…よかよ、さゆ。絵里もさゆも、聞こえたっちゃろ、れーなの心の声)
愛の、何処に行くのという問いかけに。
ちょっと絵里と、自分の頭を冷やしに行ってきますとだけ答えて。
さゆみは2人を連れて、とりあえず屋上の方に向かう。
誰もいないことを祈りながら、重い足取りで3人は階段を上っていった。
* * *
運よく、屋上には誰もいなかった。
誰か来ても話が聞こえないように、さゆみは絵里とれいなをそのまま隅の方にと連れて行く。
結界を張ればいいのかもしれないが、それだと他のリゾナンター達に何かあったのかと思われてしまう。
ここでいいか、とさゆみは足を止め。
2人もまた、足を止める。
さゆみが駆けつけた時には降り注いでいた日差しは、灰色の雲に遮られて届かない。
れいなの方を振り返って、さゆみは声をかける。
「れーな、さっき、みっつぃーの言葉に反応してたけど。
何でそうなったのか聞かせてくれる?」
「それ、絵里も不思議だった。
別にみっつぃー、変なこと言ってないと思うんだけど」
- 328 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 23:06:29.35 0
- 2人の言葉に、れいなは一瞬躊躇ったような表情を見せる。
おそらく、口に出していいのかどうか判断に困るようなことなのだろう。
れいなが口を開くのを、絵里とさゆみは黙って待つ。
迷った末に言うことに決めたのか、れいなは表情を消して口を開いた。
「確証があることじゃないから、絵里とさゆだけに話す。
ガキさん…うちらに何か隠してることがあるかもしれんって思うと。
昨日、ガキさんリゾナントに鍵を忘れて出ていったっちゃ。
それに気付いたけん、れーな、ガキさんに鍵を届けるために追いかけたと。
そん時、ガキさん、誰かと電話で話してたんだけど…」
言葉を途中で切り、れいなは再び考え込む。
普段、思ったことはズバズバと言うれいながここまで躊躇うことは滅多にない。
そのことに、さゆみと絵里は重大な何かをれいなが言おうとしてるのだと思った。
黙っていても仕方ないと思ったのか、れいなは口を開く。
「そん時のガキさん、普通じゃなかった。
仕事の話だってガキさん言ってたけど、あんな怒り方普通しないって思うくらい。
それに、ちょっと気にかかる言葉も聞こえたと。
やりすぎだの、次の調査だの…気にする程の言葉でもないかもしれんけど、
何か引っかかると、れーなの勘がずっとおかしいおかしいってれーなに言ってると。
意識が戻らないことを除いては無傷な2人の付き添いを寝ずにしてたのも
すごい引っかかる、あれじゃまるで、あの2人があんな風に傷ついたのがガキさんのせいに思えてしまうと」
- 329 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 23:07:35.40 0
-
「…れーなの話とガキさんの行動を考えると、確かにちょっとおかしいかも。
別にガキさんのせいでも何でもなく戦いで傷ついただけなんだから、
1人で寝ないで付き添う理由なんてないよね。
他の子達は別として、絵里とさゆみは夜の付き添いが出来ないわけじゃないの、
ガキさんだって知ってると思うし」
「…れーなじゃないけど、絵里も今日、ちょっとおかしいなって思うことがあったよ。
ジュンジュンとリンリン起こす為にガキさんが精神干渉の能力使うから、絵里が結界張ったんだけど。
その時にさ、ガキさんがさ、絵里のこと褒めたんだよね。
ただ褒められただけなら、絵里、単純だから笑ってそこで終わってたと思う。
だけど、ガキさんさ、すごい切なそうな顔して笑ってたんだ。
おかしいよね、褒めるのにそんな切なそうな顔で言うことなんてないのに」
口々に思う点を言い合って、3人は黙り込む。
ちょっとおかしいなと思う点があって、何かおかしいなと思ってしまう行動をされて。
疑いたくないのに、里沙には皆に言えない何かあるのではないかと疑ってしまいそうになる心。
それを振り払うように、れいなは頭をブンブンと振って口を開いた。
- 330 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 23:08:26.95 0
- 「今のところ何の確証もないけん、
このことは3人だけの秘密にすると。
よかよね、2人とも」
「もちろん、っていうか、考えすぎなのかもしれないしね、絵里達が」
「そうだね、確かにちょっとおかしいなって思うけど、
でも、ガキさん、仲間思いの優しい人だし、気のせいだよ、きっと」
「そうそう、ガキさんに限って何かあるわけないと」
そう言いながらも、3人の心に一度広がった疑問は消えない。
無言のまま、3人は屋上を後にする。
3人が立ち去ったのを見計らったかのように、空から細い雨が降り出した。
細い雨は数分もしないうちに、滝のような雨へと変わる。
―――ただの思い過ごしであればいい、そう思う3人の願いを洗い流すかのような雨だった。
- 331 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 23:09:24.20 0
- >>324-330
更新は以上になります
注意書きが大事なことなので(ry 状態ですが気にしないであげてくださいorz
- 332 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 23:11:42.66 0
- 乙です
切ない・・・と同時にこの先どうなるのという不安
三人だけにわかる微妙な変化って設定好きです
- 333 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 23:16:06.74 0
- 様々な視点から語られ進んでいくストーリーに毎回ハラハラしています
ほんとこれからどうなるんだろう?
- 334 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 23:19:59.16 0
- わっほーーーい!リアルタイムでよんじゃたぁぁぁぁあ!!
精神感応までいかなくとも6期・こはみつ・ジュンリンが
互いの心の機微に反応しあうっていうのは良い関係性ですよね
>>331様、乙です 次の展開も期待してます
- 335 :名無し募集中。。。 :2008/07/11(金) 23:20:07.68 0
- ガキさん…。・゚・(ノД`)・゚・。
- 336 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 23:24:01.72 0
- >>322
そろそろリンリン描こう→リンリンって言ったら刃千吏か→刃千吏って国家機関(?)だよな
→ってことは軍人?→じゃ軍服でいくか
こんな思考です
早い話が趣味wでもあながち間違ってもいないですよねw?
>>331
切ないなあ・・・
疑いたくない、信じていたいという3人の想いが伝わってきて
不覚にも泣きそうになりました
- 337 :名無し募集中。。。:2008/07/11(金) 23:27:10.01 0
- >>331
更新乙
前編を3つに分けた狙いは、対さるさんということなのかもしれませんが
れいな、絵里、さゆ各々の捉えたガキさん像を重ね合わせる事で、苦悩
するガキさんの姿がより精緻に伝わってきた気がします
後編が待ち遠しい
- 338 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 00:08:29.13 0
- 本日最初の保全
- 339 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 00:21:57.20 0
- ないやいです皆さんレスをありがとうございました
ないやいの話において共鳴及び共鳴の相性というのは重要なファクターです
そこを活かした話の書き方をと思っているので後編もその辺を意識した展開にしたいなと
>>337さんのおっしゃる通りさるさんを避けるために3分割したんですがもう一つ理由があります
本編において6期をしっかりと描写していないことが気がかりだったので読み手の皆さんには優しくないなと
思いつつも3人で1つの流れを書かせてもらいました
さて後編はバトルですガシガシ書いて週明けには…と思っております
そして後1人…まだないやいが書いていない人がいるのですが
その人で前後編書いて後1本長めのを書いたら悲しみが底の方に到達すると思います
読み手の皆さんにはつくづく優しくない本編ですが今後ともよろしくお願いいたします
- 340 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 00:44:22.52 0
- スカイステージ面白いな
- 341 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 01:05:35.76 0
- 『共鳴者〜Darker than Darkness〜』の続き投下しやす
状況開始は01:15より。
- 342 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 01:06:31.12 0
- 楽しみにしてます!!
- 343 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 01:15:41.11 0
-
「まこっちゃんのお母さんは元気だった?」
外へ出ると、さも当然といった風情で横に立つ白衣姿があった。
応える必要はないとばかりに、高橋はそのまま歩き去る。
「そろそろ悪の組織のアジトへ案内しようと思うんだけど」
気にした風もなく横並ぶ紺野は、そんなことを申し出てきた。
わざとらしい。
背後の気配に気づいていてそうしているのは明白だ。
なら、覚悟を決めた身として自らもそれに乗じるのみ。
「そうやね。あーしも悪の組織の一員になったからには、それが当然やね」
意識して声を張り上げて、高橋は返答した。
気づかれていないつもりだったのか、背後の気配に動揺があった。
出てくるか否か躊躇しているようでもある。
ここまで膳立ててやったからには、
もう一押ししてやるのが先達としての責務か。
「尾行のつもりなら悪いけど、用があるならさっさと出てき」
「まあ複線尾行にしても、そもそもその人数はどうかと思うけど?」
二人の指摘に応じ、曲がり角から気まずそうに現れる人影はぞろぞろと八つ。
その表情からして流石に、状況は飲み込めているらしい。
おおかた上がつけていた常駐の張り込みから先日の一件が伝わったのだろう。
紺野を例に挙げるまでもなく、
共鳴者の中から反乱分子が現れるのは取り立てて珍しいケースではない。
当然といえば当然の措置だった。
- 344 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 01:17:06.86 0
- 「愛、ちゃん。今のって……。」
「聞いた通りやよ。あーしが民間人を殺した件も伝わっとるやろ?」
「………本当、なんですね」
先んじて問いかけて来たのが田中で、今のは道重だ。
こちらからすれば当然黙ったままの新垣は置いておく。
二人は先輩として自らが出るべきだと判断したのか。
どうやらその程度の自覚は芽生えているようだ。
それなら、今日を限りにリーダーを辞する決意も鈍らせず済む。
「間違いなく本当。だから、やるなら本気で来た方がええよ」
忠告はそれで終わり。
目の前の空間を歪め、一瞬で田中の背後へと跳躍する。
訓練の成果はよく出ている。
昨日までの仲間による奇襲に、しかし田中は反射的な動作でその拳を受け切った。
「待…っ」
「断る」
次ぐ一撃はあらぬ方向へ。
全体重を籠めて放った高橋の蹴りは、田中の頭部から遥か離れた中空に消えている。
瞬間、悲鳴。
おもむろに中空から現れた高橋の爪先は、光井の頚部を容赦なく屠りその意識を刈り取っている。
- 345 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 01:18:08.46 0
- 「田中サン、離れテ!」
動揺は共に過ごした期間の長さに比例するのか。
流石に新人たる中国人の二人は明確な敵意を前に、すでに臨戦態勢にある。
ミシリと木霊したのは、李純の骨格が軋む音だった。
衣服もろとも皮膚を裂き剛毛が溢れ出し、筋肉がみるみる内に隆起していく。
夕刻の住宅街。
その最中に出現したのは獰猛な白熊猫。
李純の獣化能力(セリアンスロピィ)、攻撃に特化した異能のひとつ。
パンダと言えば温和な印象を抱きがちだが、
その実はあくまでも熊の一種なのだと実感させられる。
「愛ちゃーん? 手助けいるー?」
「ハ、冗談やろ」
紺野の呼びかけを一笑に伏し、高橋は自身の異能をもまた剥き出した。
白熊猫が分厚く鋭い鉤爪を突き出す。
自身の頭部を軽く貫き、握り潰すであろうその爪を、
―――高橋はこともなげにへし折った。
「ガァアアアアアッ」
瞬間移動(テレポート)。
移動に限ると思われがちな能力だが、その真価は空間の制御にこそ存在する。
瞬間移動など、高橋愛の一部にすぎない。
空間とはこの現界の基盤であり万物の存在の媒体だ。
それを制御できるということは、すなわち万物を制御できることをも意味しうる。
空間上にいる人間の腕を捻じ切ることも、
巨大な肉食獣の爪をその硬度を度外視してへし折ることすら造作もない。
- 346 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 01:19:11.58 0
- 「ジュンジュン!」
悲鳴とも憎悪ともつかない声は銭琳。
放たれる業火。
明瞭な敵意を籠めて放たれた赤々とした発火能力は、しかし秒と保たず霧散した。
照準は的確だった。
発熱温度も人体をひとつ消し炭に変ずるに足る十分なものだった。
だが炎とは所詮、酸素が物体と結びつくという減少が激しく行われ、光と熱を放ち燃焼と呼ばれるに至ったに過ぎない現象だ。
突如として高橋愛の前面に表出した空間の僅かな断層。
ナノ単位の、本当にわずかな隙間でしかなかった。
しかし、その隙間に空気は、酸素は存在しない。
酸素が存在しない以上、燃焼という現象もまたその存在を保てない。
同時に熱を媒介する空気が存在しないことで、熱の余波によるダメージすら高橋には届かなかった。
銭琳の攻撃はその一瞬で無力化された。
「高橋、サンッ!」
本国でいかなる訓練を受けてきたのか、
銭琳の攻撃方針は再建が早く、瞬時に念動力によるそれへと切り替えられた。
サイコキネシス。
精神力による物理への干渉。
彼女のそれならば的確に高橋愛一人の人体に照準を絞ってその体躯を捻じ曲げることも簡単だろう。
精神力の物理エネルギーへの変換は異界を介して行われるため、現界の空間に断層を作る程度では防ぎようがない。
だが、彼女達の仲間であり上司でもある高橋はそれらの情報を誰よりもよく理解している。
敵の照準が自身に集うより速く、高橋は銭琳の眼前に空間跳躍しその細い顎を掌底で薙ぐように一撃を見舞った。
脳を揺さぶられ、脳震盪を起こした彼女は立つことも保てず地面に背中を打ちつける。
どんな強力な火器も発射以前に狙撃手を倒せば無力に等しい。要はそれだけだ。
- 347 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 01:20:05.70 0
- ――結局は、それで最後だった。
銃火器を持たない戦闘、すなわち純粋な能力のみの戦闘において、高橋を除いた最強は今の中国人二人だ。
その彼女らを、高橋は息ひとつ乱すことなく文字通り一瞬で下して見せた。
残った彼女たちが数や意地で埋めることのできる格差ではない。
それを認識できるだけの良識も彼女達は持ち合わせている。
全くの次元違い。
隠されていた高橋の真価を前に、残りの面々はなす術もなくその敗北を突きつけられた。
「五番目(フィフス)」
割って入った新垣の声には、どこか彼女らを気遣うような気配すらあった。
それほどまでに、高橋との実力差の壁を目の当たりにした彼女らの動揺は大きく見えたのだろう。
「それが私たち同期の桜が受けた計画の通称。
要するに人体実験だよ。人権? 自由?
そんなものこのオカルトな国家権力の前には無意味な概念だと認めた方が話は早いね」
話を次いだのは紺野だ。講義は彼女の得意分野である。
新垣が紺野と示し合わせたような発言をしたことに驚きを示す者はいない。
もう、それだけの動揺の余地はすでに奪われている。
「結果から言えば、同期の一人の命と寿命を犠牲に、私たち3人は絶壁の能力を得た。
愛ちゃんの空間制御。ガキさんの洗脳能力。
使い方次第で国家をひとつ転覆させることも夢ではない異能」
- 348 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 01:20:57.15 0
- だから、君たちがそれほど自信を失うことはない。
そもそものスタート地点が違ったのだ。
ドーピングを行った相手は正道ではない。
正道ではない相手と競い合ったところで意味はないのだと。
言い聞かせ、慰めるような声音でありながら、――紺野はハッキリと彼女らにとどめの釘を打っていた。
叶わないし敵わないから諦めろ。
貴様等は無力だ。
立ち向かおうというその意思すらすでにおこがましい。
だからそのまま、我々より少しでも長い寿命を享受し、ありがたみ、そこで止まっていればいい。
かつての仲間をそれ以上傷つけられるのは忍びなかった。
高橋は紺野を遮るように、告げる。
「ひとつ、約束する。あーしは裏切るけど、みんなを不幸にはしない」
必ず、共鳴者に取って理想の世の中を創造してみせる。
「だから、しばらくはリゾナンターとしてみんなだけで頑張って。
あーしは、共鳴者としてみんなのために頑張るから」
それが高橋の決意だった。それだけが高橋の全てだった。
- 349 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 01:21:33.72 0
- 「ごめんみんな。ありがとう。さようなら」
最期にそれだけ言い残し、高橋は新垣と紺野を連れその場を後にした。
残された彼女たちの中、顔を上げその背を見つめることのできる者は誰一人いなかった。
- 350 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 01:22:54.29 0
- >>343-349
今回は以上です。
皆さん毎度このような異色の作品に温かい声をありがとうございます。
レス数節約と連投による制限が怖いので個別の返レスは控えますが、
おかげさまで元々上がり下がりの激しいモチベーションを高めに維持できています。
今回はバトル色濃い目なので読者様置いてけぼりにしてないか非常に不安。
それでもついて行ってやんよ!って粋な方は次回以降もどうぞよろしゅうお願い致します。
- 351 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 01:28:00.31 0
- >>350
更新乙
面白いという言葉しか出てこないわ
次回が早く読みたくて仕方ない
- 352 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 01:33:51.46 0
- >>350
更新乙です
置いてきぼりにされるというよりは、遥かに先行され地球を一回りして
背後に着かれて追い立てられたような読後感です
まあ面白いということです
- 353 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 02:08:49.32 0
- >>350
すごいなあ・・・
ほんと言葉が出てきません
圧倒的な迫力に毎回息をするのも忘れて読み入ってしまいます
今回は特にでした
自作を上げた身としては 残された6〜8期メンバーの気持ちが痛いほどに分かります
「全くの次元違い」・・・ってやつですねえまさに
続きを超楽しみにしています
- 354 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 02:37:35.56 0
- 真夜中にビール飲みながらホゼナント
- 355 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 05:19:56.43 0
- ホゼ
- 356 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 05:22:04.81 0
- ホ
- 357 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 06:58:50.63 O
- 夜更かししてしまって辛い朝ナント
- 358 :名無し募集中。。。 :2008/07/12(土) 07:01:17.71 0
- >>350
空間支配の応用のひとつが瞬間移動なんだ
能力的には無敵に近いね
本人が操られた場合がやばいけど
その部分はガキさんがフォローしておけばいいのかな
- 359 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 07:55:01.68 O
- おはようホゼナント
- 360 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 08:09:02.58 0
- 久々の土曜日出勤のリゾナント
- 361 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 08:18:01.28 0
- おはようございます
「第1話」のスレ主です
私が言うことでもないのですが 改めましてこのスレを盛り上げてくださっている皆様に心から感謝致します
さて 「第1話」のスレが立ってちょうど3ヶ月を迎えようとしています
スレの数も(2度ほど落ちたものの)実に11話目に突入し 今なお素晴らしい作品が上梓され続けています
そこで提案があるのですが このスレの住人が集ってのチャット大会など開催してみてはどうかと思うのです
これまでの歴史を振り返るもよし 言いそびれた感想やお礼を直接言うもよし
モーニング娘。について語るもよし 全然関係ない雑談をしてみるもよし
もちろん作品を上げたことのある方もない方も そんなことに関係なく参加いただければと思います
参加資格は強いて言えばこのスレを愛していること・・・でしょうかw
いかがでしょうか
皆様のご意見をお聞かせください
もしやるとすれば日時はいつが都合がよいかも含めてご意見をいただけるとありがたいです
(ちなみに個人的には来週土曜日は避けて欲しいです・・・)
「名前」をどうするかであるとか その他にも何か思いついたことがあれば書いていただけますでしょうか
会場の設営に関しては 「あの方」がやってくださるとのことです
皆様のご意見をお待ちしています
- 362 :サボリンちゃんヽ( ▼∀▼)ノ:2008/07/12(土) 09:45:27.79 0
- あの方って誰かな…保全
- 363 :名無し募集中。。。:2008/07/12(土) 09:54:02.44 0
- >>361
乙です
ただ狼では馴れ合いを好まない人もいるから
相談はしたらばの方にスレを立ててやった方がいいんじゃないかと
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