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福本漫画バトルロワイアル part.6

1 :マロン名無しさん:2009/12/13(日) 05:39:06 ID:???
福本漫画のキャラだけでのバトルロワイアルをしようというリレー小説企画スレです。

前スレ  福本漫画バトルロワイヤル
      http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1212909658/l50
     福本漫画バトルロワイヤル part.2
      http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1216725766/l50
     福本漫画バトルロワイヤル part.3
      http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1227249586/150
     福本漫画バトルロワイヤル part.4
      http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1240318445/l50
     福本漫画バトルロワイヤル part.5
      http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1250696919/

まとめ ttp://www31.atwiki.jp/fukumotoroyale/
避難所 ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/11641/

2chパロロワ事典@Wiki ttp://www11.atwiki.jp/row/

書き手の注意点
・予約は任意
・予約後一週間経過で予約取り消し
・本スレ投下前にしたらばの一時投下スレに投下する時も、
 予約スレに予約をおこなうこと。
・トリップ必須(捨てトリ可)
・無理して体を壊さない
・完結に向けて諦めない
・予約はしたらば「予約スレ」にてお待ちしてます

キャラが死んでも、泣かない、暴れない、騒がない!!

2 :マロン名無しさん:2009/12/13(日) 05:40:59 ID:???
【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
優勝賞金は10億円。
また、1億円を主催者側に払うことで途中棄権の権利が購入できる。
参加者には食料などの他1000万円分のチップが支給され、
他者からの奪取やギャンブルルームでのやりとりが許されている(後述)。
ちなみに獲得した金はゲーム終了後も参加者本人のものとなる。

【支給品】
数日分の食料と水、1000万円分のチップ、地図、コンパス、筆記用具、時計
以上の物品が全員に均等に振り分けられる他、
ランダムに選ばれた武器や道具が0〜3品支給される。

【ギャンブル関連】
主催者側が管理する「ギャンブルルーム」が島内に点在。
参加者は30分につき1人100万円の利用料を支払わなければならない。
施設内には様々なギャンブルグッズが揃っており、行うギャンブルの選択は自由。
また、賭けるものは、金、武器、命など何でも良い。
ギャンブルルーム内での暴力行為は禁止されており、過程はどうであれ結果には必ず従わなければならない。
禁則事項を破った場合、首輪が爆発する。

3 :マロン名無しさん:2009/12/13(日) 05:41:40 ID:???
【首輪について】
参加者全員に取り付けられた首輪は、以下の条件で爆発する。
・定時放送で指定された禁止エリア内に入ったとき
・首輪を無理矢理取り外そうと負荷を加えたり、外そうとしたことが運営側に知られたとき
・ギャンブルルームに関する禁則行為(暴力、取り決めの不履行等)を犯したとき
なお、主催者側の判断により手動で爆発させることも可能である。

【定時放送】
主催側が0:00、6:00、12:00、18:00と、6時間毎に行う。
内容は、禁止エリア、死亡者、残り人数の発表と連絡事項。

【作中での時間表記】 ※ゲームスタートは12:00
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
真昼:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24

4 :マロン名無しさん:2009/12/13(日) 05:42:39 ID:???
【主催者】
兵藤和尊(帝愛グループ)@賭博黙示録カイジ
蔵前仁(誠京グループ)@銀と金
在全無量(在全グループ)@賭博覇王伝零

【参加者一覧】

【アカギ 〜闇に降り立った天才〜】6/8
 ○赤木しげる(19歳)/○南郷/●安岡/○市川/●浦部/○治/○平山幸雄/○鷲巣巌
【賭博黙示録カイジ】5/7
 ○伊藤開司/○遠藤勇次/●船井譲次/●安藤守/○石田光司/○利根川幸雄/○佐原
【賭博破壊録カイジ】1/4
 ●大槻/○一条/●坂崎孝太郎/●三好智広
【賭博堕天録カイジ】2/3
 ●坂崎美心/○村岡隆/○兵藤和也
【銀と金】3/8
 ○森田鉄雄/○平井銀二/●有賀研二/○田中沙織/●神威秀峰/
 ●神威勝広(四男)/●吉住邦男(五男)/●川松良平
【天 天和通りの快男児】4/4
 ○天貴史/○井川ひろゆき/○原田克美/○沢田
【賭博覇王伝零】1/4
 ○宇海零/●板倉/●末崎/●標
【無頼伝涯】1/3
 ○工藤涯/●澤井/●石原
【最強伝説黒沢】3/4
 ○黒沢/○仲根秀平/○しづか/●赤松修平

【残り26/45名】

5 :マロン名無しさん:2009/12/13(日) 05:45:09 ID:???
【予約について】
キャラ被りを防ぐため、任意で自分の書きたいキャラクターを予約することができます。
したらばの「予約スレ」に、トリップ付きで予約するキャラクターを宣言をしてください。
有効期間は予約当日から一週間。
期限が切れても投下はできますが、混乱を招くため歓迎されません。
間に合いそうにない場合は、【期限が切れる前に】延長を申請するか、予約破棄宣言をお願いします。
延長申請がない場合、予約は解消され、そのキャラクターはフリーになります。

【他、書き手の注意点】
作品投下はトリップ必須(捨てトリ可)。
内容に自信がなかったり、新たな設定を加えたりした場合は
本投下前にしたらばの「一時投下スレ」に投下するとアドバイスをもらえます。
さるさん規制を喰らった場合もそちらにどうぞ。

6 :マロン名無しさん:2009/12/13(日) 10:41:42 ID:???
前スレにて放送の投下がありました。

7 :マロン名無しさん:2009/12/15(火) 23:17:25 ID:???



8 :マロン名無しさん:2009/12/19(土) 23:57:13 ID:???
なーに 大丈夫…
まだ…保守できるさ…鷲巣…!

9 :交渉1/11:2009/12/21(月) 04:07:41 ID:???

「…うぐっ…うぐっ…!」
アカギと別れ、村岡は言葉にならぬ憤りを噛み殺し、悔しさを滲ませた顔のままギャンブルルームを後にした。
ひろゆき、原田、アカギと勝負をし…只今三連敗である。

ここに集められている連中は今まで外の世界のギャンブルで戦ってきた屑、雑魚どもとは次元が違う。それを嫌というほど思い知った。
まともにやっては太刀打ちできない。
かといって、こちらが苦心して仕掛けた(力の差があるのだから当然ハンデとも言うべき)イカサマすらあっさり看破し、逆手に取るような連中である。
そんな苦境の中、敗者の義務…。指令だけが増えていく。

(…くそっ…!何なんざんすか…あいつらは…!
こんなことなら…参加するんじゃなかったざんす…こんなギャンブル…!)
村岡はぎりぎりと歯軋りする。いくら後悔しても先に立たずである。

普段の慎重な彼なら、こんな胡散臭いギャンブルになど乗らなかったであろう。
カイジに大敗を喫し、カジノ以外の財産を失って放心状態のところに舞い込んで来た話である。
大金を失い、失意の底にいた村岡の下にやって来た『帝愛からの使いの者』に言葉巧みに誘われ、この地にやって来たのであった。

(殺し合いをしろだなんて聞いてなかったざんすよっ…!こんな善良な小市民のわしに何やらすんざんすかっ…!
話が違うざんす…!あからさまに詐欺っ…!こんな契約反故っ…!取り消し…!クーリングオフ…!
だがっ…それは無理ざんしょ…確実に…。)

開会式で同じことを考え、それを先に口に出した少年があっさりと殺されたのを見て、そんな不満は一言でも漏らすまいと決めた。
主催に敵視されることだけは避けなければならない。死んでしまってはどうにもならない。
そこで、開き直って積極的にギャンブルで稼ごうとして…この様である。

10 :交渉2/11:2009/12/21(月) 04:11:17 ID:???

アカギから受けた指令の一つ目は、『首輪の回収』であった。
他の人物にも首輪に関する指令を受けているので、他のことにして欲しいと懇願すると、アカギはあっさりと言い放った。
『同じような指令なら、手間が省けていいじゃない』…と。

そういう問題ではない。
原田から、『24時間以内に主催との窓口を作れ』『首輪に関する情報を探れ』と言われているのである。
そして、中間報告。明日の夕方にE-4で合流し、途中経過を報告するようメモに書かれてあった。
その後、24時間後の明日夜中までに結果を出さねば罰ゲームとして手足の指が十本飛ぶことになる。
それを簡潔にアカギに話すと、アカギは自分とも明日の夕方にE-4で待ち合わせをしようと持ちかけてきた。
…もしかしたら、原田とアカギは知り合いなのかもしれないと考え、それとなく探りを入れてみたが、アカギは何も答えてはくれなかった。

とにかく忙しい。
原田用と赤木用に最低二つは死者から首輪を剥ぎ取らねばならない。
原田の言う『首輪の構造を調べる』には首輪そのものがないと調べようがない。かといって自分の首輪で実験など、リスクが高すぎて論外である。
武器どころか首輪を剥ぎ取るための道具すらない状態で、首輪回収二つは大変な難業である。
標、赤松達に取り入るために、死体から剥ぎ取った首輪。
爆発させないよう気を遣いながら繋ぎ目の金具を叩き壊すのに、どれほど大変な時間と労力が必要であったか。

それに加えて、主催との窓口作りのことも考えねばならない。この指令をどうこなすべきか、見当もつかない。
目の前に広がるは絶望という名の闇…。五里霧中。

………不意に、周囲に音楽が響き渡る。血なまぐさい戦場の雰囲気を気にも留めないような、暢気なショパンの円舞曲。

(放送ざんすか…!)
村岡は周囲を見渡し、丁度いい繁みを見つけると、中へ飛び込んで隠れ、必死に耳をそばだてた。

11 :マロン名無しさん:2009/12/21(月) 04:14:01 ID:???
支援するしかなかろうて!!!!!!!

12 :交渉3/11:2009/12/21(月) 04:16:21 ID:???

「……では、以上で放送を終了する。 引き続き、諸君の健闘を祈る」
放送はそこで途切れた。

(4人…)
死亡者の4人の中にはあの赤松も入っていた。天の名前は無かった。
だが、村岡が注目したのはそこではなかった。

(どうせなら、もっと死んでいてくれれば…。死体を探す労力が減るざんすのに。上手く行かない世の中ざんすね…)
はああ、と溜息をつきながら、今の己の不遇を呪う。

(上手く行かない、ってのは主催側も思ってるようざんすね…。先程の黒崎の放送、どうも投げやりというか、苛立たしいといった口調だったざんす…)
村岡はふと、主催者のことを考える。先程の放送を思い出す。

 『このゲームに不満を感じ、抵抗を試みようとしている一部の参加者諸君。
 これまではこちらも静観してきたが…あまりに度が過ぎる行為には“それ相応”の報いがあるということを忘れないように……注意してくれたまえ。』

(……!!! ちょっと待つざんす。
原田の思い通りに行動していたら、同じ『対主催』…不穏分子と捉えられて、そのうち主催の標的になるやも知れんざんす…!
だが、だからといって原田の指令を放っておくわけにはいかんし…!反故にすれば首輪が爆発し、失敗すれば指が飛ぶんざんすから…!)

村岡は頭を抱えた。
(一方に従えばもう一方の不興を買うことになるざんすかっ…!なんてことっ…最悪ざんす…!)

まさにじり貧…追い詰められるっ…!
言いようのない閉塞感が村岡を苦しめる。
(どうすればいいざんすかっ…!だいたい、“それ相応の報い”だぁ…?一方的にこちらを嵌めておいて、その言いがかりは何ざんすっ…!
こっちにだって言い分が………………………………………)

13 :交渉4/11:2009/12/21(月) 04:19:28 ID:???

その刹那、閃光が村岡を貫くっ…!
雷のように落ちた疑問の光が、地響きを立てるようにじわじわと広がっていく。

(………何で、こっちの動向を把握しているざんす…?
…隠しカメラで監視しているからだろう。それくらいはやる連中ざんす。カイジが『沼』を出した時も、モニターで見てたらしいざんすから…。
それだけじゃない。『会話』も拾ってる。でなきゃ不穏分子、対主催たちの動向を把握しきれないざんすよ。
…島中に盗聴器…?いや、非効率的。なら…参加者が自分で『送信機』を持ち歩いてるんざんす…。
…『首輪』の形で…!)

主催者が参加者の動向を探るであろう事は予測していたが、どんな形でそれを探っているかまでは考えていなかった。
開始早々ひろゆきに持ち物を奪われて、生き延びることだけを第一に考え行動していた為、そこまで考えが至らなかったのだ。

(……………あ…ああああっ………!)
村岡は咄嗟に大声を出しかけ、必死でこらえる。

(……あるじゃないざんすかっ…!はっきり『通信手段』っ…!
例え一方通行でも…そう…『通話』とまでいかなくても…『発信』は出来る…!いつどこでも…!
『嘆願』することは可能っ…!)

村岡は興奮する己を諌めながら、なおも思考する。
(…としても…。実際『どこでも』というわけには行かない…。十分安全を確保した上でじゃないと駄目っ…!
そして…他の参加者に『わしの目論見』を決して感づかれてはならん…!
じゃあどうする…?ああして…そしてこうやって…。この順番で…)

村岡は暫くの間長考し、計画を纏める。何度も反芻し、計画に解れがないか自己採点する。
(よし…!完璧ざんす…!今の苦境から這い出し、圧倒的有利に進めるための知恵…!
生き残りの道…即ち『ビクトリーロード』っ…!)

14 :交渉5/11:2009/12/21(月) 04:22:21 ID:???

意を決した村岡が向かったのは、先程までアカギと対決していた場所………E-2のギャンブルルーム。
アカギと別れてから、村岡の知る限り周辺に人通りは無かったので、今、他の参加者が使用している可能性は極めて低い。
村岡はギャンブルルームの入り口まで来て、黒服に100万のチップを突き出した。
「ほれっ…!」
「一人か…?」
「そうざんす。何か問題でもあるざんすかっ…?」
「…いや。100万、確かに…」
「いいから、さっさと中に入れるざんすよっ…!一分一秒でも惜しいんざんすからっ…!」

ムッとする黒服を押しのけ、ギャンブルルームの扉を開ける。中は先程と同じように、淡い色の壁紙がその場を落ち着いた雰囲気に演出していた。
その雰囲気に構うことなく、村岡は忙しなく振り返って黒服に問う。
「このギャンブルルームは当然、防音ざんすよね…!?」
「…ああ。それ以上の質問にはチップがないと答えられないが」
「それだけで十分ざんす…!」

村岡は言い捨てると、中に進む。
入り口の廊下を抜けると、多少広い空間が現れる。ギャンブルをするための雀卓、ルーレット等の台が犇いている。
村岡は台の合間を縫って部屋の奥まで進み、壁面にかけられた大きな風景画の前まで歩いてきて止まる。
不審に思った黒服が後を付いて行くと、村岡は風景画にもたれかかる様にして、額を擦りつけた。

「な、何をしているっ…?」
「しっ…!今忙しいざんす。黙ってろ…邪魔するなっ…!」
村岡は、精神統一を済ませると、黒服が驚くのも構わず風景画を『相手』に見立て、大声で叫び始めた。

「このゲームの主催者、黒崎様っ…!私は参加者の村岡という者ざんす…!
先程の放送を拝聴し、僭越ながら進言させて頂こうと考え、こうして嘆願することにしましたざんすよっ…!!!」

15 :マロン名無しさん:2009/12/21(月) 04:22:59 ID:???
支援だ支援だいやっほおおおおおお

16 :交渉6/11:2009/12/21(月) 04:26:11 ID:???

以下、村岡が黒崎に対して発信した演説の全貌である。

「今、このゲームは多少行き詰っている…。先程の黒崎様の言葉、わしにはそう感じましたざんす。
実は、わしも行き詰っているざんす…!
そこで、わしは主催者様のお力をお借りしたい。その代わりといっては何ですが、主催者様の要望に答えられるよう誠心誠意、動こうと思うざんす…!
どうかわしの言い分、提案を取り上げ、検討して頂きたいざんすよっ…!

まず、わしの今の状況ざんす…!
開始早々ひろゆきという男とのギャンブルで負け、持ち物全て奪われた…!
その後、天という男が気まぐれでわしに寄越した500万を元手に、原田という男にギャンブルを申し込んだざんす。
だがこれも負け、原田にいくつもの不利な条件と指令を押し付けられた…!
その後アカギという男とギャンブルをし、またも負けてしまった…。そして、アカギからも指令を受ける身になってしまったざんす。
いえいえ、これも身から出た錆…。それはわかってるざんす。わしも迂闊だった…!

問題なのは原田、アカギから受けた『指令』の内容…!

原田からは『首輪の構造を調べよ』、アカギからは『死者からの首輪の回収』を言い渡されているんざんず。
その上原田からは、『指令を使い切るまでは人殺しをするな』なんて指令まで受けているざんす…!
つまりわしは、これから約一日間、ゲームの目的である『殺し』もせず、死体を捜して首輪を回収して回らなきゃなりません。
それが出来なきゃわしの身が危ないざんすから…!
不毛…!主催者様にとってはきっととんでもない道化に見えるざんすね…わしが…!

17 :交渉7/11:2009/12/21(月) 04:28:59 ID:???

それともう一つ、原田から『24時間以内に主催者との直接交渉窓口を用意しろ』なんて指令も受けているざんす。
原田が主催とタイマンで話がしたい、なんて言っとるんです…!とんでもない話ですが…!

今わしが抱えてる問題って言うのはその辺りです。これらがあるから、わしは今本当の意味では『ゲームに参加』できない。
逆にこの問題が解消されれば、晴れて自由の身、心置きなく殺しが始められます。
わしは今武器が無いので、その辺も問題のうちの一つざんす…。」

村岡はいったんそこで言葉を区切った。しばらくの沈黙。

「主催者様…。面倒だと思われたざんすか…?
つまり、わしの問題を解消させるためには、
『死者の首輪』を用意し、ゲームの危機にならない程度に首輪の構造を教え、明日、原田と黒崎様が連絡する段取りをしてやらないといけない…。
わしの為にその全てを行うのは面倒だ、と………。」


村岡は、最後の方はか細い声で呟くと、フェードアウトするように押し黙ってしまった。
風景画に再び額をつけると、堪えるようにグッと唇を噛む。



不意に、その口の端がつりあがった。

「クク…キキキ…!」
肩を震わせて笑い出した村岡を、後ろの黒服が不気味なものを見る目で遠巻きに眺める。

「そんなお手間は取らせないざんす…!」
村岡はガバッと勢いよく顔をあげると、(黒崎に見立てた)風景画に向かって大声を張り上げる。

18 :交渉8/11:2009/12/21(月) 04:32:18 ID:???

「わしが黒崎様に頼みたいことはそんなことではないざんす…!
わしは主催者様に一筆書いて頂きたいだけざんす…!
つまり…こういう内容の書類を作成して頂きたい…!


 『ギャンブルルームで参加者同士の間で交わした誓約書の内容と、
 主催者と参加者の間で交わした誓約書の内容が矛盾するようであれば、
 主催者と参加者が交わした誓約書の方が優先される。』

 『その点を踏まえ、参加者村岡隆は、
 他の参加者を殺すことが出来ないという指令を受けていたり、誓約書を持っていたとしても、
 ギャンブルルーム外であればいつでも他の参加者を殺すことが出来、その時村岡隆の首輪は爆発しない。』

 『村岡隆は交換条件として少なくとも一人は確実に他の参加者を殺すことを誓う』


こういった誓約書を書いて頂きたい…!」

村岡は一気にまくし立てると、息継ぎの為に一呼吸置いた。
「そもそも、ギャンブルルームの中の出来事が絶対、という効力があるのは、主催者様がそのルールを掌握しているからこそであり、
破れば我々の首輪を爆破できる、という権限を持っているからざんす…!
わしはこの主催者様との誓約書、道理が通ると思っているざんす。
国の法律に例えれば、我々参加者同士が交わした約束が条例なら、主催者様の決めたルールは、言わば憲法…!
憲法と条例じゃ、どっちが優先されるかは明白じゃあないざんすかっ…?
この提案、是非受けて頂きたい…!
これを書いていただければ、真っ先に殺せるのは…。お分かりざんしょ…?
わしと『互いに殺さない』の誓約書を交わした人物…!こいつらは『誓約書』の安心があるから、完全に無防備…!
その上、原田に対しては先手を打ちたい理由、動機がある。失敗したら大怪我をさせると脅されているんざんすから。
その点、信用して頂けるはずざんす…!」

19 :マロン名無しさん:2009/12/21(月) 04:32:57 ID:???
支援します!

20 :交渉9/11:2009/12/21(月) 04:36:47 ID:???

村岡はまた一呼吸置き、今度は声を抑えて話し始めた。

「ただ…二人殺すとなると、丸腰では実に不安ざんす…。
わしは、この島に来るまではごく普通の、善良な一般人であり、今まで人を殺したことがないざんすよ…。
そのことを心に留めていただき…。もし…もし許されるならざんすが…!
武器も支給して頂くこと…適わぬでしょうか…?
なにせ奴らは拳銃や日本刀を持っている。不意打ち出来るとしても、素手では実に心許無いっ…!
出来ればわしのような者にも扱えるような、小型で精度の高い…サイレンサーつきの拳銃…!そして大量の弾薬…!
………そこまでは贅沢でしたら、ナイフでも爆弾でも…せめて何か…何か武器になるものを…どうか…!
わしの嘆願はこれで全てざんす…!」

村岡は腕時計を見た。ギャンブルルームに入ってから10分程が経過している。
一息つくと、村岡は最後の纏めに入った。

「…ご多忙なる主催者様を急かすようで、大変心苦しいざんすが、わしはあと20分弱しかこのギャンブルルームに留まれないざんす。
その間に…是非…お返事を…!
わしはもうあと100万しか持っておりません。所持金が0になる不安は、開始直後に嫌というほど味わったざんす。
ですので、もうわしには20分しか猶予がありません。
主催者様のお返事が頂けなければ、わしはこれから一日の間、人を殺すことができないざんす。
どうか賢明なご決断をお願いするざんす…!
では…!」


村岡はそう言い残すと、風景画から離れ、近くにあった壁際のソファにどっかりと腰を下ろした。
額に汗の玉がギラついている。

(言いたいことは…全て言い切ったざんす…。)
村岡は暫くの間、達成感に浸った。

21 :マロン名無しさん:2009/12/21(月) 04:42:40 ID:fikknfyn
圧倒的支援っ…!

22 :交渉10/11:2009/12/21(月) 04:45:57 ID:???

(もちろん…連絡が来ないことも在り得る…。………少なくとも、わしがどういった立場をとりたいか、だけでも主催者に伝わったはず…。
だが…自信があるざんす。主催者は動く…!このわしの申し出、主催者にとっても有難い申し出の筈ざんすから…!
原田を潰すことは確実に対主催達の動きを邪魔し、誓約書が無効化されたことに関して、対主催達の不安感を煽ることに繋がるざんすからね…!)

(これで…復讐したいと思っていた連中に復讐出来るざんすっ…!それだけじゃない…)
村岡は頬が緩むのを押さえ切れなかった。

(『主催者との誓約書』を持ったわしは、ほぼ無敵ざんすよっ…!
少なくともギャンブルで勝負したいと思っている連中には…!
これからも、勝負する時には、ギャンブルルームで『互いに殺さず』の誓約書を交わし、『絶対なる安全』を植え付け、勝負には勝っても負けてもかまわん。
外に出た直後に、参加者同士の誓約書など関係なく、そいつを殺し、持ち物全て奪う…!相手が死んだら、指令も約束も全て反故っ…!)

村岡は堪えきれずに笑い声を漏らした。
「キキ……キキキキッ……!」

(天才ざんすね…わしは…!!)






その頃、黒崎が首輪に関する件でギャラリーのクレーム対応に忙殺されていたことなど、村岡には知る由もない。

23 :マロン名無しさん:2009/12/21(月) 04:46:02 ID:???
村岡、ヒデェww

支援

24 :交渉11/11:2009/12/21(月) 04:51:28 ID:???

【E-2/小道沿いのギャンブルルーム/深夜】

【村岡隆】
 [状態]:健康 軽い疲労 精神高揚
 [道具]:なし
 [所持金]:100万円
 [思考]:主催者からの反応を待つ ひろゆきとカイジと原田とアカギに復讐したい 今は原田とアカギに服従する 生還する
※村岡の誓約書を持つ井川ひろゆきを殺すことはできません。
※村岡の誓約書を持つ原田を殺すことはできません。
※【指令その1】3回分の命令が終わり、開放されるまで、正当防衛以外の人殺しは不可。
※【指令その2】24時間以内にゲーム主催者と直接交渉窓口を作る。失敗したら指10本喪失。
※【指令その3】首輪の構造、性質等、首輪の解除に有益となる情報および物資の収集と調達。成功すれば原田から武器を貰えます。
※赤木しげるに、回数は有限で協力する。(回数はアカギと村岡のみが知っています)
※赤木の五億円を本物だと信じています。
※2日目夕方に、原田に中間報告の為にE-4に来るよう命令されています。同時刻、同じ場所で、赤木に回収した首輪を渡すよう命令されています。

※主催者、黒崎に嘆願しました。黒崎がそれを受け入れ、誓約書の手配、武器の支給に応じるかどうかは次の書き手氏にお任せします。


************

以上です。
支援ありがとうございます。圧倒的感謝…!

25 :マロン名無しさん:2009/12/21(月) 04:59:07 ID:???
乙です!
今まで想像もしなかった展開で面白かった!
オチにめちゃ吹いたw

26 :マロン名無しさん:2009/12/21(月) 05:01:07 ID:???
圧倒的投下乙でした!
村岡らしいセコさというかいやらしさに、歯噛みしながら読みました
ずるいんだけど、アリといっちゃアリな策だしマーダー不足なこの展開で主催側はどうでるのか
うわあああ…リターンコールくるかっ…?と思っていたところ

>その頃、黒崎が首輪に関する件でギャラリーのクレーム対応に忙殺されていたことなど、村岡には知る由もない。

ちょwwwwww吹いたwwwwwwwwwwwwwなんというwwwwwww
だけどもだけどこれからいったいどうなるのかますます楽しみです!乙でした!!!

27 :交渉11/11 ◆6lu8FNGFaw :2009/12/21(月) 05:27:11 ID:???
トリップ忘れてました…。

感想ありがとうございます。ものすごく励みになります。

28 :マロン名無しさん:2009/12/21(月) 07:20:52 ID:???
マーダーが増えるかなと思いきや、そういうオチか…。

腹を抱えて笑ってしまいました。

報われなくてこそ、社長…。


29 :マロン名無しさん:2009/12/21(月) 08:15:06 ID:???
投下乙

小悪党だなぁ、社長
既にロワ内の負け犬となり果てている彼の嘆願は聞いてもらえるのだろうか
…マーダーが少ないのを危惧しているとはいえ、どうなるやら

30 :マロン名無しさん:2009/12/21(月) 09:18:59 ID:???
社長は死にそうに無いなw

31 :マロン名無しさん:2009/12/21(月) 19:07:37 ID:???
予約がまた来ました。
しかも、24日の予定だそうです。

32 :マロン名無しさん:2009/12/21(月) 23:01:49 ID:???
予約二つ目来たっ…来たっ…!僥倖…!

33 :マロン名無しさん:2009/12/22(火) 00:37:34 ID:???
オチw
社長カワイソスw

34 :マロン名無しさん:2009/12/23(水) 08:48:21 ID:???
おつ華麗! 面白かった!
カイジだのアカギだのがいるからアレだけど、
社長も充分に「頭の切れる男」だと思うなあ、こうしてみると。
これだけ追い詰められて自暴自棄にならず、ちゃんと策を紡ぐ
ことができるってのは凄い。

35 :マロン名無しさん:2009/12/23(水) 09:47:36 ID:???
予約3つめ…!
年末更新ラッシュが嬉しいっ…!

36 :マロン名無しさん:2009/12/23(水) 14:30:16 ID:???
>>34
社長も修羅場潜ってるだろうし、前田には絶賛されてたしね。
常人よりは遥かに頭が回るのは間違いない。しかし相手がなぁ……。

37 : ◆uBMOCQkEHY :2009/12/24(木) 14:00:31 ID:CK07Z82l
お久しぶりです。
何とかイブに間に合いました。

今回も大変長い話です。
支援していただければ、幸いです。

38 :金の狩人(前編)1:2009/12/24(木) 14:02:12 ID:???
「あ・・・あぁ・・・」
沙織は身悶えていた。
三好の死体を自分の未来――己が死んだ姿と重ね合わせてしまった。
そして、今までの罪の意識が心を破裂させた。

「殺される・・・殺される・・・」

今の沙織は恐怖に蝕まれ、心がむき出しの状態と言ってもよい。

「死にたくない・・・死にたくない・・・」

言葉を震わせながら、床を這いずり、近くに落ちているボウガン、木刀、グレネードランチャーをかき集める。
助かることは武器をたくさん持つこと。
思考があまりにも極端となってしまっていた。
もちろん、全ての武器を抱えることは出来ない。

「あ・・・」

グレネードランチャーが手から零れ、ガチャンと音を立てて、床に落ちる。

「武器が・・・」

沙織の手が止まる。
グレネードランチャーの銃身の先にあったのは仰向けに横たわる三好の死体だった。

――あれは・・・私の・・・

「う・・・うわぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!」

39 :金の狩人(前編)2:2009/12/24(木) 14:05:19 ID:???
沙織は持ち物を放り出し、死体という穢れから逃れるべく壁に駆け寄ると、爪でガリガリと引っかく。
部屋中に獣が骨を砕き噛むような音がこだまする。
壁を引っかいたところで、穴が空くわけがない。
沙織にとって、逃げることは離れることなのである。

ブチッ!!

「うぐぁ・・・」
沙織は指を押さえた。
血の雫が指からポタッ・・・と滴り落ちる。
爪が割れたのだ。

「死にたくないぃ・・・」

逃げられないなら、自分で消すしかない。
沙織は近くにあったベッドのシーツを掴み、三好の死体に被せた。
まるでミイラの包帯のようにシーツを三好の体に巻く。
死体が目の前から消えれば怖くない。
その一心が沙織を突き動かしていた。

犯罪心理学で上げられる事例のひとつに、親や妻や子供など親しい者を殺害してしまった場合、その罪の重さから逃れるために毛布などで包んで、自分の目から隠してしまう心理行動がある。
沙織の場合は死という自分の心を蝕むものからの逃避行動であるが、
共通して言えるのは、隠すという根本的解決からかけ離れた行為で、
自分自身の心の負担を軽くさせようとすることである。

“死”が遠のいていく。
沙織がその予感を覚えた瞬間だった。

40 :マロン名無しさん:2009/12/24(木) 14:05:37 ID:???
しえん

41 :金の狩人(前編)3:2009/12/24(木) 14:07:32 ID:???
ビシュッ!

右腕に一閃の赤い切れ目が現れた。
切れ目から徐々に赤い液体がにじみ出てくる。
痛みを感じたのはその数秒後。

「うぅぁあぁぁああぁぁああぁあーー!」

沙織は腕を庇いながら、駄々をこねる子供のようにのた打ち回った。
沙織の腕を切ったのは三好が握っていた包丁であった。
シーツで三好の体を包み込む時、謝って包丁の先が右腕を掠ってしまったのだ。
傷自体はかすり傷程度のものである。
しかし、沙織にはそれが体を焼き尽くすような激痛と同等に感じられた。

沙織は苦しみにもがきながら思う。

――襲われた・・・!

生きるためにはどうすればいいのか。
強き者からは逃げ、弱き者は排除する。
獣のような理屈が沙織の意識を支配し始めていた。

沙織は荒い息を整え、三好を確認する。

三好は動かない。
弱き者。
つまり・・・

「勝てるっ!!!」

42 :金の狩人(前編)5:2009/12/24(木) 14:09:41 ID:???
沙織は起き上がり様、自らが落としたグレネードランチャーの銃身を握ると、シーツに包まれた三好の頭部をひたすら殴り続けた。
それはかつて有賀の幻影への怒りを体現した、あの時の狂気の行動そのものであった。

ガツ!ガツ!ガツ!・・・

シーツ越しにしっかり浮き出ていた目や鼻や唇の輪郭が、
グレネードランチャーのグリップで殴られていくうちに、平べったくなっていく。

三好の頭が皮を剥いたザクロを髣髴とさせるようになった頃、グリップの狙いがずれ、頭部ではなく、胸部に振り下ろされてしまった。

ガチャンと硬いものと接触する音がした。
グリップに何かに当たったようである。
沙織が一旦、手を止め、頭部より下の部分のシーツをめくると、包丁とイングラムM11が現れた。

――武器だっ!!!

沙織はグレネードランチャーを投げ捨て、イングラムM11を三好から奪う。
イングラムM11の標準を三好の胸部に合わせて、その引き金を引いた。

カスッ・・・!

引き金は軽かった。
弾切れである。
しかし、弾切れに気づかない沙織は使い方が悪かったのかと思い、
銃を振ってみたり、銃の側面にあるセレクターを動かして、連射できるフルオートから単発のセミに切り替えてみたりと試みるが、当然、それで銃弾が増えるわけがない。

43 :金の狩人(前編)6:2009/12/24(木) 14:10:37 ID:???
沙織がグリップの底部の出っ張りを弄くった時だった。
グリップの底から四角く細長い物が伸びてきた。
沙織はそれを引っ張ってみる。
それは空のマガジンであった。

その時、沙織は気づいた。
三好の胸部がやや反るように盛り上がっていることを。

沙織は三好の身体をひっくり返す。
三好はディバックを背負っていた。
沙織はそのディバックの中を漁り出した。
ディバックから出てきたのは食料品、メモ帳、地図、コンパス、1000万円のチップ、そして、五つの四角く細長い物――マガジンであった。
単純な思考となった沙織でも、先程見たものは覚えている。

――さっきと同じもの・・・。

沙織は空のマガジンを投げ捨てると、空洞の底にディバックのマガジンをはめ込み、再び、標準を三好に向けた。
引き金を引く。

バン!!

耳をつんざくような銃声と共に、硝煙が部屋内に立ち込める。
沙織は会心の笑みを浮かべた。
三好のディバックから噴水のような赤い花が咲いたからだ。

――これは・・・武器だ。

44 :金の狩人(前編)7:2009/12/24(木) 14:12:15 ID:???
沙織はマガジンを入れ替えれば、さらに銃を撃つことができることを覚えた。

沙織は残りのマガジンをしまおうと、自分のディバックを開けた。
そこにはほかの支給品と一緒にウージーが入っていた。

「これは・・・動かない・・・」

沙織はウージーをその場に置くと、ディバックに愛用のボウガン、4つのマガジンを詰めた。
木刀とグレネードランチャーも持とうとするが、すぐに手を引っ込めた。

「銃が・・・あるから・・・」

先程はあれほど武器を集めたがっていたのに、今はその感情など初めからなかったかのように執着心を失っていた。
今の沙織は感情のままに行動をしていた。
しかも、その感情の起伏のゆれ幅が異常に大きい。
怒りを覚えれば、暴れ、悲しみを覚えれば、おいおいと大声をあげて泣く。
沙織は助かりたいという一心の獣に成り果てていた。

獣は三好の亡骸を省みることなく、その場を後にした。

45 :金の狩人(前編)8:2009/12/24(木) 14:13:11 ID:???
『ギャンブルルームで1億円を支払えば、安全な時間を買うことができる』

――素晴らしい考えだ・・・宇海零君・・・。

遠藤はほくそえんだ。
この零の戦略は2時間程前のデータで送られたものである。
森田のフロッピーの中身をパソコン本体のハードディスクにバックアップしておいた。
おかげで森田と別れた今でも遠藤の下には1時間おきに各参加者の情報が流れてくる。

このデータは神の目と言ってもよかった。
様々な参加者が搾り出した戦略を、パソコンの画面をクリックするだけで搾取することができるのだから。

「さて・・・これからどうするか・・・」

遠藤は今、一階のフロアの探索をしていた。
一階は食料品と飲食店が入るスペースらしく、入り口のレジを抜けると、食料品を陳列するための棚が並んでいる。
しかし、食料はない。
遠藤は入り口フロアの右側に位置する食堂エリアへ足を踏み入れた。
ずっと使われていなかったらしく、事務室と同じように床やカウンターにうっすらとホコリが溜まり、椅子やテーブルはフロアの一角に積み上げられている。
遠藤はそれを一瞥すると、厨房の中へ入っていく。
厨房の中はステンレス製の作業台を中央に、その周りを囲むようにコンロや流し台、冷蔵庫などが配置されている。
遠藤は取っ手のついている扉を開けていく。
食料になりそうなもの、武器になりそうなものを探すためである。
森田がいたときは、お互い情報を共有する必要があったために、周辺調査を満足に行うことができなかった。
しかし、一人になった今、ここで発見したものは全て遠藤が自由に利用することが出来るのだ。

46 :金の狩人(前編)9:2009/12/24(木) 14:14:50 ID:???
遠藤は一通りの厨房の引き出しを開き終える。
「ここに目ぼしい物はないか・・・」
しかし、遠藤に落胆する様子は見られない。

「まぁいいか・・・あれが見つかったしな・・・」

遠藤は厨房の奥の扉の前に立つと、そのドアノブを回した。
扉は軽い力でキィ・・・と音を立てて開く。
遠藤は扉から僅かに顔を出し、その周辺を見回す。

この扉は調理材料をすぐに厨房へ運び入れるためのものらしく、右側にはプロパンガスが並んだ物置、左側の奥はゴミ捨て場、コンクリートによって道が舗装されている。
遠藤はその地理を頭に叩き込むと、扉を閉め、鍵をかけた。

遠藤が目を付けたのは逃走経路であった。
このショッピングモールの出入り口はいくつかあるが、開いているのは正面の出入り口と先程の厨房の出入り口のみで、残りは鍵がかけられ、自力では出られないようになっている。
もし、誰かと戦闘となった時、その者が入り口を塞いでいたら・・・。

「勝ち目はないだろうな・・・」

遠藤は羽織っているトレンチコートの奥をのぞき見た。
ホルスターに納まる拳銃があった。
遠藤はそれを取り出す。

遠藤が支給された銃の正式名称は『コルトパイソン357マグナム』。
1955年にコルト社が開発したリボルバーであり、動作と仕上げの質の高さから『銃のロールスロイス』の異名を持つ。
勿論、これは名簿と同じように、主催者側からのボーナスである。
けれど・・・

47 :金の狩人(前編)10:2009/12/24(木) 14:16:00 ID:???
「銃弾が6発のみか・・・」

この銃には予備の銃弾が存在しない。
ハンマーに装弾されたもののみなのだ。
遠藤がこのゲームを開催するにあたって貢献していたとはいえ、過度に贔屓するわけにはいかない。
ここまでが主催者のできるギリギリの感謝の表現だ。
その上、もう一つ問題があった。

「銃を・・・扱ったことがないしな・・・」

使い手が素人、これが一番の問題である。
そのため、これまで行動を共にしていた森田に銃の存在を知らせなかった。
知らせれば、遠藤を信用していない森田は、それを逆手にとった戦略をとってきただろう。

要は遠藤のコルトパイソンは相手を脅す程度の効果しかない。
だからこそ、逃走経路の確保が重要だった。
幸い、厨房の出入り口はドアの内側についている鍵を指でつまんで回転させるタイプであり、
一度、内側から鍵をかけてしまえば、ピッキングの道具がない限り、外側から開けることは不可能である。
外に対しては防壁となるが、内側からは逃走経路となる。

「万が一は確保できたな・・・」
遠藤はほくそえみながら、指を見つめる。
心なしか、手が油でべとついている。
ドアノブや厨房内の取っ手を握った時についてしまったようだ。
遠藤は厨房の流し台にあるガス給湯器のスイッチを押して湯で油の汚れを落とす。
油の痕跡を見る限り、かつては何らかの目的で使用されていたようだ。

――こんな辺鄙な孤島で、巨大なショッピングモール・・・何のために・・・?

48 :金の狩人(前編)11:2009/12/24(木) 14:17:24 ID:???
ここまで考えたところで、遠藤はあえて追及するのをやめた。
遠藤の目的はゲームからの脱出であり、島の謎解きではないからだ。

遠藤は流し台の近くに無造作に置かれている雑巾の山から一番綺麗なものを選んで手を拭くと、厨房を離れた。

電源が入っていないため、作動しないエスカレーターを上り、衣料品・インテリアが揃う2階へ向かう。
そこの奥にあるベッド売場から毛布を一枚頂戴する。
少し冷え込んできたからだ。

ベッド売場から窓を見る。
そこには海が広がっていた。
本来、小売店では商品が太陽で変色することを避けるために窓を極力つけないようにしている。
しかし、このショッピングモールではあえて海が見える側にテラスを設け、風景を一望できるように配慮されていた。
海を見ながら、遠藤は思う。

――オレはこのゲームから逃げ出すことができるのか・・・。

島からの脱出。
それが遠藤の最終目標であったが、その方法は未だ見つかってはいない。
そのため、今は他の参加者よりも一歩抜き出た情報、最低限の武器、逃走経路の確保と、身を守る対策を立ててきた。
しかし、それで安全が保障されたわけではない。
正面の出入り口は全ての者を無条件で受け入れる自動ドア――誰もが侵入できる状況だからだ。

――より一層の安全が欲しい・・・。

そこで遠藤が考えたのが、零が沢田達に話した戦略である。

49 :金の狩人(前編)12:2009/12/24(木) 14:18:40 ID:???
ここまで考えたところで、遠藤はあえて追及するのをやめた。
遠藤の目的はゲームからの脱出であり、島の謎解きではないからだ。

遠藤は流し台の近くに無造作に置かれている雑巾の山から一番綺麗なものを選んで手を拭くと、厨房を離れた。

電源が入っていないため、作動しないエスカレーターを上り、衣料品・インテリアが揃う2階へ向かう。
そこの奥にあるベッド売場から毛布を一枚頂戴する。
少し冷え込んできたからだ。

ベッド売場から窓を見る。
そこには海が広がっていた。
本来、小売店では商品が太陽で変色することを避けるために窓を極力つけないようにしている。
しかし、このショッピングモールではあえて海が見える側にテラスを設け、風景を一望できるように配慮されていた。
海を見ながら、遠藤は思う。

――オレはこのゲームから逃げ出すことができるのか・・・。

島からの脱出。
それが遠藤の最終目標であったが、その方法は未だ見つかってはいない。
そのため、今は他の参加者よりも一歩抜き出た情報、最低限の武器、逃走経路の確保と、身を守る対策を立ててきた。
しかし、それで安全が保障されたわけではない。
正面の出入り口は全ての者を無条件で受け入れる自動ドア――誰もが侵入できる状況だからだ。

――より一層の安全が欲しい・・・。

そこで遠藤が考えたのが、零が沢田達に話した戦略である。

50 :金の狩人(前編)13:2009/12/24(木) 14:19:43 ID:???
『ギャンブルルームで1億円を支払えば、安全な時間を買うことができる』

零が目をつけたのはギャンブルルームである。
ギャンブルルームには “禁則事項”が存在する。

『ギャンブルルーム内での一切の暴力行為は禁止』

裏返せば、ギャンブルルームとは参加者間での殺し合いは完全に封殺されている、この島でもっとも安全な場所なのだ。


遠藤はその足で家電売場がある3階へ向かい、その奥にあるデスクトップパソコンの前に腰を降した。
パソコン画面を立ち上げる。
ほの暗いディスプレイの光が遠藤の視界に現れた。


沙織と赤松達のやりとりから、棄権申告場所が禁止エリアに指定されたD−4であることを知った。
安全を得るにはギャンブルルームで立てこもる以外方法はないようであるが、ギャンブルルームでは30分利用するごとに100万円払わなければならない。
1億円を集めた田中沙織であれば、2日間、ギャンブルルームで安全を購入することができるが・・・。

――オレのチップは1000万円・・・たったの五時間か・・・。

それ以上の金はどこでかき集めればよいのか。
ギャンブルルームで稼いでか?
誰かを殺害してか?

答えは両方ともノーである。
ギャンブルという不確定に身を委ねる気はないし、
武器が6発の拳銃では殺害スコアはたかが知れている。

51 :金の狩人(前編)14:2009/12/24(木) 14:20:26 ID:???
金をかき集める算段が見つからない今、やはりこのショッピングモールねぐらとするしかないようである。

――ほかの場所より物が揃っていると思えば、
    ありがたく思わなくちゃいけねぇのかな・・・。

遠藤はトレンチコートの内ポケットからCD―Rを取り出した。
森田のフロッピーのデータをCD―Rへコピーしたのだ。
コピーガードが付いているかと思ったが、意外とすんなりデータを保存することができた。
重要なデータのブロックがこんなに甘くていいものなのかと考えていたが、深く追求することはやめた。

遠藤は売場を見渡した。
売場の周囲のコンセントには至るところにノートパソコン用バッテリーが接続されている。
このバッテリーは森田が遠藤に要求したものであり、これを持ってきたとき、森田は姿をくらましていた。

――少々多すぎだが、これも保険だ・・・。

遠藤はパソコンの画面にデスクトップが表示されると、フロッピーのデータをコピーしたCD―Rを挿入した。

――もう少しで・・・第二回定時放送か・・・。

“いつまで続くんだが・・・”と愚痴を洩らしながら、遠藤はキーボードを叩き始めた。

52 : ◆uBMOCQkEHY :2009/12/24(木) 14:24:56 ID:???
こちらで前編終了です。
家の都合とサルさん防止のため、時間を置いて、後編を投下します。
もしかしたら、12時過ぎになるかもしれません…すみません。

53 :マロン名無しさん:2009/12/24(木) 14:32:59 ID:???
おつです
沙織は順調に壊れていってるな…

あと誤字発見
>>42
>グリップに何かに当たったようである。

54 :マロン名無しさん:2009/12/24(木) 15:02:25 ID:???
前編乙です!
後編も楽しみです

55 : ◆uBMOCQkEHY :2009/12/24(木) 18:13:40 ID:???
ただ今、戻りました。
また、出かけますが、
少々時間ができたので投下します。

>>53
ご指摘ありがとうございました。
wikeする時に修正します。

56 :金の狩人(後編)1:2009/12/24(木) 18:19:05 ID:???
時計が12時を指した。
闇の中から場違いなショパンの円舞曲が流れる。

『・・・参加者の諸君、ご苦労。黒崎だ・・・これより第二回定時放送を行う。
今回も復唱はしない・・・・・・よく聞いてくれたまえ・・・』

放送が始まった。
月明かりの下、沙織は先程の別荘からまっすぐ伸びる道路を目的もなくさ迷っていた。

『ではまず、前回から今回の放送までの間に敗れ去った敗者の名を発表する。
『有賀研二』、『三好智広』、『板倉』、『赤松修平』 以上4名』

「赤松・・・さん・・・」
沙織の足が立ち止まる。
赤松はマーダーになりかけた沙織を救おうと手を差し伸べた。
沙織は獣から人間に戻ることができた。
しかし、棄権ができない絶望から、再び、獣の道を選び、こともあろうに赤松に牙を向けた。

沙織が確認した時点では赤松は生きていた。
しかし、ここで呼ばれたということは・・・


「田中さん・・・」
背後から腕が伸び、沙織の頬と首をやさしく包んだ。
この指の感覚を沙織は知っていた。
「赤松さん・・・」
沙織は振り返ろうとする。
しかし、身動きを取ることができない。
沙織を包み込む手が沙織の頬と首を押さえつけているのである。

57 :金の狩人(後編)2:2009/12/24(木) 18:22:31 ID:???
――何で・・・!

手のぬくもりが冷水のような冷気に変わっていく。

「私・・・殺しちゃったの・・・?」
沙織は腕を押さえ、肩をがたがた震わせる。
そんな最中であっても、放送は淡々と進んでいく。


『前回と比較するとあまり芳しくないペースと言えるだろう・・・
色々と考えがあってのことなのだろうが・・・いたずらに時間を消費するなど愚の骨頂・・・!』


「私を恨んでいる・・・襲われる・・・」
恐怖が沙織の身体の中を走る。
――赤松さんから逃げなく・・・


『優勝の為・・・参加者諸君には今以上に努力していただきたい・・・
続いて、禁止エリアを発表する
重要事項であるため、聞き逃さないように願いたい・・・・・・』


沙織が身を強張らせた直後だった。
沙織の顔を包んでいた手に力が入り、そっと囁きかける。

「次は貴方だ・・・」

「きゃぁぁぁぁあああああああああああーーーーーー!!!!!!」

58 :金の狩人(後編)3:2009/12/24(木) 18:24:23 ID:???
「何っ!!」
遠藤は振り返る。
今、外から女性の叫び声が聞こえたからだ。

『・・・・・・・以上の2箇所だ』

「チッ・・・!」
遠藤は思わず、舌打ちをする。
先程の女の叫び声で禁止エリアを聞き逃してしまった。

――後でデータから確認すればいい・・・。

遠藤はD−6側を見渡せることができる窓から様子を見た。
そこには蒼白に顔を引きつらせた表情でショッピングモールへ向かってくる田中沙織の姿があった。

――よりにもよって、あの女か・・・!

今、殺害スコアをもっとも伸ばしている女性である。
データから読み取ると、カイジを裏切った後、行く先々で人を襲っていた。
もし、鉢合わせになれば、遠藤を狙うことは目に見えている。

59 :金の狩人(後編)4:2009/12/24(木) 18:28:05 ID:???
――逃げるか・・・!

遠藤はパソコン画面に向かい、CD−Rを抜こうとする。
しかし、その画面を見た途端、その手の動きが止まってしまった。
未だに、その画面はデータ受信を伝えるウインドウが動作していた。

――所詮・・・コピーだからか・・・。

森田のフロッピーの時は特殊な処理があったらしく、30秒ほどでデータが全受信させた。
しかし、今のCD−Rでは3分から5分ほどかかるようになってしまっていた。

――今、抜けば、データが壊れる可能性がある・・・。

このデータは遠藤の命綱である。
森田のようにぞんざいに扱うつもりは毛頭ない。
しかし、この間にも沙織はショッピングモールへ向かってくる。
ここで遠藤にある考えが過ぎった。

――あの女を殺害すれば・・・1億円か・・・!

60 :マロン名無しさん:2009/12/24(木) 18:30:06 ID:???
支援!!!

61 :マロン名無しさん:2009/12/24(木) 18:36:17 ID:???
支援

62 :金の狩人(後編)5:2009/12/24(木) 18:42:07 ID:???
沙織はショッピングモール内へ駆け込み、周囲を見渡す。
どこか物悲しさを感じさせるような閑散さが漂っている。

「赤松さんは・・・追ってこない・・・」

沙織は安堵の表情を浮かべる。
そもそも赤松は放送前に沙織によって命を絶たれており、沙織を追うなど不可能である。
あの赤松は彼女自身の恐怖が生み出した幻覚にすぎない。

「ここ・・・何・・・?」
沙織はショッピングモール内を徘徊し始めた。




「そうだ・・・もっと近づいてこい・・・」
遠藤はレジのカウンターの陰から沙織の様子を伺っていた。
その手には「コルトパイソン357マグナム」が握り締められている。
遠藤はデータのダウンロードを待つ間に、沙織を始末し、チップを奪う策を選んだのだ。

――あの女が射程範囲へ入ったとき、頭を狙う・・・!

遠藤は沙織に気づかれない程度に、顔をカウンターから出し、瞳を凝らす。
月明かりの逆光で、沙織の姿はシルエットのように、浮かび上がっている。

――確か、アイツの武器はボウガンだったな・・・

63 :金の狩人(後編)6:2009/12/24(木) 18:43:34 ID:???
その時、遠藤は沙織の手に握られている、あるものに気づき、酷薄な笑みを見せた。

――マシンガン!

以前、確認したデータによると、沙織のサブマシンガンウージーは故障か弾切れのため、動かなくなってしまっているらしい。

――あの銃は・・・ブラフってわけか・・・!

ボウガンよりマシンガンの方が相手に与える威圧感は大きい。
だからこそ、沙織はあえて鉄の塊となったマシンガンを所持しているのだろう。

――悪くない戦略なんだがな・・・。

遠藤はカウンターから腕を伸ばし、銃を構える。
狙うは沙織の頭部である。
標準がゆっくり動く。
激しく心臓が鼓動し始めている。
それを押さえつけるように、グリップを握る手に力を込める。
標準が沙織の顔の中心部を捕らえた。

――あばよ・・・田中沙織っ!

バン!!!

乾いた銃声が静寂のヴェールを突き破る。
薬莢がカランと床に落ちた。
それと同時に、沙織の一部が弾けた。
沙織はキャッと声をあげ、よろける。

64 :金の狩人(後編)7:2009/12/24(木) 18:44:42 ID:???
――やったかっ!

しっかり観察しようとカウンターから身を乗り出した瞬間、遠藤に戦慄が走る。
沙織がその場で踏みとどまったのだ。

――何だと!

沙織の身体は確かに弾けた。
しかし、弾けたのは頭部ではない。
沙織の髪の毛だったのだ。

「くっ!もう一発か!」

遠藤は腕を伸ばし、再び銃を構える。
沙織が顔を上げた。
燃え上がるかのような形相で、遠藤を睨みつける。
獣心が牙を剥きだした瞬間だった。

――何っ!

一瞬、遠藤は身が凍てつく感覚を覚える。
しかし、怯まない。
知っているからだ。

――お前の銃は弾切・・・

沙織の銃口が火を噴いた。
遠藤の右肩からパアッと真っ赤な血煙があがる。
遠藤の身体は体制を崩し、そのままカウンターの中へ倒れた。

65 :マロン名無しさん:2009/12/24(木) 18:47:17 ID:???
支援

66 :マロン名無しさん:2009/12/24(木) 18:56:53 ID:???
支援

67 :金の狩人(後編)8:2009/12/24(木) 18:57:01 ID:???
「うぐっ・・・!」

熱せられた鉄の棒を押し付けられたかのような熱い痛み。

――弾切れじゃなかったのかっ!

遠藤は知らなかった。
沙織が持っていた銃はサブマシンガンウージーではなく、三好が所持していたイングラムM11であったことを。
イングラムM11の全長はサブマシンガンウージーの半分ほどしかなく、大量生産、安価が売りの銃のため、全体的な作りはウージーに比べてお粗末である。
しかし、銃を普段使用しない一般人から見れば、サブマシンガンウージーもイングラムM11もマシンガンである。
もし、パソコンのデータがもう少し早く遠藤の元へ配信されれば、状況は変わっていたかもしれない。

怒りのままに、沙織はカウンターに向かって銃を発砲する。
ドラムの連打のような音がフロア内に響き渡る。
カウンターに蜘蛛の巣のような穴がいくつも空く。
銃弾がカウンターを貫通しているのだ。
遠藤は右肩を押さえながら、床に伏せ、銃弾の嵐が止むのを待つ。
右肩を負傷したせいで、右腕が思うように動かない。

――くそっ・・・どうすりゃいい・・・?

万事休すかと遠藤が腹を括った直後だった。
銃弾が止んだ。

――何が起こった・・・?

遠藤は肩を抑えながら、カウンターから顔を覗かせる。
沙織はイングラムM11のマガジンを投げ捨て、ディバックから新しいマガジンを取り出した。

68 :金の狩人(後編)9:2009/12/24(木) 18:58:03 ID:???
遠藤は直感した。

――二度目が来る!!

3階へ置きっぱなしにしたCD−Rが頭を過ぎる。
それがなければ、先程の放送で指定された禁止エリアの場所どころか、どこに危険人物がいるのか把握することもできない。
しかし、命あっての物種である。
遠藤はカウンターを乗り越え、食堂へ駆け出した。
目指すは厨房にある出入り口――逃走経路へ・・・。

「あ・・・!」
遠藤が逃げ出したのと、沙織がイングラムM11にマガジンをセットしたタイミングはほぼ同時だった。
沙織は横切った虫を目で追うかのような条件反射で遠藤の後を追いかけ、イングラムM11の引き金を引く。
乾いた音を響かせ、弾丸が床で弾ける。

遠藤はますます足を速める。
立ち止まれば、死ぬと直感が警告する。

メインフロアを横断し、食堂ホール、その一角にある飲食売店、そのカウンターを抜け、遠藤は厨房までたどり着いた。
厨房の出入り口は厨房の一番奥に位置する。
作業台と調理台の間の狭いスペースを抜ける。

目の前の流し台を横切れば出入り口が視界に入る。

――外に出て、林の中に逃げ込めば・・・

「見つけた!」
間髪入れず、沙織は発砲する。
遠藤の背後から一閃が走る。
弾丸が遠藤の頬をかすったのだ。

69 :金の狩人(後編)10:2009/12/24(木) 18:58:52 ID:???
――もう迫ってきやがったか!

遠藤が振り返ろうとしたその時だった。
目の前の給湯器からパチッと青白い火花が散った。

――まさか・・・

避ける間もなかった。
ガス給湯器が火を噴き、弾かれたように爆発した。

「うぐわぁぁっ!!!!」

遠藤は爆風で床に叩きつけられる。
給湯器があった場所から大量の炎がバネじかけのような勢いで伸び、
近くにあった雑巾、壁、こともあろうに出入り口までをも巻き込み、その火勢を増していく。

「う・・・うわぁぁぁーーーー!!!!」
炎が野獣にでも見えたのだろうか。
沙織は震えるような声を出して、厨房から逃げ出した。

「くそっ・・・!」

遠藤は半身を起こした。
遠藤の顔と衣類には煤がつき、頬の一部がやけどで赤く腫れている。

出入り口を確認した後、遠藤は深く考えもせず、ガス給湯器から湯を出していた。
ガスは厨房の出入り口の付近にあったプロパンガスから供給されている。
プロパンガス内のガスがなくならない限り、火の勢いが止むことはないだろう。
その上、この厨房は壁や出入り口のドアノブにはホコリでべとついた油汚れが付着していた。
炎の勢いが早いのは至極当然のことであった。

70 :金の狩人(後編)11:2009/12/24(木) 19:00:29 ID:???
「早く・・・逃げねぇと・・・」

遠藤は肩を押さえながら立ち上がり、燃え盛る厨房から離れた。

おそらくこのショッピングモールは全焼するだろう。
今、3階にCD−Rとノートパソコンが放置されている。

――火が3階に移動する前に取りに戻って、1階の出入り口から抜け出す・・・。

遠藤はそう算段し、メインフロアの様子を確認した。

「え・・・」

遠藤から思わず、困惑の声が洩れる。
沙織が正面入り口の前で衝撃を隠しきれない表情で煙を見続けているからだ。

――勘弁してくれ・・・!

ショッピングモールの正面出入り口は1階全体を見渡すことができる。
階段を上れば、遠藤の姿はすぐに沙織の視界に入ってしまうだろう。
しかし、この機を逃せば、CD−R――神の目は燃えてしまう。

――選択肢は一つか・・・。

遠藤は深呼吸をすると、弾かれたように全力疾走でエスカレーターへ向かった。

71 :金の狩人(後編)12:2009/12/24(木) 19:02:34 ID:???
「あ・・・」

エスカレーターを駆け上る遠藤を、沙織は異物を排除するが如く、銃を乱射する。
エスカレーターの手摺りや段に、焼けたような穴が次々と空く。

――早くあの入り口から去ってくれっ!

沙織の銃弾を避けながら、無我夢中で遠藤が祈ったと同時だった。

ゴゴゴゴゴ・・・ブォッ!

地割れのような轟音。
遠藤の目に飛び込んできたのは、決壊したダムの水のようにメインフロアへ押し寄せてくる炎の塊であった。
外のプロパンガスに引火したのだ。
焦熱の臭気が舞い上がる。

「あ・・・あぅぅ・・・」

沙織は身体を震わせる。
炎が襲ってくる。
沙織は後ずさりするとその場を後にした。
沙織が逃げ出した直後、炎はエネルギーを持て余した龍のように蛇行してメインフロアを包み込んでいく。

「うそ・・・だろ・・・」

遠藤はエスカレーターらその様子を呆然と眺める。
炎は沙織の撤退へと繋がったが、同時に遠藤の脱出経路も塞いでしまった。
ある意味、遠藤の願いは叶ったと言える・・・最悪の形で。

72 :金の狩人(後編)13:2009/12/24(木) 19:03:48 ID:???
「あの女は死神かっ!!!!」

遠藤は歯軋りする。
しかし、これ以上、沙織に恨み言を言っても意味がない。
煙は空気より軽いため、上の階に行けば行くほど、煙による一酸化炭素中毒で人事不省に陥る可能性がある。

――とにかく時間がないっ!

遠藤は再び、エスカレーターを走る。
熱風を含んだ煙が遠藤に絡みつく。
それを振り払うかのように、遠藤は全速力で駆け上る。
遠藤が3階へ到着すると、霧のようにうっすらと白煙が立ちこみ始めていた。
パソコンからCD−Rを取り出し、ノートパソコンとバッテリーをディバックの中に突っ込む。
遠藤はすぐさま2階へ駆け下りる。
少しでも地面に近い場所へ移動するためである。

遠藤は2階から1階の様子を確認する。

1階は火と闇が乱舞する地獄絵図となっていた。
炎と黒煙が轟々と音を立てて渦巻き、熱でガラスが飛散する音が耳に飛び込む。
1階に下りればどうなるのかは、明らかだった。


遠藤は2階のフロアを見渡す。
2階は衣料品・インテリアのコーナーである。
布団に、衣類など燃えてくださいと言わんばかりの商品が揃っている。

「ダメだ・・・」
遠藤はうな垂れる。

73 :金の狩人(後編)14:2009/12/24(木) 19:05:19 ID:???
――ここでオレの命は終わっちまうのか・・・。

その時、ある物が目に飛び込んできた。
遠藤に閃きが走る。

「まだ、可能性はある・・・!」

遠藤はそう呟くと、ベッド売場からに展示されていたマットレスを、テラスへ引きずる。
右肩がズキズキと痛むが、それに構っている暇はない。
テラスに到着すると、マットレスを地面へ落とす。
マットレスはワンバウンドし、地面に着地した。
やや建物から離れたが、ジャンプすれば届く範囲である。
遠藤はそれを確認すると、マットレスと同じように陳列されていたシーツの端と端を左手と歯を用いて器用に結う。
そうこうしている間にも、室内の温度はますます上昇し、火が這いずるように遠藤に近づいてくる。
遠藤に焦りの色が表れる。

――急げっ!!

やがて、一本のロープができた。
その端をテラスの鉄製の柵に結わえ、窓から垂らした。

即席のロープは地面より2メートルほど足りない。
本来なら、地面に付くほどまでの長さが欲しかったが、火勢がさらに強さを増し、2階へ迫ってきている状況がそれを許さなかった。

ロープで降りられるところまで降り、そこからマットレスへジャンプする。
マットレスで着地の際の衝撃を吸収させ、無傷に近い状態で退散する。

74 :金の狩人(後編)15:2009/12/24(木) 19:06:19 ID:???
即席の脱出装置であるが、手近であるものを利用し、短時間で準備するという制限の中であれば、最良の策であろう。
遠藤は左手でロープを掴むと、壁に足をかけ、慎重に降りていく。
ロープを握る手が緊張と熱で汗まみれになる。
滑らないように手にさらなる力を込め、マットレスの位置を確認しながら、地面を見下ろした。

――落ち着いて飛べば・・・上手くいくっ!

この時、思いもよらないことが起こった。
シュルっと布と布がすれる音と共に、遠藤の身体が重力で地面へ引っ張られたのだ。
結い方が甘かった。

――やばいっ!!

遠藤が異常に気づいた時、ロープの結び目は解けていた。

「うわっ!!」

マットレスの位置を確認する余裕はなかった。
遠藤は足から崩れるように地面と衝突した。
左足がボキッと折れ、激痛が身体を突き抜ける。
遠藤はその場に倒れこみ、足を押さえた。

75 :金の狩人(後編)16:2009/12/24(木) 19:07:18 ID:???
「くっそぉ・・・」

こうして痛みを堪えている間にも、異常に気づいた参加者が近づいてくる恐れがある。
もし、その参加者がゲームに乗っていたら・・・。

「オレは・・・格好の餌食だ・・・」

遠藤は肩からゼェゼェと息をしながら、近くの木に背中をもたれるように立ち上がる。
鼻腔に濁った熱い空気が入り、呼吸がますます乱れる。

「早く・・・離れねぇと・・・」

遠藤は左足を引きずりながら、一歩一歩歩き始めた。
闇に黒煙と火柱をあげて燃え上がるショッピングモールを背にして――。



【D-8/ショッピングモール付近/深夜】

【遠藤勇次】
 [状態]:右肩銃創 左足骨折 頬に火傷
 [道具]:参加候補者名簿  コルトパイソン357マグナム(残り5発) ノートパソコン バッテリー CD−R(森田のフロッピーのデータ) 不明支給品0〜1 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:その場から逃げる
※森田に支給品は参加候補者名簿だけと言いましたが、他に隠し持っている可能性もあります。
※森田の持っていたフロッピーのバックアップを取ってあったので、情報を受信することができます。
  そのデータはCD−Rにコピーしましたが、データ受信に3〜5分ほどかかります。
※沙織の叫び声のせいで禁止エリアの放送を聞き逃してしまいました。

76 :金の狩人(後編)17:2009/12/24(木) 19:08:15 ID:???
【D-6/ショッピングモール付近/深夜】

【田中沙織】
 [状態]:精神崩壊 重度の精神消耗 肩に軽い打撲、擦り傷 腹部に打撲 右腕に軽い切傷
 [道具]:支給品一式×3(ペンのみ1つ) イングラムM11 30発マガジン×3 包丁 マガジン防弾ヘルメット 参加者名簿 ボウガン ボウガンの矢(残り6本) 手榴弾×1  
 [所持金]:1億200万円
 [思考]:絶望 武器が欲しい 死にたくない 一条、利根川幸雄、兵藤和也、鷲巣巌に警戒 カイジから逃れる 涯、赤松、その二人と合流した人物(確認できず)に警戒 黒沢、石田に警戒
※標の首を確認したことから、この島には有賀のような殺人鬼がいると警戒しています。
※今の沙織は感情のままに行動をするようになっております。

※サブマシンガンウージー(弾切れ)、三好の支給品である、グレネードランチャー ゴム弾×8 木刀 包丁 支給品一式、有賀が残した不明支給品×6がD-5の別荘に放置されております。

77 : ◆uBMOCQkEHY :2009/12/24(木) 19:15:54 ID:???
こちらで以上です。

すみません。
ショッピングモールを燃やしてしまいました。
イブに不吉なネタを・・・。

皆様、よいイブをお過ごしください。


78 :マロン名無しさん:2009/12/24(木) 20:08:42 ID:???
乙です
遠藤完全にミスったなw足折ったままどう戦えとww
神の目もなくなったし

そして今の沙織はまさに死神
さあ次はどんな死亡フラグをたてるのか?


79 :マロン名無しさん:2009/12/24(木) 21:05:49 ID:???
圧倒的乙…!
迫力のある展開で面白かった!
沙織…ある意味すごい大活躍ですな…

今まで甘い汁吸っていた遠藤、これからは困難だらけだな

ショッピングモールはでかいから島のどこからでも火事に気が付けそうだ…夜だからとくに目立つだろうな
波乱の予感っ…!

80 :マロン名無しさん:2009/12/24(木) 21:52:10 ID:???
沙織の状態表が泣ける…

81 : ◆iL739YR/jk :2009/12/25(金) 09:42:03 ID:???
これより投下します

82 :夢幻  ◆iL739YR/jk :2009/12/25(金) 09:49:57 ID:???
「零…大丈夫か…?」
先に口を開いたのは沢田だった……
第二回定時放送、そこで語られたのは『板倉』の名前。これで…零の知り合いは全滅……
「はい…大丈夫です!」
沢田と涯の視線から彼らが自分を気遣う気持ちが痛いほど分かった。だから…零は強く答える。自分は大丈夫だと…
「そうか…だったら今はとにかく二人とも休め…見張りはしてこくから、何かあったらすぐに起こす…」
沢田の言葉に涯は黙って頷き、床に突っ伏す。そうとう眠気を我慢していたのだろう。
「では…後少しなので、標のメモを読み終えたら、休ませてもらいます…」
「…あまり無理するなよ」
沢田は何かを忘れるようにメモに没頭する零にそう言うことしかできなかった。

標のメモを読み込むにつれて、零は改めて標の偉大さを思い知らされた…
ゲーム序盤にして早々と対主催の道を選び、付け入る隙…穴を探して動いていた。
そして彼は見つけていた…首輪の盗聴機能に謎の灯台の存在を…
どちらもこの現状では重要な情報…特に盗聴機能は厄介…
先程、提案したギャンブルルームで安全を買う戦術。これも当然、主催の耳に入ってしまっている筈…
…ということは仮にある程度の人数でギャンブルルームに閉じこもる動きがあれば、そこは真っ先に禁止エリアに指定されてしまうだろう。
もしこのことに気づいていれば迂闊に発言することなどなかった…標がこんな重要なことに気づいていた同じ時間…そのころの自分といえば、イカサマ麻雀で金を稼ごうとしか思っていなかった。
圧倒的思考の差…センス…能力…
(標…もしここにいてくれたら……)
そんな適わぬ願いを思い浮かべたとき…急に零の視界は暗転した。



83 :夢幻  ◆iL739YR/jk :2009/12/25(金) 09:51:44 ID:???

闇…闇…見渡す限り果てしなく続く深い闇……
零は突如としてそこに放り込まれた。
(どこだ…ここは…涯…沢田さん…!)
当てもなく闇の中を彷徨った零の目の前に、見覚えのある男性の姿が現れた。
(末崎…!?)
「零…もう無理だ…こんな島…抜ける…抜けるんだ! こんな首輪なんか!」
やめろ! 零はそう叫びたかった。しかし、それより早く末崎は自らの手で首輪を引きちぎり、閃光と爆音を連れて闇の中に消えていった。
「…駄目ですよ、兄さん。無用心すぎます…」
再び零の耳に飛び込んでくる聞き覚えのある声…
(板倉…さっき放送で呼ばれたばかりなのに……)
「首輪は主催が参加者を縛る枷…そんな簡単には外せやしませんよ…」
そういうと板倉は遠方を指差す。そこにはいつの間にやら灯台が建っていた。
「禁止エリア内にあり、人が管理していて、アンテナで何かを送受信する施設…となれば答えは一つ…」
板倉が手にしたボウガンで灯台を射抜くと、それは先ほどまで聳え立っていたのがまるで嘘のようにあっさりと消えてしまった。
「これで主催者は首輪を起爆できない…これが正解…!」
そして、板倉も自らの手で首輪を引きちぎる…その直後、末崎同様、彼もまた爆発とともに闇の中に消えていった。



84 :夢幻  ◆iL739YR/jk :2009/12/25(金) 09:53:53 ID:???
ここまでくると流石に零も気づいていた。そう…これは夢…メモを読み終えた自分はいつの間にか寝てしまっていた…だから見る夢…
どうせ夢なら…そう…夢ならもう少し…続いて欲しい…そして…
「零…」
語りかけて欲しい…そう思ったとき、彼は現れた…
(標……)
やっと会えた…心強い仲間…自分を上回る圧倒的知力…一緒に解き明かしたい謎が…倒したい敵が……
零の胸をあらゆる思考が駆け巡る……あれも聞きたい…これも聞きたい…逆にあれも聞いて欲しいし、これも聞いて欲しい……
それらが零の口から今にも飛び出しそうな…そんなとき、標の口が先に開いた……

「首輪は外せない…」

えっ………

その一言に零の思考が止まる。首輪は外せない……何を言っているのか零には分からなかった……

「首輪は主催が参加者に対して優位に立つ為に必要な絶対条件…参加者が短時間でそんな簡単に解除できるような…そんな甘い仕掛けにするくらいなら…こんなゲーム…始めから成立しない……
入念な準備…幾重にも張り巡らされた対策…それを敗れるのは主催が用意した正規の方法…ただ一つ…そうするのが鉄則……故に参加者が自力で解除するなど…不可能……」

それはそうだ…そんなこと誰しも一度は考える…だが、そこに主催さえ気づかぬ穴があるのではないのか…? その為に動いていたのではないのか…? 標……!

「零…君の言いたいことは分かってる…でも、僕は感じた…首輪の…いや、ゲーム自体の『滅び』を…
そうじゃなかったら…勝算がなかったら…あんな序盤からゲームを潰しにはかからない…本当に王の試験だって可能性もあったしね……」

そう言うと標は自らの首輪を指差した。

「首輪は外せない……零……」

(標…標…!)



85 :夢幻  ◆iL739YR/jk :2009/12/25(金) 09:55:03 ID:???
「零…零…!」
気がつくと零の目の前には涯と沢田がいた。
「大丈夫か…ずいぶんと魘されてたぞ……」
寝汗を拭けと言わんばかりに涯はタオルを差し出す。
「お友達の夢でも見てたのか…?」
沢田の言葉に零は必死で夢の記憶を辿る…あれは何だったのか…メモの内容を整理していた脳が見せた考察の欠片か…それとも本当に標や板倉、末崎たちが…
そんなことありえないのは分かってる…でも、そう思いたいときもある……
一番印象に残っているのは夢の最後……標は自らの首輪を指差していた。
「紙…の首輪…」
「は…・?」
唐突に零の口から飛び出してきた言葉に沢田も涯もあっけにとられる。
「標の首に嵌められてた首輪…まるで玩具みたいに…首輪で出来てた……」
なんだ…夢の話か…涯と沢田は互いに顔を見合わせると少し笑って、再び零と向き合う。
「やっぱり疲れてるみたいだな…今はゆっくりと休め…零…」
沢田の優しい言葉に触れ、零は今度こそ自覚したまま眠りに落ちていくのを感じていた。
(でも…さっきの夢…気になるな…標…)
願わくば…もう一度会いたい…そんな願いを込めて…零は再び眠りについた。

(やっぱりまだ子供だな…)
夢に魘され、寝言を呟く。どんなにしっかりしていても、所詮まだ子供。
だからこそ、自分が今やるべきこと…彼らを守る…必ず…
眠りに耽る子供二人のそばで沢田は静かに辺りに気を配り続けた……
この島の夜は……まだ長い………


86 :夢幻  ◆iL739YR/jk :2009/12/25(金) 09:56:55 ID:???
【E-3/民家/深夜】

【工藤涯】
 [状態]:健康 右腕と腹部に刺し傷 左頬、手、他に掠り傷 両腕に打撲、右手の平にやや深い擦り傷
     (傷は全て応急処置済み) 睡眠中
 [道具]:鉄バット 野球グローブ(ナイフによる穴あり) 野球ボール 手榴弾×8 石原の首輪 支給品一式×3
 [所持金]:1000万円
 [思考]:零と共に対主催として戦う 首輪の構造を調べる 
※石原の首輪は死亡情報を送信しましたが、機能は停止していません。

【宇海零】
 [状態]:健康 顔面、後頭部に打撲の軽症 両手に擦り傷 睡眠中
 [道具]:麻雀牌1セット 針金5本 標のメモ帳 不明支給品 0〜1 支給品一式
 [所持金]:0円
 [思考]:対主催者の立場をとる人物を探す 涯と共に対主催として戦う 標のメモを分析する 休息をとる
※標のメモ帳にはゲーム開始時、ホールで標の名前が呼ばれるまでの間に外へ出て行った者の容姿から、
どこに何があるのかという場所の特徴、ゲーム中、出会った人間の思考、D-1灯台のこと、
利根川からカイジへの伝言を託ったことなど、標が市川と合流する直前までの情報が詳細に記載されております。

【沢田】
 [状態]:健康
 [道具]:毒を仕込んだダガーナイフ ※毒はあと一回程度しかもちません
     高圧電流機能付き警棒 不明支給品0〜4(確認済み) 支給品一式×2
 [所持金]:2000万円
 [思考]:対主催者の立場をとる人物を探す 主催者に対して激しい怒り 赤松の意志を受け継ぐ 零と涯を守る 見張りをする

87 :夢幻  ◆iL739YR/jk :2009/12/25(金) 09:58:40 ID:???
以上で投下を終わります。

88 :夢幻  ◆iL739YR/jk :2009/12/25(金) 10:02:34 ID:???
失礼しました

>>85
>「標の首に嵌められてた首輪…まるで玩具みたいに…首輪で出来てた……」
この一文を

「標の首に嵌められてた首輪…まるで玩具みたいに…紙で出来てた……」
に修正します。

89 :マロン名無しさん:2009/12/25(金) 11:00:02 ID:???
乙ですっ…!
零の見た夢の内容が気になりますね

>紙の首輪
これが何を意味しているのか…?
零の優秀な頭脳が、標のメモから何を導き出したのか…?
気になる…!

90 :マロン名無しさん:2009/12/25(金) 12:23:53 ID:???
投下乙です
まさかの標再出張 また新たなフラグが立ちましたね
とても面白かった
首輪…紙…この二つの符合が意味するものは…

ところで質問が 零の知り合いは全滅 とあり沢田さんと涯が零を気遣ってましたが
零達が覇王伝組全滅と判断するだけの情報ってあったっけ?

91 :マロン名無しさん:2009/12/25(金) 15:52:18 ID:???
>>90
普通に放送聞いただけじゃね?
零以外全員名前呼ばれたし

92 :マロン名無しさん:2009/12/25(金) 16:08:16 ID:???
たぶん>>90の指摘は、
零がどこかで参加者名簿に目を通してない限り、誰が参加してるか把握しきれてない筈なので
覇王伝組が「全滅」したって分からないのではないか、という指摘だと思う。

ただ、確か零初登場のリレー小説の中ではユウキやヒロシは脱落してるので義賊組はバトロワ不参加だと零は分かってるし、
自分の知り合いは板倉でおそらく全滅だろう、と零が考えてもおかしくない

つまり今回の話での記述は不自然じゃないと思いますよ

93 :マロン名無しさん:2009/12/25(金) 18:54:50 ID:???
情報交換はもう済んでるのでは

94 :90:2009/12/25(金) 19:01:10 ID:???
>>92の補足通りの意味の質問でした 言葉足らずで申し訳ない
けど勘違いだったね 零初登場時にユウキやヒロシに触れてたのを見落としてた…
失礼しました

95 :マロン名無しさん:2009/12/25(金) 19:04:37 ID:???
確認してみましたが60話の「状況」で情報交換しています

連レスすみません

96 :90:2009/12/25(金) 19:38:12 ID:???
>>95
うお 零はしっかりホテルの時点で覇王組参加者の把握してたっぽいですね さすが雲上人
確認までさせてすみませんでした 全然読み込みが足りてない…
重ね重ね失礼しました ROMってもう一度最初から読み返してきます

97 :マロン名無しさん:2009/12/25(金) 20:09:45 ID:???
したらばに質問スレがあるので疑問点があったらまた使って下さい

半年ROMるより書き込んでくれたほうが助かる

98 :代理投下1/2:2009/12/26(土) 02:37:18 ID:???
まとめサイトに夢幻を修正し、アップしました。

夢という形ですが、零メンバーがオールスターというのが、
嬉しかったです。特にさくらが・・・。
この夢がのちに零にどのような影響を与えるのか楽しみです。

大分、遅くなりましたが、
以前、お話しました人気投票なのですが、
こんな感じしたいというもの私なりにまとめてみました。

99 :代理投下2/2:2009/12/26(土) 02:39:22 ID:???
投票形式:順位ポイント制
     1位を5P、2位を4P、3位を3P、4位を2P、5位を1Pとして計算します。
     ちなみに必ず、5位まで決めなくてはならないということではありません。
     1位のみであれば、一位のみの記入で構いません。

投票対象:2週間連続集計で、
     第一週目は第一回定時放送前――対象作品 000話『序章 〜狂宴〜』から061話『第一回定時放送 〜謀略〜』――の全62話
     第二週目は第一回定時放送後から第二回定時放送まで――対象作品 062話『変化』から113話『第二回定時放送 〜起爆〜』――の全40話

投票期間:ともに1週間。
     第一週目は12月28日0時から1月3日の0時まで。
     第二週目は1月4日0時から1月10日0時まで。

投票部門:・総合部門(作品名で投票)  総合的に好きな作品に投票。
     ・MVP部門(キャラ名で投票)  輝いていたキャラ、頑張っていたキャラに投票。
     ・名言部門(作品名とそのセリフで投票)  心に響いたセリフに投票。
     ・ギャンブル部門(作品名で投票)  このロワで行われたギャンブルに投票。

投票場所:したらばに専用スレを設けてそちらで投票。 テンプレ準備します。

投票発表:本スレにて、発表。
     その際、パーソナリティーとして、死者スレから誰かを出張させます。 多分、神威ファミリーが勤める可能性が大きいかも。

お祭り企画なので、投票の際にはほかのロワのようなトリップやIDなどは求めませんが、組織票はご遠慮ください。

・・・という感じなのですが、 いかがでしょうか。
この内容で人気投票を開始してよろしいでしょうか?

100 :代理投下した者:2009/12/26(土) 02:41:30 ID:???
改行規制出たので、勝手に段組み変えてすいません…。
投票すごく楽しみにしてました!
この形式で問題ないと思います。

101 :マロン名無しさん:2009/12/26(土) 18:38:46 ID:???
パーソナリティって必要かな?
個人的には死者スレのノリはあんまりこっちでは見たくないかも…。

102 : ◆uBMOCQkEHY :2009/12/26(土) 23:21:45 ID:???
代理投下してくださった方ありがとうございました。

>>101
パーソナリティの件ですが、
お祭り企画なので、あのメンバーで行うと
皆様にも楽しんで頂けるかなと考えたためなんです。

それに票の結果によっては照れくさくなってしまうので、
彼らというクッションがいると私としても紹介しやすいかなと思ってしまったり…。

ただ、あのハイテンションなノリが苦手というのも
前々からそのようなご意見の書き込みがあったので理解はできます。


では、結果発表は僭越ながら、私の文による紹介でよろしいでしょうか?

極力公平になれるように努力します。

103 : ◆6lu8FNGFaw :2009/12/27(日) 01:05:16 ID:???
>では、結果発表は僭越ながら、私の文による紹介でよろしいでしょうか?
いいと思いますよ。
投票は28日からですね、楽しみにしております…!

今から投下します。

104 :帝王1/12:2009/12/27(日) 01:07:16 ID:???

そこは洞窟のように真っ暗な場所であった。
暗く陰気な部屋の中、モニターの光が壁に反射して機械の輪郭を僅かに浮き上がらせている。
ファンが数台駆動している為、重なり合うようにそれらの羽音が周囲に絶えずこだましている。
ピピッと小さな電子音が聞こえ、部屋中央に設置してある大きなスーパーコンピュータから送られてきた情報が、
文書のアイコンとなってノートパソコンのモニタに表示される。

しきりにキーボードを叩いていた黒服が手を止め、アイコンをクリックすると、自動的に印刷画面のウィンドウが開く。
黒服が二、三度クリックすると、やがて傍にあったプリンタから書類が印刷され始める。

書類の束をそろえ、黒服は立ち上がり数歩先にあるリクライニングチェアまで歩き、お辞儀をする。
重厚な革張りのチェアに座り、眼前に広がる大画面をじっと見つめていた老人に声をかける。

「会長…また新しい情報が届きました。黒崎の動きです。
例のクレーム…首輪の疑問に対する返答を纏め、お客様に説明が済んだ模様です」
「それで…?」
「は…?」
「黒崎が動いた…それだけじゃあるまい」
「は…。後藤が黒崎の元へ乗り込んできたようです。例の森田の件です。
だが、急に手のひらを返すように大人しくその場を立ち去ったとの事。
後藤と何か密約を交わしたと考えられます」
「密約とはどういった内容か…?」
「は…。まだ内容を掴んでおりません。スパコンの予測もまだ出ておりません」
「『それ』が分からなければ意味があるまい…早急に予測し、予測から探り、足がかりを掴め。それまで儂の元に持ってくるな」
「かしこまりました…」
黒服は下がり、再びキーボードを叩く。会長は再び眼前の壁一面に広がる大画面を見つめる。
そこには今、とあるギャンブルルームが映し出されている。談笑する3人の男。自分の元部下二人と、我が息子の姿。

105 :帝王2/12:2009/12/27(日) 01:10:12 ID:???
「愚かなものよ…」
画面を見つめながら、兵藤和尊はそろりと蛇のような笑みを漏らした。


会長の右手には、テレビのリモコンそっくりの機械。リモコンのボタンにはそれぞれ参加者の名前が書かれてある。
全ての参加者の名前が書かれている訳ではない。兵藤が参加者リストに目を通し、これはと思う人物のみに絞っている。
そして、そのボタンに名の書かれた参加者達の大半は生き残っている。
『田中沙織』のみ急遽別チャンネルを作らせ、予備チャンネルに入れていつでも鑑賞できるよう設定してある。

ここはD-1、標が目をつけていたあの『発電所』。
発電所の地下には兵藤会長の為だけの『王国』…個室が設けられていた。
他の主催達とは別行動を取り、機械に強い二人の黒服のみを連れ、島の端に篭っているのには理由があった。
兵藤和尊は楽しみたかったのだ。
このゲームに関わっている主催者、関係者、ギャラリーそして参加者達全ての中で一番このゲームを『貪欲に』楽しみたかった。

ここに運ばせたスーパーコンピュータの存在はほんの一部の人間しか知らない。
黒崎にさえ、スパコンの性能がどれほどのものであるかと言うことは教えていない。
スパコンはAI(人工知能)が搭載されている。
ギャラリーに送っている情報よりもずっと大量の精度の高い情報を処理している。
その中で会長の好みそうな情報を見分け、抽出して簡潔にまとめ、黒服のパソコンへと送っている。

ギャラリーに送っている情報などほんの表面、一部の出来事に過ぎない。
会長はこの島で一番正確に情報収集の出来る立場にあった。

106 :帝王3/12:2009/12/27(日) 01:13:30 ID:???

例えば監視カメラ。
1000台島に備え付けてあったとして、他の主催陣にはその半分の台数のみしか申告していない。
他の主催者達がいる施設に於いてもそうである。
このバトルロワイアルの運営を任されている帝愛のトップであるからこそ出来ることであった。

第二放送前、黒崎と森田の契約を真っ先に兵藤が知ったのも、この設備があってこそであった。
モニターで二人のやりとりを見ながら、会長は内心心踊る思いであった。

早速『ギャラリーの一部』からの送信と見せかけ、黒崎と森田の映像をギャラリーに流し、抗議する旨を煽っておいて、
黒崎が第二放送を流す数十分前をわざと狙い、黒崎に連絡した。

 『10分以内に準備し、お客様に説明を…』
 『…5分だ』

ブチッと一方的に回線を切った後、会長はそれまでの怒りの表情から一変、にやりと笑みを浮かべた。
「ククク…クゥクゥクゥ……」

(黒崎はさぞ慌てていることであろうの…!それというのも、生半可な動き方をして隙を見せるのが悪いんじゃ…!)

黒崎の独断に満ちた行動は、兵藤にとって格好の『標的』であった。
これを契機に、会長は黒崎に休む余裕を与えぬよう、次は『首輪に欠陥はないのか』という内容を掲示板に書き込むよう指示する。

107 :帝王4/12:2009/12/27(日) 01:14:56 ID:???

ギャラリーのパソコンから、あるサイトへとアクセス出来るようになっている。
『バトルロワイアル』と書かれたトップページに書き込まれるのは、
主催からギャラリーへの連絡や、その日の天気、気温などを伝えるような差し障りの無いものである。
トップページに『お客様の声』という簡単な匿名掲示板のリンクが貼られている。

この掲示板、匿名といっても、下手なことを書き込んで、書き込んだ元を辿られては適わないと、あまり利用する者はいなかった。
だが、閲覧はしているようで、一度書き込んだ『首輪への不安』に対する反響は少なからずあった。
黒崎宛で首輪に関する質問のメールが殺到したようである。

黒崎は苛立ちを隠せないまま第二放送を終え、首輪に関するクレームの処理に追われることとなった。
だが、その合間にちゃっかり後藤とも話をつけた様であるから感心する。

兵藤は黒崎の足を引っ張りたいのである。
黒崎が兵藤に断りなく独断で動き回っているのは、蔵前、在全と『自分が』取引をし、繋がりたいからである。
兵藤を差し置き、黒崎自身が、である。
理由は明白。黒崎は、蔵前、在全両氏の力添えを盾に、兵藤を蹴落とし、帝愛トップの座を手に入れたいと考えているからである。
このゲーム…バトルロワイアルでの結びつきをを切欠にして。

そんな大胆ともとれる黒崎の行動。
兵藤会長は黒崎を快く思っていない、だから黒崎の邪魔をしたいのであろうか?

答えは否。
兵藤会長は黒崎の事を頼もしく思っていた。

108 :帝王5/12:2009/12/27(日) 01:17:30 ID:???

今の状況を兵藤は前もって予測していた。
黒崎がバトルロワイアル前から、秘密裏に組織内部に手を廻し、帝愛No1の座を狙っていることは知っていた。
この大掛かりなゲームに乗じて、在全や蔵前に力添えを頼むであろうことも予想できたことである。

(帝愛のNo2は、そのくらいでなければの…!そうでなければ儂の一つ下の位置に存在する価値など無い…!
No2は、No1にとって脅威になる位の野心家でなければならぬ…!)
会長は黒崎の野心を高く買っていた。

その、ある種異様な考え方は…かつてのNo2…利根川が失脚した原因にも繋がる。



利根川はNo2で満足していた。
どれ程日々の仕事を滞りなくこなそうとも、どれ程会長の性格を理解し、会長に尽くそうとも、
利根川には(兵藤会長の考える)一番大切な資質が欠けていた。

…そんな利根川の本質を試そうと考えているとき、兵藤の前に格好の『当て馬』が現れた。
死の橋を一人渡りきり、透明な階段を上り、会長の前に現れた若者。
その男は『船』の中でもひときわ目立つ存在であった。
わめき散らしている事は支離滅裂、目茶苦茶だが、その目茶苦茶を己の行動を以って通すような男。

109 :帝王6/12:2009/12/27(日) 01:19:49 ID:???

その『当て馬』を利根川にぶつけた。
利根川の絶対有利、どう考えても負けるはずの無い状況で、利根川は一度負けた。
対戦していた男が弱気に流れ、直前でカードを逆に出したのだ。

兵藤会長はここぞとばかり利根川を罵り、杖で打ち据えた。
ここでの折檻の意味は二つあった。
一つは衆人環視の中、利根川を冷遇するための理由を作ること。
もう一つは対戦相手の男に『ヒント』を送るためであった。

もっとも二つ目に関しては過剰に期待していたわけではない。
ここでヒントを生かすような男であれば、多少面白い展開になると踏んでのことだ。
駄目なら駄目で構わない。対戦相手の『新しい死に方』を楽しむだけのこと。
駄目でなかったなら、利根川を失脚させるための布石、口実になる。

結果、予想以上に手間が省け、予想以上に楽しませてもらった。


王は負ける戦はしないのである。
あの勝負は、どっちに転んでも兵藤にとっては『勝ち』であったのだ。



「会長…」
もう一人の方の黒服の声で、兵藤は回想から引き戻された。
「『首輪』や『後藤との密約』とは別件ですが、こんな出来事が…」
「何だ…?」

110 :帝王7/12:2009/12/27(日) 01:21:14 ID:???

兵藤が目を通す。それは村岡が黒崎に宛てた『嘆願』であった。
「何だこれは…?」
「は…。一度目を通して頂いたほうが良いかと判断しまして…」
「クク…色々考えるものだの…!」

兵藤は黒服に書類を突き返した。
「放っておけ…。そのうち黒崎が良いように動くだろう。
黒崎が接触するようなら、また森田のときのように黒埼に連絡し、焦らせる口実になる」
「は…」
黒服は書類を丸め、下がりかけたが、兵藤がそれを呼び止めた。

「ところでお客様の様子はどうなっておる…?」
「は…。『首輪』では、『森田』の時ほどは動きは無いようです。
実際、『森田』の件で広間に集まった時も、会話どころか情報交換もありませんでしたし…。
一人個室にいるのとあまり変わらぬ、余計なリスクは御免と判断しているようです」
「そうか…。実に好都合。
例のコミュニティもずいぶん書き込みが増えているようじゃの…。
お客達は個別に切り離されているが故に、手元に届く唯一の情報を全てと思い込むようになる。実に理想的…!」
兵藤会長は手を叩いて喜んだ。

111 :帝王8/12:2009/12/27(日) 01:23:59 ID:???

「最も…そうなるように仕向けたんだがのう…!あのお方々は、このゲームの顛末を見届ける大事な証人…!
儂の思い通りにゲームが終了したとき…。
結果を脳裏に刻み込んでもらうための『唯一の生き証人』じゃからの…!」

兵藤が右手に持っているリモコンのボタンを押すと、パッと場面が変わった。
そこは海だった。
カメラの中央に、波間にぽつんと船が一隻浮かんでいる。島は見えない。
カメラの映す遠景では小さく見えるが、それは豪華客船であった。
かつて一夜限りのギャンブル・クルーズとしても使われたことのある船…。
その名はエスポワール…『希望』の船………!

ギャラリーはエスポワールに乗り込み、島から遠くはなれた沖に碇を下ろしていた。
島の内部ではない。
島の中では殺し合いをやっているのである。そんな危険な場所で、誰が安心して観戦していられよう。
『セーフティの愉悦』をお客様に実感して頂くため、ギャラリーは島から遠く離れた船の中で、
ノートパソコンから受信した情報でこのゲームを『観戦』しているのである。

会長は『あること』を目論んでいた。
壮大な野心。王にしか抱くことの出来ぬ恐るべき計画。
それは、首輪をつけた参加者のみならず、主催者、関係者、『島にいる全ての人間』を『参加者』に見立てた上で、
この島で唯一人、兵藤和尊が『優勝』すること。
そして、その力を船にいるギャラリーに誇示すること。


優勝…つまり、この島で唯一人、生き残るということである。

112 :帝王9/12:2009/12/27(日) 01:26:25 ID:???



ここで、バトルロワイアルが開催されるまでの経緯を説明する。
バトルロワイアルは在全グループが『新しいギャンブル』として帝愛、誠京に持ちかけてきたものであった。
在全は、『新しいギャンブルで優勝した、優秀な参加者一名のみを選出、その人物を自分の代打ちにする』という、
純粋にその目的のみで開催したいと考えていた。

だが、兵藤は在全から話を持ちかけられた時から、在全グループ、誠京グループを吸収する計画を思い描いていたのだった。

帝愛のノウハウを生かし、ゲームを細部まで計画し、企画書を在全グループに提出した。
そして是非ともゲーム進行を任せて欲しいと在全に頼んだ。
もちろんこれは表向きの理由である。
実際のところは帝愛No2の黒崎を重要ポストにつかせ、帝愛有利に進めるための進言であった。
後藤は帝愛の魂胆を見抜き、懸念していたようであるが、在全の決定には逆らえなかった。



ここまでゲームのお膳立てをしておいて、何故兵藤は黒崎の足を引っ張り、
ひいてはゲームそのものの足を引っ張ることを画策しているのか。

兵藤は、対主催陣と主催陣がぶつかりあい、互いに共倒れになることを望んでいた。
若しくは、対主催の参加者達が主催者達に反抗し、主催者達を倒してくれれば良いと考えていた。
そうなれば兵藤にとっては漁夫の利である。
労せず理想的状況が手に入る。

113 :マロン名無しさん:2009/12/27(日) 01:40:12 ID:???


114 : ◆6lu8FNGFaw :2009/12/27(日) 02:59:12 ID:???
さるさんになりました…
どなたか代理投下をお願いいたします。

115 :帝王10/12 代理:2009/12/27(日) 10:41:41 ID:???
その為に、多少参加者に有利な状況…主催者の足並みの乱れなど…を用意してやることが先決である。
主催陣の足を引っ張り、参加者には塩を送る。それがこれから兵藤のやろうとしていることであった。

兵藤は、対主催の立場をとっている参加者ばかり残った現状を喜んでいた。
兵藤は単独行動をとっているので、主催者達の陣営が堕ちても兵藤には被害が及ばない。
この隠れ家を見つけられぬ限り。
主催者達を倒してくれた後は、対主催や生き残りのゲーム参加者、全てを首輪爆発で殺せばゲーム終了である。
ギャンブルルームで勤務している黒服達に至っては見捨てるつもりであった。


リスクが無いわけではない。
主催陣に思惑を見抜かれ、結束してこの場所を攻められればアウツ…!
…もちろん、兵藤は対抗策をいくつか用意してある。…それを使わずに済むのが一番ではあるが。

兵藤の思惑通りにゲームが終了した場合。
最終的に兵藤は、D-1の地下に隠してある3人乗りの潜水艦にて、自分の側近二人の黒服とともに脱出するつもりである。
この潜水艦の存在はこの側近二人しか知らない。側近の黒服二人は全て了解して会長の傍についている。


ふと、画面に目をやり、リモコンでチャンネルを戻す。
兵藤の息子、和也の様子が大画面に映る。

116 :帝王11/12 代理:2009/12/27(日) 10:44:23 ID:???
(もし、我が息子が参加者の中で唯一人の生き残りになれば…。
そうして、最後に息子とぶつかる様なことがあれば……)

会長は目を閉じ、再び過去を思い巡らす。
和也のバトルロワイアル参加を進言したのは兵藤会長自身であった。
『厳しいようだが、次期会長の器があるかどうか見極めるためだ』という理由で参加させた。
それに関して、黒崎は一応否定的な意見は述べたものの、強く反対しなかった。
黒崎としては、兵藤の一族になり代わり帝愛のトップの座につくためには和也は邪魔な存在である。
和也が危険な状況に置かれ、あわよくば死んでくれれば良いと打算が働いての行動であろう。

黒崎が強く反対をしなかったことで、兵藤は『黒崎がこのゲームで行動を起こすつもりでいる』という予測に確信を持った。
言うなら、それを確かめるために、自分の血筋である和也を参加させることを提案したのである。


和也には強く念を押しておいた。
『ただ一人、”優勝”しか生還はありえない』

(そうだ…。儂は確かにはっきりと念を押しておいたのだ…!
だから…儂を倒さぬ限り、生還は無いということだ…。そして…。
儂を倒せば、晴れて次期会長…。これ程分かりやすい世代交代もないじゃろうっ…!
じゃが、当然儂も完全なる『優勝』を目指す…!髪の毛一つ分も隙は見せぬが、のう…!!)


117 :帝王12/12 代理:2009/12/27(日) 10:47:40 ID:???
兵藤和尊にとって、『完全なる勝利』…思い描いた未来は、この世のものとは思えぬほど甘美であった。
リスクがあれば…スリルがあればなお良し…!
彼もまた、『勝負』という事象…ギャンブルに脳を焼かれた異常者であるのだ…!


(快感は…。
本当のめくるめく快感は…。
常軌を逸するからこそ辿り着けるっ………!)


「ククク………クゥクゥクゥ………クククククッ……………!」
リクライニングチェアに背を預け、人としての倫理を超えた理念を持つその“王”は、
画面を眺めながら忍び笑いを漏らし続けた。

******

【D-1/地下王国/深夜】
【兵藤和尊】
 [状態]:健康 興奮状態
 [道具]: ?
 [所持金]: ?
 [思考]:優勝する 黒崎の足を引っ張る 主催者達を引っ掻き回す

118 :マロン名無しさん:2009/12/27(日) 12:29:17 ID:???
投下乙でした!

兵藤和尊まさかの参戦…!
今後の展開が楽しみすぐる

119 :マロン名無しさん:2009/12/27(日) 12:50:25 ID:???
カイジがEカードのイカサマに気が付いたのも会長の計算のうちだったとは・・・会長おそるべし

120 :マロン名無しさん:2009/12/27(日) 18:39:13 ID:???
やばい おもしろすぎる…!

参加者どかろか対主催まで手の上でおどらせる…
まさに帝王……!

121 :マロン名無しさん:2009/12/27(日) 19:29:52 ID:???
作者さんも代理さんも、おつ華麗!
兵藤はやっぱりデカかったか。対主催の面々、どうなるんだろ。

122 :マロン名無しさん:2009/12/27(日) 23:42:31 ID:???
もう少しで投票開始…。

もう結果が待ち遠しい…!

123 : ◆uBMOCQkEHY :2009/12/28(月) 04:20:20 ID:???
あと、投票についてお伝えすることを忘れてしまいました。

投票は好きな部門のみの投票でも構いませんし、
その日の内に全部門の投票をしていただく必要もございません。

伝え忘れてしまい、申し訳ございません。

124 :マロン名無しさん:2009/12/29(火) 08:28:09 ID:???
予約…!

125 :マロン名無しさん:2009/12/31(木) 00:33:40 ID:???
ざわ・・・

ざわ・・・

126 :説得の切り札 代理投下:2009/12/31(木) 05:28:35 ID:???
代理投下します。
<説得の切り札 (前編)1/5>

「三好…」

二回目の放送を聞いたカイジは、美心が死んだ時ほどではないが、動揺を隠しきれずにいた。
一方で、不謹慎だと思いつつ…沙織の名前が呼ばれなかったことに安堵していた。
殺されたのは4人。
有賀が居なくなったためか、明らかにペースは落ちている。
(もしかしたら、もう有賀のような殺人鬼は…いないんじゃないか?)

田中沙織を探してアトラクションゾーンを北上しながら、微かな希望を胸に抱く。
しかし、その希望はすぐに打ち砕かれた。

「………っ!」

アトラクションゾーンの中程の木に、ぶら下がっていたもの…

切り離された、子供の首。

吊るされて大分時間のたち、半分乾きかけたそれは、見るも無罪な姿になっていた。
一瞬カイジは目を背け、込み上げてくる吐き気をこらえる。
恐怖と怒りの後、ただただ涙が溢れた。

果物ナイフを取り出し、震える手で死体を吊るしていた髪の毛を切ろうとした時。
揺れた死体の口周辺からはらりとメモが落ちる。
メモを手に取ったカイジは、急速に冷静さを取り戻し…乾いた血が付着した紙をじっと見つめる。
数分後…何かを決意したかのような表情で、ポケットにメモをぐっと押し込み、作業を再開した。
死体を下ろし、近くの茂みを掘って埋め…静かに手を合わせた。

127 :説得の切り札 代理投下:2009/12/31(木) 05:34:30 ID:???
すみません。改行エラーが発生したため、全体的に分割して投下します。

一通り探し回ったが、沙織を見つけることはできなかった。このまま闇雲に探しても埒が明かない。
もう一度南下し、アカギに会って詳細を聞くほうが、まだ可能性は高いのではないか。
それに…もし、接触できたとしても、飛び道具を持つ彼女を前にたった一人で、
武器も小さなナイフだけでは、説得を試みる前に殺されてしまうかもしれない。
だが、こちらが複数でいれば奇襲はかけにくい。
複数でうまく囲むことができれば、説得のチャンスができる可能性もある。

(人を…探そう。)

カイジは重い足取りで歩き出した。




外に気を配っていた沢田は、ふと気配を感じて立ち上がった。

(誰か…来る。)

毒が仕込まれたナイフを構え、扉を小さく開ける。
体格からして、若い男。
かすかに足を引きずっている。負傷しているのだろうか。

沢田の存在にはまだ気がついていないようで、徐々にこちらに近づいてくる
殺し合いに乗っているかは不明だが、休息している仲間がいる今、戦闘はできるだけ避けたい…。
一度は身を潜めてやりすごそうとしたが、
近づいてきた男の服装、そして長髪に見覚えがあることに気づく。
そう、確か、ゲーム開始前に爆死した男を止めていた男…。


128 :説得の切り札 代理投下:2009/12/31(木) 05:36:12 ID:???
伊藤カイジ。

涯から聞いた田中沙織の話では、伊藤カイジは対主催者の立場をとっていたはずだ。
それに、零も伊藤カイジに会いたがっていた。

沢田は接触を決め、裏口から外に出て、カイジの名を呼んだ。




「伊藤カイジ、だな?」

カイジは、名前を呼ぶ声に足を止めた。
相手の姿は見えない。

「誰だ?」

返事をしながら、思考を巡らせる。
こちらを殺すつもりなら、わざわざ声をかけてきたりはしない。
気づかれぬうちに奇襲をかけるほうがずっと簡単だ。
声をかけてきたということは、敵であれ味方であれ、何らかの情報交換を求めている可能性が高い。
その情報を相手が得るまでは、自分は殺されないだろう。

民家の影から、中年の男が現れる。
男の手にナイフを認め、カイジは一歩下がって距離をとった。

「脅かしてすまなかった。オレは沢田という。
 単刀直入に用件を言おう…同じ対主催の立場を取るものとして、お前と話がしたい。」

129 :説得の切り札 代理投下:2009/12/31(木) 05:38:21 ID:???
この男は、自分が対主催の立場をとっていることを知っている。
平井か、アカギか、井川ひろゆきか…自分を知る誰かと接触したのだろう。
確かに、対主催として味方が増えるのであれば、ここで沢田と話をしておきたい。
しかし、自分にはその前にやるべきことがある。

「申し訳ないが…対主催として動く前に、他にやらなきゃいけねぇことがある。
 アンタが手伝ってくれるなら話は別だが。」

「やること、とは?」

「…田中沙織という女性に、会う」

「田中沙織だとっ…!」

大きな声をあげた沢田の反応に、カイジも驚く。

「田中さんを知っているのか?」
「あぁ…」
沢田は、遠目で捉えた華奢な女性を思い浮かべた。赤松の最後の姿が脳裏をよぎる。

「仲間を一人…殺されたよ」

無念さを浮かべる沢田、そして絶句するカイジ。

あのとき田中沙織を止めていれば…。
あの後も一緒に行動していれば…。
こんなことには…ならなかった…っ!

130 :説得の切り札 代理投下:2009/12/31(木) 05:40:00 ID:???
「すまないっ…!俺のせいで…」
深く頭を下げ、うなだれるカイジに沢田は困惑する。
「何があったのかはわからないが…顔をあげろ。田中探しは手伝おう。俺達もいずれ彼女を探すつもりだったからな。」
顔を上げたカイジは、直後、はっとした顔で周りを見渡し、訝しげに沢田を見る。

俺…達?
まだ隠れている仲間がいるのか?

とっさに警戒を強めたカイジを見て、沢田は感心する。
カイジが一般人ではなく、ある程度修羅場をくぐってきていることは容易に想像がついた。
誤解を解くために、すぐに沢田は続けた。

「俺以外にあと二人、この中にいる。二人とも今は休んでいる。俺が見張りをしていたんだ。」

田中沙織の情報…対主催者の情報…
どちらもカイジにとっては今すぐに飛びつきたい情報だ。
しかし、3対1というこの圧倒的に不利な状況で、どこまで沢田を信じてよいものか読みきれず、躊躇もあった。

その時、沢田の後ろの民家の影から、二人の人影が現れた。
暗がりの中、カイジ相手を観察する。随分と若い。子供だろうか。

沢田はすっと移動し、二人の少年とカイジの間に立つと、振り返って呼びかけた。
「…涯、零、起きたのか。」
「はい…」
一人の少年はカイジと沢田を交互に見比べ、冷静に状況を把握しようと努めているようだった。
もう一人の顔に火傷のある少年は、守られるのは性に合わないといった風に拳を構え、一歩前に出る。
「涯、大丈夫だ。戦うつもりはない。零、お前が会いたいといっていた、伊藤カイジだ。」
「えっ!」

131 :説得の切り札 代理投下:2009/12/31(木) 05:42:27 ID:???
零と呼ばれた少年は、驚いて声を上げる。
(もっとも、だいぶ警戒されちまってるけどな。)
囁いた沢田の言葉に、零は少し考えた後、カイジに向かって歩き出した。

「伊藤…カイジさん。はじめまして。宇海零です。彼は工藤涯。」
少年は、自己紹介をしながら近づいてくる。カイジは警戒を緩めない。
見たところ武器は持っていないようだが…子供を使って油断させるつもりか?
しかし、次に少年の口から発されたのは、カイジの予想もしていなかった言葉だった。

「俺は…あなたがホテルで助けようとした、山口の、同級生です。
 彼のために泣いてくれて…ありがとう。」

カイジは、D-4のホテルで、見せしめのためだけに殺された男を思い出す。
自分が必ず敵をとると誓った男…。彼も、まだ若い子供だった。
目の前の少年と同じように。

「そうか…お前の、知り合いだったのか…。」

少年の心情を思い、カイジから戦う意欲は急速に失われていた。
沢田がナイフをしまい、涯も拳を下ろす。
やがてカイジも構えたナイフを下ろし、口を開いた。

「わかった…話をしよう。とりあえず家の中に入ろうか。」

132 :説得の切り札 代理投下:2009/12/31(木) 05:49:26 ID:???
<説得の切り札 (後編)1/7>


「そうか…」

互いに情報交換を終え、田中沙織の様子を知ったカイジは、力なく呟いた。
状況は…沙織と別れた時より、格段に悪くなっていた。
棄権が出来ず絶望した彼女は、優勝狙いに目的を切り替え、参加者を無差別に殺し始めている。
あの時、沙織を一人にしなければ…もっと早く主催者の罠に気が付いていれば…。
後悔に押しつぶされそうになりながら、カイジは頭を下げ続ける。
「お前は悪くない。そう…自分を責めるな。」
沢田の言葉に少し落ち着きを取り戻したカイジは、3人を見つめて話し出す。

「無理を承知で…頼みがある。彼女を見つけても、どうか…危害を加えないで欲しいっ…!。」

田中沙織に仲間を殺された相手に、彼女を守りたいと伝えるのは、心苦しかった。
だが一緒に行動するからには…はっきりさせておかなければならない。
悲痛な表情を浮かべるカイジに、沢田が安心しろ、というように小さく笑い、言葉を返す。

「俺達が彼女を探したいのは、復讐のためじゃない…彼女を止めるためだ。
 悪いのは彼女じゃない。彼女に殺しを強いている、このゲームだ。そうだろう?」

零と涯も力強く頷くのを見て、カイジはもう一度、安堵のため息をついた。
この3人なら…共に行動しても衝突することはなさそうだ。

133 :説得の切り札 代理投下:2009/12/31(木) 05:50:44 ID:???
<説得の切り札 (後編)2/7>

「そうと決まったら、田中沙織を止める作戦を考えねぇとな。零、お前が言っていた案はどうだ?」
「えぇ…田中さんを止めるために、ギャンブルルームで安全を買う案を考えていたんです。 」
なるほど…と言いかけたカイジを遮るように、零が続ける。
「でも、おそらく、その手はもう使えない。」
残念そうに言う零の言葉に、カイジだけでなく沢田も驚いた。
「そうなのか?いい案だと思っていたんだが。」
「既に…盗聴器でこの案を聞かれてしまった可能性が高い。
 俺が主催者だったら、長時間ギャンブルルームに籠る参加者がいれば、真っ先にそこを禁止エリアにする。」
あぁ…と呟き、沢田は床に目を落とした。

それでも…田中沙織に殺人をやめさせるには…優勝以外の道を示すしかない。

沈んだ空気を破るように、カイジも話し出した。
「俺にも彼女を説得するための手がかりがある。まだ使えるかはわからないが…。」

零が、メモとペンを差し出す。自分と同じ過ちを繰り返さないように。
受け取ったカイジは、さっと何かを書き、手で隠すようにしながらメモを見せた。

『ゲームは監視されたギャンブル。筆談はトイレで。トイレなら、盗撮の可能性が低い』

134 :説得の切り札 代理投下:2009/12/31(木) 05:51:53 ID:???
<説得の切り札 (後編)3/7>

メモを読んだ3人ははっとする。
確かに、仕掛けられているのが盗聴器だけとは限らない。
トイレとはいえ確実に安全とはいえないだろう…客に見せず、主催者だけが監視すれば問題ないからだ。
こちらから相手が見えなくても、向こうにはこちらの行動も、情報も筒抜け。
まるで目隠しされたまま、ただ手がかりを求めてさ迷うだけ…。

ふいに零の頭に、クォータージャンプのときの記憶がよぎる。

(目隠しされた状況で、有利に立てたのは…相手の死角があったからだ。
 死角がないなら作ればいい。敵からは見えず…味方だけが覗ける死角を…っ!)

零は立ち上がり、3人分のデイパックとタオルを掴んで戻ってきた。
デイパックをコの字型に並べ、上からタオルをかける。
唯一開いた一面から覗きこむようにして字をかけば…体が壁になり、完全な死角になる。
内容がカメラに写ることはない。
簡単な方法だが、情報を主催者の目から隠せるのは大きい。
「なるほどな。ついでにタオルも首に巻いておくといい。万一カメラがあったらまずい。」
カイジは沢田が放ったタオル受け取り、ぐるりと首に巻いた。



135 :説得の切り札 代理投下:2009/12/31(木) 05:53:00 ID:???
作った死角の中で、カイジはペンを走らせる。

『上下水道は島外にある。水道管を通って脱出できる可能性あり』

「この作戦の前に、まずこいつをどうにかしなきゃだな…」

書き終えたメモを見せながら、カイジは首輪を押さえていまいましげに言った。

「…首輪は…外せない…。」

「え?」
唐突な呟きに、3人の視線が零に集中する。
「あ…いや…さっき、そんな夢を見てて、思わず…。ごめん…なんでもない。」
視線に気がついた零は、気まずそうに謝る。
「しっかりしろ。まだ寝ぼけてるのか?」
「ま、棄権詐欺する連中だ。優勝すりゃ外せるって保障もないがな。」
呆れ顔で言う涯と、笑いながらそれをフォローする沢田。
しかし、カイジは…真剣な顔で黙り込んだ。

「カイジさん、どうかしましたか?」
零の問いかけに、しばらくしてカイジは、ゆっくりと口を開く。

「…本当に、外せなかったとしたら?」
「…?」
「優勝しても、首輪が外せなかったら…」
ぐっと手を握り締め、語気を強めてカイジは続ける。
「俺は前、同じ主催者のギャンブルに参加したことがある。 その時連中は、勝者に賞金を与えると言ったんだ。
だがレース後、こっちが逆らえないのをいいことに…もっと過酷なゲームを強いてきた。
結局レース後賞金を取りに行くまでの道で…勝者の大半が死んだ…
俺だけが生き残ったが…一歩間違えたら、俺も死んでいたっ…!」
怒りを込めて言い放ったカイジに、3人は言葉を失う。

136 :説得の切り札 代理:2009/12/31(木) 10:07:25 ID:???
<説得の切り札 (後編)5/7>

「あっ…」
直後、零は何かを思い出し、急いで標のメモを取り出しページをめくる。

(あった…!)

標のメモにも、はっきりとこう書かれていた。

『赤松、代打ちを知らない 試験でない可能性大 ⇒ 主催に優勝者を生かす理由無し』

殺し合いが代打ちの選抜でないならば、優勝者を生かすメリットはどこにもない。
それどころか、証拠隠滅、資金節約…殺すメリットの方が遥かに大きい。
そして主催者はその気になれば、顔も見せずに、優勝者を殺すことができる。

「そうだな…それしかない。」

標のメモを確認し、カイジは先程書いた水道の情報の下に書き記す。

『優勝しても生き残れない。生き残るには、主催者を倒すしかない。』

この情報を田中沙織に伝えれば。
沙織を止めるだけでなく、対主催者に引き込むことができるかもしれない。
いや…必ずできる。カイジには確信があった。
有賀に襲われたとき、騙されていると気づいた彼女は、驚異的な勇気と行動力で、危機を跳ね除けたのだ。
しかも彼女は一度主催に裏切られている。
再び裏切られる可能性を指摘すれば、彼女は主催を倒そうとするだろう。生き残るために。
主催を倒したあとは、上下水道など何らかの方法で脱出すると伝えればよい。


137 :説得の切り札 代理:2009/12/31(木) 10:08:27 ID:???
<説得の切り札 (後編)6/7>


「策は整ったな。すぐ出発するか?」
沢田の言葉に、零が首を横に振った。
「まだ沢田さんが休んでいない。当初の予定通り、第三放送までここにいませんか?
 カイジさんも、少し休んだほうがいい。」
「俺は大丈夫だ。ならば、カイジに決めてもらおう。」

本当は今すぐにでも沙織を追いたいが…足の傷のこともあり、休憩も欲しい。
悩むカイジに、決定権は委ねられた。

【E-3/民家/黎明】

【伊藤開司】
 [状態]:足を負傷 (左足に二箇所、応急処置済み)
 [道具]:果物ナイフ 地図 参加者名簿 島内施設の詳細パンフレット(ショッピングモールフロアガイド、
      旅館の館内図、ホテルフロアガイド、バッティングセンター施設案内)
 [所持金]:なし
 [思考]: 田中沙織を探し説得する
      仲間を集め、このギャンブルを潰す 森田鉄雄を捜す
      一条、利根川幸雄、兵藤和也、鷲巣巌に警戒
      赤木しげる(19)から聞いた情報を元に、アカギの知り合いを捜し出し、仲間にする
      平井銀二の仲間になるかどうか考える
      上水道、もしくは下水道へ続く場所を探す
※2日後の夜、発電所で利根川と会う予定です。
※アカギのメモから、主催者はD-4のホテルにいるらしいと察しています。
※アカギを、別行動をとる条件で仲間にしました。
※明日の夕方にE-4にて待つ、と平井銀二に言われましたが、合流するかどうか悩んでいます。
※第三放送まで休むか、外に出て行動するかは、次の書き手にお任せします。


138 :説得の切り札 代理:2009/12/31(木) 10:09:47 ID:???
<説得の切り札 (後編)7/7>

【工藤涯】
 [状態]:健康 右腕と腹部に刺し傷 左頬、手、他に掠り傷 両腕に打撲、右手の平にやや深い擦り傷
     (傷は全て応急処置済み)
 [道具]:鉄バット 野球グローブ(ナイフによる穴あり) 野球ボール 手榴弾×8 石原の首輪 支給品一式×3
 [所持金]:1000万円
 [思考]: 田中沙織を探し、殺人を止める 零と共に対主催として戦う 
※石原の首輪は死亡情報を送信しましたが、機能は停止していません。

【宇海零】
 [状態]:健康 顔面、後頭部に打撲の軽症 両手に擦り傷 睡眠中
 [道具]:麻雀牌1セット 針金5本 標のメモ帳 不明支給品 0〜1 支給品一式
 [所持金]:0円
 [思考]:田中沙織を探し説得する 対主催者の立場をとる人物を探す 涯と共に対主催として戦う 
※標のメモ帳にはゲーム開始時、ホールで標の名前が呼ばれるまでの間に外へ出て行った者の容姿から、
どこに何があるのかという場所の特徴、ゲーム中、出会った人間の思考、D-1灯台のこと、
利根川からカイジへの伝言を託ったことなど、標が市川と合流する直前までの情報が詳細に記載されております。

【沢田】
 [状態]:健康
 [道具]:毒を仕込んだダガーナイフ ※毒はあと一回程度しかもちません
     高圧電流機能付き警棒 不明支給品0〜4(確認済み) 支給品一式×2
 [所持金]:2000万円
 [思考]:田中沙織を探し説得する 対主催者の立場をとる人物を探す 主催者に対して激しい怒り
赤松の意志を受け継ぐ 零と涯を守る

139 :マロン名無しさん:2009/12/31(木) 10:10:49 ID:???
以上です。

140 :マロン名無しさん:2009/12/31(木) 10:16:24 ID:???
投下&代理乙
沙織に会いに行くのか…
また沙織が大活躍しそうな予感w

141 :マロン名無しさん:2010/01/01(金) 13:37:51 ID:???
新年っ…

142 :マロン名無しさん:2010/01/01(金) 16:49:07 ID:???
あけおめ…!

143 :マロン名無しさん:2010/01/02(土) 01:06:00 ID:???
初夢に福本ロワが出てきた記念。そして、あけおめせよっ…!

書き手氏&代理氏乙!
しばらく来ないうちに主役3人合流してるじゃんか…!
圧倒的存在感なチームなのに、沢田さんがぜんぜん埋もれてないのもすげえ
しかしこのチーム相手でも佐織タンの改心無理ぽに思えるのは何故なんだろうなw

144 :マロン名無しさん:2010/01/02(土) 09:08:14 ID:???
初夢バトロワてww

145 :マロン名無しさん:2010/01/02(土) 21:55:56 ID:???
俺マップ4-EFの商店街でおろおろしてたw
誰にも合わなかったからよかったけど正月早々死ぬかと思ったwww

146 :マロン名無しさん:2010/01/04(月) 22:58:16 ID:???
一番下に情報交換について追加です

【伊藤開司】
 [状態]:足を負傷 (左足に二箇所、応急処置済み)
 [道具]:果物ナイフ 地図 参加者名簿 島内施設の詳細パンフレット(ショッピングモールフロアガイド、
      旅館の館内図、ホテルフロアガイド、バッティングセンター施設案内)
 [所持金]:なし
 [思考]: 田中沙織を探し説得する
      仲間を集め、このギャンブルを潰す 森田鉄雄を捜す
      一条、利根川幸雄、兵藤和也、鷲巣巌に警戒
      赤木しげる(19)から聞いた情報を元に、アカギの知り合いを捜し出し、仲間にする
      平井銀二の仲間になるかどうか考える
      上水道、もしくは下水道へ続く場所を探す
※2日後の夜、発電所で利根川と会う予定です。
※アカギのメモから、主催者はD-4のホテルにいるらしいと察しています。
※アカギを、別行動をとる条件で仲間にしました。
※明日の夕方にE-4にて待つ、と平井銀二に言われましたが、合流するかどうか悩んでいます。
※第三放送まで休むか、外に出て行動するかは、次の書き手にお任せします。
※カイジ達は田中沙織に関する情報を交換しました。
その他の人物や、対主催に関する情報は、まだ交換していません。

147 :マロン名無しさん:2010/01/07(木) 16:44:47 ID:???
ほしゅ

148 :マロン名無しさん:2010/01/07(木) 16:47:08 ID:???
保守っ…!

149 :代理投下:2010/01/08(金) 23:34:28 ID:???
福本漫画バトルロワイアル part.6
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1260650346/98-99
規制中のため代理投下します。

投票結果ができたのですが、
相変わらずの規制のため、こちらに投下します。
どうか代理投下をお願いいたします。

【総合部門】
1位 15P
【序章 〜狂宴〜】
2位 13P
【侠】
3位 12P
【試験】
4位 11P
【「I」の悲劇】 【十に一つ】
5位 6P
【説得】
6位 5P
【天才】
7位 4P
【反逆者】 【思惑】 【余裕】 【3人目のアカギ】 【束の間の勝者】
8位 3P
【勇と金】
9位 2P
【手足】 【純愛】
10位 1P
【罠】 【邂逅】 【計略】 【想い】 【操作】

150 :代理投下:2010/01/08(金) 23:37:04 ID:???
◆uBMOCQkEHY:2010/01/05(火) 18:34:38
総評:正直、良作が多すぎて五つに絞れというのが難しかったと思います。
その中で1位に輝いたのは『序章 〜狂宴〜』。カイジの目覚めから始まり、
山口の見せしめ。この後、どうなってしまうのか、続きが気になる展開に、
このオープニングで福本ロワに嵌っていった方は多かったと思います。

2位は沢田初登場の『侠』。漢の覚悟、
福本ロワでも独特の雰囲気とどこか清涼感も感じさせる作品でした。

3位は『試験』。福本ロワでも屈指の名勝負の一つ。原田の捨て牌を見た時、
これどうすればいいんだろうと悩んだ方も多かったのでは?
まさに福本先生の未発表の原稿という評価をされるべき作品だったと思います。

4位は『「I」の悲劇』『十に一つ』。『「I」の悲劇』は名前からここまで話を広げたのは見事の一言。
石田さんが実にいいキャラをしていたと同時に、有賀の恐ろしさが十二分に伝わる作品でした。
さりげない見せ場として、気づくと退場していた石原も(笑)
『十に一つ』の面白さは標の知略の高さとその悲劇にあると思います。
市川の秘密を解きながら、志半ばで退場してしまう展開。不条理さを感じながらも、
これがバトルロワイアルかと思った方も多かったと思います。

5位は『説得』。今まで死亡フラグの定番であった拡声器を、
道連れを呼ぶために使うという方法で使用してしまった回。
おかげでB−4に大量に人が集まり、混乱が生まれてしまいました。GJ!

151 :代理投下:2010/01/08(金) 23:37:30 ID:???
66 : ◆uBMOCQkEHY:2010/01/05(火) 18:35:19
【MVP部門】
1位 24P
【標】
2位 15P
【有賀研二】
3位 13P
【赤木しげる】 【市川】
4位 8P
【平山幸雄】
5位 6P
【坂崎美心】
6位 5P
【田中沙織】
7位 4P
【村岡隆】 【神威勝広】 【赤松修平】
8位 3P
【沢田】
9位 2P
【神威秀峰】
10位 1P
【黒沢】 【宇海零】 【黒崎義裕】 【山口】

152 :代理投下:2010/01/08(金) 23:39:46 ID:???
67 : ◆uBMOCQkEHY:2010/01/05(火) 18:35:56
総評:標はやはり強かったです。投票開始時からほかのキャラクターを抜いて独走状態でした。
標はその高い知略とそれを活かしきる前にイレギュラーな存在によって
退場せざるを得なくなってしまった不条理さもそうですが、感想で多かったのはのちの影響力。
赤松を初めとして零、涯、沢田。標の意志が彼らに受け継がれていくという展開が1位の要因のようです。

2位の有賀はゲームの前半で誰よりもぎらぎらと輝いていた人物。
考えてみれば、バトルロワイアルは有賀のためにあるようなゲームですからね・・・。
前半戦での殺人ラッシュは不快さを通り越して、清清しささえ感じてしまいました・・・。
放送後に退場をしてしまうことになるのですが、彼の意志も受け継が(ry

3位はアカギ。原田との麻雀戦。その後もギャンブルが続き、そのたびにアカギらしい戦いっぷりを見せてくれました。
セリフのかっこよさもポイントが高いです。
同じく3位に市川。やはり前半戦の見せ場の一つ。拡声器使用が大きかったと思います。
今は低空飛行状態ですが、これから何かしでかしてくれると信じております。

153 :代理投下:2010/01/08(金) 23:40:09 ID:???
68 : ◆uBMOCQkEHY:2010/01/05(火) 18:36:32
【ギャンブル部門】
1位 22P
【試験】 一人麻雀
2位 19P
【計略】 麻雀
3位 16P
【罠】 ババヌキ
4位 9P
【賭博覇王】 二人麻雀
5位 6P
【余裕】 丁半
6位 2P
【保険】 ジン・ラミー
7位 1P
【手札】 Eカード

154 :代理投下:2010/01/08(金) 23:41:12 ID:???
69 : ◆uBMOCQkEHY:2010/01/05(火) 18:37:08
1位は『試験』でした。原田の手の内を一発で解くというのもアカギらしいですが、
評価すべき点は福本先生の作品の特徴ともいうべき理詰めの論理。
ロワでこの論理を見られるとは思わなかった方も多かったと思います。ちなみに私はこれで福本ロワに傾倒してしまいました・・・。

2位は計略。銀さんVS零で、銀さんの戦略に零が引っかかってしまう話です。
零が事前に用意した策を上回る策で対抗。しかも、その伏線を初めの段階から準備していたのも驚かされました。
ちなみに、この作品が福本ロワで初めて前編後編に分けられた話です。

3位は『罠』。ひろVS社長で、ひろが仕組んだトリックも社長が仕組んだトリックもギャンブルルームのルールの裏を突いたもの。
単純そうに見えてそう来たかと思わせるギャンブルの一つです。

155 :代理投下:2010/01/08(金) 23:42:24 ID:???
70 : ◆uBMOCQkEHY:2010/01/05(火) 18:37:49
【名言部門】
1位 16P
【十に一つは死ぬ可能性がある……でもそれくらいの価値があるんだよ……
尤もいい情報を得れる可能性も十に一つ程度だけど……その一つが大きい】
   キャラクター:標   作品名:十に一つ

2位 9P
【‥‥だから‥‥‥そういうことは‥‥‥、
もうちょっと、お互いを良く知ってから、ね‥‥‥。
それまで、オ・ア・ズ・ケだぞっ!!】
   キャラクター:坂崎美心   作品名:純愛

3位 8P
【赤松さん……行く前に一つだけ………
もし十に一つの時は……宇海零………彼に、僕と一緒に見たことを話してみて……
きっと彼なら分かるはず】
  キャラクター:標   作品名:十に一つ

4位 5P
【出来る限り…どんな窮地に陥ったとしても……、
必死に考えて、諦めないで、生き延びてくれ】
  キャラクター:伊藤開司   作品名:仮定
【大好きよ……カイジくん……】
  キャラクター:坂崎美心   作品名:想い

156 :代理投下:2010/01/08(金) 23:43:43 ID:???
5位 4P
【ククク……そう……オレは殺す………奴らを…………他人に死を強要するっていうのは……
   強要されてもいいってことだ………だから殺す……】
  キャラクター:赤木しげる   作品名:試験
【だけどたまには……寄り道してもいいんだ………それが君を助ける、ということさ】
  キャラクター:井川ひろゆき   作品名:道標
【ではアカギさん、24時間後に、この場所で‥‥‥、
原田さんを、お返ししましょう】
  キャラクター:平井銀二   作品名:余裕

71 : ◆uBMOCQkEHY:2010/01/05(火) 18:38:31
6位 3P
【だが……それ以上に決定的だったのがさっきの発言……不公平という言葉……!
あの一言を口にせずただ協力を持ちかけてくるようならば、俺はあんたを見限っていた。
一時の勝利に浮かれ……先に立つ真に重要な事を見抜けぬ男……半端者とな……!
ましてや……他人に強要をする者は、強要されてもいい立場にある……そう言ったばかり……!!
その上で事実を認識できちゃいないなんて、愚の骨頂……!!
ククク……原田さん、あんたは十分すぎるよ……勝負への理解が出来ているっ……!!】
キャラクター:赤木しげる   作品名:反逆者
【聞けっ……!ここに一千万ある……!!得たくば、奪いに来いっ……!!】
キャラクター:市川   作品名:説得

157 :代理投下:2010/01/08(金) 23:44:23 ID:???
7位 2P
【蛇であるアンタには…ワイが蛇に見えたんやねえ。
ワイにはアンタが蛙に見えとったんよ。ワイは蛇の振りをした…蛙やったから】
キャラクター:船井譲次   作品名:鏡
【お、およしになってっ‥‥‥!
 私は‥‥‥私にはっ‥‥‥!!】
キャラクター:坂崎美心   作品名:純愛
【――あなたにはどうする事もできない】
キャラクター:田中沙織   作品名:操作
【…アカギ…ッ!! 赤木しげるぅううう!!!】
キャラクター:鷲巣巌   作品名:手札
8位 1P
【‥‥‥僕、怖いよ‥‥‥】
キャラクター:標   作品名:思惑
【…クク、…元気そうじゃねえか、…鷲巣巌…】
キャラクター:赤木しげる   作品名:手札

158 :代理投下:2010/01/08(金) 23:45:21 ID:???
72 : ◆uBMOCQkEHY:2010/01/05(火) 18:39:06
総評:1位は標のセリフです。可能性が低い上にリスクが高い情報に賭ける覚悟がよく表れたセリフです。
この後、思わぬ展開によって標は命を落としてしまうことを考えるとやりきれない気持ちにさせられます。

2位は美心の放ったロワ屈指の迷言(笑)。このセリフで腹を抱えて笑った方も多かったのでは?
この話はシリアスな福本ロワの清涼剤と言えたのではないかと思います。個人的な意見ですが、
これを読んだ時、黒沢と美心、クロスオーバーカップルになればいいんじゃないかと考えたものですが、
その後、あんなことになるとは・・・。

3位もまた、標のセリフです。これも1位と同じ『十に一つ』からのセリフです。
こちらもまた、標の覚悟が伺えるセリフですが、皆様の感想を見ると、
このセリフはのちの赤松に与えた影響が評価されているようです。


73 : ◆uBMOCQkEHY:2010/01/05(火) 20:06:57
こちらで以上です。
拙い感想ですが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

159 :マロン名無しさん:2010/01/09(土) 00:56:01 ID:???
圧倒的乙…!

標強し!ダントツ一位でしたねー
他にもいろいろなキャラが選ばれてましたが
正直みな主役級に活躍するからマジで選ぶのに困りました


次は第二放送までですね
すごく楽しみにしてます!

160 : ◆uBMOCQkEHY :2010/01/09(土) 23:52:17 ID:???
お久しぶりです。
作品が完成しましたので、投下します。


161 :盲点1:2010/01/09(土) 23:57:04 ID:dbfRBBPW
『……では、以上で放送を終了する。 引き続き、諸君の健闘を祈る』

「禁止エリアはここじゃないのか・・・」
しづかはその放送を聞いて呟く。
しづかの反応は内容を軽く受け流す程度のものだった。
それもそのはずである。
脱落者で知っている名前は板倉のみ。
それ以外の人間は聞いたこともない者ばかりだったからだ。
その板倉もこの放送で名前を呼ばれることは承知していたため、改めて死んでしまったのかと締め付けられるような感情を抱くものの、それ以上の感情は生まれてはいなかった。
彼女があの惨劇から精神を切り替えることができたのも、先程、ギャンブルルームで“黒崎”と名乗る男から食料とカラーボールをもらったことが大きい。

しづかはディバックの中に入っているカラーボールの位置を確認する。
カラーボールはディバックの両サイドについているサイドポケットの左側に納まっている。
カラーボール自体は武器にはならないが、それを相手にぶつけることで、その隙をついて武器を奪うことができる。
絹糸のような細すぎる希望だが、それでも先程の絶望の最中よりは救いがある。
何より、“黒崎”のように、ゲームに怯えながらも、手を貸してくれる人間がいる。
このゲームにいるのは全員が極悪人ではないのかもしれない。
人のぬくもりを感じたことも彼女の精神を支えていた。

しづかは見上げる。
「それにしても・・・大きい建物だな・・・」
二階建てという低い高さでありながら、いくら歩いても出入り口にたどり着かない程規模の大きな施設。

今、しづかの目の前にある建物は病院だった。
しづかはこの建物がどのような建物であるかは知らない。
しかし、これだけ大きな建物であれば、サイズが合う服や靴、もしくは武器が調達できるかもしれない。
そんな予感が彼女をここまで導いていた。

162 :盲点2:2010/01/09(土) 23:58:38 ID:???
罪人を監視する獄吏の眼を思わせる満天の星の下、しづかは入り口を探すため、病院の壁に沿うように歩いていた。
勿論、誰かに見つからないように、周囲を見渡し、時に物陰に隠れながら移動していたこともあるが、15分近く歩いても、入り口どころか窓すら見つからない状況であった。

「出入り口自体ないんじゃないのか・・・」
しづかがため息をついた時、その目にとまった物があった。
鉄製の扉である。
非常階段の出入り口を連想させるような造りであり、雨ざらしであったためか、赤錆が冷たい月光に照らされ、染みのように浮かび上がっている。

「ここが・・・入り口なのか・・・」

しづかはドアノブ掴むと、扉をゆっくり開けた。
重々しい印象とは対照的に無音で開く。
しづかは扉から顔を出した。
扉から続く廊下は人工的な光を放つ非常灯が規則的に並んでいるものの、その光の届く範囲を超えた途端、建物全体を押し潰してしまいそうな漆黒の闇が広がっていた。
しづかは一歩足を踏み入れた。
廊下に“カツーン”と革靴独特の甲高い音が響く。
しづかは歩きながら、周囲を確認する。
一番、近い部屋にはレントゲン室と書かれた札が掲げられている。
「病院か・・・ここは・・・」
しづかはそう呟くと、更に廊下の奥へと進んでいった。

163 :盲点4:2010/01/10(日) 00:00:59 ID:???
『……では、以上で放送を終了する。 引き続き、諸君の健闘を祈る』

放送終了後、天とひろゆきの表情が曇った。
先に口を開いたのは天だった。
「赤松が・・・死んだ・・・」

天達は合流した後、1階の処置室でそれぞれの情報を交換し合っていた。
その中で分かったことの一つに、ひろゆきと天が共に、赤松という参加者の存在を知っていたことがあった。
天がぽつりぽつりと呟く。
「ひろ・・・お前の話では・・・
赤松は田中沙織を改心させて、脱出費用を渡した・・・けど・・・」
ここで天は口ごもった。

――棄権は不可能。

これはカイジという参加者が平山に筆談で伝えた、口に出しては不都合な情報である。
もし、これが本当であれば、おそらくギャンブルルームへ向かったところで追い返されるのが関の山である。

棄権が不可能であること、赤松が死んだという事実。

天の脳裏にあることが過ぎる。
「その田中沙織が・・・優勝を狙って赤松を殺した・・・」
ひろゆきは口に手を当て、うんと唸る。
「可能性としてはあります・・・けれど、第三者に襲われた可能性も・・・
今ある情報だけでは判断できません・・・」
“だからこそ、警戒する必要があります・・・”とひろゆきは言葉をまとめた。

164 :マロン名無しさん:2010/01/10(日) 00:02:37 ID:nfrVWdx8
支援…!

165 :盲点5:2010/01/10(日) 00:07:04 ID:???
天はやり場のない無念さを瞳に浮かべる。
「ひろ・・・お前の話では赤松は涯という少年と一緒だったんだよな・・・
アイツ・・・標っていう少年と行動を共にしていた・・・
けどな・・・標は第一回の放送の時に名前を呼ばれちまった・・・
アイツは標を救うことができなかった・・・
だからこそ・・・標の代わりに涯って少年を守ろうとした・・・」
天の瞳はさらに暗くなるも、対照的に口元が僅かに緩む。
「さっきの放送で涯の名前は呼ばれなかった・・・
おそらく、赤松は守りきったんだろ・・・その少年を・・・
真実は分からねぇが・・・オレはそう信じる・・・」
「天さん・・・」
負傷しながらも沙織を説得しようとする赤松の姿がひろゆきの脳裏に浮かんだ時だった。

カツーン・・・と、遠くで何かが落ちたような音がひろゆきの耳に飛び込んできた。

「皆さん、静かにしてください・・・!」
ひろゆきは口元に人差し指を当て、耳をそばだてるよう合図を送る。
「何を言っておる・・・ワシは何も聞こえなかったぞっ・・・!」
ひろゆきの忠告など無視をするかのように鷲巣が吠える。

――また、このジイさんはっ・・・!

ひろゆきは鷲巣に気づかれないように舌打ちをする。
ひろゆきと天が非常口前で合流した直後、鷲巣は平山を見るや、
“なぜ、お前が生きているんじゃっ!!”と雄叫びをあげた。
それに対して、平山は化け物にでも出会ったかのように驚愕し、
“ここから逃げよう!!!”とひろゆきにしがみついて喚いた。

166 :マロン名無しさん:2010/01/10(日) 00:09:12 ID:???
四円!

167 :盲点6:2010/01/10(日) 00:09:38 ID:???
天とひろゆきが間に取り持つことで何とか収集がついたが、
それ以後も鷲巣は情報交換中、このゲームで出会った人間の恨み言を大声で騒ぎ立てたり、平山に眼を付けたりと何かと話の腰を折ってきた。
おかげで、ひろゆきは鷲巣に好意的な感情をまったく抱いていなかった。

――歳をとると、精神が幼くなると聞いたことはあったが・・・。

ひろゆきは頭を抱えながら、耳を澄ます。

カツン・・・カツ・・・

――確かに聞こえる・・・革靴のような足音が・・・!
この施設内に誰がいるとひろの直感が訴える。
しかし、それ以後、音はやんでしまった。

「むぅ・・・ワシには聞こえん・・・
気のせいだったのではないのか・・・」
リーダーシップをとるひろゆきが気に食わないのか、鷲巣は悪態をつく。
ひろゆきのやることなすことに反抗する鷲巣の態度に、ひろゆきの怒りは沸点に達しようとしていた。

「・・・確認しなければ・・・分からないでしょう!」
ひろゆきは鷲巣に半ば吐き捨てるかのようにそっぽを向くと、平山の腕を掴み、扉まで引っ張る。


168 :マロン名無しさん:2010/01/10(日) 00:10:38 ID:???
予約…!

ざわ…
ざわ…

169 :マロン名無しさん:2010/01/10(日) 00:11:30 ID:???
うわミスった

170 :盲点7:2010/01/10(日) 00:11:58 ID:???
「ちょ・・・ちょっと待てっ・・・」
ひろゆきを呆然と見つめる天に、二人を苦々しく睨みつける鷲巣。

――場の雰囲気がこれ以上悪くなる前に、オレが何とかしなければ・・・。

と考えつつも、平山は三人の顔を見比べながら、特にどうすることもできず、狼狽し続ける。
平山の視線が天の顔へ向けられた直後だった。
天が含みを持った笑みを見せた。
「ひろ・・・これを持って行け・・・」
天はひろゆきに向かって懐中電灯を投げた。
懐中電灯は孤を描き、ひろゆきの手の中に収まる。
「このジイさんは怪我をしている・・・
オレが面倒をみるから、気にせず行ってこい・・・!
それに・・・今、お前は持っているんだろ・・・
神の視点・・・“神眼”を・・・」

「神の視点・・・“神眼”・・・?」
ひろゆきはハッとあることに気づき、平山のポケットに目を側める。
平山のポケットの中には今、ひろゆきの持ち物であった首輪探知機が入っていた。

――どうして・・・天さんは知っている・・・?
ひろゆき達は放送直前までどんな人物にあったのか、どんなことが起こったのかという事実事項の情報交換こそ行っていたものの、
持ち物については、なぜか鷲巣が拒否し続けていたため、情報を共有しあってはいなかった。

171 :盲点8:2010/01/10(日) 00:13:16 ID:???
「その・・・天さん・・・」
しかし、ひろゆきが言い終わる前に、天の口が動く。
「村岡から・・・と言えばいいのか・・・?」
ひろゆきは事情を知り、思わず苦笑を浮かべる。
首輪探知機の本来の持ち主は村岡であった。
天はここに来る前に村岡と会っている。
おそらくその時にひろゆきがいかに危険人物かを伝えるために、支給品の話題を出したのだろう。

「深追いしないようにします・・・天さんも気をつけて・・・」
「お前がいてくれてんだ・・・心配する必要なんかないさ・・・」

全てを口にしなくとも気持ちは通じ合っている。
東西戦の時も事前に綿密な打ち合わせをせずとも、牌と動きと表情を見れば、どうしてほしいのか大よそ予想がついた。
その絆はこのゲームの中においても健在であった。

「行ってきます・・・天さん・・・」
ひろゆきは未だに戸惑いを見せる平山をつれて処置室を後にした。

172 :マロン名無しさん:2010/01/10(日) 00:14:38 ID:???
しぇん…!

173 :盲点9:2010/01/10(日) 00:14:53 ID:???
「・・・ワシ・・・・・・・・・ぞっ・・・!」
しづかはビクつき顔を上げる。
奥の方から人の声が聞こえたような気がしたのだ。

「まさか・・・誰かいるんじゃ・・・」
しづかは思わず後ずさりする。
甲高い靴音がホール内にいるかのように反響して響く。
しづかはハッと下を向いた。
ホテルで階段の手摺りが軋んだことによって一条に見つかってしまった失態を思い出したのだ。

――音が鳴れば・・・また、見つかっちまう・・・!

しづかは急いで靴を脱ぐ。

――けど・・・私の勘違いってことも・・・。

しづかはそうであって欲しいと願いつつ、板倉の靴をディバックに詰めながら、これからどうするべきか、その場で逡巡する。

――ここから出るべきか、それとも・・・。

カツ・・・カツ・・・カツ・・・
    カツ・・・カツ・・・カツ・・・

しづかの前方から複数の足音がかすかに聞こえてくる。
しかもその足音はまるで居場所を知っているかのように、小走りに近づいてくる。

――ヤバイ・・・!
しづかはあたりを見渡す。
しづかの周囲にあるものはトイレ、各種検査室、そして、少し戻ったところにある階段である。
しづかは苦々しく顔を歪ませる。

――どこに隠れりゃいいんだよっ・・・!

174 :盲点10:2010/01/10(日) 00:16:45 ID:???
「・・・やっぱり、誰かいるのか・・・?」
「・・・そのようだ・・・」
首輪探知機には本来あるはずもない、5つめの光点が映し出されていた。
ひろゆきは自分の方が首輪探知機を使い慣れているという理由で平山から一旦、返してもらうと、それを頼りに病院内を進んでいた。
「けど・・・そいつが武器を持っていたら・・・」
「まずは呼びかけて、相手の出方を伺うさ・・・それに・・・」
ひろゆきは右手に握る日本刀を軽く振る。
日本刀はそれに応えるように、チャキッと金属音を響かせる。
「これを見せれば、とりあえずは相手も様子を伺うだろうしね・・・」
「まぁ・・・オレもそう思うが・・・」

こんな物騒なものをよく平気で扱えるものだと、ひろゆきの意外な肝の太さに感心すると共に、とんでもない奴と組んじまったと、思わず肩を落とす。

「ここのようだ・・・」
ひろゆきは立ち止まる。
その場所は女子トイレであった。
中は電灯などなく、はめ込み式の小窓から差し込む月明かりが辛うじて、視界を手助けしてくれていた。
「平山・・・君はここで待っていてくれ・・・オレ一人で確認する・・・」
「待ってくれ・・・そんなこと、お前一人に押し付けるわけにはいかない・・・」
平山も責任を感じているのか、二人で様子を見ようと提案する。
しかし、ひろゆきは女子トイレ内が狭いこと、自分が武器を持っていることを挙げ、首輪探知機を平山に差し出した。
「オレに万が一のことがあっても、お前になら、これを任せられる・・・」
“これでも、お前のこと・・・信用しているんだぞ・・・”と、ひろゆきは平山に曇りない笑いを見せる。
「万が一の時はこれを持って、天さんの元へ行ってくれ・・・」
「ひろゆき・・・」
“そこまで言うなら・・・”と、ひろゆきの提案を受け入れ、首輪探知機を受け取った。
「言っておくが、万が一の時はすぐに逃げるんだぞ・・・」
「分かっている・・・」

175 :マロン名無しさん:2010/01/10(日) 00:17:46 ID:???
支援

176 :盲点11:2010/01/10(日) 00:18:56 ID:???
ひろゆきは先程の晴れやかな顔とは打って変わって、顔を引き締め、足場を確認するかのように慎重に一歩一歩女子トイレの中へ進んでいった。

「誰かいるのか・・・」
さっそくひろゆきは呼びかける。
しかし、返答はない。
「オレは殺し合いには乗っていない・・・」
それでも返答はない。

――警戒されて当然か・・・。

ひろゆきはトイレの個室ひとつひとつを確認する。
トイレは洋式であり、その扉は全て内側に開いている。
やはり、病院のトイレだけあってか、一つ一つの個室が広く設計されている。

――構造は男子トイレとほとんど一緒なんだが・・・

トイレは排泄という他人が触れるべきではない行為をする場所である。
しかも、ひろゆきがいるのは女子トイレである。
そこに誰もいないとは言え、若干の抵抗を感じていた。

ひろゆきは奥の扉だけが閉まっていることに気づいた。

――隠れるとすれば、ここぐらいか・・・

ひろゆきは扉についている取っ手に手をかける。
「もう一度言う・・・オレは殺し合いには乗っていない・・・
だが、武器は持っている・・・下手に抵抗せず、出てきて欲しい・・・」

177 :マロン名無しさん:2010/01/10(日) 00:22:58 ID:???
支援

178 :盲点12:2010/01/10(日) 00:24:19 ID:???
ひろゆきが呼びかけても、扉の先は沈黙が続く。
もしかしたら、扉の先の人間はすでに殺し合いに乗っており、
刀よりも殺傷能力が高いもの――銃器を構えて待ち構えているのかもしれない、扉を開けた直後に攻撃を仕掛けてくるかもしれないという予感が過ぎる。

――万が一の考慮をするべきだな・・・

ひろゆきは扉の先の人物に気づかれないように、刀を握りなおす。

「・・・・・・入るぞ・・・」

ひろゆきはその言葉と同時に、取っ手を勢いよく引っ張った。
扉は外側に大きく開く。
その直後、ひろゆきは扉から離れ、後方へ敏捷に飛び退いた。

「ひろゆき!!」
ひろゆきの突然の行動に、平山は駆け寄ろうとする。
しかし、ひろゆきは平山に向かって“近づくな!”と左手を出すと、扉を直視したまま、腰を屈め、刀を構える。

しかし、扉は開いたままであり、アクションは見られない。
響きのない沈黙が張り詰める。
やがて、ひろゆきは黙って構えを解くと、再び、奥の扉へ向かい、中を覗いた。
ひろゆきの表情から強張った緊張が抜ける。

「何があった・・・」
ひろゆきの様子から危険がないと判断した平山は改めてひろゆきの下に駆け寄り、奥の扉の中を覗き見た。
「あっ・・・」
扉の先にあったのは底が深い洗面台と、足の踏み場もないほどに詰め込まれたモップやバケツなどの清掃用品であった。

179 :マロン名無しさん:2010/01/10(日) 00:25:10 ID:???
紫煙

180 :盲点13:2010/01/10(日) 00:26:26 ID:???
「もしかして・・・清掃用具入れか・・・」
「ああ・・・そのようだ・・・」
平山も拍子抜けしたと言わんばかりに肩から力を抜く。
ひろゆきは“首輪探知機の反応はまだ、あるのか・・・?”と平山の手の中に目を落とす。
謎の光点はひろゆき達の光点と接触している。

――人の姿はなく、光点だけが反応している・・・
   もし、この機械に誤作動がなければ・・・

ひろゆきは天井を見上げる。
「・・・2階だな・・・」

“平山、2階に行こうと思うがどうする・・・?”というひろゆきの問いに、平山は無言で頷くと、二人は女子トイレを後にした。

首輪探知機は上から見下ろすように画面に表示される。
そのため、お互いにいる階が違っていたとしても、
上から見て同じ場所にいれば、あたかも接触しているように表示される。

これは首輪探知機の盲点の一つと言ってよい。
しかし、ひろゆき達はそれ以前の初歩的な点に気づかなかった。

ひろゆき達が出て行った後、用具室の隣のトイレの扉がゆっくり動き、閉まっていく。
閉まる直前、手がのびて、扉の端を押さえる。
扉から顔を出したのはしづかだった。

181 :マロン名無しさん:2010/01/10(日) 00:28:49 ID:TsZmrBai
支援

182 : ◆uBMOCQkEHY :2010/01/10(日) 00:40:53 ID:TsZmrBai
すみません。
さるさんを食らってしまいましたので、続きはしたらばに投下しました。

もし、よろしければ、代理投下をお願い致します。

183 :盲点14 代理:2010/01/10(日) 00:57:57 ID:???
しづかが身を潜めていた場所は至って単純な場所――トイレの扉と壁の間である。
女子トイレは内側に扉が開くようになっている。
開くと、扉の端が壁に触れて止まる。
すると、壁と扉に挟まれるように、三角形のスペースが生まれる。
しづかはそのスペースに隠れていたのだ。
つまり、階が違うのではなくて、本当に近くに隠れていたのだ。
本来は用具入れに隠れるつもりであったが、身を置くスペースが存在しないほどに道具で埋め尽くされていた。
そこで、隣のトイレの扉と壁の隙間に変更した。

もう少し注意深く見れば、ひろゆき達はしづかの存在に気づいていたのかもしれない。
しかし、扉が開いている=人がいないという認識、女子トイレに対する暗部の抵抗感、首輪探知機の盲点に気づく頭の回転の早さが、しづかを見つける妨げになってしまった。


「行ったか・・・」
しづかは差し足で女子トイレの出入り口まで向かうと、顔だけを廊下に出し、様子を伺う。
トイレの前の廊下は一本道であり、ひろゆき達の靴音はしづかが侵入してきた非常口の方向から響いてくる。

「平山・・・あいつ・・・首輪探知機を持っているんだな・・・」
今後、身を守るためにも、できれば欲しい支給品のひとつであるが、しかし・・・

「ひろゆきって男は・・・日本刀を持っている・・・」
トイレの扉は蝶番が大きく設計されており、扉を開けると、扉と扉を支える壁の間に、蝶番分の隙間が生まれる。
その隙間からしづかはひろゆき達のやりとりを見ていたのだ。
「しかも・・・そうとう“できる”奴だ・・・」


184 :盲点15 代理:2010/01/10(日) 00:58:54 ID:???
しづかは誤解していた。
ひろゆきは日本刀に関しては素人である。
しかし、扉からの攻撃に備えて、後ろへ飛び退いたひろゆきの動きは事情を知らないしづかから見れば、剣術の手練の動きそのものに思えてしまったのだ。
その後の用心深さ故の平山に対する対応も、その誤解に拍車を掛けていた。
しづかは両腕を抱え、身震いする。
「あいつ・・・もしかして、殺し合いに乗っているんじゃないのか・・・」
しづかは完全に疑心暗鬼に陥っていた。
しづかから見て、ひろゆきは一流の剣客のように思えた。
それだけの腕を持つ男であれば、しづかの隙を突いて切り捨てるなど、いとも容易い。

「口ではどうとでも言えるんだ・・・一条のように・・・」

しづかの顔は青ざめ、血の気の引いた唇が湧き上がってくる言葉を押し殺すかのように固く結び合わさる。

手練たちは今、階段へ向かうため、非常口方面を歩いている。
できれば、この施設から早く立ち去りたいが、もし、今、非常口側に向かえば、首輪探知機で異常に気づいたひろゆき達と鉢合わせになる可能性がある。
おそらく、ひろゆき達は2階の“今、しづかがいる場所”へ向かうだろう。
ならば・・・

「反対側へ逃げるしかない・・・」
もし、反対側へ逃げれば、たとえひろゆき達が首輪の動きの異常に気づいたとしても、とりあえずは2階を探索するだろう。
それが時間稼ぎとなる。


185 :盲点16 代理:2010/01/10(日) 01:00:27 ID:???
しづかは覚悟を決めると、用具入れからモップを一本拝借した。
モップは日本刀以上にリーチが長い。
殺傷能力はないが、薙鎌のように扱えば、一撃くらいはお見舞できるかもしれない。
薙鎌を扱ったことはないのだが・・・。

念のため、ハサミの位置を確認する。
今、ハサミは左胸のポケットに入っている。
そして、ディバックのサイドポケットに触れる。

――モップに、ハサミにカラーボール・・・
   最低限、身を守る道具は揃っている・・・
   これだけあれば、逃げられる・・・!

「行こう・・・!」
しづかは駆け出した。
非常口とは反対側――処置室の方面へ・・・。


186 :盲点17 代理:2010/01/10(日) 01:01:29 ID:???
【E-5/病院/深夜】

【天貴史】
 [状態]:健康
 [道具]:鎖鎌 不明支給品0〜2 通常支給品
 [所持金]:500万円
 [思考]:助けが必要な者を助ける アカギ・赤松・治・石田に会いたい
 “宇海零”という人物が気になる 主催に対する怒り
※鷲巣から『特別ルール』を聞いています。確信はしていませんが、可能性は高いと思っています。

【鷲巣巌】
 [状態]:疲労、膝裏にゴム弾による打撲、右腕にヒビ、肋骨にヒビ、腹部に打撲
     →怪我はすべて手当済
 [道具]:防弾チョッキ 拳銃(銃口が曲がっている)
 [所持金]:0円
 [思考]:零、沢田、有賀を殺す
     平井銀二に注目
     アカギの指示で首輪を集める(やる気なし)
     和也とは組みたくない、むしろ、殺したい

※赤木しげるに、回数は有限で協力する。(回数はアカギと鷲巣のみが知っています)
※赤木しげるに100万分の借り。
※赤木しげると第二回放送の前に病院前で合流する約束をしました。
※鷲巣は、拳銃を発砲すれば暴発すると考えていますが、その結果は次の書き手さんにお任せします。
※主催者を把握しています。そのため、『特別ルール』を信じてしまっています。


187 :盲点18 代理:2010/01/10(日) 01:02:11 ID:???
【井川ひろゆき】
 [状態]:健康
 [道具]:日本刀 防犯ブザー 不明支給品0〜2(確認済み) 懐中電灯
     村岡の誓約書 ニセアカギの名刺 アカギからのメモ 支給品一式×2
 [所持金]:1500万円
 [思考]:赤木しげるとギャンブルで闘う この島からの脱出 
      極力人は殺さない 
※村岡の誓約書を持つ限り、村岡には殺されることはありません。
※赤木しげるの残したメモ(第二回放送後 病院)を読みました。
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※二枚ある地図のうち、一枚を平山に渡しました

【平山幸雄】
 [状態]:左肩に銃創 首輪越しにEカードの耳用針具を装着中
 [道具]:支給品一式 首輪探知機 カイジからのメモ
 [所持金]:1000万円
 [思考]:田中沙織を気にかける 利根川から逃れる術を探る
     カイジが気になる
※利根川に死なれたと思われていることを知りません。
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※ひろゆきから地図をもらいました

188 :盲点19 代理:2010/01/10(日) 01:13:44 ID:???
【しづか】
 [状態]:首元に切り傷(止血済み) 頭部、腹部に打撲 人間不信 神経衰弱 ホテルの従業員服着用(男性用)
 [道具]:モップ ハサミ1本 ミネラルウォーター1本 カラーボール(と対人用地雷) 通常支給品(食料のみ)
 [所持金]:0円
 [思考]:ゲームの主催者に対して激怒 誰も信用しない 一条を殺す 武器の入手 病院から脱出する
※このゲームに集められたのは、犯罪者ばかりだと認識しています。それ故、誰も信用しないと決意しています。
※和也に対して恐怖心を抱いています
※利根川を黒崎という名前と勘違いしております。
※利根川から渡されたカラーボールはディバックの脇の小ポケットに入っており、そのポケットの底には地雷が仕込まれています。なお、カラーボールが蓋のような状態のため、しづかはその存在に気づいておりません。
※この地雷は包帯によってカラーボールと繋がっており、カラーボールを引っ張ると、地雷の安全装置であるピンが外れ、ディバックの圧迫によって爆発するように仕掛けられております。
※ひろゆきが剣術の使い手と勘違いしております。


189 :盲点代理:2010/01/10(日) 01:15:07 ID:???
以上です、代理投下初めてだったので不備があったらすみません。

190 :マロン名無しさん:2010/01/10(日) 15:36:55 ID:???
投下&代理乙!
ひろとしずかが互いに深読みしてしまい一体どうなるのか…

そしてカラーボール…!
カラーボールの話題が出る度にハラハラしてしまうw


191 :マロン名無しさん:2010/01/10(日) 17:06:26 ID:???
作者さん、代理さんおつ華麗!
>首輪探知機の盲点に気づく頭の回転の早さが、しづかを見つける妨げに
これ、凄く巧い皮肉だなぁ。もしこれが俺だったら、二階なんて発想は出てこなくて、
だからこそ「おかしいな。この辺をもっとよく探そう」になって、発見できてただろうに。
ひろの頭の良さが、却ってアダになってしまう……ほんと巧い!

192 :マロン名無しさん:2010/01/11(月) 18:48:55 ID:???
投下乙です…!
しづか今後どうなるのかめちゃ気になる
病院組に入るのかそれとも何かしでかすのか?


鷲頭かわいいw

193 :マロン名無しさん:2010/01/12(火) 00:23:56 ID:???
投下乙!
まさか神眼が出てくるとはww脳内の映像がへろと綺麗な天さんになったw

194 :マロン名無しさん:2010/01/13(水) 00:53:58 ID:???
仲根は邪気眼を使えそう

195 : ◆uBMOCQkEHY :2010/01/13(水) 21:55:58 ID:???
ご感想をくださった方、代理投下してくださった方、ありがとうございました。

ただ今、仕事が七連勤というハードスケジュールのため、
中々返答ができず申し訳ございませんでした。
皆様の言葉が仕事への活力になります。


後、第二回投票結果ですが、上記の理由から発表が遅くなります。
申し訳ございません。
来週までには発表ができたらと考えております。
もう少し待っていただけると有難い限りです。


196 :マロン名無しさん:2010/01/16(土) 19:31:33 ID:???
保守

197 :マロン名無しさん:2010/01/17(日) 21:33:16 ID:pXJI+WlO
保守
やっと規制とけた…!

198 :マロン名無しさん:2010/01/17(日) 21:57:48 ID:???
保守…!

199 : ◆uBMOCQkEHY :2010/01/18(月) 11:09:32 ID:???
リアルの事情から発表が遅れて申し訳ございません。
第2回投票の結果発表です。
前回と比べて、総評のテンションが低いですが、
それは書き手としての照れです、すみません。

200 : ◆uBMOCQkEHY :2010/01/18(月) 11:10:23 ID:???
【総合部門】
1位 16P
【薄氷歩】
2位 12P
【猜疑と疑惑】
3位 10P
【劇作家】
4位 6P
【関係】 【帝図】
5位 5P
【希望への標】 【悪戯】 【息子】 【心の居場所】 【四槓子】
6位 4P
【十八歩】 【未来への標】
7位 3P
【同盟】 【回想】
8位 2P
【水理】 【それぞれの試金石】 【抜刀出陣】 【姫と双子の紳士】 【孤軍】
9位 1P
【投資】 【天の采配】 【苦情】 【慙愧】


201 : ◆uBMOCQkEHY :2010/01/18(月) 11:14:39 ID:???
総合部門第1位はアカギVS社長の薄氷歩です。
この作品は本当に面白かったです。鷲巣麻雀を使った十七歩。しかも、あのどんでん返し(ネタばれ避けます)は爽快感を感じつつ、二人麻雀の天の太い打ち方を彷彿とさせます。文句なしの堂々の1位です。
第2位は猜疑と疑惑。
それまで存在感がなかった主催者が牙を剥く作品。主催がゲームの全てを握っている。そう感じられた一作でした。
あと、この時の森田かっこよかったですよね。
第3位は劇作家。書いた本人としてのコメントですが、票を入れてくださった皆様、ありがとうございました。
ちなみに、他の方の作品も含めて、作品への感想は“面白かった”などの温かいコメントがほとんどですが、
この作品に限って言えば、“反吐が出た”“不快だった”というコメントが多く、何だが嬉しかったです。
皆様の好きな作品はランクインされていたでしょうか。
4位以下の作品も面白いものばかりであると同時に、集計中、各書き手さんの福本作品への愛を感じずにはいられませんでした。


202 : ◆uBMOCQkEHY :2010/01/18(月) 11:18:20 ID:???
【MVP部門】
1位 32P
【赤松修平】
2位 17P
【田中沙織】
3位 8P
【兵藤和也】 【森田鉄雄】
4位 4P
【沢田】 【佐原】 【井川ひろゆき】
5位 3P
【しづか】 【村上】 【村岡隆】
6位 2P
【工藤涯】 【黒崎義裕】 【一条】 【伊藤開司】 
7位 1P
【利根川幸雄】



203 : ◆uBMOCQkEHY :2010/01/18(月) 11:23:03 ID:???
第1位は赤松修平。
この人か沙織が1位になるとは考えておりましたが、蓋を開けてみると、赤松がブッチギリ。
集計中、終始、赤松無双状態でした。
標の死後、標の言葉で覚醒。希望を胸に標の意志を継ごうと邁進した赤松。福本ロワでも屈指の熱血キャラでした。
第2位は田中沙織。カイジを裏切ってから転落人生。
行く先々で人を襲い、歩く死亡フラグ、死神状態でした。
ちなみに第1回放送後、なぜか、赤松と沙織が各主人公を押さえて、キャラクター登場回数のトップを競っておりました。
脇役も輝く、福本ロワの魅力の一つではないでしょうか。
第3位は兵藤和也と森田鉄雄。
和也は放送後、首輪を集めるという目的を明確にし、その後、鷲巣様並みの剛運であれやこれやという間に、仲間も武器も集めてしまいました。
この男の怖さは計算された悪意。
これがこの後、ゲームにどのように影響するのか楽しみです。
同位は森田。
今、一番、主催の近くにいる参加者。
森田に課せられたゲームはハードルが高いものですが、だからこそ、主催の胸元に飛び込む可能性も生まれるというもの。
森田の動きが今後に大きな影響を及ぼすのか。


204 : ◆uBMOCQkEHY :2010/01/18(月) 11:24:20 ID:???
【ギャンブル部門】
1位 25P
【薄氷歩】 十七歩+鷲巣麻雀
2位 19P
【四槓子】 麻雀
3位 13P
【十八歩】 十七歩
4位 3P
【猜疑と疑惑】 首輪取引

第1回放送前と比べてギャンブルの数が大分減りました。
夜に入り、ギャンブルどころではない点もそうですが、放送後、ギャンブルが書けない書き手が参戦したことが大きな要因かと・・・ごめんなさい。
こちらも総合部門に続いてトップは薄氷歩。
ストーリー、セリフ、そして、ギャンブルとしても秀逸な作品。感想は総合部門でも書きましたが、全てにおいて、きれいにまとまった作品。
この書き手さんの次の作品も楽しみにしております。
第2位はエースさんが書いた四槓子。
やはり、試験を書いた実力書き手さんだけあって、理詰めのギャンブルの展開は福本ロワ屈指。
ロワでは計略に続く、主役同士のバトル。どちらが勝つのか、その意味でもハラハラさせられました。
第3位は十八歩。十七歩に二人麻雀のルールを追加してのギャンブル。
最後の展開は組長として西軍トップの貫禄を読者に見せつけてくれました。そして、社長のズタボロさもまたいい味を出してくれております。


205 : ◆uBMOCQkEHY :2010/01/18(月) 11:32:08 ID:???
【名言部門】
1位 14P
【お前は見えている牌に全ての読みを任せた…だが、見えているものだけじゃ真実には辿り着けない…】
  キャラクター:赤木しげる   作品名:薄氷歩
2位 13P
【そろそろ・・・オレは行くが・・・平山・・・生き残れよ・・・。
こんなこと言っちゃなんだけど・・・あんたは・・・“使える人間”だ・・・!
誰から見てもそうだ・・・!それだけの記憶力があれば・・・!
だったら・・・あんた自身が使え・・・!
卑屈になるなっ・・・・!あんたがあんたを使うんだ・・・!
セコい真似してでも・・・生き残れっ・・・・・・】
  キャラクター:伊藤開司   作品名:関係
3位 8P
【生きてくれ・・・未来を刻むことができない標君の分まで・・・
希望は・・・未来は・・・君たちの手の中にっ・・・!】
  キャラクター:赤松修平   作品名:希望への標
4位 5P
【…ええ、私の自慢の部下です】
  キャラクター:一条   作品名:同盟
【生キルタメニ武器ヲ・・・】
  キャラクター:田中沙織   作品名:希望への標


206 : ◆uBMOCQkEHY :2010/01/18(月) 11:33:35 ID:???
5位 4P
【手助けはできなくとも…。死ぬ覚悟ならできるっ…!
一度『死んだ』オレだから…だからこそ………!】
  キャラクター:石田光司   作品名:決意
【――そう・・・人は・・・世界が・・・バラバラに・・・
  バラバラになれと・・・まかれた種だっ・・・!
  ここで信用できる他人なんて、いやしない・・・。
  やはり、人間は孤立するべき・・・孤立する・・・べき・・・】
  キャラクター:工藤涯   作品名:心の居場所
6位 3P
【なんで・・・!人間なのにっ・・・・!!!!オレたちは人間だ、人間なんだっ・・・・・・!】
  キャラクター:工藤涯   作品名:同士
【――どんなに、人間の心の弱さをあざ笑ったところで、
  本当は欲している・・・理解を・・・友情を・・・仲間を・・・。
涯はそんな自分を自嘲する。
――オレは今・・・悲しい程無力っ・・・!】
  キャラクター:工藤涯   作品名:心の居場所
【スケベもいい加減にしろ……!】
  キャラクター:森田鉄雄   作品名:猜疑と疑惑
【物事に一番大切なのはなんだろうな?
素晴らしい妙案も、タイミングを間違えれば無駄になる。
仲間の同意が得られないなら尚更だろうよ。
一番やらなきゃならないことを差し置いてでも実行するべきなのか?】
  キャラクター:沢田   作品名:信頼

207 : ◆uBMOCQkEHY :2010/01/18(月) 11:36:24 ID:???
7位 2P
【ただ……やる事…。その熱、行為そのものが……生きるってこと…!
 いいじゃないか…三流で…! 熱い三流なら上等よ…!
 フフ…、実際俺は、三流だよ。だけど、それで構わない。
 死のうと思っているわけじゃない…。
 死を恐れるあまり、足を止めてしまうこと…。
 今の俺が恐れているのは、それだけさ…】
  キャラクター:井川ひろゆき   作品名:天の采配
【…治くん………ダイナマイト…5本落としちゃった………!】
  キャラクター:石田光司   作品名:事故
【寄り道の寄り道か・・・それも悪くないかもしれないな・・・】
  キャラクター:井川ひろゆき   作品名:抜刀出陣
8位 1P
【あの人とは…美心さんとは………相思相愛っ…!………結ばれた者同士だった…!】
  キャラクター:黒沢   作品名:事故

やはり、1位は薄氷歩のアカギのセリフがランクイン。
透明牌を信じすぎた社長の心を的確に捉えた言葉と同時に、アカギのかっこよさが凝縮されている言葉でもあります。
このセリフでアカギに惚れ直した方は多かったのではないかと思います。
2位は関係でカイジが口にした平山へのセリフ。
それまでの平山は代打ち失格者としての烙印、利根川への恐怖などから自分に自信を失っておりましたが、
カイジのこの言葉はそんな平山に自信を取り戻させるよいきっかけとなったのではないでしょうか。福本ロワ屈指の名セリフです。
3位は赤松の最後のセリフ。希望を見出そうと生きた男らしいセリフです。


208 : ◆uBMOCQkEHY :2010/01/18(月) 11:42:15 ID:???
こちらで以上です。
また、次の放送後、機会がありましたら、是非、投票を行ってみたいと考えております。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

209 :マロン名無しさん:2010/01/18(月) 16:19:03 ID:???


210 :マロン名無しさん:2010/01/19(火) 00:21:52 ID:???
乙!またやりたい!


211 :マロン名無しさん:2010/01/21(木) 21:05:27 ID:???
亀だが乙!

212 :天意1/20 代理投下:2010/01/22(金) 00:52:57 ID:???
しづかは出来るだけ音を立てぬよう、裸足でそろそろと病院の冷たい廊下を歩いていた。
廊下に規則的に並ぶ、非常口を示す明かりが目に痛い。
非常口を示す矢印、その矢印と正反対に、建物の奥へ向かって歩いている。その事実が喉の奥を苦しくさせる。

外に逃げ出したい。
だが、『二階へ逃げたと考えたひろの誤解を利用する為』、そして『他にいるかも知れない参加者から武器を奪う為』
しづかは震える足を踏ん張り、悲鳴を上げたい心を抑え、懸命に歩いていた。
生きるために。

先程廊下の奥で聞こえた声。老人の声のように感じた。
『ひろゆき』と『平山』は若い男である。なら、先程大声を上げた老人がまだ一階に潜んでいる可能性が高い。

(爺いをふん捕まえて、人質に取るくらいでなきゃ…!この先いつまでも武器なんか奪ったり出来るもんか…!)
しづかはモップを握り直した。

待合室を抜け、検査室の横を通る。恐る恐るドアノブを廻してみるが、開かない。
他の部屋も試してみるが、『検査室』と書かれた部屋はたいてい施錠されていた。
扉にごく小さな窓があり、そこから中を覗いてみる。
だが、中はほとんど真っ暗で、室内に置かれた機械には布がかけられている。
その布が、得体の知れない不気味なものを連想させる。何かが蠢いているような嫌な想像をしてしまい、慌てて小窓から体を離す。

痛い程しんと静まり返っている。張り詰めた空気。己の吐く息の音、心臓の音だけがやけに大きく聞こえる。

(嫌だ…嫌だっ………逃げたい………!!!)
緊張が最高潮に高まったとき…。
『処置室』と書かれたドアが、きい、と開いた。

213 :マロン名無しさん:2010/01/22(金) 00:53:53 ID:???
支援

214 :天意2/20 代理投下:2010/01/22(金) 00:56:38 ID:???
(………………………………!!!!!!!!)
しづかはあまりの恐怖に声も出せず、夢中でモップを突き出した。
ガゴッ、とモップの先が扉に当たり、くぐもった音を立てる。

半開きのまま、中にいた人間が顔を覗かせる。
「お嬢さん、一人か?」
「!?」

ぬっと出てきたのは顔中傷だらけの大男だった。
薄明かりの中、逆光で影が廊下に大きく伸びる。しづかは全身の毛が逆立つような感覚に襲われた。

そのとき、大男の影から、もう一人の人間がひょいと顔を出した。

「何じゃっ…小娘一人かっ…!」
「おい、爺さん出てくるなよっ…!」
「その呼び方をやめろといったじゃろ…!何を恐れることがある…!こんな小娘の一人や二人…!」
「まだどんな武器を持っているかわからねえだろう…!」

しづかが呆然と立ち尽くす中、二人の男は喧嘩を始めた。
大男は、そんなしづかと後ろの頑固爺さんとを交互に見比べ、溜息をつきながら頭を掻いた。


「俺は天という。こちらの爺さんは鷲巣さん。
さっきアンタを探しに行った男はひろゆきと平山。俺の仲間だ。二人とは入れ違いになったのか?
………なぁ、そろそろモップを下ろしちゃくれねえかな?」


215 :マロン名無しさん:2010/01/22(金) 00:57:23 ID:???
支援

216 :天意3/20 代理投下:2010/01/22(金) 00:58:27 ID:???
天は、モップの先をこちらに突き出し警戒心を露わにしているしづかに声をかけた。
「…武器を出せ」
「俺達はお嬢さんとやり合うつもりは無い」
「そんなことはどうでもいいっ…!武器をよこせっ…!」

しづかモップを突き出したまま、低い声で威嚇した。
鷲巣は天を手伝おうなどというそぶりも見せず、室内の壁にもたれて横目に二人の様子を眺めている。

「…お嬢さん。今アンタがそのモップ一本で俺達から武器を奪おうとしたって無茶な話だ。
こっちは二人いるし、俺たちから万一逃げ遂せたとしても、ひろゆきや平山が戻ってくる。
それよりもアンタ…その服はどうした?誰かに騙されたり、痛めつけられたりしたのか?
…嫌なら言わなくてもいい…せめて、俺達と情報交換をしないか?」
「………断る…!」

取り付く島も無い様子に、天は溜息をつく。
「それじゃ、俺もアンタの要求を飲めねえな。アンタに危害を加えるつもりも無いが」
「………………」
「俺は傷ついた参加者を保護するためにここへ来た。傷つけるためでなく、護るためだ。
だから、アンタに他人を傷つけるための武器は渡せねえ」
「奇麗事言いやがって…!アンタも、いざとなったら殺すくせにっ…!」
「そうだな、タダで殺されるほどお人よしじゃねえ。
だから、アンタも自分の我を通したいなら、俺を殴り倒して武器を奪えばいい。
最も、アンタに一発食らったらその時点で交渉は決裂、俺はアンタの鳩尾に拳を叩き込んででもアンタを止めるけどな」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」


217 :天意4/20 代理投下:2010/01/22(金) 00:59:39 ID:???
しづかは、目に涙を溜めて天を睨みつけた。悔しさでモップを持つ腕がぶるぶると震える。
敵いっこない。降伏するしか道は無い。
だが、先程一条から受けた仕打ちを思い出す。降伏すれば己のプライドも明け渡したことになるのだ。
「武器を…よこせっ………!」

「…そうか」
天は諦めたように言うと、持っていた大袋からあるものを取り出し、しづかの足元に置いた。
ゴトッと音を立てて置かれたそれは鎖鎌であった。

「これを使うということは、アンタが誰かの喉笛を掻き斬ったり、誰かの体を裂いたりするということだ。
それがどういうことだか分かっているか…?
第一、この武器は重い。使い勝手が悪い。俺の手にも余る代物…アンタに使いこなせるか…?
それよりも、この武器は誰かを護るために使うべきじゃないか…?」
天は、しづかの足元にしゃがみこみ、しづかを見上げながら問いかける。

「………この病院の外に転がっている死体…。」
しづかは、ぼそりと呟いた。

「目の前で、爆死した。一時でも仲間になっていた男が…目の前で…。
その後、また仲間が出来た。二人の男…。
一人はもう一方に殺されて、もう一方は私をひどい目に遭わせて去って行っちまった…」
しづかの目から涙が溢れる。今頃になって、現実が骨身に食い込むように辛かった。


そうだ。もうたくさんなんだ。裏切りも、死別も。
なら一人で生き残りを目指すほうがずっといい。

「もう仲間はいらない」
「そうか…」
天は俯き、奥歯を噛み締めた。

218 :マロン名無しさん:2010/01/22(金) 00:59:44 ID:???
支援

219 :天意5/20 代理投下:2010/01/22(金) 01:00:42 ID:???
「なら、持ってけ…。扱いに困る代物だが、脅しくらいにはなるかも知れねえ」
「………………………」
天はうなだれたまま動こうとしない。
しづかはモップを床に落とし、警戒しながら鎖鎌を拾い上げた。
去り際に一言呟く。

「………礼を言うよ」
「俺はアンタに何も出来ねえっ…!」
天の搾り出すような声を背中に聞きながら、しづかは非常口の方へ歩いていった。


「向かいの建物から出てきたようじゃの…」
天の背後で鷲巣の声がした。

「何…?」
「ほれ、ここから表玄関入口のガラス越しに見えるじゃろ。あれは兵藤和也の部下か…」

ギャンブルルームから、額に火傷跡のあるスーツ姿の男が出てきたところであった。
先程ひろゆき、平山から聞いた情報によれば、額に火傷跡のある男の名は利根川。
周囲を見渡し、辺りを警戒しながら、病院へと歩いてくる様子である。
もう一人若い男が出てきて、火傷の男を援護するように身を屈めて後に続く。
正面からではなく、こちらへと迂回して回りこむような軌跡を辿る。そうこうしているうちに、二人の男は視界から消えた。

男達の張り詰めた空気にただならぬものを感じ、天は顔を顰めた。
今、鎖鎌を渡した娘が外に出れば間違いなく鉢合わせになる。

「あの娘が危ないっ…!!」


220 :天意6/20 代理投下:2010/01/22(金) 01:01:40 ID:???
天はしづかを探して一階の廊下を見回した。
非常口にしづかの姿を認めたとき、しづかは丁度ドアノブに手をかける所であった。
慌ててしづかの方に走り出し、呼び止める。
「待て…!危険だ…外に出るなっ…!」
「え…?」
「今は危ないっ…止まれ…!」

呼び止められるとは思ってもみなかったしづかは、戸惑いを浮かべ後ろを振り返る。
天が追ってきたことに気づくと、しづかは驚き、恐怖を露にして天に背中を向け、ドアノブを廻す。
「バッ…違う…!捕まえるつもりはねえんだっ…勘違いするなっ…!」

天の必死の牽制も空しく、ドアは内側に大きく開かれた。



外には二人の男が立っていた。
白髪の男と、額に火傷跡のある男。
二人は向き合い、一触即発の状態。その二人が一斉に開かれたドアのほうに視線を移す。
額に火傷跡のある方は、しづかの顔見知りであった。
しづかは思わずその男に助けを求め、駆け寄ろうとした。

「『黒崎』っ…!」
「馬鹿…出るなっ…!」
外に飛び出そうとするしづかを、天が背後から抱え込む。
そのとき。


ドドォォォーーーーーーーーーンッ………!!!!!


周囲に大きな地響きが響き渡った。

221 :マロン名無しさん:2010/01/22(金) 01:02:31 ID:???
支援

222 :天意7/20 代理投下:2010/01/22(金) 01:02:57 ID:???


時は数十分前に遡る。
しづかに盗聴器を仕掛けた和也は、しづかが病院に入ってからの様子をずっと耳で観察していた。
ギャンブルルームの滞在時間は延長済みである。
第二放送直後に一旦外へ出、一条が3人で3時間分(600万)を払っている。

 『それにしても…大きい建物だな…』
 『出入り口自体ないんじゃないのか…』
 『ここが…入り口なのか…』
 『まさか…誰かいるんじゃ…』

 『病院か…ここは…』

不安から独り言を漏らし続けるしづかの行動は、盗聴器によって和也達に筒抜けであった。
そして、感度の良い盗聴器はしづか以外の病院内の声も拾う。

 『平山…君はここで待っていてくれ…オレ一人で確認する…』
 『待ってくれ…そんなこと、お前一人に押し付けるわけにはいかない…』

「平山…!生きていたか…」
利根川が思わず声を上げる。
「しっ…静かにっ…!」
和也はそれを嗜め、暫く会話を聞いていた。
イヤホンを耳に嵌めたまま、じっと考え込んでいたが、やがてクク…と含み笑いとともに話し始める。

「どうやら、今病院内には思ったより大勢の人数がいるようだ…!」
「そのようですね…」
「俺、今閃いちまったんだけど…!」
和也のニヤニヤ笑いに、利根川と一条は顔を見合わせて和也の次の言葉を待った。


223 :天意8/20 代理投下:2010/01/22(金) 01:03:50 ID:???
「何…折角の好機だから、保険を打っておくって話…!」


利根川はギャンブルルームから外に出た。
デイパックを背負い直し、袖の中に隠したデリンジャーを確かめる。

ギャンブルルームと病院は互いに正面玄関が向き合うように建っている。
ずっと外を見張っていた村上によると、しづかは正面玄関に入ろうとしたが引き返し、病院の壁を伝うようにして出入り口を探していたという。
しづかが中に入ったのを耳では確認していたが、こちらから見えなかった。裏口か非常口が開いていて、そこから入ったのだろう。

和也が利根川に頼んだのは、開いている出入り口に最後の地雷を仕掛けることである。
病院内に誰か大勢いるということは、少なくとも誰かが必ず近いうちに病院の出入り口を通ると予想できる。
この出入り口に今のタイミングで地雷を仕掛けておけば、そのうちの数人…最低でも一人は確実に労せずして仕留められる。

この作戦、誰かに見られたらアウツ…!利根川にとってはかなりリスキーな指令である。

リスキーであることを考慮して、利根川、一条には盗聴器と無線のイヤホンを持たせてある。
利根川の持つイヤホンはギャンブルルームの盗聴器に繋がっていて、病院内で異変があれば和也が知らせることが出来る。
即席のトランシーバーのようなものである。

出来る限り病院内の連中に気づかれぬよう大回りをし、病院の側面まで歩く。
一条が、数メートル離れた茂みの中に隠れ、トカレフを構えていつでも援護射撃出来るように待機している。

病院の非常口で、しづかの残したと思われる、よたよたと歩いたような男物の革靴の靴跡が見つかった。
しづかには大きすぎる靴の為不規則な靴跡になったと思われる。

利根川はデイパックから地雷を取り出し、非常口の扉のすぐ前に小さな穴を掘り、地雷を仕掛けた。
土は柔らかく、労せず作業を終えた。夜なので土を掘り返した跡もさほど目立たない。


224 :天意9/20 代理投下:2010/01/22(金) 01:04:51 ID:???
(フフフ…。近いうちにこの場所で、花火が上がる…!
ギャンブルルームからは死角になっているのが痛いが、まあ仕方ない…。和也様もきっとお喜びに…)


「何を埋めたんだ?そこに…」


横から急に声をかけられ、利根川は体を強張らせた。
硬い表情のまま声のした方に顔を向けると、そこには白髪の青年がいた。

どこか人を食ったような表情、平山と容姿は似ているが、身に纏っている雰囲気が違う。

「お前は確か…赤木しげるか…?開会式で最初に出て行った…」
「アンタは、利根川だろう…?帝愛幹部…元No2…」
「…何故俺の名を知っている」
「カイジから聞いた。その特徴的な火傷の跡も…火傷の出来た理由もな………」

利根川の額に青筋が走る。
「カイジだとっ…!」
「で、今度は何を悪巧みしてる…?そこに埋めた物は何だ…?」


(おやおや…思っていたより早い遭遇だ…。最初で最後の…な…!)
盗聴器を聞いていた和也が、一条、利根川に命令を送る。


『そいつを殺せ…』


225 :マロン名無しさん:2010/01/22(金) 01:05:35 ID:???
支援

226 :天意10/20 代理投下:2010/01/22(金) 01:05:37 ID:???
(気配を消してやがった…あの男…!)
利根川の護衛についていながら、アカギに気がつかず接近を許してしまったことに、一条は歯噛みする。
一条は茂みの中からアカギに照準を合わせる。
利根川、一条が銃をアカギに構えるのはほぼ同時であった。
二人が引き金を引こうとした、その刹那。

『おい、こんな時だが、病院内の連中が非常口に向かってるぞ。警戒しとけよっ…!』

しづかの盗聴器越しに、天としづかの揉み合いを耳にした和也の警告と、非常口の開くタイミングはほぼ同時であった。


「黒崎っ…!」
「馬鹿…出るなっ…!」
非常口の中から、二人の男女が縺れ合うように飛び出してきた。
そのとき。


ドドォォォーーーーーーンッ………!!!


周囲に大きな地響きが響き渡った。



この音には聞き覚えがある。
爆風。熱。そして吹き飛ぶ体。
地面に打ち付けられる痛み。恐怖。


227 :マロン名無しさん:2010/01/22(金) 01:06:34 ID:???
支援

228 :天意11/20 代理投下:2010/01/22(金) 01:06:54 ID:???
「ううっ…」
地面に投げ出された体を必死の思いで起こし、しづかは足元を見る。
自分の足はまだ胴に繋がっている。
だが、自分の足元に横たわっている大男には、足がついていなかった。
あの時の様に。

「ひっ……………」
喉を締め付ける恐怖のあまり、悲鳴が出なかった。
焼け焦げる皮膚の匂いと、血の匂い。
フラッシュバック。覚めぬ悪夢。
確かな殺意。この地にどす黒く染み込んでいる人間の悪意。

「ひぃ……………………………………………」
しづかは再びその場に倒れ込み、気を失った。


「地雷か…。さすが卑怯者のアンタららしい…」
アカギの言葉に被せる様に、利根川は再びアカギに銃口を向ける。
一条が茂みから飛び出し、至近距離で利根川を援護する。

バサバサッ……!!!

アカギが持っていた偽札入りのトランクを開け、辺り一面に中身をぶちまけた。
視界が札束サイズの新聞紙で埋め尽くされる。

パンッ… パンッ…! パンッ…!

デリンジャーを数発撃ったが手応えはなく、紙吹雪がやんだ頃、そこには弾痕のついた空のトランクだけが残されていた。

229 :天意12/20 代理投下:2010/01/22(金) 01:07:49 ID:???
「くそっ…!一条、追うぞっ…!」
「はっ…!」

利根川と一条は、迷う事無く林の中へと走って行った。


利根川や一条が林の方へとアカギを追ったのは、そちらの方にしか身を隠し、なおかつ遠くに逃げられる場所が無い為である。
病院の周囲は、一条が身を隠していた茂み以外には特に身を隠せる場所がなく、すっきりした芝生になっている。
アカギが生き残りたいなら、高確率でそちらに向かったであろうと予測される。

故に、アカギは一条が先程まで身を隠していた茂みの中に隠れていた。

(思い込みが人を誤らせる…。灯台下暗しってやつだ)
アカギは茂みから立ち上がり、しづかの傍に寄る。
助けるためではない。しづかが手に握っている鎖鎌が目当てであった。
しづかの腕を持ち上げ、鎖鎌を奪おうとした。



「…………頼…む……」

アカギは、しづかの足元に倒れている大男に目を向けた。
声はその男から聞こえてくるようであった。


230 :マロン名無しさん:2010/01/22(金) 01:08:05 ID:???
支援

231 :天意13/20 代理投下:2010/01/22(金) 01:08:39 ID:???
ショック死でなければ、下半身を失っても数分間は生きていることがある。
そのうち大量出血で死ぬのは免れないが、数分の間、壮絶な苦しみを味わわねばならない。

だが、天は己が人より丈夫な体に生まれついたことに今ほど感謝したことはなかった。


「………………護っ………俺の…代わり…に………」
「………………………」
アカギの沈黙を是と捉えてか、天は虫の息の中、僅かに笑った。

「久しぶり………赤木さん……今……………そっちに……………………。」
そのまま男は息を引き取った。



(やれやれ…顔見知りでない奴に名を呼ばれる事の多い日だ…。鷲巣の姿も見えねえし、探そうにもこの騒動じゃあな…)
アカギは改めてその男を見、再び倒れている少女に目を戻し、軽く息を吐いた。
逝きがけに託された“荷物”は、どうも見た目以上に厄介事の起きるような予感、予兆を感じる。

(だが…“窮地”は“好機”と表裏一体…。それも悪くない…。)
アカギはしづかを抱きかかえると、利根川達とは反対方向に走り去っていった。

アカギといえど、和也のつけた盗聴器の存在にまで気がつくことは出来ず。
しづかの持つデイパックから、カラーボールの蛍光塗料が染み出し、地面に転々と跡を残していたことに気がつくのも、もう少し先の話である。


232 :天意14/20 代理投下:2010/01/22(金) 01:09:38 ID:???


二階で“侵入者”を探し回っていたひろゆきや平山の耳にも、地雷の爆発音ははっきりと届いた。
「何だっ…!?」

ひろゆきが非常口を見下ろせる窓に張り付き、下の様子を伺う。
もうもうと土埃の舞った後、月明かりの中、目に飛び込んできたのは、
倒れている天と、その傍で倒れている少女、利根川、アカギの姿であった。

「天さんっ…!?」
「と…利根川っ…!」
ひろゆきの声と、平山の悲鳴が重なる。

「天さん…!」
ひろゆきが走り出そうとするのを、平山が止めに入る。咄嗟にひろゆきの腕を掴んだ。

「ちょっと待て…!今の爆発音、あいつら爆弾を持ってる…!のこのこ出て行ってどうするつもりだ…!」
「離せ…!天さんが倒れてる…!助けないと、天さんの命が…!」
「それなら尚更だ…!俺達まで巻き添えになる…!ここは慎重に奴らの出方を…」
「お前は、天さんの知り合いじゃないからそんなことが言える…!死のうがどうなろうが、知ったこっちゃ無いって…!」
今までに無く取り乱すひろゆきを前に、平山はむしろ頭の奥が冷めていくような感覚を覚えた。

「離せっ…!俺一人で行くっ…放っといてくれ…!」
「駄目だっ…!放っとく訳にはいかない…!」
「何で…」
「お前は俺の知り合いだから…!」
平山は正面からひろゆきの目を覗き込む。

233 :マロン名無しさん:2010/01/22(金) 01:10:07 ID:???
支援

234 :マロン名無しさん:2010/01/22(金) 01:16:27 ID:???
支援

235 :天意15/20:2010/01/22(金) 01:54:12 ID:???
「落ち着け…!あれだけの数の人間が集まってる。おかしい…!何かが起きてる…!
今やるべきことは無鉄砲に飛び出すことじゃない。何が起きているか見極めること…!
利根川がいるってことは、利根川と一緒にいた他の二人も近くにいる可能性が高い…!
特に、利根川は拳銃を持ってるんだ…!為す術も…」

その時、階下でパンッ、パンッと銃声が響いた。

「おい…!見ろっ…」
平山がひろゆきを引っ張って窓の外に目をやると、今度は地面に何故か紙吹雪が広がっていた。
利根川と、どこから出てきたのかもう一人、利根川の仲間が、周囲を見渡し、銃を構えたまま林のほうへ走り去っていった。

「………アカギ」
平山が呟いた。
傍らの茂みからアカギが現れ、倒れている天と少女へと歩み寄っていく。
しばらく少女の傍でしゃがんでいたかと思うと、そのまま少女を抱き上げ、利根川達と反対方向へ走り去っていった。

「…赤木さん……天さんの方へは確かめに行かなかった……」
ひろゆきが震える声で囁く。
何故アカギは近寄って状態を確かめなかったのか。その必要も無いほど、一見して『そう』と分かる状態なのだろうか。
ここからは暗くてよく見えないが、悪い想像しか思い浮かばない。

顔面蒼白のひろゆきの肩を掴み、平山は意を決してひろゆきに言った。
「………行こう。けど、『覚悟』はしといた方がいい……」


二人は一歩一歩、階下へと続く階段を下りていった。

236 :天意16/20(1):2010/01/22(金) 01:56:00 ID:???
【E-5/ギャンブルルーム内/深夜】

【兵藤和也】
 [状態]:健康
 [道具]:チェーンソー 対人用地雷残り一個(しづかが所持)
     クラッカー九個(一つ使用済) 不明支給品0〜1個(確認済み) 通常支給品 双眼鏡 首輪2個(標、勝広)
 [所持金]:1000万円
 [思考]:優勝して帝愛次期後継者の座を確実にする
     死体から首輪を回収する
     鷲巣に『特別ルール』の情報を広めてもらう
     赤木しげるを殺す(首輪回収妨害の恐れがあるため)
     盗聴を続ける、利根川、一条に指示を出す
※伊藤開司、赤木しげる、鷲巣巌、平井銀二、天貴史、原田克美を猛者と認識しています。
※利根川、一条を部下にしました。部下とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※遠藤、村岡も、合流して部下にしたいと思っております。彼らは自分に逆らえないと判断しています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、その派閥全員を脱出させるという特例はハッタリですが、 そのハッタリを広め、部下を増やそうとしています。
※首輪回収の目的は、対主催者の首輪解除の材料を奪うことで、『特別ルール』の有益性を維持するためです。
※しづかに自爆爆弾を持たせました。その様子を盗聴器で確認しております。 (今は和也のみ盗聴中)
※第二放送直後、ギャンブルルーム延長料金を払いました。3人であと3時間滞在できます。

237 :天意16/20(2):2010/01/22(金) 01:56:15 ID:???
【E-6/林/深夜】

【一条】
[状態]:健康
 [道具]:黒星拳銃(中国製五四式トカレフ) 改造エアガン 毒付きタバコ(残り18本、毒はトリカブト) マッチ スタンガン 包帯 南京錠 通常支給品×6(食料は×5) 不明支給品0〜3(確認済み、武器ではない)
 [所持金]:4800万円
 [思考]:カイジ、遠藤、涯、平田(殺し合いに参加していると思っている)を殺し、復讐を果たす
     復讐の邪魔となる(と一条が判断した)者、和也の部下にならない者を殺す
     復讐の為に利用できそうな人物は利用する
     佐原を見つけ出し、カイジの情報を得る
     和也を護り切り、『特別ルール』によって村上と共に生還する
    利根川とともにアカギを追う、和也から支持を受ける
※利根川とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、 その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※通常支給品×5(食料のみ4)は、重いのでE-5ギャンブルルーム内に置いてあります。

238 :天意17/20:2010/01/22(金) 01:56:50 ID:???
【利根川幸雄】
 [状態]:健康
 [道具]:デリンジャー(1/2) デリンジャーの弾(残り25発) Eカード用のリモコン 針具取り外し用工具 ジャックのノミ 支給品一式
 [所持金]:1800万円
 [思考]:和也を護り切り、『特別ルール』によって生還する
     首輪の回収
     遠藤の抹殺
     カイジとの真剣勝負での勝利・その結果の抹殺
     アカギの抹殺、鷲巣の保護
     病院へ向かう
     一条とともにアカギを追う、和也から支持を受ける
※両膝と両手、額にそれぞれ火傷の跡があります
※和也の保護、遠藤の抹殺、カイジとの真剣勝負での勝利・その結果の抹殺を最優先事項としています。
※鷲巣に命令を下しているアカギを殺害し、鷲巣を仲間に加えようと目論んでおります。(和也は鷲巣を必要としていないことを知りません)
※一条とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、 その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※デリンジャーは服の袖口に潜ませています。
※Eカード用のリモコンはEカードで使われた針具操作用のリモコンです。電波が何処まで届くかは不明です。
※針具取り外し用工具はEカードの針具を取り外す為に必要な工具です。
※平山からの伝言を受けました(ひろゆきについて、カイジとの勝負について)
※計器からの受信が途絶えたままですが、平山が生きて病院内にいることを盗聴器で確認しました。(何かの切欠で計器が正常に再作動する可能性もあります)
※平山に協力する井川にはそれほど情報源として価値がないと判断しております。
※黒崎が邪魔者を消すために、このゲームを開催していると考えております。
※以前、黒崎が携わった“あるプロジェクト”が今回のゲームと深く関わっていると考え、その鍵は病院にあると踏んでおります。
※E-5ギャンブルルーム前には、勝広の持ち物であったスコップ、箕、利根川が回収し切れなかった残り700万円分のチップなどが未だにあります。

239 :天意18/20:2010/01/22(金) 01:57:22 ID:???
【E-5/病院/深夜】

【鷲巣巌】
 [状態]:疲労、膝裏にゴム弾による打撲、右腕にヒビ、肋骨にヒビ、腹部に打撲  →怪我はすべて手当済
 [道具]:防弾チョッキ 拳銃(銃口が曲がっている)
 [所持金]:0円
 [思考]:零、沢田を殺す
     平井銀二に注目
     アカギの指示で首輪を集める(やる気なし)
     和也とは組みたくない、むしろ、殺したい
※赤木しげるに、回数は有限で協力する。(回数はアカギと鷲巣のみが知っています)
※赤木しげるに100万分の借り。
※赤木しげると第二回放送の前に病院前で合流する約束をしました。(今は忘れています)
※鷲巣は、拳銃を発砲すれば暴発すると考えていますが、その結果は次の書き手さんにお任せします。
※主催者を把握しています。そのため、『特別ルール』を信じてしまっています。

【井川ひろゆき】
 [状態]:健康
 [道具]:日本刀 防犯ブザー 不明支給品0〜2(確認済み) 懐中電灯 村岡の誓約書 ニセアカギの名刺 アカギからのメモ 支給品一式×2
 [所持金]:1500万円
 [思考]:赤木しげるとギャンブルで闘う この島からの脱出 極力人は殺さない 天を助けに行く 
※村岡の誓約書を持つ限り、村岡には殺されることはありません。
※赤木しげるの残したメモ(第二回放送後 病院)を読みました。
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※二枚ある地図のうち、一枚を平山に渡しました。

240 :天意19/20:2010/01/22(金) 01:57:53 ID:???
【平山幸雄】
 [状態]:左肩に銃創 首輪越しにEカードの耳用針具を装着中
 [道具]:支給品一式 首輪探知機 カイジからのメモ
 [所持金]:1000万円
 [思考]:田中沙織を気にかける 利根川から逃れる術を探る カイジが気になる ひろゆきに付き添い、天の様子を見に行く
※利根川に死なれたと思われていることを知りません。計器に不具合が起きているのも知りません。
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※ひろゆきから地図をもらいました。


【E-4/草むら/深夜】

【しづか】
 [状態]:気絶 首元に切り傷(止血済み) 頭部、腹部に打撲 人間不信 神経衰弱 ホテルの従業員服着用(男性用)
 [道具]:鎖鎌 ハサミ1本 ミネラルウォーター1本 カラーボール(と対人用地雷と盗聴器) 板倉の靴 通常支給品(食料のみ)
 [所持金]:0円
 [思考]:ゲームの主催者に対して激怒 誰も信用しない 一条を殺す
※このゲームに集められたのは、犯罪者ばかりだと認識しています。それ故、誰も信用しないと決意しています。
※和也に対して恐怖心を抱いています。
※利根川を黒崎という名前と勘違いしております。
※利根川から渡されたカラーボールはディバックの脇の小ポケットに入っており、そのポケットの底には地雷が仕込まれています。なお、カラーボールが蓋のような状態のため、しづかはその存在に気づいておりません。
※この地雷は包帯によってカラーボールと繋がっており、カラーボールを引っ張ると、地雷の安全装置であるピンが外れ、ディバックの圧迫によって爆発するように仕掛けられております。
※ひろゆきが剣術の使い手と勘違いしております。
※ディバックの中には今、和也達によって、盗聴器が仕掛けられております。しづかがひろゆきと平山の会話を聞いたことから、平山が生きていること、首輪探知機を持っていること、ひろゆきが日本刀を持っていること、
また、しづかの独り言から、彼らが病院にいることを和也達に知られています。
※利根川と一条は任務中の為、今、しづかの盗聴器から盗聴しているのは和也だけです。

241 :天意20/20:2010/01/22(金) 01:58:31 ID:???
【赤木しげる】
 [状態]:健康
 [道具]:ロープ4本 不明支給品0〜1(確認済み)支給品一式 浦部、有賀の首輪(爆発済み)
 [所持金]:500万円
 [思考]:もう一つのギャンブルとして主催者を殺す 死体を捜して首輪を調べる 首輪をはずして主催者側に潜り込む しづかを連れて逃げる
※主催者はD-4のホテルにいると狙いをつけています。
※2日目夕方にE-4にて平井銀二と再会する約束をしました。
※鷲巣巌を手札として入手。回数は有限で協力を得られる。(回数はアカギと鷲巣のみが知っています)
※鷲巣巌に100万分の貸し。
※鷲巣巌と第二回放送の前に病院前で合流する約束をしました。また第二回放送後に病院の中を調べようと考えていましたがどちらも果たせず。(ひろにメモが渡ったのは偶然です)
※首輪に関する情報(但しまだ推測の域を出ない)が書かれたメモをカイジから貰いました。
※参加者名簿を見たため、また、カイジから聞いた情報により、 帝愛関係者(危険人物)、また過去に帝愛の行ったゲームの参加者の顔と名前を把握しています。
※過去に主催者が開催したゲームを知る者、その参加者との接触を最優先に考えています。 接触後、情報を引き出せない様ならばギャンブルでの実力行使に出るつもりです。
※危険人物でも優秀な相手ならば、ギャンブルで勝利して味方につけようと考えています。
※カイジを、別行動をとる条件で味方にしました。
※村岡隆を手札として入手。回数は有限で協力を得られる。(回数はアカギと村岡のみが知っています)


【天貴史 死亡】
【残り 25人】

※天の所持品(不明支給品0〜2 通常支給品 、500万円分のチップ)は天の遺体が背負ったままになっています。

242 :マロン名無しさん:2010/01/22(金) 19:26:32 ID:Iz2mbMAY
天があっけなく死んだ・・・だと

243 :マロン名無しさん:2010/01/22(金) 19:41:30 ID:???
主役では初の死亡?

244 :マロン名無しさん:2010/01/23(土) 07:03:16 ID:???
したらばで書き込みがありましたので
代理投下します。

: ◆6lu8FNGFaw:2010/01/22(金) 22:17:00
すいません、間違いを見つけたので修正します。

誤>第二放送直後に一旦外へ出、一条が3人で3時間分(600万)を払っている。
正>第二放送直後に一旦外へ出、一条が3人で3時間分(1800万)を払っている。

あと、一条の状態表も修正します。
【一条】
[状態]:健康
 [道具]:黒星拳銃(中国製五四式トカレフ) 改造エアガン 毒付きタバコ(残り18本、毒はトリカブト) マッチ スタンガン 包帯 南京錠 通常支給品×6(食料は×5) 不明支給品0〜3(確認済み、武器ではない)
 [所持金]:3600万円
 [思考]:カイジ、遠藤、涯、平田(殺し合いに参加していると思っている)を殺し、復讐を果たす
     復讐の邪魔となる(と一条が判断した)者、和也の部下にならない者を殺す
     復讐の為に利用できそうな人物は利用する
     佐原を見つけ出し、カイジの情報を得る
     和也を護り切り、『特別ルール』によって村上と共に生還する
    利根川とともにアカギを追う、和也から支持を受ける
※利根川とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、 その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※通常支給品×5(食料のみ4)は、重いのでE-5ギャンブルルーム内に置いてあります。

*********

wikiにも上記のように修正いたします。

245 :マロン名無しさん:2010/01/23(土) 14:17:09 ID:???
天さんが死んだ…

しづかもなかなかの歩く死亡フラグっぷりw
また痕跡残したしw

246 :マロン名無しさん:2010/01/23(土) 16:09:16 ID:???
これを皮切りに影の薄い人がどんどん死にそうな予感

247 :マロン名無しさん:2010/01/23(土) 18:40:35 ID:???
さよなら天さん…「天」キャラでも初だね

248 :マロン名無しさん:2010/01/25(月) 21:51:52 ID:???
影がうすいってことはないだろいろいろエピソードあるし
例えばほら…ええと…あれ…?


マジレスするとまわりが濃いのもある
市川とか

249 :マロン名無しさん:2010/01/26(火) 08:53:28 ID:???
天さんお疲れ様です…
死に際を看取ったのがアカギというのも何かの因縁だな
事態を把握したひろゆき達がどう動くか期待

250 :マロン名無しさん:2010/01/30(土) 01:26:09 ID:???
予約来たっ…!

251 :マロン名無しさん:2010/01/30(土) 10:06:59 ID:???
わく…てか…

252 : ◆uBMOCQkEHY :2010/01/31(日) 00:52:27 ID:KfLOJ0cO
お久しぶりです。
これから投下します。
どうか支援をお願いいたします。

253 :慕効 1:2010/01/31(日) 00:53:43 ID:???
……では、以上で放送を終了する。 引き続き、諸君の健闘を祈る』

――兄さんの名前はない・・・。

仲根はその放送で胸を撫で下ろした。
今、仲根はG-5エリアの道の途中にある公衆トイレの裏に隠れていた。
勿論、落ち着いて放送を聞くためである。
先程の放送では知り合いの名前は挙げられなかった。
それで緊張の糸が切れたのか、仲根は壁に寄りかかる。

「兄さん・・・今、どこにいるんだよ・・・」
仲根としては珍しく、心細そうな声を洩らす。
黒沢と合流し、脱出するという目的を持っているが、肝心の黒沢が今どこにいるのかが、皆目見当もつかない。
仲根は月光と星彩に照らされ、シルエットのように夜空に浮かび上がる黒き建物――F-6のホテルへ向かっていた。
理由は特にない。
しいて言えば、一度、仲根が黒沢と再会した時、黒沢は女性を連れていた。
もうすでに12時を過ぎている。
自分でさえ、身体にダルさを感じているのだ。
か弱い女性であれば、尚更だろう。
この島の中には様々な施設があるが、ホテルほど女性を休ませるのに適した場所はない。
仲根は呟く。
「兄貴は・・・フェミニストだから・・・」

254 :慕効 2:2010/01/31(日) 00:54:50 ID:???
タッ・・・タッ・・・


遠くからかすかに聞こえる靴の音。人の気配。
仲根は思わず、トイレの裏から身を乗り出す。
暗くてはっきりと分からないが、身長と肩幅から男性のように思える。

「金・・・持っているのか・・・」
仲根はポケットからバタフライナイフを取り出す。
その時、ふと市川の言葉が頭を過ぎる。

――一億円払ったとして、必ずしもバトルロワイアルから脱出できるという保障はどこにある?
   そんなことも考えずに、お前さんは殺し合いに乗っていたのかい?

市川が言うように、本当に助かりたければ、主催者を潰すほかない。
対主催の方針を掲げれば、参加者は皆、同じ目的を持つ仲間ということになる。
向かってくる男も、もしかしたら、のちに仲間となるかもしれない。

――何より、オレが人を殺して金を集めていると知れば、兄さんは・・・

黒沢に拒絶される恐怖に、仲根に凍てつくような震えを覚える。
しかし、仲根はすぐに首を振る。

――あのジイさんも信用ならねぇ・・・兄さんを助けるにはこの方法しか・・・

255 :慕効 3:2010/01/31(日) 00:55:40 ID:???
仲根はバタフライナイフを握り締める。
仲根の手に、初めて人を殺した瞬間の感覚が蘇る。
水の入った袋に穴を開けるように、プスッと首にのめり込んでいく刃。
ぬるま湯のような温かさを持った血。
男を刺した直後、仲根はハムをスライスしているのではないのかと思ってしまうほどの手ごたえのなさに拍子抜けしてしまった。
しかし、その後、虚脱とも倦怠ともつかない嫌悪感が湧き上がってきた。
人間として越えてはいけない一線を越えてしまったが故の罪の意識である。

その嫌悪感は今も発作のように定期的に押し寄せてくる。
しかし、黒沢を助けるためという大義名分がその波を押しとどめていた。
その大義名分は今も揺ぎ無く仲根を支えている。

――あの男の金を奪うっ・・・!

仲根は覚悟を決めると、親指でナイフの持ち手から刃を弾き出した。

256 :慕効 4:2010/01/31(日) 00:59:28 ID:???
森田は見通しのよい道路をひたすら西へ駆けていた。
第二回定時放送が終了し、空の闇と月明かりの冷え冷えとした光が、さらに色を増して夜空を彩る。
森田の目指す場所はF-3 バッティングセンター。
パソコンのフロッピーのデータでは平井銀二が最後に確認された場所がそこであったからだ。
森田は主催者の黒崎から、第四回定時放送までに首輪を6つ集めろという依頼を交わしている。
もし、この依頼を達成できなかった場合、森田の首輪は爆発する。
リスクの大きい話だが、もし、第三回定時放送までに達成できれば、進入禁止エリアの解除権を手に入れることができる。
この権利は対主催を掲げる参加者から見れば、喉から手がでるほど欲しい代物である。

――銀さんもきっとその権利を必要としているはず・・・

森田はさらに強く地を蹴る。

――早く貴方にこのことを伝えたい・・・!

森田が銀二に思いを馳せながら、公衆トイレの前を通過した瞬間だった。

背後から、ジャリ・・・と靴が土を踏む音が耳に飛び込んできた。
森田に電気の膜に触れたようなピリッとした緊張が走る。

――誰かいるっ・・・!

森田は振り返る。
金髪に染めた髪の毛と大きな唇が特徴的な男が森田にナイフを振りかざし、向かってきた。

257 :マロン名無しさん:2010/01/31(日) 01:00:17 ID:???
支援

258 :慕効 5:2010/01/31(日) 01:02:03 ID:???
――マズいっ・・・!

森田が本能的に後ろへ飛び退くと同時に、男のナイフが大気を断つ。
森田のスーツの端が僅かに裂ける。
森田は滑り込むように足で踏みとどまると、すぐに身構えた。
「誰だっ!あんたはっ・・・!」
しかし、男はそれに答えることなく、ナイフを振り上げ、第二撃を放つ。
森田は後ずさりしながら、ナイフを辛うじてかわす。

――くっ・・・こんな時にっ・・・!

森田が心の中で毒気ついた直後だった。
男が身を屈めると、ナイフを握る手を勢いよく後ろへ振り下げた。
その体勢は丁度、ボクシングでアッパーを仕掛ける瞬間に酷似している。

――勢いをつける気か・・・!

森田はナイフの動きを注視しながら、攻撃を避けようと、左足を後ろへ引く。
この時、森田は男のある動きに一種の違和感を覚えた。
男の唇が墨を吐き出す直前のタコのように、丸く萎んだのだ。

――何だ・・・今のは・・・

しかし、森田の考察はここで中断される。
わき腹に火のような疼痛が走ったからだ。
男はナイフを森田に突き刺さなかった。
森田に背中を向けるまでに上半身をひねらせ、その反動を利用して、左足を森田のわき腹めがけて繰り出したのだ。
いわゆる回し蹴りである。
思わぬ攻撃に、森田はなす術もなかった。
森田の身体は宙を飛び、地面に叩きつけられた。

259 :慕効 6:2010/01/31(日) 01:03:44 ID:???
「うぐっ・・・」
――あのナイフは・・・フェイクっ!

森田はひりひりと熱を帯びるわき腹を押さえながら、半身を起こした。
勿論、そんな森田の隙を男が見逃すはずがない。
男は森田の前に立つと、足を振り上げた。
男の口が再び、萎む。

「くっ!」
――こんなところで、死んでたまるかっ!
森田は起こした半身を回転させ、その足を避ける。
男の足は森田の背中すれすれに振り下ろされ、地面にめり込んだ。
男の脚力が風圧となって、森田の背中にビリビリと伝わってくる。

森田は身体を反転させた勢いで立ち上がり、男と間合いを取ろうと、後ろへ下がる。
その時、背中にドンと何かがあった。

「なっ・・・!」

森田は後ろに目を遣る。
森田の背後は公衆トイレの壁だった。

――しまったっ!

森田が正面を向きなおした時、すでに男は森田を見据え、バタフライナイフを構えていた。
目の前の男はナイフとキックを織り交ぜ、森田を翻弄させる。
状況的には森田が不利であることは一目瞭然であった。

260 :慕効 7:2010/01/31(日) 01:05:09 ID:???
――だが・・・

森田には確信があった。

――オレの考えが正しければ・・・アイツの動きは読める・・・!
しかし、それには1コンマレベルでの判断力が必要とされていた。
判断を誤れば、死ぬことは目に見えている。

――そうであったとしても・・・

森田は顔についた泥を腕で拭う。
森田の口元が僅かにあがる。

――オレはその1コンマに賭ける・・・!

森田は戦う意志を示すかのように、拳を顎の前近くに置き、脇を締める。
その森田の意志が通じたのか、男が無言のまま、森田に踊りかかる。
森田はその姿勢を維持しながら、男のある一点に目を凝らす。
それは男の唇。

――オレの判断が正しければ・・・

男は蹴りなど、足を使った攻撃を仕掛けるとき、決まって唇がタコのように萎む。
もし、唇が萎めば、蹴り、そうでなければ、ナイフによる攻撃である。

261 :慕効 8:2010/01/31(日) 01:06:40 ID:???
男が眼下にまで迫る。
あと一歩、男が蹴り出せば、足であろうとナイフであろうと、森田に致命傷を負わせられる射程距離。
森田は唇を凝視する。
男の口は・・・萎まないっ!

――次の攻撃はナイフっ!

シュンと空気を鞭打つような音を絶てて、ナイフが綺麗な一閃を描く。
森田の左袖がぱっくり割れ、血が溢れ出る。
「腕はくれてやるっ!」

森田は男の攻撃を腕で受け流すや否や、瞬時に男の背中へ回り、ナイフを持つ右手と肩を掴んだ。
男をきっと睨みつける。
「今、お前の勝ちの目・・・完全に消えた・・・!」

「な・・・ふざけるなっ!」
男は森田の発言に思わず、動揺の声をあげるも、その言葉を否定するかのように、すかさず左の拳を森田へ繰り出した。
男に殴り飛ばされ、森田は顔面から血を噴き出した――とは、男の幻想にすぎなかった。
男の拳は森田の顔面の手前で止まっていた。
「何っ!」
この直後、しびれるような痛みが男の腕を刺激する。
森田が男の右手をドアノブのように限界までひねったのだ。
腕を半回転捻ると、肩が前方へ流れてしまうため、もう片方の腕は自分の後ろにまで届くことはない。
この技はかつて、銀二が平成の殺人鬼、有賀研二に対して見せた関節技である。

262 :慕効 9:2010/01/31(日) 01:13:13 ID:???
「う・・・うぐっ・・・」
男は悲痛な声を口から洩らす。
その反応を見て、森田の口元が僅かに緩む。

――このまま、この男の腕をへし折るっ!

銀二の有賀への攻撃の流れ――腕をへし折り、顔面に膝蹴りを喰らわすという流れを再現するため、森田は両腕に力を込める。
しかし、男は森田の力の入れ方で身の危うさを察した。
男はバネのように両膝を跳ね上げると、森田に勢いよく体当たりした。
森田は男の腕を掴んだまま、公衆トイレの壁と衝突する。

「くはっ!」

男と壁に挟まれ、喉を絞められたかのような圧迫感が森田を追い詰める。
並みの男なら耐えるだけで精一杯だろう。
それでも、森田は男の腕を離さない。

――ここでコイツに主導権を明け渡すものかっ!!

森田は両足で背後の壁を蹴り飛ばすと、反撃と言わんばかりに、全体重をかけて男にのしかかった。
さすがに、腕の自由を奪われた状態で、成人男性の体重を支えるのは不可能である。
男は森田に押し潰されるような形で地面に叩きつけられた。

「離せっ!このヤロー!!!」
男の罵詈雑言が周囲にこだまする。

263 :慕効 10:2010/01/31(日) 01:14:57 ID:???
――やっぱり、銀さんのようにはいかないか・・・

森田から苦笑がにじみ出る。
森田は男を押さえ込んだまま、男の手首に手刀を叩きいれた。
男の手からナイフがこぼれる。
森田はそのナイフを奪うと、男の首元に突きつけた。
「お前の名は何だ・・・!」
しかし、男はそれに答えることなく、“お前には関係ねぇだろっ!”と、耳が痛くなるように叫びをあげ続ける。
森田は皮膚に食い込むように、ナイフをさらに深く押し付ける。
「もう一度聞く・・・お前の名は・・・何だ?」
男はグッと息を呑む。
金属特有の無機質な冷たさが皮膚の下を通る血管から全身へ伝わっていく。
男は観念したのか、毒を吐くように呟く。
「仲根・・・秀平・・・だ・・・」
「仲根秀平だと・・・?」
森田はこの名前に覚えがあった。

仲根秀平――藤崎第二中学校に所属。イギリスに3年間滞在した経験あり。

これは森田が持っていたフロッピーに書かれていた仲根の簡単なデータである。
ゲームに参加したのは同じ参加者である黒沢という男の治療費を集めるためであり、現に一人殺害している。
一人の参加者を助けるために、多くの参加者を殺害する。
参加者の中で殺し合いに乗る数少ない者であると同時に、一人の参加者への奉仕という特殊な目的を持つ者。
故に、森田の印象に強く残っていたのだ。

――こいつは殺し合いに乗ってはいるが、目的さえ達成すれば、それ以上は何もしないはず・・・

森田ははっきり聞き取れる声量で言葉を出す。

264 :慕効 11:2010/01/31(日) 01:18:07 ID:???
「お前が探している黒沢という男は今、北にいる・・・!」

その瞬間、男――仲根秀平は大きく目を見開いた。
「どうして、それを・・・」
出会ったばかりの男がなぜ、誰にも話していない自身の目的を知っているのかという戸惑いが、震える声で絞り出される。
森田は“その理由を知りたいか・・・?”と呟くと、懐から破損したフロッピーを取り出し、仲根の前に投げ捨てた。
「これがオレの支給品。1時間おきに各参加者の動向を配信してくれる・・・“壊れちまった”けど・・・だがな・・・」
森田は指で自分の頭を指し示す。
「1時間前までの各参加者の動向は全て、頭の中に叩き込んである・・・!」
「何だとっ・・・!」

この話術はかつて、遠藤が佐原の説得の際に使ったものである。
森田はある程度の情報こそメモに書き込んでいるが、全て覚えているわけではない。
しかし、あえて“全ての情報を記憶している”と公言したのは、遠藤の時と同様、“森田という男は生かす価値のある人間”だと、仲根に印象付けるためである。
また、森田はフロッピーを“壊した”とではなく、“壊れた”と説明した。
森田はこのフロッピーが嘘の情報を流し、持ち主である森田自身を惑わす可能性があるのではないかと考え、フロッピーを破壊した。
しかし、そのことを仲根に言えば、仲根は森田の評価を“黒沢の情報を握っている人間”から“棄権費用を稼ぐためのターゲットの一人”と格下げし、再び、襲い掛かってくるだろう。

森田は仲根がさらに食いつくように、言葉を続ける。

「もし、オレをこの場から見逃してくれれば、さらに詳しい情報をお前に渡す・・・
オレから1000万円を力で奪い取るより、建設的な方法だと思わないか・・・?」
「それは・・・」

265 :慕効 12:2010/01/31(日) 01:19:19 ID:???
仲根は“うぐっ・・・”唸ると、暫し考え込む。
自分を押さえつけている男は、正直信用ならない。
しかし、この男の要求を呑めば、もしかしたら、黒沢と合流できるかもしれない。
その可能性が仲根の判断を鈍らせる。
やがて、仲根はこのままでは埒が空かないと判断したのか、“分かった・・・”と苦々しく同意した。
「そうか・・・」
森田は仲根から身体を離すと、仲根から奪ったバタフライナイフを構えながら、後ずさりする。
「一旦、ここから離れて、十分後に再び、戻ってこい・・・
1時間前に黒沢がいた場所を書いたメモを、“分かりやすく”隠しておく・・・」
仲根は“分かりやすく”と“隠す”という矛盾した言葉に、眉をひそめる。
「おいっ・・・どういうことだよっ・・・!もしかして、交換条件を飲まずに、逃げようと考えているんじゃないのか・・・!」
しかし、森田はその意見をばっさりと切り捨てる。
「それはない・・・オレはちゃんとメッセージを残す・・・
もし、アンタと違う場所で再会した時、逆恨みされちゃたまらないからな・・・!」

「フン・・・どうだか・・・」
仲根は忌々しく吐き捨てるも、森田が確実に反撃できない距離まで後ずさりし、無言のまま駆け出した。
やがて、仲根の姿は闇の中に紛れて消えていった。

266 :慕効 13:2010/01/31(日) 01:20:12 ID:???
「やっと行ってくれたか・・・」
重荷を下ろしたかのように、森田の肩から力が抜ける。

森田は懐から小型ナイフを取り出す。
この小型ナイフは黒崎から渡されたものである。

森田はもし、仲根が攻撃を続けるようであれば、仲根を殺害し、その首輪を奪おうとまで考えていた。
しかし、この選択肢は極力避けたかった。
森田の脳裏に、仲間として相応しいかどうか試された時の銀二の言葉が蘇る。

――殺した方がいいダニども でも殺すな・・・・・・!
   オレたちは世界を広げてなんぼの人間だ!
   殺す人間の・・・・・・世界は広がらない・・・
   必ず閉じていく・・・!

森田は空を見上げる。
どこか平井銀二の存在と重なる、孤潔の光を放つ月が森田の視界に映し出される。

――オレはオレの可能性を奪いたくない・・・
   そうでなければ、貴方と再会する意味がない・・・
   
「そう思いませんか・・・銀さん・・・」
森田は穏やかな笑みを浮かべ、小型ナイフを懐にしまうと、代わりにメモ帳を取り出したのであった。

267 :慕効 14:2010/01/31(日) 01:21:16 ID:???
10分後、仲根は再び、公衆トイレの前に戻ってきた。
「どこに隠したんだか・・・」
仲根は、森田がここに隠すと言ったのもより遠くへ逃げるための時間稼ぎと考え、その言葉を正直期待していなかった。
「見つからなければ、再会した時に殺せばいい・・・」
しかし、メモはすぐに見つかった。
男子トイレの扉の前という目立つ場所にあったからだ。
しかも、仲根から奪ったバタフライナイフでメモを刺し留めて。
「・・・・・・隠してねぇじゃねえかよ・・・」
仲根は悪態を吐きながらも、扉からナイフを抜き取り、メモを広げる。


『黒沢は石田光司、治という参加者と一緒にC-4の民家にいる。
治が昏睡状態のため、よほどのことがない限り、
朝まで移動することはないと思われる。
急げば、合流できるかもしれない。
それと・・・』

この続きを読んで、仲根は言葉を飲み込んだ。
身体が底冷えする感覚を覚えながらも、最後まで文章を追う。

『それと、棄権は不可能だ。
棄権申告はD-4のホテルで申し込むが、そこがすでに禁止エリアとなっているからだ。
この情報を黒沢たちにも伝えてくれ。
そして、人を殺す以外の方法で黒沢を助けるんだ。』

268 :マロン名無しさん:2010/01/31(日) 01:56:33 ID:???
sien

269 :慕効 15(代理):2010/01/31(日) 01:57:43 ID:???
メモはここで終わっていた。
「どこまでが、本当の情報なんだか・・・」
やはり、一戦交わした件もあり、森田への疑心は拭えない。

――けど・・・

仲根は手に収まるバタフライナイフを見つめる。
一度は命を狙った相手に再び、武器を返す。
この殺し合いの場では明らかに自分の首を絞める行為に他ならない。
それでも返すのはよほど、自分自身の力に自信があるのか、お人よしなのか。
どちらにしろ、愚かしいとしか表現のしょうがない。

「わけ分かんねぇ・・・」
結局、仲根は森田の真意を理解することはできなかった。
しかし、これだけは言えた。

「そういう馬鹿は・・・嫌いじゃねぇけどな・・・」

仲根はそう呟くと、メモとバタフライナイフをポケットの中へ突っ込み、北――黒沢の元へと駆け出していった。

270 :慕効 16(代理):2010/01/31(日) 01:58:41 ID:???
【G-5/大通り/深夜】

【森田鉄雄】
 [状態]:左腕に切り傷 わき腹に打撲
 [道具]:フロッピーディスク(壊れた為読み取り不可) 折り畳み式の小型ナイフ 不明支給品0〜2(武器ではない) 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:遠藤を信用しない 人を殺さない 平井銀二と合流する 首輪を集める
※フロッピーで得られる情報の信憑性を疑っています。今までの情報にはおそらく嘘はないと思っています。
※遠藤がフロッピーのバックアップを取っていたことを知りません。
※南郷と第3放送の一時間前にG-6のギャンブルルーム前で合流すると約束しました。
※以下の依頼を受けました。契約書を1部所持しています。
※黒崎から支給された、折り畳み式の小型ナイフを懐に隠し持っています。

271 :慕効 17(代理):2010/01/31(日) 01:59:36 ID:???
――――――――――――――――――――――――――

【依頼内容】

制限時間内に首輪を6個集めること。
期間は依頼受託時から、第4回放送終了まで。
死体から集めた首輪は1個、生存者の首から奪った首輪は2個とカウントする。
森田鉄雄、平井銀二の首輪は3個とカウントする。
第4回放送を過ぎても集められなかった場合は依頼未達成とみなし、森田鉄雄の首輪を爆破する。
森田鉄雄がギャンブルルームに規定数の首輪を持参し、申告した時点で依頼達成とする。
資金の受渡は申告と同時に、ギャンブルルームにて行う。

【報酬一覧】

第2回放送終了までに集めた場合
ゲームを棄権する資金1億円+ボーナス2億円

第3回放送終了までに集めた場合
進入禁止エリアの解除権(60分間)
他者に譲渡可能。ただし、渡す側、受け取る側、双方の意思確認が必要。
確認がとれない場合、権利そのものが消失する。

第4回放送終了までに集めた場合
報酬、ボーナスともになし

――――――――――――――――――――――――――

272 :慕効 18(代理):2010/01/31(日) 02:00:21 ID:???
【G-5/公衆トイレ前/深夜】

【仲根秀平】
 [状態]:前頭部と顔面に殴打によるダメージ 鼻から少量の出血
 [道具]:カッターナイフ バタフライナイフ ライフジャケット 森田からのメモ 支給品一式×2
 [所持金]:4000万円
 [思考]:黒沢を探して今後の相談をする 黒沢と自分の棄権費用を稼ぐ 黒沢を生還させる 生還する 黒沢がいると思われるC−4の民家へ向かう
※森田からのメモには23時の時点での黒沢の状況と棄権が不可能であることが記されております。

273 :マロン名無しさん:2010/01/31(日) 02:05:02 ID:???
乙です。
仲根は無事黒沢と合流できるのか?

274 :マロン名無しさん:2010/01/31(日) 02:14:37 ID:???
投下乙!森田かっけぇ…
仲根と森田の攻防、互いに実力伯仲で面白かったです。
武器を返すのが甘いなぁ、だがそれがいい
仲根にはその対応で良かったみたいだし

ところで、仲根なんですが卒業旅行でハワイ行ってたから、中学卒業直後だと思いますよ。
黒沢の最終回より後からの参戦ですから

275 : ◆uBMOCQkEHY :2010/01/31(日) 06:33:21 ID:???
代理投下をしてくださった方、ご感想をくださった方、ありがとうございました。


>>274
ご指摘ありがとうございました。
まとめサイトに載せる際には所属から卒業へ変更します。

276 :マロン名無しさん:2010/01/31(日) 12:17:31 ID:???
投下乙でした!
仲根のタコが直ってなくてよかったね森田w
どちらも無事に師匠に会えるのかな?

277 :マロン名無しさん:2010/02/01(月) 03:27:09 ID:???
また予約来たっ…!来たっ…!

278 :マロン名無しさん:2010/02/01(月) 21:34:28 ID:???
>>491
ご感想ありがとうございます。

ちなみに慕効は『その人の徳を慕い、その言行をまねる』(漢字源より)という意味です。

279 :マロン名無しさん:2010/02/01(月) 21:36:16 ID:???
誤爆失礼しましたっ!

280 :マロン名無しさん:2010/02/04(木) 05:15:12 ID:???
予約が来たっ…!

281 : ◆6lu8FNGFaw :2010/02/04(木) 21:35:24 ID:???
投下します。

282 :再考1/5:2010/02/04(木) 21:37:13 ID:???

「くそ…くそっ…」
落ちていた木切れを杖代わりにして、骨折した左足を引きずり逃げながら、毒づいた。
空気が熱い。火の手はなおも勢いよくショッピングモールを包み込み、空までも燃やさんとばかりに高く立ち昇る。

遠藤は炎上するショッピングモールを避けながら、北の方へと回りこんでいた。
ショッピングモールを挟んで西側には先程遭遇した“死神”田中沙織、南には森田や南郷、佐原がいる。
皆、今となっては敵同士である。この怪我を見て、反撃されては敵わない。

(とにかく、このままじゃ逃げるのも困難…一旦『安全地帯』で、インターバル入れねえと…)
遠藤は人目を避け、北西の森の中に踏み込んでいった。
ただ闇雲に移動していたわけではない。遠藤はその『場所』を目指して歩いていた。
森の中に一部開かれた場所があり、ぽつんとその建物は立っていた。

「一時間の利用だ…」
「一人か…?」
「そうだ」
「……入れ」
200万分のチップを受け取り、黒服は遠藤をギャンブルルームの中に通した。

田中沙織に遭遇する前、CD-Rにデータを移す前に、遠藤はギャンブルルームの場所を検索しておいた。
『ギャンブルルームで1億円を支払えば、安全な時間を買うことができる』という宇海零の戦略を利用する為である。
結果、参加者がすでに使用したか否かに関わらず、島内のギャンブルルーム設置箇所全てを把握することが出来た。

遠藤は室内に入ると、ソファーに腰を下ろし、まずノートパソコンの電源を入れ起動させた。
そうしておいて傷の手当てを始める。

283 :再考2/5:2010/02/04(木) 21:38:53 ID:???

右肩は、主要な筋肉を避けて弾が貫通したらしく、痛むがゆっくりとなら腕を上げることもできる。
血が固まり傷口が塞がれば、ひとまず問題無さそうだ。

恐る恐るズボンの裾を持ち上げてみる。
左足首の先があらぬ方向に曲がり、骨折箇所と思しき辺りの皮膚は黒ずんだ紫色に腫れ上がっている。

「チッ…」
舌打ちしながら、遠藤はデイパックを漁り、足を固定できそうなものを捜した。
だが、コレといったものがない。溜息を吐きながら無意識に上着のポケットに手を突っ込むと、ゴワゴワしたものが手に触れる。
シーツの切れ端だった。炎を背にして逃げるとき、無意識に手に握っていたシーツの端を突っ込んでいたらしい。
先程はこれのせいで怪我をしたのだが、今はこれのおかげで手当てが出来る。
何が役に立つか分からんもんだ、と感心しながら、遠藤は足にシーツの端を巻きかける。

(だが…これだけでは固定しきれないな…)
遠藤はギャンブルルームの中を見回した。添え木代わりになるものがないかと思ったのだ。

ふと、ルーレット台の傍に置いてあるキャリーワゴンに目を留める。
「おお……!」
今の遠藤にとってそれは、素晴らしい道具に見えた。
もちろん添え木にするために使うのではない。
遠藤はキャリーワゴンに載っているチップを全て脇のテーブルへどけ、キャリーワゴン上部に両肘をつき、端をしっかり握って体を固定した。
左足を浮かせたまま、右足で床を蹴ると、ゴロゴロと車輪が回り移動する。
しばらく室内を動き回ってみたが、右肩への負担も少ない。ワゴンも、体重をかけ続けても耐荷重に問題はないようである。

284 :マロン名無しさん:2010/02/04(木) 21:39:39 ID:???
支援

285 :再考3/5:2010/02/04(木) 21:40:35 ID:???

「動ける…動けるぞ!」
これで左足が動かずとも、外の移動が楽になる。多少車輪の音がするのが難点だが。
遠藤は思わずにやりと笑った。
遠藤の不審な行動を、黒服は黙って遠目に眺めている。そんな黒服と目が合い、微妙な空気が流れる。

「……ゴホン」
遠藤は咳払いを一つした。キャリーワゴンを押してソファーに戻る。
杖が必要なくなったので、杖代わりにしていた木切れを適当な長さに折り、添え木にして足の手当てを終えた。

「さて…」
遠藤はノートパソコンに目を落とす。
先程電源を入れ立ち上げた後、動作を少しでも軽くする為CD-Rに入れておいたデータをノートパソコンにインストールしておいた。
インストールが完了し、デスクトップに新しく表示されたアイコンをクリックする。
データのダウンロードが始まった。やはりコピーしたデータだと転送に五分程かかるようである。

(ま…仕方ない。デスクトップ型パソコンの中にデータがあるままじゃあ持ち運べなかったしな……)
CD-Rに入れていなければ今頃、データはパソコンもろとも炎の中である。不幸中の幸いといったところか。

データの受信完了を待ち、まずは先程聞き逃した第二放送の内容を把握する。
「禁止エリアは…『G-4』、『H-1』か…。」
遠藤は眉根を寄せる。
(『G-4』はともかく…『H-1』ってのは何故だ…?)

地図で見ると、『G-4』は人工的にコンクリートで舗装されているように見える。
(港……)

286 :マロン名無しさん:2010/02/04(木) 21:41:20 ID:???
支援n

287 :再考4/5:2010/02/04(木) 21:43:29 ID:???

この島には先程までいたショッピングモールを始め、様々な施設が存在する。港があっても何らおかしくはない。
そこに主催の隠したい何かがあったとしても…。
(ただし…本当に重大な何かがあるのなら最初から禁止エリアになっているだろう)
遠藤は、『G-4』に関してはそこで思考をストップした。

(だがこっちの『H-1』は何だ…?)
地図で見ると『H-1』は南西、地図の一番端。ただの海である。

(島から離れた海上だ、調べる術はないが…。いや、本当に何かがあるのか…?
だとしても腑に落ちない…。何かが引っかかる。なんというか…他の禁止エリアに比べ異質すぎるというか、目立つというか…。
ミスリード…?不審な場所であるように見せかけ、本当に参加者から隠したい場所から意識を逸らす為の…。
だとしたら…『過剰』だ…。ネタを知っているが故の過剰反応……!
つまり……本当に隠したいのは『H-1』ではなく、『H-1』以外のどこかの海上……!
おそらく“何か”ある…。島から少し離れた海上のどこかに……!)
しかし、それが何なのかまでは思い至る事が出来なかった。

(田中沙織の現在位置はD-6…か…隣のエリア…くそっ…)
先程の遭遇。尋常でない沙織の様子を思い浮かべ、改めて背筋が寒くなる。

(次の受信はあと15分後…。次の受信で、沙織がもう少し南下して離れていてくれればいいのだが…)
腕時計を見ると、30分が経過している。遠藤がギャンブルルームに滞在できるのはあと30分。
(あと800万、金が尽きるまでギャンブルルームに滞在するわけにはいかんな。この手は緊急時の切り札に取っておかなきゃならん)
遠藤は掌の上のチップを眺め、デイパックにしまう。

(ならば残る策は…森田の時の様に、使役できそうな人間に近づき、己の安全を確保する事。
何せ今は手負いの身…。田中沙織のように殺し合いに乗った人間に遭遇してしまえばひとたまりも無い)

288 :再考5/5:2010/02/04(木) 21:46:55 ID:???

遠藤は、モニターに表示されている参加者の現在地を眺めた。
手負いの遠藤を守れる人間であり、遠藤が取り入る隙があり、動かせそうな、森田よりも賢しくない人間…。
(一度休息を取り、体制を立て直すためだ…)

その目的に見合った人物は、容易に割り出すことが出来た。
『C-4』、黒沢、治、石田のグループである。
データによると今、民家で手負いの治を介抱している。治の昏睡状態が続く限り、このグループは民家から移動しないだろう。
黒沢、石田の二人に絞って行動を検索してみる。
二人ともゲームが始まって以来誰かから逃げるか、誰かを守り助けるといった発言、行動をしている。一貫している。
何より、他の参加者を何の見返りもなく介抱する。この一点においても、遠藤にとっては一番適役と考えられる人物である。
黒沢はマシンガンを持った参加者と戦って退けたこともあり、腕力にも多少期待出来る。
石田は、かつてスターサイドホテルでのギャンブル斡旋のとき、一度話をした程度の顔見知りである。
元帝愛ということで警戒されるだろうが、あの男なら得意の弁舌で何とでも丸め込む自信がある。

「次に向かう先は、ここだな…」
遠藤は広げてあった地図を手元に引き寄せ、C-4の位置に丸く印をつけた。


【C-6/ギャンブルルーム内/深夜】

【遠藤勇次】
 [状態]:右肩銃創(痛むが腕を軽く動かすことは可能) 左足首を複雑骨折(応急処置済) 頬に火傷
 [道具]:参加候補者名簿  コルトパイソン357マグナム(残り5発) キャリーワゴン(島内を移動する為に使う)
     ノートパソコン(データインストール済) バッテリー多数 CD−R(森田のフロッピーのデータ) 不明支給品0〜1 支給品一式
 [所持金]:800万円
 [思考]:次のデータ受信を待つ 黒沢、石田の元へ向かう 黒沢、石田を利用する 沙織、森田、南郷、佐原から逃げる
※森田に支給品は参加候補者名簿だけと言いましたが、他に隠し持っている可能性もあります。
※森田の持っていたフロッピーのバックアップを取ってあったので、情報を受信することができます。 データ受信に3〜5分ほどかかります。

**********
以上です。支援ありがとうございました。

289 :マロン名無しさん:2010/02/04(木) 22:43:59 ID:???
乙です
善良中年コンビ、果たして遠藤に丸め込まれてしまうのか
先が気になりますね

290 :マロン名無しさん:2010/02/04(木) 23:58:53 ID:???
投下乙です。

仲根と遠藤が黒沢の元に向かう形になりましたか…。

近くには沙織がまだいる可能性もありますし、
病院の次は民家が荒れそうな予感です。

>>281
今回のSSで23作品目。
エースさんの投下数22作品越え、おめでとうございます。

291 :マロン名無しさん:2010/02/05(金) 11:55:04 ID:???
投下 乙です。
遠藤さん、悪い人だな〜。
草食獣の元に向かう肉食獣。

292 : ◆WdJ/TIgKPQ :2010/02/06(土) 14:49:09 ID:???
予約後投下が遅れてすみません。
今から投下します。

293 :活路 1/12:2010/02/06(土) 14:57:04 ID:???
(遠藤は、無事か…)

第二放送後。
森田は遠藤を殺してここに来たわけではないらしい…だが、まだ信用はできない。
他に気になるのは、一条…板倉を殺した男。
しづかが生きているということは、板倉が裏切ったのだろうか。
思考は頭の中をぐるぐると回るが、何一つ答えは出てこない。
とりあえず禁止エリアを地図に記したが、次の行動が思いつかなかった。
これから自分はどうしたらいいのか。
どうすれば、助かるのか。生きてここを出られるのか…

「これから…どうするんだ?」

(どうするって言われても…どうすりゃいいんだよ!オレが聞きてぇよ…)

しかたなく、佐原は聞き返した。

「南郷は、どうする?」
「俺は…」

南郷の頭に浮かんだのは、走り去って行った、森田の後ろ姿。

「首輪を探しにいこうと思う。」
森田の力になり、ほんの僅かでも、このゲームに抵抗する。
それが今自分にできる、唯一の役目だと思っていた。
地図を取り出し、記憶を辿りながら南郷は続ける。
「ゲームが開始してすぐ、一つの死体を見つけた。確かD‐5エリアのあたりだったと思う。
 もしあの死体がまだそのままなら、首輪を回収できる。」

294 :活路 2/12:2010/02/06(土) 14:57:52 ID:???

佐原は目を閉じ、思考を巡らせる。

遠藤と森田。二人を前にして、あの状況で発砲できなかった。
いざという時に戦えなければ…例え銃を持っていても、オレは狩られる側だ。
だったら、たとえ手負いの仲間でも、共に行動したほうがいい。
それに…南郷は裏切らない。
いつのまにか、森田と同じように佐原も、そんな信頼感を抱いていた。

「…確証はもてないが…オレにも一つ首輪のあてがある。」
「おぉっ!本当かっ…!場所はどのあたりだ?」
首輪について話し出した佐原を見て、自分の作戦に協力してくれたのだと解釈し、南郷は笑顔を浮かべた。

森田は板倉が一条という男に殺されたと言っていた。
板倉がしずかともう一人の男と合流したのが、エリアF‐6のホテル前。
もう一人の男が一条だと仮定すると、もし彼らがホテルから遠くに移動していなければ、
板倉の死体はホテル近くにあるはずだ。
もっとも、万一まだ一条やしづかが残っていた場合、最悪の事態になってしまうが…

「教えてもいいが…二つ条件がある。一つ目は、危険があったとき、南郷を守りきる保証はできない。
 二つ目に、見つけた首輪はオレが持つ。それが条件だ。」
「…二つ目はともかく、一つ目は正直きつい…が、しかたないな。
 どのみち命がけのゲームだ。それで構わないよ。場所はどのあたりだ?」
「すぐ隣のエリア…F‐6だ」
「だったら…先にそっちへ行ったほうがいいな。終わったらD‐5に行こう。」

295 :活路 3/12:2010/02/06(土) 14:58:33 ID:???


傷ついた南郷にペースを合わせ、二人で東に移動すること数十分。
ホテルを探索していた二人は、一つの部屋に踏み入ったところで、で足を止める。

「読みは当たったみたいだな」
「あ、あぁ…」
目の前には、懐中電灯に照らされて、
白いスーツを着た大柄な男性が、壁にもたれるように倒れていた。

黒崎の説明の最中に殺された、山口という男。
ゲームスタート直後に入り口に転がっていた、少年の死体。
どちらも目にしたとき、全身が硬直するほどの恐怖を感じたが、あくまで他人事だと、なんとか割り切ってきた。
だが今目の前に冷たく横たわるモノは、少し前まで佐原と会話し、共に行動していた相手だ。
その現実は佐原に重くのしかかる。

二人は、ゆっくりと死体に近づく。
肩に傷がある。それが致命傷になったのだろうか。
長いパーマのかかった髪は乱れ、首元に目をやると、懐中電灯の光に照らされて首輪が鈍く光った。
死体の歪んだ顔、微かな泡の跡、首にあるにかきむしったような跡。それを見て、南郷が呟いた。
「この死に方…D‐5で俺が見た死体と似ている。」
「ということは…そっちの死体も、一条が殺した可能性が高いな。」
一条、という名前は危険人物として、二人の頭に刻まれた。

「とりあえず一個目だな。」
ふぅとため息をつく南郷。
しかし佐原は、眉を寄せて死体を見つめたまま呟く。
「それははいいんだけど…どうやってはずすんだ?コレ。」

296 :活路 4/12:2010/02/06(土) 15:00:27 ID:???
「あっ…」
南郷も眉を寄せ、しばらく考える。
「何か衝撃を与えて爆発させてしまえば、とれるんじゃないか?」
最悪首輪が壊れなくても、首のほうが…
南郷はその様子を想像しかけて、身震いしてやめた。
「確かにそれはアリだが…下手に近づくと爆発に巻き込まれるしな…。」
「その銃で撃ってみるのはどうだ?」
「この銃で首輪を?いや、それは…」

貴重な弾を死体に使うわけにはいかない。
それに、銃声を聞きつけて、より強い武器を求めて殺人鬼が集まってきたら、
今の佐原にはどうすることもできないのだ。
(くそっ…使えなきゃ、こんな銃、飾りじゃねぇかっ…!)

他に爆発させる方法はないかと、二人は頭を捻る。
「禁止エリアまで運んで、投げ込むとか…」
「うーん…もうちょい死体が小さけりゃいけるけど、コレを運ぶのはちょっとなぁ…。
 あんたは怪我してるんだから、実際運べるのはオレ一人だし…」
「役に立てず申し訳ない…」
「謝らなくていいからさ。落ち込む暇があったら考えてくれよ。」
「そ、そうだな…。そうだ、俺の持ち物が使えるかもしれない!」

佐原は南郷の持ち物に期待を寄せる。
手にした木の棒以外に出てきたのは、麻縄、パチンコ玉。
パチンコ玉を見て遠藤とのやりとりを思い出し、佐原は小さくため息をついた。

297 :活路 5/12:2010/02/06(土) 15:01:37 ID:???

「縄を死体につけて、パチンコ玉を撒いた上をひっぱるのはどうだ?禁止エリアまで運びやすく…」
「まぁ…できなくはないけど…。移動するたびにパチンコ玉全部拾う気か?」
「ある程度のロスは仕方ない。今後使い道もないだろうしな。」
「いやそうじゃなくて。通った後にパチンコ玉が残ってたら、誰か追っかけてくるかもしれないだろ。」
「あぁそうか…ううむ…」

だが、他の方法…
リスクを覚悟して首輪に衝撃を与えたり、銃声を響かせたりするよりは
禁止エリアに運ぶというのは、まだ精神的に楽な方法に思えた。
禁止エリアでなくてもいい。何か、他の起爆条件を満たしてやれば…

(他に考えられる起爆条件…例えば…電波が届かない場所に置くとか…)

ふいに、佐原は、温泉旅館で辿りついた”圏外論”を思いだす。
マンホールから地下に潜り、電波を遮断する脱出法。
電波の遮断と同時に起爆する可能性を考えて、保留になっていた方法。
一時は森田達との遭遇ですっかり忘れていたそれが、再び光を取り戻す。

(ま…まてよ?板倉の首輪は、まだ爆発してないんだよな…。
 で、条件さえ合えば爆発する。ということは…)

首輪。マンホール。そして南郷の持っていた麻縄。
頭の中でその様子を思い描く。

(…試すことができるっ…!マンホールの中に縄をつけた首輪を落ろして、爆発するかどうか!)

思いついた名案に、鼓動が早まる。 


298 :マロン名無しさん:2010/02/06(土) 16:11:26 ID:???
支援。

299 :活路 6/12:2010/02/06(土) 18:02:18 ID:???

(そのためには…爆発させずに、この首輪を外さなきゃいけない。)

首輪を爆発させずに、板倉の首から外す。
思いつく方法は一つ…

佐原は覚悟を決め、木刀を握るように、レミントンの銃身を逆さにして両手に構えた。

急に明るくなった佐原の表情に、何か名案が浮かんだのかと期待していた南郷は
その行動を見て慌てだす。

「おい…何をするんだ?直接首輪を叩いたら、爆発した時に銃が痛むかもしれないぞ。」
「…叩くのは首輪じゃない。首と頭だ。」
「なっ…!」
「板倉の頭を潰して、首輪を取る。」
「そんな…」
「方法は、それしかねぇ。」
「ちょっとまて、さっきまで爆発させて取るって言ってたじゃないか…」
「それじゃダ…」
 理由を口に出しかけて、盗聴の可能性を思い出し、佐原はぐっと言葉を飲み込む。


300 :活路 7/12:2010/02/06(土) 18:03:23 ID:???
この作戦を森田や主催に知られるわけにはいかない。
 筆談で説明しようとも考えたが、とりあえず面倒だったので後回しにする。
「やっぱり爆発させるいい方法は思いつかなかった。安全に外すにはこの方法しかない。」
「うっ…だ、だが…」

オレは、南郷と同じ”普通の”人間だ。南郷の気持ちはわかる。
オレだって、人間の頭なんて潰したくない。
でも、生きるためには、この方法しかない。

「…板倉は死んだ。死んだら何もできない。オレ達が生きる残るためだ。」
「佐原…」

道中みかけた死体を憐れみ、帽子を被せた南郷にとって、佐原の思考は常人のものとは思えなかった。

「南郷。頼みがある。手が滑らないように、その縄を貸してほしい」
佐原の頼みに、南郷は縄を渡す。
申し訳ない。自分は手伝えない。外で待っている。
そう言って南郷は佐原に背をむけ、ぱたりと部屋のドアが閉まった。




301 :活路 8/12:2010/02/06(土) 18:04:21 ID:???
佐原は縄を銃身に巻き付けると、板倉の死体を横に寝かせ、懐中電灯を固定した。
目を背けないよう、ぐっと板倉を睨みつけ、銃身を振り上げる。

(うっ…)

…手に力が入らない。
体が、心が。
これからやろうとしている行為を拒否している。

それでも、やるしかない。

一度銃を下ろし、死体の脇に落ちていたジャケットを顔にかぶせる。
こみ上げる吐き気、ぞっとする感覚を抑え込み、心の中で繰り返す。

(板倉は死んだ。死んだら無力だ。もうただの物体なんだ…)

何度も、何度も、
自分に言い聞かせる。

(ここは現実だ。死んだ人間より、生きたオレの気持ちが優先される…!)

頬を涙が伝う。
あの時は、最後の最後で負けてしまった。
もう負けるわけにはいかない。

(負けるな…!オレが生きること、何よりそれだけを考えろっ…!)

佐原は歯を食いしばり、歪む視界の中、板倉の首元めがけて銃身を振り下ろした。

302 :活路 9/12:2010/02/06(土) 18:06:20 ID:???


鈍い打撃音が響く間、闇に包まれたドアの外で、南郷はただ茫然と立ち尽くしていた。
首輪を爆発させることだって、結果的には死体を破壊することになる。
だから、佐原に嫌悪を感じること自体、偽善なのかもしれない。
それでも…

(首輪が外せるくらいまで、殴って頭を叩き潰すなんて…!)

やがて、中で物音がしなくなり、しばらく時間が経った。

「入っていいぜ。」

その声にドアを開け、部屋に踏み入ると、
板倉の上半身には、板倉のそばに落ちていたジャケットがかけられていた。
なるべく板倉のほうに目をやらないようにしていたが、その心配はなかったようだ。
なんと声をかけたらいいかわからず戸惑う南郷に、
佐原は無言で一枚のメモを差し出した。
そのメモに目を通し、南郷は驚きで固まる。

『森田は主催の手先だ。でなかったら、主催に騙されている。。
 首輪を調べれば脱出のカギが見つかる。だから主催は森田に首輪を集めさせたんだ。
 首輪を主催に渡してはいけない。主催の思うツボだ。
 オレはまだ爆発していない首輪を集めて、首輪を起爆させないで逃げる方法を探す。
 あと、盗聴には気をつけろ。このメモの内容は口にするな。』

「そんな…」

南郷は、佐原が首輪の場所を教えてくれた時点で、
森田の作戦に協力するつもりなのだと思っていた。
それなのに…まさかこんな流れになるとは…

303 :活路 10/12:2010/02/06(土) 18:07:23 ID:???
「オレはこう思う。だから、こうするしかなかったんだ。」
「佐原…」
「D‐5に向けて、すぐにでも出発したい。あと、縄はもうしばらく貸りててもいいか?」

さっきまで死体を殴っていたとは思えないほど、明るい口調の佐原に
南郷は「あ、あぁ…」と返すことしかできなかった。



佐原と南郷は、ホテルを後にして、北に向かって歩く。
目指すのは、南郷が死体を見たと言っていたD‐5エリア。

南郷の心は揺らいでいた。
一度は自分の命まで懸けようと思った、森田の決意。
あの時の森田が、自分を騙しているとは思えなかった。
だが、佐原の言うことも理解できる。
もしかしたら、佐原の言うように、森田は主催に騙されているのかもしれない。

森田に対する敵対心には同意しかねるが
少なくとも佐原はD‐5に首輪があるとわかった上で
足手まといの自分を、見捨てずに連れてくれている。
悪い奴ではない…と思いたい。

(もう一度、森田に会って話がしたい。それまでは、なんとか生きのびないとな…。)

304 :活路 11/12:2010/02/06(土) 18:09:17 ID:???
一方。

佐原は迷いのない表情で、南郷の傷を意識しつつも、歩くペースを速めていた。

板倉の首から首輪を抜き取ったとき、自分の中で何かが吹っ切れたのを感じた。
死んだら終わりだ。
だから、生きるためなら、なんでもやってやる。

南郷を切らなかったのは、少しでも警戒をの輪を広げるため。
そして、以前佐原が森田を疑った際思いついた案…
主催や、参加者の動きを読める森田に、首輪集めに協力したと思わせ、
自分の作戦をカモフラージュするため。

(首輪を集めれば、脱出できるかもしれないっ…!)

そう思うと、5kgの銃の重さも、不思議と気にならなかった。

目的の首輪が爆発前であれば言うことなしだが、
爆発後の首輪だって、調べればなにかわかるかもしれない。
首輪は、生き残るための希望だ。
絶対に、主催に渡すわけにはいかない。
もし南郷がD‐5にある首輪を森田に渡すと言い出せば、銃で脅してでも奪うつもりだ。

最終目標は 島からの生還、ゲームからの離脱。
出来るかどうかではなく、出来なければ未来はない。

(森田…やっぱりお前は信用できないっ…!
 オレは自分のやり方で生き残ってやる…これが、オレの答えだっ…!)

305 :活路 12/12:2010/02/06(土) 18:10:27 ID:???
【F−6/ホテル/深夜】

【佐原】 
 [状態]:健康 首に注射針の痕
 [道具]:レミントンM24(スコープ付き)、弾薬×29 、懐中電灯、タオル、浴衣の帯、麻縄、首輪、支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:首輪を集める 首輪を使って脱出方法を探る 自力で生還する 森田を信用しない、遠藤と会いたくない
※森田が主催者の手先ではないかと疑っています
※一条をマーダーと認識しました
※佐原の持つ板倉の首輪は死亡情報を送信しましたが、機能は失っていません
※D-5の首輪を回収後、マンホールで首輪の実験をしたいと思っています

【南郷】
 [状態]:健康 左大腿部を負傷  精神不安定
 [道具]:木の棒 一箱分相当のパチンコ玉(袋入り) 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:生還する 赤木の動向が気になる 森田の首輪集めを手伝うか迷っている  森田ともう一度話したい
※森田と第3放送の一時間前にG-6のギャンブルルーム前で合流すると約束しました。
※一条をマーダーと認識しました

306 : ◆WdJ/TIgKPQ :2010/02/06(土) 18:14:44 ID:???
以上です。
支援してくださった>>298様、どうもありがとうございます!

307 :マロン名無しさん:2010/02/07(日) 02:34:23 ID:???
投下乙です!!
佐原、吹っ切れましたね。
「生きる俺の気持ちが優先される」、名台詞がこのお話でもすごくハマってます。
森田のことは信用しない、か…事実はどうであれ、以前に比べて用心深くなったなあ佐原。
南郷さんは相変わらずいいヒトですが、森田の次には、(思惑はどうであれ)銃を持った佐原と一緒に行動できるあたり、南郷も何気に強運だと思います。

ところで予約期限は一週間なので、遅れてないと思いますよ。気にしないで下さいね。

308 :マロン名無しさん:2010/02/07(日) 06:12:50 ID:???
投下乙です。

あぁ…佐原がますます森田不信に…。

誤解フラグも立ってきて、佐原の未来が心配です。

309 :マロン名無しさん:2010/02/07(日) 22:00:03 ID:???
投下乙です。
南郷さんの支給品 パチンコ玉の使用方法、実現しませんでしたが
>>「縄を死体につけて、パチンコ玉を撒いた上をひっぱるのはどうだ?禁止エリアまで運びやすく…」
>>「まぁ…できなくはないけど…。移動するたびにパチンコ玉全部拾う気か?」
>>「ある程度のロスは仕方ない。今後使い道もないだろうしな。」
想像して不謹慎ながら吹きました。ガリバーを運ぶ小人やピラミッドの石運ぶみたいです。

佐原君、南郷さんという同行者を得て、心が落ちついたように思えます。
南郷さんを利用しているつもりのような
>>南郷を切らなかったのは、少しでも警戒をの輪を広げるため。
佐原君ですが、南郷さんの裏表の無い態度に安心しているから
そのようなことが思えるのだろうなぁ。
森田さんからも信用される南郷さん、大人物なのかも。

310 :マロン名無しさん:2010/02/09(火) 23:05:47 ID:???
南郷さんの与える安心感は異常
みんな南郷を信用しちまう

佐原は一般人の壁を越えていったな
今後キーマンになりそう

311 :マロン名無しさん:2010/02/11(木) 19:37:58 ID:sMtcD2Bw
あげ
最近1日3回くらいこのスレ見に来てしまう
投下が楽しみだ

312 :マロン名無しさん:2010/02/11(木) 21:07:03 ID:???
予約が来たってここに書いてくれる人はありがたいよね。

313 :マロン名無しさん:2010/02/12(金) 11:00:55 ID:???
予約来たっ…!

314 :マロン名無しさん:2010/02/12(金) 23:20:04 ID:+E9TURqv
>313  ざわ・・・ざわ・・・

315 :マロン名無しさん:2010/02/12(金) 23:27:56 ID:+E9TURqv
>313  ざわ・・・ざわ・・・

316 :マロン名無しさん:2010/02/13(土) 18:23:22 ID:???
大人数予約wktk

317 :マロン名無しさん:2010/02/13(土) 22:18:15 ID:???
あー、次の話が気になる!

気になるついでにここの住民に聞いてみたい。
今、一番気になるキャラクターもしくはグループっている?

318 :マロン名無しさん:2010/02/13(土) 22:27:23 ID:???
涯、零、沢田のとこは明らかに主役グループって感じなので気になる
黒沢のとこも活躍させてやって欲しい
ダメギとひろゆきの組み合わせも好きだ

319 :マロン名無しさん:2010/02/13(土) 23:22:05 ID:???
自分も一番はカイジ達かなぁ
田中沙織に会って説得できるのか、予想もつかない展開になるのか
他は、おそらく水面下で動いているであろう銀二の動向も気になる

320 :マロン名無しさん:2010/02/14(日) 15:50:37 ID:???
一番気になるのは平山
次点がカイジ
この二人は初期のころからずっと動向がきになってる

321 :マロン名無しさん:2010/02/15(月) 07:46:11 ID:???
沢田零涯


322 :マロン名無しさん:2010/02/15(月) 17:19:31 ID:???
銀さんとか赤木さんとかが、どうピンチに追い込まれるのかが今から楽しみだ
いまんとこ精神的に割と余裕っぽく見えるし。

323 :マロン名無しさん:2010/02/16(火) 14:19:29 ID:???
ギャンブルルームにいる3悪人 坊ちゃん、一条さん、利根川さん。

324 : ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 09:05:55 ID:???
赤木しげる、しづか、兵頭和也、利根川幸雄、一条、村上、鷲巣巌、井川ひろゆき、平山幸雄
投下します。

325 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 09:07:00 ID:???
病院に鳴り響く轟音。それは向かい合って並ぶギャンブルルームにも微かに届いていた。
「和也様! 今のは…!?」
「ああ、ばっちり聞こえたぜ…」
正面から病院の様子を窺っていた村上は、その音に気づき、振り返る。すると目に飛び込んできたのは笑みを浮かべる和也の姿……
(やるじゃねえか、利根川……最高のBGMだぜ…!)
轟く爆音に少女の悲鳴…その全てが和也の心を振るわせる…
心から充実した快感を得ての和也の満面の笑み……それに村上は思わず悪寒が走った。
そんな至福のときも束の間、続けて別の音が聞こえてくる。

パンッ… パンッ…! パンッ…!
『くそっ…!一条、追うぞっ…!』
『はっ…!』
幾つかの銃声と、焦る男たちの声。
『和也様、しづかと一緒に病院から出てきた男が地雷に掛かりました。しかし、アカギは銃弾から身を隠し、逃走……これより、一条と共に付近を捜索します!』
「頼んだぞ、二人とも…」
『はい!』
快い返事を聞くも和也のテンションは急落する。
(まぁ…あのアカギが相手じゃ仕方ないが…ガッカリさせるぜ。さっそく、とびっきりの猛者が消えてくれると思ったのによ…
 まぁ…天を始末出来ただけでも良しとすべきか……)
『…………頼…む……………………護っ………俺の…代わり…に………』
(しぶといな…まだ生きてるのかよ…)
天のか細い最期の言葉が和也の耳に否応無しに飛び込んでくる。
この言葉に和也は違和感を覚える。
(誰かにあの女のお守りを頼んでるようだが…誰に頼んでるんだ? あのアカギや鷲巣の爺さんがそんなことする訳ないし……)
『久しぶり………赤木さん……今……………そっちに……………………』
(赤木さん……? あぁ…“あっち”の赤木しげるか…)
今回参加しているアカギと同姓同名。神域の男、赤木しげる。
和也の知る限りでは、天と直接面識のあるのはそちらの赤木だ。
(死に際の妄言か…まぁ、そりゃそうだ…俺の恐れる猛者が女を本気で助けるような甘ちゃんっていうんじゃな…)
所詮、人は己だけが大事。それが和也の信じる人間の“真実”…!



326 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 09:10:13 ID:???
退屈しのぎ、ひたすら盗聴器に耳を傾ける和也。そんなとき、長いこと微かな足音程度しか拾っていなかった、しづかに仕掛けた方の盗聴器が会話を拾いだした。
『やっと起きたか…』
(男の声…? まさか、この声は……)
『誰だ…! お前…!!』
『赤木…しげる…』
(ビンゴ…!! まさか、こっちに引っかかるとはなぁ…)
大好きなおもちゃを見つけた子供のように、和也は再び笑みを浮かべる。陰謀渦巻く思考の果てに、彼は二人の使いに指令を下す。
「利根川、一条! アカギはあの女と一緒だ…さっさと始末して来い…」
『それは…女も一緒に…ですか?』
利根川の問いに対して、和也は笑みを消し、真剣に語りだす。
「ああ、あいつは猛者だ…こっちの小細工に気づかれると後々面倒…まとめて始末して例の仕掛けを回収してこい…!」
『了解しました。行くぞ、一条!』
二人が駆けていく足音を聞きながら、和也はふぅっと息をもらし、椅子にもたれかかる。
(しかし、まさか本当にアカギが女を助けていたとはなぁ…何を企んでいるのやら……)



327 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 09:11:38 ID:???
一方、病院の外に取り残された天の亡骸。そこに歩み寄るのは、ひろゆきと平山。
「天さん…」
「これじゃ…もう助からないな…」
物言わぬ姿と成り果てた天。その顔は紛れもなく、見覚えのあるもの…天そのもの。
唯一異なるのは…失われた足に、焼け焦げた皮膚、周囲に染み渡る大量の血液。
頼れる仲間、心通じ合った友のあまりに惨い死…ひろゆきはしばし言葉を発することも出来ずにただ立ち尽くしていた。

「大丈夫か…?」
平山の声かけを聞き、下を俯いていたひろゆきは我に帰った。そして、鋭い視線で少女が倒れていた地点を見つめる…
「赤木さん…赤木さんなら何があったか…一部始終を知ってるはず…」
そう言うと、ひろゆきは荷物を担ぎ直し、今にも走り出そうな姿勢を取る。
「待て…!? まさかこれを辿って行くってんじゃないだろうな!?」
平山が指摘したのは、地面に転々と残った蛍光塗料。少女が横たわっていた地を基点に、ポツポツとぼんやりとした橙色の光の球が闇夜に浮かんで見えた。
「勿論。赤木さんがあの少女を抱えて去って行った方向からすれば…それが確実だ」
「やめろ! 危険すぎる…! アカギの罠かもしれないし…利根川たちだってアカギを探してるんだぞ!! 銃や爆発物を持った奴らが…!」
平山はひろゆきの腕を掴み、必死の形相で説得を図る。
「こういう問答したところで退かないのは…病院に入るときに分かっただろう? …俺は行くよ…平山。
君は病院で待ってた方がいい。無理に利根川に出くわすリスクを背負う必要はない…」


328 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 09:13:51 ID:???
「だったら、アカギに伝えてくれんかの…?」
病院内部から聞こえてきた声に、ひろゆきと平山は思わず振り返る。
「鷲巣さん…?」
非常口からゆっくりと姿を現した鷲巣は、天の亡骸は特に気にも留めず、大声で話し始める。
「ワシは病院に待機し、中を勝手に散策しておるとな。すっかり忘れておったが、ワシは待ち合わせをしておったんじゃ。
あやつ…このままではワシとのその約束をすっぽかしかねん…まぁ、その方が面倒が省けていいと言えばいいのだが……」
アカギに従うのはギャンブルルームでの定め。下手に動いて首が吹き飛んでは適わない…
不愉快極まりないが、鷲巣なりの“従順”な部下らしい言動であった。
「分かりました…」
鷲巣の話を聞き終えたひろゆきは、改めて目的の方向に視線を移す。
「待てよ…」
そこに口を挟んだのは、他でもない…平山。
「俺も一緒に行くよ…利根川に出くわしたら…そのときはそのときだ…」
口に出してみると、やはり多少の…いや、かなりの不安がある気もする…が、そんなことにいつまでも拘ってはいられない。
自分にはカイジやひろゆきのような熱さはないし、必要以上のリスクを犯した勝負なんて出来ない。
(だが…いつか始めなきゃ…いつまでも始まらない…!)
今、自分の目の前にいる男は、友の死を目の当たりにしても、尚、自らの信念を曲げない。
自分の信ずるとこを行く。それが周囲からどう見られようと…ただ、己の望む道を…!

329 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 09:17:47 ID:???
(今が…決断のときかもな…)
平山はひろゆきとまっすぐ向かい合う。
「俺も…してみるよ。“博打”ってやつを…」
そう告げ、ひろゆきと向かい合う平山の目にはこれまでとはどこか違う“熱さ”がある。
ひろゆきは、そんな気がして己の思いを更に引き締めた。
そして、軽くしゃがみ、天の顔に手を翳す。
(天さん…あとで必ずきちんと弔います。だから、今はこれで勘弁してください…)
うっすらと開いていた天の目を閉じ、その手を堅く握り締め、熱い思いを込める。
(一歩間違えば…死んでいたのは自分。いつ死んでもおかしくないなら…後悔しない方を選ぶ! 自分の望む道を…!)
「そうと決まったら…行くぞ!」

鷲巣は、病院の2階の窓から光点を辿るひろゆきと平山を見ていた。
そして、再び病院に近づいてくる和也の使いに視線を移す。
(奴らがこの付近に拠点を置くのは、偶然という訳ではなかろう……奴らの目的はきっとこの病院の中にある…だが、それはいったい…?)
老体に鞭を打ち、鷲巣はひたすらにそれを求めた…。



330 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 09:19:17 ID:???
追跡を逃れたアカギとしづかがたどり着いたのは、F-4の草むらだった。
樹木の陰に身を隠し、休息をとっていたアカギは、しばらくするとしづかの目覚めに気づいた。
「やっと起きたか…」
「誰だ…! お前…!!」
「赤木…しげる…」
しづかは辺りを見渡し、現状を確認すると足元にころがる鎖鎌を手に取る。
「お前…持ってる武器を寄越せ! さもないと…殺すぞ…!」
鎖鎌の重さにふらつきながらも、鋭い刃を男の首筋に向け、睨みを利かせるしづか。
だが、目の前の男はそんなものなど全く気にも留めていない。
そう、それはまるで死そのものを感じていないかのように。
その様子に、武器を構えているしづかの方が逆に恐怖を覚えてくる。
「聞こえてるのか…!? 私は本気で…」
「温い…」
「何…?」
「あんたのその気迫は作り物だ…恐怖から逃れる為の仮初の信念…本当の狂気に身を委ねた訳じゃない…だから…温い……」
「何を訳の分からないことを…殺すって言ってるのが聞こえないのか…!?」
しづかはアカギの言葉を受け、思わず感情的に刃を振るう。振るうというよりは、その重さに振り回されているといった方が適切だろうか。
「現実味のない狂気に潰されるほど…俺は柔な道は歩んでいない…」

ふわっ…

アカギは軽く飛び上がって刃を避けると、ふらついているしづかの手元を蹴飛ばした。
鎖鎌は、その重量故にしづかが保持することなど到底出来ず、落下する。
刃はしづかの足元の地面、あわや彼女の足首を切り落とそうかというところに突き刺さった。

331 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 09:23:31 ID:???
「ひっ…!」
「ここであんたを返り討ちにしたって俺は一向に構わないんだが…」
アカギは鎖鎌の刃を引き抜くと、それをしづかに向けることなく自らの手元に引き寄せる。
「あの顔に傷がある大男の頼みだ…あんたの面倒を見てくれってな」
「何だと…」
(どこまでお節介なんだ…あの男…)
思い返すはあの男の自分に対する言動の数々。外見同様、どこか荒々しくもあったが、その奥には確かに感じた…彼の優しさ…
それは、彼が死しても尚、目の前の男性を通して自分に注がれていることを、しづかはハッキリと感じていた。
「もう…私に優しくするな…」
そう呟くと、思わずしづかの目から再び涙が零れる。
「誰かに裏切られるのも、死ぬのを見るのも…もう十分なんだ。あんな思いするくらいなら…一人で生き残りを目指すほうがずっといい。
仲間なんていらない…放っておいてくれ…」
「そうか…じゃあ…せめてこれを持っていけ」



332 :マロン名無しさん:2010/02/17(水) 11:17:37 ID:???
支援 それとも代理投下?

333 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 11:21:37 ID:???
『そうか…じゃあ…せめてこれを持っていけ』
『なっ…』
ボスッという鈍い音が鳴った刹那、少女のか細い声がした。
そして、続いて地面を駆ける足音が和也の耳を捉える。
(さっきのは何の音だ…?)
状況をいまいち把握出来ない和也はしづかに仕掛けた盗聴器に熱心に耳を傾ける。
地面を駆ける音が止まると、続けて荒い息遣いが入ってきた。
『クク…本当に重たい荷物だな…まったく…』
(アカギの声…? それに…重たい荷物……? ということは……)
「成る程な…利根川、一条。アカギは女を担いで逃げている…息も上がってお疲れのようだ。今なら直ぐに追いつけるぞ…!!」
鈍い音にか細い声、つまりアカギはしづかの鳩尾でも一発殴って気絶させた後、重たい荷物である…彼女を担いでその場を離れた。
(話し合いが面倒だから、とりあえず気絶させて逃げようって腹か…? アカギともあろう者が随分とお粗末な策だな…)

和也が指示を出してから数分後。今度は利根川からの連絡が和也に入ってきた。
『和也様! 今、病院に戻ってきたところ…面白いものを見つけました…』
「何だ…?」
『蛍光塗料です…恐らくしづかの持つカラーボールから染み出したものと思われ、地面に転々と跡を残しています』
「ク、ク…」
『和也様…?』
「カカカッ…! 流石のアカギもこういうイレギュラーには抗えないか! まぁ、当然。どんな猛者だって所詮人間。完璧な存在じゃあねぇからな…!
 その跡を辿って行け…奴が気づく前に追いついて…始末しろ!」
『はっ!』
邪な笑みを浮かべる和也はこれから訪れるであろうアカギの破滅の未来を想像し、思わず身震いした。
(本気で女を助けようとはな…何てことはない…偽善っ…! 甘ちゃん…猛者は猛者でもとんだ甘ちゃん…!
その甘さこそ温い…こんな勝負の場で荷物一つ捨てられないようじゃ…本当の猛者じゃねぇ…
アカギは死ぬ…あの裏世界で名高い猛者が…死ぬ…どんな宴になるか…楽しみだぜ…)




334 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 11:22:36 ID:???
(あの女の名前、聞きはぐったな……まぁいい…)
アカギはチラリと背後を振り返りながら、そう思った。
和也がギャンブルルームで身震いしていた頃、アカギは“一人”で走っていたのだ。時にわざと息を上げ、独り言で悪態をつきながら…


「何なんだよ…まったく…」
何が起こっているかなど全く知らないしづか。
彼女からしてみれば、アカギの行動はまるで意味が分からない。
“これを持っていけ”と言って、鎖鎌と何かのメモを置いたや否や、デイパックを殴りつけ、こっちの話も聞かずに全力で走り去っていったのだから。
訳が分からないものの、とりあえずしづかは渡されたメモに目を通す。

『もし、お前が今持っている荷物が“黒崎”と名乗る火傷の目立つ男から受け取ったものならば、お前は騙されている。

あの男の本当の名前は“利根川幸雄”。今、“一条”という長髪の男と組んで行動している。奴らは重火器を持っているが、お前には奴らに限り、有効な対策法がある。

今、背負っているデイパックにはちょっとした魔法がかけてある。お前はただそれを身体の前に翳して盾にすればいい。
それだけで奴らは決して発砲してこない筈だ。

俺は“仲間など要らない”、“一人で生き抜く”というお前の意思を尊重する。
だから、武器は奪わないし、一緒に行動して面倒を見るとか、そんなお節介なこともしない。
お前はお前の力で自らの窮地を乗り切れ。この助言を信じるも信じないもお前の自由だ』



335 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 11:24:28 ID:???
話はまだしづかが気絶していた頃に遡る。木陰に身を隠しながら、アカギは静かに思考していた。
アカギが最初に疑問に感じたのは、しづかの一言だった。
“黒崎”。しづかは確かに利根川に向かってそう叫んだ。それもそれなりに面識があり、信頼しているかのような態度。
このことから、利根川が偽名を用いてしづかと以前にもどこかで接触し、信頼を得ていることは想像するに難くない。
次に感じたのはしづかの荷物。不釣合いな服装から、誰かに痛めつけられたと思われるが、それならば何故まだ支給品を持っているのか?
果たして、衣服さえ奪うような相手がデイパックやカラーボールといった支給品を見逃すだろうか。
つまり、しづかの所持している物は、後から手に入れた物。それもデイパックはそこら辺に落ちてるようなものじゃない。誰か他の参加者から手に入れたと考えられる。
しづか自身が誰かを殺して奪った可能性も考えられなくはないが、もう一つの可能性を考慮し、しづかが気を失っている間、慎重に彼女の荷物を調べた。
すると…予想通りっ…!! 盗聴器、地雷…次々出てくる陰謀の欠片っ…!!
しづかは何者かにこれらを持たされた…では、誰が? 答えは決まっている。


336 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 11:25:08 ID:???
そして…話は今に至る…
(見えている者には出来る…見えているのに、見えていないふりをすることが……)
アカギの取った策…それは敵の仕掛けに気づかないふりをして逆手に取ること…!
(音は俺…光はあの女が握っている。だが、奴らには見えていない…その虚を、俺は突く!)
逃走中、アカギも背後に気を配っているときに蛍光塗料の跡を見つけていた…しかし、特にそれを消すこともなく放置。
(おぼろげな光だが、敵もあれには必ず気づくだろう…盗聴器の拾う音と、光の道標…2つの情報の不一致は確実に後の混乱を招く…その隙に取るべき行動は…2つ。
1つ目は、病院に戻り、当初の目的を果たしつつ、鷲巣を探す…そして2つ目は…直接乗り込む…奴らの拠点に…!)
利根川や一条の耳にはイヤホンがされていた。普通に考えれば、今、アカギが持っている盗聴器のイヤホンの筈。
(だが、利根川のあの女の接近に対する反応は俺と大差なかった。もし、あの女を盗聴していたならば、あのとき、俺よりも先に病院の入り口を意識していた筈だ。
 このタイムラグは致命的…故に感じる。利根川の背後にいる指示者の香り…!
 盗聴している者は別にいる…そして、あのイヤホンはその人物からの指令を受けるため…
 敵に襲われる危険を考えれば、盗聴に専念して安全に指令を出せる場所など限られる。そこが敵の拠点……)
そこまで考えて、アカギは走りを止めて、歩みを遅める。少し振り返り、置いて来たしづかのことを思い出す。
(あの女は…口ではああ言っていたが、結局のところ仲間を欲している。奴が欲しいのは裏切らない、死なない…自分と関わっても不幸にならない…そんな仲間。
そんな人間が存在することを…自分に厄の原因はないことを証明したがっている…)
故にアカギは後悔しない。彼女を一人で置いて来たことを。そう自分に言い聞かせた。
(あいつと一緒にいたら…俺は死ねなくなる…俺では奴の希望には添えないし…添う気もない……)
アカギは盗聴器を手のひらで遊ばせながら、先を見据える。
この策は完璧ではない。寧ろ、盗聴器を持つというリスク…敵に自らの情報を与える危険性が目に付くかもしれない。だが、敢えてアカギはそれを選んだ。
(さて、迷ってる暇はない…一か八かの博打…俺にとって、より良い目は……?)



337 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 11:25:54 ID:???
【E-5/ギャンブルルーム内/深夜】

【兵藤和也】
 [状態]:健康
 [道具]:チェーンソー 対人用地雷残り一個(アカギが所持)
     クラッカー九個(一つ使用済) 不明支給品0〜1個(確認済み) 通常支給品 双眼鏡 首輪2個(標、勝広)
 [所持金]:1000万円
 [思考]:優勝して帝愛次期後継者の座を確実にする
     死体から首輪を回収する
     鷲巣に『特別ルール』の情報を広めてもらう
     赤木しげるを殺す(首輪回収妨害の恐れがあるため)
     盗聴を続ける、利根川、一条に指示を出す
※伊藤開司、赤木しげる、鷲巣巌、平井銀二、天貴史、原田克美を猛者と認識しています。
※利根川、一条を部下にしました。部下とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※遠藤、村岡も、合流して部下にしたいと思っております。彼らは自分に逆らえないと判断しています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、その派閥全員を脱出させるという特例はハッタリですが、 そのハッタリを広め、部下を増やそうとしています。
※首輪回収の目的は、対主催者の首輪解除の材料を奪うことで、『特別ルール』の有益性を維持するためです。
※しづかの自爆爆弾はアカギに解除されましたが、そのことに気づいていません。盗聴器はアカギが持っています。 (今は和也のみ盗聴中)
※第二放送直後、ギャンブルルーム延長料金を払いました。3人であと3時間滞在できます。

338 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 11:38:27 ID:???
【E-5/病院/深夜】

【一条】
[状態]:健康
 [道具]:黒星拳銃(中国製五四式トカレフ) 改造エアガン 毒付きタバコ(残り18本、毒はトリカブト) マッチ スタンガン 包帯 南京錠 通常支給品×6(食料は×5) 不明支給品0〜3(確認済み、武器ではない)
 [所持金]:3600万円
 [思考]:カイジ、遠藤、涯、平田(殺し合いに参加していると思っている)を殺し、復讐を果たす
     復讐の邪魔となる(と一条が判断した)者、和也の部下にならない者を殺す
     復讐の為に利用できそうな人物は利用する
     佐原を見つけ出し、カイジの情報を得る
     和也を護り切り、『特別ルール』によって村上と共に生還する
    利根川とともにアカギを追う、和也から支持を受ける
※利根川とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、 その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※通常支給品×5(食料のみ4)は、重いのでE-5ギャンブルルーム内に置いてあります。

339 :マロン名無しさん:2010/02/17(水) 12:45:11 ID:???
さすがアカギさんマジパネェっす

投下乙です

340 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 13:05:02 ID:???
【利根川幸雄】
 [状態]:健康
 [道具]:デリンジャー(1/2) デリンジャーの弾(残り25発) Eカード用のリモコン 針具取り外し用工具 ジャックのノミ 支給品一式
 [所持金]:1800万円
 [思考]:和也を護り切り、『特別ルール』によって生還する
     首輪の回収
     遠藤の抹殺
     カイジとの真剣勝負での勝利・その結果の抹殺
     アカギの抹殺、鷲巣の保護
     病院へ向かう
     一条とともにアカギを追う、和也から支持を受ける
※両膝と両手、額にそれぞれ火傷の跡があります
※和也の保護、遠藤の抹殺、カイジとの真剣勝負での勝利・その結果の抹殺を最優先事項としています。
※鷲巣に命令を下しているアカギを殺害し、鷲巣を仲間に加えようと目論んでおります。(和也は鷲巣を必要としていないことを知りません)
※一条とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、 その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※デリンジャーは服の袖口に潜ませています。
※Eカード用のリモコンはEカードで使われた針具操作用のリモコンです。電波が何処まで届くかは不明です。
※針具取り外し用工具はEカードの針具を取り外す為に必要な工具です。
※平山からの伝言を受けました(ひろゆきについて、カイジとの勝負について)
※計器からの受信が途絶えたままですが、平山が生きて病院内にいることを盗聴器で確認しました。(何かの切欠で計器が正常に再作動する可能性もあります)
※平山に協力する井川にはそれほど情報源として価値がないと判断しております。
※黒崎が邪魔者を消すために、このゲームを開催していると考えております。
※以前、黒崎が携わった“あるプロジェクト”が今回のゲームと深く関わっていると考え、その鍵は病院にあると踏んでおります。
※E-5ギャンブルルーム前には、勝広の持ち物であったスコップ、箕、利根川が回収し切れなかった残り700万円分のチップなどが未だにあります。

341 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 13:07:27 ID:???
【鷲巣巌】
 [状態]:疲労、膝裏にゴム弾による打撲、右腕にヒビ、肋骨にヒビ、腹部に打撲  →怪我はすべて手当済
 [道具]:防弾チョッキ 拳銃(銃口が曲がっている)
 [所持金]:0円
 [思考]:零、沢田を殺す
     平井銀二に注目
     アカギの指示で首輪を集める(やる気なし)
     和也とは組みたくない、むしろ、殺したい
病院内を探索する。
※赤木しげるに、回数は有限で協力する。(回数はアカギと鷲巣のみが知っています)
※赤木しげるに100万分の借り。
※赤木しげると第二回放送の前に病院前で合流する約束をしました。
※鷲巣は、拳銃を発砲すれば暴発すると考えていますが、その結果は次の書き手さんにお任せします。
※主催者を把握しています。そのため、『特別ルール』を信じてしまっています。

【E-4/草むら/深夜】

【井川ひろゆき】
 [状態]:健康
 [道具]:日本刀 防犯ブザー 不明支給品0〜2(確認済み) 懐中電灯 村岡の誓約書 ニセアカギの名刺 アカギからのメモ 支給品一式×2
 [所持金]:1500万円
 [思考]:赤木しげるから事の顛末を聞いた後、ギャンブルで闘う
この島からの脱出 極力人は殺さない 
※村岡の誓約書を持つ限り、村岡には殺されることはありません。
※赤木しげるの残したメモ(第二回放送後 病院)を読みました。
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※二枚ある地図のうち、一枚を平山に渡しました。

342 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 13:11:10 ID:???
【平山幸雄】
 [状態]:左肩に銃創 首輪越しにEカードの耳用針具を装着中
 [道具]:支給品一式 首輪探知機 カイジからのメモ
 [所持金]:1000万円
 [思考]:田中沙織を気にかける 利根川から逃れる術を探る カイジが気になる ひろゆきと行動する
※利根川に死なれたと思われていることを知りません。計器に不具合が起きているのも知りません。
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※ひろゆきから地図をもらいました。


343 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 13:13:06 ID:???
【E-5/草むら/深夜】

【しづか】
 [状態]:首元に切り傷(止血済み) 頭部、腹部に打撲 人間不信 神経衰弱 ホテルの従業員服着用(男性用)
 [道具]:鎖鎌 ハサミ1本 ミネラルウォーター1本 カラーボール 板倉の靴 通常支給品(食料のみ) アカギからのメモ
 [所持金]:0円
 [思考]:ゲームの主催者に対して激怒 誰も信用しない 一条を殺す
※このゲームに集められたのは、犯罪者ばかりだと認識しています。それ故、誰も信用しないと決意しています。
※和也に対して恐怖心を抱いています。
※利根川を黒崎という名前と勘違いしております。
※利根川から渡されたカラーボールは、まだディバックの脇の小ポケットに入っています。
※ひろゆきが剣術の使い手と勘違いしております。
※和也達によって、仕掛けられた盗聴器と地雷は解除されました。この盗聴器によって、しづかがひろゆきと平山の会話を聞いたことから、平山が生きていること、首輪探知機を持っていること、ひろゆきが日本刀を持っていること、
また、しづかの独り言から、彼らが病院にいることを和也達に知られています。


344 :光路 ◆iL739YR/jk :2010/02/17(水) 13:14:00 ID:???
【E-3/草むら/深夜】

【赤木しげる】
 [状態]:健康
 [道具]:ロープ4本 不明支給品0〜1(確認済み)支給品一式 浦部、有賀の首輪(爆発済み)対人用地雷 盗聴器
 [所持金]:500万円
 [思考]:もう一つのギャンブルとして主催者を殺す 死体を捜して首輪を調べる 首輪をはずして主催者側に潜り込む
※主催者はD-4のホテルにいると狙いをつけています。
※2日目夕方にE-4にて平井銀二と再会する約束をしました。
※鷲巣巌を手札として入手。回数は有限で協力を得られる。(回数はアカギと鷲巣のみが知っています)
※鷲巣巌に100万分の貸し。
※鷲巣巌と第二回放送の前に病院前で合流する約束をしました。また第二回放送後に病院の中を調べようと考えていましたがどちらも果たせず。(ひろにメモが渡ったのは偶然です)
※首輪に関する情報(但しまだ推測の域を出ない)が書かれたメモをカイジから貰いました。
※参加者名簿を見たため、また、カイジから聞いた情報により、 帝愛関係者(危険人物)、また過去に帝愛の行ったゲームの参加者の顔と名前を把握しています。
※過去に主催者が開催したゲームを知る者、その参加者との接触を最優先に考えています。 接触後、情報を引き出せない様ならばギャンブルでの実力行使に出るつもりです。
※危険人物でも優秀な相手ならば、ギャンブルで勝利して味方につけようと考えています。
※カイジを、別行動をとる条件で味方にしました。
※村岡隆を手札として入手。回数は有限で協力を得られる。(回数はアカギと村岡のみが知っています)
※利根川と一条は任務中の為、今、アカギの盗聴器から盗聴しているのは和也だけです。

345 :マロン名無しさん:2010/02/17(水) 16:58:09 ID:???
投下乙です。昭和の巨魁と言われた鷲巣さま。
警察のお仕事で悪人にも沢山接したはず。
何かお気づきになったんだろうか。

346 :マロン名無しさん:2010/02/17(水) 17:54:38 ID:???
投下乙です。
恐怖の自爆爆弾を解除…圧倒的ファインプレー!
でも盗聴器装備は痛いな〜

347 :マロン名無しさん:2010/02/17(水) 19:48:53 ID:???
投下乙です。
さすがのアカギですね・・・。和也同盟の悪意も方向が見えなくなってきました。


348 :マロン名無しさん:2010/02/17(水) 23:05:56 ID:???
投下乙

幸雄(平山)の活躍が楽しみ

349 :我執:2010/02/18(木) 00:54:48 ID:???
◆xuebCgBLzA様の代理投下です。

F-4エリア商店街、南側入り口…。
銀二と原田は周りを警戒しつつ、商店街までたどりついた。
銀二の目的としていた場所とは、この商店街だったのだ。
だが…商店街に入ろうとした瞬間…。

ガシャン…!

商店街の中から聞こえた音により、二人の足が止まり、顔を見合わせる…。
「……ガラスですかね…?」
銀二は原田に意見を求める。
「…わからんが…商店街に人がいるっちゅうことは確かやな…」
つづいて微かながら、話し声が聞こえてきた…。
「何を言っているかまでは聞こえへんな…」
「だいぶ北側の出口に近いところで喋っていますね…」
「……その心は…?」
「商店街の構造ですよ……。アーケードの天井…左右の建物……。物音はより響き渡るはずです…。
 それでも聞きづらい物音ということは…かなり距離のあるところからの発信です」
「なるほど…」
言われてみれば、夜の商店街はその闇のせいでぽっかりと口の空いた洞窟のように見える…。
「まぁ…支障はないでしょう…。
 我々の目指していた場所は、商店街入り口から一軒目東側の…この家ですから…」
「せやけど…休憩の前に、放送を聞いとくんやろ…?」
「そうですね…ここが禁止エリアになってしまう可能性もありますし…。
少し商店街から離れて待機しましょう…話し声の主がこちらに来るかもしれない…」
二人は商店街の東側の茂みに待機…。
銀二はそこから病院を気にしているようだった。
一方、原田は商店街入り口を見張った。
当然、この時見張りを優先すべき場所は、商店街の入り口であるはずなのに、鋭い目つきで病院を眺める銀二に原田は違和感を覚えた。
そうしていると、背の高いスピーカーに電源が入った。

350 :我執:2010/02/18(木) 00:55:34 ID:???
「…参加者の諸君、ご苦労。黒崎だ…

* * *

……では、以上で放送を終了する。 引き続き、諸君の健闘を祈る」
原田は必要な情報を書き留めつつ、自分の知り合いの名が呼ばれなかった事に安堵する。
「……これでひとまず休める、っちゅうことか…」
ひとつ頷き、銀二が答える。
「では、目的の家に入りましょう…」
そう言い、二人は商店街へ戻る。
家の中に誰もいないことを確認した後、窓から病院とその辺りの道路が見える部屋に落ち着いた…。
そこで二人はこのゲームが始まってから、初めての食事を取りはじめた。
「私はこのゲームが始まってからの二時間、色々な準備をしていましてね。
 そのときにもここを使ったらすっかりここが気に入りまして」
「ほう…。しかし…なんとなくアンタに日本家屋は似合わんのう」
「フフ、それはお互い様でしょう…」
原田は銀二の見せる笑い(冷笑ではない)を初めて見た。
「まぁ…それはそうやな…。ここでは何をしとったんや?」
「このゲームに参加している人間を計るために小道具を作っていました…。
 その小道具を使って宇海零という少年と出会い、麻雀で戦いました」
「平井銀二とやりあったガキか…。難儀やのう…」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。とてもいい勝負だった…」
銀二は勝負のいきさつ、小道具を残したことを話した。
「ガキ相手にえげつない事やっとるやないか…。
 そのガキ、アイテムのお陰とはいえ、なかなかやるようやな…」
「えぇ。危うく私がカモられそうになりましたよ…。
 発想力…行動力…度胸…すべてに及第点を与えても良いでしょう…。
 いえ、彼の年齢を考えたらそれ以上か…」
銀二は、食べ終わったパンの袋を丸める…。
「一度会っておきたい人材やな……。
 アンタに再開して、どんな反応を見せるか…見物やで」

351 :我執:2010/02/18(木) 00:56:14 ID:???
「そうですね…。
 彼のリアクションひとつで友好関係にも敵対関係になりうる…」
「敵対…?負けた事に逆上してぶつかってくるっちゅうことか?
 アンタが苦戦したほどの切れる奴やろ…?
 ガキとはいえ…そんな幼稚な真似するかね…」
原田はペットボトルの水を体に流し込む。
「あの頃の少年は多感ですからね…。
 それにこの状況だ…どんな人間も極限状態に追い込まれる…。
 冷静になれというほうが難しいでしょう…」
「それもそうか……。んで…これからどうする…?」
「ここで仮眠を取りましょう…。日が昇る前には出発したいですね…」
「―――どこに?」
少しの間の後、原田が聞き返す…。些細な質問ではあったが、これは行動決定権を持たれているが自分の納得のいくように事を運びたいという原田の意思表示でもあった。
「……零を捜します…。引き続き、見所のある人物も…」
銀二の頭に一瞬、森田の顔が浮かんだ…。
「兎に角、今は休みましょう…お先にどうぞ…。
 ニ時間後に起こします。都合よく壁掛け時計もある…」
はっきりしない目的を聞き、腑に落ちない原田…。しかし、睡眠は取れるときに取っておかなくてはならない。
起きた後、港の探索をするのだろうと思い、今は寝ることにした。
「わかった…。ほな、先に失礼するで…」
押入れから毛布を出し、横になる…。
余程疲れていたのだろう。五分もしないうちに意識が消えた…。

…と、思った刹那、何かが顔に当たり、覚醒する…。
起き上がりながら銀二の顔を見ると、銀二は真っ直ぐと自分に当たった何かを指差していた。
それは丸められた紙くずだった。
「何や…」
銀二は『開け』とあごで合図をすると、手元のメモ用紙に何かを書き始めた。
原田は紙を開き、息を呑む。

352 :我執:2010/02/18(木) 00:57:54 ID:???
『声を出すな。筆談でこれからの目的等を書き出す。
 質問はその都度、紙に書いて見せる事。
 まず初めに身を隠す場所としてこの場所を選んだ理由。
 ひとつは、部屋の窓際にカメラの死角があること。
 この島にはカメラが点在している(理由は後)。
 カメラの死角で筆談を堂々とできる部屋が必要だった。
 しかし、単純にカメラの死角である部屋は多々ある。
 そこで二つ目の条件。病院前の通りを見渡せる部屋。
 片方が睡眠をとっている間、起きている方は窓から、
 病院の窓、及び病院前の通りを観察する。
 肉眼で確認できる限りの情報をメモする(これも理由は後)。』
一枚目は以上。原田は急のことで驚いたが「主催に知られてはいけない話」であるということ、「病院」がこの話の鍵であることを嗅ぎ取る。
銀二は二枚目を原田に手渡し、三枚目に取り掛かる。
『このゲームの概要について。
 このゲームは帝愛、蔵前、在全の三グループの共営により成り立っている。
 この島も三グループが共有しているものだ。
 表向きは遊園地をメインとした複合レジャー施設を装っている。
 が、それは、三グループが共営の病院をもつための口実である。
 次に、島に点在するカメラについて。
 それは参加者を監視するためだけではなく、第三者を楽しませるためにある。
 このゲームの上では、賭け、トトカルチョが行われている。
 それも相当数の世界中の成金が参加している。
 今回のゲームで動く金は、兆を越えると思われる。
 そのため、主催者は一時も参加者から目を離すことはできないのだ。』
一枚目と違って、だいぶ確信に迫ってきた内容に驚きを隠せない原田。
口をあけている原田に銀二は、三枚目を差し出す。

353 :我執:2010/02/18(木) 00:58:51 ID:???
『私がなぜこの事実を知っているか。

  私がゲームの首脳会議に参加したからである。

 深い理由は聞かないで欲しい。
 そして、誤解もしてくれるな。私はやつらの差し金ではない。
 このゲームを持ってして、確実にやつらを討ち取りたいのだ。
 しかし、私は首脳から一番警戒されている。
 内部の者だった人間が参加しているのだから当たり前だ。
 では、どうするか…?やつらは十二分に準備をしていると思われる…。
 だが、それは正面突破に対しては…だ。
 だから、私はやつらのその傲慢の裏…虚をつく…!
 アカギや、零が考えているだろう角度とは別の角度から刃を突き立てる…!』
ピンと来ない原田、たまらず質問を紙に書き出す。
『何を考えとるんや わいにも知る権利があるはずや』
『私がしたいのはこのゲームに参加する前に掴んだ『病院でのスキャンダル』の裏づけ…。
 しかし、私がガセをつかまされたのかもしれない。詳しくはまだ話せない。
 今はとにかく病院を見張る。休憩後から行動を起こす。
 病院にて収穫があり次第、内容を話す…。』
『ちょっと待てや…。そのスキャンダルが本物やったら、
 帝愛グループがぶっつぶれるぐらいの破壊力があるのか…?』
銀二は小さくうなずくが、「なぜ?」といったような顔をした。
『……ならば…おんりや…。
 このゲームが帝愛主催で、アカギやアンタについていって帝愛がつぶれるんは、
 わい…いや、置いてきた原田組にとってよろしくない…』
この言葉で原田の言いたい事を汲み取り、顔をしかめた…。
『原田組の後ろ盾が帝愛だったということか…。
 しかし残念ですが、そうはいかない。
 私に従わなければ、あなたの首が吹き飛ぶ事になる。
 アカギと私のギャンブルをお忘れか…?』
原田の顔が強張る…。

354 :我執:2010/02/18(木) 01:00:03 ID:???
少し考えて、銀二がペンを走らせた。
『わかった…。
 では、スキャンダルのメッセンジャーをあなたに任せる。
 そうすれば脱出にせよ、優勝にせよ、スキャンダルを告発する前に、
 他の組や企業に後ろ盾を頼むなどの準備もできましょう…。
 この条件…飲んでいただけるか…?』
(わいをメッセンジャーに選んだということは、
 自分はこの地で死ぬということ…。
 この男がこのことに気付いていないわけがない…。
 刺し違えてでも奴等を討ち取ろうという覚悟を背負っている…)
原田は野暮な質問をせずにただ、うなずいた。
『感謝する。では、代わりというわけではないが、いくつか話しておく。
 私はある人物に首輪の爆発を阻止する方法がある、と伝えた。
 だからといって、すぐに試せる方法ではない。
 私の予測では、この首輪を爆発させるためには、
 電波を流し、爆発のチャンネルを呼び出す必要があると思われる。
 つまり、首輪が爆発する直前に妨害電波を流せば、首輪の爆破を阻止できる。
 しかし、その妨害電波の模索中に、
 爆発のチャンネルを呼び出すというかなり危険なリスクも付きまとう…。』
『わいは機械が苦手やからその辺の話はわからんが…、
 簡単に首輪を無効化することはできへんっちゅうことやな…』

355 :我執:2010/02/18(木) 01:01:19 ID:???
『もう一つ、話す事があります。脱出の方法についてです。
 原田さんはお気づきかもしれないが、
 脱出の申請を行うはずのD-4ホテルは、禁止エリアになっている。
 私が見込んでいる人間なら、ここまでは容易に気付けるはず…。
 だが、問題はここから…。
 私は、何らかの方法で脱出の申請を行うことができる、
 と踏んでいる。―――何故か。
 帝愛グループの兵藤和尊は、正当なヒールだからだ。
 いくら不条理な条件を押し付けても、
 それを反故にすることは決してない…。
 具体的な方法としては、まだ分かりかねるが、
 電波の届かない地下からだったり、黒服に金を渡し、
 一時的に首輪を外す事ができたり…。
 確実に突破口はあるはず…』
原田は納得する。自分もまた、兵藤と面識があったからである。
『現段階での話は以上。
 申し訳ないが、私も命を懸ける以上はしくじることが許されないので、
 話せないことも多々ある。質問は?』
(確かに、腑に落ちん点はいくつもある…。
 しかし…この男が己の命を投げてまで奴等と戦うっちゅうことだけは本気や…。
 このゲーム…。銀二についていこう…!)
原田はそう決心して、首を横にふった。
『では、今は休息をとってくれ…。二時間後に起こす…。』
この紙を読み終えると、原田は銀二に背を向けるようにして寝転がった。
銀二は窓のそばに座し、外を見渡した。
星空が綺麗だ…。窓枠が額縁の代わりを成し、そこには一枚の風景画があった。
満月が…星空が…不気味にキャンバスの中央の病院を照らしている…。
夜空を見上げながら、このゲームの発端である夜を思い出していた…。

356 :我執:2010/02/18(木) 01:02:44 ID:???

 * * *

―――某年某日。
日本随一のフィクサー、平井銀二はビジネスとして、大企業のトップと会合を持つ事になっていた。
今日の仕事相手は、同じく日本随一の企業である帝愛の兵藤和尊氏である…。
かつての右腕・森田と別れ、民政党総裁・河野とのサシ勝負の後、銀二のビジネスは右肩下がり…。
とはいっても、収入に困っているわけではないが、いわゆるハイリスクハイリターン…。そういった仕事がなくなっていた。
自分を陥れるような大敗もなければ、目がくらむほどの現金が手に入る大勝もなく…、ただ平坦であった…。平坦な仕事ばかりで、平井銀二は燻っていたのだ。
しかし、今回はどうやら状況が違うらしい…。兵藤が「トップだけで話したい」と申し出たのだ。
それはすなわち、銀二の仲間である、安田らを会合には呼べないし、あちらもまた、右腕である黒崎を出さないというのだ。
危険な香りはした。しかし、今の銀二の求めているのはまさしくこの危険な香りだったのだ…。
待ち合わせた料亭につき、仲居に兵藤が待つ部屋の前へと導かれる。
「失礼します」
ふすまを開きつつ会釈をする。顔を上げたら、当然そこには兵藤がいて、ビジネスの話がはじまる…と思った。
しかし、顔を上げたとき、そこにいたのは本来いるはずの兵藤に加えて二人…。
在全無量と蔵前仁がいた…。一瞬驚いたが、冷静を装いつつ言った。
「なるほど…『トップだけでの会合』ですか…。間違いではありませんね…」
「ようこそ銀さん…歓迎するよ…」
三人は薄ら笑いを浮かべながら銀二を迎える。
不気味な光景だった。日本の大企業三社の会長がひとつの部屋に揃い踏み…、他には誰一人としていない…。
「兎に角、座りなさい…。話はそれから…」
兵藤の気遣いを聞き、我に帰る。異様な光景を前に立ち尽くしていたのだ。
(落ち着け…俺らしくもない…古狸が三匹…それだけだ…)
動揺と共に銀二に湧き上がる興奮っ…。
(この空気……ムワッとした蒸しかえすような空気…。
 ここ最近のちいせぇヤマとは違う…でかいヤマだ…)
会長らの出す雰囲気は異質だった。さすがは大企業のトップというべきか…。

357 :我執:2010/02/18(木) 01:03:43 ID:???
銀二は会長らの対面に座る。
「さて…銀さん…。
 今日は我々老いぼれのわがままを聞きに来てくれた事を、
 まず感謝させてもらうよ…」
いえ…と小さく否定する銀二。
「まぁ…くだらん前置きはなしにしてじゃな…。
 今回の以来は、あるギャンブルについてじゃ…」
いままで何度か兵藤との仕事をこなしてきたが、それはいつもギャンブル絡みだった…。
ギャンブルに参加する若者を募ったり…、ギャンブルの企画をしたり…。
銀二は今回もギャンブルのことだろうと予測はしていた…。
「ただ、今回はいつもの小さい規模のギャンブルではない…。
 我々三社が共営し、日本はもちろん海外のお偉方も数多参加していただく予定じゃ…。
 そんな大舞台でヘマはできんからの…。銀さんにもひとつ知恵を借りたいと思ってな…」
「なるほど。わかりました…。それで…具体的にはどんな内容をお望みで…?」
「鉄骨の時みたいに、若者に何かをさせて…それにトトカルチョをつける…この方式かの…」
平然と言ってのける兵藤…。
「あれ…?構想は浮かんでいるのですか…。
 では、後は黒崎さんなり、袋井さん、後藤さんと取り次ぐことができれば…」
三人はそれぞれ特徴のある笑い声を上げる…。笑いをこらえながら兵藤が言う。
「いやっ…いやいや…足りんのだよ…鉄骨渡り程度じゃあ…興奮が…感動が…阿鼻叫喚が……。
 鉄骨渡りの第一ステージでの闘争心と…第二ステージでの絶望感…これがどちらもほしい…」
銀二は色を失った…。
(こいつらっ…クズだっ…!
 てめぇら三人で…何人を殺してきたと思っていやがるっ……!
 まだ足りねぇのかよ…!)
「………隠すのはやめましょうや…。
 このご様子だと…すでに決まっているのでしょう…ギャンブルの内容…」

358 :我執:2010/02/18(木) 01:04:27 ID:???
「察しがいいのう…銀さんは…。わしらの考えたギャンブル…。
 野生の本能のぶつかり合う―――『バトルロワイアル』。
 …とどのつまりが『殺し合い』じゃ……」
一般人が聞いたら腰が砕けてしまうような提案だっただろう…。しかし、銀二には、ある程度の予測がついていた。
(…やはりそうきたか……ついに、極論に行き着いたな…悪魔どもっ…)
「しかし、ただコロッセオのような所に参加者を放して『さぁ殺し合え』っていうのじゃ…
 …やはりつまらない…。ある程度の広さを持った会場で…、
 数日に渡って殺しあってもらわないと…、
 せっかく遠路はるばる来てくださるゲストにも失礼じゃ…。
 そこで…銀さん。あなたには…この大舞台に見合った参加者を考察してもらいたい…。
 裏の世界を知り尽くしたあなたにしか頼めないのじゃ…」
「なるほど…。大役ですな…。して…その会場ってのは何処にするのです…?」
三人が顔を見合わせる。
「おぉ…?すっかり忘れておったわ……どうする…?“また”買うか…島でも…?」
(呆け爺どもが…!…いくらなんでも有り得んっ……軽く見すぎだ…命を…!)
だが、銀二にある閃きっ…!体を駆け巡る電流っ…!

(―――ちょっと待てよ…?今…なんて言った…?まさか…あの噂…事実だったのか…?
 あの噂が本当だったら…『二重の攻撃』でこいつらを討ち取れるっ…!)

逸る気持ちを抑える。
「いえ…開催場所もなんとか確保しましょう…」
「では…!この話っ…受けてくれるということかの…!?」
在全の言葉を受けて、銀二が立ち上がる。
「外で夜風に当たってきます…。少し…考えさせてください…」
店の敷地外まで出てきて、タバコに火をつける。

359 :我執:2010/02/18(木) 01:05:10 ID:???
店の敷地外まで出てきて、タバコに火をつける。
(…しかし…俺にあいつ等を裁く権利があるのか…?
 俺はあいつらを悪魔と呼べるのか…?自分の悪行を棚に上げて…。
 あいつらが裁かれるのなら…俺も裁かれる必要があるんじゃないのか……?)
タバコを踏み消し、煙を出し切る。
携帯電話を取り出し、耳にあてる…。発信先は安田…。
「安田……帝愛の無人島レジャーランドで働いていた男と繋がりがあったよな…?
 そいつの話を聞きたい…。明日の朝…。ん…?あぁ…そうだ…仕事だ……でかいヤマ…」
そういうと、一方的に電話を切る。踵を返し、また料亭へと入っていく…。

「分かりました…。お受けしましょう。今回の仕事…。
 ただし…開催場所と…参加者は私がある程度の決定権を持つ…。それでよろしいか…?」
「もちろんっ…!銀さんなら受けてくれると思っとったよ…!
 ではでは…契約完了の祝杯じゃ…!」
兵藤が杯を掲げる…。二人もそれに続く…。
「……ありがとうございます…。ですが…今日は失礼します…。
 明日の朝から仕事に取り掛かりたいので…」
「仕事熱心じゃの…銀さんは…!わしは…あんたのそういうところを買っておる…。
 一週間後にまた会合を持とうではないか…」
「わかりました…では…おやすみなさいませ…」
銀二は部屋を後にした。
部屋では、悪魔達の静かな宴が始まったらしい…。
こうしてバトルロワイアルの脚本が書かれ始めた…。

360 :我執:2010/02/18(木) 01:06:08 ID:???

 * * *

―――翌日。
銀二と安田は喫茶店で作戦会議の場を持つことになった。
昨日の出来事を安田に話す…。
「なるほど…。なかなか金になりそうな仕事だな…。
 それで…会場としてあのレジャーランド島を選んだって訳か…」
「ご名答…。しかし…理由はそれだけじゃない」
「レジャーランド島の裏の顔ってやつか……」
「そうだ。そいつを裏付けることが出来れば…帝愛、蔵前、在全と決着をつけられる…。
 この機会…みすみす見逃すわけにはいかねぇ……」
安田は耳を疑う…。
「何だと…!?決着をつけるって………国の経済が回らなくなるぞ…!?」
「だが、やつらが権力を揮って、議員を買い、役人を買い、
 趣味のために人間を殺しているのも確かだ……!
 それに、今日の日本だったら、簡単に沈みやしねぇ…!
 言うなれば他のやつ等にはチャンスが与えられる…!!
 エサを食べ過ぎた鷹や鷲は…地へ落ち…朽ち果て…小さきものに食われる…!
 それが“常”だっ…!」
この時、銀二のいう『鷹や鷲』に銀二自身も含まれていることに安田は気がつかなかった。
だが、銀二の決意は紛れもなく本物であるということだけは感じ取った。
「しかし…可能なのか…?銀さんが決めたことなら…全力でサポートするが……」
「そのためにこうやって綿密な計画を練ろうとしているんだろうが…」
間髪入れずに反論する銀二に驚く。
(こんなに感情的な銀さんも珍しい……)
気まずい沈黙の後、安田が話を再開させる。
「…そういえば、例の男ならこねぇよ。
 銀さんを疑うわけではないが、帝愛の手先と会うことは避けたいらしい…」

361 :我執:2010/02/18(木) 01:09:19 ID:???
「口封じされることを懸念したのならば…やはり、それだけ危ない島だってことだ…」
「うむ…。んで、変わりに封筒と鍵を預かってきた…。
 自分の身元を明かさない条件で、使ってくれ、と。
どうやら…島の病院でくすねてきたものらしい…。鍵は病院のマスターキーだそうだ…」
「マスターキー…!随分と危険な真似を……。
 だが…それなら確かに…怪しい人間とは会いたくないというのもうなずける…。
 それに、ここまで危険を冒してくれたという事は…それほど奴等のやり方が気に食わないってことだ…。
 そいつに礼を言っておいてくれ…『命がけの襷』は始まった、と…」
安田は頷き、鍵と封筒を銀二に渡す。
銀二は渡された茶封筒を開き、一枚の紙を取り出す。

362 :我執:2010/02/18(木) 01:11:51 ID:???

「こいつは…ポーカーの時のボンボンっ…!?」
安田が驚愕する。
その紙は一見カルテのように見えた。顔写真に本名、住所、年齢…。
しかし、一般的なものとは違い、病名や病状などは書いてなく、そのかわりに人間の身体を模した絵と、
その絵に添えるように『右鼓膜、済』『指10/10、済』『精神に異常発生』『後日、ウイルス投与』など、所狭しと診断結果(?)が書かれていた。
「西条とかいったか…?そういえば…あいつのオヤジの銀行…経営破たんしたって聞いたな…」
ぶつぶつと独り言をいう安田を尻目に、銀二はカルテを見続けていた。
「―――クロだ…」
銀二が何か言ったので、安田は目をやった。
「やつらが、あの島で人身売買や人体実験をしている事はこのカルテにより明白…。
 だが…証拠が足りない…。こいつだけだったら、捏造だと言われて終わり…。
 こいつの魔力は他の証拠…。
 そして、こいつを持ってきた人間の証言で、初めて成り立つものだ…」
独り言のように呟く銀二…。まだ安田にはいまいちピンときていない…。
「その証拠は紛れも無く…島の病院内にあるだろう……こいつを取りに行く…」
銀二が三人を陥れるために思いだした噂とは、表向きはレジャーランド島として造られた島が、
裏では人身販売、臓器販売の取引場所であり、拷問器具や化学兵器の実験台を飼うための場所であるという噂だったのだ。
こんな小さな島に、宿泊施設が三つもあるのはそのためであり、バトルロワイアルのスタート地点となったホテルと、東南の旅館は一般向けの宿泊施設であったが、
もうひとつのホテル、一条、板倉、しづかの三人が血の惨劇を繰り広げたあのホテルは、帝愛、在全、蔵前に負い目のある被験者たちの収容所だったのである。
病院もよくよく考えたら、異質である。入院患者などいるはずのないこの島に、大きな病院は要らぬはずであるからだ。
「その証拠を取りにいく手段が…バトルロワイアルってわけかよ……。
 い、いやしかし…!その為だけに誰かを殺し合いの場に身を投じさせるってのか……?」

363 :我執:2010/02/18(木) 01:13:03 ID:???
「そうだ……千載一遇のチャンスなんだ…。悪魔の血を断ち切る唯一の…。
 確かに…人生において勝つ人間ってのは…大悪党でなくちゃならん……。
 他人を跳ね除け、平然と踏み潰すのが仕事だから当然だ……。
 しかし…やつらはやりすぎなんだ…。制裁は必然っ…!俺が下すっ…鉄槌を…!
 ……そのためには事前の準備を怠れない…。
 会場はレジャーランド島として…次は参加者だ…」
そういって、銀二は一枚のメモを安田に手渡す。
「これは…?銀さんの希望する参加者の一覧か…?」
そこには、アカギ、鷲巣、カイジ、利根川、一条、原田、沢田、板倉、天、ひろゆき、涯、零、標、そして森田の名前が書かれていた。確かに裏社会を彩る者揃いであり、この面々ならば海外のVIPをも満足させられるだろうが、その中には安田の知らない名前もあった。
「そいつらは、日本の裏社会の顔と言っても過言ではない連中だ…。
 だが、その面子にはある共通点がある…。わかるか…?」
安田は首をかしげる…。何せ、知らない名前もあるのである。銀二の言う共通点には気付かなかった。
「バトルロワイアルの場に立ったとき、『対主催のスタンスを取る可能性がある人間』だ…。
 俺が元々一目置いていたっていうのもあるがな…。
 参加させる理由も上手くこじつけられる…」
安田が聞き入る中、銀二は、それぞれの参加させる理由と対主催に動くであろう理由を話し始めた。
「まずは、アカギ…。こいつは現代最強の雀ゴロと言われている…。
 しかも、その経緯、思考や洞察力も並々ならぬものだ…。
 こいつなら…殺し合いの裏に隠されているものに気付き、
 暴いてくれるのではないかと期待している。

 次に、言わずと知れた昭和の怪物、鷲巣巌…。
 人の命令で動く事が大嫌いなはず…。更に、海外にも名の通るビッグネーム…。
 ふたつの条件を満たしている…。
 
 天、ひろゆき、原田…こいつらは、東西の麻雀のルール統一のために戦った男達だ…。
 アカギと同じく、相当の実力を持つ麻雀の打ち手だろうから…、
 こいつらの思考、洞察が気になる…。

364 :マロン名無しさん:2010/02/18(木) 02:24:16 ID:???
支援・・・・!
面白くなってきた・・・・!
わく・・・・わく・・・・

365 :マロン名無しさん:2010/02/18(木) 02:51:22 ID:???
銀さんかっけえな・・・

366 :我執:2010/02/18(木) 07:03:51 ID:???
 関東ヤクザの有望株である板倉と沢田もなかなかの影響力をもっている…。
 切れる男達らしいしな…。
 
 利根川に一条…。帝愛の出世頭だったが失脚した二人…。
 復讐を選ぶのか、服従を選ぶかはわからないが…、
 立身出世のエリートコースに戻らせるという理由でなら参加させられる…。
 
 そして、安田が知らないであろう零、標…。
 こいつらは今まで挙げた人間よりもだいぶ幼い…。しかし、在全の『王への試練』にて、
 他を寄せ付けない頭脳、洞察力、判断力にて圧勝した…。
 参加させるにはなかなかうってつけだ…」
安田は、淡々と『殺し合わせる』人間の名前を挙げていく銀二に少々恐怖を覚えた…。
「残ったのは三人か…この三人はある意味では一番…期待している…。
 
 伊藤カイジ…。カイジは帝愛の幾多のギャンブルを乗り越えてきた…。
 場慣れという意味ではこいつが一番だ…。
 カイジも兵藤も…お互いを憎みあっているだろう……。

 森田鉄雄…こいつの力は俺たちが一番知っている…。正義感にも溢れている…。
 必ずや、俺の力になってくれるはずだ…。

 最後に工藤涯…。中学生だ…。しかし、いつぞやの人間学園事件…。
 脱出し、告発し、平田を壊滅まで追いやったのはこの中学生だ…。
 脱出…告発…そして壊滅…。この流れは、今回のバトルロワイアルで、
 俺たちが描いているシナリオそのものなんだっ…!いうなれば涯は先駆けなんだっ…!
 現場でこいつと接触することができれば…かなりの戦力になるだろう…!」

367 :我執:2010/02/18(木) 07:04:56 ID:???
安田はただただ感心していた…。
「昨日だろ…?バトルロワイアルの話が出たのって……。
 ここまで調べ上げるなんて…さすがというか…。………それで…肝心な点…。
 いったい誰に大役……銀さんが目をつけた奴等に、ゲームへの抵抗を持ちかけ、
 病院から証拠を持ち帰る運び屋を誰にやらせるんだ…?
 手軽に接触できる人間が理想だが…」
静かに銀二は口を開いた…。


「―――俺だ…」
「…え?」
少し間をおいて、安田が聞きなおした。
「俺も殺し合いに参加する…。そこではじめてこいつらと接触し、協力を求める…。
 だがそれは、単に『対主催』としてであって、『証拠を持ち帰ってくれ』という事ではない…。
 証拠を持ち帰ってくれるよう頼むのは、一人か二人…今、列挙した他の人物らには、
 島のどこかで高みの見物をしているであろう主催側に物的に、
 攻撃をしかけることを期待している…。当然、それが成功すればそれでいいのだが…、
 そうは簡単に事が進まないと俺は思っている…。あの三社が大勢のVIPを招くのだから…、
 警備はだいぶ強固なものになるだろう…。だが、俺がその裏をかき、証拠を探す…。
 その証拠は…俺が持ち帰ることができなくとも…誰かに託す……『命がけの襷』だ…」
これが銀二の思いついた『二重の攻撃』である。
安田は動揺を隠せない…。
「死ぬ気か…銀さん…!だったら…俺が行くっ…!銀さんが行かずとも…俺が行けば…」
安田の言葉をさえぎるように銀二が言う。
「いや…。安田、船田、巽には、生還者と元レジャーランド職員の保護…、
 三社に買われていない判事、検事の確保…。告発までの全てを託そうと思っている…。
 こちらに残る事だってあながち間違っちゃいないんだ…。『命がけ』っていうところで言うと…。
 …これは…俺から最後の依頼だ…受けてくれまいか…?」
「……わかった…。最後のっていうのは納得いかねぇが…
 俺たちは銀さんを全力でサポートする…。二人もきっと同じ考えだろうよ…」

368 :我執:2010/02/18(木) 07:06:05 ID:???
二人は話に一区切りついたということでコーヒーを飲んだり、タバコを吸ったり、外を眺めたりした…。
だが、この間二人に会話はなく、各々、沈黙と、余韻を過ごしていた…。
その沈黙を解いたのは銀二だった…。
「なぁ…安田……。お前…なんでこっちの世界に来たんだ…?
 確かに警視庁時代のお前の勤務態度はお世辞にもいいもんじゃあなかった…が、
 別にヤクザとつるんでいた訳でもなかったよな…?」
「どうした…急に……銀さんこそ、どうなんだよ…」
「俺は…世界の全てを見てみたかった…、ってだけさ…。『子供の頃にわかりかけてたことが
 大人になってわからないまま』…なんて事…ばっかりだったからな…。
 大人になって…わかったのは…世界の大部分は汚ぇ大人が隠しているってことぐらいだ…
 まぁそれぐらい…この時代じゃあ…子供でも知っているがな…。
 その汚ぇ大人ってのになれば…、世界を見渡せるかと思ったんだよ……。
 …だが、見えてきたのは…やっぱり汚いものだけで…。
 金やら…横暴やら……。俺は…もう…うんざりだったのかもしれん…。
 ……そう思えば…ちょうど良かった…。…灰になるには…最高の大舞台じゃねぇか…。
 兵藤たちの思い通りになっているのならば、いけ好かないが…猛者に殺されるなら…本望だ…」
感傷的な銀二を初めて見た安田はただ黙って銀二の思いを聞いていた…。
銀二の話が終わると、また少しの沈黙が流れた…。
次にこの沈黙を破ったのは、ラジオの歌声だった。

『ああしなさいとか こうしなさいとか もううんざりだよ
 ああしなきゃとか こうしなきゃとか もううんざりだよ』

喫茶店の喧騒の中、曲の全てを聞くことは出来ないが、二人はただその曲を聴いた。
外を眺めながら、あるいはコーヒーを飲みながら。

『入院したくない 病気で死にたくない ベッドで死にたくない 即死でたのむぜ
 痛いのはゴメンだ 苦しむのはヤダ 一瞬でいくぜ 即死でたのむぜ』

369 :我執:2010/02/18(木) 07:07:04 ID:???
パンクロックバンドとは思いがたい軽快な音楽だが、その歌詞は、今の銀二と安田の胸に突き刺さる。

『振り返りたくない 考えたくもない 涙はいらない 即死でたのむぜ
 厳かはイヤだ くだらないほうがいい 笑えりゃなおいい 即死でたのむぜ』

銀二は曲に合わせ、歌を口ずさんでいた…。安田はそれをただ…ただ聴いた…。
「……どうせ死ぬなら…俺の集大成である…ギャンブルだ……。
 そうだな…猛者揃いだし…それがいい…」
殺し合いの場には不釣合いなギャンブルルームとチップという概念が生まれた瞬間だった…。
安田は、銀二の姿を見て泣いていた…。
自分の過去を話したり、人前で歌を口ずさんだりするなど、今までの銀二にはないことであった…。
この行為が安田には銀二が死を悟ったように思えたのだ…。
「……あんたなら…きっと大往生できるだろうよ…!
 こっちの…後始末は任せて…死んでこい……!
 全力で死ぬのが…あんたには似合っている…!」
「すまねぇな…最後まであてにしちまって…」
銀二はそういって安田の肩を叩き、去っていった…。
もう一度、会う日があることを信じて…。
だが…安田が銀二を見るのは、この日が最後となった…。

370 :我執:2010/02/18(木) 07:07:48 ID:???

* * *

兵藤らとの会合から一週間が経ち、二度目の会合の日がやってきた…。
しかし、銀二には腑に落ちない点があった。なぜ、あの三社が手を組んでいるのか、という事である。
(その点も現地で探る必要があるな…。こちらでは調べきれなかった…)
あいさつを終え、開催場所、参加者、ギャンブルルームの三点について提案した…。
銀二の話を聞き終えた三人は喜んだ…。
「さすが銀さんじゃ…!我々が頼んだ事以上の働きをしてくれるとはの…!」
と、兵藤。
「ギャンブルルーム…。結構じゃないか…!
 このメンバーの戦いが早く見てみたいねぇ…」
とは、蔵前。
「今夜から、眠れぬ日が続きそうじゃわい…!」
これは、三人の中で一番幼い精神の持ち主である、在全の言葉である…。
「…ひとつ、お願いなのですが…、
 私も…バトルロワイアルに参加させてもらいたいのです……」
「……」
三人は呆気に取られているようだった…。
そりゃあそうだ。「私も死なせてください」など…。
狂気の沙汰だ…。まして、企画の第一人者である人間が…。
(さすがに怪しまれたか…?)
…が、しかし…。

 パチッ!
   パチッ!

三人は拍手をした…。銀二の意気を称えるように…。


371 :我執:2010/02/18(木) 09:56:07 ID:???
「素晴らしい人だ…!老人のために…文字通り身を粉にして働いてくれるとは……!」
三人は、銀二を褒めに褒めまくった…。
(…阿呆どもが……確実に首を取ってやるからな…)
固く心に誓い、置かれていた水を一気に煽る…。
それをみた兵藤はますます機嫌をよくする…。
「どこで調べたかはわからんが…。あの島が会場というのもうってつけじゃ…!」
口ではこう言っているものの、兵藤はレジャーランド島を開催場所として提案された時、微妙に顔色を変えた。
この一瞬を銀二は見逃さなかった…。
(やはり…クロだったか…。あとは…もう一度、安田と作戦会議を持つことが出来れば…完璧だ…)
しかし、この願いは叶わない…。
「ふむ……いかんせん参加人数が足りんの……。
 この倍は欲しい…トトカルチョには大穴も必要なものじゃ…!」
「では…次にお会いする時までには…確定させますよ……」
「いやいや……銀さんには…休んでもらおう……
 ―――バトルロワイアルがはじまるまで…なぁ……」
兵藤がそう言い放った瞬間……

―――景色が歪む…。
(何だ…!さっきの水に…一服盛られていたか…!………………)
兵藤の口角が上がる…。
蔵前、在全も手を叩いて見ている…。

―――意識が…

            遠のく…

372 :我執:2010/02/18(木) 09:56:59 ID:???
銀二はその場に突っ伏した…。
「この狐めが…!このまま我々の所で引き取らせてはもらえんかね……?
 こいつだけは…今すぐにでも殺したい…」
以前、銀二に煮え湯を飲まされた蔵前が憎しみを込めて言い放つ…。
「カカカ……。確かに…銀さんを殺したいという人物は…山ほどいるでしょうな…。
 だが……バトルロワイアルを企画してくれたのは…銀さんじゃ……。
 弔いの意を込めて……ここは…銀さんの意思を尊重しよう……。
 それに…何を考えているかはわからんが………こいつがいるだけで…、
 トトカルチョは黒字になるだろう……」
蔵前は兵藤の意見をしぶしぶ聞き入れた…。
「まぁ…銀さんが自ら参加表明してくれて助かったよ……。
 そうでなければ……本当に殺すしかなかったからの…」
そういいながら、銀二のスーツを弄る兵藤…。
あるものをスーツから取り出して、二人に見せる…。
蔵前、在全はそれを見て、眉にしわを寄せた…。
「こんなものを持ち帰られたら……大変なことになっとっただろうな……」
兵藤は銀二のスーツから探し出したテープレコーダーを自分の懐にしまった…。
「当日が楽しみになってきたのぅ…カカカ……キキキ…コココ…」
兵藤の笑い声が闇夜に木霊した…。

373 :我執:2010/02/18(木) 09:58:13 ID:???
 * * *

銀二が覚醒すると、そこはゲームのスタート地点のホテルの一室であった。
格好はあの夜のままだったので、スーツに隠していたテープレコーダーがあるかを確認したが、案の定、回収されていた。
だが、もうひとつの所持品は取られていなかったようである…。
病院のマスターキー。
あの夜…。銀二は自分が拉致されることを予測していた…。だからこそマスターキーを確実に守る必要があった…。そのためにテープレコーダーという疑似餌を仕掛けておいたのだ。
(爺どもはこういうところでツメが甘い…。これで…希望は繋がった…)
窓の外を眺めると、広大な遊園地が広がっていた…。
少し呆気に取られた…。
この島に銀二を放つことが危険であるというのは、他の誰でもない兵藤が一番知っているはずである。
馬鹿正直に、この島でバトルロワイアルが開催されるとは思わなかった。
(やはり、勝ち目が消えたわけではないな…。
 俺ができることに全力を尽くすだけだ……)
かくして…銀二のバトルロワイアルが始まった…。

* * *

銀二は、マスターキーを手持ち無沙汰にいじりながら、発端を思い出していた…。
それは、自分の目的を今一度確かめるためなのであろうか…。
夜の闇が感傷的にさせたのかもしれない…。
(いや…。もうやめよう…。今を精一杯生きなければ……死に繋がる…)

374 :我執:2010/02/18(木) 09:59:54 ID:???
我に返り、病院の見張りに集中する…。
そうすると、病院の一室には明かりがついており、二階では移動する光が微かに見えた…。
それの正体は、天、鷲巣のいる部屋と、ひろゆき、平山が光点を捜しているものであった。
(病院内を探索するならば…部屋の電気をつけておく必要はない…。
 最低二組はいる……が、一組のチームが待機と、探索に分かれているのかもしれない…)
とりあえず、メモを書き留める。

AM1:00頃、病院内を移動する光あり。明かりのついた部屋がひとつ。

短くメモし、紙とペンを置く…。
(人がいる内はまだ行動すべきではないな…。
 ならば、先に港へ行くか…?……どうしようか………)
原田は寝息を立て始めた。どうやら、安眠できているようである…。

375 :我執:2010/02/18(木) 10:00:45 ID:???
【F-4/商店街家屋内/深夜】

【原田克美】
 [状態]:健康
 [道具]:拳銃 支給品一式 
 [所持金]:700万円
 [思考]:もう一つのギャンブルとして主催者を殺す ギャンブルで手駒を集める 場合によって、どこかで主催と話し合い、手打ちにする 銀二に従う
※首輪に似た拘束具が以前にも使われていたと考えています。
※主催者はD-4のホテルにいると狙いをつけています。
※2日目夕方にE-4にて赤木しげるに再会する約束をしました。カイジがそこに来るだろうと予測しています。
※村岡の誓約書を持つ限り、村岡には殺されることはありません。原田も村岡を殺すことはできません。
※村岡に「24時間以内にゲーム主催者と直接交渉窓口を作る」という指令を出しました。中間報告の場所と時間は次の書き手様にお任せします。
※村岡に出した三つ目の指令はメモに記されています。内容は次の書き手様にお任せします。成功した場合、原田はその時点で所持している武器を村岡に渡す契約になっています。
※『島南、港を探せ』『病院内を探索する』『黒幕は帝愛、在全、蔵前』『銀二はアカギや零とは違う形の対主催体制をとる』という内容の銀二のメモを持っています。

376 :我執:2010/02/18(木) 10:13:10 ID:???
【平井銀二】
[状態]:健康
[道具]:支給品一覧 不明支給品0〜1 支給品一式 褌(半分に裂いてカイジの
足の手当てに使いました) 病院のマスターキー
[所持金]:1300万
[思考]:生還 森田と合流 見所のある人物を探す カイジの言っていた女に興
味を持つ 病院、港を探索する 証拠を掴む 猛者とギャンブルで戦い、死ぬ
※2日目夕方にE-4にて赤木しげると再会する約束をしました。
※2日目夕方にE-4にいるので、カイジに来るようにと誘いました。
※『申告場所が禁止エリアなので棄権はできない』とカイジが書いたメモを持っ
ています。
※原田が村岡に出した指令の内容、その回収方法を知っています
※この島で証拠を掴み、原田、安田、巽、船田を使って、三社を陥れようと考え
ています。

377 :マロン名無しさん:2010/02/18(木) 10:25:16 ID:???
以上、>>372から代理投下させてもらいましたが、
規制で>>376だけ携帯からなので改行おかしくなって申し訳ありませんorz

378 :マロン名無しさん:2010/02/18(木) 11:33:50 ID:nADYEND/
まさか西条が地下住民だったとは

379 :マロン名無しさん:2010/02/18(木) 13:09:49 ID:???
投下乙です
銀さんのかっこよさがハンパないです・・・


380 :マロン名無しさん:2010/02/18(木) 13:28:17 ID:???
投下乙です

話が動いてきましたね
目が離せません

381 :マロン名無しさん:2010/02/18(木) 22:34:13 ID:???
投下乙です!
新たな道具、病院のマスターキーが出てきましたね
文字通り今後のキーアイテムになるのは確実…!

銀さんの出場経緯、すごくよく練られている話で引き込まれました。
銀さんは港に行くのか、病院へ向かうのか。今後どう行動するか楽しみです。

382 :マロン名無しさん:2010/02/19(金) 01:12:41 ID:???
正直今までで一番面白いと思った
思わず銀金の最終巻を読み直したらまたしっくりきた

383 :本心 1/10 (代理投下):2010/02/19(金) 01:33:27 ID:???
代理投下します。

「ならば、カイジに決めてもらおう。」
沢田の言葉に、零、涯はカイジの方を向いた。
暫くの逡巡の後、カイジは頷きながら言う。

「零の言う通りだ……。体が参っちゃあどうにもならない…俺はアンタらの予定に合わせる。
だから、先ずは零、涯。もう少し休んでいてくれ。寝ているところを起こしちまったんだろ?」
「「オレは平気です」」
零、涯の言葉が重なり、二人は互いの顔を見合わせた。沢田が苦笑して言葉をかける。

「零、涯…。休むことも大事だ。第三放送まであと4時間ある。あと1時間仮眠を取ったら、俺達と交代してくれないか?
お前達が十分に休息していないのに、大人がゆっくり休むわけにもいかねえよ」
「……わかりました、じゃあ今は一つだけ…」
零が、先程デイパックとタオルで作った死角の中でメモを書く。

 『先程の上下水道を通って脱出という案ですが 水道施設が島外にあるという根拠はありますか』
 『今のところ推測 だが確信はある 島の中にあるなら大きい施設 だが地図上に載っていない』
カイジはTシャツの下から、腹部を守るようにしまっておいた、地図とパンフレット類、参加者名簿を取り出す。
地図を開いている間、零が名簿やパンフレットに注目する。

「それは……」
「ああ、参加者名簿と、この島の主要施設のパンフレットだ。ある人に譲ってもらった…」
「見せてもらえますか、あとで…!重要な情報として活かせるかもしれない…!」
「それは構わないが…」
「ええ、今はまずこれについて…」
零はメモをめくり、新しいページに数行に渡って書き綴った。


384 :本心 2/10 (代理投下):2010/02/19(金) 01:34:18 ID:???
 『離島の水道施設について
 上水道→島の外から、海底送水管を使って水を供給しているとすれば、その管は人が通れるような構造の管ではない
 下水道→合併処理浄化槽が島内地下に設置されていればそもそも島外へ繋がる下水管が存在しない
      (水を島の中で浄化して、きれいにした水はそのまま海へ流されるため)』

「アンタ物知りだな…。零の言うとおりなら…オレの考えた作戦は実行不可能ってことか……。」
「ただ…」
落胆するカイジに対し、零は再びメモを綴った。

 『市街のマンホールの下にあるような人が通れる下水道が この島内にも存在する可能性はあります
 浄化槽まで下水を運ぶための地下道のようなものがあれば ゲームに乗っている参加者から身を隠せる場所になるかも
 それに もし首輪の電波が 地下では遮断されるとしたら』

零とカイジは互いに視線を交差させる。

 『突破口となるかも知れない…!』

零との筆談はそこで一旦区切りを入れた。
カイジは、零に参加者名簿とパンフレットを預けた。
だいたいの内容は頭に入っていたし、知識の豊富な零のほうが有効活用できると考えたためである。
零は、カイジの持ち物にすぐにでも目を通したがっていたが、今は休むように忠告する。

沙織に関しての情報以外では、情報交換はあまり進んでいないのが現状である。
だが、カイジは零と涯に一先ず休むように言った。
零、涯は再び横になる。あと一時間ほど仮眠を取り、沢田、カイジと見張りを交代すると念を押して。
もう少し長く休息を取って置きたい所だが、状況がそれを許してくれない。

385 :本心 3/10 (代理投下):2010/02/19(金) 01:35:57 ID:???
沢田は3人にこう言った。
夜の間は、暗闇が、逃げる者に味方してくれる。
日が昇れば、再び死亡者の数は増えてしまうかも知れないが。
だが見方を変えれば、明け方になれば夜の間に比べて田中沙織を探しやすくなるとも言える。
だから今は焦るな、と。

零、涯が寝付いたのを見ると、カイジは溜息をついた。
少年達の顔には疲れの色が見える。このゲームに肉体的、精神的に無茶を強いられているのだ。
二人の顔色を見ていると、とてもではないが『今すぐに出発しよう』などとは言い出せなかった。

沢田は玄関先に立ち、警棒を片手に傍の窓から外の様子を伺っている。
「カイジ、お前も寝たらどうだ。見張りは俺一人でも十分」
「…アンタ、沢田さん、って言ったっけ。…裏の世界の人なのか」
「ああ。…こういう荒事には慣れている。だから俺に気を遣う必要は無えよ」

カイジは座り込んだまま沢田の方をちらりと見、また視線を落とした。
「気を遣っているというか…今休憩したら、張り詰めていたものが切れてしまう様な気がするから…」
「……そうか。お前、その筋の者でもない様なのに、妙に修羅場慣れしているみたいだな」

沢田の問いに、カイジは暫く黙り込んだ後、呟いた。
「このゲームの主催…。帝愛にはさんざん煮え湯を飲まされている…。
従順に奴らの言いなりになっていたら、今頃死んでたか、廃人になってたっ…。
奴ら、人を人とも思っちゃいない、鬼だっ…。人の皮を被った鬼っ…!」

386 :マロン名無しさん:2010/02/19(金) 01:36:33 ID:???
支援

387 :本心 4/10 (代理投下):2010/02/19(金) 01:38:19 ID:???
暗闇の中、カイジの目がぎらりと光ったように見えた。
「主催が俺たちを虫けらのように潰しにかかるなら、こっちだって黙っちゃいないっ…!
潰す…潰すっ……!奴ら…どんな手を使ってでも叩きのめすっ……!」

指を組んで己の世界に入り込み、独り言を呟くその様子に、沢田は気圧されるものを感じた。
「……俺も協力しよう」
思わず口から言葉が漏れていた。

「…ありがとう」
沢田の言葉に、カイジは僅かに笑いながら答える。先程までの気迫は薄れていた。
ふと、カイジは立ち上がり、勝手口から外へと出ようとする。

「どこへ行くんだ?」
「ああ、ちょっとトイレ」
「そうか。周囲への警戒を怠るなよ。行って来い」
何気ない仕草で手を挙げ、カイジは外へ出て行った。


外は痛い程静寂に包まれていた。気温が下がり、ぴんと張り詰めた空気。
月明かりの為、部屋の中よりは明るく、暗闇に慣れた目には眩しい。その光に希望の欠片を見た気がした。
深呼吸をする。左足はまだ痛むが、暫く座っていたおかげでだいぶ楽になった。
歩ける。

「行くのか」
不意に背後から声をかけられ、カイジはビクッと背中を震わせた。

388 :本心 5/10 (代理投下):2010/02/19(金) 01:40:02 ID:???
「あ、いやいや…!勘違いしないでくれ。少しぼうっとしてたっ…。
すぐ戻るから、部屋で待っていてくれねえか…?」
カイジは恐る恐る振り向き、笑顔を作って沢田に言った。
だが、沢田が真剣な様子で黙り込んでいるのを見ると、誤魔化せないと悟り、俯いた。

「……行かせてくれっ…!アンタらの気持ちは、心から有難いと思ってるんだ。
だが、悪いけど待っていられない。こうしている間にも田中さんは追い詰められていってるんだ。
本当に、本当の本当に取り返しがつかなくなる前に、行かなくちゃ」
「……田中沙織が死ぬことが、か?」
「田中沙織が死ぬことと、これ以上人を殺し続けることが、だ」
「アンタが殺されるかも知れなくてもか?」
「殺されたりしないっ…!」
「まともに話し合えるかどうかもわからないんだろう…安全を確保できるような策があるのか」
「……っ……ないっ…!でも、田中さんを探しながら考えるっ…!」

カイジの頑として譲らない様子に、沢田は既視感を覚えた。
「…さっきアンタ言っていたな…。田中沙織に助けられたと」
「そうさ…。彼女がいなければ俺はとっくに死んでいた…!」
「…だから…今度は助けるのか…。」

沢田は溜息を吐き、再びカイジを説得するために話し出す。
「お前の話を聞いていて思った事を、正直に言わせてもらう。
カイジ…お前達が仲間になったのも、命を助けられたのも、単なる成り行きでしか無いだろう。
“くじ”を引いて、当たったからって、それを引換所に持っていくか否かはお前自身が選べると思うがな」
「……そうかも知れない。だが、それが例え貧乏くじであったとしても、引いちまったって事実に変わりはないだろ?
言い訳してたって事実は変わらない。俺の方が先に彼女に声掛けたんだ」

389 :本心 6/10 (代理投下):2010/02/19(金) 01:41:49 ID:???
沢田はなおも言葉を捜して口を開くが、その口は再び閉じられた。
「すまねえ…。沢田さん…!」
カイジは沢田に向かって頭を下げる。

「アンタは…、いや、アンタや、中で寝ている二人、アンタらはピカイチっ…!さっき話をしただけでも、良く分かった……!
俺が今まで出会った中じゃ、文句なく優秀…有能…!器のでかい、何かを成し遂げられる人間…!
だから……本当は言われる通り、一緒に、アンタらと行動を共にしたいと思った…それが偽らざるオレの本心っ……!」

昂ぶる心のままにカイジは吐露する。言葉の語尾が、だんだんすすり泣くような声に変わる。
「けどっ…アンタらに危険な目に遭って欲しくない。連れて行きたくない…!
アンタらは自分達の実力を発揮して、このゲームに風穴を開けてくれ…!
アンタらならきっと出来る…!
沢田さんならあの少年達を守れる。あの二人の安心して眠る様子…。
アンタら三人が、本物の“仲間”だって証拠だ。この悪夢の島で、絆ってやつは何物にも変えがたい宝……!
だからオレ一人でいいっ…。
頼む……だから……だから……このまま行かせてくれっ……オレを……!」

「…あいつらを騙して行くのか…?」
沢田の冷静な一言に、カイジの顔が苦しげに歪む。

「仲間同士だって…一人一人なんだ…手段の為に騙さなきゃいけないこともあるっ……」
「そうか……」
涙ぐむカイジを見て、沢田はそれ以上追及することが出来なかった。

「……何を言っても、もう決心は揺るがないんだろう…?」
「……ああ」
カイジはきっぱりと言い切った。

390 :本心 7/10 (代理投下):2010/02/19(金) 01:43:37 ID:???
「やれやれ…まるでひろの若いときみたいだな……」
「え……“ひろ”……?」
「いやなに…こっちの話だ………」
沢田は苦笑しながら言った。

(若いのは、オッサンの忠告なんか聞きゃしねえんだよな……)
一度こうと決めたら引かない頑固さが、裏の麻雀の世界に身を置きたがっていた若い頃のひろゆきを思い出させた。

「カイジ…。オレはもう止めない。ただ、一言言わせてくれ」
沢田はそう言うと、右手に持っていた警棒を地面に落とした。警棒は、カラカランと軽い音を立てる。
カイジが沢田の次の言葉を待っていると、沢田はカイジに近づいていき、カイジの肩に左手を置く。

「お前も、もう仲間だ。そうだろ…。また島で会うことがあれば、合流しよう。
それまで、死ぬなよ……。」
「沢田さん……」
沢田の微笑みに、カイジは強く頷き、微笑み返した。



不意に目の前が真っ暗になる。
鈍い痛みが体を貫き、息が出来なくなった。
何故、と思う間もなく、カイジの意識は闇へと引き擦り込まれた。



「『…手段の為に騙さなきゃいけないこともある』……って言ったよな……?カイジ……」
自分の方へ倒れ込んできたカイジを受け止めながら、沢田はカイジに話しかける。

391 :本心 8/10 (代理投下):2010/02/19(金) 01:45:45 ID:???
沢田は薄く笑うと、空を見上げた。月に雲がかかり、光が僅かに翳る。
カイジの腹に抉り込ませた右手をゆっくりと引いた。

「今のオレにはこれしか出来ないんでな…。」
娑婆で任侠の世界に身を置いていた時、借金の取立てから逃げる人間を探し出し、引き渡すことがあった。
そいつがヤケになって暴れるのは日常茶飯事。押さえるにしてもうっかり手負いにして働かせられなくなっては元も子もない。
大怪我させないよう鳩尾に一発。沢田からすれば赤子の手を捻るようなものであった。

「俺から見りゃ、零や涯と大して変わらねえよ、お前も……。」
沢田は力の抜けたカイジの体を抱え、地面に落としていた警棒を拾うと部屋の中へと入る。

「朝までゆっくり休んでな。俺の見立てじゃあ、アンタこそ、このゲームに風穴を開ける人間……。
だから、今死なせるワケにはいかねえな……。」

(俺はそういった若者を守ると心に決めた。だから、殴り倒してでも守る……)
目が覚めたら、きっとカイジは激昂し、俺を詰るだろう。
信じたのに裏切られた、と失望するかもしれない。
だがそれでも構わない。この行動によって田中沙織が益々不幸に陥り、カイジが心を痛めたとしても、だ。

零や涯の横にカイジを運び、寝かせる。


「お前がやろうとしていたように、誰かが泥を被んなきゃなんねえんだ、こういうことはな……。」
沢田はそう呟き、玄関先に立つと再び見張りを始めた。

392 :本心 9/10 (代理投下):2010/02/19(金) 01:47:26 ID:???
【E-3/民家/黎明】

【伊藤開司】
 [状態]:気絶 足を負傷 (左足に二箇所、応急処置済) 鳩尾にごく軽い打撲
 [道具]:果物ナイフ 地図
 [所持金]:なし
 [思考]: 田中沙織を探し説得する (最優先)
      仲間を集め、このギャンブルを潰す 森田鉄雄を捜す
      一条、利根川幸雄、兵藤和也、鷲巣巌に警戒
      赤木しげる(19)から聞いた情報を元に、アカギの知り合いを捜し出し、仲間にする
      平井銀二の仲間になるかどうか考える
      下水道(地下道)を探す
※2日後の夜、発電所で利根川と会う予定です。
※アカギのメモから、主催者はD-4のホテルにいるらしいと察しています。
※アカギを、別行動をとる条件で仲間にしました。
※明日の夕方にE-4にて待つ、と平井銀二に言われましたが、合流するかどうか悩んでいます。
※カイジ達は田中沙織に関する情報を交換しました。 その他の人物や、対主催に関する情報は、まだ交換していません。
※参加者名簿、パンフレットは一時的に零に預けてあります。

【工藤涯】
 [状態]:睡眠中 健康 右腕と腹部に刺し傷 左頬、手、他に掠り傷 両腕に打撲、右手の平にやや深い擦り傷 (傷は全て応急処置済み)
 [道具]:鉄バット 野球グローブ(ナイフによる穴あり) 野球ボール 手榴弾×8 石原の首輪 支給品一式×3
 [所持金]:1000万円
 [思考]: 田中沙織を探し、殺人を止める 零と共に対主催として戦う 
※石原の首輪は死亡情報を送信しましたが、機能は停止していません。

393 :本心 10/10 (代理投下):2010/02/19(金) 01:49:00 ID:???
【宇海零】
 [状態]:睡眠中 健康 顔面、後頭部に打撲の軽症 両手に擦り傷
 [道具]:麻雀牌1セット 針金5本 標のメモ帳 不明支給品 0〜1 支給品一式 参加者名簿 島内施設の詳細パンフレット(ショッピングモールフロアガイド、 旅館の館内図、ホテルフロアガイド、バッティングセンター施設案内)
 [所持金]:0円
 [思考]:田中沙織を探し説得する 対主催者の立場をとる人物を探す 涯と共に対主催として戦う 
※標のメモ帳にはゲーム開始時、ホールで標の名前が呼ばれるまでの間に外へ出て行った者の容姿から、
どこに何があるのかという場所の特徴、ゲーム中、出会った人間の思考、D-1灯台のこと、
利根川からカイジへの伝言を託ったことなど、標が市川と合流する直前までの情報が詳細に記載されております。
※カイジから参加者名簿、パンフレットを預かっています。目を通すまで借りていられます。

【沢田】
 [状態]:健康
 [道具]:毒を仕込んだダガーナイフ ※毒はあと一回程度しかもちません 高圧電流機能付き警棒 不明支給品0〜4(確認済み) 支給品一式×2
 [所持金]:2000万円
 [思考]:田中沙織を探し説得する 対主催者の立場をとる人物を探す 主催者に対して激しい怒り 赤松の意志を受け継ぐ 零と涯とカイジを守る
※第三放送まで見張りをし、他の皆を寝かせておくつもりです。

394 :マロン名無しさん:2010/02/19(金) 01:56:40 ID:???
代理投下は以上です。

投下乙です。

沢田さんの仁侠がかっこいい。

カイジはずっと走り続けていたから、
ここで休むのは正解だと思う。

そして、沢田さん、守るものがどんどん増えていく…。

395 :マロン名無しさん:2010/02/19(金) 02:53:27 ID:???
沢田さんかっけー

396 :我執:2010/02/19(金) 17:45:06 ID:???
投下乙でした
原作で天斬ったときの沢田さんを彷彿とさせますね、かっこいい!

397 :396:2010/02/19(金) 17:45:53 ID:???
あ、ごめんなさいこの前代理投下したときの名前消し忘れ

398 :マロン名無しさん:2010/02/20(土) 01:06:51 ID:???
投下乙です
怒涛の新作ラッシュ・・・っ!
嬉しすぎるw

399 :マロン名無しさん:2010/02/20(土) 21:01:47 ID:???
面白すぎて毎日スレチェックしに来てしまう!
福本作品をこうした形で楽しむことができて幸せです
書き手の皆様ありがとうございます!

400 :マロン名無しさん:2010/02/21(日) 01:24:34 ID:???
話が一気に進んでますます楽しみになってきた…!
書き手さん本当に乙です!

401 :マロン名無しさん:2010/02/21(日) 05:14:20 ID:???
銀さんの背景が描かれて、物語が進むと同時に深まりましたね!
森田との合流はいつになるのか…
期待と不安でハラハラしながら見守ってます!

402 :マロン名無しさん:2010/02/21(日) 17:00:18 ID:823nB3B1
銀さん、改めてかっこいいww
死亡フラグが立ってしまいましたが、、、
どうか銀さんが寿命を全うできますように

403 :マロン名無しさん:2010/02/22(月) 00:36:07 ID:???
予約きたっ…!!!!!

404 :マロン名無しさん:2010/02/22(月) 10:08:53 ID:???
カイジが素直に相手を褒めるとこがなんか好きだわ

405 :マロン名無しさん:2010/02/22(月) 15:49:32 ID:???
参加してる赤木は年下のはずなのに、いつの間にか無意識(?)にさん付けしちゃってるひろがなんだか切ない・・・

406 :マロン名無しさん:2010/02/25(木) 00:12:04 ID:???
◆xuebCgBLzA氏の代理投下

『我執』作者です。本スレが携帯ですら規制されていたので、こちらに書き込みます。
まずは、沢山のご感想、ありがとうございました。
みなさんの書き込みを見て半年かかってでも完成させてよかったという達成感を得ました。
そして、プロットを投下してから半年間、作業の遅い私にアドバイスと応援をくださった方々に心から感謝申し上げます。
また、作品を書きたいと思った時があったら、ご助力をお願い致します。
本当にありがとうございました

407 :マロン名無しさん:2010/02/28(日) 19:42:15 ID:???
久々に見にきたら、銀さんの背景話によって、物語が思わぬ方向へ行っていて感動した。
銀さんにしろカイジにしろ黒沢にしろ、
原作ではモヤモヤが残ったままになっている物語の続きが読めるようで嬉しいね。

408 :マロン名無しさん:2010/03/01(月) 07:43:33 ID:???
ここ福本がいるんじゃね?
俺いつもそう思ってる

409 :マロン名無しさん:2010/03/03(水) 19:56:51 ID:???
やっと復帰した…!
良かった…!!

410 :マロン名無しさん:2010/03/04(木) 14:04:27 ID:???
復活したっ!

で、復活したら、ずっと尋ねたいことがあった。


ここの住人は書き手さんのことを普段、どう呼んでいる?

某ロワで話題になっていたから、こっちではって思って…。

411 :マロン名無しさん:2010/03/04(木) 16:17:29 ID:???
>>406を見てみ


412 :マロン名無しさん:2010/03/04(木) 18:20:39 ID:???
復活したっ…!やったっ…!やったっ…!

予約も入ってるし待機っ…!

413 :マロン名無しさん:2010/03/04(木) 22:25:11 ID:???
カイジはやっと優秀で有能で裏切りそうにない仲間に巡り合えたな…! 
それだけで泣ける…

414 :マロン名無しさん:2010/03/04(木) 23:40:12 ID:???
原作での仲間は、裏切られたり、先立たれたり、嫌われたり、散々だったもんな…


415 :マロン名無しさん:2010/03/05(金) 07:51:12 ID:???
先立たれる可能性はこっちでもあるけどな

誰も死んでほしくない…

416 : ◆iL739YR/jk :2010/03/06(土) 10:26:03 ID:???
兵藤和尊を投下します

417 : ◆iL739YR/jk :2010/03/06(土) 10:27:12 ID:???
暗黒の地下王国を照らす巨大な光。それは燃え上がる炎によるものだった。
無論、本物の炎ではない。
田中沙織のチャンネルへと切り替えたときに、それは大画面に映し出された。

バニッ…
    バニッ…!!

「カカカッ……あの女、予想以上に狂気に満ちておる…実にいい…」

歓喜の声を上げて、手を叩く老人―兵藤和尊―はまるでキャンプファイヤを囲む青少年のように、その惨劇を喜んでいた。

「会長…」
至福のときを破る黒服の声に兵藤はあからさまに機嫌を悪くする。
「なんだ…報告はついさっきしたばかりだろうが…」
「それが…先程発生した火災に関することで、スパコンが新たな予想を算出しました。参加者の首輪に関する内容です」
その内容の重要性に気づいた兵藤は表情を一変し、重厚な声を発する。
「…続けろ。但し、簡潔に要点だけ纏めてな…」
「は……一部の参加者の首輪に使用されている電池が短期間の内に機能停止する恐れがあるとのことです」
「なんだと…! どういうことだ…!?」
「…こちらをご覧ください」
スクリーンに火災の様子と別枠で、黒崎がギャラリーへのクレーム処理の為にまとめた首輪の資料より抜粋された電池の項目が映し出される。
「今回の首輪に使用されている“固体高分子形燃料電池”はその内部にある程度の水分を使用しており、発電するにつれてその水分が徐々に失われていきます。
そのときに消費される水分をきちんと計算した上での今回の運用だったのですが…」
「……このショッピングモールの火災か」
「はい。今回、大型火災が発生したことで、高熱となった建物の内部及びその周囲にいた参加者の首輪は予想以上に電池の水分が蒸発し、失われたと考えられます」



418 : ◆iL739YR/jk :2010/03/06(土) 10:29:24 ID:???
「それで…具体的には…?」
「0時30分現在…スパコンの予想では、田中沙織は約18時間。遠藤勇次は約2時間30分後に機能停止すると思われます」
「他の主催陣はこのことを知っているのか…?」
「いえ、こちらのスパコンと同レベルの予測を得られるとは考えにくいと思われます。
予測される時間が経過した後、該当する参加者の首輪が機能停止して始めて気づくものかと……
もし、この予測が実際のものとなった場合、電池切れにより、参加者の現在位置や生体信号の把握が突然出来なくなります。
そのような異常事態となれば、流石に他の主催陣は放っておかないでしょう」
「そうか…そうか……」

確かに異常事態……!
突然、参加者の動向を把握出来なくなれば指揮系統に混乱をきたすのは必然っ……!
予想外の事態に戸惑う主催陣の滑稽な姿が目に浮かぶ……
カードを持つ者故の持たざる者への優越感……圧倒的甘美………!!
(だが…あまりにもカードが『強力』過ぎる……)
確かに、主催陣の足を引っ張り、参加者にとって有利な状況を作ることは目的の1つ。
だが、これはあまりにも異常事態過ぎる……
このまま黙って見過ごせば、このゲーム自体が崩壊しかねない。
かといって、黒崎に真実を伝えれば即刻に遠藤と沙織の首輪は爆破に、消化作業……
参加者の主催への反撃の目はあっさりと潰れる……
いや、下手をしたらこのゲーム自体を一時中断…あるいは中止するかもしれない。
(それは良くない…お客様の為にも…個人的な目的の為にも…)

暫しの間、何かを考えた兵藤は黒服に問いかける。
「参加者の現在位置は、ここのコンピュータならば首輪のGPS無しでも把握出来るな…?」
「は…はい。ここでのみ閲覧可能な監視カメラの映像も利用し、それらを繋ぎ合わせれば…ある程度は……」
「ならば決まりだ…首輪に関する予測は他の主催には一切伝えてはならん…その代わりに……やってもらう仕事がある……カカカッ……!」



419 : ◆iL739YR/jk :2010/03/06(土) 10:33:19 ID:???
兵藤会長の指示…それは情報の捏造…!
もし、スパコンの予測が的中。首輪の機能が停止する参加者が現れた場合……
彼らの情報は、こちらが用意した偽の現在位置と生体信号を送信する。
これによって、他の主催陣は気づかない…ゲームに忍び寄る異常事態に…一切っ……!
火災が治まらなければ、今後も首輪の機能が停止する参加者の数は増え続けるだろう……
だが、それらの情報は全て捏造…隠蔽…このゲームは潰さない……!
そして終盤……もはや中止など不可能、取り返しのつかない時点で一斉に捏造中止…!
突如として大多数の参加者が主催の監視下から消える……!
慌てふためく主催陣…予想外の緊急事態……!!
その後も、客のダイジェストリストにだけはこちらから情報を送り続ければ客も不満はあるまい。
そして、この全てを知り…全てを把握出来るのは自分のみ……


420 : ◆iL739YR/jk :2010/03/06(土) 10:35:10 ID:???
もっとも、ここまで積極的にゲームに介入するからには当然リスクもある。
まず、首輪の機能が停止してしまっている以上、これまでのように盗聴することができなくなっている。
盗聴機能が生きている参加者との会話はともかく、独り言などは簡単には拾えなくなる。
これを他の主催やギャラリーにどうごまかすか……
また、一番の問題は能動的に首輪を爆破出来なくなるということ……!
例えば、首輪の電池が切れた参加者が禁止エリアに近づいても、警告音は鳴らない…
その上、予期せぬ状況で禁止エリアに入りこんだ参加者の首輪を爆破出来ない……!
これがかなりの問題……!
もし、錯乱気味の田中沙織が首輪が電池切れの状態でうっかり禁止エリアに入ったりしたら……?

……捏造したデータとはいえ、表向きには位置情報や生体信号はきちんと受信できているのだから
盗聴器や、起爆装置の故障を疑いこそするも、まさか電池が切れているとは思わないだろう。

それが率直な思い。だが、この考えに甘えて見逃してよいリスクではない。
何か対抗策は考えておくべきであろう。
それでも何より目立つは圧倒的リターン…!
ゲームにおける真実…真の情報を掌握することが出来るのは己のみ……!

(これでこのゲーム…ワシの勝ちは揺るぎ無いものとなる…)

全ては王のみぞ知る…帝王は情報戦を制す…

何人たりとも辿りつけない領域に…ただ王は座す…己の勝利を当然のものと感じて……!


421 :帝域 ◆iL739YR/jk :2010/03/06(土) 10:38:39 ID:???
【D-1/地下王国/深夜】

【兵藤和尊】
 [状態]:健康 興奮状態
 [道具]: ?
 [所持金]: ?
 [思考]:優勝する 黒崎の足を引っ張る 主催者達を引っ掻き回す


※次のようにスパコンの予測が出ました。
何らかの要因で予測が外れることもあれば、今後条件を満たせばさらに該当者が増えることも考えられます。

大型火災が発生したことで、高熱となった建物の内部及びその周囲にいた参加者の首輪は電池の水分が蒸発し、失われた。
それによって、0時30分現在、田中沙織は約18時間。遠藤勇次は約2時間30分後に首輪が機能停止する。



以上で投下を終わります。
題名入れ忘れてましてすみません。

422 :マロン名無しさん:2010/03/06(土) 14:59:45 ID:???
投下乙です!
会長のバニバニきたこれ
炎の映像を見つめて愉悦を浮かべる様子が目に浮かぶようです。

423 :マロン名無しさん:2010/03/06(土) 15:23:59 ID:???
乙です!
電池切れktkr!
今後の展開が気になる!

424 :マロン名無しさん:2010/03/06(土) 17:38:28 ID:???
投下乙です
冒頭のバニで吹いたw
少数派だろうけどw遠藤さん応援してるから電池切れがプラスに働くといいな

425 :マロン名無しさん:2010/03/10(水) 14:49:19 ID:???
バニ…

バニ…

426 :偶然と奇跡の果てに1-1 代理投下:2010/03/12(金) 01:17:37 ID:hBTkg1Te
民家にたどり着いた石田と黒沢は、治を安静にさせ、気休め程度の…頭を冷やすだけ…といった処置を施す。
その後、2回目の定時放送を待ちながら、二人は軽い食事をとっていた。
 
次に何時、こうした休憩が取れるとも限らない。休める時に休まなくては…と、飢えた腹を適当に満たしていく。
 
やがて場違いなクラシックが流れ、必然的に手が止まった。
 
『────以上で放送を終了する。』
 
5分程だろうか…放送が終わり、石田はぱぁっと表情を綻ばせた。
 
良かった…!市川さんも、天さんも…二人とも呼ばれてない。それにカイジ君も…良かった、本当に良かった……!
 
幸い、自身が知り得る人物の名を、その耳が捉えることは無かった。 
ほっ…と胸を撫で下ろし、安堵の表情で止まっていた手を動かす。
しかし対照的に、黒沢の手は止まっていたままであった。
 
「黒沢さん…?」
 
怪訝そうに問いかける石田に、黒沢ははっとして顔を上げる。
 
「…今、赤松…赤松修平って…言わなかったか…?」
 
戸惑いを隠せない様子で顎に手を当て、動揺に瞳を震わす。
その様子を見た石田は瞬時の内に悟り、表情を強張らせた。
 
「…もしかして…知り合い…だったのかい…?」

427 :偶然と奇跡の果てに1-2 代理投下:2010/03/12(金) 01:19:01 ID:???
石田の問いに一瞬目を泳がせ、あぁ…と気の無い返事。
 
本当に…あの赤松修平なのか…?でも…まさか…。
 
「あ…あぁ、いや…でも……有り得ない…」
 そうだ…有り得ない…有り得る筈がない…。
 
要領を得ない受け答えと自己完結。石田はどう返した物かと、困ったようにポリポリと頭を掻いた。
 
「えーと…その、有り得ないって言うのはどう言う事かな…?そもそも、どういった関係の人なんだい…?」
 
その問い掛けに、黒沢は職場の同僚である事やその人柄など、赤松との関係を出来るだけ簡潔に伝える。
その上で、決定付けるように続けた。
 
「だから…有り得ないんだ。…俺の知っている"赤松修平"なら…こんなギャンブルに参加する、理由…動機が無い…!」
 
石田も、確かに…と肯定的な意見を述べた。
 
「…確かに…オレの知り得る帝愛は…借金…それに苦しむ人々に対して、チャンスを与える…そう言った名目で、ギャンブルの場を提供していた筈…」


428 :偶然と奇跡の果てに2-1 代理投下:2010/03/12(金) 01:22:17 ID:???
黒沢はその言葉に、こくりと頷く。事実黒沢がそうなのだ。

赤松と言う人物は少なくとも、黒沢が知る限り借金はしていない。金に困っていると言う線は、限り無く薄いだろう。
更に、赤松の人間性を思えば、仕事を擲ってまでギャンブルに走るとはどうしても考えられなかったのだ。
 
「けど…保証人とか…そっちの可能性は…」
 
言い出し、石田は口ごもる。今は余計な事は言わない方が良かったのでは…と。
 
「…………」
 
重い沈黙が場を包む。
保証人…確かに、この舞台に上がらさせるには充分すぎる理由。
赤松の人柄を考えれば、誰かの代理…と言う線も浮上してくる。
考えれば考えるだけ可能性があり、いやいやまさか…と考え直す。
屠どのつまり埒があかないのだ。
瞳を閉じ、一つの深いため息。
静寂を破ったのは黒沢からだった。
 
「…まずは情報収集だな…今のままじゃ情報が少なすぎる…。取り敢えず今は…治の容態も良くない…次の放送まで交代で仮眠でも取って…それから改めてどうするか考えよう…」
 
「あ…じゃあ、オレが先に見回りに行くよ…2時間経ったら戻ってくるから、それまで十分に体を休めておいてくれ…」 
 
知人が亡くなったかもしれない…そんな黒沢を外に出すのは気が引けた。

石田なりに気を遣い、徐に立ち上がる。
黒沢はその言葉に甘えるしかなかった。
 
「本当は…さっき仮眠を取った俺が行くべきなんだろうが…すまない…」
 
「気にしないでくれ…じゃあ、行ってくるよ」


429 :偶然と奇跡の果てに2-2 代理投下:2010/03/12(金) 01:25:26 ID:???
微笑みと、扉の閉まる音を残し、石田は姿を消す。
一人残された黒沢は、再び思考の海へと沈んだ。
が…長続きはせず、睡魔に意識を明け渡すのも時間の問題であった…。
 
まさか、その赤松が己の為にこの舞台に身を投じたなど、夢の中でも…黒沢が思う筈も無かった。
 
―――――
 
手ぶらでは余りにも不安過ぎた為、ダイナマイトを持っていこうか悩んだ石田は、結局のところ、ライターと一本だけをその手中に忍ばせ、民家を後にした。
 
その直後、石田はある異常に気が付く。
 
…空が一部分だけ妙に明るいのである。
 
良く見ると、それは建物を呑み込んでいる炎。場所は確か、ショッピングモールのあった辺りだと石田は思慮する。
 
しかし、何でまた火事なんか…。
 
その考えに陥った瞬間、石田に電流が走った…!
 
あ…あぁ…!まさかぁ…っ!!

430 :偶然と奇跡の果てに3-1 代理投下:2010/03/12(金) 01:27:20 ID:???
石田の脳裏に浮かんだひとつの可能性…。 
そして次に、己の不注意、迂闊が招いた結果かもしれないと言う疑念が…!!
 
「た…っ田中さんがダイナマイトを拾って…使ったんじゃ……!!」
 
口に出してみて改めて思い知らされる、己の致命的ミス…!。
 
な…なんて取り返しのつかないことを…!! 
誰か死んでしまっただろうか…もしかしたらそれは…カイジ君や天さん、あるいは市川さんかも……!!
 
「う…うぅっ…何で…っ!!あの時一人ででも探しに行っていればっ…!!ぐっ…ぅうっ…!!!」
 
弾かれた様に走り出す石田。考えるよりも先に体が動いていた。
 
近付くに連れてその凄惨さが伺える。
炎の勢いは留まらず、時折爆発音も聞こえてきた。
恐らくそれは、ガスか何かが原因で誘発した爆発だろうが、先入観に支配されている石田には、別の捉え方にしか出来ない。
 
間違いっ…!やっぱりダイナマイトなんだぁ〜…っっ!!
 
ぐしゃぐしゃの顔を何とか前に向け、走る事を良しとしない体躯を意地で動かさせる。
途中何度も転びそうになりながらも、石田は何とかショッピングモールへ辿り着いた。

431 :偶然と奇跡の果てに3-2 代理投下:2010/03/12(金) 01:32:09 ID:???
建物はその全てを紅緋に揺れる炎に身を溶かし、周囲の茂みや木々に自身の燃えカスを撒き散らしている。
黒檀の煙は黙々と吐き出され、漆黒の闇に溶けていく。しかしその勢いは、まだまだ衰えそうにない…。
 
いっそのこと…この中に身を投じてしまおうか…。
 
ダイナマイトを落とし、この火災が発生したと誤解している石田が、そう考えるのも無理は無かった。
 
何故田中沙織から逃げようとしている石田が、このショッピングモールまでやってきたのか?
答は至って単純。
これ以上、カイジ…いや、誰にでも迷惑をかけたく無かったのだ。
その為ならば、田中沙織と心中しても良いとさえ、石田は思っている。
それが石田に出来る精一杯の償い…半ば意地であった。
 
しかし、そんな石田の思いとは裏腹に、ダイナマイトを握る手が震えだす。
無理もない。先程の一件に加え、他の殺戮者がいるかもしれないのだ。
 
多少の例外はあれど人間は…恐怖と云うものには、偉く素直な生き物である。
 
怖い…怖いっ…!!怖くて体が動かない…!
 一時の感情に流されたとは言え、いつ殺されてもおかしくないこの地を、石田は独りで走りきった。今までの石田にとってみれば、これはもう賛辞に値する行動と言えよう。

432 :マロン名無しさん:2010/03/12(金) 01:34:18 ID:???
支援

433 :偶然と奇跡の果てに4-1 代理投下:2010/03/12(金) 01:35:33 ID:???
しかしそれは、言うなれば火事場の馬鹿力に過ぎない。市川を助けた時もそうだったが、惰性を失えばあっさりと崩れ去ってしまう。
問題はその先…惰性を失ってしまった後…。
 
はた…と我に返り、石田は自身の危うさ…余りの心細さに身が震えた。
 
ざわ…ざわ…
 
一人じゃ何もできない…役立たず…!
足を引っ張る事しか能のない…クズめ…! 
ざざぁっ…
 
風に揺れる木々のざわめきと共に、そんな言葉が谺する…。
少なくとも、石田の耳は確実に捉えていた。
 
頭を振り、耳を塞ぐ。しかしそれでも頭に刺さる谺の数は減らない。
堪り兼ねた石田は、よろよろとその場を後にした。
 
「もう…勘弁してくれ…っ!うぅ…ぅっ」
 
年甲斐とか、もうそんな事に構ってられる石田ではなかった…。
ボロボロと涙や鼻水やらを垂れ流し、おぼつかない足取りでどこともつかぬ闇を行く。
 
そしてその闇の先には、石田の目当ての人物が待っている事になる。
恐らく相手は石田の存在に気が付いているのだろう。茂みに隠れ、機を伺っている。
 
腕の中に収まった、イングラムM11をそっと抱きしめながら…。

434 :偶然と奇跡の果てに4-2 代理投下:2010/03/12(金) 01:39:27 ID:???
黒沢が意識を覚醒させた理由は、怪音と微かな地響きによるものだった。
 
「な…なんだぁ!?石田さ…っ!!?」
 
更にもう一発。
ただならぬ気配に、一気に眠気の覚めた黒沢は、部屋の中を見回し石田を探した。
時計を見れば、約束の2時間はとうに過ぎている。
 
「お…おい!石田さん…!?…まさかっ…!!」
 
背筋に冷たいものが走る。
 
何かあったのか…!?くそっ…!!
 
慌てて扉を開け放った黒沢。しかしここで、ピタリと足が止まった。
 
問題が二つある…。
 
一つ目は治。
意識の無い治をこんな所に置いて行ってしまって良いものか…。
かといって、この先に何が待っているか分からない状況。そんな最中を意識のない重傷人を背負っていく訳にも行かない。
 
せめて意識さえ戻っていれば……
いや…待てよ、意識がないってことは…
つまり動かないって事だよな…
じゃあ、見えなくもないか?
死体に…!!
 
切迫していた事も相成って、黒沢はこの閃きに賭ける事にした。
まず、治をそれらしく見える格好で寝かせ、その上に押し入れに入っていた毛布を掛ける。
次に、デイバックから支給品のひとつであった、スプレー缶を取り出した。


435 :マロン名無しさん:2010/03/12(金) 01:49:54 ID:???
支援

436 :マロン名無しさん:2010/03/12(金) 02:06:59 ID:???
支援

437 :偶然と奇跡の果てに5-1 代理投下:2010/03/12(金) 02:12:50 ID:???
使いみちに困っていたが…まさかこんな事に役立つとは…
 
火元に投げ込めば、ちょっとした起爆剤になるかも、と一応取っておいたスプレー缶…基、カラースプレー。
もしこれが黄色や緑であったなら、今回この策は使えなかったであろう。
 
それを上下に良く振り、キャップを開け噴射…!
治自身にはかからないよう、毛布や床、壁などに勢い良く振り撒いていく。
 
そう、これは赤い色。更に特殊なタイプであの独特な刺激臭がしない物であった。
 
一通り散らし終えると、黒沢は血まみれ…否、塗料まみれの治を一見した。
 
我ながらナイス閃き…!どうみても死体…!圧倒的出血量…っ!!
 
確かに横たわる治は、誰が見ても壮絶な最期を遂げた死体にしか見えなかった。
…多少やり過ぎな気もするが…。
ともかく、近くで良く確認しない限りは、陽が上るまで誤魔化す事が出来るだろう。
更に黒沢はデイバックをわざと目立つ場所に置き、"殺人鬼が近くにいるかも"と匂わせておく。
こうしておけば最悪、室内に侵入したとしても長居はしないだろう…と、黒沢は結論付けたのだ。
 
が…どうにもそれが通用しそうにない、支給品が一つ。
残るもう一つの問題がこれであった。
 
石田の残した4本のダイナマイトである。
 
当初は10本あったが、道中ホルダーの不備が原因で5本にまでその数を減らし、恐らく石田が持っていったのだろう、更に一本減っている。

438 :偶然と奇跡の果てに5-2 代理投下:2010/03/12(金) 02:13:47 ID:???
これ以上失う訳にはいかない…。
 
かといって、持っていくのは余りにリスクが高すぎた。
落としてしまっては一貫の終わり…見付け出すのはまず不可能。
最悪の場合、誰かに殺され、このゲームに乗っている者の手に渡る可能性もあるのだ。
 
それだけは…駄目…っ!!
 
とは言え、このままにもしておけない。隠さなければ。
ダイナマイトを手に取り、どうしたものかと頭を悩ませる黒沢。ぐるぐると部屋を見回し、それに見合った隠し場所を探すが、中々思うようにいかない。棚や押し入れでは、心許なかった。
 
台所へと移動した黒沢。
そこの床で、正方形に切り取るように嵌められた、銀色の枠が目に映った。
それは…人一人が出入り出来る程の、小さな穴を塞いでいる蓋…。
 
「そうか…点検口…!!床下収納…っ!!」
 
思わず叫んでしまう黒沢。
確かに、血塗れの遺体がある上に、荷物が詰まったデイバックが堂々と主張している。

439 :偶然と奇跡の果てに6-1 代理投下:2010/03/12(金) 02:14:58 ID:???
普通ならばその発見に満足し、わざわざ危険を冒してまで、部屋の中を詮索する意味は無いだろう。
仮にそうなったとして、棚や押入れならまだしも、床…それも点検口を利用した、床下収納に気を配る者などいる筈がない。
 
まさに打って付け…絶好の隠し場所…!!
 
黒沢は嬉々としてその蓋を開ける。
予想通りそこは、白い仕切りが設けられ、ちょっとした収納スペースになっていた。 
広くはないが、ダイナマイトをホルダーごと隠すには充分なスペース。
 
確かに、完全…完璧と言えた。
普通ならば気が付かない…完全に意中の外。
…黒沢が興奮のあまり口に出さなければ、唯の一人も知る事は無かっただろう…。
 
全ての行程を終わらせ、勢い良く飛び出していく黒沢。
闇夜はそろそろ、明るさを取り戻しつつあった…。
 
――――――
 
田中沙織…。
彼女はある意味、一番の被害者なのかもしれない。
汚すことの無かった両手を血に汚し…
捨てることの無かった情を捨て…
 
無論それは、彼女だけではない。
皆が一様に、この狂った舞台に上がらされ…到底理解出来ぬ悪趣味に、付き合わされているのだ。
この有り様を…狂喜の眼差しで見つめ、どす黒い笑みを浮かべ、観賞しているであろう、主催者の顔が目に浮かぶ。

440 :偶然と奇跡の果てに6-2 代理投下:2010/03/12(金) 02:16:32 ID:???
その悪趣味に、付き合わされた結果がこれだ。
脆く崩れ去った"田中沙織"…
そこに残ったのは"理性"や"情"を取り除いた脱け殻のみ。
 
そんな彼女が、石田を待ち構えていた。
 
「………」
 
ゆらりと姿を表した沙織を石田の視界が捉えると、その瞳が愕然と色を変える。
 
「た…田中さん…」
 
その台詞を絞り出すのが精一杯であった。
月明かりの下で、不気味に佇む沙織。
その手には銃。
その姿は…さながら、鎌を携えし死神の如く…。 
銃口を突き付け、じりじりとその距離を詰めてくる。
 
圧倒的なそのオーラに気圧され、たじろいでしまう石田。その隙を沙織は見逃さなかった。 
 
刹那、石田の脳天に雷で打たれたかのような衝撃が走る…!
 
振り上げられた沙織の腕に気が付くのに、一瞬の遅れが生まれてしまった。
…と言うより銃口を向けられ、撃たれるとは思っていても、殴られるとは思っていなかったのだ。
完全な不意打ちとなった打撃を、こめかみ辺りに諸に受け、石田は為す術無く倒れ込む。
眼鏡が地に転がり、レンズがその使命を終えた。

441 :マロン名無しさん:2010/03/12(金) 02:18:50 ID:???
支援んんんん

442 :偶然と奇跡の果てに7-1 代理投下:2010/03/12(金) 02:20:12 ID:???
駄目だぁ…オレはもう……
…ここで終わり…もう終わりだ…
 
全てを諦めたように、倒れ込んだまま瞳を閉じる石田。
 
やっぱり…オレには…
 
 
─その時
  
『諦めるな…!最後の最期までっ…!』
 
…カイジ…君?
 
『生き残りましょう…!見せてやるんです…矜恃を…!!』
 
…治君っ…!!
 
そうだ…オレは…
ここで諦めてどうするんだ…!まだ…まだ終われない…!!
 
頭に響いた声に、光を取り戻した石田は考えを巡らせる。
 
そうだ、考えろ…!!
…オレを撃たなかった理由…!!これだっ…突破口…!!
何か…何かあったんだ…
 
実はこの時、沙織は引き金を引いていた。しかし、どう言う訳か、弾が撃ち出されなかったのだ。
ジャム…ジャミングと言われる、ごく稀に起きる現象。
所謂玉詰まりなのだが、そんな現象を沙織が知る筈もない。ただの弾切れだと思ったのだが、マガジンを替える間もなかった為、仕方無しに殴ったのだ。
 
が、石田はそんな事とは露知らず…。

443 :偶然と奇跡の果てに7-2 代理投下:2010/03/12(金) 02:21:12 ID:???
戸惑い…きっと躊躇したんだっ…!
 
圧倒的思い違い…。しかし、石田は止まらない。
 
きっと…襲われたんだ…!有賀の様な…酷い人間にっ…!!
きっと…オレなんかには…想像も出来ないような事を…っ!!
だから…皆、敵だと思って…くうっ…!
 
目頭に熱いものが込み上げ、それは耐えきれず、ボロボロと滴となって流れ落ちる。月明かりに照らし出された沙織を見れば、何かあった事など想像に容易かった。 
 
助けたい…!これ以上…誰かを襲わせたくない…っ!!
 
その思いはきっと、自身をも救う鍵になると信じ…口を開く。
 
「君はこんな事をしちゃいけないっ…!躍らされてはダメなんだっっ…!!」
 
両腕を使い、上腿を起こしつつ沙織にその視線を向ける。沙織は咄嗟の事に、銃を振り上げた。
 
「聞いてくれ…!君がこんな目に遭ったのは、他でもない…。こんな滅茶苦茶な舞台を演じた主催者なんだ…!!ぐっ…」
 
鈍い音を伴い、石田の左肩に衝撃が伝わる。なんとかそれに堪えると、逆にその銃口を空いていた右手で、がっしりと握り締めた。
 
「オレはっ…君を傷付けるつもりは無いんだっ…!!頼むっ……話を聞いてくれっ…!!」 
 
しかし沙織は、パニックでも起こしたかのようにデイバックで殴り付け、掴まれた銃を取り戻そうと躍起になっている。

444 :偶然と奇跡の果てに8-1 代理投下:2010/03/12(金) 02:24:55 ID:???
それでも石田は、思いを伝えるべく何度も声を張上げた。
 
彼女を救う為…
戦友‐とも‐との約束を守る為…
かつての戦友ともう一度出会う為…
そして自身が助かる為に…!
諦める訳にはいかなかった。
 
しかし現状がそれを許さない…。
自身の非情なまでの無力さと、届かない思い。
そのジレンマが形となって石田の頬を伝う…。
 
「頼む…頼むよ…話を…」
 
一瞬の静寂、そして…
 
え…?
 
石田は我が目を疑った…。
そう、涙を流していていたのは、石田だけでは無かったのだ。
それが、どう言う意味を持つ涙なのかは分からない。
もしかしたら銃を取られ、駄々を捏ねる子供の様に涙いていたのかもしれない。
しかし理由がどうあれ、彼女が泣いている事実に変わりはないのだ。
だから…
 
だから石田は…
 
沙織はこの時、訳が分からなかった。
仮にも自分を殺そうとしていた相手だと言うのに、何故涙を流しているのか…。
 
何…?何で泣くのよ…

445 :偶然と奇跡の果てに8-2 代理投下:2010/03/12(金) 02:25:43 ID:???
ほんの少しだけ、冷静さを取り戻した沙織。
そう言えば…と、沙織はこれが始めてでは無いことを思い出す。
 
前にも…いたっけ…傷付けたのに…
諦めず…説得してくれた人…
 
不意に、涙が溢れた。
 
私…殺し…私が…コロシタ…
 
沙織の心が、またしても死神の鎌に千切られそうになった…その時。
 
何かが…沙織を引き留めた。
突然の出来事に思考が停止する。
けれども…伝わるものがあった。
 
沙織には、暖か過ぎる程の温もり…。
人の情…慈悲…暖かさ…
そう言った目に見えぬ物が、沙織を包み込んでいた。そして理解する。
 
抱き締められていると言う事に…。

446 :偶然と奇跡の果てに8-3 代理投下:2010/03/12(金) 02:26:45 ID:???
石田は他に、何も思い浮かばなかったのだ…。
決して卑猥な感情から来る行為ではない。 
ただ、子を持つ親として…人として…ただ衝動的に、その行動を取ったに過ぎない。
それは、カイジや赤松とはまた違った意思の伝え方…。石田だからこそ、出来たのかもしれない。
 
腕の中にあった文化の結晶が音を立てて地に落ちる。
一瞬の戸惑いの静止が、この音により沙織を再生させた。
次に沙織を襲うのは圧倒的な拒否感…拒絶!
自信でも驚く程に、心が人の優しさに触れるのを拒んでいた。
思考を支配するのはただ一つ。
 
遅いのよ…もう遅いの…
殺し…た…コロシタ…
私が…

447 :マロン名無しさん:2010/03/12(金) 02:33:06 ID:???
支援

448 :マロン名無しさん:2010/03/12(金) 02:39:52 ID:???
代理投下をしていた者です。
さるさんを喰らってしまったため(今は携帯からです)、
どなたか代理投下の引き継ぎをお願い致します。

449 :代理2:2010/03/12(金) 02:45:59 ID:???
 
「あ…あぁぁっっ…!!うぁぁああっっ――――!!!!」
 
大気を裂く奇声と共に、激しい抵抗が石田を貫く。
離れようともがく沙織だが、石田の拘束が拳固なモノだと理解すると、今度は背中に爪を立てた。
割れていた爪から血が滲もうとも、抵抗が止む気配はない。
石田も、声をかけようとはしなかった。
 
言葉が駄目なら…態度で示す…!!
 
ただ黙って、強く…それでいて優しく沙織を包み込む。
背中の皮膚が裂けようとも、腕に爪が食い込もうとも…決して放さない。
背中をまるで子供のそれにするように擦り、沙織が落ち着くのをじっと待つ…。
気付けば石田も、沙織に負けず劣らずボロボロになっていた。
 
もう…嫌…
私なんかに…なんの価値があるの…?
何で…皆っ…
私っ…人を…
 
「人を…殺したのよっ…!!…取り返しの…つかない事っ…うぅぅっ…うぁぁぁあああっっっ!!!!」
 
最後の一文は、咆哮となって沙織の口から発せられた。
だらりと腕を下げ、観念したかのように項垂れる。
石田は、思ったほど衝撃は受けなかった。寧ろ、ああ…そう言うことか、と凶行に及んだ原因に合点が行くのだった。
 
「どうして…私なんかに…」
 
石田の拘束が弛み、沙織はその場にがくりと膝を付いた。
涙が幾重にも流れ落ちる。
そして、間髪入れずに石田の叫びが飛ばされた。

450 :代理2:2010/03/12(金) 02:47:26 ID:???
 
「"私なんか"なんて言っちゃいけない…!!誰だって…死んでほしくないし…殺してほしくもないんだっ…!!皆…皆、人間なんだからっ…!!」
 
石田も負けじと涙を流す。安堵による物なのか、憤りからなのかは分からない。それでも何とか言葉を紡ぎ、自身の思いを訴えた。
 
「…確かに、人を殺すって言うのは…良くない事だと思うよ…」
 
沙織は聞きたくない…と言った様子で耳を塞ごうとする。しかし、しゃがみこんだ石田がその瞳を捉えて肩を掴み、それを許さなかった。
 
「聞いてくれっ…!確かに、許されない…でも…っ!!逃げちゃ駄目なんだ…」
 
沙織は弾かれたように顔を上げる。
 
「向き合って…ちゃんと受け入れるんだ…!!今は…辛いと思う。でも…今の君なら出来るっ…!!涙を流せるんだから……!
遅くなんか無い…っ!大事なのは…この後…」
 
沙織の脳裏に、赤松やカイジの顔が甦る。そして…
 
「オレも背負う…っ!!背負うから…そんなに自分を責めないでくれ…」
 
その言葉が決定的であった。

451 :代理2:2010/03/12(金) 02:48:36 ID:???
「うわぁぁぁああっ…!!」
 
沙織はもう、泣くことしか出来なかった。 
後悔…圧倒的に押し寄せる後悔の念。
何故もっと早くに…人の言葉に耳を傾けられなかったのか…。
立ち直る切欠は幾つも有った筈なのだ。
そして…自身の犯した業の重さに、改めて押し潰されそうになる。
 
「…私…っ…もう…何をしたら…」
 
「…償い…じゃないかな…そして、罰も…」
 
瞳を閉じ、冷たくはないが静かな響きで石田は続けた。
 
「それは…誰も殺さず、自分が生き残る事…。君がどう言う経緯で…その、殺めてしまったかは…聞かないけど…その人の分も生きて…何か目的があって行動していた人だったなら、その意志を継ぐ事。出来ないじゃ駄目…必ず…やり遂げるんだ…!」
 
それは即ち、有賀はともかく、赤松の意志…対主催者と言う立場を取ること。
そして、例え殺されそうになっても、相手を殺さず…且つ、自分が生きなければならない。
 
それが、どんなに険しい道だとしても、進まなければならないのだ。
確かに、沙織にとっては償いであり、罰である。
その言葉を噛み締めるように瞳を閉じ、天を仰いだ。
 
「…ごめんなさい…」
そして
「ありがとう…」

452 :代理2:2010/03/12(金) 02:50:08 ID:???
 
誰に言うでも無く、掠れた声で…それでも確りと呟いた。
石田の顔がみるみる綻び、腰が抜けたように地面に寝転ぶ。 
 
「よ…良かった…本当に…!」
 
大きく息を吸い込み、大層な声と共に吐き出す。
石田の思いは通じたのだ…!
それは、奇跡でも何でもない。石田の信念…誠意…そう言った目には見えない物が、実を結んだ結果である…!
 
「良かった…本当に…」
 
石田は生き延び…沙織は自我を取り戻す。そう、全てが上手く行く筈だった…。
 
しかし、沙織を掴み損ねた死神の腕は、まだ諦めてはいない…。
 
一息入れた石田がそれに気が付くのに、そう時間はかからなかった。
上腿を起こした視線の先に、ぼんやりと映るのは…。
 
…ダイナマイト?
 
眼鏡の無い石田には、はっきりとは分からなかった。しかし、形状は似ている。
自身の持ってきたダイナマイトは、ポケットに収まっている筈。
では、一体…?
 
「あっ…ああっ…!!」
 
弾かれたように、本来の目的を思い出す。それとほぼ同時に、石田らの背後で何かが炸裂した!。
 
沙織には、何が起きているのか全く、理解出来ていない。
しかし石田は違った。
一瞬にして悟る…!

453 :代理2:2010/03/12(金) 02:50:58 ID:???
ショッピングモールの火災が、衰える所か、新たな力を得てしまった事に…!!
 
「ま…まずいっ…!田中さんっ…!!ダイナマイト…ダイナマイトは…」
 
慌てて沙織の肩に手を置き、揺さぶるように、詰め寄る石田。しかし、沙織には見当もつかない。当然である。
突然の事に、ただ顔を左右に振るだけ。
 
「えぇぇと…あ…いや…と…兎に角っ!早くここから離れないと…っ!!」
 
見れば二人のいる、すぐ近くまで火の手が迫ってきている。更に、何が生んだ偶然なのか、火元に面するようにダイナマイトが落とされているのだ。
例えば、その火がダイナマイトに引火してしまう…果たして可能性は0だろうか…?
 
否…それは、現実のものとなってしまう…。
 
石田が、先程見付けた、ダイナマイトを拾おうとした時…。
まるで吸い寄せられるかのように、火の粉が…ダイナマイトの、その上に落ちる瞬間を…。
 
「まずいっ…!!」
 
咄嗟に沙織を抱え、ダイナマイトに対し、自身が盾になるよう、庇う石田。
炸裂はそれと同時に引き起こされた…。
 
黒沢の聞いた怪音の正体とは…これだったのだ。
 

454 :代理2:2010/03/12(金) 02:56:45 ID:???
二人は、呆気なく吹き飛ばされ、意識を飛ばす。
爆風と、地を抉った石やら土やらが、重力に逆らえずバラバラと降り落ち、それを諸に受けた沙織は、意識を取り戻した。
幸い、目立った外傷はない。頭が少しふらついているだけである。
 
しかし…
 
石田はそれだけでは済まなかった…。
 
「早く…にげ…るんだ…」
 
耳に届いた声を頼りに、石田の姿を探す沙織。立ち込める煙が、爆発の威力を物語っている。
 
「………っ!!」
 
ようやく見付けた目当ての人物は…背中に、まるで獣に喰い千切られた様な、抉れが生じていた…。
 
「…逃げろっ…はや…く」
 
思えば酷く、薄い確率…それこそ偶然が生んだ奇跡に等しい。
何者かが用意したかのように…偶然に偶然が重なってしまった。
一つ目はダイナマイトを落とした位置。
二つ目はそれに面した建物での火災。
そして最後に、火の粉が落ちていった場所。
 
…確かに可能性は0では無かった…。
しかし、助かる確率の方が、圧倒的に高かった筈だ。
 
沙織はもう、どうして良いのか分からない。
どうみても助からないのだ…。
医療の現場に携わっていた者だからこそ、余計に思い知らされる…。
思考が付いて行がず、呆然と立ち尽くした。

455 :代理2:2010/03/12(金) 03:01:14 ID:???
「早く…逃げて…くれ…」
 
最期の力を振り絞り、石田は沙織の足を力強く掴む。
はっとしたように石田を捉える沙織。
 
「君は…生き…て、償う…だろ…?」 
 
途切れ途切れの声に、精一杯の笑顔を見せて、沙織を促す。
 
「……っ」
 
悲痛に顔を歪め、返事の代わりに一滴の涙を落とすと、沙織はその場を後にした。
 
けれども、その足取りは徐々に重くなる。
 
「私は…もう、逃げちゃ…」
 
 
走り去る沙織を見届けて、石田はふっと、瞳を閉じた。
 
そうだ…早く…早く逃げるんだ……
君の様な…若い子は…死んではいけない… 
死ぬのは…オレの役目…
あぁ…振り返らないでくれ…
ただ、前だけを見て…進んでくれ…
君は…見ては…いけない…
 
カイジ…君…
 
結局君には…逢えなかった……
それでも…少しは…役に立たせてくれ…

456 :代理2:2010/03/12(金) 03:02:55 ID:???
朦朧とする意識の中、石田はライターを取り出し、その火打を震える手で擦った。
そして自身の持ってきていた、ダイナマイトに近付ける。
…少しでも、拾われるダイナマイトを減らそうとしたの…。
 
カイジ君……君に救って貰った命…
出来ればもう少し…役に立たせたかったなぁ…
 
でも…君なら…
 
やって…くれる…だろう?
 
石田は閉じた瞳の奥で、今まで出会ってきた人々を、走馬灯の様に思い出す。
そして…
 
「皆…あとは…頼ん…だよ……」
 
徐々に失われていく指の力に、ライターは火花を散らすばかり。
それでも、最期の最後に…火は点った。
 
風が止み…一重の涙が流れ落ち…闇に溶ける…。
 
 
沙織は、石田の言葉を思い出していた。
 
「自分も生きて…誰も殺さない…」

457 :代理2:2010/03/12(金) 03:03:51 ID:???
 
つまりそれは、沙織の中では見殺しも駄目だと言う事…。
止まってしまった両足。
少しの静止の後、沙織は振り返る。
その直後…。
 
大気が震え、鼓膜を揺さぶる。
その瞳に、閃光が走った。
 
─その瞬間を見届けたのは、沙織だけである。
少しの距離と、薄闇の中ではあったが…。彼女はその瞳に焼き付けた。
 
─石田の矜恃…意地…後悔…覚悟…それらの思いを受け取ったのは石田の首輪である…。
 
突然の発破。それは先程まで、石田と沙織がいた場所…。
 
「…違う…違う場所よ…」
 
だが、そんな淡い期待は、この距離にまで吹き飛んできた首輪により、脆くも崩れ去った。
 
「嘘よ…そんな……」

458 :代理2:2010/03/12(金) 03:04:50 ID:???
血や肉片がこびりついた首輪…。
だが目立った損傷は無い。
 
あの爆発の中…そしてこの距離を飛んできた衝撃を、無傷でやり過ごしたのだ。
…石田が最期の最後に起こした…奇跡なのかもしれない。
 
ぺたりとその場に崩れ、動けなくなった
沙織。
足元に転がるそれを、虚ろな瞳で見詰める。
 
また…私の…せい…?
 
彼女はもう…今までとは違う意味で、壊れてしまったのかもしれない…。
 
全ての思考が停止し、意識の大海を…寄るべ無く…ただ浮かんでいる。
意識はあれど、気絶している…そう言えば近い。
 
 
ぽたぽたと、ただ涙が流れた…。
 
声は出ない…その代わりに流れた…涙が。 
 
何故泣いている…?分からない。
 
 
何故ここにいる…?分からない

459 :マロン名無しさん:2010/03/12(金) 03:10:18 ID:???
支援

460 :代理2:2010/03/12(金) 03:12:25 ID:???
 
ナゼ…私は生きてイル…?
 
わからナイ…
 
ワカラナイ…
 
 
沙織は流し続ける。
この後も…この先も…虚空の闇を、意識の中を…ただ朧気に、さ迷いながら…。
 
もの言わぬ、無機質の白銀の首輪は、文句も言わずに、沙織の涙を受け止める。
白んできた闇の中では、月明かりも陽光も、沙織を照らし出してはくれない。
 
 
【C-5/民家付近/黎明】

【黒沢】
[状態]:健康 やや精神消耗 軽い疲労
[道具]:不明支給品0〜3 支給品一式×2 金属のシャベル 小型ラジカセ 特殊カラースプレー(赤)
[所持金]:2000万円
[思考]:カイジ君を探す 美心のメッセージをカイジ君に伝える 治を気遣う 沙織から身を隠す 情報を集める 石田を探す 音の原因を探る
※メッセージは最初の部分しか聴いてません。
※田中沙織を危険人物と認識しました。
※デイバック×3と石田のダイナマイト4本が【C-4/民家】に放置されています
※爆発の原因や、詳しい状況はまだわかっていません。


461 :代理2:2010/03/12(金) 03:13:14 ID:???
【C-4/民家/黎明】

【治】
[状態]:気絶(昏睡状態) 後頭部の打撲による軽傷、強い吐き気・頭痛・目眩
[道具]:
[所持金]:0円
[思考]:アカギ・殺し合いに乗っていない者を探す ゲームの解れを探す
※黒沢の手により、死体のようにされています。近くで良く確認しない限り、陽が上るまでは誤魔化すことが出来ます。

【D-6/茂み/黎明】

【田中沙織】
 [状態]:精神崩壊 重度の精神消耗 肩に軽い打撲、擦り傷 腹部に打撲 右腕に軽い切傷 背中に軽い打撲
 [道具]:支給品一式×3(ペンのみ1つ) 30発マガジン×3 マガジン防弾ヘルメット 参加者名簿 ボウガン ボウガンの矢(残り6本) 手榴弾×1 首輪
 [所持金]:1億200万円
 [思考]:絶望 武器が欲しい 死にたくない 一条、利根川幸雄、兵藤和也、鷲巣巌に警戒 カイジから逃れる 涯、赤松、その二人と合流した人物(確認できず)に警戒 黒沢に警戒
※標の首を確認したことから、この島には有賀のような殺人鬼がいると警戒しています。
※サブマシンガンウージー(弾切れ)、三好の支給品である、グレネードランチャー ゴム弾×8 木刀 支給品一式、有賀が残した不明支給品×6がD-5の別荘に放置されております。
※イングラムM11は石田の側にありますが、爆発に巻き込まれて使用できない可能性があります。
※石田の死により、現在全ての思考が停止しています。当分はその場から動けません。
※爆発の原因や、詳しい状況はわかっていません。

462 :代理2:2010/03/12(金) 03:15:17 ID:???
 
 
※B-6,C-6,D-6のどこかにダイナマイトが落ちています(残り4本)
※石田の荷物は【C-4/民家】に放置されています。
※この火災により、他のダイナマイトが暴発する危険性があります。
※ショッピングモールの火災は、C-6,D-6まで燃え広がっています。この他にも燃え広がる可能性があります。
※石田の死体の側にイングラムM11がありますが、爆発に巻き込まれ使用できない可能性があります。
※石田の死体は原型を留めていません。
※石田の首輪はほぼ無傷ですが、システムに何らかの損傷がある可能性があります。
 
【石田光司/死亡】
【残り24人】

*************

×…少しでも拾われるダイナマイトを減らそうとしたの…。
○少しでも、拾われるダイナマイトを減らそうとしたのだ…。

脱字訂正せず投下してしまいました、すいません。

463 :マロン名無しさん:2010/03/12(金) 03:21:35 ID:???
;;

464 :マロン名無しさん:2010/03/12(金) 03:21:57 ID:???
代理投下終了です。

投下乙です。
石田さんの思いが真摯に伝わってきました。立派な最期だった。
沙織がさらに壊れていく…
人を殺さないと決めたことによって、死神の手から逃れることが出来るだろうか?

黒沢が治を死体に偽装したのは、奇抜なアイディアだなと感心した。
木の葉は森の中に隠せ状態。
ただ、思わぬフラグが立ってしまったような気も…


465 :マロン名無しさん:2010/03/12(金) 12:22:52 ID:???
投下乙です!

石田さん・・・;
治を死体のように見せるシーンは不覚にもちょっとシュールだと思っちゃいましたw

466 :マロン名無しさん:2010/03/13(土) 07:49:06 ID:???
石田さん、お疲れ様です。
そして、沙織はまた、死神パワーを発揮しましたか。
ところで、第一回放送後から退場した方は全員、死に際に女性が絡んでいるんですよね。

死神というか死女神…。

467 :マロン名無しさん:2010/03/13(土) 21:18:21 ID:???
乙!
石田さんの最期にはいつも泣かされる…

468 :マロン名無しさん:2010/03/14(日) 09:01:45 ID:???
今度こそ沙織は立ち直れるんだろうか
それにしても女性キャラはろくな目にあわないな

469 :マロン名無しさん:2010/03/17(水) 22:35:24 ID:???
沙織がかわいそう

いいぞもっとやれ

470 :マロン名無しさん:2010/03/21(日) 12:13:43 ID:???
予約キタ━━(。A。)━━ッ!!!

471 :マロン名無しさん:2010/03/22(月) 21:21:36 ID:???
また予約来てる!wktk

472 :強運10/1:2010/03/22(月) 22:08:01 ID:???

仲根がメモを読み、北へ向かって走り出すのを見届けた後、森田は隠れていた茂みから這い出した。
「なんとか信じてくれたようだな…」

森田は、仲根の走っていった方角へと思いを馳せ、腕時計に目をやる。
一刻も早く銀二と合流したい。だが…
「確か隣のエリアに一つ、死体があったな…」

刻一刻と差し迫る時間、6時間以内に首輪を6つ集めるという約束。
本当は先に銀さんを探したいところだ。だが、首輪集めが何よりも最優先だ。
せっかく第二放送前までの、死体のある場所の情報を握っているのに、
首輪を集めている他の参加者に先に奪われては本末転倒である。
それに、今はもう島の情報を掴むことが出来ない。フロッピーは自ら壊してしまった。

(…早計だったか?…いや、機械に疎い俺が持っていてもまごつくだけだし、
フロッピーだけでは動かないし、宝の持ち腐れだ。
それに、壊してしまえば他の参加者に奪われることを恐れる必要もない。)
それに、あれは己を奮い立たせるのに必要なことだった、と森田は自分に言い聞かせる。

遠藤にフロッピーの中身だけすでに奪われていたことなど、森田には知る由もない。

「…とりあえず、銀さんがいたはずのF-3、バッティングセンターに向かいながら、死体も捜す方向でいくか…。」
中途半端な決心ではあるが、今それ以上の名案も思いつかない。

473 :マロン名無しさん:2010/03/22(月) 22:14:37 ID:???
支援っ!

474 :強運10/2 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/22(月) 22:15:05 ID:???

森田がF-5に向かうと、路上であっさり船井の死体を見つけた。
まだ他の参加者に首輪を奪われてはいないのを見て、胸を撫で下ろす。
死体を見てホッとするのも変な話だと思いながら、森田は船井の死体を両脇から抱え上げ、木陰まで運んでいった。
作業にどれだけ時間がかかるかわからない。
作業に集中しすぎて、他の参加者に狙い撃ちされる等のヘマをしないようにと考えての行動であった。

ナイフで首輪を取ろうと試みるが、どうにも上手くいかない。
薄いナイフの刃先で頑丈な首輪を切ろうとする行為自体、無理があろうというものである。
最初は首輪の輪の部分を切ろうとして、滑ってさんざん死体の首を刺してしまった。
血だらけになるし、死体を傷つけるのは気分がいいもんじゃない。

次は死体の頭を起こし、首輪の金具が地面と垂直になるよう支え、
金具の噛みあっている部分に上から刃先をめり込ませようとする。
だが、金具はびくともしない。

「くそっ…!時間がないってのに…!」
森田は舌打ちをすると、いったん死体を地面に下ろして休憩をとった。

「どうしろってんだ…!」
こんな脆弱な刃物一つ寄越しただけで、任務を押し付けた黒崎に対して苛立ちを覚える。
…ふと、死体に目をやった。雑に地面に置いたせいで、こちらに延髄をさらす形でうつ伏せに倒れている。

「………………………………」
森田は、ふと肩膝を立て、死体をうつ伏せのまま持ち上げ、
自分の膝に死体の腹が当たる様に、前屈みの状態にして乗せた。
死体の頭頂部は地面についているので、楽に固定できる。
そうしておいて首輪の下部分を上に向けた状態で、先程のように首輪の結合部の隙間に刃先を突き立てようとした。

475 :強運10/3:2010/03/22(月) 22:17:32 ID:???

死体の頭部が固定しやすいおかげで、思い切り力を込めることができた。
僅かな隙間に刃の先端を噛ませると、メリ、と音を立てて隙間が開いた。
そのまま、てこの要領で外側へとこじってやると、「バキッ」と小気味良い音とともに驚くほどあっさり、首輪が外れた。

「おおっ……!」
森田は思わず声を漏らした。
首輪が外れたことに対する感動だけではない。

(……これ、生きてる人間の首輪を外すときにも使えるんじゃないか…?
上から押すとき、首輪に圧迫されて喉が苦しくなったり、頭が地面に擦れたりするだろうが……。
まあ、首輪が一時的にでも無力化してなきゃ、単なる絵空事だ。
でないと外れるより先に首輪が爆発するだろうし、そんな危険な…)

………ピッ

「え?」

森田がとっさに首輪を放り投げるのと、首輪が爆発するのはほぼ同時だった。

ボシュッ!!
首輪は空中で火炎と煙を巻き上げると、一瞬で燃え尽きた。

「………あ、危ねえっ……!」
気づくのが一瞬でも遅ければ森田の腕は吹っ飛ばされていた。森田は恐る恐る、地面に落ちた首輪を見つめた。
首輪は黒コゲになり、爆弾が詰まっていたと思われる箇所には穴が開いていた。

476 :強運10/4:2010/03/22(月) 22:21:17 ID:???

持ち主が死んだとしても首輪の機能は停止する訳ではない。首輪が爆発済みでもない限り。
ゆえにこうなるのは自明の理であった。
本来なら、森田が首輪を外そうと悪戦苦闘している時点で爆発していてもおかしくはない。
なぜそうならなかったか?黒崎が渡した小型ナイフが、絶縁体を使った特殊ナイフだったからである。

本来、首輪の電池が切れたり、発信が途切れるようなことでもない限り、首輪を外すことは出来ないように設計されている。
無理に外そうとして、金具をこじ空けようとすれば、金具の中に仕込まれているスイッチが入り、首輪が爆発するようになっている。
主催者が、首輪から逃れたいと考えている参加者達に対してとっている防衛策である。
防衛策がまともに機能していれば「首輪の回収」に関して森田を使うこともなかったのである。
………死体の首をちょん切ったり、頭部を潰して首輪を外したり、首輪をわざと爆発させて回収するような猛者が現れなければ。

先ほど森田は絶縁体のナイフを使ったため作業中には爆発しなかったのだが、
外した直後、まだ微弱な電流が流れている状態でうっかり金具の一部分を触れ合わせてしまったため爆発が起きた。
村岡が首輪を死体から奪ったときは、金具に衝撃を与えたときに、たまたま運良くスイッチそのものが先に内部で壊れたと推測される。
そのときに爆発せず、まだ首輪の機能が生きているのはあまり良い状況とは言えないのだが…。

「………………………。」
森田にその辺りの首輪の構造など察しようもない。
ただ、首輪を取るのが命懸けだということと、すばやく取れば作業中に首輪が爆発することはないのだろう、と結論づけた。
そして、生きている人間には応用しないほうがいい、ということも。

(危険だとは言っても、やらないわけにもいかねえしな…!)
煤けた首輪をポケットに入れ、森田はその場で地図を広げた。

477 :マロン名無しさん:2010/03/22(月) 22:21:53 ID:???
支援!

478 :強運10/5:2010/03/22(月) 22:24:48 ID:???

「さて…隣のE-5…病院前にも二つ、死体があるはずだ…」
森田は自分のメモを見返し、顔を歪ませる。

神威。

「こんな所でもまた、殺し合いを繰り返して、挙句には相打ちか…。」
忘れようもない名前。森田が裏社会から引退を決心するに至った事件の関係者である。
あの夜の事件が脳裏によみがえる。精神を圧迫させる暗闇、それ以上に寒気が走る人間の悪意、憎悪。
森田は首を振り、思いを断ち切ろうとした。感傷に浸っている時間はない。

「…こっちにも寄っていくか…。F-3へ行くにはさらに遠回りになるが、G-4が禁止エリアになってしまったから迂回するのは同じ…」
森田が心を決めかけた、その時である。

ドドォーーーーーーーーンッ………

まさに今向かおうとしていた方角から、大きな爆発音。
(……何だっ…!?)
首輪の爆発よりももっと大きい、破壊音、地響きが周囲に木霊する。
胸騒ぎがする。ここからでは暗さもあって何が起こっているのかまでは見えない。
木霊が止み、静けさを取り戻したかのように見えたが、静寂を破って軽い発砲音が響く。

(銃声……。病院付近で何かが起きてる………!!)
森田は立ち上がると、急いで歩き出した。E-5の病院の方ではなく、F-4、バッティングセンターへの近道の方である。

(ここにいるのは危険だ。病院付近から来る参加者と鉢合わせするかもしれない…!)
しかも相手は銃器を持っている可能性が高い。ナイフのみでは応戦できない。森田の判断は早かった。
少しでも早く遠ざかるため、商店街の入り口が見えてきた辺りから、あえて草むらでなく走りやすい真っ直ぐな路上に出て、西へと走った。

479 :強運10/6:2010/03/22(月) 22:28:24 ID:???

そして、これまでの森田の行動が重なり重なり、その結果、銀二との再開を果たすことが出来たのである。



………AM1:00頃、病院内を移動する光あり。明かりのついた部屋がひとつ。

銀二は短くメモを書き、ペンを置いた。
(人がいる内はまだ行動すべきではないな…。
ならば、先に港へ行くか…?……どうしようか………)

銀二は再び窓の外へ目をやった。
そのとき、視界に僅かに黒い影が過ぎる。

一瞬、我が目を疑った。
今、すぐ外の路地を横切って行ったのは、己の願望が生み出した幻覚ではないのかと。
だが、視界に一瞬移ったその影…。長髪を後ろに纏めた特徴的な髪型の男。

幻覚なのかどうか、確かめてみる価値がある。
銀二は音を立てぬよう室内を横切ると、慎重に扉を開けた。
路地を駆ける男の背中が遠目に見える。見間違いようもない。

「森田っ…!」
周囲を警戒して、だいぶ絞った声で呼んだのだが、その男の耳には届いたようである。

森田は振り返り、呆然としたままその場に立ち尽くした。
「銀さ……………」

480 :強運10/7:2010/03/22(月) 22:31:03 ID:???

銀二は早足で、突っ立ったままの森田の傍まで歩き、肩に手を置いた。
「銀さん、俺……」
「話は後だ……ともかくこっちへ来い、人に見られる」

腕を掴み、森田を引きずっていく。
潜んでいた民家に戻り、寝ている原田を指して仲間であることを示し、出来る限り音を立てないようにと森田に忠告する。

「銀さん、無事で良かった」
森田が緊張の面持ちのまま、小声で銀二に話しかける。銀二はようやく相好を崩し、頷き返す。
「お互い、悪運だけは強いらしいぜ」
「でも、困った事態になりました。俺の持ってるネタが、銀さんの悪運を奪っちまうかもしれません…。」
「何だそりゃ…?……まぁ、それもおそらくお互い様だろうな。……で、ネタってのは」
「ええ、実は………」

「ん……何や……誰と話しとるんや………?」
二人が声のしたほうを振り向くと、原田が体を起こそうとしていた。

「ああ…睡眠中のところ、起こしてしまいましたね…」
「何や…?知り合いか…?」
原田が半開きの目で森田の顔を睨むと、銀二は微笑んだまま、森田を紹介した。


「ええ、この男が例の…“とにかく運の強い男”です……!」

481 :強運10/8:2010/03/22(月) 22:32:22 ID:???

【F-4/商店街家屋内/深夜】

【原田克美】
 [状態]:健康
 [道具]:拳銃 支給品一式 
 [所持金]:700万円
 [思考]:もう一つのギャンブルとして主催者を殺す ギャンブルで手駒を集める 場合によって、どこかで主催と話し合い、手打ちにする 銀二に従う
※首輪に似た拘束具が以前にも使われていたと考えています。
※主催者はD-4のホテルにいると狙いをつけています。
※2日目夕方にE-4にて赤木しげるに再会する約束をしました。カイジがそこに来るだろうと予測しています。
※村岡の誓約書を持つ限り、村岡には殺されることはありません。原田も村岡を殺すことはできません。
※村岡に「24時間以内にゲーム主催者と直接交渉窓口を作る」という指令を出しました。中間報告の場所と時間は次の書き手様にお任せします。
※村岡に出した三つ目の指令はメモに記されています。内容は次の書き手様にお任せします。成功した場合、原田はその時点で所持している武器を村岡に渡す契約になっています。
※『島南、港を探せ』『病院内を探索する』『黒幕は帝愛、在全、蔵前』『銀二はアカギや零とは違う形の対主催体制をとる』という内容の銀二のメモを持っています。

482 :強運10/9:2010/03/22(月) 22:33:33 ID:???

【平井銀二】
[状態]:健康
[道具]:支給品一覧 不明支給品0〜1 支給品一式 褌(半分に裂いてカイジの足の手当てに使いました) 病院のマスターキー
[所持金]:1300万
[思考]:見所のある人物を探す カイジの言っていた女に興味を持つ 病院、港を探索する 証拠を掴む 猛者とギャンブルで戦い、死ぬ 森田の話を聞く
※2日目夕方にE-4にて赤木しげると再会する約束をしました。
※2日目夕方にE-4にいるので、カイジに来るようにと誘いました。
※『申告場所が禁止エリアなので棄権はできない』とカイジが書いたメモを持っています。
※原田が村岡に出した指令の内容、その回収方法を知っています
※この島で証拠を掴み、原田、安田、巽、船田を使って、三社を陥れようと考えています。

【森田鉄雄】
 [状態]:左腕に切り傷 わき腹に打撲
 [道具]:フロッピーディスク(壊れた為読み取り不可) 折り畳み式の小型ナイフ(素材は絶縁体) 不明支給品0〜2(武器ではない) 支給品一式  船井の首輪(爆発済み)
 [所持金]:1000万円
 [思考]:遠藤を信用しない 人を殺さない  首輪を集める 銀さんに自分の任務について話す
※フロッピーで得られる情報の信憑性を疑っています。今までの情報にはおそらく嘘はないと思っています。
※遠藤がフロッピーのバックアップを取っていたことを知りません。
※南郷と第3放送の一時間前にG-6のギャンブルルーム前で合流すると約束しました。
※以下の依頼を受けました。契約書を1部所持しています。
※黒崎から支給された、折り畳み式の小型ナイフを懐に隠し持っています。


483 :強運10/10:2010/03/22(月) 22:40:09 ID:???

――――――――――――――――――――――――――

【依頼内容】

制限時間内に首輪を6個集めること。
期間は依頼受託時から、第4回放送終了まで。
死体から集めた首輪は1個、生存者の首から奪った首輪は2個とカウントする。
森田鉄雄、平井銀二の首輪は3個とカウントする。
第4回放送を過ぎても集められなかった場合は依頼未達成とみなし、森田鉄雄の首輪を爆破する。
森田鉄雄がギャンブルルームに規定数の首輪を持参し、申告した時点で依頼達成とする。
資金の受渡は申告と同時に、ギャンブルルームにて行う。

【報酬一覧】

第2回放送終了までに集めた場合
ゲームを棄権する資金1億円+ボーナス2億円

第3回放送終了までに集めた場合
進入禁止エリアの解除権(60分間)>※
他者に譲渡可能。ただし、渡す側、受け取る側、双方の意思確認が必要。
確認がとれない場合、権利そのものが消失する。

第4回放送終了までに集めた場合
報酬、ボーナスともになし

※補足>進入禁止エリア一箇所の永久解除権(権利が発生してから60分間以内に使わないと無効)

484 :マロン名無しさん:2010/03/22(月) 23:16:32 ID:???
わく・・・・わく・・・・!
最近めちゃくちゃ面白いなぁ

485 :マロン名無しさん:2010/03/23(火) 00:02:08 ID:???
投下乙です!
無事銀さんと会えてよかった・・・

486 :マロン名無しさん:2010/03/23(火) 06:33:33 ID:???
投下乙です。

森田の強運スゲェ…。

無事に銀さんと会えてよかったです。
この勢いで首輪も集めきれればいいのですが…。

487 : ◆uBMOCQkEHY :2010/03/24(水) 02:27:15 ID:GRpXyrWZ
お久しぶりです。
長くキャラクターを拘束させてしまい申し訳ございません。
投下します。

488 :宣戦布告 1:2010/03/24(水) 02:29:00 ID:???
『ドドォォォーーーーーーンッ………!!!』

音量を最大にしたイヤホンから聞こえる爆音。

「和也様! 今のは…!?」
「ああ、ばっちり聞こえたぜ…」
正面から病院の様子を窺っていた村上は、その音に気づき、振り返る。すると目に飛び込んできたのは笑みを浮かべる和也の姿……
心から充実した快感を得ての和也の満面の笑み……それに村上は思わず悪寒が走った。

心を闇に染めるような息苦しさを覚える悪寒。
しかし、その感覚は和也の狂気とは別の要因も絡んでいることを村上は悟っていた。

「一条様・・・」

一条の安否である。
本当は盗聴器に今すぐにでも食いついて一条と話したいが、己はあくまでもこのギャンブルルームを管理する黒服。
一人の参加者を過度に気遣うことはできない。
村上は一条が無事かどうか確認したいという感情をグッと堪え、イヤホンに耳を傾ける。

――あの爆発に巻き込まれていたら・・・相手からの攻撃で負傷していたら・・・

しかし、村上の心配は杞憂であった。
利根川と一条が盗聴器を通じて、状況を報告したのだ。
利根川の報告によると、爆発により参加者一名が死亡。
しかし、アカギは取り逃がしたため、彼らはそれを追うこととなった。

489 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 02:31:56 ID:???
しえん!

490 :宣戦布告 2:2010/03/24(水) 02:32:31 ID:???
「無事でしたか・・・」
村上は胸をなで下ろす。

その後、アカギがしづかを連れていることがしづかの盗聴器で発覚。
更にその数分後、今度は利根川からの連絡が和也に入ってきた。
『和也様! 今、病院に戻ってきたところ…面白いものを見つけました…』
「何だ…?」
『蛍光塗料です…恐らくしづかの持つカラーボールから染み出したものと思われ、地面に転々と跡を残しています』
「ク、ク…」
『和也様…?』
「カカカッ…! 流石のアカギもこういうイレギュラーには抗えないか! まぁ、当然。どんな猛者だって所詮人間。完璧な存在じゃあねぇからな…!
その跡を辿って行け…奴が気づく前に追いついて…始末しろ!」
『はっ!』

二人の頼もしい声を耳にしながら、村上は願う。
――どうかご無事で・・・

「ほらよ・・・一条に伝えたいことがあるんだろ・・・」
和也はテーブルに置いてあるもう片方のマイク――一条の受信機に繋がるマイクを村上に差し出した。
和也は村上が一条をいかに憂慮していたのか察していたのだ。
「えっ・・・しかし、私は黒服なので、そんなことは・・・」
和也の計らいに面食らった村上は丁重に断ろうとするも、
“もたつくなよ・・・いつ、アカギに遭遇するか分からねぇんだからよ・・・”と半ば強引に押し付けられ、しぶしぶマイクを受け取る。

「あの・・・一条様・・・お怪我はございませんか・・・」
村上は震える声でマイクに呼びかける。
ガッ・・・ガッ・・・というノイズと共に、聞き覚えのある冴えた声がイヤホンに届く。
『安心しろ・・・私は無傷だ・・・!』

491 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 02:33:17 ID:???
しえんっ

492 :宣戦布告 3:2010/03/24(水) 02:33:25 ID:???
村上はその返答に愁眉を開く。
「そうですか・・・どうか、ご無理をなさらないでください・・・」
村上は黒服として出過ぎない範囲のメッセージを伝え、マイクをテーブルに戻そうとする。
『あ・・・村上・・・』
村上の手が止まる。
『可能であればだが・・・もし、戻ったら・・・コーヒーを淹れてはくれないか・・・』
「あ・・・よろしいですが・・・」
“突然、何を言い出すんだろう・・・”と、村上は心の中で戸惑いながら、返答する。
『すまないな・・・地下王国に落とされてから碌なものを食べていない・・・
あの味が・・・香りが・・・懐かしい・・・』
「一条様・・・」
村上の心臓が大きく脈打つ。
村上は思い出した。
地下王国がいかに劣悪な環境であるかということを・・・。
そして、裏カジノ時代、コーヒーを飲みながら雑談に戯れた休憩時間が、最も安らぎを感じるひと時であったことを・・・。

――オレが一条様にして差し上げられることは・・・ただ一つ・・・

「いいのですか・・・私は一条様ほど上手くはたてられませんよ・・・」
『・・・構わない』
“かしこまりました・・・”と村上は了解すると、コーヒーを準備するため、コンロが設備されている事務室へ向かっていった。

和也は村上の後姿をちらりと追う。
「固い絆だな・・・」


493 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 02:34:48 ID:???
しーえん

494 :宣戦布告 4:2010/03/24(水) 02:35:56 ID:???
コーヒーメーカーがコポコポと音をたてて、コーヒーを一滴一滴抽出していく。
ほろ苦い香りと温かい湯気が事務室を包み込む。
事務室は参加者がギャンブルを行う部屋と扉一枚を隔てた隣の部屋で、主に黒服の休憩や食事、事務的な仕事などで使用される。
瀟洒なインテリアに囲まれたギャンブルルームとは異なり、事務室は簡易的な調理台と机と椅子など生活上最低限の備品が配置された、コンクリートがむき出しの無機質な部屋である。
窓がないため、人によっては圧迫感を覚えるかもしれないが、村上にとってこの部屋はどこか裏カジノの事務室を連想させ、ギャンブルルームにいるよりも居心地がよかった。
コーヒーメーカーを見つめながら、一条の言葉を噛み締める。

――すまないな・・・地下王国に落とされてから碌なものを食べていない・・・
   あの味が・・・香りが・・・懐かしい・・・

地下王国の環境の悪さは何度も耳にしている。
地下王国では閉塞された空間で工事が行われているため、粉塵による呼吸器障害、突然の土砂災害などで命を落とす者も少なくはない。
その中で一条は耐えてきたのだ。

――オレはあの方が地下へ落とされた時、ただ呆然と見ていることしかできなかった・・・

村上は己の不甲斐なさを握りつぶすように拳を震わせる。

――今度こそ、あの方を救う・・・あの方の“片翼”として・・・!

495 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 02:36:23 ID:???
し え ん

496 :宣戦布告 5:2010/03/24(水) 02:37:38 ID:???
ピィ ピィ ピィ ・・・・・

事務室にコール音が響き渡る。
村上は音の方へ顔を向ける。
音は事務室の机の上に置かれたノートパソコンからであった。
各ギャンブルルームにはノートパソコンが用意されている。
基本的にギャンブルルームの運営は完全にマニュアル化されているとは言え、
マニュアルに記載されていないトラブルが起こる可能性がある。
そのような事態に直面した時――ギャンブルルームの管理人である黒服ですら対応できない状況になった時、
上の人間に確認するために使用されるのが、このノートパソコンである。
ちなみに、森田が黒崎とやり取りしたディスプレイもこのノートパソコンからである。

「・・・何かあったのか・・・?」

村上はパソコンを立ち上げ、パソコンに備え付けられているマイクを握る。

「はい・・・こちら・・・E−5ギャンブルルーム担当、む・・・」
「村上・・・・・・君に言いたいことがあってね・・・」
村上の言葉がつかえる。
ディスプレイに映し出されていたのは穏やかに微笑む男性――帝愛のナンバー2でかつ、このバトルロワイアルを統括する黒崎本人であったからだ。

――な・・・ぜ・・・?

村上の全身から大量の汗が噴き出す。
通常、この画面に現れる人間は帝愛が準備したトラブル処理担当のスタッフのはずである。
ましてや、村上は組織では末端中の末端。
あまりの展開に思考が追い付かず、呆然と立ち尽くすより手立てがない。

497 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 02:38:14 ID:???
しえーん

498 :宣戦布告 6:2010/03/24(水) 02:38:37 ID:???
黒崎は村上の反応を無視するように淡々と話を続けていく。
「君は重大な失態を犯している・・・何のことだか、分かるか・・・?」
「重大な・・・失態・・・」
思い当たる点は一つである。
村上は唇を震わせながら、言葉を搾り出す。
「和也様たちのことでしょうか・・・」
黒崎は“そうだ・・・”と肯定する。
「このゲームを運営するにはどうあるべきか・・・説明してくれないか・・・私に・・・」
村上は怯えながら、上ずった返答をする。
「どのような参加者に対しても公平に対応するべしっ・・・!」
「そうだ・・・だが、お前はどうだ・・・
必要以上の情報提供、ギャンブル以外の用途での備品の貸し出し・・・
これは黒服として度が過ぎた行為・・・そうは思わぬか・・・村上・・・」
村上はうな垂れる。
いずれ上の人間から咎められるであろうことは覚悟していた。
しかし、こんなにも早く、しかも、雲上人から直接、通告されるとは思ってもみなかった。

そもそも、なぜ、このタイミングで黒崎が現れたのか。
答えは森田との契約に関連している。
あの契約を交わした際、黒崎はギャラリーには、ほかの客からのクレーム上仕方がなかったと言いくるめれば問題ないと考えていた。
しかし、蓋を開けてみると、多くのギャラリーの怒りを必要以上に煽るような結果となっていた。
サクラを導入することで何とかその場は凌げたが、
今回の一件から目立った動きを見せれば、それなりのリスクを背負ってしまうことを察したのだ。
今後、不利な状況を生み出さないためにも、不穏分子を取り除いておかなくてはならない。
その不穏分子の一つが和也達に肩入れする村上の存在である。
村上はマニュアルに記載されていないことをいいことに、ギャンブルルームの備品である盗聴器を和也たちに貸し出している。
今後も黒服の枠から外れた行動をとり続けることは目に見えている。

――私の立場を磐石のものにするために、不穏分子の芽は小さいうちに紡ぐっ・・・!
これが今の黒崎のスタンスである。

499 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 02:39:23 ID:???
すえん

500 :宣戦布告 7:2010/03/24(水) 02:39:52 ID:???
「村上・・・よく聞くんだ・・・」
ディスプレイの中の黒崎は机の上で手を組む。
「今すぐに和也様から盗聴器を取り返すのだ・・・
そして、以後の備品の貸し出しは禁止・・・
トップからの指示だと言えば、和也様たちも納得する・・・
すぐに実行すれば、今回のことは不問に付す・・・
よいな・・・村上・・・」

村上は俯いたまま、恐怖から逃れるように目をギュッと瞑る。
黒崎の言う通り、規則を盾にすれば、いくら和也に言いくるめられる村上であっても、説得することができる。
また、“上から強制されて”という言葉はなかなか甘美な響きを持っている。
これは法が悪いのであって、村上には何一つ落ち度はないと、自分にも他人にも言い聞かせることができるからだ。
そもそも村上はこの状況が続けば、いずれは何らかの処罰があるとは思っていた。
けれど、黒崎の指示をこなせば、その処罰を受ける必要がないのだ。
これほど村上にとって、都合の良い話はない。
村上が導き出した結論は・・・

「・・・申し訳ございません・・・それはできません・・・」
「何っ・・・!」
黒崎は不快そうに眉をひそめる。
村上はゆっくりと顔をあげ、画面上の黒崎を正視する。
「マニュアルには“ギャンブルルーム内の備品持ち出し禁止”という規定はございません・・・
私はあくまでもマニュアルに従ったのみ・・・
そして、これからも私はマニュアルに従い続けるつもりでございますっ・・・!」
断乎たる決意を秘めた村上の声が朗々と事務室に響き渡る。
「マニュアル順守・・・和也様の屁理屈か・・・」
村上はグッと口を閉ざし、答えない。

501 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 02:42:06 ID:???
シエン

502 :宣戦布告 8:2010/03/24(水) 02:42:42 ID:???
一条と利根川は不在、和也は盗聴器に集中。
黒崎がこのタイミングで村上とコンタクトを取ったのも、村上に入れ知恵をする人間が周囲に存在しないと判断したからだ。
村上は権力に畏怖を覚えている。
黒崎の権力で圧力をかければ、簡単に陥落すると思っていた。
しかし、村上は畏怖より信念を選んでしまったのだ。

「宣戦布告だな・・・」
黒崎は嫌味めいたため息をつく。
「それがお前の覚悟であればしょうがない・・・
私の指示に逆らった・・・ということはどういうことか・・・」
黒崎は仰け反るようにイスに深くもたれる。
「地下王国へ落ちてもらうぞ・・・村上・・・」
村上は顔を青ざめさせながらも、深々と頭を下げた。
「・・・甘んじて受け入れます・・・」
村上は恐怖で震える拳をもう片方の手で押さえながら思う。

――これでよかったのかもしれない・・・

正直に言えば、地下王国がどのような場所が理解しているだけに、背筋が凍る思いがする。
しかし、村上は一条が7億の損害を生み出した時点で、補佐役の自分も責任を取り、地下王国へ落ちるべきであったという考えが常に心にあった。
黒崎から地下王国転落を言い渡された今、本来、あるべき形になったと、どこか納得している感情も存在していた。

――貴方だけでも、このゲームから脱出を・・・

「何してんだ・・・?」
突然のことだった。
盗聴器に夢中だと思われていた和也が下から顔を覗かせているのだ。
和也がにやけた顔で村上を見つめる。
「えっ・・・和也様・・・!?ど・・・どうして・・・!?」

503 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 02:43:03 ID:???
sien

504 :宣戦布告 9:2010/03/24(水) 02:45:11 ID:???
村上は思わず素っ頓狂な声をあげる。
「あぁ・・・コール音が聞こえてな・・・気になったからよ・・・
“トイレに行ってくる”って言って、盗聴器切っちまった・・・
まあ、あいつらなら、オレがいなくても動けるだろうしよっ・・・!」
和也は画面に向かって、軽く手を振る。
「よっ・・・久しぶり・・・黒崎っ・・・!」
和也が挨拶した相手は己の殺生与奪を握っている者。
それにもかかわらず、まるで近所の知り合いのように親しげに話しかける。
黒崎は主君を敬うように深々と頭を下げる。
「和也様・・・お元気そうで何よりですっ・・・」
「おう・・・そっちも元気そうで何よりだぜっ・・・!
で・・・本題なんだがよ・・・」
和也は近くにあったイスに座り、画面と向き合う。
「単刀直入に言う・・・村上のこと、見逃してくれねぇか・・・」
「それはできません・・・公平さに欠けてしまいますので・・・」
黒崎は和也の要求をばっさりと切り捨てる。
“あぁ?いいじゃねぇかよ・・・!”と、和也は駄々をこねる子供のように拗ねる。
「だいたいさぁ・・・ルールに記載しなかったそっちに落ち度があるんじゃねぇかよ・・・!
それにさ、ちょっと反論した村上を地下王国送りって、やりすぎじゃねぇ・・・?
そんなに村上のやっていることが都合悪いわけぇ・・・?」
「上の者の考えに従わない者と仕事は共にできない・・・社会では当然のことではありませんか・・・」
黒崎の涼やかな解答に、和也は皮肉めいた嘲笑を浮かべる。
「でもさ、どうやって、今、村上をここから解任すんだぁ・・・?
新しい黒服を寄越すのはいいけどさ、ここに来るまでに誰かに殺される可能性って、考えてないわけ・・・?
現実が見えていないっていうかさぁ・・・
オレなら、こんなふざけた提案をする無能な幹部は切り捨てちまうけどよっ・・・!」
「和也様・・・確かに一理ございますね・・・」

505 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 02:46:02 ID:???
support

506 :宣戦布告 10:2010/03/24(水) 02:47:07 ID:???
黒崎は和也の毒言を朗らかに受け流す。
「けれど・・・」
その軽笑を浮かべる口から飛び出たのは相手の喉を噛み潰してしまいそうなほどに鋭利な言葉の牙であった。
「現実が見えていないのは貴方も同じこと・・・
私がどのような立場か、貴方ならご存知でしょう・・・
やろうと思えば、“一言”でその立場を危うくすることも可能なのですよ・・・」

「ふ〜ん、一言ねぇ・・・」

――特別ルールのことかっ!

軽快な口調とは裏腹に、喉元にナイフを突きつけられたかのような緊張が和也の精神を支配する。

特別ルール――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、 その派閥全員を脱出することができる。
これは和也が己の立場を優位にするための偽りのルールである。
よく考えてみれば、最後の一人になるまで戦ってもらうというルールを堂々と宣言している中で、一人の人間を贔屓にするような裏ルールが存在するなどありえない。
しかし、主催をよく知る鷲巣、主催サイドの村上が信じてしまったなどの好条件が重なったため、結果的に、利根川と一条が和也に追随した。
今、三人を繋いでいるのはこのルールと言っても過言ではない。

――今、これを村上の前でばらされちまったら・・・

おそらく、村上は一条に報告、利根川と一条は価値がなくなった和也に牙を向けるだろう。

和也はグッと息を呑む。

「分かっていただけましたか・・・」
黒崎は“ふふっ・・・”と、天邪鬼の揚げ足を取った勝者の笑みを慎ましやかに見せる。
「それでは今後、ギャンブルルームの貸し出しは禁止・・・
そして、村上・・・お前は・・・」

507 :宣戦布告 11:2010/03/24(水) 02:48:33 ID:???
「おいおい・・・それではつまらんではないか・・・」
“カカカ・・・”という老人の高笑いがガラスのような静寂を突き破った。

「何っ!!」
全員が己の前にあるパソコンの画面に釘付けとなる。
画面には新しいウィンドウが表示され、そこに映し出されていたのは、皺をたるませた老人――

「在全・・・無量・・・様・・・」
黒崎は絞るような声で、その名を呟く。

在全無量――個人資産3兆円以上を所有する「在全」グループの総統。
バトルロワイアルの主催者の一人であり、その資産額は他の二人と比較しても群を抜いている。
それ故、今回のバトルロワイアルの出資率は在全の割合が大きい。
ある意味、主催者の中で最も発言権を持っていると言ってもよいだろう。

「なかなか忙しいようなじゃのぉ・・・黒崎・・・」
在全は形式的な労いの言葉を黒崎に向ける。
黒崎も形式的に返答する。
「これも仕事ですので・・・」
しかし、在全はそれに一瞥することなく、首を大きく回し、肩をボキボキと鳴らす。
「して・・・先程の提案じゃが・・・ここはせっかくのギャンブルルーム・・・
それを利用しないとは何ともったいない・・・!」
在全は渇いた皺と対照的な、健康的な歯とピンクの歯茎を口の端に覗かせると、指をパチンと鳴らした。

508 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 02:48:59 ID:???
しえん…

    しえん…

509 :宣戦布告 12:2010/03/24(水) 02:50:13 ID:???
「ハーイ!ブラザー!」

突如、事務室に木霊する場違いとも言える陽気な声。
ピエロを連想させるような化粧の男が画面に現れた。
男は舞台に立った役者のような戯笑を和也たちに向ける。
「僕の名前は小太郎・ヒルマウンテンウィリアムス・ハリソンジャガーサタケ・ジェームス城山っ!
在全様から直々のご指名を受けた司会進行さっ・・・これから行うギャンブルのね☆」

「ギャンブルだと・・・?」
黒崎は予定通りの流れに持って行く一歩前だっただけに、不服そうに顔を歪ませる。
しかし、そんな黒崎の感情などお構い無しに小太郎は話を続ける。
「これから和也君に行ってもらうのは『ハングマン』さ!
和也君、知っているかい・・・?」
和也は画面上から小太郎を不審そうに睨みつける。
在全が何を目論んでいるのかは分からない。
しかし、今の黒崎優位の流れを変えることができるかもしれない。
その勘考から、とりあえず小太郎の話に乗ってみる。
「いや、知らない・・・教えてくれ・・・」
「OK!OK!じゃあ、教えてあげるよっ☆」

ハングマンとは、イギリスのヴィクトリア朝時代に生まれたとされる単語当てゲームである。
このゲームは出題者が解答者に対して、出題する単語を選び、その単語の文字数の枠を提示し、
それに対して、解答者は単語に入ると思われるアルファベットを選んでいき、その枠を埋めていく。
いたってシンプルなゲームであるが、制限が存在する。
このゲームには事前に絞首台のイラストが用意されている。
解答者が正解の単語に含まれていないアルファベットを選んだ場合、
この絞首台に吊るされる人の絵が一つ一つ書き加えられていく。
頭、胴体、右腕、左腕、右足、左足・・・といった具合に。
この絞首台の人物の絵が完成した時、解答者の負けとなる。
それ故に、このゲームはハングマン――絞首刑執行人という名前が用いられている。

510 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 02:51:10 ID:???
シエニ…

    シエニ…

511 :宣戦布告 13:2010/03/24(水) 02:51:12 ID:???
「・・・というわけっ!
で、今回、当てて欲しいモノはアレさっ!」
小太郎は左側を指差す。
画面の中からであるため、何を指したいのかはよく分からないが、その方角にとりあえず顔を向ける。
そこにあったのは金庫であった。
金庫は成人男性の背の高さぐらいの大きさの物で、黒光りする外装と分厚い扉が頑丈さを物語っている。
この金庫はナンバーをボタンで入力するテンキー式であるのだが、ナンバーのほかにアルファベットのボタンも備わっている。
通常の金庫よりも難解にできているようだ。

和也は村上の方を振り返る。
「あれは何だ・・・?」
「あれは・・・武器庫です・・・」
各ギャンブルルームには武器庫が用意されている。
これは万が一、全ての参加者の武器が使用不可能になってしまった等の理由によって、
ゲームの存続が危ぶまれた場合、参加者に緊急支給するためである。
しかし、簡単に開けられてしまってはゲームとしての公平さが失われてしまう。
そこでパスワードは主催幹部のみが握っており、その判断でしか開けられないようになっている。
ちなみに、現時点で金庫が開錠された前例は森田に渡す小型ナイフを準備したG−6のギャンブルルームのみである。

「和也君には金庫のボタンを押して、そのパスワードを10分以内に当ててもらうよっ!
和也君に与えられたチャンスは7回。
で、見事金庫のパスワードを当てれば、村上のことは黙認。
しかも、金庫の武器は使い放題・・・!
け・れ・ど・・・!」
小太郎は指摘するように指を振りながら、嘲弄の色を口元にたたえる。
「もし、和也君が7回失敗してしまった場合、もしくは制限時間を越えてもパスワードを溶けなかった場合、
首輪は爆破っ・・・和也君には死んでもらうよっ!」

512 :宣戦布告 14:2010/03/24(水) 02:52:24 ID:???
「なっ!」
和也も黒崎も言葉を失う。
レールから外れたトロッコのように、話が意図しない方向へ勝手に進んでしまっている。
「こらこら・・・それは失礼ではないか・・・」
“キキキ・・・”とコメディを見ているかのように笑う小太郎を在全がたしなめる。
「参加者に肩入れする黒服がいるのじゃぞ・・・」
在全は村上を睥睨する。
「もし、兵藤和也が敗れた場合、武器庫内の時限爆弾を発動・・・
このギャンブルルームと共に、お前も散ってしまうがよいっ・・・!」
小太郎が手を叩いて喜ぶ。
「さすが在全様・・・♪僕が考え付かないことを簡単に思いついちゃうんだから☆」
「カカカ・・・いやいや・・・こんなギャンブルを提案するお主には敵わぬわい・・・!」
二人の笑いから無邪気さを装った汚濁の如き悪意がにじみ出る。

「ちょっと、待ってくださいっ!」
二人の嘲笑に割り込んだのは村上の声だった。
「確か、在全様は和也様の死ぬ確率を少しでも減らすために特別ルール・・・和也様のグループが残った場合、
そのグループが優勝とするというルールを認めておりますっ!
それにもかかわらず、こんなギャンブルは・・・」
「村上っ!!」
和也は思わず怒声を響かせる。
「えっ・・・和也様・・・」
和也の烈しい剣幕に、村上は顔色を失う。
和也は村上の様子を見て、ハッと我に返ると、気まずそうに口を開いた。
「あ・・・いや・・・お前は黒服だ・・・オレを庇うようなことは言うな・・・」
「す・・・すみません・・・」

謝る村上に“気にするな”と言いながらも、心の中では毒気突く。

――嘘ルールがばれちまうじゃねぇかよっ!

513 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 02:53:08 ID:???
…援… …援… 支援っ…

514 :宣戦布告 15:2010/03/24(水) 02:54:41 ID:???
「ワシはせっかちでの・・・」
全員が突然、何を言い出すんだと言わんばかりに画面に釘付けになる。
在全が思い出に惚けるような表情で淡々と語る。
「さっさと結果が見たいんじゃ・・・誰が優勝者かを・・・
その座にふさわしくないものは・・・死ねばいい・・・・・・! 」
「そ・・・そんな・・・」
村上は余りに常識を逸脱した論理に、反駁もできないまま、呆然とする。
この言葉を聞けば、誰しも村上のように絶望を覚えるだろう。
しかし、実際のところ、愕然としたのは村上のみであり、言われた本人である和也は胸を撫で下ろしていた。
在全の言葉はあくまでも在全のゲームにおいてのスタンスであり、解答ではない。
つまり、村上の質問は上手い具合にはぐらかされたのだ。

在全は和也に企みを含ませたような冷笑で見据える。
「兵藤和也・・・だから、“チャンス”を与えるんじゃ・・・
“チャンス”を活かせぬものに生き残る価値はない・・・!」
「へぇ・・・オレにはまだ、その価値があるってことか・・・
在全のジイさんよ・・・オレをちょっと買いかぶりすぎているが・・・感謝するぜ・・・!」
和也は愛想良く返答しながら、気づかれないように額の汗を拭う。
和也は在全の言葉の行間を読んでいた。
在全の言う“チャンス”には、おそらく二つの意味が込められている。
一つ目は嘘ルールの公言を見送るということ。
もう一つは『ハングマン』そのもの。
つまり、嘘ルールを公にしない代わりにギャンブルに参加しろ、もし、それを辞退するのであれば、お前の命綱の嘘ルールをばらすぞと言いたいのだ。

――大した脅しだっ・・・!

己の前に立ちはだかる強大な壁の存在に、和也は窮屈さに近い圧迫感を腹の底に感じた。

515 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 02:55:18 ID:???
支援倍プッシュ

516 :宣戦布告 16:2010/03/24(水) 02:56:06 ID:???
“しかし、在全様・・・”と、ここで黒崎が反論する。
「主催者が参加者へギャンブルを申し出る・・・
そんな特例・・・公平さにかけると思われますが・・・」

本来、立場が上である在全に異を唱えるべきではない。
しかし、言わざるを得なかった。
黒崎は蔵前との契約である森田への介入は例外として、主催者は参加者に対して常に公平であるべきという考えを持つ。
そのバランスを維持するために、今まで苦心を重ねてきた。
それにもかかわらず、雲上人の思い付きで、その苦労が水の泡になる。
黒崎にとって、許しがたい事態であった。
何より、黒崎には在全の目論見を覆す自信があった。
森田に首輪回収の依頼をした際、ギャラリーから批判を浴びた経験があるからだ。
しかし、在全はそれをあざ笑うかのように粉砕する。

「ギャラリーは皆、賛成しているのじゃがな・・・
ほれ、よく見てみるがよいぞっ・・・」
「えっ・・・」
和也がいる前で、ギャラリーの存在を公言されたのもそうであるが、
それ以上に、不可能と思われていたことをさも簡単にやってのけたぞと言わんばかりの発言に思わず、己の耳を疑う。
黒崎のパソコンの画面に、新しいウィンドウが表示された。
そのページは『お客様の声』。
これは各ギャラリーに配布されたパソコンからアクセスできる、チャット型の意見交換サイトであるが、そこに書かれていたのは・・・

『これから在全殿が、和也君相手にギャンブルをするそうだ・・・』
『すっげー楽しみ!どっちが勝つと思う・・・?』
『オレは兵藤和也が勝つに賭ける!』
『いや、在全さん相手に勝てるかな・・・?』

517 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 02:56:57 ID:???




518 :宣戦布告 17:2010/03/24(水) 02:57:31 ID:???
全体的に好印象な書き込みがほとんどであり、否定的なものがまったく見当たらない。
しかも、その書き込みの量は激流の如く、恐ろしいペースで増えていく。

――こんなこと・・・ありえないっ!

黒崎の考えは正論である。
なぜなら、ギャラリーは一時間ほど前まで、ゲームの流れを大きく覆す主催者の介入に対して、自ら行動を起こしてしまうほど嫌悪していたからだ。
「“先程の一件”で、皆、免疫がついてしまったようじゃの・・・」

――何が免疫だっ!

黒崎は心の中で吐き捨てる。
考えられることはただ一つ。
ここに書いてある書き込みは黒崎がギャラリーの集まる会場でサクラを仕込んで説得したように、
在全が準備したサクラが書き込んでいるのだ。
しかも、否定的な書き込みを憚ってしまうほどの賛同的な書き込みを流し続けることによって・・・。

黒崎の心情をさらに逆撫でするかのように在全は一言付け加える。
「あと、こんな特典も付けてみたぞ・・・」
在全が目の前のキーボードを軽く叩く。
すると、『お客様の声』のページの一番上にある運営からのご連絡の欄に――

『これから執り行いますギャンブルで兵藤和也が敗退した場合、在全グループが兵藤和也への賭け金を2倍にしてお返しいたします。』

この直後、書き込みの流れが更に加速する。

『やっぱり、在全様は太っ腹!』
『それに比べて帝愛の黒崎はけちだよな』
『オレ、兵藤和也に賭ければよかったぜ!』

519 :宣戦布告 18:2010/03/24(水) 02:58:34 ID:???
それに対して、在全は“カカカ・・・”と微笑ましそうに哄笑する。

「まさか、こんなに好意的に受け取ってもらえるとはの・・・
ワシは黒崎殿の“マネ”をしたにすぎないのにのぉ・・・」

――その通りだ・・・サクラを使用してのなっ!

在全のしらばくれた言葉に、黒崎は心の中で毒気付くが、それを口には出せない。
黒崎の手腕を持ってすれば、書き込みの先が在全の手の者であることを逆探知し、公表することはいとも容易い。
しかし、それは在全にとっても同じこと。
もし、黒崎がそのような行動を起こせば、放送前の謝罪会見の時に黒崎が仕込んだサクラを特定し、それをギャラリーに公表することは目に見えている。

――勝手な真似をっ・・・!

在全に必勝のカードを一刀両断された上に、致命的な弱点にナイフを向けられてしまった。
黒崎は心が灼けるような怒りに身を震わせる。
しかし、在全に対抗できるカードを持ち合わせていないのも事実。
意味がない行為と分かっていながらも、最後の足掻きとして、脆弱な切り札を出す。

「兵藤様が・・・黙っておりませんよ・・・」
「あぁ・・・兵藤ちんか・・・」
「兵藤・・・ちん・・・!?」
経済を牛耳る重鎮を女子高生が付けたようなあだ名で気安く呼ぶ在全に黒崎は面食らう。
しかし、在全は黒崎の反応を意に介しない。
「兵藤とは連絡を取ろうと何度か試みたのだが、ア奴はワシのことを嫌っておるのかの・・・
完全にこちら側からの通信を絶っておる・・・
ア奴の返答を待つ程の忍耐をワシは持っておらん・・・
まぁ、今回のギャンブルは、あれじゃ・・・」
在全は指を天へと突き上げる。
「主催者特権だ!」

520 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 02:58:35 ID:???
519なら支援

521 :宣戦布告 19:2010/03/24(水) 02:59:53 ID:???
「しゅ・・・主催者特権・・・!?」
小太郎以外の全員が、在全の横暴さに口を半開きにしたまま、思考を停頓させる。
周囲がどんな反応を示そうとも、やはり在全は意に介しない。
“まぁ、何かあれば、あ奴から連絡を取ってくるだろうし・・・万が一の時は後藤が何とかしてくれるわい・・・”と、他力本願な結論で結んでしまった。
「後藤様・・・」
黒崎は今の自分と重なるものを感じてか、“心中お察しいたします・・・”と黙祷を捧げる。

「二人とも何か異論はあるかの・・・」
在全は念のため確認をとる。
しかし、黒崎も和也も在全に弱みを握られているという状況。
二人が反論することはなかった。
在全は双方が同意したことを察し、声高らかに宣言する。

「これから『ハングマン』を開始するぞっ!」

小太郎は“待ってましたっ!”と、軽快にキーボードを叩く。

和也たちのノートパソコンの画面が半分に割れる。
上半分はそれまでのデスクトップとウィンドウ画面、下半分はパスワードのアルファベットが入ると思われる枠が5つと、制限時間を表すデジタル式の時間、そして、絞首台のイラストが現れる。
時間は一秒一秒ごとにその数字を減らしていく。

「ヒントは“このゲームの本質”さ、ブラザー☆」
「ふざけるなっ!」
この直後、黒崎が机を叩き、小太郎に問い詰める。
「今まで黙っていたが我慢ならないっ!これのどこが本質だっ!こんな・・・」
しかし、ここで黒崎の音声が途切れる。
小太郎がキーボードの隣にあるボタンを押していた。
「部外者はゲームが終わるまで、黙っていてね☆」

522 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:00:48 ID:???
5…522なら支援

523 :宣戦布告 20:2010/03/24(水) 03:01:47 ID:???
小太郎は和也たちに顔を向ける。
「黒崎さんにはゲームが終わるまで消音設定にしてもらったよ・・・!
彼が口を挟むと、ゲームが興ざめしちゃうからね♪」

「勝手にしろ・・・」
和也はノートパソコンを奪うように掴み、持ち上げた。
「解くぞっ!村上っ!」
「は・・・はいっ!」
和也と村上は金庫の前に座り込む。
和也は村上にノートパソコンを持たせると、“うむっ・・・”と声を唸らせ考え込む。
あまり当てにならないとは言え、まずはヒントから切り込んでいく。
小太郎が示したヒントは“このゲームの本質”。

――『ハングマン』の本質か・・・

『ハングマン』で求められていることは英単語を推理し、その単語を言い当てていくこと。

――いや、そもそも・・・

「なぁ・・・村上・・・」
和也は村上の方を振り向き、見据える。
「あの・・・なんでしょうか・・・?」
引き込まれそうな和也の眼力に、村上は思わず息を呑む。
“何か思いついたのか・・・”と村上の直感が告げる。
和也の口から飛び出たのは意外な言葉だった。
「悪いが・・・オレ・・・英語・・・苦手なんだっ・・・!
スペル・・・一緒に考えてくれないか・・・?」

524 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:02:13 ID:???
支援がksk

525 :宣戦布告 21:2010/03/24(水) 03:04:37 ID:???
「は・・・ハァッ!?」
村上の語尾が上ずる。
これは問題を考える以前の問題だ。
たとえ解答が分かったとしても、その単語を知らなければ答えようがない。
村上の不満げな反応に、和也はムッとふて腐れる。
「こっちはまだ、学生なんだっ!
分からない英語があったって、しょうがねぇじゃん!」
「えっ・・・学生って・・・和也様って、もしかして、未成年だったんですかっ!」
「ハァ!?オレをいくつぐらいに思っていたんだっ!お前は!?」
「・・・25、6歳くらい・・・少なくとも一条様より年上・・・」
「お前の目は節穴かっ!!」
ギャンブルが始まって早々のまさかの仲間割れ。
痴話喧嘩のような二人のやり取りに、在全も小太郎もケラケラと腹を抱えて笑い転げる。

在全と小太郎の様子を目の当たりにした村上はばつが悪そうに、和也を諌める。
「と・・・とにかく、今は言い争いをしているときではございません・・・
答えを解きましょう・・・!」
ここで村上は場の空気を変えるため、ある提案をする。
「アルファベットはよく使われるものとあまり使われないものがございますっ!
確率上、よく使用されるアルファベットを当てはめて、ある程度埋まってから推理するんですっ!」
和也は“ほう・・・”と唸る。
「つまり、初めに入力するアルファベットは・・・」
「・・・「A」「I」「U」「E」「O」です・・・」

村上の言っていることは正しい。
ハングマンにはETAOIN SHRDLUの法則が存在する。
この法則に挙げられた12文字はアルファベットでも使用頻度が高いものであり、
これらのアルファベットを選択すれば、自ずと正解率が上がるのだ。
もちろん、村上はこの法則のことなど知る由もない。
しかし、村上が挙げた「A」「I」「U」「E」「O」――日本語の母音にあたる五つの単語はいずれも該当している。


526 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:05:05 ID:???
つ 「google」「エキサイト翻訳」

527 :宣戦布告 22:2010/03/24(水) 03:07:44 ID:???
「アルファベットは26文字・・・解答チャンスは7回・・・1/4ぐらいの確率か・・・」
枠に当てはまるアルファベットがかぶれば確率は若干変わってくるが、それでも確率だけで考えれば、決して低くはない。

――でたらめにアルファベットを選んでも何とかなるかもな・・・

和也はそんな楽観的な考えを胸に秘めながら、村上の意見に頷く。
「よし・・・それでいこう・・・!」
和也は覚悟を決めると、金庫の「A」のボタンを強く押した。
パソコンに表示されたのは――

『不正解』

ブーという耳障りな音と画面いっぱいに現れた赤いバツの印。
それと同時に、ピ・・・ピ・・・と、和也の首輪から警告音が時計の秒針の間隔で木霊する。
「何だと・・・!」
和也は思わず首輪を抑える。
慌てふためく和也の様子を見て、小太郎は愉快そうに馬鹿笑いする。

「言い忘れていたけど間違うたびに、首輪の警告音の間隔が短くなっていくよっ!
あと、パソコンの絞首台のイラストを見てくれたまえっ!」
絞首台のイラストには人間の頭を連想させる円が書き込まれていた。
「このイラストはハングマンの肝・・・解答制限を表すイラストさっ!
間違うごとに身体が書き込まれ、最後に首輪が描かれた時が和也君の最後さっ!」

――頭、胴体、右腕、左腕、右足、左足、首輪・・・
だから解答チャンスが7回なのか・・・

528 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:08:46 ID:???
シエン

529 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:08:54 ID:Gi3+TR+j
>>526

薦めるなwwwww

530 :宣戦布告 23:2010/03/24(水) 03:11:44 ID:???
和也は首輪をさすりながら、吐き捨てる。
「爆破するか、吊るかの違いはあるが、首を賭けたゲームであることには変わりねぇ・・・
えげつねぇよ・・・まったく・・・」
「それはとってもホメ言葉・・・!ありがとうね・・・和也ちん☆」
「・・・どういたして・・・」
小太郎の言葉に突っ込む気にもなれず、和也はそっぽを向く。
「時間がない・・・残りの母音を選択する・・・!」

和也は「I」「U」「E」「O」のボタンを押していく。
しかし、いずれもその答えは――
『不正解』『不正解』『不正解』『不正解』

「はぁ!?」
二人とも開いた口が塞がらない。
理屈上は完璧だった。
それだけに反動の失望感も大きい。
和也はわなわなと拳を震わせたまま、村上に詰め寄った。
「おいっ・・・ちっともかすりもしねぇじゃねぇか・・・!」
「でも・・・それ以外、思い付かなくて・・・!」
あまりに理不尽な和也の問い詰めに、村上は半泣きになりながら意見する。
心なしか語尾も潤んでいる。
「・・・すまない・・・」
村上に噛みついたのは所詮、苛立ちを紛らわすための八つ当たりでしかない。
それを理解しているだけに、和也は黙って村上を突き放した。

二人がそうこうしている間にも、絞首台のイラストには胴体、右腕、左腕、右足が次々と書き込まれる。
気がつくと、警告音の間隔は時計の秒針から早足の歩調にまで短くなっていた。
チャンスは後2回。

531 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:11:59 ID:???
つ English@2ch掲示板

532 :宣戦布告 24:2010/03/24(水) 03:12:47 ID:???
――何が何とかなるだっ!

「くそっ!」
和也が悔しさに任せて、金庫の壁を叩く。
先程まであれほど大口を叩いていた男が見せた、ある種の醜態。
加虐心が満たされるのか、在全は満足そうな笑いで和也に忠告する。
「兵藤和也、安心せい・・・!
今回の問題は英語が分からぬ類人猿でも分かるような解答となっておる・・・!」
「あぁ?類人猿でも分かるような解答だと・・・?」
和也は眉を曇らしながら、ハッと気づいた。
「・・・アルファベットは答えに含まれていない・・・って、ことか・・・!」
「え・・・どういうことですか・・・?」
村上の問いに、和也は手短に答える。
「さっき在全は“英語が分からぬ類人猿でも分かるような解答”と言った・・・
英語を知る必要なない・・・答えは英単語ではない・・・
じゃあ、ローマ字で表示する日本語かと言えば、それも違う・・・
何せ、ローマ字を成立するために必要な母音は全て枠に該当しなかったからな・・・
つまり・・・」
和也は金庫のアルファベットの隣にあるボタンを凝視する。
「枠に入るのは・・・数字だっ・・・!」

やっとここで黒崎が激怒した理由が分かった。
答えが数字の羅列だからこそ、黒崎は小太郎のヒントを理解することができなかったのだ。

――あの頭が働く黒崎でさえ分からないってのはかなり厄介だな・・・

533 :宣戦布告 25:2010/03/24(水) 03:15:21 ID:???
「なかなかの着眼点・・・」
在全はいいものを見せてもらったと言わんばかりに手を叩く。
「多少は知恵があるようなじゃの・・・
類人猿から赤子ぐらいには評価を上げてやろう・・・!
じゃが・・・残り時間はあと5分を切ったぞっ・・・!」
確かにパソコンの画面上の時間は5分と表示されている。

――数字でかつ、『ハングマン』の本質・・・

和也は頭をかきながら、思考をめぐらす。
しかし、どんなに悩み抜いたところで、決定打が見つからない。
「おいっ!村上っ!」
和也から飛び出した言葉はとんでもないものだった。
「お前の好きな数字を言え・・・!」
「えっ・・・エェ!?」
村上はめまいを覚える。
村上の提案のせいで、解答権を5つも失っている。
その人間に選択権を与えるのだ。
正気の沙汰とは思えなかった。
「え・・・えっと・・・」

ここで間違えたら、今後誤答が許されない。
重圧が村上の心を蹂躙していく。
しかし、どんなに避けたいことであったとしても、命令である以上、答えざるを得ない。

――オレなんかが当てられるはずがないっ!

534 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:15:33 ID:???
シーエンチャンス!

535 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:15:35 ID:Gi3+TR+j
>>531

またお前かwww

536 :宣戦布告 26:2010/03/24(水) 03:17:13 ID:???
激流のように掻き乱れた思考から導き出された解答を村上は唇から漏らした。
「「3」・・・「3」はどうでしょうか・・・?」
「「3」・・・だと・・・?」
「あの・・・ゲームの主催者は帝愛、在全、誠京の3グループで、
和也様、利根川様、一条様も3人だから・・・
「3」は我々にとって、とてもなじみ深い数字で・・・」
パニック状態故にしょうがないことだが、村上の論理はこぎつけでしかない。
普通の人間なら、パートナーの無様な姿を目の当たりにして絶望を覚えることだろう。
しかし、和也はそれに当て嵌まることはなかった。
「確かに、「3」って数字はよく絡んでくるよな・・・」
村上の言葉を受け入れ、「3」のボタンへ指を動かし始めたのだ。

「え・・・」
まさか、失態を重ねた男の言葉を素直に受け入れるとは思わず、村上は防衛本能から理性を取り戻す。
「やめてくださいっ!私の言ったことは支離滅裂っ!もし、間違えたら・・・」
和也の指が「3」のボタンの手前で止まる。
「確かに・・・お前の言ったことは間違っているな・・・」
和也の言葉に、思い留まってくれたかと村上は安堵を覚える。
「そうですよ・・・だから、もっと冷静になって・・・」
和也は呆れたような溜息をつくと、“どうも・・・オレとお前の認識は少しずれているようだ・・・”と呟く。
「お前が間違っていることは・・・お前も含めて、オレ達は「4」人ってところだっ!」
和也の指が弾かれたように移動し、「4」を力強くプッシュした。
「なんですかっ!その理屈はっ!」
村上は和也が目上の人間に当たることも忘れ、金切り声で叫ぶ。
先ほどの村上の選択理由も半ば投げやりなものであったが、和也の理由も負けず劣らず、いい加減極まりない。
サイコロの目のような運だめしで正解を当てられるはずがない。
“終わった・・”と、心の中で村上が嘆いたその時だった。

537 :宣戦布告 27:2010/03/24(水) 03:18:19 ID:???
『正解』

ピンポンという軽い機械音とともに五つの枠の最後の欄に「4」が浮かび上がる。
ちょうど、画面で見ると、

□□□□4

このように表示されている。

「う・・・うそ・・・」
村上は口を中途半端に開いたまま、画面を見つめる。
しかし、枠の中に4という数字が入っていることと、イラストに線が追加されていないことから、これが現実であることを認識する。

「や・・・ヤッター!!!」
村上は喜びを体現するが如く、雄叫びをあげる。
今まで不正解が続いていただけに、負のスパイラルから抜け出した解放感は格別である。
それを横目で見ながら、和也は緊張を緩めたような吐息を漏らす。

――やっと、オレ達に流れが来たかっ!

村上に大事な局面を委ねたのは特に理由はない。
しいて理由を問われれば、ヒントが当てにならない状況下で、誰が数字を選択しても同じこと。
ならば、あえて自分ではなく、村上に選ばしたら正解を当てるかもしれない・・・という直感が働いたからとも言うべきだろうか。

和也はこうしたら事態が大きく動くかもしれない、面白い展開になるかもしれないという直感が恐ろしく働き、それを形として生み出すことに長けている男である。
それを表わすように、和也が考えた拷問ショーが日夜開催される会員制レストランは常に客が絶えることがない。
また、その才能は「愛よりも剣」などの展開が読めない小説においても遺憾無く発揮されている。

538 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:18:32 ID:???
つ 支援

539 :宣戦布告 28:2010/03/24(水) 03:20:03 ID:???
その直感が今、勝利を確信している。

――この波に乗って、オレは這い上がるっ!

「村上っ!次の数字を指定するんだっ!」
「はいっ!では「1」とかどうでしょうか!」
村上も流れがあると感じているのか、張りのある声で返答する。
「構わないが・・・どうして・・・?」
「それは・・・」

村上の心に一条とともに、働いてきた裏カジノの日々。
一条が黒服によって、地下王国へ連れて行かれる瞬間が走馬灯のようによみがえる。
「・・・私を導いてくださった数字ですから・・・」

――“一”条だからか・・・

「いいぜ・・・!」
和也は金庫の「1」のボタンを押した。
何も考えない方が上手くいくときもある。
何より、村上の言葉に秘められた意志の強さが更なる前進の予感を覚えさせた。
そして、パソコンの画面に現れたのは――

『不正解』

ここまでだった。
運命は和也の予感、村上の希望をもろくも決壊させた。

540 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:21:16 ID:???
支〜援〜

541 :宣戦布告 29:2010/03/24(水) 03:23:27 ID:???
「あ・・・あぁ・・・」
村上の視界が水の上を漂う油のように、ぐにゃあと歪む。
画面のイラストに左足が追加された。
村上は立ち眩みにも似た感覚を覚え、額に手をやる。

「もう・・・チャンスは・・・」

「キャハハハハハ!」
小太郎がふんぞり返って呵々大笑する。
「さっきから村上の馬鹿の意見を聞いてチャンスを無駄に消費してばかりだね♪
不憫だよね・・・!か・ず・や・ち・ん☆」

――そうだ・・・その通りだ・・・

村上は拳を震わせ、歯をぐっと噛みしめる。
小太郎が言葉を発するたびに、村上の胸には刃が突き刺さるかのようだった。
その刃は自分への不甲斐なさであり、一条や和也への罪悪感であった。
村上はその場で土下座をせんばかりに深々と頭を下げる。
「和也様、私が至らぬばかりに申し訳・・・」
「謝る必要はねぇ・・・」
「えっ・・・」
全員が和也を見つめる。
和也は彼らと目線を合わせることなく、武器庫のテンキーを見入ったまま、口だけを動かす。
「言っておくが、お前に選択権を委ねたのも、それを了解したのもオレだ・・・
だったら、お前の選択はオレが責任をとる・・・当然だろ・・・?」
「か・・・和也様っ!申し訳・・・ござ・・・いませんっ・・・!」

542 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:24:07 ID:???
支援!支援!支援!

543 :宣戦布告 30:2010/03/24(水) 03:24:40 ID:???
――オレの失態なのに・・・

村上は膝を屈し、声もなく嗚咽する。
責められる立場のはずの村上を庇う一言。
村上は改めて和也の懐の深さを思い知ると同時に、今の和也がヨーロッパを統治した伝説のアーサー王や
シリア、エジプトを破竹の勢いで征服したアレクサンドロス大王などの英雄に匹敵するように思えてならなかった。

「自分で責任を負う・・・かっこいいね☆」
小太郎は舞台の役者が感動を表現するかのように両手で胸を押さえ、白々しい感嘆の声をあげる。
「僕・・・そんな和也ちんに心打たれちゃった☆
だから、特別にヒントあげちゃおうかな〜♪」
「なんだって・・・!」
小太郎の甘い誘惑に村上は思わず食いつく。
小太郎は“教えてあげてもいいんだけど〜”と勿体ぶると、ここが重要と指を左右に振ってジェスチャーする。
「土下座してくれたら、教えてもいいよ・・・和也ちんがね☆」

この屈辱的な言葉に、村上の胸に殺意が沸き起こる。
「ふ・・・ふざけるなっ!」
村上は画面を叩き割らんばかりの勢いでノートパソコンに掴みかかる。
しかし、悲しいかな、目の前にいる小太郎は所詮、液晶画面に映し出された映像でしかない。
いかに村上が力で訴えたところで何の意味も持たなかった。
小太郎は“カカカ・・・”と、弱者の無駄な足掻きに対する憐憫と嘲笑がこもった声でせせら笑う。
「だって、部下を守るんだろ・・・それくらいしてもらわなくっちゃ・・・☆」
村上は小太郎に牙を剥きながら叫ぶ。
「土下座なら、いくらでも私が・・・!」

544 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:25:26 ID:???
しぇん

545 :宣戦布告 31:2010/03/24(水) 03:27:08 ID:???
「村上っ!」
煙毒によって淀んでしまった空気をなぎ払うような、和也の低く力強い声。
嫌な予感に駆られて、村上が振り返ると、そこには膝と手を床についた和也の姿があった。
「ヒントを・・・教えてくれ・・・」
「和也様・・・」
これまでの和也は常に覇者としての貫録を見せつけながら、このゲームを先導してきた。
その貫録を一人の部下のためにあえて投げ出したのだ。
村上は目の前の光景がもやに浮かび上がる幻のように現実から乖離したもののように思えた。

「キャハハハッハ!!!」
この直後、小太郎は鬼の首を取ったような高笑いを響かせる。
「さっすが、和也ちん・・・☆どう?どう?どんな気分っ?」
和也が下手に出たと分かるや否、小太郎はここぞとばかりにプライドを粉砕するような心無い質問を浴びせてくる。
「き・・・貴様ぁ・・・!これ以上の屈辱を・・・!」
怒りが沸点に達した村上はいよいよ画面を叩き割らんと、ノートパソコンを握りしめた。
その時、和也があの唯我独尊を体現したような尊大な笑みで顔を上げた。

「頭下げてやったんだから、早くヒントを出せよ・・・このパシリがっ・・・!」
「なっ・・・!」
小太郎はガクガクと歯を震わせる。
和也は無意識に“パシリ”という言葉を使ったが、小太郎にとっては不良にこき使われ、辛酸を舐めてきた学生時代の象徴である。
思い出したくもない屈辱の過去が嘔吐のように胃から逆流する。

「何それ、土下座したから悔しいんでしょ!とっても見苦し・・・」
「オレは別に何とも思っちゃいねぇよ・・・」
和也は小太郎の雑言に横やりを入れる。
「オレは優勝するためなら、何だってするって決めている・・・殺人だって辞さない・・・
頭を下げたのも、オレと村上の生存率を上げるため・・・
土下座は目的のための手段でしかない・・・」

546 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:27:36 ID:???
4○

547 :宣戦布告 32:2010/03/24(水) 03:28:57 ID:???
――そうきたか・・・

小太郎はかつての経験から知っている。
いじめなどで精神的に痛めつけられた人間は己の心を守るために、
標的にされたのはたまたま自分がその場に居合わせただけなどと自己弁解をして己を慰める。
先ほどの和也の高言も弁解でしかないのだと。

「強がりはよくないなぁ・・・やっぱり見苦しいっ!僕には分かっちゃうんだからっ!」
「そうだ・・・いいこと教えてやるぜ・・・」
和也は小太郎の言葉を無視するように立ちあがると、椅子に座り、足を組む。
「お前さ、ヒントを与えるために、あえて土下座を要求したよな・・・
それは言われた相手がどんだけ腹立たしさを覚えるのか知っているから・・・
つまり、経験・・・いじめにあった経験がある・・・
この状況でそれを望むのも、自分より下の人間がいるっていう優越感に浸かりたいからなんだろ・・・
かつて粉々に砕けたプライドを満たすために・・・」

小太郎の息が過呼吸の如く荒々しく乱れる。
和也の言葉は小太郎の過去を見透かしているかのように的を突いてくる。

――こいつに何が分かるっ!

「和也ちんの想像力は貧困だなぁ!
自慢じゃないけど、僕が卒業した高校は地元じゃ超有名なワルの巣窟ヤンキー高校っ!
僕はその不良グループの中核・・・!
舎弟もいたっ・・・!
この頭も中核だからこそのステータスっ!」
小太郎は和也達に後頭部を見せる。
そこには「城」を逆さにした文字が髪の毛で書かれていた。
「皆、この文字を入れた僕を恐れ、傅いたっ・・・!
そんな僕がいじめられていたなんて、とってもおかし・・・」
「墓穴を掘ったな・・・」

548 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:29:36 ID:???
四円

549 :宣戦布告 33:2010/03/24(水) 03:30:27 ID:???
小太郎の悲痛とも言える否定を、和也は失笑ひとつで一蹴する。
「何が中核だ・・・!
普通、後頭部に文字を入れるっていう格好悪い事、誰がする!
本当は強要させたんだろ・・・!お前だけ・・・!」
「や・・・やめろ・・・」
小太郎は和也の言葉から逃れるために耳を塞ごうとする。
しかし、和也は“まだまだ、証拠があるぜっ!”と、その暇を与えることなく、更なる追撃をする。
「お前の芝居じみた態度!
素顔が分からなくなるほどのメイク!
奇抜すぎる衣装っ!
それは素の自分を否定する過程で生まれた虚栄の結果だっ!
弱い自分はもういない・・・!
今、いるのはゲームの司会者として輝いている自分・・・!
そう己に言い聞かせ、事実から目をそらす・・・!
己の傷を抉らないようにするためになっ!」
尋問するかのごとく、小太郎の暗部の記憶を暴き続ける和也。
小太郎にとって、今の和也の行為は胸を?っ捌かれ、臓物という名の過去を引きずり出されていると言ってもよい。
抉られた傷にもがき苦しむ小太郎に対して、和也は止めを刺す。
「なんだ図星か・・・赤いぜ・・・顔が・・・!」

「がはっ・・・!」

殺意の念が旋風のように頭の中で吹き荒れる。
やがて、その旋風は心の殻を破り――

「があ〜〜〜〜っ!」

小太郎は頭を押さえながら、テーブルに何度もぶつける。
かつての己を否定するが如く。

550 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:31:24 ID:???
sea yen

551 :宣戦布告 34:2010/03/24(水) 03:32:24 ID:???
――兵藤和也っ!殺すっ!殺すっ!殺すっ!

小太郎は最終手段に出る。

「今のでお前のイメージ、超ダウンっ!超ダウンっ!
僕に暴言を吐いちゃうと、貰えるヒントも貰えなく・・・」

「兵藤和也・・・その洞察力・・・気に入ったぞっ!特別にワシからヒントをやろう・・・」
在全が朗らかに小太郎の言葉を遮った。
小太郎は戸惑いながら在全に申し立てる。
「けど、こいつは僕に対して暴言を・・・」
在全から年と不釣り合いな無邪気な笑みが消える。
「こやつはお前の約束通り、土下座をした・・・
今更、お前の感情で反故にする気か・・・
貴様は自分をこの場を支配する神とでも思っておるのか・・・」
氷片を散りばめたような在全の嗄れ声。
小太郎は体中から汗をだらだら流しだす。
これ以上、逆らえば命がないかもしれない。
そんな直感から押し黙ってしまった。

在全はその沈黙を肯定と受けとると、再び朗笑を浮かべ、それを和也たちに向ける。
「ヒントは・・・嫌なヤツと嫌なヤツが出会うと起こること・・・と言えばよいかの・・・」

「え・・・嫌なヤツ・・・」
村上は在全のヒントに困惑の色を見せる。
答えの数字とまったく結びつかないからだ。

――のらりくらりとかわされているだけじゃ・・・

552 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:33:09 ID:???
支援っ…!

553 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:34:17 ID:???
小太郎学習しろwwwwwwww

554 :宣戦布告 35:2010/03/24(水) 03:34:57 ID:???
在全たちに疑心を抱いたその時だった。
和也は村上に手を差し出した。
「メモ帳を貸してくれ・・・それとペンも・・・」
「え・・・はい・・・」

――こんな時に突然・・・

村上は和也の意図が分からないが、時間が押し迫っているため、テーブルにあったメモとボールペンを急いで渡す。
和也はそれに何かを書き、睨みつける。
「確かに・・・本質だな・・・」
「和也様・・・?」
村上は謎めいた呟きを問い質したくなる衝動にかられるも、メモを一刀両断するかのような和也の鋭利な眼光に、言葉が竦んでしまった。

時間が1分を切った時だった。
和也がその重い口を動かした。
「答えは分かったが・・・確証はない・・・」
和也はドアの方へ指を突き刺す。
「今すぐお前は外へ逃げろ・・・そうすれば、爆発からは免れる・・・」
突然の和也からの提案。
万が一、和也の首輪と金庫内の時限式爆弾が同時に爆発したとしても、外に逃れれば致命傷を避けることはできる。

「そ・・・それは・・・」
死へ恐怖か、生への執着か。
迷いが村上の身体の奥歯をガチガチと震わせる。

――今、逃げ出せば・・・助かる・・・

555 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:35:35 ID:???
応援

556 :宣戦布告 36:2010/03/24(水) 03:36:27 ID:???
甘い言葉が村上の心をくすぐるように囁きかける。
しかし、その甘い言葉に覆いかぶさるように一条の言葉が脳裏に浮かび上がる。

――翼は・・・両翼が揃わなければ、飛翔できない・・・
   共に生き抜き・・・このゲームから飛び立とう・・・

「嫌ですっ!」
村上は奥歯の震えをかみ殺すと、キッと顔をあげた。
「私は黒服っ・・・このギャンブルルームを守るのが仕事ですっ!
それに・・・」
村上の表情が凛然と輝く。
「これから戻られる一条様に・・・誰がコーヒーを淹れるのですかっ!」

――こいつの一条への崇拝ぶりはオレの範疇を超えているな・・・
呆れながらも、和也は村上の意志の強さに感服を覚える。
「なら・・・一緒に死んでくれっ!」
和也は指を動かした。
「答えは「3」「5」「6」「7」だっ!」

――爆発するっ!

主君のために殉死する決意を固めたところで、生きたいと願っている部分も存在する。
その思いが村上の耳を塞がせ、目を瞑らせる。

――ああ・・・死にたくはない・・・むしろ、死ぬならひと思いに・・・

人間故にしょうがないことではあるが、俗物的な考えが頭をよぎる。
早鐘のような鼓動を身体で感じながら、やがて村上はあることに気づく。

557 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:37:09 ID:???
死線…!

558 :宣戦布告 37:2010/03/24(水) 03:37:24 ID:???
――あれ・・・痛みを感じない・・・

村上は薄く眼を開ける。
事務室は黒こげになった様子もなく、あの無機質さと無個性さを維持している。
和也が生気に溢れた瞳で村上を見上げていた。

「村上・・・武器庫、開いたぜ・・・」
「えっ・・・」

武器庫の扉が重厚な金属音を響かせ、ゆっくり開いていく。
村上は耳から手を離す。
いつの間にか、和也の首輪の警告音も消えていた。

「まさか・・・正解・・・」
「そうだ・・・正解だ・・・」
「正解・・・」

様々な感情が交錯しすぎたあまり、村上の思考は半ば停止している状況に近い。
しかし、それが現実だと理解すると、霧が晴れていくように心の中が澄み渡り、勝利した喜びが全身に伝わっていく。

「か・・・和也様っ!!!!」
嬉しさのあまり、村上は叫びながら和也に抱きつく。
“オレはそんな趣味持ってねぇよ・・・”と苦笑するも、村上の気持ちも分からなくもないため、あえてなすがままに受け入れる。

「どうして・・・どうして・・・分かったのですか・・・!」
「ああ・・・決定打は在全からのヒントだな・・・」
嬉し涙を流しながら問う村上に和也はメモ帳を見せる。


559 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:38:26 ID:???
圧倒的支援…!

560 :宣戦布告 38:2010/03/24(水) 03:38:38 ID:???
そこには――

     18782
    +18782
    ――――――
     37564

という計算式が記入されていた。
「正解は37564・・・“皆殺し”だっ!」
「正解は“皆殺し”!皆殺しなんですねっ!・・・・・・って、これ、語呂合わせ・・・ですよね・・・」
あまりに突拍子もない解答に、村上はほとばしる熱き感動が急速に冷めていくのを感じる。
「だから、確証がないって言っただろ・・・馬鹿馬鹿しすぎて・・・」

「馬鹿馬鹿しいとは何じゃい・・・!」
在全が画面から憤慨だと言わんばかりに拗ねた表情で和也たちを睨みつける。
「ワシはヒントで言ったじゃろ・・・嫌なヤツ(18782)と嫌なヤツ(18782)が出会う(+)と起こることと・・・
わざわざ“英語が分からぬ類人猿”と言って、日本語の解答であると暗に示しておるし、
何より、小太郎が冒頭で言ったわい・・・ヒントは“このゲームの本質”――“バトルロワイアルの本質”とな・・・それが・・・」
在全に細い眼球に針のような光が宿る。
「・・・お主の目的じゃろ・・・兵藤・・・」

――オレの嘘ルールについて示しているのか・・・
  最終的に一条も利根川も殺すってことを・・・

和也は在全の眼光に不快な棘を感じる。
しかし、それをぼかして和也に伝えたということは露呈する気はないらしい。
和也も“まぁ・・・間違いはねぇかな・・・”と在全と同じように濁した返答でその場を誤魔化す。
「まったく・・・ワシが一生懸命考えたのにのぉ・・・」
未だに“馬鹿馬鹿しい”という酷評が気になるのか、在全はぶつぶつと小言を呟き続ける。

561 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:41:19 ID:???
し・え・ん!

562 :宣戦布告 39:2010/03/24(水) 03:41:37 ID:???
――そりゃあ・・・命をかけた問題の解答がトンチってのはあり得ないだろ・・・

ゲーム開始直後、腹を立てた黒崎の気持ちが今となってはよく分かる。
和也は複雑そうな面持ちで頬を掻いた。


「和也様・・・おめでとうございます・・・」
ゲームが終了して、やっと音声機能が回復したらしく、黒崎は深々と頭を下げる。
「あぁ・・・黒崎もお疲れ様・・・」
時間としては10分きっかりであったが、黒崎も心労が溜まってしまったのだろう。
幾分、やつれたようにも見える。
「ところでさ・・・村上の件なんだけどよ・・・」
探りを入れるかのように尋ねる和也に、黒崎は肩の力を抜いたような微笑を浮かべる。
「和也様はご自身のお力で権利を獲得されました・・・
今更、私がとやかく言う筋合いはございません・・・
村上の行動はマニュアルからよほど逸脱したことがない限り、目を瞑りましょう・・・」
「それってさ・・・勿論・・・」
黒崎は一瞬、キョトンとするも、和也の言いたいことをすぐに察した。
「ええ、勿論・・・ギャンブルルームの備品の貸し出しは自由・・・
盗聴器や武器庫・・・我々からの特別支給品です・・・」
“ただ、あくまでも今回だけですから・・・”と付け加える。
「分かってるぜっ!」
弾んだ声で和也は了解する。
それだけあれば、次の戦略の幅が大きく広がるというもの。
和也の眼にはその期待が赤々と燃え上がっていた。


563 :宣戦布告 40:2010/03/24(水) 03:42:34 ID:???
――まさか、本当に当ててしまうとはな・・・

黒崎が解答の意味に気付いた時、すでに音声が切られた後であった。
もともと和也は頭が切れるとは言え、今回の問題はあまりにもミスリードが多すぎた。
その上、和也の首輪は本当に作動していた。
もし、和也が間違った解答を選択していれば、首輪は爆破していたのだ。

――これが・・・帝王の血というものか・・・

その逆境を撥ね退けた和也の肝勇に、黒崎は呆れと敬意を含めた苦笑をする。
しかし、苦笑しながら、すでに黒崎の心は別のことを考えていた。

――あの男は何を考えているっ・・・!

あの男とは勿論、在全のことである。
和也は殺し合いに手を染める数少ない者――バトルロワイアルの潤滑油である。
その貴重な潤滑油を、己の欲求を満たすためなら、結果的に潰れてしまっても構わないという在全に、黒崎は憤懣を覚える。

――このゲームを早々に破綻させる気かっ!

「黒崎殿・・・随分、お疲れのようじゃの・・・」
在全が画面から覗き込むように黒崎を確認する。
“貴様が全ての元凶だ”という沸き起こる暴言をなんとか押さえると、“予想外のことが多すぎましたので・・・”と失礼がない程度の皮肉で答える。
しかし、在全にはその意味がまるで伝わっていないらしく、“どうやったら、黒崎殿の気力が回復できるかの・・・”とありがた迷惑なことに真剣に考えてくれている。

――貴様がすぐにでも画面から消えてくれれば済むことだ・・・

564 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:42:52 ID:???
支援+支援

565 :宣戦布告 41:2010/03/24(水) 03:43:22 ID:???
在全への不満が湯水のように溢れてくる。
1時間前に戻って、後藤に渡した書類を処分してしまいたいと望んだ直後だった。
在全は何かを思い付いたらしく、手をポンと叩いた。
「そうじゃ!コーヒーを今すぐ飲むのじゃっ!黒崎殿っ!」
「はぁ・・・」
大方、村上が一条のためにコーヒーを準備していることからヒントを得たんだろと、毒にも薬にもならないアドバイスに黒崎は力のない返事で答える。
嫌気が差したことを露骨に示す黒崎の抵抗も空しく、在全は“唾液の中のクロモグラニンAという成分がコーヒーによって低下しての・・・”と勝手に講義を始めてしまった。

「あの・・・私は明日の準備もありますので、これで・・・」
黒崎の言葉にやっとその意志を理解したのか、不平を鳴らす。
「まったくツンツンしおってのぉ・・・ワシはお主の意志を承知してこんなギャンブルを仕組んだというのに・・・!」

――そんなこと誰が望むかっ!

と、叫びそうになった時、ある考えが黒崎の脳裏をよぎった。

「・・・とにかく明日の準備がございますので・・・」
黒崎は在全の“コーヒーを飲むのじゃぞ!”という言葉を受け流すようにモニターの画面を切ってしまった。

566 :宣戦布告 42:2010/03/24(水) 03:44:34 ID:???
黒崎はパソコン画面をデスクトップにすると、近くのリクライニングチェアに身を預けた。
「つかの間の休息か・・・」
しかし、黒崎はそれがすぐに終息することも理解していた。
黒崎はリクライニングチェアの近くのマイクに囁く。
「コーヒーを一杯・・・」
黒崎が全てを言い終わる前に扉をたたく音が部屋に響く。

――やはり・・・早かったな・・・。

黒崎は在全の言葉を振り返る。

――ワシはお主の意志を承知して、こんなギャンブルを仕組んだというのに・・・!

勿論、ギャンブルに関して、黒崎は在全に何の意志も示してはいない。
この言葉は自分勝手な在全が己を正当化するための押し付けがましい言い訳のように聞こえる。
しかし、それにしても状況上、不自然すぎる言い回しである。

――在全が承知した私の意志とは、ギャンブルを執り行いたいという意志ではなく、
   私の意志――提案に対する返答っ・・・!

黒崎は1時間程前にギャラリーへのクレームの返答文書を後藤に渡した。
その際、文章の最後にこのような内容を付け加えたのだ。

『今回のギャンブルが成功しました折には兵藤和尊を会長の座から引きずり落とし、
帝愛と在全、そして、誠京・・・その三者で手を結び、更なる発展を築きましょう』

――もし、返答があるならば、何らかの手段で伝える必要がある・・・

黒崎は気だるそうに身を起こし、扉を開けた。
扉の先には、普段見慣れない黒服がコーヒーの用意された盆を持って立っていた。

567 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:45:05 ID:???
=大支援

568 :宣戦布告 43:2010/03/24(水) 03:45:16 ID:???
暗い部屋の中、壁全体を覆いつくすように配置されたテレビ画面の人工的な光だけがその男を照らし出す。
男の名は兵藤和尊。
兵藤は先ほどの和也たちのギャンブルのある場面を繰り返し確認していた。
その個所は在全が解答を和也たちに説明した時の最後の言葉。

『・・・お主の目的じゃろ・・・兵藤・・・』

この言葉は一見、和也に向けられたものに思われる。
しかし、それまで在全は和也のことを“兵藤和也”とフルネームで呼んでいた。
この場になって、それを変えるのは不自然である。
つまり、これは和也に向けられたものではなく――

「ワシに向けられたもの・・・ワシの計画は予想がついておると言いたいのか・・・」

――37564・・・皆殺し。

兵藤は忌々しく眉をひそめる。
兵藤の最終目的は主催者と対主催がぶつかり合い、共倒れになること。
在全がその計画をどこまで把握しているのかは分からない。
だが、これだけは言える。
今回の和也たちのギャンブルは連絡を遮断している兵藤への――

「宣戦布告か・・・」

569 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 03:46:59 ID:???
しししえん

570 :代理 宣戦布告44:2010/03/24(水) 03:53:56 ID:???
【E-5/ギャンブルルーム内/深夜】

【兵藤和也】
 [状態]:健康
 [道具]:チェーンソー 対人用地雷残り一個(アカギが所持)
     クラッカー九個(一つ使用済) 不明支給品0〜1個(確認済み) 通常支給品 双眼鏡 首輪2個(標、勝広)
 [所持金]:1000万円
 [思考]:優勝して帝愛次期後継者の座を確実にする
     死体から首輪を回収する
     鷲巣に『特別ルール』の情報を広めてもらう
     赤木しげるを殺す(首輪回収妨害の恐れがあるため)
     盗聴を続ける、利根川、一条に指示を出す
※伊藤開司、赤木しげる、鷲巣巌、平井銀二、天貴史、原田克美を猛者と認識しています。
※利根川、一条を部下にしました。部下とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※遠藤、村岡も、合流して部下にしたいと思っております。彼らは自分に逆らえないと判断しています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、その派閥全員を脱出させるという特例はハッタリですが、 そのハッタリを広め、部下を増やそうとしています。
※首輪回収の目的は、対主催者の首輪解除の材料を奪うことで、『特別ルール』の有益性を維持するためです。
※しづかの自爆爆弾はアカギに解除されましたが、そのことに気づいていません。盗聴器はアカギが持っています。 (今は和也のみ盗聴中)
※第二放送直後、ギャンブルルーム延長料金を払いました。3人であと3時間滞在できます。
※武器庫の中に何が入っているかは次の書き手さんにお任せします。

571 :代理 宣戦布告45:2010/03/24(水) 03:54:48 ID:/V1L0ajw
【E-5/病院/深夜】

【一条】
[状態]:健康
 [道具]:黒星拳銃(中国製五四式トカレフ) 改造エアガン 毒付きタバコ(残り18本、毒はトリカブト) マッチ スタンガン 包帯 南京錠 通常支給品×6(食料は×5) 不明支給品0〜3(確認済み、武器ではない)
 [所持金]:3600万円
 [思考]:カイジ、遠藤、涯、平田(殺し合いに参加していると思っている)を殺し、復讐を果たす
     復讐の邪魔となる(と一条が判断した)者、和也の部下にならない者を殺す
     復讐の為に利用できそうな人物は利用する
     佐原を見つけ出し、カイジの情報を得る
     和也を護り切り、『特別ルール』によって村上と共に生還する
    利根川とともにアカギを追う、和也から支持を受ける
※利根川とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、 その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※通常支給品×5(食料のみ4)は、重いのでE-5ギャンブルルーム内に置いてあります

572 :代理 宣戦布告46:2010/03/24(水) 03:55:32 ID:???
【利根川幸雄】
 [状態]:健康
 [道具]:デリンジャー(1/2) デリンジャーの弾(残り25発) Eカード用のリモコン 針具取り外し用工具 ジャックのノミ 支給品一式
 [所持金]:1800万円
 [思考]:和也を護り切り、『特別ルール』によって生還する
     首輪の回収
     遠藤の抹殺
     カイジとの真剣勝負での勝利・その結果の抹殺
     アカギの抹殺、鷲巣の保護
     病院へ向かう
     一条とともにアカギを追う、和也から支持を受ける
※両膝と両手、額にそれぞれ火傷の跡があります
※和也の保護、遠藤の抹殺、カイジとの真剣勝負での勝利・その結果の抹殺を最優先事項としています。
※鷲巣に命令を下しているアカギを殺害し、鷲巣を仲間に加えようと目論んでおります。(和也は鷲巣を必要としていないことを知りません)
※一条とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、 その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※デリンジャーは服の袖口に潜ませています。
※Eカード用のリモコンはEカードで使われた針具操作用のリモコンです。電波が何処まで届くかは不明です。
※針具取り外し用工具はEカードの針具を取り外す為に必要な工具です。
※平山からの伝言を受けました(ひろゆきについて、カイジとの勝負について)
※計器からの受信が途絶えたままですが、平山が生きて病院内にいることを盗聴器で確認しました。(何かの切欠で計器が正常に再作動する可能性もあります)
※平山に協力する井川にはそれほど情報源として価値がないと判断しております。
※黒崎が邪魔者を消すために、このゲームを開催していると考えております。
※以前、黒崎が携わった“あるプロジェクト”が今回のゲームと深く関わっていると考え、その鍵は病院にあると踏んでおります。
※E-5ギャンブルルーム前には、勝広の持ち物であったスコップ、箕、利根川が回収し切れなかった残り700万円分のチップなどが未だにあります。

573 :代理 宣戦布告47:2010/03/24(水) 03:56:16 ID:???
【D-1/地下王国/深夜】

【兵藤和尊】
 [状態]:健康 興奮状態
 [道具]: ?
 [所持金]: ?
 [思考]:優勝する 黒崎の足を引っ張る 主催者達を引っ掻き回す

※次のようにスパコンの予測が出ました。
何らかの要因で予測が外れることもあれば、今後条件を満たせばさらに該当者が増えることも考えられます。

大型火災が発生したことで、高熱となった建物の内部及びその周囲にいた参加者の首輪は電池の水分が蒸発し、失われた。
それによって、0時30分現在、田中沙織は約18時間。遠藤勇次は約2時間30分後に首輪が機能停止する。
※在全が兵藤の思惑を察していると考えております。

574 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 04:07:37 ID:???
乙!!
かなり長編で楽しかった!
兵藤の思惑はこれからどうなるのか…クライマックスが楽しみだ
書き終わるの大変だったろうけどお疲れ様です!

575 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 10:31:49 ID:???
在全様かわいいなー

576 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 16:18:54 ID:???
ハングドマン…英語の授業思い出した
カイジは途中までしか読んでないけど村上かわいいな
ちゃんと続きも読んでみるか

577 :マロン名無しさん:2010/03/24(水) 20:38:26 ID:???
投下乙です!
和也がすごい有利になってしまった・・・

578 :マロン名無しさん:2010/03/25(木) 01:11:13 ID:???
長編乙です
ただ、ハングマンの答えが某TV番組で見たことのあるものだったのが少し残念だった…

579 :マロン名無しさん:2010/03/25(木) 09:07:18 ID:???
在全様も某TV番組見たんだよ
あまりのへぇ〜に「これじゃ!」と思ったんだよ
仕方ないよ

580 : ◆uBMOCQkEHY :2010/03/25(木) 12:37:17 ID:???
代理投下してくださった方、感想を下さった方、
皆様ありがとうございました。

>>578
申し訳ございません。
独創性ある解答が思いつかない書き手の頭が残念なだけです。
(実はネタのヒントはそこから・・・)

ただ、これは割と有名な面白い語呂合わせらしく、
このほかにも、学生時代、授業で話を聞いたことがあります。

ちなみに、その授業で聞いた話で、
今回の本編では書かなかったトリビアですが、
37564(皆殺し)+37564(皆殺し)=75128(長い通夜)
となるそうです。
(語呂合わせが苦しいのですが・・・)

最後まで読んでくださりありがとうございました。


あと、皆様にお伺いしたいことがあるのですが、
今、まとめサイトで、ほかのパロロワにあるような
福本ロワ用語集をいつか作ってみたいなと考えております。
こんなまとめ一覧を作ってほしいという意見がありましたら、
ぜひ、ご連絡ください。

581 :マロン名無しさん:2010/03/26(金) 01:10:47 ID:???
小太郎、悲惨ないじめられ時代再来っ・・・

582 :マロン名無しさん:2010/03/26(金) 02:22:45 ID:???
いや答えが何かのパクリだか何だかしらないが
これは良作だろ…圧倒的に…!
小太郎と村上はともかく他の3人の腹のさぐりあいとか
そういうところも評価すべき


てかギャンブルの答えが37564ってのも
ゲームの本質、兵藤への脅し、原作っぽさ
と見事に三役こなしてる

さらに今まで空気の在全様を取り上げて
とぼけてるふりして実は計算高いっていう
主催として申し分の無い腹黒さを発揮させた

まじすげーよ書き手さん…


583 :マロン名無しさん:2010/03/26(金) 05:12:39 ID:???
圧倒的乙です…!

あまりに面白くて手に汗握る展開、ぞくぞくしました。
小太郎や在全のキャラ、「零」特有のギャグっぽさをうまく取り入れてるし
>>582さんもおっしゃってますけど37564の語呂合わせの意味が三重に合わさってるとかすごいですよね。
あと、「宣戦布告」も、二重の意味になっている。在全が兵藤に負けてない。
どのキャラもすごく「らしさ」があって読みながら何度も頷いてしまいました。

以下、自分的に心に残った一番の名台詞
>「悪いが・・・オレ・・・英語・・・苦手なんだっ・・・!」

584 :マロン名無しさん:2010/03/26(金) 07:50:50 ID:???
そこ、和也が学生っぽくていいよねw
顔で年齢をかなり上だと判断した村上も地味に受けたw

585 :マロン名無しさん:2010/03/26(金) 14:07:01 ID:???
かなりの老け顔だし、着てる服にバブル臭がするし、
父親の年齢が年齢(60代後半?)だからしょうがないわww
自分も原作で登場したときは、始め20代後半〜30代前半だと思ったもの。

586 :一致20/1 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 00:45:33 ID:???

ひろゆきと平山はアカギを追う決心をした後、鷲巣と別れ、病院が見えない所まで移動した。
そしてまず首輪探知機の電源を入れる。

F-4の、地図で見ると商店街入口付近に3つの光点が集中している。その光はアカギではない。
その3つの光点は先程からずっと動く様子がないし、アカギがそこまで遠ざかるにはまだ時間的に早すぎる。
同時に、東へと勢いよく遠ざかっていく2つの光点が表示されていて、これは利根川と一条のもの。
それと同時に、西へと勢いよく遠ざかっていく2つの光点が表示されていて、これはアカギとしづかのもの。
あと、鷲巣のものである光点が病院に1つ、病院近くのギャンブルルームに謎の光点が1つ。

ひろゆきと平山が周囲を警戒しながらアカギの後を追い、F-4へと差し掛かった頃。
探知機に、利根川達のものと思われる光点が一度止まり、東の方からこちらを追う形に変化した。
同時にアカギとしづかのものと思われた2つの光点は急に二手に別れ、別々の方向へと動き始めた。

「別れた…!?」
走りながら、ひろゆきと平山は同時に落胆の声を上げる。
どちらがアカギの光点なのか判別が出来ないからだ。

「しかも、道標がここで止まってるぜ」
平山が地面に目を向け、言った。そこはちょうど商店街南側入り口、路地の交差点にあたる場所だった。

587 :一致20/2 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 00:47:56 ID:???

「……僕達も二手に分かれて探すか?探知機はアンタに預けてもいい…!」
「それは…。もし俺の見つけたほうがアカギであれば、正直、俺じゃ足止めさせておける自信がない。
奴とは顔見知りではあるが、一応、敵同士のようなものだからな。逃げられてしまうかも…。
だから、俺が一人で行動してもあまり意味がないんじゃないか」
ひろゆきの提案に、平山は肩を落とし、答える。

(まあ、敵と認識されてたかどうかも怪しいが、名を騙ってたんだ、良く思われちゃいないだろうし…。)
平山が自嘲気味に考えていると、ひろゆきが探知機を見て声を上げる。

「ぐっ…、利根川達が近づいてくる…!」
「ひろゆき、ここはいったん隠れて利根川達をやり過ごさないか」
「でも、ここでまごついてちゃ、赤木さんがどんどん離れていってしまう…!」
「いや、落ち着いて考えてみろ。
もし利根川達とアカギの向かう方向が同じだった場合、俺たちは利根川達の後ろを取れるんだぞ。
アンタは、アカギと話がしたいんだろう…。場合によっちゃ奴らからアカギを助けられるじゃないか。」
「平山…。」
「もし利根川達が見当違いのほうへ向かったらそれはそれで、安心してアカギを追える。
別れた光点のどちらがアカギなのか不明だから、確率は五分五分だが。
これが、今出来る最善の策じゃないか?」


平山は利根川と鉢合わせになる恐ろしさに胃をキリキリと痛めながらも、順序立ててひろゆきを説得した。
ひろゆきが焦っているのを見て、自分がしっかりしなければ、と思ったのだ。その思いが今の平山を強くしていた。

588 :一致20/3 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 00:49:15 ID:???

平山の言葉に、ひろゆきはとうとう頷いた。
もし自分が逆の立場であったら、同じことを提案するだろうと思ったからだ。

二人は、商店街入口の民家の中にずっと位置を変えず点灯したままの3つの光点を不気味に思いながらも、
少し離れたもう一つの民家の中へと身を隠した。



「ここで手掛かりは途絶えているか……。」
利根川は交差点の真ん中で苛立たしげに舌打ちした。

「どうしますか?予想できる方向としては…」
「待て、和也様が『トイレ』と仰られて通信が途切れてから、十五分以上も経っている。
もう一度、和也様に呼びかけてみる」
一条の言葉を制すると、利根川は携帯している盗聴器に向かって声をかけた。
「和也様…」

先程から和也に向かって何度も声をかけているのだが、返事が無いのだ。
「村上?……奴もいないのか。どうなっているんだ…」

まさか、和也様の身に何か起こったのではないか?そんな考えが利根川の脳裏を掠める。

589 :一致20/4 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 00:50:35 ID:???

いや、と利根川は己の考えを否定する。ギャンブルルーム内にいて「何か」が起こるなど考えられない。
……考えられないのだが、和也様がトイレに立ち、盗聴器のスイッチが消されてからかれこれ十五分。
異変が起こっていたとしても、和也様の身の危険を示すような『音』がこちらに届かない。察しようが無い。

「何か異変が起きている…。想像もつかないような異変が…。」
「異変、ですか…?」
「ああ。二人とも応答しないままなんておかしいじゃないか」
「そうですね…。では、一度引き返しますか。確かに、和也様の指示が得られないままでは…」

一条の言葉に、利根川のこめかみがひくついた。

“所詮、お前は指示待ち人間……!”
今まで生きてきた中で最も屈辱的だった言葉を思い出し、利根川の頭に血が上る。

「待て…。分かった。一条、お前だけ戻れ。俺はアカギを追う」
「ええっ…?」
「この蛍光塗料の跡、アカギがこれに気がついている可能性がある。
だが、気がついていない可能性もある。つまり、ただ単に、垂れ落ちていた塗料がここで尽きただけ、という可能性もな。
そこでだ。もし塗料に気がついていた場合、塗料の指し示す方向…。西側へと、アカギがわざわざ逃げるだろうか?
裏をついて、ここから別の方角へ逃げるのではないか」
「なるほど…確かにそうですね」
一条は利根川の言葉に頷く。


590 :一致20/5 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 00:55:58 ID:???

「だが、和也様からの情報によるとアカギはしづかを抱えて逃げているのだ、まだそう遠くへは行けまい。
だからお前は、西以外の3方位に注意を向け、アカギの姿を探しつつ元の路を戻るのだ。
アカギのこの塗料跡がもし罠であれば、アカギは俺達を出し抜いたことに安堵し、存外近くに留まっているかも知れん」
「なるほど…。和也様の下にも戻れますし、アカギも殺せたとすれば一挙両得ということですね」
「俺はもう一つの可能性、アカギがこの跡に気づかずに逃げている可能性を追う。
女一人抱えて走って、後ろを振り返る余裕がなかったかも知れんからな」
「わかりました…。流石は利根川先生ですね。緻密な洞察力…!」
「おべっかはいい…。よろしく頼むぞ」
「分かりました。和也様の下に戻り次第、すぐにギャンブルルームから連絡いたします…!
私達が互いに連絡できる手段はそれしかないですからね」
「うむ」
「では…お気をつけて」
「ああ」
二人はそこで頷き合うと、互いに反対方向へ向かって走り出した。


利根川は西へと走りながら、一条との会話を思い返していた。
(先程一条に話したことは、半分は本音…。だが半分は違う…!)

アカギは間違いなく塗料の跡に気がついているだろう、と利根川は考えていた。
あれ程の男が気がつかない筈がない。
では、利根川は何故、あえて他の3方向でなく、塗料跡の示す方向、西へと進むことを選んだのか。

591 :一致20/6 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 00:59:59 ID:???

(アカギは裏の裏をかく男だからだっ…!)
利根川はぎり、と奥歯を噛み締める。

(事実、すでに「裏の裏」をかかれて、病院前で逃げられたではないか。それも俺が予想した正反対の方向にだ。
つまり、あの時アカギは俺達を紙吹雪で撹乱させ、逃げたと見せかけてすぐ傍に隠れていたのだ。
そうして俺達が明後日の方向へと走っていったのを見計らって、逆に逃げた…!
ここから考えられること、アカギは罠を張ったと見せかけ、その実罠でもなんでもない方向に逃げている。
西方向に行った跡を残して、あえて西へ…!
あの時、俺の考え方は読まれていたのだ。そして奴は俺の洞察力の裏をかいてくる…!
多少それが危険な選択でも、構わず選択する。
『奴隷』を出したと見せかけておいて、実際に本当に『奴隷』を出すような選択でもな…!
まるで、あいつのように……!)

先程、一条が何気なく発した言葉を切っ掛けに、利根川の怒りはどうしようもなく沸騰し全身を焼き尽くすように熱く広がっていた。
鬼の様な形相で、路地を駆ける。
冷静さを欠いている状態。だが、今の利根川はそれに気がつかない。
結果としてはアカギの逃げた方向に無事向かっているのだが、
今の精神状態でアカギと出くわす、その危険性にまで考えが及んでいなかった。

592 :一致20/7 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 01:02:39 ID:???



利根川と一条が別れた数十秒後、平山とひろゆきは民家の入り口からそっと外へと出てきた。
「利根川が向かうことになったな…」
「ああ…。」
「……大丈夫か?平山…」

幾らか平常心を取り戻したひろゆきが、平山を気遣う。
平山は、額にびっしり脂汗をかいていた。夜目にもそれがはっきりとわかる。
「……大丈夫だ。それに、逆に考えてみると、これは安全でもあるんだ」
「あ、安全…?」

ひろゆきは目を見開いて平山を見る。平山は言った。
「利根川と合流した直後に他の参加者に襲われ、別れてからずっと、俺は不安でたまらなかった。
奴に見つけられたらどうしよう、リモコンを作動したらどうしよう、ってな。
だが、逆にこっちが利根川を見張り、後を追っていれば、どうだ…?
へまさえしなけりゃ、俺が利根川に見つかることはことはないじゃないか」
「なるほど…。怖い相手だからこそ、相手をよく見て、相手の死角に居続けることで、結果的に逃れるわけか」
「それに、俺は奴らの仲間に関する情報を探りたい…!」
「平山…?」
「ここへきて、ようやく気がついたんだ。
俺の記憶力…今までの経験…利根川達の話していた言葉…!
これを繋ぎ合わせたら、何か重要な切り札になるかも…!」
平山は拳を握り締めた。

593 :一致20/8 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 01:03:45 ID:???

「切り札、って…?」
「参加者の中にいる、俺達にとっての敵の存在…!」
「敵…利根川達に指示を出している仲間か。でも、それが…?」
「今ここで順番に説明してる時間はない。利根川の後を追おう。そのうち機会があれば説明する」

ひろゆきは頷き、平山と共に利根川を追い始めた。
アカギの可能性のある光点は2つとも、もう探知機の圏外になっている。
だが先程、利根川の走っていく方向、西側に、アカギの可能性のある光点の1つは進んでいったのだ。
二人にとって、利根川を追うことと、アカギを追うことは今や同じことであった。



時は数分前。
民家に隠れ、利根川達が現れるのを待つ間、平山は必死に頭を巡らせていた。
思えばゲーム開始当初、利根川にいいようにやられてから、不安と緊張でろくに考えていなかった。
だが、今は利根川の興味の対象がアカギに移っている為、多少冷静になって今までを振り返ることが出来た。

平山が元々持っていた「参加者名簿」。
これは本来、他の参加者に比べてゲームが有利になるはずの代物である。
では何故平山は、このゲームで最初に出会った人物、利根川の人相や、利根川の危険性に気づけなかったのか。

田中沙織の持っていた名簿とは違い、平山の持っていた名簿には顔写真が載っていなかったのである。

594 :一致20/9 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 01:05:10 ID:???

順を追って話そう。
平山はゲーム開始直後、一応は自分の支給品を確認した。
銃火器など、ゲームを有利に進められる武器が入っているかもしれないと考えてのことである。

ここで利根川と出会う前に参加者名簿を目にしているのだが、
それなら利根川の情報を見ているはずなのに、利根川の顔を見て驚いたりしている。

平山がカイジに参加者名簿を防具代わりに譲ったのも、名簿に顔写真が載っていないので、
見知らぬ参加者に出会っても、名前を知らなければ情報が役に立たない不完全なものだからである。
平山の参加者名簿にはトトカルチョを示すと思われる数字も載っていない。
だから、どの参加者がより危険か、とカイジや沙織のように予想し、用心する術がなかった。
もし載っていれば、数字に強い平山は、その数字の意味を注意深く考察して、用心していただろう。
…利根川の倍率は決して低くないのだから。

利根川に出会った時には、まだ自分と「安岡」と「赤木しげる」の項目と、参加人数くらいにしか目を通していなかった。
死にたくないという願望に心を支配され、今為すべきことが見えていなかったのだ。
また、もし参加者と戦わなければいけなくなったとき、相手のバックボーンを知っていると、
いざ相手に止めを刺す時やりにくいというか、躊躇してしまうかも、という思いもあった。
だが、それは『死』という可能性から目を逸らしたいが為の甘えでしかない。
冷静であれば、参加者名簿全てのページに目を通し、内容を記憶することに勤めていただろう。

そうすれば、利根川幸雄の名前を聞いたその時に、ある予感が走ったに違いないのだ…。

595 :一致20/10 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 01:06:37 ID:???

名簿に簡潔に書かれた、『「帝愛」グループの「元」No.2である』…という、値千金の情報。
そして、参加者全員に配られている支給品、メモ帳。そこには『TEIAI』と薄く印字されている。
この二つの不吉な符号が意味するものは、一つ…!

以上の点を、開始直後から予備知識として心得ていたなら。
利根川に名前を告げられた直後か、悪くても利根川に肩を撃たれた直後、
命乞いなどせず即座に、一目散に逃げ出すことが出来たはずだ。
素人が銃を扱えば、走っている的に向かってめったに当てることなど出来ない。
多少なりとも冷静であれば気がつけたであろう。
利根川が平山を撃つ事が出来たのは、握手をするくらいの至近距離であったからである。

この恐ろしいゲームを開いている主催者グループとの接点……!
開会式で、ゲーム説明の為だけに躊躇せず人を殺せるような組織にいた、「元」幹部の言いなりになるくらいなら、
流れ弾に当たるリスクを考えても逃げたほうがずっとマシである。

だが、平山は持っていた情報を有効活用することが出来なかった。
運が悪かったのではない。他の参加者に話しかける前に、やるべき準備を怠っていたのだ。
今となっては、虚しい理想論に過ぎないが。

もっと理想を言えば、標がやっていたように、自分が名を呼ばれるまでの間、
名が呼ばれた他の参加者を観察し、顔と名前を一致させておくことが必要であった。
平山には瞬間記憶という才能があるのだから。
そうしていれば、平山はこの島でもう少し賢く立ち回れていた筈だ。

596 :一致20/11 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 01:07:44 ID:???

だが、平山は開会式で山口が死んだのを見て頭が真っ白になってしまった。
死を恐れたがゆえの茫然自失。故に、頭が回らなかったのだ。

ひろゆきと事務所で出会ってからは、幾分冷静になり、希望を持つことが出来た。
その時に、ひろゆきと話をしながら参加者名簿やパンフレットに一度目を通し、内容を記憶しておいた。

その後、カイジと出会い、カイジに利根川の詳しい情報を聞く。
帝愛が主催者であること、利根川が元幹部であった事実をカイジからも聞く。
メモにあった「カイジ」「兵藤和也」「遠藤」「一条」そして「利根川」が『帝愛』のキーワードで繋がっていること。
その時、遅ればせながらようやく平山は『帝愛』という言葉の持つ意味、重要性に気が付くことが出来た。



さて、時間を利根川、一条が交差点で話し込んでいた時まで進める。
ここで平山はもう一つの重要な会話を耳にすることになる。

 「何か異変が起きている…。想像もつかないような異変が…。」
 「異変、ですか…?」
 「ああ。二人とも応答しないままなんておかしいじゃないか」
 「そうですね…。では、一度引き返しますか。確かに、和也様の指示が得られないままでは…」
 「待て…。分かった。一条、お前だけ戻れ。俺はアカギを追う」
 「ええっ…?」

597 :一致20/12 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 01:11:39 ID:???

利根川と一緒にいる人物が『一条』であるということ。
そして、二人に指示を出している人間が『和也様』…兵藤和也であること。
利根川は、メモに書いていた当初の目的通り、兵藤和也と一条という仲間を見つけ、共に行動していたのだ。

平山は一字一句違えずメモの内容を記憶している。
遠藤はまだ放送で名前を呼ばれていないので、殺せていないのだろう。
同じく、伊藤開司も。
そして、『参加者名簿』にあった情報。

一条…『帝愛傘下の「元」カジノ店長。現在は7億の負債を抱えている』

兵藤和也…『帝愛グループ会長の嫡子。会長直々に指名してゲームに参加』

(利根川、一条、奴らはこのゲームの主催者、帝愛の「元」重要人物。だから互いに協力関係を結んでいる。
三人の中の一番の黒幕は兵藤和也…!主催者の大ボスの息子…!
……確か、アカギを追おうとして探知機を確かめたとき、ギャンブルルームに一つだけ光点があって、何か引っかかってたんだ。
何故その光点は、一人だけ安全な場所に留まって、利根川や一条と共に行動していないのか、って。
利根川、一条、あと一人病院前で見かけた、サングラスに茶髪の人物…!あれがその一つの光点の正体で、兵藤和也だっ…!
主催者の息子ってことは、きっとこのゲームについて色々なことを把握しているはずだ…!)

(一人ギャンブルルームに残っているということは、利根川や一条から特別扱いされているということだ。
だとしたら…、しばらくギャンブルルームから動かないだろう。一条が戻り、利根川が戻ってくるまで、確実に。
で、少なくとも、他に帝愛繋がりの仲間はいない。あの簡潔な利根川のメモを見る限り…!
と、いうことは…、どうなる…?)

598 :一致20/13 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 01:14:54 ID:???

平山はある考えに至り、その思いつきに身を震わせた。
(いや、ちょっと待て。そんなの、俺の柄じゃない。カイジじゃあるまいし……!)

平山はその考えを打ち消しかけ、ふともう一度思い直す。
(……待てよ。そうだ。これをカイジに話したらどうなる…?奴は仲間を探していると言っていた。
ということは、カイジに相談すれば、実現もまんざら不可能ではない…のか……?)

平山はもう一つの事実に気が付く。
(いや、というか元々、利根川とカイジは落ち合う約束をしていたじゃないか…!
……いや、だからこそだ…!だからこそ、約束より前に行動し、奴らの不意を突く……!)

(奴ら三人を奇襲するっ…!)



平山の考えた策はこうである。
自分はとにかく、気づかれぬよう利根川を尾行し続け、利根川がギャンブルルームに戻るまで追いかける。
その間、途中でひろゆきに別行動をとってもらい、アカギを探しながら、首輪探知機で他の参加者も探してもらう。
出来ればカイジも見つけ出してもらい事情を話し、もっと出来れば、ひろが説得してアカギにも協力してもらう。
その他にも、出会った参加者達の中で、入れてもいいととひろゆきが判断した場合、仲間を増やしてもらう。
ひろゆきは他の参加者に話しかける度胸があるし、人を見る目、観察眼も鋭いので、仲間探しの役は適任である。
そして、利根川がギャンブルルームに戻り、中に入ったら一度ひろゆき達と合流。

599 :一致20/14 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 01:17:33 ID:???

三人はいつか必ずギャンブルルームから出てくる。そこを奇襲する。
銃火器や爆弾を持っている相手なので、不意打ちで命を奪うのも止むを得ないかもしれない。
戦うにしても、どうやって銃に対して応戦するかはこれから考えなければならない。
だが、事前に心積もりしておけば、いきなり出くわすのと違って何かしら手はある筈である。



……先程、利根川と一条の会話を民家の中で盗み聞きしながら、平山は自身の思いつきに興奮していた。
しかし、今こうして息を潜め、利根川の背中を追っていると、だんだんと不安が頭をもたげてくる。

利根川は案外すぐに諦めてギャンブルルームに戻ってしまい、三人は移動してしまうかもしれない。こっちが準備する前に。
それに、こんな大雑把な計画にひろゆきが賛同してくれるかどうかも分からない。
第一、そう上手く事が運ぶとも思えない。
カイジと出会えない、アカギが見つからない、他に仲間を見つけられないなど、不安要素が山のように存在する。
見つけられたとしても、カイジは田中を探し続けていて、断られるかもしれない。
アカギに至っては、たとえひろゆきが言ったとしても協力を得られる自信が全く無い。せいぜい敵に回らないよう話をつけるくらいしか…。

何より、今ここで利根川が後ろを振り向き、撃たれたら終わりだ。

平山は、自分から3メートルほど先を早足で移動するひろゆきに目をやった。
利根川は息を切らせながら路地を走っているが、二人は路地の脇の森の中に入り、木陰に隠れながら追っている。
一人が利根川に見つかったら、もう一人が利根川の不意を突くため、同時に見つからないよう離れているのだった。

600 :一致20/15 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 01:18:56 ID:???

先程ひろゆきと打ち合わせしておいた。

(もしひろゆきが先に見つかったら、ひろゆきは日本刀を構えて利根川の目を引き、話しかけて時間稼ぎ。
その時に俺が持っている防犯ブザーを鳴らし、利根川の注意を音へと逸らす。
その隙をついてひろゆきが利根川に斬りかかり、怪我を負わせて逃げる。出来れば利き腕の右腕に。

で、もし俺が先に見つかったとしてもやることは同じだ。
俺が何とか話かけて利根川の注意を引き、その間にひろゆきが出来る限り近づいて横から斬りかかる。
俺と利根川との距離はだいぶ離れているから、利根川が俺に近づこうとするより先にひろが利根川に近づくほうが早い。
…もちろん、有無を言わせずリモコンを向けられ、操作してしまったら、それまでだが…。)

利根川に、もし気がつかれたらと思うと、体の芯が凍えそうなほどの悪寒が体中を取り巻く。

(だが、相手の姿が見えないよりは、見えている今の方がまだずっとマシだ…!
奇襲される心配だけは無いしな。生存確率を少しでも上げる為だと思えば……!)

平山は、2度目にカイジに会ったときの事を思い出していた。

 「平山…生き残れよ…。
 こんなこと言っちゃなんだけど…あんたは…“使える人間”だ…!
 誰から見てもそうだ…!それだけの記憶力があれば…!
 だったら…あんた自身が使え…!
 卑屈になるなっ……!あんたがあんたを使うんだ……!
 セコい真似してでも…生き残れっ……」

601 :一致20/16 ◆6lu8FNGFaw :2010/03/27(土) 01:21:07 ID:???

平山はフ、と笑った。
今の自分の考え方、行動は、まさにあの時の言葉に集約されている。
(敵の後ろをコソコソ付いて回るなんて、確かにセコいやり方だ…!)

だが、と平山は自分に言い聞かせる。
(これは大事な事なんだ…!
利根川が追っているのがアカギだということ、
利根川の仲間に主催者の息子がいるということ、
利根川の一番の敵がカイジだということ…!
俺の今後の行動次第で、もしかしたら、何かがひっくり返るかもしれない…!)


平山は、一挙手一投足を見逃すまいと、利根川の背中を凝視する。
(俺の実現可能か怪しい空想よりも、とりあえずは今を生き延びることだ…!)

平山の切実な思いは、今や本物の決意へと変わっていた。
(俺がしくじったら、ひろゆきの命も危険に晒される……!
今度こそ………油断するものか………!)

602 :マロン名無しさん:2010/03/27(土) 01:25:47 ID:???
支援

603 :マロン名無しさん:2010/03/27(土) 02:50:35 ID:???
wktk

604 :一致17/20 代理:2010/03/27(土) 07:19:34 ID:???

【F-5/路上/黎明】

【一条】
[状態]:健康
 [道具]:黒星拳銃(中国製五四式トカレフ) 改造エアガン 毒付きタバコ(残り18本、毒はトリカブト) マッチ スタンガン 包帯 南京錠 通常支給品×6(食料は×5) 不明支給品0〜3(確認済み、武器ではない)
 [所持金]:3600万円
 [思考]:カイジ、遠藤、涯、平田(殺し合いに参加していると思っている)を殺し、復讐を果たす
     復讐の邪魔となる(と一条が判断した)者、和也の部下にならない者を殺す
     復讐の為に利用できそうな人物は利用する
     佐原を見つけ出し、カイジの情報を得る
     和也を護り切り、『特別ルール』によって村上と共に生還する
     利根川の指示に従い、アカギを探しつつ和也の下へ戻る
※利根川とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、 その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※通常支給品×5(食料のみ4)は、重いのでE-5ギャンブルルーム内に置いてあります。


605 :一致18/20 代理:2010/03/27(土) 07:20:55 ID:???
【F-3/路上/黎明】

【利根川幸雄】
 [状態]:健康 興奮状態
 [道具]:デリンジャー(1/2) デリンジャーの弾(残り25発) Eカード用のリモコン 針具取り外し用工具 ジャックのノミ 支給品一式
 [所持金]:1800万円
 [思考]:和也を護り切り、『特別ルール』によって生還する
     首輪の回収
     遠藤の抹殺
     カイジとの真剣勝負での勝利…その結果の抹殺
     鷲巣の保護
     病院へ向かう
     アカギを探し出し、撃ち殺す
※両膝と両手、額にそれぞれ火傷の跡があります
※和也の保護、遠藤の抹殺、カイジとの真剣勝負での勝利…その結果の抹殺を最優先事項としています。
※鷲巣に命令を下しているアカギを殺害し、鷲巣を仲間に加えようと目論んでおります。(和也は鷲巣を必要としていないことを知りません)
※一条とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、 その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※デリンジャーは服の袖口に潜ませています。
※Eカード用のリモコンはEカードで使われた針具操作用のリモコンです。電波が何処まで届くかは不明です。
※針具取り外し用工具はEカードの針具を取り外す為に必要な工具です。
※平山からの伝言を受けました(ひろゆきについて、カイジとの勝負について)
※計器からの受信が途絶えたままですが、平山が生きて病院内にいることを盗聴器で確認しました。(何かの切っ掛けで計器が正常に再作動する可能性もあります)
※平山に協力する井川にはそれほど情報源として価値がないと判断しております。
※黒崎が邪魔者を消すために、このゲームを開催していると考えております。
※以前、黒崎が携わった“あるプロジェクト”が今回のゲームと深く関わっていると考え、その鍵は病院にあると踏んでおります。
※E-5ギャンブルルーム前には、勝広の持ち物であったスコップ、箕、利根川が回収し切れなかった残り700万円分のチップなどが未だにあります。

606 :一致19/20 代理:2010/03/27(土) 07:23:50 ID:???
【F-3/道路脇の森/黎明】

【井川ひろゆき】
 [状態]:健康
 [道具]:日本刀 首輪探知機 懐中電灯 村岡の誓約書 ニセアカギの名刺 アカギからのメモ 支給品一式×2 (地図のみ1枚)
 [所持金]:1500万円
 [思考]:赤木しげるから事の顛末を聞いた後、ギャンブルで闘う  この島からの脱出 極力人は殺さない  平山と共に利根川をしばらく尾行する 同時にアカギを追う
※村岡の誓約書を持つ限り、村岡には殺されることはありません。
※赤木しげるの残したメモ(第二回放送後 病院)を読みました。
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※鷲巣から、「病院に待機し、中を勝手に散策している」とアカギに伝えるよう伝言を頼まれました。

607 :一致20/20 代理:2010/03/27(土) 07:28:35 ID:???
【平山幸雄】
 [状態]:左肩に銃創 首輪越しにEカードの耳用針具を装着中
 [道具]:支給品一式 カイジからのメモ 防犯ブザー
 [所持金]:1000万円
 [思考]:田中沙織を気にかける 利根川から逃れる術を探る カイジが気になる ひろゆきと共に利根川をしばらく尾行する
※計器に不具合が起きていることを知りません。 (計器の生体信号の不具合だけです。利根川の持つリモコンからの電波では正常に作動します)
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※カイジに譲った参加者名簿、パンフレットの内容は一字一句違わず正確に記憶しています。ただし、平山の持っていた名簿には顔写真、トトカルチョの数字がありませんでした。
※平山が今までに出会った、顔と名前を一致させている人物(かつ生存者)
  大敵>利根川、一条、兵藤和也  たぶん敵>平井銀二、原田克美、鷲巣巌
  味方>井川ひろゆき、伊藤開司      ?>田中沙織、赤木しげる       主催者>黒崎

 (補足>首輪探知機がある、としづかが漏らした件ですが、それは和也しか盗聴していません。利根川と一条はその頃、病院に爆弾を仕掛けに行っていました。)
 (補足2>首輪探知機は、死んでいる人間の首輪の位置は表示しません。探知機に信号が送られるときに、死亡者の首輪からのデータは省かれています。)

608 :マロン名無しさん:2010/03/27(土) 08:28:03 ID:???
乙です!
次がどうなるのかすっごく気になる…!!

609 :マロン名無しさん:2010/03/27(土) 09:26:15 ID:???
乙!
平山の実力がでてきましたね。
ひろゆきには天さんのことで精神的ダメージが少なからずありそうですが
はたしてうまくフォローできるのでしょうか。
ともかく目が離せませんね!



610 :マロン名無しさん:2010/03/27(土) 13:54:58 ID:???
投下乙です。

平山が一歩一歩成長している様子に胸を打たれます。

あと、一条は村上の元に戻れるでしょうか。
戻ってこれたら、村上のこと誉めてやってほしいです。
そして、村上が淹れたコーヒーを飲んでほしいです。

611 :マロン名無しさん:2010/03/27(土) 21:45:20 ID:???
投下乙!
熱いぜ平山。
でも、このかっこよさが何となく死亡フラグに見えてしまう不思議。
利根川も行動の一つ一つに執念を感じていい。


612 :マロン名無しさん:2010/03/27(土) 22:43:33 ID:???
投下乙です
平山がんばれ

613 :マロン名無しさん:2010/03/28(日) 08:21:34 ID:???
投下乙です!
平山がここまで熱いキャラになるとは誰が予想できただろうか
もうダメギなんて呼べないよ

平山がんばれマジがんばれ

614 :マロン名無しさん:2010/03/28(日) 16:18:20 ID:???
投下乙です
熱いよ平山、がんばれがんばれ
…原作的にはその状態は次で死にかねんがなw
頼むから、死ぬなーw

平山の今後には凄く期待してます、かませなんかで終わるんじゃないぞ

615 :したらば 代理投下:2010/03/29(月) 17:48:21 ID:???
297 : ◆6lu8FNGFaw:2010/03/29(月) 14:08:10
アク禁に巻き込まれましたので、すいませんが、代理投下をお願いいたします。

***

一致◆6lu8FNGFawです。

たくさんの感想、ありがとうございました。

ところで、首輪の探知機に関して矛盾点がありましたので、修正した部分を投下いたします。
首輪探知機は死亡者の首輪(まだ爆発していない首輪)にも反応するのに、
過去に投下された作品に書かれていたその記述を見落とし、「反応しない」と変えてしまいました。
お詫びして訂正いたします。


616 :したらば 代理投下:2010/03/29(月) 17:49:48 ID:???
298 : ◆6lu8FNGFaw:2010/03/29(月) 14:11:27

>>586  一致20/1(修正)

ひろゆきと平山はアカギを追う決心をした後、鷲巣と別れ、病院が見えない所まで移動した。
そしてまず首輪探知機の電源を入れる。

F-4の、地図で見ると商店街入口付近に3つの光点が集中している。その光はアカギではない。
その3つの光点は先程からずっと動く様子がないし、アカギがそこまで遠ざかるにはまだ時間的に早すぎる。
同時に、東へと勢いよく遠ざかっていく2つの光点が表示されていて、これは利根川と一条のもの。
それと同時に、西へと勢いよく遠ざかっていく2つの光点が表示されていて、これはアカギとしづかのもの。
あと、鷲巣のものである光点が病院に1つ、病院近くのギャンブルルームに謎の光点が1つ。

他、病院非常口付近に光点が1つ……。これは死亡した天の首輪である。
他、病院から少し離れた場所に光点が1つ。地図と照らし合わせた場所からいって、草むらの中である。
先程からずっと動かないのを見ると、どうやらこの首輪の持ち主ももう息が無いらしい……。

ひろゆきと平山が周囲を警戒しながらアカギの後を追い、F-4へと差し掛かった頃。
探知機に、利根川達のものと思われる光点が一度止まり、東の方からこちらを追う形に変化した。
同時にアカギとしづかのものと思われた2つの光点は急に二手に別れ、別々の方向へと動き始めた。

「別れた…!?」
走りながら、ひろゆきと平山は同時に落胆の声を上げる。
どちらがアカギの光点なのか判別が出来ないからだ。

「しかも、道標がここで止まってるぜ」
平山が地面に目を向け、言った。そこはちょうど商店街南側入り口、路地の交差点にあたる場所だった。

617 :したらば 代理投下:2010/03/29(月) 17:51:50 ID:???
299 : ◆6lu8FNGFaw:2010/03/29(月) 14:12:03

>>607  一致20/20(修正)

【平山幸雄】
 [状態]:左肩に銃創 首輪越しにEカードの耳用針具を装着中
 [道具]:支給品一式 カイジからのメモ 防犯ブザー
 [所持金]:1000万円
 [思考]:田中沙織を気にかける 利根川から逃れる術を探る カイジが気になる ひろゆきと共に利根川をしばらく尾行する
※計器に不具合が起きていることを知りません。 (計器の生体信号の不具合だけです。利根川の持つリモコンからの電波では正常に作動します)
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※カイジに譲った参加者名簿、パンフレットの内容は一字一句違わず正確に記憶しています。ただし、平山の持っていた名簿には顔写真、トトカルチョの数字がありませんでした。
※平山が今までに出会った、顔と名前を一致させている人物(かつ生存者)
  大敵>利根川、一条、兵藤和也  たぶん敵>平井銀二、原田克美、鷲巣巌
  味方>井川ひろゆき、伊藤開司      ?>田中沙織、赤木しげる       主催者>黒崎

 (補足>首輪探知機がある、としづかが漏らした件ですが、それは和也しか盗聴していません。利根川と一条はその頃、病院に爆弾を仕掛けに行っていました。)
 (補足2>首輪探知機は、死んでいる参加者の首輪の位置も表示しますが、爆発済みの首輪からは電波を受信できない為、表示しません。)

こちらで以上です。

618 :マロン名無しさん:2010/03/29(月) 22:16:10 ID:???
状態表が出た瞬間にまるでテレビのいいとこでCMが
入ったときのようなもどかしさをかんじた


まじで続きが気になる
マガジンの10倍楽しみだわ

619 :マロン名無しさん:2010/03/30(火) 00:01:03 ID:???
たしかにwもうマガジン読んでないもん。
カイジがギャンブルするようになったら教えて。

620 :マロン名無しさん:2010/03/30(火) 13:13:20 ID:???
和也編は中国人の過去話を一話使ってやりはじめた時点で見限ったw

621 :マロン名無しさん:2010/03/31(水) 15:09:23 ID:35ysVOYd
支援…!
続きが気になって…
もう…気が狂いそう…

書き手の皆様、いつもお疲れ様です!

622 :マロン名無しさん:2010/03/31(水) 15:10:39 ID:???
あげてしまいました…

逝ってきますorz

623 :マロン名無しさん:2010/04/06(火) 00:42:50 ID:???
保守っ…!

624 :マロン名無しさん:2010/04/06(火) 02:15:13 ID:???
マガジンがどうとかいって 
零本スレのエイプリルフールネタにだまされた俺

625 :マロン名無しさん:2010/04/08(木) 00:39:23 ID:???
おや…?

626 : ◆uBMOCQkEHY :2010/04/10(土) 17:26:05 ID:???
以前から作りたいと何度か予告していましたが、
本日、まとめサイトで福本ロワ用語集を作ってみました。

文章はしたらばであった福本ロワ用語集スレの単語を今の状況に合わせて修正したり、
初見の方にも理解していただけるように加筆したりしています。

もし、ご指摘などがありましたら、
本スレ、もしくはしたらばの用語集スレにご連絡いただけるとありがたいです。

なお、福本ロワ用語集は用語集と銘打っていますが、
要は福本ロワの特徴をまとめたような物として活用していただけるとありがたいです。

これからも用語はしたらばの用語集スレで募集しております。

627 :マロン名無しさん:2010/04/12(月) 21:57:48 ID:???
しはらばに投下が来たのにパソコンがアク禁で代理投下できない…。

誰か代わりに投下してください…。

628 :マロン名無しさん:2010/04/12(月) 22:26:21 ID:???
行ってきます!

629 :代理投下:2010/04/12(月) 22:31:09 ID:???
303 : ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:05:00
アク禁に巻き込まれましたので、こちらに投下します。
代理投下をお願いいたします。長文ですいません

630 :代理投下:2010/04/12(月) 22:31:26 ID:???
304 :抜道1/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:06:55

佐原は、南郷を連れてF−6のホテルに背を向け、歩き出した。

佐原の行動方針は2つ。
南郷の言っていたD-5の死体から、首輪を回収すること。
その後、マンホールを見つけ、南郷から借りている麻縄を使い、首輪を縄に括り付けて垂らし、爆発しないかどうか実験をすること。

(俺は何としてもこのゲームの突破口を探す…!
安全に移動できる手段を見つけ、そして、何とかして島から脱出する…!だから棄権費用の事も考えないと…)
佐原はグッと唇を噛み締める。
安全を確保するのは大事だが、それだけでは駄目なのだ。棄権費用を稼ぐ手段はまだ思いついていない。

(……それはおいおい考えていくしかないか…。一歩一歩だ。先ずは安全を確保すること……!)
地下道を掌握すれば、ゲリラ的に地上にいる他の参加者を襲い、銃で脅してチップを奪うことが出来るかもしれない。
板倉の頭を潰して首輪を回収したことで、今の佐原には行動する為の勢いがついていた。

(まず地下……。地下へ降りられるか確認だ……。
………地下だと?)

ふっ、と何かが、佐原の脳裏を掠める。
(確か、黒崎は……)



ドドォォォーーーーーーーーーンッ………!!!!

「!?」
周囲に大きな音が木霊し、佐原達は反射的に身を縮めた。

631 :代理投下:2010/04/12(月) 22:32:02 ID:???
305 :抜道1/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:08:20

「な、何だ…!?北の方から大きな爆発音が…」
「ああ……凄い音が……」
佐原と南郷は顔を見合わせた。
ちょうど今、自分達が向かっている方角からの音。

「どうする…?あの音を確かめに行くか…?」
南郷の提案に、佐原は首を横に振った。

「やめとこう。あの爆発音は参加者同士の殺し合いの結果、出た音だろう。今は他の参加者と鉢合わせになりたくない」
「じゃあ、迂回して行くか……」
「ああ……」

佐原は地図を思い浮かべた。商店街の方向に行けば、島の中央を通る羽目になる。
だからといってショッピングモールの傍を通っていくのも…。
先程の遠藤とのやりとりを思い出すと、近くを通る気になれなかった。

「…いったん体制を立て直すか?」
南郷が、佐原の後ろから声をかける。

「今さっきの音は広範囲に渡って聞こえただろう。あの音を聞きつけてやってくる参加者もいるかもしれない。
しばらくさっきの温泉旅館にでも戻って、じっとしているのも手じゃないか?1時間くらいすれば騒ぎが収まるかも知れない」
「…………」
佐原は、南郷の提案した消極策に乗るのはあまり気が進まなかったが、だからといって良案がある訳でもない。
それに、一つ所で立ち往生している今の状況はまずい。

632 :代理投下:2010/04/12(月) 22:32:37 ID:???
306 :抜道3/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:10:15
>>305は抜道2/27です、すいません

*****************

「…わかった」
佐原は頷き、一度温泉旅館まで引き返すことにした。

(……さっき何か思いつきかけたんだが、爆発音で思考が中断されてしまった…。
何だった…?何か重要な……)
「おい、あっち側の空、何だか明るくないか?」
南郷の声に、佐原は再び思考を中断させられた。

「何だ?」
「ほら、あっちの空…。ショッピングモールの辺り…。」
南郷は東の空を指差した。

「何が……あったんだ……。」
二人はE-7とF-7の境目まで移動していた。
遠目に見てもはっきりと分かるほど、大型ショッピングモールはめらめらと燃え盛っていた。

「遠藤が……?放火か?…でも何のために放火を?南郷、何か心当たりないか?」
「さあ…。俺が知っている限りでは遠藤の支給品は、参加候補者名簿だけだった。火事を起こせそうな持ち物はなかったと思うんだが」
「じゃあ巻き込まれたか?厄介事に…」
「まあ、そう考えるのが妥当だろうな。…だとしたら、早目にあそこを出てきて正解だったな…、遠藤には悪いが…。」
南郷は、呆然と空を見上げたまま、呟いた。

温泉旅館ののれんを潜り、佐原と南郷は一先ず休息をとることにした。
「すっかり出鼻を挫かれた気分だ…」
「…そうだな。だが、先程からずいぶん行動したし、休憩を取るのも悪くないんじゃないか」
南郷は、フロント近くのソファに座り、足をさすりながら答えた。

633 :代理投下:2010/04/12(月) 22:33:06 ID:???
307 :抜道4/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:11:34

佐原はそんな南郷の様子を見ていた。
(足の怪我、やはりきついんだな。休憩をしたいと言い出したのも、足を休めたい為だ。どうもいまいち、緊張感に欠ける…。
だが反面、同行者としてはあの森田のような頭の回るタイプでなくて良かった。
やはり森田は南郷を利用しようとしていたんだ、間違いない…!)

佐原は南郷から目を逸らし、今後について考えを纏めることにした。
(こうしてる合間にも、ゲームは進行していくっ…!
何しろ、この島の中、場のチップは数に限りがあるんだ。棄権する為には早めにチップを集めて回らなきゃならない。
…それはともかく、今出来ることをやらなければ…。今の状況でも出来ることといったら……。)

「佐原、どこかへ行くのか?」
南郷が、玄関から外へ出て行こうとしていた佐原に声をかける。
「ああ、すぐに戻るさ。この縄、あともう少しの間借りたら返す」
佐原は南郷に縄を示して見せた。



「あった……。」
温泉旅館の裏手、建物のすぐ近くの路地に、探していたものはあった。
窪みに手をかけ、佐原はマンホールの蓋を外しにかかる。
多少力を込めなければならなかったが、なんとか錆付いた蓋を脇へどけることが出来た。

佐原はまず麻縄の端に首輪を括り付け、マンホールの穴から、慎重に縄を下ろしていった。
だいたい縄の半分くらいの所まで下ろしたとき、カツン、と穴の中から小さな音が響いた。

634 :代理投下:2010/04/12(月) 22:33:28 ID:???
308 :抜道5/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:12:56

(ふ〜……先ずは第一関門クリア……)
佐原は一度深呼吸をすると、縄を掴む位置を変える。
縄のもう一方の端を掴むように持ち替え、マンホールから歩いて遠ざかることで縄を引っ張り、首輪を穴から引き出した。
いつ爆発しても良いように十分な距離をとったのである。

(もし爆発し、周囲に大きな音が響いちまったら俺一人でも逃げちまおう。南郷はあの足じゃ早く逃げられない)
薄情なことを考えながら、佐原は縄を引っ張っていく。
果たして、首輪は地上に戻ってきても爆発することなく、無事に実験は成功した。

(よっしゃっ…!)
佐原は心の中でガッツポーズを取る。不安要素が無くなり、ずいぶんと心が軽くなった。
(実質“生きてる”首輪が無事だったんだから、俺が地下に降りても首輪が爆発しないことがこれで確定した。
あとは……。地下を探索だ。地下で移動できるなら、いくら地上が危険でも関係ない…!すぐに行動に移るか)
佐原は、すぐに地下に降りようとしたが、少し考えて南郷を呼びに行くことにした。

「……成程」
麻縄を佐原から返してもらい、盗聴の危険性を考慮して佐原が書いたメモを見て、南郷は何度も頷いた。

「俺はすぐに行動しようと思うが、アンタはどうだ?足の具合、あまり良くないんだろう」
「いや、大丈夫だ。少し休んだから、歩ける。それにこうなった以上、時間を潰すのは勿体無い」
「わかった。それなら、今から行こう。例の道を通ってD-5へ。そこまで通路が通ってるかどうかは、行って見なけりゃわからないが」
「ああ…!」
南郷はソファから立ち上がった。

635 :代理投下:2010/04/12(月) 22:33:53 ID:???
309 :抜道6/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:14:06

旅館から持ってきた懐中電灯をつけ、そのままデイパックに電灯を押し込むと、佐原はマンホールの穴に足を踏み入れた。
デイパック越しの明かりでほんの僅かだが、ぼんやりと周囲が見える。
梯子を降り始めのときは良かったのだが、下まで降りていくうちに段々と悪臭が漂うようになってきた。

「うわっ……えらい匂いだ。やっぱり下水道だな」
佐原は懐中電灯を手に持ち、持っていたタオルを顔に当て、マスク代わりにしながら言った。

同じく、温泉旅館で佐原に言われ、懐中電灯とタオルを手に入れた南郷が同じ格好をして頷く。
「ずいぶん使われてなくて流れがなく、ヘドロが溜まっているもんだから、通常の下水道よりひどい匂いだな」

「まぁ、しゃーないか……。安全と引き換えだと思えば……。」
佐原はげんなりした顔をしながらも、方位磁石を取り出す。

「地下だと方向感覚が掴みにくくなるからな。でも、俺距離感を掴むのはわりと得意だから、多分なんとかD-5まで行けると思う」
「ああ、頼もしいな」
南郷のどこかのんびりした返事に、佐原は溜息をつく。

「…アンタ、途中でへばったりすんなよ。俺は自分しか面倒見切れないから置いてくぞ」
「大丈夫だって!……佐原、少し雰囲気変わったか?」
「ああ?」
「いや、ずいぶん明るい表情になったじゃないか」
「……そうかな」
佐原は曖昧に笑って見せた。

636 :代理投下:2010/04/12(月) 22:34:28 ID:???
310 :抜道7/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:16:05

佐原が南郷を置いていかなかったのは、結局は心細かったからである。
地下がいくら安全とはいえ、真っ暗な閉鎖空間の中を一人で歩き回ると考えるだけで気が滅入り、おかしくなりそうだ。
南郷なら背中を任せても大丈夫だろうと思ったし、自分の直感を信じたかった。多少人を見る目には自信がある。
実験に成功したことを切っ掛けにして、佐原は本来の自分を取り戻しつつあった。

下水道は、匂いや暗さを除けばずいぶん移動しやすかった。
島の地下に碁盤の目のように張り巡らされているようで、道は真っ直ぐで、地上に比べ高低差も無い。

懐中電灯で前を照らし、歩きながら佐原はふと先程考えていた事を思い出した。
棄権についてである。
棄権についての情報は、つまるところ、開会式で黒崎が話した挨拶の言葉の中にしかない。

 「最後に…………当然皆様には最後に生き残ること………優勝者を目指していただきたいのですが、
 例外として途中で生きたまま棄権する権利もございます。
 棄権を望まれる方は当ホテル地下で、一億円にて権利をご購入いただけます……。 」

(……あ)
その時、佐原の中で何かが弾けた。

(当ホテル地下で、一億円にて権利を)
(当ホテル “地下” で)


「……南郷、D-5へ向かう前に、一箇所寄る所がある…!」
佐原は、背後の南郷へ呼びかけた。懐中電灯の届かぬ先、眼前に広がる闇を見据えながら

637 :代理投下:2010/04/12(月) 22:34:52 ID:???
311 :抜道8/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:17:54

ずっと心に引っかかっていたのだ。
D-4ホテルで棄権の権利を購入できる筈なのに、D-4が禁止エリアになったこと。
これは『事実上棄権をすることが出来ない』という主催者の意向で、参加者に圧力をかける為なのだろうか?

だが、実質それで圧力に屈し、優勝を目指す方向転換をする者が現れる一方、
主催者に対して強い反感を抱き、対主催に流れ、殺し合わなくなる参加者も出てくる筈である。
主催者にとって棄権の権利を潰すことは、ゲームの進行も妨げる諸刃の剣になるのである。
快楽殺人者でもない、優勝を目指すには力の足りない一般人の参加者は、一億稼いで棄権したいから殺し合うんであって、
そうでなければ誰が好き好んで殺しに乗りたいと思うだろうか。

もちろん、帝愛のギャンブルに参加して、賞金を渡すとき難癖をつけられたり、掌返しをされたことのある佐原には、そうでないと断言も出来なかった。
だが、掌返しをするにしても、D-4ホテルが禁止エリアになったのはまだゲームの序盤だったのだ。
鉄骨渡りを始め、歩き出した直後にゴールの窓が「開かずの間」だと教えられるようなものである。
参加者にやる気をなくさせてどうするというのか。

(奴らなら、もっと希望を残しておくはずだ…。儚い希望に縋ってもがく俺達の姿を見て笑う為に…!)
D-4が禁止エリアになったことで『棄権の権利が無くなった』とは、佐原にはどうしても思えなかったのだ。

(つまり……あるんじゃないか…?
D-4が禁止エリアになっても、参加者が棄権の権利を購入できる“ホテル地下”に安全に入れるルートが…!
……………この先に……!)
違和感と、地下通路。それがここに来て佐原に一つの答えをもたらした。

638 :代理投下:2010/04/12(月) 22:35:16 ID:???
312 :抜道9/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:19:06

「ずいぶん歩いたな…」
「ああ。多分もう少しだ」
佐原は、懐中電灯で腕時計や方位磁石を照らして見比べながら、ただひたすら突き進んでいた。
ふと眼前に、唐突に佐原達の行く手を阻むように壁が現れる。

「何だ…?ここで行き止まりか?」
「いや…。この壁を良く見てみろ、南郷」
南郷は佐原に促され壁に近寄ると、懐中電灯で壁を照らし凝視する。

「…ここだけいやに新しいな」
「そうだ。最近作られた壁だ。出来てからまだ数ヶ月と経ってないようだ」
「ここは…?」
「この周囲を調べてみよう。俺の考えが正しかったら、必ず入り口がある筈だ」
二人は手分けして、壁伝いに入り口の在り処を探った。

「あった……」
佐原の持つ懐中電灯の明かりが、真新しい木製のドアを照らしていた。
「南郷、来てくれ。ここに入り口がある」
「……本当だ。しかし何だってこんな下水道に、こんなドアが…?それに、ここはどこなんだ?」
「ほら、見ろ。ここに札が下がっている」
「……『引換所』……?一体……?」
「分からないか…?」
佐原の含み笑いに、南郷は軽く首を振った

639 :代理投下:2010/04/12(月) 22:35:42 ID:???
313 :抜道10/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:20:46

「さっぱり分からねえ…。一体ここは何だ?」
「棄権の権利を購入出来る所さ」

佐原は南郷に、何故こんな所に棄権の権利を購入出来る場所があるのか、自分の推測を説明した。
「ここはD-4、禁止エリアのホテルの地下にあたる場所だ。地下道は電波が届かないから、ここまで安全に辿り着けるって訳だ」
「そうだったのか…。だが、俺達は一億を持っていないから棄権出来ないぞ、今入っても」
「棄権出来るかどうかを確かめに来たんだって言えばいいさ。一億はこれから集めるってな」
「……じゃあ、入ってみるのか?」
「ああ」
佐原は逸る気持ちを抑え、ドアノブに手をかけた。

「……罠ってことはないよな?」
南郷の呟きに、佐原はビクッと肩を震わせ、ドアノブから手を離した。

「わ、罠?」
「いや、こんなに分かりやすいドアだと、もしかしてと思ってな」
佐原の背中に嫌な汗が流れる。
あの時みたいに、風で吹き飛ばされるなんてことは…。今回の場合爆弾とかで…。

「…だ、だが、ここまで来ておいて確かめもせず帰るなんて…!」
「……ノックをしてみたらどうだろう」
「は…?ノック?」
「ああ。もし佐原が言うように、ここがちゃんとした『棄権の権利販売所』なら、まともな反応が返ってくるだろう。無反応なら警戒したほうがいい」
「…そうか。アンタの提案、案外いけるかも知れないな」
佐原は頷くと、控えめにノックをしてみた。

640 : ◆6lu8FNGFaw :2010/04/12(月) 22:35:47 ID:???
携帯から支援します!
ありがとうございます。

21レス目からは修正したほうを投下お願いします。

641 :代理投下:2010/04/12(月) 22:36:05 ID:???
314 :抜道11/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:23:44

コン、コン。

「……入れ」
中から聞こえた声に、思わず二人の顔が緩む。
だが、まだ油断は出来ない。佐原は恐る恐る、扉を盾にしながらゆっくりと扉を開けた。

そこは、開会式で見たホテル内部の雰囲気と良く似ていた。
簡素ながらも、床に敷かれた重厚な色の絨毯。6畳ほどの間取りだが、そこに置かれた椅子やテーブルは一見して高級と分かる。
数人の黒服が立ち、一人が佐原達に呼びかけた。

「どうした?部屋の中に入れ」
「…念の為聞くが、部屋に入った途端にドカン、なんてことは…?」
「そんなことはありえない。この部屋に辿り着いた時点でお前達は命を保証されている」
「信じていいんだな、その言葉…?」
「安心しろ。嘘をつくようになど言われていない」
「……分かった」
部屋に入ると、数人の黒服は佐原と南郷を取り囲み、一斉に拍手を始めた。

パチ… パチ…
「Congratulations…! Congratulations…! おめでとう…! おめでとう…!」

「おめでとう、お前達はこのゲームが始まってから最初にここに辿り着いた者達だ。間もなく主催者が直々に来られ、お前達に祝辞を述べられるだろう」
「祝辞…?そんなモンいらねえっ…それに、まだ俺達は…」
「ああ、いらっしゃったようだ」
黒服が後ろを振り向くと、目線の先にあったエレベーターの扉が開き、中から黒崎が現れた。

「やれやれ…。ようやく一人目か。思ったよりも遅かったな」
黒崎は先程まで頭の痛い出来事に翻弄されていたのだが、疲れた素振りを見せず佐原達に笑いかけた。

642 :代理投下:2010/04/12(月) 22:36:43 ID:???
315 :抜道12/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:26:00



数分前。
黒崎は在全の気紛れなゲームに付き合わされた後、すっかり冷めてしまったコーヒーを片手に椅子に深く腰掛けていた。
目の前のモニターが再び切り替わり、黒服の姿が映し出された。

「黒崎様、最初の『棄権希望者』がここまで辿り着いた様ですが」
「……そうか、すぐ行く」
「かしこまりました」
黒崎は、再び通常のモードになったモニターから目を逸らし、疲れた体に鞭打ってもう一度立ち上がった。

下がっていくエレベーターの中で、黒崎は先程の冷めたコーヒーに添えてあったメモに思いを巡らす。
メモには簡潔に、「了解した」といった内容が書かれてあり、その下にも数行、文章が書かれていた。
その数行は、黒崎の疲弊した体に再び活気を取り戻させるのに十分な内容であった。



「参加者の君達には、優勝を目指して欲しかったのが本音だが、『棄権』は君ら参加者に与えられた権利だ。
おめでとう。さあ、一億円分のチップを出したまえ」
黒崎が促すと、佐原は僅かに動揺したが、胸を張って言い返した。

「生憎、まだ持ち合わせが無いんだ。
今は、本当にお宅らが『棄権』の権利をちゃんと交換してくれるのか、それを確かめに来ただけ…!」
「成程、疑われていたのか。実に心外だ」
黒崎は部屋の中央に置かれた椅子に座り、指を組んだ。

643 :マロン名無しさん:2010/04/12(月) 22:37:05 ID:???
支援

644 :代理投下:2010/04/12(月) 22:37:13 ID:???
316 :抜道13/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:27:46

「だって、ここは禁止エリアになったじゃねえか。でも、地下なら首輪の電波が届かないかもと気がついて、それで…。」
「では、ここに君達が辿り着いたのは偶然だったのか?」
「…いや、さっき地下を歩きながら思い出したんだ。あんたの言葉をさ」
「私はこれ以上ないくらいに分かりやすい言い方で説明したつもりなのだが、どうやらきちんと話を聞いていない参加者が多かったようだ」
「普通、下水道から通って来れるなんて思うかよ…!」
「普通…?このゲームの中で物事を『普通』に考えること自体が異常だ。そう思わんかね?」
黒崎の言葉に、佐原は思わず大声を上げた。

「詭弁だっ…!自分達の異常性を正当化しようとすんなよっ…!」
「フフ、何はともあれ、君達は棄権の為の『正しいルート』を見つけたんだから、いいじゃないか」
「良くねえ…!確かめる為に余計な時間と労力使わせやがって!」
「…それが、実はそうでもないのだよ、佐原君。最初に辿り着いた君達には特別に大きなチャンスがある」
「…は?」
佐原は目を見開いて黒崎を見た。

「最初にここへ辿り着いた者の所持金が一億に満たなかった場合、あるギャンブルをして勝てば、特別に棄権の権利を得ることが出来るのだ」
「……ギャンブル…?」
「そうだ。だが、これは最初の一人しか挑戦できない。君達二人のうちどちらか一人だけだ」
「………………」
佐原と南郷は顔を見合わせた。南郷が心配そうに口を開く。

645 :代理投下:2010/04/12(月) 22:37:37 ID:???
317 :抜道14/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:29:20

「…それ、選ばれなかった方はどうなる…?ここで殺されるのか?」
「まさか。ここを出て、ゲームに戻ってもらうだけだ。その後、棄権したければ自力で一億稼いで来てもらう」
「…成程、今までと同じか…。」
南郷は少し考えた後、言った。

「じゃあ、俺は遠慮するよ。元々、佐原がいなけりゃ俺はここに来れていないんだ」
「南郷…」
南郷は、佐原の顔を見ると、軽く微笑んで見せた。

「良かったな、佐原。元の世界に帰れるチャンスだ。頑張れよ」
「…ああ、すまないな」
「いいさ。俺はまだやり残してることがあるんでな。…探している人物がいるんだ。アンタと同年代くらいかな」
「……そうか。早く合流出来るといいな」
「ああ。そうだな」
南郷はそれだけ言うと、黒服の一人に連れられ、エレベーターに乗って行った。
佐原は、南郷の背中がドアに隠れてしまうまで目で追っていた。


「…さて、では佐原君、そこの椅子にかけたまえ。ギャンブルを受けるということで良いんだな?」
「その前に、ギャンブルの内容と、負けたらどうなるか説明しろよっ…!」
佐原は椅子に座りながら、黒崎に言った。

646 :代理投下:2010/04/12(月) 22:38:08 ID:???
318 :抜道15/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:31:09

「ギャンブルの内容は至って簡単。じゃんけんだ」
「……は?じゃんけん?」
「そうだ。一発勝負、勝ったら君は棄権の権利を得る」
「……負けたら?」
「君の首輪をここで爆破させてもらおう」
「っ………!」
佐原の表情が険しくなる。黒崎は顔色一つ変えず、言った。

「君は今、いくら持っている?……1000万?ではあと残り9000万円も足りないんだろう。
一度、2000万の為に命を張った君なら、ここは当然受けるだろう…?」
「…………!」

佐原は、黒崎を睨みつけた。黒崎はなおも語りかける。
「負けが怖いなら、やめても構わない。先程の南郷の様に、あそこのエレベーターから出て行ってもらうだけだ」
「やるよっ…!そんな言い方で揺さぶりをかけたって、俺の心はもう決まってる…!」
「ほう」
「やりゃあいいんだろ…!畜生っ…!」
「何、今からするギャンブルは正真正銘、公明正大なギャンブルだ。そんなに心配することもない」
黒崎の合図で、黒服が3枚のカードを差し出した。黒崎はそれをテーブルに並べる。

「これを見たまえ」
「これは…、カードにじゃんけんの絵が描いてある…?」
「そうだ。以前別の場所で行われたギャンブルで使われたカードだが、それを流用する。
簡単だ。私はカードをシャッフルし、三枚とも並べる。
君はグー、チョキ、パーのうち自分が出すものを口

647 :代理投下:2010/04/12(月) 22:38:31 ID:???
319 :抜道16/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:33:22

黒崎の言葉に、佐原は訝しげな表情をする。
「だが…今見たカードが三種類だからって、本当にその時伏せたカードは全部バラバラなのか?」
「もし不審に思うなら、ギャンブルの後カードを捲ってみれば良い。
だが、私は君が何を出すか決める前にカードを置くんだ。君の出すものが何か分からないのに、カードの柄を偏らせる意味がないだろう」
「……確かに」
「そもそも、こんな手順でやるのは、普通のじゃんけんだと後出しだ、と揉める事があるだろう。
それを防ぐ為、それに、君に選んでもらう為だ。最初に辿り着いた者の特典として、優遇しているのだよ」
「………」
「やるかね?」
「……わかった」
佐原は頷いた。

黒崎は馴れた手つきで3枚のカードをシャッフルすると、カードを伏せたままテーブルの上に並べた。
「さあ、君は何を出す?」
「……………………」

(……考えたって分かるもんか。結局運否天賦、なるようになれだ…!)
佐原は暫くの逡巡の後、覚悟を決めて叫んだ。

「チョキだっ…!」
そして、黒崎がこちらを翻弄するような台詞を吐く前に、即座に一枚掴んで捲った。

648 :代理投下:2010/04/12(月) 22:38:54 ID:???
320 :抜道17/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:35:02

佐原が引いた黒崎のカードは………!

チョキ……!


「あいこだな」
「……あ、あいこの場合はどうなる?」
「勝負なし、続行だ」
「……そ、そうか…」
佐原ははあ、と大きく息を吐き出した。
黒崎は佐原の手からチョキのカードを取り返すと、そのカードを破り始めた。

「ああ……?何してやがる?勝負続行なんだろ…!?」
「そう、そして、一度使ったカードはこのように破棄する」
「は…?」
「さあ、次だ。君の出すものを言い、カードを選びたまえ」
黒崎はチョキのカードをビリビリに破いて床に落とし、残りの二枚のまま佐原に続きを促した。

「…え?新しくカードを補充しないのか…?」
「ああ、しない」
「え、だって……」
佐原は混乱した。今チョキを破ってしまったのだから、残るはどう考えてもグーとパーしかない。

649 :代理投下:2010/04/12(月) 22:39:19 ID:???
321 :抜道18/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:36:27

「…もう一度やって、またあいこだったら…?」
「そのときも今のように、使ったカードを破棄し、続行する」
「…カードの補充は、しないんだな」
「もちろん」
黒崎の言葉に、佐原はますます混乱した。

(普通に考えたら、俺はパーと言い続けたら絶対に負けないってことになるじゃないか…!?
い、いやいや、待て、さすがにそんなうまい話ある訳が無いっ…!
つまり、これは罠なんじゃないか…?例えば、さっきこれ見よがしに破ったカード…!あれが実はチョキじゃあなかったら…!?
例えばパーだったら…!俺は2分の1の確率で負けることになる…!)

佐原は黒崎を睨みつけ、言った。
「その前に、今伏せてあるカード、確かめさせてもらう!本当にグーとパーなのか…?」
「ああ、構わんよ」
黒崎は伏せてある2枚のカードを捲った。

「……確かに、グーとパーだ…」
「そうだ。それが何か…?」
「……いや」
「もう一度言おう、佐原君。これは『最初にここへ辿り着いた人間への優遇』なのだ。これは慈愛のゲームなのだ」
「……慈愛…。」
「そうだ。だから君に有利なように出来ている」
「………」

650 :代理投下:2010/04/12(月) 22:39:42 ID:???
322 :抜道19/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:37:37

慈愛うんぬんは胡散臭すぎるが、確かにこの勝負、黒崎が言うようにイカサマの入る余地が無い。
それに、いくら怪しいからと言ってわざと負ける訳にもいかない。命が懸かっているのだから。
黒崎は再び2枚のカードをシャッフルし、伏せて並べた。

「……パー…!」
佐原は再び発声し、即座にカードを捲る。

捲ったカードは、パーだった。

「またあいこか。なかなか勝負がつかないな」
黒崎は、今佐原が捲ったカードを破り、一枚残ったカードも開いて見せた。
残ったカードは当然グーである。

「……だが、あと一回でつくだろう、勝負」
「ああ、そうだな。では佐原君、ここで決めたまえ」
黒崎は再びカードを伏せ、佐原に言った。

(……何考えてるんだ…?俺を勝たせたいとしか考えられねえ…!だが、勝たせて何になるんだ?黒崎は何を考えてる…?)
黒崎の行動に疑問を抱きつつも、佐原は言葉を発する。
どちらにしろ佐原のとる行動は一つしかないのだ。

「パー…!」
そう言いながら開いたカードは…当然ながらグーであった。

651 :代理投下:2010/04/12(月) 22:40:14 ID:???
323 :抜道20/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:39:00

「おめでとう、佐原君。君は棄権の権利を手に入れた。晴れてこのゲームからの離脱となる」
「御託はいいっ…!早くこの首輪を外してくれよ…!ここへきて掌返しは無しだぜ…!」
「外すとも。さあ、やってくれ」
黒崎が黒服に話しかけると、黒服は頷き、首輪を外すための道具を持ってきた。

「その銃やデイパックを降ろせ。首輪を外す邪魔になる」
佐原は頷き、肩にかけていた銃や背中のデイパックを下ろし、床に置いた。
黒服は佐原の後ろに回り、首輪の留め具にいくつかの機械をつけ、爆発が起こらないように処理した後、首輪を外しにかかった。

ピーッ……
小さい機械音と共にあっけなく首輪は外れ、ボトリと絨毯の上に落ちた。

「……………………」
佐原は硬い表情でしばらく首を擦っていたが、やがてこらえきれずに声を絞り出した。

「……っ………!!
やった……!やった……!やったあっ………!!」

(やったっ…!やったっ…!首輪から開放されたっ…!これで晴れて俺は、この殺し合いから降りて自由になれるっ…!)
首輪を外して、ようやく首にかかっていた重みと共に、心にかかっていた重圧も消え、佐原は感動に身を震わせた。

「おめでとう、さあ、これを受け取るがいい」
黒崎は、佐原に封筒を差し出す。

652 :代理投下:2010/04/12(月) 22:41:21 ID:???
支援 ありがとうございます。スレ容量が491を超えていますので
新スレを建てさせていただきます。

653 :代理投下:2010/04/12(月) 22:43:53 ID:???
新スレ
福本漫画バトルロワイアル part.7
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1271079773/
上記に移ります。

654 :代理投下:2010/04/12(月) 23:29:04 ID:???
痛恨のコピーミスです 本当に申し訳在りません。
幾度お詫びしても足りませんが、申し訳ありません。
318 :抜道15/27 ◆6lu8FNGFaw:2010/04/10(土) 03:31:09

「ギャンブルの内容は至って簡単。じゃんけんだ」
「……は?じゃんけん?」
「そうだ。一発勝負、勝ったら君は棄権の権利を得る」
「……負けたら?」
「君の首輪をここで爆破させてもらおう」
「っ………!」
佐原の表情が険しくなる。黒崎は顔色一つ変えず、言った。

「君は今、いくら持っている?……1000万?ではあと残り9000万円も足りないんだろう。
一度、2000万の為に命を張った君なら、ここは当然受けるだろう…?」
「…………!」

佐原は、黒崎を睨みつけた。黒崎はなおも語りかける。
「負けが怖いなら、やめても構わない。先程の南郷の様に、あそこのエレベーターから出て行ってもらうだけだ」
「やるよっ…!そんな言い方で揺さぶりをかけたって、俺の心はもう決まってる…!」
「ほう」
「やりゃあいいんだろ…!畜生っ…!」
「何、今からするギャンブルは正真正銘、公明正大なギャンブルだ。そんなに心配することもない」
黒崎の合図で、黒服が3枚のカードを差し出した。黒崎はそれをテーブルに並べる。

「これを見たまえ」
「これは…、カードにじゃんけんの絵が描いてある…?」
「そうだ。以前別の場所で行われたギャンブルで使われたカードだが、それを流用する。
簡単だ。私はカードをシャッフルし、三枚とも並べる。
君はグー、チョキ、パーのうち自分が出すものを口頭で示してから、君が三枚から一枚選んで私のを引くんだ。
どうだい?私がイカサマをする余地がないだろう」

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