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リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル7

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 10:58:27 ID:2edmxx9a
当スレッドは「魔法少女リリカルなのはクロスSSスレ」から派生したバトルロワイアル企画スレです。

注意点として、「登場人物は二次創作作品からの参戦する」という企画の性質上、原作とは異なった設定などが多々含まれています。
また、バトルロワイアルという性質上、登場人物が死亡・敗北する、または残酷な描写や表現を用いた要素が含まれています。
閲覧の際は、その点をご理解の上でよろしくお願いします。

企画の性質を鑑み、このスレは基本的にsage進行でよろしくお願いします。
参戦元のクロス作品に関する雑談などは「クロスSSスレ 避難所」でどうぞ。
この企画に関する雑談、運営・その他は「なのはクロスロワ専用したらば掲示板」でどうぞ。

・前スレ
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルスレ6
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1224027590/
・まとめサイト
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルまとめwiki
ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/
クロスSS倉庫
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/

・避難所
なのはクロスロワ専用したらば掲示板(雑談・議論・予約等にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/10906/
リリカルなのはクロスSSスレ 避難所(参戦元クロス作品に関する雑談にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/

2chパロロワ事典@wiki
ttp://www11.atwiki.jp/row/

2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 10:59:25 ID:2edmxx9a
【基本ルール】
 参加者全員で殺し合いをして、最後まで生き残った者のみが元の世界に帰れる。
 参加者の所持品は基本的に全て没収され、その一部は支給品として流用される。
 ただし義肢などの身体と一体化した武器や装置、小さな雑貨品は免除される。
 主催者に敵対行動を取ると殺されるが、参加者同士のやりとりは反則にならない。
 参加者全員が死亡した場合、ゲームオーバーとなる。
 バトロワ開始時、全参加者はマップ各地に転送される。
 マップとなるのは「各クロス作品の建造物が配置されたアルハザード」という設定。
 バトルロワイアルの主催者はプレシア・テスタロッサ。
 バトロワの主催目的は未定です。それはバトロワの今後の発展次第で決定されます。

【支給品】
 参加者はバトロワ開始時、以下の物品を支給される。
 ・デイバック(小さなリュック。どんな質量も収納して持ち運べる素敵な機能有り)
 ・地図(アルハザードの地形が9×9マスで区分されて描かれている)
 ・名簿(参加者の名前のみが掲載されたファイル)
 ・水と食料(1日3食で3日分、都合9人分の水と食品が入っている)
 ・時計(ごく普通のアナログ時計。現在時刻を把握出来る)
 ・ランタン(暗闇を照らし、視界を確保出来る)
 ・筆記用具(ごく普通の鉛筆とノート)
 ・コンパス(ごく普通の方位磁石。東西南北を把握出来る)
 ・ランダム支給品1〜3個(現実・原作・クロス作品に登場する物品限定。参加者の能力を均一化出来る選択が必要)
 尚「地図」〜「ランダム支給品」はデイバックに収められている。

3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 11:00:23 ID:2edmxx9a

【支給品の制限】
1.デバイス系
 ・デバイス類は、起動だけならどの参加者でも可能
 ・カートリッジがあれば魔力の無い参加キャラでも、簡易なものなら回数制限付きで魔法使用可能

2.ライダーベルト系
 ※全般
  ・仮面ライダー関係の変身アイテムはこれ以上(33話時点)登場させる事を禁止する。登場した場合大方NG、書き直しで済む場合は書き直しで済ませる
  ・変身アイテムによる変身時間は無制限。ただし一度変身を解くと1時間経過するまで変身不可
 ※龍騎系ライダーベルトについて
  ・12時間に1人、契約モンスターに「生きた参加者」を喰わせないと所有者が襲われるようになる
  ・参加者を1人喰わせると猶予が12時間に補充される。猶予は12時間より増えない
  ・変身や契約モンスターの命令を1分継続させる毎に10分の猶予を消費する
  ・猶予を使い切ると変身や命令は解除され、契約モンスターに襲われるようになる
  ・所有者が自らの意識でカードデッキを捨てると契約モンスターに襲われる。無意識、譲渡、強奪は適用外
 ※カブト系ライダーベルトについて
  ・ベルトのみ支給品指定。ゼクターは変身時のみ、どこからともなく飛来する。
  ・ゼクターに認められなければ変身出来ない。各ゼクターの資格条件は、以下のものを精神的に満たしている事。
   ・カブト……自信
   ・ホッパー……絶望
  ・クロックアップはごく短時間のみ。使用後には疲労有り
 ※555系ベルト(デルタ)と剣系ベルト(カリス)のついてはそれぞれの支給品欄参照

3.火竜@FLAME OF SHADOW STS
  ・デバイスの中に“力の塊”として封印され、参加者に触れられるまで一切の行動が不能(虚空は例外)
  ・参加者が触れると火竜が体内に宿り、使用可能となる。その際、腕に火竜の頭文字が刻まれる
  ・宿っている参加者が死亡すると“力の塊”状態となって体外に出る。火龍の記憶は維持される
  ・能力を使うには火竜の頭文字を描く事が必要
  ・能力を使用する度に体力と精神力を消耗する。度合いは発動した能力の規模に比例

4.巫器(アバター)@.hack//Lightning
  ・通常、名称以外の情報や能力を確認・使用する事は出来ません。
  ・所有者が精神的に喪失を抱え、それに伴って強靭な意志を発揮した場合のみ(それ以降は何時でも)使用可能です。
  ・所有者が死亡すると、再び全機能の確認・使用が不能になります。。
  ・デバイスモードの巫器が近くにある時、その存在を「鼓動」によって察知できます。
  ・術式が既存の系統とは異なる為、AMFの影響を受けません。
  ・各巫器はそれぞれ専用スキルを持ちますが、「データドレイン」は全巫器が共通して使用出来ます。
  ・データドレインとは、魔力結合の術式に干渉・改竄することができる魔力弾を放つ能力の事です。
  ・魔法やAIDAを変質・削除させる事が出来ます。
  ・人間に命中した場合、その人物のリンカーコアに干渉・改変させる事が出来ます。
  ・それそのものは攻撃力が無い為、一般人には無意味ですが、 魔導師には一撃必殺の効果を発揮します。
  ・ただし膨大な魔力を消費する為、一度の戦闘では1発撃つのが限界です。
  ・データドレインの名称は、各巫器ごとに異なります。

5.カード系の支給品(遊戯王、アドベントカード@仮面ライダー龍騎、ラウズカード@仮面ライダー剣)
  ・カード単体でも使用可能、ただし使用後に消滅。専用アイテムを使えば威力増大で何度でも使用可。

6.制限が必要そうだが制限が決定していない物品を登場させたい場合は、事前の申請・議論が必要。

4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 11:01:23 ID:2edmxx9a

【時間】
 ・深夜:0〜2時
 ・黎明:2〜4時
 ・早朝:4〜6時
 ・朝:6〜8時
 ・午前:8〜10時
 ・昼:10〜12時
 ・日中:12〜14時
 ・午後:14〜16時
 ・夕方:16〜18時
 ・夜:18〜20時
 ・夜中:20〜22時
 ・真夜中:22〜24時

【放送】
 以下の時間に「死亡者」「残り人数」「侵入禁止エリア」を生き残りの参加者に伝える。
 ・深夜になった直後(00:00)
 ・朝になった直後(06:00)
 ・日中になった直後(12:00)
 ・夜になった直後(18:00)

【地図】
ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/pages/126.html

【禁止区域】
 侵入し続けると1分後に首輪が爆発するエリア。「放送」の度に3エリアずつ(放送から1時間後、3時間後、5時間後に一つずつ)増える。
 侵入禁止はバトロワ終了まで解除されない。

【首輪】
 参加者全員の首(もしくは絶対に致死する部位)に装着された鉄製の輪の事です。
 これにより参加者各人の「生死の判断」「位置の把握」「盗聴」「爆破」が行われ、「爆破」以外は常に作動しています。
 「爆破」が発動する要因は以下の4通りです。
 ・主催者が起動させた場合
 ・無理に首輪を外そうとした場合
 ・主催者へ一定以上の敵対行動を取った場合
 ・禁止区域に一定時間滞在していた場合(尚、警告メッセージが入る)

5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 11:02:26 ID:2edmxx9a

【避難所内でのスレの分け方】
 ・予約専用スレ(作品制作の為、使用したい参加者を申請する為のスレです)
 ・議論専用スレ(バトロワ上の問題、矛盾点、制限などを話し合う為のスレです)
 ・一時投下&修正用スレ(周囲の判断が必要な作品、または問題点を修正した作品を投下する為のスレです)
 ・情報まとめスレ(現時点での参加者やマップの状況、死亡者、予約状況などをまとめる為のスレです)
 ・雑談専用スレ(このバトロワに関わる方々が雑談する為のスレです)
 ・死者追悼スレ(このバトロワで死亡したキャラ達があの世に行った後の話を投下する為のスレです)
 ・要望スレ(新しいスレなど、新要素が必要になった時にそれを申請する為のスレです)
 ・毒吐きスレ(このバトロワ作品において毒と判断出来る意見を書く為のスレです)

【書き手のルール】
 バトロワ作品を作る上で、書き手に求められる規則。
 ・トリップをつける
 ・本スレでも連載中の書き手は、あくまでもこちらが副次的なものである事を念頭において執筆しましょう
 ・残虐描写、性描写は基本的に作者の裁量に任されます。ただし後者を詳細に書く事は厳禁
 ・リレー小説という特性上、関係者全員で協力する事を心掛けましょう
 ・キャラやアイテムの設定において解らない所があったら、積極的に調べ、質問しましょう
 ・完結に向けて諦めない
 ・無理をして身体を壊さない

【予約について】
 他の書き手とのかぶりを防止する為、使用したいキャラを前もって申請する行為。
 希望者は自身のトリップと共に、予約専用スレで明言する事。
 予約期間は1週間(168時間)。それ以内に作品が投下されなかった場合、予約は解除される。
 ただし諸事情により延長を希望する場合は、予約スレにて申請すれば3日間の延長が可能である。
 自己リレー(同一の書き手が連続して同じキャラを予約する事)は2週間全く予約がなかった場合に限り許可する。ただし放送を挟む場合は1週間とする。
 書き手は前作の投下から24時間経過で新しい予約が可能になる。ただし修正版を投下した場合は修正版を投下終了してから24時間後とする。
 作品に登場したキャラはその作品が投下終了してから24時間後に予約可能になる。ただし修正版が投下された場合は修正版を投下終了してから24時間後とする。

【状態表のテンプレ】
 バトロワ作品に登場したキャラの、作品終了時点での状況を明白に記す箇条書きです

【○日目 現時刻(上記の時間参照)】
【現在地 ○ー○(このキャラがいるエリア名) ○○(このキャラがいる場所の詳細)】
【○○○○(キャラ名)@○○○○(参加作品名)】
【状態】○○(このキャラの体調、精神状態などを書いて下さい)
【装備】○○○○(このキャラが現在身に付けているアイテムを書いて下さい)
【道具】○○○(このキャラが現在所持しているアイテムを書いて下さい)
【思考】
 基本 ○○○(このキャラが現在、大前提としている目的を書いて下さい)
 1.○○(このキャラが考えている事を、優先順で書いて下さい)
 2.○○
 3.○○
【備考】
 ○○○(このキャラが把握していない事実や状況など、上記に分類出来ない特記事項を書いて下さい)

 以下は、バトロワ作品の参加キャラ数人以上が、特定の目的を果たすべく徒党を組んだ際に書くテンプレです

【チーム:○○○○○(この集団の名前を書いてください)】
【共通思考】
 基本 ○○○(この集団が共有している最大の目的を書いてください)
 1.○○(この集団に共有している思考を、優先順で書いてください)
 2.○○
 3.○○
【備考】
 ○○○(この集団が把握していない事実や状況など、上記に分類出来ない特記事項を書いてください)

6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 11:03:44 ID:2edmxx9a

【参加者名簿】

【主催者】
○プレシア・テスタロッサ

【魔法少女リリカルなのはStrikerS】 9/10
○高町なのは(sts) ○シャマル ○ザフィーラ ○スバル・ナカジマ ○キャロ・ル・ルシエ ○ルーテシア・アルピーノ ○ヴィヴィオ ○クアットロ ○チンク ●ディエチ
【魔法少女リリカルなのはA's】 2/4
●高町なのは(A's) ○フェイト・T・ハラオウン(A's) ●シグナム ○ヴィータ

【リリカル遊戯王GX】 4/5
●ティアナ・ランスター ○遊城十代 ○早乙女レイ ○万丈目準 ○天上院明日香
【NANOSING】 4/4
○アーカード ○アレクサンド・アンデルセン ○インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング ○シェルビー・M・ペンウッド
【コードギアス 反目のスバル】3/4
○ルルーシュ・ランペルージ ○C.C. ●カレン・シュタットフェルト ○シャーリー・フェネット
【魔法少女リリカルなのは マスカレード】4/4
○天道総司 ○相川始 ○キング ○金居
【仮面ライダーリリカル龍騎】 2/3
○八神はやて(A's) ○浅倉威 ●神崎優衣
【デジモン・ザ・リリカルS&F】 0/3
●エリオ・モンディアル ●アグモン ●ギルモン
【リリカルTRIGUNA's】 1/3
●クロノ・ハラオウン ○ヴァッシュ・ザ・スタンピード ●ミリオンズ・ナイブズ
【なの☆すた nanoha☆stars】 3/3
○泉こなた ○柊かがみ ○柊つかさ
【なのは×終わクロ】2/2
○新庄・運切 ○ブレンヒルト・シルト
【リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】 2/2
○セフィロス ○アンジール・ヒューレー
【魔法妖怪リリカル殺生丸】 1/2
○ギンガ・ナカジマ ●殺生丸
【L change the world after story】 2/2
○ユーノ・スクライア ○L
【ARMSクロス『シルバー』】 2/2
○アレックス ○キース・レッド
【仮面ライダーカブト】 1/2
○フェイト・T・ハラオウン(sts) ●矢車想
【ゲッターロボ昴】 1/1
○武蔵坊弁慶
【魔法少女リリカルなのは 闇の王女】 1/1
○ゼスト・グランガイツ
【小話メドレー】 1/1
○エネル
【ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】 1/1
○ヒビノ・ミライ
【魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】 1/1
○八神はやて(sts)

現在:47/60

7 :◇RsQVcxRr96(代理投下):2008/11/20(木) 14:56:16 ID:BvX3KSmM

なのははいくつもの思いを巡らせる内にある可能性に気付いてしまった。
それは月村すずかもプレシアに連れて来られているのではという懸念だった。
最初はただのふとした考えだったが、考えれば考える程その可能性は真実に思えてきた。
そもそも高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやて、アリサ・バニングス。
いつもの5人組の内の4人までがいて、残り一人いないなど不自然だ。
それにこのヘアバンド。
すずかちゃんがいつも付けていたトレードマークとでもいうべき物がなぜ支給品として配られているのか。
答えは自ずと一つに絞られる。
月村すずかもプレシアによって攫われているのだ。

(この会場にいないのは、たぶん私達に対する保険。それならアルフさんやリインがいなかった理由も説明がつく!)

プレシアにとって高町なのはや時空管理局は計画を阻んだ存在だ。
そんな実績のある自分達を警戒するのは当然だ。
もしも自分達が首輪を外してプレシアの元へ辿り着いた時、すずか達はその時のための保険だ。
この場にいないアルフやリンフォースUやもしかしたらこの場にいる全員分の知人が捕まっているとしたら……
プレシア側に人質がいればいくら首輪を外しても迂闊に手が出せない。

(でも、これはまだ可能性の話! まだ、そうだと決まった訳じゃ――)
「おい、もういいか」
「え!?」
「十分泣いたんだろ。もう行くぞ」

いつのまにか背後に来ていた金居になのはは虚を突かれる形となった。
とりあえず今まで考えた事はひとまず置いておくとして、普段通り振る舞う事にした。
確証もない考えをいつまでも考えていては疲れるばかりだ。
また落ち着いた時にでも改めて考え直せばいい。

「心配して、くれたんだ」
「こっちの都合だ。それより一つ気になる事がある」
「なにかな?」
「ペンウッド君の事だよ」

いきなり出された名前は共に行動する少し頼りなさそうな仲間の名前だった。
なのはから見てペンウッドは少しおどおどしているような気がするものの、大人としての分別を持っている男性だ。
特に気にかかる事なんて思い至らなかった。

「ペンウッドさんがどうしたんですか」
「銀色の奴が鬼かもって話になった時、真っ先にペンウッド君が反論しただろ」
「ええ、確かに。そのおかげで余計な誤解を生まずに――」
「それがおかしいんだよ」
「へぇ?」

なのはは金居が今から何を言おうとしているのか見当が付かなかった。
心のどこかで聞かない方がいいと警鐘が鳴るがもう遅い。

「あのペンウッド君にしては妙に積極的じゃなかったか?」
「え、で、でもそれは……」
「面識がある奴ならともかく、あの時点で銀色の奴の行動は怪しいという流れだったんだぞ。
 それを赤の他人のペンウッド君が必死になって諌める理由なんてないと思うけどな」
「ちょっと待って! 金居君だってペンウッドさんの意見に賛同したでしょう」

なのははすかさず止めに入った。
これではまるでペンウッドが悪人のような言い方だったからだ。

8 :◇RsQVcxRr96(代理投下):2008/11/20(木) 14:57:40 ID:BvX3KSmM

「ああ、あの時はそうだったな。でも、よく考えてみたら変じゃないか。
 俺達と一緒にいたペンウッド君があんなに積極的に発言したのって、あの時が初めてだ。
 常におどおどしていたペンウッド君が銀色の奴が悪人扱いされそうになった途端にそれを積極的に否定し始めた。
 なにかあると思って当然だろ」
「それは……ペンウッドさんがその銀色の人と知り合いだった――」
「それなら尚更あの時にその事を主張するはずだ。だが、そんな素振りなんて見せなかった。
 まるで銀色の奴が悪人扱いされる事は都合が悪いと言わんばかりにね」
「――金居君、何が言いたいのかな?」

なのはの口調は先程より鋭くなっていた。
仲間が疑われていれば、それは当然の反応だ。

「もしかしたら銀色の奴が本当は悪人で、ペンウッド君がそれを誤魔化しているんじゃないか……そんな考えが浮かんだんだよ」
「そんな! そんな事、ただの想像にすぎないよ。私は、私はペンウッドさんを信じている」
「……これは俺の考えの一つだ。どう考えるかは貴様の自由だ。だけど貴様も見ただろ」
「…………」
「ペンウッド君、死者が呼ばれている時に悲しむ素振りなんて一向に見せなかった」
「――!!」
「アリサ・バニングスが殺された時でさえね」
「……金居君は、ペンウッドさんを疑っているの?」
「誰も彼もが無条件に信頼できると思ったら間違いだ。人が集まればそれだけ諍いが生まれる。組織に入っていたら分かる事だろ」

確かに時空管理局という組織に籍を置く身としてなのはにとって組織間延いては人間同士の諍いは他人事ではない。
意思の疎通を図っても人は時として互いの関係が悪化する事は多々ある。
時空管理局にしても陸と海の関係は依然として良好とは言えない状態だ。

「でも、ただの憶測という意見も間違いではないかもしれない。だから、この話は他言無用にしておこうか」
「……うん。そうした方が私もいいと思うよ」
「うん。じゃあ戻ろうか。二人を待たせているからね。ああ、そうそう……」

まだあるのかとなのはは心中うんざりしつつも、一応聞こうと思い耳を傾けた。
だが、それを聞いた時なのはは聞いた事を後悔した。


   ▼   ▼   ▼

9 :◇RsQVcxRr96(代理投下):2008/11/20(木) 14:59:07 ID:BvX3KSmM


太陽を象徴する温かな光が教室に満ち溢れている。
高町なのはが教室に戻って最初に抱いた感想がそれだった。
そして次に気付いた事が――

「弁慶さん、着替えたんですね」
「ああ、やっぱりあの格好はちと目立つかと思ってな」

弁慶の服装が黄色のパイロットスーツから墨染めの衣に変わった事だ。
さすがに元僧侶だけあって様になっている……と言うより、完全に荒くれ坊主そのものだった。
対するなのはの容姿にも若干の変化があった。
茶色のサイドポニーに白いヘアバンドがオプションとして付け加わったのだ。
すずかだけは無事である事を祈って、そしてアリサのような犠牲を出さないために。
そんな願いと決意の下に付けたのだが、なのはの心は晴れなかった。
理由は屋上で金居と話した事だ。
特に最後に言われた事は整理するには時間が掛かりそうだった。
それに情報処理室で見つけたパソコンの事。
電源が付いた以上あれには何かあると思うのだが、今は何となく言い出しにくい。
それが無意識の内の不信感から来る事になのはは分からなかった。
だからなのはは気付かなかった――教室の空気がどことなく曇っている事に。

「さて、ここで一つ提案なんだが」

金居が声を発すると他の3人の視線は自然と金居に集まった。
いつのまにか金居はこの集団のリーダーみたいな位置に座っている事になのはは今頃気づいた。
その事に一抹の不安を抱きながらもなのははペンウッドや弁慶と同様に金居の言う事に注目した。

「この辺りで別行動を提案する」

つまりはこうだ。
最初の六時間で60人いた参加者の内13人が死んで、残りは47人。
もしもこのペースでデスゲームが進行するなら殺し合いは1日と少しで終了するだろう。
実際は徐々にペースが落ちる可能性もあるが、逆に今の放送で殺し合いに乗る参加者も出てくる可能性もある。
ただ確実に言える事はデスゲームが順調に進行しているという事だ。
そうなっている以上今までのように4人で行動を共にするよりも2人ずつに別れて行動する方が賢明だ。
二手に別れる事によって戦力は落ちるが、その分多くの人と出会う可能性は高まる。
金居はそちらの方がメリットは大きいと主張した。
その金居の提案に対して残りの3人は少し躊躇ったものの、結局は賛成した。
誰かを救うにしろ情報を集めるにしろ、まずは人に出会う事が絶対条件だ。
各々不安はあったが、まずはそれを優先したのだった。

「それでペアの決め方だが、今後の命運を占う意味でもこのトランプで決めようと思う」
「トランプ?」

どうやら金居の支給品にはトランプが入っていたようだ。
金居が見せた説明書きにも『賭けポーカーに使ったり、ジョーカーだけ使ったり、使い方は自由』と書かれているだけだった。
どこからどう見ても何の変哲もないトランプ、つまりは外れ支給品だ。

「どうやって決めるんですか?」
「一枚ずつ引いて同じマークが出た者同士で組もうか。必然的に一組決まったらもう一組もその時点で決定する」

トランプは切り札と云う意味を秘めているカードでもある。
今後の行く末を決めるのには妥当な選択肢かもしれない。
なによりどの組み合わせでも問題なさそうな状況で手っ取り早く決める事が優先される。
全員に特に異存はなかった。

10 :◇RsQVcxRr96(代理投下):2008/11/20(木) 15:01:10 ID:BvX3KSmM
「では、一枚ずつ引いてくれ」
「じゃあこれで……俺はスペードのJだ」
「私はこれを……へぇ、クラブのQか」
「そ、それじゃあ私はこれにしよう。え、えっと、クラブのJか。つまり――」
「決まったね。俺の引いたカードは無駄か」

なのはとペンウッドが同じのカードを引いた事でペアは1回で決める事ができた。
次いで今後の方針を決めておく事になった。
結果、なのは・ペンウッド組は当初の予定通り商店街を回って道中にある施設を回りつつ工場へ向かう事に決まった。
一方の金居・弁慶組は首輪を持ってどこへも寄らずに逸早く工場へ向かって首輪解析の準備を整える事になった。

「実現させようぜ……俺達の望んでいた脱出ってやつを」

金居はトランプを回収しつつ、今日二度目となるセリフを口にした。
その意味は新たな決意の表れだろうか。
だがその真意は誰にも分からないまま金居は最後に自分が引いたカードをトランプの束に戻した。
そのカードは偶然にもダイヤのK――金居自身を表すカードだった。


   ▼   ▼   ▼


(ペンウッドさん……私、信じていいんですよね)

ペンウッドを信じると言ったが、なのはの心から一抹の不安が消える事はなかった。
ふと屋上で金居が最後に言った事が頭をよぎる。

――ああ、そうそう。アリサ・バニングスの事だが。
――アリサちゃんが、なにか。
――見せしめのためだけに呼ばれたという話。あれはどうも本当らしい。
――え!?
――名簿を見てみろ。死者の名前をチェックしていて気付いたが、本来ならそこには一つ名前が足りない。
――それって……
――ああ、そうだ。アリサ・バニングスの名前が無いだろ。

頭文字を五十音順で並べた60人の参加者の名前。
相川始から始まるその名簿にはある人物の名前がなかった。
アリサ・バニングス。
本来なら参加者としてあるはずのアリサ・バニングスという名前はどこにもなかった。
つまりアリサは最初から参加者として呼ばれたのではない。
本当に見せしめのためだけに呼ばれたのだ。
そして今度は死者蘇生の実演のためだけに命を弄ばれた。

あの時、なのはは何もできずにただモニターを眺めている事しかできなかった。
モニターを介しての逆探知もまるで効果がなかった。
ただアリサが生き返って……そして死ぬ場面を見ているしかできなかった。

(私は、守れなかった。アリサちゃんを、アリサちゃんだけじゃなくて死んでいった13人も、守れなかった。
 私は……誰かを助けるために管理局に入ったのに……魔導師になったのに……
 もしも、そのために誰かが危険に侵されたとしたら……私は……いったい……)

若き魔導師は他者を気に掛ける気持ちが強いが故に迷いが深くなる。
本来なら尊ぶべきその高尚な精神が今は逆に彼女を迷わせていた。

そして、そんな彼女を見つめる人物がいた。


   ▼   ▼   ▼

11 :◇RsQVcxRr96(代理投下):2008/11/20(木) 15:03:43 ID:BvX3KSmM


(だいぶ参っているようだ。知り合いの死、それも目の前で見せ付けられては無理もないか。ここは私が支えるべきか)

暗い表情のなのはを見つめるのは彼女とペアとなったペンウッドだった。
ペンウッドは自分が4人の中で一番戦力として頼りない事ぐらい自覚していた。
だから、せめて足手纏いにだけはならないように、少しでも支えとなれるように行動する。
それが自分の使命だと無意識に任じていた。

(金居君も彼女を励ましてやれと言っていた。彼も何だかんだで気には掛けているんだろうな)

――ペンウッド君。ちょっといいかい。
――な、なにかな?
――彼女の事だ。しっかり頼んだよ。

ペンウッドは足を進めつつ金居の発言を思い返していた。
あの時の金居は心底仲間を気遣っている表情だと思えるものだった。

そして、もう一人金居から話を聞かされた人物がいた。


   ▼   ▼   ▼


(……隼人、お前はもう死んでしまったか)

弁慶の手には一丁の銃が握られている。
S&W M500――敷島と銘打たれたその銃の本来の持ち主の名前は神隼人。
弁慶が当初この会場のどこかにいると思い込んでいた人物だ。
だが、なのは達と情報を交換し合う中で結局隼人はここにはいないという結論に至った。
名簿に載っていないというのが最大の決め手となったのだが、あの教室での一件でそれもあやふやになってきた。
それは金居がペンウッドへの違和感と一緒に話した隼人についてのある可能性だった。

――確か弁慶君はゲッターロボに乗っている時に連れて来られたんだよね。
――ああ、そうだ。
――つまりゲッターロボごと連れて来られた可能性が高いな。つまりこの時点でプレシアが確保した参加者は4人だ。
――でも、結局隼人はいなかったし、それにスバルやティアナが俺の知っている奴らと決まった訳じゃ……
――いや、プレシアとしても参加者集めは早く済ませたいと思うだろ。つまりここにいるスバルやティアナは……
――俺の知っているスバルやティアナって事か。あ、でもそれなら隼人はなんでいないんだ?
――考えられる可能性は二つ。監禁されているか、もしくはもう死んでいるか。

それだけならただの戯言だと切り捨てただろうが、今自分の手元にある銃が皮肉にも金居の説の裏付けを手伝っている。
このS&W M500は隼人が護身用に所持していた銃だ。
それがここにある以上隼人は今この銃を持っていない事を意味する。
そして隼人は狂人と言われる程の人物だ。
尚且つ反骨精神が豊富で大人しく捕まっている性分ではなく、寧ろ積極的に脱走しようとするほどだ。

つまり神隼人は既に脱走を試みて殺されている可能性が非常に高いのだ。

(……隼人、お前までいなくなっちまったのか)

弁慶は隼人がもうこの世にはいないような気がして幾らか寂しさを覚えた。
竜馬に続いて隼人までいなくなったかと思うと、自然と思う事もあるものだ。

そして、今まで様々な可能性を振り撒いてきた金居にはある変化があった。


   ▼   ▼   ▼

12 :◇RsQVcxRr96(代理投下):2008/11/20(木) 15:06:12 ID:BvX3KSmM


きっかけは些細な疑問だった。
それはここに来たらまずは誰でも考えるような疑問だ。
その疑問とは『どうしてここにいるか?』というものだ。
そして大抵の者は『いつの間にかここにいた』という結論に至る。
中には死後から連れて来られた者もいるが、そのような事例は少数だ。
そして大半の者がこの疑問への興味をここで失う。
確かに今までの事を考えるより、これから生き延びる事を優先する事は当然だ。
だがそれでいいのかもしれない。

この先は所謂パンドラの箱。または食べる事を禁じられた知恵の実。
開けない方がいい、食べない方がいい、知らない方がいい、そんな領域だ。
もしここに到達した者が特に力を持たない者なら何もない。
だがもしも強大な力を持った者がここに到達した時、その者は何を思うのだろうか。

その先の疑問、それは『どうやってここに連れて来られたのか?』というものだ。
そして、金居はそこに至ってしまった。

金居がそれを疑問に思ったのは放送前に校内を調べていた時だった。
本来の実力は相当なものであるカテゴリーキングである自分がなぜここにいるのか改めて疑問に感じたからだ。
確かに一度見知らぬ怪物に敗北を喫したが、それがあったからこそあの時よりは十分警戒するようにしていた。
それなのに今こうして自分は知らない間にここにいる。
十分警戒していたはずの自分に一切悟らせる事なく拉致するという手腕。
それは自分の力を、いや統制者の力と同等とも言える力のように思える。。
つまりプレシアはそれだけの事が容易にできる人物なのだ。

そして先程行われた放送。
禁止エリアは関係ない場所で、死者の名前には興味を引かれるようなものはなかった。
問題なのは、その後に行われた死者蘇生の儀式の最後に発せられた言葉だ。

――別にすぐにとは言わないわ。でも殺し合いが進まないと困るから、しかるべき時には……

つまりプレシアは過度に殺し合いの邪魔をする者には首輪の爆破も辞さないと言っているのだ。
ここで金居はある事実に思い至った――首輪を外す事は下策であると。
首輪を外したら当然殺し合いなどしない者が現れる。
そうなればプレシアにとっては都合が悪く、つまり殺し合いを過度に邪魔する者に値する。
こうなると首輪解除の手掛かりを得たとしても肝心の解除の瞬間にプレシアが干渉してくる可能性が高い。
いや、寧ろ解除した瞬間に首輪が爆発という可能性もある。
首輪を付けているからこそのデスゲーム。
その根本が破壊される事をプレシアが黙って見過ごすとは到底思えない。

この時、金居は一瞬絶望を感じた。
進むに進めず退くに退けない状態だと思ったからだ。

こうなると金居も方針の転換を考えざるを得なくなってくる。
今のまま行動すれば遅かれ早かれプレシアに目を付けられて迂闊な行動が取れなくなる。

そして考え付いた方法が『プレシアの殺害』だ。

まずはプレシアとコンタクトを取る方法を模索する。
つまりプレシアと手を組んで、彼女の計画に協力を申し出るのだ。
周りに気づかれないように参加者を殺す事もしておいた方が話も付けやすいだろう。
そして話が付いてプレシアに隙が十分できるまで近づいたら殺す。
それで全てが終わる。
首尾よくプレシアを殺したら、あとは彼女の持っている力を使って元の世界へ帰ればいい。
これでもう自分がこのような馬鹿げた遊戯に巻き込まれる事はないだろう。
もちろん残った奴の事は知った事ではない。

13 :◇RsQVcxRr96(代理投下):2008/11/20(木) 15:08:42 ID:BvX3KSmM

とりあえずは基本的には今までと同じように集団内で行動する。
だが今までとは違って不和の種をいくつか作っておく。
もしもこの集団が順調にいったら最終的には殺し合いを否定する大集団となり、殺し合いをしている者はこの集団の餌食になる可能性がある。
そして行きつく先は首輪の解除、プレシアの打倒という筋書きを行くに違いない。
そうなればプレシアと接触するなど不可能になってしまう。
なぜならおそらくそうなる前にプレシアが何らかの手を打ってくるに違いないからだ。
具体的には首輪の爆破が適当だろう。
それを阻止するためにも集団はある程度の規模に留めて適度に誘導しつつ、機会があれば強力な参加者を減らす際の捨て駒とする。
最終的にはプレシアと接触できないままなら最後の一人になった時が最後の交渉のチャンスだ。
それも視野に入れておく必要がある。

(だが、これは慎重にやらなければならないな。同時に他の手がないか調べる事も重要だ)

斯くして金居の方針に変化が起きる。
そのための第一歩として支給品探りの時から既に細工はしておいた。
なのはに調べるように渡したデイパックからは龍騎のカードデッキの説明書をこっそり抜いておき、自分が調べたデイパックにあったUSBメモリの存在は秘匿しておいた。

前者は渡す前に素早く見て抜いたものだ。
説明の内容はどれも興味深かったが、特に「一定時間以内に生きた参加者をモンスターに生贄として差し出す」という内容だった。
当然持ち主のなのははこの事を知らない、そしてこれから知る事はないだろう。
なぜならもう既に説明書の内容は自分が覚えた後でトイレに流して処分したからだ。
これでなのはがカードデッキの制限を知る可能性はほぼなくなった。
唯一の懸念は他にも知っている人と会う事だが、そんな都合よく会う事はまずないだろう。
これでモンスターの暴走という最悪の事態のお膳立ては整った。

後者は情報の制限が目的だった。
USBメモリにどのような情報が入っているにしろ、情報を寡占する事にはメリットがある。
問題は手元にパソコンがない事だが、こればかりはどこかで調達するかありそうな施設を当たるしかないだろう。
余計な詮索を避けるためにペンウッドにそのUSBメモリを抜き取ったデイパックは渡しておいた。

そして現状不自然に思われない程度に3人に不和の種を植え付ける。
これからどのような結果になるにしても今の彼らの表情を見れば効果があった事は明白だ。

金居は確かな手応えを感じつつも気を抜く事なく、次の行動を模索し始めていた。
それはまるで闇の中で蠢くクワガタムシのようだった。

だが、金居は知らなかった。
今まで自分達がいた学校に情報処理室というパソコンが山ほど置かれている部屋があったという事に。
そして、彼が惑わせたためにその存在を知っている人物が皆に知らせる事を躊躇した事を。
金居は知らなかった。

めくるめく運命は壊れそうな何かに――

14 :◇RsQVcxRr96(代理投下):2008/11/20(木) 15:15:25 ID:BvX3KSmM


【1日目 朝】
【現在地 D-4 学校前】

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、プレシアに対する怒り、深い悲しみと迷い、軽い疑心暗鬼
【装備】グロック19(14/15+1発)@リリカル・パニック、すずかのヘアバンド@リリカルなのは
【道具】支給品一式、カードデッキ(龍騎)@仮面ライダーリリカル龍騎
【思考】
 基本:誰の命も欠かす事無く、出来るだけたくさんの仲間を集めて脱出する。
 1.なんとしてもヴィヴィオを救出する。それは何よりも優先。
 2.商店街を経由して施設を巡りつつ工場へ向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
 3.出来る限り全ての戦えない人を保護し、仲間を集める。
 4.情報処理室の事、言いそびれたな。
【備考】
※金居を警戒しています。また紫髪の女子高生(柊かがみ)を気に掛けています。
※カードデッキの説明書を読んでいません。
 カードデッキの特性について把握できている情報は、「契約モンスターを呼べる」事くらいです。
※金居の話『ペンウッドは銀色の奴と手を組んでいる可能性がある』は半信半疑です。
※クロノのデイパックを自分のデイパックにしました。


【シェルビー・M・ペンウッド@NANOSING】
【状態】健康、若干の不安
【装備】なし
【道具】支給品一式×3、RPG-7+各種弾頭(榴弾5/照明弾2/スモーク弾2)@リリカルなのは・ストライカーズ エピソード秘話「  黄色の悪魔  」、
    トランシーバー×2@オリジナル、ケリュケイオン@リリカルなのはSyrikerS、菓子セット@L change the world after story、おにぎり×10、ランダム支給品(未確認1〜2)
【思考】
 基本:自らの仕事を果たす。
 1.商店街を経由して施設を巡りつつ工場へ向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
 2.この龍は本当に大丈夫なんだろうか?
 3.アリサという少女の思いは無駄にしてはいけない。
【備考】
※なのはを支える事が今の自分の仕事だと無意識に思っています。


【金居@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、カードデッキの複製(タイガ)@リリカル龍騎、トランプ@なの魂、USBメモリ@オリジナル、砂糖1kg×9、ランダム支給品(未確認0〜2)
【思考】
 基本:プレシアの殺害。
 1.プレシアとの接触を試みる(その際に交渉して協力を申し出る。そして隙を作る)。
 2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る。
 3.利用できるものは全て利用する。邪魔をする者には容赦しない。
 4.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。
 5.ジョーカーは出来ればこの戦いの中で倒してしまいたい。
 6.もしもラウズカード(スペードの10)か、時間停止に対抗出来る何らかの手段を手に入れた場合は容赦なくキングを殺す。
 7.USBの中身を確認したい(パソコンのある施設を探す)
【備考】
※このデスゲームにおいてアンデッドの死亡=カードへの封印だと思っています。
※最終的な目的はアンデッド同士の戦いでの優勝なので、ジョーカーもキングも封印したいと思っています。
※カードデッキ(龍騎)の説明書をだいたい暗記しました。

15 :◇RsQVcxRr96(代理投下):2008/11/20(木) 15:18:09 ID:BvX3KSmM


【武蔵坊弁慶@ゲッターロボ昴】
【状態】健康、トカゲ達(=アグモンとギルモン)を殺した者に対する怒り
【装備】閻魔刀@魔法少女リリカルなのはStirkers May Cry、修行僧衣@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは
【道具】支給品一式、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴
【思考】
 基本:殺し合いを止め、プレシアを打倒する(どうやって戦うかは考えていない)
 1.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
 2.スバルと合流する。
 2.軍事基地か地上本部に行き、ネオゲッターロボの所在を確かめる。
【備考】
※自分とスバル、ティアナ、隼人の4人は、ネオゲッターロボごとここに送り込まれたのだと思い込んでいます。
※隼人はプレシアによって殺された可能性が高いと思っています。
※金居から『恐竜達を殺したのは銀色の奴の可能性がある』『ペンウッドは銀色の奴と手を組んでいる可能性がある』という話を聞きました。


【チーム:少し、頭冷やそうか】
【共通思考】
 基本:首輪を解体し、このゲームから脱出する。
 1.二手に別れて工場に向かい、首輪解除の手がかりを探す。
 2.戦えない者は保護していく。
【備考】
※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。
※なのはの話から、プレシア・テスタロッサについて大体の情報を得ました。
※チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
 敵対的:アーカード、アレクサンド・アンデルセン、相川始、キング
 友好的:機動六課組、インテグラ・ヘルシング、天道総司
 要注意:クアットロ、龍を倒した奴(=アーカード)
 また、アーカードについてはインテグラと合流出来れば従わせる事が可能だと判断しています。
※カードデッキの特性について把握できている情報は、「契約モンスターを呼べる」事くらいです。

【共通備考】
※アグモンとギルモンの死体は【D-4 学校】にシーツを被せた状態で安置されています。
※【D-4 学校】の情報処理室にはパソコンが設置されています。電源を付ければ動きます。
※【D-4 学校】の1階の一部の教室の壁は弁慶によって破壊されました。

【すずかのヘアバンド@りりかるなのは】
文字通り月村すずかのトレードマークとでも言うべき白いヘアバンド。
なのは・アリサ・すずかの仲良し3人組ができるきっかけとも言うべき思い出の品。

【トランシーバー@オリジナル】
2機で1セット。受信範囲は同じエリア内のみ。

【菓子セット@L change the world after story】
Lが考え事をする時に重宝する物。甘い物が大量にある。

【USBメモリ@オリジナル】
中身不明の記録媒体。

【修行僧衣@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】
第14話においてウルトラマンレオことおゝとりゲンが着ていた墨染めの衣。

【S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴】
「.454カスール弾を超える弾薬を撃つ事のできるリボルバー」を開発目的として作成された超大型回転式拳銃。
黒いフレームに敷島と銘打ってある。

16 :◇RsQVcxRr96(代理投下):2008/11/20(木) 15:19:51 ID:BvX3KSmM
投下終了です。タイトルは「Round ZERO〜SAWS CUNNING」(元ネタは仮面ライダー剣の主題歌「Round ZERO 〜 BLADE BRAVE」)です。
誤字・脱字、疑問、矛盾などありましたら指摘して下さい。

17 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 15:21:12 ID:BvX3KSmM
代理投下完了しました。

18 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 20:22:14 ID:W7TU75vQ
投下ラッシュktkr
職人の皆様GJです!

>空腹の技法
何か渋い格好良さを持つ組み合わせだなぁ。
シリアスの中に何処となくほのぼのとした空気が流れていて良い感じでした!

>誇りの剣
こうして誇りは受け継がれていく……ギンガの決意が良く表せていて、これまた格好良かったです。
でも最初に拾った男が危険過ぎw

>Round ZERO〜SAWS CUNNING
良かれと思って行動してるだけなのに、何故か自分の首を閉めるペンウッド……。まぁ組んだのがなのはだし大丈夫、かな?
あと金居の考察が深いw

19 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/20(木) 21:29:54 ID:npx5FgN+
投下ラッシュ乙です。

>空腹の技法
常にマイペースなC.C.に無愛想なゼスト。なんだかんだとこのコンビがいい具合に定着してきて楽しみだ。
ゼスト曰く、あのなのはは簡単にはやられないか。まあ確かにそうだよな。
そしてC.C.よ。そこにはもう何もないよw

>誇りの剣
大切な人への想いを胸に今ギンガが立ちあがる!ってな具合ですかね。
いやぁ、やっぱりこのギンガにとっては憧れの殺生丸様なんだなあ。
でも始を拾うかw知ったらどうするんだろう。
あと氏へ個人的な意見。今回の最後の一言は余計だと思いました。

>Round ZERO〜SAWS CUNNING
金居がヤバいw君のせいでチームに不穏な空気が……
そしてペンウッドにあらぬ疑いが……ガンバレ
なのはの屋上のシーンは実はシリーズでもお気に入りのシーンだけに出てきて嬉しかったり。

20 : ◆7pf62HiyTE :2008/11/20(木) 23:34:31 ID:11oGXnJE
今からシャーリー・フェネット、浅倉威、ヴィヴィオの3名分投下します。

21 :混濁の純血 この身は汚れても ◆7pf62HiyTE :2008/11/20(木) 23:36:42 ID:11oGXnJE



林の中を3人の男女が歩いていた。
1人の男性が先頭を進み、少し後方に2人の少女……片方は17歳位のもう片方は6歳位の少女である。
先頭を行く男性は浅倉威、17歳位の少女はシャーリー・フェネット、6歳位の少女はヴィヴィオである。
3人は先程までいた海鳴温泉から逃げた男性……3人は名前を知らないが天道総司を追いかける為に西へ進んでいた。
天道は重傷を負っていた為すぐさま追いつけると思っていたがそうはいかなかった。
追いかけようとした時バイクが走り去る音が聞こえたのだ。そう、天道は温泉駐車場に備えてあったバイク……カブトエクステンダーで走り去っていったのだ。
3人も駐車場に向かい何台か車を見つけたものの鍵が無い以上動かすことは出来ない為、徒歩で天道を追っているのである。

天道を追う……その目的は3人とも違うものである。
浅倉は天道と戦う為、
ヴィヴィオは天道を助ける為、
シャーリーは天道……父親の仇「ゼロ」を追いかける為である。

さて、浅倉の後ろを進むシャーリーとヴィヴィオであるがここまで来る間にシャーリーとヴィヴィオは互いの自己紹介をしていた。
シャーリーが自己紹介をした時ヴィヴィオは

「お姉さんもシャーリーって言うの?」

と言い、シャーリーを驚かせた。ヴィヴィオの話では彼女の知り合いにも『シャーリー』と呼ばれる人がいるそうなのだ。
もっとも、その『シャーリー』の本名は『シャリオ・フィニーノ』なのだが、シャーリーがそれを知る事は無かった。

さて、自己紹介の後は互いの知り合いの事について話した。
なお、その際にヴィヴィオのデイパックの支給品の内地図や名簿、食料といったシャーリーも所持しているもの以外の支給品はシャーリーが預かった。
何故か……その中には殺し合いの道具やヴィヴィオには使えない道具があったのだ。
小さいヴィヴィオに殺し合いをさせない為、シャーリーはその支給品を預かったのだ。

(こんな小さいヴィヴィオちゃんにまで殺し合いをさせるなんて……)

さて、2人は互いの知り合いについて話した……シャーリーからはルルーシュ、カレン、スバルの事を話し、ヴィヴィオはママであるなのはやフェイト、そして六課のみんなの事を話した。
何故、ママが2人いるのかという疑問も感じたがそれについては深く考えない事にしたが、ヴィヴィオが話した中のある事が再びシャーリーを驚かせた。

(スバルもなのはって人やフェイトって人と同じ六課……どういうことなのかしら?)

そう、スバルも六課の仲間だという事を聞かされたのだ。だが、シャーリーの知るスバルはブリタニア本国からの留学生だった。六課という組織に属している話など聞いたことが無い。

(スバルそんなこと一言も言ってなかったのに……)

自分の知っているスバルと違う……その事がシャーリーに疑問を抱かせた。シャーリーはこれがどういう事なのかを考える。

(もしかして軍の特殊部隊なのかな……?)

シャーリーは六課をブリタニア軍の特殊部隊なのかと考えた。特殊な故に一般人にはその存在を秘密にされている……だからこそ、スバルはその事を話さなかったのだろうと、そう考えたのだ。

22 :混濁の純血 この身は汚れても ◆7pf62HiyTE :2008/11/20(木) 23:38:16 ID:11oGXnJE

(じゃあ、あの時スバルが抜け出したのは……)

それはシャーリーやスバル達も巻き込まれた河口湖でのテロ事件の時の話だった。あの時スバルはトイレと言ってパーティールームから出て行った。
随分戻ってくるまで時間がかかったのが気にかかったがこっそり事件に対処していたというのであればそれも頷ける話だとシャーリーは思った。
その軍になのはという日本人がいるということが気になったものの……。

(でもそのなのはって人イレブンよね……あ、スザク君もそうだから別に問題ないか)

シャーリーはそう結論づけた。と、シャーリーは何かに気が付き名簿を見る。

(ちょっと待って……この殺し合いに呼ばれている人達……その六課の人達が多いじゃない……)

そう、ヴィヴィオが言っていた六課の仲間やその関係者は参加者60人の中でも5分の1を超えている。
明らかに多すぎるのだ、その中に巨大犬であるザフィーラが入っている事が不思議に思えたがその事については深くは考えない事にした。

(それに……)

名簿を見ている内にシャーリーはもう1つの事実に気が付く。

(イレブンが多いのはどういう事……?)

そう、参加者の中にイレブン……日本人と思われる名前が明らかに多かったのだ。
ヴィヴィオのママであるなのはもそうだろうし、今前を進んでいる浅倉も、他にも遊城十代、相川始、泉こなた、武蔵坊弁慶等といった日本人らしき人達が参加者の4分の1を超えていた。
それでなくてもスバルもクォーター・ハーフであったので同じ名字であるギンガもその可能性が高いだろう。
更に他にもハーフやクォータ・ハーフがいる可能性は高い……シャーリーはそう考えた。

(どうしてこんなにイレブンや六課の人が多いんだろう……)

この2つの事実からシャーリーは考える……そして、ある一つの仮説を導き出す。

(もしかして……あのプレシアって人……ブリタニアの偉い人なのかな……?)

シャーリーはプレシアがブリタニアの偉い人でこの殺し合いを開いたのは六課やイレブンを抹殺する為に行っているのかと考えた。
元々シャーリーのいた世界ではブリタニア人による差別が当たり前だった。ブリタニアの植民エリアに済む人達……イレブンこと日本人もその対象である。
その為、日本人を良く思わないブリタニア人は非常に多い。
一応、名誉ブリタニア人という制度もあるにはあるがスザクが学園に転入してきた頃受け入れられるまでに時間がかかったことからもそれはあまり意味を成さないことは明らかだ。
ちなみにシャーリー自身は別にイレブンを差別するような人間ではない。

さて、六課がブリタニア軍においてどんな組織なのか……具体的には不明だがなのはやはやてという日本人がいることから人種を問わない特殊な部隊だとシャーリーは考える。
だが、現実問題としてブリタニアの偉い人が人種を問わない部隊を容認出来るだろうか?
まずNoだろう……恐らく軍内部では相当に形見の狭い思いをしていたのは想像に難くない。

プレシアは恐らくそんな六課や日本人を抹殺する為にこの殺し合いを開いた……シャーリーはそう考えた。
故に日本人の象徴とも言うべき「ゼロ」もこの殺し合いに参加させたのだろう。
だが、この仮説には幾つか疑問点がある。

23 :混濁の純血 この身は汚れても ◆7pf62HiyTE :2008/11/20(木) 23:42:03 ID:11oGXnJE

1つはシャーリーが最初に遭遇した半裸の男性……エネルの存在である。
どう見てもエネルは日本人ではない。かといってブリタニア人かと言われればそれも違う……全くの異質な存在だったのだ。
エネルは雷を操っていた……ああいう人物などシャーリーは見たことがない。
何故、エネルがこの殺し合いに参加して自分達を襲っているのか……それがわからなかったのだ。

疑問はもう1つある。それは何故自分やルルーシュ、それにカレンまでこの殺し合いに参加させられているのかだ。
自分達は日本人でもなければ六課でもない……この殺し合いに参加させられる理由が思い当たらないのだ。
だが、こちらの方はある程度の予想が出来る。
それは六課の人間らしいスバルの関係者だからだろう。それならば筋が通る話だ。

そうなると、ここでまた新たな仮説が生まれる……それは殺し合いに参加させられているのは六課や日本人、そして彼らに関わりのある人間ばかりを集めたという説を……
仮にそう考えるとするならば先程までで該当しない人物が参加させられている事にも説明が付く。
そして先程の疑問であるエネルについても日本人参加者の誰かの関係者なのかもしれないという推測が出来る。

(だけどどうなんだろう……わかんないなぁ……)

だが、以上の事は何の証拠もない話だ。シャーリーではそれを断定する事は出来ない。

(ルルだったらわかるのかな……)

とりあえず、この話はルルーシュと合流した時にでも話せばいいなとシャーリーは結論づけた。ひとまず今はルルーシュ達やヴィヴィオのママであるなのは達の合流しようと考えた。

(それにしても……誰がゼロなんだろう……?)

シャーリーは名簿を見ながら誰がゼロなのかと考えていた。
名簿にゼロという名前は出ていない……つまり、ゼロは本名で参加しているのだ。
さて、シャーリーは天道がゼロだと判断しているが、シャーリー自身は天道の名前を知らない。つまり……誰がゼロなのかはわかっていないのだ。
少なくても日本人である事はわかる……だが、それだけしかわかっていない。日本人の名前など名簿には幾つもある……そのどれがゼロなのかなどシャーリーにわかるはずがない。

(あの時ちゃんと名前を聞けば良かったかなぁ……)

今更ながらに名前を聞かなかった事を後悔していた。

さて、ここまでシャーリーはヴィヴィオとは情報交換していたものの浅倉とは殆ど会話していない。
何故か……それは、シャーリーの目から見ても浅倉は危険人物だったからだ。
幾らゼロを追いかける為とは言え下手なことをすれば自分が危険な目に遭うことなど明白、だからこそ殆ど会話をしていなかったのだ。
だが、何故かヴィヴィオは浅倉に懐いている……その事がシャーリーには不思議に思えたのだ。

(本当は良い人なのかな……?)

そんな風に考えていた。



と、足を進めていた3人だったが……

『さて、皆が待ち望んだ最初の放送の時間が来たわ。』

響き渡る声……そう、プレシアによる放送が始まったのだ。

「いけない、確か禁止エリアの発表があるんだった」

シャーリーは慌ててデイパックから名簿や地図を出す。浅倉もデイパックから地図等を出していく。そして、放送が流れた……

24 :混濁の純血 この身は汚れても ◆7pf62HiyTE :2008/11/20(木) 23:43:50 ID:11oGXnJE



「カレン……」

放送終わって暫くシャーリーは泣いていた……放送で呼ばれた名前にカレンがいたのだ。

「病弱で優しいカレンがどうして殺されなきゃならないの……」

シャーリーの知るカレンは病弱で気弱で優しい少女だった……そんな彼女が殺されたことにシャーリーはこの殺し合いの非常さを改めて感じていた。

「ルル……スバル……無事でいて……」

幸い放送ではルルーシュとスバルは呼ばれなかった……つまり、現時点で2人は生きているということだ。
幸か不幸かルルーシュとスバルは無事とは言い難いものの合流してはいる……が、その事実をシャーリーは知らない。

「あ……」

と、シャーリーはヴィヴィオの方に視線を向ける……ヴィヴィオもまたその場から動けず泣いていたのだ。
当然だ、放送で呼ばれた名前にはエリオ、シグナム、ティアナといった六課の仲間がいたのだ。いや、それだけではない。
一番呼ばれて欲しくない名前が呼ばれたのだ。

(ヴィヴィオちゃんのママ……殺されちゃったんだもんね……)
「なのはママぁ……」

シャーリーにはヴィヴィオの悲しみが出来る……シャーリー自身父を亡くしたばかりなのだ。
だが、どうやって元気付ければいいかなんてわかるわけが……いや、亡くしたばかりだからこそわからないのだ。
自分自身がそうなのに、ヴィヴォオを元気付ける事などできるわけがない。
慰めの言葉?言葉だけで元気になれるなんてシャーリーには思えなかった。

(せめて……もう1人のママのフェイトって人には会わせたいな……)

かける言葉が浮かばない……だからこそ、行動で助けてあげたいとシャーリーは思った。
もう1人のママであるフェイトに会わせると……シャーリーはそう思って名簿を見つめていた。

さて、悲しみに暮れる2人とは対照的に浅倉は別段変わった様子は無かった。
当然だ、浅倉には別に守りたい人物や助けたい人物など誰もいないのだ……浅倉にとって放送は禁止エリアの確認と、強者が生きているかどうかの確認でしかない。
だが、たった1人だけ気になった人物がいた。

「神崎優衣か……」

その人物は神崎優衣……そう、浅倉に王蛇のカードデッキを渡し仮面ライダーにした神崎士郎の妹である。
そもそも神崎士郎が浅倉達13人の仮面ライダー同士を戦わせようとしている理由には優衣が大きく関わっている。
だが、浅倉にとってはその理由などどうでもよく、知った所でする事に何も変わりはなかっただろう。そもそも浅倉自身優衣と士郎の関係など知らないのだ。せいぜい同じ名字だと思った程度だ。
だからこそ、浅倉はその事について深く考えることはなく、視線を地図に向ける。

25 :混濁の純血 この身は汚れても ◆7pf62HiyTE :2008/11/20(木) 23:46:01 ID:11oGXnJE

「禁止エリアはB-1、D-3、H-4……」

浅倉は禁止エリアを確かめる。今現在3人がいる位置は海鳴温泉より少し南のC-7……そこからはどこも距離がある。つまり、現状3人に影響を及ぼすわけではない。
だが、浅倉はこの禁止エリアについて少し思案する。

「施設を避けているな……なんのつもりだ……プレシア……」

まず気が付いたのが3つの禁止エリアは何れも施設の無いエリアであること。81あるエリアのうち施設を有するエリアは35……4割以上だ。
適当に選んだとしても1つ位は施設のあるエリアが選ばれる可能性は非常に高い。だが、今回の放送では施設のあるエリアは選ばれていない。
浅倉はこの事からプレシアが意図的に禁止エリアを選んでいるのだろうと考えた。

「施設に追い込むつもりか?」

浅倉は施設を避けている事から参加者を施設に向かわせようとしていると考えた。そしてそれはもう1つの事実を浮き彫りにする。

「他の連中は……禁止エリアの近くにいるな……」

禁止エリア周辺に他の参加者がいると考えたのだ。禁止エリアというのは参加者の出入りを封じる為のもの……それが意味を成させる為には参加者の通りが必要だ。
つまり、参加者の出入りがまず起こりえない森林エリアであるA-9、I-9、海エリアであるG-1、H-1、I-3、I-4を禁止エリアにしても全く意味を成さない。
となれば、禁止エリアは参加者が通る可能性があるエリアを選ばなければならないはずなのだ。
ところで、浅倉達のいる場所の近くにも海鳴温泉、スカリエッティのアジト、工場、駅と人が通りそうな施設は幾つかあるが、不思議な事にこの周辺は禁止エリアに選ばれていない。
この事実は浅倉達の近くを禁止エリアにしても意味がない事を意味する。
つまり……今現在、これら施設の近くにはあまり参加者がいないと……浅倉はそう判断した。

「ならば……市街地へ行けば誰かと戦えるということだな……プレシア……」

浅倉は禁止エリアの話からプレシアがこの殺し合いの様子を見ていて、暗に参加者の動向を伝えているのだと判断した。
そして浅倉は天道に追いついた後、市街地にある施設へ向かおうと考えていた。考えを纏めた浅倉は地図と名簿をデイパックにしまった。



さて、放送ではプレシアが最後の1人になった者には願いを叶えると言っていた。
御丁寧に最初に頭を飛ばされたアリサを復活させる様子まで見せて死者を蘇生させることも出来ると話した上で。
かといって、この場にいる3人の方針が変わる事はない。

シャーリーにしてもヴィヴィオにしても生き返らせたい人物がいた所で、友人や家族…ルルーシュやフェイトを殺してまで願いを叶えるつもりなんてない。
浅倉にしても元々戦いを楽しめればそれで良いので関係のない話……願いがあるとしても『戦いを続ける』というものでしかない。

そんな中、シャーリーは名簿に印を付けていた……誰が死んだかを把握する為だ。
と、ゆっくりと名簿を見ている内に妙な事に気が付く。

(あれ……? どうしてなのはさんの名前が2つあるんだろう……)

そう、今までは全く気にも留めていなかったが名簿に印を付けていくうちに、印がついているなのはと印のついていないなのはがいることに気が付いたのだ。

(ちょっと待って……このフェイトさんもはやてって人も2つ名前がある……)

そして、フェイトやはやても2つ名前がある事に気が付いた。

26 :混濁の純血 この身は汚れても ◆7pf62HiyTE :2008/11/20(木) 23:47:51 ID:11oGXnJE

(どういうことなの……ミスプリントか何か……?)

と考えるものの、この3人は共に六課の関係者でなのはとフェイトは共にヴィヴィオのママ……そんな3人がそろってプリントミスされるとは考えられない。

(……待って……もしかして……)

シャーリーはある考えに至った。その考えはあまりにも都合が良すぎる考えで、可能性はあまりにも低い説である。

(同姓同名の別人が参加させられている……?)

シャーリーはなのは、フェイト、はやては六課の3人以外に同姓同名の別人の3人が参加させられていると考えた。
同じ名前や同じ名字の人がいるわけだから同姓同名の人物がいる可能性は有り得ない話ではない。

(だったらもしかして……ヴィヴィオちゃんのママの方のなのはさんは……)

そして、先程放送で呼ばれたなのはがヴィヴィオのママであるなのはではなく、同姓同名の別人であるなのはの可能性があると考えたのだ。
そう、ヴィヴィオのママであるなのははまだ生きていると……
だが、その考えをヴィヴィオに話すという事はしない。
この考えはミスプリント以上に可能性の低い話なのだ。妄想の域にまで達していると言っても良い。
さらに仮にそうだとしても都合良く別人の方が死んでいるなんて話になるとは限らない。
そう、何から何まであまりにも都合の良すぎる話なのだ。
そんな事をむやみに話した所で違っていればかえってヴィヴィオを絶望させてしまう事など想像に難くない。

それでも……シャーリーはその可能性を信じることにした。
そうでなければあまりにもヴィヴィオが可哀想過ぎる……同じ様に父を失ったシャーリーはそう思った。
だからこそシャーリーは何とかしてもう1人のなのはを見つけたいと思ったのだ……僅かな希望を信じて……

と、シャーリーが名簿をしまおうとする……が、地面に何かが落ちているのを見つける。

「何かしら……?」

それはウサギのぬいぐるみであった。そして近くにはネックレスの様な物も落ちている。シャーリーはその2つを拾い手に取る。

「どうしてこんな所に……あら?」

と、ヴィヴィオがぬいぐるみの方をじっと見つめている。

「もしかしてこれヴィヴィオちゃんの?」
「うん……なのはママからもらったの」
「あっ、そうなんだ。じゃあヴィヴィオちゃんに返さないとね」

と、そのぬいぐるみをヴィヴィオに渡した。ヴィヴィオはぬいぐるみを大事そうに抱きしめる。

(あんなに大事そうに……きっとなのはさんとの大事な思い出が詰まっているのね……)

27 :混濁の純血 この身は汚れても ◆7pf62HiyTE :2008/11/20(木) 23:49:14 ID:11oGXnJE

さて、シャーリーは視線をネックレスに向ける。そのネックレスには4つの金の輪が付いている。

「こっちは何かしら……?」
「クラールヴィントだよ……」
「クラールヴィント?」

と、シャーリーの疑問にヴィヴィオが答えた。ヴィヴィオによると六課のシャマルという人が使っていたデバイスで、シャマルはそれを指輪や振り子に変形して使っているという話なのだ。
流石に変形するという話の方は半信半疑であった。

「変形ってまさか……」

と、言いつつ試しにクラールヴィントを首にかけて起動してみる。すると、

「あっ!」

クラールヴィントが指輪に変わりシャーリーの両手にはめられた。

「本当だったんだ……」

どういう理屈かはわからなかったが、そういうものなんだろうと深くは考えないことにした。と、シャーリーはあることに気が付く。

(もしかしてこれと同じ様なものがあるのかしら……そういえば確か……)

シャーリーはデイパックからリングに通した2枚のプレートを出す。それはシャーリーのデイパックに入っていた支給品であった。
最初に見た時はそれが何なのか全くわからなかったが、仮にこれもデバイスであれば……

そう考えてプレートを握り同じ様にやってみた。すると、

「えっ!? 何!?」

と、プレートが変形しシャーリーの両手にトンファー型の剣が握られた。
シャーリーは知らないがこれはヴィンデルシャフトというシャッハ・ヌエラが使うアームドデバイスである。

「武器になっちゃった……」
「おい……」

シャーリーの驚きを余所に浅倉が話しかけてくる。

「な、何ですか?」
「そいつ……どうやって出した?」

浅倉はシャーリーがヴィンデルシャフトを起動する瞬間を見ていたのだ。そして突然武器が出てきたことに驚きどういう事か聞いたのである。

「えっ……それは……」

シャーリーはどう答えようか戸惑う……下手に答えれば自分が襲われるかもしれないからだ。
と、シャーリーにある考えが浮かぶ。シャーリーはヴィンデルシャフトを待機状態に戻し浅倉に渡す。

28 :混濁の純血 この身は汚れても ◆7pf62HiyTE :2008/11/20(木) 23:51:29 ID:11oGXnJE

「武器に変形する物です」
「ほう……」

浅倉は試しに起動してみた。すると、シャーリーの言葉通りヴィンデルシャフトは起動し浅倉の両手に握られた。

「コイツは良い……」

浅倉はヴィンデルシャフトを振り回す。武器のない浅倉にとってヴィンデルシャフトは丁度良い武器だったのだ。そして、

「それから……」

シャーリーがデイパックからローラーブレードをだす。それは元々ヴィヴィオのデイパックに入っていた支給品で戦闘機人ナンバー9ノーヴェの固有武装ジェットエッジである。
浅倉はそれを受け取る。

「コイツも戦いに使えそうだな……」

浅倉はジェットエッジを履き少し動いてみる……慣れるまで少しかかりそうだが使いこなせれば十分戦いに使える、浅倉はそう思った。
そして、浅倉はジェットエッジとヴィンデルシャフトの使用練習をする……幾ら戦いに使えるとは言えいきなり使いこなせる程浅倉は万能ではない。
ある程度慣れた方が良いだろう、浅倉はそう考えたのだ……この後に控えている戦いに備えて……。

その一方、シャーリーは考える。何故、あの場所にぬいぐるみとクラールヴィントが落ちていたのかを。

(やっぱりこの人が出したのかしら……でもどうして……)

シャーリーは浅倉が出したものだと考えた。だがその理由がわからない……と、大事そうにぬいぐるみを抱えているヴィヴィオを見て、

(ヴィヴィオちゃんの事を心配して……?もしかしてこの人本当は優しい人なのかしら……?)

と、考えていた。その浅倉は2人に目を向けることなくヴィンデルシャフトとジェットエッジの練習をしている。
結論から言えば、シャーリーの推測は半分は正解、半分は不正解である。
確かにぬいぐるみもクラールヴィントも浅倉の支給品である。だが、出した理由はヴィヴィオの事を考えてのものでは決してない。
浅倉は放送時、地図と名簿を探した。だが、すぐに出せずにいて目に入ったのがぬいぐるみである。
それを見た浅倉はイライラしてぬいぐるみを投げ捨てたのだ。クラールヴィントはその時に一緒に投げられただけに過ぎないのだ。
勿論、その様子をシャーリーとヴィヴィオは見てはいない。故にこの真相は誰にもわからないことであろう。

29 :混濁の純血 この身は汚れても ◆7pf62HiyTE :2008/11/21(金) 00:01:16 ID:RPJTSnvS

さて、シャーリーが浅倉にヴィンデルシャフトとジェットエッジを渡したのには幾つか理由がある。
1つは自分が使うには扱いづらそうだったからだ。
ヴィンデルシャフトはトンファー型ではあるが一応は剣……優しい心の持つシャーリーがそれを扱えないのは天道に爆砕牙を返したことからも明らかだ。
ジェットエッジにしても幾ら運動神経の良いシャーリーであってもいきなりローラーブレードを渡されて使いこなせるわけもなく、戦いに使うなんてもってのほかだ。
当然、これらの武器をヴィヴィオに渡すという選択肢などあるわけがない。
もう1つは浅倉に戦う力を与える為である。
恐らくこの後、自分達は天道と遭遇することになる。幾ら負傷しているとは言え相手はゼロ、更に言えば爆砕牙という刀も所持しているのだ。
見たところ今の浅倉は武器を持っていない。更にぬいぐるみとクラールヴィントを投げた以上、支給品に武器が無い可能性は高かった。
戦いを求める浅倉といえども、武器を持った相手に対してはあまりにも分が悪すぎる。
更に、エネルといった殺し合いに乗った参加者と遭遇する恐れもある……だからこそ、浅倉に武器として使えそうな2つの支給品を渡したのだ。
予想外に浅倉が使いこなせるように練習し始めた事は幸運であった。
何故なら、なのはの死によるショックでまだヴィヴィオは動けない……落ち着くまでの時間が必要だったが、その時間を奇しくも得ることが出来たのだ。
ちなみにヴィンデルシャフトにはカートリッジシステムが搭載されているが、シャーリーも浅倉もその事には全く気が付いていない。

さて、シャーリーはこれまでの浅倉の行動から本当は優しい人なのだろうかと考えたものの、完全に信用しているわけではない。
更に言えば、実際に戦いとなれば何が起こるかわからない……だから、シャーリーは全ての支給品を浅倉に渡したりはしない。いざとなった時に自分が支給品を使うからだ。
もっとも、その内の1つを使う可能性は低いだろう。その1つに封筒があった……元々はヴィヴィオの支給品である。
封筒の中には鍵と紙が入っていた。紙には『デュエルアカデミア売店の鍵』とだけ書かれていた事から鍵がデュエルアカデミア売店の鍵だという事はわかる。

(デュエルアカデミアって……決闘の学校……何かしら……?)

気にはなったものの現在位置よりデュエルアカデミアへは距離がある為、現状そこに向かう事は無いだろうとシャーリーは考えた。
何より、決闘の学校という物騒な所に出来れば近づきたくはないとシャーリーは思っていた。
しかし、シャーリーの仲間であるスバルとルルーシュが今現在そのデュエルアガデミアにいる事など彼女には知る由もなかった。
さて、シャーリーはデイパックから銃を出す……それはシャーリーの支給品であった銃だ。

(もしもの事があったら私がヴィヴィオちゃんを……)

シャーリーはその銃をヴィヴィオを守る為に使おうと考えていた。更に、

(それに……もしゼロに会ったら……)

ゼロ……天道に会ったらその銃を使い……そう考えていたのだ。確かにシャーリーは優しい人間で殺し合いをするような性格ではない。
だが、幾ら野蛮な人間と言えども浅倉に自分の復讐を押し付けるような形になっている事に多少なりとも自己嫌悪していたのだ。
だからこそ、シャーリーは銃を手に取る……。

(ルル……こんな私見たら嫌っちゃうかな……)

シャーリーの脳裏に浮かぶのは好意を寄せる1人の少年……ルルーシュである。シャーリーはほんの少しルルーシュへ想いを馳せていた……。

30 :混濁の純血 この身は汚れても ◆7pf62HiyTE :2008/11/21(金) 00:03:02 ID:RPJTSnvS



だが……

そもそもシャーリーは勘違いをしている。天道がゼロであるという事自体そもそもの間違いなのだ。
シャーリーが天道をゼロだと判断したのは天道がゼロの仮面を持っていたからに過ぎない。
しかし、少し冷静に考えてみればその判断が早計であったことは明白だ。
それは、浅倉がヴィヴィオのぬいぐるみやシャマルのクラールヴィントを持っていた事からもわかる。
この場において、武器やデバイスといった道具は元々の持ち主にそのまま支給される事は幾つかの例外はあるものの殆ど無いと言って良い。
つまり、落ち着いて考えれば天道がゼロの仮面を持っているからといって天道がゼロと断定出来るわけなどないのだ。
だが、シャーリーはそれについて改めて考えようとはせず今もその間違いを抱えたままである。

そして、シャーリーは気付かない。ゼロの正体が彼女が想いを寄せるルルーシュであることに……。

さらに現実は残酷である。

シャーリーが天道に爆砕牙を返した理由にゼロ……天道が持っていた武器だったからというものがあった。
だが、今シャーリーが手にしている銃はゼロ……ルルーシュが使っていた銃である。
更に言えばその銃はシャーリーにとってはこれから起こるはずだった未来において、ルルーシュがユーフェミアを殺す時に使われた銃なのだ。
いや、ユーフェミアだけではない。この場にいるルルーシュにとってもこれから起こるはずだった未来において友達であったスザクを殺す時にも使われた銃だ。
そう、シャーリーはゼロが人殺しに使った銃を手にしていたのだ。
無論、この事実などシャーリーが知るわけがない。

ルルーシュのいた時間軸……シャーリーにとっては未来の話だがシャーリーは一度ゼロに銃を向けている……
その時シャーリーはゼロの正体がルルーシュだと知る。そして、シャーリーは銃爪を引いた……
しかし、それは父の仇であるゼロ……ルルーシュを殺す為ではなかった。ゼロ……ルルーシュの正体を知った者からルルーシュを守る為だった。
その後彼女はその罪悪感に押し潰されそうになった……そして、ルルーシュのギアスによってルルーシュの記憶を消されたのだ。

その未来ではシャーリーはゼロへの復讐心を持ちながらもゼロ……ルルーシュを守る為に銃爪を引きその重圧に押し潰された……
だが、ここにいるシャーリーの銃口が何の為に、誰の為に向けられるのか……そして撃った後彼女がその重圧に耐えられるのか……

それはまだ、誰にもわからない……。

31 :混濁の純血 この身は汚れても ◆7pf62HiyTE :2008/11/21(金) 00:05:22 ID:RPJTSnvS

【1日目 朝】
【現在地 C-7】

【シャーリー・フェネット@コードギアス 反目のスバル】
【状態】健康、悲しみ
【装備】浴衣、クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ゼロの銃(10/10)@コードギアス 反目のスバル
【道具】支給品一式、デュエルアカデミア売店の鍵@リリカル遊戯王GX、ランダム支給品0〜2(元シャーリー:0〜1(一見して治療に使えそうなものはありません)、元ヴィヴィオ0〜1)
【思考】
 基本:ルルーシュ達と一緒に帰りたい。
 1.お父さんの仇を討つ為に、ゼロを追いかける
 2.ヴィヴィオの為にフェイトを探す
 3.もう1人いるなのはを探し、ヴィヴィオのママかどうかを確かめる
 4.浅倉と行動を共にしヴィヴィオを守る
 5.ルルやスバルや六課の人を捜す
 6.この人(浅倉)って……実は良い人?
 7.デュエルアカデミアって……決闘の学校?
【備考】
 ※天道のことをゼロだと思っていますが、天道の名前は知りません
 ※ゼロを追いかける為に、一時的に二人の仲間になることにしました
 ※六課がブリタニア軍の特殊部隊で、スバルはその一員だと考えています
 ※ザフィーラを大型犬だと思っています
 ※プレシアはブリタニアの偉い人で、この殺し合いを開いたのは六課や日本人及びその関係者を抹殺する為だと考えています
 ※ヴィヴィオの境遇を自分と重ねています
 ※2つあるなのは、フェイト、はやての名前から同姓同名の別人がいると思っており、放送で呼ばれたなのはが別人の可能性があると考えています
 ※デュエルアカデミアを物騒な所だと思っています
 ※ゼロに追いついた後、持っている銃で撃つつもりでいますが、若干の迷いがあります

【浅倉威@仮面ライダーリリカル龍騎】
【状態】右手に火傷
【装備】ヴィンデルシャフト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式
【思考】
 基本 戦いを楽しむ。戦える奴は全員獲物
 1.ヴィンデルシャフトとジェットエッジに慣れる
 2.天道を追いかけて戦う
 3.天道に追いついた後は市街地にある施設に向かってみる
 4.更なる戦いの為、ヴィヴィオとシャーリーを利用する
 5.この二人がウザい。鬱陶しい。
【備考】
 ※自分から二人に危害を加えるつもりはありません
 ※二人の事は使えないと判断した時点でいつでも切り捨てるつもりです
 ※プレシアは殺し合いを監視しており、参加者の動向を暗に放送で伝えていると考えています
 ※ヴィンデルシャフトのカートリッジシステムには気付いていません

32 :混濁の純血 この身は汚れても ◆7pf62HiyTE :2008/11/21(金) 00:07:12 ID:11oGXnJE

【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、深い悲しみ
【装備】ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式
【思考】
 基本 フェイトママや、六課の皆と一緒に脱出する
 1.なのはママ……
 2.フェイトママを探す
 3.浅倉とシャーリーに着いて行く
 4.あの人(天道)のことも助けなきゃ……
【備考】
 ※浅倉の事は、襲い掛かって来た矢車から自分を救ってくれたヒーローだと思っています
 ※浅倉を信頼しており、矢車とエネルを危険視しています
 ※天道の事は怪我人として放っておけないと思っています
 ※この場にもう1人なのはがいる事に気付いていません

【ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
 なのはが聖王病院売店にてヴィヴィオに買ってあげたウサギのぬいぐるみ。ナンバーズによる地上本部&六課襲撃の際にボロボロになった。本ロワでは襲撃前から持ってこられている

【デュエルアカデミア売店の鍵@リリカル遊戯王GX】
デュエルアカデミア売店のシャッターを開ける為の鍵

【ゼロの銃@コードギアス 反目のスバル】
 ゼロが所持している銃。STAGE9にてユーフェミアを射殺する際に使われ、STAGE10においてもスザクを射殺する際に使われた

33 : ◆7pf62HiyTE :2008/11/21(金) 00:15:49 ID:RPJTSnvS
投下完了いたしました。

とりあえず、マーダーなのに戦力に乏しい浅倉を強化してみました……なんかエネルやアーカードと比較すると全然勝てる気しないけど……。
ちなみに、仮投下の段階ではデュエルアカデミア売店の鍵は無かったんですが、このままだと出す機会を失う可能性もあるのでここで出しました。
まあ、現状使われる可能性は低いですが。

今回のサブタイトルの元ネタはギアスED「勇侠青春謳」の歌詞の「混濁の純血 この身は汚れても」からです(そのままですが……)。
実は仮タイトルとして「シャーリー と 銃口」というのがあったんですが、過去SSで似たようなのがあったのでそれをボツにして今回の形になりました。

34 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/21(金) 00:20:25 ID:wN4B+ste
投下乙です。
トンファーを操るローラースケートを履いた浅倉wなんだろう、何とも言えないものがw
シャーリーはこれまた運命的なものを引いてしまってwゼロ仮面といい、おかしな運があるなあ。
とりあえず浅倉から早く離れてwww二人ともwww

それと仮投下時に指摘し忘れていたんですが>>21
>3人は先程までいた海鳴温泉から逃げた男性……3人は名前を知らないが天道総司を追いかける為に西へ進んでいた。
これって南ですよね。

35 : ◆7pf62HiyTE :2008/11/21(金) 00:36:53 ID:RPJTSnvS
感想ありがとうございます。

>これって南ですよね。

はい、これは南です。すぐに修正用スレに投下します。

36 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/21(金) 11:31:34 ID:RPJTSnvS
遅くなりましたがRsQ氏のSSで1点気になる所があったんですが、

トランプの出典がなの魂になっているんですが、なの魂にトランプって出ていましたっけ?
仮になの魂で出ていなくても、他のSS等で出ているので修正すれば問題ないと思いますが……。

37 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/21(金) 13:11:09 ID:wN4B+ste
>>36
なの魂第9話冒頭ではやてと神楽がババ抜きをしているシーンがあったのでそこです。
なの魂にした理由を敢えて言うなら【それ以外のクロス作品】からの出典に今ある作品から出したほうがいいと思ったからです。

38 : ◆RsQVcxRr96 :2008/11/21(金) 13:13:11 ID:wN4B+ste
トリ忘れてた。
ついでに補足:本当は参加者の作品から出せたら良かったんですけど見つからなかったんで。

39 :36:2008/11/21(金) 15:22:24 ID:RPJTSnvS
>>37 >>38

お早い解答ありがとうございました。

40 :絶望の罪人〜夜天の主〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 20:38:39 ID:JbN6ZbhD
それでは、アーカード、セフィロス、八神はやて(A's)、アンデルセン、ヴァッシュ、アンジール、フェイト(sts)、キースレッド、投下します。

41 :絶望の罪人〜夜天の主〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 20:42:19 ID:JbN6ZbhD
眩い光がその戦いを照らしていた。
片や巨大な十字架をまるで小槌のように易々と振るう、赤コートの男。
片や十字架以上の長さを誇る剣を自分の手足の如く操る、銀髪の男。
市街地の中央。
平常な世界であれば人々が賑わすその道にて二人の人外が演舞を続けていた。
傍目にも相当な重量だと分かる十字架が常人には知覚不能な速さで振るわれる。
常人だったら振り上げる事すら叶わない長剣が竹刀と見違えるかのように軽々と振るわれる。
互いに互いを高めあうかのようにスピードを増していく戦闘。

―――果たしてこれは人間同士の戦いなのか?

八神はやてはその争乱の百メートル程離れたビルの上、茫然と二人の舞を見つめ、疑問を浮かべた。
魔導師同士の高速戦に慣れたはやてでさえも目を見張る程、その戦闘は異常である。
手元に愛用のデバイスがあったとしてもこの戦いに介入できる気がしない。

あの時セフィロスは、自分をビルの屋上から下ろすことすら許さず、たった一人で家から現れた赤服の男に立ち向かっていった。
確かに接近戦を苦手とする自分ではあの戦闘に付いていく事は無理だろう。おそらく数分と持たなかった筈だ。
セフィロスさんは戦う前――赤服の男を見たと同時に、その事実に気付いていたのかもしれない。
あの男は異常だ。端から見てるだけでも分かる。
何度となくセフィロスさんに斬られているにも関わらず倒れない、膝をつきさえもしない化け物。
セフィロスさんでなくては対抗できない。
自分の無力さが悔しい。自分に力があればこの戦闘を止められるのに。セフィロスさんも、相手の男も傷つく事なく場を収められるのに。

「無事に帰ってきて、セフィロスさん……」

爪が掌に食い込む。
歯が唇に食い込む。
少女は身体を震わせその戦闘を傍観し続ける。
その左手に握られた剣が日光に照らされる。
長い長い戦いはまだ始まったばかり――。







常人ならば知覚不能なまでの速度で迫る十字の鉄槌を、剣士は体を後方に反らし、易々と回避した。
それどころかお返しとばかりに超長剣を一閃。吸血鬼を覆う真紅のコートからそれ以上に濃密な真紅が噴き出す―――がそれも一瞬。
刀が身体を通過し終える時には既に止まっていた。
有り得ない現象に剣士は小さく舌打ちをし、大きく二歩、後方に跳ぶ。
数瞬後、剣士の立っていた地面に鉛色の十字架が突き刺さる。
十字架を中心としコンクリートに亀裂が走り、陥没。
地面を舗装していた外殻が意味を為さない破片と変わり、周辺に飛び散った。

「いい反応だ、人間(ヒューマン)」

悠々と、まるで遊戯を楽しむ子供のように吸血鬼は笑っていた。
剣士が繰り出す究極ともいえる剣技を前に何度身体を斬りつけられようと、唇は孤を描いたままである。

「黙れ」



42 :絶望の罪人〜夜天の主〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 20:43:34 ID:JbN6ZbhD
剣士はその笑みが不快で仕方がなかった。
まるで殺し合いを殺し合いと思っていない。こいつはただ快楽を貪るためだけに戦闘を行っている。
あいつは自分の全てを――命さえも賭けて殺し合いを止める事を決意した。
おそらくあいつは人が死ぬ度に心を痛める。それが赤の他人であろうと、だ。
だというのにその傍らでは殺し合いを遊戯と取る男もいる。
仲間を助ける為、殺し合いに乗ったシグナムとは違う。
目的を達成する為、殺し合いに乗ろうとした自分とも違う。
愉悦の為の殺戮。快楽の為の殺戮。
不快で仕方がない。

「悪いな……誓いを破らせてもらう」

誰に向けての謝罪か、セフィロスが一つだけ呟いた。
透明感を保っていた目の色が変わる。それは暗い、何処までも暗い空虚な瞳。
ホウ、と感心したようにアーカードが息を飲んだ。
先程までは微塵も感じられかった殺意が溢れ出し、静電気のようにチクチクと皮膚を刺激する。
これ程までに純粋な殺意はアーカードでさえ数える程しか身に覚えがなかった。

「準備運動は終わったか?」
「ああ」
「ならば始まりだな」
「ああ」

数メートルの距離を挟み投げ掛け合う会話。アーカードの唇がこれまで以上の三日月を描いた。

―――たぎる。
―――燃えたぎる。
―――これこそ待ち望んでいたもの。

吸血鬼は狂気の笑みと共に一歩足を動かした。
それと同時に剣士も動く。タン、と地面を蹴り前に進む。
前進の先に待ち構えていたものは十字架での横薙。それを両膝を屈伸、上半身を猫のように丸め避ける。
そして折り畳まった脚、上半身に込められたエネルギーを一気に解放し再び地面を蹴る。
セフィロスの身体が真上に浮き上がり、アーカードの身体に縦一文字の斬り傷が付けられる。
股間から始まり胸板にまで走る傷。普通の人間からすれば即死しても不思議ではない。だが不死王にすれば蚊に刺された程度。
一瞬の怯みすら見せず空中に浮かぶ剣士へ十字架を振り上げ、

「ファイガ」

そのタフネスすら見越した剣士の放った炎撃が身体を焼いた。
アーカードの動きが止まる。セフィロスが地面に着地する。瞬間、セフィロスの持つ正宗がその両腕ごと掻き消えた。
「八刀一閃」――刹那の間に繰り出された八つに及ぶ超速の斬撃が吸血鬼に直撃。
真紅の身体が弾けるように吹き飛び、ビルの一つへと突っ込んだ。


「クククククク…………素晴らしい!」


――しかしそれでも笑いは止む事を知らない。
変わらぬ、いやそれ以上の狂気を滲ませ吸血鬼は立ち上がっていた。
身体中の傷は凄まじい速度で治癒を始めている。理不尽なまでの回復力。
しかしセフィロスは眉一つ動かさず、再度アーカードへの剣を構える。
死なないのならば死ぬまで殺すのみ――――不死という超常的な存在に対する解答としてはあまりに単純。
だがセフィロスは一瞬の迷いも躊躇いもなくそれを選択する。

「惜しいな。制限さえなければ本当の吸血鬼の闘争を見せたいところだ」



43 :絶望の罪人〜夜天の主〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 20:44:32 ID:JbN6ZbhD
ここで初めてアーカードの表情から微笑みが消えた。残念そうに溜め息を吐き、肩を落とす。
拘束具を解放し、この男と全力で戦ってみたい。幾重に現れる使い魔達を相手にどう対処するのか見てみたい。
悪夢とも呼べる光景を前にしても臆する事なく、果敢に突破を仕掛けてくるか、それとも無様に逃げ出すのか。
この剣士(ソルジャー)は不死王の心の臓に杭を打ち込む事が可能なのか。想像が止まらない。
その闘争を脳内に描くだけで血が沸き立つ。

今まで気にも止めていなかった首輪が唐突に鬱陶しく感じた。


「……御託はいい。さっさとかかってこい」


だがアーカードの想いなどセフィロスには知った事ではない。
こいつはこの場で殺す――――それがセフィロスが自分自身に課した任務である。相手の心情などセフィロスにとってはどうでもいい事でしかない。

「ハハッ! そうだな。この一分一秒、刹那に至るまで今は楽しませてもらおう」
「来い」

ヒトを超越した二つの存在は殆ど同時に駆け出した。申し訳程度に開いていた間合いは一瞬で縮まっていく。
セフィロスは鮮やかな銀髪をたなびかせ、アーカードは真紅の外套をたなびかせ、二人は遂に交錯した。

最初に仕掛けた者はセフィロス。
先手必勝とばかりに、白銀の十字架を握る右腕へ狙いを定め神速の抜刀術をお見舞いする。
だが吸血鬼はせせら笑いを浮かべつつ、身を捩り回避。捻れを戻す反動で十字架を振り抜く。
その一撃たるやまさに目にも止まらぬスピード。得物を振り切った体勢のセフィロスには防御など叶わず――――だが回避するには充分過ぎた。
前方の右脚に渾身を込め、地面を踏み抜く。体勢は変わらずその姿だけが真後ろに遠ざかり、十字架は再び空を切った。

(……避けたか)

追撃を一つ一つ丁寧にいなしつつセフィロスは思考する。
内容は先の攻防について。
奴に放った抜刀は渾身の物だった。数分前までは反応すらされていなかったであろう超速の一撃。
だが奴は易々とそれを回避し、反撃を行ってきた。

(攻撃を見せすぎたな……)

あのタフネスに対抗するには仕方がないとはいえ、何回と斬撃を放った。
恐らく無意識の内に、こちらのスピードに目が慣れて始めているのだろう。
先程までのように一方的に攻撃を成功させる事は望めない。
多少の危険は思慮に含むべきか。それとも切り札を切るか――。


殆どを戦闘に費やしている思考回路の片隅でセフィロスは判断に迷っていた。
切り札――漆黒の片翼を発現し、リスクを減らすか。リスクを背負いつつもこの状態で戦闘を続行するか。
確かに片翼を生やせば今以上の速度、威力での攻撃が出来る。だがそれでも相手の特質上、短期決着は望めない。
そしてもし奴が片翼の速度をも学習し、慣れてしまったら?
――――恐らく、勝利への道は消え去る。
今、相手が知らない切り札を持っているこの状態を保つ事こそが、奴に勝つ為の大前提。
奴とて死なない訳ではない筈だ。この殺し合いに参加させられてる以上、死という概念は必ず持っている。
だが奴が死なないのもまた事実。
腕を斬り落としても、首を跳ね飛ばしても、胴体を両断しても、多少の怯みを見せるのみ。
直ぐさま傷を治癒し、その剛力で襲いかかってくる。

片翼以上の切り札もあるにはあるが、あの魔法を行使したら近くに隠れているはやてを巻き込んでしまう。
他の魔法も奴を殺しきるには至らない。自身が有する最強の武器である剣術も、あの治癒力と耐久力の前には大した意味を成さない。
速度も徐々に追随され始めており、時が経てば不利になることは明白。
完全に動きを捉えられる前に奴を殺さなくては敗ける。



44 :絶望の罪人〜夜天の主〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 20:46:07 ID:JbN6ZbhD
この時、セフィロスは改めて感じ取っていた。
目の前にいる化け物がどれだけ強大か。
今の優勢な戦況がどれだけ危うい均衡の上に立っているのか。
アンジールも、戦闘機人も、シグナムも、アレックスも、高町なのはさえも凌駕する圧倒的な戦闘力。
かつて自分を滅ぼした男――――何故だか奴の姿が脳裏に浮かぶ。
あの男と目の前の男に共通点などない。姿形、性格、信念、何もかもが異なっている。
奴は正義を信念に戦い遂には自分を越えた英雄、コイツは悦楽の為に戦闘をする狂った化け物。
正義と悪。
単純に二分化したとしても重なる事はない二人。
なのに重なる。あの英雄とこの怪物の姿が、重なる。

「どうした人間(ヒューマン)! 貴様の速度はそんなものか!」
「黙れ」

愉悦にまみれた叫びと共に振るわれる十字架。
セフィロスはそれを身体を屈めて避け、五月蝿い戯れ言を発するその口を塞ぐように顔面に斬掛かる。
が、アーカードは首を傾げるだけでその一撃を回避。正宗は虚しく空を切った。

(やはり反応速度が上がっているな……)

小さく舌打ちしセフィロスは再度、正宗を構える。
――一撃が当たらないなら連続で斬り込むのみ。
単純だが真理とも言える思考の元、セフィロスは小さく一歩踏み込んだ。

「吹き飛べ」

瞬間、計八回にも及ぶ神速の連撃がアーカードを襲う。
「八刀一閃」。
劣勢に傾き掛けた流れを再び引き戻す為、必殺の剣技をセフィロスは再び使用した。
速さが、威力が、キレが、何もかもが通常の攻撃の遥か上を行く一撃を八回。
その衝撃には不死の王とはいえ耐えきる事は不可。その証拠にアーカードは同様の攻撃を喰らった時、なすすべもなく地を舐めている。
それは今回も同様。瞬きする間もなく一、二、三と斬撃が命中、その身体を後退させる。
四、五、六、七、八――――八撃目は先程回避された顔面を狙い振るわれた。
回避などもってのほか、防御すら叶う事なくアーカードは体中から漆黒の血液を
撒き散らし、後ろへと吹き飛ぶ――――



「ふはあうぇた」



――――聞こえたのは声にならない声であった。
この時、この戦闘に於いて初めてセフィロスの顔に感情が灯る。
それは驚愕。有り得ない、という言葉がセフィロスの心を支配する。
セフィロスに驕りはなかった。あの状況下で自身が信頼する技に頼るのは王道、寧ろ最適の判断ともいえる。
なのに防がれた。最後の八撃目が止められた。

――アーカードに止められた最後の一撃は、右側頭部から顔面を真横に斬り裂く横一文字であった。
連撃により体勢を崩した状態から、頭部へ最速の一撃。
セフィロスの狙い通り刃は確かにアーカードの右頬から進入し、顔面を両断せんと口内、後頭部を通過し――――そしてちょうど正中線、口内のど真ん中で進行を阻止された。

セフィロスの愛剣・正宗を止めた物体、それは圧倒的な顎の力。自身の頭部を斬り裂く刃を歯と顎の力だけで止めたのだ。
何処までも馬鹿げた怪力。まさに吸血鬼だから、いやアーカードだからこそ可能な防御法。
噛み締められているだけだというのに、刃はまるで溶接したかのように固定され、動かない。
それはセフィロスの力でさえもびくともしない程。
何よりもセフィロス自身が驚愕する。


45 :絶望の罪人〜夜天の主〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 20:48:15 ID:JbN6ZbhD
自分の必殺技を見切られたどころか、「噛む」などという行動で防がれた。
今まで何十もの怪物、達人を斬り伏せてきたこの技が――。

「私はお前を捕まえたぞ、剣士(ソルジャー)」

口から頭部を貫かれ、刃を歯に挟んだ状態で、どういう訳かアーカードは声を出す。
「八刀一閃」を防がれてから優に数秒は経っている、にも関わらずセフィロスは動くことが出来なかった。
アーカードが見せた驚異の防御法は、普段のセフィロスからしたら有り得ない隙を作り出したのだ。

「何を惚けている?」

右ストレートがセフィロスの鳩尾を捉えた。
まるで巨大なハンマーで思い切り叩かれたかのような一撃。セフィロスの両足が地面を離れ、宙を浮く。

「……ッ!!」

苦悶の声すら、出ない。
吸血鬼の怪力に加え完璧な角度で鳩尾に命中したのだ。
血反吐を撒き散らし地面をのた打ち回らないだけマシと言ったところであろう。

「どうした? 反撃をしないのか? 先程までの射殺すような瞳はどこに消えた?」

更に右、今度はフック気味の一撃であった。
続けて左、地面に向かうセフィロスを掬い上げるような一撃。
続けて右、再び鳩尾。セフィロスの身体が「く」の字に折れる。
続けて左、前方に倒れたセフィロスの顔面を、天に伸びるかのようなアッパーがブチ抜く。セフィロスの長身が地面を離れ宙に浮いた。
最後は十字架、血塗れの右手に握られたそれが剣道の突きのように鳩尾を襲う。
セフィロスの姿が一瞬にしてアーカードの視界から消え去った。
十字架のあまりの威力に、まるで鞠玉の如くセフィロスは後方に吹き飛んでいった。

一拍おいてセフィロスはビルの一つに激突、周辺に轟音が響き渡る。
コンクリートで形成されている強固な壁に、セフィロスを中心として、放射状に蜘蛛の巣ような模様の亀裂が走った。
亀裂は縦横数メートルに渡っており、如何に最後の一撃が重いのかを間接的に語っていた。

「どうした? どうした? どうした? まさかこの程度で終いか? たった数発の拳で貴様は戦えなくなるというのか?」

セフィロスの身体がズルリと亀裂から抜け落ち、力無く地に転がった。
意識が飛んでいるのか、挑発的なアーカードの言葉にも反応がない。
アーカードの瞳に失望の色が灯った。
終始浮かべていた微笑みは鳴りを静め、代わりに微かな怒りを含んだ表情が浮かんでいる。
長い溜め息を吐いた後に、顔に刺さる正宗を抜き捨て、左手のパニッシャーを持ち上げ、セフィロスへと一歩一歩近付いていった。

「貴様はそんなものか………がっかりだ、まだあの少年の方が頑張っていた」

コンマで開けられた距離がゆっくりと縮まっていく。
吸血鬼は自身の失望を口にして、いかに剣士に期待していたかを口にして、十字架を頭上に振り上げつつ歩を進める。
五メートル、四メートル、三メートル、二メートル……遂に手を伸ばせば届く距離にアーカードは足を踏み入れる。
セフィロスは、動かない。



46 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 20:49:45 ID:KFSvlqCj
支援

47 :絶望の罪人〜夜天の主〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 20:49:47 ID:JbN6ZbhD
「がっかりだよ、剣士(ソルジャー)」

中心にある「ドクロ」を象った穴に五指を絡め、セフィロスの脳天を狙い十字架を振り上げる。。
この十字架が振り下ろされた時、セフィロスは死ぬだろう。その淡麗な銀髪を血と脳漿で染め上げ絶命する。
なのに今だセフィロスは、動かない。

「出来損ないの下らない生き物め……」

鈍い銀色をしたパニッシャーが日光に照らされ眩い光を反射する。
その足元には墓標の如く影が形成されていて、地面が「赤色に発光」していた。

―――地面が赤い?
ふと頭をよぎった疑問にアーカードの動きが止まった。首を傾げ赤色の大地を凝視する。
血に染まっている訳ではない。何故か何の変哲もない地面がボンヤリと光っているのだ。
と、そこでアーカードはある答えに行き着く。瞬間、狂気の笑みが復活した。

「まさか貴様―――」
「―――燃え尽きろ」

アーカードがその言葉を最後まで聞く事はなかった。
突如発生した紅蓮の炎柱に全身を舐め回すように焼かれたからだ。
瞬きをする暇すらなく十字架を持った不死王は炎と一体となる。自身のコートよりも濃い色の真紅に包まれ、その表情すら確認する事はできない。
にも関わらず膝を折ることはない。悠然と圧倒的な灼熱の中で立ち続ける。
「ファイガウォール」―――エース・オブ・エース高町なのはの砲撃魔法と同等の威力を一身に受け、だがそれでも不死王は倒れない。


「―――これで終いだ!」


――しかしこの程度の攻めで手を休める気などセフィロスには毛頭なかった。
意識を喪失した演技でおびき寄せて最大出力魔法。やはり制限は存在したが勝機を見出すことには成功した。
漸く掴んだチャンス―――ここで終われる筈がない。
肩に背負ったデイパックから旧友の愛刀を取り出し、炎の中で立ち尽くすアーカード目掛け斬り掛かる。
肉を斬り裂く感触が刀を通して感じられた。

(身体が……重い……)

しかし、攻撃に転じたというのに、セフィロスの顔は苦悶に歪んでいた。
額には脂汗が流れ、眉間には深い皺が刻まれている。普段のポーカーフェイスが保てない程にセフィロスは消耗していた。

直撃したアーカードの攻撃。
制限下での超威力の魔法行使。
特に前者は不味かった。
本当に意識が飛びかねない連続攻撃であった。あまりの衝撃に意識を失う事は許されなかったが、ダメージは大きい。
一度刀を振るう度に、身体中、特に殴打を重ねられた腹部、頭部に軋むような痛みが走る。
だが、止まれない。奴が死ぬまで刀を振るい続けなくては勝機が消滅する。
多大なダメージを負った今の身体では切り札を切ったとしても勝ち目などない。
―――これが最後のチャンスだ。




48 :絶望の罪人〜夜天の主〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 20:51:59 ID:JbN6ZbhD
「ハァァァァアアアアアア――!」


剣舞は回転を増していく。
命を燃やした連撃は最早、並の達人すら知覚できない程の速度に到達していた。
セフィロスが振るう一撃一撃にアーカードは枯れ木の如くグラグラと身体を揺らす。だが足だけは固定されたかのように動かない。
後退も、前進も、膝を折ることも―――何もせずにただ揺れる上体を支えている。



―――そして数秒におよぶ驟雨のような連撃は、不意に停止した。





「セフィロスさん!」


八神はやては数分前と変わらぬ位置に立ち、悲鳴のような叫び声を上げた。
届かないのは分かっている。届いたとしても無意味なのは分かっている。でも叫ばずには居られない。
遥か十数メートル先にいるセフィロスの窮地に、八神はやては叫ばずには居られなかった。


―――最初は圧倒的な勝負だと感じていた。
相手の攻撃はセフィロスに掠りもせず、セフィロスさんの攻撃だけが一方的に相手を襲う。
ただ相手の治癒力せいで戦闘不能に追い込むには至らない。でも勝利は直ぐそこにあるように感じた。
だが時間が経つにつれ状況は変化した。
セフィロスさんの攻撃が外れるようになったのだ。いや、外れているのではない。避けられているのだ。
慣れなのか、本気を出し始めてきたのか、相手の反応が高まっている。
徐々に追い詰められていくセフィロスを、はやては歯痒い思いで見ている事しか出来なかった。

―――そして遂に恐れていた時が来てしまった。
セフィロスさんの刀が信じられない方法で止められ、そして殴り飛ばされた。
あの男の人が化け物じみた怪力を持っている事は見ているだけでも理解できる。
その怪力を真っ正面から連続で数発。
セフィロスさんが紙切れのように軽々と宙を飛び、ビルの壁へと叩き付けられた。
地に伏せるセフィロスさんを見て、声を上げる事すら出来なかった。
何十と打ち込んだ攻撃がたった数発で逆転される。あまりに理不尽な戦い。
赤コートの男は、その手に持った十字架を振り上げながら近付いていく。
助けに行きたいのに、助けなくちゃいけないのに、身体が凍り付いてしまったように動かなかった。
この時、自分は確かにある感情を抱いていた。
それは恐怖。
闇の書の闇よりも、仮面ライダーよりも、今まで見てきたどんな敵よりも強大なその男に自分は恐怖していた。

ただ絶望と恐怖に身体を震えていた自分―――でもセフィロスさんは違った。
ボロボロの身体で最後の力を振り絞り抵抗した。
巨大な柱状の炎魔法。
次いで嵐のような連斬。
赤服の男はただ沈黙を持ってセフィロスさんの攻撃を受けていた。
刀が何十何百と致命的な傷を形成し赤服の男を追い込んでいく。普通の人間だったら跡形も無くなるであろう連続技。
―――なのに、なのに、なのに。
―――赤服の男は倒れない。


49 :絶望の罪人〜夜天の主〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 20:53:25 ID:JbN6ZbhD
攻撃をしていた筈のセフィロスさんの膝が折れた。
地面に刺した剣で身体を支え、倒れる事だけは拒否している。でもその体勢を維持する事すらも辛そうに見える。
途端に炎が消え失せた。
そして火柱から現れたのは身体中から夥しい量の血を流し、皮膚の殆どを炭化させ―――だがそれでも笑みを浮かべている狂った男。
セフィロスさんが行った命を賭しての攻撃も届かない。見る見る内に治っていく。
十数秒と掛からずに男は元の姿に戻り、セフィロスさんを見下ろしていた。

「セフィロスさん!」

届かないのは分かっている。
届いたとしても無意味なのも分かっている。
でも叫ばずには居られなかった。

―――だから気付けば動いていた。
自分が動いたとしても無意味なのは分かっている。
でも動かずにはいられなかった――。



落下防止の為に設置されたフェンスを乗り越え、はやては宙に身を投げ出す。
同時に見えないグライダーを身に纏っているかのように、はやてが空中を滑った。
飛行時間はほんの数秒。直ぐさま地面に降り立つと、両手を大きく広げ毅然と口を結び視線を正面に固定する。

「ほう、これは可愛らしいお嬢さんだ」

はやてが舞い降りた位置はセフィロスの目の前――つまりはアーカードの目の前。
傷を負い、膝を付くセフィロスを庇うようにはやてはそこに立ち塞がった。

「何を……して、いる…………早く、逃げろ……」

後方からか細く震えた声が響く。つい数分前まで自分を支えてくれた強い声。
だがその声も今は酷く弱々しい。分かっている、自分の判断のせいでセフィロスさんは傷付いた。

「良いだろう。私の前に立ち塞がるのならお前も敵だ」

身体が震える。奥歯がカチガチと音を立てる。
目の前の男は身体を捻り、弓を射るかのように右手を後方に構える。右手は拳ではなく五本の指をピンと伸ばしていた。
昔、テレビで見た事がある。確かあれは貫手という構えだ。
素手の筈なのにまるで長槍を突き付けられてる気分になる。
いや、あれだけの力を持った人が行う貫手だ。本物の槍のように人体など突き破るのだろう。
あの右手が動いた時自分は死ぬ。音もなく迫ってくる死は、やはり怖いものであった。
でも逃げない。自分の後ろにはセフィロスさんが居るのだ。
逃げない。逃げてたまるか。

(みんな、ごめんな……)

その瞳にうっすらと涙を浮かべながらも、八神はやては地に根を生やしたかのように動かない。
その脳裏に「死」という影がちらつき、今まで感じた事もない程に膨大な恐怖が心を鷲掴みにするが、決して動こうとしない。

「良い夢を。剣士(ソルジャー)、そして勇気あるお嬢さん」

死を前にしても揺るがない少女。
最後の最後まで失望させる事なく、至高の闘争を与えてくれた剣士。
賛辞の言葉が自然と口から飛び出していた。
限界まで引き絞った右手を解放する。狙いは少女の心の臓。せめて苦しまないように全力で手刀を叩き込もう。



50 :絶望の罪人〜夜天の主〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 20:55:18 ID:JbN6ZbhD
一メートルにも満たない僅かな距離を風を切り、右手が直進する。
素晴らしい男だった。吸血鬼を遥かに越える身体能力に、凍てつくような殺意。
この男になら心臓を受け渡せると思った。この男なら覚めない夢を終わらせてくれると思った。
だが足りない。あと少し、ほんの僅かだが足りなかった。
惜しむ気持ちが時間を引き延ばす。右手が少女に、そしてその後方にて、満身創痍の身体で今だに射殺すような視線を放っている男へと、迫る。
この状況下でそのような瞳を見せられるとは―――やはり人間は素晴らしい。

至福の時もあと少し終焉を迎える。槍と化した右手が少女に到達した時、終わってしまう。
覚めない夢は終わらないというのに、勇気ある人間達はこの世から消える。
今まで感じた事のない感情を胸にアーカードは右腕を振り抜き――


「AMEN」


――そしてその視界が完全な闇に染まった。
続いて衝撃。セフィロスの「八刀一閃」に勝るとも劣らない衝撃が横殴りにアーカードを襲う。

――アーカードはこの闇の正体を知っていた。
これは目を潰された時に訪れる真の闇。
感覚から言って口から上、顔の上半分が吹き飛ばされているだろう。
続けて来た衝撃は上半身を中心に駆け巡っていた。不意打ちであったとはいえ姿勢を保つ事が出来ない。
相当な馬鹿力を持った何者かに巨大な何かで殴られた―――アーカードは心地よい浮遊感と寸分の光も存在しない闇の中、判断する。

(いいぞ、いいぞ、いいぞ、いいぞ、いいぞ、いいぞ、いいぞ! 立ち向かえ人間! その全力を持って我が心の臓腑に杭を穿て! この憐れな化け物の夢のはざまを終わらせてみろ!)

スタ、と宙で一回転し頭部を無くした吸血鬼は悠々と地面に着地する。一緒に吹き飛んだ十字架が音をたて地面にささる。
着地と共に黒が集結し、吹き飛んだ頭部の形成を始める。吸血鬼の視界が晴れていく。

『さて、皆が待ち望んだ最初の放送の時間が来たわ』

同時に鳴り響く大魔導師の声明。その声が遊戯の開催から六時間もの時間を告げる。
だが吸血鬼の耳にそんなものは届かない。意識は新たに現れた敵対勢力に集中されている。
復活した眼球でその男の姿を確認し、アーカードの顔が歪んだ。
視線の先にいる男も、アーカードと同様に顔を歪めた。
呟きは同時。
男は宿敵に対し、アーカードは愛敵に対し、灼熱の情念を胸に声を出す。

「やはり貴様か、アンデルセンッ!!」
「ご機嫌じゃねぇか、アーカードッ!!」

―――そこにいたのは巨大なハンマーを肩に掛けた漆黒の親父。
―――夢のような闘争はまだまだ終わらない。
―――空に響く放送をゴング代わりに第2ラウンドが開始する。






あの右手が身体を貫くかと思われた刹那、赤コートの男の頭が弾けた。
同時に右腕から力が抜け、ダラリと下がる。
次いでガシャン、という聞き覚えのある音が三回。そして巨大な何かが男の上半身にめり込み吹き飛ばした。

「ヴィー……タ……?」



51 :絶望の罪人〜夜天の主〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:00:24 ID:JbN6ZbhD
その巨大な何かを自分は見慣れている。
その何かとはヴィータが得物とするグラーフアイゼン――それのギガントフォルムと呼ばれる形態。
もしかして、という予感が頭をよぎり、会いたいと望んでいる家族の名を思わず呟いてしまった。
だけどそこに居たのは見知らぬ男の人。
赤コートの男が吹き飛んだ後、そこには眼鏡を掛けた金髪の男の人が立っていた。
赤コートの男は、突然現れた謎の眼鏡の男と再び戦闘を始めた。
最初は、眼鏡の人が助けてくれたのかと思ったが別にそんな気持ちは無かったらしい。
私達の存在に気付いているのか、いないのか、眼鏡の人はギガントフォルムのグラーフアイゼンを片手に赤コートの男に突撃していってしまった。

何はともあれ身の危険は去った。
どうにかセフィロスさんを運び、ビルの一つに身を隠す。セフィロスさんは苦悶の表情で意識を失っていた。
この場に闇の書があれば傷を治療することも可能だが、今は無い。
自分に出来ることは額に浮かぶ汗を拭いてあげることだけだぢた。

「ごめんな……ごめんな、セフィロスさん……」

―――気付けば涙に視界が歪んでいた。

―――セフィロスさんはこんなボロボロになるまで戦い続けた。
それに比べ自分は何なのだ。セフィロスさんの戦いを見てるだけ。
殺し合いを止めると言ったのは自分自身なのに。
自分は、何にもしていない。
戦闘はセフィロスさん任せ切り。
シグナムを失ったあの時もそう。
今回の戦いもそう。
自分は見ていただけだ。
一緒に戦った訳ではない。
力も無いのにただ戦闘の間に入り、理想だけを語っていただけだ。
そんな私を庇ってシグナムは死んだ。そんな私の理想を貫き通す為にセフィロスさんは傷付いた。
―――自分は何をしている?

「ごめんな、シグナム……ごめんな、セフィロスさん……ごめんな、ごめんな、ごめんな……」

八神はやてはただただ謝り続け、瞳から間断無く涙が流していた。
頭上にて放映される凄惨な殺人劇も、プレシアの高笑いも、見えない、聞こえない。
ただ自身の無力さが悔しかった。口だけでは何も解決しない。それを貫く力がなくては理想を語る権利などないのだ。
放送は何時の間にか終わっており、吸血鬼と狂信者の戦闘音だけが響く。
だが自身の罪を知った少女は顔を上げることはない。


52 :絶望の罪人〜夜天の主〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:01:42 ID:JbN6ZbhD
ただ涙を流し、傍らに倒れる剣士を縋るように見つめていた。






一分、二分、三分―――何もない無駄な時間が流れていく中、それは唐突に発生する。
最初は少女も失意の真っ只中に居て気付かなかったが、次第にそれは無視できるものではなくなっていく。
はやては、不審げな顔でセフィロスから視線を外し、天井を眺めた。

(ビルが……揺れてる?)

その思考は半分正解で半分ハズレ。
確かにビルは揺れている。だが揺れているのはビルだけではない。
地面そのものが、自分達の足元を形成する世界自体が揺れているのだ。

「な、なんや、これ?」

その揺れはまるで何かが近付いてくるかのように急速に大きさを増していく。
最初は感じ取る事すら怪しかった揺れが今ではビル全体を震わしていて、立ち上がることすら危うい。
ミシリミシリと、ビルが嫌な音をたて、揺れている。
はやての胸に漠然とした焦燥感が募り始めた。
まさか、と思いつつも最悪の事態が頭に浮かび、こびり付いたかのように離れない。

(に、逃げないと……!)

思考の合間にも揺れは力強さを増していく。最早グラグラなどと生易しい揺れではない。
『ガクガク』と悲鳴を上げるかのようにビルがその巨体を左右に振る。
仰向けに寝転がるセフィロスを背負おうと、身体中に渾身の力を込め立ち上がる。
―――しかし、少女の努力も虚しく終わりの時は突然にやって来た。
部屋にある窓から太陽すら凌ぐ暴力的な「白」が差し込み、部屋を染め上げる。
強烈な光に、暗闇とは逆の原理で眼が役を為さなくなった。床も、天井も、セフィロスさんの姿も、自分の手すら、判別できない。




―――圧倒的な白が世界を包んだ―――








吸血鬼が振るう巨大な十字架を、これまた巨大な鉄槌が受け止める。
漆黒の狂信者がほんの僅か後方に滑るが、力負けはしていない。
膠着状態に入る。

「良いぞ、アンデルセン! お前も楽しませてくれる!」
「語るにおよばず!」

交差する得物を挟み、互いに叫ぶ。
アーカードは愉悦をアンデルセンは憤怒を。まさに正反対の感情を胸に、二人の化け物は顔を向かい合わせる。
頭上で流れる放送など意識の外。画面内で行われる殺人ショーにすら気付かず、眼前の敵を討ち滅ぼすべく行動を続けている。



53 :絶望の罪人〜夜天の主〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:02:19 ID:JbN6ZbhD
「シィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」
「ハァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

反発しあう磁石のように、互いの姿が後ろに飛ぶ。
地面を削りつつも両者共、姿勢を崩すことはない。視界の中、意識の中に存在するのは目の前の宿敵。
地面に着地すると共に再び地を蹴り出し、勢いを付け再び激突する。
先程のセフィロス戦のような力VSスピード・手数の戦いとは違う、純粋な力と力とのぶつかり合い。
より強い方が勝つ―――勝負の原点とも言える単純な戦い。だが戦闘者によりそれは限り無く高次元のものに昇華されていく。
アーカードとアンデルセンだからこそ出来る最強の力比べ。どちらも引くことを考えない戦いは、時が経つにつれ熾烈さ増していった。


――だからこそ二人は異変に気付かない。
地面が揺れだしても、周辺のビル群が振動を始めても、地平線の彼方から奇妙で強烈な光が発生したとしても、その光が徐々にこちらに向かい直進し始めているのにも――――二人は気付かない。
そして丁度二人の真上、遙か上空にて光が炸裂――――圧倒的な白と共に暴風雨のような烈風、衝撃が世界を突き抜ける。
先程まで不安定に揺れていたビルはトドメを刺されたかのように崩壊を始め、瓦礫と化していく。
その衝撃は有象無象の差別なく全てに平等に降り懸かる。
申し訳程度に植えられた街路樹も。
最年少執務官を張り付けられたデビルハンターの住処も。
失意の夜天の主、そして最強の剣士が潜んでいるビルも。
それら全てが、ゆっくりと吸い込まれるように『天空に向かって』瓦礫を撒き散らしていく。

――そしてその現象は二人の人外とて例外ではない。

「何ぃいいいいいいッ!!??」

白に潰された世界の中アンデルセンが声を上げ、空に引き寄せられていく。
アーカードもまた、手に巨大な十字架を握ったまま空へと落下していった。

(ほう……実に興味深い)

しかし、この異常事態さえアーカードの心を揺らがすには足りない。アーカードは冷静な思考回路を保ったまま、空を眺める。
太陽すら隠れる真っ白な世界。ただ上に引っ張られる感覚だけが己を支配する。
その世界の中心に立ち、アーカードはふとある物に気付く。
それは白色の世界の更に奥、遙か上空に存在する一つの巨大な球体。
何もかもを覆い隠す白の中、その球体だけが異色であった。果てなき宇宙の何処かに存在する万物を飲み込む黒穴のように、それは全てを引き寄せている。

(あれが……「死」か)

自身が追い求めているものがあの球体の中にあるのか?
アーカードの頬が弛む。
何百年と求てきた答えが、明確な形を持ってそこに存在する――――歓喜が、身体を駆け巡った。

(……今日は何という日だ! あんなにも具体的な形で「死」がある! 伸ばせば届きそうな場所に「死」がある! この夢の狭間を終わらせる終焉の鐘があそこにはある! )

「ふはっはっはは……は、はははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」




―――白色の世界にて不死王の笑い声が響いた。



54 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:02:56 ID:KFSvlqCj
 

55 :絶望の罪人〜フタリダケノセカイ〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:03:27 ID:JbN6ZbhD




時は数十分前、アーカード放送が行った直後に遡る。
化け物達による人知を越えた乱戦が発生したエリアの丁度隣に位置するエリア――――G-6。
その市街地を一人の男が走っていた。

男の姿はなかなかに異質なものであった。
頭部には天に伸びる派手な金髪、左肩には筋肉質な男を担ぎ、身体には真紅なコートを纏っている。
嫌でも人目を引くであろう格好で男――ヴァッシュ・ザ・スタンピードはひたすらに足を前へと進めていた。

「だぁああ〜! どこ行ったんだアンデルセンは!」

キョロキョロと頭を振り辺りに探し人が居るかどうかを確認。
だが、残念なことに探し人はヴァッシュの遙か先を一心不乱に爆走している。
当然探し人の姿を見付けられる訳もなく、ヴァッシュは大きく溜め息を吐いた。

「本当にあの人の所に向かっちゃったのかな……」

先の戦いでは、アンデルセンと僅かながら心を通わせる事が出来た気がする。
漸く手を取り合い殺し合いを阻止することが出来ると思った。
精神的に危ういところもあるが、アンデルセンは強い。協力し合えばどんなに強大な敵でも止められる。
そう感じた。だからこそあの時、自分の危機に手を貸してくれ、尚且つアンジールを殺さずに戦闘を終わらせてくれた時は嬉しかった。
どんな人でも、例え化け物専門の殺し屋だとしても「ラブアンドピース」は通じる。
そして皆で力を合わせれば、こんな殺し合いだって打開できる。そう、思った。

―――なのにあの放送が全てを元の木阿弥に返した。
殺し屋としての顔を取り戻し、自分やアンジールの存在など歯牙にも掛けず走り去るアンデルセン。
放送者はアーカードと名乗っていた。
アーカード――初めて出会った時、アンデルセン自身が語った曰わく最強の吸血鬼。
アンデルセンは過去にアーカードと戦闘をし、仕留めきれなかったのこと。
あのアンデルセンが仕留めきれなかった。俄かには信じ難い事だが、語り手のアンデルセンに嘘を吐いている様子はない。
言葉そのまま、それ相応の強敵と判断するべきだろう。

(吸血鬼、か……)

ヴァッシュは何となくながら、アーカードとアンデルセンの関係を理解できた。
――宿敵。
必ず自分の手で決着を付けなくてはいけない相手。何を優先してでも打倒すべき敵。
アンデルセンにとってのそれがアーカードなのだ。
ヴァッシュは、アンデルセンが暴走した気持ちに僅かながら共感を覚えていた。
自分もそうだ。ナイブズを見つけたとしたら、アンデルセンを置いてでも戦いに向かう。
あの時、ジェネオラ・ロックでの時と同様に。

「……無事でいてくれよ、アンデルセン」

小さな呟き。
相手が誰であろうと成すべき事は変わらない。
誰も殺させない―――ずっと守り通してきた誓約に殉ずるだけだ。
ふと空を見ると、そこには澄み切った青が何処までも無限に広がっていた。
あの砂の惑星でも、あの平穏な地球でも、空の色だけは変わらない。吹き抜けるような清々しさがそこには存在する。

「……さて、行きますか!」



56 :絶望の罪人〜フタリダケノセカイ〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:04:25 ID:JbN6ZbhD
取り敢えずはアンデルセンが走り去った方角へ。
目指すはアンデルセンでさえ手を焼く化け物。
まともな勝負になるかも分からないが、逃げる訳にはいかない。

「そうだろ、なのは」

恐怖心が無い訳ではない。でも止まってなんかいられない。
なのはもこの空の下、精一杯戦っている筈だから。
だから俺も泣き言を口にしたりはしない。どんな相手でも逃げたりしない。
―――それでこそヴァッシュ・ザ・スタンピード、それでこそ管理局臨時嘱託魔導師だ


腹の底に力を込め、傷付いた身体で出せる最高の速度で走り始める。
肩に乗せた剣士さんがとてつもなく重いが、この状況で目を覚まされても厄介といえば厄介。
せめて静かに眠っていてもらおう。
灰色のビル街が視界の端を流れていく。視線の先には三つの道に別れた十字路。
アーカードの放送は西から聞こえた。自分が走っている方角も西のはず。取り敢えずは直進ということで良いだろう。
深くは考えず直感を交えてそう判断し、ヴァッシュは速度を緩めることなく十字路へと足を踏み入れ――――そして、ゼンマイが切れたブリキ人形のようにピタリと動きを止めた。
ギ、ギ、ギ、とゆっくりと首を回し南の方角を向く。
視界に映るは巨大なビルの山とその合間から見える青空。別段何の変哲も見受けられない景色だ。
なのにヴァッシュは動かない。見えない何かを見つめるかのように、視線を固定したまま茫然と立ち尽くす。
そしてたっぷり数分後、金縛りが解けたかのようにヴァッシュは動き始めた。

―――それからの行動は迅速なものであった。
一番近くに建っていたビルの扉をくぐると、エレベーターを利用し適当な階で下り適当な部屋を見つけ中に入る。
ヴァッシュが入った部屋には向かい合わせにソファが二つ、その間に足の短いテーブルが一つ設置されていた。
扉には応接室として書いてある白色の小さなプレートが張り付けられている。
ヴァッシュはそのソファにアンジールを横たえると、自身に支給された銃の一つをアンジールの懐に差し込む。

「ごめんよ……直ぐ戻ってくるから……」

そう言い部屋から退出するヴァッシュ。
元来た道を辿るように戻り、再び市街地に足を下ろすとヴァッシュは走り出す。
西へと続く十字路を左に―――つまり南に向かって。
アンデルセンが向かった筈の西には脇目も振らず、アンジールを放置したビルに
振り返ることなく、ヴァッシュは全速力で疾走を始めた。







――それは「共鳴」と言われるプラントが持つ特有の現象であった。
プラント同士が響き逢い、遠く離れた地点にいる同種の存在を確認する事ができる。
動くことや意思を伝達できない通常のプラントにとってはあまり意味の無い能力であるが、自立種であるヴァッシュやナイブズには大きな意味を成す。
事実、ジュネオラ・ロック・クライシスに於いて、ヴァッシュは「共鳴」によりナイブズの復活を知り、そして「共鳴」により暴走させられた。
探知機であり引き金――それが「共鳴」であった。
先程ヴァッシュが足を止めた理由は、ナイブズとディエチの戦いにて発動されたエンジェルアームに「共鳴」したから。
具体的な位置を特定するには至らないが、ナイブズが近場に居るという事実だけでヴァッシュに決断させるには充分過ぎた。


(ナイブズ……)

蘇る過去の記憶。あの冷徹な笑みが頭の中に浮かぶ。
レムを殺した男。人類の滅亡を目的とする男。この手で決着をつけなくてはいけない宿敵。
あいつが直ぐ近くに居る。
捨て去ろうとした因縁が、この殺戮遊戯にて再び自分に突き付けられようとしている。



57 :絶望の罪人〜フタリダケノセカイ〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:05:53 ID:JbN6ZbhD
「止めてみせる、絶対に……!」

負ける訳にはいかない。
みんなが待つあの平穏な世界に戻る為、自分が見捨てた砂の惑星の人々を救う為、自分は負けない。
奴を――――倒す。
百年を超える因縁に、今日この場で終止符を打ってみせる。

「だから済まない、アンデルセン……アンジール……」

ただ気掛かりな事が二つある。
一つは、アーカードに呼び寄せられた人々が行うであろう大乱戦。
一つは、気絶という無防備な状態でビルの一室に放置してきた名も知らぬ剣士。
特に後者は心配で仕方がない。
いくら彼が超人的な身体能力を有しているとしても、気絶中では抵抗する事すら叶わない。
見つかり難い場所に隠したとはいえ、発見される可能性が無い訳ではない。
最低限の護身の為に拳銃を置いてきたが、意識を失っている状態では意味がない。
要するに自分は、あの剣士を非常な危険な状況に追いやったのだ。自分の手で傷つけた人間を無責任に放置し、自分の因縁を優先し行動をしているのだ。
謝罪なんて言葉で済まされる問題ではないだろう。
でもそれでも、ナイブズとは決着をつけなくてはいけない。
これ以上奴を野放しにすれば不要な被害が拡大していく。奴を倒さなくては、このゲームは最悪の結末を迎えてしまう。
だから――――ごめん。




朝焼けに照らされた市街地を一人の男が走り続ける。
男は全てを振り切って、自身の長きに渡る因縁を終わらせるためだけに前に進む。
時は放送まであと十数分と差し迫った早朝――――この時がこの殺し合いに於けるヴァッシュ・ザ・スタンピードの分岐点であった。







「――って、何コレぇぇえええええええ!!」

それから数分後、G-6とH-6の境界線までやって来たヴァッシュの前にこれ以上ない強敵が現れた。
それはサラサラと清らかな水を流し続ける道―――つまりは川。
幅二十メートル程の川がヴァッシュの前に立ち塞がっていた。

「どうすんの、コレ!? 僕泳げないし、橋もないし!」

頭を抱えつつ川を睨み付け、叫び声を上げるヴァッシュ。
迂回すれば橋があるらしいが、それでは時間が掛かりすぎる。その間に奴が移動してしまう可能性だって高い。
だが無理やり突破するにも川の深さが分からない。もし足が着かない程の水深だったとしたら、百%自分は溺れる。そりゃもう確実に。
そもそも自分が生きてきた砂の惑星では川や海なんて物は存在しない。「泳ぐ」という概念自体、殆どの住民が知らないだろう。
勿論、自分だって例外ではない。地球に住んでそれなりの時間が経ったが、季節は冬。水泳など経験したことがない。
万が一、足を滑らせればそのまま死に直結する可能性だってある。

「どうする、どうする、どうする……考えろ、ヴァッシュ・ザ・スタンピード!」



58 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:06:05 ID:KFSvlqCj
支援

59 :絶望の罪人〜フタリダケノセカイ〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:07:22 ID:JbN6ZbhD
川を渡るか、橋を渡るか。
下らないと言えば下らない問いにヴァッシュが本気で悩み始めたその時、そんなヴァッシュを嘲笑うかのように遂に男は姿を現した。
まるで魔導師のように空を滑って。
ヴァッシュとは対照的な短髪を、だが非常に似通った金色とその半分程を占める
黒色を揺らして。ライダースーツのような白服を朝焼けに染めながら。
――ミリオンズ・ナイブズがヴァッシュの視界に飛び込んできた。


「ナイ……ブズ!」


その姿を確認すると同時に、ヴァッシュの思考は一瞬にして停止へと追い込まれる。
瞬間、愕然の中に僅かな怒りが混ざった複雑な表情を浮かべ、ヴァッシュはナイブズを睨む。。

――見つけた。遂に見つけたぞ。

ギリ、と無意識の内に右手を握り締めていた。鼓動は異常なまでに早まり、血液の流れる音が鼓膜を叩く。
ヴァッシュは土手を駆け上がりナイブズから隠れるようにビルの影へ移動する。向こうは、まだこちらの姿には気付いていない。
ビルの影、ヴァッシュは右手を懐に伸ばし銀色の拳銃を取り出す。そして上半身だけを影から出しゆっくりと拳銃を構える。
銃口は勿論、空を舞う宿敵に向けられていた。
今だ、ナイブズはヴァッシュに気付いていない。

「ナイブズ、終わりだ……」

相当な距離が離れており、尚且つ上方への狙撃。確かに難しい条件でのスナイプだが、ヴァッシュには百年以上に渡って積み重ねた射撃能力がある。
十中八九、外すことはない。
深く深くを空気を吸い込み、息を止める。呼吸による身体の上下が止まった。
トリガーに掛かった指に少しずつ、少しずつ力を込めていく。
今までに経験したことがない程の集中力。心臓の鼓動音しか聞こえない。視界に映るのはナイブズの姿のみ。
そして、ヴァッシュは遂に終わりを告げる引き金を引き―――



「―――惑星は南を下とする」



―――瞬間、世界がひっくり返った。








「おわぁあああああああああああああああああああああ!!」

この不可思議な現象を理解することなどヴァッシュには到底不可能であった。
喉が裂けんばかりの絶叫と共に前方である「南」へと落下していく。
止まらない、止まらない、止まらない、止まらない、止まらない。
ゴウ、という音と共に僅か数メートル横を、大質量のコンクリートの塊であるビルが次々と通過していく。
今のところは奇跡的に無事だが、このまま落ちていけば、いずれビルに直撃するのは自明の理。
混乱に占領された頭脳の下ヴァッシュは無意識にそう判断し、生き残る為の行動を開始した。



60 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:07:25 ID:8whOtzUM
 

61 :絶望の罪人〜フタリダケノセカイ〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:09:10 ID:JbN6ZbhD
まずは銃を取り出し両手でしっかりと腹の前で構える。そして前――――現段階では下を向きタイミングを推し量る。

「ミスったら死ぬぞ、ミスった死ぬぞ、ミスった死ぬぞ、ミスった死ぬぞ!」

自分に言い聞かせるように何度と同じ言葉を反復する。
と、そこで真っ正面から一棟のビルが迫ってきた。真っ正面、つまりは激突コース。
激突コース、つまりは即死コース。
だがそれを見てもヴァッシュは動じない。
ビルに激突する寸前、拳銃を持った両腕を腹に密着させながら発砲。
銃声は一発。だが放たれた弾丸の数は七発。あまりの早撃ちに銃声は一発にしか聞こえない。
七発分の銃撃の反動により落下速度が僅かに緩まる。そして両脚を折り曲げ、出来る限りの衝撃を吸収―――着地する。

「っ! っ〜〜〜〜!」

正座し続けた時と同種の、だがその何倍もの痺れが両脚を伝わり身体全体に広がっていく。
まさに悶絶。
声にならない声がヴァッシュの口から漏れた。
そのままペタリと横になり、痺れが取れるまでしばしの休息を取ることにする。

「何だってんだ、コレは……」

見上げた視線の先にはビル、地面と空が壁のように垂直になっている。
横に空と大地が広がり、上と下にビルが建ち並んでいるその光景は、まさに圧巻の一言。
魔法という言葉ですら片付けられない程の超常的現象にヴァッシュはしばし茫然としていた。
すると再び唐突に重力の向きが変化する。

「うべっ!」

ビルの壁に寝転がる形をとっていたヴァッシュは当然地面に落下し、盛大に顔を打ち付ける。
踏みつぶされた蛙のような呻き声を上げて地面に倒れた。

「イテテ……なんだっていうの、全く……」

立ち上がり周囲を見渡す。落下している間に川を越えてしまったらしく、先ほどまでとは景色が違っていた。
―――ナイブズは?
空を見上げるがナイブズは何処にも居ない。あのまま飛んで行ったのか、それとも自分のように何処か休める場所で待機しているのか。
取り敢えず周りを探そう。
そう考えヴァッシュは歩き始めようとして―――その時遠くの方から数発の銃声が静寂を斬り裂いて辺りに響き渡った。

「ッ……まさか!」

その銃声の瞬間、まず、ヴァッシュの頭によぎったものはナイブズの姿。
先の重力変化によりナイブズが誰かと遭遇、戦闘を始めたのではないか。
そして先程の銃声はその誰かが生き残る為に放った反撃の咆哮。
銃声の音量からして、距離はそれなりに離れていることが分かる。
――早くしなくては。
焦燥を胸に宿し、ヴァッシュは全速力で駆け始める。
途中再び「共鳴」が発生、そして二発の銃声が轟いた。
「共鳴」によりヴァッシュは確信する。この先でナイブズが誰かと戦闘を行っている。
止めなくては確実に人が死ぬ。
ダメだ、そんなことを許してたまるか。奴のせいで命を失う者が出るなんて絶対に―――。





62 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:09:51 ID:8whOtzUM
 

63 :絶望の罪人〜フタリダケノセカイ〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:10:24 ID:JbN6ZbhD
走り始めて数分後、やけにボロボロに傷付いた横長の四階建ての建物を遠くの方に見つけた。
特に酷いのが正面。まるで何かが突っ込んだような大穴が空いている。
他にも淵が溶解した穴が横一線に走っていたり、所々に壁がひび割れていたりと今にも倒壊しそな雰囲気。何か異常な事態が発生したことは一目瞭然であった。
歯軋りの音と共に、走る速度が一層に高まっていく。
徐々に近付いていく生死の境に建つ建築物。あと数十メートルで辿り着く。


『さて、皆が待ち望んだ最初の放送の時間が来たわ』

そして、その時放送が始まった。
ヴァッシュはその忌々しい放送を聞き取りながら、走り続ける。
三十メートル、二十メートル、十メートル―――ようやく到着した。

直ぐさまナイブズを探し出そうとするも、あまりに凄惨な建物内の姿にヴァッシュは動きを止める。
一階部分にある大半の物体は瓦礫へと変貌していた。まるで巨大な何かが通過したかのように薙ぎ倒された調度品。
まさに地獄絵図と呼べる光景がそこにはあった。

「くそッ……何でこんな!」

放送の中ではプレシアが未だに語りを続けているが、禁止エリアの発表も、死者の発表も始まっていない。
ヴァッシュは、悪魔狩りが愛用する双子拳銃の片割れエボニーに弾丸を装填し、警戒と共に一歩目を踏み出す。
瓦礫やガラス片を踏まないよう、慎重に慎重に歩きながら辺りを探る。だが、人の気配もナイブズの気配も感じられなかった。

『――それじゃあ禁止エリアの発表よ、よく聞きなさい』

耳元から聞こえた声にヴァッシュは小さく舌打ちし、その場に屈みデイバックからペンとメモ帳を取り出した。
流石に禁止エリアは把握しておかないと、生死に関わる。
他から見えないよう出来るだけ低い体勢を取り、発表される禁止エリアをメモ帳に書き留めた。

『では次にお待ちかねの死者の発表よ』

死者の発表……つまりは誰かが死んだという事。
ヴァッシュは痛ましげに顔を歪ませ、次いで参加者名簿を取り出す。こちらも把握しといた方が良いだろう。

―――と、そこで何かがヴァッシュの視界の隅を掠めた。
一目で瓦礫とは違うと理解できる白色。その棒は太く長くどの瓦礫よりも際立って見える。
ヴァッシュは二度の要領で視界を動かし、再びその白色を視界の中に入れる。
それは誰かの脚のように見えた。屈んだこの状態からでは片方分しか見えないが、その形は確かに脚であった。

『――アグモン』

今は放送の聞き取りを優先すべきだというのに、ヴァッシュは何かに取り付かれたかのようにそちらへと足を進めていく。
そして―――探し求めていた宿敵の姿を発見する。



64 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:10:29 ID:KFSvlqCj
 

65 :絶望の罪人〜フタリダケノセカイ〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:12:06 ID:JbN6ZbhD
『――エリオ・モンディアル』

このような状況下で眠っているのか、大胆不敵に宿敵はうつ伏せの状態で転がっていた。
誰かの返り血を浴びたのだろう、頭から胸までを漆黒の血に染めている。

『――カレン・シュタットフェルト』

鼓動が急速に速さを増すのを感じた。
ナイブズは気絶中、こんなに近くに立っているというのにピクリとも動かない。
突然目の前に落ちてきた千載一遇の好機にヴァッシュは息を飲み、震える手でエボニーの狙いを付けた。



『――クロノ・ハラオウン』

―――だが続く放送が彼の思考を止める。
それは仲間の名。こんな放送で呼ばれる筈が無いと思っていた実力者の名前が早々に響いた。
ガチャリという音と共にエボニーがその掌から滑り落ちる。
見開かれた眼は、凄惨な病院内も宿敵さえも映していない。当然、死者を告げる放送も届くはずがなかった。

『――高町なのは』

―――だがその状態でも、まるで毒蛇のようにその名は頭の中に滑り込んでくる。
それは仲間であり命の恩人、そして自分を救ってくれた少女の名前。
絶対に守り抜くと決めた名前が易々と呼ばれてしまった。
「あ、あ……」と意味の分からない声が空気を震わす。力尽きたかのようにヴァッシュは膝をついた。
しかしそれでも放送は終わらない。

『――ミリオンズ・ナイブズ』
「――――え?」

―――最期に呼ばれた名前に疑問しか感じなかった。
だって当の本人は目の前で気絶をしているのだ。返り血に身を染め、眠るように気を失って、いる筈だ。
ナイブズに触れる。ひっくり返し仰向けにした。
今まで隠れていた表情が見える。
その顔はまるで勝ち誇っているかのように微笑んでいた。
死ぬ筈が、この男が死ぬ筈がない。右手を伸ばしナイブズの左手首を掴む。
ちゃんと体温は感じる。死んでる訳がない。
手首に指を乗せ、じっと待つ。
―――だが何分何秒と経とうと血の通いを示す振動は感じ取れない。
感じ取れたのはナイブズの身体が徐々に冷たくなっていくことだけ。

「あ、あ、あ、」

漸くヴァッシュは気付いた。いや、現実に目を向けたと言った方が正しいだろう。
返り血だと思っていたものはナイブズ自身の血液。
よくよく見ると何発もの銃創が身体には存在している。右腕だってない。
ヴァッシュは理解するクロノが、なのはが、ナイブズが死んだことを。
そしてクロノの死に、なのはの死に、ナイブズの死にヴァッシュは―――


「あ、ああ……あ、あああああああああああああああああああああああああああ
あああああああ!!!!!」








66 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:12:43 ID:KFSvlqCj
支援

67 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:13:15 ID:8whOtzUM
 

68 :絶望の罪人〜フタリダケノセカイ〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:13:17 ID:JbN6ZbhD
―――慟哭が死の詰まった病院に響き渡る。それを聞いている者は三人の死体と
、一人の男、一人の女だけであった。












―――あの時レムは何と言ったのだろう……振動と轟音に……かき消された言葉
―――










どれほどの時が経ったのであろうか。数時間かもしれないし数秒だったのかもしれない。
その間ヴァッシュは身動き一つせず、虚無の詰まった瞳で死んだ兄のことを見つめ続けていた。
脳裏に浮かび思考を占領するのは、死者達との思い出。

「――こちらこそ……手加減はしないよ」

その言葉から始まったリンディから課せられた試験。
内容はリンディが指定した対戦相手に魔法での一撃を決めること。
相手は一人の少年。
なのはよりは少し年上、でも大人と呼ぶには後十年ばかりの年月が必要な少年――それがクロノ・ハラオウンだった。


「――私とヴァッシュさんは友達だよね……辛いことがあったら相談してよ……
何でもかんでも一人で背負わないでよ……」

僕に平穏な世界での生活を決意させた言葉。この言葉を紡いでいる時、少女は懸命に涙を堪えていた。
彼女はどこまでも優しかった。そんな彼女が初めて怒った時の言葉だ。
何時もの敬語はどこかに消え、ただ感情のままに話し掛けてきた。
この言葉が僕に決意させた。
この平穏な世界で生きようと―――それが豚以下の生き方だとしても、全てを捨て去りこの世界で生きようと、この言葉が僕に決意させた。
でも、あの時全力で戦った少年は、この言葉を語った優しい少女は、死んだ。
こんなクソみたいな殺し合いで死んだ。
もう居ない。あの笑顔はもう見れない。それが死だ。
百五十年の人生の中何度となく見てきた死が、どんな人間にも平等に降り懸かる死が、二人を襲ったのだ。




69 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:14:53 ID:dU/mcfu3



70 :絶望の罪人〜フタリダケノセカイ〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:15:15 ID:JbN6ZbhD
「――よう、ヴァッシュ」

この男は死んでも仕方がない男だ。
レムを殺し、自分の左腕を斬り落とし、人類を淘汰しようとその凶悪な力を存分に振るった怪物。
仕方がない……仕方がない。死んでも、いや死ななくてはいけない存在だったのだ。
なのにでも。
何だこの、胸を引き裂かれたような痛みは。何だこの、大事な何かが抜け落ちたような喪失感は。
この男は宿敵だった。仇敵だった。決して相容れぬ存在だった。
―――でも兄弟だった。宿敵でも、仇敵でも、相容れぬ存在でも、ナイブズは、僕の兄弟だった。

「うあ……あ、あ……ああ……」

声が、漏れる。
視界が、歪む。
目から何かが、零れ落ちる。
折れそうになる心。
しかし、ヴァッシュは立ち上がった。
身体中に渾身の力を込め、絶望に打ちのめされながらも立ち上がる。
何が彼を支えているのか分からない。だが、それでもヴァッシュは白銀の銃を拾い上げフラフラと歩みを始める。

「おい」

そんなヴァッシュに声を掛ける者が居た。
ヴァッシュは感情を宿していない憔悴しきった表情でそちらに振り向く。
その瞬間、視界を埋め尽くしたものは太陽の輝きに似た山吹色の光。
人々を護る―――ヴァッシュに似た信念を持つ少年の闘争本能に呼応し、形成された突撃槍が放つ、淡い包み込むような光。
その光が、ヴァッシュの視界を眩ませた。
ヴァッシュは殆ど反射的に身を捩った。が、間に合わない。
左肩に強烈な衝撃と突き抜けるような痛みが走った。そしてそのまま一回転、二回転と独楽のように身体を回し、後方の壁に叩き付けられた。

「……あれ?」

衝撃にぼやける頭を振り左肩を見ると、義手が無くなっていた。
ああ、また壊しちゃったか……ボンヤリとそんな事を考えながらヴァッシュは立ち上がる。
と、その時左側から赤色の何かが吹き上がり視野を阻めた。
疑問に思いつつヴァッシュは再度左肩に視線を投げる。
そこでヴァッシュもようやく気付いた。
自分の左肩が無くなっている事に。
義手ごと、左腕に唯一残されていた肩が斬り落とされている事に。

「……よく避けたな。この一撃はそこの男でさえも避けられなかったのだぞ」

―――その言葉に再びヴァッシュが前を向いた時には全てが終わっていた。
一発、二発と吸血鬼すら粉砕する弾丸がヴァッシュの胸部を貫通し、中に存在する臓器を潰して回ったからだ。
心臓も肺も潰された。如何にタフなヴァッシュと言えど致命傷である。
一、二歩前進し前のめりに倒れ伏す。奇しくも同種の双子は折り重なるように倒れた。
キース・レッドはその頭部にトドメの弾丸を撃ち込もうとし、しかし途中で思い止まりその動作を中止する。
変な情が湧いた訳ではない。単純に弾を節約しようと考えてのことだった。

「これで十四人……先はまだまだ長いな」

ヴァッシュのデイバックとエボニーを回収し、キース・レッドは直ぐさま来た道を引き返す。
後には、灰色の瓦礫と折り重なるように倒れた二人の兄弟だけが残された。





71 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:15:29 ID:8whOtzUM
 

72 :絶望の罪人〜フタリダケノセカイ〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:17:11 ID:JbN6ZbhD





―――暗い暗い部屋に居た。
上も下も右も左も前も後も、どこまでもどこまでも闇が広がっている。
そこには青い空など何処にもない。
自分は何をしていたのだったか。上手く思考が進まない頭を揺らし、進む。

ただ前に。ただ前に。
ただ前に。ただ前に。
ただ前に。ただ前に。
ただ前に。ただ前に。
ただ前に。ただ前に。

クロノが死に、なのはが死に、ナイブズが死んだ。でも立ち止まれない。
剣士さんの元へ帰り、アンデルセンの元へ向かい、戦闘を止める。まだやるべきことは山のように残っている。
立ち止まれない、膝を折る訳にはいかない。進まなくては、いけない。

「よう、ヴァッシュ」

ふと声がした。
そこには見覚えのある男――ナイブズ。
何だ、やっぱり生きてたんじゃないか。俺の思った通りだ。こんな殺しても死ななそうな奴が死ぬ訳ない。

「生きてたのか、ナイブズ……」
「……お前は腹立たしく思わないのか?」

こっちの労りの投げ掛けを無視し、ナイブズが静かに問うた。
腹立たしい? なんのことだ?

「俺は、あまりの屈辱に腑が煮えくり返っているよ。奴が、人間が、全てが、憎い」

それは今まで見たことの無いナイブズであった。拳を震わせ、闇の彼方を睨み付
け吼える。人間に対してここまで感情的になるナイブズは初めて見た。
何があったんだ?

「……気付くんだ! 奴等を滅ぼさなくては同種は、いや人間以外の全てが食いつぶされる! 種族も、大地も、自然も、惑星さえもが殺される……お前はそれで良いのか!?」

あまりの迫力に口を開けない。茫然と見詰めることしか出来なかった。
ナイブズが少しずつ歩み寄ってくる。その右腕が喪失していることに今更ながら気付いた。

「だから貴様に力をやる……俺の怨みを晴らせ、俺の代わりに同種を救え」

ナイブズの左手が肩に置かれる。そういえば自分の左腕も無くなっていた。
原因は思い出せない。

「任せたぞ、ヴァッシュ……」

そう呟くと同時に、ナイブズの左腕が異様な光を発した。その光色が漆黒の世界を塗り潰していく。
それは白色。
その全てを染める白色は何時か見たことがある。
僅かな既視感――――そう、あれはなのはの世界に飛ぶ寸前のこと。


73 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:18:36 ID:KFSvlqCj
 

74 :絶望の罪人〜フタリダケノセカイ〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:19:06 ID:JbN6ZbhD
所々抜け落ちた記憶の中で自分はこの光を見た。
白色は全てを消し去りナイブズの姿も、自分の姿も見えなくなる。
闇が、殺されていく。光の中、一人の女性が自分に微笑み掛けてくれた気がした。






「……あれ?」

そしてヴァッシュ・ザ・スタンピードは何もなかったかのように目を覚ました。
自分の身体に僅かな違和感を感じながらも、立ち上がる。何故か身体は何処も痛まない。
アンデルセンや剣士さんに殴られた脇腹も治っているようだった。

(何があったんだっけ……)

頭の中に霧が掛かっていて、どうにも記憶を引き出す事が出来ない。さっきまで誰かと話していた気もするが、周りには誰も居ない。
そもそも何でこんな所に居るんだ? 剣士さんを背負ってアンデルセンを追い掛けてたんじゃなかったっけ?
右手で頭を掻きつつ立ち上がり両腕で服を叩き埃を落とすと、ヴァッシュはゆっくりと周りを見渡す。
ひび割れから差し込む日光がいやに眩しい。左手をかざし日光を防ぐ。

(―――左手?)

ふとヴァッシュは自身の左腕を見つめる。そこには何時もの無骨な義手ではなく温もりを持った肌色が広がっていた。

ヴァッシュの頭に混乱という名の嵐が吹き荒れる。
左手を開閉する。しっかり動く、力も入る、感触もある。
指先、手首、肘とヴァッシュは身体の方へと視線を移動させながら、何故かある左腕を観察していく。
そして肩まで見た時、ヴァッシュは動きを止める。



―――目が合った。
―――そこにあった顔と。
―――光を宿さない虚ろな瞳。
―――その顔を見てヴァッシュは全てを思い出した。
―――左肩に根を下ろしたかのように張り付いたナイブズの顔を見て、ヴァッシュは、全てを、思い出した。





75 :絶望の罪人〜フタリダケノセカイ〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:20:15 ID:JbN6ZbhD
「うわぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!!」




内からある感情が圧倒的な奔流となって込み上げてくる。
何だこの感情は? 俺はこんなこと思っていない。なのに何でこんな感情が湧き上がってくるんだ。
耐えるように、抑えるように左腕を握り締める。
左腕が熱い。理性も常識も何もかもが吹っ飛びそうだ。
怖い。何なんだ、これは。

「大丈夫ですか!」

ふと声が聞こえた。
視界がぼやけて相手の顔が分からない。
でも何処がで会ったことのある雰囲気の人であった。
ドクン、と左腕が跳ねた。


―――殺せ

声が頭の中で鳴り響く。その声は憤怒と殺意に満ちている。
この声は俺じゃない。
左腕が熱い。

―――殺せ殺せ

その圧倒的な感情の奔流に正気を保つことができない。
視界が白くなっていく。
左腕が熱い。

―――殺せ殺せ殺せ

大きな流れが左腕に集まってきている。
もやが掛かった視界の端で左腕がボコボコと不規則に収縮を繰り返していた。
左腕が熱い。



「だ――じ――ぶで――か!」

気付いたら、その人は自分の直ぐ側にいた。
駄目だ、逃げろ、逃げてくれ。
早く、少しでも遠くに、俺から離れてくれ!


「逃げ……ろ」




76 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:20:28 ID:XLM+qNN2
支援

77 :絶望の罪人〜フタリダケノセカイ〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:20:50 ID:JbN6ZbhD
―――殺せ殺せ殺せ殺せ

左腕が熱い。
自分が座っているのか、倒れているのかも分からない。
白色の中、ただ左腕が熱かった。


―――殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ


左腕が熱い。
抑えきれない。
ひだり腕があつい。

―――殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ


ひだりうでがあつい
おさえきれない
ひだ…うでが……い


―――殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺
せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ

ひだりうでが…………レ………ム……



「逃げろぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

―――羽根が左腕から噴出した―――



78 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:21:04 ID:8whOtzUM
 

79 :絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:22:08 ID:JbN6ZbhD




フェイト・T・ハラオウンは優雅に空を舞っていた。といっても高度は全く上げていない。
精々宙に浮かんでいる程度、だが今はそれで充分。
自身の身体の中を巡る魔力に意識を集中させ、フェイトは直ぐ様空を駆ける。向
こう岸に着くまで十秒と掛からない。また地面に降り立ちフェイトは足早に進み始めた。

何故、機動六課隊舎に向かっていた筈の彼女が此処――H-6に居るのか?
それは十数分前のことだった。
丁度現在居るエリアから二エリア分西へ向かった地点。
その時フェイトは行動方針通りに機動六課隊舎へと続く道を歩いていた。
そんな時に聞こえたのはアーカードの放送。フェイトは、声だけでもその狂気が理解できた。
狂っている。この放送の主は狂っている。
寒気を覚えたフェイトは僅かな逡巡の後に、来た道を戻ることにした。

だが、その目的はアーカードを討伐することではなく、デパートに立て込もっているつかさを別の安全な場所に移すことであった。
放送のあった地点からデパートは近い。1エリアと離れていない。
万が一、先のアーカードが戦闘を終え進路を南に取ったら?
そして万が一、つかさの居るデパートを探索し始めたら?
あのエリアにはデパートくらいしか大きな建物はない。寧ろその可能性の方が高いだろう。
そして万が一、つかさがアーカードに発見されたら。
あれほど狂気を内包した男につかさが戦える訳がない。一方的に「なぶり」殺しにされる。
確率としては低いが念には念を。それにわざわざ危険な人物が居る方に向かう物好きな人は居ない筈だ。
大して人も集まらないだろう。

そう判断し、フェイトは一度歩いた道を引き返した。

―――そしてデパートまでに続く最後の角を曲がろうとした時、再びフェイトを驚愕させる出来事が発生する。
それは垂直に聳える大地。「南」を下向きに大地が天に向け立っていた。
驚愕、という言葉では言い表せない現象にフェイトは目を点にして動きを止める。
それからたっぷり十分、地面が元に戻るまでフェイトは活動を停止していた。
そんなフェイトを再起動させたのは微かに届いた数発の銃声。
ひっくり返った大地に数発の銃声。フェイトは興味本位でH-6へと近付いていき川の前までやって来た。
が、対岸から見る限りは何の変哲もない市街地。
再び銃声が聞こえたが、ここからでは何が起こっているか全く分からない。

ここでフェイトの中に迷いが浮かぶ。
対岸の何処かでは恐らく戦闘が発生している。
先程のアーカードの放送では誰も集まらないと高をくくり、向かわなかったが、今回は違う。
確実に誰かと誰かが戦っていて、それは天地をひっくり返す程に白熱している。
今すぐ向こう岸にある戦場へと向かうべきか、それともつかさを別の場所に隠してから、また戻ってくるか……。
数秒の思考の後、フェイトが選んだ選択肢はこの先に向かう事。つまりは戦闘を止める事だ。
そしてフェイトは川を越える為に魔法を行使し―――そして今に至る。


市街地を駆け足で進むフェイト。
第一放送まであと一分も無いことを確認し、ビルの一つに一旦隠れる事にした。
頭上から鳴り響く、十年前に虚数空間に消えた筈の母の声。
何故こんな事をするんですか?
こんな事をして何の得があるんですか?
今すぐにでも問い掛けたい。多分冷徹な微笑みに一蹴されるだろうが、それでも聞きたかった。



80 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:22:17 ID:KFSvlqCj
支援

81 :絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:23:16 ID:JbN6ZbhD
『――それじゃあ禁止エリアの発表よ、よく聞きなさい』

だがそんなフェイトの気持ちが届く訳もなく、放送は続けられる。
フェイトはそれらを地図に書き込んでいった。そして来て欲しくなかった瞬間がやってくる。

『では次にお待ちかねの死者の発表よ』

フェイトは小さく息を飲む。
どうか皆が呼ばれませんように。なのはが、はやてが、シグナムが、ヴィータが、エリオが、キャロが――。
だが現実は非情である。
そんなフェイトを嘲笑うかのように「エリオ・モンディヤル」、「シグナム」、「高町なのは」の名前が呼ばれる。
フェイトは暫し呆然と、×印の着いた二人の名前を見詰めていた。その両眼からは涙が流れ出している。

「なのは……エリオ……シグナム……」

まるで非殺傷設定の砲撃魔法に直撃した後のように、身体に力が入らない。
思考がボウっとして何も考えられない。頭に浮かぶのは楽しそうに微笑み掛けてくる三人の顔だけだった。

「本当に、死んじゃったの……?」

自分を暗闇から光の溢れる世界に導いてくれたなのはも、最初に出会った時は戦場で何時しか好敵手と呼べる関係になっていたシグナムも、不幸な人生に苦しみ続け、だけど最後は自分の話を理解してくれたエリオも。
皆、死んだ? もうこの世には居ないの? 二度と話すことも遊ぶことも出来ないの?

「やだよ……いやだよ、シグナム……エリオ……なのは……!」

クローンだから、と割り切れる問題ではない。涙は、どうしても止まらない。
ただ子供のように涙を流し続ける事しかできなかった。




数分後、フェイトは市街地を走っていた。
目は僅かに充血し頬には涙が通った跡があり、その表情は痛ましい。だがそれで
も足取りはしっかりと、フェイトは本来の目的を達成するために前へと向かっていた。
放送が終わって数分経った時、まだ自分が涙を流し続けていた時、東の方から誰かの叫び声が聞こえた。
自分と同じように悲しみに染まった、慟哭。多分自分のように大切な人を喪ったのだろう。もしかしたら先程の銃声の主かも知れない。
助け合おう。一人じゃ押し潰されてしまう悲しみでも、二人なら受け止められる。
かつてなのはがしてくれたように、かつてエリオやキャロにしたように。
仲間の力があれば乗り越えられる―――フェイトはそう信じ、足を進める。
途中再び二発の銃声が聞こえた。
―――まさか誰かに襲撃されてるのか?
フェイトは唇を噛み、全速力で駆ける。数分後漸く銃声がした建物に辿り着いた。
今にも倒壊しそうなボロボロの建物。
元からこうだったのか、戦闘によってこうなったのか。フェイトは自然と紫と黒の入り混じった大剣を両手に握っていた。

(ひどい……)

中の様子に顔をしかめながら、フェイトは奥へ奥へと進んでいく。
歩く度にフェイトの足の下でパキパキという音を鳴らす瓦礫。
染み渡るような静寂の中、それらは異様に大きく聞こえた。
―――そしてフェイトはその男を発見する。
苦しそうに左肩を抑え、大きく息を乱した金髪の男。
向こうもこちらに気が付いたのか、顔を上げる。

「大丈夫ですか!」



82 :絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:24:48 ID:JbN6ZbhD
明らかに男は異常を来していた。顔は血の気が引いており蒼白。瞳は焦点があっておらず、口は何かをボソボソと告げている。
フェイトは男の直ぐ側に膝を付き身体の様子を観察する。

(外傷がない……?)

簡単に看た限り男の身体に異常は感じられない。五体満足だし外傷も見受けられない。
異変といえば途中、二回三回男の左腕がビクリと跳ねたことだけだ。

「…………ろ」

――不意に男が何かを呟いた。上手く聞き取れずフェイトは顔を男の口に近付ける。
視界の端で再び男の左腕が跳ねた。

「どうしたんですか――「逃げろぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


――視界が真っ白な何かに包まれた。








「逃げろぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

―――キースレッドが橋へと続く大通りを歩いていると、大絶叫が聞こえた。
キースレッドは立ち止まると、目を見開きながら声のした方向に顔を向けた。




この日キースレッドがこの声を聞くのは二度目であった。
一度目は数分前、放送が終わった直後のこと。

誰も居ない筈の病院から聞こえてきた謎の慟哭――――粗方知り合いの死体でも見付け、あまりのショックに叫んでいるのだろう。
まぁ良い、とキースレッドは再び病院に忍び込んだ。そして、見つけたのはナイブズの死体の前で膝を付く、やけに派手な頭髪をした赤コートの男。
アイツの知り合いか――――数瞬前の生死を賭けた攻防を思い出すが、直ぐに気を取り直し「武装錬金」という言葉と共にサンライトハート改を出現させる。
奴の知り合いという事はそれなりの実力者だろう、油断はしない方が良い―――そう判断し、攻撃には万全をつくした。
サンライトハートを使っての目眩まし、そして突撃。ナイブズにも通用した必倒の連技。
だが、驚いたことに男は致命傷を避けた。とはいえ、次の銃撃には反応できず真っ赤な血を咲かせたのだが。
結果、男はナイブズの上に倒れ、明らかに致命的な勢いで血液を流し始めた。
おそらく心臓を貫いたのだろう。
だからトドメを刺さず、あの場は立ち去った。
なのに、だ。




83 :絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/25(火) 21:25:50 ID:JbN6ZbhD
「まだ生きているのか……」

どんなトリックを使ったのか、奴は生きている。
それどころか意識さえ取り戻し、先程の絶叫を放てるほどに回復している。

「チッ……ならばトドメを刺すまでだ」

右手には核金、左手には超重型の拳銃。全支給品の中でも最高レベルの武器を装備しキースレッドは踵を返し―――そして見た。
四階建ての病院を突き破り遥か上空に伸びる白色の歪な翼―――いや、あれは刃か。
東から差し込む日光に照らされ、百メートルはあろうかという巨大な刃が、青空に向かって翳されていた。

「アレは……!」

その刃を見て、まず思い出したのはミリオンズ・ナイブズ。
あの翼のような刃は、病院にて対峙した際に奴が発現した白刃と酷似している。
だがスケールがあまりに違う。奴の刃は精々数メートルの規模、あれは少なくとも百メートルを越えている。
制限というものが存在する、この箱庭に於いてあのスケールは異常でしかなかった。

「ッッ!! 何ィッ!」

―――ヒュン、という空気を切り裂く甲高い音が聞こえた。瞬間、キースレッドは反射的にサンライトハートを防御の形で構えていた。
サンライトハートの面に大質量の白色がぶち当たる。
ドガ、という音か鳴り響いたかと思いきやそのままキースレッド毎、後方へと弾き飛ばした。
キースレッドも飛ばされまいと、両脚に渾身の力を込めるが力量の桁が違う。
キースレッドは滑るように大通りを後退していった。

(これは……!)

サンライトハート越しにこちらへ飛来した物体の正体を見る。
それは鞭のようなしなりを持つ白色の刃。
ナイブズに突き付けられた物や今尚天に向かって延びている物と同種の白翼。
出所はあの刃と同じく病院から。
天に伸びる刃と比べればずっと小さい、だがそれでもキースレッドの身長と同等の大ささ。
勢いを弱める気配を見せない。

(このままでは……マズい……!)

現時点は遮蔽物が存在しない大通りの上を吹き飛ばされてるから良いが、僅かに進行する方向を変えられたらアウトだ。
その瞬間自分は、この勢いのままそびえるビル群に突っ込む。今の内にこの状況から抜け出ないと最悪で死、少なくとも重傷を負うこととなる。

「くそっ!」

サンライトハートから左手を離し刃状に変形させ、白刃へと伸ばす。
刃が触れ合った瞬間、この白刃が如何に驚異的な切れ味を持っているのかを理解する。
だが、この技に切れ味の差など関係ない。

「砕けろ!」

ヴヴ、という音が不可視の波となり周囲に伝わり、直後に白刃が弾けた。
巨大な刃の先端の僅か一部分。だがこの状況を打破するにはそれだけで十分。
圧迫する力が消えたサンライトハートを構え直し、穂先を斜め下の地面へと向ける。



84 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:27:19 ID:KFSvlqCj
 

85 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:29:02 ID:8whOtzUM
 

86 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/25(火) 21:41:03 ID:XLM+qNN2
支援

87 :絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/26(水) 17:25:13 ID:ajGj4yYL
「う、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

そして、直ぐさま力を解放。山吹色の煌めきと共に刃が展開され地面に突き刺さった。
だが力の解放は止めない。自身の内に眠る闘争本能全てをサンライトハートに集中させる。

キースレッドの闘争本能に従って光が噴出し続ける。だが、穂先は地面に固定され動かない。
動くのは、空中に居るキースレッドjの方。
キースレッドの思惑通り、凄まじい重圧と共に周りの景色が線となり前方に流れ出す。
獲物を逃すまいと白刃が追いすがるが、サンライトハートの伸びる速度の方が僅かに早い。
徐々に白刃は遠ざかっていき、遂には視界から消え去った。しかしキースレッドはそこで息を付くことをしない。
病院にそびえる巨刃自体はまだ届くからだ。あの巨刃の射程圏外まで行かなくては安心など出来ない。
キースレッドはサンライトハートによる飛行を続けた。



キースレッドが地面に降り立った場所は、既にH-7の中に差し掛かっていた。

「くそっ……忌々しい……」

胸の奥に湧き上がる屈辱に顔を歪め、感情のままに地面を蹴る。
――何だあれは? あまりに突き抜けている。自分の全能力を解放しない限り、勝
てる気がしない。
それほどに異常。奴だけ制限が抜け落ちているかのような規模の力であった。
そもそもあれはあの金髪の仕業なのか?
奴もナイブズと同種の化け物なのか?
何故あんな力が出せる?
制限の下にありながらまるでARMSの真の力を解放したかのような馬鹿げた力。
有り得ない。あまりに不公平過ぎる。

「畜生……何なのだ、奴らは!」

空の上遥か高みで見物しているであろう主催者へと、この空の下にいる筈の怪物
へと、キースレッドは吼えずには居られなかった。
キースレッドの掌の中。核金状態になったサンライトハートが日に当てられ山吹色に光っていた。

【1日目 朝】
【現在地 H-7】
【キース・レッド@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】疲労(小)、両腕に若干の痺れ
【装備】対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(6/6)@NANOSING、.454カスール カスタムオートマチック(6/6)@NANOSING、核鉄「サンライトハート改」(待機状態)@なのは×錬金
    エボニー(10/10)@Devil never strikers
【道具】支給品一式×5、予備マガジン×1、ジャッカルの予備弾(18発)@NANOSING、レリック(刻印ナンバーZ)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
首輪×2(神崎優衣、高町なのは(A’s))、ヴァッシュのコート@リリカルTRIGUNA's、S2U@リリカルTRIGUNA's、ランダム支給品0〜4(元なのは(A’s):0〜2、元カレン:0〜2)
【思考】
 基本:キース・シルバー(アレックス)と戦い、自分の方が高みにある事を証明する。
 0.なんだというのだ……!
 1.この場を離れる。
 2.シルバー(アレックス)及び『ベガルタ』『ガ・ボウ』の捜索。
 3.1を邪魔するものは容赦なく殲滅する。
 4.できるだけ早く首輪を外したい。
 5.とりあえずどこかで落ち着きたい。
【備考】
 ※第六話Aパート終了後からの参戦です。
 ※キース・シルバーとは「アレックス@ARMSクロス『シルバー』」の事だが、シルバーがアレックスという名前だとは知りません。
 ※神崎優衣の出身世界(仮面ライダーリリカル龍騎)について大まかな説明を聞きました。
 ※自身に掛けられた制限について把握しました。
 ※白刃の主をヴァッシュだと予想しています。




88 :絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/26(水) 17:26:29 ID:ajGj4yYL




圧倒的な開放感の中、目の前に見知らぬ景色が映し出された。
目の前には見たことのない服を着た銀髪の男の人。
その人はピンク髪の女の子を庇うように自分と対峙している。いや、これは自分ではない。
ナイブズだ。ナイブズの記憶が流れ込んできているのだ。
瞬間、強烈な光が発生し男の姿が消える。
自分――――ナイブズは一笑すると、いつの間にか空を飛んでいた男に向けて左腕を構えた。
解放。
「何か」が空を駆け、男へと飛来する。だがそれは男に命中することはなく、途中で欠き消えた。
同時に異常な倦怠感が身体を包みナイブズは膝を付いた。



―――ブツリ、と暗幕が下りる。



次に見えたのは四人の人。
さっきの男の人と女の子、あと藍色の長髪の女性と褐色肌の女性がナイブズを見上げていた。
長髪の女性と褐色肌の女性がピンク髪の女の子を背負い何処がに走っていく。
後には銀髪の男だけが残された。
それから始まった激闘は凄まじいものだった。
明らかにナイブズが圧倒されている。
あの剣士さんやアンデルセンにも匹敵する、いやそれ以上かもしれない驚異的な近接戦闘力でナイブズを追い詰めていく。
だがナイブズも負けていない。右腕を犠牲に「何か」を発動、ビル毎男の人を押し潰した。
決着は付いたかと思ったが、男の人は立ち上がってきた。眼光は衰えていない。
ナイブズの心に歓喜が浮かぶ。
そしてナイブズは左腕を構える。相手の男も剣を構える。
衝突。
明らかにナイブズが押し負けていたが、結果的に立っていたのはナイブズの方だった。
ナイブズはその場に膝を付き、地面に倒れた。



―――ブツリ、と暗幕が下りる。



次は上体を起こした状態でベッドに身体を預けている紅髪の少女がいた。
少女とナイブズは一言、二言、言葉を交わす。不遜なナイブズの態度に少女の顔には怒りが宿り始めていた。
だが少女は声を出すことは叶わない。怒りを驚愕に変化して横を見る。
そちらから、緑色の服を着た自分にも見覚えのある男が突入してくる。
瞬間、ナイブズが「何か」をした。紅髪の少女を跡形もなく消滅させ、同時に「何か」を飛ばし男の両腕を跳ねる。
そのまま男の首に刃状にした左腕を突き付け、男と会話を始めた。
数秒後、ナイブズは男を解放する。男は敵意ある瞳でナイブズを睨み、外に出て行った。

次に現れたのは―――なのはだった。


クロノのデバイスを構え息を切らし部屋へと入ってきた。
キョロキョロと部屋を見回し安堵の息を吐くとナイブズに話し掛けてくる。
―――止めろ、逃げろ!
いくら叫んでも届かない。当たり前だ。これは既に終わった出来事。今更どうすることもできない。
でも叫ばずにはいられなかった。
少し経ってなのはは紅髪の少女が消えている事に気付いた。絶望を顔に滲ませ悲痛な叫び声を上げる。
そんななのはにナイブズは近付いていく。


89 :絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/26(水) 17:27:48 ID:ajGj4yYL
何をするつもりかは目に見えていた。
―――止めろぉぉぉぉぉおおお!
ナイブズは止まらない。そして白刃が翻った。
なのはの首が落ち、血が、なのはの命が流れ落ちていった。



―――ブツリ、と暗幕が下りる。



ナイブズは僅かな朝日が差し込む病院を歩いていた。
ふと聞こえた水の流れる音に引かれるようにナイブズは近寄っていく。瞬間、目の前に紅蓮が迫っていた。
それと共に聞こえる勝ち誇った少年の笑い声。
ナイブズの感情が大きく振れた。
ナイブズは刃、そして手に持ったデバイスらしきカードで障壁を形成しその火炎を防ぐと、笑い声の方へと刃を飛ばし歩いていく。
少年は驚愕していた。確実に殺したと思っていたのだろう。
少しだけ声を上擦らせナイブズと対峙する。だが少年はナイブズを前に自身を取り戻した。
何故かその瞳が真紅に変化し、何かを紡ぐ―――が全てを言い切る前にナイブズの斬撃が駆けた。
少年の顔に再度驚愕が宿る。だが少年は諦めない。
再度目を光らせ口を開く。しかし、その度にナイブズは左腕を振るい、遂には少年の右腕を斬り落とす。
絶叫が響き渡った。
息も切れ切れに告げる問いにナイブズは激昂を返し、トドメを刺すべく近付いていく。
そこに現れるは一人の少女。
少女は連続射撃で刃とナイブズのデイバックを墜とし、少年に駆け寄る。
少年は右腕を抑え覚束ない足取りで、悔しげに唇を噛み、闇の中に消えていった。
そして栗色の髪を持った少女はナイブズのデイバックから巨大な砲身を取り出し、ナイブズに立ち塞がる。

再度激闘が始まった。

ナイブズは油断なく、自身の左腕から何十にも及ぶ刃を射出し少女を追い立てる。
だが少女はそれらを撃ち落とし、避け、回避していく。
精密射撃なら自分にも迫る、身体能力は自分よりも上、その気迫には自分の命すら捨てる覚悟が見えた。
事前に用意してあった爆薬を利用しての煙幕。
少女はナイブズの位置を把握している。
これなら当たる。自分もそう思った―――が、ナイブズはそれすらも打ち砕く。
ナイブズの前方に現れた「何か」が煙幕を吸い込み、少女の姿を露わにする。
迫る複数の白刃。
少女は逃げなかった。全身を貫かれ、だがそれでも引き金を引いた。
放たれた光弾は銀髪の男により腐敗させられていたナイブズの右腕を蒸発させた。



―――ブツリ、と暗幕が下りる。



ナイブズは空を飛んでいた。
目的地は放送を行ったアーカード。やはり、あの時ナイブズも向かっていたのだ。
おそらく眼下に広がる街並みの何処かに自分が潜んでいるのだろう。
ナイブズは不意に視線を感じ取った。
肌を焦がすような視線――殺気だ。それもこの殺気は一度感じたことがある。
どんな攻撃があっても良いようにナイブズは身構える。だが見えたのは日光のような光、これは自分も見た事があった。



90 :絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/26(水) 17:28:45 ID:ajGj4yYL
「――――惑星は南を下とする」

頭の中に直接声が響いた。瞬間、衝撃。
唐突な重力変化と強烈な衝撃にナイブズは大勢を立て直せず南へ落下していった。
途中何個ものビルを貫き、ナイブズは先ほどまで居た病院に墜落する。
そして身動きを取れずにいるナイブズの前に現れる赤コートを着た男。
男――キース・レッドはトドメの弾丸を放ってその場から消えた。だがナイブズはまだ生きている。
もはや執念なんて言葉で片付けられる域を超えていた。
怨念とも言える信念でナイブズは「何か」を発動し―――だが発射するには到らず死んだ。
最期に何を思ったか、記憶を通しヴァッシュには届いていた。



―――ブツリ、と暗幕が下りる。



真っ暗な部屋の中、ナイブズは一人の男と向かい合っていた。
赤コートに金髪の男は銀色のリボルバーを片手にナイブズを睨んでいる。

―――これは、この記憶は。
金髪の男は一刀の元に斬り捨てられ、その場に倒れる。
ナイブズはその男を担ぎ地下へと続く階段を降りていった。

―――止めろ、止めてくれ。
様々な器具を用いられ、男の右腕が検査される。
横では一人しかいない研究者が冷や汗を滲ませナイブズに語り掛けていた。
「この門はお前すら超える」――と。

―――頼む、目を覚まさせてくれ。見たくない。これ以上は見たくない。
場面が転換し、先の部屋に戻る。ナイブズの左手が発光し、それに合わせるように男の右腕も発光していた。
苦悶の表情で必死に何かを耐える男に、ナイブズは一つ二つ質問を投げ掛ける。

―――止めろ、止めろ、止めろ!
男は駄々をこねる子供のようにその問いを受け入れない。遂に拳銃をナイブズに向けるが、引き金を引くことは出来ない。
ナイブズが男の右肩に左手を置く。
男の右腕が一層強く輝き数多の羽、そして光の球を中心に白色の砲身が現れた。
虚勢という殻を破り、男の内側から深淵が吹き出す。

―――頼む止めてくれ、頼む止めてくれ、頼む!
だが男はまだ抵抗を止めない。左腕を伸ばしナイブズの胸倉を掴む。
ナイブズの脳裏によぎる沢山の人の顔。
この期に及んでまだ諦めない―――ナイブズは激昂し、左手を男の顔に押し付ける。男は叫び声と共に白目を向き意識を失った。
トン、と何かが触れる。それは砲身と化した男の右腕。そして――



「止めろぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」




――右腕から「何か」が放たれた。




91 :絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/26(水) 17:30:12 ID:ajGj4yYL



さっきまで異様な熱を持っていた左腕はもう冷めていた。
でもその代わりに右腕が熱い。さきの左腕の熱を遥かに越える灼熱が広がっている。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおお…………」


―――百年近くその中で生きてきて、お前一度も人間に対して憎しみをもったことがなかったのか?
―――お前はこの場で一度殺された。お前が命を賭けて護り続けた人間という種に、だ。
―――お前は何もしていない。ただ仲間を殺された悲しみに暮れていただけ。なのに奴は問答無用で攻撃を開始した。
―――それだけじゃない。お前の身体に刻まれた傷跡が全てを物語っている。
―――俺が力を貸してやる。百年以上に渡る借りを奴らに清算させるんだ。その為の力を貸してやる。
―――思い出したんだろう? その右腕の本当の使い方を。感じただろう理性も常識も吹き飛ばす最高の開放感を。


さっきまでの単純な殺意や憤怒とは違う。囁くような甘い言葉。ヴァッシュは必死に首を振りそれらの言葉を拒絶する。
なのに右腕の灼熱は止まらない。輝きを増し徐々に形を変えていく。


―――楽になれ、ヴァッシュ……もう矛盾だらけの人生を歩むのは止めるんだ。
―――中にはレムのような変わり者が居るかもしれない。だが、現実は違う。人間共の大半はあのキースレッドのような奴等がばかりさ。
―――自分の為に他者を利用し、殺す……そんな奴等が殆どなんだよ。お前だって気付いているんだろ?


悪意が、侵食する。
クロノを失い、なのはを失い、ナイブズを失い、ナイブズの記憶を知り、固く閉ざした過去を思い出してしまったヴァッシュには、その悪意を跳ね退けることが出来ない。
頭に響く呪怨に抗えない。

―――右腕が、巨大な砲台に、変貌する。

ヴァッシュの力にナイブズの力が上乗せされ、満ち溢れていく力。それは光の筋となり殺戮の会場を直進。
途中に続く全てのビルを貫き消滅させ、何の偶然か三人の超人が死闘を繰り広げていたその上空で発動する。
世界を白色に覆い、全てを喰らい尽くさんとするその光景は、まさに大災害(カラミティ)。
二人のプラントの力が相乗し発動したその圧倒的な暴力は、付近にある物体全てを飲み込んだ。

消滅するまでの僅か十秒間、光球は全てを無に返した。







「ふはっはっはは……は、はははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」


破壊の権化が占領する空に最強の吸血鬼が吸い込まれていく。
その破壊を待ち望んでいたかのように両手を広げ、明確な死へと向かって、距離を詰めていく。


「――だがな」




92 :絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/26(水) 17:31:08 ID:ajGj4yYL
不死王は不意に動いた。
先程までの爆笑は一瞬で鳴りを潜め、虚しげな笑みを浮かべたまま、男は右腕の十字架を構える。
縦棒の短い方を、近くに飛ぶ瓦礫へと向けた。

「貴様に殺される訳にはいかんのだよ」

まるでロケットランチャーを発射するかのように十字架を構え姿勢で、男は呟く。
――そして十字架から黒い流星が発射された。
流星は狙いすました通りに瓦礫に直撃、周囲に真紅の花を咲かせ烈風を巻き起こす。
その真紅に全身を舐められながらも不死王は烈風に弾き飛ばされ、地面へと落下、易々と着地した。
同時に破壊の権化が急速に空気の中へ溶けていき、消滅。
不死王は死の光球からの脱出に成功した。

「化物を倒すのはいつだって人間だ……人間でなくてはいけないのだ」

その言葉は誰に向けられたものか。
男、アーカードは破壊が消え再び広がった青空へと叫んだ。

「……さて大分飛ばされたな」

瓦礫の山と化した市街地を見渡す。
周りにあの素晴らしい闘争を与えてくれた人間達は居なかった。
だが、アンデルセンやあの剣士があれで死ぬとは思えない。
という事はあの場所に再び集結する可能性もあるか?

「……まぁ良い、時間は山のようにある。何をしても無駄ということは無いだろう」

アーカードは十字架を片手に握り空を見上げる。

十字架―――これにはガトリングとランチャーが備え付けられている。
このドクロの持ち手がトリガー、回転させる事により切り替えを行うらしい。
気付いたのは先の剣士との戦いの直前。
十字架を包む小汚い布を取り去った時だ。
明らかに通常の十字架とは違った風貌、少し観察するだけで気付いた。
早速、光球の脱出に利用させてもらったが、成る程なかなかな破壊力を有している。

「だがこれでは面白くないな……」

吸血鬼さえも殺しきるであろう兵装。
人間相手に振るうにはあまりに過ぎた兵器。
だからこそ、アーカードは先のセフィロスとの戦闘でパニッシャーの真の力を使わなかった。

それでは余りにつまらないからだ。
それでなくともアーカードは異常な力を持っている。
力を出し惜しみするつもりでは無いが、この武器は強すぎる。
アーカードの身体能力でパニッシャーを扱えば、それこそ誰が相手であろうと戦闘を楽しむ暇すら与えられないだろう。
だからこそアーカードはパニッシャーを銃器としては使用しなかった。
使うとしたら、それは更なる強者が現れた時のみ。
セフィロスやアンデルセンのような、いやそれすらも越えた強者。
それは更なる力を発揮した彼等自身かもしれないし、また全然関係のない別の人物かもしれない。
アーカードはパニッシャーから延びた紐を肩に掛け、空を見上げる。
彼の大嫌いな太陽がそこにはあった。



93 :絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/26(水) 17:31:38 ID:ajGj4yYL
「十字架の武器とはな……この武器の持ち主は吸血鬼ハンターか?」

吸血鬼ハンター――自身の口から出た言葉にアーカードは自分を従えるマスターの姿を思い出した。

――主人、お前は今どこで何をしている?
お前が命じない限り私は止まらない。
ヘルシングの狗としてではなく、ただの吸血鬼として人間達へ平等に死をばらまく。
お前の事だ。誰かと手を組み主催者の打倒を目指しているのだろう。
だが、どうする?
お前が俺を止める前に全てを滅ぼしてしまったら?
お前の仲間の仲間を殺してしまったら?
お前はどうするのだ?
迅速に行動しろ、インテグラ。
ヘルシング局長として。
奴の血を引く者として。
我が主人として。
この遊戯を打ち破ってみせろ。

「期待して待っているぞ」

一笑と共に吸血鬼は歩き始める。
十字架を持ち、日光に照らされてもその吸血鬼は眉一つ動かすことはない。
彼を止めるのは、化け物か、人間か、それとも主か。
吸血鬼は崩壊の市街地を闊歩する。
果てぬ夢はまだ終わらない。


【現在地 G-5】
【アーカード@NANOSING】
【状況】疲労(中)
【装備】パニッシャー@リリカルニコラス
【道具】首輪(アグモン)、拡声器@現実、基本支給品一式
【思考】
 基本:インテグラルを探しつつ、闘争を楽しむ。
 1.戦場に戻る。
 2.Devil May Cryにて、自分に闘争を挑む人間が来るのを待つ。
 3.アンデルセンとスバル達に期待。
【備考】
 ※スバルがNANOSINGのスバルと別人であると気付きました。
 ※パニッシャーが銃器だという事に気付きました。が、相当な強者にしか使用するつもりはありません。
 ※放送を聞き逃しました。




94 :絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/26(水) 17:33:23 ID:ajGj4yYL




飛行と言うには余りに無理矢理な方法で、アンデルセンは空を飛んでいた。
着地法など考えていない、というか思い付かない。
この噴出に掛けたカートリッジ一発分の魔力が尽きるまで、アンデルセンはグルグルと回りながら待つことしか出来ないかった。
グラーフアイゼンのラケーテンフォルムによるロケット噴射。
それがアンデルセンの考え付いたエンジェルアームからの脱出方法であった。
操作不可、カートリッジの消費、不明な着地点、数々の難点があったが、あの時点でアーカードが思い付いた脱出方法はコレしかなかった。

もう一分近く、高速で回り続けている。
流石のアンデルセンと言えど、そろそろ停止をお願いしたいところであった。
そして空の旅は不意に終わりを告げる。
アンデルセンの行く手に破壊を免れた一棟のビルが現れたのだ。
アンデルセンには避けようが無い。
ただ片手で顔を覆い、衝撃に耐える事のみ。
数瞬後、轟音と共にビルへと突っ込むアンデルセン。激突した箇所がガラス窓だったのは幸運と言ったところか。

「チッ、ここは何処だ……」

ガラスにより負った切り傷の治癒はもう始まっていた。
アンデルセンは立ち上がり元の姿に戻ったグラーフアイゼンを拾い上げる。
部屋を見渡すが人の気配は無し。
アンデルセンは近くに置いてあった椅子を寄せその上に腰を下ろすと、デイバックから水を取り出し喉を潤した。
次いでカラー印刷された地図を取り出し、目を通す。

「駄目だな、目印になる建物がねぇ」

だが数秒で地図を仕舞う羽目になる。
地上本部など、目印となる建築物が見えない状況で位置を把握できる程アンデルセンは測量に詳しくない。

「さて、どうする……」

位置確認を諦めたアンデルセンは、椅子を揺らしながら思考を巡らす。
現在の第一目標はアーカードの討伐。
だが、今から先程の場所に向かうにしても瓦礫だらけとなり目印が一つもない状況で辿り着ける気がしない。
ならば先の光弾が発射された方に向かうか。
あの光弾は南東から飛んできた。
おそらく化け物の一人が狙い撃ったのだろう。
異常な破壊力、異常な射程、おそらくはアーカードにも迫る化け物の仕業。
コイツから狩るのもまた一興。
その次いでにはぐれたヴァッシュの探索でもすれば良い。

「待ってろよ、化物(フリークス)共」

光弾を撃った人物、アーカード、ミレニアム――――この場には塵に返すべき塵が多すぎる。
いや、これ程の量の化物共を一層できるのだ、寧ろ好機と受け取った方がいい。
これもまた神の導き。憐れな狂信者はそれに従うのみだ。

「Amen」

数分にも満たない休息の後、アンデルセンは日に満ちた市街地へと足を踏み出した。
彼の目には僅かな迷いも存在しない。
神のため、法皇のため、何より自分が自分であるため、アンデルセンは進み続ける。




95 :絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/26(水) 17:36:25 ID:ajGj4yYL
【現在地 G-6】
【アレクサンド・アンデルセン@NANOSHING】
【状態】疲労(中)
【装備】グラーフアイゼン(0/3)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】各種弾薬(各30発ずつ)、カートリッジ(27/30)、レイトウ本マグロ@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
    杖@ゲッターロボ昴、基本支給品一式。
【思考】
 基本:この場から脱出する。売女(プレシア)の言う通りにするつもりはない。
 1.南に向かい、光弾を放った化物を殺す。ついでにヴァッシュを探す。
 2.仲間を集める。また、優しい神父として振る舞う。
 3.最後の大隊は皆殺し。
 4.異教徒共と化け物については一先ず保留。ただし、殺意を抑えられるか……?
 5.脱出に必要な情報を集める。
 6.脱出が不可能な場合は優勝を狙う。
【備考】
 ※第九話終了後からの参戦です。
 ※制限に気付きました。
 ※クアットロが魔法少女リリカルなのはStrikerSからの参戦とは気付いていません。
 ※グラーフアイゼンはアンデルセンを警戒しています。
 ※アンジールを最後の大隊の構成員だと判断しました。
 ※放送を聞き逃しました。







覚醒を果たした時、セフィロスは既に空中へと舞上げられていた。
瞬時にセフィロスは事態の異常に気付き、状況の理解に努めた。

――白色の世界。
――宙に巻き上がる瓦礫、そして自分。
――その先には、凶々しい光を放つ巨大な球体。

――あの光球はマズい。
そう判断したセフィロスは、宙に翻弄されつつも片翼を発動し、服を掴んだまま気絶しているはやて毎、空を疾走した。
そして辿り着いたのは一つのビル。
しかし片翼発動の疲労、アーカードから受けたダメージが重なりセフィロスは屋上に舞い降りると共に気を失った。
数分後、目を覚ましたのは八神はやて。
また助けられたことに気付き、再び自己嫌悪に陥りかけるが、頬を叩き無理やりに活力を注入。
セフィロスを引き摺る形でビルの中に身を隠した。
それからはやてのしたことは、自分、そしてセフィロスのデイバック漁り。
どんな些細な物でも良いから、セフィロスの治療を促進できる道具が無いか確かめるためだ。
だが、セフィロスのデイバックには武器と基本支給品しか入っていない。
自分のデイバックもそう。
前に確認した通り、マハとデュエルディスク以外の支給品は入ってなかった。

何も出来ない――――再び自分の無力さを思い知らされる。
失いたくないのに。
リインや、シグナムのように、もう誰も失いたくないのに。
自分は何も出来ない。何が夜天の主、何が歩くロストロギアだ。


96 :絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY :2008/11/26(水) 17:38:29 ID:ajGj4yYL
大切な人さえ救えない私にそんな大層な名前を名乗る資格なんてない。
はやては傷心を抱え、ただうなだれることしか出来なかった。



―――この時、幸運の女神が笑い掛けてくれていることにはやては気付いていなかった。



俯くはやての足元に転がっている古ボケた小さな巾着袋。
つい先程、はやてが引っくり返したデイバックから転がり落ちた物だが、はやてはそれに気付けなかった。
それは先に行った支給品の確認の際にも、あまりの小ささに気付く事がなかったアイテム。
はやては知る由も無いことだが、その中には大豆のような豆が二個だけ入っている。
食糧の一種、という訳ではない。
それは食した者の身体を完全に回復させる魔法のような代物。
名は仙豆という。
制限により全快とまではいかないが、一粒食べさせるだけセフィロスの身体は大幅に回復する筈だ。
だがはやては気付かない。
思考を止め、自己嫌悪の殻に閉じこもってしまっている。

「セフィロスさん……」

喉から手が出る程に求めている物が直ぐ足元にあるのに、少女はただ涙を流し続ける。
罪悪感がその純粋な心を蝕み続ける。
螺旋階段を一段一段降りていくように、少しずつ少しずつ増していく自責の念。
それは真綿で首を締めるようにはやてを苦しめていく。
苦心のはやてはそれに気付き、セフィロスを救うことが出来るのか?
それは神のみぞ知る、だった。

【現在地 F-5 ビルの中】
【セフィロス@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(大)、魔力消費(大)、体中にダメージ 、気絶中
【装備】正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式×3、バスターソード@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、 トライアクセラー@マスカレード、ランダム支給品0〜4個
【思考】
 基本 元の世界に戻って人類抹殺
 0.気絶中
 1.状況が落ち着いたら、八神はやてと共に機動六課隊舎へ向かう
 2.アレックスに会ったら誤解を解く
【備考】
 ※現在行動を共にしている八神はやてが、本物の八神はやてであると認識しました
 ※機動六課でのことをはやてに自ら話すつもりはありませんが、聞かれれば話します
 ※身体にかかった制限を把握しました
 ※アレックスが制限を受けていることを把握しました
 ※八神はやてが無事なことから、アレックスはゲームにのってないと判断しました 
 ※殺し合いを止めるというスタンスは尊重するが、不可能と悟った時には殺すことも辞さない つもりです
 ※参加者同士の記憶の食い違いがあることは把握していますが、特に気にしていません
 ※トライアクセラーで起動するバイク(トライチェイサー@マスカレード)は、立体駐車場に埋もれていると思っています。
  とはいえ、運転はできないので、無理に探すつもりはありません。
 ※「リリカル龍騎」における仮面ライダーの情報を得ました
 ※デスゲームと仮面ライダーの殺し合いに関係があるのではないかと思っています



97 :代理:2008/11/26(水) 18:00:25 ID:+8jSYl7h
:絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY:2008/11/26(水) 17:41:38 ID:G.oFkbV6
【八神はやて(A's)@仮面ライダーリリカル龍騎】
【状態】疲労(小)、魔力消費(小)、自己嫌悪
【装備】デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、憑神刀(マハ)@.hack//Lightning
【道具】支給品一式、ランダム支給品0〜1個
【思考】
 基本 殺し合いを止め、誰にも悲しい思いをさせない
 0.ごめんな……セフィロスさん
 1. セフィロスが目を覚ますまで、見守る
 2. 仲間たちと合流
 3. アレックスに会ったら、殴ったことを謝る
【備考】
 ※セフィロスが自分を知っていることを知りません
 ※憑神刀のプロテクトは外れました
 ※憑神刀の中にシグナムの面影を見出しました。憑神刀にシグナムを投影している傾向があります
 ※デスゲームと仮面ライダーの殺し合いに関係があると思っています
 ※足元に仙豆が入った袋が落ちています。気付くか、気付かないは後の書き手さんに任せます。







アンジールは呆然と虚空を見詰めていた。
意識はとうの昔に回復した。身体も、ダメージはあるが動けない程ではない。
なのに行動を開始できない。身体に力も気合いも入らない。
遠方にて発生した、超常的な破壊を成した光弾にも、身体は反応しない。
その原因は数分前に流された放送であった。
いや、放送にて呼ばれた一人の名前と呼んだ方が正解か。

『――ディエチ』

感情に乏しい面があったが優しい妹だった。
誰もが当たり前の事だと思っていた戦いという行動に対し、一人迷いを見せていた少女。
機械仕掛けとは思えない「心」を持った少女であった。

「何故だ……」

小さな呟きが小さな応接間に霧散する。
強く握り込まれたアンジールの右手は僅かに震えていた。

「何故だッ!」

テーブルが真っ二つにへし折れた。
アンジールの右手が、感情に任せ叩き付けられたからだ。
だがそれでもアンジールの心は晴れない。心に空いた穴が塞がることはない。

「何故あいつらが死ななければいけないんだ……!」

涙は流れなかった。
ただ自分に対して憤怒が湧き上がる。
何もできなかった自分に、何もしていない自分に、怒りだけが募る。
非運などではない。
単純に自分の力が足りなかったのだ。
自分がもっと迅速に行動していれば、自分があの男達を退け先に進めていれば、
もしかしたら助けられたのかもしれない。


98 :代理:2008/11/26(水) 18:02:44 ID:+8jSYl7h
絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY:2008/11/26(水) 17:42:57 ID:G.oFkbV6
―――何がいけない?
―――何を間違えた?
―――自分はどうすれば良かったのだ?

「俺は……俺は……」

目を覚ました時、奴らは消えていた。
拳銃一丁を残し、全ての武器を奪い、奴らは消えた。
身ぐるみを剥ぎ取り、気絶している自分を放置して何処かへ去っていた。
俺を止める為、わざわざ追い掛けてきてまで自分と戦ったヴァッシュからは考えられない行動。
これが―――気絶した者から武器を奪い、放置する事が、奴の言う殺し合いを止める為の手段なのか?

分からなくなる。
自分は奴を買い被りすぎているのか?
これが奴の本質なのか?

「俺が甘かったのか……?」

元々あの狂人とヴァッシュは手を組んでおり、自分はヴァッシュが演じた仮の姿に騙され、殺意が挫かれ、力の全てを出し切れずに敗北。
そして武装を解除され、放置された。
考えてみれば、狂人が行った最後の不意打ちも充分な殺意が込められたものであった。
残された拳銃は精々足掻いてみせろとの嘲りか。
分からない。
ヴァッシュが身を呈し自分と狂人の戦闘を止めたのも事実。
ヴァッシュが自分を殺すつもりがなかった事も事実。
だが最後の狂人が行った不意打ちに殺意が込められていたのも事実。
最終的に、武器を奪うだけ奪って見知らぬ場所に放置したのも事実。
どちらかが偽で、どちらかが真。
―――長い長い思考の後、アンジールは答えを出した。



「……俺が間違っていた」



それだけ呟き、アンジールは拳銃を片手に立ち上がり、外へと退出した。

―――俺が甘かったのだ。

奴らは手を組み、参加者を騙し陥れる卑劣な害敵。
最初にヴァッシュが戦闘の間に入ったのも、そういう段取りだったのだろう。
身を呈し、命を賭けたように見せ、信用を買う、それが奴らの手段。
今考えれば可笑しな点もあった。
ヴァッシュは狂人の一撃を腹に受け、口から血を流した。それは内臓にダメージを受けた証拠だ。
なのに、奴は俺と戦闘をする為に駆けて来た。そしてダメージを全く感じられない動きで、自分と同等の戦闘を繰り広げた。

―――おかしい。狂人の一撃を受け、ダメージを負ったにも関わらず、何故あんな動きが出来た。
―――考えられる答えは一つ。
―――つまり、あれは演技。
―――ヴァッシュは事前に決められたタイミングで間に入り、狂人は事前に決められたように力を緩める。
―――ヴァッシュは口から血を流しダメージを負った風に見せ、死さえ厭わずに殺し合いを止める戦士に見せ掛けたのだ。
―――つまり自分は騙されたのだ。


99 :代理:2008/11/26(水) 18:05:54 ID:+8jSYl7h
絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY:2008/11/26(水) 17:44:42 ID:G.oFkbV6
「学ばせてもらったぞ、ヴァッシュ」

そして後は二人で協力し、ヴァッシュは不殺を貫く戦士として戦い自分の油断を誘い、狂人はその油断につけ込み自分を仕留めた。
生きていたのは幸運だっただけ。
奴らもからかいを込めて拳銃だけを残し全てを奪って、何処かに消え失せた。

「俺は甘かった。甘かったから遅れを取り、甘かったから妹を助けられなかった…………だがな、もう二度と間違えない」

ディエチの死を知り、奴らの姦計に気付き、目が覚めた。決意が、固まった。
どんな奴だろうと、妹達以外の参加者は全て敵だ。
妹達に危険が及ばぬよう、全てを排除する。
ヴァッシュも、狂人も、セフィロスも、先程の異常な光弾を放った奴も―――全て殺す。


「これ以上の犠牲は決して出さん。それが俺のできる全てだ」


―――ヴァッシュがアンジールを放置した理由は、ナイブズとの戦いに巻き込ませない為。
武器を置いていかなかった理由は、アンデルセンが持っている為。
銃を置いていった理由は、せめてもの償いの現れ。
ヴァッシュの行動、その悉くを悪い方、悪い方へと剣士は捉えてしまった。
もし、あの放送で妹の名が呼ばれなければ、まだ冷静な判断ができたのかもしれない。
だが、今のアンジールにはそれが出来ない。彼の中で答えはもう形成されてしまっている。
その考察の殆どが間違っていることなど知らずに、剣士は修羅の道へと一歩を踏み出した。


【現在地 G-6 ビルの中】
【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(小) 、頭部打撲(小)、右脚と左肩に銃創、決意
【装備】アイボリー(7/10)@Devil never strikers
【道具】支給品一式、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:妹達(クアットロ、チンク)を守る。
 1.チンクを保護するためにも、スカリエッティのアジトを目指す。
 2.妹達以外の全てを殺す。
 3.武器を手に入れたい。
 4.ヴァッシュ、アンデルセンには必ず借りを返す。
 5.セフィロス……
【備考】
 ※第七話終了〜第八話、からの参戦です。
 ※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。
  もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
 ※制限に気が付きました。
 ※ヴァッシュ達に騙されたと思っています。


100 :代理:2008/11/26(水) 18:15:40 ID:YEoV51nJ
絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY:2008/11/26(水) 17:45:37 ID:G.oFkbV6



「あ、あああ、あ……」


様々な戦乱に耐えてきた病院、その残骸の中心にてヴァッシュは一人涙を流していた。
過去に殺した大都市の住民達を思い、泣いているのか?
死んでしまった仲間を思い、泣いているのか?
禁忌の力を発動してしまった事に対して泣いているのか?
おそらくどの候補に対しても男は涙を流すだろうが、今の涙はそのどれにも当てはまることは無かった。

「フェイト、フェイト……」

涙に覆われた男の視線は、目の前の死体へと向けられていた。
それは、数十の肉片へと斬り刻まれた惨たらしいバラバラ死体。
ただ不思議なことに頭部だけは傷一つ無く、その死体の正体が誰なのか、男には分かってしまった。
それはフェイト・T・ハラオウン―――厳密に言えば、男が知っている姿から十年の年月を重ねているフェイト・T・ハラオウン―――の死体であった。
しかし錯乱状態にいる男はそれが大人となったフェイトの姿だと気付けない。
ただ自分の手で大切な仲間を殺したことに呻き、涙を流し続きることしか出来なかった。

―――殺してしまった。
―――自分の手で、フェイトを、仲間を、なのはの親友を、苦しむ自分を助けようと近付いてきたフェイトを、斬り殺してしまった。

「うあぁぁぁあああああああああああああああ………」

壊れてしまったかのように声帯は意味を成さない音しか出さない。
封印されていた記憶が、自分を支えてくれた仲間の死が、人を――仲間を殺害してしまった事実が、男の精神を押し潰す。

―――男は怖かった。
―――また自分の力が制御不能になることが。
―――自分の意志に反し行動する左腕が。
―――遭遇する人をまた殺害してしまうことが。



不意に男は立ち上がりその場から立ち去る。
涙を流し続けたまま、左肩を潰すかのように握り締め、人に遭遇しないように――――ただそれだけを望み男は走り始めた。
その両肩から生える翼が、逆光に照らされる。まるでその姿は羽根を生やした天使の如く見えた。

101 :代理:2008/11/26(水) 18:18:16 ID:YEoV51nJ
【現在地 H-6】
【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@リリカルTRIGUNA's】
【状態】疲労(大)、精神疲労(大)、錯乱 、融合、黒髪化三割
【装備】ダンテの赤コート@魔法少女リリカルなのはStylish
【道具】なし
【思考】
 基本:殺し合いを止める。誰も殺さないし殺させない。
 1.アンデルセンを追い、アーカードを止める。
 2.地上本部に行き、起こりうる戦闘を止めたい。
 3.アンデルセンと共に殺し合いを止めつつ、仲間を探す。
 4.首輪の解除方法を探す。
 5.アーカード、ティアナ、ナイブズを警戒。
【備考】
 ※第八話終了後からの参戦です。
 ※制限に気付いていません。
 ※なのは達が別世界から連れて来られている事を知りません。
 ※ティアナの事を吸血鬼だと思っています。
 ※ナイブズの記憶を把握しました。またジュライの記憶も取り戻しました。


131 :絶望の罪人〜双翼〜 ◆jiPkKgmerY:2008/11/26(水) 17:51:16 ID:G.oFkbV6
これにて投下終了です。
昨日は途中で投下を中断してしまい、本当に申し訳ございませんでした。
タイトルはトライガン・マキシマム四巻第七話サブタイトル「絶望の罪人」、同作十四巻第七話サブタイトル「双翼」から引用しました。
どなたか手の空いてる人が居ましたら、本投下お願いします。



代理投下終了。
感想は後ほど。とりあえず、フェイトの死亡確認が無かったので追加をお願いします。

102 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 19:27:02 ID:Xtgp9eiG
超大作GJでした!
ヴァッシュの描写が痛ましすぎて軽く鬱になりました。
はやては鬱真っ盛りだし、アーカードもパニッシャーに気付いちゃうし、アンジールは勘違いだし、セフィロスはボロボロだし、何よりヴァッシュが本当に歩く核兵器化しちゃったし……。
素晴らしい一話でした、GJ!


あと最後に一つだけ。
フェイトの死亡確認が抜けてますよー

103 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 20:18:13 ID:Mxo8OW8r
GJ!
融合……だと……?
確かにできないことではないのですが、まさかその可能性に気付くとは。いや、ホントにこの発想はすごい!
そしてフェイトそんは死んでしまいましたか……合掌。
セフィロスとはやて、アーカード、アンデルセン等といった、他のメンバーの今後も、非常に気になる話でした!

てか、アーカードが半端じゃなく強ぇwww
仮にもラスボスのセフィロスを、あそこまでボコボコにするだなんてwww

104 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 20:28:32 ID:ohkKV0YT
GJです!
アーカード対セフィロス、まさかのヴァッシュの手によるフェイトの死亡、
とても読みごたえがありました。

一つ質問が
はやてが放送に関して全くスルーしているのですが
聞き逃したのですか?

105 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 20:31:34 ID:wqyLQCal
まさか大乱戦と見せかけて実はメインはヴァッシュとナイブズだったとは。
しかしまさか退場者がフェイトで殺したのがヴァッシュ(暴走)だったのは意外中の意外、予想なんて出来なかった…。

それにしてもアーカードセフィロスボコボコって……今にして思えばスバル&こなた良く無事で済んだな……


106 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 20:36:58 ID:wqyLQCal
>>104

>頭上にて放映される凄惨な殺人劇も、プレシアの高笑いも、見えない、聞こえない。

となっていたので恐らく内容は殆ど把握していないのではないでしょうか?でもその旨は書いた方が良いかも。

107 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 22:56:31 ID:eGyYc5wd
投下乙です。
なんとヴァッシュが暴走でフェイトが、が、が、が、が、が、が……
アーカードは圧倒的な強さを見せつけてくれるし、はやては鬱で落ち込むし、アンジールは誤解しまくりでやばすぎるwww
様々な要因が重なって織り成す大戦模様は圧巻。GJです。
特に最初のアーカード戦の絶望っぷりが凄く伝わってきました。

いくつか気になる点があったので議論スレの方へ上げさせてもらいました。

108 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/11/27(木) 13:03:31 ID:0j9Dobfv
柊つかさ分を本投下します

109 :牙を持つカード ◆9L.gxDzakI :2008/11/27(木) 13:05:03 ID:0j9Dobfv
 音が鳴っていた。
 東の方角からだったが、そんなことは聞いていた当人には分からない。
 調べている暇もなかったし、気にするだけの心の余裕もなかったから。
 どん、どん、どん、と。
 銃声。次いで爆発。炸裂音が幾度となく続き、やがて一旦止んだかと思えば、また油断したところに銃声だ。
 音が鳴っていた。
 音。音。音。怒濤のごとく押し寄せる音。殺意の込められた戦いの音。
 戦いとは無縁の一般人には、到底耐えられるものではなかった。ましてや、気の弱い柊つかさならばなおさらだ。
 また音が鳴るのではないか。またこの沈黙を、怖い音がやって来て切り裂くのではないか。
 それこそ今度は、その音は自分に向けられるのではないだろうか。
 既に静寂の戻ったデパートで、それでもつかさは、未だ薄暗いテーブルの下でびくびくと震えていた。
 可能性はゼロではなかった。先ほどまで戦闘行為を行っていた人間が、このデパートにやって来る可能性は。
 殺し合いに乗り、殺意と共に暴力を振るった人間が、今度はここに興味を持ったとしたら。
 そして人間がいることに気付き、自分を殺しにかかって来たとしたら。
 果たしてこの貧弱な女子高生に、そんな人間を追い払うことができるだろうか。いいや、できようはずもない。
 幸い、防護服とサーベルは手元にある。だが、つかさにはそれを扱う力がなかった。
 運動にもそれほど秀でてはいないし、特別な技術を身につけているわけでもない。おまけにどんくさい。
 こんな典型的ダメダメ人間が、鎧や剣で武装したところで、結果は当に見えている。あっという間に瞬殺。
 今ここには、そんな貧弱な自分自身しかいない。強くて立派なフェイトはいない。
(そうだ、フェイトちゃん……)
 は、と。
 不意に、つかさの大きな瞳が見開かれる。
 気付いてしまったのだ。あまり想像したくなかった、嫌な予感に。
 そもそもこの音、本当に自分の知らない、第三者同士の放った音なのだろうか。
 あるいはここを出た時に、フェイトが誰かに襲われて、そのまま戦闘になってしまったのではないか。
 あたかも数時間前に、自分があの赤いジャケットの少年に、刃を向けられた時のように。
 実際、それはあり得ないことだ。フェイトが向かったのは西。戦闘があったのは東。どう考えても方角が違う。
 だがその事実は、つかさには一切の意味をなさなかった。
 何故なら彼女は、前述の通り、そもそもその方角というものの感覚が曖昧なのだから。
 恐怖に震えたつかさには、もうあの爆発音がどこから響いてきたのかも分からない。
 そもそも、フェイトが向かった方角もよく覚えていない。
 どこで鳴ったのか分からないということは、どこで鳴ってもおかしくないということ。
 どこに行ったのか分からないということは、どこに行ってもおかしくないということ。
 であれば、先の音の主にフェイトが襲われたという推測を、一体どうして否定できようか。
 ひょっとしたら、手傷を負わされているかもしれない。いや、最悪の場合、既にこの世にはいないのではないのか、とすら。
 思考は悪い方へとばかり進む。マイナス思考はは更なる不安を煽る。
(もうやだよ……どうしてこんなことになっちゃったの……?)
 本日何度目とも知れぬ言葉を、胸の中で呟いた。
 どうして自分は、こんな目に遭わされている。どうしてこんなに恐怖を感じる羽目になっている。
 何故こうなった。
 自分も、かがみも、こなたも、自分の世界のなのはとフェイトも、こんなこととは無縁だったはずだ。
 普通に学生生活を送って、普通に受験勉強をして、趣味も普通のオタクに付き添う範疇で。
 それが何故、無縁のはずの殺し合いに巻き込まれなければならない。
 現状を呪い、主催者プレシアを呪い、そしてその感情すらも、すぐに不安と恐怖に押し流された。
 そして追い討ちをかけるかのように、あの声が首元から響き渡る。
 恐慌状態の最中、ついぞ忘れていたあの声が。
 13人の死者を告げる、プレシア・テスタロッサの放送が。
『――さて、皆が待ち望んだ最初の放送の時間が来たわ』

110 :牙を持つカード ◆9L.gxDzakI :2008/11/27(木) 13:06:45 ID:0j9Dobfv


 第1回目の定期放送は、幾分かつかさを落ち着かせることに効力を発揮したのかもしれない。
 急に首輪から発せられた声は、それまでの彼女の思考を遮断し、放送内容へと意識を集中させることに成功した。
 つまりその瞬間、つかさはそれまで感じていた不安や恐怖を、ある程度忘れることができたのである。
 しかし、それも長くは続かなかった。
「……なのは、さん……」
 ぽつり、と呟く表情は冴えない。
 放送の中に読み上げられた、転校してきたばかりの友達の名前。
 高町なのはの死の知らせが、この哀れな女子高生の精神を、再び暗黒へとたたき落としたのだ。
 なのはとの付き合いは、まだまだそんなに長くはない。いい人だとは思うが、親友と呼ぶには至らない。
 それにフェイトの話が真実ならば、自分とは無関係のなのはが死んだのかもしれない。
 それでもつかさには、かがみやこなたの生還を喜ぶはなかった。
 たとえ付き合いが浅いといえども。たとえそれが他人の名前かもしれないといえども。
(友達の名前が呼ばれて、いい気はしないよ……)
 恐怖と不安に震えることはなくなっていた。それでもなお、その顔から陰りが消えることはなかった。
 友達の命が失われて、悲しみを覚えない人間など、いない。
(……、ちょっと待って!)
 友達。
 刹那、彼女の脳裏に浮かんだのは、その言葉から連想される更なる可能性だ。
 確かに今死亡が確認されたなのはは、自分の知るなのはではないのかもしれない。
 であればその場合、死んだのはフェイトの知る彼女なのではないか。
 フェイトの言動から察するに、彼女はなのはとは明らかに親しい間柄にある。言ってしまえば、自分とこなたのようなものだ。
 ならば、その友人が死んだとなればどうなる。自分ならば、悲しみと絶望にうちひしがれてわんわん泣く。
 そしていかに気丈なフェイトといえど、そんな状況に置かれれば、同じだけの悲しみを味わうことは目に見えていた。
(どうしよう……フェイトちゃん、大丈夫かな……!?)
 思考は悪い方向にばかり進んでいく。
 最悪の展開を迎えるフェイトの姿を想像し、再びつかさの不安が、彼女の思考能力を奪うまでに肥大化する。
 つかさは気も弱く判断力も鈍いが、心は優しい人間だ。
 故に、いかに先ほど会ったばかりとはいえ、絶望の淵に立たされる「あのフェイト」を放っておけるはずもなかった。
 とはいえ、自分はただの女子高生である。今更彼女を追ったところで、見つける前に誰かに殺されるのがオチだろう。
 おまけにフェイトから、ここで待つよう言い付けを受けている。下手に動いては、逆に迷惑になってしまう。
「……とっ、とにかく……禁止エリアを、メモしとかないとっ」
 焦りを声に滲ませながら、背後のデイパックへと手を伸ばした。
 実際、メモの意味があるほどに記憶が確かかは定かではない。だが、とにかく今は気を紛らす必要があった。
 何か他の作業でもしていなければ、不安や焦りに押し潰される。そんなことにはとても耐えられない。
 いてもたってもいられずに、肩からデイパックを下ろす。口を開け、何かメモに使える物はないかと中を手繰った。
「……あ、そういえば」
 と、ここでつかさは、ようやくあることを思い出す。
 支給品の存在だ。
 確かプレシアは、この殺し合いが始まる時に、自分達に戦う道具を支給したと言った。
 彼女は今この瞬間まで、ついぞその存在を失念していたのだ。
 禁止エリアの記憶は曖昧なのに、どうでもいいことはすぐ思い出すんだな。
 そんな自嘲気味の思考を浮かべながら、デイパックの中を探していく。
 もっとも、それをどうでもいいと思えるのは、よほど腕に自信がある者か、武器の類など扱えない者のどちらかのみなのだが。
 そしてその二者のうち、つかさは後者に属する人間だった。

111 :牙を持つカード ◆9L.gxDzakI :2008/11/27(木) 13:07:52 ID:0j9Dobfv
 やがて、取り出されたのは1つの本。
「本……?」
 そう、本である。
 黄色い表紙の分厚いそれは、どこからどう見ても本だった。
 おおよそ敵と戦うのには使えない。身を守るのにも適さない。支給されている意味が分からない。
 仮にここが漫画やアニメの世界では、様々な呪文の書かれている、魔道書のようなものがあってもおかしくはないのだが。
 そんな一縷の希望を抱きながらページを開いてみたものの、どうやらそうでもなかったらしい。
 紙の束に羅列されているのは、持ち主に魔法の力を与える術式などではなく、無数の数字だった。
(ひょっとして、これって……電話番号?)
 しかし、その文字の法則性に、つかさは見覚えがあった。
 一見ただ不規則に並べられているようにも見えるそれは、電話機に与えられた電話番号だ。
 見れば番号の横には、人の名前や施設の名前などが書かれている。もっとも、さすがに見覚えのある名前はないのだが。
 そう。この本はいわゆる電話帳。
 恐らくこの街の家屋やビル、その他の施設の電話番号が網羅されている、分厚いデータベースなのだ。
 そういえば、家に置いてあった電話帳(確か■ウンページとか言ったか)も、こんな風に厚みがあって黄色い本だったような気がする。
 これを使えば、他の参加者と連絡が取れるかもしれない。フェイトのような強い人に、助けを求めることができるかもしれない。
 僅かな安堵の感情と共に、つかさの表情が幾分か緩められた。
「あ……」
 だが、読み進めていくうちにそれも終わる。
 この電話帳には、名前と番号は書いてあるものの、肝心の住所までは記されていなかったのだ。
 つまり、かけた番号がどこにある家に繋がるのか、全く見当がつかないのである。
 そもそもそれ以前に、かけた先に誰か他の参加者がいる保障も、その参加者が自分に好意的な存在である確証もない。
 見ようによっては、確かにこれは便利な代物だろう。だが、それらの制約がネックだ。
 おまけに、場所の特定されているスマートブレイン社や、Devil May Cryの番号は省かれていた。
 もちろんこの電話帳、使う人間が使えば、極めて強力な情報戦用の武器となりうるだろう。
 だが、つかさの頭がそこまで回るはずもない。救援を呼ぶという手段を早々に諦めると、落胆と共にそれをデイパックに戻した。
 そして、次なるものを探す。
 名簿、地図、食糧。それら既に把握できているものは、出して隅へとよけておいた。
 まず最初に、探し求めていた筆記具。もっとも、この瞬間には既に、禁止エリアの位置など忘れていたのだが。
 続いて時計、ランタン、コンパスの順に取り出される。そういえばフェイトは、それと同じランタンを持ち歩いていた。
 そして、最後に見つけたものは、
「……なんだろう、これ?」
 1枚の紙切れだった。
 ただの紙ではない。文字や数字、イラストなどが記されていたそれは、いわゆるトレーディング・カード。
 青白い身体と深い青の目を持った、ドラゴンの絵が載ったものだった。
 この手のゲームに関しても、こなたからそれなりに知識を得ていたつかさだったが、このカードのことは思い出せない。
 いや、確かに覚えてはいたのである。微妙に見たことはある気がする。それもかなり有名なものだったような。
 だが、どうしても思い出せない。もう少しのところまで出掛かっているのに、最後の最後が出てこない。
 果たしてこれは、一体何のカードだったか。
 断片的に思い出せる情報を、精一杯頭の中からひねり出してみる。
 “左・右・A・B”のコマンド――格闘ゲームに関連するものだっただろうか。
 “粉砕☆玉砕☆大喝采”のフレーズ――かなり強い部類に入るカードなのかもしれない。
 “正義の味方カイバーマン”という名前――随分とノリノリな名乗りを聞いた記憶があるが、このカードそのものを指す名前ではない。
「……あぁ〜んもうわかんないよぉ〜……」
 考えれば考えるほど、正解から遠ざかっていくような気がする。
 どうやら自分はこのカードに関して、随分と中途半端な知識しかなかったようだ。
 思いっきり頭を抱えながら、うんざりしたような声で呟いた。

112 :牙を持つカード ◆9L.gxDzakI :2008/11/27(木) 13:09:07 ID:0j9Dobfv
 そして、改めて現状を直視する。
 要するにこれまで見つけてきたものが、現時点での自分の全ての持ち物なのだ。
 基本的なアイテム。いまいち決定打に欠ける電話帳。ろくに役に立つはずもないカード1枚。
 最後にフェイトから預けられた、このバリアジャケットと腰のサーベル。
 今つかさを守るものは、手元にはこれだけしか存在しないのだ。
 仮に誰かがこのアパートに入ってきたとして、一体どうやって生き残ることができるだろう。
 こんな装備では、あっという間に殺されてしまう。それこそ、フェイトよりも遥かに劣る、あの赤ジャケットの少年にも。
 何も頼れない。自分自身は頼りない。
 頼れる存在は、姉のクラスの転校生と同じ姿を持った、あの金髪の魔導師のみ。
「……早く帰ってきて……フェイトちゃん……」
 これもまた、本日何度目とも知れぬ言葉だ。
 それをぽつりと呟くと、つかさは再び毛布の中で縮こまった。

 柊つかさは知らない。
 自分に電話帳と共に支給されたもの――あの白いドラゴンのカードが、一体いかなるものであるかを。
 デュエルモンスターズ・カードゲーム。奇しくも自分の友人にも支給されていた、対戦型のトレーディングカード。
 異世界にその端を発するこのカードは、このデスゲームの舞台では、強力な武器として効果を発揮するのだ。
 そして、つかさに支給されたものに、その名前は授けられている。
 ――青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)。
 攻撃力3000、守備力2500。
 単純な数値ではこなたのバスター・ブレイダーすら凌駕する、単独で召喚可能なモンスターの中でも、最強クラスの化け物だ。
 このゲームが開発された初期には、その常軌を逸した強さ故に、即座に製造が中止されたとすらも。
 サファイアのごとき青き眼光を燃やし、荘厳なる純白の龍鱗を煌かせ、巨大な両翼で飛翔する伝説の竜。
 滅びの爆裂疾風弾(バースト・ストリーム)の一撃は、ありとあらゆる敵を一撃のもとに薙ぎ払うだろう。
 つかさは知らない。
 自分に与えられたこの魔物が、気弱な彼女にはあまりに過ぎた力であるということを。
 仮につかさがその効果に気付き、ひとたびドラゴンを召喚すれば、確かに身の安全は保障されるだろう。
 だが、白き竜は強すぎる。その身に秘めた破壊力は、身を守るなどという生やさしい力などではない。
 この紙の檻より解き放たれた白き竜は、全ての敵を焼き尽くすだろう。
 一切の慈悲も容赦もなく、見境なしに命を奪うだろう。
 果たしてこのカードが発動された時、それがつかさに何を及ぼすのか。
 そのひび割れかけた繊細な魂を、粉々に打ち砕く諸刃の剣となってしまうのか。
 青眼の白龍は答えない。
 ただ静かに、息を潜め、己が解き放たれるのを待つのみである。
 その青く美しき輝きを、爛々と瞳に湛えながら。


【現在地 H-5 デパート3階】
【柊つかさ@なの☆すた】
【状態】不安、 ひざ小僧ヒリヒリ
【装備】シーナのバリアジャケット@SHINING WIND CROSS LYRICAL
【道具】支給品一式、電話帳@オリジナル、
    青眼の白龍@リリカル遊戯王GX番外編 「最強! 華麗! 究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)」
【思考】
 基本:殺し合いを避ける
 1:フェイトちゃんが帰ってくるまでデパートにいる(早く帰ってきて!)。
 2:家族や友達に会いたい。
 【備考】
  ※遊城十代が殺し合いに乗っていると思っています。
  ※禁止エリアの位置を忘れました。
  ※電話帳はあまり役に立たない物だと思っています。また、遊戯王カードが武器として使えることに気付いていません。

【電話帳@オリジナル】
 市街地の家屋や施設の電話番号が書かれた、黄色い表紙の分厚い本。
 ただし、地図上に記されている施設(機動六課、地上本部など)の電話番号は記されておらず、
 この電話帳に掲載されている施設(はやてとセフィロスが使ったビジネスホテルなど)の詳しい住所も不明。

113 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/11/27(木) 13:11:12 ID:0j9Dobfv
青 眼 再 び(ぉ

というわけで、投下終了です。
ごめんなさい、懲りずにまたブルーアイズを出してしまいましたorz
電話帳の性能が微妙なのは、このブルーアイズとつりあわせるためだったりします。

タイトルの元ネタは、原作「遊戯王」9話&10話のサブタイ「牙を持つカード」です

114 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 18:05:22 ID:pHdbUD7X
投下乙です。

ブルーアイズとは……十代に遭遇した時に確認して出していれば……
電話帳とは便利な道具……いったいどうやって使ったら使ったら良いのでしょうか……?

それからつかさ……フェイトはもう……orz
というか、独りぼっちで大丈夫なのだろうか……?

115 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 19:03:30 ID:sqjWrBRZ
投下乙であります。
おお、つかさwなんて凄いものを持っているんだwww
電話帳も使いどころが際どいですなあ
さてつかさは青眼白龍に気付くのかw

116 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 20:23:21 ID:J1Ml8uiv
投下乙です。
ブルーアイズが此処で来たw
つかささんが一気に強キャラへw
電話帳は…使いどころが難しそうですねぇ……

117 : ◆7pf62HiyTE :2008/11/27(木) 20:46:50 ID:pHdbUD7X
八神はやて(StS)1名、本投下します。

118 :Hayate the combat commander ◆7pf62HiyTE :2008/11/27(木) 20:49:06 ID:pHdbUD7X



『それじゃあ、あなた達の活躍を期待しているわ。』

高笑いと共に悪趣味な放送が終わった。
八神はやては図書館のベンチにてその放送を聞いていた。

「13人か……」

はやては放送の内容を思い返す。放送で伝えられた内容は、

禁止エリアの連絡
放送までの死亡者の発表
蘇生実演付のご褒美の話

以上である。はやてはまず死亡者について考える。放送では13人の死者が伝えられたがその内6人ははやての知る人物であった。

六課の一員であるエリオとティアナ
六課の後見人でフェイトの兄で友人でもあるクロノ
JS事件で敵対したが逮捕され更生したはずのディエチ
10年来の友人であるなのは

そして……はやてにとって大事な家族であるはずの「シグナム」……

そう、仲間や家族を一度に6人も失ったのだ……だが、彼女は悲しむ事も怒りを見せる事もしない。
何故か……彼女にとって助けるべきは『本当の家族』だけだからだ。
その為、それ以外の参加者などその目的の為の戦力以外の何ものでもない。今、放送で呼ばれた「シグナム」であってもだ。

本来であるならばシグナム達守護騎士は妖星ゴラスの媒介となっていてこの場に呼ばれている事など有り得ない。
だが、現実にはヴィータとシグナムがこの場にいる……はやてはこれを異なる世界もしくは時間軸から呼び出されているものと考えていた。
しかし、はやては彼女達を自分の家族だとは考えはしない。それは、今なおゴラスの中で苦しんでいる本物の彼女達に対する裏切りだからだ。
だからこそ、今「シグナム」が死んだとしても戦力が失われた程度の事でしかない。

「……それにしてもシグナムやなのはちゃんまで殺されるとはなぁ……」

シグナムとなのはの実力ははやて自身よく知っている。仮に自分同様デバイスを没収されていたとしてもそう簡単にやられるとは考えてはいなかった。
だが、現実には既に2人は死んでいる……これはこの殺し合いの過酷さをよく現している事を意味している。

「それにクロノ君にディエチもか……ん、ちょっと待て……」

ここではやては思案する。シグナムやヴィータ、なのはがこの場にいることは別に良い。自分と同じ六課メンバーなのだからこの場にいても不思議はない。
クロノに関しても不思議は無いだろう、彼は六課の後見人であるしフェイトの義兄でもあるからいた所でも不思議はない。
だが、ディエチはどうだろうか?彼女は自分達の関係者とは言え、JS事件で敵対していた程度の関係でしかない。何故彼女までが呼ばれているのか?
自分達と関係が少しでもある人物が呼ばれている……確かにその可能性はあるが、先程呼ばれた放送では知らない人物が7人もいた。
単純に自分達の関係者が呼ばれているわけではないのでは?はやてはそう考えた。
と、ここまで考えたはやてはある事を思い出す。

「そういや、誰が参加しとるのか確認しとらんかったな……名簿とかってあったかな……」

119 :Hayate the combat commander ◆7pf62HiyTE :2008/11/27(木) 20:50:34 ID:pHdbUD7X

そう、はやてはここに来るまでの間に一度も名簿を確認してはいなかった。
最初に支給品を確認した時は首輪を解除出来そうな道具や武器を探す事に集中していた為に名簿や地図の存在には思い至らなかったし、
その後は役立たずの少年キングに振り回されヴィータと戦ったり、地上本部を調べたりしていた為全くその事は考えなかった。
単純にヴィータがいたから勝手に他の守護騎士や六課のみんながいると考えていたのである。

「ああ、これや」

と、はやては2枚の紙を出した。片方は地図、もう片方は名簿である。名簿の中身を見て今一度彼女は驚愕した。

「やられたなぁ……」

名簿にははやての予想通りシャマルやザフィーラといった守護騎士やスバルやキャロといった六課の仲間達の名前があった。
他にもJS事件で敵対したクアットロやチンク、それにゼストの名前もあったのだ。
それだけではない、自分となのは、フェイトに至っては2つずつ存在していたのだ。

「完全にミスやな……」

はやては今まで名簿を見ていなかったという失敗を悔やんだ。キングに振り回されていたことも原因の1つではあったが、そもそもキングに会う前の段階で確認する事はできたはずだっだ。
そう、これは誰がどう見てもはやてのミスでありそれははやて自身も感じてはいた。
だが、失敗をいつまでも悔やむつもりはない。重要なのはそこからどうするかなのだ。そして、名簿を見た時点である事実を改めて再確認する事が出来たのだ。

「間違いない……参加者の殆どは違う世界から連れてこられているな……」

そう、はやてはヴィータと遭遇していた時点で少なくとも守護騎士は並行世界から連れてこられている事はわかっていたが、
他の六課の仲間達に関してはそこまでは考えていなかった。
だが、名簿とこれまでの情報から他の参加者もそうである事を確信したのである。

その理由は2つ。

1つ目は2つあるなのは、フェイト、はやての名前……参加者によってはミスプリント、偽物、クローンと様々な可能性を考えていただろう。
だが既に何人かはこれを異なる世界及び時間軸から呼び出されていると判断している。
そしてはやてもまた並行世界から呼び出されているものだと考えたのだ。

2つ目は守護騎士達、クアットロ、チンク、ディエチ、ゼストの存在である。
本来であればヴィータ達守護騎士達がこの場に存在するはずがないのは前述の通りだ。
更に言えばゼストに至ってはJS事件で死亡している。当然この場にいるはずがない。
そしてクアットロ達スカリエッティの戦闘機人もまた本来であれば対ゴジラ決戦兵器への改造中のはずなのでこの場にいることはありえないのだ。
実の所、先程ディエチの名前を聞いて違和感を覚えたのはこの理由からだったのだ。
彼女達存在するはずのない者が存在している……並行世界から呼び出されているのだとはやては判断した。

と、ここまでの話から自分の知り合いの内11人が自分のいた世界とは違う並行世界から呼ばれている事になるが、
そうなると他の仲間達も怪しいものである。もう1人のなのはやフェイト、それにスバル達が自分と同じ世界から呼び出されているとは限らない。
つまりそれは彼女達はゴジラを知らない世界から連れてこられた可能性がある事を意味している。
そして、それは自分の知り合い以外にも適応されるだろう。そう、キングも自分の知らない並行世界から呼び出されている可能性があるのだ。そうであるならゴジラを知らない理由も説明が付く。
もっとも、キングについては最初に考えた通り何処かの管理外世界から連れてこられたという可能性もあるので何とも言えない話ではあるが。

さて、以上の事から参加者の多くが並行世界から連れてこられていると考えたが、だからといってはやての行動方針が変わるという事はない。むしろかえって固まったと言えよう。
そう、自分達の知り合いですら違う世界からの出身ならば遠慮をする事はない。例え家族であっても、十年来の友人であっても、部下であっても関係はない。
自分の世界にいる『本物の家族』を救う為に利用させてもらう、その為に誰が何人犠牲になろうとも関係ない。はやてはそう考えたのである。

120 :Hayate the combat commander ◆7pf62HiyTE :2008/11/27(木) 20:51:48 ID:pHdbUD7X

はやては放送で呼ばれた者の印を名簿に付け、プレシアの放送を思い出す。
思い出す内容はプレシアの言ったご褒美の話である。
プレシアは最後の1人になった者には望みを叶えると言ったのだ。
そしてわざわざ最初の犠牲となったアリサを復活させるというパフォーマンスをした上で死者蘇生も出来る事を示した上で。だが、

「そんな言葉には乗らん……」

はやてはその言葉に乗るつもりはなかった。
勿論、言葉通り最後の1人となればゴジラを消し去り守護騎士達を助ける事もできるという可能性はあるだろう。
だが、はやてにはプレシアの言動にある種の違和感を覚えていた。

まず、ご褒美の話を持ち出したタイミングである。
プレシアにしてみればご褒美の話は殺し合いをさせる上で絶好の餌になる。
殺し合いが目的ならばそれを話さない理由は全くない。
だが、ご褒美の話が出たのは一番最初の説明ではなく最初の放送……それも、禁止エリアと死亡者の発表が終わった後だ。
このタイミングであれば聞き逃す可能性だって高い。知り合いが呼ばれたショックで頭に入ってこない可能性があるからだ。
何故このタイミングでの発表なのか?忘れていたのであればあまりにもお粗末な話であろう。
そしてもう1つはわざわざアリサ復活の実演部分は音声だけではなく映像まで出したという点である。
蘇生出来るという証拠を示したのだろうが、これではさも「(本当は出来ないけど)私は蘇生させる力を持っています」と示している様にも見える。
さらに、わざわざ蘇生したはずのアリサの首輪を再度爆発させた点である。
一応プレシアは止めようとしても無駄だという事を説明したのであろうが、よくよく考えてみれば蘇生させた時に首輪まで再生しているのも奇妙な話である。
以上の点がはやてには引っ掛かったのである。

「そもそも本当に蘇生なんてできるんかな……?」

そしてはやては根本的な疑問に行き当たる。蘇生は本当に可能なのかという問題である。
確かに実演して見せてそれを証明しているようには見えるがそれにしては奇妙な話である。
そもそもプレシアはアリシア復活の為にアルハザードへ渡ろうとしてPT事件を起こしたのだ。
もし蘇生させる技術が手に入ったのならさっさとアリシアを蘇生させて平和に暮らせば良い。
こんなアホみたいな殺し合いなど行う必要なんて全くない。はやてはそう考えていた。

「という事は蘇生出来るという話は嘘なんかな……」

はやてはアリサ蘇生の件については嘘だと結論づけた。
では自分達が見た映像は何か……恐らく簡単なトリックだろうとはやては考えた。
要するに復活したように見せる事ができれば良いのだ。
映像では一瞬光った直後に蘇生したアリサの姿が現れた。
つまり、その瞬間で死体のアリサと生きているアリサを入れ替えればよい。
アリサが2人いる件については自分達が2人参加させられている事と並行世界の事から考えても別段有り得ない話では無いだろう。

さて、並行世界の件に気が付き、観察眼に長けている者がこれを見ればすぐに見破る事が出来るだろう。
だが、ここで実演のタイミングが重要となってくる。
実演を行ったのは一番最初の説明でもなく、放送の最初でもなく、死亡者発表の後だったのだ。
このタイミングでは落ち着いて聞くことなど出来なくなる。大体、禁止エリア発表の時には

『最初に死者を教えたら禁止エリアを聞き逃して間違って死ぬバカがいるかもしれないものね。』

という気遣いになっているかどうかわからない気遣いで聞き逃さないように配慮してくれたはずなのに、
死者蘇生という聞かせるべき話は聞き逃しかねないタイミングで話している。これは明らかに不自然だ。
ならば、ご褒美の話はあまり真剣に聞かれては困るということなのだろう。

121 :Hayate the combat commander ◆7pf62HiyTE :2008/11/27(木) 20:53:06 ID:pHdbUD7X

さて、では実際にこのタイミングで話されたらどうなるだろう?
恐らく知り合いが死亡した事でショックを受けているはずだ。そんなタイミングで蘇生する映像を見せられたら冷静な判断が出来ずそれを信じてしまってもおかしくはない。
そして少し冷静になりそうなタイミングで再爆破……再びショックを受けて冷静さなど失ってしまうだろう。
ちなみに知り合いが死亡してショックを受けないような人間の場合は、そもそも蘇生させようなんて考えないのでその部分を考える必要がないだろう。
そう、あくまでも参加者には自分には死者を蘇生させる事が出来ると印象づけさせ、実際は出来ないという事を悟らせてはいけないのだ。

「わざわざそんな手間をかけてまでそれを伝えるっちゅうことは……その言葉に乗って殺し合いをする人を増やす為やろな……」

はやては見破られるリスクを犯してまで蘇生実演を行った理由を、殺し合いを激化させる為だと考えた。
死者を蘇生出来るのであれば、今まで殺し合いに乗っていない人間も平気で殺し合いに参加するようになるからだ。
だが、はやてはさらにその先まで思案を広げる。

「そもそもなんでプレシアはそこまで殺し合いに拘るんかな……」

言うまでもなくプレシアの目的はアリシアの復活である。
PT事件の一件から管理局への復讐目的という線も考えたが、よくよく考えてみればその可能性は低いだろう。
そもそも自分や守護騎士はPT事件には直接関わっていないし、ナンバーズに至っては復讐されるいわれなど無いはずなのだ。
更に言えば復讐目的であればリンディ・ハラオウン等のPT事件関係者が呼ばれていなければおかしいはずなのに彼女達はこの場にはいない。
つまり、復讐が第一目的というわけではないことを意味している。無論、ある程度の人選として復讐も視野に入れているだろうがそれ自体が目的ではないだろう。

では、何故殺し合いなのだろうか?
単純にある程度の命が欲しいのであればすぐにでも参加者全員の首輪を爆破すればいい。少なくても既に機会はあったはずなのだ。
だが、現実にプレシアの手によって爆破されたのは説明の時のアリサだけである。
そして、御丁寧に放送では禁止エリアに間違って入らない様に配慮までしてくれたのだ。
つまり、首輪の爆破による死亡をプレシアは望んでいないということである。
言い方を変えれば殺し合いによる死をプレシアは望んでいるのだ。

以上の事を纏めるとこうなる。
アリシア復活の為には単純な死ではなく、殺し合いの死が必要である。だからプレシアは殺し合いを行っている。

さて、並行世界に干渉出来るのであれば並行世界から生きているアリシア連れて来るなり、向こうの世界のプレシアになりかわるなりすればいいだろうと考える人はいるだろう。
だが、はやてはその可能性については全く考えていない。そう、ここにいるはやてはプレシアがそれを行わない理由を理解出来るのだ。
なぜなら、並行世界のアリシアはこの殺し合いを行っているプレシアの『本当の娘』ではないからだ。
そう、それははやてにとって、この場にいるヴィータ達ははやての『本当の家族』ではないのと全く同じ理屈なのだ。
だからこそ、はやてはプレシアの目的をある程度読む事が出来たのであろう。とはいえ、それと殺し合いに乗るかどうかは全く別問題ではあるが。

さて、これまでの話から少なくとも現状ではプレシアは蘇生技術を持っていないという事になる。この事からある可能性が考えられる。
恐らくプレシアはアルハザードに到達し超越した技術を手に入れた事は間違いない。
だが、技術の全てを使いこなしているわけではないのだとはやては考えた。
つまり……プレシアは全知全能では無いという事だ。

「そうなると……本当に全部を1人でやっているのかどうかも怪しいものやな……」

そしてはやてはこの推測からプレシアには「協力者」がいる可能性を考えた。
全ての技術を扱いきれないのであれば。当然、他にもプレシアにも持て余すような技術が出てくる。
キングの話に出てきた仮面ライダーやライダーシステムの話もその1つであろう。
もしプレシア自身にも扱いきれない物が存在するならばそれはこの殺し合いそのものを破壊しかねないだろう。
つまり、それらを扱う為の「協力者」の存在は必要という事だ。

122 :Hayate the combat commander ◆7pf62HiyTE :2008/11/27(木) 20:54:16 ID:pHdbUD7X

さらに、参加者の人選についても同じ事がいえる。
参加者にPT事件関係者がいる事については別に良い、だが、幾ら何でも自分達や六課メンバーの殆どが参加しているのは妙な話ではないだろうか?
その一方でPT事件関係者で参加していない者がいたり、ナンバーズに至っては3人しか参加していなかったりという不自然さもある。
つまり、人選に関わった人物が他にもいるということだろう。特に闇の書事件やJS事件の関係者の中にも……。

「何人か心当たりはあるけどな……」

はやては「協力者」が誰かを考える……ギル・グレアム、リーゼロッテ、リーゼアリア、レジアス・ゲイズ、オーリス・ゲイズ、ジェイル・スカリエッティ、ナンバーズetc
自分の世界の彼らが協力しなかったとしても、プレシアが並行世界に干渉できるのであれば並行世界の彼らが協力してもなんら不思議はない。
そして彼らが協力しているならばこの人選にもある程度説明が付けられる。

「そもそもプレシア1人で私ら全員を監視するなんて無茶やしな」

そう、確かに自分達は首輪で逆らわないようにされているし、下手に逆らえば爆破される事は間違いない。
そして恐らくは自分達の言動は首輪による盗聴や何処かからの盗撮で逐一チェックされているだろう。
だが、60人いる参加者全ての動向をたった1人でチェック出来るだろうか?
まず不可能だ。プレシアが本当に万能ならともかく、そうでないならそれは無理だろう。
更に言えば、全く休息無しにチェックをし続けるのも無茶だろうし、そんな状態が続けば殺し合いの進行そのものにも支障が出る。
つまり、殺し合いを滞りなく進行させる為にもある程度の協力者は絶対に必要なのだ。
現状では「協力者」の姿が見えないが、殺し合いが進めば姿を見せる事になるだろう。
何より、プレシア自身が行ったパフォーマンスでそれを実証してしまったのだから……。

ともかく、この殺し合いが単独によるものでなければ付け入る隙は出てくる。
組織というものがそう簡単に上手くいかない事は自分自身の経験で良く判っているからだ。
故にそれは自分達にとってチャンスと呼べるものとなるだろう。

「どうやら反撃の糸口が見えてきたようやな……」

はやての顔に笑みが零れていた。ここ数時間思うように行動出来ず苛立っていたが、今自分のいる場所が幼少時に利用していた場所という懐かしさもあり平静さを取り戻していたのだ。
そして、役立たずな協力者キングもいなくなった事で冷静に思案する事ができたのである。
勿論、現状ではこれだけでどうにかできるとは思ってはいないが、これが大きな進歩であるのは間違いないだろう。

続いてはやては禁止エリアの確認をする。禁止エリアとなったB-1、D-3、H-4を地図に記しそれを見つめる。

「施設を避けているな」

真っ先に思った事は禁止エリアに施設が無い事である。

「私が主催者やったら人が集まりそうな所を早めに禁止エリアにするけどな……例えば病院とか地上本部とかな」

この場に置いて参加者はどう行動するだろうか?恐らく薬等の確保の為に病院へ向かったり、自分達の拠点である六課隊舎や地上本部へ向かうはずだろう。
そしてそこを対主催の拠点とするだろうと……そうであるなら殺し合いを望むプレシアとしてはそこを早めに禁止エリアにして移動を余儀なくさせた方が都合が良いはずだ。
しかし、実際は拠点となりそうな施設は禁止エリアとなっていない。

「禁止エリアは適当に決めたのか……いや、それはないな」

ランダムで決めた可能性は無いだろうと考えた。ランダムで決めたのであれば1つ位施設があるエリアを選んだ方が自然だし、エリア端の海や密林を選んでもおかしくはない。
だが、禁止エリアとなった場所は施設に隣接するエリアや通り道となりそうなエリアである。
つまり、作為的に禁止エリアを選んだという事になる。

123 :Hayate the combat commander ◆7pf62HiyTE :2008/11/27(木) 20:55:54 ID:pHdbUD7X

「だとしたら……施設に誘導するつもりなんかな」

はやては逆に施設に人を集めるつもりで禁止エリアを選んだのであろうと考えた。
ここではやてはキングと共に地上本部を調べた時の事を思い出す。
見つかったのは参加者を分散させる罠である転移魔法の魔法陣だけだったが、確かに地上本部には隠されている仕掛けはあった。
となれば、他の施設に何か仕掛けがあるというのはあながち的外れな話では無いだろう。それが例え罠の可能性があってもだ。

「となると、ここにも何かある可能性はあるか……」

そして、今いる図書館にも何か仕掛けがある可能性があると考えたのだ。
とはいえ、たった1人で調べるには広すぎる場所であるので、ひとまずそれは保留にして支給品の再確認をする。
今現在はやては2つのデイパックを所持している。1つは自身のデイパックでもう1つはキングのデイパックである。
確認を済ませた後、はやてはキングのデイパックの中身を全て自分のデイパックに移し、キングのデイパックも折り畳み自身のデイパックに入れる。

これはデイパックを2つ持っていると思わせない為である。
何故か?それはデイパックを複数所持しているという事は誰かからもらったか奪ったかのどちらかである。
普通に考えて他人に自分のデイパックをあげるのはまず有り得ない話である。何故ならそんな事をすれば自身が危険にさらされるからだ。
勿論、死に際に渡したという可能性もあるが、常識的には次に述べる可能性の方が自然だろう。
それは他の参加者を襲うか殺す事でその者のデイパックを奪ったという線である。
つまり、デイパックを2つ持っているという事はそれだけで殺し合いに乗っているという証明になりかねないのだ。
キングのデイパックはキング本人がはやてにあげたものであるが、そんな話を信用するバカがいるだろうか?まず有り得ない。
その為余計な嫌疑を避けるべく、キングのデイパックを自身のデイパックにしまったのだ。処分しないのは何かに使う機会があるかもしれないと考えたからだ。

124 :Hayate the combat commander ◆7pf62HiyTE :2008/11/27(木) 20:58:01 ID:pHdbUD7X

ここではやてはキングの事を改めて考える。役立たずのガキであるキングの事を……
実際キングと出会ってからはヴィータと敵対する羽目になったり、無駄に地上本部を調べさせられたり、無駄に図書館に転移させられたりと良い事など殆ど無かった。
ここでキングが戦力として有用であるならばまだ救いがあったが、あのガキはちょっとした念動力しか使えず、人をバカにする事しか出来ず、頭も悪いという救いようが無かった。
真面目な話、何度隙見て殺そうかと考えたぐらいだ。正直、地上本部の罠にはまって離れる事が出来た事に感謝したいぐらいである。

だが、本当にキングは無能なのだろうか?

そう考えるきっかけとなったのはキングの支給品を自分のデイパックに移している時である。

キングはラーダーベルトと自身の持っている携帯電話以外は全て自分にくれた。地図も名簿も含めてである。
しかし、そんな事をしてこの戦いを生き残れるのだろうか?
実際、自分自身デバイスも奪われ支給品を頼らなければならない状況で、そんな真似をする事など自殺行為以外の何ものでもない。
本当にバカだったらそれでも構わない、さっさと死んでくれた方がこっちも助かる。だが……

『アハハハ、僕それいらないもん。なんてったって、僕が誰よりも“一番”強いんだからね 』

と、デイパックをくれた時にキングはそう言ったのだ。武器も道具もない、名簿も地図もない、食料等もない、そんな状況になるにも関わらずそんな発言などできるのか?
百歩譲って念動力で戦う事が出来たとしても、地図が無ければ自分の位置がわからないので禁止エリアがどこかもわからないし、食料が無ければ長期戦において必ず無理が生じる。
無謀としかとれない行動である。

「まさかとは思うが……あのガキ……本当に“一番”強いんか……?」

はやてはもしかしたら本当にキングが強いのでは無いかと考えた。自分に対する言動は真の能力を隠す為であるのだろうと。
記憶力があれば名簿と地図の中身さえ覚えればそれ以降は必要無くなるし、食料に関しても食べなくても済む体質であるならば問題はない。
更に言えば、念動力以上の隠し球がある可能性だってあるだろう。

125 :Hayate the combat commander ◆7pf62HiyTE :2008/11/27(木) 21:04:25 ID:pHdbUD7X

「そういや……アイツ、ベルトと携帯だけは持っていたな……」

そしてはやてはキングが何故かベルトと携帯電話だけは手放さなかった事を思い出す。
ベルトについては仮面ライダー達の変身を封じる為だからと聞かされたので別段問題は無いが、問題なのは携帯電話である。
全く疑問に感じてはいなかったが、携帯電話を持っていた事が話題に出なかったのはよくよく考えてみれば妙な話である。

「そういや私の携帯は没収されていたな……あの携帯はキングの支給品やったか……?」

携帯電話は今や子供も大人も所持している通信用のツールである。それを使う事で他者との連絡は容易にできるはずだ。
だが、はやて自身の携帯は没収されている。プレシアが他者との連絡を許すはずないわけだから当然の話と言えよう。
他の参加者に出会っていないから断言出来るわけではないが十中八九参加者の携帯は没収されているのは確実だろう。
だが、キングは携帯を持っていた。これはいったいどういう事だろうか?

「支給品にしては携帯の扱いがあまりにも自然すぎるな……」

そう、はやて自身今まで全く気に留めていなかった事からも明らかな様に、キングは身体の一部という感じで携帯を使いこなしていた。
それは普段からその携帯電話を使いこなしているという証明である。

「ちょっとでも機種違うたらそこまで上手くは扱えへんと思うけどな……」

携帯電話の種類は今や多種多様、大まかな機能は同じであっても機種によっては大幅に使い勝手が異なる。
更に言えば、個人個人の設定で使い勝手を変える事が出来るので他人の携帯を自分の携帯と同じ様に扱うのは簡単な事ではない。

「ということはアイツ自身の携帯か?」

はやてはキングの持っている携帯電話がキング自身の携帯電話だと判断した。
キング本人の携帯電話なら自然に使っていてもおかしくはないし、キングの支給品を受け取った時に携帯電話の話題が出なかった事も頷ける。

「しかしおかしな話やな……私やヴィータの携帯やデバイスは没収されとるのに……なんでアイツだけ……」

そう、キングがキング自身の道具を持っているという事は普通に考えればありえない。何故なら、この殺し合いに置いては参加者自身の道具は原則的に没収されているはずだからだ。
それははやて自身に夜天の書が支給されていない事、ヴィータがグラーフアイゼンを持っていなかった事から考えても間違いない。
一部の例外はあるもののまず没収されていると見て間違いないだろう。
では、何故キングは自身の携帯をそのまま所持していたのだろうか?

「壊れていて使えない……いや、違うな。」

壊れていた可能性……それはない。携帯電話のカメラ機能が生きていた事ははやて自身も確認している。
つまり、十分に道具としての機能は備わっているのである。流石に通話は不可能だろうが、使える道具であるのは間違いないだろう。

「それにしてもなしてプレシアはキングの携帯は没収せえへんかったんかな……プレシアもキングなんてクズ放っておいてもええと思ったんかな……いや、無謀すぎるな……」

そう、仮にキングがクズで放っておいても問題ないと判断した所で、携帯電話という道具を持つ人が持てば協力な道具になるのは確実。
殺し合いを止めようとする者の手に渡る事だけは絶対に避けなければならないはずだ。
キングが本当にクズだとわかっているならむしろ下手に他人……それも殺し合いを止めようとする人の手に渡らないようにするべく没収しておくはずだ。

「むしろ逆か……あえて没収しなかった……待てよ、それはつまり……」

はやてはプレシアはあえてキングの携帯電話を没収しなかった、もしくはそのまま支給したと考えた。どちらなのかは判断できないが重要なのは意図的に携帯電話を持たせた事である。
それはつまり、キングならば携帯電話を有用に利用してプレシアが望む展開にもっていってくれると判断したからであろう。
プレシアにとって望む展開……無論、殺し合いの激化である。

126 :Hayate the combat commander ◆7pf62HiyTE :2008/11/27(木) 21:07:38 ID:pHdbUD7X

「プレシアはキングに殺し合いを激しくさせるように仕向けさせたわけやな……」

プレシアはキングに殺し合いを促進させる役割を与えたのだとはやては考えた。
とはいえ、キングがプレシアの手下というわけではないだろう。本当にプレシアの味方であるなら自分に支給品の殆どを与えたりしないはずだからだ。
たまたまキングの行動方針がプレシアの目的にとって都合が良かったからだろう。と、ここではやてはキングが言ったある言葉を思い出す。

『全部目茶苦茶にするのさ。このプレシアのふざけたバトルファイトも、ここに来た仮面ライダー達も、全部ね』

思えばあの言葉がキングの性格を示していたのだろう。他人から強要された殺し合いも、無償で戦う戦士達も同じ感覚で無茶苦茶にするなど普通の人は考えない。
恐らくキングは自分が気に入らない物を壊して楽しむという悪趣味極まりない性格なのだろう。

「待てよ……」

ここまで考えてはやてはある事を確信する。

「私とヴィータがいらん戦いをする羽目になったんは……全部アイツの仕業やったんやな……キング……」

少し前からある程度疑心を持っていたが、自分とヴィータが戦う事になったのはキングの仕掛けだと断定した。
考えても見れば暖かい家族なんてキングの視点から見れば壊し甲斐のある玩具であろう。
勿論、ここにいるヴィータが本当の家族ではないことは既にわかっているわけだがそれは問題ではないだろう。家族同士を戦わせる真似をしたキングを許す事などはやてに出来るわけがない。

「キング……こないな事して只で済むと思うな……生きて再び出会ったなら絶対に殺す……!」

はやてはキングを認識を改める。キングは只のクズではなく、プレシアが殺し合いを促進させる為に手を貸している参加者であると。
そう、今後の目的に置いて最大の障害となるだろうと。勿論、これらの推測が取り越し苦労であるという可能性は無いとは言えない。
だが、キングの存在は今後も脱出の障害となる事は確実だろうし、家族同士を戦わせる真似をした奴をはやては許すつもりなど無い。
優しく丁寧になんて温く済ませるつもりなど無い。残虐に無惨にこれまでの行動を後悔させた上で殺さねばならない……はやてはそう考えていた。

もっとも、怒りや憎しみだけに囚われるつもりはない。キングへの報復など二の次、優先すべき事ではない事はわかっている。
あくまでも本当の家族を助ける為プレシアの技術を手に入れる事である。その為、冷静にキングの行動を思い返す。

「確か携帯ばっか眺めてたな……もしや……」

はやてはキングが携帯画面をよく眺めていた事から、携帯電話にははやても知らない重大な機能か秘密があるという可能性に思い当たった。

「失敗やったな……携帯のチェックもやっておくべきやった……」

はやては携帯電話の確認を怠ったミスを悔やんだ。もしかしたらプレシアからのメッセージが仕込まれていたかもしれないのだ。
だが、いつまでも悔やむつもりはない。次に出会った時に携帯を奪って確認すれば良いだけの話だからだ。

「何にせよ、みんなには伝えておくべきやな……」

そして、はやては再び動き出す。
これまでの状況からはやては他の参加者よりも出遅れていると実感していた。死亡者として伝えられたのは13人……つまり、それだけの出会いと戦いが起こったという事だ。
そして、その中では恐らく既に脱出に向け幾つかのチームができあがっているだろう。
だが、自分はどうだろうか?自分が出会ったのはキング、ヴィータ、赤トカゲだけである。それもキングに振り回されたが為に得た物など殆ど無い。
さらに、放送でご褒美の話が持ち上がった以上、殺し合いが激化する事は間違いない。
自分と同じ様にそれを嘘だと考えられれば良いだろうが、状況から見てそこまで思案が巡る者など殆どいないはずだ。
となると、急がなければならないだろう。早くしなければ貴重な戦力が次から次へと失われてしまう。そうなれば家族達を助ける目的の達成が遠のいてしまう。

127 :Hayate the combat commander ◆7pf62HiyTE :2008/11/27(木) 21:10:18 ID:pHdbUD7X

当面の目的は戦力の確保……そして最優先に合流すべきはヴィータ……ではなくもう1人の自分である。
何故か?ヴィータを仲間に加える為には関係の修復が必要となる。恐らくそれは容易な事ではない。何故なら自分は偽物だと認識されているからだ。
では、ヴィータのいう本物がいるならばどうだろうか?彼女の仲間になるのは間違いない。
つまり……最優先でもう1人の「八神はやて」と合流すれば、他の守護騎士も容易に仲間になるということである。

とはいえ、それは容易な事ではないだろう。ヴィータと合流するにせよもう1人の自分と合流するにせよ、彼女達の場所は全くわからない。
ヴィータと別れて数時間……既に遠くに行っただろうからまともな方法では追いつけない。
もう1人の自分に至っては何処にいるのか皆目見当も付かない。

それにもう1つやっておきたい事もある。それは図書館の調査である。禁止エリアが施設を避けていて、地上本部に仕掛けがあった事から他の施設にも何かある可能性は高い。
何があるにせよ、それを把握する事は損にはならないはずだ。

だが、図書館の調査には恐らく時間がかかる……何も見つからない可能性もある以上、その時間を無駄にする事は許されない……
と、はやてはキングの最後の支給品である封筒の中身を見る。

「これしか無いやろな……」

はやては意を決して図書館のカウンター内に向かった。そこにはパソコンや電話が置かれている。はやてはパソコンと電話に触れてそれが生きている事を確認する。
勿論、電話を使って自分やなのは、フェイトの携帯にかけてみたが、当然繋がるわけがないことを確認した。
そしてはやてはパソコンの前に座りメールソフトを立ち上げる。

「予想通りこいつは使えるみたいやな……」

そして、メールを打ち始める。
メールの中身として自身が持っている情報を記す。内容としては、

各施設には仕掛けがあるはずなので調べて欲しい。
地上本部には仲間を散り散りにさせる罠がある。
携帯を持つ少年キングには要注意して欲しい。
放送の内容を良く思い出して考えて欲しい。

以上の内容を組み込んだ上でメールの文章を纏めていく。
ご褒美の嘘と主催者には協力者がいる事についてはハッキリとは記さず放送の内容から推測するようにし向ける。さらにキングの情報も要注意人物である程度に留める。
何故か?メールソフトが生きているという事は当然利用出来るはずだろうが、下手に殺し合いを止めようとする者同士で連絡を取られても困るのは間違いない。
その為、これらの情報はプレシアに筒抜けとなる可能性が高い。だからこそ、核心に触れる情報は記さず殺し合いに乗った者、殺し合いを止める者、どちらの側でも有用となるように文章を書く。
そして文の最後には「月村すずかの友人」と書いて文を〆る。
何故か?それは仲間達に確実に情報を届ける為である。
情報というものは伝えたい人物に伝えられなければ意味を持たない。そう、信用されなければ意味を持たないのだ。出所不明の情報など誰が信じる?誰も信じないだろう。
かといって自身の名前を出す?下手をすれば自分が危険にさらされるし、偽名と思われればそれで終わりだ。
では、最低でも伝えたい人が仲間からの情報だと判別出来ればいいのではないか?確かにそれならば確実に伝えられる。
しかし機動六課の部隊長としたのでは自分の名前を書くのと大差はない。そもそも、参加者の殆どがそれは知っているはずだからだ。
そこで、はやてがとった手段は「月村すずかの友人」と名乗った事である。
すずかはなのは、アリサにとって十年来の親友であり、フェイトもまた彼女の友人である。そしてはやてにとっても今いるこの図書館で出会った友人であった。
さて、この事実を知る者は参加者の内でどれぐらいいるだろうか?なのは、フェイト、はやて、ユーノ、クロノ、守護騎士達ぐらいだろう。
つまり……彼らがメールを見たならば確実になのは、フェイト、はやての内の誰かからのメッセージだと察してくれるはずなのだ。
では、他の参加者がなりすます可能性はあるだろうか?恐らく低いはずだ。参加者名簿にすずかの名前はなかった……つまり彼女の名前はなのは達から聞き出すしかないはずだ。
だが、わざわざ参加者ではない人物の情報を晒すなんて事はしないだろう。参加者にしても必要のない情報を知りたいとは思わないからだ。故にすずかの名前を出したのであった。

128 :Hayate the combat commander ◆7pf62HiyTE :2008/11/27(木) 21:12:15 ID:pHdbUD7X

さて、メールが書き上がったが問題は相手先のアドレスである。
残念な事にメールソフトのアドレス帳には何処のアドレスも無かった。安易に使われるのを避ける為だろう。

だが、ここでキングの最後の支給品である封筒が重要となってくる。その中には紙だけが入っていた。
そして紙には30以上もの約10桁の番号とアドレスだけが書かれていた。
一見すると何が何だかわからないが、はやては約10桁の番号とアドレス、そして30以上もの数字から何を意味するのかを突き止めた。
それは地図に表記されている主要施設の電話番号及びメールアドレスである。
何故か?アドレスは明らかにメールアドレスを意味している為、そこに疑問は感じない。
数字の方は全て約10桁でなおかつ全て0から始まっていたのだ。つまりこれは電話番号を意味している。
そして30以上の数字……これは地図に明記されている施設の総数に非常に近い。
勿論、廃墟に電話やパソコンがあるわけがないが、恐らくそれ以外の施設には電話とパソコンがあるのだろう。
この紙に書かれている数字とアドレスはそれを示しているとはやては結論づけた。

だが、これで思い通りに連絡ができるといえばそうではない。
紙には電話番号とメールアドレスしか書かれていないのだ。そう、どの番号やアドレスがどの施設に繋がるのかは全くわからないのだ。
電話番号とアドレスを確認したが流石にそれだけで場所を特定出来るようにはなっていない。

しかし、はやてはメールを送信する……その紙に書かれているアドレス全てに同じ内容のメールを送信したのである。
勿論、メールをちゃんと受け取ってもらえるという保証は何処にもない。
だが、もし誰かがメールに気付いて情報を受け取ってもらえればその人物にその施設調べを任せる事も出来るし、地上本部の罠にも気付いてもらえる。
更に言えば、キングに対しても警戒してもらえるだろうし、放送の内容を思い返してもらえれば自分と同じ推測に至ってもらえるかも知れない。
そして受け取った相手がメールソフトの返信機能を利用してくれれば、相手の持つ情報を自分が手に入れる事が出来る。
この状況をひっくり返す手段としては悪くないだろう。恐らく返信には時間がかかるだろうがその時間を利用して自分が図書館を調べればいい。
更に幸か不幸かアドレスだけではどの施設から送信されたのかは不明……つまり、殺し合いに乗っている者が読んだ所で自分の位置を悟られる可能性は低い。
勿論、逆探知という手法もあるだろうが、ここに来るまでには時間がかかるはずだ。逃げられる可能性が高いのをわざわざ殺しにやって来る必要はない。

「後は上手く受け取ってもらえるかどうかやな……ん、メールが来とるな」

と、1通のメールを受信する。それはつい先程自分が送ったメールであった。当然であろう、アドレスの中には図書館のアドレスがあるのだからそこに送れば図書館に送信されるのは道理である。
ちなみに、元々図書館のメールアドレス自体はメール作成の段階でわかっていたが、確実に機能するかどうかの確認の為図書館にも送っていたのである。

はやては思案する、次にどうするのかを……

方針は2つ……
1つは図書館にある仕掛けの調査で、もう1つは電話をかける事である。
電話を使う事で上手くいけば他の参加者との接触が出来、上手く情報交換ができるはずである。恐らく何人かの参加者は施設を拠点にしているはずだからやってみる価値は十分にある。
だが、問題がある。前述のようにどの番号がどの施設に繋がるかは不明……そう、上手く狙った所に連絡が出来ないのだ。
メールと同じ様に手当たり次第に電話をかけるという手段もあるが、メールと違い多大なリスクを伴う。
何故なら、メールの場合は送信から受信にはどうしてもタイムラグが発生する。
つまり、殺し合いに乗った者が受け、こちらの場所を突き止めたとしてもとしてもこの場に来るまでには時間がかかるはずなのだ。
だが、電話の場合はそうはいかない。ダイレクトにこちらの位置を知らせてしまう事になる。
もし、電話先が1キロ北にある学校でそこに殺し合いに乗っている者がいて、自分が図書館にいる事が知られてしまえば逃げる時間は殆ど無くなってしまう。
そうなれば自分が生き残る事は難しいだろう。
だが、上手く殺し合いを止めるグループと接触する事が出来れば大きな力を得る事ができるはずなのだ。
上手くいけばもう1人のはやてやヴィータ達とも接触出来るかも知れない。試してみる価値はあるだろう。

129 :Hayate the combat commander ◆7pf62HiyTE :2008/11/27(木) 21:13:40 ID:pHdbUD7X

「どうしたものかな……」

はやては電話の前に立ち番号とアドレスの書かれた紙を見つめていた。

【1日目 朝】
【現在地 E-4 図書館】
【八神はやて(sts)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】健康
【装備】ツインブレイズ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2、ランダム支給品1〜3個(武器では無い) 、主要施設電話番号&アドレスメモ@オリジナル、医務室で手に入れた薬品(消毒薬、鎮痛剤、解熱剤、包帯等)
【思考】
 基本 プレシアの持っている技術を手に入れる
 1.図書館を調べるか、電話をかけるか……
 2.ある程度時間が経ったらメールの返信を確かめる
 3.もう1人の「八神はやて」を探し、その後他の守護騎士を戦力に加える
 4.キングの危険性を他の参加者に伝え彼を排除する。もし自分が再会したならば確実に殺す
 5.首輪を解除出来る人を探す
 6.プレシア達に対抗する戦力の確保
 7.以上の道のりを邪魔する存在の排除
 【備考】
 ※参戦時期は第一話でなのは、フェイトと口喧嘩した後です
 ※名簿を確認しました
 ※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだという考えに行き着きました
 ※ヴィータ達守護騎士に優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています
 ※キングに対する認識を改めました。プレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています。同時に携帯にも何かあると思っています
 ※ヴィータと戦う事になったのはキングが原因だと断定しました。その事を許すつもりはありません
 ※転移装置を、参加者を分散させる為の罠だと勘違いしています
 ※自分の知り合いの殆どは違う世界から呼び出されていると考えています
 ※放送でのアリサ復活は嘘だと判断しました。現状蘇生させる力はないと考えています
 ※プレシアの目的はアリシア復活で、その為には普通の死ではなく殺し合いによる死が必要だと考えています。
 ※プレシアには他にも協力者がいると考えています。具体的には並行世界を含めて闇の書事件やJS事件関係者がいると考えています
 ※施設には何かしらの仕掛けが施されている可能性があると考えています。
 ※キングのデイパックの中身を全て自分のデイパックに移しました。キングのデイパックも折り畳んで自分のデイパックに入れています
 ※図書館のメールアドレスを把握しました
 
【共通の備考】
 ※1日目朝、図書館のパソコンから主要施設電話番号&アドレスメモに書かれた全てのアドレスに向けメールが送信されました
  『各施設仕掛け調査』、『地上本部の罠』、『キングへの警戒』、『放送内容の反覆』
  以上に関する内容が記されておりメールの最後には『月村すずかの友人』と書かれています

【主要施設電話番号&アドレスメモ@オリジナル】
 地図上に記されている施設の電話番号とパソコンのメールアドレスだけが書かれた紙
 電話番号とアドレス以外の文字情報は一切無い為、どの番号やアドレスがどの施設に繋がるかは全く不明
 また、番号やアドレスから施設を推測する事はまず不可能
 当然のことだが電話やパソコンの無い施設の番号やアドレスは書かれていない

130 : ◆7pf62HiyTE :2008/11/27(木) 21:22:40 ID:pHdbUD7X
投下完了。

反目氏のつかさ分と同じ様に電話関係のネタを出してしまいました。(反目氏は施設以外、自分は施設の)
ちなみにSS見てわかるように何処が何処に繋がるのかは全くわかりません。

なお、仮投下の段階ではキングを単純に要注意人物程度に認識改める程度だったんですが、修正していく内にキングを敵視する風になってしまいました。

サブタイトルの元ネタは「ハヤテのごとく! Hayate the combat butler」からです。

131 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 23:24:02 ID:J1Ml8uiv
投下乙です。
はやてすげぇwwwっていうか黒いwww
はやてが送ったメールはどう影響するのか……GJでした

132 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/27(木) 23:45:54 ID:sqjWrBRZ
投下乙であります。
はやての考察が半端ないw絶対このはやて本編以上のスペックだ
さすが家族の命がかかっているだけあって凄味が違いすぎる
さてメール見る人は誰になるんだろうか

133 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/12/02(火) 18:16:38 ID:3XI+zJwd
セフィロス、はやて(A's)、アンジール分を投下します

134 :月蝕 ◆9L.gxDzakI :2008/12/02(火) 18:17:31 ID:3XI+zJwd
 ――俺には故郷がなかった。

 生まれてきたその瞬間から、俺には既に母がいなかった。
 同胞たるジェノバの話ではない。俺をその腹に孕み、産み落とした人間の母親の話だ。
 ライフストリームの叡智を受けた今でも、それが何者なのかは分からない。
 己が血族の使命はおろか、生きる術すらも知らぬ幼き日。
 既にその瞬間から、俺は母の愛を知らずに生きてきた。
 親代わりがいなかったわけではない。俺を育てた神羅カンパニーの中に、1人俺を可愛がった男がいた。
 ジェノバ・プロジェクト責任者、ガスト・ファミレス。
 かつてジェノバを古代種セトラと誤認し、後に真なる古代種エアリス・ゲインブールの父親となった男だ。
 今にしてみれば、あの男が俺に向けた寵愛も、俺がプロジェクトの産物であったが故のものかもしれない。
 ガストから見れば、決して自身との血縁はなくとも、自身の研究の末に産まれた子供であったのだろう。
 だが、奴がいなければ、俺は人間として生まれることができたはずだ。
 人間の仲間達と共に生きる道を選び、ジェノバの孤独に苛まれることもなかったはずだ。
 そのくせあの男は、この俺を生み出しておきながら、身勝手に尻尾を巻いたのだ。
 自分よりも遥かに劣る、凡庸な宝条に殺された。奴にはお似合いな結末だ。

 かつては俺にも、友と呼べる存在がいた。
 アンジール・ヒューレー、ジェネシス・ラプソードス。バノーラ村出身の、幼馴染の2人組だ。
 神羅お抱えの特殊部隊「ソルジャー」に所属していた、俺と同じクラス1st。
 実力も年齢も拮抗していたこともあり、打ち解けるにはさほど時間もかからなかった。
 2nd達の留守中にトレーニングルームに忍び込んでは、3人でよくふざけ合った。
 他人と積極的に関わろうともせず、常に孤独の中にあった俺が、唯一心を許した2人の仲間。
 だが、そんなささやかな幸福にも、破綻の時が訪れる。
 俺とは異なるジェノバ・プロジェクトの元に生まれたジェネシスが、自らの正体に気付いたのだ。
 ジェネシスは同族たるアンジールを連れて神羅を出奔。不完全体たる自身の救済を求め、俺達に反旗を翻した。
 ギリギリまでジェネシスを止めようとしていたアンジールも、後輩ザックス・フェアとの戦いで死亡。
 唯一の友は互いに俺の元を離れ、俺の心は再び孤独に閉ざされた。

 母を失い、親代わりを失い、親友までも失った。
 おおよそ考えられる全ての仲間を失った俺は、遂に人間社会そのものから、異物の烙印を刻まれる。
 5年前のニブルヘイム事件。「俺」にとっては、「私」への新生の日だ。
 遂に俺はその瞬間、自らの生まれを知ることになる。
 ジェノバの遺伝子を受け継ぎし、人とは異なる理の下に生まれた、人外の魔物。
 それが最強のソルジャーと謳われた、英雄セフィロスの正体だった。並の人間が敵わぬわけだ。
 頼れる者も、すがれる者もいなかった。いよいよ俺は、真なる意味で孤独へと堕ちた。
 あの時、ジェネシスやアンジールが俺と共に在ったならば。未だ名も知らぬ人間の母がいたならば。
 しかし、俺には何もない。あるのは空虚な名声のみ。
 轟々と渦巻く俺の心の冷たい闇が、より深きジェノバの暗黒へと溶ける道を選ぶのに、さほど時間はかからなかった。

 クラウド・ストライフという男がいた。
 アンジールの後輩たるザックスの、更に弟分に当たる男。
 初めは取るに足らない奴だった。おおよそ力も信念もない、気の弱いだけの未熟者。
 一体誰に予想できただろう。あの何の取り得もない餓鬼が、この俺を滅ぼす唯一の存在になるなどと。
 ジェノバの意志にも喰われかけた、愚かで脆弱なあの男は、やがて最強の戦士へと姿を変えた。
 星を支配せんとするこの俺と、星を守り抜かんとするクラウド。
 いつしか俺と奴は、ジェノバと人の双極となった。この俺の心を動かしうる、唯一無二の好敵手となった。
 何物であろうとも及ばない。何物であろうとも並べない。
 神羅も、アンジールも、ザックスも、ジェネシスも、あの男は超えられない。
 奴のみが俺を殺すことができる。奴のみが俺を滅ぼすことができる。
 いかなる愉悦であろうとも、あの男にはかなわない。
 クラウド。俺が捨てた英雄の名を継ぎ、人類の救い手となった男。
 俺を終わらせることのできる者。俺を超えることのできる者。
 故に、俺が全身全霊を持って戦い、この手で制すに値する者。

135 :月蝕 ◆9L.gxDzakI :2008/12/02(火) 18:19:02 ID:3XI+zJwd
 ミッドチルダという世界があった。
 クラウドの剣が俺を裂き、輪廻の流れより弾き出した。その先にあったのがミッドの大地だ。
 魔晄都市ミッドガルにも似た名前。だが、その世界で俺を待つのは、あの冷たい街の孤独ではなかった。
 奴らは知らない。俺が英雄であったことも、俺が魔物の身体を持つことも。
 いいや、それを知ってもなお、奴らは俺を受け入れた。
 若きエース、高町なのはとフェイト・T・ハラオウン。それに付き従う4人の教え子達。
 真面目くさいのが気に食わないところだが、その胸に確固たる信念を抱いたクロノ・ハラオウン。
 血気盛んな鉄槌の騎士ヴィータ。世話焼きな湖の騎士シャマル。
 静かな闘志持つ剣の騎士シグナム。寡黙なる盾の守護獣ザフィーラ。
 そして4人の騎士を束ねる、機動六課部隊長――八神はやて。
 友が、できたと思った。
 ジェノバの使命へと目覚め、人と決別したあの日から初めて。
 永遠の孤独とばかり思っていた道を、共に歩む仲間ができた。黒き片翼を預ける場所ができた。
 故郷を持たなかった俺が、初めて、故郷と思えた穏やかな場所。
 皆が居場所を与えてくれた。
 何より、あの茶髪で訛りの強い、底抜けに明るい1人の娘が。

 故に、はやてを守り抜くと誓った。
 三度目に味わう死の瞬間を、初めて幸福で満たしてくれたあの娘を。
 ジェノバでなく、人として生きる場所を、手にするきっかけとなってくれた娘を。
 誰かを守りたいと願うのは、俺にとっても初めてのことだ。
 そうさせるだけのものを、はやては俺に与えてくれた。
 認めてしまえば、あいつは調子に乗るだろう。それはそれで腹が立つから、口に出すことはしない。
 それでも。
 胸に宿した想いに嘘はない。
 故に、彼女を守ることこそが。

 ――今の俺の、すべて。



 八神はやてとセフィロスがいたビルは、それほど高いものでもなかった。
 せいぜい地上5階程度。割合小さなオフィスビル。
 その最上階の一室に、2人は姿を隠していた。
 正確には、1人。気絶しているセフィロスの意思は、その行動には関与していない。
 結果的に彼も隠れる形になったというだけで、実質自ら隠れたのは、はやて1人というわけだ。
(どうして、私はこんなに駄目なんやろ)
 手近な窓から顔を覗かせながら、はやては内心でぽつりと呟く。
 自分が情けなくて仕方なかった。少し前までは、悔しさと申し訳なさのあまり、ぼろぼろ涙を零していた。
 殺し合いを止めること。誰にも悲しい思いをさせないこと。
 かつてリインフォースを喪った、自分のような思いは誰にもさせない。
 この銀髪の男に言い放ち、息を引き取ったシグナムに誓った決意。手にした憑神刀(マハ)はその証。
 その、つもりだった。

136 :月蝕 ◆9L.gxDzakI :2008/12/02(火) 18:20:20 ID:3XI+zJwd
 だが、蓋を開けてみればどうだ。
 一体自分に何ができた。
 そもそもシグナムの死にしても、自分を庇ったが故の結末。
 いいやそもそもそれ以前に、彼女ともっと早く出会えていれば、1人の少女の命を救うこともできた。
 そして今はセフィロスすらも、自分を守るために戦って、こんなにぼろぼろになっている。
 自分はそんなセフィロスを、守ることすらもできなかったというのに。
 戦う力がないわけではなかった。魔力だけは有り余るほどにある。シグナムへの想いの下に目覚めた武器もある。
 それでも、自分はこんなにも、弱い。
 誰も守れず、誰も救えず。
 誰かの影に隠れてばかり、誰かを傷付けてばかり。
(夜天の主、失格かもしれへんな……)
 こんな自分が一体どうして、その名を名乗ることができよう。
 守護騎士達の命を背負う役割を、どうして果たすことができよう。
 シグナムを死なせてしまったというのに。その他多くの人々も、守ることができなかったのに。
 八神はやての胸を彩るのは、絶望。
 夜天に浮かぶ月すらも、照らすことは叶わぬ漆黒の闇。
 最強の天使が心のよりべとした、あの明るくも優しき笑顔は、もはや二度と浮かぶことはないとさえ思えた。
(……?)
 と、不意にはやての視線が、ある一点を捉える。
 すっかり上りきった太陽の光を受けた、眼下に広がるアスファルトの道。
 そこに1つ、動く人影があった。
 筋骨隆々とした肉体を持った、20代後半ほどの男。その手に握り締めるはピストル。
 武器を持っているということは、殺し合いに乗った人なのだろうか。いや、単に襲撃を警戒しているだけとも見える。
 事実、黒髪をオールバックにした頭は、絶えず左右へと振られていた。
 それもよく見れば、微妙にその角度は上向きになっているような――
「!」
 反射的に、顔を引っ込めた。
 窓の下の壁へともたれ、その場にへたり込む。
 どっと冷や汗をかいた。心臓がばくばくと脈打った。
(危なかったぁ……)
 とっさのところで意図を察したはやては、内心で安堵の声を漏らす。
 要するに今の男、ビルにいるであろう人影を探っていたのだ。
 幸いにも、目線は合っていない。こちらを捕捉されたわけではない。これがもう少し遅かったら、一体どうなっていたことか。
「……っ……」
 と、同時に耳を突く声。
 低い男の唸り声に、はやての身体がびくりと震える。
 先ほど周囲を伺っていた、あの男の姿が脳裏に浮かぶ。
 だが、その認識はすぐに間違いだと分かった。今この部屋で聞こえた声には、聞き覚えがあったから。
 見ると、セフィロスの銀糸が揺れている。ゆっくりと、セフィロスの瞼が開かれる。
「セフィロスさん!」
 満身創痍のパートナーの覚醒と見るや否や、はやては男の元へと駆け寄っていた。
「……ここはどこだ」
「セフィロスさんが連れてきてくれたビルの、一番上の階です」
 きょろきょろ周囲を探るセフィロスへと、はやてが説明する。
 セフィロスの反応も当然だ。無我夢中でビルの屋上までたどり着いたと思ったら、次の瞬間には室内にいたのだから。
 ここが地上何階か、ということまでは、まだ調べてはいないらしい。
 しかし、窓の外の風景を見れば、さほど高いビルではないということは理解できた。

137 :月蝕 ◆9L.gxDzakI :2008/12/02(火) 18:21:34 ID:3XI+zJwd
「……ほんまにごめんなさい、セフィロスさん……」
 ぽつり、と。
 俯きながら呟くはやての表情には、いつもの力は見られない。
 後悔、自責、自己嫌悪。ありとあらゆる感情に、押しつぶされた沈痛な面持ち。
「私のわがままのせいで、こんなにぼろぼろになって……私も、ただ見とるだけで、何もできなくて……」
 この状況を作ったのは自分の責任だ。
 呻きにも似た、消え入るようなセフィロスの声が、その全てを物語っている。
 赤きコートの魔人・アーカードとの戦いによって、極限まで酷使されたずたぼろの身体。
 殴打を受けたことによる外傷も、過剰に魔力を消耗したことによる衰弱も、全てがセフィロスの身体を蝕んでいる。
 自分のわがままに付き合わせたせいで。そのくせ自分が何もしなかったせいで。
 この冷たくも、どこか不器用な優しさを垣間見せる青年は、こんなにも傷ついてしまったのだ。
「……お前のせいじゃない」
「でもっ!」
「お前が望むことと、俺の望むことが一致しただけだ……互いに望んでいるのならば、それはわがままとは言わない」
 故に、この状況は自業自得だと。
 ただ自分に、あの戦いを制するだけの力量がなかったせいだと。
 蚊の鳴くような声で、セフィロスが言った。
「……セフィロスさん……」
 それきり、はやては沈黙する。
 それでも彼女の顔色に、光が戻ったわけではない。
 ああは言われたが、それで納得できる話ではない。
 重苦しい沈黙が、ビルの一室を包み込む。明かりすらつかぬ薄暗さもまた、その空気を助長させていた。
「……それは?」
 静寂を切り裂く、セフィロスの声。
 その青く輝く双眸は、はやての方を向いてはいなかった。彼女もまたそれに気付き、視線の方へと首を向ける。
 見れば、そう遠くない背後に、転がっている物があった。あまりにも小さすぎて、今まで気付かなかったらしい。
 摘み上げてみると、それが小さな巾着袋であることが分かる。
 袋が袋だけで放置されているはずがない。袋とは何かを入れるためのものだ。
 口を開き、中身を取り出す。入っていたのは、緑色の豆が2粒きり。
「豆?」
「俺には薬草の類にも見えるがな」
 怪訝そうな表情を浮かべるはやてに対し、冷静にセフィロスが呟いた。
 彼ら2人がこれまで見てきた支給品は、武器として使える憑神刀やストラーダ、移動手段のバイクを動かすトライアクセラーなど。
 要するにその全てが、この殺し合いにおいて、何らかの役に立つものだったのである。
 実際にはただの結婚指輪や激辛カレーなど、まるで使えないハズレ支給品もあったのだが、そんなことは知る由もなかった。
 ならばこの豆にも、何らかの意味があってもおかしくない。
 そして、そうした食料品の用法として真っ先に浮かぶのは、身体に何らかの作用を及ぼす、漢方薬のようなもの。
「せやったら……これ食べたら、セフィロスさんも少しは楽になるんかな?」
「どうだかな。気休めにしかならないかもしれんが――」



「――随分と手ひどくやられたな、セフィロス」



 新たな声があった。
 セフィロスの言葉を遮る、新たな第三者の声が。
 反射的に、両者の視線がそちらへと向かう。
 はやてにとっては、聞き覚えのない未知なる声の。セフィロスにとっては、幾度となく聞かされた覚えのある声の。
 その声の主たる、黒髪の男の方へと。
 鋼のごとく鍛え上げられた右手が、銀色の銃口を構えていた。

138 :月蝕 ◆9L.gxDzakI :2008/12/02(火) 18:23:09 ID:3XI+zJwd


 当てもなく彷徨っていたアンジール・ヒューレーが、八神はやての姿を見つけたのは、ほんの偶然だった。
 守り抜くと誓ったはずだった、12人の家族の1人――ナンバーズ・ディエチの死。
 一度は信じた、もう1人の赤コートの男――ヴァッシュ・ザ・スタンピードの裏切り。
 それらがもたらす怒りと悲しみの最中、全ての敵を薙ぎ払うことを誓った剣士。
 屈強なる鋼鉄の胸板の下で、轟々と渦巻く激情と共に、獲物を探していた最中のことだった。
 道の左右に立ち並ぶビルを見ていた時、ふと、視界の隅で、茶色い何かが動いたのである。
 気付いた時には、それは既に姿を消していた。目線が合う前に、その茶色い頭は引っ込んでいた。
 気のせいかもしれない。だが、他に人の気配もない。であれば、確かめておくに越したことはない。
 ビル自体もそう高くなかったこともあり、アンジールはその中へと、足を踏み入れていた。
 そして最上階へと上り、人の声のする方へと向かっていった結果が、この状況だ。
「……何故生きている、アンジール」
 探していた茶髪は、何やら奇妙な剣を持っているだけの幼い娘だったが、もう片方が大当たりだった。
 漆黒のコートを身に纏いし、銀の長髪を持った秀麗なる剣士――セフィロス。
 かつての親友にして、最大の敵。他ならぬアンジール自身が、最も警戒していた存在が、ここにいる。
 しかも、その身には無数の傷が刻まれており、無様に床に座り込んでいた。
 何ゆえ彼がここまでぼろぼろになっていたのかは知らないが、抹殺するのならば、チャンスは今をおいて他になかった。
「当然だろう。放送で名前を呼ばれていなかったのだからな」
 微かに驚いたような表情を見せたセフィロスへと、言い放つ。
「お前は俺が殺したはずだ」
「殺した……? 確かに一度死んでいるが、お前に殺された覚えはないぞ」
 返ってきた鋭い視線。同時にかけられた、要領を得ない言葉に言い返す。
 傍らの娘が、一瞬、ぎょっとしたような表情を浮かべた。
 見覚えはないが、どうやらセフィロスの仲間らしい。自分達以外には心を開かなかったあいつにしては、珍しいこともあるものだ。
「……まぁいい」
 言いながら、アンジールは銃身を握る手へと力を込め直した。
 殺した、というのがどうにも気になるが、特に気にするほどのことではないだろう。
 何故なら、どうせセフィロスから答えは得られないからだ。死人に口なし、と言うくらいなのだから。
「俺を殺す気なんだな」
 視線の先では、セフィロスの青い瞳がこちらを睨んでいる。
 そう、この目だ。
 ソルジャーの中でも、最強と謳われた英雄の目。相手を視殺せんとするほどの、切っ先のごとき鋭利な眼光。
 身体は砕け散る寸前となろうとも、その殺意には全く衰えがない。常人であれば視線だけで呑み込まれる、圧倒的なプレッシャー。
「分かりきっているだろう。お前は俺の家族を傷付けた。俺達の敵となる道を選んだ。なら、勢いこうならざるを得ない」
「そんな! そんなのあかんですよ!」
 刹那、あの茶髪の少女の声が割って入った。
 戦闘機人の妹達よりも、更に幼い印象を受ける娘だ。一番外見年齢の低いチンクと、さほど変わらないのではないのだろうか。
 こんな娘さえも撃たねばならないのか。一瞬、言い知れぬ感慨が湧き上がる。
 だが、仕方のないことだ。これ以上、ディエチのような犠牲を出さないためには、全ての芽は摘み取らなければならない。
「セフィロスさんと貴方に、何があったのかは知りません……でもっ! 
 だからって、こんな殺し合いに乗ってええはずがないやないですか! そんなん、その家族の人かて喜ばへんですよ!」
「確かに、正論だな」
 それはあのヴァッシュも言っていた。
 家族を救うために、他者の命を奪う。そんな犠牲の上に生かされても、その人は決して喜びはしないと。
「だが、俺もあの子らも兵士(ソルジャー)だ。人を殺すことには……とっくに、慣れきってしまったんだよ」
 故に、同じ言葉で返す。
 今更そんなことを気にしていられるような、そんな身分ではないのだと。
 戦いのみを生業としてきた自分には、他の手段など思いつかない。
「さらばだ、セフィロス」
 かちり、と。
 アイボリーの引き金が、ゆっくりと引き絞られた。

139 :月蝕 ◆9L.gxDzakI :2008/12/02(火) 18:24:08 ID:3XI+zJwd
 
 轟。

 鳴り響く銃声。鼻を突く火薬の臭い。
 ソルジャーらしくない銃器で葬るのが、かつての親友相手の餞にしては、無粋であったかもしれない。
「せめてバスターソードでもあれば、な」
 衝撃に。恐らく、心臓を狙う痛覚に。
 瞳を大きく見開いたセフィロスへと、呟いた。

 ――おかしい。

 不意にアンジールを、奇妙な違和感が襲った。
 何故セフィロスは倒れない。
 何故座り込んだ姿勢のまま、微動だにせずにそこにいる。
 否、そもそも奴の目は何を見ている。
 瞠目する奴の視線は、明らかに自分には向けられていない。
 銃弾に撃ち抜かれたというのに、一体何を見る必要がある。
 いいや、何故見るという動作を続けられる。
 とっくに奴は絶命しているのに。
 視界の中には既に、真紅の鮮血が舞っているというのに。

 いや。

 違う。

 これはセフィロスの血ではない。
 セフィロスには弾丸が当たってはいない。
 この血は――



「――はやてっ!」



 悲痛な叫びが、轟いた。

140 :月蝕 ◆9L.gxDzakI :2008/12/02(火) 18:25:27 ID:3XI+zJwd


 いたた……
 今まで当たったことなんてあらへんかったけど、やっぱり鉄砲玉って、当たると痛いんやなぁ。
 って、当たった経験があったら、生きとるはずもないか。

「……何故だ……何故、こんな馬鹿な真似をしたっ!」

 あ……セフィロスさんの声や。
 なんや、冷たそうに振舞っとっても、やっぱり私のこと、心配してくれとったんやな。
 いっつも落ち着いとったセフィロスさんのこんな声、初めて聞いたわ。

「へへ……ごめんな、セフィロスさん……これしか、思いつかへんかった」

 ほんまにごめんな、セフィロスさん。
 でもこれ以上、誰の役にも立てずにおるっちゅうんは、どうしても嫌やったんよ。
 おっきな理想だけ言って、何もかも他のみんなに頼りっきりで。
 それでシグナムも死んでもうたし、セフィロスさんかて、そんなぼろぼろになってもうた。
 みんなが私のため私のため言うて、危ないことして傷ついて。そんなん、もう見たくなかったんよ。
 せやから、セフィロスさんが今、その人に撃たれるっちゅう時に、咄嗟に身体が動いとった。
 ……ほんま、駄目駄目やなぁ、私。
 何だかんだ言って、結局自分が悲しゅうなりたくなかったから、セフィロスさん庇ったようなもんやないの。
 ……まぁ、ええか……セフィロスさん、死なへんかったしね。

「セフィロス、さん……ちゃんと、生き残ってよ……? 大事な人……管理局に、おるんやろ……?」

 それの人がどんな人かっちゅうのは、もう少しだけ聞きたかったんやけどなぁ。
 仮面被ってるみたいなポーカーフェイスのセフィロスさんを振り向かせるような人なんて、ちょっと嫉妬してまうやないの。
 きっと、すっごくええ人なんやろうな。
 セフィロスさんは、ちょっとだけ迷惑そうにもしとったけど、何だかんだで大事に思っとったみたいやしな。

「……死ぬな……」

 ……ああ、にしても痛いなぁ。
 心臓、当たっとるかもしれんなぁ。
 ……このまま……死んでまうんやろうなぁ。

「はやて……死ぬなァッ!」

 ごめんな、シグナム。ヴィータも、シャマルも、ザフィーラも。なのはちゃんやフェイトちゃんも。
 セフィロスさんも、本当にごめんな。
 私、もうあかんみたいなんよ。
 私なりに精一杯頑張ったつもりやったんやけど、特に何もでけへんかった。
 みんなと一緒に生き残って、みんなで元の世界に戻って、またみんなで一緒に笑いあいたかったんやけど……私は、ここでリタイアや。

「……えへへ……」

 せかやら、せめてみんなは生きて。
 私の分まで、みんなみんな生き残って。
 私はもう、その中にはいられへんけど、ずっと見てるから。
 みんなのこと、ずっとずっと、見守ってるから。
 天国とか極楽とか、そんなもんはないかもしれへんけど、な。

「初めて……名前で、呼んでくれた……ね……」

141 :月蝕 ◆9L.gxDzakI :2008/12/02(火) 18:26:54 ID:3XI+zJwd
 ごめんな。思ったより、ずっと早くなってしもた。





 今、そっちにいくよ――リインフォース。





【八神はやて@仮面ライダーリリカル龍騎 死亡】



 ことり、と
 力の抜けた手が、音を立てて床に落ちる。
 剣の姿を保てなくなった憑神刀が、床を滑って自分の足元へと転がる。
 はやての小さな身体が事切れる様を、セフィロスは呆然と見つめていた。
 一瞬のことだった。
 アンジールが引き金を引くとほぼ同時に、突然はやてが、自分と彼の間に立ちはだかったのだ。
 セフィロスを貫くはずだった鉛弾は、彼に一切の傷をつけることなく終わった。
 だが、一方でその弾丸が、はやての命を奪ったのだ。
 何が「何もできなくて」だ。
 何もできなかったのは自分の方だ。
 自分が弱かったためにこんな体たらくを晒し、肝心のところで、はやてを守ることができなかった。
 はやては逝った。あの雪の日の時と、同じ言葉を最期に遺して。
「……違う……違うんだ……」
 アンジールにすらも聞こえない声で、セフィロスは呟いていた。
 大事な人は、お前だった。
 俺が再会を誓ったのは、八神はやてだったんだ。
 そして姿形は微妙に違っても、お前もまた、紛れもない八神はやてだった。
 喪いたくなかったのはお前だった。
 それも喪われてしまったんだ。
 セフィロスの胸中を、黒々とした闇が覆っていく。
 ジェノバの真実を知った時すらも、遥かに上回る絶望。
 セフィロスはこれまで、大切な人間を失ってばかりだった。
 実の母を。親代わりを。親友を。
 だが、それらは全て、自分の預かり知らぬところで、知らぬ間に消えていった人達ばかり。
 大切な人間を、目の前で失うことは、彼にとっては初めての経験だった。セフィロスらしからぬ狼狽はその結果だ。
 ――何故はやては死んだ。
 闇が形を変えていく。
 何故死ななければならなかった。
 決まっている。殺されたからだ。
 他ならぬアンジールの手によって殺されたからだ。
 それだけではない。はやてを傷付けたのはこいつだけではない。
 アレックスとかいう男も、仮面ライダーとかいう奴も、アーカードとかいう化け物も。
 この場の全てが、よってたかってはやてを傷付けたのだ。
 憎い。
 はやてに比べれば、何ら心を引かなかった連中が、今はとてつもなく憎い。
 アンジールが。アレックスが。仮面ライダーが。アーカードが。プレシアが。まだ見ぬ全ての人間達が。
 憎くて憎くてたまらない。
 お前達がはやてを傷付けた。
 お前達がはやてを殺した。
 お前達がまた――俺から大切なものを奪ったのだ。

「……ぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお―――ッ!!!!!」

142 :月蝕 ◆9L.gxDzakI :2008/12/02(火) 18:28:16 ID:3XI+zJwd


「一体何だ……何が起こった……!?」
 頬を伝う嫌な汗を感じながら、誰へともなくアンジールが呟いた。
 自分の銃口の前に、突然立ちはだかった少女。
 放たれた弾丸は止まるはずなく、当然彼女へと命中する。死亡は免れない致命傷。
 それが引き起こしたセフィロスの動揺は、彼を知る自分からすれば、到底信じられるものではなかった。
 元々孤独を感じている奴ではあったが、人が死んであれほどまでに取り乱すなどとは、思いもよらなかった。
 そして今、絶叫を上げるセフィロスを包む光がある。
 さながら太陽を直視させられているかのような、とてつもないまでの眩い極光。
 戦闘機人技術を応用した身体は、絶えず絶大な魔力反応を感知している。
 刹那、光が晴れた。
 立っていたのはセフィロスだ。
 携えていたのは、あの紫色の奇妙な剣だ。
 茶髪の少女が持っていた、薔薇の意匠を持った刺突剣。いかなる武具でも比肩し得ぬ、神話の光輝に満ちた宝具。
 その剣が、今、セフィロスの左手に握り締められている。
「お前が殺したんだ」
 怒り狂う阿修羅の図だった。
 全身が粟立つのを感じた。
 向けられるのは極大の殺意。
 動けない。あらゆる修羅場を潜り抜けた、クラス1stのアンジールが。
 これほどの殺気、今までに体感したことはない。あのセフィロスにしても、この全身より滲み出るオーラは異常だ。
 かつてない異形の気配に当てられ、アンジールは戦慄する。
「お前が、俺のはやてを殺したんだ」
 一体こいつに何があったのだ。
 自分が死んでいた間に、何がこいつを変えたのだ。

 “愛の紅雷”!

「ぐあああぁぁぁぁっ!」
 返答は、四肢を襲う強烈な激痛だった。
 セフィロスの剣の切っ先が動き、虚空に真紅が顕現。
 花開いた赤き薔薇が、一斉に殺意の矢を放ったのだ。
 さながら幾千万の剣先が、豪雨となって降り注いだかのような。
 浮遊砲台の苛烈な弾丸を浴びせられ、今度はアンジールが無様に倒れ伏す。
 全く反応できなかった。波濤のごとく押し寄せるプレッシャーが、五体全てを拘束していた。
 眼前のセフィロスは、何やら床から巾着袋のようなものを拾い上げる。
 それを開き、中から豆のような何かを取り出すと、そのまま口に含んだ。
 かり、という音。
 刹那、セフィロスの傷がみるみるうちに癒えていく。
 あれほどまでに身体を苛んでいた外傷が、今ではほとんどかすり傷とすら変わりない。
 完全復活。そう表現してもよかった。
 瞬時に英気を取り戻したセフィロスが、アンジールの目の前に立ちふさがっていた。
 あの目を見ろ。遥か高みより己を見下ろす、妖しき魔晄の瞳を見ろ。
 ミッドガルの民のため、剣を振るう英雄の目からは程遠い。
 さながら破滅の歌を奏でる、恐怖と混乱を引き連れた魔王の目だ。
 これは人間の目ではない。モンスターですらも格が違う。
 セフィロスの口元は――笑っていた。
 その微笑の、何と冷たく残忍なことよ。眼下に広がる屍達を、鼻先で笑い踏みにじる顔。
 涼しい笑みだった。その形はかつてと変わりはなかった。だがそれが発する気配は明らかに違う。

143 :月蝕 ◇9L.gxDzakI(代理投下):2008/12/02(火) 18:44:42 ID:beSqgPjm
「ククク……バスターソードが欲しいか? アンジール」
 物陰に落ちていた何かを、空いていた右手が拾い上げる。
 今までセフィロスの陰に隠れていたそれは、紛れもなく自身の愛剣――バスターソード。
 あいつに支給されていたのか。そんなことを思う余裕すら、既にアンジールにはありはしなかった。
 あらゆる思考は意識から抜け落ち、ただ歩み寄るセフィロスの姿を、食い入るように見つめるのみ。
「が……あああぁぁぁぁぁーッ!」
 ずぶり。
 肉を貫かれる、嫌な音を聞いた。
 幅広の大剣の一撃が、アンジールの腹をぶち抜いたのだ。
 引き抜かれる、重厚な鋼の刃。噴き上がる鮮血が、誇りの剣を真紅へと染めていく。
 返り血の一滴を頬に浴びながらも、なおもセフィロスの残忍な笑みは消えなかった。
 がん、と音を立て、血塗れの剣を床に突き刺す。ついでにアンジールの手元へと、もう1つの豆を放り捨てる。
「追って来い、アンジール」
 言いながら、セフィロスが踵を返した。
 銀色の髪をたなびかせ、漆黒のコートを翻し。少女の亡骸を抱きかかえ、最強のソルジャーが背を向ける。
「お前はただでは殺してやらん。お前にあだなす全てを斬り、全てに苛まれ、痛みと絶望の中で果てるがいい」
 かつ、かつ、かつ、と。
 無慈悲なブーツの音が、遠ざかっていった。
 後に残されたのは、血だまりに横たわるアンジールのみ。
 腹部に刻み込まれた傷は、間違いなく致命傷だ。だが、この豆の力をもってすれば、死に至ることはなくなるだろう。
 要するにアンジールは、命を拾われたのだ。
 かつては同じクラス1stに属していたセフィロスに、明らかに格下として扱われた。
 自尊心を傷付けられたアンジールの目が、セフィロスの消えた入り口を睨む。
 奴の殺意は本物だ。もう奴を止められる者はいない。
 その目に映る何もかもを、有象無象の区別なく、慈悲なく容赦なく斬り捨てるだろう。
 残る2人の、大切な妹達さえも。
 許しはしない。
 そんなことは自分がさせない。自分をここで生かしたことを、いずれ後悔させてやる。
 奴は自分の獲物だ。
「……セェェフィロオオオォォォォ―――スッ!!!」
 惨劇の海の中、1人のソルジャーが絶叫した。


【現在地 F-5 ビルの中】
【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】腹部貫通(致命傷。仙豆で治癒できる程度です) 、頭部打撲(小)、右脚と左肩に銃創、セフィロスへの殺意
【装備】アイボリー(7/10)@Devil never strikers
【道具】支給品一式、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、仙豆@ドラゴンボールZクロス(仮)、
    バスターソード@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:妹達(クアットロ、チンク)を守る。
 1.妹達以外の全てを殺す。特にセフィロスは最優先。
 2.チンクを保護するためにも、スカリエッティのアジトを目指す。
 3.ヴァッシュ、アンデルセンには必ず借りを返す。
【備考】
 ※第七話終了〜第八話、からの参戦です。
 ※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。
  もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
 ※制限に気が付きました。
 ※ヴァッシュ達に騙されたと思っています。
 ※現在地周辺に、はやてのデイパック(基本支給品、ランダム支給品0〜1)が落ちています。

144 :月蝕 ◇9L.gxDzakI(代理投下):2008/12/02(火) 18:47:31 ID:beSqgPjm
 ビルの屋上。
 先刻、はやてを抱えたセフィロスが、決死の逃避の末に舞い降りた場所。
 しかし今、その手に抱えたはやての身体に、既に命の温もりはない。
 鉛弾に潰された心臓は、決して鼓動を続けることはない。
 はやては死んだ。
 セフィロスが最も大切に思い、守り抜くと誓った少女の命は、今日この場所で奪われたのだ。
 こみ上げてくるのは憎悪。
 胸の中にぽっかりと空いた、八神はやてを象りし虚(うろ)。その暗黒より湧き出す憎悪が、全てを殺せと語りかける。
 彼女を殺したのは人間達だ。この殺し合いに集められた人間達だ。
 奴らは性懲りもなく、またお前の大切な存在を奪ったのだ。
 奴らは憎むべき星の人間達と、同じ存在となったのだ。
 殺せ。殺せ。殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。
 ただの1人の生きた痕跡も残さず、全てをことごとく殺しつくせ。
 左手に握られた憑神刀の切っ先が、誘惑するかのごとき妖艶な輝きを放つ。
 かつてははやての手にあった刃。はやての死に呼応し覚醒した巫器(アバター)。
 救済のために目覚めたはやての武器は、今セフィロスの意志のもと、復讐のために再起動している。
 はやてが見れば嘆くだろう。はやてが知れば怒るだろう。
 自分はそんなことのために、セフィロスの命を救ったのではない、と。
 しかし、もうはやては見ることも、知ることすらもできないのだ。死人に意志など残されていないのだ。
「――さぁクラウド、私は剣を手に取ったぞ」
 天を仰ぎ、呟く。
 セフィロスの胸中に残された、最後の存在へと向けて。
 自らの呼び名は、「俺」ではなかった。既にセフィロスは人間ではなかった。
 侵略者の使命のままに、全人類を蹂躙するジェノバへと、その思考のベクトルを変異させたのだ。
「お前は今ここにいない。お前以外に私を消せる者などいない。それでもなお、私の手から人を守るというのなら」
 ばさり、と。
 羽音と共に、顕現。
 右肩より現れし漆黒の片翼が、天に向かって羽ばたいた。
「私を止めてみるがいい。止められるものならば、止めてみせろ」
 静かに。
 片翼の天使が、冷酷な笑みと共に微笑んでいた。

 八神はやてはもういない。セフィロスの心はここにない。
 夜天の空を照らす月は、夜より黒き死の闇に飲まれた。
 銀月のごとき剣士の心は、ジェノバの暗黒へと沈んでいった。
 終わりなき月蝕。
 2つの月は、闇へと消えた。
 後にはただ、終末を謳う、美しくも狂おしき、心無い天使が舞い踊るのみ。
 心せよ。全ての愚かで矮小なる命よ。
 狂える天使の鉄槌が、下される時が来た。

 ――今こそ片翼の天使は、月なき夜天の空に舞う。

145 :月蝕 ◇9L.gxDzakI(代理投下):2008/12/02(火) 18:49:13 ID:beSqgPjm


【現在地 F-5上空】
【セフィロス@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】顔面・腹部に小規模の傷、ジェノバ覚醒、片翼で飛行中
【装備】憑神刀(マハ)@.hack//Lightning
【道具】支給品一式×3、トライアクセラー@マスカレード、ランダム支給品0〜4個
【思考】
 基本:全ての参加者をを皆殺しにする
 1.はやての死体を埋葬する
 2.アンジールは、今はまだ殺さない。ぎりぎりまで生かし、最高の痛みと苦しみを味わわせる。
 3.アーカード、仮面ライダーの娘(=かがみ)、アレックスは優先的に殺す
【備考】
 ※身体にかかった制限を把握しました
 ※アレックスが制限を受けていることを把握しました。また、アレックスはゲームにのってないと判断しました 
 ※参加者同士の記憶の食い違いがあることは把握していますが、特に気にしていません
 ※トライアクセラーで起動するバイク(トライチェイサー@マスカレード)は、立体駐車場に埋もれていると思っています。
  とはいえ、運転はできないので、無理に探すつもりはありません。
 ※「リリカル龍騎」における仮面ライダーの情報を得ました
 ※デスゲームと仮面ライダーの殺し合いに関係があるのではないかと思っています
 ※全ての思考を「ジェノバとしての思考」に切り替えました。
 ※憑神刀のリミッターは外れました。
 ※はやて(A's)の死体を抱きかかえています。

146 :反目のスバル ◇9L.gxDzakI(代理投下):2008/12/02(火) 18:51:22 ID:beSqgPjm
投下終了。遂に覚醒、片翼の天使。
推奨BGMはもちろん「再臨:片翼の天使」(ぉ
セフィロスもジェノバモードへとシフトし、新マーダー3巨頭の誕生です。
……リスタート以降、初めてマジの欝話を書いた気がする。

サブタイ案には、森川(セフィロスの中の人)繋がりで、テッカマンブレード主題歌「永遠の孤独」という案もあったのですが、
色々考えた末に「月蝕」に収まりました。
死亡したはやてと、ダークサイドに堕ちたセフィロスを、それぞれ月にたとえたネーミング。

147 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/02(火) 18:52:55 ID:beSqgPjm
代理投下完了致しました。

148 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/02(火) 20:55:07 ID:1LYk97T7
投下&代理投下乙です。
セフィロスがジェノバ覚醒!なんという悲劇!
はやては終始優しく接していただけにセフィロスの反応も当然か(皮肉だなぁ)
なによりはやての最期のセリフの演出が良い!まさか片翼本編のセリフが来るとは!
さすがは作者自身というところでしょうか
アンジールもソードゲット・覚悟完了でますますやばくなって……!GJです!

149 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/02(火) 20:59:51 ID:T2x/qYDl
投下乙です。
ここではやて退場とは……

セフィロスもマーダー化(しかも憑神刀持ち)、アンジールは今はまだ殺さないって……
いろんな意味で対主催涙目な気がする……。

ところで、デュエルディスクってはやてがそのまま身に着けているって解釈でいいんですよね?

150 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/03(水) 03:32:15 ID:2x9zj8dA
GJでした
ついにはやて退場か……。
もし今のセフィロスがあの真っ黒な大はやてと遭遇したらどうなるんだろう。
はやてのラストの演出で感動の後、セフィロスのかっこよさに痺れました。
それにしてもマーダー側の戦力がどんどん整って行ってるw



大した指摘ではありませんが、少し気になった点が二つほど。
はやての喋り方がいくつか何処の方言でもない言葉になっている個所がありましたので、
そこだけ指摘させて頂きます。

>>138
>「そんな! そんなのあかんですよ!」

>「セフィロスさんと貴方に、何があったのかは知りません……でもっ! 
> だからって、こんな殺し合いに乗ってええはずがないやないですか! そんなん、その家族の人かて喜ばへんですよ!」

この二箇所です。
「そんなのあかんですよ!」

「そんなんあかん!」

「そんなん、その家族の人かて喜ばへんですよ!」

「そんなん、その家族の人かて喜びません!」

以上の二箇所だけ、少しきになったので指摘させて頂きました。

151 : ◆RsQVcxRr96 :2008/12/04(木) 23:46:20 ID:JsVKEDW4
フェイト・T・ハラオウン(A's)、新庄・運切の投下を開始します。

152 :claことみ:2008/12/04(木) 23:47:18 ID:JsVKEDW4
機動六課隊舎。
H-3南部という海に程近い立地条件にあるこの建物はこの場に集められた者達の約半数が馴染みのある建物だった。
元々はここと同様の臨海部に設立された隊舎の面積は試験部隊にしては十分なものだった。

新庄・運切とフェイト・T・ハラオウン――どちらも『運命』に関する名を持つ者。
早乙女レイによって巡り合わされる形となった二人はアパートでの小休止を経て、ここ機動六課隊舎に到着したのは日が昇ろうかという時間だった。
新庄にもフェイトにも馴染みのない隊舎に二人が足を運んだ理由は新庄に支給されたデバイスによる進言だった。
そのデバイス、ストームレイダーの情報によると隊舎にはヘリが備えられているとのこと。
実際スマートブレイン社屋上から新庄自身も隊舎の屋上にあるヘリの姿を確認していた
それを使う事ができれば移動や捜索の面において有利になる。
十代を守るためと言って去って行ったレイの行方が気になる事もあって、二人にとってヘリは願ってもない贈り物だった。

まずは到着して早々、二人は屋上にあるヘリの状態を確認。
結果、ヘリの使用に関しては概ね問題はないとストームレイダーの判断が下った。
フェイトも新庄もヘリに関しては専門的な知識など皆無に等しいので、この場はデバイスの判断に頼る他なかった。
そのデバイスの返事が望んでいたもので二人はひとまずはほっとしたのだった。
そして次に二人が行ったのは隊舎内の探索。
見知らぬ建物だが一応時空管理局の一部隊の隊舎だ。
何か役の立つ物はないかと時間を掛けて探してみたが、これと言って特別な物は見つからなかった。
調理室には一応食料が、医務室には一応医療品があったが、この程度なら他の施設の方が充実しているように思える。
でも念のため邪魔にならない程度に新庄は医療品をデイパックに詰めておいた。

それから調理室にあったパンを軽い朝食代わりにお互いの事を話し合った。
この際、新庄は自分がフェイトの事を知っていた事は濁しておいた。
話すとややこしくなると思ったからだ。
そしてそのまま放送の時間を迎えるはずだった。

だが実際はその後ちょっとした事件が起きた。
以下新庄・運切の弁明。


     ▼     ▼     ▼


あれは、不可抗力って言うのかな……あれは事故だよ。
いや、絶対言わないよ。
なにがなんでも言わないよ。
無理に聞こうとしたら『うるさいうるさいうるさい』って言って拒否したり、『こ、このバカ犬〜!』とか言って罵倒したりするからね。

……
………
…………はぁ。
まさかシャワー室で身体が女から男に代わるのを待っていて……
いざ無事に男になってシャワー室から出ようとした時にフェイトが更衣室にいるなんて。
そりゃあ身体を拭くタオルを持って来てくれた事は感謝するけど、不意撃ちすぎるよ……
そのせいで僕のあそこはばっちり見られて……あの後は話しづらかったなあ。
それまでフェイトは僕の事を女だと思っていたから。
まあ僕も普段は女として振舞っているから、できれば女で通したかったんだけど……
ああ、なんでこんな事に……

って!!! 今の無し! 無しだから! 忘れて!!!


     ▼     ▼     ▼

153 : ◆.pKwLKR4oQ :2008/12/04(木) 23:48:51 ID:JsVKEDW4


私は気付いたら海が見える場所にあるベンチに腰かけていた。
なんでこんな所にいるんだろう。
私はさっきまで……さっきまで……
あれ? どこにいたんだっけ。

「ここ、は?」

なんだかよく分からない。
何か分かるかもしれないと思って周りを見渡してみればどこか見覚えのある景色だった。
目の前には綺麗な海の青色が、周りには瑞々しく茂った木々の緑色が、上には澄み渡る天空の空色と雲の白色。
それもそのはずだ

「……海鳴臨海公園」

ここは私も馴染みが深い海鳴臨海公園だった。
いつの間に来たのか全く記憶にない。
でも、不思議と焦ったりはしなかった。
ふと自分の姿を見てみれば、いつの日にか着ていた黒のシャツに白のスカートという格好。
それはあの時の格好そのままだった。
そう、それは私にとって初めての友達ができた日だ。

「どうしたんだろ、私」

なぜだろう。
私は何かに巻き込まれていたような気がするのに。
それとも、あれは私の夢だったのかな。
何もかもが不思議で雲を掴むような気分だった。
こんな時、彼女なら何か答えてくれそうな気がするのに……

「それはこっちのセリフだよ、フェイトちゃん」
「え?」

私は思わず驚きの声を上げてしまった。
いきなり声をかけられたのだから当然と言えば当然の反応だ。
だが彼女はその反応に不満があるようで、少しそっぽを向いて怒ったような口調で言葉を続けた。

「『え?』じゃないよ! もう。いきなりぼーっとしたから心配して声をかけたのに!」
「え、あ、ごめん。ちょっと……考え事を……」
「――フェイトちゃん。悩みがあるなら私にも相談してよ。私にできる事なら協力するよ」
「あ、えっと、大丈夫。大した事じゃないから」
「本当?」
「うん、本当だよ。心配してくれてありがとう……なのは」

高町なのは。
それが彼女の名前だ。
春先に出会ったその少女は最初こそ敵同士だったが、今では私の一番大切な友達だ。
なのはは私にとって初めての友達だった。
プレシア母さんは母親で、リニスは教育係で姉?みたいな存在で、アルフは……友達というには違う気がする。
アルフは……使い魔だけど、それ以上の存在でずっと傍にいると約束していて、たぶん姉妹という言葉が適切だと思う。
だからなのはは私にとって初めての友達だ。

最初はプレシア母さんの計画の邪魔をする魔導師としてしか見ていなかった。
魔力だけは高かったが戦闘技術の面では私の方が遥かに上だったので、最初は梃子摺る事もなかった。
だけどなのはは会うたびに強くなっていった。
二人の力の差は徐々に縮まっていって、そしてあの海上での最初で最後の全力全開の真剣勝負で私は負けた。
全力を尽くしたのになのははさらにその上をいった。
実際はギリギリの勝負だったが、負けた時はなぜか清々しい気持ちだった。
なのはの気持ちが伝わってきたような気がしたから。

154 : ◆.pKwLKR4oQ :2008/12/04(木) 23:51:43 ID:JsVKEDW4

『簡単だよ』
『友達になるの、すごく簡単』
『名前を呼んで? はじめはそれだけでいいの。
 君とかアナタとか、そういうのじゃなくて、ちゃんと相手の目を見て、はっきり相手の名前を呼ぶの』

そして私はあの時初めてなのはの事を『なのは』と呼んだ。
その時のなのははすごくすごく嬉しそうな表情だった。

「フェイトちゃん、どうしたの? 今のフェイトちゃん、すごく幸せそうな顔しているよ」
「なのは……私、今すごく幸せだよ」
「うん、私もフェイトちゃんとこうしてお話しできて幸せだよ」

なのはの口から紡がれる言葉の一つ一つがまるで琴の音色みたいに私の琴線に触れていく。
それはすごく心地いいものだった。
いつもそうだ。
なのはが傍にいるだけでなぜか安心する。
友達だからかな?
……たぶん、それだけじゃない。
もうなのははただの友達じゃない。

そうだ。なのはは私の一番の親友だ。

「それでね、ユーノ君がまた心配してきて――」
「あはは、そうなんだ。だけど、それはやっぱり――」

こんな他愛もない会話だけで私の身体に温かいものが満たされていくような錯覚を覚える。
なのはは私にとっては天使みたいな存在だ。
周りは「悪魔」とか言う人もいたりするが、私にとっては安らぎを与えてくれる天使そのものだ。
だからだろうか。
私にたくさんの幸せをくれたなのはを守りたいと思うのは。
いつか私はなのはに言った。
――なのはが真っ直ぐ進むための剣になりたい、と。
それはなのはの前に立ち塞がる障害を切り開くため。
今はまだそこまで行けていないけど、いずれは……

「フェイトちゃん」
「ん? なに、なのは?」

急になのはが呼びかけてきた。
なぜかなのはの顔は少し真剣な顔をしていたような気がする。

「楽しいね。私、フェイトちゃんと友達になれて良かった」
「私の方こそ……その、ありがとう」

なぜいきなりこんな話題になったのか分からなかった。
でも、そんな事どうでも良かった。
今この瞬間が愛おしかった。
温かで満ち足りたこの時間がいつまでも続く事を願っていた。


だけど、現実は私の思いとは関係なくやってくる。


「ごめんね、フェイトちゃん」
「どうしたの、なのは? 急に謝ったりして」

155 : ◆.pKwLKR4oQ :2008/12/04(木) 23:53:22 ID:JsVKEDW4

なぜなのはが急に謝ったのか私には理由が分からなかった。
ただ……怖かった。
その時、なのはがどこか遠くにいるような気がした。
目の前にいるのに、それなのにどうしようもなく不安になる。

「私、もう行かなくちゃ」
「……ど、どこへ?」
「遠い場所。だから、もうフェイトちゃんとはお別れなの」
「そんな……遠い所ってどこ!?」
「管理局でも行けない所。だから本当にもう会えなくなる」

青天の霹靂とはこのような事を言うのだろうか。
まるで頭をハンマーで叩かれたような鈍い衝撃がゆっくりと身体に広がっていくのが分かる。
私はそんな事は一言も聞いていない。
今初めて聞かされた。
あまりに急な話だからきっとなのはの冗談だと思った。
……いや、そう思い込みたかったんだ。
なのはの目を見れば一目瞭然だ。
あの目は真剣に話をしている時の綺麗な瞳。
それが今はどうしようもなく憎らしい。

「ウソ、嘘でしょ。冗談だよね」
「嘘じゃないよ。全部本当の事。こんな事、フェイトちゃんに冗談でも言えないよ」

なのはがそう言うと分かっていた。
分かっていた。
分かっていたのに。
それでも一縷の望みを抱いていたのに。
望みは何の救いもなく絶たれてしまった。
私の目の前はもう青空など見えていなかった。
広がるのは果てしなく続く暗闇だった。

「フェイトちゃんは強いから……私がいなくても大丈夫だよね」
「違う、違うよ、なのは。私、強くなんかないよ……」

私は弱い。
それは自分自身が一番よく分かっている。
それでも強くいられたのは周りに支えてくれる温かな人が数多くいたからだ。
その人達のために頑張らなきゃって思ってここまで来たのかもしれない。
闇の書の夢から脱出できたのも帰る場所があったから、私よりも強くて優しい人が頑張っていたからだ。

156 : ◆.pKwLKR4oQ :2008/12/04(木) 23:55:19 ID:JsVKEDW4

「フェイトちゃん……さようなら……」
「待って! なのは、待って!」

なのははベンチから腰を上げて、別れの言葉を告げた。
今ここで止めないともう二度と会えない。
そんな事が自分の中で確信になっていた。
なのはを止めようと急いで立ち上がろうとしたが――私の身体は動かなかった。
まるで不可視のバインドを掛けられているかのように少しも動いてはくれなかった。
こうしている間にもなのはは徐々に私から遠のいていく。

「そんな、義兄さんやシグナムだけじゃなくて……なのはまで――!?」

え? 私は今、なんて言ったんだ?
義兄さんやシグナムだけじゃなくて……なんだろう。
分からない。
いや、違う。
分かりたくないんだ。
これはあの時のような綺麗な別れじゃない。
そう、これは永遠の別れだ。

「フェイトちゃん」
「……なのは! なのは! なのは! なのは! なのは!」

いつのまにか私は泣いていた。
幼い子供のように泣いて目の前の出来事から逃げたかった。
でも、本当は心のどこかで分かっていたのかもしれない。
逃げても無駄だって。

「       」
「なのはぁぁぁあああ!!!」

なのはは最期に私に何かを伝えようとした。
でも、それを知る前に私は――


――悲しい夢から逃げてしまった。


     ▼     ▼     ▼

157 : ◆.pKwLKR4oQ :2008/12/04(木) 23:56:09 ID:JsVKEDW4

「フェイトちゃん……さようなら……」
「待って! なのは、待って!」

なのははベンチから腰を上げて、別れの言葉を告げた。
今ここで止めないともう二度と会えない。
そんな事が自分の中で確信になっていた。
なのはを止めようと急いで立ち上がろうとしたが――私の身体は動かなかった。
まるで不可視のバインドを掛けられているかのように少しも動いてはくれなかった。
こうしている間にもなのはは徐々に私から遠のいていく。

「そんな、義兄さんやシグナムだけじゃなくて……なのはまで――!?」

え? 私は今、なんて言ったんだ?
義兄さんやシグナムだけじゃなくて……なんだろう。
分からない。
いや、違う。
分かりたくないんだ。
これはあの時のような綺麗な別れじゃない。
そう、これは永遠の別れだ。

「フェイトちゃん」
「……なのは! なのは! なのは! なのは! なのは!」

いつのまにか私は泣いていた。
幼い子供のように泣いて目の前の出来事から逃げたかった。
でも、本当は心のどこかで分かっていたのかもしれない。
逃げても無駄だって。

「       」
「なのはぁぁぁあああ!!!」

なのはは最期に私に何かを伝えようとした。
でも、それを知る前に私は――


――悲しい夢から逃げてしまった。


     ▼     ▼     ▼

158 : ◆.pKwLKR4oQ :2008/12/04(木) 23:57:55 ID:JsVKEDW4


まず目に飛び込んできたのは青い空ではなく白い天井。
周りも海の青や木々の緑などではなく、カーテンの白い色だった。
傍らにはデイパックが一つ置かれていた。
しばらくして今自分が――フェイト・T・ハラオウンがどこにいるのか分かった。
機動六課隊舎内の医務室だ。
確か隊舎内を巡り歩いた時に立ち寄ったはずだ。
だが、なぜ医務室のベッドで寝ていたのか。
全く理由が思い出せなかった。

「私は確か新庄さんと……」

そこから先の事が曖昧だ。
なぜかその先を知ろうとすると躊躇ってしまう。
理由は不明。
そう、まるでこの先に踏み入る事が、禁じられているかのように。

――さて、皆が待ち望んだ最初の放送の時間が来たわ。

え? なに、これは?
ああ、思い出してきた。
確か6時間毎にあるという放送が始まって……

――それじゃあ禁止エリアの発表よ、よく聞きなさい。

発表された禁止エリアは7時からB-1、9時からD-3、11時からH-4。
最後が隣のエリアだったけど、特に問題ではなかった。

――では次にお待ちかねの死者の発表よ。

そして、次に死んだ人の名前が発表されて……確か全部で13人……
名前を呼ばれたのが……

――クロノ・ハラオウン。

え?

――シグナム。

なに、これは……いや、思い出したくない! この先を思い出してはいけない! ダメ! 思い出させないで!

――高町なのは。

159 : ◆.pKwLKR4oQ :2008/12/04(木) 23:59:07 ID:JsVKEDW4

あ。

ああ。

あああ。

ああああ。

そうだ。
思い出した。
みんな、みんな、死んじゃったんだ。

優しい義兄であるクロノも、競い合える好敵手であるシグナムも、そして……

強くて優しい親友のなのはも死んでしまった。

もう二度と会えない。

ああ、そうか。
さっきの夢はなのはが最後に私にお別れを言いたくて枕元に立ったんだ。
地球にはそういう伝承があるってエイミィが言っていたっけ。

なのはは最後に何を言いたかったんだろ。
こんな事なら最後までしっかり聞いておくんだった。
でも……夢の中だからどうしようもないか。

そう、これはどうしようもない事なんだ。
なのはにはもう会えない。
お義兄ちゃんにも、シグナムにも、もう会う事はない。
でも、だからこそ思わずにはいられない。

もう一度皆に会いたいと。


     ▼     ▼     ▼

160 : ◆.pKwLKR4oQ :2008/12/04(木) 23:59:57 ID:JsVKEDW4


「はぁ、大丈夫かな」
『何とも言えないですね』

機動六課屋上に設置されたヘリポートに着陸している最新鋭のヘリ『JF704式ヘリコプター』という名の鉄の乗り物。
その中で黙々と計器を調整している一人の少年とデバイス――新庄・運切とストームレイダー。
今ストームレイダーは待機状態でヘリに組み込まれて、新庄はヘリの操縦に関する簡単なレクチャーを受けている最中であった。
既に離着陸の手順は何度も繰り返してシュミレーションして、ほぼその工程に関する不安はなくなりつつある。
それでも新庄は何度もストームレイダーに教えを請うていた。
まるで不安に押し潰されそうになっている自分を誤魔化すかのように。

『やはり心配なんですね』
「うん」

今新庄が考えている事は医務室の中で眠っているフェイトの事だ。
先の放送は当然新庄とフェイトも聞いていた。
新庄はその死者の多さに愕然として、そして悲しんだ。
その中には同じ全竜交渉部隊に所属する高町なのはの名前もあった。
設立されて間もない部隊ゆえにまだ大した交流はなかったが、それでも知り合いが死んだ事はこの上ない悲報だ。
だが、それにも増して衝撃を受けていたのはフェイトだった。
クロノ・ハラオウン、シグナム、高町なのはと名前が呼ばれるたびに顔は青ざめていって、放送が終わった瞬間に気を失ってしまった。
それも無理もないなと新庄は思っていた。
事前に教えてもらった知り合いの名前、しかもどれもフェイトにとっては特別な存在らしい。
特に高町なのはは特別大切な存在である事が普通に話しているだけでも感じられた。
そんな人を3人も一気に失ったのだ。
ショックのあまり気絶しても責める事などできるはずもない。

「目が覚めたら……なんて声をかけたらいいんだろ」
『…………』

ストームレイダーは無言で返事を返してきた。
フェイト自身に深く関わる事であると想像される存在の喪失。
それを慰めたり癒したりするのに新庄とフェイトの関係は深くない。
ゆえに効果的な励ましは何一つ浮かんでこなかった。

「はぁ……どうしよう」

新庄自身も先の放送による内容に衝撃を受けている。
だが、今ここで自分まで落ち込んでしまう訳にはいかない。
年上としてしっかりとフェイトを支えたいと思う……のだが――

「とりあえず、もう少ししたら様子を見に行こうか」
『そうですね』

何もできないかもしれない。
新庄はフェイトが目を覚ました時に何をすればいいかまだ分かってはいない。
だが、それでも誰かが傍にいるだけでも気持ちは幾らか楽になる事もある。
そう信じて新庄はもう一度ストームレイダーと共に発進の手順を確認する。
まずは周りの様子を確認するべく窓ガラスの向こうの景色に目をやった。
最初に映るのは空の青。
これまで何度も見てきた空には何の変化もないはずだった。

161 : ◆.pKwLKR4oQ :2008/12/05(金) 00:01:07 ID:98EejPgQ

「え? あれって……」

窓ガラスの向こうに広がる青い空。
そこにちょうど隊舎の上空辺りに飛行する物体が新庄の目に映った。
それは青い空の彼方に踊る黒い影。
黒いライフル型デバイスを起動させた金髪のツインテールに漆黒のマント羽織った魔法少女。
フェイト・T・ハラオウンだ。

「なんで、あんな所に? まさか敵が!?」
『いえ。センサーに反応はありませんでした』

今このヘリには隊舎の防犯センサーをリンクさせている。
ストームレイダーに無理をさせて実行しているのだが、それで分かるのは誰かがこの隊舎に入った時のみ。
侵入者の感知ができるだけで十分なものだったが、そのセンサーに反応はないという。
新庄はフェイトがなぜあそこにいるのか全く分からなかった。
とりあえず理由を聞こうと一度ヘリから降りようと腰を浮かせ――

『CAUTION』

――ストームレイダーの警告が機内に鳴り響いた。

「て、敵襲!」

新庄はフェイトが飛び立った理由が敵襲にあると思って、自分も手助けしようと待機状態のストームレイダーを引き抜いた。
そして、フェイトの様子を窺おうと空を見上げた時、ある事に気付いた。

フェイトの持つ漆黒のデバイス、オーバーフラッグの銃身が下へ向けられていたのだ。
もっとより正確に言うならこのヘリに。

「――ッ!? フェイ――」

そこで新庄の意識は途切れた。
意識が途絶える前に目の映った光景は青い空ではなく――


――赤い焔だった。


     ▼     ▼     ▼

162 : ◆.pKwLKR4oQ :2008/12/05(金) 00:02:19 ID:98EejPgQ


燃える、燃える、燃える。
全てが紅蓮の焔に蹂躙されていく。
燃える、燃える、燃える。
そこにあるものが須らく灰燼に化していく。
燃える、燃える、燃える。
私の心の中で何か得体の知れない想いが静かに激しく燃えている。

新庄さんはもう生きていないだろう。
なぜなら私が殺したからだ。
オーバーフラッグから放たれた魔力弾は新庄さんに逃げる時間など与える間もなくヘリを貫いた。
非殺傷設定ではなく、殺傷設定で、だ。
魔力弾は期待通りヘリの動力部に直撃して、ヘリは紅蓮の残骸へと一瞬で化した。

機動六課隊舎も同様に紅蓮に包まれている。
医務室の置かれていた新庄さんのデイパックに入っていた支給品。
なぜか大量に入っていたガソリンを隊舎中にばら撒いたのだから当然と言えば当然の結果だ。
私はビルの上から燃え盛る隊舎を見下ろしている。
眼下にある隊舎を蹂躙する焔の勢いは衰える事を知らず、まるで日本神話に出てくる火之迦具土神を彷彿させるような光景だった。
あたかも私の想いを源に燃え盛っているかのような錯覚さえ覚える。

私は決めた。
なのはに、お義兄ちゃんに、シグナムに、これから死んでいく皆と一緒にもう一度会うって。
そうだ。
死んだとしてもプレシア母さんの力で蘇らせればいいんだ。
あの画面の向こうのアリサは確かに死ぬ前の状態だった。
そうだ。
プレシア母さんは完全な死者蘇生を実現させたんだ。

今ならプレシア母さんの気持ちが痛いくらいに分かる。
大切な人がいなくなる事は耐えられない程に苦しい事だ。

私は優しい義兄であるクロノがいないのに帰りたくはない。
私は競い合う好敵手であるシグナムがいないのに帰りたくはない。
私は! 優しくて強いなのはが! 大切な、初めて友達だって言ってくれたなのはが! いないのに帰りたくはない!
帰るとしたら皆で一緒に。
なのはも、はやても、シグナムも、ヴィータも、シャマルも、ザフィーラも、クロノも、ユーノも……
新庄さんも、レイも、死んだ人達も、これから死ぬ人達も、皆で……
だから私は最後の一人になって皆を生き返らせて皆で一緒に帰るんだ。

163 : ◆.pKwLKR4oQ :2008/12/05(金) 00:03:37 ID:98EejPgQ

「……だから……ごめんなさい」

だから謝罪の言葉を一度呟く。
それは私を娘として迎え入れてくれたあの温かな人に向けての言葉。

「リンディ母さん……ううん、リンディ提督。私はやっぱりあなたの娘になる資格なんてありません」

それはあの時の申し出を否定する言葉。

「だから……『ハラオウン』の姓は返します。今までありがとうございました」

いつしか自分はまた涙を流していた。
でも今は別に構わない。
そのうち泣く事もなくなるだろう。
その涙と共に『ハラオウン』の姓ともお別れだ。

「私はもうフェイト・T・ハラオウンではいられないから……今の私は昔の、プレシア母さんの人形だった頃の――」

今の私の顔はどうなっているんだろう。
夜叉般若の面か、それとも華の貌か。
あるいは……

「フェイト・テスタロッサです」

阿修羅をも凌駕する形相だろうか。


【一日目 朝】
【現在地 H-3 機動六課隊舎を見下ろせるビルの屋上】
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
【状態】健康、魔力消費(小)、左腕に軽い切傷(治療済み、包帯代わりにシーツが巻かれている)、強い歪んだ決意
【装備】オーバーフラッグ@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】支給品一式、医療品(消毒液、包帯など)ランダム支給品(0〜1、武器なし)
【思考】
 基本:皆で一緒に帰る。
 1:皆を殺して最後の一人になる。そして皆を生き返らせる。
【備考】
※もう一人のフェイトを、自分と同じアリシアのクローン体だと思っています(激しい感情によって忘却中)。
※なのはとはやても一人はクローンなのではと思っています(激しい感情によって忘却中)。
※新庄は死んだと思っています。
※激しい感情から小さな矛盾は考えないようにしています。追及されるとどうなるか不明。


     ▼     ▼     ▼

164 : ◆.pKwLKR4oQ :2008/12/05(金) 00:04:26 ID:JsVKEDW4


「……ッ……ここは……」

新庄が目を覚ますとそこは荘厳な雰囲気を醸し出す神社だった。
赤い鳥居が何よりの証だ。
だがここがどこなのかという事は今の新庄にはどうでもいい事だった。
端的に言うと新庄は困惑していた。

なぜ爆発に巻き込まれたはずの自分が生きているのか。
なぜ機動六課隊舎にいたはずの自分が神社にいるのか。
なぜフェイトがあのような事をしたのか。

新庄には何一つ分からなかった。

咄嗟の行動で爆発寸前のヘリから脱出した事も。
右側のドアから出たところで爆風に煽られた事も。
防護賢石の効果で自分の身が幾らか守られた事も。
飛ばされた先の海に投げ出された事も。
海に入ったために火傷が軽傷で済んだ事も。
そのまま海流に流されてA-4にワープした事も。

今の新庄では考えもつかない事だった。
そして何より――

――フェイトが自分を殺そうとした理由。

それが分からなかった。
新庄にはまだそこまで大切に思う人がいないから。


【一日目 朝】
【現在地 A-4 神社】
【新庄・運切@なのは×終わクロ】
【状況】全身に軽度の火傷、全身に軽い打撲、困惑、男性体
【装備】ストームレイダー(15/15)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】なし
【思考】
 基本:出来るだけ多くの人と共にこの殺し合いから生還する。
 1.なんで僕はここにいるんだろう?
 2.フェイト、レイが心配。
 3.弱者、及び殺し合いを望まない参加者と合流する。
 4.殺し合いに乗った参加者は極力足止め、相手次第では気付かれないようにスルー。
 5.自分の体質については、問題が生じない範囲で極力隠す。
【備考】
 ※特異体質により、「朝〜夕方は男性体」「夜〜早朝は女性体」となります。
 ※スマートブレイン本社ビルを中心して、半径2マス分の立地をおおまかに把握しました。
 ※ストームレイダーの弾丸は全て魔力弾です。非殺傷設定の解除も可能です。


【全体備考】
※機動六課隊舎はガソリン@アンリミテッド・エンドラインを巻かれた状態で爆発・炎上しています。適切な消化をしなければ程なく全焼します。
 周囲一マス以内なら火災を目撃できるかもしれません。
※JF704式ヘリコプター@魔法少女リリカルなのはStrikerSは爆散しました。

【ガソリン@アンリミテッド・エンドライン】
テロリスト集団『レギオン』によってホテル・アグスタに撒かれた大量のガソリン。

165 : ◆HlLdWe.oBM :2008/12/05(金) 00:06:18 ID:JsVKEDW4
投下終了です。タイトルは「阿修羅姫」です。
誤字・脱字、疑問、矛盾などありましたら指摘して下さい。

そしてトリバレしたので以後のトリは↑でお願いします。
ショックです……orz

166 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/05(金) 21:40:23 ID:jFPQ0uEP
投下乙です。
まさかのフェイトマーダー化。
阿修羅やカグツチとか色々かけていますね。
あとトリバレはご愁傷様でした。

167 : ◆Qpd0JbP8YI :2008/12/08(月) 19:38:19 ID:4CK0z/GM
L、ザフィーラ、アレックス、かがみのを投下します

168 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 19:40:10 ID:utv6FvRD
しえん

169 :Amazing Grace(The Chains are Gone) ◆Qpd0JbP8YI :2008/12/08(月) 19:40:37 ID:4CK0z/GM
哄笑と共にプレシアの放送が終わる。
場所はF-3ににある黒の騎士団のトレーラー内。
そこには顔を険しくするザフィーラと、それとは反対にほんの僅かに頬を緩めるLがいた。

「何がおかしいんだ、L!? 13人! これだけの人数が死んだのだぞ!」

Lの表情に気がついたザフィーラは知り合いを失った動揺のせいか、自分の気持ちを抑えることなく怒鳴りつけた。
それに対してLは悪びれもせずに淡々と謝罪と哀悼の言葉でもって応えた。

「……ええ、それについてはとても残念な事です。貴重な戦力……いえ、命が徒に奪われました。
その中になのはさんやシグナムさんがいたことには、取り分け胸が痛みます」
「……だったら、何故そのような顔をすることが出来る!?」
「このような下らない殺し合いで死者が出ることには、さっきも言ったように本当に遺憾に思います。
ですが、プレシアの言葉には、僅かながら希望を見出すことが出来ました」
「希望? 希望だと!? L、貴様はプレシアの望みを叶えるという馬鹿げた言葉を信じるというのか!?」
「ああ……いえ、別にその事ついてではありません」
「だったら、貴様の言う希望とは何だ!?」

ザフィーラは問う。
Lの言う希望が人の死を忘れて、笑っていられるほどのものなのか
この殺し合いという暗闇の中で先を見渡せる光明となり得るものなのかを。
しかし返ってきたLの答えは極めて簡便で、それでいてザフィーラの心を逆撫でするようなものだった。


「それは秘密です」


コーヒーのカップに角砂糖を入れながら、事も無げにLは言う。
そしてその瞬間、ザフィーラの丸太のような腕が豪然とLの胸倉を掴み、その身を高く吊り上げた。

「貴様はふざけているのか!? こんな状況でよくそんな真似が出来るな!?」

ザフィーラの耐え切れない怒りを現すかのように彼の歯は固く食い縛られ、
Lの首を折ってしまうのではないかというほど彼の手は力強く握られていた。
だけど、その威嚇するようザフィーラの姿勢、声にLは動じもせず、ただ自分の首輪をトントンと軽く叩いた。
しばらくしてそれが何を意味するかを悟ったザフィーラは荒ぶった呼吸をゆっくりと落ち着け、Lから手を離していった。

「……すまなかったな、L」
「いえ、私も少し不謹慎でした。申し訳ありません」
「それで、お前の考えていることは教えてもらえるのか?」
「すいません。今の段階ではお教えすることは出来ません」
「どうしてもか?」
「どうしてもです」
「そうか……では、お前の希望が叶う確率はどれくらいだ? そのくらいなら構わないだろう?」
「……5%ほどです」
「低いというべきか……こんな状況では頼もしいというべきか……」
「現状では何とも言えませんね。ですが、前より頼もしい数字になったかもしれません」
「そうか……そうだな……そう考えるとしよう」


170 :Amazing Grace(The Chains are Gone) ◆Qpd0JbP8YI :2008/12/08(月) 19:41:39 ID:4CK0z/GM
ザフィーラの納得した声を聞き届け、Lは先程の放送で浮かんだ考えを再び纏め始めた。
まず彼が疑問に思ったことは、何故今になってあのような発言をしたのかということだった。
プレシアの発言、行為は示威行動、反乱の抑制、殺し合いの促進を思わせるが、
首輪が万全なら、そのどれもが意味のないものだ。
どれほど参加者が殺し合いを忌避していても、いずれは首輪により、
相手を殺すという選択をしなければならなくなる。
殺し合いが遅々として進まないことに苛立つというのなら、
最初からこんな無駄に広い場所でやらずに、人が出会いやすいもっと小さな所に転送すればいいことだ。
この場所でやらなければならないとしても、態々人をバラけさせて転送する必要はない。
一つのエリアに皆を移し、アリサを殺したように恐怖を煽れば、
遠からず殺し合いの幕は開き、血は絶えず流れ続けることになるだろう。
要するに目的が何であれ、プレシアの行動には無駄が多すぎるのだ。
最初の会場で全てを説明すれば良い事を、態々この段階で言う必然性はない。
プレシアの単なる言い忘れということも考えられるが、
このゲームとやらは、集めた人員、会場の大きさからいって一朝一夕で成り立つものではない。
時間をかけた入念な準備が必要となってくる。
そしてそんな準備の果てに殺し合いの動機付けをするための大切なことを最初から言い忘れる確率はあまりに低い。

だとしたら、プレシアの放送の裏には何が隠されているのだろうか。
Lの頭に真っ先に思い浮かんだのが、
この会場にいる参加者の誰かがプレシアの頚木から離れるための確実な一手を打ったことだった。
確かにそれなら焦ったように付け加えられた放送内容にも納得がいく。
この場合には先程浮かんだ示威行動やその他の意味も成り立ってくるからだ。
だけど、Lはすぐにこれを否定した。
まだここに送り込まれてから、然程時間は経過していない。
そんな中で首輪を手に入れ、それを解除するための解析を行うにしては時間が足りなさ過ぎる。
また死者が出たことからもゲームに乗った者がいるのも明らか。
そんな中では行動もより慎重に成らざるを得なくなり、迅速な行動など望むべくもないだろう。
故にLはその考えを切り捨てた。

では、それ以外に何があるか。
Lはもう一つの考えを思い浮かべ、僅かな笑みを漏らした。
それは首輪に何かしらの欠陥が潜んでおり、それが今になって急遽判明したという可能性。
この場合もプレシアの放送の意図にも納得がいく。
首輪でアリサを殺すことによって首輪が正常に作動していることを暗に知らせることが出来るし、
願いを叶える云々によって参加者の関心を首輪から背けることにも繋がる。
つまりプレシアの放送に意味が生じてくるのだ。
無論、これも確率は低いことに変わりはない。
首輪はこの殺し合いを成り立たせる根幹だ。
殺し合いが始まる前に必要以上のチェックが行われたことだろう。
だけど、プレシアの齎した放送にはそういった考えを浮かばせるのには十分なものだった。
故に彼は笑った。
正義を嘲笑う犯罪者の前に立ちはだかる不適な反逆者として、一人の探偵として。




171 :Amazing Grace(The Chains are Gone) ◆Qpd0JbP8YI :2008/12/08(月) 19:42:20 ID:4CK0z/GM
*    *    *



「おはようございます」

ソファーの上で寝ていたアレックスが起きたの確認すると、Lは彼に向かって朝の挨拶を告げた。
アレックスはそれには応えず、自分の左手に目をやり、指を一本一本慎重に折り曲げながら、再生した手の具合を確認した。
そしてそれが終わると、ようやくアレックスは口を開いた。

「ここは……いや、お前たちは何者だ?」
「私はLという者です。こちらはザフィーラさんです。私たちはこの殺し合いに反対の立場を取っています。
早速ですが、あなたが倒れていたF-3で何があったか教えて頂けませんか?」

アレックスは再び口を閉じ、Lを睨み付けた。
状況からして、Lとザフィーラが介抱してくれたことは分かった。
それについては彼も有難いと思ったが、どうにも接し方が無用心すぎる。
アレックスの身体は拘束もされていないし、自分のバッグも手の届くところにある。
おまけに対峙する二人も武器は持っていない。
ザフィーラは油断なくアレックスを見つめてはいたが、
Lと名乗った者などはアレックスには目もくれずに角砂糖を齧りながら、時々手鏡で自分の顔や歯を確認している有様だ。
そんな彼らを目の前にしてアレックスは当然の疑問を放った。

「お前たちは俺が殺し合いに乗っているとは思わんのか?」
「その可能性は低いと思います」
「何故だ?」
「あなたが着ている服です」
「……時空管理局の、機動六課の制服か? それだけで殺し合いに乗っていないと判断するのは早計ではないか?」
「それだけなら、そうでしょうね。二つ目の理由は、あなたが瓦礫に埋まっていた時にレーザーのようなものを上空に打ち放ったからです」
「それが……どうして今の考えに辿り着く?」
「はい、あれは明らかに他者に気づいてもらい、助けてもらうことを前提にした行為です。
もしあなたが殺し合いに乗った人なら、自分と同じように殺し合いに積極的な人間を自然と想起してしまい、
あたかも殺してくれと言っている様な自分の弱りきった姿を見せようとしないはずです。
勿論、普通の人間なら自分の命に危険が迫ったため、止む無くということも考えられますが、あなたの場合は違います。
あなたは失った腕を再生できるほどの異常な回復力があります。
おそらくあのまま瓦礫に埋まったままでも、いずれあなたの身体は今の様に元通りになり、無事にあの場を脱出したことでしょう。
そうしなかったのは、他人を助けようとする殺し合いに乗っていない人がこの場にいると考えたため。
そしてそう考えてしまったのは自身が殺し合いに乗っていないため。
違いますか?
……ああ、瓦礫を払うためにあのレーザーを打ったというのはないでしょう。
局所的な破壊しか望めないレーザーでは却って崩落の原因となります。
そんな馬鹿な真似は仮にも管理局に所属している人間がするはずがありません。
まあ、それでもあなた殺し合いに乗っていないと判断するのに早計であることに変わりありませんが」
「では、他にも理由があるのか?」
「はい、三つ目の理由は信頼です」
「信頼? 確か俺たちは初対面のはずだが」
「ええ、その通りです。私もどちらかというと、これには反対の立場だったのですが、ザフィーラさんがどうにも首を縦に振ってくれなくて。
これは一つ目の理由にも繋がることなのですが、八神さんが設立した六課のメンバーなら絶対に殺し合いに乗らないと言いまして。
ああ、あなたの胸の内ポケットに入っていたIDカードは勝手に確認させてもらいました。悪しからず。
あと付け加えるなら、無手の私たちに何もしてこないというのも、あなたが殺し合いに乗っていないと判断する一つの材料ですかね」


172 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 19:42:53 ID:utv6FvRD
sage忘れ……ごめんなさいorz
しえん

173 :Amazing Grace(The Chains are Gone) ◆Qpd0JbP8YI :2008/12/08(月) 19:43:23 ID:4CK0z/GM
アレックスはLの言葉を聞き、少なくとも相手は何も考えていない馬鹿ではないということが分かった。
ならば、態々相手を諌めるという面倒な真似をする必要などはないだろう。
彼は心に感じた一抹の懸念を捨て、Lの言葉の中で気になったことについて口を開いた。

「……お前はたちは八神はやての知り合いか?」
「はい、そうです。尤も私はそれ程親しくはありませんが……こちらのザフィーラさんは八神さんのヴォルケンリーッターの一人です」
「ヴォルケンリッター? ……シグナムやヴィータたちの同類か?」
「ああ、そうだ。盾の守護獣、ザフィーラだ」

アレックスの疑問にザフィーラは重々しく応え、改めて自己紹介をした。

「しかし、お前の姿など見たことがないぞ」
「ああ……普段はこんな格好だからな」

アレックスの疑問も当然とばかりに軽く受け流し、
ザフィーラはその身を蒼き狼へと変えていった。
しかし、それでもアレックスの口からザフィーラの期待した答えは返ってこなかった。

「悪いが、その姿も見たことがない」
「……そうか。まあ、確かにあまりフォワード・メンバーの所へは行かなかったからな……」

心なしか悄然とした様子で項垂れるザフィーラを横目にアレックスは再び疑問を口にした。

「お前たちが俺を殺し合いに乗っていないと判断するのは構わないが、お前たちが乗っていないと、どう俺に証明する」
「無防備な貴様を襲わなかったというのでは足らないか?」

ザフィーラは顔を上げ、質問を返す。
倒れていた相手を態々介抱するような馬鹿な殺人者などいないだろうという思いを込めて。

「情報を聞き出した上で殺すということも考えられるだろう。それにシグナムと同じというのなら、尚更お前たちのことは信じられん」
「なっ? それはどういうことだ? 貴様はこの地でシグナムに会ったのか?」
「そのままの意味だ。シグナムは殺し合いに乗っていた。主の為と言ってな」
「……っ!」

アレックスの思いがけない言葉にザフィーラは言葉にならない声を出す。
確かに自分と同じ守護騎士がこの殺し合いに乗るという可能性はザフィーラも考えてはいたが、
やはりそれを耳にするとショックを隠せない。
彼は先程とは違った沈痛な表情で顔を沈ませていた。
ザフィーラが気持ちに整理をつけるのに時間がかかると思ったLは
彼の代わり最初のアレックスの疑問に答えた。


174 :Amazing Grace(The Chains are Gone) ◆Qpd0JbP8YI :2008/12/08(月) 19:44:56 ID:4CK0z/GM
「残念ながら、私たちにそれを証明する手段はありません。何も武器を持っていないからといって安心は出来ないでしょう。
あなたのような異質な腕を持ってがいることからして、自身の身体を武器とする人がいるという可能性を考えて当然です。
ですから、どうしても私たちのことが信じられないのなら、ここを出て行ってもらって構いません。
勿論、背後から襲うようなこともしませんので、安心してください」
「L! いいのか!?」
「ええ、信頼を得てない相手からの情報なぞに価値はありません。却って混乱を招くだけです」

無論、それは嘘だ。
そもそも嘘かどうかなどは受け手の能力次第で十分に見分けられる。
そしてその能力が自分にあるとLは自負していた。
では、何故Lはこんな風に敢えて突き放すような真似をしたか。
それはこちらが相手を大して必要としていないことを悟らせ、相手がこちらを必要としていることを痛感させるため。
そうすれば自然と相手は自分の立場の弱さを認めることになり、
これ以降Lは話の主導権を握りやすくなるし、何よりアレックスを自分の指揮下に置きやすくなる。

「……し、しかし……L!」

ザフィーラの声を無視してLは言葉を続ける。

「それで、アレックスさん。あなたはどうしますか?」

そんな事を訊ねながらも、Lは既に返ってくる答えを予見していた。
この殺し合いにしろ何にしろ、情報とは行動を決める要。
ならば、事の真偽は置いといても、情報は欲しいはず。
そして既に相手が関心を持つであろう言葉を先の会話の中で幾つか混ぜておいた。
問題はない。

「分かった」

アレックスは一瞬程の間、目を閉じて、それから答えを述べた。

「……一先ずはお前たちのことを信じよう」
「ありがとうございます」

予想通りの答えにLはにんまり笑みを浮かべた。



そしてアレックスはARMSの説明に始まり、自分がこの地に降りてからの事のあらましを話していった。
立体駐車場に転移されたこと、そこにあった車で機動六課隊舎を目指したこと、途中シグナムに会ったこと、
シグナムと戦闘に及んだこと、そこにセフィロスが介入してきたこと、そしてその三つ巴の中に更に一人の少女がやってきたこと。
しかし、そこまで話が進んだところで唐突にザフィーラが話を遮ってきた。


175 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 19:45:28 ID:utv6FvRD
しえん

176 :Amazing Grace(The Chains are Gone) ◆Qpd0JbP8YI :2008/12/08(月) 19:45:54 ID:4CK0z/GM
「待て、アレックス! そこにやって来た少女のことをもう一度説明してくれないか」
「……十歳前後の少女だ。茶髪のセミロング。言葉には少し訛りがあった。シグナムとも面識があるような素振りだったな」
「その少女はちゃんと歩けていたか? 車椅子を使っていなかったか?」
「いや、ちゃんと歩けていたが……それがどうかしたか?」
「いや……他に思い出せることはないか?」
「そうだな。そういえば、どことなく八神はやての面影があったな。そして声もよく似ていた。
実際俺もその声に気取られて、セフィロスという銀髪の男に手痛い遅れを取った。その代償が俺の左腕だ」
「アレックス、その少女を最後に見たのはいつだ? どこだ?」
「時間は……恐らくお前たちが俺を助ける少し前といったところだろう。ちょうど花びらの竜巻が生じた頃だ。
場所は俺が倒れていた場所から、そう遠くはないはずだ」
「L、既に気がついているかもしれないが、その少女は主、はやてかもしれん」

Lはそれには無言で通した。
ザフィーラはLのそんな様子に構わず自分の見解を述べていく。

「あれから、まだ数時間。あの大規模な魔法を行使したのが、主かは分からん。
しかし使用したのが主にしろ、攻撃を受けたのが主にしろ、その疲労と怪我の具合は計り知れん。
そして先の放送で主の名前が呼ばれなかったことからして、主が生きている可能性は高い。
恐らくはまだこの近くにいるはずだ」

Lも同じ考えに達していた。
しかし、それをLが口にしなかったのは、ザフィーラが自分を放り出して、この場を離れていってしまうのを危惧してのことだ。
倒れていた少女から戦闘に役立つであろうものは手に入れることが出来たが、やはり自分の身を守るためには強固な盾が欲しい所。
みすみす自分からそれを手放すような真似はしたくはない。
だけど、八神はやてが近くにいるかもしれないことに気がつき、
今のように感情が揺れ動いているザフィーラをこのままにしておくのでは、やはりマイナス要因の方が大きい。
ここはある程度、納得のいく行動を取らせ、精神に落ち着きをもたらした方が賢明だろう。
それにこれにより八神はやてとも合流出来ることになれば、願ったりだ。
八神はやては機動六課の面々に対して、取り分けヴォルケンリッターに対しては決して破れることのない盾となる。
また今後何をするにしても、彼女がいれば行動の選択肢の幅が広がることになる。

「……ええ、私もその可能性は極めて高いと思います」
「Lもそう思ってくれるなら、話は早い。悪いが、L、俺はしばらく別行動を取らせてもらうぞ」
「待て。一体何の話をしている? お前の主は八神はやてなのだろう? 八神はあんな子供ではないぞ」
「そういえば、まだアレックスさんにはお話していませんでしたね。私たちは平行世界、異なる時間軸からここに集められた可能性が高いのです」
「そんな戯言を信じろと言うのか?」
「まあ疑問に思うのは当然でしょう。それについても証明出来るものは持ち合わせていません。
ですが、そういったことを心には留めてもらえると助かります。いえ……留めておかなければなりません。
私がここに来たのは機動六課設立前、ザフィーラさんが来たのは機動六課解散後。
そしてザフィーラさんの知る機動六課にはアレックスさんは在籍していませんでした。
このことからして恐らく全ての参加者の間で何らかの情報の齟齬が発生していることが考えられます。
問題なのはその齟齬から相手が虚言を用いていると思い、不必要な戦闘に発展してしまう可能性が高いことなのです。
ですから、先程言ったことを心に留めて、早まった結論は避けてもらいたいのです」

Lの言葉を聞いてアレックスの頭の中に思い浮かんだのが、
機動六課の嘱託魔導師と名乗ったセフィロスと不可解な言動をしていた同僚のシグナムであった。
確かにLの言葉を信ずるなら、納得のいく部分は多い。
だがさりとて、その不確かな言葉を信じて、自分を不必要な危険に晒す必要はない。

「お前の言ったことは覚えておこう。だが……殺し合いに乗っているか、乗っていないかの最終的な判断は俺自身でやらせてもらう」
「ええ、それで結構です……ところでアレックスさん、一つ気になったのですが、ずっと管理局でお仕事を?」
「……いや……前は米軍の司令官をやっていた」


177 :Amazing Grace(The Chains are Gone) ◆Qpd0JbP8YI :2008/12/08(月) 19:46:36 ID:4CK0z/GM
その答えに成るほど、とLは頷く。
ARMSというものからして軍関係とは予想してたが、司令官という立場は予想外だった。
精々ARMSとやら被検体の御機嫌を取るために中佐くらいの役職を与えられ、
その後は適当に前線に送り出され、ARMSのデータをその研究者、開発者に送るのが役目かと思っていた。
だがそれとは違う司令官などという立場は、いかにアレックスが単なる被検体を超えた優秀な存在であったかを知らせてくれる。

「L、それでは俺は行くぞ!」

Lとアレックスの間に痺れを切らしたかのようなザフィーラの声が入った。

「ええ。ですが、ザフィーラさん。くれぐれも忘れないで下さい」
「分かっている。時間には戻ってくるつもりだ。場所は船でいいのか?」
「いえ、ここから船までは時間がかかり過ぎます。かといって、私がずっとここにいるのも時間の無駄。ここは機動六課の隊舎に場所を変えましょう」
「では、10時にだな」
「ええ……それまでに何とかお願いします」
「ああ」
「待て!」

アレックスが呼び止め、それにザフィーラが怒号をもって応える。

「何だ!?」
「俺も行こう。お前が追おうとしている女の近くには、どうせセフィロスもいることだろう。奴には借りがある」

その言葉を聞いてザフィーラはLに視線を送る。
そしてその意味を悟ったLは即座に頷く。
八神はやてに関係することとなると、どうしても感情の面が目立ってしまうヴォルケンリッター、ザフィーラ。
抑えとなる人物が一人いた方が良いだろう。
そして戦術眼、戦略眼を必要とする司令官の立場にいた人間なら、その役目にも相応しい。
無論、その分Lの安全が減るが、ここで感情に走らせ、ザフィーラを失うのは痛い。
勿論、Lは自分に対しても保険をかける。

「非常に言いづらいのですがアレックスさんの荷物の中をこちらで確認させて頂きました」
「それがどうかしたか?」
「その中にこちらので使えそうなアイテムがあったので、
ザフィーラさんと一緒に行かれるというのなら、それを貸して頂けないでしょうか?」
「俺の荷物……あのカードのことか?」
「ええ、そうです」
「……いいだろう。もっておけ」

僅かの思考の後、アレックスはバッグの中からカードを放り投げる。
元々自分では使い道のなかった道具だ。
有用に使える人間が他にいるというのであれば、それをやるのは構わない。
ただでやるというのは些か気は引けたものの、一応は同じ目的を目指す仲間だ。
何かしらの形で信頼を見せるのも必要だろう。
それに何より隣にいるザフィーラがこれ以上悩んでいる時間を許してくれそうにない。

「よし、終わったな! それでは行くぞ、アレックス! 今は一分一秒も惜しい!」
「ああ」

そして矢のように飛び出していくザフィーラだったが
ドアの所で急に振り返り、最後にLに告げた。

「俺のバッグも置いていこう。好きに使え」
「……恩に着ます」

勢いよく閉められた扉を横目にLは再び砂糖を口にし、サバイブ“烈火”のカードを手にした。
そしてそれを一通り眺めると、王蛇のカードデッキにへとしっかりとしまった。


178 :Amazing Grace(The Chains are Gone) ◆Qpd0JbP8YI :2008/12/08(月) 19:47:52 ID:4CK0z/GM
【1日目 朝】
【現在地 F−3】

【ザフィーラ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状況】健康、焦り、狼形態
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
 基本:プレシアの野望を阻止し、ゲームから帰還する。
   ゲームに乗った相手は、説得が不可能ならば容赦しない
 1.F-3周辺で八神はやてと思われる少女の捜索
 2.10時までに機動六課隊舎に行く
 3.機動六課の面々並びにヴィヴィオ、ユーノとの合流。
   特にはやてとヴォルケンリッター、フェイトは最優先とする
 4.首輪の入手
【備考】
 ※本編終了後からの参戦です
 ※参加者の中には、平行世界から呼び出された者がいる事に気付きました
 ※盗聴の可能性に気付きました。
  また、常時ではないにしろ、監視されている可能性もあると考えています
 ※クアットロは確実にゲームに乗っていると判断しています
 ※自分以外の守護騎士、チンク、ディエチ、ルーテシア、ゼストは、ゲームに乗っている可能性があると判断しています
 ※デルタギア、カードデッキ、ミラーモンスターについての情報は説明書を読んで知っています 
 ※アレックスからセフィロスがゲームに乗っているという話を聞きました
 


【アレックス@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】
 基本 この殺し合いを管理局の勝利という形で終わらせる
 1.F-3周辺でセフィロスと少女(八神はやて)の捜索
 2.10時までに機動六課隊舎へ向かう
 3.六課メンバーとの合流
 4.キース・レッドに彼が所属する組織のことを尋問
 5.キース・レッドの首輪の破壊
【備考】
 ※身体にかかった制限を把握しました
 ※セフィロスはゲームにのっていると思っています
 ※幼はやては管理局員だと思っています
 ※幼はやてはセフィロスに騙されて一緒にいると思っています
 ※キース・レッド、管理局員以外の生死にはあまり興味がありません
 ※参加者に配られた武器には、ARMS殺しに似たプログラムが組み込まれていると思っています
 ※殺し合いにキース・レッド、サイボーグのいた組織が関与していると思っています
 ※第一放送の内容はまだ知りません
 ※他の参加者が平行世界から集められたという可能性を考慮に入れました

179 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 19:51:56 ID:rtgHdlnh
支援

180 :◇Qpd0JbP8YI氏代理投下:2008/12/08(月) 21:17:04 ID:7Vq1cHhC
「おはようございます」

Lはトレーラー内に据え付けられた簡易ベッドの上で横になっていた柊かがみが起きたのに気がつくと、
アレックスに向けたのと同様に朝の挨拶を告げた。

「ああ、おはよう。って、あんただれっ……!」

Lに挨拶を返しながら、身を起こそうとすると、途端に激痛が彼女を襲った。

「っつ〜! って、痛い! 待って、本当に痛い!」

痛みに顔を歪めながら、痛む部分に手を宛がおうとするが何故か手が動かない。
不思議に思ってそこに目を向けてみると、手がガムテープで拘束されていた。
それに気がついた瞬間、怒りが彼女の内に湧き起こり、自分を苦しめる痛みを一時にしろ忘れさせた。

「ちょっと、あんた! これは一体何の真似よ!」

かがみは少し離れた所で椅子の上に膝を抱えて座り、のんびりと角砂糖を口にしているLを睨みつけた。
だけどLはそれには動じもせずに、クマの出来た両目でただ黙ってかがみの様子を窺っていた。
Lのその異様な姿に多少怯みはしたものの、生来の勝気さからか、彼女は負けじとLを睨み続けた。
その睨み合いに負けたというわけではないが、しばらくしてLがやっと口を開いた。

「私はLという者です。申し訳ありませんが、こちらで拘束させて頂きました」
「だから何でって訊いてんのよ!」
「あなたが殺し合いに乗っている可能性が高いからです」
「殺し合い? ……一体な……に……をっ!」

は〜ん、こいつは一体何を言っているんだ、とかがみが目を細めたが
その途中に頭の中にある映像が痛みと共にフラッシュバックした。
それは赤毛の少年が自分を庇って死ぬ姿であり、
桃色の髪をした精悍な女性を自らの手で突き刺した姿であった。
途端に言い知れぬ恐怖が彼女を支配する。

「ここ……? ここはどこよ! 何で私はここにいるのよ!」
「ここはトレーラー内です。あなたが地図でいうF-3で倒れていたところを……」
「そうじゃない! ここは一体どこ!?」
「……ここが正確にどこかというのは私にも分かりません。
私自身も気づかぬ内にプレシアさんにここに連れてこられてしまったので」
「プレシア?」
「一番最初に私たちが集められた場所を覚えていますか?
そこで私たちに殺しあえと言っていた中年の女性の名前です」

Lの言葉と共に先程まで忘れていた記憶が沸々と色を付けて蘇ってくる。
だけど、それはあまりにも馴染みがない陰惨な光景だった。
自分はごく平凡な普通な女子高生であり、あんな事とは無関係なはずだ。
だから彼女は声を出して否定する。

181 :◇Qpd0JbP8YI氏代理投下:2008/12/08(月) 21:19:08 ID:7Vq1cHhC
「違う! 私じゃない! アレは私じゃない!」

確かな実感をもって刻まれた記憶から逃げるように首を左右に振って彼女は叫ぶ。
このゲームにおいては制限時間があるらしいデモンズスレートの効果は既に消え失せ、今は柊かがみ本来の姿を取り戻していた。
だけどそれは彼女にとって幸福とはなり得なかった。
何故ならデルタギアによって起こした凶行は、心優しい彼女と整合が取れるはずもなかったのだから。

「だって私は! 私は……!」

気がつけば、先程見せていた意思ある瞳も消え、今は焦点が定まらず絶えず揺れ動いていた。
どうやら彼女は錯乱しているようだ。
その結論に達したLはすぐさまかがみに声をかけた。

「落ち着いてください。私の名前はLです。あなたの名前は?」
「……な……まえ?」
「はい。あなたの名前です」
「なま……え……柊……かがみ」
「柊かがみさんですね。あなたは学生ですか?」
「学生……稜桜学園の三年生」
「なるほど。ご家族は?」
「か……ぞく? お父さんにお母さんに……姉のいのり、まつりに……妹のつかさ。家は神社を……」
「普段はどういった生活を?」
「生活? 普段の?」
「はい、そうです」
「朝起きて……妹のつかさと一緒に登校して……休みの日はゲームしたり、ラノベ読んだり、こなた達と遊んだりして……」

段々と言葉に意味が成してきて、彼女の精神も落ち着きを見せてきた。
その事にLは安堵しつつも、かがみの口からこのゲームの参加者名簿に記されていた名前が発せられていたのを聞き逃さなかった。
どうやら柊かがみ自体は普通の学生みたいだが、彼女の知り合いが多く参加させられていることからして
彼女のいた世界もしくは彼女の知人らがプレシアにとって何か意味のあるものだったのかもしれない。
その確認の為にもLは質問を続けていった。

「あなたのお友達の名前を教えていただけませんか?」
「こなたにみゆきに日下部、峰岸。こないだ転校してきた……」

途端に言いよどむかがみ。
それをLが訝しく見つめていると、いきなり彼女は叫び出した。

「そうだ! なのはが! なのはがあんなことを……!」

柊かがみは大切な友人の一人である高町なのはとこの殺し合いの地で無事に出会った。
そしてなのははエリオの死に責任を感じ、自分の生に諦観を感じていたかがみを優しく抱きしめて、彼女の不安や厭世を拭ってくれた。
そこまではいい。だけど、その後、高町なのはどうしたか。
友達であるはずのかがみを他人と切り捨て、彼女の感謝を、想いを侮辱したのだ。
そんな事をするために態々自分を生かしたのだろうか。
かがみが抱いた疑問は地獄のような苦痛をもって彼女を責め立てた。
あの時、なのはがいなければ、自分は死んでいた。
きっと誰にも迷惑をかけずに、誰も殺さずに済んだ……。
そうすればこんなにも苦しむ必要はなかった。
それを…………

182 :◇Qpd0JbP8YI氏代理投下:2008/12/08(月) 21:19:46 ID:7Vq1cHhC
「なのはのせいで!」

彼女の理不尽ともいえる怒りはデルタギアによって得た能力を無意識の内に呼び覚ました。
彼女の身体からはその内にあった感情を示すかのように電気が迸る。
その猛るような電撃は彼女を拘束をしていたガムテープを焼きちぎるだけにとどまらず
Lの所までに届き、彼を椅子から転げ落とした。
手を床につけながらLは人間が電気を発するという現象を驚きをもって見つめる。
だけど、その見開かれた目を恐怖によるものと取った柊かがみは再び自己嫌悪に陥った。

「ちっ、違う! そんなつもりじゃ……そんな目で私を見ないで!」

自分に怯える人間、自分に向けられる恐怖の眼差し。
自分自身の呵責に苦しむ今の彼女にとって、それは到底耐えられるものではなかった。
そしてその場に居た堪れなくなった彼女は、Lの横を通り抜け、トレーラーの外へ猛然と駆け出していった。

その一連の様子を見届けるのが終わると、Lはゆっくりと立ち上がった。
幸いにも電撃により怪我を負うことのなかったLは、かがみの姿を思い出しながら一人呟いた。

「あれがデルタギアの力ですか。
ユーザーズガイドを読んで知ってはいましたが、やはり実際に目にすると驚きます。
発せられる電気の量も予想外でしたし、警戒が足りなかったのかもしれません。
……しかしデルタギアによってかがみさんはあのような精神状態に陥ったのでしょうか?
ガイドには闘争本能を活性化すると書いてありましたが……どちらにしろ迂闊な使用は避けた方がいいですね。
尤もこんな道具程度で私の意志が揺らぐとも思えませんが」

角砂糖を口にひょいと放り込みながら、かがみが出て行った扉を見つめる。

「なのは……恐らく高町なのはさんの事でしょうが、彼女との関係も気になるところですね。
とはいっても、かがみさんのような人と一緒にいるのは、あまり気の進むことではありません……が、あのままにしとくのは少し後味が悪い。
それに他の参加者の方々に迷惑をかけても何ですし…………」

もう一つ角砂糖を口の中に放り込み、Lは新たなパートナーの名前を呼ぶ。

「メタルゲラスさん」

その瞬間、Lが持っていた手鏡からモンスターが飛び出る。
それは2メートルを超える屈強な肉体をもったサイ型のミラーモンスター、メタルゲラス。
その身体には既に幾つかの戦闘を経験したのか、所々に裂傷が見られた。

「メタルゲラスさん、怪我をしているようですが、大丈夫ですか?」

モンスターは首を大きく縦に振り、いななく。
それを見て無事だと判断すると、Lは言葉を続けていった。

「あなたの前の持ち主である柊かがみさんを覚えていますか?
そのかがみさんを捕まえて、私のところに連れてきてください。
まだそう遠くへは行ってないと思いますが、時間がかかるようでしたら、機動六課隊舎に来てください。
私はそこにいます。
あと彼女のことは勿論ですが、他の参加者の方々に攻撃を加えることは許しません。
以上ですが、分かりましたか?」

メタルゲラスは両の拳を胸の前でぶつけながら、何度も頷く。

「そうですか。それではメタルゲラスさん、早速お願いします」

メタルゲラスはLの声を聞き終えると、再び鏡の世界へと戻り、かがみの追跡を開始した。

183 :◇Qpd0JbP8YI氏代理投下:2008/12/08(月) 21:21:06 ID:7Vq1cHhC
【1日目 朝】
【現在地 F−3】

【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】疲労(小)、肋骨数本骨折、全身打撲、強い自己嫌悪
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
 基本 ???
 1. 一人になりたい
【備考】
 ※なの☆すた第一話からの参戦です
 ※デルタギアを装着したことにより、電気を放つ能力を得ました
 ※参加者名簿や地図、デイパッグの中身は一切確認していません
 ※一部の参加者やそれに関する知識が消されています。ただし、何かのきっかけで思い出すかもしれません
 ※錯乱に近い状態の為、怪我の痛み、身体の疲労を感じていません
 ※デルタギアによる凶行に強い後悔を感じています 
 ※高町なのはのせいで自分が辛い目にあっていると思っています
 ※自分のせいで周りにいる人が傷つくと思っています
 ※Lが自分に恐怖していると思っています
 ※第一放送を聞き逃しました


【メタルゲラス@仮面ライダーリリカル龍騎】
【状態】幾つかの裂傷(戦闘には支障ありません)
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
 基本 猶予時間まではデッキの持ち主の言うことを聞く
 1. かがみを連れてLの所に戻る
【備考】
 ※Lからゲームの参加者に攻撃を加えるなと命令されています
 ※猶予時間が過ぎたら、どう動くかは分かりません

184 :◇Qpd0JbP8YI氏代理投下:2008/12/08(月) 21:22:11 ID:7Vq1cHhC
メタルゲラスへの命令が終わると、Lはついでとばかりに外に出て、もう一体のパートナーに声をかけた。

「ベノスネーカーさん」

その声に反応し、出てきたのは全長10メートルを優に超える巨大なミラーモンスター、ベノスネーカー。
ベノスネーカーはLの前に躍り出ると、威嚇するようにシャーッとけたたましい声を上げた。

「ベノスネーカーさん。このトレーラーを川の向こうに運ぶのを手伝ってくれませんか?」

ベノスネーカーはLの命令を耳にすると、その巨大な顔をLの前に近づけ、
舌をちらつかせながら、猛禽のごとき鋭い目でLを睨んだ。
それと対峙させられるLは別に怯むわけでもなく、相変わらずの猫背のままベノスネーカーを見据えた。
そのまま睨み合いが続くこと数十秒。
やがて何かに納得したのか、ベノスネーカーはLが視線を外し、トレーラーと川を交互に見比べ始めた。
そして唐突にその巨体を川に沈ませ、幅広い背中を崩落した橋の部分に宛がった。
ベノスネーカーの意図を察したLは早速トレーラーのエンジンに火をつけ、
車体をゆっくりと橋とベノスネーカーの上に乗せ、慎重に向こう岸へと進めていった。

「ありがとうございます、ベノスネーカーさん」

危なげながらも、ようやく橋を渡り終えると、Lはベノスネーカーに礼を言いミラーワールドへと還した。

「しかし便利なものですね、ミラーモンスターとは」

トレーラーを運転しながら、Lは一人呟く。
鏡があればどこへにも行けて、その存在は人に知られることはない。
それは犯罪捜査のあらゆる面において、有効に活用出来そうだ。
尤も人間を餌にして活動するという点で、その存在は許されるものではない。
ミラーモンスターと人間とは決して友好的な関係を結べることはないだろう。
そしてそういった問題は、カードデッキを持つ今のLにも投げかけられていた。
だけど、Lはそれに対しては恐怖する事も頭を悩ませることもなかった。
何故なら既に幾つかの対応策を用意していたのだから。

その内の一つはメタルゲラスとベノスネーカーを争わせることだった。
幸いにも2体のミラーモンスターを保持しているのだから、それを利用しない手はない。
これならモンスターの共倒れを狙えるし、どちらかが勝ち残っても、決して万全とは言えない状態。
そこをザフィーラ、アレックスと叩けば、さしたる危険もない。
とは言っても、相手は腹が減ったらデッキの持ち主を襲うという、どちらかと言えば保身に長けた生物だ。
戦わない、共闘してこちらを襲ってくるという可能性もあるだろう。
その場合には幾らか危険性は増すが、一体のミラーモンスターを使って変身。
そうして三人で一体ずつ確実に倒していけばいい。
無論、これらを行うに当たって問題はある。
それはミラーモンスターを利用できる時間までにやらなければならないこと、
その時間までにザフィーラたちが確実に戻ってくるか分からないこと。
要するに時間的な余裕がほとんどないのだ。
一応は本来の猶予時間より2時間早い10時までにとザフィーラに告げたが不安は尽きない。
既にカードデッキが使われて猶予時間が減ってしまった可能性を考えれば当然だ。
最悪の場合には、L一人で2体のミラーモンスターと対峙しなければならなくなる。
尤もそれでもLは悲観したり、動揺したりすることはなかった。
ミラーモンスターはそれなりに力があるらしいが、ちゃんとした弱点もある。
それは鏡のように光を反射する物がなければ、ミラーワールドから決して外に出れないこと。
もし最悪に陥いったとしたら、大人しく鏡のない部屋で2人が帰ってくるのを待ってればいいのだ。
ミラーモンスターの旨はザフィーラにも伝えてある。
自分が外に迎えに行かなければ、自然と何があったかを察してくれるだろう。

185 :◇Qpd0JbP8YI氏代理投下:2008/12/08(月) 21:23:06 ID:7Vq1cHhC
そんな事を考えながら、トレーラーで南下していると、
アスファルトに寝そべる女性の姿がLの目に入った。
Lは慌てて手元に置いてあった首輪探知機を確認するが、依然と反応はない。
それによりLは一つの可能性を得るが、だからといって軽率な真似は出来ない。
Lはトレーラーを下り、手鏡を持ち、慎重に倒れている人間の下に歩み寄った。
そしてその身体の節々が溶け落ち、胸に空いた大きな穴を見て、Lはようやく確信する。
この人は死んでいる、と。
死体にあるのはピンク色の長き髪に溶解液に溶かされながらも僅かに残る面影。
それらからLはこの人物はヴォルケンリッターの一人、シグナムと当たりを付けた。
そして彼は辺りを見回し、念の為に首輪探知機で周りに誰もいないことを確認すると、
軍事基地から抜け目なく頂戴してきたサバイバルナイフをバッグから取り出した。

(どうやらあそこでザフィーラさんと別れて正解だったようですね)

ギラリと銀色に光るナイフを両手に持ち、それをシグナムだったものにLは宛がう。

「シグナムさん、あなたの死は無駄にはしません」

そしてLはナイフに力を入れていった。



*   *   *



「やはりナイフで首を落とすというのは難しいものですね。
何より不愉快で仕方がない。たまにこんな事をする犯罪者がいますが、気がしれませんね」

手についた血をハンカチで拭いながら、Lはぼやく。
そしてシグナムがつけていた首輪を手にとり、早速検めてみようとするが、
ふと足元にある首の離れたシグナムの死体がLの目に入った。
彼はしばしそれを見つめると、やがて何か思いついたようにトレーラーに戻った。
そして再びLがそこに戻ってきた時には、彼の手にはベッドに使われていたシーツがあった。

「これであなたにしたことが許されるとは思いませんが……」

本音を言えば、シグナムの死体をどこかに隠したいというのがLの気持ちだった。
ザフィーラたちはこんな瓦礫だらけのF-3ではなく、
怪我や疲労した人が逃げ込むような安全と思われる場所を探る確率が高いとはいえ、万が一のこともある。
首を切られたシグナムの死体をみれば、ザフィーラは怒りで激昂することだろう。
そしてそれがLの手によるものだと知られれば、折角築けたザフィーラとの関係も台無しになる。
だけど、Lにはそれが出来なかった。
手間がかかるというのも一つの理由だったが、
何よりもこれ以上シグナムの死を辱めることに抵抗を感じたのだ。

「やれやれ…………私はこんなに感傷的だったでしょうか……」

そう言い、Lはシグナムの上にゆっくりと、丁寧に真っ白なシーツをかぶせていった。

186 :◇Qpd0JbP8YI氏代理投下:2008/12/08(月) 21:24:11 ID:7Vq1cHhC
【1日目 朝】
【現在地 F−3 南側】
【L@L change the world after story】
【状態】健康
【装備】カードデッキ(王蛇)@仮面ライダーリリカル龍騎、サバイブ“烈火”のカード@仮面ライダーリリカル龍騎、手鏡@オリジナル
【道具】支給品一式×5、首輪探知機、ランダム支給品1〜10個 、ガムテープ@オリジナル、サバイバルナイフ@オリジナル
    ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード 、デルタギア一式@魔法少女リリカルなのはマスカレード、
デルタギアケース@魔法少女リリカルなのはマスカレード、シグナムの首輪
【思考】
 基本 プレシアの野望を阻止し、ゲームから帰還する。
    ゲームに乗った相手は、説得が不可能ならば容赦しない。
 1.機動六課隊舎でザフィーラ達を待ちながら、首輪の解析
 2.メタルゲラスがかがみを連れてきたら、改めて拘束するなり、落ち着かせるなりして、尋問
 3.10時までにザフィーラ達が来たら、ミラーモンスターを倒しにかかる。来なかったら、鏡のない部屋に引きこもる。
 4.以上のことが終わったら、船を調べに、その後は駅を調べにいく
 5.通信で誰かと連絡がついたら、その人と情報交換、味方であるなら合流
【備考】
 ※第三話からの参戦です
 ※参加者の中には、平行世界から呼び出された者がいる事に気付きました
 ※盗聴の可能性に気付きました。
  また、常時ではないにしろ、監視されている可能性もあると考えています
 ※クアットロは確実にゲームに乗っていると判断しています
 ※ザフィーラ以外の守護騎士、チンク、ディエチ、ルーテシア、ゼストは、ゲームに乗っている可能性があると判断しています
 ※黒の騎士団専用車両にあったのは、黒の騎士団専用トレーラー@コードギアス 反目のスバル でした
 ※首輪に何かしらの欠陥があると思っています
 ※アレックスからセフィロスが殺し合いに乗っているという話を聞きました
 ※ベノスネーカーとメタルゲラスは回復中です。餌を食べれば回復は早まります
 ※王蛇のカードデッキには、未契約カードがあと一枚入ってます
 ※王蛇のカードデッキには、サバイブ“烈火”のカードが入ってます



【手鏡@オリジナル】
黒の騎士団専用トレーラーにあった普通の手鏡です

【サバイバルナイフ@オリジナル】
軍事基地で見つけて持ってきた物です。

187 :◇Qpd0JbP8YI氏代理投下:2008/12/08(月) 21:24:57 ID:7Vq1cHhC
以上です。投下終了しました。

―――

代理投下は以上です。

188 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 22:29:13 ID:rtgHdlnh
GJ!
まさか危険性を分かっていながらも、敢えてミラーモンスターを使うとはw
そしてL、サバイブカードは王蛇用じゃないぞw

189 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 23:27:40 ID:utv6FvRD
投下&代理投下乙です。
遂に首輪を手に入れたL、ここから怒涛の考察が始まるのか?
はやてを探す為に駆けるザフィーラとアレックス、正気を取り戻したかがみ、様々なフラグが詰まった話でした、GJです!

190 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/08(月) 23:48:33 ID:npQ9jdkn
投下&代理投下乙です。
Lの考察は流石!世界一の名探偵の名は伊達じゃないw
さて推理は当たっているんだろうか。
あと、メタルゲラスが健気っぽく見えたw

一つ質問なんですが、前のSSには何もなくてぽっと出てくるのっていいいんでしょうか。
別にナイフは不明支給品から出してもいいと思うのですが……
もしかしてこういうのって普通にあるものなんですか。

191 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/09(火) 00:00:21 ID:5VdLHNyH
投下&代理投下GJです。
いつの間にかLの所持品がライダーグッズだらけにw
パニくったかがみんはこれからどうツンデレのジンクスを消化していくのか。
そして仮面ライダーL……これがもし疾風のサバイブなら王蛇サバイブになれたのにw
全体的に見られがちなパーティの分散がここでも行われたようで、次回が気になる話でした
GJ!

192 : ◆Qpd0JbP8YI :2008/12/09(火) 00:08:30 ID:MotVOUI7
>>190
いいかどうかというのを自分で判断していいのか分かりませんが
Lの抜け目なさ、如才なさを表したくて、あんな風にナイフを出しました。
問題があるようなら、修正します。

193 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/12/12(金) 19:06:07 ID:sAzLDoCs
キャロ、キング、天道分を投下します。

194 :Deathscythe ◆9L.gxDzakI :2008/12/12(金) 19:07:11 ID:sAzLDoCs
 川の音が、少女の耳を打っていた。
 ちろちろ、ちろちろと。静かな音色は心地よく響き、少女の胸へと染み渡っていく。
 ここが殺伐とした殺し合いの場であることを、一瞬忘れさせてくれるほどの穏やかな響き。
 しかし、今目の前にあるのは現実だ。それは認めなければならない。
 それでも川のせせらぎは、少なくとも、彼女――キャロ・ル・ルシエの精神を落ち着かせるには至っていた。
 湖畔に立った木へともたれかかる天道総司を見つめながら、静かに治癒魔法を発動していた手を下ろす。
 応急処置レベルにまでは回復したが、彼女はこの手の魔法に関しては専門というわけではない。
 残る魔力の全てを治癒に費やしても、これ以上の回復は見込めないだろう。
(ここからどうしようかな……)
 自らの胸の内に、思考の糸を張り巡らす。
 治療の続行が不可能となると、現実的な手段はここからの移動だ。
 どこか医療器具や薬品のある場所へと移動し、残りの治療をそれらの機材で行う。目指す場所の第一候補は病院。
 治癒魔法による回復が見込めないというのならば、魔法以外による処置を施せばいい。
 もちろん、問題はある。キャロと天道の体格差だ。
 未だ10歳の少女であるキャロに対し、天道は20歳前後の青年男性。身長も180センチはあるかもしれない。
 前線型として訓練されたエリオならまだ分からないが、どう考えても小さなキャロが運べる人間ではなかった。
 故に彼女は、これまで安全な場所への移動を考えず、この場に留まって治療を続けていたのだ。
 だが、今は状況が違う。このまま治療をしていても、もうあまり意味はない。
 何より、今は天道を移動させる手段がある。
「……駄目だね。やっぱり俺から見ても、治療に使えそうなものはなかったよ」
 このキングという男だ。
 その身に纏った赤いジャケットと、全身にちりばめられたアクセサリーの数々が目を引く、非常に派手な少年だった。
 年齢は天道よりもいくつか下といったところ。顔つきからするに、スバルやティアナと同い年くらいかもしれない。
 それでも、彼を運ぶには十分な体格。キャロにはできない肉体労働も、彼がいれば可能となる。
 そしてそのキングが、やや残念そうな響きを伴う声と共に、手にしたデイパックをキャロへと渡した。
 今手渡されたのは、彼女自身に支給されたデイパックだ。
 傷つき倒れた天道を見て、何か使えるものがあるかもしれない、と言ったキングに中身を見せていたのである。
 もちろん、衣服のポケットに突っ込んだ灰色のデバイスも見せたのだが、大体同様の反応が返ってきた。
「それにしても凄いんだね、魔法って。怪我を治すことまでできるんだ」
「魔法を知ってるんですか?」
 またその口元に笑みを浮かべたキングへと、キャロが問いかける。
 頼りにはなりそうだったが、この男、どうにもどこか引っかかるのだ。
 このまま信用してはいけない。とてつもなく漠然とだが、常に頭の片隅で、そんな警告が響いていた。
 故に、質問を投げかける。本当にこの人は危険なのかどうかを、少しでも探るために。
「まあね。ここに来たのも、転移魔法ってやつのおかげだし。それに、八神はやてって魔導師にも会ったからさ」」
「八神部隊長にですか!?」
 思わず、キャロの声のボリュームが跳ね上がる。
 キングの口から突然出された、機動六課の上司の名前。自分を引き取ってくれたフェイトの、友人でもある女性。
 合流できれば確実に心強い味方になるだろうし、何より、この殺し合いから共に生きて帰るべき大事な仲間だ。
「あ、知り合い?」
「はい! その、八神部隊長は今どちらに……」
「んっと……ごめん、分かんないや。地上本部って建物までは一緒だったけど、そこの仕掛けでワープした時に、はぐれちゃってさ」
「……そうですか……」
 キングの反応に、キャロの表情が曇る。
 ギンガ達とはぐれて以来、ようやく顔なじみに会える目処が立ったと思ったのだが、どうやらそれもかなわないらしい。
 恐らく、彼の言葉に嘘はないだろう。現に今ここにはやてがいないのが、何よりの証拠だ。
「他にはどんな魔導師がいるの?」
 そのまましばし俯いたまま、沈黙を保ったキャロへと、キングが問いかける。
「あ、はい」
 言われるままに顔を上げ、口を開いたのは、幾分か警戒心が薄れたからかもしれない。
 何かといかがわしい雰囲気を漂わせていたキングだったが、完全に嘘つきというわけでもなさそうだ。
 ちゃんと事実を話したところを見せられたことで、キャロの中に、この男に対する若干の信用が生まれていた。

195 :Deathscythe ◆9L.gxDzakI :2008/12/12(金) 19:08:40 ID:sAzLDoCs
「えっと、もう八神部隊長から伺っているかもしれませんが……私達は管理局の、機動六課という部隊に所属しています」
「うんうん」
 たどたどしさの残る説明に対し、キングが頷きながら相槌を打つ。
 そこから先は、キャロの仲間達の解説だ。
 最初は当然、キングも直接顔を合わせている部隊長――八神はやて。
 前線に立つ機会こそ少ないものの、広域魔法による優れた制圧能力を有した魔導師だ。
 これにはキングも意外に思ったのか、ひゅうっと口笛を鳴らした。
 確かに、同年代の女性に比べるとやや小柄な彼女が、それほどの絶大な力を有しているとは、到底思えない。
 続いて、フェイト・T・ハラオウンとエリオ・モンディアル。
 互いに電撃魔法と高速戦闘を得意とする、キャロの保護者と友人である。
 その他、優れた砲撃魔法を操るエース・オブ・エース高町なのは。それぞれ剣と鉄槌を用いた接近戦に秀でたシグナムとヴィータ。
 射撃魔法と幻術を有するティアナ・ランスター。至近距離での格闘戦を得意とするスバル・ナカジマ。
 前線要員ではないが、回復と補助のスペシャリストであるシャマルと、防御魔法に特化した守護獣ザフィーラ。
 いずれも劣らぬ実力者達であり、キャロにとっては家族同然とも言える、大切な仲間達だ。
 彼らと共に戦えるのなら、どんな困難な状況も打開できる。この殺し合いからも、きっと脱出することができる。
 そう信じあえる、大切な存在。
「あとは、無限書庫という施設の責任者をしている、ユーノ・スクライア司書長、
 フェイトさんの義理のお兄さんの、クロノ・ハラオウン提督……それから、私と同じ召喚士の、ルーテシア・アルピーノちゃんです」
 ギンガ・ナカジマの名前は、遂に出てくることはなかった。
 何かの間違いであると信じたい。それは今でも変わらない。
 妹のスバル同様、優しく面倒見のいいあの人が、自分を見捨てるわけがない。
 だが、それを確定できるだけの証拠もなく、それが無意識に、彼女を自分の仲間達に含めることを食い止めさせていた。
「ふぅ〜ん……みんな、なかなか頼りになりそうな人達だね」
 そんな事情は露も知らず、キングはにこにこと笑っている。
「はい……本当に、みんな頼れる人達なんです」
 それに少しだけ気分が軽くなり、キャロもまた、微かに微笑みを浮かべた。
 大丈夫。自分は1人などではない。
 六課の心強い味方もいるし、何よりフェイトとエリオがいる。
 あの強敵だったルーテシアでさえ、今ではもう仲間なのだ。
 自分達が力を合わせれば、できないことは何もない。
 このキングという人も、それを分かってくれている。
(疑っちゃったこと、後で謝らなきゃ)
 もはやそんな風にさえ思えていた。
 故に、そのまま本題を切り出そうとする。本来の目的は質問に答えることでなく、こちらから協力を要求することだ。
 天道を救うために、力を貸してほしい、と。
「あの、もしキングさんがよければ――」
 ――ざ、と。
 ノイズが走ったのは、この瞬間だった。
「え……?」
 一瞬の物音。まるでテレビ画面に砂嵐が走ったような。
 どこからともなく聞こえた音に、キャロの言葉が中断される。
 一体どこからだ。この音はどこから聞こえた。放送機材の類など、こんな原っぱにはないはずだが。
 疑問に対する答えも見出せぬうちに、女の声が響き渡る。
 キャロが探し求めた、ノイズの音源から。
 彼女の首でその存在を主張する、爆弾入りの首輪から。

『――さて、皆が待ち望んだ最初の放送の時間が来たわ』

196 :Deathscythe ◆9L.gxDzakI :2008/12/12(金) 19:10:27 ID:sAzLDoCs


 高笑いが、今も耳の中で残っている。
 川の音は聞こえない。精神の平静をもたらす音色は、もう鼓膜を打つことはない。
「そんな……」
 口を突くのは、そんな頭の悪い呟きだけだ。
 キングに語るべき言葉も、脳の中から掻き消えた。
 今、キャロの表情を彩るのは、ただただ絶望の一色。
 心ここにあらずといった、呆然とした顔立ちで絶句する。開いた口は塞がらず、見開いた瞳は瞬きを知らない。
 原因はただ1つ。プレシア・テスタロッサの流した放送。
 禁止エリアと死者を告げる、6時間ごとの定期放送だ。その最初の1つが、つい先ほどまで流されていた。
 読み上げられた名前は13人。神の死を暗示する、不吉極まりない数字。
 その中に、いたのだ。
 クロノ提督が。
 シグナム副隊長が。
 ティアさんが。
 なのはさんが。
 そして。
「……エリオ君が……!」
 紅髪の少年の名前を、呟く。
 既に自分の知る人間達のうち、5人もの人間が死亡していた。
 いずれも劣らぬ信頼を寄せる人達が、ここで無惨に命を散らせていたのだ。
 特に、エリオの死が堪えた。
 自分と同じようにフェイトの保護を受けた、槍騎士エリオ・モンディアル。
 幼くして部族を追われたキャロにとっては、以来初めてできた同世代の親友だ。
 幾多の激戦を共にくぐり抜け、今や双子の兄のようにさえ思えていた。間違いなく、フェイトと並ぶ最も大切な人間の1人。
 そのエリオが死んでしまった。
 誰かの手によって殺された。
 彼ならば、絶対に生きていると信じていた。彼とフェイトの2人がいれば、どんなピンチも怖くないと思えた。
 しかし、愛すべき友はもういない。
 共に肩を並べて戦うことも、共に笑いあうことも、もう叶わない。
 キャロの心を支えていた、2本の大黒柱の片方が砕けた。そう表現しても、過言ではないだろう。
 柱の折れた家の末路は、わざわざ語るまでもない。
 ただただ、奈落よりも深き絶望の闇へと、一直線に落ち行くのみ。
 そして悲嘆に暮れるキャロの姿を、1人見つめる者があった。
 キングだ。
 突然姿を現した、やたら派手な風貌をした少年だ。
 そしてその男の顔は、今は微かに歪んでいる。
 絶望の淵に立たされたキャロとはひどく対照的な、愉悦に満ちた微笑みによって。
(見つけた)
 喜色ばんだ眼差しを向けたキングが、確かな手ごたえをそこに感じる。
 王者が玩具として目を付けたのは、何も天道だけではない。この桃色の髪の少女もまた、大事な遊び道具の1つ。
 これまで彼女の様子を伺い、どうすれば面白い展開になるかを、ずっと考え続けてきた。
 そして、とうとう見つけたのだ。攻略フラグの糸口を。
(『CROSS NANOHA』の文章によれば、こいつは昔、自分の故郷を追われている……)
 携帯サイトに掲載された、小説の記憶を呼び起こす。
 半分近くの作品に顔を出していたキャロだからこそ、キングの印象にもちゃんと残されていた。
 これがルルーシュやヴァッシュなど、特定の作品にしか出ていない人物なら話は別だっただろうが。
 さしもの王も、流し読みでは人物把握にも限界があった。

197 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 19:12:09 ID:sAzLDoCs
(そこからこいつを保護したのがフェイト・T・ハラオウンで、エリオ・モンディアルは大事な友達)
 それが相関図の概要だ。
 過去の孤独なトラウマを抱えた、気の弱い少女の精神は、明らかにこの2名によって支えられている。
 小説からもそれは類推できたが、先のキャロの説明によって、より強固な確信を得ることができた。
 そして今、その片方が死んだ。
 更にどういうからくりかは知らないが、プレシアは今の放送で、死者蘇生を実現してみせた。
 この殺し合いを最後まで生き残った者のために、その秘術を使用してもいいとさえ。
(大切な人間の死と、その人を生き返らせられる力……さて、それを見せられたらどうなるかな?)
 いよいよキングの口元が吊り上がった。
 もちろん、キャロが時空管理局とやらの人間として、然るべき正義感を持ち合わせているのは確かである。
 だが彼女は幼い子供。極限状態に陥った時、その心の闇を制御できるほどの、強靭な精神力までは身に着けていない。
 地上本部襲撃戦の折、怒りに任せて巨大な竜を召喚したのは、どの小説での展開だったろうか。
(でっかいドラゴンまでは見られなさそうだけど、ね)
 相棒の飛竜・フリードリヒらしき姿がないことから、召喚魔法が封じられているのは明確だった。
 だが、たとえ巨竜ヴォルテールが見られずとも、期待が揺らぐことはない。
 むしろそれだけ、何をしでかすか分からなくなったのだから。
 不確定要素があればあるほど、謎解きは面白いものなのだ。
「ねぇ。エリオっていうのは、さっきの話にも出てきた子だよね?」
 そして、あえてそれを問いかける。
「……はい……私の、大事な友達で……」
 そこに込められた意地悪など、全く知る由もなくキャロは答えた。
 その回答、キングは既に知っている。予見している。だというのにそれを聞いている。
 相手に余計な疑いを持たせないために。相手にエリオという存在を再確認させるために。
 何より、その方が何かと面白いから。
「そりゃ災難だったね。こんなに早く、友達が死んじゃうだなんて」
 言いながら、キングの膝が折られた。
 ゆっくりと顔の高度が落ちていき、キャロの顔の高さへと到達。
「――でも、さっきのあれ、覚えてるよね?」
 囁き声だった。
 桜色の髪がかかった、少女の耳へと向けられた耳打ちだった。
 は、と。キャロの大きな瞳が見開かれる。
 殺されたはずの、地球に住んでいたフェイトの友人――アリサ・バニングスの再生と死。
 明らかに吹き飛んでいたはずの彼女の首が、次の瞬間には完全に元通りになっていた。
 すぐに次なる首輪が爆発したが、少なくともその一瞬の間、間違いなくアリサは生きていた。
 プレシアは可能としたのだ。人造魔導師技術ともまた違う、死者蘇生を実現する術を。
 死んだ人間が生き返る。そんな奇跡が現実化する。
 かつてのゼスト・グランガイツのような、後遺症に命を削られることもなく。
「プレシアのあの力、そのエリオ君に使ったら……どうなると思う?」
 そう――この殺し合いで死んだ人も、生き返る。
 蜜のように、甘く。
 麻薬のように、危険な。
 誘惑の香り漂わせる、キングの囁きだった。
「……!」
 思いがけない助け舟。一瞬キャロは、彼の言葉を疑いなくそう受け止める。
 しかし、次の瞬間には、すぐさま己が思考を恥じていた。
「そ、そんな……駄目です……エリオ君のためだからって、人を殺しちゃうなんて……」
「顔も知らない赤の他人だよ? 大事な大事な友達に比べたら、屁でもないような連中じゃない?」
「でも……」
 分かっている。まだまだこれくらいでは、この気弱な少女に決断を迫ることはできない。
 そう簡単に友の死から立ち直れるような人間でもないだろうが、裏を返せば、そう簡単に人殺しを選べる度胸もないということ。
 故に、更なる揺さぶりが必要だ。言葉とはまた別次元のベクトルを、キャロに対して向ける必要がある。

198 :Deathscythe ◆9L.gxDzakI :2008/12/12(金) 19:13:31 ID:sAzLDoCs
「――ああ、そっか。やっぱり他人事に思っちゃってるわけか。それじゃ、そう簡単に人殺しなんてできないよね」
「えっ?」
 怪訝そうな声と共に、キャロが目を丸くする。
 この人は一体何を言っているのだ。他人事、という言葉に込められた意図は一体何だ。
 全くもって理解できないといった、そんな表情。
「でもね。このことは君自身にとっても、無関係じゃないんだよ。……もう忘れちゃったのかな?」
 瞬間、童顔の少年の姿が一変した。
 真紅のジャケットが消える。無数にちりばめられたアクセサリーが消える。邪悪な微笑みを湛えた顔さえも。
 変貌。豹変。まさしく激変というべきか。
 赤き衣が消えた後には、黄金の鎧が姿を現す。
 全身から鋭角的な突起が伸びた、おぞましき魔物を思わせる様相。
 手にした剣は鋭く輝き、手にした盾は重量感を漂わせる。
 いかなる盾をも切り裂く強靭な武具。いかなる剣をも跳ね返す堅牢な防具。
 そしてその頭部から伸びるのは、カブトムシを彷彿とさせる立派な角。
「この殺し合いに参加させられた以上、君だって命を狙われてるんだよ?」
 あの声が、語りかけた。
 優しい少年のあの声が。されど悪しき愉悦を孕んだ声が。
 ――コーカサスビートルアンデッド。
 殺し合いに乗っていないなどとは真っ赤な嘘。優しげな笑顔は全てがフェイク。
 金色の鎧に身を包みし、残虐非道なるモンスター。
 それが王者を名乗る少年の正体だったのだ。
「う……うそ……」
 突然の変化。たまらず、キャロの腰から力が抜ける。
 ようやくいい人だと信じられた相手から向けられる、まがい物ではない真実の殺意。
 刀剣オーバーオールの纏うパワーを前に、戦う力を持たない少女が、力なく尻餅をついた。
「さぁ、どうする? 早く決めないと、俺が君を殺しちゃうよ?」
 ぎり、と。
 楽しげに鳴らされる金属音。
 さながら首切りのジェスチャーのごとく。心底相手の反応を楽しみながら。
 火花を散らす大剣が、挑発するかのようにソリッドシールドを引っかいた。
 死ぬ。
 このままでは間違いなく、自分はこの化け物に殺される。
 無抵抗のままでは、一瞬にして命を刈り取られる。そう感じたのはこれで何度目か。
 ようやく冷静さを取り戻したはずのキャロは、再び恐慌の暗黒へと叩き落とされた。
 無力な少女の心を揺さぶる、最後の要素のベクトルは――死の恐怖。
「さぁ」
 にじり寄る。
「どうする?」
 止めるしかないのか。
「殺さないの?」
 殺すしかないのか。
「助けたくないの?」
 そうすることが、エリオのためになるのなら。
「生き残りたくないのかな?」
 でも、本当にそれを選んでいいのか。
「いやあああぁぁぁぁぁぁ―――っ!」
 六番目の声を聞くことなく、キャロの意識は暗転した。

199 :Deathscythe ◆9L.gxDzakI :2008/12/12(金) 19:14:26 ID:sAzLDoCs


(――あれ?)
 気付いた時、そこには何もなかった。
 足元から伝わる大地の感触も。頭上に広がる木の葉の緑も。少し視線を動かせば、その先にあったはずの清流も。
 傍らに倒れていた天道も。
 今まさに自分を殺さんとしていたキングさえも。
 そこにはキャロしかなかった。
 自分以外の人間も、自分を支える天地の存在も、自分を照らす太陽さえも消えていた。
 闇とも光ともつかぬ無の世界の中、ぽつんとキャロが浮かんでいるだけ。
(私、どうしちゃったんだろ……?)
 あの後自分はどうなったのだ。
 キングが自分に向けた刃は、一体どこへと消えたのだ。
 否――本当に消えたのは世界ではなく、自分自身なのではないのか。
(死んじゃったのかな……私)
 そう考えても、一切の違和感はなかった。
 ここが死後の世界だと言われれば、それで間違っていないと思えた。
 要するに、自分は何もできなかったのだ。
 何も成し遂げることもできず、誰も救うこともできず、無様に命を散らせたのだ。
 生きている仲間達を救うことも。死んでしまったエリオを救うことも。
 どちらの道も選べなかったから。2つの選択肢の間で迷ってしまったから。
 だからあの鉄色の刃が、自分をこの場へと送ったのだ。
「――何やってるんだよ、君は」
「ふぇっ!?」
 途端、声が響いた。
 誰もいないはずの世界に、自分以外の声が割り込んだ。
 唐突に発せられた言葉に対し、キャロが間抜けな悲鳴を上げる。
 気付けば、目の前に人がいた。
 ほとんど自分と同じくらいの背。燃えるような赤い髪に、海のように青い瞳。
「エリオ、くん……!?」
 他ならぬ、エリオ・モンディアルの姿だった。
 そういえば先ほどの声も、死んだはずの彼の声に間違いはなかった。
 何故彼がここにいるのか。それすらも、ここが死後の世界であるが故の事象なのか。
「本当、キャロは見てられないな……いつもいつも、慌てて失敗してばかりじゃないか」
「あうぅ……」
 痛いところを盛大に突かれ、キャロがみるみるうちに萎縮していく。
 一方のエリオは、随分と不機嫌そうな顔をして毒づいていた。
 まるでティアナがスバルに対し、あれこれと小言を言っている時のように。
 そういえばエリオ君って、こんなに怒りっぽかったっけ。こんなにつんけんとした人だったっけ。
 微妙に違和感を感じはしたが、なにぶん説教を食らっている身なのだ。そうそう指摘できるはずもない。
「……何で迷ったのさ?」
「え……」
 不機嫌そうに腕を組みながら、問いかけるエリオの姿があった。
「何であの場で、行動を迷ったのかって聞いてるんだよ」
 そうだ。自分があそこで結論を出せなかったせいで、こうして死んでしまったんだ。
 人生は絶え間なく連続した、制限時間つきの問題集。その中で自分は、選択肢を選びもせずにタイムオーバーを迎えたのだ。
 エリオが怒るのは無理もない。きっと彼も、自分のことを信じてくれていたであろうから。
「……一瞬……エリオ君のこと、助けなきゃって思ったんだけど……でも、人を殺すのは、絶対にやっちゃいけないことだし……」
 言い訳がましく言う自分が情けなかった。
 こんなことを言ったとしても、エリオは許してくれないのに。
 それでも、誰かに聞いてもらわなければ、胸が苦しくてたまらない。

200 :Deathscythe ◆9L.gxDzakI :2008/12/12(金) 19:15:24 ID:sAzLDoCs
「――馬鹿だな、君は」
 そう、自分は馬鹿だ。
 常識的に考えて、殺し合いを止めるべきだったに決まっている。
 それが管理局員の務めだし、何よりエリオは、誰かの犠牲の上に蘇ることなど望んではいないはずだ。
 考えなくとも分かることを、馬鹿みたいに考えてたから、自分は死んでしまったんだ。
「大事なのは、どうしなきゃいけないかじゃなくて――キャロがどうしたいか、だろ」
「えっ……?」
 俯いた顔が、上がる。
 視線の先に浮かぶエリオは、気恥ずかしそうに指先で頬を掻いていた。
「……キャロのやりたいようにすればいい。大切なのは自分の意志だし、それを無理やり抑え込むのはよくない。
 フェイトさんだってそう言うだろうし……僕も……そう、思う」
 意外だった。
 そんな答えが返ってくるとは、思いもよらなかった。
 罵倒されるとばかり思っていたが、まさか自分の意志を肯定されるとは。
 好きなようにしていいのだと。望む道を進めばよかったのだと。
 どちらを選んでも、文句を言うことはしなかったのだ、と。
「でも……」
「あ゛ーもうじれったい!」
 苛立ち気味に、エリオが唸る。
 この期に及んで煮えきらぬキャロを前に、がしがしと頭をかきむしった。
 びくり、と震えるキャロの肩。それに呼応するかのように、真顔を作るエリオ。
 少年の青い瞳が、少女のそれを真っ向から見据える。
「いいか? 僕と違って、キャロにはまだ時間があるんだ。そうやって後悔するくらいなら、最初から自分の意志を貫き通してみなよ」
 その言葉で、キャロはようやく理解した。
 ここは死後の世界などではない。自分はまだ死んでなかったのだ。
 この心優しき友達は、壊れかけた自分の心を支えるために、こうして駆けつけてくれたのだ。
 もう生きてはいないのに。生きる身体もなくしたのに。
 それでも、こうしてキャロのために、わざわざ来てくれたのだと。
「……ありがとう、エリオ君」
 礼を言うキャロの顔は、笑っていた。
 そしてエリオの口元にもまた、ようやく微かな笑みが浮かんでいた。
 ――どくん、と。
 少女の胸を打つ鼓動。
 自身と若き槍騎士以外には、光と闇すらない虚無の世界。何もないはずのこの場所が、びりびりと音を立てて鳴動する。
 目覚めようとしているのだ。途方もない、何かが。
 己が覚悟を強く固め、意志という名の舵を取ることを決意した、キャロの旅路を祝福するかのように。
 何を望む。
 エリオの笑顔だ。
 この身に彼を感じる度、身体の奥より力が湧き上がってくる。
「行きなよ、キャロの行きたい方へ」
 エリオが傍で囁いている。
 声が耳に届き、全身へと染み渡る度、新たな力が胎動を始める。
 己が内にエリオを感じることで、より強さを増していく未知の力。
「僕はここにいるから」
 ばりばり、ばりばりと音を立て、無の世界が砕けていく。
 それに呼応するかのように、エリオがキャロの中へと溶け込んでいく。
 そうだ。エリオが一緒にいてくれるのなら、誰にも負けることはない。
 2人一緒に戦えるのならば、こんなに心強いことはない。
「うん」
 力は手に入れた。この胸の願いを、実現させるための力は。
 エリオ・モンディアルの欠落へと、流れ込んでいく至高の力。
 故に、キャロは知っていた。
 名前も、その意味も。
 少女は叫ぶ。
 世界に生まれ出る力の名を、全土へと轟かすほどに絶叫する。

 ――オレハココニイル。

 最後の瞬間、死神の姿を、垣間見た気がした。

201 :Deathscythe ◆9L.gxDzakI :2008/12/12(金) 19:16:30 ID:sAzLDoCs


「――ははっ! やればできるじゃん!」
 ざ、と。
 大地を踏み締める足音。
 浮いた身体を着地させながら、キングの放った叫び声は、歓喜に打ち震えていた。
 さながら超新星の爆発のごとく。
 目の前に広がるのは光。
 網膜を焼き尽くさんとするほどの極光。
 キャロを包み込むように、突如発生した眩い白光。凄まじいまでのエネルギーが、光の中へと集束されていくのが分かる。
 何が起こっているのかなど知らない。今何が自分の斬撃を弾いたのかなど知らない。
 だからこそ、面白いのだ。
 これまでに体感したことのない、未知の何かが目の前にある。アンデッドの常識では測れぬ何かが、今目の前で胎動している。
(うん、分かるよ。ようやく決めてくれたんだね)
 そして光と力の他に、キングに向けられたものがある。
 このコーカサスの黄金の甲殻を突き抜け、肌にちりちりと突き刺さるものがある。
 まさしく戦場の感覚。これでこそ戦いは戦いたり得る。
 光の中より向けられるのは他ならぬキング自身も発しているもの。
 ――すなわち、殺気。
(俺を殺すことを、さ)
 刹那、光が晴れた。
 キャロ・ル・ルシエの瞳には、既に迷いは欠片もなかった。
 ただ、ある1つの強靭な意志が、その眼光に激烈なる鋭さを与えている。
 異形の魔物にも勝るとも劣らぬ気迫。王者の殺気と真っ向から対立する眼差し。
 ただ、殺意だけがある。
 普段の温厚な彼女を知る者が見たならば、到底信じられたものではないだろう。
 それほどまでに敵意を露わにしたキャロの姿が、光の中より現れていた。
 そしてその右手に、強く握り締められたものがある。
 それは鎌だった。
 長大な柄のレンジは、キャロの身の丈に倍するほど。
 宇宙の暗黒より生まれたかのような漆黒の刃に、稲妻のごとき黄金が刻まれている。
 天上の月魄を思わせる刃鎌の鋭さは、金剛石さえも切り裂くほどかと。
 その燦然と輝く刃こそが、コーカサスビートルアンデッドの一太刀を弾き返した、命を刈り取りし処刑鎌(デスサイズ)。

 <死の恐怖>“憑神鎌(スケィス)”。

 エリオ・モンディアルというカタチを得て、遂に目覚めた巫器(アバター)の力。
 龍鱗のごとき禍々しきガントレットを纏った両手が、魔性の大鎌を握り締めていた。
 見ただけで分かる。キングほどの実力者ならば、一目見ただけで理解できる。
 あの憑神鎌が姿を現した瞬間、凄まじいエネルギーがキャロの元へと集束されていた。
 術者の魔力。憑神鎌自身の魔力。更に空間に漂いし魔力さえも。
 それらが三位一体となり、姿を成したのがあの刃だ。
 その破壊力は言うまでもない。まともな使い手の手にかかれば、オーバーオールをも凌ぐ切れ味を誇るだろう。
「っ!」
 一閃。
 びゅん、と音を立て。
 漆黒の異形へと姿を変えた腕が、死神の刃鎌を薙ぎ払う。
 円形の軌跡。迸る紫電。黒と金の三日月が、王者の鎧へと襲い掛かる。
 瞬間、回避。
 鈍重な鎧の外観に似合わぬ、華麗なまでの横っ飛び。人外故の俊敏さを発揮し、キングが殺意のラインより逃れた。
 幸いなことに、キャロは本来接近戦ができるタイプではない。
 ケリュケイオンを用いた魔法は後方支援が主体だし、その身体も特別強靭なわけではない。
 故に、いかに強力な魔具を得ようとも、キングならばまだ余裕を持って対処できる。
 しかし、そうはいかない者がいた。
 未だ意識を失って倒れている、天道総司だ。

202 :Deathscythe ◆9L.gxDzakI :2008/12/12(金) 19:17:34 ID:sAzLDoCs
 彼にはまだ生きていてもらわねばならない。こんなところで、小さな女の子に殺されているようでは困る。
 自らに支給されたライダーベルトの持ち主にして、とある世界で最強を誇った仮面ライダー。
 天の道を行き、総てを司る男などと名乗る割には、随分と手間をかけさせる奴だ。
 そう思いながらも、着地と同時に、その首根っこを引っつかむ。
 そのまま放置されていたカブトエクステンダーへと走ると、即座にエンジンをかけて跨った。
 轟。咆哮を上げる車体。
 ヒヒイロカネの戦士の背を預かる鋼鉄の馬は、一瞬にして臨戦態勢を整える。
「悪いね! こいつを殺されるわけにはいかないんだ!」
 幾分か楽しげな響きを孕ませながら、キングが無言のキャロへと叫ぶ。
 刹那、投擲。上空へと投げられたソリッドシールド。
 鋼の盾がくるくると回転し、黄金の背中目掛けて殺到。
 オートガードの要領を利用し、自身の背面部で固定。キングの背中とソリッドシールドが、がっちりと天道をホールドする。
「まぁ、せいぜい俺を楽しませてね! 君には期待してるよ!」
 最後の叫びは、エンジンの発する唸りの中へと溶けて消えた。
 瞬間、加速。
 ごう、と音を立て、カブトエクステンダーが疾風と化す。
 常識を遥かに超えた加速力。想像を絶するトップスピード。
 平和の戦士にのみ許された、まさしく仮面ライダーの専用機。
 北へ、北へと。キングと天道を乗せたバイクが、凄まじい速度で疾走する。
 巨大な鎌を構えたキャロの姿が、みるみるうちへと遠ざかり、すぐさま点ほどにも見えなくなった。
 このまま飛ばしていけば、追いつかれることもないだろう。
 金色の甲冑が姿を消し、赤色のジャケットが再び顕現。
 天道を固定させたソリッドシールドのみをそのままに、キングが元の少年の姿へと戻った。
 否、元の姿というのは適切ではない。
 人としての姿こそが偽りであり、あのコーカサスオオカブトの魔物こそが、彼の本性なのだから。
「さて、と……」
 呟きながら、ポケットに突っ込んだ携帯電話を取り出す。
 もちろん、閲覧するのは「CROSS NANOHA」の小説だ。
 今回は比較的出番の多いキャロだからこそ、スムーズにぶっ壊してやることができた。
 だが、もしもここで出会ったのが、前述のルルーシュやヴァッシュのような人間だった場合、何かと面倒になっていたはずだ。
 知らなければならない。高町なのはを中心とした魔導師達のみならず、他の全ての参加者達も。
「……ははっ」
 そして、不意に笑みをこぼした。
 そうだ。少なくとも先ほど、自分は成功していたのだ。
 壊してやった。
 心優しい少女の心をぐちゃぐちゃにかき回し、殺人鬼へと貶めてやった。
 彼女の中に通っていた一本の芯を、ものの見事にへし折ってやったのだ。
 楽しい。何と楽しいことだろう。
 人の心を引っ掻き回すのは、いつになってもやめられない。
 あいつはあのデスサイズを振るい、多くの参加者を手にかけようとするだろう。
 いずれは、かつての仲間達にも、その変わり果てた狂気の姿を晒すに違いない。
 そうなれば、どうなる。奴らはどんな顔をする。あの八神はやてはどんな顔をする。
(いっぱいいっぱい楽しませてもらわないとねぇ……ははは……)
 湧き上がる期待は歯止めを知らない。こみ上げる愉悦は留まることを知らない。
 醜悪な笑顔を浮かべながら、キングはカブトエクステンダーを操った。

203 :Deathscythe ◇9L.gxDzakI氏代理投下:2008/12/12(金) 20:25:57 ID:uUCx1iw7
そして、ふと、脳裏にまた別の思考を浮かべる。
 鋼の馬へとブレーキをかけ、急速に車体を停止させる。
 ノリと勢いで北へと向かってしまったが、さて、これからどうしようか。
 このまま川沿いに進んでいけば、確か森の中へと向かうことになるはずだ。
 反対に南へと引き返せば、人が集中していると思われる、市街地へと向かうことができる。
 もちろん、戻った先にはキャロがいるわけなのだが、これも迂回すれば回避できないこともないだろう。
 それに市街地に向かえば、この天道への治療も完了させることができるはずだ。
 さて、どうするか。
 このまま進むか、引き返すか。
 一瞬真剣な表情を見せ、静かに思考する。
 そして、瞬きの後。
「……やっぱり、日本人といったら温泉だよね」
 再び笑顔を取り戻すと、カブトエクステンダーを走らせた
 選択の理由はただ1つ。確かそこには温泉があったはずだから。
 作戦も打算もへったくれもない。最終的な判断基準は、やっぱりその場のノリと勢い。
 ただ何となく、こちらへと向かえば、色々面白そうな気がしたというだけのこと。
 微笑みをたたえたアンデッドの王は、一路北へと疾走した。

【1日目 朝】
【現在地 C-7南端 川の畔】

【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】右脇腹負傷(身体を動かすことはできるレベル)、気絶中
【装備】爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】支給品一式、ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル
【思考】
 基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
 0.気絶中
 1.天の道を往く者として、ゲームに反発する参加者達の未来を切り拓く。
 2.カブトゼクターとハイパーゼクターを取り戻してみせる。
 3.俺が望みさえすれば、運命は絶えず俺に味方する。
 4.感謝するぞ、加賀美。
【備考】
 ※参戦時期はACT.10冒頭。クロックアップでフェイト達の前から立ち去った直後。
 ※なのは、フェイト、はやて、クロノは一応信用、矢車は保留、浅倉は警戒しています。
 ※身体がいつものように動かない事を知りました。

【キング@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康、非常に上機嫌、一時間変身不可(コーカサスビートルアンデッド)
【装備】カブトエクステンダー@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのはマスカレード
    キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのはマスカレード
【思考】
 基本 この戦いを全て滅茶苦茶にする
 1.天道で遊ぶ
 2.キャロに期待
 3.はやてとの合流は後ででも良いかな
 4.はやてとヴィータの決着が着いたら、残ったほうに真実を伝えて、その反応を楽しむ
 5.とにかく面白いことを探す
【備考】
 ※制限が掛けられている事に気がつきました
 ※ゴジラにも少し興味を持っています
 ※携帯電話は没収漏れです。写メ・ムービー以外の全ての機能は停止しています。
 ※携帯には相川始がカリスに変身する瞬間の動画等が保存されています。
 ※キングの携帯に外部から連絡出来るのは主催側のみです。
 ※カブトの資格は持っていません
 ※キングの携帯のお気に入りフォルダに『CROSS-NANOHA』へのリンクが存在します。

204 :Deathscythe ◇9L.gxDzakI氏代理投下:2008/12/12(金) 20:26:28 ID:uUCx1iw7
「逃げられちゃったな……」
 ぽつり、と。
 その場に取り残されたキャロが呟く。
 瞳に湛えた暗い色はそのままに、物腰の穏やかな様子は一切見せぬまま。
 彼女が手にしていた憑神鎌は、その覚醒の時を迎えていた。
 エリオ・モンディアルの喪失によって。皮肉にも、本来の使い手の死によって。
 巫器の目覚めを誘発するのは、何らかの喪失による心的ショックだ。
 何かを失わなければ、得られないものも存在する。少なくともこの月魄の刃鎌は、そちら側に位置する力だった。
 そして、もう1つの条件がある。その心の虚がもたらす、強靭な意志だ。
 ただ悲しみに打ちひしがれ、引きこもっているだけの者が、力を得られるはずもない。
 要するに、巫器の力とは精神力。
 それがいかなるベクトルへと向けられたものであろうとも、想いの力が憑神鎌を生む。
 エリオのような犠牲を出さないためであろうとも。
 エリオを殺した者への復讐のためであろうとも。
 そして、キャロの精神の射程が向けられた先は。
「でも、大丈夫……いつかは絶対、私が倒すよ」
 漆黒と黄金に彩られた刃をなぞる。
 ゆっくりと、いとおしげに。
 エリオのカタチを得た刀身を、エリオそのものとして慈しむかのように。
「エリオ君は、私が助けてあげるから……ね」
 ――全ての参加者の命を奪い、再びエリオ・モンディアルを蘇らせること。
 キャロ自身がどうしたいのか。
 それが彼女の選択した答えだった。
 謝るつもりはない。許してくれと言う気はない。
 だって、自分は間違っていないから。
 自分の本当の気持ちには、一切嘘などついていないから。
 少なくとも、自分はそう思っているから。
「……ふふ……」
 微笑みを浮かべながら、伝統衣装を翻す。
 キングの消えた先を背にし、市街地へ向けて歩き出す。
 そこに宿された笑顔には、慈愛に満ちたぬくもりはなく。
 獲物を刈り取らんとする、死神の浮かべる笑みだった。
「待っててね、エリオ君」
 川の音は、もう聞こえてはいなかった。


【1日目 朝】
【現在地 D-7 川の畔】

【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(中)、魔力消費(中)、脇腹に切り傷・左太腿に貫通傷(応急処置済み)、歪んだ決意
【装備】憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning
【道具】支給品一式×2、『かいふく』のマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、葉巻のケース
【思考】
 基本:エリオを蘇らせるため、この殺し合いに優勝する。
 1.市街地へと向かい、敵を探す。
 2.相手が機動六課の仲間であろうとも容赦はしない(ただし、フェイトが相手の場合は微妙なところ)
 3.次にキングと会った時は、絶対に逃がさない。
[備考]
 ※別の世界からきている仲間がいる事に気付いていません。
 ※憑神鎌(スケィス)のプロテクトは外れました。
 ※自分の決断が正しいと信じて疑っていません。

205 :Deathscythe ◇9L.gxDzakI氏代理投下:2008/12/12(金) 20:26:58 ID:uUCx1iw7
投下終了。
途中でこちらのミスでageてしまったのは、申し訳ありませんでしたorz

キャロ、マーダーに目覚める。キングご満悦。天道はシャーリー達のパーティーへと逆戻り。
なんか最近マーダー陣営ばっかり強化している気がする。そろそろ対主催陣営も補強せねば……

なお、今回キャロの憑神鎌(スケィス)覚醒に当たり、ちょっぴり.hack版エリオにゲスト出演してもらいました。
本来のエリオ君に比べて、微妙に(?)ツンデレしています。

206 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 20:35:32 ID:uUCx1iw7
投下乙です。
シャーリー→キャロ→キングと振り回されっぱなしでロクな展開にならない天道涙目w
そしてキャロもいよいよもってマーダー化で、また一人マーダーが増えたことに。
市街地へ向かったキャロが最初に出会った人間がどんな反応を見せるか楽しみです。
二人のカブトムシ組も浅倉聖王組の元に逆戻り。
今の精神状態のヴィヴィオとシャーリーがもしキングと鉢合せしたら……
色々と続きが気になる展開でした。GJ!

207 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:28:41 ID:v91EGO3+
投下乙です。
やはりキャロは覚醒したか……しかも覚醒時がいささか前向きとはw
最後のパートと相まって不気味な雰囲気が漂っている。
そして、そうかどっちもカブトムシかw気付かなかったぜw
それにしてもこのキングかなりノリノリだwww

208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/12(金) 22:52:22 ID:v91EGO3+
あ、キングの方は変身したから状態表に疲労大か中を足しておいたほうがいいと思いました

209 :マスカレード ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 13:02:37 ID:/REqISnc
それではこれより投下します。
毎度ながら長いので、支援など頂けると嬉しいかもです。

210 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 13:03:43 ID:/REqISnc
 
――どこだ? ここは

真っ暗な闇の中で、始は意識を取り戻した。
まだぼんやりとした意識で、今までに起こった状況を整理する。
始の記憶の中での最も新しい情報を呼び覚ます。
そうすることで、段々と記憶が蘇る。
始は確か、市街地で一人の男と戦っていた筈だ。
それは、神を名乗って、殺戮を繰り返す半裸の狂人。
雷を使って、自分と戦う姿が。男の気味の悪い高笑いがフラッシュバックする。
次に感じた疑問は、自分は今どういう状況にあるか。
男と戦っていたはずの自分が、どうしてこんな真っ暗な空間にいるのか。
始の周囲には何もない。あの男はおろか、建物も何もない。
前後左右、どちらを向いても永遠に続く真っ暗闇。
そこで気付いた。自分はそもそも目を開いていないのだ、と。
しかし、目を開けようにも、瞼に力が入らない。
なら身体は? 身体は動くのだろうか?
腕に力を入れる。しかし、反応はしない。腕が動いた気がしない。
それらを踏まえて考えた結果は一つ。
始は負けたのだ。あの狂人に、ビルから叩き落されて。
込み上げてくる悔しさから、拳を握り締めて、己の不甲斐なさを呪う。
護ると誓ったのに。あの家族を護るために戦うと誓ったのに、自分はあんな奴に負けてしまった。
そんな始を嘲笑うように、今度は誰かの声が聞こえてくる気がした。

『ジョーカー……ジョーカー……』

その声は、気味の悪い声で何度も、何度も名前を呼んでいた。
どこかで聞いたことのある声が、始の頭の中で響いている。
忌々しい声を振り払おうと、始は頭を揺さぶる。
されど、声は止むことなく始に語りかける。

――俺と戦えというのか。

始は頭の中で呟いた。
何度も始を呼ぶそいつは、始と決着を付けようとしているのだろう。
そうだ。この声には聞き覚えがある。
あの雪山での戦いで、とうとう決着を付けられなかった敵の声だ。
その声の主はまさしく、ダイアのカテゴリーキング――ギラファアンデッド。
カテゴリーキングの声が、何度も何度も俺を呼ぶ。
戦え、戦えと。逃れられない運命に従うままに、その忌々しい名前を呼び続ける。
そこまで決着を付けたいと言うのなら、始に逃げる理由など存在しない。それこそ望むところだ。
その声はもしかしたら幻聴なのかもしれないが、そんなことは関係ない。
ギラファアンデッドが始と戦いたがっているのは恐らく事実なのだろう。
相手が戦いを求めるのなら、始はそれに応える。そして、恒久的な闇へと封印するのみだ。
ギラファアンデッドの声に呼び覚まされるように、始は全身の感覚が戻ってくるのを感じた。


211 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 13:04:45 ID:/REqISnc
 
瞬間、始ははっと目を開き、飛び起きた。
自分に掛けられた薄い毛布を払いのけ、周囲を見渡す。
見る限りどこかの医務室だろうか。微かな薬品の匂いと、自分の周囲に設置された器具からそう判断する。
自分の腕を見れば、ご丁寧に包帯まで巻かれていた。
怪訝な表情を浮かべながら、始は自分の腕をぼんやりと眺めていた。
ふと、始が寝ていたベッドから離れた場所で、音が聞こえた。
それは、ガタッ、と。何者かが椅子から立ち上がるような音。
始は、突然聞こえた物音に視線を向ける。
紺色のショートカットの女が、銃を携えて立っていた。
その傍らには、金髪に眼鏡を掛けた女が一人。
こいつらには、確かな見覚えがある。
そう。それはつい数時間前、自分が襲った人間達。
命を刈り取るために、カリスになって襲った人間達だ。





時は数時間前へと遡る。
相川始を背負ったギンガ・ナカジマは、実に一時間という時間をかけて目的の場所へと移動した。
その目的地とは、言うまでもなくインテグラル卿の待つHELLSING本部。
しかし、真っ先に目指すのはインテグラル卿の待つ地下牢ではない。HELLSING本部内の、医務室だ。
その理由も最早説明するまでもないだろう。先刻自分が見つけ、保護したこの青年の治療をする為だ。
医務室にたどり着いたギンガは、備え付けられたベッドに、始を寝かせる。
始が持っていたデイバッグと、自分の持っているデイバッグをベッドの脇に置くと、まずは戸棚の中から消毒液を取り出した。
まずは怪我を治療することが先決だと判断したからだ。
だが、ギンガはここで驚愕することとなる。

「これは……傷が無くなってる……?」

先ほど見た時は確かに火傷の傷だらけだった。
されど、現時点での男の身体は、黒い煤さえ残っているものの、火傷らしき痕が一つも見当たらないのだ。
それはどういうことか。いくつかの理由がギンガの脳裏に浮かぶが、やはり最終的に思い当たる理由はただ一つ。
この男は、自分がここまで移動するまでの一時間で回復したのだ。
その理由として最も考えられるのは、“この男も人間では”という単純な理由。
殺生丸さんや、吸血鬼アーカードのような人外の存在が参加させられている以上、それ以外の生物が居ても何らおかしいことではない。
すぐにその考えに至る事が出来たのも、やはり日頃の捜査官としての眼力の賜物だろう。
次にギンガは、打撲していると思しき青紫の痣をいくつか発見した。
恐らく、単純な外傷は回復したが、内部に及んだダメージまでは回復が追いついていないのだろう。
まずはそういった箇所の治療を優先しようと、始の腕を取ったところで、ギンガは気付いた。

(血が黄緑色をしてる……)

所々に残った緑色の液体は、恐らく人外であるこの青年の血なのだろう。
そう考えるなら、この体中を汚す緑の液体の正体にも納得がいく。
消毒液は人間の物しかないが、大丈夫だろうか。そんな不安がギンガの頭を過る。
しかし、悩むのも一瞬。少し不安だが、きっと使わないよりはマシだろう。
血こそ緑色ではあるが、だからといって消毒液が効かない事には繋がらない。
それにこうしている間にも回復が進んでいるのなら、さして悩む事でもないだろう。
打撲した箇所に包帯を巻き終えたギンガは、デイバックからパンとペットボトルに入った水を取り出す。
今度はコップと、医務室の戸棚に入っていた熱に効きそうな薬をいくつか用意し、それらを始の傍らにそっと置いた。
最後に、医務室の冷凍庫に入っていた氷を漬けた水道水に浸したタオルを絞って、始の額に乗せると、
ギンガは極力物音を立てないように注意しながら、医務室を後にした。

212 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 13:05:36 ID:/REqISnc
 




薄暗い地下の牢屋の、その一室。
狭い部屋の隅で、インテグラは膝を抱えて座っていた。
ふっと微笑むと、懐かしい思い出を記憶の中から呼び覚ます。
そういえば、あれは今から調度十年前だったな、と。小さく微笑んだ。
十年前のあの日。それは先代ヘルシング家の当主が死んだ数日後。
権力に目が眩んだ叔父に命を狙われたインテグラは、その日も今のように小さく座り込んでいた。
あの時と違うのは、一つだけ。自分の横に、あの吸血鬼が居るか、居ないか。
吸血鬼とは、HELLSING機関の宿敵にして、人間の天敵。
吸血鬼とは、不死の化け物――アンデッドなどど呼ばれた存在。
吸血鬼とは、インテグラの世界で人間が最も恐れるべき存在。
そんな吸血鬼と、自分はここでじっと隠れていたのだ。
そんな思い出に浸りながら、インテグラはふと、ぽつりと呟いた。

「なぁ、アーカード」

記憶の中の吸血鬼に。
そして、今も自分と同じこの会場に居る吸血鬼に。
インテグラは呼びかけた。
その一言に込められた気持ちは、アーカードに対する疑問も込められていた。
お前は一体何人の人間を殺したのだ、と。
先ほど行われた放送で死んだ13人のうち、一体お前は何人殺したのだ、と。
きっとあの吸血鬼ならば、出会った人間は皆殺しているのだろう。
もしもその脅威を碌に知りもせずに、あの吸血鬼に命の取り合いを仕掛けるバカがいたなら。
そいつはまず間違いなく生きては帰れないだろう。
どんな武装をしていたって、せいぜい軽い平手打ちの一発で首ごとふっ飛ばされるのが関の山だ。
それほどまでに、アーカードは凶暴なのだ。アーカードは人間が匹敵する相手ではないのだ。
もしかしたら、先刻の放送で呼ばれた13人のうち、12人がアーカードに殺された可能性だって否めない。
殺生丸と呼ばれるヨウカイを殺したのはあの金髪であろうことから、12人に減らしてはいる。
あくまで可能性の一つであり、アーカードのような殺人鬼が他にもいるとすれば、その確率は低いという事は彼女にだって解る。
されど、そんな不安を抱かずにはいられない程に、アーカードは危険な存在なのだ。
少なくとも、半分近くの人間を殺しているのは間違いないのだろう。
そして、あの放送に踊らされ、相手の実力も知らずに命を奪おうとするバカがもし、アーカードと出くわしたら。
また人が死ぬ。同じ事の繰り返しだ。
死んだ人間が生き返ることなど、吸血鬼にでもならない限りあり得ないのに―――

「待てよ」

と、そこでインテグラの思考はストップした。

213 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 13:06:38 ID:/REqISnc
自分は今何を考えた? 死んだ人間を生き返らせようと思えば、吸血鬼にするしかない。
仮にあのアリサと呼ばれる少女が、最初から吸血鬼にされていたとしたら、どうする?
それも、ただの吸血鬼ではない。アーカード並の、最悪の部類に入る吸血鬼だ。
もしそうであれば、頭が爆ぜたにも関わらず、次回放送で生き返っていた理由が納得できる。
頭を潰されようが、四肢を潰されようが、奴ら吸血鬼には関係ないのだから。
心の臓を潰されない限り、何度だって蘇る。
それが吸血鬼。それが人間が吸血鬼を恐れる理由の一つ。
しかし、あの女にそんな事が出来るのか? あの女は自分の世界とは何のかかわりも無かった筈なのに。
いや、そう決めつけることも出来ない。例えあの女が吸血鬼でないとしても、その技術を持っているとしたら。
この会場には、このHELLSING機関を始め、自分やアーカードのような存在までも集められている。
この本部と、吸血鬼が一人と、主人が一人。たったそれだけだと、誰が断言できる。
このHELLSING本部を丸ごと持ってこられたくらいなのだ。
あの女が自分の世界からそれだけしか持ってきていない等と、誰も断言出来やしない。
もちろんこれはただの仮説に過ぎないが、アリサが復活した理由としては、吸血鬼化という理由で十分に説明できるのだ。
そして、もしもプレシアが吸血鬼の情報を持っているとしたら。

(あの女がナチと関わっている可能性もある……ということか)

そう。あの忌々しきナチスの残党。
ミレニアムの連中と関わっている可能性も考えられるということ。
そう考えると、少々厄介な相手になる。
どうしたものかと。インテグラは思考を巡らす―――その時であった。
足音が聞こえる。この地下牢の中をゆっくりと歩いて接近してくる、何者かの足音が。
インテグラは念のため、牢屋の扉に設置された小さな窓から死角になる位置に身を潜める。
もしもこれが敵なら、今はなんとかやり過ごすしか自分には出来ないから。
しかし、そんな不安は取り越し苦労に終わったらしい。

「お待たせしました。大丈夫ですか? インテグラル卿」

入口の扉の向こうから聞こえる声は、まさしく待っていた人間の声。
ギンガか? と、一言つぶやくインテグラに、少女は一言、はいと答えた。
直後。インテグラは、牢屋に入ってきたギンガの顔を見るや否や、まず一番に驚愕した。

「お、お前……その頭はどうした?」
「これが私の……私なりの決意の証です。そんなに可笑しいですか?」

ギンガの言葉に、一拍の間を置いて、インテグラはいや、と答えた。
次にインテグラの顔に浮かぶのは、小さな微笑み。ギンガには気づかれないように小さく、ふっと微笑む。
この一時間と少しの間に、ギンガの表情がすっかり変わっていたからだ。
殺生丸が死んだとあって、流石のギンガも随分と堪えていたようだが、今のギンガにその顔色は見られない。
もしもこのままギンガが腑抜けになってしまうようであれば、
インテグラはギンガを捨て置いて先に進むつもりであったが、どうやらその心配も取り越し苦労だったらしい。
恐らく殺生丸の死を受け止め、その上で前に進むことをギンガは選んだのだろう。
インテグラは、小さな満足と安心を胸に湛えながら、牢屋から一歩、足を踏み出した。





「ほう……状況は把握した。それで、その化け物(フリークス)の青年は?」
「今は医務室で寝かせています。一応治療も済んでます。」

ギンガは、インテグラを医務室へと連れて行く途中、この一時間に起こった出来事を報告していた。
恐らく、自分たちを襲ったエネルなる人物が、一つのエリアを壊滅させたのであろうこと。
その際の災害に巻き込まれ、倒壊したビルの麓で倒れていた青年を保護し、医務室で治療をしていたこと。
青年の血は緑色で、尚且つ驚異的な回復力を持ち合わせている事から、恐らく人外の存在であること。
殺生丸の刀を回収し、その思いと力を受け継いだ事までは、インテグラには報告しなかった。
それは報告するまでもないことだし、きっとインテグラもそれについては聞きはしない。
インテグラも、そこまで無粋な性格をしていないということは、ギンガも良く解っていたから。

214 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 13:07:10 ID:/REqISnc
 
「さて……その青年を拾うのは構わんが、一つ問題があるな」
「はい。彼がこの殺し合いに乗っているのかどうか。」
「そして、そいつがこの六時間で一人でも誰かを殺したのかどうか、だ。」

インテグラの言葉に、ギンガはその表情を僅かに曇らせた。
勿論その状況もギンガが想定していなかったことは無いが―――もしもあの青年が殺し合いに乗っていたら。
戦力を持たないインテグラを危険に晒すことになる。自分だって人外相手にどこまで戦えるかは解らない。
それ故に、あの青年が味方であってくれることを願うのみだ。

ややあって、医務室にたどり着いた二人は、小さなテーブルに向き合って座った。
念のためにコルトガバメントをすぐ傍に置き、いつでも青年の襲撃に耐えられるように。
幸いにもベッドは部屋の奥に設置されており、テーブルは比較的入口に近い位置に備え付けられている。
それ故に、もしもの時の為に入口の扉は開けっ放しにし、脱出経路は用意しておく。
常に青年から目を離さないようにしながら、ギンガとインテグラは状況を整理していた。

「ギンガ、あの放送の……参加者を生き返らせるという言葉についてはどう思う?」
「私は不可能だと思います。」
「ほう、それは何故?」

インテグラの鋭い眼光が、眼鏡越しにギンガを見据える。
しかしギンガは、今更それに委縮することもなく、言葉を続けた。

「私たちはパラレルワールドから連れて来られている事は既に解っている事です。
 それを利用すれば、別の世界の同一人物を連れてくることも可能かと。」
「ふむ……上出来だ、ギンガ。確かにその可能性もあり得る」

ギンガが言いたいのは、至って簡単な話だ。
例えばギンガの居る世界には、機動六課に所属するスバル・ナカジマが存在する。
勿論他の部隊に転属になった話など聞いたことが無いし、六課を止めたという記録もない。
しかし、インテグラの世界に存在するスバルの経歴は、六課だけには止まらない。
インテグラの世界に存在するスバルは、六課から出向し、HELLSING機関にまで所属しているとのこと。
これらを踏襲した上で、パラレルワールドにおける同一人物という特性を利用すれば、あのショーは実演可能となる。
勿論、ギンガが考えていることは常識外れ極まりない。そんなことはギンガ自身にだって解っている。
しかし、ここではこれまでの常識は通用しないということもまた事実。
現に自分とは異なる世界に生きていた筈のインテグラが、こうして目の前に顕在しているのだから。
そして、それを成したのは他でもない主催者――プレシア・テスタロッサその人なのだから。
それはいい。ギンガには別に引っかかる点が存在した。
それは、インテグラの物言いについてだ。
彼女は確かに、「その可能性もあり得る」といった。つまり、他の可能性も考えているということになるのだ。

「その可能性……と、いう事はインテグラル卿も何か別の可能性について心当たりが?」
「あぁ。まぁな……お前の説に比べれば随分と突飛な話になるが、あり得ない話ではない」
「……それは一体、どういった話でしょうか?」
「我々人類が吸血鬼を恐れる理由の一つとして、その不死性が挙げられる―――」

怪訝そうに尋ねるギンガ。
インテグラは、まずは吸血鬼の不死性について語り出した。
アーカード並の吸血鬼ならば、頭を爆発させられた程度で死ぬことはまずない。時間がたてば元通りだ。
HELLSING本部を丸ごと移動させ、あらゆる世界の施設を一つの会場に持ってきたプレシアならば、
考えたくはないが普通の吸血鬼の不死性を遥かに凌駕した、それこそアーカード並の吸血鬼を生み出すことも不可能ではない。
何せ、ここでは不可能はないのだ。傍で寝ている青年だって、殺生丸だって、人間ではない。
もしかしたら、吸血鬼以上の不死性を備えた化け物だって存在するのかも知れないのだから。
といっても、アーカード以上の不死性はインテグラには考えられないらしいが。
それだけにアーカードは危険な存在なのだろうと、ギンガも再認識する。

215 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 13:07:43 ID:/REqISnc
 
「それでは……現状で考えられる理由は二つ。パラレルワールド説か、吸血鬼説か
 私は前者であって欲しいとは思いますが、もしも後者なら……」
「もしも後者なら、まず間違いなくあの女一人にそれだけの芸当をこなすのは不可能だ。
 間違いなく裏に仲間が存在する。それこそ、ミレニアムのような大規模な組織がな」

ギンガも、ミレニアムについてはインテグラと最初に情報交換をした際に少しだけ情報を聞いている。
もしも吸血鬼か、それに準ずる不死性を持つ生体実験のようなものが裏で行われていたとしたら、
プレシア一人でそれを成しているとは考え難いし、それは間違いなく最悪の事態だ。
しかし実際、これだけの量の施設を丸ごと転位させている以上、それも考えられない話ではない。
これほどの大規模な催し事をするのであれば、不穏な要素を孕んだ施設をわざわざ選んで転位させるとは思えない。
まずここにある施設はすべて、その情報をプレシアに掌握されているとみて間違いないだろう。
そう考えれば、吸血鬼や、その他の様々な技術もまた、プレシアの手に渡っている可能性が高い。

「でも……だからって、ここで立ち止まる訳には行きません」
「その通りだ、ギンガ……我々に退路は無い!」
「はい!」

インテグラの言葉に、ギンガは力強く頷いた。
様々な人間の思いを背負ったギンガに、立ち止まることは許されないのだから。
例えば、殺生丸さんから受け継いだ誇り。
例えば、矢車さんから受け継いだ完全作戦。
例えば、見捨ててしまったキャロへの思い。
そして、救えなかった全ての参加者への誓い。
それら全てが、ギンガを動かす糧となっているのだ。
もう同じ後悔はしたくない、と。
その思いを込めて、殺生丸さんの刀を受け継いだ。
長かった髪の毛を切って、この誇りと共に突き進むと、決めたのだ。
決意を胸に、ギンガは再び刀を握り締めた、その時であった。
ギンガの視線の向こうで、ずっとうなされてた青年が飛び起きたのだ。
咄嗟に置いていた銃を掴み取り、身構える――が、青年が襲ってくる様子は無かった。
ただぼんやりと、自分の手を眺めているだけで、何もしようとはしない。
やがてこちらに気づいたのか、青年は一言呟いた。

「何故俺を助けた」



青年は警戒心を剥き出しにしながら、ギンガ達を睨んでいた。
当然だろう。相手が銃を構えていれば、それは自然と相手を警戒させる要因となる。
相手に信用してもらうには、まずはこちらが武装を解除する必要がある。
少なくとも起きていきなり襲われる、という事は無かったのだ。
それ故にギンガは銃をテーブルに置き、ゆっくりと始に接近した。

216 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 13:08:33 ID:/REqISnc
 
「私は時空管理局陸士108部隊所属捜査官、ギンガ・ナカジマ陸曹です。
 まずは貴方の話を聞かせ――」
「何故助けたかと聞いているんだ」

先に質問したのは相手だ。
まずは自己紹介をと思ったが、どうやら相手はその返事を待っている様子。
仕方がないとばかりに、ギンガは口を開いた。

「目の前で人が倒れてるのを、無視して通り過ぎる事は出来ません」
「俺が頼んだ訳じゃない」
「どうやらこいつは、恩人に対しての口の聞き方を知らないようだな」

二人の会話にインテグラが割り込んだ。
その口調からは少しばかりの苛立ちが感じられる。

「勝手に助けたのはお前たちだ」
「そうか。なら次からは死にかけのお前を見かけても放っておこう」
「そうしてくれ」

それだけ言うと、もう何も話す事は無いとでも言いたげに、始は立ち上がった。
それと同時に膝から地面に崩れ落ちると、始は苦しげに唸り声を上げる。
どうやら小さな外傷は治っているように見えても、内側にまで及んだ傷はまだ完治していないのだろう。
すぐにギンガは始に駆け寄り、その体を再びベッドへと寝かせた。

「ほら、まだそんな体じゃないですか。無理しないで下さい」
「クッ……うぅ……」

苦しそうに呻くと、始は目を閉じ、眠りについた。





それから一時間ほどの時間を置いて、始は再び意識を取り戻していた。
ギンガが用意したパンをがつがつと食べる始の体調は、最早完全回復と言っても良いほどだった。
当初は人間の食べ物は食べないのでは、などと懸念してはいたものの、特にそんな様子も見せない。
恐らく始は人間に極めて近い存在なのだろう。
いや、もしかするとただ血が緑色で、回復力が強いだけの人間なのかもしれない。
実際にインテグラはそんな人間と会ったことがある。13課――イスカリオテの戦士。
このゲームにも参加させられている、アレクサンド・アンデルセン神父だ。
もしかしたらこの男は、彼のような改造人間ともいうべき存在なのかも知れない。
起きてからがつがつとパンを貪るばかりで、何も言おうとはしない始に痺れを切らしたインテグラが、その口を開いた。

217 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 13:09:59 ID:/REqISnc
 
「もう治ったのか? しぶとい奴だな」
「人間の薬が効いた」
「人間の薬……か。まるでお前は人間ではないとでも言っているような言葉だな」
「そう言ったんだ」
「ほう……」

インテグラの視線が、始を突き刺すように睨む。
要は、この男もやはり吸血鬼や妖怪と同じ、化け物(フリークス)だという事だ。
始とインテグラの視線が交差するなか、この状況を余り宜しくないと判断したのか、ギンガが言葉を続ける。

「そういえば……貴方の名前は?」
「相川始」
「始さん……ですね。教えてくれますか? 貴方の身体の事を」
「見ての通りだ。俺は人間じゃない。」
「ならば相川始……お前の種族は?」
「アンデッドだ」
「何?」

すらすらと答える始の言葉に、インテグラは怪訝な表情を浮かべた。
こいつがアンデッドだと? あの、吸血鬼やグールといった不死の化け物の、アンデッドだと言いたいのか?
馬鹿馬鹿しい。緑の血のアンデッドなど聞いたこともない。

「お前の何処がアンデッドだというんだ」
「言葉の通りだ。俺は死なない。だから不死生物(アンデッド)なんだ」
「死なない……? どんなに身体をボロボロにされても、ですか?」
「そうだ。アンデッドを倒すには封印するしか方法はない」





始は、自分の世界での出来事を、ギンガ達に話し始めた。
自分たちは一万年前からこの地球上で戦い続けているアンデッドだと。
その戦いの勝者の種族がこの地球上で繁栄を謳歌し、敗者はただカードに封印されると。
しかし、ギンガ達に驚いている時間など与えられず。
それだけ話すと、始は既にデイバッグ片手に立ち上がり、ベージュのコートを羽織っていた。
 
「あの……何処へ行くんですか!?」
「わからない。俺は俺の戦いを続ける」
「もし良ければ、私達と一緒に―――」
「それは無理だよ」

始の言葉に、ギンガはえ?と呟き、始を見つめた。

「俺には全ての参加者を殺して、帰るべき場所がある。
 さっき君達が逃げられたのだって、たまたまだ」
「さっき……?」

さっき、とは一体いつの話をしているのだ。自分は今初めて始さんと話しているのに。
それはつまりここで話す前に、何処かで出会ったということだろうか?
しかし、逃げられたとはどういうことだ。
まるで一度自分達と戦っているとでも言いたげな台詞に聞こえる。
ギンガは再び思考する。
自分は今まで誰に襲われた? エネルと、あの黒い鎧の戦士。その二人だけ。
ふと、ギンガの表情から、色が無くなっていった。

218 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 13:11:11 ID:/REqISnc
 
「まさか……黒い鎧の……」
「でも……君のお陰で助かった」
「え……」
「ありがとう」

始は最後に一度だけ振り向くと、ギンガに向かって頭を下げた。
つまり、今始さんが自分達に情報を教えてくれたのは、治療をしてくれたせめてもの恩返しだとでも言いたいのか?
冗談じゃない。いくら情報を教えてくれたって、その一方で人を殺されては話にならない。
自分は何としても、彼の行動を止めなければならない。
踵を返して、一歩一歩と入口へと歩いて行く始に、ギンガは再び呼びかけた。

「待って……待って下さい!」
「まだ何かあるのか?」
「貴方はこの戦いで、誰かを殺したんですか!?
 キャロは……ピンクの髪の女の子は!」
「これから全員殺す」
「なら、何故今私たちを襲わないんですか!」
「……次会った時は、君たちも殺す」
「なんで……! どうしてそんな、人間らしさを持ってる貴方が、平気で人を殺せるんですか!?
 貴方はまだ引き返せる! 人殺しなんて絶対にさせない!」
「俺は人間じゃない」

ギンガがどれだけ呼びかけても、始は一言で切り返す。
その瞳には一切の迷いは感じられない。どうあっても修羅の道を進むつもりなのだろう。
しかし、それをさせてはギンガの思いは早くも折れてしまったということになる。
させるものか、そんなこと。絶対に、人殺しなんてさせるものか。
気付いた時には、始は走り出していた。
ギンガやインテグラを振り切る為に、この医務室を飛び出して、外の世界へと飛び出していた。
ギンガもすぐに追いかけようとするが、その前にインテグラの様子を確認しない事には動きだせない。
それ故にデイバッグを掴んだギンガは、力強くインテグラの名を呼んだ。

「インテグラル卿……!」
「私はもう大丈夫だ。ギンガ、奴を追いかけるのか?」

そうだ。急いで追いかけて、始さんを引き戻さないと、より多くの人が死んでしまう。
偶然とは言え、ここまで彼は誰も殺さなかったのだ。そんな彼を、みすみす人殺しになどしてなるものか。
殺生丸に誓ったこの思い、こんなところで諦めてなるものか。

「はい! 絶対に、あの人は私達で止めないと……また人が死んでしまいます!」
「良い返事だ。ならば迷っている暇は――」
「迷ってる間に人が死んでいくなら、私はもう迷いません。
 戦うことが罪なら、私はそれ背負って戦います!」
「――上等だ。益々気に入った! 行くぞ、ギンガ!」

インテグラが言い終えるのを待つ間もなく、ギンガはその思いをぶつけた。
その為に始との戦いが避けては通れない道だというなら、自分は始と戦ってでも彼を止める覚悟がある。
きっと殺生丸がもし自分と同じ志を抱いていてくれたならば、自分と同じ道を選んだ筈だ。
だから自分は、まずは始を追いかけて、何としてでも殺人をやめさせる。
放っておけば殺し合いを続けるのならば、彼もまたアーカードと同じだ。
自分たちが止める必要がある。そして、残った皆でこのゲームから脱出する。
それがギンガと、インテグラの選んだ道。
幸い、始はまだ遠くには行っていない。今追いかければ追いつける筈だ。
ギンガとインテグラもまた、すぐに医務室を飛び出して、走りだしていた。

219 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 13:23:12 ID:sPrfxHno
支援

220 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 14:19:26 ID:WFSV4jp9
支援

221 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 16:10:45 ID:WFSV4jp9
寝落ちした? 支援

222 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 16:22:22 ID:/REqISnc
諸般の事情で投下を中断してしまって申し訳ありません
それでは続きを投下します

223 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 16:23:05 ID:/REqISnc
 




「俺は人間じゃない……人間らしさなんて、あり得ない……」

始は一人、疾走しながら先刻ギンガに言われた言葉を否定していた。
ギンガは言った。自分は人間らしさを持っていると。まだ引き返せると。
しかし、それでは意味がない。引き返したところで、あの家族の元に帰れるとは限らないのだから。
故に始は疾走する。全ての参加者を殺すために。あの家族を守り続けるために。

始は気付かない。あの家族を守りたいというこの感情こそが、既に人間らしさに繋がっているという事に。
始は気付かない。チャンスは十分あったのに、さっきの二人を殺さなかったのは、始の中の人間の心の所為だという事に。
始は気付かない。ギンガに対して何気なく言った、感謝の言葉。「ありがとう」と。
そんなたった5文字の言葉の中に、人間としての温もりが込められていたことに。

故に始は自分に言い聞かせる。「俺は人間じゃない」と。心の中の自分に、何度も何度も。
どこかで、人間としての心に戸惑う自分が居る事にも気付かずに。
既に自分の中での戦いは始まっている事にも気付かずに。
何もかもに気付かないまま、始はただひたすら、本能の赴くままに東へと疾走する。
その先に何があるのかはわからない。
ただ、何かに呼ばれているような気がするのだ。
何に呼ばれているのか。何故呼ばれているのか。
そもそも、本当に呼ばれているのか。ただの気のせいだという可能性もある。
しかし、始の足は止まらない。
ただただ、運命に導かれるように。
始は走り続けていた。





全ての計画は、自分の思い通りに進んでいる。
気味が悪くなるほどに、自分の周囲の人間は自分に踊らされてくれている。
高町なのはと、シェルビー・M・ペンウッドは既に商店街に向かって歩き出した。
今自分の隣にいるのは、頭の悪そうな僧が一人。
自分はこいつと一緒に工場に向かって、首輪解除の手がかりを探す振りをすればいい。
後は、プレシアとかいう女と接触するチャンスさえ巡ってくれば――

「全てが俺の計画通りだ」

ククク、と。眼鏡をかけた青年――金居が、小さく笑う。
それに気づいた弁慶は、怪訝そうな表情を浮かべながら、金居に声をかけた。

「おい、何か言ったか?」
「ふふ……いや、何も言っちゃいないさ」
「気持ち悪い笑い浮かべやがって……不気味な奴だなぁ」

軽口を叩く弁慶に、苦笑いを浮かべながら、金居は対応する。
この程度で自分の計画が破綻するとは到底思えないが、念には念を入れておくのが金居という男。
漆黒の修行僧衣に身を包み、一振りの日本刀を携えた男もまた、このゲームの破綻を目的に集まった仲間。
といっても、その方法は金居とは大きく違っているのだが。
金居が目論むのは、プレシアの殺害による、ある意味ゲームの乗っ取りとも言える方法。
一方で弁慶が望むのは、純粋にプレシアを打倒し、皆でこのゲームから脱出しようというもの。
恐らくこのゲームに参加した対主催戦力の大半はこの弁慶と同じ選択したことだろう。
現にこれまで金居が出会った人物は、あの学生――柊かがみを除いて全員が純粋な対主催だ。
それ故に、金居は簡単に他者を自分のペースに乗せることが出来るのだ。
思い通りに事が進み過ぎている。それ故に、金居からは小さな微笑みは消えることは無い。

224 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 16:23:45 ID:/REqISnc
 
「それじゃあ、そろそろ工場目指して、出発しようか」
「なぁ、金居……あそこに誰かいるぞ」
「何……?」

弁慶に言われた金居は、そっと頭を上げ、その眼鏡を押し上げた。
色々と考え事をしていた為に弁慶よりも反応が遅れてしまったが―――これは間違いなく自分のミスだ。
次からは同じような事がないように注意しようと自分に誓いながら、金居はその視線を弁慶の見る方向へと向けた。
刹那、金居の表情が固まった。
あらゆる色が抜け落ちて、口元に浮かんでいた笑みは消えうせる。
そうだ。そこに立っていたのは。

「お前は……ジョーカー……!」
「カテゴリーキング!」

出会ってしまった。この会場で、ついに出くわしてしまった。
それは運命の悪戯か。目の前にいるのは、最も忌むべき存在。
奴こそは、この戦いの中で最も自分の計画の障害になるであろう男。
別に特別な因縁があるわけでも、どうしても戦いたかった相手という訳でもない。
いっそのこと勝手にのたれ死んでくれたって構わない。寧ろそっちの方が好都合だ。
ただ、最終的な目的であるバトルファイトにおいて、目の前の相手は邪魔な存在だということ。
恐らくはこの戦いの中でも、それは同じ事だろう。
きっと奴は邪魔になる。きっと奴とは相容れない。
だから戦うしかない。
この運命を呪うか、神に感謝するか。それは今後の奴の行動次第。
ここで何とか懐柔してしまうという道も、あるにはある。が、恐らくは不可能だろう。
何故ならば、奴がいずれ確実に自分の種族を脅かす敵になることだけは、明白な事実だから。
だから、この戦いの中で、確実に仕留めてしまいたいと思っていた事もまた事実。
この運命からは、どうしたって逃れることは出来ない。
それが、バトルファイトという戦いのルールなのだから。

「お、おい……ジョーカーってまさか……あいつが!?」
「ああ、そのまさかだ! 紛れもない、奴が死神ジョーカーだ!」

驚いた様子でジョーカーと自分を交互に見る弁慶に、金居は告げた。
間違いない。見間違える筈もない。
奴こそが、死神ジョーカー。相川始という名の人間の皮を被った、本物の悪魔だ。
出会ってしまった天敵に、金居がどう動くのか、それは誰にもわからない。
ただ一つだけ、二人にもわかっていることがある。
それは、奴の腹部が、赤い輝きを放っていたこと。
相川始の腹部で、赤い輝きはハートを模したベルトの姿を形成していたこと。
赤い輝きを灯したベルトの光は、確かに金居と弁慶の目にも届いていた。


225 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 16:26:30 ID:/REqISnc
 

【一日目 午前】
【現在地 D-4 学校前】

【金居@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、カードデッキの複製(タイガ)@リリカル龍騎、トランプ@なの魂、USBメモリ@オリジナル、砂糖1kg×9、ランダム支給品(未確認0〜2)
【思考】
 基本:プレシアの殺害。
 1.目の前のジョーカーをどうするか……。
 2.プレシアとの接触を試みる(その際に交渉して協力を申し出る。そして隙を作る)。
 3.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る。
 4.利用できるものは全て利用する。邪魔をする者には容赦しない。
 5.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。
 6.もしもラウズカード(スペードの10)か、時間停止に対抗出来る何らかの手段を手に入れた場合は容赦なくキングを殺す。
 7.USBメモリの中身を確認したい(パソコンのある施設を探す)
【備考】
※このデスゲームにおいてアンデッドの死亡=カードへの封印だと思っています。
※最終的な目的はアンデッド同士の戦いでの優勝なので、ジョーカーもキングも封印したいと思っています。
※カードデッキ(龍騎)の説明書をだいたい暗記しました。


【武蔵坊弁慶@ゲッターロボ昴】
【状態】健康、トカゲ達(=アグモンとギルモン)を殺した者に対する怒り
【装備】閻魔刀@魔法少女リリカルなのはStirkers May Cry、修行僧衣@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは
【道具】支給品一式、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、パイロットスーツ@ゲッターロボ昴
【思考】
 基本:殺し合いを止め、プレシアを打倒する(どうやって戦うかは考えていない)
 1.あいつがジョーカー!?
 2.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
 3.スバルと合流する。
 4.軍事基地か地上本部に行き、ネオゲッターロボの所在を確かめる。
【備考】
※自分とスバル、ティアナ、隼人の4人は、ネオゲッターロボごとここに送り込まれたのだと思い込んでいます。
※隼人はプレシアによって殺された可能性が高いと思っています。
※金居から『恐竜達を殺したのは銀色の奴の可能性がある』『ペンウッドは銀色の奴と手を組んでいる可能性がある』という話を聞きました。


【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康
【装備】ラウズカード(ハートのA〜10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、カリスラウザー
【道具】支給品一式、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
 基本:栗原親子の元へ戻るために優勝を目指す。
 1.目の前のカテゴリーキングを封印する
 2.見つけた参加者は全員殺す(アンデットもしくはそれと思しき者は優先的に殺す)
 3.ギンガとインテグラの二人には、出来る事ならもう会いたくはない。
 4.あるのならハートのJ、Q、Kが欲しい。
 5.俺は人間じゃない!
【備考】
 ※参戦時期はACT.5以前。なのは達の事は名前のみ天音より聞いた事がある(かもしれない)程度です。
 ※自身にかけられた制限にある程度気づきました。
 ※首輪を外す事は不可能だと考えています。
 ※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝者となるのではないか」という推論を立てました。
 ※相川始本人の特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘した場合、その位置をおおよそ察知できます。
 ※エネルという異質な参加者の存在から、このバトルファイトに少しだけ疑念を抱き始めました。
 ※ギンガとインテグラに対しては、どこか複雑な気持ちを抱いています。

226 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 16:27:07 ID:/REqISnc
 


始と金居が邂逅した、調度同じ頃。
ギンガとインテグラの二人は、ようやくD-4へと侵入していた。
これも全て始を止めるために。始を追いかけて、東へと走り続けた結果だ。

「ギンガ、この先には何がある?」
「確か……地図によれば、学校があったと思いますけど」

走りながら、ギンガの返事を聞いたインテグラは一言、そうかと呟いた。
その表情にはほんの少しの焦りが感じられた。
インテグラが言おうとしていた事は、ギンガにだってわかる。
もしも自分たちが追いつく前に、始が学校に到達したら。
もしも学校に戦いを避けるために逃げて来た人々が居たら。
きっとインテグラはそう言いたいのだろう。
だけど、ギンガはまだ知らない。
始が現在対峙している相手こそ、運命によって戦いを義務付けられた明確な敵であることに。
その相手こそ、自分達に―――そしてプレシアまでもをその毒牙に掛けようとする、悪しき存在であることに。
ギンガは何も知らないままに、ただ始の後を追って、学校へ向かっていた。

(始さん……貴方は絶対に、私が止めてみせる!)

始は自分に、「ありがとう」と、頭を下げた。
始は自分達を、いつでも殺せるチャンスがあったのに、それをしようとはしなかった。
間違いない、と。確信を持って言える。始の中には、確かに人間の心が宿っている。
きっと彼も、自分の中で何かと戦っているのだろう。
彼の中で、少しでも人間としての“強さ”が輝くのなら、ギンガは語りかける事を止めはしない。
自分を諦めるなと。自分の中の“弱さ”と、戦って戦って戦いぬけと、何度でも呼びかける。
その為に、ギンガは曲がらない信念を胸に、真っ直ぐに走り続ける。


運命とは、神の采配とも言える。また、運命は時に人々を試そうとする。
彼女達もまた、運命に試されるように走っているのかも知れない。
しかし、待ちうけているのがどんな運命であっても、彼女たちは迷いはしない。
もう迷わないと決めたから。もう逃げないと決めたから。
この広い会場の中、逃げも隠れもせず、運命に立ち向かう少女が、ここに一人。

魑魅魍魎が跋扈する、この地獄変―――
ギンガ・ナカジマは、ここに居る。

227 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 16:27:44 ID:/REqISnc
 


【一日目 午前】
【現在地 D-4 西側】

【ギンガ・ナカジマ@魔法妖怪リリカル殺生丸】
【状態】断髪、顔面に打撲(小)
【装備】コルト・ガバメント(7/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女
【道具】支給品一式、童子切丸@ゲッターロボ昴、ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
    ランダム支給品0〜2(確認済)
【思考】
 基本:この殺し合いを止め、プレシアを逮捕する。
 1.何としても始さんを食い止める!
 2.殺生丸さんが繋いでくれたこの命……絶対に無駄にはしない!
 3.インテグラを護衛し、アーカードを捜索する。
 4.できる事なら誰も殺したくはない。
 5.可能ならば、六課の仲間達(特にスバル)とも合流したい。
【備考】
 ※なのは(A's)、フェイト(A's)、はやて(A's)、クロノの4人が、過去から来た事、
  また一部の参加者はパラレルワールドから来た人間である事に気付きました。
 ※「このバトルロワイアルにおいて有り得ない事は何一つない」という持論を持ちました。
 ※制限に気がつきました。
 ※インテグラがいなくなった後のアーカードに恐怖を抱き始めました。
 ※アーカードを暴走させないためにも何としてもインテグラを守るつもりです。
 ※童子切丸@ゲッターロボ昴は既にぼろぼろで、戦闘には使えません。
 ※始がカリスであることを知りました。
 ※プレシアが「吸血鬼の技術を応用して死者を復活させたように見せた」という可能性に気付きました。
 ※プレシアのバックには何らかの組織が関わっていると考えています。
 ※始は人間として生きられると考えています。


【インテグラル・ファルブルケ・ヴィンゲーツ・ヘルシング@NANOSING】
【状態】全身に軽い火傷(応急処置済)
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】
 基本:この殺し合いを止め、プレシアを叩きのめす。
 1.まずは目下の問題である始を食い止める。
 2.始をなんとかした後は、アーカードの捜索を再開。発見し、指揮下に置く。
 3.できる事なら犠牲は最小限に留めたいが、向かってくる敵は殺す。
【備考】
 ※同行しているギンガが自分の知るミッドチルダに住む人間ではない事、
  一部の参加者はパラレルワールドから来た人間である事を把握しました。
 ※アーカードは参加者に施されているであろう制限の外にあると思っています。
 ※プレシアが「吸血鬼の技術を応用して死者を復活させたように見せた」という可能性に気付きました。
 ※プレシアのバックには何らかの組織が関わっていると考えています。
 ※このゲームにはアーカード並の不死性を持つ参加者が他にも居ると考えています。

228 :Don't lose yourself ◆gFOqjEuBs6 :2008/12/13(土) 16:32:16 ID:/REqISnc
投下終了です。
途中一度中断してしまい、申し訳ありません。
とりあえず地図を見たら意外に近かった金居組をぶつけてみました。
そしてギンガ爆現。これは名護さんの歌うDon't lose yourselfの歌詞が
今回のギンガに合うんじゃないかということでこうなりました。
最後はちょっと無理やりだったかも知れませんが……。

それでは感想、指摘などあればよろしくお願いします。

229 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:26:45 ID:EOuwoUza
投下乙です。
ギンガ説得ならずか。まあこの手の手合いは何度も重ねてこそ映えるというものですかね。
そして因縁の再会w双方の思考が思考だけにこれは激突必至かw

一つ指摘が。
HELLSING本部から見て学校方面は西なんですが、作中の「東」は「西」の間違いではないでしょうか。

230 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:57:18 ID:FYVDfmNr
投下乙。
替え歌にはまっているが、このロワの銀河で作ってみたい。

231 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/13(土) 22:57:51 ID:FYVDfmNr
sage忘れすみません

232 : ◆7pf62HiyTE :2008/12/14(日) 00:43:36 ID:7de5dcFD
つかさ、フェイト(A's)2名投下します。

233 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:45:24 ID:9iUnmGTC
 

234 :そんな運命 ◆7pf62HiyTE :2008/12/14(日) 00:45:48 ID:7de5dcFD



−Side Tsukasa Hiiragi−

プレシアがこの殺し合いを始めてから6時間以上が経過した。これまでの死者は既に13名……いや、既にそれよりも何名かが増加している。
それはそれだけ激しい殺し合いが行われている事を意味している。この場において殺し合いに乗った者、そしてこれから殺し合いに乗る者は数多い、この後も彼らによって死者が出ることは確実だろう。
そう、彼らの思惑が何であれ全ては主催者であるプレシアの予定通りに進んでいるのだ。

だが、参加者の中には殺し合いを良しとしない者も数多くいる。
彼らは同じ目的を持った仲間を集めたり、傷ついた者や弱者を保護し少しずつ集団を作り出し、様々な施設や支給品を駆使してプレシアへの対抗策を見いだそうとしている。
勿論、大切な者の死や人知れず優勝を狙う者達等によって心乱され堕ちた者や堕ちかけた者も幾人かいる。それでも彼らは仲間と助け合い、道具や施設を駆使して生き残りこの殺し合いから脱出しようとするだろう。

さて、今現在の状況でもっとも過酷な状況に置かれていると言えるのは誰だろうか?

その人物は柊つかさと言う事が出来るであろう……

つかさは元々姉であるかがみや友達であるこなた達と変わったこと等まず起こらない平凡な日常を過ごしていた。
その変わった事もつい最近転校してきたなのはやフェイトと新たに友達になった程度のもので平凡な日常の延長程度のものだ。
つまり、つかさにとっては魔法少女や変身ヒーローというのは全く無縁の非日常な者であり、彼女には特殊な力など何もないのだ。

そんな彼女は今、H-5にあるデパートでフェイトが戻ってくるのを待っていた。
フェイトといっても、つかさの友達であるフェイトではない。フェイトの話ではつかさの知るフェイトはプレシアが作り出したもう1人のフェイトという事である。
真実はどうあれその事を説明してくれたフェイトがつかさの知るフェイトではない事は間違いない。
それでもつかさにとってはそのフェイトも友達であった……彼女はフェイトの身を案じ、その帰りを待っていた。

さて、先程も述べたとおり彼女は過酷な状況に置かれている。

フェイトはデパートをプレシアに対抗する者達の避難所にする事を考えそこにバリケートを構築しつかさをそこに置き、フェイトは首輪解除の手がかり確保やかがみ達捜索の為H-3にある機動六課隊舎に向かった。
フェイトの予定としては正午にはデパートに戻ってくるつもりだったのだ。
だが、プレシアがフェイトの行動を知った上かどうかは不明だが11時にはデパートと機動六課隊舎の間にあるH-4が禁止エリアになる事が決まった。
これにより、フェイトが機動六課隊舎からデパートへ正午まで戻るには11時前にH-4を抜けるか遠回りするしかなくなるわけだが問題はそれだけではない。
地図を見ればわかることだがデパートの東のH-6、南のI-5には丁度川が横切っており空の飛べない者は通る事が困難だ。そう、11時にH-4が禁止エリアとなればデパートの周囲3方向が封鎖されてしまうといえるのだ。
だが、問題はこれだけではない。すぐ北のG-5にあるDevil May Cryではアーカードが闘争を求めて参加者達に呼びかけ彼らを待ち構えている。
その周囲にはアーカードの宿敵アンデルセンや先程殺し合いに乗りアーカードを優先的に殺そうと考えるセフィロス、そのセフィロスを追うアンジールがいる。
つまり、北の方に向かえば彼らの襲撃もしくは彼らの戦いに巻き込まれる可能性が非常に高いのだ。更に言えば彼らがそのまま南にあるデパートに行き着きつかさを襲撃する可能性もある。
前述のようにつかさには何の力もなく頼みの支給品も電話帳と『青眼の白龍』のカードだけである。
『青眼の白龍』自体は強力な力を持つがつかさはその効果を知らないし、仮に知っていたとしてもその力につかさが耐えられるかどうかはわからない。耐えられたとしてもたった1枚で彼ら全員に対抗できるとは思えない。
故に誰かが襲撃してきた時点でつかさが生き残るのは厳しいと言えるだろう。

235 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:46:25 ID:9iUnmGTC
 

236 :そんな運命 ◆7pf62HiyTE :2008/12/14(日) 00:48:01 ID:7de5dcFD

問題は北だけではない。フェイトが向かったはずの機動六課隊舎ではつい先ほど殺し合いに乗った者がいる。その者がこちらに向かってくる可能性は多分にある。
確かに11時になればH-4は禁止エリアになるがそれまでには何時間か時間がある。その時までに抜ければ何の問題もない。
救援の可能性……それも厳しいだろう…周囲に殺し合いに乗っていなくてつかさを助けられる力を持つ参加者は『誰も』いない。

そして不幸な事はつかさ自身はこれらの状況の殆どを把握していないことだろう。
聞こえる騒音から近くで激しい戦いが起こっていることはわかるだろうがせいぜいその程度の事しかわからない。周囲の参加者の動向や生死なんて把握できるわけがない。
さらにつかさは放送で言っていた禁止エリアを忘れてしまっている。つまり、すぐ西のH-4が11時に封鎖される事も全く知らず、これによりフェイトの行動に影響が出るかも知れないと想像する事すら出来ないのだ。

以上の事からつかさは自分が考えている以上に過酷な状況に置かれているということになるのである。

勿論、つかさ自身はこの状況はいっさい知らずただバリケートの中で震えていた。先ほどまで聞こえていた戦いの音は今は止んでいる。恐らく戦いは終わったのだろう。
だが、つかさの心は晴れない。静かな分むしろ余計に不安が広がってしまう……。

「フェイトちゃん……無事でいて……」

つかさはフェイトがあの戦いに巻き込まれて犠牲になったのではないかという最悪の事態が頭をよぎった……つかさはフェイトが向かった方角も戦いが起こった方角も把握できていない。
つまり、フェイトが向かった方向で戦いが起こったという可能性もあるのだ。
フェイトが犠牲になれば自分を助けてくれる人はいなくなるが、心優しいつかさはその事は考えずただ友達であるフェイトの身を案じた……フェイトが無事である様にと願った。
だが、どういうわけか不安は消えない。いくらその考えをしないように考えてもついつい考えてしまうのだ。不安の余りつかさの目からは涙が零れていた。

「フェイトちゃん……お姉ちゃん……こなちゃん……」

つかさはなんとか不安をかき消すため楽しかった日々の事を考える。なのは達が転校してきた時の事を考えると再び不安がよぎる為、彼女達が転校してくる前……つかさ達が2年生の時の出来事を思い出していった。


かがみやこなたと監禁事件について話していた時のこと、

『女の子に自分のことご主人様とか呼ばせたりさ』
『ふーん』
『それってさ、モラル云々より単にギャルゲーやエロゲーのやり過ぎってことじゃない。よくあるシチュだしさ』
『そりゃまんまアンタの事でしょーが! …ってちょっと待て何でアダルトゲームの内容知ってるんだ?高校2年生』
『ふっ』


自分とかがみの誕生日の時のこと、みゆきからはペアのイヤリングをもらいこなたからは……

『『団長』腕章、付けてみて』
『何でこんなのつけなきゃいけないのよ!?』
『かがみならピッタシ似合うと思ったんじゃがなぁ』
『アンタのが似合いそうだ』
『あの……じゃあこれは……』
『とぅはぁ!?』
『それ高かったよー。大事に着てねー』
『姉妹揃ってコスプレさせるな!』
『うちの制服とあんま変わんないじゃん……』


血液型占いで色々話していた時のこと、

『性格的なイメージでいくとつかさがA型かがみがB型に見えるな』
『私達は2人ともB型よ。ていうか双子なんだから』
『あそうか、こりゃ失念』
『アンタほどマイペースじゃないけどな』
『占いと言えば動物とかお寿司なんていうのもありましたよね』

237 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:48:09 ID:9iUnmGTC
 

238 :そんな運命 ◆7pf62HiyTE :2008/12/14(日) 00:50:25 ID:7de5dcFD


「あの後、こなちゃんがネットで寿司占いのページを開いてくれたんだっけ……確かゆきちゃんがいくらで私とお姉ちゃんがかっぱ巻き……こなちゃんは……がり……」

その時にかがみが笑っていて『がりを馬鹿にするな!』とこなたが言った事を思い出した時にはつかさの顔に笑みが零れていた。と、ここまで思い出して、

「あ、そうだ……」

つかさはバリケートから抜け出しある場所に向かった。そのある場所とはデパートといった大きな店には必ずあるサービスカウンタである。
デパートの中は電気、照明、水道が生きており、商品もその殆どが閉店後そのままになっていた。そしてサービスカウンタもそのままになっている。

「あった」

つかさが見つけたのはサービスカウンタにあるパソコン。そう、つかさが考えたのはパソコンのインターネットを使っての外部との連絡である。何とか連絡を取ることが出来れば助けを求めることも出来る……。
と、そう考えてパソコンを弄っては見たもののすぐさまつかさは落胆した。

そう、確かにパソコンは生きていて使えた。だが、ブラウザソフトを使って外部のサイトへアクセスすることは不可能だったのだ。
プレシアが外部との連絡を許すわけはないので当然の話ではあるが、つかさはその考えに至らず淡い期待を持ち実際に使ってからそれに気づいた為、落胆の色は濃かった。

「こなちゃんやお姉ちゃんやゆきちゃんだったらなんとかしてくれると思うんだけど……」

現代社会においてインターネットは一般的であり、つかさもある程度は使えるが所詮は一般高校生程度の知識でしかない。
この場にいるのが柊家の中で一番パソコンに詳しいかがみや、ネットゲームもプレイするこなた等であれば、このパソコンでも色々調べてくれるだろうが彼女達はこの場におらず、つかさではどうする事も出来ない。

「フェイトちゃんが帰ってきた時にいなかったら心配するから戻ろう……」

と、戻ろうとパソコンから視線をそらそうとしたが画面のあるアイコンが目に入った。

「……あれ?これって……」

つかさはそのアイコンをクリックした。そのアイコンはメールの受信を示すアイコンである。そして、メールソフトが立ち上がる。

「あっ……」

画面にはメールが映し出されていた。

「受信したのは……ついさっき?」

受信時刻を確認すると6時半過ぎ……つかさがサービスカウンタに来る直前である。つまり、何者かが6時半過ぎに何処からかこのパソコンのアドレスへメールを送信したということである。

「やっぱりこのパソコンを使えば助けが呼べるんだ……あ、でも何処へ連絡すればいいかわからないよぉ……」

そう、メールを出そうにもつかさはアドレスが全く分からない。出せるのはこのパソコンのアドレスと、先ほどのメールのアドレスだけである。

「でもこのメールを出した人と連絡とれるよね……」

とはいえメールの受信時間から考えてすぐにでも返信すればその相手と連絡を取ることは可能だろう。つかさはその相手に返信しよう考えるが、ひとまずメールの文面を確認する。差出人は『月村すずかの友人』となっていた。

「誰なんだろう……この人……?」

つかさはその人物が誰かわからなかった。もしつかさがなのは達ともう少し親しければなのは達の友人であるすずか達の事も知っていただろう。
そうなれば、メールの差出人がすずかの友達であるなのは、フェイト、はやてだという事がわかっただろうが、なのは達との付き合いが浅い為につかさは彼女の存在を知らなかった。
つかさにとっては正体不明の人物からのメールではあったものの自分を助けてくれるかも知れないと考え彼女はその内容を疑わずメールの中身を見ることにした。

メールに書かれている内容は大まかに4つ、『各施設仕掛け調査』、『地上本部の罠』、『キングへの警戒』、『放送内容の反覆』である。その内容を見て、

239 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:51:01 ID:9iUnmGTC
 

240 :そんな運命 ◆7pf62HiyTE :2008/12/14(日) 00:51:59 ID:7de5dcFD

「放送って言われてもそんなのもう覚えていないよぉ……」

放送では禁止エリアや死者の名前、そして他にも重要な事があったはずだがなのはの死を聞かされ色々不安に襲われ、フェイトの身を案じていた為その内容は殆ど覚えていない。
覚えているのはせいぜいなのはを含む死者数名の名前程度である。故に放送内容から何か考えろと言われてもそれは無理な話であった。続いて、

「キングに気を付けろって……」

つかさは名簿を確認しキングの名前を確認する。

「携帯を持った少年って話だけどそれってむしろ王子様……プリンスなんじゃ……どういうことなんだろう……」

何故キングという名前なのかは疑問に感じたものの警戒しなければならない相手という話なので心に留めておく。
ここまでの内容は現状のつかさにとってはあまり重要ではないが、残る内容はつかさにとっては重要な意味を持っている。

「施設に仕掛けがあるって本当なのかな……?」

それは施設の仕掛けを調べてという内容である。具体的に地上本部には仲間を散り散りにさせる罠があると書かれていた事からも施設に何かしらの仕掛けがある可能性は高いだろう。
つかさは知らない話だが、事実として地上本部以外にもスカリエッティのアジトには使い方によっては状況をひっくり返しかねないガジェットドローンやゾハナカプセルがあった。
つまり、施設を調べて仕掛けや新たな道具を見つけることでこの状況を変えることが出来るかもしれないということのだ。
既にフェイトがある程度デパートは調べたもののその全てを調べているわけではない。これからデパートを調べることで何かが見つかる可能性はあると言える。

「でもどうしよう……フェイトちゃんが帰ってきた時に私があそこにいなかったらきっと心配するだろうし……」

つかさはデパートを調べるかどうか迷っていた。広いデパートを1人で調べるには時間がかかる。その間にフェイトが戻ってきてバリケートの中に自分がいなければ心配させてしまうことは確実だ。
だが、使える支給品の無いつかさにとって仕掛けの話は朗報である。何か見つけることが出来ればフェイトやかがみ達を助けることができるはずなのだ。
それ故にこの後どうするかつかさは迷う……メールの差出人は施設の仕掛けを調べて欲しいと言っている……メールを返信するなら調べるかどうかを決めてからの方が良いだろうと思っていた。
つかさは知らない話だが状況は今も変化し続けている。早めに決断し行動しなければ手遅れになる可能性は高いだろう。

「あーもうどうしたらいいんだろう……」

そんな中、つかさは再びフェイトの身を案じる。

「フェイトちゃん……大丈夫なのかな……」

それは先ほどの戦いでの安否だけではない。なのはが死んだことを聞かされショックを受けていないかどうかである。放送で呼ばれたなのはがつかさの友人のなのはかも知れないし、フェイトの知り合いのなのはかも知れないのだ。
どちらかがわからないということはどちらかであるかも知れないということ……放送を聞かされてショックを受けその後どうなるかなどつかさには想像できるわけがない。

「なのはさんが死んだって聞いて……」

【1日目 朝】
【現在地 H-5 デパートサービスカウンタ】
【柊つかさ@なの☆すた】
【状態】不安、 ひざ小僧ヒリヒリ
【装備】シーナのバリアジャケット@SHINING WIND CROSS LYRICAL
【道具】支給品一式、電話帳@オリジナル、
    青眼の白龍@リリカル遊戯王GX番外編 「最強! 華麗! 究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)」
【思考】
 基本:殺し合いを避ける
 1:施設を調べるかどうかを決めメールを返信する。
 2:フェイトちゃんが帰ってくるまでデパートにいる(早く帰ってきて!)。
 3:家族や友達に会いたい。
 【備考】
  ※遊城十代が殺し合いに乗っていると思っています。
  ※禁止エリアの位置を忘れました。ご褒美の話も忘れています。死者の名前数名分しか覚えていません(なのはが呼ばれた事は覚えている)。
  ※電話帳はあまり役に立たない物だと思っています。また、遊戯王カードが武器として使えることに気付いていません。
  ※キングを警戒する事にしました。
  ※メールの差出人と内容を信用しています。

241 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:52:24 ID:9iUnmGTC
 

242 :そんな運命 ◆7pf62HiyTE :2008/12/14(日) 00:53:10 ID:7de5dcFD



−Side Fate Testarossa−

H-3にある機動六課隊舎は炎に包まれていた。その近くのビルの屋上にフェイトはいた。
但し彼女はつかさと別れ機動六課隊舎へ向かったフェイト・T・ハラオウンではない。更に言えばかがみのクラスに転校してきたフェイト・T・ハラオウンでもない。
彼女は彼女達とはその容姿が違う……いや、正確に言えば10年ほど幼かった。そう、彼女は闇の書事件が終わった後でリンディ・ハラオウンからの養子の受け入れたフェイト・T・ハラオウン……
いや、最早彼女はフェイト・T・ハラオウンではないだろう……彼女自身が『ハラオウン』の姓を返したのだ。
彼女は主催者プレシアの人形としてジュエルシードを探していた頃の彼女、フェイト・テスタロッサに戻ったのだ……少なくても彼女はそう思っている。

何故、彼女は『ハラオウン』の性を返しあの時のフェイトに戻ろうとしたのだろうか?
それは全て先程の放送が原因である。放送では13人もの死者が呼ばれた。いや、人数など問題ではない。呼ばれた者が問題なのだ。
リンディの息子でフェイトの義兄となったクロノ・ハラオウン、闇の書事件では敵対した者の今では好敵手となったシグナム……

そしてPT事件での何度かの激突を経てようやく友達となれた高町なのは……

彼女達……特になのはの死がフェイトを絶望に叩き落としたのだ。それだけであるならば、同行者であった新庄・運切が支えてあげれば多少時間がかかってもまだ立ち直る事が出来たかも知れない。

だが、放送で伝えられたある内容が彼女を変えてしまったのだ。それは優勝者には願いを叶えるという悪魔の言葉である……死者を蘇らせることも可能だと……。
口だけならばきっとフェイトは信じなかっただろう……プレシアの娘アリシアのクローンとして作り出されたが失敗に終わった存在であるフェイトならば……。
しかし、放送では御丁寧に最初に殺されたアリサの蘇生実演が行われそれが可能である事が示された。なのは達の死で冷静な判断力を失ったフェイトはプレシアが完全な死者蘇生ができると考えたのだ。

故に彼女は殺し合いで最後の1人となり、死んでしまったなのは達やこれから自分が殺す人達を生き返らせる事に決めたのだ。
手始めに新庄を乗せたヘリに攻撃を仕掛け爆破させ彼(彼女)を殺し、参加者を集める為機動六課隊舎を燃やしたのだ。もう、後戻りは出来ない。
幾ら生き返らせるとはいえ殺人が決して許されない事などわかっている。だからこそフェイトはリンディの娘になる資格は無いと考え、『ハラオウン』の性を返したのだ。

243 :そんな運命 ◆7pf62HiyTE :2008/12/14(日) 00:54:42 ID:7de5dcFD

フェイトはしばし炎に包まれる隊舎を見ていた。10年後の彼女であるならば大事な場所ではあったはずだがここにいる彼女にとっては施設の1つ程度の場所でしかない。故に燃え尽きたとしても殆ど何の感慨も湧かないだろう。

さて、フェイトはこれからどうするかを地図を見ながら考える。
機動六課隊舎を燃やしたのはこれを見た参加者を集めるという目的も一応はあったがそれについては過度な期待はしていないし、そもそも激情に身を任せての行動に近かったので先の事までを深く考えていたわけではない。
つまり、やって来る参加者にどう対処するか等の今後の行動については殆ど考えていなかったのである。

「移動しようかな……」

フェイトは機動六課隊舎から離れる事に決めた。先程述べたとおりこの場に参加者が集まる事についてはそこまで期待していない。ここで待った所で徒労に終わる可能性は高い。
それにやって来る参加者が殺し合いに乗っていてなおかつ強大な力を持っている可能性は十分にあり得る。なにしろ実力者であるなのははクロノ、シグナムが早々に殺されるのだ、いて当然と考えて良いだろう。
そんな連中を相手にして自分が戦えるだろうか?まず不可能だろう。
確かにフェイトの手元にはオーバーフラッグというデバイスがある。しかしオーバーフラッグはライフル型のデバイスだ。一応魔力刃を展開できるものの自分の戦い方に合っているとは言い難いとフェイトは思っていた。
故に現状で強大な力を持つ参加者に立ち向かうなどまず不可能、当面は避けた方が良いのは確実だ。当面は彼らを放置して互いを潰し合わせたり他の参加者を減らしてもらえばいいだろう。
だが、最後の1人になるつもりであれば何時かは彼らと戦わなければならない時が来る。その為に戦力を整える必要がある。
差し当たっての目的は自分の戦い方に合ったデバイスの確保だろう、理想は自身のデバイスであるバルディッシュ、もしくはシグナムのデバイスレヴァンティンが良いだろう。
他にも確保しておきたい道具はある。元々は自身の支給品……今は遊城十代という少年を守る為に殺し合いに乗った早乙女レイが持っているであろうカード……
そのカードが何なのかはフェイトは知らない。だが、レイはそのカードを使った事でモンスターを召喚した。つまり、あのカードにはその力があるという事だ。
あの時召喚したカードは確か『風化戦士』……後の2枚は絵柄から見て召喚する類の物ではないだろうが何かしらの力があると考えて間違いはない。ならば同じ様なカードも確保しておいた方が良いだろうとフェイトは考えた。

そしてフェイトは地図を見つめ何処へ向かうかを考える……。

「デパートに行こうかな」

フェイトはH-5にあるデパートを目的地に定めた。アパートがそのままになっていた事からもデパートもそのままになっている可能性は非常に高い。
デパートには資材が揃っているということである。殺し合いを止めようとする参加者が一時的な拠点にしようとしてもおかしくはない。そこを襲撃して支給品等の道具を手に入れようとフェイトは考えたのだ。

デパートを選んだのにはもう1つ理由がある。それは禁止エリアの存在だ。機動六課隊舎とデパートの間にあるH-4は11時に禁止エリアとなる。
プレシアが何故自分のいる場所の近くを禁止エリアにしたのか気になる所だがそれについてはひとまず考えない。
さて、デパートの東と南は川が通り参加者の行く手を遮っている。ここで11時にH-4が禁止エリアとなれば北以外の道が寸断される事となる。
つまり、逃げられたとしても逃げた方向はすぐにわかり追撃は可能だということだ。逆に他の参加者が襲うとしてもまず北からの可能性が高いので対策も立てられる。
逆に自分が殺し合いに乗った強い相手やヴィータ達と戦う事となり追いつめられたとしても飛行魔法が使える自分であれば川越えは可能なので逃げる事は可能だろう。

更に言えば11時になれば禁止エリアになるが今の時刻は7時前、11時前にH-4を抜ける事については何の問題もない。
一方で他の参加者がわざわざ禁止エリアになりそうな場所に足を踏み入れる様な真似はまずしないだろうから途中で襲われる可能性は低い。
故に時間をかけてH-4を抜け態勢を整えて11時を過ぎてからデパートを襲撃すれば良いだろう。フェイトはそう考えていた。

244 :そんな運命 ◆7pf62HiyTE :2008/12/14(日) 00:56:13 ID:7de5dcFD

以上の事を考えデパートへと足を進め……

……様としたものの、不思議と足は動かなかった。
どうして足が動かないのだろうか?まだ迷っているのだろうか?本当はまだ『ハラオウン』に戻りたいと思っているのか?
そんな事が許されるはずがない。既に自分は1人殺している……もう戻る事も立ち止まる事も許されない。そう、最後の1人となってなのはやシグナムやクロノを生き返らせる……そう決めたのだ。

と、フェイトは何かを思い出しデイパックを開ける。今現在フェイトの持っているデイパックは新庄が持っていたもの。その中には新庄に支給された最後の支給品がある。
フェイトはその中に入っている蝶の形をしたマスクを顔に着けて思わず口にする……

「パピ……ヨン……」

最後の支給品……それはタイツとマスクがセットになった物で備え付けてあった説明書には『パピヨンマスク&スーツ』と書かれていた。説明書には『蝶人パピヨンが身に着けている蝶サイコーなマスクとスーツ』と書かれていた。
正直な所プレシアが何処から手に入れたのか、何故これを手に入れたのか、何故これを支給したのかと色々理解に苦しむがそれについてもやはり考えない。
オーバーフラッグのお陰でバリアジャケットを展開できる以上スーツ(どう見てもタイツだが)は必要ない。
もっとも、9歳のフェイトに合うサイズではないからそもそも身につけられないが……いや、仮に成長しても身につけたくは無いなとは思っているが。
だが、マスクの方は今の自分にとって都合が良いだろう。それを身に付ける事で今までの自分を捨て去る事が出来、気持ちを切り替えこれから人殺しを行う事が出来るのだから。

「蝶サイコー……」

本当にそんな気持ちになっているわけではない。それでもマスクをつけることで気持ちは切り替わった。
フェイトはデパートへ向かう為歩き始めた。そこにはもう1人の自分を待つ少女がいて、少女がレイの持っているカードの種類の中でも最強の力を持っているカードを持っている事などフェイトには知る由も無かった。

【1日目 朝】
【現在地 H-3 機動六課隊舎を見下ろせるビルの屋上】
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
【状態】健康、魔力消費(小)、左腕に軽い切傷(治療済み、包帯代わりにシーツが巻かれている)、強い歪んだ決意
【装備】オーバーフラッグ@魔法妖怪リリカル殺生丸、パピヨンマスク@なのは×錬金
【道具】支給品一式、医療品(消毒液、包帯など)、パピヨンスーツ@なのは×錬金
【思考】
 基本:皆で一緒に帰る。
 1:11時までにH-4を抜け11時を過ぎたらデパートに向かう。
 2:皆を殺して最後の一人になる。そして皆を生き返らせる。
【備考】
※もう一人のフェイトを、自分と同じアリシアのクローン体だと思っています(激しい感情によって忘却中)。
※なのはとはやても一人はクローンなのではと思っています(激しい感情によって忘却中)。
※新庄は死んだと思っています。
※激しい感情から小さな矛盾は考えないようにしています。追及されるとどうなるか不明。

【パピヨンマスク&スーツ@なのは×錬金】
 蝶人パピヨンが身に着けている蝶サイコーなマスクとスーツ(タイツ)がセットになった物
 身につけた所で蝶サイコーな気分になれるかは定かではない

245 :そんな運命 ◆7pf62HiyTE :2008/12/14(日) 00:58:15 ID:7de5dcFD



−Side Fate T Harlaown−

H-6……そこには病院があった。だがこの殺し合いが始まってから6時間強に渡る数々の激闘によって今はもう残骸しか残っていない。
そこには何人もの参加者の死体が転がっている。神崎優衣、高町なのは、ディエチ……そして、つい数十分前にもう1人……
その死体の身体は数十もの肉片となっており最早原型を留めていなかった……
だが、不思議な事に頭部には一切傷がなかった。

その死体はフェイト・T・ハラオウンのものだった。つかさを保護したフェイトの……

彼女は放送を聞いた後悲しみにくれた……だが、彼女はもう1人の自分と違い殺し合いに乗る事は無かった。彼女はこの殺し合いの厳しさを実感しつかさを守る為に一度デパートに戻ったのだ。
飛行魔法を使う事ですぐにデパートの屋上に戻る事が出来、そしてすぐさまつかさの元へ向かおうとした。だが、その時に東の方で戦闘が行われている音が聞こえてきたのだ。
彼女はつかさを守る事を優先するか戦闘を止めるか考えた。思案の末、彼女は戦闘を止める為に東……病院へ向かった。
たどり着いた時には戦闘は終わっていた。フェイトはそこである男性を見つけ呼びかけた……その男性が戦闘に関わっている事は明白だったが男性には外傷はなく、フェイトは詳しい事を聞こうとしたが……

『どうしたんで――』
『逃げろぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!』

その男性の右腕から放たれた光によって……フェイトの命は終わりを告げた。

つかさを助ける事も、もう1人の自分の凶行を止める事も、殺し合いを行うプレシアを止める事も最早出来やしない。
彼女は何処で間違えてしまったのだろうか?
放送後すぐにデパートへ戻ろうとした事か?つかさの元に戻るよりも戦闘を止める事を優先した事か?相手の男性に接触した事だろうか?
いや、きっとどの行動も間違ってはいない。本来であればそれらの行動は全て正しい事だっただろう。
ただ……ほんのちょっと……1分程度……タイミングが悪かっただけなのだ……何処かの行動でほんの1分時間がずれればきっと悲劇は起こらなかっただろう。

だが、今となっては後の祭りでしかない。

彼女の死はつかさを1人にする結果を生み、もう1人の自分の凶行を止められなくなり、つかさを更なる危機に追い込む結果を生んだ。
さらに自分を結果的に殺した男性……ヴァッシュ・ザ・スタンピードの心に深い傷を残したのだ。

それはきっと彼女の名が示す通り運命だったのかも知れない。だが、彼女が死んでもつかさ、もう1人のフェイト、ヴァッシュやその他多くの参加者の物語は終わらない。

運命の輪は廻り続ける……。

246 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 00:59:58 ID:9iUnmGTC
 

247 : ◆7pf62HiyTE :2008/12/14(日) 01:03:25 ID:7de5dcFD
投下完了、支援の方ありがとうございました……思えば仮投下を行わずいきなり本投下は初です。何か問題があれば指摘の方お願いいたします。

というわけでつかさをメールに気づかせ、同時にフェイトをデパートへ向かわせてみました。ある意味つかさ最大の危機です。

ちなみにサブタイトルの元ネタはらき☆すた第9話のサブタイトル『そんな感覚』からです。

248 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/14(日) 01:13:12 ID:9iUnmGTC
投下乙です。
つかさピンチwww早くそこから逃げ――いや逃げたら外の奴らに……
まさに八方塞がりwどうするつかさw
そしてフェイト…着実に思考がヤバめになっていくwいいぞ、もっと突き抜けちゃえw

249 : ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 11:11:17 ID:H4bvb4lo
万丈目を投下します。

250 :サンダー遭難中... そして、バクラの考察  ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 11:13:17 ID:H4bvb4lo
何故だ。
何故こんなことになっている?
なんで、なんで……



「なんで誰にも会えないんだ!!!!!!!!!!!」
『あんまり大声出すなよ宿主サマ。周りに聞こえちまうぜぇ。……まぁ、そう言いたくなる気持ちはわかるけどよ』

万丈目とバクラは、今スーパーの前に居た。
あれから東にある市街地に向かった二人(実際には一人だが)は、近場で尚且つ人が居そうな場所――という訳でスーパーに向かったのだ。
だが、スーパーの中には結局、人は見つからなかった。
いや、それどころか先程居た場所からこのスーパーに行くまでの間に、誰にも会えなかったりする。
いや、本当に……
なんか……こう……

『同情するぜぇ、宿主サマ』
「うるさい!!! 少し黙ってろバクラ!!!」

ちなみに、市街地の中心付近には結構参加者がいるのだが、万丈目のいる付近には人が居なかったりする。
まったく、不運としか言いようがない。

『いいや、黙んないぜぇ。このまま誰一人として人に会えなかったら、死ぬのは宿主サマなんだぜぇ?』
「くっ……!!わかっているそんなこと……」

そう。
万丈目は今現在、危機的状況にあるのだ。
万丈目の支給品の一つであるカードデッキ。
非常に強力な力を持っているが、この支給品には一つのリスクがある。


251 :サンダー遭難中... そして、バクラの考察  ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 11:14:08 ID:H4bvb4lo
「生きた参加者」を契約モンスターに喰わせること。
しかも、喰わせなければ――

「自分が喰われるか……」
『正確には所有者が喰われる、だけどな』
「貴様に言われんでもわかってる」

万丈目としては生贄を捧げたいわけではない。
だが、自身が喰われたいわけでもないのだ。
出来ればカードデッキの持ち主を探したいが、もしもの時は……

『いずれにしても、人を見つけなきゃいけないって時に誰にも会えないなんてな』
「唯一会ったのが、あの眼帯の少女だけとは……お前のせいではないよな」
『まっさか!俺にそんな力はねぇよ』

無論それはわかってはいたが、しかし万丈目はここまで人に会えないものなのか、と思っていた。

『確かにな……もう少し会えてもいいんじゃねぇか。なぁ、宿主サマ?』
「だから、心を読むなと何度も……」

そこから先の言葉が続くことはなかった。
なぜなら――

『さて、皆が待ち望んだ最初の放送の時間が来たわ。』

プレシアの放送が始まったからだ。


 ◇   ◇   ◇


「くそ……もう犠牲が出ているのかっ!!」
『13人か……思ったより盛り上がってるじゃねぇか……』



252 :サンダー遭難中... そして、バクラの考察  ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 11:15:07 ID:H4bvb4lo
バクラはともかく、万丈目は放送を聴いた時、ある人物に大変激怒していた。
プレシアはもちろんだったが、今万条目が激怒している人物というのは他でもない、自分自身だった。
もしかしたら、止めることが出来たのかもしれないのに。
幸いにもアカデミア組は全員無事だった。そのことは良しとしよう。
だが……

高町なのは  ティアナ・ランスター  エリオ・モンディアル

魔道師6人の内の3人
この3人は無事ではなかった。
ゲームに乗った人間に殺されたのだ。
あるいは、誰かを助けるために犠牲になったのかもしれない。
いずれにしても、この三人は万丈目にとって仲間だった。
だというのに、万丈目準はただ人を捜しているだけで何もできなかった。
もしかしたら、あの眼帯の少女がやったのかもしれない。
だったら、あそこで止めていたら……あるいは……

『……別に慰めるわけじゃねぇがよ、悔やもうが自己嫌悪しようが死者は基本的に帰ってこねぇよ』
「……貴様はここにいるだろうが」
『まぁ、そりゃそうだけどな』

バクラと会話している間に少しだが、気が楽になった気がする。
初めて、バクラに感謝することになったな、と万丈目は思った。

『別に感謝しても、何も出てこないぜぇ』
「ちっ、だから心を読むな!!!」

バクラは笑い、万丈目が怒る。
なんとなくだったが、調子が戻った気がした。

「……すまんな」
『だから、別に感謝しても何も出ないって言ってるだろう』
「ふん、わかっている」



253 :サンダー遭難中... そして、バクラの考察  ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 11:16:31 ID:H4bvb4lo
先程まで言い合っていた二人がそこに居た。


 ◇   ◇   ◇


『とりあえず、現状確認くらいはしたほうがいいんじゃねぇか?』
「ふん、わかっている。何度も言わすな」

調子を取り戻した万丈目は、現在の状況を確認することにした。
今現在わかっていることは、禁止エリア、死者の数、死んだのが誰か、そして――

「死者蘇生か……デュエルモンスターズじゃあるまいし、そんなことはありえんな」
『俺とかいるのにか?』
「お前のは違うだろうが」
『まぁ、わかっているがよ』

はっきり言って二人は、死者蘇生についてまったく信じていなかった。
何かのトリックか、それとも……

「まぁ、考えてもしょうがない。その件は置いておこう。それよりもやることがある」

と万丈目は現状確認に戻ることにしていた。
なので、気づかなかった。

『……まさかなぁ……』

そうバクラが呟いていることに。


 ◇   ◇   ◇


「まぁ、こんなものか」
『いいんじゃねぇの?』



254 :サンダー遭難中... そして、バクラの考察  ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 11:18:07 ID:H4bvb4lo
と、今現在の状態をノートに書いたものを見て二人は言った。
万丈目としては別にノートに書く必要はなかったのだが、バクラにしては珍しく書けと言ってきたので、書くことにしたのだ。

「しかし、何故こんなものを書けなどと言ったんだ?」
『まぁ、後で説明してやるよ。まだ書いてもらうことがあるしな』

こんな会話をしながら、二人はノートを見た
ノートにはこんなことが書かれていた。

 ------

自分の知り合い:遊城十代、天上院明日香、早乙女レイ、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン
        スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスター、エリオ・モンディアル、キャロ・ル・ルシエ

  バクラの知り合い:キャロ・ル・ルシエ、ユーノ・スクライア、フェイト・T・ハラオウン

  危険人物:眼帯をした少女→名前を聞いておけば…
              →仲間がいる可能性あり

  禁止エリア:B-1 D-3 H-4→何か基準でもあるのか?

  アグモン、ギルモン→どうでもいいが兄弟かなんか?

  フェイト・T・ハラオウン、クロノ・ハラオウン→おそらく兄妹かなんかだと思われる。

  スバル・ナカジマ、ギンガ・ナカジマ→兄妹、または姉妹だと思われる。この人とも合流したほうが良いかも。

  柊かがみ、柊つかさ→おそらく兄妹、あるいは姉妹であろう。

  武蔵坊弁慶→昔の人間?あるいは同名異人の可能性あり。

  C.C.、L→コードネームかなんか?


255 :サンダー遭難中... そして、バクラの考察  ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 11:19:40 ID:H4bvb4lo

  キング→王?

  なのは、フェイト、八神はやての名前が二つある→誤植?

  死者蘇生→ありえない。何かトリックがあるのでは?

 ------

まさかフェイトとも知り合いだったとは、と思いながら万丈目は鉛筆を動かそうとした。

「で、次は何を書けば……」
『ちょっと待て宿主サマ。その前に少し俺の話を聞け』

一瞬むっとしたが、万丈目はなんだ、と聞き返した。

『宿主サマの知っている相棒……キャロ、フェイトについて話してくれねぇか』
「ん?なんでまた……」
『いいから、話しな。ひょっとすると、とんでもなく重要なことかもしれねぇからな』

重要、と聞いて万丈目は何かわかったことがあるのでは、と思った。
なので、

「あぁ、わかった。話そう。」

そう言って、万丈目は自身が知っているキャロ、フェイトについて話した。


 ◇   ◇   ◇


『なるほどねぇ……それが宿主サマの知っている相棒とあの女ってわけか……』
「あぁ。おいバクラ、説明してくれ。なんでこんなことが重要なことなのかをな」

万丈目はバクラに話しながら、人を捜すために歩いていた。
自身の居るエリアの隣にある禁止エリアになりかけているD-3のエリアに注意しつつ、彼らは商店街に向かっていた。


256 :サンダー遭難中... そして、バクラの考察  ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 11:20:45 ID:H4bvb4lo
先程スーパーに行った時もそうだったが、彼らは近く、そして人が集まりそうな場所に向かえば誰かは居るだろうと考えたのだ。
ほっとけば、後数時間でモンスターに喰われてしまう。
それだけは何としても避けなければならない。
なので、(出来れば殺し合いに乗っている人がいいが)生きた参加者を生贄にして、自身の安全を確保したいと考え、このように移動しているのである。

『あぁ、いいぜぇ。話してやるよ』

万丈目は歩きながら、バクラの話しを聞いた。

『結論から言わしてもらえば、どうやら俺の知っている相棒、フェイトとは少し違ってるってことがわかったよ』
「何?どうゆう意味だ」
『じゃあ、宿主サマにもわかるように説明してやるよ』
「なんか癇に障るが……まぁいい、話せ」

そう言ってバクラは万丈目に説明をし始めた。

まず容姿についてだが、これは双方の言っていることに何ら違いはなかった。フェイトに関しては、ほぼ100%で少しも違う部分はなかった。
だが、キャロについては少し違っていた。
容姿に違いはなかったが、着ている服が違っていたのだ。
たかが服と万丈目は思ったが、着ている服の内容を聞いた時、万条目は顔を赤くしながら怒鳴った。

「バ、バクラ!!子供に何を着せているんだ貴様!!!」
『なんだよ、別にいいじゃねぇか。相棒……キャロは色気が足りなかったんだからな』
「そ、そうゆう問題ではない!!」

少なくとも万丈目の知っているキャロは、そんな服は着ないだろうとは思った。
バクラは万丈目を無視して、そのまま話しを続けた。

違いが顕著に現れていたのはその後の立ち位置についての話しの時だった。



257 :サンダー遭難中... そして、バクラの考察  ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 11:21:42 ID:H4bvb4lo
「な、何っ!?キャロがマフィア!!?それにエリオ達のことも知らないだと!!?」
『あぁ、そうだ。時空管理局ってのには入っていないな。それにエリオとかスバルとかも知らねぇな』

ありえない、と思った。
だが、嘘を言っているようにも見えなかった。
見えないだけで嘘をついている可能性もあったが、すぐにその考えを消した。
バクラは確かに悪人の位置にいる。
だが、今現在自分をサポートをしてくれている奴がそんな嘘をつくだろうか?
少なくとも、今は自身の味方である人物が、そんな嘘をつくとは思えない。
なので、万丈目はバクラを信じることにした。

「となると……つまりどうゆうことなんだ?」
『鈍いなぁ宿主サマ。じゃあ、さっきの死者蘇生のショーを思い出してみろよぉ』

そう言われて思い出してみた。あの、アリサという少女が再度殺された時のことを。

「うーん……一体どうゆうことなんだ……?」
『ったく、本当に鈍いなぁ。つまりよぉ、俺達は違う世界から来たんじゃねぇかってことだよ』
「なんだと!?まさか……」
『すごく突拍子もない言っているのは自分でも分かってるんだがなぁ、そうゆうことなると全て説明がつくんだよ』

バクラも気づいたきっかけは些細なものだった。
少し前から疑問は感じていたバクラだが、アリサの死者蘇生ショーを見た時に疑問に答えを出すことが出来たのだ。
それが、並行世界、パラレルワールド説だ。
それならば、全てに説明がつく。
何故、キャロが万丈目の記憶で千年リングを持っていない?当たり前だ。万条目の世界のキャロには会っていないから持っているはずがない。
何故、双方の記憶に誤差がある?当たり前だ。世界が違えば、やることや起きることも違ってくるだろう。なら、そのときに色々と違う出来事が起きて未来が変わることだってあるかもしれない。

「た、確かに……それならば説明もつくな……」


258 :サンダー遭難中... そして、バクラの考察  ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 11:22:52 ID:H4bvb4lo
『だろ?そう考えると説明がつくんだよぉ。他にもまだあるんだぜぇ。』
「まだ、あるのか……」
『ったく、だらしねぇなー宿主サマよぉ。今のことをノートに書こうとか思わないのか?』
「う、うるさい!!言われんでも分かっている」

万丈目が鉛筆を動かす中、バクラは話を続けた。
アリサの死者蘇生やなのは、フェイト、そして八神はやてという人物の名前が何故二つあるのかまでをずっと喋っていた。


 ◇   ◇   ◇


「こんなものでいいか?」
『あぁ、いいぜぇ。上出来だよ宿主サマ』

そう言って、バクラはノートを眺めた。
ノートにはこう付け加えられていた。

 ------

  なのは、フェイト、八神はやての名前が二つある→誤植?
            →違う世界のなのは、フェイト、八神はやての可能性あり

  死者蘇生→ありえない。何かトリックがあるのでは?
            →違う世界の同じ人物を連れてくれば実行可能

  並行世界、パラレルワールド
            →断言できないが可能性あり

 ------

別にバクラ自身はこのような考察はどうでもいいと考えている。
だが、万丈目は――ひょっとしたら相棒もかも知れないが――仲間と合流して、プレシアに反逆しようとしている。
もしそういう状況になれば、少なからずこういった考察は必要になるだろうと考え、万丈目にノートを書けと言ったのだ。


259 :サンダー遭難中... そして、バクラの考察  ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 12:01:04 ID:H4bvb4lo

(まぁ、俺はデスゲームを楽しみたいだけなんだから別にいいんだけどよぉ……)

と、やれと言った本人はどうでもいいといった表情をしていた。

「……サンダーっと。よし。名前はこれでいいだろう」
『……センス疑いたくなるなぁ、おい』

確かに……ノートに鉛筆で『万丈目サンダー』と書か%8

260 :サンダー遭難中... そして、バクラの考察  ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 12:02:47 ID:H4bvb4lo
失敗しました。
すいません。

261 :サンダー遭難中... そして、バクラの考察  ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 12:03:45 ID:H4bvb4lo

(まぁ、俺はデスゲームを楽しみたいだけなんだから別にいいんだけどよぉ……)

と、やれと言った本人はどうでもいいといった表情をしていた。

「……サンダーっと。よし。名前はこれでいいだろう」
『……センス疑いたくなるなぁ、おい』

確かに……ノートに鉛筆で『万丈目サンダー』と書かれれば誰でも(バクラでも)美的センスを疑いたくなるものだ。

「ふん。貴様には言われたくないな」
『おいおい、まるで俺がセンスがねぇとでも言いたげだなぁ……』
「違うのか?」

こんな会話を続けながらも、万丈目は行く準備を済ませていた。
よく考えたら、考察しても喰われてしまえば元もこうもない。

『さてと、少し時間をかけ過ぎた……。急いで商店街に行かねぇとなぁ宿主サマ』
「お前が止めたんだろうが!!まぁいい。急ぐぞ」

そう言い、万丈目は再び歩き出した。
仲間のために、自分のために。
万丈目サンダーの戦いは再開したのだった。



『たく……いつになったらデスゲームを楽しめるのやら……』

そのバクラの言葉は、しかし万丈目には聞こえなかった。


262 :サンダー遭難中... そして、バクラの考察  ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 12:11:37 ID:H4bvb4lo
【1日目 朝】
【現在地 D-2北部 市街地】
【万丈目準@リリカル遊戯王GX】
【状態】健康、三時間バクラ憑依不可
【装備】千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです
【道具】支給品一式、カードデッキ(ベルデ)@仮面ライダーリリカル龍騎、ルーテシアのカレー@闇の王女、考察を書いたノート
【思考】
 基本 殺し合いには乗りたくない。仲間達と合流し、プレシアに報復する
 1.D-3に注意しながら商店街に向かい、キャロやカードデッキの持ち主を捜し、千年リングとカードデッキをどうにかする
 2.仲間(理想は明日香)達との合流
 3.できればカードデッキに生贄を捧げたくない
 4.余裕があればおじゃま達を探したい
 5.なんで誰にも会えないんだ……
【備考】
 ※チンク(名前は知らない)を警戒しており、彼女には仲間がいると思っています
 ※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました
 ※デスベルトが無い事に疑問を感じています
 ※パラレルワールドの可能性に気づきました
 ※千年リングを装備したことにより、バクラの人格が目覚めました
  基本 このデスゲームを思いっきり楽しむ
  1.万丈目をサポート及び誘導する。
  2.いざというときは万丈目に憑依し、確実に参加者の誰かをバイオグリーザの餌にする
  3.可能ならばキャロを探したいが、自分の知るキャロと同一人物かどうかは若干の疑問
  備考:※千年リングの制限について大まかに気が付きましたが、再憑依に必要な正確な時間はわかっていません。最低でも放送前後までは無理だと思っています
     ※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました
     ※千年リングは『キャロとバクラが勝ち逃げを考えているようです』以降からの参戦です

【デスベルトについて】
十代達デュエルアカデミアの生徒(このロワでは十代、万丈目、明日香、レイが該当)が異世界に飛ばされる前にプロフェッサーコブラによって右腕に付けさせられた腕輪
デュエルを行ったり、モンスターを召喚するとデスベルトが作動し闘気や体力が吸い取られてしまう
これまで外す事は出来なかったが、このロワでは他の装備品同様外され没収された模様

【考察のノートについて】
ノートには文中で書かれていることが書かれています
表紙に『万丈目サンダー』と書かれています


263 : ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 12:20:45 ID:H4bvb4lo
途中間が開きましたが、投下終了です。
初めての投下なので拙い部分が多々あると思います。
なので、問題があれば指摘の方をお願いします。

という訳で、早朝まったく出番がなかった万丈目とバクラを出しました。
ある意味、いいコンビだと思います。

サブタイトルの元ネタは『東方』シリーズのロード画面「少女祈祷中...」からです。

264 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/15(月) 22:07:02 ID:owCGRWWK
投下乙です。
万丈目サンダーもパラレル説に気付いたか。
でもノートにその名前を書くセンスは正直微妙だw
あとバクラの思考が終始不穏なのが期待させられる。

あと書き込む際にはメール欄に「sage」と打ち込むのが原則ですから、今後は気を付けてください。

265 : ◆Qz0BXaGMDg :2008/12/15(月) 22:52:44 ID:H4bvb4lo
すいません。
教えてくださって、ありがとうございます。

266 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 00:57:19 ID:jN9+xXEX
それにしても、何だかんだでこのロワは勢いが止まらないなw

267 : ◆HlLdWe.oBM :2008/12/18(木) 21:34:32 ID:xKsK9cwM
アーカード投下します

268 :XANADO ◆HlLdWe.oBM :2008/12/18(木) 21:35:35 ID:xKsK9cwM
夜から朝に時間帯が移行して、東より天に昇った太陽が地上に陽の光を与える。
朝の光は夜の闇で冷やされていた世界にゆっくりと暖かさを運んで来る。
そんな日の下で真っ赤なコートを身に纏った青年は一人廃墟と化した市街地を抜け、西へと向かっていた。
彼の名はアーカード、最強の吸血鬼であり不死王と言っても過言ではない存在だ。
一般的に吸血鬼という存在は日の光を天敵とするが、アーカードは違う。
これまでに吸ってきた数十万数百万もの命。
それを内包する事によってアーカードは異常なまでの不死性を獲得している。
故にアーカードにとって日の光は天敵とはなり得ず、精々「苦手」という一言で終わらせられる程度の代物となってしまう。
そんな無敵とも思える不死王が考えている事は唯一つ。

(さて、次は誰が私に闘争を仕掛けてくる? 先程の銀髪の剣士か? それとも宿敵のアンデルセンか? それともまだ見ぬ者か?)

アーカードは考える。
次に自分と戦う事になる相手が誰になるか。
それは誰にも分からない――だが、それでも考えてしまう。
それほどまでにこの場所は、数多の闘争が渦巻くデスゲームの会場は、アーカードにとって大いに心を昂ぶらせる場所だった。

「そういえば……」

半壊したビルを横目に見つつアーカードは先程の銀髪の剣士との戦いの事を思い返していた。
今になって思い返すのは自らの首が刎ねられた時の事だ。
首を斬られれば普通なら即死だが、アーカードは違う。
首を刎ねられようが、胴体が両断されようが、何事もなかったかのように復活してみせる。
それがアーカードという最強の吸血鬼、不死の王たる所以でもある。
しかし問題はそこではない。
アーカードがふと疑問に思った事。
それは首を刎ねられたにも関わらず、今もなお自身の首に忌まわしい首輪が付いている事である。

「……興味深いな」

首を刎ねられれば、その勢いで身体は倒れて首輪が取れても不思議ではない。
寧ろ普通はそうなって当然だろう。
この首輪は首に密着する程に小さい訳でもなく、ある程度首と首輪の間には隙間が存在している。

(これで首に密着するような形だったら、さぞかし息苦しい事この上ないだろうな)

そんな吸血鬼らしからぬ事を考えつつアーカードはそこに関する疑問を抱いていた。
首が刎ねられても首輪が取れないのはアーカード自身への特別な措置であろう。
他の人間ならいざ知らず、アーカードなら自ら首を刎ねて首輪を取るという驚異の芸当を行う事が可能だ。
それによって首輪を外せないように魔法か何かで何らかの細工をしていると考えていいだろう。

(そうだ。私を殺すには……ここを狙うしかない)

真紅の吸血鬼は赤い血が駆け巡る自身の心臓を見据えつつ、首輪についての仮説を立てる。
アーカードの首を破壊してもアーカードは死ぬ事はない。
首輪によって死が齎されるのならば、アーカードの場合は首ではなく心臓が破壊される仕組みになっていると考えられる。
そうでもしなければゲームという名の殺戮劇の中でアーカードだけが公平でなくなってしまうからだ。
詳しい方法は依然として不明だが、首輪と連動して心臓が爆破されるような事ぐらいはしていてもおかしくはない。

(……ゲームか)

魔女プレシアはこの殺し合いをデスゲームと言った。
つまりこれはその名の通り『ゲーム』なのだ。
ゲームとはルールを守ってこそ成立する遊戯である。
では、この場合ゲームが成立しなくなる時とはどういう時であろうか。
もっとも簡単な答えに「誰も殺し合いをしない」というものが挙げられる。
これは「殺し合いをしろ」という目的に背くものであり、この時点でゲームは不成立になる。

(ならば首輪を外してゲームを放棄する者が出れば、それだけ闘争の機会が減るか)

269 :XANADO ◆HlLdWe.oBM :2008/12/18(木) 21:36:33 ID:xKsK9cwM

闘争の機会が減る事はアーカードの望む事ではない。
首輪の制限によって全力で闘争に心血を注げないのは残念だ。
だが、首輪を外して闘争を挑む者が減る事はアーカードの望む事ではない。

(首輪の解除の手段を潰せば他の参加者も戦わざるを得なくなるが――同時に我が主の意向に反するのは確実か。
 まあ、首輪の問題は追々ゆっくり考えていくとしよう。それよりも……)

今アーカードは岐路に立っている。
すなわち、これからどこへ向かうかだ。
そこでアーカードはこれまでの軌跡を思い返していた。

最初にいたのはB-6の墓地の近く、そして程なくして墓地にて青髪の少女とスバル・ナカジマとの戦闘。
結果は一瞬の隙を突かれて両腕を切断され、さらには吹き飛ばされる始末。
この時初めてプレシアによって身体能力に制限が掛けられている事に気付いた。
最初は首輪によるものだと考えていたが、それが本当に正しいのかは不明だ。
こんな小さな首輪一つで自分の力が制限できるとは到底思えないからだ。
しかし今はそれについて考えていても仕方ない。
次にD-4の学校からの呼びかけに応じて駆けつけると、まずは黄色いトカゲを殺害、次いでその首輪を入手。
その後、カードの力を操る少年と激しく闘争を繰り広げる。
結果、カード使いの少年は死亡して、同じくその場にいたヴィータと青年には逃げられた。
そして、必要なものを手に誰にも会わないままに南下、G-5のDevil May Cryに到着。
先の少年を磔にすると、拡声器を使用して自らを倒さんとする参加者を募った。
それに応えて最初にやってきたのは銀髪の剣士。
剣士の実力は自身に迫る勢いだったが、一歩及ばず同行者と思しき少女共々死亡――とはならなかった。
直前に駆け付けた宿敵アンデルセンによって戦いは第2ラウンドへと移行。
そして激しい闘争になるも突然現れた巨大な光によって中断を余儀なくされる。
結果、銀髪の剣士も少女もアンデルセンも行方知れずとなり、今に至る。

今思い返すと学校で出会ったヴィータは自分を見て恐れを抱いていたような気がする。
つまりヴィータもスバルと同様に自分の知る者とは別人という事になる。
それがどういう意味なのかは深くは考えない。
どうであれ自分が求める闘争には関係のない事だからだ。

「――西か」

それがアーカードの出した結論だった。
現状あの光に巻き込まれたせいでアンデルセン達の行方は杳として知れない。
ただあれほどの事で死ぬとは思えないので生きていればどこかで再会できるとは思っている。
それにDevil May Cry一帯が倒壊した今となっては跡地で律儀に待つのは得策とは思えない。
だからどこへ向かおうと構わないのだが、一応目的地はあった方がいい。
今までは墓地、学校、Devil May Cry前と地図に記載されている施設付近では人と遭遇した。
さらに付け加えるなら市街地内の施設ではより多くの参加者と遭遇できた。
この事から判断するなら未踏地帯である市街地西方面の施設付近に行けば参加者に遭遇する機会が、ひいては闘争の機会が見込める可能性が高い。
だからアーカードはとりあえずの目的地を西側に定めた。

そして西へ向かったアーカードが最初に立ち寄ったのはG-4のアパートであった。

(予想以上だったな。まさか最初に寄った施設で闘争の跡が見られるとは!)

結局、他の参加者には会えなかったが収穫はあった。
アパートの一室には明らかに争った跡、しかも大規模な破壊痕まで残されていたからだ。

270 :XANADO ◆HlLdWe.oBM :2008/12/18(木) 21:38:28 ID:xKsK9cwM

(さて、次はどこへ向かうとしようか。これを試しに使う機会があればいいが……)

そう今の状況に気持ちを昂ぶらせるアーカードの手には一振りの刀が握られていた。
身の丈2mを凌ぐ規格外の化け物じみたセフィロスの愛刀、号は「正宗」という。
アーカードがこの日本刀を見つけたのはG-5の廃墟での事だった。
廃墟に寂しく放置されていた刀を拾った理由はセフィロスと再会した時に渡すためだ。
ここでは力が制限されている以上、剣士には使い慣れた獲物で向かってきてほしいというのがアーカードの密かな願いだった。
直接戦ったからこそ剣士はこの刀の扱いに慣れていた事はお見通しだ。
だが、再会するまでは酔狂の意味合いもあって自ら使ってみようかとも思っている。
幾多の血を浴びてきた刀を掲げるアーカードの姿は獲物こそ差異があるが、まるで「串刺し公」の異名を持つワラキア公ヴラド・ツェペシュを彷彿されるかのようだった。
果たしてアーカードはヴラド・ツェペシュの如くこの地でどれほどの命を奪うのか。
確かなのはこれからもこの地で多くの血が流れ続けるだろうという事だけである。


【1日目 午前】
【現在地 G-4 アパート】
【アーカード@NANOSING】
【状況】疲労(小)、軽い昂ぶり
【装備】正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、パニッシャー(重機関銃残弾100%/ロケットランチャー残弾80%)@リリカルニコラス
【道具】基本支給品一式、拡声器@現実、首輪(アグモン)
【思考】
 基本:インテグラルを探しつつ、闘争を楽しむ。
 1.西側の施設を中心に巡る。
 2.アンデルセン、銀髪の剣士(セフィロス)、スバル達に期待。
 3.首輪解除の手段(人員や施設)を潰しておいた方がいいのか?
【備考】
 ※スバルやヴィータが自分の知る二人とは別人である事に気付きました。
 ※パニッシャーが銃器だという事に気付きましたが、相当な強者にしか使用するつもりはありません。
 ※放送を聞き逃しました。

271 : ◆HlLdWe.oBM :2008/12/18(木) 21:40:51 ID:xKsK9cwM
投下終了です。
タイトルの元ネタはHELLSING第5巻第8話「XANADO」から。
誤字・脱字、矛盾、疑問などありましたら指摘して下さい。

272 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/18(木) 23:20:24 ID:i+bTU3lH
投下乙です。
アーカードwwwあんたどこまで装備充実してんですかwww
確かに首を切断されても首輪取れませんでしたからねえ、また謎が増えた。

あとヴラド・ツェペシュの如くというか、アーカード=ヴラド・ツェペシュなのでその辺の言い回しを調整された方がいいと思います。

273 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/19(金) 00:00:08 ID:d2lXU8gf
普通、首切断しても首輪は取れなくね?

274 : ◆HlLdWe.oBM :2008/12/19(金) 01:15:41 ID:zTRzZk7Y
では最後の文を以下のように差し替えます。

幾多の血を浴びてきた刀を掲げるアーカードの姿は獲物こそ差異があるが、まるで「串刺し公」の異名を持つワラキア公ヴラド・ツェペシュを彷彿されるかのようだった。
果たしてアーカードはヴラド・ツェペシュの如くこの地でどれほどの命を奪うのか。
 ↓
幾多の血を浴びてきた刀を掲げるアーカードの姿は獲物こそ差異があるが、まるで「串刺し公」の異名を持つワラキア公ヴラド・ツェペシュを彷彿させるかのようだった。
果たしてアーカードはこの地でどれほどの命を奪うのか。

>>273
首斬られて倒れたら外れると考えました。。

275 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/19(金) 06:54:29 ID:B9fPz4PW
しかしセフィロスはすでにフリークスに…

276 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/19(金) 13:04:01 ID:IM/NBLSe
実際、半人半ジェノバとでも言うべきセフィロスは、アーカードの価値観からすると、人間と化け物どっちなんだろうな?

277 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/19(金) 13:31:08 ID:d2lXU8gf
人間体のセフィロスは人間、今のセフィロスは化け物だと思う

278 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/20(土) 18:20:14 ID:GcJQhjDr
人間を止めたセフィロスにブチ切れるアーカードという訳ですね、分かります

279 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/20(土) 20:12:41 ID:dfFwuigw
しかしアーカードは闘争しか考えてないな
憎しみと混乱を振りまいてるw
インテグラと合流して対主催に変化しても遺恨が残りそうw

280 : ◆7pf62HiyTE :2008/12/20(土) 23:44:54 ID:XiGeN2HX
ヒビノ・ミライ分投下します。

281 :ボクらが叶える未来 仲間を信じていたい ◆7pf62HiyTE :2008/12/20(土) 23:46:57 ID:XiGeN2HX



E-3……ヒビノ・ミライはヴィータと別れた後、彼もまたE-4の図書館を出てある場所を目指して歩いていた。その場所はF-2にある翠屋……なのはの家である。
ミライはひとまずなのは、フェイト、ユーノと合流する事を考えた。しかし、何処へ行けばいいかわからない。そこで地図を見て3人が目的地にしそうな場所を考えて思い当たったのが翠屋である。
そこへ行けばなのは達と合流出来るかも知れない、ミライはそう考えたのだ。勿論そんな都合良くいくとは思えないがそもそも手がかりが無いのだ、やってみるしかないだろう。
だが、正直な所なのは達にどう話せばいいのかわからなかった。そう、クロノが自分とヴィータを助ける為に死んだ事を……きっとなのは達はショックを受けるはず、ミライにはそれが辛かったのだ。

ミライはアグモンやクロノを守れなかった事を悔やんでいた……学校でもっと自分が上手くやれればアグモンもクロノも死なせずに済んだのではないかと……
いち早く赤いコートの男の襲来に気付いていればアグモンを死なせずに済んだだろうし、
メビウスに変身さえ出来ればミライとヴィータが学校を抜け出す為にクロノ1人を戦わせて死なせる事も無かったのではないかと……

ミライの脳裏にある言葉がよぎる……それはミライが初めて地球で戦ったが市街に大きな被害を出してしまった時にかつての仲間……CREW GUYSのアイハラ・リュウから言われたある言葉……

『―――全然……何も守れてねぇじゃねぇかよ!!』

状況は若干違うものの守れていないという意味では全く同じなのだ。
それでもミライは足を進める…地球を、人々を、全てを守る光の巨人ウルトラマンとして助けを求める人々を守る為に……。

と、足を進める中、

『さて、皆が待ち望んだ最初の放送の時間が来たわ。』

首輪から最初に殺し合いの説明をした女性……プレシアの声が響いた……

「放送……」

そう、禁止エリアと死者を発表する放送が始まったのだ。ミライには少なくとも3人の名前が呼ばれる事がわかっている。

ヴィータが連れて来ていたデジモン……その時には既に死んでいたギルモン、
大男に襲われていた所をミライが助けたが赤いコートの男に殺されたアグモン、
そしてミライやヴィータを助ける為に赤いコートの男と戦い…そして殺されたクロノ、

これ以上誰も死んで欲しくない……ミライは地図と名簿とペンを手に取りそう願った……だが……



その放送はミライの心を更に締め付けるには十分過ぎるものだった。

非常な事に放送では13人もの死者が出たというのだ。そう、前述の3人以外にも10人が……
それだけではない。ミライが合流しようと思っていたなのはの名前も呼ばれたのだ。

なのは達を含む13人の死がミライを締め付ける。自分は地球や人々を守る光の巨人ウルトラマンのはずだ。それなのに、自分はこれまでに何が出来た?
たった一度アグモンを大男から助けただけで何も出来ていないではないか、そのアグモンすら気が付けば赤いコートの男に殺された。
そう、この殺し合いが始まってからミライは何一つ守れていないのである……。

「僕は……ウルトラマン失格だ……」

思わずそう呟いた……何も出来ず気が付いた時にはアグモンを死なせてしまい、どういうわけか変身も出来ずに自分とヴィータが逃げる為にクロノを死なせ、さらにはその間になのは達計13人を死なせてしまったのだ。
そんな自分がウルトラマンだと言えるのか?言えるわけがない。こんな自分に他の参加者を守り、殺し合いを止める事なんて出来るのだろうか……ミライは苦悩し暫くの間その場から動く事が出来なかった……。

282 :ボクらが叶える未来 仲間を信じていたい ◆7pf62HiyTE :2008/12/20(土) 23:49:15 ID:XiGeN2HX

今、ここにいるのはウルトラマンメビウスに変身する光の戦士ではなく、ただ後悔と無力さにうちひしがれる只の青年だった……





……





…………





………………





一体どれだけこうしていただろうか?10分程度だったのか?1時間以上だったのか?それはミライ自身もわからない……
ミライはその間自身の無力さを悔いていた……

その中でミライはなのはたちの世界に飛ばされる前にいた世界の仲間達……CREW GUYSの事を思い出していった……彼らと共に過ごした日々の事を……

「リュウさん……ジョージさん……マリナさん……テッペイさん……コノミさん……サコミズ隊長……僕は……」

かつての仲間達に対し自身の無力さを悔やむ……そんな中、ミライはある言葉を思い出す。

それは最初の戦いの後、後にCREW GUYSのクルーとなるアマガイ・コノミ、カザマ・マリナ、イカルガ・ジョージ、クゼ・テッペイを連れてガンフェニックスの翼にファイアパターンを施そうとするリュウの所に行った時、、
リュウはウルトラマンに守っていいと思っている奴らに翼は触らせないと言った上でこう言ったのだ、

『地球は、我々人類自らの手で守り抜かなければならないんだ』

「……そうだ……」

その後、皆でペイント作業を手伝った。そして街に出現したグドンに対して仲間達を協力した事で撃退する事が出来、初めて街を守る事ができたのだ。

「そうだった……」

そして、その後もCREW GUYSの仲間と協力して様々な怪獣と戦って街や人々を守ってきた時の事を思い出す……そして気付く、

「地球を守っているのは僕達……ウルトラマンだけじゃないんだ……」

そう、地球を守ってきたのはウルトラマンだけではなく、CREW GUYSもまた地球を守っていたのだ。
彼らがいたからこそ地球が守られていたのではないのか?彼らもまた地球を守っていたのではなかったのか?
守る事にウルトラマンかどうかなど関係ない、ミライはそう思い直したのだ。

283 :ボクらが叶える未来 仲間を信じていたい ◆7pf62HiyTE :2008/12/20(土) 23:51:24 ID:XiGeN2HX

「僕は戦う……仲間と力を合わせて……この殺し合いを止めてみせる……!」

ミライは顔を上げた。そして決意を新たにした。ウルトラマンメビウスとしてだけではなく、地球を守るCREW GUYSの隊員ヒビノ・ミライとして仲間と共に人々を守り、殺し合いを止める事を。
そう決意したミライは名簿を再び見る。五十音順に並んでいる名簿には死亡者の名前の所に印が付いている。

「アグモン……エリオ君……カレンさん……優衣さん……ギルモン……クロノ君……シグナムさん……殺生丸さん……
なのはちゃん……ティアナさん……ディエチさん……ミリオンズさん……想さん……アリサちゃん……死んでいったみんなの為にも僕は戦うよ……」

ミライが知る者、知らぬ者問わず13人……いや、最初に殺されたアリサを含めて14人の死者全てにこの殺し合いを止める事を改めて誓うミライであった。
だが、14人の中には殺し合いに乗り他の参加者を殺した参加者もいるという事実……そう、なのはを殺した参加者もいるという事実をミライは知らない。そんな中、

「あれ……?なんだろう……何か引っかかるんだけど……」

ミライは名簿を見て違和感を覚える。今一度名簿を見直しそして気付く、印の付いていないなのはの名前があったことに……だが、すぐ上に印の付いているなのはの名前がある事を確認する。

「あ、そうかなのはちゃんとフェイトちゃんの名前2つずつあるんだった。」

そう、なのはとフェイトの名前が2つずつあった事をミライは思い出す。最初に見た時はどういう事かよくわからなかったが、クロノの仮説を聞いた今のミライはその理由がある程度推測出来る。

「クロノ君は僕の事を知らない世界から来ていた……確かクロノ君はよく似た並行世界から連れて来られた可能性があるって言っていたな……もしかして、この2つある名前も……」

ミライはなのはとフェイトの名前が2つある理由を異なる並行世界から連れて来られた事によるものだと考えていた。
そして、それはクロノの仮説をより強固にするものとなる。クロノはあの時、互いに嘘を付いている可能性、記憶改変の可能性も指摘したが、この2つの場合はなのは達の名前が2つずつある理由を説明出来ない。
つまり、2つある名前は並行世界説を裏付けるものとなるのである。もっとも、これについても可能性が高まった程度で断言出来るレベルではないが。

「この内の片方は僕とは違う世界……いや……もしかしたら……」

少なくても片方はミライとは違う世界から来ている事は間違いない……
だが、たった1つしか名前の無かったクロノがミライと違う世界から来ていたという事実から考えると、2つあるなのはやフェイトの両方ともミライとは違う世界から連れて来られている可能性はある。
勿論、1つしか名前のないユーノについても同じ事が言えるのは言うまでもない。
つまり、なのは達が自分を知らないという可能性があるということなのだ。それはミライを知る者が誰もいない可能性がある事を意味する。
勿論、並行世界のクロノがそうであったようになのは達もその根本自体は同じなのは達だろうから、仮にそうであってもミライは構わない。だが、自分を知らないかもしれないのについては少し寂しさを感じていた。

284 :ボクらが叶える未来 仲間を信じていたい ◆7pf62HiyTE :2008/12/20(土) 23:53:36 ID:XiGeN2HX

「……あれ、ちょっと待って」

ミライは名簿のフェイトの所を見る。

「どうしてフェイトちゃんの名字がクロノ君と同じハラオウンなんだろう……」

ミライの知るフェイトの名前はフェイト・テスタロッサである。だが名簿にあるフェイトの名前は2つともフェイト・T・ハラオウンである。
Tは恐らくテスタロッサだろうが、問題は何故ハラオウンというクロノやリンディと同じ姓が付いているかである。
と、ミライはある事を思い出す。

「そういえば、リンディさんとフェイトちゃん親子になるって話していたな……でも確かフェイトちゃんの気持ちの整理が付いてからって話だったと思うけど……」

リンディがフェイトを養子にするという話があり、それについてはミライも聞いていた。確かにそれならばフェイトの姓がハラオウンとなっていてもおかしくはない。
だが、フェイトの気持ちの整理の問題から先の話だったはずである。と、ミライにある仮説が浮かぶ。

「もしかして……フェイトちゃん、親子になった後から連れて来られたんじゃ……」

ミライは2人のフェイトが共にリンディの娘になった後の時間軸から連れて来られたのではないかと考えた。そしてその可能性から考えて、参加者は違う時間軸から呼び出されている可能性もあるという事を考える。
つまり、なのはが今より未来の時間軸から呼び出されていてフェイト、ユーノ、クロノ以外の沢山の人と出会っている可能性もあるし、
なのはが今より過去の時間軸から呼び出されていてフェイト、ユーノ、クロノとも出会っていない可能性もあるということだ。
ミライはこれがどれだけの意味を持つかが現在の所良くわからないしこれもまた断定出来るものではない。だが、この後で他の参加者と出会う時にはその事についても頭に置こうと思った。

その一方、ミライはアグモンの事を思い出す……確かアグモンはキャロ・ル・ルシエに会いたがっていた。最早それが叶う事は無いがキャロと何とか再会して彼女を守りたいと思っている。
と、アグモンが言っていた言葉を思い出す……

『誰と一緒かっていうのなら、姉御とかエリオとかと一緒だったけど』

つまり、アグモンの仲間にはエリオもいたという事である。同時にそれはキャロとエリオが仲間である事を意味する。
だが、既にエリオも死亡している……その事実を知ってキャロはどうなっているのだろうか?
ミライはキャロの身を案じた……ちなみに、この時はキャロがアグモンやエリオとは違う世界から連れて来られている可能性については思案は及ばなかった。

「キャロちゃん……」

285 :ボクらが叶える未来 仲間を信じていたい ◆7pf62HiyTE :2008/12/20(土) 23:56:34 ID:XiGeN2HX

続いてミライはヴィータの事を思い出す……ヴィータとは殺し合いに連れて来られる前には敵対していた。
だが、あの場にいたヴィータはミライの事を事を知らなかった。その事から彼女もミライとは別の世界から連れて来られたのだろう。
しかし、クロノ同様その根本自体は同じはずだろう。つまり、彼女の仲間についてもミライの世界にいたヴィータと大差はないということだ。
そして、ミライがいた世界でヴィータと戦った時、彼女の仲間がやって来た時の言葉を思い出す。

『シグナム、ザフィーラ……』

この2人はヴィータの仲間なのだろう。名簿を見ると2人ともこの殺し合いに参加させられている……そして、既にシグナムは死亡している……

「ヴィータちゃん……シグナムさんが死んで落ち込んでいないだろうか……」

敵対していたであろうクロノが死んでも泣いていたのだ。もし仲間であるシグナムが死んだならばきっと酷く悲しむだろう……
と、ミライはヴィータが別れる前に言っていた言葉を思い出した。

『……はやてを、少しでも早く、はやてを救わなくちゃ、ダメなんだ……』

そう、ヴィータは彼女が一番大切にしている者を助ける為にミライと別れた。その人物ははやて……八神はやてである。ミライはヴィータがはやてを救える様に願った……と、

「あれ……確か……!」

ミライは何かを思い出し再び名簿を確認する。そう、なのはとフェイト意外にももう1人名簿に2つずつ名前がある人物がいたのだ。それがはやてである。

「という事は……はやてちゃんも……」

それははやての片方は確実に違う並行世界から連れて来られている事を意味している。と、

「ちょっと待って……はやてちゃんはヴィータちゃんの事を知っているのかな……?」

ミライは自分でも嫌な可能性を考えてしまった。それはヴィータとはやてが違う並行世界から連れて来られていて、なおかつはやてはヴィータの事を知らない世界から連れて来られているという可能性である。
ヴィータとはやての関係を詳しく聞いていたわけではないが、その可能性が無いとは言い切れない。もしも、はやてがヴィータの事を知らず、その事をヴィータが知ったとしたらヴィータはどうなってしまうだろうか?
ミライ自身もなのは達が自分達を知らない可能性があると知って寂しい気持ちになったのだ、ヴィータはきっと大きなショックを受けるだろう。
願わくばそれが杞憂で終わる事をミライは考えていた。仲間が死に、大切な人が自分を知らないというのはあまりにも辛すぎるのだから……。



そしてミライは再び歩き出す、仲間と共にこの殺し合いを止める為に……
当面の目的地はやはり翠屋だ。翠屋に行けばもしかしたらもう1人のなのはやフェイト、ユーノに会えるかも知れないのだ。彼女達が自分を知らない可能性はある。だが、それでもミライは彼女達の力になりたいと思っていた。
その一方でミライは考えていた。仲間達と協力するとして、その中で自分はどうやって戦っていけば良いのかを……そして考えるのは……

「どうしてあの時変身できなかったんだろう……?」

そう、赤いコートの男に襲われた時、ミライはクロノ達を守る為ウルトラマンメビウスに変身しようとした。
だが、ブレスレットは反応せず変身は出来なかった。もしあの時メビウスに変身出来ていたならばクロノと共に逃亡する事も出来たかも知れなかったのだ。
変身そのものは可能なのはミライも知っている。何故ならアグモンが大男に襲われた時、ミライはメビウスに変身してアグモンを助ける事が出来たのだ。

「ギルモン助けた時と学校の時で一体何が違うんだろう……」

何故、大男の時は変身出来て、赤いコートの男の時は変身出来なかったか……ミライはその理由がわからなかった。
もし、その理由がわからなければいざという時に変身出来ず、学校の時の様に誰か犠牲者を出してしまう……ミライはそれを危惧していた。
そして、仮に変身出来ないとしたら別の方法で戦わなければならないわけではあるが……

「他に何かあれば良かったんだけど……」

ミライはクロノが龍の戦士に変身する為に使った道具や、ヴィータが槍を持っていた事を思い出していた。2人共それぞれが本来持っているデバイスは持っていなかったが、それに変わる武器があったのだ。
対してミライは変身する為のメビウスブレスはあったものの、他の武器は全く無い。その為ミライは途方に暮れていた。

286 :ボクらが叶える未来 仲間を信じていたい ◆7pf62HiyTE :2008/12/20(土) 23:57:44 ID:XiGeN2HX

参加者はそれぞれが元々持っている道具を没収され、それをプレシアが何処かから持ってきた道具と混ぜてランダム……一部意図的な面も含まれている可能性はあるが参加者に配られている。
だが、一部の参加者の幾つかの道具はどういう理由かはともかく没収されていない。そう、ミライのメビウスブレスはその1つなのだ。
更に言えばミライはその性格ゆえ、間違いなく殺し合いの傷害となる……故にプレシアはミライに支給する道具を他の参加者よりも少なめにしていたのである。
もっとも、メビウスブレスがそのままなので他の参加者と比べて不利になっているとは言い切れないので問題があるわけではないのだが。

さて、前述の通り、ミライにも道具は他の参加者よりも少ないものの確かに支給されている。だが、ミライはその事に気付いていない。
何故か?それには2つの理由がある。

1つはこの殺し合いが始まってからのミライの行動を振り返ってみればわかるだろう。
ミライは殺し合いが始まった時、自分の知るアリサと似た『アリサ』を助けられなかった事で絶望に打ちひしがれていた。そう、支給品の確認すら行っていなかったのである。
その後、助けを呼ぶ声を聞きメビウスに変身してアグモンを助け、その後アグモンの知り合いをすると共に初めて名簿を確認したのである。だが、あくまでも名簿の確認が主でそれ以上は確認していない。
その後はクロノの声を聞き学校へ向かい、学校に着いてからはクロノとの会話、ヴィータの襲来、そしてアーカードの襲撃、学校からの離脱と非常に慌ただしかった。
学校から図書館へは逃げるのに必死だったし、図書館についてからはアグモンとクロノの死で意気消沈していた。そして再び参加者を守る為に歩き出したわけではあるが……
そう、ここまでの間でデイパックの中身をじっくりと確認した事は一度もなかったのだ。それ故にミライは支給品の存在に気付いていなかった。

さて、ここである疑問が浮かんでくるだろう。そう、普通に考えればデイパックの中を覗いた時点で気付くのでは?という疑問だ。
確かにその疑問はもっともだ。だが、ミライは未だにそれに気付いていない。
それが2つ目の理由である……そう、その支給品は小さい部類に入る物だったのだ。

ミライの支給品……それは2つ共カードである。カードはせいぜい掌に収まるサイズで地図や名簿などよりもずっと小さいしデイパックには他にもランタンやノートや筆記用具等様々な道具が入っている。
つまり、よく確認しなければ見落としていても不思議は無いのである。
さて、その具体的にどういうカードかと言えば……1つは『コンファインベント』と呼ばれる仮面ライダーが使うカードで相手の技を無効化する力を持つ。
もう1つは……正確には3枚セットで支給されていた。つまり、最後の支給品は3枚で1つと扱われたのである。
それは『おジャマイエロー』、『おジャマブラック』、『おジャマグリーン』……デュエルモンスターズと呼ばれるカードゲームのモンスターカードである。
3匹のおジャマ達は兄弟であり、その攻撃力は3体とも0であるとはいえ彼らは参加者の1人である万丈目準にとってのエースカードであるはずだったのだ。
そして彼らは他のモンスターカードとは少し違っている。
万丈目や遊城十代がこの殺し合いに連れて来られる前にいた異世界では召喚を行う事でモンスターが実体化していた。
だが、幾つかのカード……精霊とも呼ばれるカードは召喚を行わなくても実体化する。例えば十代の持つ『ハネクリボー』がそれにあたる。そしておジャマ達もそれに該当するのだ。
さて、この殺し合いの場に置いてもモンスターは実体化するという事実がある。そこから考えるにこの場では彼らも普通に実体化する可能性はあるのだ。
だが、どういう理由かは不明だが現状では実体化されていない……デイパックから出さなければ実体化できないのか、召喚しなければ実体化できないのか、そこまでは不明だが今現在は実体化していない。
彼らはきっと本来の持ち主である万丈目に会いたがっているだろう……だが、ミライがデイパックから彼らを出さない限りそれは決して叶う事は無いだろう……。

287 :ボクらが叶える未来 仲間を信じていたい ◆7pf62HiyTE :2008/12/21(日) 00:01:04 ID:XiGeN2HX

ミライはデイパックに眠るカードの存在に未だ気付くことなく翠屋を目指して足を進めていた。
何とかして仲間を探してメビウスに変身出来なかった理由を確かめなければならないと考えていた……変身出来たとしてもそうだが、変身出来ない場合には仲間の助けが必要不可欠だからだ……。
そして、その理由さえわかれば仲間達と協力して戦えると……もう1人のなのはやフェイト達と協力してキャロ達を守り、はやてを救う出来たヴィータとも合流してこの殺し合いを止める事が出来ると……

だが、ミライは2つの事実を見落としていた。
1つはこの間にも殺し合いが進み既に何人かの新たな死者も出ているという事実を……
もう1つは放送で言っていた優勝者に願いを叶えるという言葉……ミライ自身はそれを聞いた所で殺し合いに乗るつもりは無いから全く考えもしなかったのだが……参加者がその言葉に乗る可能性を見落としていたのである。

そう……

なのはの友達の少女が殺し合いに乗る決意をした事も……
アグモンが会いたがっていた少女が殺し合いに乗る決意をした事も……
ミライが身を案じた少女が守りたがっていた少女が命を落とした事も……

その現実をミライは未だ知らない……ミライの歩む道は遙か険しい……

【1日目 朝】
【現在地 E-3】
【ヒビノ・ミライ@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】
【状態】哀しみ、背に切傷 、強い決意
【装備】メビウスブレス@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは
【道具】基本支給品一式、『コンファインベント』@仮面ライダーリリカル龍騎、『おジャマイエロー』&『おジャマブラック』&『おジャマグリーン』@リリカル遊戯王GX
【思考】
 基本:仲間と力を合わせて殺し合いを止める。
 1.翠屋に向かい、仲間を集める。
 2.助けを求める全ての参加者を助ける。
 3.なのは、フェイト、ユーノ、キャロと合流したい。
 4.ヴィータが心配。
 5.メビウスに変身出来なかった理由を確かめたい。
 6.アグモンを襲った大男(弁慶)と赤いコートの男(アーカード)を警戒。
【備考】
 ※メビウスブレスは没収不可だったので、その分、ランダム支給品から引かれています。
 ※制限に気付いてません。
 ※デジタルワールドについて説明を受けましたが、説明したのがアグモンなので完璧には理解していません。
 ※参加者は異なる並行世界及び異なる時間軸から連れて来られた可能性がある事に気付きました。
 ※支給品の中にカードがある事に気付いていません。

288 : ◆7pf62HiyTE :2008/12/21(日) 00:15:42 ID:fha674dQ
投下完了いたしました。

色々ありながらも完成しました。サブタイトルの元ネタはウルトラマンメビウスOP『ウルトラマンメビウス』の歌詞の一説です。
ちなみに、最初に書いたバージョン(したらばに仮投下したが名簿の矛盾で破棄)のサブタイトル『ボクらが変えてく未来』もそこからでした。

なお、実は(初代破棄後の)プロットの段階ではクア組と絡ませるプランも考えていたんですが、クア組予約が入りそれも断念……で、その名残が支給品のカードです。

しかし……『仲間を信じていたい』となっているが……もうフェイトもキャロもマーダー……そしてはやて死亡でヴィータもヤバイ(それ以前に最新の予約が……)……ミライ涙目……。

289 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/21(日) 16:36:55 ID:yrjw7mxf
投下乙です。
ミライの決意がどことなく儚いなあ。
探している人が今アレな状況だけに…。

290 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/22(月) 17:47:04 ID:ps0r1YTg
新スレできました

http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1229935589/

291 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/22(月) 23:00:47 ID:49mUQBQ+
スレ立て乙でした

292 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/23(火) 08:45:39 ID:C8RuYCno
                 / / //    `ヾヽヽ          ,. -―_..ニ=-
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             ト、 |   |/ /      r'ヽ、            //
             ヽヽ ! r'  l ,二ニヽ |⌒゙`|   ,.イ,.イ  //      __/ヽ _
          ,. ---ヽ `Y /'´ ̄ `丶、!ヘ:r、| ,.イ/ /  //      _lri⌒`丶レl
         /-‐_==-           `ヽ |/ /  / / /       l/'´   ,ハ1/!,r'! _
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         ヽN l ト、Nリィ;、ヾ ´,ゞ=、ト、 ! ト、!`/    // ``ヽヽヽ    ̄ `丶、 ',:::!         ヽフ
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             リ | \‘'     _リ|イ ,r;==' '---,、    ヽ::',}  !       !        /-'
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                       7_:::ヽ  /  /  \:/―'ヽ   ヽー、_     ,イ- '
\                       '---V´__,ィ´     ``!  ト;、ァ、ァト'ヾ、_, イ-r'__
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293 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/23(火) 08:46:28 ID:C8RuYCno
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            ` ナ‐ァ:.:::::.j/. , ' └┘   |イハ / !  \ !
            / /:.:.:./ ∠、       ' `′レ!イ i! !|/ 
           , '-┴=/ /\}    ゛` ∧_/|  ト、|レ':.ヽ
          / \/ /`ーュ :.\    / ヽ.|  |::::ト、::::::'
.        /   :./ /  :.:_,巨三三ミf¨フ   :.|  |:::::| \}
      /    :./ /ヽ :./―ァ::::::::::>'´  ==,'  i、::::!
   ,. - '´   _,.イ 〃-‐┤::ハ`ー'´,.-<´     .:./  / `ニュ、
-‐ '´  _,. -‐    !N‐=‐にロこ}´   -=―¬ :./  /  ___}、_
_,. -‐        r┴   >′:::::::`ー―こ二::_` く ∠二 __,.ニニュ、
         r′,.  イ:::::::::::::::::::::::::: ⊂二、`:::::\`ー┴,. へr― …¬\
        j /   |:::::::::::::::::::::::::::: r―ー':::: ヾ ̄ト<:::ヾヽ\      }
       /     〉=Eロ======、、`二ニ=::::::\|:::::}::}::::廿::::〉    /
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埋め

294 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/23(火) 08:47:37 ID:C8RuYCno
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                 |_|
            ,ィ7'l:::Kス
             〈_)-`'::::::ハ          _ -−― -  _
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           ヾ三ソ::::::::ト、       /, -=ニ三ミ、       ヽ
                \::::::::ノ!:ヘ     // / i    、 `ヾヽ i.   ',
               Y´  ! ト、 ./‐/ニA_ニi、=ハ   ヾ::::!    }
           {ヽ   ∨   l ヘ ! l /Ll_\トj七メ  l V     !
           ヾ::\ ∨ i   ヘl !〈 ト'::l   7゚::ヽ!×!  !     ,'  /7
            >:::\ヽノ __ 「`ト!、.ゞ' ,  弋ソ.!  !  ト、  ノ /::/
            \:::::::ハ./, '   l l:::ハ. r‐ 、 ""| !  l、:X/:::::::7
             〈::::::::::::l〉    .〉 〉:::トゝノ__,.ィー!  l  .K>、\::<
             ヾ_::::::::!    / //テ、}][`7ヲヘ!イノ!∧トゝ::\:X´
                レヘ:::ゝ _  y' _ -、 ! |  lヾ'<`ー-,.、:::::::::::::_ル、}
                 \::! 7/   ! ト、_ノイト、l::::::/|_|二_ ̄
                  `/ /〉    ! |:::|!|:::!| レ〈ヽ!:LLレ}
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                   /}  レ´二_ー-'_/:《::::::/ノ l `ト、二ソ|
                 /:::/  _>'<二ヾ´:::|ソ::::::>ヽ,イ  ト、::::::::イ
           /::::::/ /  ̄/7ソ三`,>ヘ/-‐' .l /   ̄ .ト、
          /::::::/!/ ノー'二7ニソ>‐y`/7 〉|\ ヽ     /:::::\
          ∠/!/  / /::://:::::/ソ>:::〈〈:::「ヾ,!:::::\ `ー-イ::r 、:::::\
            /!   / /:::::://:::::〈〈:::::::::::! |::「ヽゞ,::::::::ヽ   ヾ! \ト-
         /:::::|  / /二´/:::::::::[二]:::::::! |∧._ ̄ト、::::::丶、_
.          /::::::/ / /{:::::`':::::::::::::::|!|:::::::::レイヽヽ ! l::::::::::::::`ヽ
      /:::/l/   `7::,イ::/二二,ニ,ニニニ=、!::ヘ∨ ヾ::::::::::ト、:::\
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    /::::/     !::::::!:::∨     !=!     .l:::::::ヾ:::\_
   //        |::::::|::::::ヘ     l::::!     !:::::::::::\:::::`丶

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295 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/23(火) 08:48:29 ID:C8RuYCno
                     、、
                     \ヽ、
               _,. -―- . ヽヘ ノ}
             _, - '´       \} レ'ノ
    ヽー- -‐‐ '´           -‐¬ 、
     `ー-/     ,       、  ヽ   ヽ
       . '      , i    ヽ 、 ヽ  、 、  ',
      /  / /,  l i ! l    l  i l . l.  i i    i     
       /  i i  l| l. |   ィ 丁!T|.  l |.   |
     | ,i :/ | !,.イ丁 ト. 、 j l|,z== 、!: ! j !   |
      ! l| i :l l. ト,;:==、いノ!ノ  {t心Y /イ   l
       !|| :i| ::!.l:.. {i {tい` ′ _いノリ/l l |:l. ,   
       ! l', ::い:、l ヽソ  ,    ̄/l:l:|.!|:i:! ′
         ヽ!ヽ :ヽトヘ ´    __    l:l:|:!|::;' /
         ` \ヽ::ヘ、   ヽ′  ,川::リ//
            l.`::l::l::`iー-,. ..__//イ!//'′
              | l::l::!:;v'^´ 〉-―'/イく,、
               ! トv′_,/:::::::::::::::/::冫、_
             V.イ「 l::::::::::;.-'´ / /: : >、
            ,.イ: :/| l,.-'´ , '´ / :/: : : :\
           /:/ :/  、   . '´  ⌒j:/: : : : : : : ハ
              i: l (_)   `'´     ゝ:' i : ; : : : : : : :i
          l: :|:/ ト,     r1 、 |: :l::/: : : : : : : :|
           |/:l′i'/     ノ'′ヽ !: /: :i : : : : : : l

                  , r
              _,..ゝ' _ `ヽ-、
               ;' ミ (゚:ノ .o.ヾj_
              ゝ-=彡' - `ナミ、
             /l/    .:/
              ´ノ"゙  :.:::::i
       __.      /      j  
   ,. '´    `j     /,  ';   ..:!
  /    ,.-‐ ´  / !  i   ! !
  !   、,'    , '   `、 ',  ,' /、
  ',.   ` ..__  !    、 ヽ.j Lノ ',
    ` 、    ̄l     ', ゙´   ! l
      ` ー---',.    }   ノ ノ
           ゝ.、._.ノー-‐'丶゙__)
           Liノ

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296 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/12/23(火) 08:54:36 ID:C8RuYCno
あたしは…もう誰も傷つけたくないからッ!なくしたくないからッ!!だから…!

          _人人人人人人人人人人人人人人人_
          >    ゆっくりしたいんです!!!  <
           ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
.     /三/ / / / .:/l/   .:l //|_:| /| .: / / .: |     ', ト \  ∧
        / / /://〃   :.:N゙斗ャl/レ| / /l .: /.:.|.:.|.:.: |リ \:ヽ ∧
.       / / :/ ./'/ lヘ:.:ト.:K __,.!/  レ /!__ハ|: /.:.l.:.:/   \ヽ \ 
      / / :イ  /'/ l' ヽ|:.N' (ヒ_]  l/ ヒ_ン |/イ/ノイ     ', i.: ト\
     ///{.| 〈'/    ヘ: ','" U ,___,U"' i爪 〈;|       |,ヘ.: |
.    / /:ィ/  !.!     / \ゝ、 ヽ _ン   人 リ`>、        リ .}: |
   /.: .:/ !l  {'      |\   >,、 _____, ,.イ /∧lニlュ、     }:|

            ,'´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ.
           | 少し…頭ゆっくりしようか… |
           ヽ、_   __________ノ
               \|
            |\              , -一ァ
           _\\          /__/
         ∠二 `ヽ/´  ̄ ̄ ̄ `丶//⌒ヽ
          , '" ̄'            ヽ) 、  \
        / / /==─      -─==','、\  丶
        l /  i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ |\j   ヽ
        i ハ   Wイi (ヒ_]     ヒ_ン ).| .|、 .|  \   i
        / /\.{ヽ! !""  ,___,   "" | .!ノ /    \ |
        l  l     | ',.   ヽ _ン    | .|/     i . |
        ヽ ヽ    | |ヽ、      ./| |       } j
         \!    レ  ` ー--─ ´  レ      //

     γ ⌒ ⌒ `ヘ            _人人人人人人人人_
    イ ""  ⌒  ヾ ヾ          >  ティアー!!! <
  / (   ⌒    ヽ  )ヽ         ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
  (      、 ,     ヾ )         ,ィ
   ゞ (.    .  ノ. .ノ .ノ          (.{ _,. -─---、 _
    ゝ、、ゝ.....|  |..., , ノソ          / `/ `ー::::::::::::::::ヽ、:::`ヽ、__
   ._....,,. .-ー;''!  i;;;〜−ヽ_         /:::::::::::::::i::::::::i:::::::::;::::::ヽ;::::::::',、\
   γ ,〜ー'''l ! |'''ーヾ  ヾ        i:::/:::::、:::ハ:::::ハ:::::ハ:::::::::ハ二二ト  〉
   ( (    |l  |    )  )       レ:::/::ハゝ、レ'─V/イレ/::!::::::::| ∨
   ヾ、 ⌒〜"""''''''⌒〜'"´ ノ       ハレ;イ(◯),  、(◯)::::レ'i::::::::|\\
    .""'''ー-┬ーr--〜''""         ,':iハ!""  ,rェェェ、 ".::::/:!::::::::|   \\
            |   |              i::::/l   |,r-r-|   /::::ハ:::/     ヽ >
         ノ 从 ゝ             .!::::/>、 `ニニ´  ,.イ/ー!/

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