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リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル6

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 08:39:50 ID:Ezx/0t0T
当スレッドは「魔法少女リリカルなのはクロスSSスレ」から派生したバトルロワイアル企画スレです。



注意点として、「登場人物は二次創作作品からの参戦する」という企画の性質上、原作とは異なった設定などが多々含まれています。
また、バトルロワイアルという性質上、登場人物が死亡・敗北する、または残酷な描写や表現を用いた要素が含まれています。
閲覧の際は、その点をご理解の上でよろしくお願いします。



企画の性質を鑑み、このスレは基本的にsage進行でよろしくお願いします。
参戦元のクロス作品に関する雑談などは「クロスSSスレ 避難所」でどうぞ。
この企画に関する雑談、運営・その他は「なのはクロスロワ専用したらば掲示板」でどうぞ。



前スレ
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルスレ5
ttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1219969916/



まとめサイト
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルまとめwiki
ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/
クロスSS倉庫
ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/



避難所
なのはクロスロワ専用したらば掲示板(雑談・議論・予約等にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/10906/
リリカルなのはクロスSSスレ 避難所(参戦元クロス作品に関する雑談にどうぞ)
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/6053/



2chパロロワ事典@wiki
ttp://www11.atwiki.jp/row/



2 :ワッペン:2008/10/15(水) 08:41:15 ID:UD4KNsZC
         _,__       よしオレが>>2ゲットだ 
     /:::::::::::::::::::::::::::ヽ      
   /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.\    オレは 
  /`.:::::::::::::::/゛`〜、:::::::::::::\   景気は悪化の一途 
 / / ^ヽ:::l`    \::::::::::::::ヽ   しかしそんな今だからこそ心を充たすアニメが必要じゃないのか 
  . /   ヽl  ヽ   \::::::::::::l   夢のある未来を想像してみろよ、きっと今を乗り切る力になるから 
  !  _    _     \:::::::l   
  、 /`  ヽ ./ 。  \    \::l    心をめぐらせ新たなアイデアを演出できるアニメ、まさに良アニメだよな 
  ヽ 、 。ン ヽ   ノ   ゙’(6j   逆に落ち込んだ心を救うアニメの形もあると思うんだよな 
   ヽ ̄  ’’   ̄    _∪    
   ヽ   0        ノ    今年で23年目になる日航機墜落事故、しかしこれを機に多くの改良があった 
    .`、        _/   悲劇を無駄にしない取組みは、失意の心をも救うことになるはずだからな 
   .  .`-.    .r°   こういうアニメ=良アニメも作ってくれよ、萌えキャラ投入で社会貢献,売上倍増の1石2鳥 


3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 08:41:56 ID:Ezx/0t0T
【基本ルール】
 参加者全員で殺し合いをして、最後まで生き残った者のみが元の世界に帰れる。
 参加者の所持品は基本的に全て没収され、その一部は支給品として流用される。
 ただし義肢などの身体と一体化した武器や装置、小さな雑貨品は免除される。
 主催者に敵対行動を取ると殺されるが、参加者同士のやりとりは反則にならない。
 参加者全員が死亡した場合、ゲームオーバーとなる。
 バトロワ開始時、全参加者はマップ各地に転送される。
 マップとなるのは「各クロス作品の建造物が配置されたアルハザード」という設定。
 バトルロワイアルの主催者はプレシア・テスタロッサ。
 バトロワの主催目的は未定です。それはバトロワの今後の発展次第で決定されます。



【支給品】
 参加者はバトロワ開始時、以下の物品を支給される。
 ・デイバック(小さなリュック。どんな質量も収納して持ち運べる素敵な機能有り)
 ・地図(アルハザードの地形が9×9マスで区分されて描かれている)
 ・名簿(参加者の名前のみが掲載されたファイル)
 ・水と食料(1日3食で3日分、都合9人分の水と食品が入っている)
 ・時計(ごく普通のアナログ時計。現在時刻を把握出来る)
 ・ランタン(暗闇を照らし、視界を確保出来る)
 ・筆記用具(ごく普通の鉛筆とノート)
 ・コンパス(ごく普通の方位磁石。東西南北を把握出来る)
 ・ランダム支給品1?3個(現実・原作・クロス作品に登場する物品限定。参加者の能力を均一化出来る選択が必要)
 尚「地図」?「ランダム支給品」はデイバックに収められている。



4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 08:43:34 ID:Ezx/0t0T
【支給品の制限】
1.デバイス系
 ・デバイス類は、起動だけならどの参加者でも可能
 ・カートリッジがあれば魔力の無い参加キャラでも、簡易なものなら回数制限付きで魔法使用可能



2.ライダーベルト系
 ※全般
  ・仮面ライダー関係の変身アイテムはこれ以上(33話時点)登場させる事を禁止する。登場した場合大方NG、書き直しで済む場合は書き直しで済ませる
  ・変身アイテムによる変身時間は無制限。ただし一度変身を解くと1時間経過するまで変身不可
 ※龍騎系ライダーベルトについて
  ・12時間に1人、契約モンスターに「生きた参加者」を喰わせないと所有者が襲われるようになる
  ・参加者を1人喰わせると猶予が12時間に補充される。猶予は12時間より増えない
  ・変身や契約モンスターの命令を1分継続させる毎に10分の猶予を消費する
  ・猶予を使い切ると変身や命令は解除され、契約モンスターに襲われるようになる
  ・所有者が自らの意識でカードデッキを捨てると契約モンスターに襲われる。無意識、譲渡、強奪は適用外
 ※カブト系ライダーベルトについて
  ・ベルトのみ支給品指定。ゼクターは変身時のみ、どこからともなく飛来する。
  ・ゼクターに認められなければ変身出来ない。各ゼクターの資格条件は、以下のものを精神的に満たしている事。
   ・カブト……自信
   ・ホッパー……絶望
  ・クロックアップはごく短時間のみ。使用後には疲労有り
 ※555系ベルト(デルタ)と剣系ベルト(カリス)のついてはそれぞれの支給品欄参照



3.火竜@FLAME OF SHADOW STS
  ・デバイスの中に“力の塊”として封印され、参加者に触れられるまで一切の行動が不能(虚空は例外)
  ・参加者が触れると火竜が体内に宿り、使用可能となる。その際、腕に火竜の頭文字が刻まれる
  ・宿っている参加者が死亡すると“力の塊”状態となって体外に出る。火龍の記憶は維持される
  ・能力を使うには火竜の頭文字を描く事が必要
  ・能力を使用する度に体力と精神力を消耗する。度合いは発動した能力の規模に比例



4.巫器(アバター)@.hack//Lightning
  ・通常、名称以外の情報や能力を確認・使用する事は出来ません。
  ・所有者が精神的に喪失を抱え、それに伴って強靭な意志を発揮した場合のみ(それ以降は何時でも)使用可能です。
  ・所有者が死亡すると、再び全機能の確認・使用が不能になります。。
  ・デバイスモードの巫器が近くにある時、その存在を「鼓動」によって察知できます。
  ・術式が既存の系統とは異なる為、AMFの影響を受けません。
  ・各巫器はそれぞれ専用スキルを持ちますが、「データドレイン」は全巫器が共通して使用出来ます。
  ・データドレインとは、魔力結合の術式に干渉・改竄することができる魔力弾を放つ能力の事です。
  ・魔法やAIDAを変質・削除させる事が出来ます。
  ・人間に命中した場合、その人物のリンカーコアに干渉・改変させる事が出来ます。
  ・それそのものは攻撃力が無い為、一般人には無意味ですが、 魔導師には一撃必殺の効果を発揮します。
  ・ただし膨大な魔力を消費する為、一度の戦闘では1発撃つのが限界です。
  ・データドレインの名称は、各巫器ごとに異なります。



5.カード系の支給品(遊戯王、アドベントカード@仮面ライダー龍騎、ラウズカード@仮面ライダー剣)
  ・カード単体でも使用可能、ただし使用後に消滅。専用アイテムを使えば威力増大で何度でも使用可。



6.制限が必要そうだが制限が決定していない物品を登場させたい場合は、事前の申請・議論が必要。

5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 08:45:55 ID:Ezx/0t0T
【時間】
 ・深夜 :0〜2時
 ・黎明 :2〜4時
 ・早朝 :4〜6時
 ・ 朝 :6〜8時
 ・午前 :8〜10時
 ・ 昼 :10〜12時
 ・日中 :12〜14時
 ・午後 :14〜16時
 ・夕方 :16〜18時
 ・ 夜 :18〜20時
 ・夜中 :20〜22時
 ・真夜中:22〜24時



【放送】
 以下の時間に「死亡者」「残り人数」「侵入禁止エリア」を生き残りの参加者に伝える。
 ・深夜になった直後(00:00)
 ・朝になった直後(06:00)
 ・日中になった直後(12:00)
 ・夜になった直後(18:00)



【地図】
ttp://www5.atwiki.jp/nanoharow/pages/126.html



【禁止区域】
 侵入し続けると1分後に首輪が爆発するエリア。「放送」の度に3エリアずつ増える。
 侵入禁止はバトロワ終了まで解除されない。



【首輪】
 参加者全員の首(もしくは絶対に致死する部位)に装着された鉄製の輪の事です。
 これにより参加者各人の「生死の判断」「位置の把握」「盗聴」「爆破」が行われ、「爆破」以外は常に作動しています。
 「爆破」が発動する要因は以下の4通りです。
 ・主催者が起動させた場合
 ・無理に首輪を外そうとした場合
 ・主催者へ一定以上の敵対行動を取った場合
 ・禁止区域に一定時間滞在していた場合(尚、警告メッセージが入る)



6 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 08:48:03 ID:Ezx/0t0T
【避難所内でのスレの分け方】
 ・予約専用スレ(作品制作の為、使用したい参加者を申請する為のスレです)
 ・議論専用スレ(バトロワ上の問題、矛盾点、制限などを話し合う為のスレです)
 ・一時投下&修正用スレ(周囲の判断が必要な作品、または問題点を修正した作品を投下する為のスレです)
 ・情報まとめスレ(現時点での参加者やマップの状況、死亡者、予約状況などをまとめる為のスレです)
 ・雑談専用スレ(このバトロワに関わる方々が雑談する為のスレです)
 ・死者追悼スレ(このバトロワで死亡したキャラ達があの世に行った後の話を投下する為のスレです)
 ・要望スレ(新しいスレなど、新要素が必要になった時にそれを申請する為のスレです)
 ・毒吐きスレ(このバトロワ作品において毒と判断出来る意見を書く為のスレです)


【書き手のルール】
 バトロワ作品を作る上で、書き手に求められる規則。
 ・トリップをつける
 ・本スレでも連載中の書き手は、あくまでもこちらが副次的なものである事を念頭において執筆しましょう
 ・残虐描写、性描写は基本的に作者の裁量に任されます。ただし後者を詳細に書く事は厳禁
 ・リレー小説という特性上、関係者全員で協力する事を心掛けましょう
 ・キャラやアイテムの設定において解らない所があったら、積極的に調べ、質問しましょう
 ・完結に向けて諦めない
 ・無理をして身体を壊さない


【予約について】
 他の書き手とのかぶりを防止する為、使用したいキャラを前もって申請する行為。
 希望者は自身のトリップと共に、予約専用スレで明言する事。
 予約期間は1週間(168時間)。それ以内に作品が投下されなかった場合、予約は解除される。
 ただし諸事情により延長を希望する場合は、予約スレにて申請すれば3日間の延長が可能である。
 自己リレー(同一の書き手が連続して同じキャラを予約する事)は2週間全く予約がなかった場合に限り許可する。ただし放送を挟む場合は1週間とする。
 書き手は前作の投下から24時間経過で新しい予約が可能になる。ただし修正版を投下した場合は修正版を投下終了してから24時間後とする。
 作品に登場したキャラはその作品が投下終了してから24時間後に予約可能になる。ただし修正版が投下された場合は修正版を投下終了してから24時間後とする。


【状態表のテンプレ】
 バトロワ作品に登場したキャラの、作品終了時点での状況を明白に記す箇条書きです

【○日目 現時刻(上記の時間参照)】
【現在地 ○ー○(このキャラがいるエリア名) ○○(このキャラがいる場所の詳細)】
【○○○○(キャラ名)@○○○○(参加作品名)】
【状態】○○(このキャラの体調、精神状態などを書いて下さい)
【装備】○○○○(このキャラが現在身に付けているアイテムを書いて下さい)
【道具】○○○(このキャラが現在所持しているアイテムを書いて下さい)
【思考】
 基本 ○○○(このキャラが現在、大前提としている目的を書いて下さい)
 1.○○(このキャラが考えている事を、優先順で書いて下さい)
 2.○○
 3.○○
【備考】
 ○○○(このキャラが把握していない事実や状況など、上記に分類出来ない特記事項を書いて下さい)


 以下は、バトロワ作品の参加キャラ数人以上が、特定の目的を果たすべく徒党を組んだ際に書くテンプレです

【チーム:○○○○○(この集団の名前を書いてください)】
【共通思考】
 基本 ○○○(この集団が共有している最大の目的を書いてください)
 1.○○(この集団に共有している思考を、優先順で書いてください)
 2.○○
 3.○○
【備考】
 ○○○(この集団が把握していない事実や状況など、上記に分類出来ない特記事項を書いてください)

7 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 08:50:57 ID:Ezx/0t0T
【参加者名簿】

【主催者】
○プレシア・テスタロッサ

【魔法少女リリカルなのはStrikerS】 10/10
○高町なのは(sts) ○シャマル ○ザフィーラ ○スバル・ナカジマ ○キャロ・ル・ルシエ
○ルーテシア・アルピーノ ○ヴィヴィオ ○クアットロ ○チンク ○ディエチ
【魔法少女リリカルなのはA's】 2/4
●高町なのは(A's) ○フェイト・T・ハラオウン(A's) ●シグナム ○ヴィータ

【リリカル遊戯王GX】 4/5
●ティアナ・ランスター ○遊城十代 ○早乙女レイ ○万丈目準 ○天上院明日香
【NANOSING】 4/4
○アーカード ○アレクサンド・アンデルセン ○インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング ○シェルビー・M・ペンウッド
【コードギアス 反目のスバル】3/4
○ルルーシュ・ランペルージ ○C.C. ●カレン・シュタットフェルト ○シャーリー・フェネット
【魔法少女リリカルなのは マスカレード】4/4
○天道総司 ○相川始 ○キング ○金居
【仮面ライダーリリカル龍騎】 2/3
○八神はやて(A's) ○浅倉威 ●神崎優衣
【デジモン・ザ・リリカルS&F】 0/3
●エリオ・モンディアル ●アグモン ●ギルモン
【リリカルTRIGUNA's】 2/3
●クロノ・ハラオウン ○ヴァッシュ・ザ・スタンピード ○ミリオンズ・ナイブズ
【なの☆すた nanoha☆stars】 3/3
○泉こなた ○柊かがみ ○柊つかさ
【なのは×終わクロ】2/2
○新庄・運切 ○ブレンヒルト・シルト
【リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】 2/2
○セフィロス ○アンジール・ヒューレー
【魔法妖怪リリカル殺生丸】 1/2
○ギンガ・ナカジマ ●殺生丸
【L change the world after story】 2/2
○ユーノ・スクライア ○L
【ARMSクロス『シルバー』】 2/2
○アレックス ○キース・レッド
【仮面ライダーカブト】 1/2
○フェイト・T・ハラオウン(sts) ●矢車想
【ゲッターロボ昴】 1/1
○武蔵坊弁慶
【魔法少女リリカルなのは 闇の王女】 1/1
○ゼスト・グランガイツ
【小話メドレー】 1/1
○エネル
【ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】 1/1
○ヒビノ・ミライ
【魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】 1/1
○八神はやて(sts)

現在:49/60

8 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 09:03:05 ID:APBg1Zks
スレ立て乙です



>>7

9 :Subaru's Adventures in Parallel world ◇7pf62HiyTE(代理):2008/10/15(水) 10:47:07 ID:Ezx/0t0T
では、回収されたカードはどうなったのであろうか?その一部はフェイト達参加者に支給されただろう。だが、カードの全てが参加者に支給されているとは思えない……
没収されたであろうカードはレイ達のデッキのカードとデュエルアカデミアにあるカード……何百何千枚とあるはずだ。しかし、フェイトに支給されたカードは3枚……
その内1枚はデュエルモンスターズのカードではないようだが、とりあえずこの場はそれについては考えない。
つまり、参加者に支給されているカードは多くても3枚……参加者は60人だという事を考えると支給されたカードの総数は多くても180枚……勿論、自分や十代達デュエリストには支給されていないだろうから実際はそれよりも少なくはなるだろう。

さて、そうなると残りのカードは何処に?プレシアがずっと没収したままなのか?
いや……殺し合いを望むプレシアにしてみればカードをそのままにしておくことはまず考えられない……だとしたら、残りのカードは幾つかの施設に置かれている可能性が高いだろう。

さて、レイにはもう1つ気になる事がある。それはデュエルディスクの存在である。これまでに探した所、デュエルディスクすらも見つかってはいなかったのだ……

この場に置いてはデュエルディスクが無くてもカードは実体化できる。
だからこそ、レイ達のカードデッキは没収されたわけである……だが、それならばデュエルディスクを没収する必要は無いのではないか?
しかし現実にはレイのデュエルディスクは没収されている……恐らく十代達のデュエルディスクも没収されているだろう。
では、何故デュエルディスクが没収されているのだろうか?少なくともデュエリスト以外にとってはあまり意味のない道具のはずだ。
いや、デュエリストにとってもデュエルをする時以外はまず使うことのない道具である。没収する意味がわからない……

だが、もし没収する意味があるとすれば?

デュエルディスクはカードがあって初めて意味を成す、レイ達がいた異世界においてもカードを実体化させるためにはデュエルディスクが必要だった。
だとしたら、デュエルディスクを使えばカードの効果をより強く引き出すことが出来るのではないのか?
フェイトに風化戦士を使った時は1回攻撃をしただけで消えてしまった。しかし、もしデュエルディスクを介して風化戦士を召喚したならばもう暫く消えずに残っていたのではないか?
それならばレイ達のデュエルディスクが没収され、デュエルアカデミアにも予備のデュエルディスクが無い事にも説明が付く、カード同様重要な意味を成すデュエルディスクをそのままにするはずがない。
恐らくデュエルディスクも他の参加者に支給されているか何処かの施設に置かれているのだろう。

レイとしては出来るだけ早くカード、そしてその力を発揮することの出来るデュエルディスクを回収したかった。
もし時間が過ぎればデュエリスト以外の参加者もカードやデュエルディスクの使い方に気付き、それを巡って各地で殺し合いが促進されることになるからだ、そうなれば十代が危ないのは言うまでもない。

となれば早々にデュエルアカデミアに見切りを付け、他の施設へ向かった方が良いのではないか?

しかし、レイにはデュエルアカデミアの中で1カ所だけ気になる場所があった。
その場所は、間違いなくカードがあるだろうと考え、ここに到着して真っ先に向かった場所……売店である。
元々異世界に来てから食料の問題があったので食料については全く期待していなかったが、カードや日用品に関しては高い確率であると考えたのだ。

だが、売店はシャッターで固く閉ざされた為、中に入ることが出来なかった。
無論、鍵が掛けられているだけならばレイの持っている拳銃で鍵を壊すという事もできたが、
来た当初のレイは売店以外の場所に行けばすぐにカードを手に入れることが出来ると考え、シャッターをそのままにしてカード探しを続けた。

しかし、今現在もカードは見つかっていない。

こうなると今一度売店へ戻って拳銃でシャッターの鍵を壊してでも中を調べた方が良いのかもしれないとレイは考える。
それに、他にも調べていない場所があり、そこにカードがあるという可能性も捨てきれない。
だが、それら全てが空振りに終わる可能性だってある。その懸念がある為、レイはすぐさま戻ることが出来ないでいた。

それにもう一つ気になる事がある、それはフェイトとフェイトを足止めしてくれていた人物……レイ自身は名前を知らないが新庄という人物の存在である。



10 :Subaru's Adventures in Parallel world ◇7pf62HiyTE(代理):2008/10/15(水) 10:49:57 ID:Ezx/0t0T
新庄に対しては殺し合いに乗った人……フェイトが追いかけてくると話した。しかし、そんな嘘などすぐにバレる、そうなれば次は自分を追ってくる可能性が高い、
幸いG-4にあるアパートからG-7にあるデュエルアカデミアまでは約3キロ離れている。最初からデュエルアカデミア目当てで移動しない限りはすぐに追いかけては来られないだろう。
だが、それでも2人と別れてから数時間……それだけの時間があればこの場所にやって来る可能性は十分に考えられる。
もし、2人がここにやって来たならば確実に殺し合いに乗った人を殺そうとするレイを止めるはず、だが十代を守る為にはそれを受け入れるわけにはいかない。
かといって、殺し合いを止めたいであろう2人を殺すわけにはいかない……
勿論、2人の動きを封じることができるであろうカード……『フリーズベント』と『光の護封剣』を使えば切り抜ける事はできるだろう。
だが、ただでさえ手持ちの道具が少ない状況で貴重なカードを使うわけにはいかない。
故に、できるならばこの場でフェイト達と遭遇することは避けたいのだ。その為にもいち早くこの場所から離れて他の施設へ向かった方が良いとも言える。

レイに与えられた選択は2つ……デュエルアカデミアに見切りを付け他の施設へ向かうか、それとも売店へ戻りシャッターを破壊してでも中を調べるか……

「どうしようか……何にしても急がないと十代様が……」

そう、こうしている間にも十代の身に危険が迫っている可能性がある、レイには時間が無いのだ。
ひとまず玄関に戻ってきたレイであったが、そこで彼女の表情が変わる、

「……これって……血……?」

レイが見たもの……それは床に付着した血痕であった。少なくともレイが最初にこの場所に来た時にはそんなものは無かった。
それが意味する事は……レイがこの場所に来た後にここを訪れた参加者……それも負傷者がいるのだ。

そう、レイがカード探しに集中している間に負傷したルルーシュを連れてスバルとこなたがデュエルアカデミアに来ていたのだ、
3人はすぐさま保健室へ向かったが為、売店などを調べているレイとは遭遇せずにすんだのである。その途中でルルーシュの血がデュエルアカデミアの床を汚していたのだ。
なお、3人はレイの存在に気付いていないし、レイもこの血痕を見つけるまではこのデュエルアカデミアに人が来たという事実には気付いていなかった。当然、互いの事情など知るはずもない、

レイは動揺していた、血痕から考えても負傷者はほぼ間違いなく傷の手当てができるであろう保健室へ向かっただろう。そして保健室方面はレイがまだ調べていない3分の1に入っていたのである。

レイは負傷者が保健室へ向かったという事実から、ある1つの結論に思い当たった……

それはデュエルアカデミアの近くで戦闘が起こり負傷者が現れたという事実だ、
同時にそれは戦闘を行った方の少なくても片方が殺し合いに乗っている事を意味している。勿論、それが今現在保健室にいる負傷者の可能性がある、
もし負傷者が殺し合いに乗っている者ならばすぐにでも殺した方がいいだろうし、殺し合いに乗っていない者ならばその時の情報を聞き出す必要がある、

さらに考えたくない話ではあるがその負傷者、もしくは負傷者と戦闘した者が十代である可能性だってある。

この時、レイに与えられた選択肢は1つ増えて3つ…売店へ戻り中を調べるか、すぐさまここを離れ他の施設へ向かうか、もしくは保健室にいるであろう負傷者と接触を試みるか…

「どうする……?」

レイは思案する……3つの選択肢のどれを選ぶのか……勿論、レイは保健室にいる人物の中に自分の知り合いであるスバルがいる事には気付いてはいない……



かくしてデュエルアカデミアにはスバル本人は知らないスバルを知る人物が3人集っていたのである。スバルを知る者達彼らを知らないスバル本人の行く末は、今はまだ誰も知らない……





11 :Subaru's Adventures in Parallel world ◇7pf62HiyTE(代理):2008/10/15(水) 10:52:27 ID:Ezx/0t0T
【1日目 早朝】
【現在地 G-7 デュエルアカデミア(玄関)】
【早乙女レイ@リリカル遊戯王GX】
【状態】健康
【装備】SIG P220(9/9)@リリカル・パニック
【道具】支給品一式×2、『フリーズベント』@リリカル龍騎、『光の護封剣』@リリカル遊戯王GX、ランダム支給品0〜1
【思考】
 基本:十代を守る。
 1.売店に戻るか、保健室に向かうか、他の施設へ向かうかを決める。
 2.各施設を回りカードとデュエルディスクを手に入れる。
 3.殺し合いに乗っている者を殺害する。
 4.フェイト(StS)、エリオ、万丈目を強く警戒。
【備考】
 ・リリカル遊戯王GX10話から参戦です。
 ・フェイト(A's)が過去から来たフェイトだと思っています。
 ・フェイト(StS)、エリオ、万丈目がデュエルゾンビになっていると思っています。
 ・ここではカードはデュエルディスクなしで効果が発動すると知りました。
 ・デュエルデュスクを使えばカードの効果をより引き出せると思っています。
 ・カードとデュエルディスクは支給品以外にも各施設に置かれていて、それを巡って殺し合いが起こると考えています。
 ・デュエルアカデミアの3分の2を調べました、どの場所を調べたかについては次の書き手さんにお任せします。但し、売店内部と保健室方面は調べていません。


 ・デュエルアカデミアの売店はシャッターによって施錠されている為、現状中には入れません。


74 : ◆7pf62HiyTE:2008/10/15(水) 01:49:42 ID:r.xNAfho
初めてということで色々問題も起こりましたが何とか投下完了しました。
タイトルの元ネタは「Alice's Adventures in Wonderland」(「不思議の国のアリス」の英訳)です。
間違いの指摘の方、ありがとうございました。


12 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 11:53:15 ID:Ezx/0t0T
投下乙です。
おお、並行世界の事に気付いて何やら不安げな様子だ。
こなたはそういう方面のオタク知識が豊富だからすぐ気づけたのかな。
そしてレイが密かにwどうなるスバルw

あと所々「。」が「、」になっていたのでその辺り気を付ければ今後もっとよくなると思いました。

13 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 12:25:55 ID:ddX5+PMy
GJ!
すげえ、こなたが戦力として機能してるw
やっぱり強い奴や頭いい奴だけが有能とは限らないんだなぁ……こなたは本来力も頭脳もないわけですしw

14 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 20:15:05 ID:iPgEnd8D
投下乙です。
こなたが頑張ってるw
そしてスバルが平行世界論に気付いたか……ルルにどんな対応するんだろうなぁ……。
レイも何かやってくれそうな気配ですし、良繋ぎでした!
GJ!

15 : ◆7pf62HiyTE :2008/10/15(水) 20:41:44 ID:/UmO760s
代理投下ありがとうございました。

今回、初参加初投下ということで色々と勝手がわからず色々お世話になりました。
句読点の所等まだまだ未熟でしたが、今後も機会があればまたよろしくお願いします。

16 : ◆C1.qFoQXNw :2008/10/16(木) 23:36:43 ID:w60T/F6+
フェイト・T・ハラオウン(StS)、柊つかさを投下します。

17 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 23:37:51 ID:+U5cEQzO
 

18 :やわらかな温もりに瞳閉じ ◆C1.qFoQXNw :2008/10/16(木) 23:39:35 ID:w60T/F6+
デパート内部3階家具売り場??他愛もない話をしながらフェイトとつかさは物資の物色をしていた。もっともつかさはポージングに夢中でもっぱらフェイトが物色をしていいたのだが。
ベッド、机、椅子、テーブル、毛布、畳etc…使えそうなものはあった。電気や照明、水道が生きていたのでもしや、と思ったが案の定商品も陳列されており、閉店後のデパートそのものであった。未確認だが食料の類もそのままかも知れない。
(まさか商品がそのままなんて…なら篭城も可能、か)
もっともただデパートで篭城するつもりは無い。ここに殺し合いを拒否する者たちの避難所を築き、狂ったゲームを終わらせるために、そして母プレシアと対面するために協力者を集める、そのためには…。

「しすた〜しすた〜しすた〜うぉ〜ず♪」

背後で聞こえる鼻歌がフェイトに現実を見せつけた。ただの女子高生であるつかさは戦う術もっていない、だから自分が動く。その間ここで家具のバリケードの中で篭っていれば殺し合いにのった連中が襲ってきてもつかさが非常階段から逃げる時間は稼げるはず??

ドテッ!

「!?」

突然の音で振り返るとつかさが床でのた打ち回っているではないか。どうやらポージングに夢中で転んでしまったらしい。

「もうつかさったら…大丈夫、怪我ない?」
「うん、大丈夫だよ。あう、イタタ…」

幸いつかさは膝を少々ぶつけたくらいだったが大事をとってフェイト一人でバリケード作りを行うことにした。
流石にベッドは運べなかったのでキャスター付のデスクや椅子で非常階段を囲い部屋を作り、内部階段など他の進入路に簾を砕いて撒くという簡易的なものだったがここでは精一杯である。
簾の破片を撒く頃にフェイトはつかさの変化に気づいた。あれだけ元気だったつかさは書類を握って座り込み沈黙したままなのだ。転ぶまではかしましくおしゃべりをしながらデパートの探索をしていたのに、だ。

(傷、痛むのかな?)

作業を終えフェイトは自分もつかさの隣に座る。

「まだ痛む?」
「ううん、ただちょっと考え事してて…これって本当に夢なのかな、って…だって夢なら痛いはずないのに…鼻血を噴いたときも、転んだときも痛かった…ねえフェイトちゃん、これって夢だよね?」

現在進行形で起こっている事象の拒絶??冷静にならなければならないこの場においてつかさは現実逃避に陥いりかかってる。
このまま夢で押し通すこともできるがそれでは状況を悪化させかねない。現実に返すべき、とフェイトは判断する。

「現実だよこれは…紛れもない」
「じゃあこれは何!?」

突然フェイトの視界を覆った書類は何かの名簿だった。その名簿にはいくつかマーキングがされており、特に見覚えのある名前には驚愕を禁じえなかった。



19 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 23:40:14 ID:+U5cEQzO
 

20 :やわらかな温もりに瞳閉じ ◆C1.qFoQXNw :2008/10/16(木) 23:40:34 ID:w60T/F6+
「何で…なのはの名前が…ふたつも?」
「なのはさんだけじゃないわ! この八神って人も! そしてフェイトちゃん、あなたもよ!」

なのはの他にマーキングがしてある名前はもう一人の親友八神はやて、そして自分の名前フェイト・T・ハラオウン??
脳内にクエスチョンが乱舞する中、襟元をつかさに掴まれた。

「夢じゃないならどうして同じ名前の人が3組もいるのよ? しかも滅多にない名前! どうしてなのはさんやあなたが二人もいるのよ!? あなたは本当にフェイトちゃんなの!? そもそも魔法ってどういうこと!? ねえ答えてよ、答えてよ…」

フェイトの襟元を掴んだまま泣き崩れるつかさに先程までの元気な面影もなく、ただ恐怖と不安に押し潰されようとしている一人の少女がいるだけであった。

「お姉ちゃん…こなちゃん…ゆかりさん…ヒ、ヒック」

フェイトは全てを理解した。
現実を夢だと思いたかったのも、突如激怒したのも不安の裏返しなのだと??
自分が彼女に対しできるのはただ抱きしめるだけ。人のぬくもりは万人が追い求める物なのだから。
踊って、怒って、泣いて、そしてぬくもりを感じて??
つかさが落ち着かせながらフェイトは思考する。二人のなのはとはやて、そして自分。
虚数空間に消えたはずのプレシアとこの奇妙な世界、これらから導き出される推測は??ひとつの仮説にたどり着く。
どの位時間が経過しただろうか、空が白む頃にはつかさは泣き止んでいた。

「ねえつかさ、お話聞いてくれるかな?」
「え?」
「昔ね、あの部屋にいた魔導師??プレシアにはアリシアって娘がいたの。でもその子は5歳くらいの時事故で亡くなった…」

思い出したくない過去、でも理解してもらうためには触れざるを得ない忌まわしい記憶。

「でもプレシア??母さんはそれを認めたくなかったの。あらゆる手段をもって彼女を復活させようとしたけど、復活したのはアリシアの記憶を持つだけのお人形。だからその子は捨てられた、壊れた玩具みたいに??それが私」

信じられない、という表情を浮かべるつかさ。さらにフェイトは続ける。

「つかさの同級生のフェイト・T・ハラオウンは多分、そうやって造られたもう一人の私…母さんは諦めてないのね、アリシアを。それどころかなのはとはやてのクローンまで造って…」

自分がハラオウン姓になったのはプレシアが虚数空間に消えた後だからつかさの知っているもう一人のフェイトが名乗っているのは不自然である。
とすればプレシアは何かしらの目的で誘っていたのだろう。それは報復か、それとも…? 

「私は母さんを、殺し合いを止めたい。だからつかさ、私を信じて。もう一人の『フェイト』と『なのは』みたいに友達として」
「…んね」
「つかさ?」
「ごめんね…フェイトちゃんは私なんかよりずっと辛いのに…お母さんと戦わなきゃいけないのに…あんな酷いこといって…本当に、ごめんなさい…!」
「いいのよ、気にしないで。」

そういってフェイトはもう一度つかさを抱きしめた。


21 :やわらかな温もりに瞳閉じ ◆C1.qFoQXNw :2008/10/16(木) 23:42:08 ID:w60T/F6+
朝日が差し出された右手を照らす。そしてもう一方の右手が答え握手を交わした。
それはかつて稜桜高校で行われたであろう光景、友達の印。

「それじゃ行ってくるね。大丈夫、すぐ戻るから」

当初の予定通りフェイトは機動六課隊舎に向かう。つかさの安全も考えて遅くても正午までには一度戻るつもりだ。
首輪解除の手がかりだけでなく、柊かがみと泉こなたの捜索も同時に行い、可能ならデパートに連れてくる。
目的地へは飛んでいこうと思っていたが中止した。やはり魔法の発動に違和感があるのだ。ミッドチルダでは複数の高ランク魔導師が所属する部隊にリミッターがかけられる場合があるというがそれに似ている。

「やっぱり首輪が原因だね。これさえ外せれば…」

魔力制限さえ無ければプレシアと十分に“お話し”ができる。そしてもう一度母子として??

「できないよ母さん…あなたがアリサを殺したこと、私は許せない。例え世界が」

朽ち果てても、と続くはずだった言葉は放送によって遮られた。
許せない対象、母プレシアの声が響き渡る


「大丈夫かなフェイトちゃん…」

携帯食料を齧りながらフェイトの身を案じるつかさ。
窓の外ではもう太陽が顔を出す頃だ。あの女??プレシアのいうことが確かならそろそろ死んだ人間と禁止エリアの発表があるはず。
どうやって発表するのかとスピーカーかテレビの類を確認しようとした刹那、

ドォン!

東の方から耳をつん裂く爆発音、続いて散発的に聞こえる乾いた銃声。
デパートの東には確か病院があったはずだがそこで戦闘が??

ドォォォン!!

更なる大爆発音につかさは考えるのを止めた。
毛布を被りテーブルの下に潜り込む。小中学校で散々やった避難訓練は確実に生きている。非常口の扉を半開きにするのも忘れない。
人間チョココロネと化し震えるつかさ。
彼女は忘れている。ディパックに確認していない支給品があることに。
彼女は知らない。爆発音の彼方に友達が待っていることに。

「やっぱり私、お姉ちゃんがいないと駄目だよぅ…早く帰ってきてフェイトちゃん」


22 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/16(木) 23:42:45 ID:+U5cEQzO
 

23 :やわらかな温もりに瞳閉じ ◆C1.qFoQXNw :2008/10/16(木) 23:44:43 ID:w60T/F6+
【1日目 早朝】
【現在地 H-4 路上】
【フェイト・T・ハラオウン(StS)@仮面ライダーカブト】
【状況】健康、若干の困惑
【装備】大剣・大百足@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる
【道具】支給品一式
【思考】
 基本:誰も犠牲者を出す事なく、この殺し合いを止める。その上でプレシアと対話を行う。
 1:機動六課隊舎に向かい首輪を外す。その後、なのは達と合流する。
 2:正午までに一度デパートへ戻る。
 3:もう少し扱いやすい武器が欲しい。欲を言うならバルディッシュ・アサルトが欲しい。
 4:かがみとこなたを探す。可能ならデパートへ連れて行く。
 5:もう一人の『フェイト』にどう接すればいい?
【備考】
 ※なのは達「八神班」が他の世界から来た人間である事を知りません。
 ※このゲームがアリシア蘇生のためであると推測しました。
 ※大剣・大百足は他の形態にはフォームチェンジしません。
 ※もう一人の『フェイト』はつかさの知るフェイトだと考えています。
 ※遊城十代が殺し合いに乗っていると思っています。
 ※もう一人のなのはとはやてもクローンではないかと考えています。

【現在地 H-5 デパート3階】
【柊つかさ@なの☆すた】
【状態】疲労(小) ひざ小僧ヒリヒリ
【装備】シーナのバリアジャケット@SHINING WIND CROSS LYRICAL
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考】
 基本:殺し合いを避ける
 1:フェイトちゃんが帰ってくるまでデパートにいる(早く帰ってきて!)。
 2:家族や友達に会いたい。
 【備考】
  ※遊城十代が殺し合いに乗っていると思っています。


【その他】
  ※デパート3階は非常口を中心にバリケードが張られています。また、階段周りに簾の破片が巻かれており、踏めば音が出ます。


24 : ◆C1.qFoQXNw :2008/10/16(木) 23:48:13 ID:w60T/F6+
投下終了。
・・・投下してから気がついた。ダッシュが?に化けてる。
これはしたらばに投下しなおした方がいいだろか?

25 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 00:13:15 ID:HdVxum5Y
投下乙です。
ああ、ついにつかさも夢から醒めたか。
怯えている様子が実に巻き込まれた一般人を表している。
籠城策がどこまで通じるか楽しみだ。
??ならそう言ってくれればWiki収録の際に対応できると思います。

2,3指摘を。
つかさが激高している時の口調に微妙に違和感を感じました。
「なのはさんだけじゃないわ! この八神って人も! そしてフェイトちゃん、あなたもよ!」

「なのはさんだけじゃないよ! この八神って人も! そしてフェイトちゃん、あなたもだよ!」

「夢じゃないならどうして同じ名前の人が3組もいるのよ? しかも滅多にない名前! どうしてなのはさんやあなたが二人もいるのよ!? あなたは本当にフェイトちゃんなの!? そもそも魔法ってどういうこと!? ねえ答えてよ、答えてよ…」

「夢じゃないならどうして同じ名前の人が3組もいるの? しかも滅多にない名前! どうしてなのはさんやフェイトちゃんが二人もいるの!? あなたは本当にフェイトちゃんなの!? そもそも魔法ってどういうこと!? ねえ答えてよ、答えてよ…」

あとゆかりさんは高良みゆき(ゆきちゃん)の間違いでしょうか。

26 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 00:14:13 ID:HdVxum5Y
追記:下の方がそれっぽいかなと思いました。

27 : ◆C1.qFoQXNw :2008/10/17(金) 00:32:23 ID:6wAaxSRi
>>25
わざわざ深夜に指摘感謝。
口調は…らきすたの単行本を事前に見ていたはずだが…改めて単行本とアニメを確認します。
ゆかりさんについては…スミマセン、ゆきちゃんの間違いだわ(汗
夕方にもしたらばに修正を投下します。

28 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/17(金) 22:15:47 ID:nUvSiMfd
投下&修正乙です。
つかさも現実を受け入れたところで、フェイトも行動開始か。
さて六課隊舎には首輪を解除できる何かはあるのか、つかさは無事に居られるのか。
良繋ぎでした、GJ!

29 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/10/18(土) 20:39:18 ID:PuYhP9hr
ユーノ、ルーテシア、チンク、明日香分を投下します

30 :ユーノ・スクライア司書長の女難 ◆9L.gxDzakI :2008/10/18(土) 20:40:25 ID:PuYhP9hr
 時は流れ、暗黒の森にも微かな明度が差していた。
 フィールド全体を覆っていた夜の闇はなりを潜め、僅かに顔を出した太陽の光が広がっていく。
 朝靄漂う森の中、かさり、かさりと響く音。
 朝露に濡れた草木を踏みしめながら、林間を進む者達がいる。
 並んで立つ2人組はどちらもが女性であり、どちらもが白い服を身に纏い、どちらもが金色の瞳を持っていた。
 とはいえ共通点はそれだけで、他の部分は大幅に異なっている。
 まず、頭髪。片方は瞳と同じ金色だが、もう片方はむしろそれと対を成す銀髪。
 続いて、外見年齢。金髪の方は10代後半の少女だが、銀髪の方はその10代に差し掛かるか否かと言った幼児。
 特に金髪の方はというと、非常に整ったプロポーションを持った、グラマラスな女性だった。
 豊かに胸元の布を押し上げる双丘、一級品の彫刻のごときラインを有した肢体。
 隣の幼児体型の銀髪と並べると、これは一体何の嫌がらせですか、とでも言いたくなる。
 とはいったものの、もはや銀髪の方はそれも気にならなくなったらしい。
 傍らでふわふわと浮遊するガジェットを見ながら、何事かを思考している。
「まずいな……レリックの反応が移動を始めた」
 微かに苦々しげな響きを込めながら、銀髪――チンクが呟いた。
 片方を眼帯に覆われた黄金の隻眼は、レーダーの上で動くマーカーをじっと見つめている。
「レリックの持ち主が、病院を出たということ?」
「そうなるな」
 金髪――明日香の問いに、チンクは答える。
「となると、結構厄介なことになりそうね……」
 言いながら、明日香が嘆息した。
 もしも目標が病院に篭ったままだったならば、ある程度はスムーズに事が進んだだろう。
 しかし目標は動いている。となると、少々面倒なことになってくる。
 もとより病院というものは、この舞台の中でも比較的安全な場所と言えた。
 バリケードを設置すれば侵入者を遮断できるし、医療品を使った治療も行える。
 もっとも、自分達戦闘機人のように、通常の人体とは異なる身体を持っている者の場合は、若干勝手が違ってくるのだが。
 ともかくも、病院に篭っていれば、ある程度の安全性が確保できる。
 つまりそこに居続ける者は、この殺し合いに消極的である者である可能性が高い。
 だが、今回のようにそこから移動する人間は違う。
 わざわざ安息の地を捨ててまでフィールドをうろつく理由は2つに1つ。
 積極的に殺し合いを止めようとする人間か、積極的に殺し合いに乗ろうとする人間のどちらかだ。
 特に後者であった場合、非常に始末が悪くなる。不用意に接触しては、そのまま戦闘になりかねない。
(もしも戦闘になった場合、レリックの回収と姉妹との合流……どちらを優先する?)
 そしてこの場において、もっともチンクが問題視していたのが、それだ。
 既にメッセンジャーとして、2機のガジェットを街に放った。
 これをクアットロとディエチが読めば、2人は日が昇りきるまでに病院に向かうだろう。
 しかしそこに、自分がいなかった場合はどうなる。
 時間の推移から察するに、2人が病院に着くのは最初の放送の後となる可能性が高い。
 前ならばまだよかった。無人の病院に着いたとしても、後から流れる放送に自分の名前がなければ、ひとまず生きていると確認は取れる。
 だが生憎と、それは望めそうにない。情報も何もないままに、姿を現さないチンクの安否への不安に囚われることとなる。
 叶うことならばレリックを後回しにし、姉妹との合流を急ぎたいとは思う。
 しかし、それではそのタイムロスの間に、聖王の器が殺害されてしまうかもしれない。
 脱出のための鍵を取るか、共に脱出すべき家族を取るか。
 答えが出るとも到底思えない、究極の二者択一。
「……天上院、ひとまずお前の支給品を見せてくれないか? いざ戦闘となった場合のために、使える手札は把握しておきたい」
 だがどちらを選ぶにせよ、まずはしておかなければならないことがあった。
 時間を破ってまでレリック確保に専念するにせよ、時間を守って敵前逃亡するにせよ、武器は必要だ。
「分かったわ」
 言いながら、明日香がデイパックの口を開け、中の物をあさり始めた。
 無論、ケースに入れられた3つのカプセルについては伏せながら。

31 :ユーノ・スクライア司書長の女難 ◆9L.gxDzakI :2008/10/18(土) 20:41:12 ID:PuYhP9hr
「一番目立つのはこれね」
 最初に取り出されたのは、大仰な兜だった。
 煌びやかな宝石がちりばめられた豪奢な造形に、両脇からせり出した猛牛のごとき凶悪な角。
 中央には黄金の翼を生やした、コブラのレリーフが取り付けられている。
 見るからに剛健な兜が、明日香の両手に抱えられていた。
「確かに防御力はありそうだが……頭だけ守ってもな」
「ええ……それにこれ、すごく重いし」
 互いに険しい表情を浮かべるチンクと明日香。
 これがまだ鎧だったならば、まだ防御手段としては有効だっただろう。
 しかし、この支給品は兜単品。頭狙いの攻撃以外は防げない。その上一般人が扱うには凄まじく重い。
 これでは装備したとしても、ただの重りにしかなり得ないだろう。
 もっとも、このインパクトに見合うだけの人物が装備すれば、それなりの威圧感を与えられたのだろうが。
 ともあれ少なくとも、これは明日香には見合わない物だ。現状において役立たずとなったそれを、デイパックにしまう。
 そうして続いての支給品を取り出した。
「これは……籠手、か?」
 外気に晒されたのは、またしても黄金色に輝く物体だった。
 緑色の宝石を煌かせ、獅子の顔を象ったようなそれは、見たところ左腕に嵌めるためのガントレットらしい。
「ここに……ほら」
 怪訝そうな表情を浮かべるチンクの目の前で、明日香がそこから何かを引き抜いてみせた。
 現れたのは1振りのナイフ。エメラルドのごとく透き通った、見事な刀身を輝かせている。
 他に機能はないようだ。要するに、これはそのナイフの鞘らしい。
「また随分と大仰な鞘だな」
 もう少しデザインセンスはなかったものか、と、呆れながらチンクが言った。
 ともあれその鞘――彼女らは知る由もないが、名を「ガオーブレス」と言う――を、明日香の左腕に嵌める。
 頑丈な金属で作られている以上、籠手としても一応扱うことはできるだろう。
 おまけに、それほど重くない。戦闘が控えていると分かった以上は、装備しない手はない。
 そして、取り出された最後の1つは、
「……トランプ?」
 絵札52枚に、ジョーカー2枚。ケースに収められた、54枚組1セットのトランプだった。
 何の変哲もない、ただのカード。おおよそ意味があるとは思えない。要するに、ハズレ。
 どうやら明日香に支給された物のうち、役に立つのはガオーブレスぐらいだったらしい。
 もっとも、先の兜などは、最悪ランブルデトネイターで爆弾へ変えることもできる。ただ、それはあくまで最終手段。
 考えても見てほしい。それほどまでに大きく重いものを、わざわざしんどい思いをしてまで誰が投げようか。
「まぁ、何にせよ、このレリックの持ち主と相対した時には……、!」
 言いかけたチンクが、そこで言葉を切った。
「どうしたの?」
「しっ……誰かが近寄ってきている」
 首を傾げた明日香に向かって囁くと、木陰に隠れるように指示を出した。
 戦闘機人の鋭敏な聴覚は、唯人たる明日香には捉えられないような音でさえも聞き分ける。
 彼方から迫ってくる車輪の音。すなわち、何者かの気配。
 可能性は薄いだろうが、あの緑の鎧の男かもしれないのだ。明日香を庇いながら戦える相手ではないことは、先の戦闘で重々承知している。
 やがて音量は彼女の耳にもはっきり聞き取れるようになり、そのまま通り過ぎた。
 ぶぅぅぅぅぅん。エンジン音が疾走し、彼女らのすぐ傍を走り抜ける。
 一瞬しか見ることはできなかったが、確かローラーブーツを履いた少女だったか。
 ちょうどチンクと外見年齢は同じくらい。紫の髪に、赤い瞳が特徴的だった。
 感情に乏しい表情で、コートをたなびかせながら脇を通過していき――

32 :ユーノ・スクライア司書長の女難 ◆9L.gxDzakI :2008/10/18(土) 20:42:27 ID:PuYhP9hr
 






「――ってちょっと待ったぁぁぁぁぁ!」

 思いっきり見覚えのある人間を、チンクは身を乗り出して呼び止めた。



 自分は何をやっているのだろう。
 心底、ユーノ・スクライアは呆れ返っていた。
 自分の保身のために人間の男としての尊厳を捨て、彼は1匹の雄フェレットとしての道を選んだ。
 そもそもそれが、自分が小さくなれば首輪も外れるだろうという、馬鹿馬鹿しい判断ミスに端を発している辺りが情けない。
 おかげで自分は、人間として行動することを許されなくなった。少なくとも、この少女と同行している限り。
 この身体では支給品を扱うこともできないし、仲間との合流にも支障をきたす。何より、獣として振る舞うのは居心地が悪い。
 そしてそのユーノだが――今は所在なさげに、小さな顔を真っ赤に染めていた。
 現在地、幼女の胸元。扇情的なバニースーツと、暖かな体温に挟まれている。
 確かルーテシアと名乗ったか。この少女は現在の状況に、微塵も羞恥心を抱いていないようだ。
 これだから、獣というのはやってられない。人間じゃないからということで、すぐにこんな風に扱われる。
 自分はれっきとした男なのに。男なりに恥ずかしくてたまらないのに。
 どぎまぎしつつも、しかし一切の抵抗もできないまま、ユーノは疾走するルーテシアの胸に身を預けていた。
 ……いやいやちょっと待て。自分は一体何をどぎまぎしているんだ。
 いかに女性とはいえ、この子はまだ幼い女の子じゃないか。
 これが成熟したセクシーな女性ならまだしも、何を自分は子供相手にこんなに過剰反応しているんだ。
 まさかなのはと初めて会った、ガキの頃の自分じゃあるまいし。変態嗜好のロリコンでもあるまいし。
 相手は子供。慌てることはない。自分にそっち方面の趣味は絶対ない!
 そんな風にして、必死に平静を保とうとする。

「――ってちょっと待ったぁぁぁぁぁ!」

 そして次の瞬間、それは唐突に打ち切られた。
「え?」
 背後から声がする。自分達を呼び止める叫びが響く。
 ユーノにとっては聞き覚えのない声。しかし、ルーテシアには覚えがあったのだろう。
 反射的にマッハキャリバーにブレーキをかけると、数秒の思考の後、踵を返して再度加速する。
 緩やかな速度で後退すると、そこには1人の銀髪の幼女と、1人の金髪の女性の姿があった。
「ご無事でしたか、ルーテシアお嬢様」
 歩み寄ったのは銀髪の方で、発した声音も先ほどの制止と同じ。
 片方しか開いていない金色の瞳に安堵の色を映し、外見の割には幾分か落ち着いた口調で言った。
「チンク」
 いつも通りのぽつりと呟くような声で、ルーテシアがその名を呼ぶ。
 チンク、という名前には聞き覚えがあった。ルーテシアと面識のある人間として、紹介された名前だったはずだ。
「知り合いなの?」
「まぁ、そんなところだ」
 金髪の明日香の問いかけに答えたことからも、その様子が伺えた。

33 :ユーノ・スクライア司書長の女難 ◆9L.gxDzakI :2008/10/18(土) 20:43:32 ID:PuYhP9hr
(……うん? ちょっと待てよ?)
 と、その時、不意に浮かんだ疑問が1つ。
 ルーテシアの仲間は見つかった。彼女を「お嬢様」と呼ぶ隻眼の幼女が。
(で……この人は一体何?)
 このチンクという少女は一体何者で、一体ルーテシアとどういった関係にあるというのだ。そもそもルーテシアは何者なのだ。
 普通に考えるならば、それこそ良家のお嬢様で通るだろう。
 旧時代の貴族の家系。かの有名なモンディアル家のような富豪の令嬢。あるいは管理局高官の娘とも。
 異様に幼いチンクの容姿も、使用人の娘だとか、乳兄弟だとかといった線で説明はつく。
 そう。普通ならば。
 だがこの少女の容姿の何としたこと。片目に眼帯をした少女など、真っ当な家庭ではまず見られない。
 ましてや、それが医療用の白いものでなく、レザーでできたいかにも悪そうな黒眼帯なら尚更だ。
 こんな見るからに怪しい娘に「お嬢様」と呼ばれる少女が、普通の良家の子供なわけがない。
 更に引っ掛かるのは、例の「アジト」という言い回し。
 本当なら信じてやりたい。こんな想像はしたくない。でもそう思わずにはいられない。
 こうした情報から想定しうるルーテシアの身分を、不幸にもユーノは知っていた。
 すなわち――マフィアの娘。
 ヤクザのボスの子。
 極道の世界のお嬢様。
 ドコノクミノモンジャワレスマキニシテシズメタルゾコラ、とか、そういう世界の人。
 背筋が一気に粟立った。全身の毛皮が逆立った。
 ひょっとすると自分は、とんでもない子を見つけてしまったのではなかろうか。
 まして自分が人間であるとばれ、こんな破廉恥な行いに出たと知れた時には――
「――それでお嬢様、その動物は?」
 がちがちと震え上がるユーノの思考を、チンクの問いが遮った。
「ユーノっていう……喋るイタチの子」
「……フェレットです……」
 本当はフェレットですらない。人間です。それも貴方よりも大分年上なんです。
 そうだと気付いてほしい。
 ああいや、微妙。そうは気付いてほしくないかもしれない。少なくとも、この極道っぽい子にはバレない方がいい。
 簀巻き、指詰め、ロシアンルーレット。想定されるありとあらゆる「けじめのつけ方」。
 どれもこれも、できれば味わいたくない。最も、チンクは極道の人間ではないのだが。
「へぇ……こんな子まで参加させられてるのね」
 ルーテシアの胸元のユーノを覗き込みながら、明日香が言った。
 周囲が周囲なだけに、彼女の抜群のプロポーションはよく目立つ。
 所在なさげにユーノは視線を逸らした。
 どうもここに来てから、自分はこんな目にばかり遭っているような気がする。
 この殺し合いから脱出できたら、しばらく女の子とは距離を取りたい。割と本気でそんなことを思っていた。
「それでお嬢様は、どちらに向かわれるおつもりで?」
「ドクターのアジトに、ゼストやチンク達を捜しに……」
「我々もそこから来たのですが、特に他には誰も……」
 ユーノがどぎまぎしてたり肝を冷やしている間にも、ルーテシアとチンクは話を進めていく。
 どうもこの2人もそのアジトという場所を目指し、そこで何らかの収穫があってここまで来たらしい。
 それがチンクの横でふよふよと浮いている、楕円型の機械。ガジェットとか言っていたか。 
 それにはレーダーがついていて、レリックという、ここからの脱出のために使える物を探知できるのだそうだ。
 そして今、それが反応を示している。すなわち、脱出の鍵が見える範囲にある。
「あとは聖王の器……それを捜すために、既に姉妹達にも、アジトから連絡を入れてあります。とはいえ、こちらから一方的にですが」
「ちょっと待って! そんなの聞いてないわよ」
「ああ、すまなかった。言うのが遅れていた」
 隠し事をされた明日香の憤慨を、チンクがさらりと流す。どうやらこの2人、あまり友好的でもないらしい。

34 :ユーノ・スクライア司書長の女難 ◆9L.gxDzakI :2008/10/18(土) 20:44:44 ID:PuYhP9hr
「いかに貴方と言えど、ガリューや地雷王なしでは危険すぎる……我々と共に病院へ向かい、姉妹の保護を受けてはもらえないでしょうか」
 最後に、チンクがルーテシアへと懇願した。
 これはユーノにとっては知る由もないが、チンクは彼女の存在によって、ようやく決心をつけることができたのだ。
 脱出の鍵となるレリックと器を探すのが先か、共に脱出すべきクアットロとディエチと合流するのが先か。
 彼女が選んだのは、後者。
 強力な召喚術の使い手たるルーテシアだったが、この場ではどうやら下僕達を呼ぶことはできないらしい。
 すなわち、召喚こそを戦闘の肝とする召喚士にとっては、あまりにも危険すぎる状況。
 彼女はスカリエッティの大事な協力者だ。家族同様、無事に連れ帰らなければならない。
 そのためにも、今レリックを持っている相手との戦闘に巻き込むことはできなかった。
 だから、病院に集まるであろう姉妹にルーテシアを預ける。必然的に、朝までの集合の約束を守ることもできる。
「うん、分かった」
 ゆっくりとルーテシアが首を縦に振ったことで、この場の協力関係は確定した。
 ルーテシア、ユーノ、チンク、明日香。以上3名と1匹(厳密には4名)で病院を目指す。
「じゃあ、行きましょうか」
 女性陣の中でも最年長と思われる明日香が、率先して先へと進む。
 一方、ルーテシアの胸に抱えられたユーノはというと、何やら難しそうな表情を浮かべていた。
 どうにも引っかかるのだ。ルーテシアの反応が。
(さっきの、レリックって言葉を聞いた時……この子の目の色が変わった)
 今までぼんやりとしていた彼女の赤い瞳に、ほんの少しだけ感情が見えた。鋭さが増した。
 そのレリックという何かに対して、彼女が強い執着を見せたのだ。
 つまりそれは元々ルーテシアにとって、とても重要な意味を持つものであったのだろう。
 ではそのレリックというのは、一体何なのだろうか。
 ルーテシアが求めていたもの。それでいて、この殺し合いからの脱出さえも可能とするもの。
 であればその力を、彼女は一体何のために使おうとしているのだろう。レリックの確保とはあくまで手段であり、目的ではないはずだ。
 一体彼女は――
「うわっ!?」
 瞬間、ぐらり、と。
 身体が揺れた。ユーノだけではない。ルーテシアの身体も。
 すとんと足場の高度が落ち、衣服の隙間からフェレットの身体が落下する。
 足並みをチンク達と合わせるべく、ルーテシアがマッハキャリバーを解除したのだろう。
 結果、ローラーの分の身長が縮まり、それによって振動が生じたのだ。
 それによって地面に投げ出されたユーノは、そのままチンクの足元へと落下する。
「いてて……」
 小さな呻きを漏らしながら、毛皮についた土埃をふるふると払った。
 そして、視線を戻す。
 ちょうどその先にはチンクの身体。衣服の裾から覗くもの。
 そこにあったのは、
「――ッッッ!!?」

「……そういえば、貴方……下着つけてなかったわね」
 きょとんとしたチンクと動揺するユーノを見て、明日香がため息をついた。

35 :ユーノ・スクライア司書長の女難 ◆9L.gxDzakI :2008/10/18(土) 20:45:40 ID:PuYhP9hr
【1日目 早朝】
【現在地 E-9】
【ユーノ・スクライア@L change the world after story】
【状態】健康、幸せ?、混乱、フェレットに変身中
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
 基本 なのはの支えになる、ジュエルシードの回収
 1.ルーテシア、チンク、明日香と共に病院を目指す
 2.ルーテシアの保護
 3.くぁwせdrftgyふじこ!?
 4.Lや仲間との合流
 5.首輪の解除
【備考】
 ※JS事件に関連したことは何も知りません
 ※プレシアの存在に少し疑問を持っています
 ※ルーテシアがマフィアや極道の娘だと思っています

【ルーテシア・アルピーノ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康
【装備】バニースーツ@魔法少女リリカルなのはStrikers−砂塵の鎖― 、マッハキャリバー(待機形態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
    シェルコート@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2、ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは、バリアのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、夜天の書@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本  ナンバー]Tのレリックの捜索
 1.ユーノ、チンク、明日香と共に病院を目指す
 2.仲間との合流
 3.ジュエルシードの回収を手伝う
【備考】
 ※参戦時期はゆりかご決戦前です
 ※ユーノが人間であることを知りません
 ※殺し合いに全く興味がありません

【天上院明日香@リリカル遊戯王GX】
【状態】健康
【装備】ガオーブレス@フェレットゾンダー出現!
【道具】支給品一式、ラオウの兜@ティアナが世紀末に来たようです、
    トバルカインのトランプ@NANOSING、ゾナハカプセル@なのは×錬金
【思考】
 基本 殺し合いには乗らない。仲間達と合流し、プレシアを打倒する。
 1.ユーノ、ルーテシア、チンクと共に病院を目指す
 2.チンクっていうこの子は……信用し切れない
 3.チンクとは協力するけど、何があっても対応出来る様に隙は見せない様にしよう
 4.ゾナハ……って何?
 5.全くもう、この子は……
【備考】
 ※転移魔法が制限されている可能性に気付きました
 ※万丈目にバクラが取り憑いている事を知りません
 ※チンクの「万丈目に襲われた」という情報は、嘘か誤りだと思っています
 ※ガオーブレスのギャレオンを呼び出す機能は封印されています
 ※トバルカインのトランプが武器として使えることに気付いていません

36 :ユーノ・スクライア司書長の女難 ◆9L.gxDzakI :2008/10/18(土) 20:46:21 ID:PuYhP9hr
【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康
【装備】被験者服@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、ガジェットドローンT型@魔法少女リリカルなのはStrikerS、工具セット@オリジナル、
    料理セット@オリジナル、翠屋のシュークリーム@魔法少女リリカルなのはA's
【思考】
 基本 姉妹と一緒に元の世界に帰る
 1.ユーノ、ルーテシア、明日香を伴い、病院に向かって医療品を集め、姉妹との合流を図る
 2.姉妹と合流した後に、レリックを持っている人間を追う
 3.姉妹に危険が及ぶ存在の排除、及び聖王の器と“聖王のゆりかご”の確保
 4.こいつ、獣のくせして何を驚いてるんだ?
 5.クアットロと合流し、制限の確認、出来れば首輪の解除
 5.Fの遺産とタイプ・ゼロの捕獲
 6.天上院を手駒とする
【備考】
 ※制限に気付きました
 ※高町なのは(A's)がクローンであると認識しました
 ※この会場にフェイト、八神はやてのクローンがいると認識しました
 ※ベルデに変身した万丈目(バクラ)を危険と認識しました

【チーム:ユーノとハーレム】
【共通思考】
 基本 仲間達を集め、聖王のゆりかごで殺し合いから脱出を図る
 1.病院に向かい、クアットロ、ディエチと合流する
 2.その後は戦闘可能な面々でヴィヴィオとレリックを探す
【備考】
  ※それぞれが違う世界から呼ばれたということに気づいていません。

37 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/10/18(土) 20:48:51 ID:PuYhP9hr
投下終了。徹底的にいい思い(?)をするユーノ(ぉ

あと、念のため報告。現在運営スレで展開している議論についてですが、
一応自分も目を通し、意見を出しています。無用な刺激を避けるため、コテは外していますが。

38 : ◆RsQVcxRr96 :2008/10/18(土) 22:35:43 ID:PFHPRLrS
反目氏の速筆ぶりに驚愕しつつ高町なのは(StS)、シェルビー・M・ペンウッド、金居、武蔵坊弁慶で投下します。
あ、感想は時間が厳しいのでもう少ししてからします。
それにしても貴方の速筆ぶりは恐ろしいほどです!
自分ももう少し時間に余裕を持って仕上げたいorz

39 :敵か味方か? ◆RsQVcxRr96 :2008/10/18(土) 22:37:24 ID:PFHPRLrS
スーパー、正式名称スーパーマーケット。
食料品と日用品を中心に取り揃えており、日常生活を行う上で必要なものはここで大体手に入れる事ができる。
小規模な街にでも必ずと言っていいほど存在するこの施設はちょっとした買い物にはうってつけの便利な店舗であった。
そしてこのデスゲームの会場にもスーパーと名を付けられた施設が存在する。
D-2の南端にあるのがそれだ。
今そこに3人の客が訪れていた――否、正しくは客ではない。

不屈の心を胸に抱くエースオブエースの名を冠す魔導師――高町なのは。
種の悲願を胸に秘めるカテゴリーキングの名を冠すクワガタムシの王――金居。
精一杯の勇気を胸に宿す大英帝国円卓会議に名を連ねる海軍中将――シェルビー・M・ペンウッド。

彼ら3人は共にこのデスゲームの参加者であり、またデスゲームの打破を目指す者である。
なのはとかがみの邂逅から始まった一連の騒動の後、デスゲームの打破のために手を携えた3人。
そのために彼らがまず立ち寄った施設がこのスーパーであった。
目的は食料や役に立つ物の調達。
そのために3人はスーパーに着くとすぐに二手に別れて店内の捜索に掛かった。
向かって左側のフロアをなのはとペンウッドが、右側のフロアを金居が各々調べに向かって行った。
二手に分けた理由は主に時間の節約。
同じ所を3人で調べるよりも別々の所を見て回った方が時間の短縮に繋がる。
金居は一人でも襲われても十分に対処ができるという事なので、なのはとペンウッドが一緒に見て回る事になった。
これは金居からの申し出であり、あとの二人は特に反対する理由もなく担当分担もすんなり決まった。
実はこの分け方には金居にとってもう一つの理由もあったのだが、なのはもペンウッドも金居の思惑には全く気付く事はなかった。


     ▼     ▼     ▼


照明が消されて暗闇のスーパーの中をゆらゆらとランタンの光が揺らめく。
一見すると不気味な感じだが、ランタンを翳すなのはとペンウッドは仕方ないと割り切っていた。
今の時刻は日が沈んでいる夜だ。
このような時分にスーパーのような施設の照明を付ければ余計な参加者まで引き寄せかねない。
そう進言する金居の提案に従った結果だった。
それでもなのはには若干の不満が残っていた。
確かに金居の懸念は当然のものである。
自分達3人は人数こそあれど純粋な戦力としては少々心許ない。
金居は先の戦闘の疲れが残っていて、ペンウッドは戦力としては正直期待できない。
自分にしてはデバイスなしでは使用できる魔法も限られる上に常の威力は望めない。
確かに余計ないざこざは避けるべきだ。
でも、それを危惧する余り助けを求めている人を見過ごすのではないか。
そんな考えがなのはを静かに苛んでいた。

しかし悩んでいても始まらない。
元々スーパーに寄るのは当初の計画通りの事だ。
この上はできるだけ早く探索を終えて皆を救うべきだ。
なのはは気持ちを切り替えて周りの棚を調べ始めた。

「ダイコン、ニンジン、ピーマン、トマト、キュウリ……こっちは牛肉、豚肉、鶏肉……そして鯵、秋刀魚、鮭……」
「し、食料は、だいぶ豊富みたいだな」
「ええ、でも野菜以外は生のままじゃ食べられないのが難点ですね。調理するにはそれなりに時間が必要ですから」

正面入り口から向かって左側のフロアは生鮮食品やレトルト食品などの陳列棚が設置されていた。
しかしなのはとペンウッドが調べた結果、レトルト食品は一つも置いていなかった。
新鮮な野菜や肉・魚介類はあるのだが、この非常時に調理をするには時間が勿体ないという気持ちがある。
簡単に調理ができるレトルト食品がないのはプレシアの嫌がらせだろうかという考えが頭をよぎる。

「おお、これは……なんと大きな魚、なんだ」
「うわっ、大きい! これはカジキマグロ?」



40 :敵か味方か? ◆RsQVcxRr96 :2008/10/18(土) 22:40:02 ID:PFHPRLrS
突然のペンウッドが上げた驚きの声に釣られて後ろを振り返ったなのははそこにある物を見て目を丸くした。
そこには身の丈2メートルを超える程の巨大なカジキマグロの雄姿があった。
恐らく状況が状況ならこのスーパーの今日の目玉商品になっている事はまず確実だった。
ふとこれほどの大きさなら武器に使えるのではと、なのはの脳裏に突拍子もない考えが浮かんだ。
そこで試しにフェイトやシグナムやヴィータがカジキマグロを振るう姿を想像してみた。
……………………
…………
……


(――うーん……かなり場違いというか……シュール?)

一通り考えての結論に至るに及んでなのはの顔には困ったような笑みが浮かんでいた。
誰かがその表情を見れば、先程よりも僅かながら肩の力が抜けている、そう思うのではないだろう。
そしてそれを見たペンウッドの顔には――何やら少し安心したような表情を浮かべていた。


     ▼     ▼     ▼


一方、正面入り口に向かって右側のフロア。
そこには洗剤やティッシュペーパーなどの日用品の陳列棚、冷凍商品を置くボックスが設置されていた。
さらに一番手前には弁当などの加工食品の陳列棚も設置されていた。
金居はランタンの光を頼りに目聡く且つ素早く棚の間を移動していった。
その表情は少々浮かないものだった。

(やはり工具類は見当たらない。簡単に首輪は解除できない――というところか)

金居はある程度時間をかけて調べたにも関わらず未だに目的の物が見つけられない事に少々がっかりしていた。
どこにでもあるような有り触れたスーパーゆえにあまり期待はしていなかったが、時間をかけたにも関わらず確たる成果がないのでは少し落胆もする。
実は金居が一人で調べると言ったのは二人に知られないうちに役に立つ道具を手に入れるつもりだったのだが、それは不発に終わった。
しかしあくまで首輪解除のための物が無かっただけで、まるっきり収穫が無かった訳ではない。

(ま、これが大量にあったのは嬉しいかな)

金居の手の中にある物――砂糖一袋。
クワガタムシの始祖である金居は砂糖水が好物であった。
ゆえに大量の砂糖が手に入った事は数少ない収穫の一つだ――金居にとってだが。

「金居君、そっちはどうだった?」

ふと自分を呼ぶ声が聞こえる。
左側のフロアを調べ終えたなのはとペンウッドだ。
斯くいう金居の方も右側のフロアはあらかた調べ終えたところだったのでちょうど良かった。

「こちらの目ぼしい物はそこの弁当だな。お前はどうなんだ」
「こっちもあまり……野菜とか生の肉とかはあったんだけど。調理しないと食べられない物ばかりで……」
「そうか。まあ、ここで手に入らなかった物は商店街だ」

それから話し合った結果、食料としてすぐに食らべれるおにぎりを10個ほど調達する事でここでの用事はほぼ終わりになった。
ここで手に入らなかった物、特に工具類は商店街や工場にある事を期待しよう。

「これでいいか。なら、ここにはもう用は――ッ!」



41 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 22:40:58 ID:GjiPRjor
支援

42 :敵か味方か? ◆RsQVcxRr96 :2008/10/18(土) 22:44:11 ID:PFHPRLrS
金居の言葉は開く自動ドアの音で中断された。
その音はこのスーパーの入口のセンサーに反応があった証拠。
外から誰かが入ってきた事は明確だった。
その人物は敵か味方か。
3人の注意が入口に集まり、6つの瞳が入ってきた人物に注がれる。
ほのかな月明かりを背景に入ってきた人物はまるで異色だった。
黄と白の色を彩ったパイロットスーツのようなものを着ている巨漢だったからだ。
その外見に3人は一瞬唖然とした。

「お、誰かいたのか。食い物あるか」

唖然としている3人をよそに来客――武蔵坊弁慶は開口一番に己の願望を口にした。


     ▼     ▼     ▼


「いやあ、ウマい。ここの弁当はウマいな」
「あの弁慶さん、まだ食べるんですか」
「い、今は夜の3時ぐらいか……よく、そ、そんなに食べられるものだ」
「いい加減話を進めていいか」

来客が4人に増えたスーパー。
そこに少し前までの綺麗な床を今は見る事は叶わない。
周りを見渡せば弁当やおにぎりなどのゴミが否応なく目に入ってくる。
全て弁慶が食べた食べ物の包装や残骸である。
まだ日も出ない時間から食べまくる弁慶に、なのはとペンウッドは半ば苦笑いで、金居は溜息混じりの愚痴を零していた。
最初はそのいささか怪しい風貌に警戒していた3人であったが、開口一番食べ物を要求する弁慶の豪放磊落さにすっかり毒気を抜かれる形になってしまった。
大食漢である弁慶は僅かな時間にスーパーにあった食料の半分を消費していた。
その凄まじい程の食べっぷりに3人は場違いな戦慄を感じていた。

「ふぅ、満足だ。そうだ人を探しているんだが、お前らスバルにティアナ、隼人って奴を知らないか?」
「え、スバル・ナカジマとティアナ・ランスターなら知っていますけど」
「そういえば……その二人なら私も知っているぞ」
「俺は知らんな」

ようやく満足いくまで食べ終わった弁慶がまず尋ねた事が探し人の行方だった。
スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスター、神隼人。
そして隼人以外の名前をなのはとペンウッドは知っていた。
その事をお互いに知った3人は共通の知人がいた事に驚きを隠せなかった。

「お、こりゃあ幸先がいい。ゲットマシン1号と2号のパイロットがこんなに早く見つかるとは」
「ゲット、マシン? なんですか、それ」
「そ、それにしても……あの吸血鬼の知り合いが二人もいたとは……」
「おい、神隼人なんてここにはいないぞ」

だがお互いの一言で和やかなムードは一瞬にして緊迫したものに変化した。

「それはネオゲッターロボに決まっているだろ。その3人と俺は地上本部特務部隊の一員だ」
「何、言っているんですか。二人は機動六課解散後の進路は決まっていますけど、特務部隊なんて知りませんよ。
 それにペンウッドさん、吸血鬼っていったい!?」
「い、いや……わ、私が知っているティアナとかいう者は吸血鬼で……」

弁慶、なのは、ペンウッド。
同じ人物について語っていた3人はお互いの言葉に困惑していた。
スバル・ナカジマとティアナ・ランスター。
お互い知っているはずが、その実まるで話が噛み合っていない。
3人はどうなっているのか全く分からなかった。
実際は各々言っている事は正しいのだが、並行世界という概念に至っていない事がお互いの齟齬を生んでいた。
3人の間の緊迫はさらに高まろうとしていた。

43 :敵か味方か? ◆RsQVcxRr96 :2008/10/18(土) 22:47:38 ID:PFHPRLrS

「おい、少しいいか」

その膠着を破ったのはこの中で唯一スバルとティアナと接点のない金居だった。
金居は3人の話を聞いて、同じくお互いの矛盾に気付いていた。

(この状況で仲間割れは不味い。面倒だが手を出すか)

金居の目的は首輪を解除してここから脱出する事。
本来その過程で誰が死のうが知った事ではない。
だが今ここにいる3人は一応曲がりなりにも役に立ちそうな人物だ。
みすみす要らぬ諍いで争って手駒が消えるのは都合が悪い。
それを回避するためにもこの場は早期の誤解の解決が急務であった。

「とりあえず弁慶君から話をしてくれるかな」

カテゴリーキングとしてのプレッシャーが3人に有無を言わせない状況を作り出していた。
気勢を削がれた3人はお互いに険悪な雰囲気を漂わせつつ金居の指示に従った。

それからしばらく金居による聞き出しと、その後質疑応答が行われた。
さすがに内容が内容だけに骨が折れるような作業だったが、なんとか全ての事を聞き出す事に成功した。

まずスバルとティアナについてだが、3人の内で概ね共通している項目があった。
それは姿・外見や性格といったそのもの自身の個性と言われるような部分だ。
これについては多少の誤差はあったものの、3人の意見はほぼ同じようなものだった。
逆に違っているのはその立ち位置だった。

――武蔵坊弁慶の話。

弁慶によればスバルとティアナは魔導師のランク試験の最中に<鬼>と呼ばれる化け物に襲撃されたという話だ。
そしてその時の戦いを評価した神隼人の命令で半ば強引に地上本部特務部隊へと勧誘。
なし崩し的にゲットマシンのパイロットに任命するや否やいきなりの初戦闘、そして勝利。
そしてその直後にネオゲッターロボごと連れて来られたと言うのだ。

――シェルビー・M・ペンウッドの話。

ペンウッドによればスバルとティアナはHELLSING機関所属の者だという話だ。
詳しい経緯はペンウッド自身知るところではなかったが、どうやら顔合わせはHELLSINNG機関本部襲撃の際らしい。
この話で異質なのはティアナが吸血鬼になっている点である。
なおスバルはどうやら他の二人の知るスバルとの表面的な違いは無かった。
どのような経緯でそのようになったかは蚊帳の外のペンウッドは知らなかったが、どうやら機動六課からの出向扱いという事らしい。
断言できないのは全て本人ではなく間接的に知り得た情報だからだ。
だからといって信憑性が全く無いという事にはならない。

――高町なのはの話。

なのはによればスバルとティアナは前から機動六課に引き入れたいと思っていた人材であって、魔導師のランク試験の時に入隊を打診。
両名から良好な返事が来た事で機動六課入りが正式に決定。
以降六課内のスターズ分隊の一員として目覚ましい活躍する事になる。
なのははスターズ分隊の隊長及び新人フォアード4名の指導役として二人と関係を構築。
スバルはとある事情から終始なのはを命の恩人兼憧れの人としてすこぶる良好な関係でいた。
一方ティアナとは考えの違いから一時険悪な関係になったが、すぐに修復され以降は良好な関係を築いていった。
そして部隊で追っていた事件が無事に解決して現在は日常勤務に従事しているという話だった。

「なるほど、まず結論から言うと、3人とも本当の事を言っている。嘘は無いな」
「金居君、それって……」
「パラレルワールド、並行世界……そういえば分かり易いか。こう考えた方が上手くまとまるな」



44 :敵か味方か? ◆RsQVcxRr96 :2008/10/18(土) 22:51:07 ID:PFHPRLrS
弁慶、ペンウッド、なのは。
金居は3人をこの順番で聞き込みを行った。
そして結果、3人の意見はバラバラになった。
この時点で金居は3人がおそらく嘘を言っていないだろうという予想を付けていた。
集団内で嘘を言う目的は主に攪乱と隠蔽が挙げられる。
しかし他人の状況を話すのに隠蔽などする必要はあまりない。
それならばここで嘘を言う理由は攪乱。
集団内に疑心暗鬼に陥らせて自身に有利な展開を望む者という線が非常に強い。
だが4人の中で嘘を言うなら自身がしてはいけない事がある。
それは集団内で孤立する事。
自分以外が孤立すればそこから集団に付け込む隙ができるが、自分が孤立すればアウト。
みすみす自身を危地に追いやるなど愚の骨頂である。
ならばこそあの時、嘘を言って集団に付け込むなら当事者自身プラス最低一人の賛同者は必要なはずだ。
それなのにあの時の3人の意見はバラバラだった。
つまりその時点で嘘を言う策は半分瓦解したも同然だった。

――まあ3人の意見がバラバラなら、それはそれで弄りようはあるんだが。

そして金居自身からの聞き込みと質疑応答。
その際3人の目線や挙動に特に目立って不自然な点はなかった。
実は弁慶・ペンウッド、なのという順番にも意味があった。

まずは弁慶。
元からの3人集団にとって弁慶は異端者。
初対面の弁慶が自分達の情報を持っている可能性は限りなく低い。
ここで弁慶が自身の意見を述べる。
この話は弁慶自身、つまりは本当の話だろう。
出会ったばかりそれもつい先程口から出した事をいきなり上手く修正する事などほぼ不可能。

次にペンウッド。
金居自身とペンウッドとの交流はこの中では一番長い。
それに金居はペンウッドがどういう人物か分かっていた。
自分が少し威圧すれば、それだけで嘘を言う事はない。
そう確信するほどであった。

最後になのは。
この状況で嘘を織り交ぜて場を混乱させる事ができたのは結局のところ彼女だけ。
だが、なのはに一層の注意を傾けてみたが、不審な点はなかった。
金居自身も元の世界では目的のために不本意ながら人間と手を組む素振りを見せている。
よって偽りを述べれば何かしらの反応が僅かでも分かると踏んだからこそ、こういう場を設けたのだが何もなかった。

つまりは誰も嘘を言っていない、3人の言う事は全て本当だという結論に至ったのだ。

「――と、理由はこんなところかな。それで肯定の方向で考えた結果、並行世界の考え方が一番しっくりきただけの話だ。
 そういう事を題材にした本、人間がいくつか書いていたしな」
「うん、私も前に友達に薦められていくつか読んだ事あるけど……でも、そんなものが本当に――」
「そうでなかったら説明が付かない。貴様の話だとプレシアは戻って来られない場所から戻ってきているのだろ。
 ならば、それだけの力が今のプレシアにはあるという事だ」

金居の説明を聞いた3人は一応納得したものの、どこか煮え切らない表情のままだった。
いきなりSF概念の突拍子もない論を展開されれば、戸惑うのは仕方のない事ではある。

「でも並行世界だか別世界だかにしろ、あまり気にしなくてもいいと思うぞ」
「――ハッ、それはどういう事だ?」

難しい話にあまり付いて来れずに今まで半分眠っていた弁慶が金居の発言に疑問を投げかける。
もし金居の言う通りならここにいる知人は知人ではない事もあるのだ。
知っている人が実は知らない人。
この考えに至ったならば不安を抱くのは至極当然だ。

45 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 22:52:26 ID:GjiPRjor
 

46 :敵か味方か? ◆RsQVcxRr96 :2008/10/18(土) 22:54:09 ID:PFHPRLrS

「簡単だ。話を聞く限り、違うのは境遇ぐらいで外見や性格なんかは然して違いは聞けなかった。
 ようは演じる役割が違うだけでその者自身の本質はどの世界でも対して変わりが無いんだろ」

例えるなら世界は一つの演劇。
演じる舞台はその世界そのもの、役者はそこにいる住人。
別の世界は別の演劇、各々の人物はそこにある役割を演じる。
ある時は隊長、別の時は意識不明、またある時は組織には属さずに怪物退治……
強引に言い換えれば、こういう具合にできる。

「だから、おそらく別世界の知り合いでも自分の知る者と大きく違う事はない、という訳だ」

3人の表情はまだ完全には晴れていないようだ。
だが最初の疑いの抱いている時よりはだいぶ良くなっている。
おそらく金居の話を聞いてお互いに思う事があるのだろう。

(はぁ、これでいいだろ。この際、俺にしてみれば別に知り合いとかどうでもいい。
 だがこれでこの集団内での俺への不信はある程度緩和されたはず。いくらか動きやすくはなったか)

金居の正体はギラファアンデッドという不死たるクワガタムシの始祖である。
それは人間から見ればおそらく化け物と映る姿。
あのジョーカーも栗原親子の前では「相川始」として人間としての姿をしていて、アンデッドである事を知られないようにしている。
つまりはそれだけで相手に無駄な警戒心を抱かせてしまう。
集団の中で行動するのにあたってそれは非常に不利な点だ。
なのはとペンウッドも例外ではない。
脱出するための協力関係とはいえ出会ってまだ間もない。
こちらへの信頼はこの時点でかなり低いだろう。
そこへ降って湧いてきたかのように起こった今回の騒動。
金居自身が部外者という立ち位置を得たおかげもあって、ある程度上手く収める事に成功した。

実は先の論にはよく考え直してみると不備な点がいくつかある。
金居もその事を分かっていたが、敢えてそれは話さなかった。
反論されれば対応する気はあったが、そもそも反論が起こる事はないだろうと思っていた。
不備といっても表面的には見えないもの、それに3人が欲しかったのは「納得できる答え」である。
現状目の前にそれと思わせるものが掲げられれば、いくらか目を瞑ってそれに縋りたくなる。
それが人間の心理である。
誰しも都合の悪い事は考えたくないし、都合が良ければ無条件で信じたがる。
さらにここは精神が極限までに張り詰めさせられる場所。
目に見えて不自然でなければ、余程の者でない限り小さな綻びなど無視するだろう。
そんな魂胆が金居にはあった。

「実現させようぜ……俺達の望んでいた脱出ってやつを」

そう3人に言葉をかける金居の顔には笑みが浮かんでいた。
しかし、それは何故かどこか心をざわつかせるものだった。


     ▼     ▼     ▼




47 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 22:56:43 ID:GjiPRjor
支援

48 :敵か味方か? ◆RsQVcxRr96 :2008/10/18(土) 22:56:58 ID:PFHPRLrS
今の高町なのはの心中は複雑だった。
一時はどうなるかと思ったが、金居の説明のおかげで弁慶との認識の齟齬の原因も判明した。
あの時、金居の説明がなかったら今頃この4人はこうして一緒にいる事は難しかっただろう。
これだけなら金居は自分達の誤解を解消してくれた恩人という事になるのだが、どうも素直にそう思えない。
それにさっきの説明――並行世界と同一人物。
この説なら名簿に載っている自分やフェイト、はやての名前が二つずつ載っている理由も説明がつく。
つまりもう一人の方は別の世界の彼女達なのだろう。
それに最悪自分以外は別の世界の彼女達という可能性すらある。
それでも金居はその人の本質は変わらないから心配ないと言う。
しかし……本当にそうなのだろうか。
何か見落としているのではないか。
そんな疑問が頭の中で渦巻いている。

「おい、どうした。行くぞ」

少し俯いて考え込んでいたためか金居が声を掛けてきた。
僅かながらこちらを見下しているような感じがするのは自分の考え過ぎだろうか。
どうも先程からネガティブな思考に陥ってばかりだ。

「うん、ごめん。今行く――」

それを見つけたのは偶然だった。
その時なのは自身はスーパーから出て商店街に向かうため大通りを通ろうと視線を東に向けていた。
最初に目に飛び込んできたのは赤く輝く炎の花火だった。
そして続いて信じられないような物が目に映った。

夜空に浮かぶ月をバックに天高く飛翔する龍の姿。

それがなのはの目に飛び込んできた。
異変を感じ取った残りの3人もなのはの見ている方を向くと、なのは同様に唖然とした表情となった。
そして風に乗ってきたのか、微かに叫び声が聞こえてきた。

『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア……………』

それはこの世のものとは思えないほど悲痛を秘めた悲鳴だった。
程なくして龍はその巨体を浮かばせる事叶わず、その直下へと墜落していった。
その光景を4人は黙って見ていた。
そしていち早く行動を起こしたのは――第1発見者のなのはだった。

(あそこにいたのって……なに、この胸騒ぎ!)

なのはは背後から掛けられる静止の声も無視して龍が墜落したであろう場所へと走っていた。
夜空に飛翔する龍の頭頂部、そこに何やら人影らしきものがなのはには見つけられた。
ここから龍までの距離はかなりあってどんな人かは判別できなかったが、なのははそれを見て居ても立ってもいられなくなっていた。
なぜか胸のざわめきが激しくなる。
あそこにいた人は自分の知る人物だと、そんな根拠もない衝動がなのはを突き動かしていた。

「あっちの方角は……確か銀色の<鬼>がいたはず。まさか!?」

弁慶の脳裏にはある光景が浮かんでいた。
それは鬼による虐殺。
もしあの時の銀の鬼が原因なら、それはあの時鬼を取り逃がした弁慶にも責任の一端がある。
もうあの時の和尚や僧のような犠牲者が出るのは弁慶にとって許せない事であった。
そう思った時にはもう弁慶もなのはの後を追って龍の墜落した方角へと走り始めていた。



49 :敵か味方か? ◆RsQVcxRr96 :2008/10/18(土) 23:00:33 ID:PFHPRLrS
「か、金居君。わ、私達も、あそこへ……」

ペンウッドは怯えていた。
アーカードという怪物を知ってはいるが、あれはまだ人の形をしていた。
しかし、今見たものは明らかに空想の産物ドラゴンの姿をしていた。
ペンウッドとしてはできる事なら関わりたくないのが心情だった。
だが、ここで臆病風に吹かれていては死んだアリサに笑われる。
それに真っ先に走って行ったなのはは自分から見ればまだ子供だ。
スーパーでの探索の時も深刻そうな顔をしていたから場を和ませようとしてみたが、上手く行ったかどうか。
とにかくペンウッドはここに留まるという選択肢は選びたくはなかった。

「ああ。追うぞ」

金居としては龍などどうでも良かった。
敢えて言うならあまり近づきたくはないが、既に二人が先行している現状追うしかなかった。
それに追わずに残る方がこの場合は印象が良くないだろう。
まだデスゲームは始まったばかり、残り人数も分からない中で今は利用するべき時だ。
それに元から途中の施設は寄る予定で、あちらには学校がある。
商店街に行く前に寄って行っても損はない。
そう考えて金居はペンウッドと共に二人の後を追いかけて行った。

彼らの行く先にいるのは敵か味方か、それとも……


【1日目 黎明】
【現在地 D-2 スーパー付近】

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、プレシアに対する怒り
【装備】グロック19(14/15+1発)@リリカル・パニック
【道具】なし
【思考】
 基本:誰の命も欠かす事無く、出来るだけたくさんの仲間を集めて脱出する。
 1.龍が墜落したであろう場所(おそらく学校)へ向かう。
 2.なんとしてもヴィヴィオを救出する。それは何よりも優先。
 3.工場に向かい、首輪解除の手がかりを探す。
 4.出来る限り全ての戦えない人を保護し、仲間を集める。
 5.さっきの子(柊かがみ)はどうするんだろう……?
 6.アリサの思いと勇気は、絶対に無駄にはしない。
【備考】
※金居の事は多少警戒しています。
※エリオが死んだという話は信じていません。

【シェルビー・M・ペンウッド@NANOSING】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品(未確認1〜2)、おにぎり×10
【思考】
 基本:自らの仕事を果たす。
 1.なのはと弁慶を追う。
 2.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
 3.アリサという少女の思いは無駄にしてはいけない。
【備考】
※少なくとも第四話以降の参戦です。



50 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 23:02:16 ID:GjiPRjor
  

51 :敵か味方か? ◆RsQVcxRr96 :2008/10/18(土) 23:04:38 ID:PFHPRLrS
【金居@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康、変身による疲労(中)
【装備】なし
【道具】支給品一式、カードデッキの複製(タイガ)@リリカル龍騎、砂糖1kg×10、ランダム支給品(未確認1〜3)
【思考】
 基本:首輪を解除し、このゲームから脱出する。
 1.なのはと弁慶を追う。
 2.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
 3.利用できるものは全て利用する。邪魔をする者には容赦しない。
 4.脱出の為ならば、人間と手を組むのも仕方がない。
 5.ジョーカーは出来ればこの戦いの中で倒してしまいたい。
 6.もしもラウズカード(スペードの10)か、時間停止に対抗出来る何らかの手段を手に入れた場合は容赦なくキングを殺す。
【備考】
※このデスゲームにおいてアンデッドの死亡=カードへの封印だと思っています。
※最終的な目的はアンデッド同士の戦いでの優勝なので、ジョーカーもキングも封印したいと思っています。
※どちらかと言えば悪者側よりも仮面ライダー側に味方した方が有利だと思っています。

【武蔵坊弁慶@ゲッターロボ昴】
【状態】健康、満腹
【装備】閻魔刀@魔法少女リリカルなのはStirkers May Cry
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0〜2
【思考】
 基本:殺し合いを止め、プレシアを打倒する(どうやって戦うかは考えていない)
 1.龍が墜落したであろう場所(おそらく学校)へ向かう。
 2.スバル、ティアナと合流。
 3.軍事基地か地上本部に行き、ネオゲッターロボの所在を確かめる。
【備考】
※5話終了後からの参戦です。
※自分とスバル、ティアナ、隼人の4人は、ネオゲッターロボごとここに送り込まれたのだと思い込んでいます。
 また、隼人がどうして参加者の中に居ないのかという疑問を持っています。
 隼人がこのゲームに関わっていない事を知りませんし、スバル・ティアナの来た世界が自分とは違う事も知りません。
※銀色の戦士(ミライ)が鬼ではないかと疑っています。

【チーム:少し、頭冷やそうか】
【共通思考】
 基本:首輪を解体し、このゲームから脱出する。
 1.工場に向かい、首輪解除の手がかりを探す。
 2.戦えない者は保護していく。
【備考】
※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。
※なのはの話から、プレシア・テスタロッサについて大体の情報を得ました。
※チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
 敵対的:アーカード、アレクサンド・アンデルセン、相川始、キング
 友好的:機動六課組、インテグラ・ヘルシング、天道総司
 要注意:クアットロ
 また、アーカードについてはインテグラと合流出来れば従わせる事が可能だと判断しています。

52 :敵か味方か? ◆RsQVcxRr96 :2008/10/18(土) 23:07:56 ID:PFHPRLrS
投下終了です。
誤字・脱字、矛盾、疑問などありましたら指摘して下さい。

53 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 23:23:08 ID:O6F/Kn/w
反目氏、Rs氏共に投下乙です。

>ユーノ・スクライア司書長の女難
ユーノぉぉぉおおお!!てめぇえええええ!!
男女チームの少ないなのロワなのに何故コイツだけ……!ちくしょう……!
てか何故みんなして病院に向かうwもっと他の所に行こうぜw

>敵か見方か?
着実に戦力が積み重なっていくチーム。金居が何気に対主催してて良い感じです。
平行世界にも気付いたしどうなるか……。
てか現在の対主催チームの中では何気に最強だと思うw


あと、いくら宙に浮いてるとはいえ、2km離れた地点からドラッグレッダーを視認するのはキツいと思うんですが……。
少なくとも声が聞こえるのは大分無理があると思います。

54 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 23:59:17 ID:PFHPRLrS
反目氏投下乙です。
ユーノwお前って奴は……なんて罪な野郎だ。
これは人間だとばれた時が楽しみ過ぎるwww
なんでユーノばかりこんなネタwGJ

>>53
声はもしや無理かなと思いつつ入れたんですが、やはり無理があったか。
でも視認はあの距離と炎による光源で見えると踏んだのですが、こっちも厳しいんですか。
こっちは若干余裕でO.K.だと思っていたのですが。

55 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/19(日) 00:17:45 ID:ht7DmesZ
まぁ、視認自体は有りだと思います。ただ、その姿形をハッキリと認識した事には少し疑問を感じました。
やっぱ2km離れてますし、ボンヤリ何かが光ってるなぁ……みたいな認識が限界じゃないかと。
あ、でも金居みたいに常人以上の視力を持ってるキャラなら見えても可笑しくないか

56 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/19(日) 00:29:11 ID:kiHf7cOP
反目氏GJ!
ばれた時の反応? フルボッコに決まってるでしょうw
勘違いのレベルもひどくなってるし、
彼の今後が楽しみでしかたないww

>>54
ロワの場合、音は大抵一エリア分なので無理だと思う。
視認距離は結構あるみたいだし、まだ暗い空でならOKだとは思うけど。

57 : ◆Qpd0JbP8YI :2008/10/22(水) 23:00:14 ID:O9JBhfnK
はやて、セフィロス、アーカード、投下します

58 :戦いの嵐、再びなん? ◆Qpd0JbP8YI :2008/10/22(水) 23:01:55 ID:O9JBhfnK
まだ外は暗く、闇が隔絶するその部屋で、二人を邪魔するものはない。
先ほど部屋に響いたバイクの排気音のよすがも消え、今は静寂が支配する。
戦い、そして大切な人の死。
八神はやてにとって慣れぬそれは未だ重石のように彼女にのしかかっていた。
傍目からでも分かる彼女の普段ならぬ様子はセフィロスとて気にならないわけではないが、
かといってそれによって彼のその氷のように冷感たる面差しが消えてなくなるわけではない。

「仮面ライダーとは何だ?」

やがてその重く、厳粛とも言える空気の中でセフィロスは口を開いた。

「……仮面ライダー」

八神はやてはそれを聞くと、涙を拭い、思い出し、
確認するかのようにゆっくりと呟き、たどたどしく説明を加えていった。

「私がこっちに来る前までに出会った人たちのことです。
カードデッキいうのを使って、鏡の世界のモンスターと契約して、その力を借りて変身する。
そうして最後の一人になるまで……」

そこで八神はやての説明は終わった。
その不自然な様子をセフィロスが訝しく見つめていると、
彼女は突然、そや! と声を上げた。

「もしかしたら、これも仮面ライダーの戦いの延長なのかもしれへん!」
「延長?」
「はい。こっちに来るまでにも仮面ライダー同士による……その、殺し合いというものがあったんです。
普通に生活をしている人たちにさっき言ったカードデッキを配って、
最後まで勝ち残ったら願いを叶えるゆうて殺し合いをさせる。
勿論、私ら管理局はそれに反対して、止めようとしてたんですけど……。
まだ捜査途中でこないな所に連れてこられてしもうたから、
その、全部を知っているってわけやないし、知っていることも確実ってわけやないから、
えと、間違っているかもしれません。
でも、この場に仮面ライダーもいたし、参加者に戦いの為の武器を配って殺し合いをさせるゆうのが、似すぎているんです。
せやから、もしかしたらこの殺し合いも……」
「……そうか」


59 :戦いの嵐、再びなん? ◆Qpd0JbP8YI :2008/10/22(水) 23:02:35 ID:O9JBhfnK
時折目を伏せながらも、そのつぶらな瞳を向けて一生懸命に説明してくる八神はやてを見つめ、セフィロスは短く言葉を発した。
仮面ライダー、この殺し合いというゲーム。
どちらも何を目的としているのかは彼女の説明では判然とはしなかったが、おおよその形では理解できた。
そしてその中で一つ気になった事。

「……願いを叶える……か」

セフィロスはその言葉を小さな声で反芻させた。
夜の闇に溶け込んでしまうようなそんな微かな声を八神はやては聞き取り、ハッとした。
それはこのままセフィロスがいなくなってしまうのではないかという恐怖。
もしかたしたらセフィロスにも殺し合いに積極的だった仮面ライダーのように
どうしても叶えたい願いがあるのではないか。
そしてそのためにこの殺し合いに乗るのではないか。
突然と八神はやての頭の中には好戦的な仮面ライダーの姿が思い浮かび、目の前のセフィロスと重なった。
どうしようもないほどの不安が訪れる。
夜の寒さのせいだろうか、それとももっと他の何かのせいだろうか、彼女の小さな身体は震えた。
だけど彼女は不安を払うように首を横に振った。
非力な、足手まといでしかない自分に嫌な顔せずに付き合ってくれる優しいセフィロス。
どんなになっても自分を守り、傍にいてくれようとしてくれる頼りがいのあるセフィロス。
彼女は僅かな時間にしろ一緒にいてくれたセフィロスの姿を思い返し、眼前に浮かび上がった暗い未来を消した。
そして彼女は縋るようにマハを力強く抱きしめ、闇に浮かぶ銀色の髪と蒼き瞳を見つめた。


願いという言葉を聞いてセフィロスの頭に真っ先に思い浮かんだのが、母を苦しめた星と人類の抹殺であった。
そのために彼はメテオを唱え、隕石を星に衝突させようとした。
結局それを叶えることは出来なかったし、その後も徒に長い時間を過ごしたが、決してその願いを忘れたわけではない。
今も昔と変わらずにその目的は色褪せることなく、鮮やかに頭に留めている。
だけど、それは他人の力によって叶えるべき願いではない。
他人がそんな事を成したからといって、自分が、母が喜ぶというものではない。
母の意志を継ぎ、母の子である自分が成し遂げてこそ、母の無念が晴らされるものだ。
だから、セフィロスの口から出る言葉は決まっていた。

「下らないな。願いとは自分の力で叶えてこそ意味があるものだ。他人の力によって成すものではない」

セフィロスの偽りのない言葉によって先程の不安など嘘のように八神はやてはその顔を喜色に染めた。
やはりセフィロスは自分の信じた通りの人だ。
僅かに揺らいだ八神はやての彼への信頼も今はより堅固なものとなって舗装された。
これから彼と歩く道のりにもう迷いはない。
だけど彼女がそう思った矢先、続けて掛けられたセフィロスの言葉に彼女は再び震えを感じずにいられなかった。

「……お前にはどうしても叶えたい願いがあるのではないか?」

一瞬、何を言っているか分からなかったが、右手に感じるマハの温かみ、
そしてそこからシグナムの存在を感じとり、セフィロスの言葉の意味を理解した。

「確かにシグナムが死……ん……」


60 :戦いの嵐、再びなん? ◆Qpd0JbP8YI :2008/10/22(水) 23:03:31 ID:O9JBhfnK
その先を言おうとして途端に彼女は言いよどんだ。
シグナムと過ごした楽しい毎日が瞬時に頭の中を駆け巡り、シグナムの死を否定し、それを認めさせまいとする。
その言葉を発してしまったら、シグナムを自分の想いから取りこぼしてしまうような漠然とした恐怖が彼女の口を重くさせる。
頭では彼女の死を理解していても、心がそれを拒否する。
シグナムの死という事実は凍てつく吹雪となって彼女を責め立てた。
だけど幾ら風が強くとも、その先のことを言わなければならない。ここで立ち止まってはならない。
彼女は目を閉じ、子供の頃にしまった大切な宝箱を開けるようにゆっくりと自分の中の気持ちを手に取り整理していった。
確かに宝箱には依然としてシグナムの死を否定したくなるような想いが詰め込まれていた。
そのどれもが時間を忘れ、ずっと見つめていたいと思えるほどのものだ。
でもそんな箱の一番奥にしまわれていたのは、夜天の書の主としての、烈火の将シグナムのマスターとして矜持。
ここでシグナムを理由に徒に立ち止まり、歩みを止めてしまうことなどできようか。
彼女は何の為に死んでいったか。
それは決して自分の死に縋り、再び歩けるようなった足をそのまま止めることではないはずだ。
それなのに彼女への想いばかりに囚われて、自分の道を見失っていたら、
それはきっと自分の為に命をかけてくれた騎士であるシグナムを侮辱することになってしまう。
八神はやては決然と大きく目を開け、口を開いた。もうそこには涙の跡はなかった。

「確かにシグナムが死んでしまったことは嫌です、悲しいです。
出来ればシグナムが戻ってきてくれたら、と思います。
せやけど、それが誰かの犠牲の上でしかならないことなら、真っ平ごめんです。
私は誰も傷つけたくない、誰も悲しませたくない。
もう闇の書と呼ばれた時代は過ぎました。
シグナムが、ヴィータが、シャマルが、ザフィーラが、そしてリインフォースが、
みんなが頑張って闇の書の忌まわしい呪いを解いてくれました。
今は夜天の書。そして夜天の守護騎士。
夜天の書は誰かを傷つけるためのものやあらへん。
誰かを守り、その誰かに祝福の風を届けるものです。
もう誰にも闇の書なんて呼ばせへん。
それがリインとの、みんなとの約束です。
せやから私は誰かを傷つけて、自分勝手な願いを叶えるゆうのは出来ません。
それに第一、私には家族やなのはちゃん、フェイトちゃんといったシグナムと同じくらい大切な人がいます。
そんな人たちを傷つけるようなことなんて、やっぱり私には出来ません」

そして最後に付け足すように彼女は小さな呟いた。
さっきまでの凛とした態度が嘘のように戸惑いながら、
そして何故か胸の前で両の人差し指を突っつきながら。

「それに何や、セフィロスさんも私にとって大切な人やし、
えーと、その……何というか、これからも一緒にいたいと思うし、な……」
「そうか」


61 :戦いの嵐、再びなん? ◆Qpd0JbP8YI :2008/10/22(水) 23:05:43 ID:O9JBhfnK
八神はやての決意とも取れる言葉を耳にしながらも、
セフィロスはそんな一言を発っすだけであった。
そしておもむろにセフィロスは窓の外を見つめた。
気がつけば、徐々に空は白み始め、夜の終わりを告げようとしている。
もうまもなく太陽が昇り始め、朝を迎える頃だろう。
さて、これからどうしようか。
外の景色を見ながら、セフィロスがそんな事を考えていると、
ふとあの場にいたもう一人の男の姿を思い出した。

「アレックスという男はどうした?」
「……あ!」
「……どうした?」
「あかん、すっかり忘れておったわ。どないしよう」
「どこにいるのか分からないのか?」
「えーと、何や、あの時は色々と急いでたからな〜。無事やといいんやけど……」

あはは、と後ろ髪を掻きながら意味もなく笑うはやて。
つまりは知らないということなのだろう。
アレックスは自分がゲームにのっていると誤解していた。
こちらもそう思って相手を攻撃したのだから、別段彼を責める気はセフィロスにもなかったが
誤解されたままというのは幾らか面倒なことになる可能性がある。
出来るだけ早く誤解を解きたいところだ。
だが、居場所は分からないというのであれば、どうしようもない。
今は身体の回復に専念すべきなのだろう。

「寝とけ。今の状態では殺し合いをどうこうすることなど出来ないだろう」

殺し合いという言葉によって再び彼女の顔は暗くなる。
まだ誰か大切な人を失ってしまうのではないか。
自分と同じように悲しみ暮れる人が生まれてしまうのではないか。
一片の雪にも似た八神はやての面差しは美しくあったが、同時に哀しみと、そして寂しさに満ちていた。
だけど、その雪片がいつまでも凍てついているというわけではない。
雪が降った後は、必ず春の花が咲くように彼女は顔は笑った。
彼女はいつまでも雪が降るような寒い日を望んでいるわけではないのだ。

「何や、セフィロスさん。それってひょっとして私のこと、心配してくれてるん?」

バカにするわけでも、からかうわけでもなく、彼女はただイタズラな笑みを浮かべた。
だけど春の穏やかな風が雪を溶かすことがあっても、闇にひたすら隠れた氷を溶かすことはない。
セフィロスは溜息一つ零し、壁に寄りかかった。

「照れ屋さんなんやね、セフィロスさんは」


62 :戦いの嵐、再びなん? ◆Qpd0JbP8YI :2008/10/22(水) 23:06:17 ID:O9JBhfnK
そんな暗がりに佇む氷にも、八神はやてという春の風は暢気に届けられた。
そしてセフィロスが目を閉じたのを確認すると、彼女も身体を休めようとベッドの上で横になった。
一刻も早く身体を回復させて、この殺し合いをとめる。
だけどそんな思いとは裏腹に、目を閉じると突然と襲い掛かってくる不安、恐怖、寂寥感。
意識せずとも瞼の裏にどうしても浮かび上がる大切な人の喪失。
暗闇の中、ただ一人でいるのは、どれだけ決意を重ねたとしても
今の彼女に到底堪えられるものではなかった。

「なあセフィロスさん?」

彼女は身体を起こすと、セフィロスに呼びかけた。

「何だ?」
「あの、さむないですか?」

閉じていた目を開け、セフィロスは八神はやてを見つめる。
そこに質問に答える素振りなど微塵も感じられない冷たさがあったが、
そんな事を気にせずに彼女は言葉を続けていった。

「一人でいると、何や、寒くてよう寝られんのです。
ああ、いや、別に寂しいとかそんなやのうて……」

そこで彼女は一旦言葉を区切り、その先を言おうか、言わないか、
必死になって考えてから、やがて意を決したように口を開いた。

「あの、そっちで一緒に寝ていいですか?」

闇の書が起動するまでは、いつも彼女は一人でいた。
一人でいることには慣れてはいるが、それが好きというわけではない。寧ろ嫌いな方だろう。
そしてそれが家族を失ったその日の夜ということならば、
彼女の中の膨れ上がる孤独感の大きさは昔のそれとは比べようがなかった。
セフィロスの空のような蒼い瞳は、依然と興味なさげに少女を見つめる。
そこに優しさとか人としての感情を見抜くことは誰にとっても不可能なことだろう。
だけど、八神はやてはその奥にある温かな気持ちに確かに気づいていた。

「好きにしろ」
「はい! そうさせてもらいます!」

彼女は笑顔でセフィロスの下に寄り
ベッドの上に座るセフィロスの肩に自分の頭を預け、今度こそゆっくりと眠りについていった。



63 :戦いの嵐、再びなん? ◆Qpd0JbP8YI :2008/10/22(水) 23:07:14 ID:O9JBhfnK
*   *   *


それから幾時間か経過した頃、突然と声が聞こえてきた。
アーカードと名乗り、戦いを呼び水をかけるもの。
それを耳にし、セフィロスがどうしようかと考えたところで隣で動く気配があった。
そして彼は自ずと答えが決まってしまったことを悟った。

「行くのか?」
「はい、私は戦いを止めます」

先程まで安らかに寝息を立てていたとは思えないほど、
その声には燦然とした意思が見て取れた。
しかし、そんな声を聞きながらも、セフィロスの内には不安があった。
自らを闘争の場に置こうとする者。
それは自然と相手が強者であることを想像させてくれる。
なるべくなら、そんな所に八神はやてを連れて行きたくないとセフィロスは思う。
だけど、思い出すのは先の出来事。
翠屋で待つようにメモを残したはずなのに、それを無視して彼女はあの場にやって来た。
そして機動六課での日々。
彼女に対して否定の句が意味を成したことなどはただの一度たりともなかった。
どれだけ雪が覆いかぶさろうと、やがては緑が芽吹くように彼女はめげることを知らなかった。
そしてそれは誰が為にあるというのなら、事は尚更だった。
セフィロスは小さく溜息を零し、分かった、と告げた。
それを聞いて笑顔になる八神はやての頭の上に手を置き、
それから彼女を連れ立って彼は表に出た。

「あの、何で屋上なんです?」

風が吹き、セフィロスの髪を巻き上げる。
地平の向こうから昇り見える太陽はたなびく銀色の髪を照らし、眩く輝かせる。
それは刃のように冷たい鋭さを感じさせながらも、
闇を照らしてくれる温かな光をも感じさせてくれた。
セフィロスははやての質問には答えず、ゆっくりと彼女を抱きかかえた。

「あ……あの、セフィロスさん?」


64 :戦いの嵐、再びなん? ◆Qpd0JbP8YI :2008/10/22(水) 23:08:02 ID:O9JBhfnK
頬を僅かに朱に染めながら戸惑うはやてを無視して、セフィロスは背中に力を込める。
そこから生まれるは片翼の黒き翼。
それはアレックスにゲームに乗っていると誤解させてしまった忌まわしき異形の姿だ。
そして人であれば、誰のもがおののく、恐ろしく、そして悲しい人を外れた姿だ。
だけど背中から生える漆黒の翼を見ても、彼女に嫌悪の情は湧かなかった。
思い出すのは、かつて一緒になって闇夜を翔けたリインフォース。
彼女と同じ黒き翼は、今、再び共に空を舞ってくれる。
それは彼女にとって、何よりも頼もしいものだった。


曙光を浴びながら、ビルの間を縫う様に飛ぶセフィロスとはやて。
朝の冷たく澄んだ空気は風となって二人の頬を撫でる。
爽やぐようなその風は身体の目を覚ませると同時に、心内に募る不安をも吹き飛ばしてくれた。
そして二人を祝福するかのように太陽の光は絶えて止まなかった。


やがてセフィロスとはやては一つのビルの屋上に舞い降りた。
そしてそこから彼は放送の主であるアーカードを探す。
眼下に広がる無機質なビル群の中、すぐに磔にされた少年の姿が目に入った。
それをセフィロスを確認すると同時に一つの視線を感じた。
警戒のために周囲を入念に探るが、人影は見当たらない。
だけど、セフィロス感じたそれは勘違いではなかった。
何故なら吸血鬼第三の目は二人の姿を確かに捉えていたのだから。
Devil May Cryの中、既に衣服の再生を終え、真っ赤なコートを羽織った一人の男性が玉座からゆっくりと立ち上がった。
そして彼は悠然と扉を開け、セフィロスに向かって隠すことなく口角を吊り上げ、
まるで朝の挨拶をするかのようにごく自然と、楽しげにパーティーの始まりを告げた。





65 :戦いの嵐、再びなん? ◆Qpd0JbP8YI :2008/10/22(水) 23:08:57 ID:O9JBhfnK
【一日目 早朝】
【現在地 G-5 Devil May Cryから少し離れたビルの屋上】

【セフィロス@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(小)、魔力消費(中)
【装備】正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式×3、バスターソード@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、
    トライアクセラー@マスカレード、ランダム支給品0〜4個
【思考】
 基本 元の世界に戻って人類抹殺
 1.アーカードの様子を窺う
 2.アーカードの戦いを止める
 3.状況が落ち着いたら、八神はやてと共に機動六課隊舎へ向かう
 4.アレックスに会ったら誤解を解く
【備考】
 ※現在行動を共にしている八神はやてが、本物の八神はやてであると認識しました
 ※機動六課でのことをはやてに自ら話すつもりはありませんが、聞かれれば話します
 ※身体にかかった制限を把握しました
 ※アレックスが制限を受けていることを把握しました
 ※八神はやてが無事なことから、アレックスはゲームにのってないと判断しました 
 ※殺し合いを止めるというスタンスは尊重するが、不可能と悟った時には殺すことも辞さない つもりです
 ※参加者同士の記憶の食い違いがあることは把握していますが、特に気にしていません
 ※トライアクセラーで起動するバイク(トライチェイサー@マスカレード)は、立体駐車場に埋もれていると思っています。
  とはいえ、運転はできないので、無理に探すつもりはありません。
 ※「リリカル龍騎」における仮面ライダーの情報を得ました
 ※デスゲームと仮面ライダーの殺し合いに関係があるのではないかと思っています


【八神はやて(A's)@仮面ライダーリリカル龍騎】
【状態】疲労(小)、魔力消費(小)
【装備】デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、憑神刀(マハ)@.hack//Lightning
【道具】支給品一式、ランダム支給品0〜1個
【思考】
 基本 殺し合いを止め、誰にも悲しい思いをさせない
 1. アーカードの戦いを絶対に止める
 2. 仲間たちと合流
 3. アレックスに会ったら、殴ったことを謝る
【備考】
 ※セフィロスが自分を知っていることを知りません
 ※憑神刀のプロテクトは外れました
 ※憑神刀の中にシグナムの面影を見出しました。憑神刀にシグナムを投影している傾向があります
 ※デスゲームと仮面ライダーの殺し合いに関係があると思っています


66 :戦いの嵐、再びなん? ◆Qpd0JbP8YI :2008/10/22(水) 23:09:43 ID:O9JBhfnK
【現在地 G-5 Devil May Cryの前】
【アーカード@NANOSING】
【状況】健康
【装備】パニッシャー@リリカルニコラス
【道具】首輪(アグモン)、拡声器@現実、基本支給品一式
【思考】
基本:インテグラルを探しつつ、闘争を楽しむ。
1.銀髪の男(セフィロス)との闘争を楽しむ。
2.Devil May Cryにて、自分に闘争を挑む人間が来るのを待つ。
3.アンデルセンとスバル達に期待。
【備考】
※スバルがNANOSINGのスバルと別人であると気付きました。
※パニッシャーが銃器だという事に気付いていません。

67 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 23:42:02 ID:0oboAEvs
GJ!
なんか、もうホントに、何なんだろうこのきれいなセフィロスはwww
ロワが始まってから順調に主役格街道をひた走ってるセフィロスが凛々しくもあり、次第にデレてきたはやてがなんか物凄く可愛かったりw
そしてアーカードの元へと一番乗りを遂げたセフィロス。果たして対主催・マーダーの二大巨頭対決は一体どうなるのか?
まさに最初からクライマックスな展開に、目が離せないw

68 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 21:03:20 ID:9h2McZcH
投下乙です。
セフィロスがカッコいいな。はやても健気でなんとも。
そういやリリカル龍騎ではプレシアもライダーやっているんだっけ。
って、いきなり最強対決w序盤からクライマックスだぜw
あと、何人来るんだろう。

69 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 21:50:24 ID:68zp/BQp
投下乙です。
最強剣士セフィロスVS最強の吸血鬼アーカードか。
これはwktk。
取り敢えずはやて逃げてーw

てかこれで、アーカード、アンデルセン、セフィロス、アンジール、ヴァッシュの五人が集結か。
何だこの超人大乱闘wwwクライマックスすぎだろwww

70 : ◆7pf62HiyTE :2008/10/27(月) 18:46:10 ID:CFNskvXx
万丈目準1名、本投下します。宜しければ支援の方宜しくお願いします。


71 :闇とリングとデッキの決闘者 ◆7pf62HiyTE :2008/10/27(月) 18:50:01 ID:CFNskvXx



『宿主サマ……宿主サマ……』
「ん……っ……」
『起きろよ宿主サマ。何時まで寝ているつもりだ?』
「うっ……」

その声に黒いコートの少年万丈目は目を覚ます。

「くっ……ここは何処だ?」

万丈目は周囲を見渡す。その場所は平野で少し向こう側には市街地が見える。

「一体何がどうなったんだ……?」
『ようやく起きたか……』

その声に対し万丈目は自分が意識を失う状況を思い出す。

「そうだ、確か俺は眼帯の子供に……」

万丈目は眼帯の少女チンクからの襲撃を受けていた。
万丈目は支給品であるカードデッキの力を使い仮面ライダーベルデに変身し応戦しようとしたものの、チンクのランブルデトネイターに為す術がなかった。その時に、

『俺様に代わりな!』

その声と共に意識を失った。その声の主はもう一つの支給品である千年リング、それに宿る人格「バクラ」のものであった。
そして、今現在万丈目に話しかけているのもそのバクラである。

「おい……お前……バクラ……」
『どうした宿主サマ?』
「あの後どうなった?」
『まあ、順を追って説明するとだな……』

バクラは自分が万丈目の身体を乗っ取り、万丈目の意識を失った後の事を説明した。

あの後、ベルデの力を存分に使いチンクに深手を負わせ撤退に追い込ませた。
その後チンクが残した血痕を辿りチンクの後を追いかけた……
と、そこまでは良かったがそこからが問題であった。
途中まで続いていた血痕は途絶えたのだ。

万丈目もバクラも知らないことだが、チンクはあの後スカリエッティのアジトへ向かおうとしたが、
ベルデにコピーされたランブルデトネイターの攻撃によるダメージは大きく辿り着く前に意識を失おうとしていた。
その際に彼女を助けたのが万丈目の探し人でもある明日香……
明日香はチンクを助ける為、彼女の頼み通り彼女をアジトまで連れて行った。
明日香はチンクを生体ポッドに入れた後、彼女から聞かされた彼女を襲ったとされる『黒いコート、黒髪の男』からの追撃を逃れる為、
アジト近くにあった血痕を消し、見えなくしたのである。
故に、チンクと明日香がアジトに入ったという事はすぐにはわからなくなったのである。

その事実を知らないバクラはそこで少し思案するものの、どのみち遠くへ逃げられず、何処かに隠れているだろうと考え周囲を探したのである。

そしてバクラが万丈目の身体を乗っ取ってからもうすぐ1時間となろうとした時、


72 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 18:52:18 ID:BRWifLfy
支援

73 :闇とリングとデッキの決闘者 ◆7pf62HiyTE :2008/10/27(月) 18:53:24 ID:CFNskvXx
「どこだ?嬢ちゃんは…ん!?」

突然、景色が変わったのである。

「なんだ……どういうことだ?」

それと同時に、

「むっ……何!?」

突然、身体が動かなくなりそのまま倒れたのである。バクラ自身の意識ははっきりしていた為、再度身体を乗っ取ろうとしたもののそれは叶わなかった。
仕方がないとバクラは万丈目を起こしていたのである。そして、現在に至る……

「何!?俺様の身体を乗っ取っていただとぉ!?」

その話を聞いた万丈目はまずバクラが自分の身体を乗っ取っていた事実に憤慨していた。

『おいおい怒るなよ宿主サマ』
「これが怒らずにいられるか!」
『俺様が宿主サマの身体を借りてなけりゃ今頃宿主サマは死んでいたぜ』
「ぐっ……」

あの状況下でバクラが万丈目の身体を乗っ取らなければチンクのランブルデトネイターによって万丈目が殺されていた可能性は高い。万丈目自身もその事実を認識している……

「だが、自分の身体を好き勝手されるのはいい気がしない。」
『安心しな、どうやらこの場じゃそんな長時間宿主サマの身体を借りれそうにねぇし、一度借りたら暫くは借りることはできねぇみたいだ』
「暫くってどれぐらいだ?」
『さぁな、何だったら今試してみるか?』
「やるな!」
『やりゃあしねぇよ、ここで代わってしまっていざって時に代われなくなったら困るだろ?』
「むぅ……」

いざという時でも代わられたくはない……万丈目自身そうは思ったものの、現実問題バクラに助けられたのは事実である以上、万丈目はそれ以上は口にしなかった。
もっとも、万丈目の考えはバクラには筒抜けであるが……

「それであの子供は?」
『残念だが逃げられちまったよ……だが、恐らく奴は仲間と合流したんだろうな』

チンクの状態から血痕を消して逃げるという事はまず考えられない。
となれば、途中で血痕が消えた理由はただ1つ、途中で仲間と合流しその仲間が追撃を逃れる為血痕を消したのだろうと……
勿論、万丈目もバクラもその仲間が明日香である事など知るはずもない。

「そうか……」

万丈目は半分安心し、半分焦りを感じていた。安心というのは人をそれも自分の知らない所で殺さずに済んだということ、
焦りというのはミラーモンスターの執行猶予が迫りつつあるということである。
バクラの話から変身時間は数分であるだろうが、それでも最大で12時間しかない時間を大量に消費した事には変わりはない。
一刻も早く何かしらの対策を考えねば、自分が人を殺す、もしくは自分が襲われることになるのだ。
無論、万丈目の焦りなどバクラには手に取るようにわかる。

『焦っても仕方がねぇよ、それよりこれからどうするかだ』
「そうだな……それよりここは何処だ?」
『それは俺様が聞きてぇな。地図を見ればわかるだろ?』
「ああ……」


74 :闇とリングとデッキの決闘者 ◆7pf62HiyTE :2008/10/27(月) 18:57:30 ID:CFNskvXx
万丈目はコンパスを片手に地図を広げる……
そして東側に市街地があり、南北を見ても施設や海は見えない事から自分のいるエリアがC-1かD-1である事まではわかった……しかし、

「どういうことだ?」
『どうした宿主サマ?』
「俺は確か森にいたはずだぞ、いつの間にここまで移動したんだ?」

そう、万丈目は森の中にあった廃墟……D-8にいたはずである。
万丈目自身その時にいた正確な場所は把握していなかったが、地図を見る限りどの森にいたとしてもこの場所から数キロ離れている事は間違いない。

「それに……」

万丈目は周囲を見回す。周囲には森など無くそれどころか木一本すら見えないのだ。

「ヤツが乗り移っていた間も森を彷徨っていた事は間違いない……だが、ここには森の気配すらない……何故だ……」

バクラの言葉が事実であるならば、万丈目は森を抜ける直前までは森にいたことになる。
そして仮に森を抜けた直後に憑依が解けたとするならば、すぐ近くに森が見えるはずである。
しかし、この周囲には森は見えない。
バクラが万丈目に嘘を吐いているという可能性を考える……正直な話、万丈目自身バクラに対して完全に信用をしているわけではない。
だが、少なくても今の話に関しては信じて良いだろう。何故ならここで嘘を吐いても万丈目及びバクラにとってメリットは無いからだ。
自由に憑依が出来ない以上、宿主となっている万丈目にとって不利となる事は極力避けるべきであろう。万丈目の危機はそのままバクラの危機に直結するからだ。

では、真実とするならばこれはどういうことなのか?
万丈目はもう一度バクラの話を思い出す。

「(眼帯の子供を追って森を探した……その途中……この場所に……移動した!?馬鹿な……瞬間移動したとでもいうのか?魔法か何かか?)」
『いや、その可能性は無いな。本当に突然変わったんだ。』
「俺の考えを読むな!」

浮かんだ仮説をすぐさま否定されつつ万丈目は考える。

「(突然変わった……森から平野に……)」

万丈目は再び地図を見る。地図を見る限り中央部が市街地、その周囲の北側と東側に森があり、西側は平野となっていて、南西には海といった地形となっている。

「(つまり、地図を見る限り東側に森が、西側に平野があるということだな……待てよ!)」

万丈目はコンパスを見る。そして、

「バクラ、一つ確認して良いか?」
『どっちの方向から来たかか?』
「だから俺の考えを勝手に読むな!……ああ、それをもう一度頼む」
『市街地とは逆の方向……西側からだ』
「……わかった西側だな。」

確認を済ませ万丈目は地図とコンパスを見る。

「つまり、俺は西からやって来たと言うことだな……だが、ここは地図を見る限り西端……そこより先には進めないはずだが……待てよ」

万丈目の脳裏にはある突拍子もない仮説が浮かんでいた。バクラもその考えには気が付いたが今度はそれを口にはしない。
万丈目は石を拾い少し西へ進む。そして足を止め、


75 :闇とリングとデッキの決闘者 ◆7pf62HiyTE :2008/10/27(月) 19:00:50 ID:CFNskvXx
「もし、俺の考えが正しければこの石は……」

と、石を投げ出した。そして石はその途中で、

「消える……」

万丈目の言葉通り、石は消えた。

「だが、本当に消えたわけじゃない……」

そして再び西へ進む……そして、突如万丈目の見える景色が変わる。平野だったそれは森のそれへと変化していた。

「この森に現れていたということだ……」

と、少し向こう側に先程投げた石を見つけた。そしてコンパスを確認し、自分が来た方角が東だというのを確認した。

「つまり……」
『マップの東端と西端は繋がっているというわけだな』
「良い所で俺のセリフを取るな!」

そう、万丈目の仮説とはマップの東端と西端が繋がっているというものである。
例えばマップの西端にあるC-1より更に西へ進めば東端のC-9に辿り着き、東端のE-9より更に東へ進めば西端のE-1に辿り着くというものである。

『で、恐らくは北端と南端も同じだろうな』
「ああ」

そして同様の事がマップの北端と南端にもいえるだろう。
北端のA-6より更に北へ進めば南端のI-6、南端のI-8より更に南へ進めば北端のA-8へと……。

「どういう理屈かは知らんがプレシアめ……何故こんな面倒なことをする……」
『何だって良いだろ、それにコイツはかえって好都合だぜ』
「どういうことだ?」
『コイツを利用すれば、上手く移動出来るってことだ』
「そうか……端と端が繋がっているということは……」

例えば、もしB-7にある温泉にいる者がH-6にある病院へ行くとする。
普通に考えればその距離は南方向に約7キロ離れている……
だが、端と端が繋がっているなら北方向へ進み南端まで移動しそのまま移動をするならば……
移動する距離は約4キロとなる……そう、約半分の移動で済むのだ。
同様にA-1の軍事基地にいる者がG-7にあるデュエルアカデミアに移動するとする。
普通なら直線距離で考えても約9キロ移動する事になる。が、端を越えて移動するならば約4.5キロ…これまた半分で済む。

「移動時間を短縮出来るということだな……」
『それに、こんな事に気付いている奴は殆どいねぇだろうな。』


76 :闇とリングとデッキの決闘者 ◆7pf62HiyTE :2008/10/27(月) 19:04:03 ID:CFNskvXx
万丈目とバクラは偶然にもこの事実に気が付いた。では、普通この事実に気付く者はどれぐらいいるだろうか?
まず、殺し合いに乗っている者は人の居る市街地のある中央を目指すだろう。
そして殺し合いを止め脱出を目指している者も誰かしらとの接触を望むだろうからやはり市街地のある中央を目指す。
彼らがエリア端に向かい、端と端が繋がっていることに気付く可能性は低い……

更に、殺し合いを恐れ人の居ないであろう端へ逃げる者はどうであろうか?
彼らの場合も恐らく気付ける者は少ないだろう。
何故なら、最初にプレシアが言った事を考えればすぐにわかるだろう。

「禁止エリアに入っても首輪は爆発する」

そう、禁止エリアに入っても首輪は爆発する……普通に考えればマップ外は禁止エリアとなる。
殺し合いを恐れる者が好き好んで禁止エリアであるだろうマップ外に飛び込むだろうか?
可能性は無いとは言いきれないがそれは低いだろう。

以上のことから、端と端が繋がっている事に気付く者は非常に少ない事となる。
そして、その事実に気付いた万丈目達はその点に置いては僅かに有利に立った事になるが……

『で、どうするんだ宿主サマ?あんまりのんびり休んでいる時間なんて無いぜ』

そう、この事実に気付いた所で万丈目の状況が変わるわけではない。刻一刻とミラーモンスターの執行猶予が迫っているのだ。

「わかっている、そんな事は……」

万丈目は再び端を越え平野に戻り、支給品の再確認を始めた。しかし、目新しい物は何一つ見つからない。
マトモに食えた物ではないカレー、ベルデのデッキ、今現在も身に着けている千年リング……そして名簿や地図等と言った基本的な支給品だ。
これらは全てチンク襲撃前に確認した物である。

しかし、万丈目は支給品の中に3つの物が無いことに気が付いた。

「今更な話だが……俺のデッキやデュエルディスクが無いな……」

そう、万丈目自身が使っているデュエルモンスターズのデッキ、デュエルディスクが無くなっていたのである。

「プレシアが言っていたな……俺達の装備は没収したと……」
『ってことは他の参加者が持っているかも知れねぇな』
「それに……」

万丈目は右腕を見る。そこには何も付けられていない。

「デスベルトが無くなっている……」

デスベルト……それは万丈目達がこの殺し合いに呼び出される前にいた異世界に飛ばされる前に身に着けさせられていた腕輪である。
デュエルをする度、そしてモンスターを召喚する度にベルトが作動し闘気や体力を奪うそれは万丈目達を苦しめていた。
そして、そのベルトはこれまでずっと外すことは出来なかった……しかし、そのベルトは今はない。

「まあ、無いならそれでいいか」

気にはなったものの、カードもデュエルディスクもない現状ではあっても無くても変わらないので、それについて考えるのはひとまず保留にする事にした。
万丈目は没収された自身のデッキの事を考える……


77 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 19:07:04 ID:BRWifLfy
支援

78 :闇とリングとデッキの決闘者 ◆7pf62HiyTE :2008/10/27(月) 19:07:12 ID:CFNskvXx
「あいつらもプレシアに……」
『相棒達が心配か?』
「俺の考えを読むな!それにあいつらなど……」

と、万丈目の脳裏にある考えが浮かんだ。

「おいバクラ、一つ聞かせろ。この戦いに呼び出される前、お前……この千年リングは誰が持っていた?」
『ああ、そういや言ってなかったな。キャロだ、宿主サマも知っているだろう』
「キャロだと……?ああ、わかった……」

なのは達の仲間にいるキャロが持ち主だという事がわかったものの、万丈目は何か引っかかりを感じたものの深くは考えなかった。

『で、そんな事聞いてどうするつもりだ?』
「お前も本来の持ち主が持っていた方が良いだろう?だから……」
『成る程、俺様やそのデッキを本来の持ち主に返そうってことだな』

万丈目が考えたのは持て余している2つの支給品、千年リングとカードデッキを本来の持ち主に返すというものである。
上手くいけばバクラにこれ以上自身の身体を良いように使われずに済むし、ミラーモンスターの為に人を殺さなければならないという状況からも開放される。
受け取った人間がカードの呪縛に捕らわれる可能性もあるが、カードデッキを知る者であれば何かしらの対処法を考えている可能性が高い。
探して実際に接触してみる価値はある、万丈目はそう考えた。

『だがよぉ…キャロは良いが、カードデッキの持ち主はどうなんだ?渡した途端にバクリ……なんて事もあるぜぇ』
「むっ……」

そう、デッキの持ち主が殺し合いに乗っている危険人物の可能性がある。当然それならば渡した直後に自分が襲われる事となり、そうなれば現状の万丈目に対処する術は無い。

『まあ、そんな奴だったら逆に襲って喰っちまえばいい話か』
「そんなことなど……」

出来るわけがない……とは言えなかった。人を殺すのは嫌だが、自分が殺されるのも嫌だからだ。
もし、そういう状況に追い込まれるならどうするかは正直わからなかった……

『どっちにしろ、人を探す必要があるな。で、どうするんだ?森に戻って嬢ちゃんを捜すか?』
「いや、街へ向かう。」

万丈目の視線は市街地に向いていた。
人が集まっているであろう市街地へ向かえば、万丈目が捜しているキャロやベルデのデッキの持ち主、そして明日香や十代達といった仲間に会える可能性が高いからだ。
少なくともチンクとその仲間を探すよりは良い手段だと万丈目は考えていた。

『まあ、街に行った方が殺し合いに乗った連中に会えるかも知れねぇからな。良いぜ、街へ行くか』

バクラもまた万丈目の考えに従う。
当初の予定ではチンクを追いかけ餌にするつもりであったが、1時間程度で憑依が解除されたり、再憑依が出来なくなったりする状況を知り、それが有効ではないと考えたからだ。


79 :闇とリングとデッキの決闘者 ◆7pf62HiyTE :2008/10/27(月) 19:10:52 ID:CFNskvXx
理由は2つ……1つはチンクを探し出して見つけた所で、チンクを餌に出来るとは考えられないからだ。
万丈目と共に地図を見たバクラはチンクが逃げた場所がスカリエッティのアジトである事を推察出来た。
では、そこに行けばチンクに出会える……その可能性は高いだろうがもう1人仲間の存在がいる。
自分が乗り移れない現状でベルデの力を十分に使いこなせていない万丈目とチンクの仲間が戦って万丈目が勝てるか……
正直な所かなり厳しいだろう、相手がどんな奴かは不明だが恐らく戦闘で長引く可能性が高い、さらに仮に勝てたとしても万丈目がそいつを餌にするかどうかは不明……
そして逃げられでもしたらここまでの行動は全て無駄になってしまう。
故に万丈目の考え通り森へは向かわず、街へ向かう。

もう1つは……ここで万丈目の信用を得た方が良いと考えたからだ。
制限さえなければ好き放題に万丈目の身体を使いデスゲームを楽しむことが出来たであろう。
しかし、制限のある状況ではそれはまず不可能……もし、万丈目の意に添わない行動を取り続ければ万丈目が千年リングを捨てる可能性は十分に高いからだ。
だからこそ、現状では万丈目の方針には極力逆らわず出来うる限り万丈目のサポートに回る……。
少々窮屈ではあるが、それがバクラにとって最も都合が良いと考えたのだ。

勿論、いざとなれば再び憑依し参加者を殺しモンスターの餌につもりではある。そうしなければリング毎自分が喰われる事になるからだ。
そういう状況であれば流石の万丈目も納得せざるを得ないだろう。
だが、それはあくまでも最終手段だ。一体どれぐらい時間をおかなければ再度の憑依が出来ないかは不明……だが、

(代わることの出来た時間から考えて……恐らく1回か2回……いや、1回しかないと考えた方がいいな……)

モンスターに襲われるまでの限界時間までに再憑依できるチャンスは1回だと考えていた。
1時間憑依したならばそれ以上の時間を置く必要があるのは容易に想像ができたからだ。
そして、最悪の事態を考えれば、次に憑依出来るのは早くて放送前後であろうと……そうなるならば、次に憑依する時こそが唯一のチャンスという事になる……

(つまり、次に代わった1時間が勝負という事になるな……)

バクラは次に憑依出来る機会が勝負だと考えていた……故に、それまでは万丈目をサポート及び誘導を行うつもりである。

と、ここまで考えてバクラの脳裏にある種の疑問がよぎる。

(そういや……奴がキャロの知り合いだったのはわかったが……何か妙だな……)

そう、万丈目の記憶の中にキャロを見たものの、そのキャロに違和感を覚えたのだ。
それは、そのキャロが千年リングを持っていなかったからだ。
更に言えば、仮にそのキャロが千年リングを持っていたとしたらバクラもまた万丈目のいた異世界にいたことになるが、少なくともバクラにはその記憶がない。しかし、

(まあ、考えてもしゃあねぇか。今はこのデスゲームを楽しませてもらうぜ……)

疑問は解消されない物の、ひとまず考えを中断することとした。まずやらなければならない事は……

『それじゃあ、街に着くまでにデッキの使い方を教えなきゃならねえな』
「何だと?」
『わかっているんだろ?コイツを使いこなせなきゃ次は宿主サマが死ぬぜぇ?それとも、また俺様に代わられたいか?』
「どちらも嫌に決まっている!」
『だったら良く聞くんだな、このデッキの使い方をよ』
「くっ……」

万丈目はバクラからカードデッキの使い方を教わりつつ考えていた。明日香や十代達、そしてなのは達といった仲間の事を……
仲間達に会えれば千年リングやカードデッキへの対処法が分かるかも知れない。そう思い、万丈目は足を市街地のある東へ進める……


80 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 19:11:55 ID:BRWifLfy
支援

81 :闇とリングとデッキの決闘者 ◆7pf62HiyTE :2008/10/27(月) 19:14:25 ID:CFNskvXx
そして……

(あいつらはどうしている……?)

頭に浮かぶのは三匹の小さいモンスター……ノース校やアカデミアで出会い、共に戦った彼ら……
プレシアの言葉通りならば恐らく誰かの支給品となっているであろう彼ら……
攻撃力が0の彼らは恐らく殆どのデュエリストからはクズカード扱いされているであろう彼ら……だが……

(奴らも探さないとならないな……)

万丈目にとっては違っていた……バクラに言われた時は否定しようとしたものの……
彼らは……

(……俺のエースモンスター達……)

それは万丈目自身彼らに対しては滅多に口にしない言葉だ……万丈目のエースモンスターである三匹のおじゃま達へ想いを馳せ万丈目は歩き続ける……

デュエリスト万丈目サンダーの戦いが始まった。



【1日目 黎明】
【現在地 D-1 平野】
【万丈目準@リリカル遊戯王GX】
【状態】健康、五時間バクラ憑依不可
【装備】千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです
【道具】支給品一式、カードデッキ(ベルデ)@仮面ライダーリリカル龍騎、ルーテシアのカレー@闇の王女
【思考】
 基本 殺し合いには乗りたくない。仲間達と合流し、プレシアに報復する
 1.東にある市街地へ向かい、キャロやカードデッキの持ち主を捜し、千年リングとカードデッキをどうにかする
 2.仲間(理想は明日香)達との合流
 3.できればカードデッキに生贄を捧げたくない
 4.余裕があればおじゃま達を探したい
【備考】
 ※チンク(名前は知らない)を警戒しており、彼女には仲間がいると思っています
 ※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました
 ※デスベルトが無い事に疑問を感じています
 ※バクラの知るキャロと、自分の知るキャロについて若干の疑問を感じています
 ※千年リングを装備したことにより、バクラの人格が目覚めました
  基本 このデスゲームを思いっきり楽しむ
  1.万丈目をサポート及び誘導する。その為に万丈目にカードデッキの使い方を教える
  2.いざというときは万丈目に憑依し、確実に参加者の誰かをバイオグリーザの餌にする
  3.可能ならばキャロを探したいが、自分の知るキャロと同一人物かどうかは若干の疑問
  備考:※千年リングの制限について大まかに気が付きましたが、再憑依に必要な正確な時間はわかっていません。最低でも放送前後までは無理だと思っています
     ※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました

【デスベルトについて】
十代達デュエルアカデミアの生徒(このロワでは十代、万丈目、明日香、レイが該当)が異世界に飛ばされる前にプロフェッサーコブラによって右腕に付けさせられた腕輪
デュエルを行ったり、モンスターを召喚するとデスベルトが作動し闘気や体力が吸い取られてしまう
これまで外す事は出来なかったが、このロワでは他の装備品同様外され没収された模様

82 : ◆7pf62HiyTE :2008/10/27(月) 19:17:30 ID:CFNskvXx
無事投下完了しました。支援の方ありがとうございました。

ちなみにタイトルの元ネタはPCゲームの「ヤミと帽子と本の旅人」です。

83 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 20:29:09 ID:5+x1c1J0
GJ!
遂に使われたか、マップ端の設定w
前回同様、良考察SSでした!

84 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/28(火) 02:09:09 ID:Qfl/JM9e
投下乙です。
おお、とうとうマップのループに気づく奴がw
バクラが不安材料だが、万丈目サンダーに期待w
さりげなくおじゃま達の事を気に掛けるところも良かった。

85 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/10/28(火) 21:26:56 ID:71EXMz/l
なのは(大)、金居、ペンウッド、弁慶分、投下します

86 :不屈の心、無双の龍 ◆9L.gxDzakI :2008/10/28(火) 21:27:49 ID:71EXMz/l
 ――我が声に応えよ。

 我こそは強靭にして無敵。あらゆる敵を打ち砕く最強の龍。
 我が爪は剣となりて敵を裂き、我が牙は槍となりて敵を穿つ。
 いかなる障壁であろうとも、我が剣呑なる刃の前では無力。全てがただ、悉く塵へと還るのみ。
 我が息は灼熱。
 全てを焼き尽くす真紅の炎。全てを熔かし尽くす必殺の炎熱。
 堅牢なる鋼鉄であろうとも、ひとたび我が業火を浴びせれば、たちどころに昇華するであろう。
 我こそは強靭。
 我こそは無敵。
 我こそは最強。
 幾多の雑兵どもが立ちはだかろうと、我の行く手を阻むことは叶わぬ。
 惰弱な攻めは我が鎧を通さず。脆弱な守りは我が力を防げず。
 我の通りし道筋には、灰色の死体が列を成す。全てが等しく蹂躙され、ただただ屍と成り果てるのみ。

 故に我は背負うのだ。

 何物にも屈さぬ覇者の名を。
 数多の屍で固めた名を。

 “無双龍”の二つ名を。

 天下無双。
 その名を冠する者に敗北は許されぬ。
 覇者は覇者でなければならぬのだ。何物にも勝る存在でなければならぬのだ。
 故に、我は欲する。
 あの者との戦いを。
 我を退け、我が契約者を屠った男との戦いを。
 我に敗北は許されぬ。ましてや、かようにか細き男になど。
 退いては我の名が廃る。屈しては我が矜持が廃る。

 我に応えよ。

 我に力を授けよ。
 我に贄を捧げよ。

 さすれば我は立ち上がり、咆哮と共に再び牙をむくであろう。
 常勝無敗のこの力、今こそあの者に教えてやる。
 何ゆえ我が無双たるか、今こそあの者に知らしめてくれる。

 我が声を聞け。
 我が力となれ。
 我をこの鏡の檻より解き放て。

 仮面ライダーよ。
 契約の戦士よ。

 我は龍。
 灼熱操りし赤き龍。

 無双龍――ドラグレッダー。

87 :不屈の心、無双の龍 ◆9L.gxDzakI :2008/10/28(火) 21:28:47 ID:71EXMz/l


 太陽が顔を出し始め、眩い陽光がゆっくりと差し込む。
 早朝とはいえ、まだまだ生徒達が登校し、賑やかな声に溢れるには早いだろうか。大体そういった頃合の時間。
 なのは達が学校へと辿り着いたのは、ちょうどその頃だった。
 きっかけはほんの偶然だった。
 たまたまそちらへと向けた視線に、常軌を逸した光景が飛び込んできた。
 天空駆ける真紅の巨龍。それと戦う小さな人影。
 この校庭の上空で繰り広げられた激戦。人外と、それと渡り合う人間の存在。
 悪い予感を覚えぬはずがなかった。いかに殺し合いの舞台といえど、あの光景は異常だったから。
 何ゆえあれほどの化け物がここにいるのか。
 何ゆえあの人影は化け物と戦えるのか。
 何ゆえあの龍は人間相手に叩き落とされたのか。
 そして、彼女が走る理由はそれだけではない。
 何故か胸騒ぎを覚えるのだ。何故か言い知れぬ不安に駆られるのだ。
 たとえるならば、そこで大切な誰かの命が、今まさに失われんとしているような。
 乱れた息を整えることもせず、校門をくぐって一直線。
 全ての答えを知るために、なのはは龍の落下した校庭へ向かう。
「……何、これ」
 そして、見た。
 戦闘の結果を。
 虐殺の現場を。
 やがてなのはの背後に迫る、新たな足音が3つ。これまでに見つけた協力者。とはいえ、彼女がその存在に気付けたかどうか。
「何だこりゃあ……」
 禿頭の巨漢――武蔵坊弁慶が、3人の中で真っ先に口を開いた。
 4人の目の前にあるものは、3つ
 頭を引きちぎられた黄色い恐竜。
 胸を貫かれた赤い恐竜。
 盛大にぶちまけられた鮮血の血溜まり。
「ひどいもんだな」
 誰がどう見ても理解できる、分かりやすい戦闘跡を見て、金居が小さく呟いた。
 2匹の小さな恐竜は、既にどちらも息絶えている。黄色い方からは確認できなかったが、赤い方にはあの首輪があった。
 爆弾の埋め込まれた金属の首輪。すなわち、この殺し合いの参加者の証。
 何故彼らのような人外までもが、このデスゲームに参加させられたのかは知らない。
 それでも確かなことはある。
 あの巨大か龍か、あの小さな人影。彼らはそのどちらかに殺されたであろうこと。
 そのどちらもが、現在この場所に影も形も見えないということ。
 そして血の池を作った、本来あるべき3つ目の死体もまた、忽然とその姿を消していたこと。
「い、一体誰が、これを――」
「――決まってる! 俺が見たあの銀色の鬼だ!」
 ペンウッドの声に被せるようにして、弁慶が苛立った叫びを上げる。
 黄色いパイロットスーツに包んだ巨漢を、どすどすと音を立てるようにして歩ませた。
 そして、その足が止まる。その腕が伸びる。
 筋骨隆々とした右腕が、頭蓋なき黄色い恐竜の身体をつまみ上げていた。
「俺はさっき目の前で、そいつにこの喋るこいつを横取りされたんだ!」
 血みどろの爬虫類の身体を指差しながら、怒声を発する。
「横取り?」
 微かに怪訝そうな表情を浮かべ、金居が尋ねた。
 その言い回しは確かに気になる。
 状況によっては、これまで味方だと思っていた相手が、実は殺し合いに乗っていた人間でした、という展開になりかねない。
「おう。初めはこいつのこと、ただのトカゲだと思ってたんだ。せっかくだから獲って食おうとしたら、その鬼に奪われたってわけよ」
 言いながら、弁慶は視線を動かす。
 そして、赤と黒の体色を持った、もう1匹の恐竜を見据えた。正確には、首輪の巻かれた首元を。

88 :不屈の心、無双の龍 ◆9L.gxDzakI :2008/10/28(火) 21:29:50 ID:71EXMz/l
「だが、似たようなこの赤いのに首輪がついてる以上、実際はこいつも参加者だったのかもしれねぇ。
 あんまり頭のよくない俺でも、それくらいは分かる。こいつも俺達のように、この下らねぇゲームに巻き込まれたのかも、ってな……」
 反省する。
 ろくに首輪を確認せず、ただ見た目が人間でなかったという理由だけで、恐竜の命を奪おうとしたことを。
 それが自分達のように、人格を持った個人であるという可能性も考えもしなかった、己の軽率な判断を。
 一歩間違えば、再び殺人鬼になっていたのかもしれない自分を。
「……だがよぉ……」
 そして、それを上から塗り潰すものがある。
 後悔を覆い隠すほどに、大きく煮えたぎる感情がある。
「だったらなおさら許せねぇ! この俺の目の届かねぇところで、あいつはこいつらを皆殺しにしたんだ!
 俺が守れたかもしれねぇ命を、容赦なく踏みにじりやがったんだ!」
 それは怒り。
 胸の中で轟々と渦巻く、マグマのごとき灼熱の憤怒。
 救えたはずの命を取りこぼしてしまった自分への。
 そしてそれ以上に、その命を奪った銀色の鬼へと。
「あの野郎……絶対に許しちゃおけねぇ!」
 膨れ上がった怒りは憎悪へと変わる。
 烈火のごとき眼光を放った弁慶は、怒号と共になのは達へと向き直る。
 あの銀色の鬼を追いかけるために。
 犯した過ちの痛みを、そっくりそのまま返すために。
 人でなしの鬼どもに、遠慮する理由などどこにもない。
「今すぐ行くぞ! まだ近くにいるかもしれねぇ……あの鬼は俺が――」

「――ちょ、ちょっと待ってくれないか?」

 冷水を浴びせられた心地がした。
 熱を孕んだかのような弁慶の怒声を、不意に遮る声があった。
 自信なさげに震えながらも、怒れる破戒僧よりは、遥かに冷静な響きを持った声が。
「……んだよ、ペンウッドのじいさん?」
 言葉を中断させられたことで、やや不機嫌そうな表情を浮かべた弁慶が問いかける。
 今まさにその声を放った、おどおどと震える老人へと。
「そ、それじゃおかしいんじゃ、ないかな?」
「だから、何がだよ?」
「本当にその鬼がやったのなら、何でその場ですぐに殺さなかったんだ?」
 ペンウッドの声に、傍観していたなのはがはっと目を見開く。
 確かに怒れる弁慶の声を聞いていた時には、何の疑問も浮かぶことはなかった。
 だが言われてみれば奇妙な話だ。鬼という怪物が彼の言うとおりの存在なら、何故最初に会った時点で殺していなかったのか。
 目標を殺さずに連れ去るという知性を、何故発揮することができたのだろうか。
「そりゃあ、その……獲っておいて、後で食おうとしてたんじゃないか?」
 指先でぽりぽりと頭をかきながら、弁慶が難しそうな顔で答える。
 先ほどまでの激情はなりを潜め、今では教師に叱られた小さな子供のようだ。
「で、でも、それっておかしいじゃないか。鬼に知性がないなら、そんな回りくどいことはできないと思う、けど」
「そうなのか? そう言われりゃ、そんなような気も……」
「――おっさん、意外と使えるんだな」
 2人のやりとりの間に、今度は金居が割って入った。
「俺も大体、同じように思っていた」
 正直これまで、ただおどおどとしているだけの無能な親父とばかり思っていたペンウッドが、自分と同じ結論を割り出せた。
 その事実に対して若干の感心を覚えながら、男は再び言葉を紡ぎ始める。

89 :不屈の心、無双の龍 ◆9L.gxDzakI :2008/10/28(火) 21:31:01 ID:71EXMz/l
「そもそも弁慶の言っていた鬼だが……正直、お前と同じように、この恐竜が参加者だと気付かないとは思えない」
「そりゃ、どういうこった?」
「そいつはこの殺し合いの中に、人間以外の連中が混ざっている可能性に気付いている。自分自身がそうだからな。
 だったら自分以外の非人間を見ても、『こんな奴が参加者のはずがない』と思うことはない。俺だってそうする」
 実際、金居は2匹の恐竜を見た時点で、それが参加者であるということに気付いていた。
 首輪のある赤い方はともかく、首輪のない黄色い方も、だ。
 自分だって、人間とは異なるギラファアンデッドであり、すなわち人外の化け物である。
 そしてここは、様々なパラレルワールドから参加者の集められた場所。
 ならば他の世界から、そこに暮らしている化け物が呼び寄せられていてもなんら不思議ではない。
 要するに、自分が元いた世界における、自分の立場と変わらないのだから。
「そしてその銀色の鬼……そもそも本当に鬼だったのか?」
「へ?」
 金居の問いかけに対し、弁慶は間抜けな声と顔で返す。
「この黄色いトカゲや俺にしても、ペンウッドのいう吸血鬼にしても……この場に集められた人外は、皆一定以上の知性を持ち合わせている。
 それこそ、少なくとも人間レベルのだ。……実際、トカゲは言葉を喋ったんだろ?」
「ん……あぁ」
 弁慶がうなずく。
「なら、それで決まりだな」
 トカゲの発する声を、人間の弁慶が言葉として認識した。人間が用いる言語レベルの言葉として。
 つまりその黄色い恐竜は、人間と同程度の言語を用いる――すなわち、人間と同レベルの知性を持ち合わせている。
「それに、だ……そもそも人間の殺し合いに、人間以下の知性を持った連中を入れたら、プレシアから見ても面白くはならない。
 つまり、人間以下の鬼は、まずこの殺し合いに混ざることはない。
 となると、銀色の化け物は鬼ではなく、トカゲを食おうとしたわけでもなく――」
「トカゲさんを、弁慶さんから助けようと……した?」
「恐らく、正解」
 間に入ったなのはの声を、金居が肯定した。
 もしも銀色の化け物が恐竜を殺そうとするのなら、そのまま連れ去るメリットはどこにもない。
 食うわけでもないのだし、持ち歩きには邪魔になる。抵抗を受ける可能性もある。
 つまり、銀色の化け物の目的は真逆。恐竜を殺そうとしていた弁慶の魔の手から、彼を救い出そうとした。
「じゃあ、ここでトカゲどもをブッ殺した奴も……」
「その銀色じゃないな。もっとも、何でそいつがここにいないのかは分からないが」
「ふぅ……危なかった」
 思わず、なのはが安堵の声を漏らす。
 もしもこのまま金居の考えを聞かず――否、そもそもそれ以前に、ペンウッドが制止の声をかけていなければ、
 自分達は取り返しのつかない事態を招いていたかもしれなかった。
 銀色が鬼であると誤解し、そのまま殺してしまったかもしれなかったのだ。
 根拠のない憶測で行動することの愚かしさを再確認し、今後にその反省を生かすべく、決意を固める。
「と、となると問題は……人影とドラゴン、どっちが彼らを殺したか、だな」
「多分、可能性は龍の方が高いな。人影がその銀色で、こいつらを龍から守ろうとしていたという可能性もある」
「だがよぅ、龍はこの校庭に落ちてたぞ。人影にやられちまったみたいに」
「もちろん、龍を倒した人影がこいつらを殺したというのも、考えられなくもない。それなら銀色は人影と別人だ。
 そもそもそれ以前に、あの龍の正体も気になるが……」
 と、金居が視線を僅かに泳がせた、その時だった。
 校庭に転がっていた、小さな直方体を。
 金色の模様の刻み込まれた小さな箱を。
 見覚えのあるアイテムを、視界の片隅に目撃したのは。
「……龍なら見つけたぞ」
 そして、呟く。
 驚愕と共に、一同が金居を注目。
 彼の手は、デイパックからそれとよく似たものを――ペンウッドから奪い取ったきりになっていたものを、取り出していた。

90 :不屈の心、無双の龍 ◆9L.gxDzakI :2008/10/28(火) 21:32:01 ID:71EXMz/l
「あれを見ろ」
 塞がれた方とは別の手で、校庭に転がるものを指差す。
「あ!」
 真っ先に反応したのはなのはだった。
 それに向かって駆け寄ると、その箱を拾い上げる。
 瞬間、彼女の感覚が捉えたものは。
 響き渡る低い唸りは。
 それによって促された視線の先で、校舎のガラスに映し出されていたのは。
「……あの子の時と、同じ……!」
 ミラーモンスター・ドラグレッダーの姿がそこにあった。
 蛇のような赤い巨体を、苦しげに横たえる龍の姿が。
 思い返されるのは、ちょうど自分より1つ下程の、名前も知らないツインテールの少女だ。
 彼女は今なのはが持っていたものと、同じようなケースを持っていた。
 鏡に映る巨大な龍と、同じような化け物を呼び出していた。鏡のように像を映す血溜まりから。
「これでそいつの正体は分かった。さっきのコブラと同じ、支給品から呼び出されるモンスターだ」
 なのはの背後から、金居の声が響く。
 あの赤い巨龍は、柊かがみがそうしたように、カードデッキから召喚されたミラーモンスター。
 何者かによって、何らかの理由によって呼び出され、あの人影と戦った。
 そして、負けた。かがみの呼び出した魔物・ベノスネーカーが、金居相手に後退を余儀なくされたように。
 その瞬間を目撃していたペンウッドの理解は早かったが、弁慶は相変わらず首をかしげている。
 無理もない。彼はこのチームでただ1人、モンスターと金居の戦いを目撃していないのだ。
 それを悟った金居が、ため息混じりに自分のカードデッキ(を模したレプリカ)を握らせる。
 唐突に姿を現した龍を見て、弁慶は「わっ」という声と共に跳び上がった。
「そいつを呼び出した側と、呼び出された側……どっちがこいつらを殺したのかは分からない。
 ただ、こいつがあのコブラと同じなら、恐らくこいつを従えてた奴も既にやられてる。どの道、あの人影は誰かを殺したことに――」
「――ねぇ」
 不意に、金居の声を、なのはが遮る。
 その瞳は彼を見ていない。それどころか、ペンウッドや弁慶さえも。
 ただ窓ガラスに映し出された、巨大な龍の姿を、じっと真っ向から見据えている。
「何というか……この子、すごく悔しそうな顔してる」
 呟くなのはの顔は、沈痛な色に染まっていた。
 もちろん、表情から何かが分かるわけではない。爬虫類の顔から感情など、そうそう読み取れるものではない。
 だが、気配で分かる。
 その身を横たえながらも、時折何かを訴えるようにくねらす様から。微かに、しかし何かを語るように吐き出される苦鳴から。
 何よりも、じっとなのはの瞳を覗き込む、その黄金の眼差しから。
「負けたことが悔しい」
 言いながら、なのはがその歩を進める。
 1歩、また1歩。ドラグレッダーの姿を映す校舎に向かって、真っ直ぐに。
 少しずつ、だが着実に。
 真紅の無双龍が語る言葉を、その身に受け止めようと構えながら。
 再び戦いたい。
 自分を倒した奴と戦いたい。
「貴方を呼んだ人の……仇を取りたい。そう、言ってるんだよね」
 この龍が、カードデッキを持った者の呼びかけに答える存在ならば。
 龍が負けているならば、これを持っていた者もまた敗北したということだ。
 なのはの手が、ガラスに触れていた。
 なのはの目が、龍の目と鼻の先にあった。
 青と金の瞳が、ゆっくりと向き合っていた。

91 :不屈の心、無双の龍 ◆9L.gxDzakI :2008/10/28(火) 21:32:52 ID:71EXMz/l
「……この子も連れて行こう」
 言いながら、なのはがゆっくりと振り返る。
「なっ……本気で、言ってるのか? その……危ないんじゃ、ないか?」
 まず最初に口を開いたのはペンウッドの言葉だ。
 かがみの呼び出した、ベノスネーカーとメタルゲラスの脅威は、未だ彼にとって記憶に新しい。
 あの時は金居が、ギラファアンデッドに変身して退けてくれた。だが、そうそう何度も危険に晒されてはたまらない。
 そもそもドラグレッダーの巨体は、それらよりも何倍も大きいのだ。視覚から感じられるプレッシャーは相当なものだった。
「大丈夫。この子なら、きっと大丈夫ですから」
 それでもなのはは、確かな意志と共に言葉を紡ぐ。
 根拠はない。それこそ先ほど危惧した憶測とも、何ら変わらないかもしれない。
 だが、この巨大な龍の放つ何かが、なのはにそれを確信させる。
 この龍は、自分達に牙をむくことはない。少なくとも、もっと大事な目的を果たすまでは、自分達に力を貸してくれる。
 誇り高き無双龍の気配が、なのはに強い確信を抱かせる。
「……そうだな。そもそも俺達を食うつもりなら、なのはがそれを持った時点で、とっくに襲い掛かってきてる」
 ツインテールの娘の例に倣うならば。
 背後から金居がその言葉を放ったとき、それはすなわちなのはの意志の肯定を意味した。
「危ねぇ奴かもしれねぇが、手綱持ってりゃ戦力にはなるだろうしな」
「……ん……分かったよ、うん」
 最後に弁慶が、同じく合意を示す。それで観念したのか、ペンウッドもまた、遂に彼女の意志を認めた。
「ありがとう」
 笑顔と共に感謝すると、なのはは再び校舎を見上げる。
 そこに並べられた窓ガラスへと。その境界からこちらを見つめる、大いなる赤き巨龍へと。
「一緒に行こう」
 静かに、だが確かな覇気を込め。
「もう二度と……その人のような犠牲を出したりはしない!」
 無双龍ドラグレッダーの唸りは、彼女には力強い頷きのように聞こえていた。



 新たにカードデッキを手にした高町なのはは、実は1つの誤解を抱えている。
 このドラグレッダーにとっては、実際、契約者の死はどうでもいいことだった。
 ただ自分を倒した者――アーカードとの再戦さえできれば、クロノ・ハラオウンのことはどうだっていいのだ。
 そしてなのはは、ミラーモンスターにとってあまりにも無知だった。
 カードデッキを鏡にかざすことで、仮面ライダーへと変身できること。
 常に人を食わせ続けなければ、契約者を食らう諸刃の剣であること。
 赤き龍の存在は、いつか彼女にとって呪縛になるかもしれない。
 しかしなのはは、誇り高き管理局の魔導師である。
 ドラグレッダーの誇りが本物ならば、なのはが正義にかけた誇りも本物だ。
 であれば、なのははその力を、己が信ずる正義の下に振りかざす時が来るかもしれない。
 無双龍を従える戦士――仮面ライダー龍騎は、そういう男だったのだから。
 そして何より。
 ドラグレッダーの無双の名が、最強の称号を指すのならば。

 ――仮面ライダーの名もまた、正義の味方の証なのだから。

92 :不屈の心、無双の龍 ◆9L.gxDzakI :2008/10/28(火) 21:33:56 ID:71EXMz/l
【1日目 早朝】
【現在地 D-4 学校】

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、プレシアに対する怒り
【装備】グロック19(14/15+1発)@リリカル・パニック
【道具】カードデッキ(龍騎)@仮面ライダーリリカル龍騎
【思考】
 基本:誰の命も欠かす事無く、出来るだけたくさんの仲間を集めて脱出する。
 1.なんとしてもヴィヴィオを救出する。それは何よりも優先。
 2.工場に向かい、首輪解除の手がかりを探す。
 3.出来る限り全ての戦えない人を保護し、仲間を集める。
 4.この龍(=ドラグレッダー)の契約者のような犠牲は絶対に出さない
 5.さっきの子(柊かがみ)はどうするんだろう……?
 6.アリサの思いと勇気は、絶対に無駄にはしない。
 7.龍を倒した人影(=アーカード)を警戒
【備考】
※金居の事は多少警戒しています。
※エリオが死んだという話は信じていません。
※カードデッキの説明書を読んでいません。
 カードデッキの特性について知っているのは、「契約モンスターを呼べる」ことくらいです。

【シェルビー・M・ペンウッド@NANOSING】
【状態】健康、若干の不安
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品(未確認1〜2)、おにぎり×10
【思考】
 基本:自らの仕事を果たす。
 1.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
 2.この龍は本当に大丈夫なんだろうか?
 3.アリサという少女の思いは無駄にしてはいけない。
 4.龍を倒した人影(=アーカード)を警戒
【備考】
※少なくとも第四話以降の参戦です。

【金居@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康、変身による疲労(中)
【装備】なし
【道具】支給品一式、カードデッキの複製(タイガ)@リリカル龍騎、砂糖1kg×10、ランダム支給品(未確認1〜3)
【思考】
 基本:首輪を解除し、このゲームから脱出する。
 1.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
 2.利用できるものは全て利用する。邪魔をする者には容赦しない。
 3.脱出の為ならば、人間と手を組むのも仕方がない。
 4.ジョーカーは出来ればこの戦いの中で倒してしまいたい。
 5.もしもラウズカード(スペードの10)か、時間停止に対抗出来る何らかの手段を手に入れた場合は容赦なくキングを殺す。
 6.龍を倒した人影(=アーカード)を警戒
【備考】
※このデスゲームにおいてアンデッドの死亡=カードへの封印だと思っています。
※最終的な目的はアンデッド同士の戦いでの優勝なので、ジョーカーもキングも封印したいと思っています。
※どちらかと言えば悪者側よりも仮面ライダー側に味方した方が有利だと思っています。

93 :不屈の心、無双の龍 ◆9L.gxDzakI :2008/10/28(火) 21:34:36 ID:71EXMz/l
【武蔵坊弁慶@ゲッターロボ昴】
【状態】健康、満腹
【装備】閻魔刀@魔法少女リリカルなのはStirkers May Cry
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0〜2
【思考】
 基本:殺し合いを止め、プレシアを打倒する(どうやって戦うかは考えていない)
 1.スバル、ティアナと合流。
 2.軍事基地か地上本部に行き、ネオゲッターロボの所在を確かめる。
 3.龍を倒した人影(=アーカード)を警戒
【備考】
※5話終了後からの参戦です。
※自分とスバル、ティアナ、隼人の4人は、ネオゲッターロボごとここに送り込まれたのだと思い込んでいます。
 また、隼人がどうして参加者の中に居ないのかという疑問を持っています。
 隼人がこのゲームに関わっていない事を知りませんし、スバル・ティアナの来た世界が自分とは違う事も知りません。
※銀色の戦士(ミライ)が鬼ではないことに気付きました。


【チーム:少し、頭冷やそうか】
【共通思考】
 基本:首輪を解体し、このゲームから脱出する。
 1.工場に向かい、首輪解除の手がかりを探す。
 2.戦えない者は保護していく。
【備考】
※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。
※なのはの話から、プレシア・テスタロッサについて大体の情報を得ました。
※チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
 敵対的:アーカード、アレクサンド・アンデルセン、相川始、キング
 友好的:機動六課組、インテグラ・ヘルシング、天道総司
 要注意:クアットロ
 また、アーカードについてはインテグラと合流出来れば従わせる事が可能だと判断しています。

94 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/10/28(火) 21:37:36 ID:71EXMz/l
投下終了。
直前に遊戯王を見ていたので、何だかドラグレッダーが妙なノリになってしまいましたw

なのはが現時点においてほとんど戦う力がなかったので、龍騎のカードデッキを持たせてみました。
本当に龍騎に変身できる時が来るかどうかは、現時点では不明ですがw
それどころかドラグレッダーが他の人間を食いにかかった時を考えると……(ぉ

95 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 00:43:41 ID:PY9Tuief
投下乙&GJです!
ドラグレッダーはまたしても正義感の強い参加者に託されたかw
果たしてなのはは龍騎原作のようにドラグレッダーとの友情を築く事が出来るのか。
参加者を食わせなければならないというデメリットに、なのははどう対処するのか。
先が気になる展開でした。

ひとつ気になったのですが、金居が最初に変身したのが深夜で、現在の時刻が早朝。
少なくとも5時間は経過し、1時間変身不可も既に解けているのに、未だに
変身の疲労が残っているというのは少し不自然ではないでしょうか?
変身制限は解除されても、その後5時間疲弊しっ放しというのは、流石に長すぎると思うのですが。

96 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/10/29(水) 02:16:11 ID:e3LJhH+V
わちゃー、すみません。その部分完璧に見落としてましたorz
Wikiに保管される方、変身による疲労の部分は、削除でお願いします。

97 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 09:32:15 ID:MvZ9ZaPJ
投下乙です。
ドラグレッダーの誇りを傷つけた者は許さんという気概でしょうか……でももう一回戦っても返り討ちになりそう。
あの消極的なペンウッドがまさか誤解を解くキーマンになるとはw
なのはも武器(ってどっちかって言うと爆弾?)を手に入れて決意新たにですね。

少し指摘を。
前話でなのは達が見たドラグレッダーですが、人影が見えたのはあくまで「そんな気がする」程度なので作中のようにはっきり見えるのはないかと。
人影の部分は前話同様はっきり分からないようにした方がいいと思います。

98 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/10/29(水) 12:03:59 ID:e3LJhH+V
了解しました。では近日中に、修正版を仮投下スレに投下することにします。
少々時間がかかると思いますが、本来の投下期限である土曜日には間に合わせるよう頑張りますので、もう少しお待ちください

99 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/10/30(木) 14:40:52 ID:NVwf8pNK
修正版が思ったよりも早く投下できました。
そして、これよりこちらでも、以前ボツスレに投下したディエチ、ナイブズ分を投下します

100 :ピカレスク ◆9L.gxDzakI :2008/10/30(木) 14:43:49 ID:NVwf8pNK
 ――悪役、とは一体何だろう。

 悪とはすなわち、社会において否定されるべきもの。道徳や法律などといった、世界の正義に反するものだ。
 その行いを為し、社会から憎まれ、忌み嫌われる存在が、総じて悪役と呼ばれるようになる。
 であれば彼女は、物語の本筋から見れば、れっきとした悪役となるのだろう。
 世界のルールに背いた。正義の存在に反逆した。多くの人間を傷つけた。
 たとえその胸中がいかなるものだとしても、客観的に見れば、彼女の存在は悪でしかない。彼女はそうして生きてきた。

 それでも、今、この場においては――



 がちゃり。
 金属の音が鳴り響く。
 腰まで伸ばした栗毛の長髪をたなびかせ、ディエチは自らの得物を油断なく構える。
 戦闘機人ナンバー]の引き金・イノーメスカノン。
 トリガーから伝わってくるのは、身の丈を遥かに凌ぐ長砲の冷たい重量感だ。
 そしてその重みを、ディエチは一種の安堵と共に受け止める。
 この重さが、この冷たさが、今まで自分を支えてきてくれた。物言わぬ鋼の相棒と共に、戦場で戦い抜いてきた。
 だが、それもこれまでなのだろう。
 ミリオンズ・ナイブズ。ディエチにとっては名すらも知らぬ、短い金髪の男。
 その左腕は異形だ。微かな光輝を放つ剣呑なる刃が、十重二十重と枝分かれして、その鎌首をもたげている。
 王の聖剣(エクスカリバー)は神速。先の剣速から察するに、この狙撃砲で対応するには限界があるだろう。
 加えてこの間合いだ。退却する暇を見い出すのは難しい。遠くまで逃げることはかなうまい。
 だから、この命を諦める。
 勝てない戦に変な期待を抱くのはやめる。殺されることを覚悟する。
 しかし、それは無抵抗にやられる選択肢を取るということを意味しない。
 今自分の背中には、1人の少年の命がかかっている。生まれて初めて、誰かを守るためにここに立っている。
 ブリタニアの少年、ルルーシュ・ランペルージ。
 普通の人間にしては、妙に自信たっぷりな奴だった。気障な物言いで自分を混乱させたこともあった。
 それでも、彼は凄かった。自信に裏打ちされた頭を持っていた。
 だからこそ、ディエチは彼の背に希望を見た。
 ルルーシュの才知をもってすれば、あるいは姉妹を導いてくれるはずだと。彼女らが生き残るための力となるはずだ、と。
 故に、己が命を彼に託す。
 ここで屍となろうとも、彼の命だけは守るために。彼が逃れるための時間を、一秒でも長く稼ぐために。
 ルルーシュのための弾丸となる。家族が助かるのならば、それでいい。
 高望みはしない。自分の命を守ろうとは思わない。それでも、絶望を抱いたままに屈することはしない。
 12人の姉妹の中でも、ディエチは比較的感情を表に出すことが少ないタイプだった。
 喜びも苛立ちも映さぬ平時の瞳は、どこかぼんやりとした印象さえも見受けられる。
 それでも、無口で無感動な少女は、戦場では百発百中のスナイパーだった。
 多くを語らぬ無感情な瞳は、銃を取れば冷徹な眼光へと変わる。それこそが、姉達がこのディエチに信頼を寄せる理由。
 鋭い眼差しをたたえたまま、少女は真っ向からナイブズを睨み付けた。
 永き静寂。両者は五体全てを静止させたまま微動だにしない。
 それでもこの沈黙の先には、避けられぬ戦いが待ち受けることは分かっていた。
 戦うためだけに作られた戦闘機人の、最期の戦いが、始まる。

101 :ピカレスク ◆9L.gxDzakI :2008/10/30(木) 14:47:04 ID:NVwf8pNK
 ――びゅん、と。
 空を引き裂く刃物の音が、鳴った。
 エンジェルアーム。戦闘機人と同じ超常の生命体――プラント自立種たるナイブズに与えられた力。
 その一端に過ぎぬと言えど、左腕から伸びる白刃は、一撃必殺の切れ味と速度を誇る。
 そしてその恐るべき破壊計数は、攻撃力と抜き撃ちのスピードのみには留まらない。
 展開。枝葉のように連なる無数の切っ先が、右へ左へと広がっていく。
 数多の枝を生み出す手数と、それら全てを己が四肢のごとく支配する精度。それもまた、まさしく王者の剣の力。
 轟、と。
 一斉に吹き付ける刃の突風は、決して生やさしいものなどではなかった。
 襲撃する幾千万の殺意。陽光を受けた地獄の針山が、一気呵成にディエチ目掛けて殺到する。
「チッ」
 微かな舌打ちと共に、引き金を引く。
 イノーメスカノン、フルチャージ済。出力最大の砲撃が、再び一挙に解き放たれた。
 響き渡るは爆音。撒き散らすは衝撃波。無人の街の窓をびりびりと震わせながら、灼熱の光条が一直線に伸びる。
 瞬間、横薙ぎに一閃。
 火炎放射器の要領で。さながら野球のフルスイング。
 先天的改造によってもたらされた筋力を総動員し、イノーメスカノンの砲身を強引に振りかぶる。
 刃の一端を焼いた砲撃の熱量もまたそれに追従し、扇状の軌跡を描いた。
 急激な射線修正は薙ぎ払うため。迫り来る全ての刃を、一度の砲撃に巻き込むため。
 天へ目掛けてそびえる電柱を、引っこ抜いて振り回すように。
 連射の利かない線の砲撃で、面の攻撃に対応するにはこれしかない。
 息つく暇も作らず、ディエチは自身のISを行使する。
 ヘビィバレル、発動。
 エネルギーを放出し尽くした火砲への再チャージ。素早い給弾が、彼女の寿命を占う重要な要素となる。
 ここまでのやりとりで、ディエチには1つ確信したことがあった。
 確かに敵の攻撃は速い。しかし、連射はしてこない。まばたきすら許さぬ連撃には至らず、必ず攻撃の合間に間隔がある。
 元々あった弱点ではないだろう。現に最初の1発ずつ放った斬撃は、間髪入れぬコンボをルルーシュに叩き込んでいる。
 であれば導かれる原因は1つ。奴は疲弊しているのだ。
 身体にのしかかる疲労が、攻撃を繰り出すのを億劫にさせている。ならばその隙を突けば、少なくともこうしたチャージは可能。
 問題は攻撃が来た時に、どうやって対処するかということだ。
 先ほど見せたような強引な迎撃は、もうこの男には通用しないだろう。
 次は、単純に振り回すだけではカバーしきれない攻撃が来るはずだ。
 それに、できれば自分ももうあれはしたくない。フルパワーの衝撃に耐えながら砲身をぶん回すのは、正直、しんどい。
 元より銃器とは、そんな使い方をするためには作られていないのだ。そんな無茶な攻撃法、あの高町なのはだって嫌がるだろう。
 まして、彼女に敗北したディエチがそれをやり続けるのなんて、絶対無理。
 ではどうするか。ディエチは思考する。タイムリミットは次の攻撃まで。
 考えろ。考えろ。
 一瞬にも等しき時間の最中、戦闘機人は己が脳をフル回転させる。
 チャージは完了した。しかし、大雑把な砲撃の繰り返しは意味がない。せめて素早く連射することさえ叶えば――
(――待てよ)
 はっ、と。
 瞬間、脳裏にちらつくものがあった。
 確かにこうすれば、連射性の悪さはカバーできる。元々相手の攻撃もカスールで止められたのだから、この手法でも支障はあるまい。
 見れば目前では、ナイブズが新たに4つの刃を臨戦態勢にさせていた。
 初撃が迫る。狙いは背面。
 大きくディエチの身体を迂回するしろがねの腕手が、猛スピードでディエチへと襲いかかる。
 イノーメスカノンが反転。迫る刃へと整体。必殺の大砲を構えたディエチは、先ほどと全く同じ動作でトリガーを引く。
 轟音と熱量を伴い、極太のビームが放たれ――なかった。

102 :ピカレスク ◆9L.gxDzakI :2008/10/30(木) 14:50:34 ID:NVwf8pNK
「?」
 弾けた銃声は、軽い。柱のごとき波動はない。
 しかし、刹那の閃光と共に、一撃目に放った刃は確実に破壊された。
 見れば目の前のディエチは、イノーメスカノンを脇に抱え込みながら、病院に向かって駆け出していた。
 これまでの大味な攻めとは異なる気配はある。しかしナイブズは更なる追撃を仕掛けた。
 間隔を空けていては、迎撃を避けようとした意味がない。このまま逃げ込まれては尚更だ。
 そして、今度こそ彼は正面から目撃する。エンジェルアームの刃を撃ち落とした、姿なき砲撃の正体を。
 撃発。煌くは小さな3つの光。
 バレーボール大の球状エネルギーが連射され、それぞれに迫り来る凶刃を叩き落とす。さながらミッド式魔法の魔力弾のように。
 これがディエチの選んだ、イノーメスカノンに連射性能を付与する手段。
 そもそも初めから、チャージされたエネルギー全てを使い切ろうとするのが間違いだった。
 フルチャージの出力を細かく分割し、低出力・短時間照射の弾丸を連続して撃つ。
 これによって、マシンガンやガトリング砲とまではいかないが、ピストル程度の弾速が確保できた。
 蓋を開けてみれば何のことはない。たったこれだけの工夫で、ある程度の速射が可能となるのだ。
 込める出力が低ければ、一発ごとの反動も弱くなる。移動しながらの発射も十分に可能。
 そしてディエチは、ここにきてようやく反撃に出る。
 先ほど撃ったのは、フルパワーの10分の1の出力。計残り6発はチャージなしで撃てる計算だ。
 トリガーを引く。かちっ、かちっ、かちっ。間髪入れずに6連射。
 猛烈な速度で放たれた弾丸が、ナイブズ目掛けて肉薄した。
「そんなものがっ!」
 されど、当たらず。
 立ちはだかるは白光の剣。
 左腕から伸びた無数の刃は、今度は盾となり、幾重にも王者の身体を覆い尽くす。
 襲い来る魔弾は鋭利な刀身に触れ、続けざまに爆散。一発、また一発と、ディエチの反撃が無駄に終わっていく。
 無論彼女とて、こうなることを読んでいなかったはずがない。
 相手の反応速度からして、正面から弾丸を命中させるのは不可能だ。
 砲身の動きから攻撃の気配を察知し、即座に鉄壁の防御を張られてしまう。
 だから、この弾幕も、攻撃そのもののために展開したわけではない。
 重要なのは、今まさにナイブズの壁に弾き返されようとしている、最後の一発が弾けること。
「――バレットイメージ、エアゾルジェル」
 ぼそり、と。
 仕掛けた罠の名を、呟いた。
 瞬間、世界が霞む。
 炸裂した弾丸が霧散し、霧は色を持ち、不透明のガスとなって視線を遮る。
「煙幕か……!」
 苦々しげに、ナイブズが吐き捨てた。
 これぞディエチの持つ特殊弾頭・煙幕弾エアゾルジェル。
 ヘビィバレルによって形成される砲撃は、何も直接破壊をもたらすものばかりではない。
 ディエチは通常弾を囮にし、最後の一発に罠を張った。弾幕の中に忍ばせた特殊弾で、一瞬ナイブズの視力を奪ってみせたのだ。
 制限によって麻酔機能こそ失われていたものの、目眩ましには十分だった。
 白い煙はナイブズの視界を染め、戦闘機人の姿を完全に隠蔽する。
 ややあって、煙幕のカーテンが完全に晴れた時には、あの暗色のナンバーズスーツは影も形もなく姿を消していた。
(面倒をかけさせる……)
 内心で毒づくと、ナイブズは病院へ向かって歩を進めた。
 こそこそと隠れる奴を捜すくらいならば、ルルーシュを追った方が面倒がないとも思えるだろう。
 しかし、ここまでに時間がかかり過ぎた。最早奴には追いつけまい。
 歩いて追うには遠すぎる距離が開いただろうし、消耗した身体で走って追うのもナンセンス。
 それよりは、病院に隠れていると分かっている奴を捜した方が楽というわけだ。
 弾頭のサイズがサイズなだけに、煙幕の持続時間は短い。そう遠くまでは移動できない。恐らく隠れるなら1階だろう。
 とすると正面から見て左か、右か。
 双方に視線を交互に飛ばしながら、ナイブズは病院のドアをくぐった。
『――間もなく最初の放送の時間だな、人間(ヒューマン)諸君?』
 北西から低い男の声が聞こえてきたのは、ちょうどこの時のことだった。

103 :ピカレスク ◆9L.gxDzakI :2008/10/30(木) 14:55:33 ID:NVwf8pNK


『ここまででもう分かっているはずだ。このデスゲームとやらに安全はない。聖域はない』
 耳障りな放送が、壁にもたれかかるディエチの鼓膜を打つ。
 毛色からして、プレシアの定時放送とはまた違うのだろう。何より、それはもう十数分ほど後にかかる予定のはずだ。
 とすればこの放送は、余程腕に自信のある奴による挑発か。
 今の自分にとっては得にもならない放送を聞き流すと、ディエチは乱れた息を整えた。
 要するにこれが、参加者にかけられた制限というものらしい。砲撃3発分のエネルギーを使っただけで、もう肩が上下してきた。
 平時に比べれば、随分とみっともない体たらくだ。もうあと5発も撃てば、この砲火も打ち止めだろう。
(ホント……何やってんだろ、あたし)
 顔に滲んだ汗を拭いながら、微かにディエチは苦笑する。
 一体自分は、何故こんなことをしているのだろう。勝ち目のない戦いに挑み、こんなに一生懸命になるなど、自分らしくもないことだ。
 常に効率よく事を運び、無慈悲に、無感情に任務をこなす。それが自分の戦い方だったはずなのに。
 柄にもなく、熱くなっているのを感じた。
 がむしゃらに突っ込むのはノーヴェの性分だったはずだ。次の一手を模索するのはクアットロの仕事だったはずだ。
 自分が戦場ですべきことはただひとつ。命令された標的に、マシーンのように銃弾を撃ち込むことだけ。
 それだけだったはずなのに、今のこの必死さ加減は何なのだろう。
 自分はこんな熱血をやるような人間でも、知識労働をするような人間でもなかったはずなのに。
(そりゃあまあ、あたしらしくはないと思うけど……)
 それでも。
(クアットロとチンク姉の命がかかってるとなれば……やるしかないよなぁ)
 吹き出したような表情をしながら、独りごちた。
 この双肩には、大切な姉妹の命がかかっている。
 長年任務を共にし、いつもいかなる時も、自分に力を貸してくれたパートナー、クアットロ。
 厳しい戦士ではあったものの、自分達下の妹達には、いつも優しく世話を焼いてくれた姉、チンク。
 どちらもディエチにとってはかけがえのない存在であり、ナンバーズ全体にとっても欠かせない存在だった。
 馬鹿の一つ覚えみたいに引き金を引くしか能のない自分よりは、遥かに大切な。
(そして……あのルルーシュって奴)
 記憶の中で、漆黒のマントが翻る。紫の瞳が真紅に光る。
 彼を守ると大見得切って、ディエチはここで殿を引き受けた。
 あの頭は、必ず姉妹の力になる。
 チンクと組めば、彼女の火力を最大限に活かした戦略を組めるだろう。
 クアットロと組めば、この殺し合いから脱する方法を見つけ出せるかもしれない。
 生き延びるべき人材は、自分のように代用の利くスナイパーじゃない。ルルーシュの得がたき明晰な頭脳だ。
 そして他ならぬ彼こそが、この状況の最大のきっかけとなっているのは間違いない。
(要するに……今、男の子のために頑張ってるんだよね、あたしって)
 人は変われば変わるものだ。
 異性のために奔走することなど、昔の自分からは到底考えられない。
 そもそも今まで自分の周囲には、スカリエッティ以外の男性はいなかったから。いや、それ以前に、友達という人種すら存在しなかった。
 ならば、短い付き合いではあったが、ルルーシュは自分にとって、初の姉妹以外の戦友ということだろうか。
(さて、と……)
 その戦友へと、想いを馳せる。
 果たして彼は今までに、どれくらいの地点まで逃げ延びただろうか。
(体力ないみたいだからなぁ、アイツ……)
 ルルーシュは典型的なもやしっ子だった。少なくとも、彼自身は運動は大の苦手だと語っていた。
 恐らく彼1人では、逃げるのには手間取るだろう。体力のある他の参加者に拾われていれば、まだ話は別だろうが。
「どうした! 羽虫のように逃げ回るだけか!」
 視線の先から、苛立った男の声が響いてくる。
 先ほどの放送はナイブズも聞いているだろう。殺し合いに乗った人間としては、人口密集地にはどうしても行きたいはずだ。
 あまり焦らしていては、自分を放り出してそちらに行ってしまうかもしれない。それでは殿の意味がない。
(やっぱりもう少しだけ、この辺で踏ん張らないとなぁ)
 内心で呟きながら、ディエチの手がイノーメスカノンを握った。

104 :ピカレスク ◆9L.gxDzakI :2008/10/30(木) 14:59:19 ID:NVwf8pNK
 しゅる、と。
 懐から長めの布を取り出す。今の今まで外していた、長髪を纏めるための黄色いボンだ。
 グリップを掴む右手へと、それをぎゅっと巻き付ける。リボンをもって、自身の手と銃を1つにする。
 この先何があろうとも、このグリップだけは手離さない。たとえこの身が砕けようと、引き金を引き続けることはやめない。
 決意が、宿された。
「――あたしは弾丸」
 囁く。
 誰にも聞き取れない音量で。微かに、しかし、確かに。
「守るべき人を守るために、障壁を撃ち貫く一筋の弾丸」
 左手に握られたのは火炎瓶。ルルーシュが柱に仕掛けたトラップから、咄嗟にいくつか拝借したもの。
「あたしは――それでいい」
 長髪が広がった。
 身を隠していた壁から左手を伸ばす。その手に握る火炎瓶は、既に導火線に火をともしていた。
 投擲。また投擲。1つ、2つ、3つ。
 遅れて来る、閃光と爆音。どん、どん、どん、と、続けざまに爆煙を巻き起こす。
 眼下のナイブズ目掛けて投げ落とされた爆薬が、次から次へと炸裂した。
 そう。ディエチが隠れていたのは、右手の廊下でも左手の廊下でもない。正面にある階段を登った先。
 すなわち、
「上かっ!」
 ナイブズが悟った時には、既に周囲には再び煙のカーテンが落とされていた。
 意表を突かれた王者は、一瞬その身を停止させる。面食らったような表情での硬直。
 場所は分かった。しかし、それも大体といったところだ。正確な位置が分からねば、攻撃は当てられない。
(そりゃ確かに、煙の中から相手を捜すのは無理だ……)
 そしてそれは、ディエチにとっても同じだった。
 いかに高度なカメラを持とうと、物理的な壁はいかんともし難い。いかに千里の目を持とうと、煙に阻まれては意味がない。
 現に元の世界でも、ヘリを狙撃した際には、爆煙の影響で確認が遅れていた。
(でも……あたしは“見た”からね!)
 しかし、それがどうした。
 狙いならとっくに合わせているのだ。
 煙が巻き起こる一瞬前に、既にターゲットの位置を脳裏に焼き付けていたのだから。
 物陰から躍り出たディエチが、重厚なイノーメスカノンを持ち上げる。
 フルチャージは完了していた。後は照準を向け、煙の中にぶち込むだけだ。
 黒光りする鋼の銃口が、灰色のベールの先に立つナイブズへと向けられる。
 一撃離脱。当たろうが外れようが、トリガーを引いた直後には移動できるように構えながら。
「小細工をッ!」
 極光。
 スモークの中で、しかし、瞬間、何かが光った。
 煙の壁を貫かんほどの眩い輝きが、ナイブズのいた辺りを中心に広がっていく。
 戦慄した。その光度が放つ、並々ならぬプレッシャーに。ごくり、と喉が鳴った。
 そしてその光に、ディエチは見覚えがあった。確かこれは、この病院に着いた時最初に見た――
「っ!?」
 途端、煙が消えた。
 光を中心として気流が渦を巻き、竜巻のごとくスモークがうねる。
 台風の目は、さながらブラックホールのように物質を吸い寄せ、自らを象る煙を食らい尽くす。
 浴槽の栓を抜いた時、中のお湯が渦巻いて流れていく様子。強いて言うならば、それが一番近いのか。
 そして、ディエチは見た。
 台風の目の正体を。
 ナイブズの左腕にかざされた、煌々と輝く異形の門を。
 これぞ、エンジェルアームの真の力。
 プラントが持つ、あらゆる物質を「持っていく力」と「持ってくる力」。この現象はその中でも前者の力だ。
 異次元へと繋がるゲートを開き、視界を濁らせる煙を追放する。まさにディエチが垣間見た、1人の少女を消した力だった。
 あっという間に隠れ蓑は剥がされ、ディエチの姿が露わとなる。
 見つかった。狙いをつけられた。
 だが――

105 :ピカレスク ◆9L.gxDzakI :2008/10/30(木) 15:02:44 ID:NVwf8pNK
(それがどうした)
 少女は引き下がらない。
 確かに奴が発揮したのは、化け物のような能力だ。人外の領域、神業をも超越した魔技。そう形容するのが相応しいのだろう。
 だがそれを言うのならば、ディエチ自身もまた人外なのだ。人を超える兵士となるべく生まれた、戦闘機人のナンバー]なのだ。
 故に、退かぬ。
 ただ、引き金を引く。
「この俺を」
 さながら押し寄せる波涛か。ナイブズの左腕から、無数の刃が一挙に解き放たれた。
「戦闘機人を」
 トリガーを引く。出力全開の殺意の熱量が、一筋の光線の形をなして襲いかかる。

「「――嘗めるなッ!!」」

 咆哮は、同時に響いていた。
 大気を刻み尽くす烈音と、空気を焼き尽くす爆音。それらが両者の絶叫に重なり、壮絶なカルテットを演出する。
 互いの攻撃は互いを掠め、暴力的な破壊計数と共にターゲットへと牙を剥いた。
 じゅう。肉の焼け焦げる音がする。ほとんど感覚すら残らぬ右腕が、光の中に消えていく。
 イノーメスカノンの砲撃は僅かに中心を逸れ、ナイブズの壊死した右腕を飲み込んでいた。
 腕が消えていく。しかし、痛みも苦しみもない。もとより死んでいた腕なのだから当然だ。
 むしろナイブズは、笑みをもってそれを受け止める。
 凄絶な笑み。強烈な笑み。勝ち誇った勝利者の笑顔。
「か、は……ッ」
 ナイブズの放った凶刃は、あやまたずディエチの全身を刺し貫いていた。



 静寂。
 嵐の過ぎ去った病院は、先ほどまでの戦闘が嘘のように静まり返っている。
 動くものもなくなった病院の待合室で、佇む男が1人。階段にもたれかかる少女が1人。
 力を失い、崩れ落ちた少女を染める赤が、階段にべっとりと赤い線を引いていた。
「……何故奴を助けた」
 不意に、ナイブズが口を開いた。あの虚無の瞳でディエチを見下ろしながら。
 彼はこの戦いで右腕を失った。しかし、その腕は既に機能を喪失していた。血すらも流れぬこの腕を、手傷と呼ぶには値しないだろう。
 そう。ナイブズは無傷。眼下のディエチが、血みどろの重傷であるにもかかわらず、だ。
「あんなお前よりも遥かに劣る人間など、守る価値もなかっただろう」
 それを聞きたかった。故に、急所は外した。即死することがないようにした。
 とはいえこの出血だ。逃げられないように腱も切ってある。程なくして失血死するのは間違いない。
 質問に答えた頃には、こいつは死ぬ。
 この場に集まった連中は、どいつもこいつも不可解な連中ばかりだ。
 生涯最強とも言える強敵、殺生丸もまた、ディエチと同じように人間を守った。
 ただの足手まといだというのに。生きていても、何の役にも立たないというのに。
 それなのに何故奴は――そしてこいつは、劣種を庇うことを繰り返す。
「少し……いい男だったからね」
 ディエチはあっけらかんと返した。
 ナイブズの表情は変わらない。しかし、沈黙する。ぽかん、とした様子がそれで見て取れた。
「冗談だよ」
 してやったり、といった様子で短く付け足す。
 衰弱しきった力ない笑顔でも、あの自信満々なルルーシュがそう言ったように。
 憮然としたような顔色が、ナイブズに浮かんだ。

106 :ピカレスク ◆9L.gxDzakI :2008/10/30(木) 15:05:01 ID:NVwf8pNK
「……強い奴ならごまんといる。多分、この会場にも」
 絞り出すような微かな声で、ディエチはぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
「そんな中では、力だけじゃ勝ち残れないし、大事な人も守れない……でも、ルルーシュは違う。
 アイツの頭が誰かの力に合わされば、より強い力になる」
 ただ闇雲に戦うだけでなく、彼の頭脳の下に力を振るえば、家族も生き残ることができる、と。
「あたしは……それに賭けた」
 はっきりと、ディエチは言い放った。
 対するナイブズは、何も答えない。
 弱者の負け惜しみ、とでも思っているのだろう。あらゆる小細工をはねのける暴力的な力を前に、そんなものは意味がないとでも。
 それでも、絶対ではない。
 現にディエチの吹き飛ばした右腕は、既に何者かによって潰されていた。
 ナイブズは無敵ではないのだ。抗するだけの相手はいる。すなわち、そこが付け入る隙。
 チンクやなのは等のそうした実力者が、ルルーシュとクアットロのもとに集い、その能力を最大限に発揮した時。
 その時こそが、ナイブズの最期だ。
「……フン」
 鼻を鳴らしながら、己がデイパックをひったくる。奪われた支給品を取り戻すと、男は踵を返して立ち去った。
 かちゃり、と。開いたバッグの口から、何かが落ちたことには気付かぬまま。
 ナイブズが目指すのは北西。妙な放送を流したあのアーカードという奴のもとには、多くの参加者が集うことだろう。
 そこを叩き、一網打尽にする。
 エンジェルアーム行使に伴う疲労もまた、到着する頃にはある程度収まっているだろう。
 更なる殺戮に手を染め上げるため、孤独な王はまた一歩踏み出した。


【ミリオンズ・ナイブズ@リリカルTRIGUNA's】
【状態】疲労(大)、黒髪化四割 、全身打撲(小)、右腕欠損
【装備】なし
【道具】支給品一式、デュランダル@魔法少女リリカルなのはA's、首輪(高町なのは)
【思考】
 基本:出会った参加者を殺す。誰が相手でも油断はしない。
 1.アーカードのもとに集まった人間を殺す。
 2.ヴォルケンズ、ヴァッシュは殺さない。
 3.制限を解きたい。
【備考】
 ・エンジェル・アームの制限に気付きました。
 ・高出力のエンジェル・アームを使うと黒髪化が進行し、多大な疲労に襲われます。
 ・黒髪化に気付いていません。また、黒髪化による疲労も制限によるものだと考えています。
 ・はやてとヴォルケンズ達が別世界から来ている事に気付いていません。
 ・この場に於いてナイフを探すことは諦めました。

107 :ピカレスク ◆9L.gxDzakI :2008/10/30(木) 15:08:00 ID:NVwf8pNK
 悪魔が去って、再び静寂が立ち込める。
 もうここには誰もいない。一歩も動けぬディエチ以外には。
「このまま……死んでいくんだろうな……」
 朦朧としてきた意識の中、ぽつりとディエチが呟いた。
 不思議と、恐怖はない。死神が目前にまで迫っているにもかかわらず、それを恐れる気持ちは起こらない。
 プログラムされていないのだろう。死の恐怖というものが。
 所詮戦闘機人は物でしかない。そうした思考を浮かべる己自身に対し、自嘲気味な笑みを浮かべた。
「まぁ……悪役には、お似合いな最期か」
 悪か善かと言われれば、ディエチは間違いなく悪の側の人間だ。
 ずたずたに引き裂かれたイノーメスカノンは、これまでに多くの人間の血を吸ってきた。
 このデスゲームにおいてもまた、ディエチは殺す側の立場に立とうとしていた。であればこの末路は、当然の報いか。
(あの子のことも、傷付けた)
 そして脳裏に浮かんだのは、名簿の中にあった1つの名前。
 ――ヴィヴィオ。
 聖王の器として生まれた娘。輝くようなブロンドの髪に、緑と赤のオッドアイ。自分が傷付けてしまった、小さな人間の女の子。
 生まれたときから独りぼっちで、泣きながら母のぬくもりを求め続けた。
 それでもようやく手に入れたそれから、自分達ナンバーズは彼女を容赦なく遠ざけてしまった。
 自分達の勝手な都合のためだけに、小さな命を利用した。
 そしてJS事件が終わり、恐らくママのもとへ帰れたであろう彼女は、今もまたこんな殺し合いに巻き込まれている。
「ごめんね」
 口を突いたのは、謝罪。
「ごめん」
 たとえそれが偽善であろうとも。自分に謝る資格などなかったとしても。
「本当に」
 それでも言葉をつむぎ続ける。
「ごめんなさい」
 せめてここでは生き延びて、と。
 最後の最後まで生き残って、笑顔でママと巡り会えるようにと願いを込めて。
 静かに、ディエチは頭を垂れた。
 沈黙。返事など、返ってくるはずもない。あの子はここにはいないのだから。
 それでもせめて、この願いだけは届くように、と。
 それが自己満足であろうとも。
 ただ、祈る。
「……ルルーシュ……」
 そして、少し前まで、自分と共にあった者の名を呟いた。
(最初は、ただ頭がいいだけの奴だと思ってた)
 戦略を練り、容赦なく人を殺す道を選ぶ冷徹な策士。自信に満ちた口調で振る舞う孤高の秀才。
 それがルルーシュに抱いた第一印象だった。
 しかし、それでいて、彼はまるきり正反対な人間であるスバルを好きだと言った。
 冗談だと言ってはいたが、少なくともそこに情はあった。
 そして、自分がここに残ると言った時、あのルルーシュが声を荒げた。
 他人を殺すのには何の躊躇いもないくせに、仲間の命を捨てることを本気で嫌ったのだ。
 冷たいのか、優しいのか、全くもって面白い男だ。
 だが、その最後の優しさがあったからこそ、ディエチは彼に望みを託せた。
 自分の願いを聞き届けてくれると、心のどこかで確信した。
「それに……」
 自分の髪の毛を、震える右手で、なぞる。
「綺麗なんて……言ってもらったの、初めてだよ」
 あまり容姿には自信があった方じゃない。
 スタイルはクアットロの方がよかったし、髪もディードの方が綺麗だ。顔ではウーノの方が勝っている。
 何一つ目立った要素のない、自分の地味な容姿がコンプレックスでもあった。だから髪を纏めたのかもしれなかった。
 それでも、ルルーシュは自分の髪を綺麗だと言った。
 初めて異性から、そう言ってもらえたのだ。
「もう少しだけ一緒にいたら……好きになってたかもね」
 冗談が本当になっていたかもね、と。
 呟くディエチの口元は、笑っていた。

108 :ピカレスク ◆9L.gxDzakI :2008/10/30(木) 15:10:48 ID:NVwf8pNK
 と、不意に、彼女の視界に飛び込んできたものがあった。
 扉の外の道路を、ふわふわと漂う楕円形。4つの丸い目の中心に、丸いレーザー発射口。
「あ」
 自律機動兵器ガジェット・ドローン。戦闘機人のディエチにとっては、ひどく見知ったものだった。
 その呟きを聞いたのか、はたまたたまたまこちらを向いたのか。自分の存在に気付いたガジェットが、病院の中へと入ってくる。
 一体どういうことだ。何故ガジェットがここにある。何故ここでふわふわと浮いている。
 失血感から随分とのろまになった脳を動かし、ディエチは思考する。
 しかし答えが出るよりも早く、機械の兵士は彼女のもとへと到着していた。
 そして、静止。自分の身体を見せるように。そこに書かれた文字を見せるように。

 ――朝までに病院へ集合。生きて会おう姉と妹よ by 5姉

 答えは、そこに記されていた。
「……よかったぁ……」
 安堵の声が漏れた。
 このガジェットはチンクが動かしたものだ。恐らく地図上に記されたラボにあったものを、こうして起動させたのだろう。
 すなわち、少なくともチンクはまだ生きている。
 これを書いた瞬間までは生き残っていて、クアットロや自分を捜すために動いている。
 放送までは生きられないと思っていたが、少なくとも片方の生存は、こうして確認することができた。
 それだけで、どんなにディエチは救われたことだろう。
 役目を終えたガジェットは、またふわふわとそこから立ち去っていった。これからクアットロを捜しに行くのだろう。
「ごめん、チンク姉」
 その背面へと謝罪した。その先にいる、チンクへと。
 この約束を、ディエチが守ることはできないだろう。生きて再会することはかなわないだろう。
 そのくせ自分だけが、こうして安心しているのだ。チンクが悲しむことは目に見えているのに。
 だから、ゆっくりと頭を下げた。遠ざかる楕円形の背中に。それを差し向けた小さな姉に。
 ガジェットが角を曲がり、視界から姿を消した後、ディエチは自分の耳へと指を伸ばした。
 そこに取り付けられたインカムのスイッチを、入れる。
 しかし、返ってくるのはノイズばかり。まるで遮断された体内無線のように。
「……やっぱり駄目か」
 少し残念そうに呟いた。
 どうやらルルーシュとの距離が遠すぎて、電波が届かないらしい。そうそう遠くの相手とまで通信はできないということか。
 最期に彼の声を聞きたかったが、どうやらそれはかなわないらしい。
 ふぅっ、とため息を漏らしながら、ガラス扉の先の天を仰ぐ。
 ――ぶぅぅん。
「……?」
 羽音を聞いたような気がした。
 鳥のそれではなく、昆虫などの発する音である。それも近くから。
 この会場に、自分達参加者以外の生物はいなかったはずだが。そう思いながら、視線を音のする方へと落とす。
 1匹のカブトムシの姿が、そこにあった。
 機械でできた銀色の身体を浮かせ、尻には説明書のような紙が糸で繋がれている。恐らくナイブズが落とした支給品だろうか。
 鉄の虫は一定の高度を保ったまま、羽音と共に滞空を続ける。さながら彼女の顔を覗き込み、じっと様子を伺うように。
 す、と。
 のろまな左腕を持ち上げ、手を差し伸べる。カブトムシはすぐに近寄り、ディエチの手の中に納まった。
 右手を縛る黄色いリボンは、既にずたずたになっていた。あれほど離すまいと誓ったグリップからは、既に手は離れている。
 情けない、と自嘲気味な笑みを漏らしながらも、その手を突き動かした。今はそれができることが幸いした。
 右の小指を、自らの傷口へと入れ、ぐりぐりと回す。感触なし。痛覚すらない。本格的に危険なのだろう。
 それでも、赤く滴る血液は、指先に塗りたくることができた。
 説明書の裏に赤い小指を乗せ、さっとなぞる。直線と曲線を組み合わせ、成すものは文字。
 ちょうどチンクが鉛筆でそうしたように、血文字の伝言が出来上がった。

109 :ピカレスク ◆9L.gxDzakI :2008/10/30(木) 15:12:20 ID:NVwf8pNK
「ねぇ」
 そして、銀色カブトムシへと声をかける。
「これを持って……ルルーシュ・ランペルージって人のところに、飛んでってほしいんだ。分かる……かな?」
 返事は、言葉ではなかった。
 ぶんっと再び羽を鳴らし、カブトムシの身体が宙に浮く。
 機械仕掛けの甲虫は、了承したと言わんばかりに、踵を返して飛んでいった。ディエチの手のひらから離れ、あの青い空へと。

 ――負けないで

 どうか決して希望を捨てないで、と。
 たとえ絶望が降りかかろうと、たとえ自分がここに果てようとも。
 それでも歩き出すことだけはやめないでほしい。
 私のためにも、貴方のためにも。
 深紅の文字が一瞬風に翻り、消えた。
 ワープ機能でもあったのか、カブトムシの姿は、短い発光と共にたちどころに消滅したのだ。
 何にせよ、これで自分の言葉は届く。相手の言葉が聞けないのが心残りだが、こればかりは仕方のないことだ。
 カブトムシが消えた空を、仰ぐ。
 頭上に青く広がる蒼天を。
 たとえ大地が血に濡れようと、空だけは変わることなく穏やかだ。
 あのクアットロのように。
「……もしも、空を飛べたら……」
 ふと、そんなことを考えた。
 もし空を飛べたのなら、この戦いも、もっとましな形に終わったのだろうか。
 ルルーシュを抱え、ナイブズから2人で逃げ延びることができただろうか。
 チンクやクアットロと、生きて合流することができただろうか。
 ヴィヴィオに会って、謝ることが。ルルーシュとスバルを引き合わせてやることが。
 みんなで生き延びることができただろうか。
 仮定に意味はない。自分に空飛ぶ翼なんてない。自分は地を這うスナイパーだ。それで構わないと思い続けていた。
 それでも。
「あたしも……――」
 手を伸ばす。
 遥か彼方の天に向かって。
 最期の瞬間、初めて狙撃手は、頭上の空へと恋い焦がれた。
 とん、と。
 力の抜けた腕が床を叩く音は、遂にディエチの耳には入らなかった。

 銀色のカブトムシ――天も時間さえも駆け抜ける翼、ハイパーゼクター。
 1人の少女の想いを乗せたそれは、少年のもとへと飛んでいく。
 ルルーシュがそのメッセージを目にするまで。
 最初の放送が皆の耳に入るまで。
 病院へ到着したチンクが物言わぬディエチを発見するまで。

 ――あと、僅か。





【ディエチ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡】
※病院1階の正面階段は、ディエチの血で濡れています。
※イノーメスカノン@魔法少女リリカルなのはStrikerSは、ナイブズの左腕によって破壊されました。
※ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレードが、ルルーシュの現在地へ空間移動を開始しました。
 付属している説明書には、「負けないで」というメッセージが書かれています。

110 :ピカレスク ◆9L.gxDzakI :2008/10/30(木) 15:13:51 ID:NVwf8pNK
投下終了。
1つ、謝罪しなければなりません。
ここまで最初から最後まで自己リレーで続け、そのままディエチを脱落させてしまいました。申し訳ありませんでした。
リレー企画らしくないといえば、自分のSSもらしくはないのです。
本当なら他に書いてくれる方がいれば、その方の分を優先しようとは思ったのですが、
終わクロ氏からのお言葉、そして何より、「せっかく書いたのだから」という判断により、投下させていただくことになりました。

まぁそんなわけで、スーパーディエチタイムの実質後編を書かせていただいたのですが(前話を前編とする)……
……なんか、色々ネタが混ざって何がなんだか分からなくなっちゃったなぁ……w
パニッシャー風イノーメスカノンだったり、某ガンダム乗りのニールさんも入ってたりw
大体あとがきで語るべきことは、ボツスレの方に書きましたので、こちらはこの辺で締めさせていただきます。

……ラストシーンの推奨BGM:僕は、鳥になる。(ギアスR2でロロが死んだ時の、あれ)(ぉ

111 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/31(金) 01:40:18 ID:2f8SK1so
投下乙です。
>BGM:僕は、鳥になる
激しく同感wああ、いい選曲です。
ディエチ散るか。自己リレー云々はまあ仕方ないという事ですかね。
彼女の想いがひしひしと伝わってくるような話でした。
てかナイブズwあんた頑張り過ぎw

112 : ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 14:31:13 ID:aHTNn8Aj
クアットロ、シャマル、遊城十代3名本投下します。宜しければ支援の方お願い致します。

113 :クアットロがもってった!セーラーふく ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 14:34:30 ID:aHTNn8Aj



F-5エリアにある建物には2人の女性がいる。
ヴォルケンリッター湖の騎士シャマルと戦闘機人No.4クアットロである。

(さて、これから一体どうしたものでしょうかねぇ)

クアットロは名簿を見ながら今後の方針を考えていた。
彼女の目的自体は決まっている、参加者を扇動して彼ら同士を殺し合わせ、その中で弱者の命を弄ぶこと……
そしてその過程で姉妹であるチンクやディエチと合流し、聖王の器であるヴィヴィオを確保することだ。

例え固有武装が奪われ通信が封じられようともISシルバーカーテンがある自分には何の問題もない……

と、考えていたもののそれはすぐさま暗礁に乗り上げることとなる。

直後に遭遇したアンデルセンに有無を言わさず襲われたのだ。
幸いアンジールに助け出されたお陰で左腕に負傷した程度で済んだが、助けがなければそれよりも大きなダメージを受けていたであろう。

更にアンジールより聞かされる彼の宿敵セフィロスの存在……

これはこの場には元からの敵である管理局や機動六課以外にも多くの強敵がいることを意味している。
ちょっとした油断が命取りになる……クアットロはそれを早々に認識したのである。

さて、アンジールの話から自分を含めた参加者が異なる並行世界から連れてこられた事実を知ったクアットロは、
本来なら自分とは違う世界から連れてこられたアンジールに対しては彼と同じ世界のクアットロとして接し、
アンジールと協力した事で、その直後に遭遇したシャマルに対してはシャマルとは別の世界でクアットロ達が起こしている事件……
後にJS事件と呼ばれる事件後、更生しているクアットロとして接することでシャマルの信頼を得ることに成功し、
アンジールはチンクとディエチの保護と参加者減らしに行かせる為別行動させて今に至っている。

……ところがここで考えなければならない問題が他にも幾つかある。
まず1つに、シャマルがJS事件後から呼び出されていたという事実である。
これが事実であるならば、自分達は敗北し、クアットロは牢獄行き、チンクとディエチは更生プログラムを受ける……つまり管理局に下ったとなっていることだ。
もっとも、シャマルがいた時間軸で自分達が敗北していようがそれはどうでもいいことだ。
何故なら、生きてこの殺し合いを脱出し、その情報を生かせばその結末は回避出来るからだ。

問題にすべきは参加者が違う時間軸から連れ去られている可能性があるという事実……
つまり、チンクやディエチが事件後管理局入りした後から連れ去られて来た可能性があるのだ。
そう、彼女達すら自分の敵である可能性すらあるのだ……もっとも、これ自体は会ってみなければ何とも言えない話ではあるが……。

だが、逆に同一世界かつ、同一時間軸から連れ去られているとしたらどうだろう。
この場合、どうしても確保しなければならない人物がいる……そう、聖王の器であるヴィヴィオだ。
もし、殺し合いの中で彼女が殺されれば、仮にクアットロが生き残って元の世界に戻ったとしても、自分達の目的は果たせない……
これも可能性がないとは言えない以上無視出来ない話である。

他にも、同じ様な事がシャマル達管理局側にも言えるだろう。
例えばシグナムやザフィーラが10年前に起こった闇の書事件の最中に呼び出されている可能性もあるだろうし、
なのはに至ってはPT事件の前から呼び出されている可能性もある。

そして、名簿に2つあったなのは、フェイト、はやての名前……
これらはほぼ確実に異なる世界もしくは時間軸から呼び出されている事を意味していると考えて良いだろう……
これもまた頭に置いておくべき事項であろう。


114 :クアットロがもってった!セーラーふく ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 14:37:36 ID:aHTNn8Aj
さて、以上の問題を踏まえた上でクアットロはどう行動するべきであろうか?
勿論、当初の予定通り参加者を扇動し暗躍する事自体は変わらない。
だが、考え無しに扇動するだけして最終的に自分は殺されました……となるつもりはない。
つまり、最終的には脱出もしくは優勝することが必須条件である。
だが、現状ではヴィヴィオやチンク達と合流する事も考えている……
いや、仮に優勝した所で無事に帰れる確約もない以上、脱出の方向性は考えておくべきだろう。
クアットロは思案する……

(やはり、手駒と情報が必要ですわねぇ……)

クアットロの出した答えは手駒と情報の確保である。
手駒というのは自分に害を及ぼす者の排除、襲われた時の盾、更には脱出への協力者等、様々な所で必要な存在だ。
情報は参加者の情報、未知の世界の情報、首輪の解除方法、脱出方法など何れも必要なもの。
それをある程度確保しなければ脱出の可能性も見えてこないだろう……

(その為にはまずシャマル先生の信頼を確保しておきたい所ですし……)

とりあえず、シャマルの信頼は得ている…これを強固なものとすれば、仮に他の六課の仲間や管理局関係者に遭遇したとしても敵視される事はない。
では次に確保するべきは……

(私の知る世界とは違う出身者で……かつ私を知らない人を手駒にしておきたいですわねぇ……)

出来うるならば別世界の出身者でクアットロを知らない人を確保したい……

何故か?それは別世界の情報がこの場において大きな力を持っているからだ。
それはその出身であるアンデルセンとアンジールを見ればわかるだろう。彼らはこの制限下の状況に置いても自分を凌駕する程強大な力を持っていた。
加えてアンジールから得たマテリアという強大な力を持つ道具の情報……別世界にはほぼ間違いなく他にも価値のある道具が存在すると考えて良いだろう。
故に彼らの力、もしくは情報を得る為に彼らを手駒にする……

では何故クアットロを知らない人の方が良いのか?
知っている人の場合、殆どの確率で自分は危険人物と認識されているだろう。シャマルのように騙せるという確証はない。
仮にアンジールのように味方であったとしても、自分が知らない以上、騙し続けるには必ず無理が来る。アンジールに対して使ったような記憶操作という話も多用出来るものではない。
だが、逆に知らない人ならばどうか?もし、知らない人が自分を善良な人と認識してくれたなら……これならば下手な疑心を抱かれず上手く手駒にできる可能性が高い、少なくとも知っている人物よりは……
そして手駒にして完全に信頼を得れば、仮に何かあっても悪人としての姿を殆ど知らない分、その人物は自分を信頼してくれる……故にそういう人物を手駒にしたいと…だが、

(まあ、そこまで上手く事が運ぶとは思えませんけど)

ここまで考え、ひとまずクアットロはシャマルへの信頼を確固たるものにしようと考える。
その為には……まず、自分の知る情報は明かしておいた方がいいだろう、
……敵に手の内を明かすのは不味いのでは?そう考える者も多いだろうが物によってはそうではない。
そう、これからクアットロが明かす情報は明かしておくべきものであろう。
それは参加者が別世界から連れてこられた可能性と共に同一世界であっても異なる時間軸から連れてこられた可能性があるということ。
何故この情報は明かしておくべきなのだろうか?
簡単な話だ、この情報は他の知り合いに会えば高い確率でわかる事、下手にクアットロが伏せたままにしておけば何故伏せたのかという疑いが出る可能性がある。
そして情報を明かすということは信頼の証にもなり、シャマルにもそれを元に脱出方法を考えてもらうという事も出来る。
とはいえ、ある程度の慎重さは必要だ。むやみに語ってどうやってその情報を知ったのかと疑心を抱かれる事は避けねばならない。

(となれば……)

クアットロは策をまとめ、シャマルに話しかける。


115 :クアットロがもってった!セーラーふく ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 14:40:37 ID:aHTNn8Aj
「そういえばシャマル先生、シャマル先生の世界ではチンクちゃん達やルーテシアお嬢様達はどうなっていましたか?」
「え?」
「ほら、シャマル先生の話だとシャマル先生の世界では私は改心していないみたいですから他の姉妹達がどうなったのか気になりまして……」
「ああ、そうね……」

シャマルは自分の世界におけるチンクやルーテシア達の顛末を語り出す……勿論、ある程度は既にアンジールがシャマルを尋問した際に語られた内容ではあるのでそれの再確認となる。
その中である人物の顛末が聞かされた時、

(先程語った通りですわね……やはり使えますわ)

そして、シャマルの話が終わる。

「……という風になっているんだけど……クアットロの世界ではどうなの?」
「ええ……私以外は大体同じみたいですわ……ただ、ちょっとシャマル先生の話を聞いてある事に気がついたんですけど……」
「え?」

クアットロは語り出す。

「もしかしたら参加者達は違う時間軸から連れ去られているかも知れませんわ」
「どういうことクアットロ?」

この可能性自体はシャマル自身クアットロと出会った時に考えたものの、あらためてクアットロから切り出されたので聞き返す。

「確かシャマル先生の世界では騎士ゼストは死んでいるんですわよね。私の世界でもそうなんですけど……」
「ええ……確か……でもそれが……?」
「じゃあ、どうして騎士ゼストの名前が名簿にあるんですか?」
「あ……」

そう、クアットロの見つけた糸口はゼストである。
JS事件においてゼストは死んでいる。しかし、それにも関わらず参加者として名前がある……これはゼストが死ぬ前から呼び出されている事を意味する。
並行世界(ここの部分はクアットロの嘘だが)においても死んでいるとするならば、並行世界と考えるより別の時間軸と考える方が自然である。

「どうして気付かなかったのかしら……」
「気にしないで下さい、私もシャマル先生と話している内に思い出した事ですから。でもそうなると……他の参加者も違う時間から呼び出されているってことになりますわよね……」
「ええ……あれ……だとしたら……」

シャマルも以上の話からある可能性に思い当たる……しかし、それ以上は口にはしない。だが……

「……あのシャマル先生……もしかしたら見間違いかもしれないんですけど……ちょっと思い出した事が……」
「……え?」
「最初に連れ去られた部屋ありますよね?確かあそこは暗くて周囲なんて殆どわからなかったんですけど……」

シャマルは最初にプレシアによってこの殺し合いの事が説明された時の事を思い出す。
あの場所は暗い為周囲が殆ど見えなかったが、もしかしたら隣に居た人ぐらいは確認出来たかも知れなかったことに気が付く。

「誰がいたの……?」
「確か9歳ぐらいの女の子で……はやてさんを幼くしたような感じの子がいたんですけど……」
「!?」

最悪の予感が当たった……シャマルはそう思った。
シャマルが考えた可能性……それは自分達の仲間が別の時間軸から呼び出されている事であり、自分の主であるはやてが闇の書事件の前後辺りで呼び出されていることである。
他の仲間ならばその時期であっても十分に戦える……だが、はやてだけは別である。その時期の彼女は車椅子が必要であり、戦闘は愚か生き残ることすら難しいだろう。


116 :クアットロがもってった!セーラーふく ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 14:43:32 ID:aHTNn8Aj
「あの……やっぱり言っちゃまずかったでしょうか……?」
「ううん、そんなことは……」
「……でも、もしかしたら人違いの可能性もありますし……」

クアットロはフォローするものの、シャマルはその可能性を捨てきれなかった……いや、仮に見間違いであったとしてもはやてが9歳の頃から呼ばれていないという保証は何処にもない。
それに……

「もしかして……この名簿に2つあるはやてちゃん達の名前って……片方は私達の時代のはやてちゃんで、もう1人が……」
「そうかもしれませんわねぇ……」

名簿にははやて、なのは、フェイトの名前が2つずつあった。シャマルはその内の片方が自分と同じ時間軸にいる19歳の彼女達、もう片方が9歳の彼女達の可能性が高いと考える。
9歳のはやてがいるかもしれないという可能性が、シャマルにそういう判断をさせたのだ。
シャマルにとっては別の時間軸であろうともはやてははやて、守るべき主であることに代わりはない。

(もう1人のはやてちゃん……どうか無事でいて……)

シャマルは何処かにいるであろう9歳のはやての身を案じていた……その一方、

(まさか、2つの名前に自分から考えを出してくれるとは思いませんでしたわぁ)

クアットロは内心で笑いが止まらなかった。ここまで自分の策に乗ってくれるとは思わなかったからだ。
もしかしたら疑われる可能性もあると考えたがどうやらそれは杞憂の様だった。

ちなみに、クアットロがあの場所で9歳のはやてらしき人物を見かけたというのは全くの嘘である。
嘘を吐いてまでシャマルに話した理由は異なる時間軸ならば9歳の彼女がいる可能性に気付かせる為である。
しかし、シャマルが名簿の2つある名前から9歳と19歳のはやて達がいるとまで考えるのは全くの予想外であった。
勿論、クアットロ的に2つある名前の事から片方、もしくは両方が並行世界の彼女達の可能性がある程度の事は話すつもりであったが、結果的にその手間が省けたことになる。

(もっとも……本当に9歳の彼女達がいるかどうかなんてわかりませんけどぉ)

クアットロは2人いるであろう彼女達の片方が9歳で、もう片方が19歳であるかまでは断定していない。
極端な話、両方9歳、両方19歳…いや、もしくはもっと別の時代や並行世界から連れてこられた可能性もあると考えていた。

(とはいえ、そっちが勝手に決めつけちゃったんでしたらそれでもいいんですけどぉ)

クアットロにしてみれば彼女達がどの時代から連れてこられてもあまり関係がない。
自分を知らない時代の彼女達であれば手駒にしやすいので好都合ではあるが、その程度の話である。

なお、仮に9歳のはやてが連れてこられていなかったとしても、別段問題はないだろう。
クアットロ自身ははやてと断定してはいなかったし、人違いの可能性もあることは伝えたのだ。
今のシャマルがその事に気付いても疑いを持たれる可能性は低いだろう。

「ともかく、そろそろ出発しませんか?」
「そうね……」

2人は移動の準備を始める。と、クアットロが、

「そういえば、シャマル先生は何か使えそうな支給品とかありましたか?」
「え?私の方は……」

シャマルはデイパックから包丁を出す。

「使えそうなのはこれぐらいだったんだけど……」
「ちょっと見せてもらえます?」


117 :クアットロがもってった!セーラーふく ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 14:46:23 ID:aHTNn8Aj
クアットロもシャマルのデイパックの中を確認するが確かに他には赤い鞘の様なものともう1つの支給品、そして自分も所持している基本支給品ぐらいだ。

(赤い鞘が何かは気になりますけど……確かに微妙ですわねぇ……)
「特にこれなんて使えないでしょ?」

シャマルはもう1つの支給品を指す、それは間違いなくシャマルには必要のない物……というより、恐らく誰に支給されても扱いに困る物であろう。

「そうですわねぇ……」

勿論、クアットロもそうは思った……しかし、ここで少し思案し、

「あのシャマル先生、もしそれ使わないのでしたら……」



   ★   ★   ★



クアットロとシャマルは目的地をE-5にある地上本部に定めそちらへ足を進める。
何故か?それはクアットロがまずは六課や管理局の仲間と合流すべきと提案したからだ。
彼らならばまず地上本部か機動六課隊舎へ向かう可能性が高いだろうと……そして現在位置のF-5からは地上本部の方が近いのでまずはそちらに向かうと……
シャマルもそれに同意し2人は移動をしている。

ちなみに、クアットロの本音としては先に未知の施設であり自分達のいるF-5にあるスマートブレイン本社ビルに向かいたい所だったが、
ここはシャマルの信頼を得る為、シャマルの仲間との合流を提案したのである。

さて、今現在の2人の服装だが、シャマルの方は六課の制服に身を包んでおり、血に染まった白衣の方はデイパックにしまってある。
そして、クアットロの方は……ここ来た時に着ていた自身のナンバーズスーツ……ではない。
今現在、彼女は束ねている髪を下ろし、さらに眼鏡すら外している……そしてその身を包んでいるのは……

女子高生が着ているであろう制服……セーラー服である。

そう、シャマルに支給された最後の支給品を今現在クアットロは着ているのである。尚、自身のナンバーズスーツはちゃんとクアットロ自身のデイパックに入っている。
では、何故わざわざ服を変えたのか?そこで少々時間を遡ってみる。


118 :クアットロがもってった!セーラーふく ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 14:50:21 ID:aHTNn8Aj
 


  ★   ★   ★



「これを着る……?どうして……?」

クアットロの提案を聞いた物のシャマルはその理由が全くわからなかった。
制服は何の変哲もない普通のもので、特別な力は何もない。
少なくてもわざわざナンバーズスーツを脱いでまで着るようなものではないはずだからだ。
それに対しクアットロは答える。

「シャマル先生、最初に私を見た時どう思いましたか?」
「どうって……あっ」

その問いかけでシャマルはクアットロの目的に気が付いた。

「服が変わったなら、見ただけですぐにはクアットロだってわからない……」
「その通りですわ、シャマル先生」

クアットロの目的、それは服を変えることで他の参加者への警戒を避けることである。
この場にいるクアットロが殺し合いに乗っていないとしても、果たして周囲の人間はそれに気付くだろうか?
まず無理だろう、恐らく六課や管理局の仲間はほぼ確実にクアットロに対し警戒をしているはずだ。
勿論、仲間達であれば話をすれば済む話ではあるが……

「実のところ私、この場所に着てからすぐさま有無を言わさずに誰かに襲われたんです……なんとか逃げられたんですけど……」

クアットロは負傷した自身の左腕をシャマルに見せる。

もし、六課や管理局関係者以外でクアットロが危険人物もしくは敵だと知る参加者がクアットロを見かけたらどうなるだろうか?
それだけではない、チンクやディエチが殺し合いに乗っている場合、彼女達に襲われた者はどう考えるだろう。
恐らく彼女達や同じナンバーズであるクアットロに対し警戒をするだろう。

では、参加者はどうやってクアットロだと判断するか……それは特徴的なナンバーズスーツ、そして眼鏡であろう。
それを見せなければ出会った瞬間に襲われる事は回避出来る……故にクアットロはシャマルに支給された制服を着ると提案したのだ。

「だから、自分の外見のせいでシャマル先生達まで危険に晒したく無いんです……」

無論、クアットロの本心はシャマル達の為ではなく自分だけの為である。だが、シャマルに対してはあくまでもシャマル達を守る為だと説明する。

「それは良い考えだけど……でもいいの?もし戦いになった時その服じゃなかったら……」
「問題はありませんわ。私のISはご存知でしょう、元々後方支援向けの能力ですし、このスーツじゃなくても問題なく使えますわ」

仮に戦闘になったとしても、クアットロは元々前線で戦うタイプではない。シルバーカーテンで相手を翻弄する程度ならば制服姿でも全く問題は無い。
そして、最初から戦闘に向かうのであれば、元のナンバーズスーツに着替え直せばいいだけの話だ。

「わかったわ、それじゃこの制服を貴方に……」

シャマルはクアットロの提案に乗り、制服をクアットロに渡したのであった。


119 :クアットロがもってった!セーラーふく ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 14:53:12 ID:aHTNn8Aj



   ★   ★   ★



というわけで、クアットロは女子高生姿となって地上本部に向かっているわけではあるが……

「それにしても……胸の所が気になりますわねぇ……それに下の方もスースーするような感じが……」

思わず口走る……それに対し、

(そりゃ、下着付けていないからでしょ……)

あくまでも口には出さず心の中でツッコミを入れるシャマルであった。そう、今現在クアットロは下着を付けていない。
当然であろう、ナンバーズスーツを着ているならば下着は必要ないし、当然の事ながら支給品の制服には下着は付属していない。

(それに……)

シャマルは今のクアットロを見て、

(やっぱり微妙に無理があるような感じがするわね……)

今のクアットロを女子高生というには少々無理があるように感じた。少なくても自分よりは合ってはいるとは思うが、それでも厳しさを感じる。

(はやてちゃんやスバルにティアナだったらピッタリだと思うんだけど……ヴィータちゃんは……逆に無理あるわよね……)

そんな事を考えつつシャマルはクアットロと共に足を進めていた。と、

「ところでシャマル先生……『高良みゆき』って誰なんでしょうかねぇ……」
「さぁ……参加者にはいなかったけど……」

その制服には1枚説明書の様なものが付いていた。いや、説明書とも言えないだろう。そこには『高良みゆきの制服』としか書かれていなかったからだ。
少なくともその紙からこの制服が『高良みゆき』のものである事はわかったものの、それ以上の事は何もわからない。
そのみゆきの友人の3人がこの殺し合いに巻き込まれているものの、それをこの2人が知るわけがない。



だが、彼女達はその直後、みゆきの友人に出会った人物と出会うこととなる。



2人が足を進めていると背後からバイクの音が迫る。
その音に気が付き、2人は振り向く。そして、バイクは2人の前で止まり、乗っていた少年が……

「あんた達、つかささんの知り合いか?」

2人にそう問いかけてきた。


120 :クアットロがもってった!セーラーふく ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 14:56:37 ID:aHTNn8Aj



   ★   ★   ★



バイクに乗っていた少年、遊城十代はデュエルゾンビとなったフェイトに襲われているであろう柊つかさを助ける為に多くの人が集まっているであろう地上本部へ向かっていた。
しかし、その途中十代の目につかさと同じ制服を着ている人を見つけたのだ。
そこで十代は2人の側でバイクを止め2人に話しかけたのである。

「残念ですけど、私達はつかささんの知り合いじゃありませんわ」
「それじゃあその制服は……確かつかささんの同じものじゃ……」
「ああ、この制服はシャマル先生の支給品にあったもので私がお願いして借りているものですわ」

クアットロは十代にそう説明する。すると、

「シャマル先生?もしかしてあんたがなのはさん達が言っていた……」
「なのはちゃん達が言っていた……どういうこと……?」

目の前にいる少年は自分の事をなのは達から聞いているようだが、自分にはどういう事か見当のつかないシャマルだった。
そんな2人に対しクアットロが、

「あの、落ち着いて話をしませんか?」



   ★   ★   ★



3人は足を止め、互いの自己紹介を行い、十代の話を聞く。
そして十代から聞かされた話は2人にとって衝撃を与えた。

十代によると十代はデュエルアカデミアの生徒で仲間達と共にデュエルを学んでいた。
が、プロフェッサー・コブラが行ったデス・デュエルの一件がきっかけでデュエルアカデミアごと仲間達と共に異世界へ飛ばされてしまう。
そこになのは、フェイト、スバル、ティアナ、エリオ、キャロといった機動六課の人達が助けに来たものの、
その異世界では転移魔法が使えない影響か彼女達もまた異世界から帰ることが出来なくなっていた。
そんな中、アカデミアではデュエルゾンビというデュエルを求め戦いを求めるだけの存在となった者が現れる。
十代の仲間である万丈目もそのデュエルゾンビとなり、フェイトとエリオもまたデュエルゾンビとなってしまったのだ。

その状況で十代はこの殺し合いに呼ばれるが、その中で最初に出会ったのが柊つかさという少女ではあったが、その時に何か誤解があったせいか彼女に逃げられてしまった。
十代は暫く追いかけっこを続けたもののそこでデュエルゾンビとなったフェイトに襲われた。
この状況でつかさを連れて脱出する事は無理だと考えた十代は、支給品であるバイクに乗り1人フェイトからつかさを助ける為の仲間を捜していたところシャマルとクアットロを見かけたのである。

以上の話を聞いたシャマルは混乱していた。
当然であろう、あまりにも信じられない話だからだ。
まず、デュエルアカデミアというデュエルモンスターズというカードゲームを学ぶ学校、
デュエルをする度に体力や闘気を奪われるデス・デュエルの存在、
そして十代達が飛ばされた異世界へ助けに向かい帰れなくなったなのは達、
更には戦いを求めるだけの存在となったフェイトとエリオ……

何から何まで信じられない話である。そもそも、なのは達がその異世界へ行って帰れなくなったという話など聞いたことは無いし、
あのフェイトやエリオが戦いを求めるだけの存在という話もまず考えられない話であり、そしてそのフェイトが人を襲ったというのも信じ難い話である。
だが、シャマルには十代の言葉が嘘だとは思えなかった……そして、その可能性も有り得ない事ではないのを感じていた。


121 :クアットロがもってった!セーラーふく ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 14:59:12 ID:aHTNn8Aj
一方のクアットロは衝撃を受けたものの冷静にその事実を受け止めていた。

(この十代って子……嘘は言っていないようですわねぇ……)

クアットロは十代の話が真実だと判断した。詳しいことはもっと話を聞いてみなければわからないが、十代は確実に自分達とは違う世界もしくは時間軸から呼ばれた参加者であると判断していた。
そして、十代の言葉通り『十代の世界もしくは時間軸にいた』フェイトやエリオ、そして万丈目はデュエルゾンビというものになっていると……

(でも、本当にそのフェイトさんがデュエルゾンビで十代君達を襲ったかどうかまではねぇ……)

だが、クアットロは十代達を襲ったフェイトがデュエルゾンビになっているとは考えなかった。
可能性が全くないとは言えないが、自分達が様々な異世界や時間軸から呼び出されている現状で、都合良くデュエルゾンビとなっている状態から呼び出されているとは思えないからだ。
恐らくそのフェイトは十代と出会っていない世界及び時間軸のフェイトであり、彼女は十代がつかさを襲っていると判断して十代に仕掛けたのだろうと……クアットロはそう判断した。

(とはいえ、なーんも事情を知らなかったらそう考えるのも無理ありませんわねぇ……)

クアットロは十代をどうするかを考え……

(幸い、十代君は私の事を知らないみたいですし……好都合ですわねぇ……)

クアットロの名前を聞いても特に反応しなかった十代の様子も踏まえ、クアットロは十代に対する対応を決める……

「だから、早くつかささんを助けに戻らないと……」
「そう言われても……」

焦る十代、動揺するシャマルを余所に、

「あの、十代君。多分そのフェイトさんデュエルゾンビにはなっていなかったと思うんですけど」

クアットロが話を切り出した。

「クアットロさん、どういうことだよ」
「まず、十代君に知って欲しいことがあるんですけど……どうも私達って異なる世界や時間軸から呼び出されているみたいなんです」
「異なる世界?時間?」

十代にはその言葉の意味がわからなかった。

「簡単に言うと、私達の世界ではなのはさん達が貴方達の世界へ向かって行方不明になったって話は無いんですよね……」
「そんな馬鹿な……」
「ええ、私の世界でもクアットロの世界でもなのはちゃん達が十代君のいる世界に向かって行方不明になったって話は無かったわ」
「そんな……ん?クアットロさんの世界?」
「ええ、私もシャマル先生とは違う世界から呼び出されているみたいなんですのよ。だから十代君もシャマル先生や私の世界とは別の世界から呼び出されたと思うんですけど……」
「ちょっと待ってくれよ、もしそうだったとしたらどうしてフェイトさんは俺達を……?」
「多分、十代君がつかささんを襲っているって誤解しただけじゃないかしら?」
「俺がつかささんを!?……いや、確かにそんな感じだった気も……」

十代は追いかけっこした時の事を思い出す……あの状況であればそう判断されてもおかしくはない……しかし、

「じゃあ、万丈目はどうなんだよ?万丈目は俺と同じ世界から呼ばれているはずだぜ」

仮に知り合いであっても自分の知らない並行世界の万丈目が呼び出されている可能性があるが、十代の頭脳ではそこまでは考えが至らない。

「万丈目君の方は断言出来ませんけど…デュエルゾンビになる前から呼び出されたかもしれませんわねぇ……」
「デュエルゾンビになる前だって?」
「ええ……さっきも言ったことですけど、参加者は過去や未来からも連れてこられているみたいなんですよね……ほら、名簿になのはさんやフェイトさん、はやてさんの名前が2つずつあるでしょ」

と、クアットロは名簿にある名前を指す、


122 :クアットロがもってった!セーラーふく ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 15:02:27 ID:aHTNn8Aj
「ああ……あんまり気にしなかったけど……」
「多分、はやてちゃん達は私達の時代のはやてちゃん達とは別に10年ぐらい前のはやてちゃん達がいると思うの……」

シャマルが口を挟みさらにクアットロが続け、

「他にも数ヶ月単位で時間のズレはあるみたいだから、ここにいる万丈目君もデュエルゾンビになる前から連れて来られているかも知れませんわよ」
「そうなのか……」

クアットロとシャマルの説得で十代は落ち着き始める……しかし、

「でもよ……俺達の世界にいたフェイトさん達かも知れないんだろ……」

そう、ここまでの話は全て別世界及び別時間軸のフェイト達であればという話だ。十代を襲ったフェイトが自分達の世界のフェイトではないという証拠は何処にもない

(まぁ、そう来るとは思っていましたけど……)

そう思ったクアットロは切り札を出す……

「……ちょっと忘れていた話なんですけど……実は私フェイトさんを見かけたんですよね……」
「え?」
「何だって?」

突然のクアットロの言葉に驚く十代とシャマル。

「十代君から話を聞いている内に思い出したんですけど……私この殺し合いに来てすぐ誰かに襲われたんです……」

と、負傷した左腕を十代に見せる。

「で、なんとか逃げ出したんですけど……その直後に他の参加者の誰かと話しているフェイトさんを見かけたんですよね……もっとも……私その時混乱してしまって……すぐさま逃げ出したんですけど……」
「他の参加者と?それじゃあ……」

デュエルゾンビとなっているならば、他の参加者と話をしている事はまず有り得ない……つまり、

「フェイトさんはデュエルゾンビじゃない……」
「だと思うんですけど……」
「ということはつかささんは……」
「無事……今頃はきっとフェイトさんに保護されているはずですわ」
「そうか……良かった……」

十代の口からようやく安堵の声が漏れた……

「とりあえず、私達もこれから地上本部へ向かって仲間を集めようと思っているんですけど、十代君も一緒にどうです?それでもう少し詳しくお話聞かせてくれません?」
「ああ、わかったぜ」

十代は喜んでクアットロの言葉に同意する。その表情は先程までの焦りに満ちたものではなかった。それを見て、

(ふふ、上手くいきましたわぁ)

クアットロは内心で笑っていた。実際の所、クアットロが十代達に語ったフェイトを見かけたという話は全くの嘘である。


123 :クアットロがもってった!セーラーふく ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 15:05:37 ID:a0liKBoT
結論から言えば、クアットロにしてみればデュエルゾンビの話の真偽などどうでもいい話である。
むしろ、フェイト達がデュエルゾンビとなって殺し合いに乗っているならば労せずして参加者を減らせるのでその方が都合がよく、つかさを襲っているフェイトを止める必要など全くない。
だから十代の言葉に耳を貸す必要などないはずであり、このまま十代を他の所へ行かせても良かった。
更に言えば極端な話十代が本人の意思とは別にその情報で他の参加者を混乱させようとしているとしてもなんら問題はない。

では何故、わざわざ嘘を吐いてまで十代を説得し手元に置こうとしたのか?
それはクアットロの求めていた手駒に十代が適任だったからだ。
十代はクアットロにとって未知の世界から連れてこられた参加者であり、かつ自分の事を何も知らない。
アンジールのように別の世界でクアットロを知っている、シャマル達のように敵対していたクアットロを知っているのとはわけが違う。
十代にしてみれば、今見えている善良なクアットロが全てだと判断するだろう。
仮に疑われる状況になったとしても十代は自分を信じてくれると……
更に、未知の世界の出身者である十代からの情報はクアットロにとって魅力的である。もしかしたらアンジールの言っていたマテリア以上の情報が手に入るかも知れない。
そうなれば、脱出や扇動など今後にとって色々と都合が良い。
だからこそ、クアットロは十代を説得したのである。そう、全ては自分の為に……



   ★   ★   ★



そして、3人は再び地上本部へと足を進める。流石にバイクによる3人乗りは無理なので十代が乗っていたバイクは十代のデイパックにしまってある。
その道中、クアットロとシャマルは十代からより詳しい話を聞いていた。十代達がこの殺し合いに呼ばれる前にいた異世界での話やデス・デュエルに関する話等を……

「え?それじゃあ、そのプロフェッサー・コブラがデス・デュエルを行ったのは……」
「ああ、コブラの子供を生き返らせるためだった……」

クアットロとシャマルは十代からコブラがデス・デュエルを行った理由……何者かの力を借りコブラの死んだ子供を生き返らせる為だという話を聞き大きな驚きを見せた。
その表情を見て十代は、

「クアットロさんもシャマル先生もどうしてそんなに驚いているんだよ?」

と、思わず聞く。それに対しシャマルが、

「ええ……何だかプレシアに似ていると思って……」
「プレシア?それって俺達に殺し合いをさせようっていう……」
「そう……プレシアも昔……」

シャマル達は十代にプレシアにも死んだ娘アリシアがいて、彼女を生き返らせる為にPT事件を起こした事を語った。
但し、フェイトに対して疑心を抱かせない為、プレシアがフェイトを造ったという話は伏せている。

「それじゃあ、プレシアがこの殺し合いをさせようっていうのは……」
「その可能性は高いですわね」

十代はその話を聞き、プレシアがこの殺し合いをさせようという理由はコブラがデス・デュエルを行った理由と同じもの……死んだ娘であるアリシアを生き返らせる為だと考えた。

そして、それと同じ事をシャマルとクアットロも考える。
実の所、PT事件の事から考えプレシアがアリシアの復活の為にこの殺し合いを開いたのではという事自体はシャマルもクアットロも容易に推測出来ていた。
だが、十代からデス・デュエルの話を聞くまでは可能性の1つ程度にしか考えていなかった。
何故なら、異なる並行世界や時間軸から呼び出せるのであれば、そこにいるアリシアを連れて来るなり、その世界のプレシアに成り代わるなりすれば済む話なのでわざわざ殺し合いを開く必要はない。
そう、この殺し合いとアリシア復活の因果関係が見受けられないのだ。


124 :クアットロがもってった!セーラーふく ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 15:08:21 ID:a0liKBoT
だが、十代からコブラが行ったデス・デュエルの話を聞いた今はどうだろうか?
デス・デュエルの仕組みはデュエルを行ったり、モンスターを召喚する事によりデス・リングを介し体力や闘気を奪うものである。
そしてその奪った体力や闘気は何処かに集められている……
それと同じ事がこの殺し合いでも行われているのではないか?
そう、参加者に付けられている首輪がそのデス・リングに相当する可能性があるのだ。
この殺し合いで起こる戦いを通じ首輪を介して何かを蒐集し、それをアリシア復活の為に利用する……
その可能性は十分に有り得るだろう。

「今、そのデス・ベルトは無いんですよね」
「ああ、言われてから気が付いたけど、無くなっているな。今まで外せなかったはずなんだけどな……」
「となるとプレシアが外したという可能性が高いわね」

今現在、十代の腕にはデス・ベルトは無い……この事実から3人はデス・ベルトの構造が首輪の構造に近い物であり、それを調べられるのを避ける為に外したのではと考える。
そして、それは先程の説の可能性をより強めるものとなった。

「デス・ベルトを付けていたのは他に誰がいます?」
「明日香と万丈目、それにレイだ」
「じゃあ、その3人にも話を聞いた方がいいわね……」
「だけど万丈目はデュエルゾンビになっているかも知れないぜ」

そう、十代はクアットロの話からここにいるフェイトがデュエルゾンビにはなっていないと判断したが、エリオや万丈目もそうではないという保証はない。

「それならまずは明日香ちゃんとレイちゃんを探した方がいいですわね……それに、十代君の相棒達も探してあげないと……確かハネクリボーやネオス達でしたわね」
「助かるぜクアットロさん、クアットロさんって本当に良い人だな」
「あら、そうかしら?」

十代はクアットロが良い人だと完全に信用していた。だが、その当のクアットロは……

(本当に使える手駒で助かりましたわぁ♪まさか、首輪解除のヒントになりそうな情報が手に入るなんて)

十代を手駒としてしか見ていなかった。クアットロがこれまでに十代から聞いた話で大きな収穫だったのは先程のデス・デュエルの話、そして、

(十代君のいた世界ではカードのモンスターが実体化した……これは使えますわねぇ)

十代達のいた異世界ではデュエルモンスターズのモンスターが実体化していたという話……
今現在、十代が持っていたカードとデュエルディスクは没収されている事実から考え、クアットロは恐らくこの場においてもモンスター実体化する可能性が高いと考えたのだ。
没収したのはデバイス同様大きな力となる……それはつまり実体化して呼び出せるという事を意味しているからだ。

(つまり、そのカードとデュエルディスクがあれば私でもモンスターが召喚出来るってことですわよねぇ。それがあれば無力な命を弄び放題ですわねぇ♪
それに十代君の話だとデュエリストが持っているカードは40枚……で、デッキを持っている参加者は4人……ということは最低でも160枚没収された事になりますから……)

クアットロは没収されたカードの枚数から考え、参加者への支給品以外にも各施設にカードが置かれているのではと推測する。
それらのカードとデュエルディスクを手に入れれば大きな力になると考えたのだ。
無論、十代のカードは十代に渡すことで十代からの信用をより強固なものとすることが出来るという狙いもある。

(ここまで事が上手く進むと少し恐いですわねぇ……ともかく、私の手駒として頑張ってくださいじゅ・う・だ・い・く・ん♪)

クアットロは自分の思い通りに事が進んでいる事を内心で喜んでいた。
勿論、問題もある。先程の嘘がばれない為にはフェイトとの接触は避けなければならない。
その為、地上本部に向かった後もできるならばフェイトがいるであろう南に戻ることは避けたい所だ。
恐らく、十代の心境としてはつかさとフェイトの所に戻って彼女達に対しての誤解を解きたいであろうが、なんとか上手く誘導し接触させない様にしなければならない。
だが、今の十代はクアットロを信用している……大体のことであればクアットロの言葉に従ってくれるだろう。
今は地上本部に向かい、情報や手駒を集める。その後のことはそこで考えればいいだろう。クアットロはそう考えていた。

そんなクアットロと十代を見てシャマルは内心で、


125 :クアットロがもってった!セーラーふく ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 15:11:41 ID:a0liKBoT
(クアットロ……)

クアットロの言動に対し微妙な違和感を覚えていた。

クアットロは改心した……確かに今までの言動を見る限りは全く問題は無いし、十代に対する説得も上手くやってくれていた。
恐らく自分では十代を説得する事は出来ないだろうとシャマルは思っていた。
そして、彼女は仲間達を集めて脱出する為に尽力してくれている……シャマルの目にもそう見えている。

だが……何かが引っ掛かるのだ。
そう、これが全て自分達を騙す為の策略であっても何ら不思議は無い……。
例えば、自分や十代から信用を得て自分達を手駒にするといってもおかしい所は何もない。
クアットロの言動にはそういうものが微かに感じられる……

それでも……

(ダメよ……クアットロは改心したんだから……私が信じてあげなくちゃ……)

ひとまずその疑心を振り払うシャマルであった。

こうして3人はE-5にある地上本部へと近づいていく。そして、時刻は放送まで後数十分という頃になろうとしていた……



【1日目 早朝】
【現在地 E-5】

【クアットロ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】左腕負傷(簡単な処置済み)、眼鏡無し、髪を下ろしている、下着無し
【装備】高良みゆきの制服@なの☆すた、ウォルターの手袋@NANOSING
【道具】支給品一式、ナンバーズスーツ(クアットロ)、クアットロの眼鏡、ランダム支給品(確認済み、元アンジールのもの)×1
【思考】
 基本:この場から脱出する。
 1.地上本部へ向かい情報、手駒、カード、デュエルディスクを探す。
 2.十代とシャマルの信頼を固めて、とことん利用し尽くす。
 3.聖王の器の確保。
 4.他のナンバーズともコンタクトをとる。
 5.フェイト(StS)との接触は避ける。
 6.下と胸に違和感が……
【備考】
 ※地上本局襲撃以前からの参戦です。
 ※参加者は別々の世界・時間から連れて来られている可能性に至りました。
 ※アンジールからアンジール及び彼が知り得る全ての情報を入手しました(ただし役に立ちそうもない情報は気に留めてません)。
 ※アンジールの前では『アンジールの世界のクアットロ』のように振る舞う(本質的に変わりなし)。
 ※改心した振りをする(だが時と場合によれば本性で対応する気です)。
 ※デュエルゾンビの話は信じていますが、可能性の1つ程度にしか考えていません。
 ※この殺し合いがデス・デュエルと似たものではないかと考えています。
 ※殺し合いの中で起こる戦いを通じ、首輪を介して何かを蒐集していると考えています。
 ※デュエルモンスターズのカードとデュエルディスクがあればモンスターが召喚出来ると考えています。


126 :クアットロがもってった!セーラーふく ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 15:16:22 ID:a0liKBoT
【シャマル@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状況】健康、疲労(小)
【装備】血塗れの包丁@L change the world after story
【道具】支給品一式、白衣(若干血で汚れてる)、ガ・ボウ@ARMSクロス『シルバー』
【思考】
 基本:はやてを含めた、全ての仲間を守り抜く。
 1.地上本部へ向かい仲間を探す。
 2.はやてとの合流が最優先。はやて(A's)と合流したなら全力で守り抜く。
 3.できれば機動六課の仲間達とも合流したい。
 4.クアットロ、十代と共に行動する。
【備考】
 ※クアットロが別世界から連れて来られた事を知りました。
 ※参加者は別々の世界・時間から連れて来られている可能性に至りました。
 ※この場にいる2人のなのは、フェイト、はやての片方が19歳(StS)の彼女達でもう片方は9歳(A's)の彼女達だと思っており、はやて(A's)は歩けないものだと思っています。
 ※クアットロを信用するようになりました(若干の不安は残っている)。
 ※デュエルゾンビについては可能性がある程度にしか考えていませんが、一応エリオと万丈目がデュエルゾンビになっている可能性はあるとは思っています。
 ※この殺し合いがデス・デュエルと似たものではないかと考えています。
 ※殺し合いの中で起こる戦いを通じ、首輪を介して何かを蒐集していると考えています。

【遊城十代@リリカル遊戯王GX】
【状態】健康
【装備】バヨネット@NANOSING
【道具】支給品一式、んまい棒×4@なの魂、ヴァイスのバイク@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:殺し合いには乗らない。
 1.地上本部へ向かい仲間を探す。
 2.つかさとフェイト(StS)に会って誤解を解きたい。
 3.クアットロさんって良い人だなー。
 4.余裕があればハネクリボーやネオス、E・HERO達を探す 。
【備考】
 ※参加者は別々の世界・時間から参加者は別々の世界・時間から連れて来られている可能性に至りました。
 ※フェイト(StS)が自分とは別の世界・時間軸から呼ばれていてデュエルゾンビではないと判断しました。エリオ、万丈目についても断定はしないもののデュエルゾンビではない可能性があると思っています。
 ※この場にいる2人のなのは、フェイト、はやての片方が19歳(StS)の彼女達でもう片方は9歳(A's)の彼女達だと思っています。
 ※クアットロを完全に信用しています。
 ※PT事件の事を大まかに知りましたが、プレシアがフェイトを造った話は聞いていません。
 ※この殺し合いがデス・デュエルに似たものではないかと考えています。
 ※殺し合いの中で起こる戦いを通じ、首輪を介して何かを蒐集していると考えています。

【チーム:銀幕劇場】
【共通思考】
 基本:仲間と情報を集めてこのゲームから脱出する。
 1.地上本部へ向かい仲間と情報を集める。
 2.明日香、レイと合流しデス・デュエルに関する情報を集める。
【備考】
 ※殺し合いの目的がアリシア復活の可能性があると考えています。
 ※殺し合いを通じ首輪を介して何かが蒐集され、それがアリシア復活に利用されていると考えています。
 ※デス・ベルトと首輪の構造が似たものではないかと考えています。

【高良みゆきの制服@なの☆すた】
 こなた、かがみ、つかさの友人である高良みゆき(このロワでは非参加)の制服。こなた達が来ているものと外見上は全く同じな普通の制服。

【デス・デュエルについて】
プロフェッサー・コブラが十代達デュエルアカデミアの生徒に課したデュエル。
表向きにはデスベルトを介してデュエルのデータを集めてデュエリストの実力を測るものだが、
実際はデュエルを行うことでデス・ベルトを介しユベルに体力や闘気を吸収させ、ユベルの力でコブラの子供であるリックを生き返らせる為に行われた。
なお、コブラは十代とのデュエル後、ユベルの力によりリックの幻を見せられそのまま行方不明になったが、十代達に付けられたデスベルトはそのままで異世界に飛ばされた後も機能し続けた。
デス・デュエルと本ロワが関係あるかどうかについては後の書き手さんにお任せします。


127 : ◆7pf62HiyTE :2008/11/03(月) 15:22:00 ID:a0liKBoT
無事投下完了しました、ちなみにサブタイトルの元ネタは「JAMがもってった!セーラーふく」(JAM Projectによる「もってけ!セーラーふく」のカバー)です。


128 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/03(月) 17:43:27 ID:sRu7Skp0
GJ!
>今現在クアットロは下着を着けていない
また「ぱんつはいてない」か!www
まったくけしからん、もっとやれw

129 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/03(月) 22:07:18 ID:8/lWXTk2
投下乙です。
またもナンバーズがアレな事にwここの書き手はナンバーズに何を期待しているんだw
それとクアットロwお前に制服はきついだろ。
まあクアットロの暗躍は順調な様子。十代、なんか絶好のカモポジみたいだ。
シャマル先生の心が非常に揺れてどう動くか、楽しみだ。


130 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:11:57 ID:N3+Lwp5/
会場の中心にそびえる巨大な建築物――地上本部。
その二階にはやてとキングの二人は居た。前方にキング、その後方にはやて。
はやては決してキングの横を歩こうとせず、その後ろを歩き、キングは自身の携帯をいじりながらマイペースに歩を進めていた。

(これからどないするかな……)

キングの後ろ姿を眺めつつ八神はやては思考を始める。
思考の内容はこれからの行動について。

――まず始めに何をするか。
これは今更考えるまでもない。
戦力の確保。
殺し合いに乗っておらず且つ戦闘に長ける戦士を集結させる。
今のところその第一候補はヴィータ、そして他の守護騎士の面々。
ただヴィータを仲間にする為にはある問題を解決する必要がある。
その問題とは、関係の修復。
ヴィータから見れば自分は赤トカゲを殺した張本人。あのヴィータが、そんな殺人鬼と協力関係を結ぶ訳がない。
とはいえ問答無用に攻撃される事も無いとも思う。
何故なら自分は「八神はやて」だから。
先の戦闘においてもヴィータは自分にトドメを刺さなかった。いや、刺せなかったのだろう。

『何でオメーはそんなにはやてに似てるんだよ!』

この台詞を口にしたヴィータからは、大きな葛藤が感じられた。

殺人鬼だと頭で理解していても、攻撃することが出来ない。
この殺人鬼があまりに「八神はやて」と酷似しているから。
怒りの鉄槌を何処に振り下ろせばいいか分からない。
そんなヴィータの苦悩が、あの一言から垣間見えた。

(なかなか厄介なことになっとるなぁ……)

「八神はやて」に似ているとはいえ、明らかに敵として見られている状況。
協力関係を結ぶことは決して容易ではない。だが、やるしかない。
この遊戯でプレシアに辿り着くには、戦力が必要不可欠。しかしその戦力は限られていて、時が経つにつれ減少していく。
実力者は必ず懐に入れなければならない。
まずはヴィータ。その力を必ず手に入れる。

知らず知らずの内に必要以上の力を込めていた両手。
このゲームを乗り越えた時、自分は『本当の家族』を救う事ができる。
これはチャンスなのだ。今尚苦しんでいる彼女達を救える唯一のチャンス。
必ず乗り越えてみせる。

「みんな、待っててや……」

ギュッと両手を握り締め、『本当の家族』を思う。
そしてその瞬間、数時間前まで確かに存在した迷いがはやての瞳から消え、代わりに悪魔の如く冷酷な瞳が携さわった。


――全てを利用する。
――なのはちゃんも、フェイトちゃんも、ヴィータも、シグナムも、シャマルも、ザフィーラも、六課のみんなも、『本物のヴィータ達』を救うために利用する。
――悪魔と罵られても、構わない。


この時、夜天の主は人の道を踏み外す覚悟を、決めた。





131 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/06(木) 22:13:31 ID:vj4kpqVm
 

132 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:14:28 ID:N3+Lwp5/




(へぇ、なかなか良い顔になってきたじゃん)

そしてその覚悟の表情を盗み見た男が一人。
最強のアンテッドを自負する男――キング。
僅かに顔を横に向け後ろを見ると、良い感じに思い詰めた顔をしたはやて。
最初に出会った時とは比べものにならない程の冷淡さを見せているはやてを見て、キングは愉悦を感じる。

(狂人さん一人出来上がりってね。案外チョロかったね)

一言二言追い討ちを掛け、後ろを歩く少女を更に狂わせたい。
だがキングはそれをしない。
何故か?
見つけたからだ――はやてを壊す以上に面白いものを。

(これは相当な量だね。出来ればゆっくり確認したいんだけど……)

携帯の画面に映る『それ』を見ながらキングは思案する。
『これ』は相当な量を誇る。とてもじゃないが歩きながら全てを把握するのは不可能に近い。
何とか一人になり、ゆっくりと『これ』について考えたい。
何か方法はないか――――アイディアは直ぐに浮かんだ。




「ねぇ、はやて?」
「へ? あ……な、何や?」

殺伐とした思考の中、いきなり現実に引き戻され、はやては僅かに狼狽を見せた。
だがそれも一瞬。
直ぐさま微笑みの仮面を被りキングに応対する。

「なにキョドってんの? しっかりしてくれよ、頼むからさ」
「……ゴメンな。ちょっと考えごとしてて、な」

流石ははやて。古狸とも呼称されるだけのことはある。
嘲りを含んだキングの言葉にも、微笑みの仮面は揺らがない。

「それでどうしたん? 何か見つけたんか?」
「ああ、一つ提案がね」

提案、という言葉にはやては何か嫌な予感がした。
この何も考えてなさそうな男が提案?
どうせロクな物ではないだろう。

「あのさ。もうちょっとこの建物を調べていかない?」

――やっぱり。
心の中で大きく溜め息を吐き、だがそれを面に出す事なくはやては口を開く。

「調べるって……今からか?」

そう言いはやては自分が立つ床、つまり地上本部を指差す。
そんなはやてににキングは微笑みながら頷く。



133 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/06(木) 22:14:53 ID:vj4kpqVm
 

134 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:16:48 ID:N3+Lwp5/
「うん。もしかしたら何か武器とか隠されてるかもしれないじゃん」

キングの言葉にはやては困ったような苦笑いを浮かべ――

(何言うとんのや、コイツは……)

――心の中で大きく舌打ちをした。

――今この瞬間にも、貴重な戦力であるヴィータはドンドン離れて行っている。
ヴィータを見失ったらどうするつもりだ?
お前がヴィータの代わりに戦うとでも? ショボい念力しか使えないお前が?
ふざけるな。
それにこの巨大な地上本部を二人で調べ尽くせと言うのか?
有るか分からない希望に縋り時間を無駄にしろと? ヴィータという確実性の高い戦力を捨ててまで?
馬鹿も休み休み言え。少しは物を考えて判断しろ。



「……私としては今すぐにでもヴィータを探しに行きたいんやけど……」

怒りと呆れを心中に押し隠し、言葉を紡ぐはやて。

「んじゃ俺は上の方調べてくから、はやては地下を宜しく。一時間経ったら最上階にある展望室に集合ね」

――だがそんなはやての言葉にもキングは聞く耳を持たない。
ヒラヒラと手を振り階段がある方へと歩き始めた。

「ちょ! ちょっと待っ――」

制止の言葉も虚しくキングは角を曲がり完全に消えた。
最早怒り、憤りを通り越し、呆然とする事しかできない。

「なんなんや! あのアホは!!」

キングが去って数秒後、はやては感情のままに怒鳴り声を上げた。
仮面を被ることすらも忘却の彼方。
その手に握られたツインブレイズは、哀れ渾身の力で床へと叩き付けられた。







それから数時間後、キングは計画通りに一人で地上本部最上階の展望室に居た。
全面に張られた巨大なガラス窓から映る圧巻の光景。
それは会場全体を一望するには余りある程である。
しかしそこに居る唯一の男は、そんな絶景にも脇目を振らず、片隅に置かれた長椅子に腰を下ろし一心不乱に携帯を見つめていた。

「……ふうん」


『それ』を一言で言い表すのならば異質であった。



135 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:19:07 ID:N3+Lwp5/
今時の携帯には必ずある機能――インターネット。
パソコンと比較すれば確かに制限はあるが、ふとした時に調べ物をする時にはこれ以上なく便利な代物だ。
それは携帯愛好者のキングも例外ではなく、度々に利用させてもらっている。
――そして『それ』はインターネット機能の一つ『お気に入りフォルダ』の中に隠されていた。

「……こんな物が隠されてたなんてね。プレシアもやってくれるよ」

元々フォルダに登録されていたサイトは全て消されていた。
残されていたサイトは『これ』のみ。
そのサイトのタイトルは――

「――『CROSS-NANOHA』、ね……どうにも訳が分かんないな」

携帯の画面に目を向けながらキングが呟いた。
その表情はキングにしては珍しく疑問の色に染まっている。

それは不思議なサイトだった。
背景は真っ白。あるのは十数のリンクのみ。

――『HANNMOKU NO SUBARU』、『YUUGIOU-GX』、『NANOSHING』、『MASUKARE-DO』、『RYU-KI』、
『KABUTO』、『DEJIMON』、『TRIGUN』、『NANOSUTA』、『KATAYOKU NO TENSHI』、『SESSYOUMARU』、『OWAKURO』、『MEBIUSU』、『L』、『GETTA-』、『MEDORE-』、『ARMS』

それぞれのリンクの先にはまるで漫画や小説のようなタイトルがあり、そして長々とした文章が続く。
それらは意味を為さない文章ではなく、立派な物語として成立していた。

「……何なんだろ、これ」

正直に言えばさっぱり意味が分からなかった。
物語ということは理解できた。そしてこれらの物語にはある特定の人物達が必ず
と言っていい程に登場する事も。
その登場人物と同姓同名の人物がこの殺し合いに参加している事も。

「なのは、フェイト、はやて、スバル、ティアナ、キャロ、エリオ…………大体の物語はコイツ等を中心に動いている……」

他にも多数の人物が登場するが、特にこの七人は別格の扱いで出てくる。
その中でも群を抜けている人物が、高町なのは。
殆どの物語で、絶対的な実力を持った魔導師として扱われている。
そしてその親友として出てくる八神はやてとフェイト・T・ハラオウン。
スバル達はなのは達の教え子で、なのは達と共に事件解決に奔走する役所だ。

基本的にこれら十数の物語は四つに分類できる。

一つ。突如違う世界から現れたある人物が、なのは達と協力し、ジュエル・スカリエッティという男の野望を阻止する物語。
『KATAYOKU NO TENSHI』、『SESSYOUMARU』、『L』『ARMS』、『MEDORE-』、などが分類できる。

二つ。別世界に渡る力を持つなのは達が、謎の未開拓の世界に飛び事件を解決していく物語。
これには『YUUGIOU-GX』、『DEJIMON』などが分類できる。

三つ。初めからなのは達の世界とまた別の世界が混濁されており、なのは達や別の世界のキャラが協力、または敵対し進んでいく物語。
これに分類出来るのは『HANNMOKU NO SUBARU』、『NANOSHING』、『NANOSUTA』、『KABUTO』、『RYU-KI』、『OWAKURO』、『GETTA-』

四つ。『子供時代』のなのは達が登場し、ある世界から飛ばされたキャラと出会ったり、元々世界が混濁された状態から様々な事件を解決していく物語。これら物語にはスバルやティアナ達は登場しない。
『MASUKARE-DO』、『TRIGUN』、『MEBIUSU』などがそうだ。


時系列もバラバラ。平行世界という言葉を信じたくなる程に様々な物語が繰り広げられている。
だが、基本的にどの物語でも高町なのは等の性格は変わらない。軸がぶれることなく、自らの信念を通している。



136 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/06(木) 22:20:28 ID:oROL7osz



137 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:21:16 ID:N3+Lwp5/
「でもあのはやては……?」

だがそこである疑問が浮かんだ。
それは、自分が出会った「八神はやて」について。
あの八神はやては明らかにおかしい。
このサイトに掲載されているどの八神はやてとも違い、非常に腹黒い印象を受ける。それこそ、仲間が襲われているという状況だけで簡単に殺害を犯す程に。

「少なくともこのサイト内にそんな性格のはやては居なかった…………やっぱ嘘も混じってるのかな、コレ?」

しかし、とキングは再び熟考する。
これらの小説が全て嘘だという事もまた断言できない。そもそもコレだけの文量。しかも閲覧者は自分のみ。
自分一人を騙す為にこれ程大掛かりの文章を創作するのか?
そして決して無視する事の出来ない一つの物語――『MASUKARE-DO』。




それは不思議な話だった。

子供時代のなのは達、幾人にも及ぶライダー達、そして怪人、ワーム、アンデッド。
それぞれが絡み合い物語を形成する、それが『MASUKARE-DO』であった。
そして『MASUKARE-DO』に登場するキング――――全てが自分と同じ。境遇も、選択も、まるで何者かから観測されたかのように記されていた。
そう、『MASUKARE-DO』内のキングは正に自分そのもの。
その事実にキングは底知れぬ不気味さを感じた。

「ホント訳分かんないね……」

そして最後に残るもう一つの事実。
『CROSS-NANOHA』内にある小説、その中から同姓同名の人物がこのゲームに参加している事。
例えば『HANNMOKU NO SUBARU』からはルルーシュ・ランペルージ、C.C.、カレン・シュタットフェルト、シャーリー・フェネットの四人。
『NANOSHING』からはアーカード、アレクサンド・アンデルセン、インテグラル・ファルブルゲ・ヴィンゲート・ヘルシング、シェルビー・M・ペンウッドの四人。
以上のようにそれぞれの物語から一人から四人、誰かしらがこの殺し合いに参加している。

「コイツらも俺同様、誰かしらに観測され物語として記録された? そもそも観測者って誰? 可能性として一番高いのはプレシアだけど、それぞれの文章が違い過ぎる……まさか組織ぐるみでの作業?
だとしたらプレシアが指揮して? それとも偶然発見し盗み出した? …………ああ、もう! こんがらがってきた!!」

それまで真剣な表情で考察を続けていたキングであったが、最後の叫び声と共に携帯を閉じベンチへ寝転がる。

「そもそもこんなの考えたって分かる訳ないじゃん。…………まぁ話半分に受け取っておけばいいか……」

相当な量の文章を朗読した事、慣れない考察を長々と続けた事、それらが予想以上にキングを疲労させていた。
気分転換の意味も込め、この時初めてキングは窓外に視線を向ける。
視界に映る数多のビル群、その先にボンヤリと見える緑の森林、そしてこの殺し合いの会場でも変わらず世界を照らす太陽。
圧倒的な光を放つそれを目を細め眺めていると、ある人物がキングの脳裏に浮かんだ。
といっても正確な姿形は全く浮かばない。
分かるのは男という事だけ。

その男は『MASUKARE-DO』の中でこう言っていた。
「自分は天の道を往き総てを司る男だ」と。
そしてその男は言葉通りの実力を有し、常に不遜な態度を崩さない。
数々のライダーの中でもずば抜けた力を持つライダー――仮面ライダーカブト。
その人間体、天道総司。
この殺し合いにも参加している男だ。



138 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:24:18 ID:N3+Lwp5/
「天道、か……会ってみたいね」

理由は勿論一つ。
天道を、この何処までも自分を信じているこの男を――壊したい。
自分が如何に無力なのかを教え、そして絶望に歪んだ顔を見てみたい。

「ふふ、楽しみだなぁ」

無邪気な微笑みと共にキングが立ち上がった。
手に携帯を持ち、天を照らす太陽を見つめ、王は動き出す。

「んじゃ、はやてが来るまでノンビリしようかな…………ってアレ?」

――そして発見する。
自分が座るベンチの右手側、方角で言えば北に位置するベンチの前にあるそれを。
二重の円に三角形が二つ組み合わさり形成された六亡星。円と円の間に書かれた謎の文字列――俗に言う魔法陣がそこにはあった。







十人程の人間が乗れる透明なエレベーター。
その中で八神はやては一人、怒りに身を震わせていた。
何処までも自分勝手なキング。
その発言一言一言が気に触るキング。
ウザったい。ふとすれば殺意すら湧く。
結局あの後、はやてはキングの言う通り地下を探索した。
正直、キングを放置し一人で行動する事も考えたが折角の戦力を失う事は忍びない。
それにデバイスが無い今、はやて自身の戦闘力は皆無と言ってもいい。
そんな状態で外に出て、殺し合いに乗っている参加者に出会えば、それだけでゲームオーバー。
キングを捨て置くのは余りに拙い。

「せやけど、あの馬鹿はどうすればいいんやろ……」

キングのことを考える度に溜め息が出て、頭が痛くなる。
唯我独尊。我が儘で自己中心的。
その癖に実力はあまり高い訳でもなく念力が使える程度。
駒としては最悪の部類だ。

(早いとこ手ぇ切らんとあかんな……)

はやてがその結論に至ったその時、甲高い電子音と共にエレベーターが止まる。
自動的に扉が開き、そして視界に広がる圧倒的な光景。
とはいえはやてには見慣れた光景。大した感動を覚えるでもなく、はやては首を左右に振り目的の人物を探し始める。

「あ、やっと来たね」

と、探し出す前に向こうから声を掛けてきた。
相も変わらず右手で携帯をパカパカと開け閉めしながら、近付いてくる。

「そっちは何か見つかった?」
「いや、こっちはなんも無かったで」



139 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:26:11 ID:N3+Lwp5/
途端、あからさまなまでにキングの顔が変化する。

「はぁ? 何時間も時間掛けて何も見つけられなかったの? おいおい、止めてくれよマジで」

両手を広げ、ヤレヤレと首を左右に振るキング。
身体全体で大袈裟に表現される落胆。再びはやての頭に血が登り始める。

「ま、良いけどさ」

だがはやてが怒りを爆発させるより早く、キングはそう言い後ろに振り返った。
突然の行動に訝しげな表情を浮かべるはやてをそのままに、何処へともなく歩を進め始める。

「ついてきなよ。コッチに面白いものがあるよ」

――面白いもの?
その言葉に疑問符を頭に浮かべ、はやてはキングの後を追い円形状の展望室を右手側に歩く。
巨大な窓から射し込む日光が時間の経過を教えてくれる。久方振りに見た太陽は眩しかった。

「これだよ」

二十秒と歩かず、それの存在にはやても気付いた。
管理局局員が良く談笑を繰り広げているベンチ。その直ぐ側に描かれた緑色の魔法陣。
はやての表情に僅かな驚愕が浮かぶ。

「これは……」
「どう? 面白いだろ?」

キングの言葉に答えを返すことなく、はやては膝を付き真剣な表情で魔法陣を調べ始める。
そんなはやてを後目にキングは、魔法陣の近くに置かれた看板を眺め、口を開く。

「『魔力を込めれば対象者の望んだ場所にワープできます』、だってさ。どう? 本当だと思う?」

キングの問いに、見上げるような形で顔を上げはやては答える。

「確かにこれは転移魔法の陣や……」
「転移魔法?」

聞き慣れない言葉に不思議な顔を浮かべるキング。

「ようするに対象物を任意の空間に瞬間移動させる魔法のことや。多分魔力を込めれば発動すると思うで」

はやての説明によりその意味を理解したのか、キングは一つ頷く。
そもそもキング自身、瞬間移動という特殊能力を持っている。多少の驚きは感じるものの、充分に有り得るものと判断できた。

「……ってことは本当にワープできるってこと?」
「おそらく……」

キングの問い掛けに、はやては曖昧に頷く事しか出来なかった。



140 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:28:25 ID:N3+Lwp5/
――確証がない。
確かに転移するにはするだろうが、本当に望み通りの場所に転送するかは分からない。
もしかしたら禁止エリアに跳ばされズガン、という可能性だってある。
おそらく、この転送魔法を設置したのはプレシア自身。
信用できるのか?
罠ではないのか?

眉間に皺を寄せ魔法陣を睨むはやて。
その頭を分かる筈のない疑問が浮かび続ける。


「ねぇ早くしようよ」


――と、そこで思考の泥沼に埋まり掛けたはやてを引き上げる者が居た。
その名はキング。
キングは魔法陣の中で急かすような視線をはやてに向けている。

「早く、って使う気なんか!? こんな怪しいものを!?」
「何? もしかしてコレが罠だと思ってるの?」
そうや、と頷くはやてにキングは大袈裟に溜め息を吐く。

「こんな大人数を集めて、こんな馬鹿げたゲームを開催する奴だよ? 罠に引っ掛かって死亡、なんてつまらない殺し方をする訳ないじゃん」

純粋な悪だからこそ共感できる悪の思想。
確かに一理ある、とはやては感じた。

「それに、あんたが会いたがってた『家族』の所にも跳べるかもよ」
「…………そや、ね。物は試しや。やってみるのも悪くないかもしれへんな」

その表情には今だ迷いが感じ取れたが、だがそれでもはやては――頷いた。
ゆっくりと魔法陣に足を踏み入れる。
罠という可能性は消えない。だがこれを使えばヴィータの元に一瞬で辿り着く。
――これは、賭けだ。

「……いくで」
「ああ」

徐々に魔力を魔法陣へと集中させていく。
淡い緑色に魔法陣が発光し始める。
光は段々と輝きを増していき、そして一際強烈な発光と共にキングとはやての姿が――――かき消えた。







「……ここは?」

光が止んだと思えば、そこに立っていた。
先程までいたガラス張りのフロアとは明らかに違う景色。
地面には雑草が生え、空気は瑞々しい。
周囲には緑色の葉をつけた木々、左手の方には川が流れている。

「へぇ、本当にワープするとはね。やるじゃん、はやて…………はやて?」



141 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/06(木) 22:29:53 ID:vj4kpqVm
 

142 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:29:58 ID:N3+Lwp5/
男――キングにしては珍しい褒め言葉。
だがその言葉を向けられている筈の少女は何処にも居ない。
キングも首を捻り軽く周囲を見渡すが、その姿は見当たらなかった。

「あれ、はぐれちゃったかな……ま、いっか」

一分にも満たない短い探索の後、キングは思考を切り替え、歩き始める。
行き先は決めていない。何となく人の気配がする方に進み――――見つけた。
だがそれは八神はやての姿ではない。
ピンク色の髪の毛に何処か辺境の民族が着るような衣服を纏った少女が一人。
そして傷だらけ――特に脇腹から酷い出血をしている天然パーマの青年が一人、居た。

「え……あ……」

ピンク髪の少女が怯えたような視線をキングに向ける。
恐怖と猜疑、疑心が入り混じったその瞳。キングは直ぐさま理解する。
コイツは壊しがいがある存在だ、と。

「そんなビビんなくたって良いのに……俺はキング、殺し合いには乗ってないよ」

両手を頭の上に挙げ、出来るだけ優しく微笑む。
だがその微笑みには、明確な愉悦が滲み出ていた。

「アンタの名前は?」
「キャ、キャロ・ル・ルシエです……」

――キャロ・ル・ルシエ。
聞き覚えはないが見覚えはある名前。
そう、確か『CROSS-NANOHA』の作品に登場する魔導師の一人。
八神はやての部下にして、機動六課フォワードに属するサポート専門の魔導師だった気がする。

「よろしくね、キャロ……で、そっちの男は?」
「天道総司って言ってました……ついさっき気絶してしまって……」

瞬間、キングは目を見開く。そして同時に顔を俯かせ口を抑える。
その時、キングの心中を支配した感情は圧倒的な歓喜。

(コイツが天道ね……。何だよ何だよ、偉そうな事言ってたわりにはもうボロボロじゃん)

『MASUKARE-DO』内にて最強クラスの力を持つライダー。
つい先程、心の底から壊してみたいと考えた男が直ぐ目の前に居る。
感情を押さえられない。
口にある手を離せば笑い転げてしまいそうだった。

(やってくれるじゃん、プレシア! 今だけ、今この瞬間だけは感謝してやるよ!)

――キャロ・ル・ルシエ
――天道総司

転移された先にて遭遇したものは、王が願った通りの極上の玩具。
二つの玩具を手に入れ、王は笑う。





143 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/06(木) 22:31:46 ID:vj4kpqVm
 

144 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:32:22 ID:N3+Lwp5/




あれから直ぐ、天道さんが倒れた。
やっぱり傷の具合が良くないらしく、脂汗を額に浮かべ苦しそうに呻き気絶してしまったのだ。
幸いな事に自分は治癒魔法が使える。魔力の循環効率が鈍く感じたが、一命を取り留めることは可能だろう。
川の畔に天道さんを横たえ、治癒魔法を行使する。
絶対に死なせない。
この人は言っていた。
「自分は天の道を往き、総てを司る」と。
当然のようにそう言った天道さん。
その自信に満ち溢れた姿は、疑心暗鬼になりかけていた自分の心に一筋の光をくれた。
この人なら信じられる。
本当にこの殺し合いを打破してくれる筈だ。
絶対に、死なせない。
その一心で治療を続け、そして漸く天道さんの容態が落ち着いてきたその時、一人の男の人が現れた。
赤いジャケットを羽織り、沢山のアクセサリーを付けた男の人。


こんな殺し合いの場だというのにその人は笑っていて、しかもその瞳は冷たい光を
携えていて、怖かった。
どうしよう? この人が殺し合いに乗ってたら、どう戦おう?
身構えて、でも恐怖心は隠せなくて、迷いに頭を悩ませていると、その人の両手が動いた。
降参するように両手を頭より上に挙げ、名乗ってくれた。


名前はキングさんと言うらしく、さっきから携帯を弄っている。
最初は悪い人に見えたけど、殺し合いには乗っていないらしい。
子供っぽく微笑みながら、そう語っていた。
その表情に私も少し安心し名前を名乗る。
私の名前を聞いた時、キングさんは何故だか少し驚いたような表情を浮かべていた気がした。
そして天道さんの名前も教える。
その瞬間キングさんは唐突に口を抑え俯き始めた。
私は一瞬だけ見た。笑っているキングさんを。
その笑みはさっきまでの優しげなものとは微妙に違い、獰猛な獣のそれに似て、見えた。

――ナンデスカ、ソノホホエミハ?

途端に心を漆黒が染める。
村を追放された時の光景が、自分を置いて何処かに消えたギンガさんの姿が、心に、浮かんだ。
違、う。ギンガさんは自分を裏切った訳じゃない。
何かしらの事情が有って、仕方無く私を放置したのだ。
キングさんも、そうだ。
殺し合いに乗っていないキングさんが、あんな怖い顔をする訳が、ない。
――天道さん。
横たわる天道さんの右手をギュッと握る。
温かい。
そうだ。みんなで協力すれば大丈夫。
フェイトさん、エリオ君、スバルさん、ティアナさん、なのはさん――みんなが居ればどんな事件だって解決できる。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
みんなが居れば――。



145 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:34:10 ID:N3+Lwp5/
気付けば空が白んでいた。
天道さんの顔に浮かんでいた苦悶は消えている。良かった。
私はそう思いながら、大きく安堵の息を吐く。
そして私達から少し離れた木に寄りかかっているキングさんは、微笑みを向けていた。

【1日目 早朝】
【現在地 D-7 川の畔】

【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(大)、精神疲労(中)、魔力消費(中)、脇腹に切り傷・左太腿に貫通傷(応急処置済み)
【装備】憑神鎌(スケィス)@.hack//Lightning
【道具】支給品一式×2、『かいふく』のマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、葉巻のケース
【思考】
 基本:殺し合いを止める。殺し合いに乗っている人がいたら保護する。
 1.天道さんを治療する。
 2.今は自分に出来る事をする。
 3.出来る限り天道を治療する。
 4.仲間を探し合流する。
[備考]
 ※別の世界からきている仲間がいる事に気付いていません。
 ※憑神鎌(スケィス)のプロテクトは外れておらず、待機形態のままです。
 ※キングに対し僅かな疑心を抱いています。


【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】重症(特に右脇腹)、気絶中
【装備】爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸、カブトエクステンダー@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル
【思考】
 基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
 0.気絶中
 1.天の道を往く者として、ゲームに反発する参加者達の未来を切り拓く。
 2.カブトゼクターとハイパーゼクターを取り戻してみせる。
 3.俺が望みさえすれば、運命は絶えず俺に味方する。
 4.感謝するぞ、加賀美。
【備考】
 ※参戦時期はACT.10冒頭。クロックアップでフェイト達の前から立ち去った直後。
 ※なのは、フェイト、はやて、クロノは一応信用、矢車は保留、浅倉は警戒しています。
 ※身体がいつものように動かない事を知りました。
 ※意識に反して、天道の体は既に限界が近い状態です。
 ※取り敢えず峠は越えました。




146 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:35:55 ID:N3+Lwp5/
【キング@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康、非常に上機嫌。
【装備】無し
【道具】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのはマスカレード
    キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのはマスカレード
【思考】
 基本 この戦いを全て滅茶苦茶にする
 1.天道とキャロで遊ぶ
 2.はやてとの合流は後ででも良いかな
 3.はやてとヴィータの決着が着いたら、残ったほうに真実を伝えて、その反応を楽しむ
 4.とにかく面白いことを探す
【備考】
 ※制限が掛けられている事に気がつきました
 ※ゴジラにも少し興味を持っています
 ※携帯電話は没収漏れです。写メ・ムービー以外の全ての機能は停止しています。
 ※携帯には相川始がカリスに変身する瞬間の動画等が保存されています。
 ※キングの携帯に外部から連絡出来るのは主催側のみです。
 ※カブトの資格は持っていません
 ※キングの携帯のお気に入りフォルダに『CROSS-NANOHA』へのリンクが存在します。






時は少し遡り、E-4に位置する図書館。
海鳴市にある物と酷似したそれは、その巨大さと造りにより市街地の中でも一際輝いて見えた。
そんな図書館の一階部分、そこに二人の男女が居た。

ベンチや椅子、机などが多数置かれた空間。
通常なら勉学に精を出す学生や、文字の世界に没頭した本好きの人々が席を埋め尽くしている筈のそこには、今二人の男女――ヴィータとミライだけが座っていた。
ヴィータは膝を抱え顔を俯けた、ミライは窓から射し込む光をボンヤリと眺めている。
会話は、ない。ただ、重苦しい沈黙だけが二人を包んでいた。


――暖かい日光に包まれ、ミライはただ後悔していた。

現れた化け物。
クロノの死。
クロノを犠牲に生き延びた自分。
自分はウルトラマン、勇気の戦士だ。なのに自分は、逃げた。
まだ幼い、未来ある少年を戦場に残しおめおめと逃げ出した。
変身さえ出来れば…………そう、何度も悔やんだ。
あの時メビウスに変身できていれば、未来は確かに変化しただろう。
あの化け物を倒す、とまではいかなくてもクロノと共に逃亡することは出来た筈だ。
だがあの時腕に嵌ったブレスレットは反応しなかった――――それが現実だ。
そしてクロノは死んだ。
大事な時に戦えないで何がウルトラマン、何が光の戦士。
僕は――戦士失格だ……。

ポタリ、とミライの唇から水滴が零れ落ちた。
それはズボンに当たり赤黒いシミを作る。
誰も死なせない。
そんな甘い決意は脆くも崩れ去り、だけどそれでも殺戮のゲームは続く。

余りの理不尽に精神(こころ)が折れそうになる。
後悔が自分の胸の中で暴れる。



147 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:37:06 ID:N3+Lwp5/
(すまない……すまない……すまない……すまない……)

心の中で何度も反芻される謝罪。そして、ミライは顔を上げる。

「行こう、ヴィータちゃん」

迷いに、後悔に、心を蝕まれ、だがそれでもミライは立ち上がった。
横に座るヴィータが、ミライへと顔を向ける。
その頬には涙の痕が残されていた。

「行くって……何処にだよ……」
「助けを求めてる人の元へだよ。死んでしまった……死なせてしまったアグモン君やクロノ君の分まで、僕達が戦うんだ」

大切な仲間をむざむざと死なせた――自分は戦士失格だ。
でも、だからといって膝を折って良い訳ではない。
いくら後悔しても、諦めたくなったとしても、それは許されない。
死なせた彼等の分まで、戦う。それが僕――ヒビノ・ミライに出来る唯一の罪滅ぼし。
僕は、折れない。
仲間の死、自分の無力さ、長い長い苦悩の末にミライは答えを導いた――


「だからヴィータちゃん、行こう! みんなを救うんだ!」
「でも、私は…………ごめん。一緒には、行けない」


――だがミライの決意に赤服の魔導師は首を横に振った。







ヴィータは迷っていた。
命を賭け自分を逃がしたクロノの姿を見て、自分以上に悲しんでいる筈のミライの決意を聞き――でも、迷っていた。

どうしても譲れない事があるのだ。
それは、闇の書の主――八神はやてについて。
守らなくてはいけない。
殺させる訳にはいかない。
ミライの言う意味も分かる。自分だってクロノの意志を継ぎ、戦いたい。
でも――無理だ。
助けを求める者、全てを救っていたら時間が掛かりすぎる。
そんな事をしていたら、はやてに出会う確率は低下する。
早く、一秒でも早くはやてに会って守護しなければならない。
自分は――守護騎士だから。
だから。
だから。
だから。
ごめん。
本当にごめん。
私は、お前と、協力、できない。



148 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/06(木) 22:38:38 ID:vj4kpqVm
 

149 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:39:12 ID:N3+Lwp5/
「ヴィータちゃん……?」
「約束する! 殺し合いにのった奴としか戦わない! それは約束するよ! でも協力は、出来ないんだ! ……はやてを、少しでも早く、はやてを救わなくちゃ、ダメなんだ……」

――少女は吐き出すように呟き、駆け出す。
ミライとは正反対の、出口へと続く道を全力で、振り返らず、走る。

「ヴィータちゃん!」

一拍遅れミライも走り出そうとし、止めた。
あれが彼女の決意。自分が決意したようにヴィータも決意したのだ。
――最も大切な人を護る。それもまた一つの決意だ。
それを制止する事など自分には、出来ない。
でも。
だから。
せめて。

(――無事でいてくれ……)

願おう。
彼女の、そして彼女が一番大切にしている者の無事を。
何時かまた会いたい。
そして今度こそ協力して、殺し合いを止めよう。
ヴィータから数分遅れ、ミライも外の世界に踏み出す。
ヴィータの姿は何処にも見えない。もう大分遠くに行ったのだろう。

「僕も、行かなくちゃな」

大きく息を吸い込み、自らの決意を果たす為、光の戦士も歩き始めた。


【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
【状態】疲労(小)、号泣、哀しみ、左肩に大きな切り傷 、迷い
【装備】ゼストの槍@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×1、デジヴァイスic@デジモン・ザ・リリカルS&F 、ランダム支給品0?1
【思考】
 基本 はやてを救って、元の世界に帰る
 1.悪い、ミライ……。
 2.八神はやて及び他の守護騎士たちとの合流
 3.そして彼らに偽者の八神はやてがいて、殺し合いに乗っていることを伝える
 4.ヴィヴィオを見付けた場合は、ギルモンの代わりに守ってやる
 5.赤コートの男(アーカード)はぶっ殺す。
【備考】
 ※はやて(StS)を、はやて(A's)の偽物だと思っています
 ※デジヴァイスには、一時的に仮パートナーとして選ばれたのかも知れません。
 ※なのは達のデバイスが強化されたあたりからの参戦です

【ヒビノ・ミライ@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】
【状態】疲労(小)、号泣、哀しみ、背に切傷 、強い決意
【装備】メビウスブレス@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0?2


150 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:40:41 ID:N3+Lwp5/
【思考】
 基本:殺し合いを止める。
 1.ヴィータちゃん……。
 2.助けを求める全ての参加者を助ける。
 3.なのは、フェイト、ユーノ、キャロと合流したい。
 4.アグモンを襲った大男(弁慶)と赤いコートの男(アーカード)を警戒。
【備考】
 ※メビウスブレスは没収不可だったので、その分、ランダム支給品から引かれています。
 ※制限に気付いてません。
 ※デジタルワールドについて説明を受けましたが、説明したのがアグモンなので完璧には理解していません。






そして誰も居なくなった図書館。その二階から、二人が去った一階へと降りてくる者がいた。
それは八神はやて。
茶色のショートヘアーを揺らしつつ右、左、右と周囲に首を回し大きく肩を落とす。

「なんやねん、此処は……」

幼少時に利用していた図書館、という事は理解できる。
ただ何故ここに飛ばされたのかが分からない。
転送の先にある無人の図書館。キングも居ない。
当然、望みの者も居ない。

(罠、か……)

直接死に繋がる訳ではない。それについてはキングの予想通りだったらしい。
だが、あの転移魔法は罠に違いない。

丁度会場の中心にある巨大な建築物――地上本部。
位置といい、その圧倒的存在感といい、最も人が集結し易い施設だろう。
その最上階に置かれた『魔力を込めれば対象者の望んだ場所にワープできます』という甘言。
それに釣られ人々は魔法陣を利用し、そして今の自分のように仲間と離れ離れになる。
手を組みゲームを打破しようとする参加者達を分散させる――良くできた罠だ。

「……やられたなぁ……」

先程までヴィータ達が座っていたベンチ。
その二つ後ろに置かれたベンチに腰掛け、息を吐くはやて。
キングという戦力を失ったのは痛い。だが、精神的な負担が軽くなったのも事実。

「もうそろそろ放送やし……休憩でもしとこか……」

それに一人というこの状況は、イラついていた心を落ち着けるには最適かもしれない。
喧しい協力者が消えた事に僅かな安堵を感じつつ、はやては目を閉じる。


はやては知らない。
あの転移装置が罠ではなかった事を。
初めに転移された地点――図書館・二階の直ぐ真下に探し求めていた少女がいた事を。
もし転移した後、直ぐ様階段を下っていれば少女と出会えた事を。
八神はやては、知らない。






151 :パンドラの箱は王の手に ◆jiPkKgmerY :2008/11/06(木) 22:41:30 ID:N3+Lwp5/
【八神はやて(sts)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】
【状態】健康
【装備】ツインブレイズ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2、ランダム支給品1〜3個(武器では無い)
    ランダム支給品1〜2個(キングから貰いました)
医務室で手に入れた薬品(消毒薬、鎮痛剤、解熱剤、包帯等)
【思考】
 基本 プレシアの持っている技術を手に入れる
 1.第一放送まで休憩する。
 2.「ヴィータ」を追いかけ、彼女を戦力に加える
 3.チャンスがあればキングを排除する
 4.首輪を解除できる人を探す
 5.プレシアに対抗する戦力の確保
 6.以上の道のりを邪魔する存在の排除
 【備考】
 ※参戦時期は第一話でなのは、フェイトと口喧嘩した後です
 ※名簿はまだ確認してません
 ※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだという考えに行き着きました
 ※ヴィータの他、この場にいるかもしれない守護騎士たちに優しくするのは、
  自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています
 ※キングのことは、ただの念力が使えるだけの少年だと思っています
 ※転移装置を、参加者を分散させる為の罠だと勘違いしています

【『CROSS-NANOHA』】
ロワ参加者、それぞれの世界で起きた事象が物語風に記されています。
その中身は、『リリカルなのはクロスSS倉庫』にある内容と一字一句間違い無く同じ物です。
因みに、
『HANNMOKU NO SUBARU』は『コードギアス 反目のスバル』、『YUUGIOU-GX』は『遊戯王GX』、『NANOSHING』は『NANOSHING』、『MASUKARE-DO』は『魔法少女リリカルなのは マスカレード』。
『RYU-KI』は『仮面ライダーリリカル龍騎』、『KABUTO』は『仮面ライダーカブト』、『DEJIMON』は『デジモン・ザ・リリカルS&F』、『TRIGUN』は『リリカルTRIGUNA's』、
『NANOSUTA』は『なの☆すた nanoha☆stars』、『KATAYOKU NO TENSHI』『魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使』、
『SESSYOUMARU』は『魔法妖怪リリカル殺生丸』、『OWAKURO』は『なのは×終わクロ』、『MEBIUSU』は『ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは』、『L』は『L change the world after story』、
『GETTA-』は『ゲッターロボ昴』、『MEDORE-』は『小話メドレー』、『ARMS』は『ARMSクロス『シルバー』』
となっています。

【転移魔法の魔法陣】
望んだ者の直ぐ近くの地点に転移を行う魔法陣。
微量な魔力でも発動可能。あくまで直ぐ近くの地点に転移するので、確実に会える訳ではありません。




152 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/06(木) 22:41:51 ID:vj4kpqVm
 

153 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 00:02:52 ID:sAalz0ry
携帯なんで代理投下は出来ませんので感想を。

投下乙です。
まさかクロス作品自体をロワに関わらせて来るとは……大分斜め上を行かれた気分です。
そして、精神的に危ういキャロの所にキングが……これはヤバいw天道頑張れw
はやてやミライ達もバラバラに行動することとなり、様々なフラグが詰められたSSだと思いました。
GJです!

154 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 01:35:23 ID:FfIfCR83
投下乙です。
よもやクロス作品自体が出てくるとはwここならではのアイデアですね。
てかキャロが本格的にヤバいw

155 :パンドラの箱、もしくは始まりの唄 ◇jiPkKgmerY(代理投下):2008/11/07(金) 13:25:06 ID:FfIfCR83
その空間にある唯一の光源は、女の前の宙に浮かぶ半透明のディスプレイだけであった。
照らされる範囲はほんの僅か。女性の顔と上半身のみ。部屋の様子は分からない。
まるで能面のように無表情な女は、淡々とディスプレイに浮かぶキーボードへと指を走らせる。
同時に現れる何行にも及ぶリスト。

――高町なのは(19)
――高町なのは(9)
――フェイト・T・ハラオウン(19)
――フェイト・T・ハラオウン(9)
――八神はやて(19)
――八神はやて(9)
    ・
    ・
    ・
    ・
    ・


長々と続いていくそれらを眺め、女の表情に漸く変化が表れる。
と、いってもそれは一瞬。直ぐさま元の能面に戻り再度ディスプレイを見始める。
そして数分後スクロールが一番下まで到達。画面に浮かぶリスト、その全てを見終えた。

「現段階での死亡者は十一……予想以上に……」

――その表情が歪に変化する。
先程と同じ、いや先程よりも歪んだ微笑み。
何が嬉しいのか、女は悪魔のような形相で笑っていた。

「そして…………案外呆気ないものね」

女の呟きと同時にカーソルが移動、ある人物の位置で止まる。
そこには赤文字で書かれた一人の少女の名前――高町なのは。
かつて女の夢を、野望を阻害し、最終的には女を打ち破った幼い魔導師。
十年後の未来にはエース・オブ・エースという肩書きを得ることになっている、歴史上稀に見る、屈指の天才魔導師。
だが前途あるその少女は――死んだ。
この殺し合いの中たった六時間と生き抜く事すら出来ずに、アッサリとその首を跳ね飛ばされ死んだ。
正直に言えば拍子抜け――――だがある種の満足感もある。
最後に少女が上げた絶望の叫び。
自分のミスにより仲間を死なせた――その自責の念から飛び出した絶叫。
最高だった。
ある種の絶頂感が身体を包み、鳥肌すらたった。
何処までも自分を阻害したあの純粋な瞳。何処までも他人を信じ、そして最期に裏切られ、命を落とした。
――いい気味だ。
あの甘ちゃんにはあの様な無様な死に方が一番似合っている。


「残り四十九…………あら、丁度誰か死んだみたいね」

女の目の前で、ディスプレイに映った名前の内一つが、白色から赤色に変わる。
その現象が示す意味は明快。その名前の主のゲームオーバー、即ち死だ。

「開始六時間で全体の五分の一が死亡……」

ポツリと呟くと共に、女が画面に指を伸ばす。
そしてその指が触れると同時に、それまでのリストから別の画面へて移り変わった。
現れるは、背景が白一色に染められた画面。
画面の上部には赤色の文字。中部には一定の間隔を置き青色の文字が並んでいる。

「彼も『これ』の存在に気付いたみたいだし……まだまだ楽しませてくれそうね」


156 :パンドラの箱、もしくは始まりの唄 ◇jiPkKgmerY(代理投下):2008/11/07(金) 13:28:02 ID:FfIfCR83
それはプレシア自身が造ったものであった。
その名も『CROSS-NANOHA』――全ての始まりとも言えるサイト。
女は思い出す。
このゲームを開催するきっかけとなった世界の事を。
あの不思議な世界。女が見た様々な世界の中でも、群を抜いて異質だったその世界の事を。
バトルロワイアルという名の狂気の宴。
その始まりの唄はその世界が有していた――。





世界は広い。
アルハザードの力を手に入れ、尚一層この思いは強固になっていった。
不可能と言われた時間軸の移動も、管理局の技術力では到底辿り着く事ができない次元世界への移動も、楽々と実行できるアルハザードの力。
不可能を可能とする、まさにその言い伝え通りの、いや言い伝え以上の働きをこなしてくれる。
地道な研究を通して未開の世界を開拓している管理局の魔導師達が馬鹿らしく思える。
辿り着いてしまえば何の事はない。此処こそが、アルハザードこそが理想の終焉。
全てを超越し全てを叶える力が、此処にはある。
努力や才能などは、その力に追随する事すら許されない。何物すらも圧倒する究極の力――――それを私は手にした。
そして、力を手に入れ自分は知った。
自分が知っていた世界の矮小さを。
あまりに広い世界のことを。
――世界は広い。
傍観しているだけで心が踊る世界が、次元の海を越えたそこには星の数程も存在した。



――例えば、この世界。
数多の海賊達が世に蔓延り、皆が皆それぞれ夢・理想・野望を叶えるために旅を続ける不思議な世界。
地球であり地球でないその世界に存在する『偉大なる航路』。
海賊王を夢見て、あらゆる荒くれ者達が集結する航路。
自分が知る地球とはまた違う、夢見る者が溢れる夢のような世界。
そんな世界も、あった。

――例えば、この世界。
地理的に見れば、自身が知る地球と殆ど変わらない世界。ただ大きく違うのはある化け物の存在。
吸血鬼。
呆れるくらいの剛力。呆れるくらいに頑強。
そんな死を知らぬ不死の化け物が夜を割拠する世界。
そんな世界も、あった。

――例えば、この世界。
その世界自体は何の変哲もない極々平穏な世界。
違うのはその時代から二百年程過去に跳んだ時代――戦国時代と呼称される時代、この世界は妖怪が繁殖していた。
魔導生物とはまた一線を画す、異様な面貌を持った妖怪達が世界を包む。
そんな世界も、あった。



次元を越え、時を越え、何十何百という世界を観測した。
だが、その何十何百でさえも氷山の一角の中の、それまた一欠片でしかない。
それ程に世界は広かった。
そして何時しか、世界を観察することは息抜きと化していた。
全ての存在を超越する自分にこそ相応しい唯一の娯楽――それが世界の観測。

研究、観察。
研究、観察。
研究、観察。
研究、観察。

157 :パンドラの箱、もしくは始まりの唄 ◇jiPkKgmerY:2008/11/07(金) 13:29:44 ID:FfIfCR83
研究、観察。
研究、観察。
研究、観察。
研究、観察。
研究、観察。
研究、観察。
研究、観察。

繰り返される同じ日々。しかし退屈と感じた事はない。
一日、また一日と壊れてしまった日々に近付いていくのが理解できたし、観察の方も飽きる事はなかった。
全く同じ世界は一つもなく、似通った世界も微細だが何処か違う箇所が必ず存在する。
気に入った世界の変化を見る事も楽しかった。
あの日々を取り戻す為の研究、何処までも広がる無限の世界達――――それらは、今まで感じた事のない充実感に満たされていた。
あの時とは違った意味で楽しいと思える日々が続いていく。

そんなある日のこと、私はその世界に出会った。
それは、今まで見た膨大な世界の中でも群を抜いて異質な世界。
その世界を理解する事は、未だに叶わない。
ただこの世界は後々自分が開催するバトルロワイアルに大きく影響する事となった。
今ではこの世界に感謝すら覚える。
――世界は広い。
――心の底から、そう思う。





「…………この世界はあまり面白くないわね……」

――最初は何の変哲もない退屈な世界だと思った。
舞台は地球。
その世界に妖怪や吸血鬼のような化け物は存在しない。普通の人間達が事件を起こすでもなく、平穏に生活する世界。
国によれば紛争や戦争などが行われてる所もあるが、その戦いに使用されている兵器も大した物ではない。
人型兵器の高速戦や、人外達の人知を越えた戦闘にはずっと見劣りした。
観察してても欠伸が出る程に退屈な世界。
強いて言うならば、高町なのはが居た世界から管理局や魔法という概念を取り除いた世界に酷似していた。
直ぐさま他の世界を観測しようとし――――気付いた。

「ん……? この映像は……」

――最初その事実に気付いた時、純粋に驚愕した。そして数瞬後、内から這い出るように薄気味悪さが噴出した。
薄気味悪い――それは今までの人生で味わった事のない感情だった。
その感情は瞬く間に心を包み、身体を震え上がらせる。

訳が分からない。
異常だ。
有り得ない。
何故こんなことが起きている。
この世界は一体――?

頭の中を疑問符が埋め尽くした。
常に冷静であり続けた思考回路もこの瞬間に於いては全く機能せず、ただ押し寄せる混乱にオーバーヒートを続けた。







壁一面に張られた、研究室随一の大きさを誇るディスプレイ。

158 :パンドラの箱、もしくは始まりの唄 ◇jiPkKgmerY:2008/11/07(金) 13:31:50 ID:FfIfCR83
研究時には様々なデータをその画面に映し出し、世界の観察時にはその世界の情勢を現す様々な映像を映し出す。
巨大なディスプレイを数十に細かく区切り、それぞれ一つ一つにありとあらゆる情報が映像となり流れ込むその光景は、まさに圧巻の一言。
その映像とは、平和な日常の風景であったり、人外共が戦闘を行っている光景であったりとまちまち。
この映像を眺めている時、まるでこの世の全てを掌握したような気持ちになる。
全てを超越した『観測者』。アルハザードは、自分にその権利をくれた。










――そう、思っていた。この世界を見るまで。

その世界の異質さに気付いたきっかけは、何十に及ぶ映像の中のある一つの光景であった。
その映像とは、眼鏡を掛けた男がテレビを鑑賞している瞬間を捉えた物。
何の事はない何処にでもある光景。普通ならば視線を向けようともしない平凡な光景だ。
だが、その映像が自分の未来を大きく変化させることとなる。
その異質さの正体はその男が見ている番組にあった。
画面の中のそれまたテレビの中、一人の少年が叫んでいた。

『世界はいつだって……こんなはずじゃないことばっかりだよ!!』

聞いた事のある声。
聞いた事のある言葉。
我が目を疑った。我が耳を疑った。
画面の中の画面では確かにあの少年が――『クロノ・ハラオウン』が、叫んでいた。
何時の日か自分に投げかけた言葉を、全く同じ姿形で、全く同じ表情で、そっくりそのまま画面の中の画面にて叫んでいた。

「何なの、これは……」

無意識の内に手が動き、その映像を拡大していた。
巨大な画面一杯に広がる、テレビを鑑賞する男の姿。
眼鏡の男は無表情にそのテレビを見つめ、画面の中の画面の『クロノ』は怒気を含めた表情で叫んでいる。
映像をさらに拡大。
眼鏡の男は画面の外に消え、男が見ているテレビがディスプレイを埋め尽くす。
それと同時にテレビに映る『クロノ』から場面が転換される。次に映ったものは栗色の髪を触角のように纏めた少女。
こちらもまた見覚えのある少女であった。

――『高町なのは』

あと十年後、その馬鹿げた潜在魔力を開花させ管理局のエースとなる天才魔導師。
その『高町なのは』が、まるで物語の登場人物のように画面の中に映っている。
それきり自分はその映像に釘付けとなった。
画面の中でいきいきと動く『高町なのは』、『クロノ・ハラオウン』、『フェイト・テスタロッサ』、『ユーノ・スクライア』、そして――『プレシア・テスタロッサ』。
まるであの時と同じように物語は展開されていき、あの時と同じように自分――『プレシア・テスタロッサ』が虚数空間に身を投じる。
まるであの時の事を丸々記録していたかのような映像。
この映像は一体――?
疑問が混乱と入り混じり頭が沸騰する。そして、それと同時にこの世界への興味が急速的に高まっていく。
――何時しか世界の観察は、この謎の世界を中心に行われる事になっていった。





本来の研究の片手間ではあったが、観察を続けることにより更に驚くべき事実が判明されていった。
何とこの世界では、自分が見てきた様々な世界が様々な媒体を通して記されているのだ。

159 :パンドラの箱、もしくは始まりの唄 ◇jiPkKgmerY:2008/11/07(金) 13:34:04 ID:FfIfCR83
アニメ、漫画、ドラマ、映画、書籍――媒体はそれぞれ違う。
だが確かに、次元を越えた世界の殆どがフィクションという形でこの世界に記録されていた。

例えば『魔法少女リリカルなのは』。
この物語は自分が経験した過去と一切違い無く、物語が進んでいく。
その後に制作されたらしい『魔法少女リリカルなのはA's』、『魔法少女リリカルなのはStrikerS』も同様。
自分が観測した世界とまるきり同じように物語が展開されていく。
そう、まさにこの世界こそが『観測者』。
ありとあらゆる世界を様々な媒体で記録していっている『観測の世界』。
それも制作者本人達は、自分が世界の記録している事を自覚していない。
無意識の内に物語を考え、それを作品として世に産み落とす。そしてその作品こそが、世界の記録となっている。
偶然なのか、それとも何かしらの力が影響しているのか?
それは幾ら観測しても分からない。ただ、日に日にこの世界への興味が高まっていく。

気付けば研究に行き詰まった時、気分転換の意味を込めその世界を調査することが日課となり始めていた。
そしてそんな日々が続くこと数週間。再び大きな出会いがあった。
それは『観測者の世界』のネット上にあったあるサイト。
何処か明るい印象を受ける壁紙に、黄緑色の文字で大きな文字で名が記されている。
その名も『リリカルなのはクロスSS倉庫』――――これまた興味深い存在であった。



『リリカルなのはクロスSS倉庫』は、ある大型掲示板にて様々な書き手が書いた物語をまとめたサイトの名称である。
『リリカルなのはクロスSS倉庫』に収録されている何十にも及ぶ作品。
その内容は『クロス』という名の通り、色々な世界と『リリカルなのは』の世界がクロスオーバーした物が殆どであった。
一話で完結する短編もあれば、何十話と続く長編もあったりと種類は様々。作者が別ということもあり文章もそれぞれ違う。

作品によっては、高町なのはだけでなく自分さえも登場してくる物さえもある。
素知らぬ所で赤の他人により自分が文章化されている――――何とも不思議な感覚である。
それに加えこの膨大な作品量。
一日の全てを費やしたとしてもこの膨大な量は読み切れる物ではないだろう。
流石は『観測者の世界』と言ったところか。最早、思考の許容量を遥かに越えている。
この世界に何があろうともう驚く事はないだろう。
観察すれば観察するほど興味が湧いてくる世界。所詮は娯楽でしかないとはいえ
、その異質さは研究者としての探求心を多いにくすぐる物であった。








――結果から言えば『リリカルなのはクロスSS倉庫』は自分に大きく貢献してくれた。
とある事情で開催を決心したバトルロワイアル。
その参加者を『リリカルなのはクロスSS倉庫』内の作品とリンクした世界から選出したのだ。
正直に言えば『リリカルなのはクロスSS倉庫』の作品達と適合する世界は流石に存在しないと思っていたが、やはり世界は広い。
大して労せずにそれぞれの世界は発掘できた。

様々な世界から集結した『高町なのは』達と関係する人々。
結果、戦闘機人や吸血鬼、妖怪、仮面ライダー、デジモン、ウルトラマン、プラント…………ありとあらゆる人外達を集められた。
だが、まだ足りない。
折角の遊戯なのだ。
盛り上がるだけ盛り上がった方が見てる側としても楽しめる。
まだまだエッセンスを付け足す必要があった。

まず考え付いたのが並行世界からの人物選出。
例えば『ゴジラという生物により家族を失った八神はやて』や『仮面ライダーなどの存在を知るフェイト・T・ハラオウン』などがそうだ。
次に考え付いた物がバラバラの時間軸からの参加。
これには『9歳の高町なのは』や『19歳の高町なのは』、『闇の書事件当時のシグナムやヴィータ』などが挙げられる。

160 :パンドラの箱、もしくは始まりの唄 ◇jiPkKgmerY:2008/11/07(金) 13:37:58 ID:FfIfCR83
アルハザードの力を得た自分だからこそ可能な神の所行。
これら二つのアクセントにより参加者は混乱し、その混乱は殺し合いを経て疑心へと変化する――――絶望犇めくゲームは一層面白みを増す筈だ。

そして最後に付け加える取って置きのエッセンス。
それは『リリカルなのはクロスSS倉庫』の情報を参加者に与える事。
名は『CROSS-NANOHA』――――このバトルロワイアルに参加させる『リリカルなのはクロスSS倉庫』内の作品群をタイトルだけ変え、丸々写したサイトだ。

――だが例外もある。
『魔法少女リリカルなのはFINAL WARS』、『リリカルなのは 闇の王女』この二作は『CROSS-NANOHA』に収録していない。
これら二つの作品からは『八神はやて』、『ゼスト・グランガイツ』の二名が参戦している。
『八神はやて』と『ゼスト・グランガイツ』の二人は、『リリカルなのはクロスSS倉庫』に収録されている数々の作品でも、滅多に性格が変わる事のない存在だ。
『八神はやて』は機動六課の司令塔として、『ゼスト・グランガイツ』は悩める復讐者として物語に関わってくる。
しかし『魔法少女リリカルなのはFINAL WARS』、『リリカルなのは 闇の王女』内の二人は違う。
『魔法少女リリカルなのはFINAL WARS』の『八神はやて』は他と比べて精神的にも非常に危うい女。
『リリカルなのは 闇の王女』の『ゼスト・グランガイツ』は高町なのはに病的なまでの殺意を持つ男。
本来の性格とは大きくズレているのだ。
その性格のズレは殺し合いという異常な世界では必ず火種となる。その火種は何時しか大火となり惨劇を生む筈だ。
だが、もし『CROSS-NANOHA』に『魔法少女リリカルなのはFINAL WARS』や『リリカルなのは 闇の王女』が収録されていたら、その大火が消火される可能性が出れくる。
それではつまらない。
火種は消えるべきではない。より激しい大火に変貌しなくてはいけない。
ならばどうする?
――簡単な事だ。
『八神はやて』と『ゼスト・グランガイツ』の情報を与えなければ良い。
幸いな事に、『魔法少女リリカルなのはFINAL WARS』と『リリカルなのは 闇の王女』の二つの世界からはこの二人しか参戦させていない。
情報を渡すより隠蔽した方がよりメリットが高い――――そう判断し『魔法少女リリカルなのはFINAL WARS』と『リリカルなのは 闇の王女』、この二作を『CROSS-NANOHA』に収録する事は取り止めた。

だがこの二人の情報が収録されていないとはいえ『CROSS-NANOHA』の情報力は絶大。
それぞれの物語を読めば、参加者の能力、実力、性格が把握可能になり、明確に有利な立場を得ることとなる――この殺し合いの場に於いては最強の武器となる筈だ。
そして何より自分が味わった混乱を彼等自身も体験する。
自身の行動が文章として存在されている――――その事に気が付いた時、彼等はどのような反応をするのか?
次元や時を越えた世界を知っている自分でさえ底知れぬ薄気味悪さを感じたのだ。
無知な彼等には相当な衝撃が走るだろう。
そして、その事は殺し合いに何かしらの影響を与えるのか?
興味は尽きない。


161 :パンドラの箱、もしくは始まりの唄 ◇jiPkKgmerY(代理投下):2008/11/07(金) 13:40:26 ID:FfIfCR83
――とはいえ、簡単に情報を与えるのは面白みに欠ける。
それにLやルルーシュという、自分以上の頭脳を持つだろう参加者も居る。
そんな参加者にみすみす情報を与える事は、バトルロワイアルの進行に大きく影響する可能性も出てくる。
情報を上手く活用するだけの頭脳を持ち、尚且つ殺し合いに乗りそう参加者――――最適な人物は程なくして見付かった。
その名はキング。
残忍であり無邪気という危険な性格、仮面ライダーと同等以上に戦える実力、何より人を陥れる策を考え出す悪魔のような頭脳。
その三つを兼ね備えた、情報を与えるにはこれ以上ない好条件を持った参加者である。
幸運な事にキングには携帯を持ち歩く癖があるらしい。
その携帯を『CROSS-NANOHA』に繋がるよう細工すれば情報の受け渡しも簡単。
これだけ有能な情報をキングが易々と手放す事もないだろう。
キングなら『CROSS-NANOHA』を有効に使ってくれる筈。
精々楽しませて欲しいものだ――。









斯くして準備は整い、遊戯は開催された。
今尚、参加者達は狭い箱庭の中で戦い続けている。
死者は十二人。これだけの人数が死んだにも関わらず、ゲームはまだ序章の段階を抜けない。
参加者にとってはこれ以上ない密度の六時間だっただろう。
まだまだ希望に満ち溢れた参加者もいれば、絶望に押し潰され掛けている参加者もいる。
さてこの箱庭に自分の放送を加えた時、この遊戯はどう変化するのか。


「精々頑張ってちょうだい」


――――女は最後にそう呟き部屋を後にする。
強大な力を得た全てを超越する魔導師。
次元を超越し、全ての世界を見透かす観測者の世界。
二つの超越が交錯した時、悲劇の舞台の幕があがった。
哀れな出演者達は、超越者を観客に終わらぬ演劇を演じ続ける――。



【1日目 早朝】
【現在地 ???】
【プレシア・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは】
【状態】健康
【装備】???
【道具】???
【思考】
基本:バトルロワイアルを見届ける。
1.放送を行う。

305 名前:パンドラの箱、もしくは始まりの唄 ◆jiPkKgmerY[sage] 投稿日:2008/11/05(水) 22:08:59 ID:muc4x1io
これで投下終了です。
大まかな問題点は解消できたと思いますが、何か気付いたら御指摘お願いします。

162 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 14:20:55 ID:FfIfCR83
乙です。
こういう裏側があったんですね。
という事は今もどこかでプレシアがこの世界を見ているのか。
SSとは知りつつも何か不思議な感じだ。

少し提案。
番外編扱いなら状態表は付けない方がいいと思います。
状態表が付く=参加者扱いみたいなものですから。
そういう意味で付けない方がいいと思いました。

163 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 16:12:24 ID:tXWNMAQ5
……底冷えがしました。
実際にプレシアの立場になってみて、自分達が別世界の何者かに観察されているということを考えてみると……怖えぇぇ〜(ぉ
まぁ分かりやすく言うと、すごい発想だってこと!
というわけでGJでした!

164 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/07(金) 18:17:52 ID:sAalz0ry
投下乙です。
いやーこれまた斜め上を行かれましたw
正直『CROSS-NANOHA』を出した時は、収集付かないんじゃないかと心配しましたがまさかこう来るとはw
プレシアがこの世界を見ている……そう考えると何とも不思議な感じです。
GJでした!

165 : ◆RsQVcxRr96 :2008/11/08(土) 23:29:13 ID:99o2aOfI
これよりミリオンズ・ナイブズ、キース・レッドの投下を始めます。

166 :孤独の王 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/08(土) 23:30:20 ID:99o2aOfI
太陽が昇り始めた頃、D-5を中心に放送が響き渡る。
これがプレシアの言っていた「放送」というものだろうか――否、違う。
それは唯一人の参加者による挑戦状だった。
『不死の王』――『ノスフェラトゥ』という称号が似つかわしいヘルシング機関の鬼札であるアーカード。
この会場で最強の一角と目される化け物による私的な演説だ。
それは闘争の儀への誘い。
最凶の吸血鬼は己に闘争を挑む参加者が現れる事を切望していた。
これはその願いという名の渇きを癒すための狂気の叫びだ。
そして、その放送を聞きつけて幾人かの参加者が『悪魔も泣きだす』不死の怪物が待つ館へと向かっていた。
北方からは黒き片翼の天使と幼き夜天の主。
同じく北方より神罰の地上代行者、ソルジャー・クラス1st、そして人間台風。

そして目を南に転じて見ればこちらにもアーカードの放送を聞きつけて北へ向かう参加者がいた。
孤独な王――『プラント自立種』ミリオンズ・ナイブズ。
ナイブズがその放送を聞いたのはついさっきの事だった。
惰弱な人間の逃がすために足止めを仕掛けてきたディエチに引導をくれようかという時だった。
結果、ディエチを死に至らしめた後にナイブズは放送の主・アーカードの元へ向かうべく北を目指していた。
奇しくもナイブズにとって北からアーカードの元へ向かっている人間台風とは兄弟の間柄だった。
もちろん神ならぬナイブズは人間台風――ヴァッシュ・ザ・スタンピードが同じ場所へ向かっているなど知る由もなかった。

実のところナイブズの状態は万全ではない。
度重なる戦闘の負傷は身体の至る所に刻まれている。
特に目を引くのは唯一身体に欠けている部分――右手だ。
だが、ナイブズは止まらない。
足の裏に感じる硬質なアスファルトの感触も、肌を切る冷たい朝の風も、ナイブズの足を止めるものにはなり得ない。
その内に秘めたる目的を果たし終えるまでナイブズが足を止める事はない。
ナイブズが行う事は元々いた世界でも転移した世界でもここでも変わらない。
虫螻同然の人間を殺す事のみ。
孤独な王の望みはただそれだけ。
ナイブズもまたここでは最強の一角に名を連ねる者の一人だ。
そして自身もそれを自負していた。
なにより今までの人生の中でプラントが人間に劣るなど一度たりとも思ってもいなかった。

だが、ここにきてナイブズの心境に微妙な変化が出てきた。
きっかけは二人の参加者。
銀髪の大妖怪・殺生丸、そして戦闘機人No.10・ディエチ。
二人とも人間ではないとはいえ、あろうことかプラント自立種である自分に傷を付けた。
殺生丸には右腕を潰され、ディエチにはその右腕を消された。
それに付け加えて殺生丸には後一歩のところまで追い詰められた。
一時は言葉に出来ない程の屈辱と衝撃を受けた。
しかし、ナイブズはそこから学んだ。

――ここは慢心したまま生き残れるほど生易しい所ではない。

地球には「獅子搏兎(獅子は兎を狩る時でも全力を尽くす)」という言葉がある。
以前の自分には必要もなかった言葉、全く関係のない言葉だと思っていた。
だが今は違う。
あらゆる油断と慢心を捨て去り、常に最適な方法で虫螻である人間を屠る。
それが今ここでナイブズが行うべき事。

そしてナイブズは一路北西へ、アーカードの元へ向かう。
当然さらなる闘争の中で人間を滅ぼすためだ。
アーカードの声の聞こえ具合から推測すると北西の方角それもG-5のエリアが濃厚だろう。
そしてそこには一つの施設がある。
『Devil May Cry』
おそらくアーカードはここにいる。
目印は分かり易ければ分かり易い方がいいからだ。
地図を見れば病院とアーカードがいると思しき場所までは川で隔てられている。
少し前に一度川の上を越えてはいるが、その時は気絶していてどのようなものか見ていない。
しかしナイブズにとってそれは問題になり得ない。

167 :孤独の王 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/08(土) 23:34:06 ID:99o2aOfI
飛行魔法。
守護騎士達の教導により取得できた唯一の魔法。
まさか付け焼刃の魔法がこんな所で役に立つとはナイブズは思ってもみなかった。

「プレシアの言っていた放送までには、まだ間があるか」

デイパックから取り出した時計に刻まれた時刻は最初の放送が行われる午前6時まで後15分程残っている事を知らせてくれる。
このままの速度で進んでいけば川の手前辺りで放送が聞ける頃だろうか。
死者の名前は一応確認程度ぐらいに聞くとして、無視できないのは禁止エリアの存在だ。
プレシアが殺し合いを望むなら禁止エリアに入ったとしてもすぐに首輪を爆破される可能性は低いと思える。
だが、無視するにはあまりにリスクが大きい存在だ。
おそらく首輪の爆破は如何なる参加者をも死に追いやる代物だろう。
そうでなくては首輪の意味がない。
自分とて例外ではないに違いない。
力の制限と爆破機能付きの首輪――これが全ての参加者を縛る枷だ。

「気に喰わないな」

魔導師、されどたかが人間如きにプラント自立種である自分が束縛されているかと思うと、否応なしに沸々と怒りが湧き上がってくる。
自身の尊厳が汚されている事を改めて認識すると、ナイブズの中でプレシアへの怒りが高まった。

(……プレシア。今はお前の思い通かもしれないが、いずれは――)

不意に全身が射すくめられたかのような気配がした。
それはナイブズに向けられる殺気だった。
もうすぐ行われる放送そして主催者プレシアへの怒りで若干反応が遅れたが、こちらに攻撃が来るまでに気づく事ができた。
では襲撃者をどうするか。
答えは決まっている――当然迎撃だ。

「……フッ……愚昧な輩め。俺に何度も同じ手を使――」

ナイブズが思い起こしたのは少し前に自分に奇襲を仕掛けてきたキース・レッドの存在。
今もどこかで参加者を殺して回っているのだろうか。
だがそんな事は別にどうでもいいと思い直すと、頭を切り替える。
愚かな人間に自分へ牙を向けた報いを与えるべくナイブズは殺気を感じた方向を見上げた。

「っ」

ナイブズの目に飛び込んできたのは光だった。
激しく輝く山吹色の光が一瞬ナイブズの目を眩ませた。
ナイブズにとっては予想外だった。
確かに太陽は昇っているが、自分が見上げた方角は北だ。
太陽の光が目に入るとは思えない上に、何よりこれほどの光なら殺気を感じる前に気付くはずだ。
その時のナイブズには刹那の空隙が存在していた。
だからこそ次の行動を取るまでに僅か遅れが生じてしまった。

・――惑星は南を下とする。

その瞬間、文字通り世界は覆った。

「――ッ!!」

それは山吹色の光に輪をかけて予想外の出来事だった。
ナイブズの脳に声が響く。
響いてくる声は聞き覚えのある自らの声だ。
その声が告げるのは一つの事象。
『惑星は南を下とする』
その言葉通りだった。
一瞬でナイブズの今までの重力に関する概念は変貌した。
それが完全に理解できない内にナイブズにとっての地面は壁となり、後ろ――つまりは南――に身体が引かれだす。

168 :孤独の王 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/08(土) 23:38:33 ID:99o2aOfI
まるで前触れなしに空中に身体が放り投げられたような感じだった。

そして次に来たのが――

「――ァガッ!!」

――衝撃だった。
山吹色の光が知覚速度を越えてナイブズの身体に深々と突き刺さった。
光が見えてからここまで刹那――一瞬の出来事だった。

「――ゴォ!!」

しかしそれは終わりではなかった。
突き刺さった物体は尚もナイブズの身体を抉っていき、ナイブズと共に下――つまり後ろ――即ち南――へ落ちていく。
途中にあった建物は全て貫通していき、そのたびに塀や壁が崩れていく。
ナイブズは背中から建物を破壊する衝撃を、腹からは抉られていく衝撃を、それぞれ薄れゆく意識の下で感じていた。
だがそれも一瞬の衝撃だった。

一際大きく響き渡るコンクリートを砕く音――ナイブズの身体は何かの柱に当たる事でようやく止まった。
突撃物を中心に肉片が飛び散る音――薄らいでいたナイブズの意識はそれによって無理やり覚醒させられる。
衝突の衝撃で震えていた建物の揺れが収まっていく。
終着点は病院だった。

「……ッ……ァ」

ナイブズはこの時ようやく己の身体を突き刺している物体が何か目にした。
それは槍だった。
槍はあの山吹色の光を溢れんばかりに輝かせていた。
そしてナイブズは槍を持つ人物に目を向けた。

「……ヴァッ、シュ」

山吹色の逆光で見え辛かったが、朧気ながらナイブズの目には見慣れたものが飛び込んできた。
赤いコート、金髪、そして銃口。
その姿はナイブズに一人の人物を想像させた。
『人間台風』『プラント自立種』――ヴァッシュ・ザ・スタンピード。

「違うな」

だがそれはヴァッシュではなかった。
その声が冷酷にヴァッシュである事を否定する。

「キース・レッドだ」

やや興奮した声と共に乾いた4発の銃声が無人の病院に轟いた。
その1発毎にナイブズの身体が痙攣する。
最期の4発目の銃弾が放たれた時、ナイブズの意識はそこで途絶えた。


     ▼     ▼     ▼


病院から東へ伸びる大通り。
その大通りの周りには極々普通の市街地が形成されている。
様々な形をした家々が街の景観を損なわない程度に配列されている。
唯一つ不気味なのは人気が全く無い事。
それだけが不気味だった。
そんな市街地の一角、病院からそう遠くない民家の一つにキース・レッドはいた。
緑が映える軍服を着こなすキース・レッドの表情はどこか曇っていた。
その原因は自身の両腕――今はそこにはあるべきものがない。

169 :孤独の王 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/08(土) 23:43:26 ID:99o2aOfI
キース・レッドの両腕は少し前にナイブズに斬り落とされていた。
それは敗北という名の屈辱だった。
怪我人だけだと思い込み、奇襲を掛けた結果がこのざまだ。
さらには自分が殺し合いに乗っていると知ると「殺し回ってくれた方が早く人が減って助かる」という理由で見逃された。

――つまり自分は完全に見下された。

キース・レッドにはそれが許せなかった。
それは自身のプライドを踏みにじる屈辱そのものだった。
だからキース・レッドは誓った――ミリオンズ・ナイブズを必ず殺すと。
キース・レッドの最終目的はこの地にいるキース・シルバーを戦い勝利して、己の力がシルバーを上回ると証明する事だ。
だからこのような所で躓いている訳にはいかないのだ。
シルバーに至るまでの障害は全て排除する。
ナイブズもその一つだ。
障害物一つに足止めを食らうようではシルバーには届かない。

「ナイブズ、覚悟しておけ。私を見下した代償は高く付くぞ」

キース・レッドは薄暗い部屋の中で改めてナイブズへの復讐を誓うのだった。
だがナイブズは強い。
おそらくはシルバーと同等だと思われる。
正面から戦うには時期尚早。
ならばこそ武装を整え、最高の機会で討つ。
できる事なら正面から戦ってみたかったが、シルバー以外は全てキース・レッドにとってはただの障害だ。
障害はどんな手を使っても取り除く。
そんな決意をした時だった。

「……ん?」

ここからそう遠くない場所、病院の方角から何やら轟音が聞こえてきた。
銃声とは違うその音は明らかに爆破音の類だった。

「なるほど。そういう事か」

キース・レッドは考えた。
病院から爆破音そして今銃声が聞こえた。
誰かが病院で戦っているのは明白だ。
では誰が?
確かな事は一方はあのナイブズであろうという事だ。
自分が病院を離れてから目の前の大通りを通った者は一人もいない。
つまりナイブズは病院に潜んでいた何者か、もしくは空から飛んで来た何者かと交戦している可能性が高い。
これは良い機会だ。

「待っていろ、ナイブズ!」

キース・レッドはそれまでいた民家を後にすると、ナイブズを求めて病院へと戻って行った。
その両腕はいつのまにか元通りになっていた。


     ▼     ▼     ▼


キース・レッドは以前自分の支給品は外れだと言った事がある。
そう言った相手は神崎優衣で、それは神崎を油断させるための方便であった。
だが、あながちそうとも言い切れない。
キース・レッドはここへ来た直後に支給品の確認を済ませていたが、支給された3つの物品は当たり1つと外れ2つだった。

まずは外れに値するのが板とコートだった。

板は「板型概念展開装置」という物だった。

170 :孤独の王 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/08(土) 23:47:42 ID:99o2aOfI
「―――惑星は南を下とする。」という概念を展開するための道具らしいが、聞き覚えのない言葉が多く完全には理解できなかった。
一応その説明書を読んでみたが、要約するとこれを使用すれば南が下になるらしい。
言い換えれば重力の向きを横向きにする装置という事だが、戦闘中に使うとなると使いどころが微妙だ。
効果範囲はこの装置から半径100m、さらに出入り自由と設定されている。
戦闘中に使うにしても相手の動揺は誘えるが、自分にも適応されるとなれば話は別だ。
こちらとしても重力が変化しては戦いづらい。

もう一つ、コートはヴァッシュ・ザ・スタンピードという者の真っ赤なコートだった。
傷の付き具合から随分と使い込まれている事が一目で分かった。
名簿にヴァッシュの名前があったが、おそらくはその者の私物なのだろう。
そしてコートの使い込み具合、さらには耐久性に優れて耐魔加工が施されているという但し書き。
それだけでヴァッシュという者が歴戦を潜り抜けてきた強者だという事が想像される。
ただかなり防御力に期待できる代物だが、自分には宝の持ち腐れだ。
キース・レッドの得意とする戦闘は接近戦。
はっきり言ってコートを着ていては動きに支障が出る。
他の物ならともかくキース・レッドにとってコートは戦闘には向かない物だった。

ここまでなら外ればかりで落胆したが、最後に出てきた支給品は当たりに値するものだった。

最後の支給品、それは核鉄「サンライトハート改」だった。
とある世界で密かに研究が進められていた錬金術。
その成果である「核鉄」、その一つが突撃槍(ランス)の武装錬金「サンライトハート改」だった。
外見は片手に乗る程の大きさの六角形だが、付属の紙によれば所有者の闘争本能に呼応して展開して武器の形になるようだった。
サンライトハート『改』という事はサンライトハートの改良版という事だが、どの辺りが『改』なのかは分からなかった。
だがキース・レッドが興味を示したのはその次の説明だった。
それによれば核鉄は所有者の身体能力を強化する事ができるらしい。
試しに身に付けてみれば腕の再生が付ける前に比べて格段に進行した。
普通の人間より丈夫だとはいえARMSの力はここでは幾らか制限が加えられている。
だからこのような道具は非常にありがたかった。

当初キース・レッドはこのような道具に頼らなくてもARMSの力だけで切り抜ける気であった。
その結果が先の敗北だ。
その時点でキース・レッドは気付いた。
己の力を過信していては生き残れないと。
あの時ナイブズが自分を見逃したのはナイブズの都合に依る所が大きかった。
つまり一歩間違えばあの時点で自分は死んでいた事になる。
だからもう油断などしない。
あらゆる手段を以て敵を排除する。
そのためには使える物は全て使うべきだ。
そう考えた結果、キース・レッドはあの策に辿り着いた。
既にこの時、病院の方からは音は聞こえなくなっていた。
そこから推測される事は戦闘の終息。
あの強さだ、おそらく勝利したのはナイブズの方だろう。
それなら好都合だ。
あの時の借りを返す時だ。
ナイブズは北西の方へ向かうとキース・レッドは推測した。
理由は移動中に聞こえてきた一人の参加者による挑発という名の放送だ。
少しの邂逅だったが、ナイブズがあの放送を無視するとは思えない。
そこへ向かい、さらなる闘争を引き起こそうとする可能性は高い。
だから自分はその途上で待ち受ける。
ナイブズがここへ来た時、それがナイブズの最期だ。

そして予想は当たり、キース・レッドは策を実行に移した。

初手はサンライトハート改を展開しての目晦まし、そして加速。
この武装錬金は展開した際に山吹色の光を放つ事が可能であり、これでナイブズに一瞬の隙を作る。
そしてサンライトハート改は只の槍ではなく、闘争本能に呼応して推進力を生み出すという特性がある。
高所からの落下による重力加速も加えてキース・レッドは爆発的な突撃速度は得る事になった。



171 :孤独の王 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/08(土) 23:52:50 ID:99o2aOfI
次手として板型概念展開装置の発動による重力の向きの変更。
単に上空からの奇襲ではナイブズなら防ぐ可能性が高い。
そこで更にナイブズの動揺を作り、更なる隙を作る。
「―――惑星は南を下とする。」という概念が展開されれば周囲の南は下になる。
地面がいきなり下でなくなるという事態などいくらナイブズでも予想できない。
そこに付け入る隙ができる。

普段のナイブズならこの時点で状況を把握してすぐさま南に変更された重力に従う事もできたのかもしれなかった。
しかし今のナイブズにそれを要求するのは不可能だった。

原因は右腕の喪失だ。
今から約6時間前、ナイブズの身体は万全な状態だった。
それから数時間後、ナイブズの右腕は殺生丸との戦闘で壊死した。
そしてさらに数時間後つまりついさっきナイブズの右手はディエチによって消滅させられた。
右腕そのものは既に壊死していたのでそれほど損失とは考えなかったが、実は思わぬ問題があった。
プラント自立種のナイブズは『人間』ではないが『人型』ではある。
それはつまり二本の足で地面に立っているという事である。
当然そこには地面に向かって重心というものが存在する。
重力のある場所にいる以上その制約からは逃れる事は出来ない。
そんな事ができるのは重力に関して特殊な力を持つ者だけだが、ナイブズにそのような力はない。
今までは壊死したが右腕は付いていた。
人は身体全体でバランス延いては重心を取っている。
だが右腕の喪失によりナイブズの重心は大きく崩れる事となった。
まだ歩く事ぐらいならナイブズの実力でも可能だったが、咄嗟の行動となると齟齬が生じるのは明白だった。
しかも僅か数分前からの喪失では新たな重心への適応が間に合うはずなかった。

様々な要因が重なってできたナイブズは一瞬のすきを作る事となった。

重力とサンライトハート改の特性で加速して得た推進力を強引に方向修正かけながらその力の向きを南へ向ける。
今までの推進力に加えて新たに下へ向かう力がプラスされたサンライトハート改の威力は計り知れないものだ。
その道を阻む物は全て突き破り、そして後に残るのは残骸のみ。

これだけの行動に掛かった時間は10秒もなかった。
この時念のためキース・レッドはヴァッシュのコートを羽織っていた。
さすがにARMSをその身に宿すキース・レッドでも何の装備もなしにこの破壊の嵐を犯すのは無謀だからだ。
コートが無ければナイブズまでとはいかないが、その身を削り取られる事は必定だ。

全ての準備を整え持てる力を総動員した結果、キース・レッドはナイブズに勝利した。


     ▼     ▼     ▼


コツコツと階段を上る音が半壊した病院に虚しく響く。
音の発生源であるキース・レッドが目指す場所は初めてナイブズと会った4階の病室だ。
階段を上りきると右に歩を進めて、すぐに件の病室は見つかった。
一度来た事ある場所だった事に加えて、扉が無い病室の入り口が否応なしにその存在を主張していた。
そこに辿り着くとキース・レッドはある探し物を見つけるために病室を見渡した。
程なく目的の物は見つかった。
それはここに放置されていた高町なのはとカレン・シュタットフェルトのデイパックだった。



172 :孤独の王 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/08(土) 23:56:51 ID:99o2aOfI
キース・レッドはナイブズを止めとしてジャッカルを撃ち放つと、血塗れの身体を横目にデイパックを回収した。
だがそこに入っていたのは共通の支給品と首輪のみ。
そこに『ベガルタ』と『ガ・ボウ』の姿はなかった。
しかしそこでキース・レッドはある事に気付いた。

「中身が少ないな」

確かあの部屋には赤髪の女が一人いて、ナイブズに殺されている。
そいつの荷物分がナイブズのデイパックには見当たらなかった。
自分が戻ってくるまでに使いきった可能性もあったが、もしかしたらと思い病室に来てみれば案の定手付かずのデイパックがあった。
しかも何があったかは知らないが、首と胴が別れた少女の死体とその少女のものと思しきデイパックが増えていた。
よく見ると少女の方は病院へ二人を背負って飛んできた魔導師だった。
首輪が無い所を見るとナイブズのデイパックに入っていた首輪はこの少女のものらしい。
キース・レッドは新たに2つのデイパックを手に入れられた事を喜んだ。
これで『ベガルタ』か『ガ・ボウ』があれば尚いいのだが、それはここを出てからにした方が良さそうだ。

先の突撃やその前の戦闘の余波でこの病院はだいぶ被害が出ている。
所々で爆発痕が見られ、その中でも先程キース・レッド達が突っ込んで来た際にできた破壊が目立つ。
北側の壁は半分崩壊して、1階北フロアは瓦礫の山と言っても過言ではない状況だ。
下手に長居をすれば倒壊に巻き込まれる可能性がある。

「さて行くか。いろいろ手に入ったのは僥倖か」

キース・レッドは手に入った物をまとめると、病室を抜け出し階段へと向かった。
階段を若干急ぎ気味で降りると出口に向かって行こうとするが、そこであるはずのものが無い事に気付いた。

「……ナイブズッ!」

柱にサンライトハート越しに突き刺して、さらに頭に2発と胸に2発の計4発のコロラド撃ちで仕留めたはずだ。
必殺を期すに値すると言われたコロラド撃ちを受けて、それに確かに血が噴き出るところまで見ている。
あれで生きているなど到底思えない。

「――ッ!!」

キース・レッドの疑問は程なく解けた。
探していたナイブズは階段のすぐそば――つまり柱に近づいたキース・レッドの背後に立っていた。
振り向いた時には既にナイブズは唯一残っている左手をこちらに向けていた。
その腕はまるで天使のような雰囲気をキース・レッドに与えた。

(あれはオレの腕を消した時の――ッ)

エンジェルアーム。
ここに集う参加者の中でも最強とも言うべき威力を秘めた切り札。
その切り札が今キース・レッドに向けられていた。

(くそ、間に合え!!)

キース・レッドは今自分が置かれている状況をすぐに把握した。
接近して対処するだけの時間はない。
そして自らの死を回避するためにジャッカルの残り2発をすぐさま撃ち放った。

今度の銃声は2つだった。


     ▼     ▼     ▼




173 :孤独の王 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/09(日) 00:01:01 ID:wYPyr7Hm
俺はなぜここにいるのだろう。
俺にはやらなければいけない事があったはずだ。
それは俺達を虐げている者への断罪。
そうだ。
人間など滅ぶべきだ。
自分達の繁栄のためにプラントを搾取していく存在。
そんな虫螻に生きている価値など無い。

さっきは危なかった。
腹の傷は深いが、動けない事はない。
4発の銃弾は咄嗟に張ったシールドで防いだ。
何とはなしに胸ポケットに入れていたデバイスが役に立つとは思ってもみなかった。
だが急な事で防げる限界ギリギリの小さなものしか張れなかった上に、直撃を防いだだけだった。
それでもこうして生きている。

今、目の前に襲撃してきた張本人がいる。
目が霞んでよく見えないが、エンジェルアームの狙いぐらいは付けられる。
人間にしては良くやった方だが、これで終わりだ。

だが、ここに来てから人間に傷を負わされてばかりだ。
油断や慢心が残っていた結果がこの有り様。
では、これを機に改めて一切の油断と慢心を捨て去る事を決意しよう。

そしてヴァッシュ。
いずれ貴様にも分かる時が来るだろう。
人間が如何に愚昧の輩であるという事が。
今に教えてやる。
だから――

――待っていろ、ヴァッシュ。


     ▼     ▼     ▼




174 :孤独の王 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/09(日) 00:05:52 ID:99o2aOfI
キース・レッドは病院を後ろにして歩きながら複雑な気持ちだった。
既に回復した両腕は銃弾の補充という作業に勤しんでいた。
だが持っている銃はジャッカルの黒ではなく銀の色だ。
それは病院を出る前に拾った.454カスール カスタムオートマチックだった。
最初は弾切れしていたので捨てて置こうかと思った。
だが偶然にもジャッカルと口径が一致していたので、試しに予備弾を宛がってみれば上手く装填できた。
そこで予備弾12発をジャッカルとカスールに装填する作業に入ったのだ。

しかしそれでも考えるのはナイブズの事だ。
自分が放った2発の銃弾は今度こそナイブズの命を奪い取った。
先程はナイブズを救ったデュランダルも最初の攻防で既に無理な行いで限界を超えた上に胸への銃弾はそれを直撃していた。
だがエンジェルアームの方がこちらより若干狙いを付けるのが早かったとキース・レッドは思った。
それなのにこちらの銃弾はエンジェルアームが発動する前に届いた。
その理由は終ぞ分からなかった。

「……感謝する。お前のおかげで私は学んだ。これを糧にさせてもらうぞ」

キース・レッドはナイブズと相対する事でいくつかの事を学んだ。
最高の機を以て使える手段は全て使って事に当たる。
キース・レッドもある意味ナイブズと同類だった。
プラント自立種とARMSという違いはあれど、どちらも自分の力を自負していた。
だが今こうしてキース・レッドは生を迎え、ナイブズは死を迎えている。
その違いはどこから来るものであろうか。
それは今独りの彼には分からなかった。


【1日目 早朝】
【現在地 I-6】
【キース・レッド@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】疲労(小)
【装備】対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(6/6)@NANOSING、.454カスール カスタムオートマチック(6/6)@NANOSING、核鉄「サンライトハート改」(待機状態)@なのは×錬金
【道具】支給品一式×4、ジャッカルの予備弾(18発)@NANOSING、レリック(刻印ナンバーZ)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(神崎優衣)、S2U@リリカルTRIGUNA's、ランダム支給品0〜4(元なのは(A’s):0〜2、元カレン:0〜2)
【思考】
 基本:キース・シルバー(アレックス)と戦い、自分の方が高みにある事を証明する。
 1.シルバー(アレックス)及び『ベガルタ』『ガ・ボウ』の捜索。
 2.1を邪魔するものは容赦なく殲滅する。
 3.できるだけ早く首輪を外したい。
 4.とりあえずどこかで落ち着きたい。
【備考】
 ※第六話Aパート終了後からの参戦です。
 ※キース・シルバーとは「アレックス@ARMSクロス『シルバー』」の事だが、シルバーがアレックスという名前だとは知りません。
 ※神崎優衣の出身世界(仮面ライダーリリカル龍騎)について大まかな説明を聞きました。
 ※自身に掛けられた制限について把握しました。


     ▼     ▼     ▼




175 :孤独の王 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/09(日) 00:08:45 ID:wYPyr7Hm
ミリオンズ・ナイブズは孤独の王だった。
一人でずっと続けた幾度かの戦闘。
それによる疲れや傷がエンジェルアームの発射を妨げていた。
孤独ゆえに誰とも交わらない孤高の王。
だからその意思を推し量るなど常人にはできない事だった。
最期にナイブズが何を思ったか。
それはナイブズ本人しか分からない事だ。

【ミリオンズ・ナイブズ@リリカルTRIGUNA's  死亡確認】
※ナイブズ・なのは(A’s)・カレンのデイパック、S2U@リリカルTRIGUNA's、.454カスール カスタムオートマチック(0/6)@NANOSINGはキース・レッドが回収しました。
※病院は半壊状態です(特に北側エリアが被害甚大)。


176 : ◆RsQVcxRr96 :2008/11/09(日) 00:11:20 ID:wYPyr7Hm
投下終了です。
誤字脱字、矛盾、疑問などありましたら指摘して下さい。

なお放送ですが、明日の夕方辺りにでも投下しておきます。

177 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 00:13:58 ID:wYPyr7Hm
さっそくこちらで状態表の誤り及び支給品の説明が抜けている事に気付きました。
明日の夕方までに修正スレの方に投下しておきます。
すいません。

178 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 00:32:46 ID:DSVwjX+C
ナァァァァァァイブズッ!(CV小野坂)
いや、まさかこんなところでやられてしまうとはw
キースレッド、まさかの大健闘w
ともあれボロボロになりながらも戦い続けたナイブズに、今は黙祷を捧げましょう。
そして最後にGJ!

179 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 00:33:04 ID:ur4NZ2OE
投下乙です。
ナァァアアイブズ!!
頑張りに頑張った結果がコレだよ!
まさに足元を救われるとはこの事w
うん、お前は頑張ったw
これもまたロワ、無常な感じが良かったです!


あと一つだけ指摘を。
「ちぎれたEndless Chain」内のキースレッドの備考欄にて「腕は朝になれば治ると思います」と記述がされています。
「朝」に回復する筈の両腕が、明朝に治癒し終えているのは流石に早過ぎる気がするのですが……

180 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 00:53:41 ID:wYPyr7Hm
>>179
指摘どうもです。
それは核鉄の治癒能力促進で予定より早く治った事にしました。
>>170辺りにそれとなく書いてます。

181 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/09(日) 01:01:20 ID:ur4NZ2OE
>>180
ありゃ、これは失礼しました。
手早い返答ありがとう御座いました!

182 :第一回放送〜願い、闇の中で〜 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/09(日) 20:34:17 ID:wYPyr7Hm
一人の年頃の女性がいた。
彼女は今一人寂しくとある部屋の中にいる。
そんな彼女の目に映るもの。
それは死体。
首から上が無残にも吹き飛ばされた死体。
できる事なら逃げ出したかった。
しかしそれは無理だった。
それもそのはずだ。
彼女は椅子に座らされた体勢のまま光の縛鎖で縛りつけられて身動き一つ取れないでいたのだから。
彼女はただ誰とも知らない骸と共に静かな部屋に居続けていた。
だが、それも終わりを告げた。

『ピ、ピ、ピ、ピ、ピ……』

小刻みに電子音が彼女の首から放たれる。
首輪だ。
彼女の首には金属製の首輪が一つ嵌められていた。

「うそ、いや――ッ」

彼女は恐怖した。
なぜなら目の前の人物を死体にしたのは紛れもなくこの首輪。
突然鳴り響く電子音。
思い出されるのは少し前の光景。
目の前の人物は突然の事態に状況把握が追い付いていなかった。
そして。
首輪が爆ぜ、目の前の人物は物言わぬ骸となってしまった。

「いや、そんなのって……」

いつもなら強気な彼女も死の直前とあっては恐怖に心が支配されていた。
なんとかしないと死ぬ。
そう分かっていても身動き一つできない彼女は神に祈るぐらいしかできなかった。
もしかしたら誰か助けに来てくれるのではと、淡い期待も抱いた。
魔法を使える彼女の友人が今まさに助けに来てくれるのではないか。
そんな幻想に縋るしかなかった。

『ピピピピピ――』

だが、そんな彼女を嘲笑うかのように首輪のタイムリミットは刻一刻と近づいてくる。
彼女は周りを見渡したが、特に何も変化はない。

「……なのは」
『――ピッ』

首輪の電子音が途切れた。
同時に彼女の意識も途絶えた。


     ▼     ▼     ▼


183 :第一回放送 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/09(日) 20:38:05 ID:wYPyr7Hm


日が昇り、大地に陽光が差す頃合い。
常なら大多数の人にとって起床の時間。
これから新しい1日が始まる。
そんな時間になったが、この特別な場所にいる人にはそれは当てはまらない。
午前6時。
それはこの場所での最初の放送が入る時間。
時計の長針が12を指し、短針が6を指す時。
デスゲームの主催者、プレシア・テスタロッサによる最初の放送が始まった。


     ▼     ▼     ▼


さて、皆が待ち望んだ最初の放送の時間が来たわ。
まずはここまで生き残った事を誇りなさい。
あなた達は為すべき目的のために他者の死を踏み台に生き残ったのよ。
これは恥ずべき行為ではないわ。
目的のためなら如何なる手段をも辞さない姿勢こそが重要なのよ。

それでは最初に禁止エリアの発表を行うわ。
最初に死者を教えたら禁止エリアを聞き逃して間違って死ぬバカがいるかもしれないものね。
ありがたく思いなさい。
それじゃあ禁止エリアの発表よ、よく聞きなさい。

7時からB-1
9時からD-3
11時からH-4

以上の3エリアよ。

では次にお待ちかねの死者の発表よ。

アグモン
エリオ・モンディアル
カレン・シュタットフェルト
神崎優衣
ギルモン
クロノ・ハラオウン
シグナム
殺生丸
高町なのは
ティアナ・ランスター
ディエチ
ミリオンズ・ナイブズ
矢車想

以上13人よ。


184 :第一回放送 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/09(日) 20:39:48 ID:wYPyr7Hm

6時間で13人。
素晴らしいわ。
まさかあなた達が6時間でここまでやってくれるなんて思ってもみなかったわ。
自分のため、誰かのため、他者を殺した感想はどのようなものかしらね。
もしかしたらあなた達の隣にいる人があなたの大切な人を殺した殺人者かもしれないわよ。
その辺りよく考えてみる事ね。

そうだ、あなた達に朗報があるわ。
あなた達の努力に敬意を称して私から褒美を与えてあげる。
最後まで生き残った一人の望みを叶えてあげるわ。
帰還、富、名声、力、なんでもいいわ――たとえ死者を蘇生させる事でも。

大切な人を失った者よ、これはチャンスよ。
あなたが最後まで生き残れば、その大切な人を生き返らせる事ができるのよ。
あなたの大切な人にもう一度会う事ができるのよ。
だから何をするべきか、よく考えなさい。


     ▼     ▼     ▼


185 :第一回放送 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/09(日) 20:41:36 ID:wYPyr7Hm


「……ああ、そうね。証拠を見せましょうか」

プレシアは一呼吸置いてからマイクを持っていない左手で空間モニターを軽く弄った。
すると目の前にある画面の一部に変化が見られた。
これで参加者の目の前には等しく空間モニターが現れたはずだ。
念のため確認してみても不備はなさそうだ。

「今から私の言葉が本当だという事を証明するわ」

そう言ってプレシアは左手で空間モニターへ操作を施す。
しばらくして準備が整うと、プレシアの正面にある画面はある部屋の様子を映していた。
この映像は参加者の目の前に現れている空間モニターにも等しく映っている。
それはいくつもの椅子が並べられている部屋の映像だった。
だがその中には一つだけ誰かが座っているものがあった。
プレシアはそれが誰か知っている。
そしてこの映像を見ている全員も知っている。
そう、この映像は皆が最初に集められた部屋の映像。
そして唯一人椅子に座っているのは物言わぬ骸となったアリサ・バニングス。

「あなた達も覚えているでしょ。愚かにも最初に私への反抗を示した人物、アリサ・バニングス」

その名前は参加者ならどこかで聞き覚えのある名前だろう。
当然だ。
見せしめのために首輪のデモンストレーションとして死んでいった彼女の名は多くの参加者の胸に刻まれている事であろう。

「今から彼女を蘇生してみせるわ。よく見ていなさい」

そう言い終えた瞬間、映像の中のアリサに変化が起きた。
唐突にアリサを中心に魔法陣が形成されるや、凄まじい光が見る人の目を一瞬眩ませた。
そして再び見たモニターに映っているのは――

『え?』

そこにいたのは素っ頓狂な声を上げる女性。
何が起きたのか分からない表情をしたアリサ・バニングスの姿だった。
爆弾で失った頭も元通りになって、服に付いた血も綺麗に消えていた。
まさにあの部屋で皆が目にしたアリサ・バニングスその人だった。

『な、なんで!? 私は死んだはずじゃ……』

モニターの向こうのアリサはなぜ自分が生きているのかさっぱり理解できていない様子だった。
頻りに周りを見渡し、自分の身体を何度も見て状況を探ろうとしていた。
ただし最初のようにバインドで身を縛られているために身動きはできなかった。


186 :第一回放送 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/09(日) 20:43:36 ID:wYPyr7Hm

「さて、これで分かってもらえたかしら」

これでプレシアの言う事が嘘でないと皆に伝わっただろう。
もっとも疑り深い者はどこまでも疑うだろうが、今はこれでいい。
自分の力を示す事ができて、これで一応目的は達成された。

「それと何人か殺し合いを止めようとしているみたいだけど、頑張っても無駄よ。なぜならそんな事をし続けても、いずれは――」

――ボンッ!

「――こうなるからよ」

画面の向こうのアリサはもう生きてはいなかった。
最初の見せしめの時同様、首輪の爆発が彼女を死に至らしめたのだ。

「別にすぐにとは言わないわ。でも殺し合いが進まないと困るから、しかるべき時には……」

この光景を見た参加者はどうなるのだろう。
そんな事を考えながらプレシアは左手で空間モニターを弄ると参加者の前に出ていた空間モニターを消した。
少々細工をしているその空間モニターからこちらを逆探知する事は不可能だ。
その辺りに抜かりはない。


     ▼     ▼     ▼


それじゃこの辺りで放送を終わるわ。
次は六時間後の12時よ。
それまでに今度は何人の命が奪われるのかしらね。
今から楽しみだわ。
それじゃあ、あなた達の活躍を期待しているわ。

ふはははははははははは、はははははははははは、はははははははははは――


     ▼     ▼     ▼


実を言うと今の死者蘇生劇には種があった。
確かにモニターの中のアリサ・バニングスはどちらも19歳の大学生だ。

ただし別の世界のアリサ・バニングスだ。

最初に殺されたアリサは19歳のなのは達と一緒の世界のアリサ(『アリサ』)だ。
一方、今殺されたアリサはルルーシュ達と一緒の世界のアリサ(【アリサ】)なのだ。

種はこうだ。
まずはわざわざ首輪で【アリサ】に自分が死んだと思わせるために一芝居を打つ。
首輪が爆破したと思い込んだところで【アリサ】を気絶させるのだ。
そして頃合いを見計らって転送魔法を使って『アリサ』が死んだ場所に【アリサ】を転送させる。
その際に同時に『アリサ』は別の所へ転送して、【アリサ】は転送終了と同時に目が覚めるようにしておく。
あとは適当に死者が蘇生したかのように見せかけてからボロが出る前に【アリサ】を殺すだけ。
平行世界の存在を知っているからこそできた芸当だった。


     ▼     ▼     ▼


187 :第一回放送 ◆RsQVcxRr96 :2008/11/09(日) 20:46:01 ID:wYPyr7Hm


「ふぅ、意外と疲れるわね。で、そっちはどうなの?」

初めての放送という一仕事を終えて一息つくプレシアは後ろに控えている人物に声をかけた。
その人物は生真面目で気丈そうな雰囲気を漂わせる若い女性だった。
身に纏っているのは使用人を思わせるような独特なデザインの長袍らしき白を基調とした服装。
薄茶色の髪は肩の上の辺りで揃えられて頭には白い帽子がちょこんと乗っている。
黒のウェーブの掛かった長髪に漆黒のドレスの出で立ちのプレシアとは黒と白のように対照的だった。

「はい、今のところ特にあの者達に問題はありません」

彼女はプレシアの使い魔。
主人の目的のために造り出された命。
名前をリニスという。

「そう、それなら良かったわ。引き続き監視の統括をお願いね」

プレシアはリニスに監視の統括役という役目を与えていた。
如何にプレシアが優れた魔導師だとは言え、一人で参加者全員を見張るのは無理があった。
そこで監視にはある者達に当たらせて、リニスにはその統括役として総合的な監視を任じているのだ。

「プレシア。心配なら御自分で確認されては――」
「何度も言わせないで。私は忙しいの。大まかな監視記録は私の元へも来るようにはしているけど細かい所までは目が届かないわ。
 だからあの者達に監視をさせて、その見張り役として貴女を統括役にしているのよ。
 今は有能で好意的だからいいけど……だからと言ってあの者達を完全に信頼する事は出来ないわ」
「それは、分かっています」
「なら私の言う通りにして。ほら、用が済んだのなら早く監視室に戻りなさい。もちろん報告は怠らないでね」
「……分かりました」

その返事を置いてリニスはプレシアの部屋から退室していった。
リニスはどことなく不満げな様相をしていたが、プレシアは特に気を留めなかった。
そんな事よりもプレシアの関心はデスゲームに向いていた。
今の放送が殺し合いにどう影響するのか。
それがプレシアのもっとも気にする事だった。
憎き人物の死を喜ぶのか。
誰かの死を知って怒るのか。
大切な人の死を知って哀しむのか。
この状況を楽しむのか。

それがプレシアの目的にどんな影響を齎すのか。

――彼女の願いは、闇の中に。

【アリサ・バニングス@コードギアス 反目のスバル  死亡確認】
【残り47人】


188 : ◆RsQVcxRr96 :2008/11/09(日) 20:48:41 ID:wYPyr7Hm
投下終了です。
本筋には影響ない部分で少し細部に修正入れました。
何かありましたら指摘して下さい。

>>182の題名は制作段階の仮題名を入れてしまったもので、タイトルは「第一回放送」です。

189 : ◆7pf62HiyTE :2008/11/13(木) 16:32:37 ID:UiJWp9sA
ヴィータ1名、投下します。

190 :アナタハマタマモレナイカモネ ◆7pf62HiyTE :2008/11/13(木) 16:34:37 ID:UiJWp9sA



E-3……ヴィータはミライと別れ図書館を出た後、大通りを避け西方向に足を進めていた。
大通りを避けた理由……大通りの先には学校……数時間前赤コートの男……ヴィータ自身は名前を知らないがアーカードがヴィータやミライ達を襲撃した場所がある。
アーカードによりアグモンの首はねじ切られ、自分達を逃がす為に戦ったクロノは殺され、ヴィータ自身が運んできたギルモンの死体も置いて来てしまった。
アーカードがまだ学校周辺を彷徨いている可能性は高い、だからこそあの男との遭遇を避ける為大通りを避け、学校から離れる方向……西方向に足を進めていたのだ。
ヴィータとしてはアーカードを許すつもりはなく絶対に殺すつもりではあった。だが、現状遭遇した所で返り討ちに遭うのは間違いない。
更に言えば、ヴィータの目的はアーカードを殺す事ではなく主であるはやてを守ることだ。はやてとの合流を優先する為、今はアーカードとの遭遇を避けようとしていたのだ。

先程述べた通りヴィータの目的自体は主であるはやてを守ることである。
だが、それとは別に2つの約束は果たしたいとは思っていた……

1つはヴィータが最初に遭遇した参加者……ギルモンが死に際に話した言葉……

「……ヴィヴィ……ちゃ……を……お願…………―――」

参加者の中にいるヴィヴィオを守る事……もう1つはミライと別れる際にした……

「約束する! 殺し合いにのった奴としか戦わない! それは約束するよ!」

殺し合いに乗った参加者としか戦わない……つまり、脱出を目指している参加者や無力な参加者を襲ったりしない事だ。

ギルモン、ミライ、クロノ、アグモンの為にもその2つの約束は守る……ヴィータはそう考え足を進めていた。

正直な話道のりは険しい、持っている武器は槍1本……使い慣れているグラーフアイゼンは手元にはない。
さらにギルモンと共に戦ったカブトムシの怪物……キングによって負わされた左肩の傷もある。
当然の事だが仲間はいない……厳しい事となるのは想像に難くない。

それでも、

それでも主であるはやてを守る為にヴィータは足を進めていた……
シグナムやシャマル、ザフィーラだってはやてを守る為に動いているはず……
だから急いではやてと合流出来ればきっと大丈夫だ……

そう思い、足を進めていた……



そして、時刻は6時になる。

『さて、皆が待ち望んだ最初の放送の時間が来たわ。』

ヴィータの耳にある女性の声が響く……そう、この殺し合いを行っているプレシアの声だ。

「放送か……そういや禁止エリアがどうとかって言ってたな……」

ヴィータはデイパックから地図と名簿を出す。

『最初に死者を教えたら禁止エリアを聞き逃して間違って死ぬバカがいるかもしれないものね。
ありがたく思いなさい』
「思わねーよ……」

そう言いながらヴィータは地図とペンを手に取り放送で言われた禁止エリアに印を付ける。



191 :アナタハマタマモレナイカモネ ◆7pf62HiyTE :2008/11/13(木) 16:36:35 ID:UiJWp9sA
「とりあえず、ここじゃねぇみてえだな」
『では次にお待ちかねの死者の発表よ。』
「……」

ヴィータは聞き逃さない様にする……もし開口一番はやての名前が呼ばれたら……そんな考えたくもない事が脳裏をよぎる……

『アグモン』

最初に呼ばれたのは学校でアーカードによって首をねじ切られたアグモン……

(こいつもギルモンと同じデジモンだったのかな……)

そう思いつつ、放送は進む、

『エリオ・モンディアル
カレン・シュタットフェルト
神崎優衣』

知らない名前が続く……だが、少なくとも五十音順で呼ばれている事はわかった。
つまり、(考えたくは無いが)はやてが呼ばれるとしたら『八神はやて』の『や』……後半になる。
そして、ギルモンがヴィータに託したヴィヴィオは『う』……つまり、この時点でヴィヴィオは無事ということになる。

『ギルモン』

(……!)

次に呼ばれたのは、ヴィータが最初に遭遇し一緒にキングと戦い……そしてはやての名を騙った偽物に殺されたギルモンだった。

(ギルモン……)

ギルモンの事を思い出しながらも放送は進む。

『クロノ・ハラオウン』

アーカードからヴィータとミライを守る為に戦い……そして殺されたであろうクロノの名前が呼ばれた。

(……!)



192 :アナタハマタマモレナイカモネ ◆7pf62HiyTE :2008/11/13(木) 16:38:31 ID:UiJWp9sA
正直な所複雑な心境であった。殺し合いに呼ばれる前は敵対していた管理局の人間であったからだ……それでも、学校では自分達を助けてくれたのだ。
だから出来るならばその遺志は継ぎたい……そう思ってもいた……

しかし、次に呼ばれる名前によって思考は中断させられる。



『シグナム』



(シグナ……!?……ちょっと待て……今、なんつった!?)



呼ばれた名前はシグナム……ヴィータと同じくヴォルケンリッターの1人だ。そして、その戦闘力はヴィータと同等……
そのシグナムの名前が呼ばれた……そう、シグナムが死んだという事を意味しているのだ。
ヴィータの頭は一時真っ白になる……放送は続いているが頭になど入ってこない。
しかし数秒後、

(待て!はやてが無事か確かめねぇと!!)

何とか意識を取り戻し、放送に集中する。それでも既に数名の名前を聞き逃してしまった……ヴィータが次に聞き取れたのは……

『ミリオンズ・ナイブズ』

『み』で始まる参加者だった……まだ『や』ではない……そして、

『矢車想

以上13人よ』

ナイブズの次に呼ばれたのは矢車……どちらも知らない名前だが、そんな事はヴィータにとってはどうでもいい。
五十音順ならば、はやてが呼ばれる場合ナイブズと矢車の間になる……つまり……

「はやては無事……良かった……」

今現在、はやては無事……その事実にひとまず安堵するヴィータだった。そんな中さらに放送は進む。

『あなた達の努力に敬意を称して私から褒美を与えてあげる。
最後まで生き残った一人の望みを叶えてあげるわ 』
「何だって……?」

どういうことなんだ……ヴィータは考える……

『たとえ死者を蘇生させる事でも』
「!?」

放送は進み、ヴィータの前にモニターが現れる。



193 :アナタハマタマモレナイカモネ ◆7pf62HiyTE :2008/11/13(木) 16:40:20 ID:UiJWp9sA
「おい!こいつは!?」

映像は最初に首輪を爆破されて頭を飛ばされた女……アリサの亡骸だった。そして、

「何!?」

突然、アリサの頭が元通りになる。

「本当に生き返ったっていうのかよ……」

ヴィータは驚く……しかし間もなくアリサの首輪が再び爆破され頭を飛ばされた……

「っ!!」

そして長い様で短かった放送は終わりを迎えた……



「……」

ヴィータはしばしその場から動けないでいた……少なくてもはやては無事……それは良かった……
だが、シグナムは死んだ……ヴィータと同等の力を持っているはずのシグナムが……

「マジかよ……あのシグナムが……」

ヴィータにとっては信じがたい事実であった……あのシグナムが死ぬというのは……
だが、考えられない話ではない……ヴィータ自身アーカードの襲撃で九死に一生を得ているのだ。
恐らくシグナムも自身のデバイスであるレヴァンティンは没収されているだろう。その状況でアーカード並の参加者に襲われれば……殺される可能性は十分にある。
と、ここである事に気が付く。

「……ちょっと待て、シャマルやザフィーラは無事なのか!?」

そう、ヴィータははやてが呼ばれる可能性は想定していても、ヴォルケンリッターの仲間が呼ばれることは全く想定していなかったのだ。
つまり、シャマルやザフィーラの事までは気が回らなかったのである。
そして、シグナムの名前が呼ばれたショックで一時放心状態となり放送の一部を聞き逃していた……。

「確かザフィーラは『さ』……呼ばれるならシグナムの前だから……ザフィーラは無事……」

五十音順ならザフィーラはシグナムの前となる。シグナムの前まではちゃんと聞き取れているので呼ばれていないザフィーラは無事ということになる。

「シャマルは……『し』……シグナムと同じ…シグナムは『しく』……シャマルは……『しや』……シグナムの後か……」

シャマルはシグナムの後となる……ヴィータはミリオンズ・ナイブズから聞き取れた…つまり『み』までの名前を聞き逃している為……

「シャマルはどうなったんだ……無事なのか……?」

シャマルの生死は不明……シグナムが死ぬ程の戦い……大丈夫だ、無事に決まっているなんていう楽観的な考えは最早出来ない……
もしかしたらシャマルも死んでいるかも知れない……



194 :アナタハマタマモレナイカモネ ◆7pf62HiyTE :2008/11/13(木) 16:42:06 ID:UiJWp9sA
「くっ……!」

ヴィータ自身シグナムが死んで悲しいし、出来うるならばシグナムの仇を討ちたいとも思う。
更にシャマルの安否も気にはなるし、ザフィーラも今どうなっているのか心配だ。
だが、それでも……いや、だからこそヴィータはその事で目的を見失ったりはしない。

そう、ヴィータの……いや、ヴォルケンリッターの目的は変わらないのだ。主であるはやてを守ることには……
むしろシグナムが死に、シャマルの生死が不明だからこそなおのこと急がなければならない。

シグナムが死んだということははやてを守れるのはヴィータ、シャマル、ザフィーラだけとなる。
更にシャマルが死んでいるのであればヴィータとザフィーラだけ……
それだけではない、仮に今は無事であるとしてもシグナムが死ぬ程の戦いだ……ザフィーラだってすぐに死ぬかもしれない……

つまり、はやてを守れるのは最早ヴィータだけかもしれないという事だ。

故に……ヴィータははやてを守る為に再び歩き出そうとする。

「待ってろ……はやて……すぐにあたしが行って……」

だが、もしかしたら間に合わずはやても死ぬかもしれない……そんな考えたくない想像が頭をよぎる……
そうなったらどうしたらいいのだろうか?
そう考えた時、放送で言っていた事を思い出す。

『最後まで生き残った一人の望みを叶えてあげるわ。』
『たとえ死者を蘇生させる事でも』

プレシアは優勝したら願いを叶えると言った……死者を蘇生させる事でも良いと……

勿論、はやてが生きている現状でそんな言葉に乗るつもりは全くない。
だが、もしはやてが命を落としたとしたら……?

はやてを生き返らせる為に他の参加者を皆殺しにする……そんな考えが頭をよぎる……。

勿論、はやて自身がそんな事を望まない事はわかっている。
だが、はやてのいない世界になんて意味はない……

(はやてが死んだとしたら……あたしは……!!)

そんな最悪の状況を考える……そして脳裏に浮かぶのは2つの約束……

「……ヴィヴィ……ちゃ……を……お願…………―――」
「約束する! 殺し合いにのった奴としか戦わない! それは約束するよ!」

もし、そうなるならばその2つの約束を破り、ヴィヴィオを含めた参加者全てを皆殺しにすることになる……
無論、ヴィータ自身約束を破りたくはない……だが、はやてが死に、彼女を生き返らせる為ならば……



195 :アナタハマタマモレナイカモネ ◆7pf62HiyTE :2008/11/13(木) 16:44:26 ID:UiJWp9sA
(悪い……ギルモン……ミライ……約束、守れねえかも知れねえ……)

勿論、約束を破りたくはない。だからこそいち早くはやてと合流しなければならないのだ。
と、地図と名簿をしまおうとデイパックを開けるが、ふとあるものが目に付く。

「……なんだ?」

ヴィータはそのあるもの……折り畳まれた2枚の紙を取り出し、その内の1枚を開く。

「『デジヴァイスic』…『デジソウル』…『チャージ』…ちょっと待て、これって!」

そこにはヴィータが持っているデジヴァイスの説明が書かれていた。そう、それはデジヴァイスの説明書であった。
内容はギルモンが口にしていた通りの内容がより詳しく書かれている……制限についても書かれている様だが、もはやギルモンが死んだ今それについては大した問題ではない。
重要なのは説明書があったという事だ。

ヴィータはこの殺し合いに送り込まれた時に支給品の確認を行っている。当然、3つの支給品についてもだ。
だが、急いではやてと合流しなければならないという焦りがあった為、説明書の存在には気が付かず、
結局指輪の状態から起動して槍にすることが出来た槍しか使えないと判断したのだ。

「ということは……もう1枚の紙は……」

ヴィータは最後の支給品と紙を出す。
最後の支給品は六角形の金属の塊……ヴィータ自身はデバイスの一種だと思って魔力を通したが何も起こらなかった為、ハズレだと判断したのだ。
そう、ヴィータは支給品に付けられていた説明書を読んではいない……そして、今その説明書に目を通す……。



……ヴィータは後悔した……支給品をもっとよく確かめれば良かったと……説明書にちゃんと目を通すべきだったと……



そう、最後の支給品はヴィータにとって大当たりと言えるもの『だった』のだ。

その支給品は核金『ヘルメスドライブ』……説明書には錬金術とかどうとか書かれているがその事は別にどうでも良い。
重要なポイントは2つ……まず1つは核金状態であれば治癒力を増幅する効果があるということ。
もう1つは『武装錬金』という言葉で発動し、六角形のレーダーとなり、顔と名前を知っている人間であれば探知出来る能力である。
レーダー能力自体は有り難いし場合によっては鈍器にもなるわけではあるが、この支給品にはそれ以上に重要な力を持っている。

それは知っている人間の所であれば転移出来るという能力である。
勿論、この場においては制限があり、それについてもちゃんと説明書に書かれている。
まず、最初に使用した使用者が登録され、その者しか使用出来ないという条件。つまり、登録された者が知っている人物の所にしか転移出来ないのだ。そしてそれはその人物が死ぬまで解除されない。
次に、同時に転移出来る人物は2人まで……先程の条件も含めて登録された者ともう1人しか同時に転移出来ないという条件。
さらに、レーダー範囲は現在いるエリアを中心とした周囲エリアの9エリアのみ、転移可能範囲は現在いるエリア内のみ……当然、探知&転移目標にできる人物は参加者だけである。
最後……一度転移したら6時間は再転移出来ないという条件である。なお、レーダー能力はそのまま使用可能。
以上の通りの制限はあるものの、これを使えば会いたい人物の所へすぐに移動出来る事には変わりがない。

そう、一刻も早くはやてやヴォルケンリッターの仲間に会いたいヴィータにとってはこれ以上ない位に当たりの支給品……『だった』のだ……。

ヴィータはすぐさまヘルメスドライブを発動しはやて達の位置を探る。
F-3にザフィーラ、シグナムがいることを確認し、E-4にはやてがいる事を確認する。
E-4といえば先程までヴィータがいたエリア……だが、戻る事はしない。



196 :アナタハマタマモレナイカモネ ◆7pf62HiyTE :2008/11/13(木) 16:46:22 ID:UiJWp9sA
「このはやては……本物のはやてなのか……?」

そう、E-4にいるはやてが本物のはやてだと判断出来なかったのだ。つまり、今現在E-4にいるはやてがギルモンを殺したはやての名を騙った偽物である可能性もあるということだ。
実際、ヴィータがE-4にある図書館を出た直後、その偽物のはやてがヴィータを求めて図書館に転移しているわけだがその事をヴィータが知るはずもない。
さて、ヴィータ自身はそのはやては偽物だと思ってはいる……だが、あの時殺せなかった事から、彼女もまた『八神はやて』だと心のどこかでは僅かに認めてしまっているのだ……
そして、名簿にははやての名前が2つある…つまり、偽物もまた『八神はやて』の名前である事は確ほぼ間違いないということだ。
故にレーダーに反応しているはやてが本物か偽物か……それがヴィータにはわからなかったのだ。
別人と考えるには外見上は年齢以外あまりにも似すぎている……どちらのはやてであってもおかしくはない……

真面目な話、この場所に来た時点で支給品の確認をしっかりと行えば悩む必要など無かった。
そう、探知&転移出来る相手は顔と名前を知っている人間のみ……つまり、偽物のはやてと出会っていない状態なら何の問題も無くヴィータが守るべきはやての位置を探ることが出来たはずなのだ。
だが、今はもう2人の『八神はやて』を知ってしまった……すぐさまレーダーに反応したはやての所へ向かうという選択肢は失われた……
勿論、2分の1の確率に賭けて向かってみるという方法もある。だが、そのはやてが偽物という可能性がある(実際そうだが、ヴィータ本人は知らない。)。
仮に偽物であるならば、そこまでの移動と偽物のはやてへの対処で多くの時間を無駄にしてしまう。
そうなれば最悪、その時間で本物のはやてが死んでしまう可能性だってある。
勿論、先にザフィーラと合流するという選択肢もあるが、レーダーのはやてが本物である場合逆方向に進む羽目になり、その場合ははやてを守るチャンスを失う事となる。

そう、偽物のはやてと出会ったばかりに使うべき最良のタイミングは失われてしまったのだ……。

さらに……

「……もっと早くこいつに気付いていりゃあ……ギルモンだって……」

思い出すのはギルモンがはやての偽物に殺された時のこと……状況的には間に合わなかったかもしれないが、もしかしたら核金状態での治癒力強化があれば助けられていたかもしれないのだ。
それでなくてもキングが襲撃する前にでもレーダーを頼りに移動を始めていればはやての偽物に襲われギルモンが殺される事無く、はやてと無事合流した後にでもヴィヴィオを探すことだって出来たはずなのだ。



さて、ヴィータは知る由のない話だが……いや、恐らくこのことは参加者からみれば誰も気付くことのない話だろう……
ヴィータがこの場所に来てすぐにヘルメスドライブの存在に気付いていたならば、もしかしたらはやてを含めたヴォルケンリッターが全員無事に集結していたかもしれないのだ。
そして、ギルモン及びシグナムも死なずに済んだかもしれないのだ。

どういう事かを説明しよう。


197 :アナタハマタマモレナイカモネ ◆7pf62HiyTE :2008/11/13(木) 16:48:01 ID:UiJWp9sA

ヴィータの初期位置はE-5、シャマルの初期位置はF-4…そう、シャマルをすぐに探知することができたのだ。
仮にギルモンと合流していても戦闘を行わずに移動を開始すればキングの襲撃に遭うことなくシャマルとの合流ができる。
一方、シャマルはF-5へと移動しながら仲間を探していた。ヴィータとの合流位置はF-5かシャマルの初期位置であるF-4となったであろう。

さて、シグナムはその頃どうしているだろうか?
シグナムの初期位置はF-3…シグナムはF-3でティアナを殺し、アレックスと対峙していてその場にセフィロスが現れていた。
F-3……もし、ヴィータとシャマルの合流地点がF-4、もしくはF-5で合流後西へ進みF-4に移動したならレーダーの策敵可能範囲となる。
もしシグナムを探知出来たならすぐさまそこへ向かうだろう。
さらに、はやてもまたセフィロスを追ってF-3へ向かっていた……そう、はやても探知できるのだ。
そうなれば、F-3に入った瞬間に転移でもしてすぐにでも助けに向かっていただろう。
仮にギルモンも連れていて誰かを置いていく状況になったとしても、レーダーで探知が出来る以上再合流はそう難しいことではない。
F-3ではさらにかがみも加えての乱戦となったが、その場にヴィータが加わればセフィロス、シグナム、ヴィータが揃い十分に対処は可能だろう。
そう、かがみによってシグナムが殺される事も無かったかも知れないのだ……

ここまでの話でわかるようにザフィーラ以外との合流ができた可能性はある。
さて、最後の1人ザフィーラはどうしていただろうか?
ザフィーラはLと共にI-1にある客船へ南下していた……が、その途中F-2にある翠屋に暫く留まっていた。
おわかりだろうか?ヴィータ達がF-3に集結しているならヘルメスドライブで探知出来る範囲だ。
そうなればすぐにでもザフィーラとも合流できたであろう。

そう、この時点ではやてを含めたヴォルケンリッターが全員集結する事になるのだ。
上手くいけばセフィロス、ギルモン、L……もしかしたらアレックスをも加えた大集団が出来たことであろう。

無論、ここまで事が上手く運ぶとはいえないだろう。だが、ヘルメスドライブを使いこなせれば制限下におけるこの状況でもここまでの事はできるはずなのだ。
そう、ヘルメスドライブの存在にさえ気付いていればシグナムが殺されずに済んでいたかも知れないのだ。

それだけではない、今現在はやて達は予断を許さない状況だ。
はやてはセフィロスと共に学校でヴィータ達を襲撃したアーカードと対峙し、
シャマルは策を巡らせるクアットロの手駒となり、
ザフィーラとLはシグナムを殺したかがみを手元に抱えている……
そう、次の瞬間には彼らの命が危ないと言える状況なのだ。



支給品をよく確認しなかったばかりにギルモンを守れず、知らぬ所ではやて達との合流の機会を逃し危機に追い込んでいるのだ……勿論、それだけが原因とは言えないし、結果は変わらなかったかも知れない。
だが、支給品の確認を怠るというミスが無ければ、はやて達やギルモンを守れた可能性があったことに変わりはない。


198 :アナタハマタマモレナイカモネ ◆7pf62HiyTE :2008/11/13(木) 16:49:45 ID:UiJWp9sA



強い後悔の念がヴィータを締め付ける……しかし、それでも足を止めるわけにはいかない。
ここで立ち止まっている間にはやてが死ぬかも知れないのだ。
シグナムが死に、シャマルの生死もわからない、ザフィーラだっていつ死ぬかわからない状況。
ヴィータがはやてを守らなければならないのだ……

もし、仮にはやてを守れなかったら……

そんな事など想像したくなかった。

だからこそヴィータはヘルメスドライブを見つめる……

「こいつに賭けるしかないのか……?」

ヴィータは考える……本物かどうか不明なはやての所に向かうか、ザフィーラの所に向かうか、あえて別の方向へ向かいシャマルやもう1人のはやてを探すか……
考える時間はそう多くはない……もしも、ここで判断を誤ればどうなるのか……



『貴方は……また……守れないかもね……』



何処からともなく、そんな声が聞こえた気がした。



199 :代理投下:2008/11/13(木) 17:18:14 ID:+iFNWXir
【1日目 朝】
【現在地 E-3】

【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】
【状態】疲労(小)、深い哀しみ、左肩に大きな切り傷 、強い後悔
【装備】ゼストの槍@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ヘルメスドライブ@なのは×錬金
【道具】支給品一式×1、デジヴァイスic@デジモン・ザ・リリカルS&F
【思考】
 基本 はやてを救って、元の世界に帰る
 1.どうすればいいんだ……
 2.八神はやて及びザフィーラ、生きているならシャマルとの合流
 3.そして彼らに偽者の八神はやてがいて、殺し合いに乗っていることを伝える
 4.ヴィヴィオを見付けた場合は、ギルモンの代わりに守ってやる
 5.赤コートの男(アーカード)はぶっ殺す。
 6.シグナムを殺した人物を見つけた場合は、仇を討つ
 7.もしはやてが死んだとしたら……
【備考】
 ※はやて(StS)を、はやて(A's)の偽物だと思っています
 ※デジヴァイスには、一時的に仮パートナーとして選ばれたのかも知れません
 ※なのは達のデバイスが強化されたあたりからの参戦です
 ※放送についてはシグナムからナイブズの間に呼ばれていた名前を聞き逃しました。つまり、シャマルの生死は把握していません
 ※ヘルメスドライブの使用者として登録されました
 ※ヘルメスドライブに反応している(E-4にいる)はやて(StS)がどちらのはやてか判断出来ていません。どちらの可能性もあると思っています

【ヘルメスドライブ@なのは×錬金】
 探査機(レーダー)の武装錬金、所有者の闘争本能に呼応して展開し六角形のレーダーとなる。レーダーは一応盾や鈍器としても使用可能
 顔と名前を知っている相手の策敵、及びその場所まで瞬間移動する事ができる(但し、瞬間移動は2人が限界)
 本ロワでは以下の様な制限が加えられている
  ・最初に使用した者が登録者となり、登録者が死ぬまでは登録者以外は使用出来ない。登録者が死ねば登録は解除される
  ・策敵範囲は現在エリアと周囲エリアの計9エリアで転移範囲は現在エリアのみ、策敵及び転移可能なのは登録者が顔と名前の両方を知っている参加者だけである
  ・同時に転移出来るのは登録者を含め2人まで
  ・一度転移した場合、6時間は再転移不能。レーダー能力は使用可能
 なお、核金状態であれば治癒力を強化することが出来る(これはどの核金でも同じだが。)。これについては登録者以外の相手にも使用出来る
 ちなみに、並行世界の相手であっても顔と名前を知っていれば探知&転移は可能。但し、外見が大きく異なる場合は同じ名前ではあっても一応別人として扱われる
 例えばフェイト(A's)は知っていてフェイト(StS)の姿を知らないならフェイト(A's)しか探知&転移できない
 そしてこのロワの場合クロノ(A's時代から参加)を探知&転移できるのはA's時点でのクロノの顔と名前を知っている場合のみ
 例えばStSでの姿しか知らない参加者はクロノを探知&転移は不可能
 但し、ヴォルケンリッターについては外見変化が無いので探知&転移は可能
 例えばナイブズ(A's時代から参加)がシャマル(StS時代から参加)を探知&転移、及びスバルがシグナム(A's時代から参加)を探知&転移は可能

200 :代理投下:2008/11/13(木) 17:19:12 ID:+iFNWXir
投下完了いたしました。
タイトルの元ネタはStSにてクアットロがヴィータに言った『貴方は……また……守れないかもね……』からです。(ここにいるヴィータはA'sからの参加ですが)

……なんか制限かかっている割にヘルメスドライブがチート過ぎる気が(自分で出しておいてアレですが)……。

201 :代理投下:2008/11/13(木) 17:20:46 ID:+iFNWXir
代理投下は以上です

202 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/11/13(木) 19:01:44 ID:+iFNWXir
では自分も、ルルーシュ、スバル、こなた、レイ分を投下します

203 :誰かのために生きて、この一瞬が全て ◆9L.gxDzakI :2008/11/13(木) 19:04:09 ID:+iFNWXir
 背中に感じるのは、冷たいコンクリートの感触。
 横に感じるのは、暖かな自分以外の人間の気配。
 気付けば俺はアッシュフォード学園の屋上で、手すりにもたれかかるようにして座り込んでいた。
 そしてその隣には、同じく手すりによりかかるようにして、あのディエチが立っていた。
 その状況を、俺はごく自然に受け止めていた。

 ……お前を切り捨てた時、ひどくこの胸が痛んだんだ。

「そう」

 最初は、ただの手駒としてしか見なしていなかった。
 自分の目的を成し遂げるために、散々使い倒して、最後は襤褸雑巾のように捨てるつもりだったんだ。
 ……それでも、いざお前を切り捨てる時、俺はとても苦しく思った。

「それは、捨てようとしたのがあたしだったから? あたしを特別に想ってくれていたから?」

 ……いや、そうじゃない。残念だが、割とよくあることなんだ。
 それに、俺にはナナリーが――守るべき、最愛の妹がいる。悪いが、お前を一番に想うことは、きっとできない。

「そっか」

 いつも、そうだ。
 俺が仮面を被り、嘘を纏い、ゼロを演じて修羅の道を進む覚悟を決めたというのに。
 いつもいつも、俺は甘い。すぐに情を覚えてしまうし、すぐに切り捨てることをためらってしまう。
 捨ててしまった方が楽なはずなのに、それでも捨てることができなくて。
 ……いつも、余計に苦しくなる。
 自業自得だと、分かってはいるんだが、な。

「……優しいんだね、ルルーシュは」

 スバルにも言われたよ……優しさなんて、とっくの昔に捨ててしまったはずなのに。
 契約を結び、この眼にギアスを宿した瞬間――いいや、あの7年前の夏の日からずっと、俺は戦うために生きてきた。
 そこには優しさなんて必要なくて、ナナリー以外の人間に情を抱くことなんて、余計なことでしかなかったはずだった。
 ……でも、やっぱり俺は駄目だな。
 シャーリーも、ユフィも、スザクも、C.C.も、それにお前も……スバルも……みんななくしたく、なかったんだよ。

「………」

 なぁ、ディエチ。俺は一体どうすればいい?
 俺はゼロを演じられなくなった。絶対の存在を演出することは、できなくなってしまったんだ。
 完全無欠だからこそ、ゼロの仮面へカリスマを宿すことができた。だが、俺は見ての通り無敵ではなくなった。
 手負いの虎は所詮手負いだ。誰も俺を、少なくとも、完璧な英雄と見なしてはくれないだろう。
 きっと、俺はもう戦えない。戦うための刃は砕かれた。
 犠牲を無駄にしないためにも、真っ直ぐに進み続けたつもりだった。だが、それすらもできなくなってしまった。
 俺はどうすればいい? どう戦えばいい? どうやって償えばいいんだ?

「分からないよ。そんなことは考えたこともないし、そのまま死んじゃったわけだし。あたしが軽々しく答えるには、重すぎる」

 ……そうだよな……俺自身が、お前が語るべき口も、考えるべき頭も……全て奪ってしまったんだよな……

「でも――いるよ」

 え?

「ルルーシュが守りたいって思える人。ルルーシュに戦ってほしいって願ってる人」

 ディエチ……?

「――ルルーシュのすぐ、傍に」

204 :誰かのために生きて、この一瞬が全て ◆9L.gxDzakI :2008/11/13(木) 19:05:46 ID:+iFNWXir


 バトルロワイアル最初の放送が流れたその時、スバル・ナカジマと泉こなたは、デュエルアカデミアの保健室にいた。
 スバルの腕の中で倒れた、黒髪と黒いマントの少年を助けるために。
 止血と応急処置を施したことで、名も知れぬ少年の容態はかなり落ち着いた。感染症対策のために、消毒もしてある。
 失われた分の血液を補うための輸血もしておきたかったが、生憎と保健室にはそこまでの用意はない。
 いずれ病院に向かう必要は出てくるだろう。だが、彼はその病院から逃げてきた可能性が濃厚だ。
 病院は危険かもしれない。それでも、そこを危険たらしめている人間は、無視できない。
 そうこう考えているうちに、あのプレシア・テスタロッサの高笑いが、スバル達の耳に届いていた。
 並べられた13の名前。不吉極まりない死のナンバー。
 そしてその中に含められた名前――高町なのは。
(どっちのなのはさんが殺されたんだろう)
 スバルには分かっていた。ここには恐らく、2人の彼女がいるであろうことが。
 スバルの知る、機動六課前線フォワード部隊分隊長を務める、エース・オブ・エースの高町なのは。
 こなたの知る、彼女の学校へフェイトと共に転校してきた、陵桜学園高等部3年B組の高町なのは。
 つまりどちらかの彼女のことを、自分は知らないということになるし、ひょっとすると、実は両方とも知らない人間なのかもしれない。
(でも……なのはさんはなのはさんだ)
 それでも、それは大した問題にはならなかった。
 どちらの世界から来ていたとしても、なのははなのはなのだ。
 かつて自分の命を救ってくれた、強くて優しくてかっこいい、憧れの高町なのはには変わりないのだ。
 であれば、自分と面識がないからといって、どうして他人と見なすことができよう。
 それに、命を落としたのは、彼女だけではない。
「……ティア……っ!」
 ティアナ・ランスター。
 訓練校の頃からいつも一緒で、お互いに高めあい、信頼しあってきたパートナー。
 スバルが過ごしてきた15年の人生の中でも、一番大切な友達。
 その命が、失われた。自分の知らない場所で。自分の手の届かないところで。守ることもできないで。
 最愛の親友は、もう、戻ってこない。
 涙腺から溢れる雫を止めることはできなかった。
 両手で顔を押さえ込むと、スバルは堰を切って嗚咽を響かせる。
 守れなかった。大切な人達が死んでしまった。
 なのはが。ティアナが。エリオやシグナムも、更生プログラムを受けていたディエチも。
 その事実はスバルの繊細な心へと、容易に亀裂を走らせる。
 プレシアは、生き残った人間の願いを叶えると言った。人を生き返らせることもできると。
 しかし、どうせあの手の人間は、せいぜい1人ぐらいしか生き返らせるつもりもないに違いない。
 誰を蘇生させるかなど、スバルに選べるはずもない。
 そもそもそれ以前に、そのために他者を殺すという決断にまで、今の彼女の頭が回るはずもなかった。
 一方のこなたはというと、この状況を、スバルよりは幾分か冷静に受け止めていた。
 実を言うと、まだまだなのはとの交流はそんなに深くはない。つい最近転校してきて、仲良くしようと思って近づいたくらいだ。
 だからスバルのように号泣するには至らなかったし、かがみやつかさの無事に安堵する余裕もあった。
 それでも、表情は冴えない。落ち込んではいる。
 つい昨日まで友達だった人間が、唐突に死んでしまったのだから。
(やっぱり……人が死ぬのって、理屈じゃないんだね……)
 こなたは死に直面するのは初めてだ。少なくとも、身近な人のそれには。
 亡母かなたが命を落とした時には、未だ物心もついていない。故に、なのはの死にも漠然としか実感が沸かない。
 それでも、悲しいのだ。何が何だか分からなくても、悲しいと思えるのだ。
 きっと人が死ぬというのは、そういうことなのだ。

205 :誰かのために生きて、この一瞬が全て ◆9L.gxDzakI :2008/11/13(木) 19:07:16 ID:+iFNWXir
「……ん……」
 不意に、声が響く。
 男の声。女2人しかいないこの部屋からは、おおよそ上がらないような声だ。
 であれば、それが意味することは1つ。これまで眠っていて、数に入っていなかった少年が、今まさに目覚めようとしている。
 震える瞼。ゆっくりと、それが開かれる。覗くのは紫色の澄んだ瞳。
「あ……」
 こなたはそれに気付くことができた。だが泣き続けるスバルの耳には、その微かな声が入ることはなかった。



 ルルーシュ・ランペルージが覚醒した時、まず最初に感じたのは、身体にかけられた布の感触だった。
 自分の右腕がないことには、今更驚くこともなかった。自分の意識があるうちに、切断されていたのだから。
 シーツが被せられている。気付けば、ベッドに寝せられている。
 視線の先にあったのは、天井。であれば自分を拾った誰かが、ここまで連れてきてくれたということか。
 現在地を確認するために、視線だけをきょろきょろと泳がす。
 病院の病室だろうか。しかし、それは有り得ない。あの場所へ戻ってきているはずがない。
「……ふ、ぅう……っ……」
 と、そこでようやく、鼓膜に響く声に気付く。
 どうやらすぐそこで、誰かが泣いているようだ。否、誰かではない。
 自分はこの声を知っている。もっとも、覚えがあるのは普段の声と泣き顔だけで、泣き声を聞いたことは一度もなかったが。
 視線を声のする方へと、向ける。
 スバルだ。
 顔面を押さえて涙を流しているのは、紛れもなくスバル・ナカジマだった。
 そうだ。自分は意識を失う直前、ようやくスバルと再会できたのだ。
 ディエチという犠牲を払いながらも、恐らくこのデスゲームの中で、最も大切な友人と。
「スバ、ル……」
 呻くような声で、名前を呼ぶ。やはり寝起きともなると、発する声も調子が悪い。
 喉から声を絞り出すようにして言いながら、ルルーシュはゆっくりと状態を起こした。
 使える腕が左だけともなると、どうにも色々やりづらいものだ。バランスは取りづらいし、利き腕でない分器用に使えない。
「あ……」
 だが一方のスバルはというと、突然、面食らったような表情になったのだ。
 泣きはらして真っ赤に充血した瞳が、虚を突かれたように開かれる。
「……あ、えと……その……」
 そして、今度は急に慌て出した。
 どう対処していいのか分からないといった気配を、全身の挙動から発しながらおろおろとする。
 慌て者のスバルがこうやってテンパるところを、ルルーシュは見たことがないわけではない。それどころか、しょっちゅうある。
 だが、何故今そのリアクションを取るのか。自分の名前さえも呼んでくれないまま。
 まるで、あたかも今初めて会ったばかりの人間と接するように。
 否、それにしたっておかしい。それなら自分の容態を伺うくらいはするはずではないか。
 何もかもが理解できず、ルルーシュはきょとんとした表情を浮かべる。
「あー……そうだったね」
 と、そこへ不意に、聞き覚えのない声が割って入った。
 そちらへと視線を向けると、1人の小柄な少女が立っている。青いロングヘアーが印象的だ。
「この人とはあたしが話すから、スバルはしばらく外を見張ってて」
「う……うん……」
 少女に促されながら、スバルが戸口へと歩いていく。悲しみに涙する彼女では、確かにろくな応対は望めないだろう。
 ドアをくぐり、扉が閉じられると、ようやく少女がルルーシュの方へと向き直り、口を開いた。

206 :誰かのために生きて、この一瞬が全て ◆9L.gxDzakI :2008/11/13(木) 19:08:07 ID:+iFNWXir
「初めましてだね。あたしは、泉こなた」
「……ルルーシュ・ランペルージだ」
「変わった名前だね……外国の人?」
「ああ……多分、お前から見たらそうなるな」
 そういった感じで、お互いに簡単な自己紹介を済ませると、こなたが今までスバルの使っていた椅子に座る。
 なお、どう見ても小学生程度の背丈しかなかった彼女が、自分よりも1つ歳上であったことには、心底驚かされた。
 18歳となると、身近にいるのは生徒会長のミレイ・アッシュフォードである。
 スタイル抜群で身長も高めな彼女と、目の前のこなたとの落差を見比べると、何だか複雑な気分になった。
「それで、スバルとは一体どういう関係なの? スバルのこと、知ってるみたいだったけど」
「アイツは俺のクラスメートだ。数ヶ月前に、俺の学校に転校してきた」
 事実である。少なくとも、ルルーシュにとっては。
 彼にとってのスバルは時空管理局の魔導師ではあったが、同時に、自分のギアスを監視するために入学してきた転校生でもあった。
 無論、嘘のつけない性分である彼女が、自分に向けてくれている好意に、偽りはないと信じている。
 監視する者と監視される者でありながら、2人はよき友人だった。それはそれで、スパイとしてはどうかとも思うのだが。
「だが……さっきのアイツの反応は何なんだ? 俺のことを忘れてしまったような……そんな感じにも見えたが」
 あまり考えたくはなかった。だが、無駄に賢い頭脳は、そう推測することを止められなかった。
 ようやく出会えたスバルが、自分に関する記憶を完全に失っている――予想しうる、最悪の可能性だ。
「……えっと……言いづらいんだけど、ね」
 こなたが言葉を濁した。そして、一拍の間をおいて、続ける。
「あの娘は間違いなくスバルだよ。でも、多分……ルルーシュのいた世界とは違う、パラレルワールドの娘なんだと思う」
「……パラレルワールド」
 意外にも、その言葉を割と混乱もなく受け止める自分がいた。
 そもそも並行世界という概念は、スバルの実態を探る上で、一度考慮したことのある発想だ。
 彼女の所属する時空管理局というのは、その並行世界間にて活動する組織ではないか、と。
 結果的には、それとはまた微妙に違うということは、何かの折にスバル自身から聞いている。
 それでも、次元世界などという突拍子もない概念が存在するならば。
 有り得ない話では、ない。
「記憶喪失とかじゃなくて、あの娘の頭には、最初からルルーシュって男の子の記憶がない……君にとっては、複雑かもしれないけど」
 自分のことを全く知らないスバルがいたとしても。
 同じ顔を持ちながら、全く別の記憶を持ったスバルがいたとしても。
 出会えたスバルが、自分の知るスバルとは、赤の他人であったとしても。
 有り得ないことではない。
 さすがに若干想像の範疇を超えてはいたが、不思議ではない話でもあった。
 本来は管理局の技術をもってしても、パラレルワールドへのアクセスまではさすがに不可能なのだが、
 ルルーシュはそこのところの事情をよく知らない。魔法が使えるくらいなら、それくらいできてもおかしくない、とさえ思っていた。
「……そうか……」
 もっとも、主観と客観はまた別だ。
 主観はそう簡単に割り切れるものではない。ようやく出会えたスバルが、自分の知る人間ではないということは、つらい。
 同じ顔をしていても、同じ声をしていても、彼女は自分を知らないのだ。自分の友達だったスバルではないのだ。
 彼女はスバルのように、自分に優しくしてはくれない。誰かに甘える趣味はないが、それはそれで悲しいものがある。
(だが、スバルはスバルだ)
 それでも。
 その法則にのっとるのならば、彼女は間違いなく、スバル・ナカジマという存在ではある。
 同じ記憶を持っているわけではないが、その顔も、声も、恐らくは心も、自分の知るスバルと同じスバルのはずだ。
 何せ、今この右手の傷を塞いでいるのは――スバルが巻いてくれたであろう、彼女の白いはちまきなのだから。
 彼女はスバルだ。それは認められる。彼女は自分の知っている、優しく強いスバルであることは間違いない。
 たとえ自分を知らないスバルであったとしても。
 生きていてくれてよかった。それは本心だった。

207 :誰かのために生きて、この一瞬が全て ◆9L.gxDzakI :2008/11/13(木) 19:10:19 ID:+iFNWXir
「……話してくれないか。アンタの住んでいた世界のことを」
 そして、紫の瞳に光を宿す。
 才知に優れた戦略家の、鋭い眼光を取り戻す。
 ここに集められたのがパラレルワールドの人間ならば、彼女は自分の知りえない技術を知っている可能性もある。
 たとえば、スバルが魔導師だと知って間もない頃、魔法の存在をまるで知らなかった自分のように。
 こなたの知っている情報が、この殺し合いを生き抜く上で有利に働く可能性もある。
 あるいは、自分の世界のみの常識では見出せなかった、この殺し合いからの脱出法さえも。
 この殺し合いから脱出した後のことは、まだ何も考えられない。それでも、殺し合いからの脱出そのものは、優先すべきことだった。
「うん、分かった」
 一瞬こなたは、ルルーシュの向けた予想外に鋭い視線にたじろいだが、すぐにそれを了承する。
 まず最初に彼女は、自分の世界もスバルの世界とは違う、と前置きをした。
 自分の世界にも、この場にいる彼女とも、ルルーシュの知る彼女とも違う、その世界のスバル・ナカジマがいるらしいのだと。
 ルルーシュはそれを聞き入れた。むしろその方が、既知の魔法以外の知識が得られる可能性がある分、都合がいい。
 こなたが語る、ルルーシュの知らない地球。
 そこでは神聖ブリタニア帝国――かつてのイギリスは超大国となっておらず、代わりにアメリカという新興国家が存在していた。
 そして日本もまた、アメリカの植民地下にはなく、エリア11というコードナンバーも存在しなかった。
 どう見てもブリタニア人であるルルーシュに対し、日本人のこなたが対等に接していたのには、そうした事情があったらしい。
 彼女は高校に通う3年生で、つい最近には、スバルの知る人間――なのはとフェイトという転校生と出会ったそうだ。
「高町なのは……確か、スバルの上官だったな」
 アッシュフォードの学園祭でちらと見た顔を思い出し、ルルーシュが呟いた。
 一度しか顔を見たことはないが、スバルが強い尊敬を抱く上司である。
 栗色の髪をサイドポニーにした女性で、確か日本の出身だったはずだ。
「なのはさんと言えば、さっき、最初の放送があったよ」
 と、そこで思い出したようにしてこなたが言う。
「最初の放送……読み上げられた死者の名前は?」
 もうそんな時間だったか、と思いながらルルーシュが問いかけた。
 話を聞く限りでは、こなたの世界はごく平凡で、自身もごく平凡に高校生活を送ってきたらしい。
 大体の技術レベルも、自分の世界と似通っている。ルルーシュのもの以上に有益な情報は、まず得られないだろう。
 そんな話よりも優先すべきは、ここまでで誰が死亡したかの確認だ。
「うん、そうだね」
 言いながら、こなたが自身のデイパックから名簿と筆記具を取り出す。
 そして先の放送で呼ばれた名前を読み上げながら、順番に印をつけていった。
 総合計13人。全体の5分の1にあたる人数が、プレシアにとって多いか少ないかは定かではない。
 だが確かなことは、少なくともルルーシュから見れば、わずか6時間でかなりの人数が減ったということに変わりはないということだ。
 そして、注目すべき名前が2つ。
 戦闘機人の娘ディエチと――黒の騎士団零番隊隊長、カレン・シュタットフェルト。
「……そうか……カレンが死んだか……」
 呟くルルーシュの表情へと、影が差した。
「知ってる人?」
「ああ……俺の部下だよ」
 黒の騎士団の有するKMFの中でも最高の性能を誇る、紅蓮弐式を駆るエースパイロット・カレン。
 付き合いこそそう長くはないものの、ゼロとしての自分に心酔し、常に力になってくれた心強い味方だった。
 同時にルルーシュとしては、同じ学校の生徒会の仲間でもある。
 そして、部下、という聞きなれない単語に、目の前のこなたが首を傾げた。
 当然だ。先ほどルルーシュは自分を学生だと名乗ったばかりだし、そんな人間に普通部下はいない。
 おまけに、あの怪しさ全開のゼロのマントもある。
「ねぇ、ルルーシュって……ホントのところは、何やってる人なの?」
 いよいよ不審に思ったこなたが、ルルーシュに向かって問いかけた。
 しばしルルーシュは沈黙する。語るべき言葉を探るように。

208 :誰かのために生きて、この一瞬が全て ◆9L.gxDzakI :2008/11/13(木) 19:12:18 ID:+iFNWXir
「……いいだろう。話そう、俺と俺の世界のあらましを」
 一拍の間をおいて、ルルーシュは遂に口を開いた。
 向こうは自分の世界の情報を話したのだ。であれば、自分だけが情報を秘するのは不公平である。
 そういう理屈もあった。
 だが、見ず知らずの彼女にそれを話す気になったのは。
 どちらかと言えば、自分が押し潰されたくなかったからなのかもしれない。
 ルルーシュの物語に。
 捨てられた皇子と王の力、そして英雄の仮面が織り成す、嘘と戦いの足跡に。



 デュエルアカデミアの廊下。
 自身にとっては、念願叶って入学できた母校であるこの場所に、彼女――早乙女レイは、未だに潜んでいた。
 シャッターの下ろされた売店へと向かうか。
 この先の保健室にいる負傷者と接触するか。
 他の参加者との接触を避けるために脱出するか。
 3つの選択肢を脳内に浮かべたまま、その中からどれか1つを決断することができなかったのである。
 思えば随分と悩んでしまった。そろそろ結論を出さねばならない。
 そう決心した矢先、レイの思考は女の声に遮られていた。
 放送が入ったのだ。まさしく、その瞬間に。
 読み上げられたのは死者の名前と禁止エリア。アカデミアの生徒達も、自分の現在地も挙がらなかったのは幸いだった。
 しかし、不安は残る。
(なのはさんとティアナさん、それからエリオがやられた……)
 あの異世界で行動を共にしていた魔導師のうち、3人が命を落としていたのである。
 つい先刻、あの幼いフェイトを目の当たりにした時点で、彼女らのような実力者がこのゲームに参加していたことは把握していた。
 それでも、あくまでそれは、これまでレイが目の当たりにしてきた魔導師の範疇である。
 なのは達も相当な実力を持っていた。であれば、そうした人間達と互角に渡り合ったとしても、やられることはないだろう。
 そう思っていたのだ。
 だがそれにしては、この短時間で3人もの魔導師が殺害されるというのは、あまりに数が多すぎる。
 おまけにシグナムという名前も、確かなのはが話していた仲間の1人だったはずだ。
 であれば、計4人もの魔導師がやられたのではないか。
 認識を改めねばならない。なのはやフェイトが最強なのではない。それ以上の存在が参加している可能性がありうる。
 そんな存在と戦ったところで、自分は果たして生き残れるのだろうか。
 まだ見ぬ得体の知れない敵の影に、レイは思わず身震いした。
 がちゃり、と。
「?」
 不意に扉が開く。
 いざという時に行動しやすいようにと、見張っていた保健室のドアだ。
 どうやら誰かが扉を開け、外に出てこようとしているらしい。
 まだ接触していいものかは分からない。油断なく、曲がり角へとその身を隠す。
 そして、見た。
 扉の向こうから現れた青い髪と白いバリアジャケットの魔導師を。
「スバルさん!?」
 思わず叫びながら、レイは身を乗り出していた。
「えっ……?」
 そして相手がこちらの存在に気付いた時、しくじった、と内心で舌打ちをした。
 確かになのはの部下であるスバルは、自分にとっては味方と呼べる存在だ。
 だが、彼女は幼いフェイトと同じように、正義感の強い存在でもある。レイの行動原理とは到底相容れない。
 早まりすぎたかもしれない。自ら動きづらい状況を作ってしまったかもしれない、と。
 そう思いつつも、レイはスバルの元へと歩み寄っていった。逃げたところで、魔導師相手の追いかけっこに勝てるはずもなかった。

209 :誰かのために生きて、この一瞬が全て ◆9L.gxDzakI :2008/11/13(木) 19:13:39 ID:+iFNWXir
「よかった……無事だったんですね、スバルさん」
 未だ無傷のスバルの身体を見て、レイが口を開く。
 本心だ。合流したくないと思ってはいたが、顔見知りである以上、死んでほしくないに決まっている。
 故に、にこやかに微笑みながら、ゆっくりとスバルの方へと歩を進める。
 しかし、そこで違和感に気が付いた。
「……? どうしたんですか、スバルさん?」
 一方のスバルからは、何の反応もなかったのだ。
 最初にこちらへと向けた、きょとんとしたような表情のまま。
 何を言っているのか訳が分からないといった様子で、赤く充血した目を見開いている。
「……えと……君も、あたしのこと知ってるの?」
 そして、意味不明の返事をくれた。
「へっ?」
 今度はレイの方が驚かされる番だ。
 知っているの、とは一体どういうことか。知っているに決まっているだろう。何故そんな当然のことを聞く。
 それとも、まさか本当にスバルは、自分のことを忘れてしまったのだろうか。あたかも漫画の記憶喪失のように。
「あ……と……いきなり言われても、分かんない、よね」
 困ったように頭をぽりぽりとかきながら、スバルは言葉を続ける。
 パラレルワールドの話を。
 レイの想像を絶する仮説を。



「……そして、俺はここに来た」
 保健室のベッドに身を預けたルルーシュが、自らの話をそう締めくくった。
 傍らでその話を聞いていたこなたの表情は、複雑、と評すのが最も的確であろう。
 黒髪の少年の語る話は、彼女の想像を遥かに超えた物語だった。
 かつての皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。祖国に捨てられ、日本へ送られ、その日本さえも侵攻を受けた、7年前の夏の日。
 その瞬間から、彼の血塗られた修羅の運命は、既に動き出していた。
 魔女C.C.との出会い。手にしたのは絶対遵守を現実化する王の力。
 ギアスと黒き仮面のみを頼りに、少年は魔王へと化身する。
 ゼロ。
 亡き母の仇を討ち、最愛の妹が望む優しい世界を手に入れるため、遂に立ち上がった漆黒の魔人。
 素顔を隠し、名を偽り、嘘にまみれて。反逆のルルーシュの足跡は、数多の犠牲の上に、赤黒き血のロードを描き続けた。
 無数の大型機動兵器・ナイトメアフレームが飛び交う戦場を、ルルーシュは意のままに支配する。
 その裏で、本当に大切な者達を、次々と失い続けながらも。
 自分が傷付けた少女の記憶。初恋を抱いた皇女の命。そして恐らくは、7年来の親友との絆さえも。
 日々己を蝕む命の激痛に心をすり減らしながらも、ルルーシュは戦い続けていた。
 まるでテレビアニメのような、そんな絵空事とも取られる物語。
 だがルルーシュの語る声音が、それを真実だと確信させる。そういう世界も、確かに存在しているのだと。
「……たくさんの人を、犠牲にしちゃったんだね」
 そして、ぽつり、とこなたが呟いた。
「ここに来てからだってそうだ。俺のせいで、ディエチという名の女が命を落とした。
 家族の命を救うために、俺と自分の命を天秤にかけて、会ったばかりの俺のために、自分の命を投げ出したんだ」
 鎮痛な面持ちで、ルルーシュが言う。
 苦しんでいるのだ。この少年は。
 憎むべき敵を倒すために出てしまった、本来そうなるはずもなかった犠牲者達の死に。
 自分の勝手な都合のせいで、奪い続けてしまった命に。
 何十何百もの死を背負った、僅か17歳の少年の重責は、こなたには計り知れなかった。

210 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 19:14:40 ID:pObz3QW2
 

211 :誰かのために生きて、この一瞬が全て ◆9L.gxDzakI :2008/11/13(木) 19:15:03 ID:+iFNWXir
「……進むことだけが、その死者への弔いだと思っていた」
 ルルーシュは独白する。
 生み出してしまった犠牲のためにも、自分が結果を残さなければならないと。
 日本独立の実現。現ブリタニア政権の打倒。それらの実現こそが、奪ってしまった命への唯一の償いになるのだ、と。
「だが、多分俺はもう戦えない。俺は独りでは何もできない、ちっぽけなただの人間だ。
 腕を失い、敗北の証を刻まれたこの身で、一体どうやって無敵の英雄を演じられる? どうやって人を惹き付けることができる?」
 嗚呼、自分はこんなにも情けなくて、弱い。
 たった1本の腕がなくなっただけで、何1つできなくなってしまうなんて。
 ならば、どうやって責任を果たせばいい。どうやって償いを果たせばいい。
「俺は……どうすればいい……」
 血を吐くように。
 うなだれながら、ルルーシュは言った。
 あのディエチに問いかけたのと、同じ言葉を。ベッドのすぐ傍で座るこなたに。
 先ほどの強気な視線など、所詮はただの強がりだ。本当はのしかかる重責に、今にも押し潰されそうだった。
 沈黙が重苦しい。
 こなたはかける言葉に迷う。
 1秒が1分にも感じられた、あるいは10分。1時間。はたまた丸々1日にさえも。
 このまま次の放送が入るまで、ずっと続くのではないかと錯覚するほどの静寂。
 絶望の淵へと立たされたルルーシュの姿は、まさしくスバルの危惧そのものだった。
 もしもここにいたスバルが、彼の知っていた彼女だったなら。あるいは、その苦しみを和らげてやることもできたかもしれない。
 だが、そのスバルはいない。ルルーシュと親しいスバルは存在しない。
 ならば自分が何か言ったところで、この男を救ってやることなど、できはしないのではないか。
「……あたしは、さ」
 それでも。
 だとしても。
 やはりこなたは、言葉をかけずにはいられなかった。
 罪の痛みに囚われたルルーシュを、見捨てることなどできなかった。
「何かこう、軽々しく言えるような人間じゃないし……戦争してる人の気持ちなんて、分かるものでもないんだけど、ね」
 そう前置きしながら、つとめて笑顔で言葉を紡ぐ。
「でも、そうやって悩んで立ち止まるのは……生き残ってからでも、出来ると思うんだ」
「……?」
 微かに目を丸くしながら、ルルーシュが顔を持ち上げる。
 紫色の瞳が、こなたを真っ向から見据えていた。
「責任を取ることはもちろん大事だと思うし、どうすればそれができるのかを考えるのも、もちろん大事だと思う。
 でも、今そのために何もできずに立ち止まってて、そのまま殺されちゃったら、何にもならないよ。きっと、誰も喜ばない。
 それにここにはルルーシュの助けを待ってる人もいるし、ディエチって人の家族もいる」
 だから。
「だからさ……今はまず、生き残ることを考えようよ。ね?」
 そうやって、こなたは締めくくった。

212 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 19:15:53 ID:qMap6d86
 

213 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 19:16:12 ID:pObz3QW2
 

214 :誰かのために生きて、この一瞬が全て ◆9L.gxDzakI :2008/11/13(木) 19:16:34 ID:+iFNWXir
 一方のルルーシュは、彼女の言葉を、僅かな驚愕と共に受け止めていた。
 それでいいのだと。
 慌てることはないのだ、と。
 なまじ頭が回るが故に、性急に答えを出すことだけに囚われていた彼は、その結論には至れなかったのだから。
 自分が生き残ることそのものが、死者の怒りと憎しみを煽るのだとばかり思っていた。
 だからこそ、このまま悩み続けて、結果死ぬことがあったとしても構わないとさえ、心のどこかで思っていた。
 しかし、違ったのだ。結局のところ、それは逃避でしかなかったのだ。
 答えを急いで押し潰されるくらいなら、ゆっくりでもいいから答えを出していけばいい。
 そんなことを言われたのは、初めてだった。
 今一度、ルルーシュはこなたの姿を見る。
 よく見てみれば、彼女はどことなくスバルに似通っていた。
 ぴんと立ったアンテナのような髪の毛。低めの身長。青い髪色に、澄んだエメラルドのような瞳。
 髪の長さや、目元の泣きぼくろのような差異はあったものの、多くの特徴がスバルと一致していた。
 だからこそ、ルルーシュはこなたの言葉を、特別な念と共に受け止める。
(……アイツも、きっとそうやって言うかもしれないな)
 その面影の先に、大切な少女の存在を感じて。
 内心で呟くルルーシュの表情には、いつしか、穏やかな笑みが戻っていた。
「すまないな、こなた」
「どういたしまして」
 感謝の言葉を素直に述べる。
 失意と絶望の暗闇の中、一筋の光を見出してくれた娘の存在に。
(俺は戦い続けよう)
 そして、誓う。
 こなたに。スバルに。散っていったディエチやカレンに。未だどこかで生きているシャーリーとC.C.に。
 こんな自分の命でも、まだ誰かの希望になりうるのならば。
(俺にはまだ、戦い続ける理由がある)
 そう。立ち止まるわけにはいかなかったのだ。
 ここには守るべき人間が大勢いる。
 ディエチが願いを託した彼女の姉妹。かつて自分が記憶を奪ってしまったシャーリー。共犯者として共に在ることを誓ったC.C.。
 何より、誰よりも大切な――スバル。
 たとえ幾千億の日本人のためのゼロを演じることができなくとも。
 この場の一握りの人々ならば、救うことだってできるはずだ。
 自分の頭脳は。ディエチの信じた戦略は。そんな脆弱なものではなかったはずだ。
(だから)
 前へと進む。
 この殺し合いから脱出する。この身に背負った命と共に。
 偽りの魔王ゼロではなく、ブリタニアの少年ルルーシュの本心に。
 硬く、誓いを立てた。

215 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 19:17:31 ID:pObz3QW2
 

216 :誰かのために生きて、この一瞬が全て ◇9L.gxDzakI代理投下:2008/11/13(木) 22:15:06 ID:3sYYc6DK
 がちゃり、と。
 不意に、扉が開かれる。入ってきたのは、青いショートカットの少女だ。
「あ、スバル」
 こなたがその名を呼ぶ。
「もう落ち着いたの?」
「うん、まぁ」
 問いに答えるスバルの言葉は、未だに危ういところもあるが、どうにか平静を取り戻しつつはあるようだ。
 その彼女の視線が、ベッドの上のルルーシュへと向けられる。
「あ……えー、っと……」
「ルルーシュ。ルルーシュ・ランペルージだって」
 言葉に詰まったスバルへと、こなたが名を教える。
 名前が分かったことは彼女にとって幸いだが、すぐにそれが意味することに気付いた。
 もう、ルルーシュという人は知ってしまったのだ。自分が彼のことを知らないことに。自分では彼の支えになれないことに。
「えっと……その……ルルーシュ、さん」
 所在なさげに、スバルがその名を口にした。
「いや、ルルーシュでいい。『さん』付けというのもむず痒いからな」
 ルルーシュが返す。そして、反射的に自分の口を突いた言葉を思い返し、軽く噴出したように笑った。
 同じ言葉なのだ。奇しくも彼女と初めて出会った時、自分を『ルルーシュ君』と随分しおらしい呼び方で呼んだ時の返答と。
 やはりスバルはスバルだ。
 自分のことを知らなくても、それ以外はまるで変わらない。自分の知っている、大切なスバルだ。
 だからそんなスバルが、自分をよりにもよって『さん』付けで呼ぶのは、どう考えても似合わない。
「お前が俺の知ってるスバルじゃないってことは、もうこなたから聞いてる」
 言いながら、ルルーシュはベッドから立ち上がった。
 枕元に置かれていた漆黒のマントを、左手だけでやや苦労しながら身に着ける。
 かつ、かつ、かつ、と。
 靴音を響かせ、未だにバランスの取れない身体を制御しながら、スバルの元へと歩み寄った。
「あの……その、ルルーシュの知ってるあたしは……どんな人だったんですか?」
 困惑したような表情で、スバルが問いかける。
「……別に、何も変わらないさ」
 その様子がなんだかおかしくて、ルルーシュは若干苦笑した。
「ただ、俺の傍にいた。それだけのことだよ。他は何も変わらない。
 たとえどんな世界にいようと、お前はお前だ。いつも笑顔で、楽しそうで……精一杯真っ直ぐに生きてる、スバル・ナカジマだ」
「……えと……」
 スバルは若干頬を紅潮させながら、幾分か戸惑ったように言葉を濁す。
 それもそうだ。見ず知らずの人間に、そんなにきっぱりと自分のことを断言されては、何だか気恥ずかしくなるのも無理はない。
 ましてや、きっとこの人は、自分を褒めてくれているのだから、尚更のことだった。
「だから……」
 ルルーシュの左腕が、伸びる。
 たとえ住んでいる世界が違ったとしても。自分の知る彼女とは、厳密には別人であったとしても。
 その本質には違いがないのだから。
 赤の他人などではない、紛れもない本物のスバル・ナカジマがいるのだから。
 こうしてこの殺し合いの中で、命を落とすことなく生き続けてくれたのだから。
「わぷっ」
 思わず、スバルの可愛らしい声が上がる。
 急に密着した紫色の衣服。顔面が思いっきり塞がれる感触。
 背中に回された腕。身体から伝わる暖かい体温。
 スバルの身体を、左腕だけのルルーシュが、強く抱き締めていた。
「えっ……え……!?」
 突然の抱擁に、スバルは困惑する。それこそ顔をトマトのように真っ赤に染めて、四肢の全てをじたばたとさせた。
 父親以外の男の人に、抱き締められた経験などない。いや、父すらもそういうことをするような気質ではなかった。
 彼氏を作ったことも、異性に心惹かれた経験すらもなかったスバルが、初めて味わった感触。
 唐突にそれを味わう羽目になった彼女の意識は、容易にパニックへと陥ってしまう。
 だが、次の瞬間。
「……お前が生きていてくれて……本当によかった……!」
 絞り出すようなルルーシュの声が、スバルの耳元に届いていた。
 震えるような男の声に、彼女の意識は急速に冷静さを取り戻していく。気付けば、自身の身体を抱く腕も、小刻みに震えていた。
「……ルルーシュ……」


217 :誰かのために生きて、この一瞬が全て ◇9L.gxDzakI代理投下:2008/11/13(木) 22:16:29 ID:3sYYc6DK
 自分よりもずっと背の高い男の顔を、その腕の中で見上げる。
 緑の瞳が見つめた紫の瞳は、微かに熱い雫に潤んでいた。
 それは甘さではあったのかもしれない。
 破壊と殺戮の道を歩むことを決めながらも、ルルーシュが捨て切れなかった甘えであったのかもしれない。
 早熟すぎたが故に。未熟であるが故に。
 優しさを失えなかった嘘つきは、静かに涙の光を湛える。
 ここにいるのは、自分の知っているスバルではない。
 こうして抱き止めても、応えてはくれない。もっとも、仮に彼女だったとしても、応えてくれると決まったわけではないのだが。
 それでも、この瞬間だけは。
 こうでもしなければ、この砕けかけた心の痛みは――

「――えーと……そろそろいいですか?」

 と。
 不意に、新たな声が割って入る。どことなくうんざりとしたような、幼さを残した少女の声が。
 見れば案の定、そこには半ば呆れたような表情をした、黒髪の娘が立っていた。
 外見年齢は、スバルよりも1つか2つ幼いくらいといったところ。羽織った赤いジャケットが特徴的。
「あ、と……」
 そこでルルーシュは、ようやく今自分の取っている態勢が、周囲の目にどのように映っているかに気付き、慌ててスバルから離れる。
 こういうことを素でやらかす辺りが、彼の悪い性分なのだろうが、素なのだから気付けるわけもない。
 学友のリヴァル辺りが見れば、だからお前は天然スケコマシなんだ、とからかうだろう。
「あ、そうそうそうだった!」
 そしてスバルが声を張り上げる。
 内心の動揺を押し隠すための行動なのだろうが、上ずった声と真っ赤な顔では説得力がない。否、むしろ可愛らしいぐらいだ。
「この子、早乙女レイって言って……やっぱり、別の世界であたしに会ったことのある子なんだって」
「つまり、そいつもパラレルワールドから来たということか」
 言いながら、ルルーシュはその瞳でレイを見据える。
 涙の痕跡の一切も残さず、猛禽のごとき鋭い眼差しで。
 研ぎ澄まされた紫の眼光が、探るようにレイの全身をなぞった。
 この殺し合いのゲームでは、出会った人間全員を信用していては生き残れない。
 自分を救出したこなたは信じてもいいだろうし、スバルを疑う余地はない。だが、自分はレイのことを何も知らないのだ。
 見定めなければならない。この娘が敵か味方か。こうしている間にも、虎視眈々と自分達の命を狙っているのではないか。
(肉付きからして、身体能力に長けているわけではない、か……)
 着目したのは、彼女の身体つきだ。
 見たところ、レイの体格は標準体型。敵を殴り倒す剛力も、縦横無尽に駆け回る俊敏性も見られない。
 ここにいるのは年上ばかりで、しかも1人は格闘戦を得意とする魔導師だ。
 そんなところに丸腰で乗り込んで来るとは、到底思えない。あまりにも無防備すぎる。
 となると、次に考慮すべきは。
「そいつの持ち物は調べてあるか?」
「あ、はい……一応、簡単な持ち物検査みたいなのを」
 ルルーシュの問いかけにスバルが答えた。
 頭を使うのは得意でない部類に入る彼女だったが、管理局員として最低限の判断力は持っていたことに、内心で安堵する。
 バリアジャケットのズボンのポケットから、1つの拳銃が取り出された。
 スバルの手の中に握り締められていたのは、レイから没収したSIG P220である。
「あとは、紙のカードみたいなものが2枚」
「カード?」
 スバルとルルーシュの声。
 それに呼応するように、レイが制服の胸ポケットへと手を伸ばした。
 そこから取り出された2枚のカード。1つは光の護封剣。1つはフリーズベント。
 前者は彼女が扱いを得意とする、デュエルモンスターズの魔法カード。後者は未知のカードゲーム。
「私の元いた世界で、武器として使っていたカードです」
 2枚のカードをルルーシュ達に見せながら、レイが言った。



218 :誰かのために生きて、この一瞬が全て ◇9L.gxDzakI代理投下:2008/11/13(木) 22:17:36 ID:3sYYc6DK


 捕まった。
 ルルーシュと呼ばれていた男の視線を受けた時、そう思った。
 たかだが13歳の思考能力でも、彼の放つ眼力が本物であることは分かる。この男を前にしては、半端な嘘は意味をなさない。
 スバルさえどうにか言いくるめればいいとばかり思っていたが、まさかこんな奴が待っていようとは。
 この男はごまかせない。下手を打てば即座に始末される。冗談ではない殺気が込められている。
 故に、ここは正直に話すしかなかった。
「武器として……魔法のようなものか」
「大体そんなところです」
 ルルーシュの確認に、レイが答えた。
「そしてこのデュエルアカデミアは、元々私が通っていた、このカードの使い手を要請する学校なんです。
 それで……ちょうど、今、そのカードを探していたところで、スバルさんを見つけたんです」
 幾分か早口になりながら、己が手の内を晒す。
 今は信用を勝ち取らねば。スバルのような単純思考ではない、この疑り深い男を納得させるためにも。
「場所の目星はついているのか?」
 ほら、食いついた。
 内心でレイはほくそ笑む。
 スバル達の魔法にも並ぶ能力を秘めたアイテムが、欲しくないはずがない。
 であれば、こうして協力的な姿勢を見せれば、自分への疑いをある程度緩和することもできるはずだ。
「案内します」
 言いながら、扉の外へと皆を促す。
 先頭を歩きながら、背後の面々へと思考を向けた。
 さて、この状況で、自分はいかに動くべきか。
 厄介なのはスバルだ。彼女の思考回路はある程度知っている。それが殺人という手段を、到底選ぶはずもないということも。
 無論、彼女がパラレルワールドというところから来た、もう1人のスバルであるという事実には大いに驚いた。
 だがその性分は、自分の知るスバルと、大体一致していると見て間違いはないだろう。
 憧れる上司と親友のために、悲しみの涙を流していたのが何よりの証拠だ。
 もう1人の青髪の少女も、見たところアカデミアの生徒達のような一般人と思われる。
 この2人の意見と自分の方向性とは、まず間違いなく反発する。殺しを提案しても切って捨てられる。
 つまりこのままでは、十代のために戦うことが難しくなってしまうということだ。
 かといって、スバルはこのまま振り切れるような相手ではない。ルルーシュの警戒の目もある。
(……いや)
 と、不意に脳裏をよぎる思考があった。
(むしろ、好都合なんじゃ……?)
 他ならぬルルーシュの存在だ。
 この中で最も警戒すべきだと思っていた男。だが、ともすれば、それを逆手に利用することもできるのではないか、と。
 ルルーシュは先ほど自分に対し、明らかに殺気を放っていた。
 つまりこの男、他の2名と異なり、ある程度の危険思想の持ち主であることが伺える。
 もちろん、無為な殺人を繰り返すほど愚かでもない。であれば彼は、まさにうってつけの存在ではないか。
 殺し合いから脱出しようとするスバルを守るために、殺人者達を手にかけようとするのではないか、と。
 そうして危険人物を減らしてくれれば、十代の安全が守られることにも繋がるはずだ。
 鍵はルルーシュが握っている。しかし、今はまだ彼に対する情報が足りない。
 知らなければならなかった。この男のことを。
 そのためにも、まずは目指さなければならない。
 果たして、あのシャッターで閉ざされた売店にたどり着いた時、ルルーシュ・ランペルージはどう出るか。



 先ほど出会ったレイの後を、スバルがそれに続いて歩いていく。
 思い返すのは、やはりルルーシュのことばかりだ。
 果たして自分は本当に、これでよかったのだろうか。
 無理にでも彼の知る自分を演じた方が、彼にとってはよかったのではないのだろうか。
 後悔にも似た感情が、スバルの胸中を支配していく。
 自分を抱き締めた時、ルルーシュはあんなにも震えていたのだ。あんなにも心を痛めていたのだ。
 表向きには気にしていない様子だったが、実際はどうだったか分かったものではない。


219 :誰かのために生きて、この一瞬が全て ◇9L.gxDzakI代理投下:2008/11/13(木) 22:19:01 ID:3sYYc6DK
 同じ顔、同じ声。それでも自分のことを知らない、そっくりなだけの他人。
 自分の存在は、今なおルルーシュの心を傷付けてしまっているのではないか。
 緑の瞳へと、沈痛な色が宿されていった。
「――スバル」
 と、声をかけられ、立ち止まる。
 自分を呼び止める低い声。ルルーシュの発する男の声。
 返事をする余裕もなく、不安げな表情と共に、振り返った。
「お前が俺のことを知っていなくとも、俺にとって問題ではない」
 お前はお前だと。
 自分が守りたいと願っていた、スバル・ナカジマであることに変わりはない、と。
「だからこそ、誓おう」
 左腕を構え、礼の姿勢を取る。
 さながら中世の騎士のごとく。
 主君への忠義を誓う、誇り高き黒衣の英雄のように。
 吸い込まれるかのような紫の瞳には、一点の曇りの色もなく。
「俺はお前の力となる。お前が望むというのならば、俺は牙とも盾ともなろう」
 迷いなきまっすぐな声が、デュエルアカデミアの廊下に響いていた。
「……この先何があろうとも、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの名において、スバル・ナカジマを守り抜くと誓う」

 かくして、少年は再び刃を手に取った。
 魔王ではなく、騎士として。
 生涯最大の親友にして宿敵の、あの白き軍馬の駆り手がそうしたように。
 たった1人の姫君のために。
 たとえ彼女が、自分の知る者とは別人だとしても。
 そこに宿された魂までは、偽りなどではないのだから。

 ――ただ、守り抜くために。


【1日目 朝】
【現在地 G-7 デュエルアカデミア(保健室前廊下)】

【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反目のスバル】
【状況】左腕に裂傷、右腕欠損、疲労(大)
【装備】洞爺湖@なの魂、ブリタニア軍特派のインカム@コードギアス 反目のスバル、スバルのはちまき
【道具】支給品一式、小タル爆弾×2@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、インテグラのライター@NANOSING、
    救急箱、医薬品一式、メス×3、医療用鋏、ガムテープ、紐、おにぎり×3、ペットボトルの水、火炎瓶×5
【思考】
 基本:守りたい者、守り抜くべき者を全力で守り抜く
 1.スバルを守るために、たとえ汚れ役を買って出てでも、スバルにとって最善と判断した行動を取る
 2.ディエチやカレンの犠牲は、絶対に無駄してはならない
 3.シャーリー、C.C.、クアットロ、チンクと合流したい
 4.ゲーム終了時にはプレシアに報復する
 5.レイ、および左腕が刃の男(=ナイブズ)を警戒
【備考】
 ・ギアスに何らかの制限がかかっている可能性に気付きました。また、ギアスのオンオフは可能になっています。
 ・ギアスの発動には、左目の強烈な痛みと脱力感が伴います。
 ・プラント自立種にはギアスが効かないことが確認されました。
 ・シャーリーが父の死を聞いた直後から来ていることに気付いていません。
 ・ブリタニア軍特派のインカムはディエチからもらった物です。
 ・こなたの世界に関する情報を知りました。もっとも、この殺し合いにおいて有益と思われる情報はありません。
 ・「左腕が刃の男」が、既に死亡したナイブズであることに気付いていません。
 ・ここにいるスバルを、“本物のスバル・ナカジマ”であると認めました。



220 :誰かのために生きて、この一瞬が全て ◇9L.gxDzakI代理投下:2008/11/13(木) 22:20:42 ID:3sYYc6DK
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、若干の不安
【装備】レギオンのアサルトライフル(100/100)@アンリミテッド・エンドライン、バリアジャケット(はちまきなし)
【道具】支給品一式、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、SIG P220(9/9)@リリカル・パニック
【思考】
 基本 殺し合いを止める、できる限り相手を殺さない
 1.こなたを守る。こなたには絶対に戦闘をさせない
 2.ルルーシュ……
 3.アーカード(名前は知らない)を警戒
 4.六課のメンバーとの合流、かがみとつかさの保護、しかし自分やこなたの知る彼女達かどうかについては若干の疑問
【備考】
 ・こなたが高校生である事を知りました。
 ・質量兵器を使うことに不安を抱いています。
 ・パラレルワールドの可能性に行き当たり、自分は知らない自分を知る者達がいる事に気が付き、
  同時に自分が知る自分の知らない者達がいる可能性に気が付きました。
 ・参加者達が異なる時間軸から呼び出されている可能性に気付いていません。
 ・この場にいる2人のなのは、フェイト、はやての内片方、もしくは両方は並行世界の19歳(sts)のなのは達だと思っています。
  9歳(A's)のなのは達がいる可能性には気付いていません。
 ・自分の存在が、ルルーシュを心を傷付けているのではないかと思っています。

【泉こなた@なの☆すた】
【状態】健康、若干の不安
【装備】レヴァンティン
【道具】支給品一式、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、バスターブレイダー@リリカル遊戯王GX、ランダム支給品0〜1
【思考】
 基本 かがみん、つかさ、フェイトに会いたい
 1.アーカード(名前は知らない)を警戒
 2.かがみん達…あたしの事知ってるよね?
【備考】
 ・参加者に関するこなたのオタク知識が消されています。ただし何らかのきっかけで思い出すかもしれません。
 ・パラレルワールドの可能性に行き当たり、かがみ達が自分を知らない可能性に気が付きました。
 ・参加者達が異なる時間軸から呼び出されている可能性に気付いていません。
 ・ルルーシュの世界に関する情報を知りました。

【早乙女レイ@リリカル遊戯王GX】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式×2、『フリーズベント』@リリカル龍騎、『光の護封剣』@リリカル遊戯王GX、ランダム支給品0〜1
【思考】
 基本:十代を守る。
 1.売店に向かい、カードを探す。
 2.各施設を回りカードとデュエルディスクを手に入れる。
 3.ルルーシュは使えるかもしれない。今後の動向を伺う。
 4.殺し合いに乗っている者を殺害する。
 5.スバル達と方針が合わなかった場合は離脱。ただし、逃げられるかどうか……?
 6.フェイト(StS)、万丈目を強く警戒。
【備考】
 ・リリカル遊戯王GX10話から参戦です。
 ・フェイト(A's)が過去から来たフェイトだと思っています。
 ・フェイト(StS)、万丈目がデュエルゾンビになっていると思っています。また、そのことをスバル達にはまだ話していません。
 ・ここではカードはデュエルディスクなしで効果が発動すると知りました。
 ・デュエルデュスクを使えばカードの効果をより引き出せると思っています。
 ・カードとデュエルディスクは支給品以外にも各施設に置かれていて、それを巡って殺し合いが起こると考えています。
 ・デュエルアカデミアの3分の2を調べました、どの場所を調べたかについては次の書き手さんにお任せします。
  但し、売店内部は調べていません。
 ・デュエルアカデミアの売店はシャッターによって施錠されている為、現状中には入れません。


221 :誰かのために生きて、この一瞬が全て ◇9L.gxDzakI代理投下:2008/11/13(木) 22:21:12 ID:3sYYc6DK
【チーム:黒の騎士団】
【共通思考】
 基本:このゲームから脱出する。
 1.ゲームから脱出するための手がかりを探す。
 2.売店へと行き、デュエルモンスターズのカードを探す。
 3.それぞれの仲間と合流する。
【備考】
※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。
※デュエルモンスターズのカードが武器として扱えることに気付きました。




名前欄のところには、字数が多すぎて入りきらなかったのですが、
タイトルは「誰かのために生きて、この一瞬が全てでいいでしょう」でお願いします。
Fate/stay nightのOP「disillusion」の歌詞です。
まぁ、本家Fateのセイバー達に比べれば、ルルーシュは随分と頼りないナイトなのですがw(ぉ



222 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/13(木) 23:52:01 ID:pObz3QW2
お二方そして代理の方投下乙です。

>アナタハマタマモレナイカモネ
ヴィータの残り支給品はこうきたか。
てか最初に気付いていたら全員集合ってwww
こういうのはもしものIFって奴ですね。
ヴィータの苦悩がいいなあ。

>誰かのために生きて、この一瞬が全てでいいでしょう
なんという綺麗なルルーシュw反目本編やR2本編よりも性格がいいぞ。
そしてこなたがまじめだ……今回えらくまじめで少し驚いた。
レイも加わってどうなるかwktk
ルルーシュってスバルにゾッコンだなあ。

223 :マスカレード ◆gFOqjEuBs6 :2008/11/18(火) 05:33:43 ID:e3H8QEPw
それでは今から、エネル&相川始分を投下します

224 :タイムラグは30分 ◆gFOqjEuBs6 :2008/11/18(火) 05:34:53 ID:e3H8QEPw
神が見下ろすのは、完全なる調和を奏でるために、その生涯を終えた男。
胸に派手な穴を開けた男は、スーツ姿のまま物言わぬ亡骸と化している。
別に死体にこれといった興味がある訳ではない。視線を泳がせれば、たまたまそこに矢車の死体が横たわっていただけの事。
男の死体の周囲を濡らす赤黒い血に足を汚さぬように、少し距離を取りながら、
神は――エネルは、思考を巡らせる。

「さて……何処へ行くか」

ぽつりと呟くと、エネルは数歩歩きだした。
室内は今さっき自分が起こした戦闘によって、ガラスは割れ、至るところが黒く焦げている。
何処に視線を移しても、視界に入ってくるのはお世辞にも居心地がいい景色とは言えないものばかり。
周囲を見渡せば黒く焦げた壁。下を見れば、嫌でも目に入る赤い液体と、見るも無惨な男の死体。
もう約束の5分は経過したのだ。これ以上ここにいてやる義理もない。
というよりも流石のエネルと言えど、こんなスプラッタな景色を好んで見る趣味はない。
駅員詰所を後にし、数歩歩いたところで、エネルは再び感覚を研ぎ澄ませた。

「……すでに心網は使えんか」

だが、心網はエネルの期待に反して、何の反応も感じない。
とすれば、考えられるのは心網の策敵範囲から獲物が逃れてしまったということなのだろう。
最後にエネルが心網で捕らえたのは、北に逃げた4人と、新たに現れた1人のみ。
そこから先どうなったのかは、心網に制限の掛けられたエネルには解る筈もなかった。
だが、制限については少しだけ理解出来た。
先ほど逃げた4人は、心網の距離で表す所の、だいたい1km程でその反応を消した。
そこから考えられるのは、心網はエネルを中心に半径1km程度しか策敵不可能という事実。
最後に北に逃げた奴らの反応を確認してから、既に5分どころか10分以上の時間が経過している今、
もしかしたらもう奴らはもっと遠くに逃げていったのかも知れない。
それでも北に進むか? それとも他の方角に向かい、他の参加者を狩るか?
エネルの選択肢は、二つに一つ。そこでエネルは考えた。
どうせ全員狩るのなら。先に北に逃げた奴らから狩って行った方が合理的ではないか、と。

「面倒だ……これから私は、北へ進む」

エネルはその表情に小さな笑みを浮かべ、呟いた。
この瞬間、エネルの行動方針は決定した。
飽きるまでひたすら北に向かい、出会った参加者を狩って行く。
何処に行けば良いのか困った時は、北へ向かう。それがエネルの選んだ道。
だが、懸念するべき点が一つ。自分が来たのは恐らく北東の方角だ。
道中で他の参加者に出会わなかった事を考えると、自分がこれから進むのは北西寄りの方がいいだろうと判断。
行動方針を少しだけ修正。まずは北西へと進み、出会った参加者の命を奪って行く。
そうと決めれば、行動あるのみだ。まるで血塗られた用に真っ赤な剣を握りしめ、エネルは歩きだした。

ゲームが始まってから今まで、約5時間と少し。
6時間毎に行われる放送まで、残った時間はざっと見積もって30分程度。
エネルは放送の事など失念し、ただ獲物を狩るために北西方面へと歩き出した。

225 :タイムラグは30分 ◆gFOqjEuBs6 :2008/11/18(火) 05:35:44 ID:e3H8QEPw
 




『ふはははははははははは、はははははははははは、はははははははははは――』

悪趣味な笑い声が、小さな小屋の中で響いていた。
恐らく、この声を聞いた者全てが抱く感想を、男は思い浮かべる。

―――狂ってる。

これが、男が――始が抱いた第一印象。
この女が、始に新たなバトルファイトを強要した張本人。
仮にも人間の姿をしていながら、こいつは同じ人間に殺し合いを強要し、高笑いをしている。
こういう者にこそ、狂人という言葉は相応しいのだろう。こいつが本当に人なのかどうかは定かではないが。
そんな事を考えながらも、始は女が流した放送を一語一句聞き逃さずに頭の中に入れる。

「もうそろそろ、1時間か……。」

そして、立ち上がった。
彼がここで休息していたのは、自分が再び“カリス”に変身することが可能になるまでの時間を稼ぐため。
あと少し――恐らく30分程度で、それに必要な1時間が経過し、再びカリスベイルを身に包む事が出来る。
第一放送が始の心を焦らしたのか。まだ早いが、恐らく歩いているうちに時間は経過するだろうと。
そう考えて、始は小屋を出た―――その刹那。
始の背後から、凄まじい閃光と、爆音が轟いた。

「……ッ!?」

何があったのかと、咄嗟に振り向く。
既に自分が居た小屋は跡形もなく崩れ落ち、小屋の残骸を燃え上がる炎が包んでいた。
始には、状況がさっぱり理解できなかった。
自分が小屋を出た瞬間に、背後が光った。小屋が爆発し、一瞬で焼け落ちた。
状況を整理しようと、思考を巡らせる始に、一人の男の声が届いた。

「ヤハハ、運が良かったな青海人。あと少しでも小屋から出るのが遅ければ、お前は黒コゲだ」
「貴様……」

その眼光の先に、一人の男を捉えた。
声の主は、始から見て、斜め上――小高い木の枝の上に立っている男。
真っ赤な剣を握りしめ、背中からはまるで雷神のような太鼓を生やした、半裸の男だ。
実に愉快そうに笑うその表情は、あの女と同じ殺人者の目。
男の周囲でバチバチを輝く青い電流は、始の目にもハッキリと映った。
間違いない。こいつは人間ではない―――アンデッドだ。
それが解れば、始のすることは決まっている。
すぐに腹部に変身ベルト――カリスラウザーを出現させ、一枚のカードを取り出した。

226 :タイムラグは30分 ◆gFOqjEuBs6 :2008/11/18(火) 05:36:34 ID:e3H8QEPw
 
「貴様……アンデッドか。」
「アンデッド? 違う。私は―――」
「……変身」
「――神だ」

神だと? 統制者気取りのつもりか? 馬鹿馬鹿しい。
男の戯言を無視し、始は“チェンジマンティス”のカードをラウザーに通す
――が、カリスラウザーから、始が期待した音声が響くことはなかった。
音声どころか、光さえ放たない。チェンジのカードを、ラウザーが受け付けないのだ。

「……まだ1時間経っていないのか」
「どうした青海人。逃げないのか?」
「俺達の運命に逃げ場は無い。貴様は俺が封印する。」

言うが早いか、始は自らの手の中に弓を形成した。
ジョーカーの能力により生み出される武器――醒弓カリスアローだ。
カリスアローの弓を引き、エネル目掛けて、光の矢を発射した。
だが、弓はエネルの身体には届くことなく、エネルの身体から発せられた電流により消滅した。

「ほう……そんな武器を隠していたのか」

エネルは不遜の態度を崩さない。右腕を青白く輝かせながら、薄気味悪い笑みを浮かべるのみ。
始はすぐに、エネルの右腕が光り輝く意味を悟った。恐らくはあの電流から発せられる雷撃なのだろう。
次の瞬間、始は地面を転がり、攻撃を回避。雷撃が放たれた場所に視線を移すと、自分がつい先刻まで立っていた地面は黒く焦げついていた。
恐らく数万ボルト以上の電撃なのだろう。これを食らえばただでは済まない。

―――変身が出来るようにになるまで、時間を稼ぐしかないか。

咄嗟に判断を下し、始はカリスアローを正面の地面へと向けた。
弓から放たれる光の矢を、自分の正面の地面に向かって、弧を描くように連射する。
爆発した地面から発生するのは、弾ける火花と、立ち上る煙。
これで一瞬でも奴の視界は煙に覆われることになる。始は踵を返し、走りだした。


それから数秒後、煙が晴れた場所に、始の姿は無かった。
始が逃げたのだと判断するのにそう時間は掛らず。エネルは一人呟いた。

「つまらん小細工だな……。」

227 :タイムラグは30分 ◆gFOqjEuBs6 :2008/11/18(火) 05:38:01 ID:e3H8QEPw
 




始は真っ直ぐに走っていた。これといって目指す場所などは何処にもない。
かといって逃げるつもりもない。エネルとの距離を開けるため、ただ時間を稼ぐのが目的だ。
禁止エリアが指定されるのは早いものでも7時から。
この戦闘中、少しの時間を稼ぐだけならば、禁止エリアの心配をしながら走る必要もないだろう。
やがて始が蹴る地面は、土や岩がほとんどだった平地から、舗装されたアスファルトへと変わっていく。
始の周囲の障害物も、木や岩から、大小様々なビルへと変わっていく。市街地エリアに入ったのだ。
市街地エリアに入ってから数百メートルくらいの位置まで走ったところで、始は一つのビルの中に入った。
ビル内部の窓を開け、そこから少しだけ顔を覗かせ、追跡者との距離を確認する。
それから1分も経たないうちに、始の視界にオフィス街を歩く半裸の男が入った。

「ヤハハ、逃げても無駄だ青海人。お前の居場所は分かっている」

馬鹿馬鹿しい。そんなハッタリに騙されるものかと、始は再び窓の下へ身体を隠す。

「出てこないのなら、この建物ごと破壊するぞ?」

始の耳に入ったのは、不可思議な擬音。ばりばりばり、と。
まるで電流が走るような。雷が落ちた時に聞こえる音。
まさかと、始はビルから少しだけ顔を覗かせ―――

「神の、裁き《エル・トール》」
「……ッ!?」

目が合った。青白く輝くその腕を、ビルの内部へと向けるエネルと。
始は何を考えるでもなく、真っ先に窓ガラスを突き破り、外へと転がり出た。
オフィス街のアスファルトを転がった始は、すぐに耳を劈くような爆音に表情を歪める。
自分が今まで隠れていたビルの一階から三階あたりにかけてのフロアが爆発し、粉々に吹き飛んだのだ。
根元付近のフロアのごっそり持っていかれたビルは、その重さに耐えきれる筈も無く――
ごごごごご、と。低い地響きを鳴らしながら、倒壊し始めた。
いくら自分が不死身のアンデッドとはいえ、ビルの下敷きに潰されるのは御免被りたい。
故に始は、ビルが崩れ落ちる寸前に走り出した。
幸いにも、ビルはエネルと始の間の空間に崩れ落ちた。それはつまり、エネルと自分の間の道を隔てるということ。
崩れたビルは向かい側に建てられたビルをも巻き込み、大きな砂煙を立てていた。

228 :タイムラグは30分 ◆gFOqjEuBs6 :2008/11/18(火) 05:39:27 ID:e3H8QEPw
  

カリスへの変身可能時間まで、残り20分弱。
あと20分弱。タイムラグにしては異様に長い20分を、何とかして稼がなければならない。
故に始は、複雑に入り組んだオフィス街をがむしゃらに進んで行く。
何故さっき、奴が自分の居場所に気づけたのか。それは始には解らないが、奴に相手の居場所を感知する能力があるのなら話は別だ。
恐らく、アンデッドである自分を感じることが出来るのは、奴が自分と同じアンデッドであるからだろう。
だとすれば一つ引っかかる。何故自分は、ここまで近づいて奴の気配を察知できない?
奴をアンデッドだと仮定するなら、自分のセンサーにも引っかかる筈だ。それなのに、奴は自分にそれをさせない。
確かに上級アンデッドともなると、気配を消すことが出来る奴も居る。
だが、これだけ接近したとなると話は別だ。一度肉眼で捕らえた相手を見失うなど、今までの自分には考えられない。
となれば。考えられる理由は二つ。
制限によって自分の感覚が鈍らされているのか。
奴がアンデッド以外の何者かであるか。
そんなことを考えていると、始のすぐ後ろに建てられていたビルに、高圧力の稲妻が落とされた。
さっきのビルと同じように爆発し、破片が飛び散る。

「さぁ逃げろ青海人。ゲームはまだ始まったばかりだぞ? ヤーッハッハッハ!」
「チィ……ッ!」

声が聞こえる。あの男の、楽しそうな声が。始は無意識のうちに、舌打ちしていた。
どうやら休んでるを与えるつもりなど無いらしい。飛んできたビルの破片をかわしながら、始は再び走り出した。





「ヤハハ! さぁ、もっと逃げろ。宴はまだ始まったばかりだぞ青海人!」

エネルの顔に浮かぶのは、満面の笑み。
気持ちがいい。実に、気持がいい。
これが神のみに許された悦楽。逃げ惑う獲物を追い立て、追い詰め、命を奪う。
それこそが狩人の楽しみ。逃げる獲物の悲鳴が、何よりも心を満たしてくれる。
空島で、神として君臨していた時代。さからった民をどこまでも追い詰め、神の裁きを下していた頃の快感を思い出す。

「これだ……この感覚だ!」

久々の歓喜に酔いしれながら、エネルは両腕を再び発光させる。
自分の前方のビルの向こう、あの青海人が隠れていることは分かっているのだ。
この程度のビルを破壊するのに、両腕さえ雷化出来れば十分。
さぁ逃げ回れ、と。心の中で呟き、エネルは放った。神の裁きを。
響く爆音。大きな風穴を開けるビル。神の裁きから逃れるべく、再び青海人が走りだした。

ここまでの6時間で、自分は十分に狩りを楽しむことが出来なかった。
故にエネルは、その鬱憤を晴らすように建造物を破壊していく。
破壊により生じる爽快感と、獲物を追い詰める言いようもない快感が、エネルの心を支配していた。
その時であった。

229 :タイムラグは30分 ◆gFOqjEuBs6 :2008/11/18(火) 05:40:18 ID:e3H8QEPw
 
ぱりぃん、と。エネルの傍の窓ガラスが割れた。
エネルが反応するよりも早く、窓を突き破って光の矢が迫る。
が、ギリギリでエネルは身体を数センチだけ反らし、光の矢を回避。
それでも完全に回避することは出来ず―――エネルの頬に、小さなかすり傷が出来た。

「ほう……?」

ぽつりと呟くエネルの口元は、小さく釣り上がっていた。





カリスへの変身可能時間まで、残り15分。
エネルの攻撃から逃れるために、始はひたすらに走る。
走れば走るほど、このオフィス街のビルは破壊されていく。
それでも、あと少し。あと少しだけ時間を稼ぐことが出来れば、反撃が出来るのだ。
始は再びカリスアローを形成する。今度はビルを挟んで、エネルが居るであろう位置と相対する位置へと走る。
始から見て、ビルの窓の向こう側にエネルが見える。恐らく奴には隙など無いのだろう。
故に、向こうに気付かれる前に。すぐに弓を引き、エネルへと矢を飛ばした。
ガラスの割れる音が始の耳に入る。始の耳に聞こえると言う事は、エネルにも聞こえるということ。
故に始は、弓を発射後、命中したかどうかの確認をする間も無く、地面を蹴った。
それからすぐに、自分が攻撃する為の障害物に使われたビルは、青い稲妻により破壊された。

「面白い攻撃をするじゃないか。逃げるだけでは無いということか?青海人よ」

エネルの声に、始は軽い苛立ちを覚えた。
誰かに苛立たせられるのは久々だ。いつかグロンギの怪人に言われた言葉を思い出す。
『人間の匂いがするぞ、カリス』と。元々感情のない殺戮兵器であった筈の自分が、
こうして感情を持つきっかけとなったのは、紛れもなくあの家族の――栗原親子のおかげなのだろう。
だからこそ、自分はこんな処で死ぬわけには行かない。何としても帰還し、彼女たちのそばにいてやらなければならないのだ。
エネルなどは自分がこのバトルファイトに優勝するまでの障害の一つに過ぎないのだから。

やがて始が見つけたのは、崩れていった他のビルよりも一回りほど巨大な高層ビル。
高さで言うと、およそ100メートル前後。横幅も、他のビルよりもさらに巨大だ。
他にもこんな高さのビルはいくつか存在するが、それらのビルはエネルに破壊されてはいない。
単に始がそう言ったビルのそばによらなかっただけという理由によってだが、恐らくはエネルもこう言ったビルを積極的に狙おうとは思わなかったのだろう。
ここがどんな目的で使われていたビルかは始の知るところではないが、今は迷っている暇など無い。
始は迷うことなく入口のドアを光の矢で破壊し、内部へと踏み込んだ。

―――このサイズのビルならば、そう簡単に崩れはしない筈だ……!

そんな考えの下で、始は真っ直ぐにフロア中央付近の階段を目指した。恐らくたった一度の電撃でビルが崩れることはないはずだ。
懸念するべきは、例え強度の高いビルの中に居たとしても、エネルの電撃に壁は耐えられないであろうということ。
外側からあの電撃を受ければ、間違いなくビルのおよそ半分くらいまでは貫通されるだろう。
故に立ち止まることは許されない。もしも一瞬でも隙を見せれば、先刻奴が言った通り、始の身体は黒コゲ間違いなし。
解っているのは、立ち止まれば間違いなく自分の死期を早めることになること。
そして、始の狙う“ある物”がこのビルの屋上に設置されていること。
以上の二つを踏まえて、始は一階の階段を駆け上がってゆく。

始が二階から三階に差しかかる辺り。
どごぉん、と爆音が響き、始が今さっき走り抜けた場所に光が差し込んだ。
ちっ、と。小さく舌打ちをしながら、しかし始は立ち止まらずに走り続ける。

230 :タイムラグは30分 ◆gFOqjEuBs6 :2008/11/18(火) 05:41:39 ID:e3H8QEPw
 



「ほう……逃げ方を変えたか」

始が入っていったビルの前に立って、エネルは一人ほくそ笑んだ。
いよいよ袋小路かと。もうゲームは終わりなのかと。少しつまらないような、それでいて嬉しい感覚。
獲物を追い詰めた時に感じる感覚だ。
ビルの中をせわしなく走り回る始の位置を捕捉。エネルは再び右腕を発光させ、神の裁きを放つ。
始の恐怖心を煽ろうと、狙うは始が通り過ぎた直後の地点。
哀れにも神の裁きを受けることとなったビルの壁には、見事に風穴が開き、そこから走り抜ける男が垣間見える。
どうやら男は上に向かっているらしい。が、上にあるものは何もないただの屋上。どう考えても袋小路だ。
そろそろチェックメイトかと、エネル自身も動き始める。
その強靭な脚力で、一気に自分が空けた穴へと飛び上がる。ビル内部へと侵入したエネルは、上の階層へと目を向けた。
まずは小手調べとばかりに、エネルは右腕から放電を開始。上の階層へと向け、稲妻を放った。
再び響く爆音。エネルがいるフロアの天井から、フロアで言うと五階までの天井と床に大きな風穴が開いた。
そしてもう一撃。エネルが再び腕を発光させるが。

「……っ!」

今度は自分が稲妻を放つ前に、天井に開いた穴から無数の光の矢が降り注いだ。
もちろんエネルにはそんな攻撃が通用するはずもなく、その全てはエネルが発した電撃により撃ち落とされる。
が、攻撃に失敗した事には変わりがない。エネルが光の矢を防いでいる間に、始はエネルが開けた穴を飛び越え、さらに上の階へと進んだらしい。
ビルに入り込んだことから、もう諦めたのかとばかり思っていたが、どうやら奴はまだ諦めたわけではないらしい。
だが、だとすれば何のために屋上を目指す? と、一瞬顔をしかめるが、すぐにその考えを振り払う。
奴がどこまで逃げようと、狩るものと狩られるものの立場は変わりはしない。
ならば自分はただ追い詰めるのみ。せいぜい楽しませてくれと、再び不敵な笑みを浮かべ、エネルは天上へと跳躍した。





―――あと10分だ。あと10分で、カリスに変身出来る。

その考えを胸に、始はひたすらに階段を駆け上がる。
四階から五階へと続く階段を登る途中、始が蹴った階段に、またしても大きな穴が開いた。
一瞬だけ振り向き、穴の下に視線を落とす。そこにいるのは、紛れもないあの雷男だ。
この攻撃自体は回避できた。だが一つ問題が発生。
エネルから視線を外し、天井を見上げる。どうやらエネルの雷撃は四階だけでなく、五階まで貫通したらしい。
すでに階段に穴が開いてしまっているのなら、飛び越えればいいだけの話。
だが、それに伴うリスクは大きい。床に穴が開いているという事は、とび越える一瞬の無防備な姿も、下から丸見えなのだ。
だが、ここで迷っている時間などある筈もなく。ここへきて何度目か分からない舌打ちをした後、始は再び走り出した。

231 :タイムラグは30分 ◆gFOqjEuBs6 :2008/11/18(火) 05:42:25 ID:e3H8QEPw
 
問題の階段まで、時間にして約数秒。すぐに駆け上がった始は、走りながらカリスアローを構える。
弓を引いたカリスアローが狙うは、床に開いた風穴の下。
別に当てなくてもいい。一瞬だけ、始がこの穴を飛び越えるだけの時間を稼げればそれでいいのだ。
故に始は、穴を飛び越えると同時に、構えられたカリスアローから光の矢を連射。
だが、それが着弾した音も。男の悲鳴も聞こえない。
聞こえるのは、バリバリと、電気が流れる不快な音のみ。
解ってはいたが、矢はあの電流に防がれたのだろう。始はすぐに再び走り出した。

が、六階へ来て問題が発生した。今まで階段があったはずの場所に、ある筈の階段が無いのだ。
ただ何もない廊下がそこに顕在し、入り組んだ廊下が始の眼前に広がっていた。
どうやら六階から上は、階段の位置が違っているらしい。
始は階段の位置を探るために、すぐに廊下を駆け始める。

まずは一つ目の曲がり角。始が角を曲り、その奥へと進んだ刹那、聞きなれた爆発音と共に、自分が走って来た廊下に太陽の光が差しこんだ。
その理由はもう考えるまでもない。始はそれについて考えることを止め、さらに奥の曲がり角を曲がる。
どこにあるかもわからない階段を探しながら、「これだから高層ビルは……!」などという愚痴を抑えて走る。
始が走る度、逃げ回る度にビル内部の廊下に出来る風穴。ビルのデザインとしては悪趣味な事この上ない風穴を作りながら、始はひたすらに走る。
これだけ走り続けたのだ。ただの人間ならばすでに息が上がっても何ら不思議では無い。
だが、始はそれをしない。それは彼が人外――アンデッドだからなのだろう。
アンデッドとして、ジョーカーとして培われた体力の全てを賭けて走り続けた始は、ついに階段を発見した。
このフロアだけで3分は時間を潰せただろうなどと考えながら、始は階段を駆け上がる。
すでにビルの半分以上は登っているのだ。屋上まではあと少しだ。

始はひたすらに階段を駆け上がった。
始が走り抜けた後に残るのは、焦げたビルと、不自然な風穴。
本来ならば美しい外見を保っていた筈のビルも、今や見るも無残な姿になり果てていた。
それは、第三者が見れば何が起こったのかと心配する程の凄絶さ。
それでも走り続けた始が開ける最後のドア。その先に待っていたのは―――

232 :タイムラグは30分 ◆gFOqjEuBs6 :2008/11/18(火) 05:44:51 ID:e3H8QEPw
 




エネルが屋上にたどり着いた時、そこにいるのは始ただ一人だった。
何もない、ただだだっ広い屋上の隅の方で、始は真っ直ぐにエネルを睨みつけている。
対するエネルも、ゆっくりと歩を進め、言った。

「どうした青海人。鬼ごっこは終わったのか?」
「ああ。ゲームは終わりだ」
「ヤッハッハ……! そうか、ついに諦めたか。ならば―――」

「死ね」と。エネルが呟くが、すでにそれは始には聞こえてはいない。
何故なら、エネルの声を覆い隠す程の放電音が、ここにいる二人の聴覚を支配したから。
エネルの右腕が光り輝く。そこから発せられるのは、本日何度目か分からない神の裁き――エル・トール。

「神の裁き―――エル・トールッ!」
「無駄だ」

エネルの声に合わせて、始が小さく呟いた。
だが、その声は最早エネルには聞こえてはいなかったであろう。
ここで死ぬ人間の言葉に、聞く耳など持つ筈も無い。
エネルの右腕から放たれた閃光に、始は目を背ける。が、身体はそこから動こうとはしなかった。
やがて閃光は、真っ直ぐに走り、始の身体を飲み込―――まなかった。
エネルが放った筈の電撃は、始に当たる前に何かに吸い込まれるように消えたのだ。

「ほう……上手く避けたな。だが、次は無いぞ」
「どうかな」
「……神に向かって、何たる不届きな態度か。その愚行、あの世で後悔するがいい」

始の不敵な笑みに、エネルは眉をしかめ、言った。
再び輝くエネルの腕。今度は始に、しっかりと狙いを定めて。
裁きの名、「エル・トール」と呟く。同時に、エネルの両腕の光は真っ直ぐに始へと走る。
だが―――結果は同じ。エネルの放った電撃は、始を飲み込む直前に、何かに吸い寄せられるように消え去ったのだ。

「…………………………………………」

最早何も言う事はない。三度目を与えるつもりはない。
エネルはしっかりと狙いを定め、今度は両手を始へと向けた。
こんなことが以前にもあったような気がするが、それは相手がゴム人間だったから。
あんなどう見ても悪魔の実とは無縁な、ただの人間にそう何度もエル・トールがかわせるものかと。
今度こそ仕留める。その一心でエネルは再びエル・トールを放った。
が、結果は同じ。やはりエネルの電撃は、始に到達する前に、何かに吸い込まれてしまう。
エネルの頬を、嫌に冷たい汗が濡らした。

「……ッッ!!!」

まずエネルは、自分の目を疑った。間違いない。あのときと同じだ。
あの時のゴム人間――ゴムゴムの実の能力者、“麦わらのルフィ”の時と同じだ。
だが何故だ? 何故ゴムの男では無い筈の奴が電撃を吸収出来る? その答えは、エネルにはいくら考えても解る筈もなく。
エネルはその大きな目玉をむき出しにし、顎をあり得ない程に下方へと落とし、驚愕していた。
顔全体を滴る油汗は、離れた位置にいる筈の始にも見て取れる程。
やがて始は、羽織っていたベージュ色のコートを翻し、すぐそばに立っていた一本の柱へと歩を進めた。

233 :タイムラグは30分 ◆gFOqjEuBs6 :2008/11/18(火) 06:42:07 ID:e3H8QEPw
 
「な、何だその柱は……!?」
「避雷針だ。お前の攻撃は全てこいつに吸収される」
「“ヒライシン”……!? 一体何なのだ、それは!!」

始はうっすらと不敵な笑みを浮かべながら、屋上から天へと伸びる柱――避雷針を見上げていた。
だが、これまでスカイピアで生活していたエネルの知識の中には、避雷針などというものが存在する筈も無かった。
故にエネルは驚愕する。自分の知らない未知の存在が。自分の攻撃を無効化する存在が、ゴム以外にも存在していた事に。
そんなエネルの驚愕に歪んだ表情に、始は一瞬眉をしかめた。





始は最初から、この屋上に設置されていた避雷針目当てに走っていたのだ。
何故このビルの屋上に避雷針が設置されていることが解ったのかと問われれば、理由は簡単なこと。
日本の高層ビルの屋上には、避雷針の設置が法で定められている。現代社会を生きる始は、それを知っていたのだ。
といっても、このビルが本当に日本のビルかどうかは賭けだったのだが。
そして避雷針の効果は、子供でも知っている。それは、周囲に落ちた雷を吸収するというもの。
特に近年のビルに使われている避雷針は、近くで発生した雷を積極的に吸い寄せてくれるものがほとんど。
始自身も避雷針の効果を余り掘り下げて知っていたわけでは無いが、エネルの攻撃を防ぐことは出来ると判断したのだ。

カリスへの変身可能時間まで、残り1分弱。
このまま時間を稼いで変身し、一気にカタを付ける。
そう考えた始は、一枚のラウズカード――ハートのA、チェンジマンティスを手に握った。
腹部にカリスラウザーを形成しようと、足を肩幅くらいに開き、構える。

「そうか……その柱が私の雷を吸い取るというのか。だが……」
「……」
「これならどうだ?」

始の視線の先、エネルは腰に差していた赤い剣を手に取り、その切っ先で―――背中の太鼓を一つ、叩いた。
刹那、エネルの身体からエル・トールよりも高圧の電流が迸る。

「3000万ボルト……雷鳥《ヒノ》」
「何……!?」

次に放たれたのは、エネルの背後から現れた、巨大な鳥。
ヒノと呼ばれたそれは、凄まじい圧力の電流を放電しながら、始へと向かって行く。
エネルの放つ超高圧力の電撃が、幻獣の姿を形どったのだ。
その巨大な翼を広げながら、ヒノは吸い寄せられるように、避雷針に向かって方向転換。
幻獣は避雷針に吸い込まれて行くが。

「雷獣《キテン》」

すぐに避雷針は、火花を発し始めた。それに驚く暇もなく、エネルから発せられる次なる幻獣の名前。
背中から繋がった奇妙な太鼓を叩くことで、今度は巨大な狼に似た姿の雷獣が駆け出した。
駆け出した獣は、始と避雷針に向かって一直線。
確かにある程度までの雷になら耐えられるように設計された避雷針ではあるが、それにも限度があるのだろう。
よもや自然現象でもない、人工的に発生させられた雷に避雷針が破壊されるなど、流石の始とて夢にも思わなかったであろう。
これは拙いと判断した始は、すぐに幻獣から逃れるために走り出す。が、時すでに遅かった。


234 :タイムラグは30分 ◆gFOqjEuBs6 :2008/11/18(火) 06:42:38 ID:e3H8QEPw
 
「ヤハハ、何処へ行くつもりだ……?」

始が走りだした時には既に、雷獣がオーバーヒートした避雷針もろとも、周囲を爆ぜさせていた。
エネルの雷獣の威力は本物の雷と同等。それを二発連続で同じ避雷針に集中攻撃をされたとあっては、持つ筈も無かった。
エネルの雷撃の衝撃で、ビル内部のそこかしこで火災が発生。屋上の床も崩れ始める。
どうやらいよいよこのビルの耐久力も限界に近付いているらしい。
しかし、エネルの追撃は止むことは無い。

「6000万ボルト、雷龍《ジャムブウル》」

崩れ始めたビルの屋上、足場の確保に戸惑う始を尻目に、エネルは頭上の太鼓を二つ叩いた。
同時にエネルは上空に飛び上がり、その背後から巨大なドラゴンを呼び出した。
これもエネルの凄まじいまでの高圧力の雷が形となって形成されたもの。
つまりは龍の姿をした、雷の塊。エネル自身はは6000万ボルトと言っているが、恐らくはその数倍の電圧を誇るであろう雷龍は、
始の居る屋上を、完全に崩壊させた。勿論、ジャムブウルの電力は屋上だけに留まる筈もなかった。
凄まじいまでの電流は、ビル全体に伝わり、その内部構造の全てを粉々に破壊していく。
勿論ビルの内部に設置されていた家電製品は全てオーバーヒート。つい先刻まで美しかった筈のビルは、燃え盛る炎とともに崩れ落ちた。

「ヤーッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」

ビルを完全に破壊し、上空へと飛び上がったエネルは、地面へと落下しながら大きな高笑いを響かせる。
エネルの放った超高圧力の電撃は、ビルだけではなく、あらゆる電線、通信線路からエリア全体へと広がっていく。
それに伴い、周囲の全てのビル、及び建造物内のありとあらゆる電気器具はその機能を停止し、耐えきれなかった物は火を噴き出し始める。
ただでさえエネルによって破壊されていた街は、あちらこちらで火災が発生し、まさに火の海と化していた。





エネルが放った雷獣と雷龍がビルを破壊していく。
始には、為す術がなかった。ただ崩れ去るビルに身を任せることしか出来ない。
あと少し。あと少しだけ時間を稼げれば、と始は酷く後悔した。
崩れていくビルの中、共に落下していく。
ジョーカーの戦いを、逃れられないジョーカーの宿命もこれで終わらせる事が出来るのなら、と始は眼を閉じる。
周囲に響く凄まじい轟音と熱風で、始の意識は今にも持って行かれそうになる。
これで終わりか、と思い返すのは天音達と過ごした夢のような日々。
『始さん!』と。自分を呼ぶ少女の声が、笑顔が、走馬灯のように始の脳裏を過る。

―――ごめんね、天音ちゃん……すみません、遥さん。俺は……

その時だった。始の心の奥底から、何かが叫ぶ声が聞こえる。
「戦え」と、始の闘争本能に語りかける獰猛な獣――ジョーカーの声。
「戦え」と、始の人間としての心に語りかける一人の人間――ヒューマンアンデッドの声。
二つの自分が、諦めるなと語りかける。
「目の前の奴を殺せ」と。「天音達を護れ」と。二つの相反する人格は、奇しくも始に同じ選択を強要した。

落下開始から数十秒。カリスへの変身可能時間まで―――残り、10秒。
9、8、7、6……と。0に向かうカウントダウンが、少しずつカウントされていく。

235 :タイムラグは30分 ◆gFOqjEuBs6 :2008/11/18(火) 06:43:11 ID:e3H8QEPw
 
―――俺は……

始は、握りしめた一枚のカードをじっと見つめた。
今まで共に死線をくぐりぬけて来たカード。チェンジマンティスのカードを。
もしもこのまま始が戦うことを諦めたら―――きっと始の中のジョーカーは暴走を始め、誰にも止められなくなるだろう。
そうなれば、きっと自分は全アンデッドを封印するどころか、全ての生命を滅ぼすまで、どこまでも走り続ける。
人類を滅ぼして、全ての動植物を滅ぼして―――始が愛した天音ちゃん達の笑顔は、消える。

―――俺は……天音ちゃん達を護る……。

始の腹部に、赤いハートが輝きを灯した。
ハートは、輝きを放ちながら、ベルトの形を形成。
始は、手にしたチェンジマンティスのカードを、眼前に掲げた。

―――そのために俺は……俺の意志で、最後の一人まで生き残る!

これは、その為の力だ。護りたいものを、護ると誓ったものを。
あの家族の笑顔を護るために、俺は全ての参加者を倒す!
例えこの手を血で汚しても、俺はあの家族の元へ帰るんだ!

始の瞳に宿る、闘志の炎。始の視界に映るのは、始にそれを思い出させてくれた張本人。
神を名乗る狂人――エネル。奴を倒すため。全ての参加者を倒すため。
その為に始は、全てを覆い隠す漆黒の鎧を身に纏う。伝説のカテゴリーエース――マンティスアンデッドの鎧を。

「変身!」

――Change――

落下を始める始の姿は、まるで水に包まれているかのように黒い輝きを放つ。
そこに顕在するのは、人間《相川始》ではない。伝説の鎧を纏った戦士――《カリス》だ。
奇しくも、始が発した掛け声は、始の世界で“仮面ライダー”と呼ばれる者たちが唱える言葉と告示していた。





エネルは、すぐ近くのビルの屋上に足を降ろした。
このビルも既に内部は火の海なのだが、未だ火の手は屋上には迫っては居ない。
周囲を見渡せば、このビルと、僅かな例外を残して、このエリアは地獄と化していた。
どちらを見渡しても倒壊したビルと、瓦礫の山。そこかしこで炎が燃え上がり、黒い煙が天に立ち昇る。
エネルの破壊活動は、超高圧力の雷による純粋な破壊。それ故に魔法や特殊な技術を用いた兵器による破壊とは質が違う。
典型的な、超自然災害と言っても過言ではないそれは、八神はやてが元居た世界での、大怪獣たちによる攻撃にも似ていた。

「ヤッハッハ、少々やり過ぎてしまったか? いや、そんなことは無いか」

エネルは笑う。自分の力を解放したことによる爽快感と、破壊活動による快感に酔いしれて。
「さて」と呟き、エネルは北に視線を向ける。さっきの不届きな青海人は既に死んだ。
次は当初の予定通り、北を目指して直進するか、と。
エネルが歩き出そうとした、その時だった。

236 :タイムラグは30分 ◆gFOqjEuBs6 :2008/11/18(火) 06:43:46 ID:e3H8QEPw
 




「何処へ行く」
「ん……?」

エネルが振り向けば、そこには疾風を巻き起こして、宙にに浮かぶ漆黒の戦士がいた。
声の色からして、さっきの青海人かと判断。エネルは小さく、「ヤハハ」と笑った。
やがて戦士――カリスは、ゆっくりと屋上に着地すると、その弓を構え、駆け出した。
きぃん、と。エネルの持つ真紅の剣と、カリスの持つ両刃の剣が高い金属音を鳴らす。

「まさかあの中から生き延びるとはな、青海人よ」
「俺は死ぬ訳にはいかない」
「そうか、だが残念だな青海人。お前は神の裁きによって、今日ここで消えるのだ」

エネルが持つ剣から、高圧力の電流が流れる。
電流はカリスアローを通じ、それを握るカリスの身体から無数の火花が飛び散る。
すぐにカリスはエネルから離れると、今度はカリスアローをエネルへと向ける。

「ほう、まだその矢を使うか? 効かないと解っているのに?」

エネルの言葉を無視し、カリスは光の矢を連射する。
カリスアローから放たれた矢は、真っ直ぐにエネルを射抜こうと駆けるが。
バリバリ、と。電流が流れる音に伴って、光の矢は消滅した。
最初から解ってはいたが、やはりあの男が発する電流によって、矢が当たる前に消滅してしまう。
どうすれば奴を攻撃できる? 生身での攻撃ではあの電流に阻まれてしまう。
かといって射撃攻撃は意味を為さない。ならばラウズカードはどうだ?
モスリフレクトで奴の攻撃を反射するか? いや、恐らく奴に電気攻撃は通用しない。

「くっ……」
「どうした? 万策尽きたか?」

考えれば考えるほど、カリスの戦法は無駄に終わるという結論に行きついてしまう。
このまま考えていても埒が明かない。こうなったら、電流を流される前に奴に攻撃、すぐに離脱。
一撃離脱の戦法を繰り返すしかない。
エネルが放った電撃を、前転でかわすと、カリスは一気にエネルに肉薄した。
振り上げるカリスの剣と、それを受けるエネルの剣がぶつかり合ってふ火花を散らす。
一瞬の激突の後、カリスはスグにエネルの剣を弾き、両刃の剣を振り下ろす。


237 :タイムラグは30分 ◇gFOqjEuBs6(代理投下):2008/11/18(火) 14:39:27 ID:o8Jfwpl1
「……ヴァーリー」
「……ッ!?」

刹那、エネルの剣が放電を開始。カリスの剣と触れ合う瞬間に、カリスの身体に電気が走る。
電気による鋭い痛みと、痺れて鈍る感覚に戸惑っている隙に、今度はエネルが、電撃をまとった剣を横一線に振り抜いた。
ハートの形を模したカリスの胸部装甲に、剣による傷と、電撃による黒い焦げが残る。

「うぉおおお……ッ!!」
「神に楯突く愚かな戦士が……!」

叫び声を洩らしながら後退するカリスに、再びエネルが迫る。
振り降ろしたエネルの剣をなんとか両刃の剣で受け返すと、身を翻し、左足を軸に一回転。
後ろ回し蹴りで、エネルの胸を蹴り付ける。
舌打ちをするエネル。後退しながらも電撃を放つが、その攻撃は背後に転がることで回避。
すぐに右腰に装着されたラウズカードボックスから、二枚のカードを引き抜いた。
それらを立て続けにカリスアローに装着したカリスラウザーに読み込ませる。

――Bio――
――Chop――

鳴り響く電子音。一枚目のカードは「バイオプラント」。二枚目のカードは「チョップヘッド」。
まずはバイオプラントの効果で、カリスアローから延びた触手がエネルを拘束する為に迫る。
電撃で触手を叩き落とそうとするが、全ての触手は落とし切れない。拘束されたエネルに肉薄するカリス。
カリスの手刀は、チョップヘッドの効果により鋭い輝きを放つ。
恐らくは拘束していられるのもこの一瞬のみだ。故にカリスは、すぐにエネルの胸部に輝く手刀を叩き込んだ。

「ぐっ……!」

エネルの、声にならない嗚咽が漏れる。そして、嗚咽と共に吐き出したのは真紅の血。
血液の量はほんの少量。だが、カリスは一瞬我が目を疑った。

「血が赤い……だと?」
「どうした戦士よ。神の血が赤いのが、そんなに不思議か?」

アンデッドの血が赤である筈がない。普通アンデッドの血液は、真緑の液体である筈なのだ。
故にカリスは確信した。何故自分が今までこいつの気配を感じることが出来なかったのか。
それは、こいつがアンデッドではないからだ。こいつはアンデッド以外の“何か”。
そう考えると、全てに辻褄が合う。

238 :タイムラグは30分 ◇gFOqjEuBs6(代理投下):2008/11/18(火) 14:43:13 ID:o8Jfwpl1
 
「そうか、そういうことか……お前はアンデッドではない」
「何度も言わせるな。私は神――神・エネルだ」
「お前はアンデッドではないが……神でもない」

言うが早いか、カリスは再び前転でエネルの懐に飛び込むと、両刃の剣でエネルを斬り付ける。
が、もちろんその刃はエネルの持つ真紅の剣により遮られ、電撃を纏った剣がカリスを襲う。
カリスアローを握る手に痛みを感じながらも、全身に電気が走る前にエネルから離れる。

「お前は俺の……俺達の神じゃない」
「ヤッハッハ、認めたくないのならば、見せつけてやる。神の力を……!」

エネルは、不敵な笑いを浮かべながら言った。
ジョーカーを始めとする53体のアンデッドに、このバトルファイトを強要した神はこんな奴じゃない。
こいつは神じゃない。ならば神は――統制者は、何故こんなアンデッドとは無縁の者をこの戦いに寄越した?
ならばあの女は、ここにいる60人の参加者に、新たなバトルファイトを強要したあの女は、何だ?
ここで戦って勝ち残る事に、本当に意味はあるのか? そんな疑問が、始の脳裏を駆け巡る。
そんな思考に囚われ、一瞬動きが止まったカリスに、エネルは再び電撃を放つ。

「うおぉぉぉっ!?」

完全に油断していた。エネルの放ったエル・トールは、カリスの胸部装甲に正面から直撃。
激しい火花を撒き散らしながら後方に吹っ飛んだカリスは、屋上の隅の柵に激突。
カリスの仮面の下、始の表情が苦痛に歪む。

「ヤハハ、戦闘中に考え事か? 随分と余裕だなぁ?」
「俺の……俺達の神は……何処に居る」
「頭でもおかしくなったのか? 神ならここにいる! ヤーッハッハッハッハ!」
「違う……俺達の神は―――」

満身創痍の身体で、カリスは二枚のカードを取り出した。
一枚は「トルネードホーク」。一枚は「ドリルシェル」。一枚は「フロートドラゴンフライ」。
フロートのカードを使うのはこれで二回目だが、ここまでで使用したカードは、フロート・バイオ・チョップの三枚。
初期APを7000として、現在残ったAPは7000-3200で3800。
3600APを消費して、カード三枚によるコンボ攻撃を繰り出す。

239 :タイムラグは30分 ◇gFOqjEuBs6(代理投下):2008/11/18(火) 14:47:13 ID:o8Jfwpl1
 
――Drill――
――Tornado――
――Spinning Dance――

カリスの周囲を疾風が渦巻き、ゆっくりと空へと浮かび上がる。
脚をエネルへと向け、激しいきりもみ回転を加えながら急降下する。
これがカリスの現時点での最大技――スピニングダンスだ。
上空に舞い上がったカリスの回転速度がピークに達したところで、正面に顕在するエネルに向かってカリスは急降下を始める。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
「雷獣《キテン》」

カリスが迫るなか、エネルも背中の太鼓を一つ、鳴らした。
同時に現れるは青白い狼。ついさっき、あの高層ビルを破壊した幻獣だ。
上空から急降下するカリスと、上空に向かって駆けてゆく幻獣。
二つが激突し、目を背けたくなる稲妻が、周囲に拡散する。
エネルが立っている屋上の床にも、雷と風が激突した衝撃が降り注ぐ。
激しい竜巻と、その中で輝く稲妻。やがてエネルの周囲にまで火の手が迫り―――エネルが、薄く微笑んだ。

「私の勝ちだ。戦士よ」

言うが早いか、カリスの回転が止まる。
雷に飲み込まれたカリスの身体は、そのまま落下を始める。
しかしエネルは、ただ落下させることはしない。

「教えてやる、戦士よ。これが神の裁きだ」

再びその腕を光らせて―――エル・トールは、カリスへと放たれた。
落下途中で無防備な姿をさらけ出していたカリスの身体は、エネルの放った電撃により、弾き飛ばされる。
電撃を受け、落下地点の修正を加えられたカリスの視界の先にあるものは、数十メートル下の、堅いアスファルト。
カリスは、声にならない叫び声とともに、遥か下方のアスファルトへと吸い込まれていった。





「ヤーッハッハッハッハッハッハッハッハッ!」

今度こそ、一人になった屋上に。エネルの笑い声が響きわたる。
それは先ほどまでの爽快感に加え、勝利による歓喜も含まれていた。
しかし、いつまでもここで高笑いをしている訳にも行かない。
既にこのビルは火の海に包まれており、このままでは逃げ道がなくなってしまう。
故にエネルは、先ほどの高層ビルから脱出した時と同じように、ビルから飛び降り―――神の裁きを放った。
エネルの放った電撃は、今度はビルの中心を貫き、爆発。轟音と共に崩れ去った。
そうしてエネルは、崩れたビルのすぐそばに佇んでいた電柱の先につま先を下ろし、着地。
エネルの視線の先にあるものは、遥か彼方へと続く北への道。
このまま北へ直進し、他の参加者も殺す。皆殺しにしてやる。
エネルは不敵に、しかし非常に上機嫌そうに笑った。
ヤッハッハと、聞く者に異様な威圧感を与える声が、壊滅した街に響いていた。

240 :タイムラグは30分 ◇gFOqjEuBs6(代理投下):2008/11/18(火) 14:50:48 ID:o8Jfwpl1
 

【1日目 朝】
【現在地 E-6 壊滅した街】
【エネル@小話メドレー】
【状態】疲労(大)、胸に大きな打撲痕
【装備】ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、ランダム支給品1〜3
【思考】
 基本:主催者も含めて皆殺し。この世界を支配する。
 1:北に向かい、狩りを楽しむ
【備考】
 ※心網の策敵可能範囲がおよそ1エリア分であることに気付きました
 ※漆黒の鎧を纏った戦士(カリス)及び相川始を殺したと思っています




「天音……ちゃん……」

壊滅したビルの麓で、ベージュ色のコートを着た一人の男が倒れていた。
男は護ると誓った者の名を呼びながら、拳を握り締めた。
悔しい。護ると決めたのに。あんな奴に敗れて。
ただただ、悔しかった。その感情だけで、今は一杯一杯だった。
そんな始を、デイバッグの中から密かに見守る影があったことに、始は気付きはしない。
もしもその存在に気付けていたのなら、エネルとももう少しだけ違った戦いが出来たのかも知れない。
が、今となっては後の祭り。
これ以上は何も考えることはなく、始の意識はゆっくりと薄れていった。


【1日目 朝】
【現在地 E-6 倒壊したビルの麓】
【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】気絶中、披露大、重症(回復中)、1時間変身不能(カリス)
【装備】ラウズカード(ハートのA〜10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
 基本:栗原親子の元へ戻るために優勝を目指す。
 0.…………(気絶中)
 1.見つけた参加者は全員殺す(アンデットもしくはそれと思しき者は優先的に殺す)
 2.あるのならハートのJ、Q、Kが欲しい。
【備考】
 ※参戦時期はACT.5以前。なのは達の事は名前のみ天音より聞いた事がある(かもしれない)程度です。
 ※自身にかけられた制限にある程度気づきました。
 ※首輪を外す事は不可能だと考えています。
 ※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝者となるのではないか」という推論を立てました。
 ※相川始本人の特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘した場合、その位置をおおよそ察知できます。
 ※エネルという異質な参加者の存在から、このバトルファイトに少しだけ疑念を抱き始めました。

241 :タイムラグは30分 ◇gFOqjEuBs6(代理投下):2008/11/18(火) 14:53:22 ID:o8Jfwpl1
 

【共通の備考】
 ※一日目 朝、エネルによってE-6エリア全域のビル及び建造物が破壊されました。エリア内全域に渡って火災が発生しています。
  また、このエリア全域が停電状態で、ほぼ全ての電気機器は使用不可になりました。
 ※数十分に渡り、ビルの倒壊及び破壊による激しい轟音が発生した為に、周囲のエリアにも音が聞こえている可能性が高いと思われます。
  また、大規模な火災により黒い煙がそこかしこで発生しているため、他のエリアからも肉眼で確認出来るかも知れません。

242 :◇gFOqjEuBs6(代理投下):2008/11/18(火) 14:56:52 ID:o8Jfwpl1
以上で投下終了です。
多分まとめ掲載の際には分割が必要ですので、本スレ>>231>>232の間あたりで分割すれば丁度いいと思います。
それでは、誤字脱字。指摘などあればよろしくお願いします

243 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 15:00:34 ID:o8Jfwpl1
以上、代理投下完了致しました。

244 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 23:18:05 ID:B669BJvh
投下&代理投下乙です。
なんという大規模バトル……ってか神エネルやりすぎだwww圧倒的すぎるwww
始の時間稼ぎの頭脳戦が冴えわたっってたなあ。
ところで途中始が某ガンダムマイスターに見えたのは気のせいだろうか。

少し指摘兼疑問
>>225で始が「おそらく変身まで後30分」と考えているのに直後に変身しようとするのは矛盾しているような気がします。

>>239でスピニングダンス出す際にフロートが抜けていました。

あと根本的な質問なんですが、
・カリスアローは始の時でも出せるものなんでしょうか。
・エール・トール一発でビルが倒壊するのは少々やりすぎと思うのですが。
・カリスに変身できなければジョーカーに変身するという選択肢があったのにとらなかったのはなぜでしょうか。

長々と失礼しました。

245 : ◆gFOqjEuBs6 :2008/11/19(水) 00:02:31 ID:63MorGOo
>>240
感想&指摘有難うございます

>始が「おそらく変身まで後30分」と考えた直後に変身しようとするのは矛盾しているのでは
申し訳ないです。これは単純に此方のミスですorz
実を言うと30分云々は推敲時の後付けの台詞でして、変身しようとするシーンと矛盾するということを完全に失念していました。
後にこの矛盾を解消するように、>>225の差し替えを修正スレの方に投下しておきます。

>フロートが抜けていた
これも単純に此方のミスです。これも実は最初はスピニングアタックを使うつもりだったのですが、
折角APが残っているのにスピニングダンスを使わないのは不自然ではと修正した結果、フロートの
追加を忘れていたようです。こちらは収録後に加筆修正しておきます。
本当にミスが多くて申し訳ないorz

>カリスアローは始の時でも出せるのか
これはハイパーバトルビデオの方で、ギャレンとレンゲルの二人が変身前に各ラウザーを使っていたことから、
人間である筈のあの二人が変身前にラウザーを出せるのであれば、元々ジョーカーの力でカリスアローを
形成している始が変身前にカリスアローを使用することが出来ても可笑しくはないと判断しました。

>エル・トール一発でビル倒壊について
これは原作ワンピースの方で、エネルがスカイピア全域を破壊するという描写がありましたので、エル・トールでも
これくらいの威力はあるだろうと判断して書きました。そもそもスカイピアという国そのものを雷で消そうとしたエネルなら、
ビルくらい破壊しても可笑しくないんじゃないかなと。それでも無理があるようでしたら、ビルという形を形成するにあたって、
決して崩してはならないバランスを保っている個所を破壊された、と判断して下さい。

>ジョーカーに変身しなかった事について
始はジョーカーの姿そのものを忌み嫌っており、出来れば使用したくないと考えています。
今回の場合は始も時間稼ぎが可能と判断したので、あくまでカリスとして戦う道を選ばせました。
あれはある意味最終形態の姿ですので、出来ればジョーカーの姿は本当にどうにも出来ないピンチ時、
ここで変身しなければ死ぬという状況の時など、そういった状況に陥った場合でないと使用しない方が良いかと。
ジョーカーの欲求も、元々マーダーとして参加者を殺しまわる道を選んだ始にはそれほど必要ないのではないかと。
この制限を活かすのであれば、今後もし人間として対主催にスタンスを変更して戦う状況になった場合からの方がロワ的にも美味しいかなと。


246 : ◆Qpd0JbP8YI :2008/11/19(水) 18:37:52 ID:G80f41Th
ゼストとCC投下します

247 : ◆Qpd0JbP8YI :2008/11/19(水) 18:38:34 ID:G80f41Th
朝日は昇り、夜は終わりを告げている。
陽光が眩しく照らされる中を、一人の男性と一人の女性は黙々と歩き続けていた。
ゼストとCCの二人がこの殺し合いのという場に呼び出されてから、既に半日は経過。
しかし、その紡ぎ出された時間の結果、二人が得たものはほとんどなかった。

「もしかしてこの場には私たちしかいないのかもな」

やがて、そんな時間の流れに飽いたのか
退屈しのぎに妖艶な笑みを浮かべてCCはゼストに語らいかけた。

「こんな所にか弱い女の子がいたら、たちまち恥知らずな中年男に襲われてしまいそうだ」

おー、怖い怖いと肩を竦ませながら、目の前を歩く人間を見る。
お前が自分を襲うのではないか、と揶揄するつもりで。
だけど、肝心のゼストはCC企みに気がついてか、彼女に背中を向けて無言で前を行く始末であった。

「……チェッ、つまらん奴め」

道に転がっている小石を蹴飛ばしながら、CCは愚痴を零す。
どこぞの童貞坊やだったらもっとマシな反応したかもなと思いつつも
件の人間を思い浮かべたら、その人も同じような反応しかしないなと
彼女は溜息を漏らした。

「それでお前はどうするんだ?」

相手に反応がないので、話をこのデスゲームに移す。

「何がだ?」
「先程の放送でお前の御執心の高町なのはが呼ばれたぞ」
「その事か。下らん」
「下らんとはまた随分と突き放した言い方をするものだな。あれだけ想いを私に吐露しておきながら」
「……名簿は見ていないのか?」
「名簿〜?」
「そうだ。そこにはあの悪鬼の名が二つ記されていた。一つは紛れもなくあの復讐の鬼。そしてもう一つはどうせプレシアなりスカリエッティなりが暇つぶしに作ったクローンであろう」
「つまり、死んだのはクローンであると?」
「そうだ。あの悪鬼はそう簡単には堕ちん! それほどの執念を持った鬼だ!」
「ふぅん、そうか。しかし、変わった趣味の男だな。そんな女の尻を追いかけるとはな」

表情をほとんど変えない目の前の男に向かって、彼女はまた笑いかける。
この堅物の人間の顔を変えてこの場を少しでも楽しもう、と。
だけど、ゼストは相も変わらずその無骨な背中をCCに見せるだけであった。

「……お前ほどからかい甲斐のない奴は初めてだよ」

幾分か呆れを込めて、CCはゼストに告げる。
そして途端に辺りに立ち込める沈黙。
別にそれ自体に居た堪れなさを感じるほど彼女は繊細な出来ではないが、
このままだんまりを続けるというのも面白くはない。
彼女は再び話をゲームの事に戻すことにした。


248 : ◆Qpd0JbP8YI :2008/11/19(水) 18:40:02 ID:G80f41Th
「……それで、あの下らないショーのことについてはどう思う? 死んだ人間を生き返らせると言っていたが」
「それは……恐らく可能だろうな」
「本当か?」
「ああ。事実、この身は既に一度死したもの。今は仮初の命を預かり、現世しているに過ぎん」

ゼストの発言にCCは目を丸くする……わけもなく、ただ目を細めて、嘲るような口調で言った。

「これは驚きだな。こんな所で奇跡を目の当たりにできるなどとは。どこぞの神様もビックリだ」
「……冗談ではない」

ゼストは馬鹿にした口ぶりを諌めるべく、眼光鋭くCCを射すくめた。

「フンッ……では、あのプレシア……だったか? あの女にそんな大それた能力があるとでもいうのか?」
「恐らくは」
「これもまた驚きだな。余程、神というものは間抜けと見える。自身の絶対権限であるはずの命の再生を他人に譲り渡すなどとはな」
「それには同意する。しかし、生き返るというのは誰にでも可能なことではない」
「どういうことだ?」
「死体を蘇らすにはレリック……という物を用いるのだが、それが身体に無事に適用されるかはある程度基準がある。それをクリアしなければ、生き返るというのは、また夢の話だろうな」
「その基準というのは分からんが、あの死んだ女に当てはまるものがあったか?」
「それはなかった」
「随分とはっきり言うな」
「ああ。あの女には魔力が感じられなかった。それでは高エネルギー体であるレリックが収まるはずもない」
「なるほど。だとしたら、あの女は……」
「クローンだろうな。態々見せしめのためにクローンを作り、命を弄ぶなど……プレシアめ!」
「何だ、随分とつまらない答えだな。夢も希望もない。拍子抜けだ」
「この殺し合いで面白いことを期待する方がどうかしている。それが主催者に関することなら尚更だ」
「……つまり、あの女の言っていることには期待するな……全ては嘘……ということか?」
「全てとは言わん。だが自分に益することがない以上、他人に手を貸すことなどはないだろうな。あのような腐った人間は」

そうか、とCCは冷淡な言葉を告げ、会話を終わりにした。
放送を聞いて魔女と呼ばれるCCが気になったことは
死者を告げる声でも、禁止エリアに関することでもない。
それは願いを叶えるということ。そしてその為の「力」がプレシアに実際にあるかどうか。
もしプレシアという女に神にも似た能力があるのなら、
不死であるはずの人間が死ぬということは、この場では恐らくは可能なことなのだろう。
死とは飽きるほど長い生の果てに望んだ願い。
ならばCCにとって、その対面は些かの恐れもない。
だけど、このような訳の分からない他人の遊戯場で朽ち果てるのは、魔女としての誇りが許さない。
自分を殺すのは契約者であるルルーシュの役目。そしてそのためのギアス。
自分の命も、契約者の命も、決してどこぞの女の為に贄となり、祭壇に捧げられるものではない。
確かにギアスとは常に契約者の人生を壊すもの。
CC然り、マオ然り、そしてルルーシュも……。
このような茶番に巻き込まれてしまったのも、彼女にとっても幾分か予想外ではあるものの、
ギアスの円環に組み込まれたものなのであろう。
だがあの日、CCとルルーシュは確かに覚悟を持ってギアスを契約した。
それならば、ギアスにより何が起きようと、その結果を受け入れなければならない。

(すまないな、ルルーシュ)

心の中で詫びを入れつつも、彼女の想いは変わらない。

(この下らないゲームを生き延びて、私を殺してくれ。それでこそ共犯者だ。共にお互いの生を犯す者としてのな)


249 :空腹の技法 ◆Qpd0JbP8YI :2008/11/19(水) 18:42:07 ID:G80f41Th
それこそが彼女の目指す終着点。
だから、そこへの道が決して外れないように彼女は歩かなければならない。
契約者であるルルーシュと共に。
もしその道を踏み外してしまう者がいたのなら…………。

(先の放送でカレンは死んだみたいだが……。ルルーシュ、忘れるなよ。お前は私の共犯者だ。今更泣き言は許されない。
この先、スバルやシャーリーが死のうともだ。あまり私を失望させてくれるなよ)

そして彼女は自身の道を彼と共に歩くためには何をすべきかということを考える。
だけど、それはここに来る前のことを思い返せば、考えるに及ばない。
何故なら、彼はそこでも反逆者だったのだから。
ならば、すべきことは簡単。
前の世界と同じようルルーシュに力を与えればいいのだ。
彼の能力がいかんなく発揮される黒の騎士団のような力を――駒の集まりを。
そうすれば、反逆の狼煙は上がり、自然と目的地への道程も見えてくる。
そして上手いことに良い駒になりそうな人間が彼女の目の前にいる。
一つの執念に駆られた人間など、ギアスなど使わずともルルーシュなら簡単に操れるだろう。
そんな思惑と共に魔女はほくそ笑む。

(しかし、それはともかくとして……)





「おい、腹が減ったぞ」

CCのその言葉にゼストはギョッとした表情で振り返る。

「……さっきも食べただろう?」
「一体、何時間前のことだ? それにあんな冷めてヘナヘナになったピザでは腹はおろか、心も満たされん」
「贅沢を言うな」
「贅沢ではない。人として当たり前の嗜みだ。それにもう朝食の時間だ。お前も腹が減っては何とやらだろう?」
「……まあ、それは確かにそうだな」

そう言い、ゼストはバッグからピザを取り出そうとするが、それはCCの言葉により制止される。

「だから、冷めたピザはいらんと言っているだろう」
「……どうしろと言うのだ?」
「温めろ」
「温めろ? どうやってだ?」
「お前は一々人に聞かなくては分からんのか?」
「……別に俺だけがピザを食べても構わんのだが?」

憮然とした表情で呟くゼストを見て、CCは僅かに頬を緩ませる。

「フフッ、そう怒るな。ちょっとした冗談だ。確か近くに商店街があっただろう? そこに電子レンジの一つくらいも置いてあるさ」
「……あまり時間をロスしたくはないのだがな」
「そう焦るな。お前の想い人は皆無事だったのだろう? それに態々この殺し合いという遊技場に立てられた施設だ。何かしらの意味があるかもしれんぞ」
「一体誰のせいで焦っていると思っているんだ」


250 :空腹の技法 ◆Qpd0JbP8YI :2008/11/19(水) 18:43:51 ID:G80f41Th
二言目には……と多少の謙虚も見せずに、一言目から腹が減った、疲れたとのたまうCCのせいでゼストの足は一向に進まなかった。
そのおかげか、二人の踏破した距離は未だ些細なものであった。
しかしCCの言葉に思うところがあったのか、しばらくしてゼストはその首を縦に振った。

「行くぞ」
「どこへだ?」
「商店街にだ」
「そうか。それは頼もしい台詞だ。では礼として、一つの情報をくれてやろう」
「……何だ?」
「商店街の先に黒の騎士団専用車両とあっただろう?」
「それがどうかしたか?」
「そこには殺し合いに役に立つものがある」
「……何故そんなことが言える?」
「簡単なことだ。帝国に逆らう一人の反逆者が掲げた看板がそこにあるからさ」

疑問の表情を浮かべるゼストにCCは微笑で応え、足を進める。

(そこにルルーシュがいるかもしれないしな)

心の中でそんな一言を付け足し、彼女はまた笑う。

(ゼストだったか? 意外に楽しめるじゃないか)

自分の言葉に振り回され、巧みに変化するゼストの表情を思い出し、彼女は笑いながら彼への次の言葉を考えていた。
彼女の後ろを歩くゼストはそんなCCを見て、何ともいえない顔を人知れず浮かべていた。

251 :空腹の技法 ◆Qpd0JbP8YI :2008/11/19(水) 18:44:54 ID:G80f41Th
【1日目 朝】

【現在地C-3 】
【ゼスト・グランガイツ@魔法少女リリカルなのは 闇の王女】
【状況】健康
【装備】ブリッツキャリバー(待機状態)@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】オリーブ抜きのピザ(10/12サイズ)@魔法少女リリカルなのはStylish、支給品一式
【思考】
 基本:高町なのはの捜索、抹殺、プレシアの抹殺、ルーテシアの保護
 1.商店街へ行き朝食を取る
 2.商店街で役に立ちそうなものを探す
 3.黒の騎士団専用車両へ行く 
 4. 行動を共にする仲間を増やす。
 5. なのはと戦うことになれば、ギア・エクセリオンの発動も辞さない??己の命を削ってでも。
【備考】
 ・なのはとルーテシアが『健全な』歴史(StS)から来たのを知りません。
 ・市街地は危険だという認識を持ちました。
 ・CCとの協力関係は、ギブアンドテイクという暗黙の了解の上に成り立っています。
 ・ブリッツキャリバーは、十話での殺生丸戦後からの出典です。
  原作とは異なり、ファイナルリミッターが解除され、ギア・エクセリオンが使用可能となっています。
 ・ギア・エクセリオンがゼストにかける負担の程度は、未だ明らかになっていません。
  ゼスト自身は、自分のデバイスのフルドライブ同様、自身の命を削る可能性もあると推測しています。
 ・プレシアにはスカリエッティと同等かそれ以上の技術があると思っています。
 ・プレシアのことは全く信用していません。


【C.C.@コードギアス 反目のスバル】
【状況】健康
【装備】スティンガー×10@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、ランダム支給品0?2個(確認済み)
【思考】
 基本:役に立ちそうな物や人材をルルーシュに届ける。
 1. 商店街でホカホカのピザを食べる
 2.商店街で役に立ちそうな物を探す
 3.黒の騎士団専用車両へ行く。 
 4. 向かってくる者は基本的には殺す。
 5. ピザの対価を払う方法を考える。
【備考】
 ・スバルが『StS』から来たのを知りません。
 ・ゼストとの協力関係は、ギブアンドテイクという暗黙の了解の上に成り立っています。
 ・「ギアス提供」「精神干渉」「Cの世界との交信」が不可能となっていることに気付きました。
 ・再生能力も制限されている可能性があると考えました。
 ・このゲームの中では死ぬつもりはありません。
 ・プレシアのことは信用していません。
 ・ゼストにはルルーシュの駒になってもらおうと考えています。

252 : ◆Qpd0JbP8YI :2008/11/19(水) 18:46:09 ID:G80f41Th
以上です。投下終了しました。

253 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/11/19(水) 19:46:46 ID:361jyG0H
GJ!
C.C.が実にいい味を出しているw
ホント見事な凸凹コンビだなぁ、この2人w

では続いて、ギンガ、インテグラ、始分を投下します

254 :誇りの剣 ◆9L.gxDzakI :2008/11/19(水) 19:48:53 ID:361jyG0H
『――の命が奪われるのかしらね。今から楽しみだわ』
 インテグラ・ファルブルケ・ヴィンゲーツ・ヘルシングが最初に耳にしたのは、どこか聞き覚えのある声だった。
 瞼が重たい。意識はどこか朦朧とし、未だ夢の中にでもいるかのような感触。
 だが、細身の全身へと襲い掛かる苦痛が、彼女の完全なる覚醒への時間を幾分か早めていた。
『それじゃあ、あなた達の活躍を期待しているわ』
 と、同時に、聞こえてくる声がより鮮明さを増していく。
 発せられた場所は、自分の耳にかなり近い。至近距離から、放送機材を介したようにして流れてくる。
 曖昧な記憶を手繰りながら、それらしいものはなかったかと思案と、すぐに首輪へと思い当たった。
 このデスゲームとやらが始まった瞬間に、首元につけられていた爆弾首輪。
 なるほど確かに、耳を澄ませてみれば、この女の声は確かに首から聞こえていた。
 と、同時に、その「始まった瞬間」という情報から、声の主の正体が思い浮かぶ。
『ふはははははははははは、はははははははははは、はははははははははは――』
 プレシア・テスタロッサだ。
 身体が思い通りに動くならば、歯軋りの1つでもしたくなるような不快感が込みあがる。
 この下らない殺し合いを催し、自分をこのようなふざけた処遇に貶めた女。
 全くもって、下品で、不遜で、深い極まりない高笑い。苦々しい思いが内から湧き上がるのを感じた。
 全てが万事、この女のせいだ。
 今まで要らぬ苦労を強いられていたのも。原因は記憶にないが、こうして今自分が痛めつけられているのも。
 憎悪と憤怒を胸へと抱き、しかしその思考は、極めて冷静に現状を探る。
 この放送を行っているのは、紛れもなくプレシア本人だ。だとすれば、一体何の用事で、こうして語りかけたのだろう。
 いや、そもそもここはどこだ。背中に伝わるのは、ソファか何かのような柔らかな感触。
 意識が途切れる前に記憶していたのは、古臭い小さな駅の一室。もちろん、こんなものは置いていなかったはずだ。
 であれば、あそこからこの場所まで連れてこられた線が濃厚となる。恐らく、同行していたギンガによって。
 とにもかくにも、実際に見てみなければ分からない。鉛のように重い瞼を、ぐっと力を込めて開く。
 目に入ったのは、どこかの建物の部屋だった。駅の部屋よりは遥かに広く、壁も天井も別物だ。
 そしてこの様式には見覚えがある。いいや見覚えどころではない。自分はここをよく見知っている。
 英国風の建築は、自らの居城たるHELLSING本部だ。父たる先代頭首アーサーから受け継いだ、第2の実家にも等しい場所。
 そうか、自分はどうにかここにたどり着けたのか。
 当面の目標が達成されたことに、わずかな安堵を覚える。
 と、視界の中に人影があった。紫ががった、青色の髪が。
 視線を傾けると、その床にはギンガが座り込んでいる。
 当然と言えば当然だ。彼女がここにいなければ、一体誰が自分をここまで連れてきたのか、ということになる。
 だが、様子がおかしい。
 その表情に力がない。うつむいていながら、その床にさえも焦点は合わさず、どこかぼんやりと遠くを見ているような目。
 自分が目覚めた気配にも全く気付くことなく、ただその手に支給された筆記具を握って、呆然とした様子のまま静止している。
 弱冠17歳でありながら、捜査官として優秀なスキルを有した、頭の切れる彼女とはまるで別人だ。
 注意深いギンガならば、こうして自分が目覚めたことには、すぐに気付いてもおかしくはないだろうに。
 まるであの銀髪のヨウカイとやら――殺生丸を見つけた時のような。否、気配はその時よりも遥かに危うい。
「……どう、した……ギンガ……?」
 喉の奥から搾り出すようにして、掠れるような声を出す。
 どうにも身体が思うように動かせない。単純な擦り傷切り傷、打撲の類でもなさそうだ。
 その身体でどうにかこうにか発した、呻きにも似た声にすらも、彼女が気付くには一拍の間を有した。
 ゆっくりと。ギンガの首が動いていく。ソファの上に横たわる、インテグラの視線の方へと。

255 :誇りの剣 ◆9L.gxDzakI :2008/11/19(水) 19:50:30 ID:361jyG0H
「インテグラル卿……」
 震えるような声だった。
 凛とした態度を崩さぬ彼女にしては、なんと弱々しくか細い声だろう。
 仮面のように貼りついた無表情には、未だ何の色も浮かばない。視点も果たして、自分に合っているのかどうか。
 ふと、よく見ると、ギンガの座り込んだ場所には、1枚の紙が置かれていた。
 前もって支給されていた、参加者達の名前が並べられた名簿だ。
 見ると、そこにある名前のところどころに、丸い印が描かれている。
 アグモン、エリオ・モンディアル、カレン・シュタットフェルト、神崎優衣……総勢13の参加者の名前。
 そして欄外にも、何かが歪んだ字体でメモ書きされていた。
 7時からB-1、9時からD-3、11時からH-4。これは要するに、このフィールドの地図上での区切りを示しているのだろうか。
(ああ……)
 それでようやく察した。
 人の名前、3マスのエリア。それを告げるための放送。
 そういえばこのデスゲームでは、6時間ごとに死者と禁止エリアを発表するための、定時放送が行われるのだと。
 であれば、印のついた名前は、救えなかった犠牲者達。欄外に書かれたのは禁止エリア。
 そして、名簿に印を刻まれた者達の中には。
「……殺生丸さんが……」
 気付いた時には、横たえられた自分の身体に、ギンガがしがみついていた。
「殺生丸さんが……殺生丸さんがぁ……ッ……!」
 ひたすら男の名前を呼びながら、堰を切ったように泣きじゃくる。
 とめどなく溢れる熱い雫が、インテグラの纏っていた服へと染みを作る。
 名前が呼ばれていたのだ。あの銀色の髪と、蒼月の紋様を持った魔物の名が。
 有り得ない話ではなかった。確かに殺生丸の力は、常人は愚か並の魔導師よりも遥かに高い。
 目にも止まらぬ速度のストレートで、ああも簡単にギンガを殴り倒したのだ。
 見た限り、単純な攻撃速度はスバルよりも速い。吸血鬼の力を得て強化されたティアナでも、あれほどのパンチが出せるかどうか。
 ただそれでも、絶対とは言いがたい。ただ強いだけで、アーカードのような無敵の存在とは思えない。
 それがあの市街地で見せた、常軌を逸した発光現象を引き起こしたのだ。
 あれが彼と、あの場に現れた金髪の男との戦闘によるものならば、殺生丸とて無事とは言い切れないとは、分かっていたはずだ。
 インテグラは元より、ギンガさえも。
 それでも、理屈と感情とは違う。
 ギンガは喪ってしまったのだ。
 恐らく誰よりも憧れ、誰よりも尊敬し、誰よりも求めていたあの男を。
 痛みによってのろまになった腕を伸ばし、むせび泣く彼女の背中へと回す。
 この分では、落ち着くまでにはまだ多少時間がかかるだろう。気になることはあったが、全てはそれからだった。
 泣いて、泣いて、泣き叫んで。
 一生分にも等しき涙を、嗚咽と共に流し続ける。
 永遠に、久遠に続くように。
 捜査官の肩書きも、磨き上げられた理性もかなぐり捨て、ただひたすらに。
 ギンガ・ナカジマは、海よりも深き悲しみに暮れていた。

256 :誇りの剣 ◆9L.gxDzakI :2008/11/19(水) 19:54:12 ID:361jyG0H
 そのまま数分が過ぎただろうか。ちょうど泣き声も徐々に落ち着いてきた頃、震える唇が開かれる。
「……インテグラル卿」
「何だ……?」
 名を呼ばれたインテグラは、即座にギンガの声に応えた。
「どこか、見つかりづらい、安全な隠れ場所はありませんか」
 そして、ギンガの問いかけに、内心で首を傾げる。
 隠れ場所、とは一体どういうことだ。それが一体何のために、必要になるというのだろうか。
 自分達の目的は、一にも二にもアーカードとの合流のはず。ここにいないということは、恐らくまだ発見できていないのだろう。
 では何故、隠れる必要があるというのか。むしろここは動くべきではないのか。
「わがままだってことは、分かっています……でも……どうしても、行かなきゃいけない場所があるんです」
 そして、その言葉を聞いて、ようやくインテグラは得心した。
 隠れるべきはギンガではなく、自分なのだ、と。
 今自分の口で言ったように、ギンガはどこかへ移動しようとしている。そしてそのためには、自分は邪魔になる。
 よく身体を見てみれば、インテグラは全身に火傷を負っていた。
 恐らくここにあったであろう医療器具を使い、応急処置は施されていたが、まだまだ動き回れるほどではない。
 こんな自分が一緒にいては、ギンガはろくに動くこともできないのだ。
 それが自分の都合にせよ、アーカードの捜索にせよ。
 故に、インテグラはここに残る必要があったのだ。それも、外部からはまず見つからない安全な場所で、息を潜めて。
「ああ……それなら、地下に牢屋があるはずだ。恐らく、そこなら安全だろう」
 提示したのは地下の牢獄。ヘルシング家頭首サー・インテグラルの、始まりの場所。
 その部屋に安置されていたアーカードと出会い、主従の契約を結んだことで、インテグラは再誕した。
 何も知らなかった貴族の娘から、化け物共(フリークス)掃討の最前線に立つ鉄の女へと。
 あの場所ならば衛生面もさほど問題にはならないし、何より鉄の扉は頑丈に作られている。
 罪人を収容するべき牢屋も、鍵をかければ、立派なシェルターに早変わりというわけだ。
「分かりました」
 返事と共に、ギンガがインテグラの身体を持ち上げる。
 そのまま背中に負わせると、ゆっくりと歩き始めた。
 彼女の表情は伺えない。声にもおおよそ感情が見られない。
 一体何を考えているのか、インテグラには知る由もない。
 ひょっとしたら彼女は、もうここには帰って来ないのではないのだろうか。
 本当なら、止めておくべきなのかもしれなかった。だが生憎と、この体たらくではできそうにもない。
「ちゃんと戻ってきますから」
 その心境を察したのか、ギンガが短く告げる。
 それを信じていいのかどうか、未だインテグラには、判断のしようがなかった。


【1日目 朝】
【現在地 D-5 HELLSING本部地下牢】

【インテグラル・ファルブルケ・ヴィンゲーツ・ヘルシング@NANOSING】
【状態】疲労(中)、全身に軽い火傷(応急処置済)
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】
 基本:この殺し合いを止め、プレシアを叩きのめす。
 1.ギンガが戻って来次第、アーカードの捜索を再開。発見し、指揮下に置く。
 2.ギンガは大丈夫なのだろうか?
 3.できる事なら犠牲は最小限に留めたいが、向かってくる敵は殺す。
【備考】
 ※同行しているギンガが自分の知るミッドチルダに住む人間ではない事、
  一部の参加者はパラレルワールドから来た人間である事を把握しました。
 ※アーカードは参加者に施されているであろう制限の外にあると思っています。
 ※地下牢には鍵がかけられており、鍵はギンガが持っています。

257 :誇りの剣 ◆9L.gxDzakI :2008/11/19(水) 19:55:43 ID:361jyG0H
 遠雷が鳴っている。
 ごろごろ、ごろごろと。
 耳に入ってくる音を、ギンガは漠然としか捉えることができなかった。
 別に雷鳴に気付いたからといって、その先に思考が及んだわけではない。
 ああ、今は天候が悪いんだ。雲の中で雷でも鳴っているんだ。そんな単純な思考すらも浮かばなかった。
 ふらふら、ふらふらと。
 一切の感情の浮かばぬ、茫然自失としたような面持ちで、ギンガが街中を歩いていく。
 心ここにあらず。実際、今の彼女には、余計なことは考えられない。
 彼女の心を占めるものがあるとすれば、それは今は亡き殺生丸の存在だ。
 あの空港火災から、そしてあの金髪の男から、二度に渡って自分を救ってくれた人。恐らく別の世界からやって来た、命の恩人。
 初めてギンガが目の当たりにした、こうありたいと願えるヒーロー像。
 そして、義父ゲンヤ以外で、初めてギンガが憧れを抱いた男の姿でもあった。
 さながら、御伽噺の白馬の王子様のような。
 そして遂に、彼女はその地へと足を踏み入れる。
 地図上における区分はF-7。あの蒼き極光の輝いた場所。このバトルロワイアルにおいても、最大の戦場跡の1つ。
 殺生丸とミリオンズ・ナイブズ。互いに人間を遥かに超越した2人の魔人が、持てる力の全てを燃やし尽くした場所だ。
 やはりと言うべきか、はたまた当然と言うべきか。
 蒼龍破とエンジェル・アームの激突した場所は、まさに地獄のごとき様相を呈していた。
 ひび割れたアスファルト。吹き飛んだ標識。ひどいものは完璧に倒壊したビルディング。
 並の天災すらも凌駕した、凄惨なまでの傷痕達。
 いかに魔導師が優れた戦闘力を持とうと、突き詰めればやはり人間でしかない。この惨劇の舞台を見れば、嫌が応にも理解できる。
 たとえ強力な砲撃を放てたとしても。たとえ音より速く空を飛ぼうと。
 やはり、これほどまでの被害を生み出すには至らないのだ。それこそ、人外の輩でもない限りは。
 かつり、かつりと。
 亀裂の走るアスファルトの上で、ギンガの靴音が鳴り響く。
 荒廃しきった惨劇の街。耳を打つ遠雷の音が、その異様さを一層引き立てる。
 地獄の釜の底を、彼女は幽鬼のごとき気配と共にふらふらと歩き続けていた。
 道しるべなど視界にはない。それでも、妙に確かに。見えない何かに手を引かれるように。
 そしてそこに、それはあった。
 砕けたコンクリートに突き刺さるのは、白銀に輝く一振りの刀。
 童子切丸。
 殺生丸の携えていた剣。最後の戦いに身を投じた妖怪の意志を体現するがごとく、燦然と煌く一振りの刃。
 その身に無数の傷を走らせながらも、決して砕けることなく輝き続ける太刀へと。
 光の中に消えた殺生丸の、遺品とでも言うべき傷だらけの刃へと。
 ふらり、ふらりとギンガが近づいていく。
 遂に刀身の元へとたどり着いた彼女は、ゆっくりとその剣へと手を伸ばした。
 両手を柄へと添える。力を込め、一挙にアスファルトより抜き放つ。
 歪にひび割れながらも、そこに湛えた光までは、決して歪むことなき至高の刃。
 その全貌が、燦々と照りつける陽光を浴びた。刀身に映るギンガの顔は、未だに虚ろな気配を宿したまま。
 す、と。
 童子切丸が動く。剣呑なる鋼の刃は、1人の少女の首筋へと。
 柔らかなギンガの肌の目前にまで、刀の刃先は寄せられていた。
 たとえ戦いには使えぬ死に損ないの牙といえど、無抵抗な皮膚を切り裂くことは可能だろう。
 今その左手を引けば、ギンガの首元を刃が襲う。
 動脈がことごとく引きちぎられ、真紅の血液がぶちまけられる。
 死と隣り合わせ。
 そんな状況になってもなお、ギンガの表情は変わらない。
 焦点が合わず、ただぼんやりと。
 遥か彼方へ向けられた、緑の瞳に映るのは何なのか。
 あるいは、あの強く気高き、白銀の妖怪かもしれない。
 誰よりも尊敬し、誰よりも憧れた。幼いあの日からずっと、こうありたいと願い続けてきた。
 彼女にとっての、たった1人のヒーローだった殺生丸さん。
 でも、もう彼はいない。
 この地で力尽き、跡形も残さずに消え失せた。
 ギンガの1番大切な人は、もう、この世のどこにもいはしない。
 さっ、と。
 静かに。だがしかし、確かに。
 あまりにも早く、軽い動作で。
 童子切丸の刀身が、引かれていた。

258 :誇りの剣 ◆9L.gxDzakI :2008/11/19(水) 19:57:42 ID:361jyG0H





 ぱっ、と。
 灰色のゴーストタウンの中に、鮮やかな色素が広がった。





 ――ばさり。





 その音がギンガの耳に入ったのは、一拍の間を置いてからだった。
 雷鳴響く街の中、広がった色素は青紫。
 赤き血液からは遠くかけ離れた色が、風に舞い、虚空に踊り、亀裂が走る道路へと落ちる。
 切られてはいない。ギンガの白き首の肌は。他ならぬ彼女の生命線は。
 首筋には一切傷を残すことなく、赤き道筋を刻むことなく、童子切丸は引き抜かれた。
 切ったものが違うのだ。ギンガ自身の首ではない。
 鋭き刃が刈り取ったのは――髪。
 空中にぱあっと広がったのは、紛れもなく美しき髪の色。よく見れば、ギンガの右手が、彼女の後頭部で握られていた。
 断ち切ったのは命ではない。絶望から自害を選ぶほど、彼女は愚かな娘ではなかった。
 長く伸びた自身の髪を。見事な青紫のストレートヘアを。
 女の美の象徴たる長髪を、自らの意志で断ち切っていたのだ。
 軽く、瞳が閉じられる。
 ほどかれる右拳。ギンガに残された髪の長さは、やっと肩にかかる程度。妹のスバルと、もはやさほど変わらない。
 開かれた目は、再びエメラルドの輝きと共に。
 強く、優しく、まっすぐに。
 紛れもないギンガ・ナカジマの眼光が、その双眸に宿されていた。
 煌く切っ先を天へと掲げ。エメラルドの瞳を天へと向けて。
「殺生丸さん」
 遥か彼方を、仰ぐ。
 あの人はあの男を引き受けたと言った。あの男と戦い、自分達を守ることを約束したのだ。
 そして、彼は約束を果たした。キャロとははぐれてしまったが、少なくとも駅に着くまでは、3人全員生き残っていた。
 であれば、生き延びた自分には責任がある。あの殺生丸の誇りを受け継ぎ、戦い続ける責任が。
 ここで彼の死に押し潰され、それこそ自らも命を断つことがあれば、それこそ彼の誇りを地に貶める行いだ。
 故に、ギンガは背負う。17歳という若すぎる背中に、あの強く気高き美獣の魂を。
 いいや殺生丸だけではない。あの異様な半裸の男から、出会ったばかり自分を守ってくれた男――矢車想の命もそうだ。
 なのはの、ティアナの、エリオの、シグナムの。その他名前すらも知らぬ死者達の。
 救うことができなかった、13の人間の魂達。それら全てを一身に背負い、ギンガは立つ。

259 :誇りの剣 ◆9L.gxDzakI :2008/11/19(水) 19:58:54 ID:361jyG0H
「殺生丸さんは、面倒だって鼻を鳴らすかもしれないけど……」
 実のところ、殺生丸はそんな大層な人格者ではなかった。
 自分より劣った人間も、それが引き起こす面倒事も大嫌い。
 きっとこの場に彼がまだいたならば、人間ごときを救って回るなど面倒だ、と切って捨てるだろう。
 その辺りは、彼を英雄視していたギンガにとってはショックでもあり、僅かながらに幻滅もしたのだが。
「私は戦います。この剣と共に……貴方から受け取った、誇りに誓って」
 それでもなお、ギンガにとっての殺生丸が、今でも絶対の存在であることに変わりはなかった。
 冷酷無慈悲な妖怪の男。確かにそれは、彼の本質の一部ではあっただろう。しかしそれだけでは、彼を語ることはかなわない。
 並外れた力、凄まじき素早さ。圧倒的な異能と共に内在する、かくも人を惹き付ける秀麗さ。
 洗練された芸術のように。神剣を振るう英雄のように。
 美しくも猛々しき、圧倒的な風格が、残忍性の上だけに成り立つはずもない。
 殺生丸を殺生丸たらしめているもの――それが、誇り。
 人間を超越した種族として。そしてその中でも、一際秀でた大妖怪としての矜持。
 自らの血統と、そこに宿された力への絶対的なプライドこそが、殺生丸の威容の正体だった。
 疑念もなく、弱気もなく。
 自らが歩む道、自らが切り開く道を信じ、一直線に駆け抜けるその姿勢こそが、最強の妖怪に宿る魔性の源泉。
 そして今なおその誇りは、この現世に残されていた。
 何物が立ちはだかろうとも。どれほど身を苛まれようと。
 たとえ命の灯火が燃え尽きる、その寸前の時が来ようとも、決して何物にも屈することなきその姿。
 千々に亀裂を刻まれようとも、決して砕けることなき童子切丸。
 もう自分は、殺生丸の死に震え、何も考えられなかった自分じゃない。
 この太刀を見つける前までの、何を為すかも決められず、ただ殺生丸の面影だけを追いかけていた弱い自分ではない。
 誇りの剣を受け継いだからには、その誇りに殉じることこそが。
「この殺し合いを止める。スバルも、キャロも、インテグラル卿も……みんな私が守り抜いてみせる」
 その揺るぎなき正義こそが。誰かを守るという意志こそが。
 ギンガ・ナカジマの背負うべき誇りであり、果たすべき責務でもあった。
 そう。まだ何も終わってはない。
 殺生丸がその命を散らしたからといって、全てがゲームオーバーとなったわけではないのだ。
 先ほど流れた放送の中で、遂にキャロ・ル・ルシエの名前が呼ばれることはなかった。
 突発的な事故とはいえ、結果的に置き去りにしてしまった同僚。
 どういうわけかは分からない。それでも、彼女は死んでいなかった。
 救えなかったとばかり思っていた少女は、今もどこかで生きている。
 故に、ギンガが救わねばならない。それが救えなかった者の責任だ。
 それに、未だ再会できぬスバルの存在もある。
 泣き虫で、弱虫で、それでも人一倍優しかった、同じ遺伝子を元に生まれた小さな妹。
 まだ母が存命だったあの日、自分はスバルに誓ったのだ。
 人を傷つけるのが怖いのならば。それを恐ろしいと思える心があるのならば。
 スバルは強くならなくてもいい。その代わりに自分が強くなる。
 尊敬する父や母のように、誰よりも強いヒーローとなり、愛しい妹をこの手で守り抜いてみせる、と。
 スバルが誰かを守れる存在に憧れ、力を手にすることを誓った今でも、その約束に偽りはない。
 終わりではない。ここからまた始まるのだ。
 切り裂いた髪は決意の証。喪われた者達の魂を背負い、残された者達を救うために。
 今こそ、誇りのために歩き出す時だ。
 殺生丸を追うためではない。管理局の職務のためだけでもない。
 天上で赤く熱く燃える、あの太陽のような。
 この胸に抱く、ギンガ・ナカジマの信じる正義のために。

 ――好きにしろ。

 ふん、と鼻を鳴らしながら。
 雄叫びのごとき遠雷の中で、あの男の呟きが、背中を押したような気がした。
 心地よく心に響く声が、ギンガの口元を緩ませていた。

260 :誇りの剣 ◆9L.gxDzakI :2008/11/19(水) 20:00:14 ID:361jyG0H





(――違う!?)





 は、と。
 ギンガの瞳が見開かれる。
 柔らかな微笑みは即座に消え去り、その表情は急速に冷静さを取り戻していく。
 思考の糸は急激にその射程を伸ばし、明晰な捜査官の頭脳を一挙に再起動させた。
 気付いたのだ。この場に存在する違和感に。
 頭上に広がっているのは、快晴と言っていいほどの青空。燦然と太陽が輝く天には、暗雲の1つもありはしない。
 鳴っているはずがないのだ。この晴れた空の中で、雷など。
 こんな単純なことにも気付かなかったとは。ぎり、と奥歯を軋ませる。
 では果たして、今まさに響いている雷鳴は何だ。この稲妻にしか聞こえない音は、一体何故鳴っている。
(……雷……?)
 刹那、妙な既視感がギンガを襲った。
 雷――“神鳴り”とは、すなわち天上の神が鳴らす音の意だ。
 その雷鳴を轟かせ、地上に落雷を炸裂させる者こそが、“雷神”として神格化されている存在である。
 雷。そして、神。それらが記憶の中より手繰り寄せる答えは――
「ッ!?」
 途端、爆音が鳴り響いた。
 遠雷ではない。これは何かが爆発し、崩壊する、文字通りの爆音。
 即座に足元に発生する振動。轟く激音と相まって、それがギンガの思考を加速させていく。
 間違いない。これは天然の自然現象などではなく、人為的に生み出された雷鳴だ。
 その稲妻が攻撃手段として利用され、今まさにそこで戦闘が繰り広げられている。
 いいや、茫然自失としたギンガが、該当するエリアを通った時から、ずっと。
 通常ならば有り得ない。雷を落とせる魔導師もいるにはいるが、そのフェイト・T・ハラオウンの魔力の気配は感じられない。
 だが、ギンガは既に知っている。一切の魔力を必要とせず、雷撃を放つ存在を既に目撃している。
 雷。そして、神。この2つのキーワードが導き出す、たった1人の殺戮者。
「……神(ゴッド)・エネル!」
 矢車の仇とでも言うべき、忌まわしき男の名を叫び、ギンガは神鳴る方へと振り返った。
 そして、息を呑む。
 つい先ほどまで通った足跡より漂うのは、おびただしいまでの黒煙だ。
 街中のあちらこちらから、漆黒のスモークが湧き上がっているのが分かる。
 すなわちエネルは、何者かの命を奪うために、エリア丸々1つに大火災を引き起こした。
 確かに強いと思ってはいたが、まさかこれほどまでの存在だったとは。
 とはいえ、今は気圧されている場合ではない。随分と短くなった髪を揺らし、元来た道を駆け抜ける。
 エネルが戦闘を行っているというのならば、あそこには必ずいるはずだ。
 この戦いに巻き込まれた者。あるいは、あの雷操りし半裸の男に、戦いを挑んだ者が。

261 :誇りの剣 ◆9L.gxDzakI :2008/11/19(水) 20:01:39 ID:361jyG0H


 行きはよいよい帰りは怖い、とはよく言ったものだ。
 通った時には、どこかで雷が鳴っているだけで、あとは普通だと思っていた街並みは、今や灼熱の海と化している。
 先ほどいた場所が地獄ならば、この帰路もまた地獄だった。
 陽炎に揺らめく大気。頬をじりじりと炙る熱気。
 ばっさりと長髪を切ったのは正解だったかもしれない。
 もしもあのままの髪型だったら、あっという間に汗だくになった全身に絡み付いて、鬱陶しいことこの上なかっただろう。
 そして当のギンガ本人は、そのことには一切思考を回すことなく、ひたすらに火中を走り続ける。
 あの自称神の気配は既にない。目立ちたがり屋の忌々しい高笑いが聞こえない。
 つまり、戦闘ないし一方的な虐殺は、既に今は終了している。
 どこかに生存者はいないか。エネルの襲撃を受け、この煉獄の炎の中に閉じ込められた者はいないか。
 グリーンの瞳をせわしなく動かし、ギンガは必死で人影を探る。
 そして、見た。
 粉々に爆砕されたビルのふもとに、ぐったりと倒れ伏した1人の男を。
 ベージュのコートに黒い髪。恐らくは、ゲンヤやなのはと同じ日系人。
 想像よりも早く見つかった生存者の元へ、脇目もふらさず駆け抜ける。
 うつぶせに倒れた男の身を起こすと、その胸元へと耳を当てた。
 どくん、どくん、どくん。弱々しいが、はっきりと鼓動が伝わってくる。微かにだが、呼吸も続いていた。
 まだ生きている。この人はまだ死んでいない。
 一刻も早く、インテグラの待つHELLSING本部へと連れて行かなければ。ギンガの判断は素早かった。
 こうした状況を想定していなかっただけに、今彼女の手元には一切の医療器具がない。
 それに、このままここに長く置いては、じきに呼吸困難で命を落としてしまうだろう。
 身体を屈めると、男の両手を己が肩へと回す。管理局制服の茶色い背中へと、男の身体が預けられた。
 重い。
 実際に背負ってみると、男性体の体格の重量というものが、いかに重いものであるかがよく分かる。
 炎の中で薄まる酸素。呼吸を阻む黒い煙。体力を奪う炎熱の温度。
 それら全てがギンガへとのしかかり、彼女の力をそぎ落としていく。
 苦しげな表情が浮かんだ。曲げられた膝が震えた。
 この炎の海の中、人1人をおぶることの何と苦しいことか。
 それでも。
 ギンガには諦めるつもりなど、毛頭なかった。
 燃え盛る灼熱。その中で助けを求める、弱々しき命。
 自然と彼女の思考は、4年前の事件へと遡る。
 空港火災事件。妹のスバルと共に巻き込まれ、殺生丸やフェイトと初めて出会った時のこと。
 白銀の髪と純白の毛皮をたなびかせ、緑に煌く鞭を振るう男の姿は、どれほど鮮烈に映ったことだろう。
 そして今、この場所で、あのシチュエーションが再現されている。
 轟々と渦巻く業火の中、かつての自分のように取り残された男がいる。
 救うべき者は――今は、自分だ。

262 :誇りの剣 ◆9L.gxDzakI :2008/11/19(水) 20:02:40 ID:361jyG0H
「今度こそ、なるんだ……っ」
 唸るように、言う。
 誰かを救える存在に。苦しむ人々を守るヒーローに。
 他の誰でもない、自分が。
 この背にのしかかる重みは、自分がこれから背負っていくべき命の重みだ。これくらい耐えられなくてどうする。
 自らを鼓舞し、全身の人工筋肉へと力を込めた。
 もうここにいるのは、あの日あの場所で何も出来なかった、弱くて幼い自分じゃない。
 最愛の妹を助けることもできず、無力に状況に屈していた娘じゃない。
 救ってくれる者はいないのだ。自分が救わなければならないのだ。
 今こそ、ならなければならなかった。
 守られる側でない、守る側に。
 クイントに。
 ゲンヤに。
 フェイトに。
「……殺生丸さんに!」
 あの独立独歩の、美しき獣のように。
 命を救える力を持った、4年前の英雄のように。
 誇りの剣を受け継いだ今こそ、その力をも、受け継がなければならないのだ。
「う、お……おおおおおおおぉぉぉぉぉっ!」
 雄たけびを上げる。
 ぱちぱちと炎の爆ぜる音にも負けぬ、腹の底からの絶叫を。
 持てる力の全てを込めて、背中に男を背負いながら、遂にギンガは立ち上がる。
 一歩、また一歩。
 猛火の責め苦に苛まれながらも、決して倒れることはなく。
 力強く、歩き始めていた。

 この時、ギンガには知る由もなかったことがある。
 今まさにその命を救うべく、背中に乗せた男の正体だ。
 ベージュのコートを纏う男は、名を相川始という。まさについ先ほどまで、エネルと熾烈な戦いを繰り広げていた男だ。
 そして彼もまた、あの殺生丸と同じく、人間ではない。
 不死の怪物アンデット。封印の戦士に擬態し、カリスという名の仮面ライダーとして振舞う男。
 そう。まさしく放送前にギンガ達を交戦し、彼女とキャロを引き裂いた張本人だった。
 偽りのヒーローの仮面を被り、その手を血に染めんとする魔物。
 それを救ったことが、ギンガにとってプラスとなるかマイナスとなるかは、未だ定かではない。
 確かなことは。
 彼の正体が何であれ。
 ギンガが始を、救いたいと願っているということだった。
 悲しみをその身に背負い、真のヒーローとしての道を歩み始めたギンガ・ナカジマ。
 偽りのヒーローを騙りながら、その胸に人間としての心を目覚めさせ始めた相川始。
 それぞれの存在が、それぞれに何をもたらすのか。
 この時にはまだ、誰一人として、知る由もなかった。

263 :誇りの剣 ◆9L.gxDzakI :2008/11/19(水) 20:04:41 ID:361jyG0H
【1日目 朝】
【現在地 E-6 倒壊したビルの麓】

【ギンガ・ナカジマ@魔法妖怪リリカル殺生丸】
【状態】断髪、顔面に打撲(小)、疲労(小)
【装備】コルト・ガバメント(7/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女
【道具】支給品一式、童子切丸@ゲッターロボ昴、ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
    ランダム支給品0〜2(確認済)、地下牢の鍵
【思考】
 基本:この殺し合いを止め、プレシアを逮捕する。
 1.始を伴い、インテグラの待つHELLSING本部へと帰還する。
 2.殺生丸さんが繋いでくれたこの命……絶対に無駄にはしない!
 3.インテグラを護衛し、アーカードを捜索する。
 4.できる事なら誰も殺したくはない。
 5.可能ならば、六課の仲間達(特にスバル)とも合流したい。
【備考】
 ※なのは(A's)、フェイト(A's)、はやて(A's)、クロノの4人が、過去から来た事、
  また一部の参加者はパラレルワールドから来た人間である事に気付きました。
 ※「このバトルロワイアルにおいて有り得ない事は何一つない」という持論を持ちました。
 ※制限に気がつきました。
 ※インテグラがいなくなった後のアーカードに恐怖を抱き始めました。
 ※アーカードを暴走させないためにも何としてもインテグラを守るつもりです。
 ※童子切丸@ゲッターロボ昴は既にぼろぼろで、戦闘には使えません。
 ※始がカリスであることを知りません。

【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】気絶中、疲労(大)、重症(回復中)、1時間変身不能(カリス)
【装備】ラウズカード(ハートのA〜10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
 基本:栗原親子の元へ戻るために優勝を目指す。
 1.…………(気絶中)
 2.見つけた参加者は全員殺す(アンデットもしくはそれと思しき者は優先的に殺す)
 3.あるのならハートのJ、Q、Kが欲しい。
【備考】
 ※参戦時期はACT.5以前。なのは達の事は名前のみ天音より聞いた事がある(かもしれない)程度です。
 ※自身にかけられた制限にある程度気づきました。
 ※首輪を外す事は不可能だと考えています。
 ※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝者となるのではないか」という推論を立てました。
 ※相川始本人の特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘した場合、その位置をおおよそ察知できます。
 ※エネルという異質な参加者の存在から、このバトルファイトに少しだけ疑念を抱き始めました。

264 :反目のスバル ◆9L.gxDzakI :2008/11/19(水) 20:05:47 ID:361jyG0H
投下は以上です。
本当は昨日から執筆していたのですが、始の予約を取るには1日跨がなければならなかったので、今日予約させていただきました。

265 : ◆RsQVcxRr96 :2008/11/20(木) 00:33:36 ID:2edmxx9a
お二方投下乙です。
すいません。感想付けている時間がないのでそこのところ失礼します。

大変時間が掛かってすいませんでした。
今から高町なのは(StS)、金居、シェルビー・M・ペンウッド、武蔵坊弁慶分を投下します。

266 : ◆RsQVcxRr96 :2008/11/20(木) 00:36:11 ID:2edmxx9a
フランスの哲学者パスカル曰く、人間は考える葦だという。
これは人間とは自然の中では最も弱いものであるが、考えるという特性を持っているとして、思考の偉大さを説いたものである。
人間は未知のものに触れた時、そこに何かしらの疑問を抱く。
そしてその疑問は人間に思考という働きを要求し、思考の果てに知識という宝物を与える。
それを繰り返す事によって人間はこの地上でも有数の知能を得るところとなった。
もっともパスカルは人間以外の思考する生物の存在を考えもしなかったが、これは人間以外の思考する生物全てに通じるものがある。
そしてその中には人間以上の知識を身に付ける存在もいた。

だが、知識が多い事が幸せだとは一概には言えない。
時として知らない事が幸せだったという事態など数多く存在する。
知識を付け過ぎたゆえに滅びの道を歩んだものもいた。
それを知ってしまったがために命を落とす事例もある。
知識とは諸刃の剣だ。
それは神話に登場するパンドラの箱か知恵の実が雄弁に物語っている。
パンドラの箱なら残ったものは希望か絶望か。
知恵の実なら知ってしまうのは希望か絶望か。
どちらも知ろうという行いが軽率な結果を生んだ話だ。

人は時として知るという行為の果てに動けなくなる事がある。
そうなる前に動き出したいものだ。


   ▼   ▼   ▼


空から降り注ぐ朝の陽光がD-4に建てられた学校の白亜の校舎を照らしている。
時刻はもうそろそろこの学び舎に通う者が目を覚まし始める頃合いだろうか。
朝の日差しは身体の調子を整える効果を秘めて、まだ夢現の者に新しい一日が始まった事を伝える時間だ――本来なら、だが。

そんな穏やかな一日の始まりなどこの場所では儚い幻想だ。
ここは殺し合いという名のデスゲームが行われている場所。
招かれた者は総勢60人。
その60人が己の考えに従って生き抜く事6時間。
つい先程デスゲーム開始から6時間後の時刻に主催者プレシアにより最初の放送が入った。
主な内容は禁止エリアと死者の発表、そして力の実演。
設置された禁止エリアは3つ、この6時間で命を落とした者は13人。
聞く者の大半に悲哀と絶望を齎す知らせをプレシアは嬉しそうに告げていた。
誰もがありえないとは思いながらも考えていた事――殺し合いなんて起きないんじゃないかという願い。
その願いは無惨にも打ち砕かれた。
全体の5分の1に相当する者が6時間経過を待たずにこの地でその命を散らしていた。
その事実を知った時、生き残った47人の胸の内に湧き上がった感情は何であろうか。

少なくとも、ここD-4の学校に集った4人の集団には悲しみと怒りに満ちているように見える。
高町なのは、金居、シェルビー・M・ペンウッド、武蔵坊弁慶。
各々の立場も主義も、況してや元いた世界さえも違う4人がこの学校に足を運んだ理由は夜空に咲いた赤い花火、そしてそれに映し出された龍だった。
その正体を確かめるべく4人が学校に着いた時には既に誰も見当たらず、その代わりにいたのは傷ついた赤き龍と二つの死体だった。
4人は赤き龍を新たな仲間に加えて、次にどうするか相談した。

――もしかしたら恐怖に怯えた参加者が校内に潜んでいるかもしれない。

そう強く進言したのは時空管理局のエースオブエースと称される高町なのはだった。
元より4人の中で「可能な限り多くの人を救いたい」という気持ちが最も強い彼女には目の前の学び舎を素通りする気はなかった。
学校と言えば学生にとっては最も身近な建物に相当する。
つまりは戦う力のない者が隠れている可能性が高い。
最初に出会った紫色の髪の少女も見た目は如何にもという感じのどこかの女子高生だった。
彼女もここにいるのではないか。
そんな朧気な期待も抱きつつ、なのはは学校の探索を希望した。

267 : ◆RsQVcxRr96 :2008/11/20(木) 00:40:20 ID:2edmxx9a

――まあ、いいだろ。

そう答えたのは金居だった。
残りの二人がこの時点で承諾していた以上、金居に否定という選択肢を取る気は皆無だった。
金居としても本来道々の施設は巡る予定だったので、大きく反対する理由はなかった。
プレシアが言っていた放送まで残り約1時間。
その時間を4人は学校での探索に充てる事で合意した。
例の如く満足に戦う力のないペンウッドはなのはとペアで、金居と弁慶は一人ずつで、それぞれ校内の探索に散った。

しかし集合場所に指定した2階の図書室に4人が揃った時、浮かんだ表情は軽い徒労感だった。
結局学校に隠れている戦う力のない者は影も形もなかった。
それなりの時間を費やしたのに大した成果が無かったのは若干の意気消沈を齎す出来事だった。
一応成果と言えるのは保健室で拝借してきた消毒液と包帯だけだった。
そして校庭で手に入れた三つのデイパック。
状況から見てあの恐竜たちの物で間違いないだろう。
なのはは校庭に放置された死体もきちんと埋葬してあげたかったが、それは断念した。
元来校庭とは生徒が運動をする場所として設置されているものであって、簡単に土を掘り返せるようにはなっていない。
柔らかい土の場所を探すという選択肢をあったが、そもそも墓造りはそれに見合った労力を要する。
そんな事で体力を消費するのは得策とは言えない行動だった。
結果、校庭に野晒しにされていた二匹の恐竜の死体には保健室より持ち出したシーツを被せるだけにした。
現在、雨風に晒されないように校舎の入り口に寝かせられた二匹の死体は風に煽られるシーツの下で永遠の眠りについている。
それが精一杯の妥協点だった。

そしてデイパックを調べている内にその時がやって来た。

――さて、皆が待ち望んだ最初の放送の時間が来たわ。

この会場にいる全ての参加者に等しく降りかかるデスゲーム開催の張本人。
稀代の魔導師プレシア・テスタロッサの声が皆に最初の放送を伝える。
聞きたくないという気持ちがある一方で聞きたいという気持ちもある。
3つの禁止エリアの発表の後にその名前は告げられた。
『13』――古来より不吉なものとして認識されてきた数字と同数の死者の名は4人に等しく衝撃を与えた。
そしてその衝撃が収まらない内にさらなる悲劇がプレシアの手によって演じられる。
それの終幕と共に放送は終わりを告げ、しばらく教室には沈黙の帳が下りる。
沈黙の帳は悲哀と絶望によるものに見える。

だが例外があった。
黄色のタートルネックの上に黒いスーツを着こなす理知的な青年――金居。
金居は銀縁眼鏡を弄りつつ悲哀でも絶望でもない感情を胸に抱いていた。


   ▼   ▼   ▼


268 : ◆RsQVcxRr96 :2008/11/20(木) 00:44:52 ID:2edmxx9a


朝の光が差し込む校舎の中を一人歩く者がいる。
金居だ。
なぜ金居が校舎を散策しているというと、高町なのはと武蔵坊弁慶を連れ戻すためである。

あのプレシアによる放送の後、その二人は教室から立ち去って行った。
弁慶の方は13人もの死者が出た事への怒りから飛び出して行った。
なのはの方は死者の中に知り合いがいた事と親友のアリサの死を再び目にした事で一人になりたいと言って出て行った。
そして結果的に教室に取り残される形となった金居とペンウッドだが、敢えて止める事はしなかった。
金居にしてみれば今は一人にしておく方がいいと考えたから引き止めなかった。
ペンウッドは単に二人に掛ける言葉が見つからなかったから引き止められなかった。
各々の理由で二人は弁慶となのはを引き留める事はしなかった。

しかしあまり単独行動を放置しておくのも何かと不味い。
だから金居とペンウッドは頃合いを見計らって連れ戻そうと思った。
それまでの時間は校庭で手に入れたデイパックの中身の確認と朝食に費やした。

「おい、貴様の方はどうだ」

金居は調べていたデイパックから見つけた砂糖菓子を咀嚼しながらペンウッドに問いかけた。
そのデイパック――アグモンのもの――には大量の菓子が入っていて、砂糖菓子はその一部だ。
それだけでは足りないので基本支給品として配られたコッペパンに砂糖水を付けて食い足してもいる。

「こ、こっちはRPG-7V1と各種弾頭、そして、ト、トランシーバーが2機だ」
「これには菓子セットとよく分からない飾り物? デバイスと書いてあるが……」

調べた結果いろいろ有用な物も含まれていて、いい拾い物になった。
ふと時間を見れば二人が出て行ってから20分程が経過していた。

「俺は二人を探してくる。貴様はあそこの入り口を見張っていろ。何かあったらトランシーバーで連絡を入れるんだ」

この学校は最初に見回った時に確認したが、入口が正面の一つしかない。
あれから常に金居はその唯一の出入り口に目を見張らせていたが、誰も出入りした様子はない。
つまりこの学校には相変わらず自分達4人しかいない事になる。

「あ、ああ。分かった」

ペンウッドも金居の提案に賛成すると、トランシーバーを受け取って見張りの体制につく。
この教室は2階に位置しており、出入り口を見張る分には申し分ない場所だ。

「一応気を付けろよ」

教室から出る際にペンウッドに言葉を投げると、金居はさっさと移動し始めた。

そして現在金居は2階の廊下を歩いていた。
探し人の一人のなのはは屋上に行くと言っていたので後回しにするとして、先に弁慶を探す事を優先していた。

だが金居はただ単に二人を探すためだけに教室を出たのではなかった。
本来の目的は別の所にある。
それは金居の今後を左右する重大な事であった。


   ▼   ▼   ▼


269 : ◆RsQVcxRr96 :2008/11/20(木) 00:49:56 ID:2edmxx9a


「くそっ!」

まだ暗さの残る教室で弁慶は怒りを感じながら佇んでいた。
弁慶の目の前にはボロボロになった壁が無残な姿を晒していた。
周囲には壁が破壊された際に出た埃が舞い散っていて、窓から差し込む朝日を反射していた。
そんな一種幻想的とも言える光景の中でむさ苦しい巨漢は自らが破壊した壁を眺めている。
目の前に広がる壁は弁慶が怒りに任せて殴りかかってしまった壁だ。
如何に耐震構造が基準を満たしていても、荒くれ元僧侶の拳を受け止めるには至らなかった。

「……ティアナ」

ゲットマシン3号機のパイロットの名前はあっさりと呼ばれてしまった。
弁慶とティアナとの付き合いは短い。
寧ろ出会ってから1日も経っていない。
だがティアナをスバルと共にゲッター計画に引きずり込んだのは自分達だ。
そこに責任が無いとは言い切れない。
つまりは自分達が間接的にでもティアナを殺したという事になる。
ここにいるティアナが自分の知るティアナかどうかはこの際関係ない。

「悩んでも仕方ないか」

元々弁慶は小難しい事を考えるのは得意ではない。
どちらかというと苦手だ。
どれほど苦手かと言うと、難しい話になればついつい眠ってしまうほど苦手だ。
だから頭で考えるより本能に従う方が楽だった。
そうでもなければゲットマシンのパイロットは務まらない。

「それにしてもプレシア! 人の命をなんだと思っているんだ!」

だがそんな弁慶でもはっきりと分かる事がある。
プレシア・テスタロッサ。
彼女は鬼と同類に等しい存在だ。
13人もの命が失われたにも関わらず、それを称賛する態度。
人の命を何とも思わず、さらに実演のために簡単に人を殺す態度。
弁慶が知る鬼と性格的には何ら変わりがないように思えた。
だからこそ余計にプレシアへの怒りが募る。
もしかしたらどこかでアリサを和尚に、13人の死者を寺の僧侶に重ねているのかもしれない。

もっとも弁慶はそこまできちんと考えているというよりは本能的に感じていると言った方が正しいだろう。

「あ、ここにいたか。探したぞ」

ふと教室に弁慶以外の男の声がした。
弁慶が暑苦しいような巨漢と言える声なら、これは涼しげな青年の声と言えた。
声の主は弁慶を探しに来た金居だった。

「おお、金居か。何か用か?」
「貴様の帰りが遅いから探しに来た。単独行動も程々にしておけ」
「お、済まねぇな。それよりよくここが分かったな」
「あれだけ大きな声を上げていたら嫌でも分かる。それぐらい分からないかい」

金居は弁慶を探し始めて数分後、1階の教室で怒りを露わにしている彼をあっさりと発見できた。
もちろん理由は言った通り、弁慶の声が廊下まで響いていたからだ。
探すのに手間が省けた事は助かったが、もう少し注意してほしい。
そう密かに金居は少々呆れていた。

270 : ◆RsQVcxRr96 :2008/11/20(木) 00:55:45 ID:2edmxx9a

「そうだ。聞きたい事がある」
「なんだ?」
「鬼の事だ。貴様の世界の鬼と呼ばれるものは『知性のない野蛮で獰猛な生物』なんだな」
「ああ、そうだ。知性なんて欠片もないな」

弁慶は金居に再び簡単に鬼の説明を行った。
曰く、鬼とは人智を超えた脅威。その姿はまさしく御伽噺に出てくる鬼そのもの。
群れを成して獰猛な本能の下に人を喰らう異形の化け物。
それが鬼の簡単な概略だ。
しかしこの説明は以前にも皆にもしたはずだ。
何故金居がもう一度聞くのか弁慶には理由が分からなかった。

「これでいいか」
「……もう一度聞こう。本当に鬼に知性というものは存在しなかったのか」
「はぁ……答えは一緒だ。鬼に人間みたいな知性なんて――」
「それは妙だな」
「何がだよ」

弁慶には金居が何を言いたいのか全く分からなかった。
金居は眼鏡の位置を整えると、ゆっくりと自説を話し始めた。

「俺がアンデッド、つまりは不老不死の始祖だという事はもう知っているな」
「ああ、最初に出会った時に確かそんな事を言っていたな」
「アンデッドにも種族は多々あって、その中にジョーカーという奴がいる。またの名を相川始だ」
「相川始? おい、そいつここに――」
「ああ、ジョーカーもここにいる。そしてジョーカーには特別な力が備わっているんだ」

弁慶は金居の難しい話に眠気を誘われるが、その場の異様な雰囲気に依るものか完全に眠りにつく事はなかった。

「ダークローチ。詳しい事は省くが、ジョーカーによって生み出される人類の滅亡を使命とする無数の怪物だ」
「おい、それって……」
「どことなく鬼と似ているだろ」

鬼とダークローチ。
共に人間に害を為す化け物、そしてどちらも知能よりは本能を優先している怪物。
共通点は意外とある。

「そう言われれば似ているな。だけど、それがどうしたんだ」
「ああ似ている。だがダークローチと違って貴様の言う鬼には足りないものがある」
「足りない、もの?」
「頭……つまり元締めのような存在だ」
「あ!?」
「いくら無数の鬼でも最初の一匹が、もしくは鬼を束ねる奴がいなければ普通はおかしい。
 もしも頭のいない集団なら、それは烏合の衆という事だ」

金居の言う事はもっともだ。
鬼は確かに知能なんて見られない怪物だが、全部が全部そうではない。
弁慶は思い出していた。
黒平安京で鬼達を統括していた陰陽師――安倍清明。
鬼や清明を差し向けてきた全ての元凶――四天王。
それに何より現在弁慶達が戦っている鬼は常の鬼とは同じではない。
次元世界や空間座標という存在を知る事によって任意の場所に現れる力を持っていた。
さらにその出現ポイントは徐々に都市部へ近づき、ついにはミッドチルダにまで手を伸ばしたところだ。
明らかに今までの鬼とは違って、いくらかの知性がある。
そんな事を弁慶は今まですっかり忘れていたのだ。

271 : ◆RsQVcxRr96 :2008/11/20(木) 00:59:35 ID:2edmxx9a

「じゃあ、あの銀色の奴はやっぱり――」
「銀色の奴が鬼かどうかは定かではないが、おかしな点があるのは確かだ」
「そりゃあ、どういう事だ」
「デイパックの数だ。校庭には三つあっただろ。二つは恐竜達の物に間違いないとして……あと一つは誰の物だ」

金居の話はこうだ。
放置されていた三つのデイパックの内、二つは校庭で死んでいた恐竜達の物でほぼ間違いない。
では残り一つのデイパックは誰の物だろうか。
真っ先に思いつくのは黄色の恐竜と行動を共にした件の銀色の奴だが、それなら奴は現在デイパックを持っていない状態だ。
ここでは強大な力を持つ者はその力に何らかの制限が掛けられている。
金居のアンデッドとしての力や高町なのはの魔法などがそれに相当する。
そのような中でデイパックに入っている支給品を使用すれば、実力で劣っていても中身次第では立場が逆転する事もあり得る。
だから無碍にデイパックを放置する理由があまり見当たらない。

それに二匹の恐竜の死体の状態も気にかかる事がある。
二匹の死因は黄色の方が腹を踏み潰され首を捩じ切られて死亡、赤い方が胸を貫かれて死亡。
他に傷づいた箇所もない事からそれは明らかだった。
だがいくら間抜けそうな恐竜でも死ぬ瞬間に抵抗もしないなど考えられない。
もしもそのような事になるとすれば、それは圧倒的な力での不意打ちでしかありえない。
ただの不意打ちでなく圧倒的な力での不意打ちと考えたのは黄色い恐竜の死体が原因だった。
黄色い恐竜の死因は死体から判別できたが、その凶器が問題だった。
首を捩じ切るという行為は頭と首下の身体に別々の力を掛けなければいけないのだが、そのような事ができる道具などほとんど無い。
そんな器用な事が出来るのは人に備わった二本の素手に他ならない。
しかも腹を踏み潰すという行為も下手人の力の異常性に拍車をかける。
つまり二匹を殺した下手人はこの制限下にも関わらずに凄まじい怪力を行使して二匹を抵抗させないまま一気に殺す実力を持っていると考えられる。

「おい、そんな化け物みたいな野郎がいるって言うのか」
「何を言っているんだ。貴様にも心当たりがあるだろ」
「ま、まさか……」
「巨漢の貴様を蹴り飛ばし、すぐさま黄色の恐竜を連れて走り去った銀色の奴。そいつが下手人なら今までの事も少しは説明がつく」

確かにあれほどに力が発揮できていた奴なら、首を捩じ切る事も可能かもしれない。
しかも奴は黄色の恐竜を助けていたから、恐竜から信頼もされただろう。
もしかしたら赤い恐竜に頼まれて助けたのかもしれない。
助けた後で不意を突いて殺すなど容易い事だ。
弁慶を蹴り倒した事も常識のある人が聞けば、すぐに誤解だと分かる内容だ。

「待てよ。もしかしたらペンウッドのじいさんが言っていたアーカードって可能性も……」
「そんな都合よくアーカードに会うものかな。それよりも銀色の奴が手を下したって考える方が筋は通ると思うがな」
「そ、それは……」
「だが、結局はどれも状況証拠からの推論。真相は銀色の奴に聞くしかないだろ」
「確かにそうだ」
「他にも考えられる事はいくつかある。神隼人の事とかペンウッド君の事とか」

そして金居は続けて己の考えを弁慶に披露していく。
それは甘い毒のように弁慶の頭にじわじわと染み込んでいった。


   ▼   ▼   ▼

272 : ◆RsQVcxRr96 :2008/11/20(木) 01:04:05 ID:2edmxx9a


朝の陽射しが差し込むものの未だ肌寒い廊下を規則正しく歩く音が聞こえる。
よく聞くと足音と共に何やら会話らしきものも聞こえてくる。

「……という訳だ。貴様の意見はどうなんだ」
『あ、あぁ、うん。金居君の言っている事が正しいような気もするが……だが銀色の奴が……その話は少し強引では――』
「あくまで可能性の一つだ。心の隅にでも残しておくんだな」
『わ、分かった』
「弁慶君は少し見回りしてから戻るように言っておいた。俺は今から屋上に行ってくる。ではまた後で」
『あ、ああ。また後で』

ザザッというトランシーバー特有の雑音を最後に響かせて金居は通信を終えた。
今向かっているのはなのはのいる屋上だ。
金居は屋上へと続く階段を上りながら先程の成果を顧みていた。

(弁慶君とペンウッド君への仕込みはあれでいいか。次は……)

金居は目の前に迫った屋上へと続く扉を見据えながら、ゆっくりと金属製の扉を開いた。


   ▼   ▼   ▼


上り始めた太陽の光が屋上に緩やかな暖かさを齎してくれる。
だが一方で直に吹き付ける冷たい風が寒さを齎すのもまた事実だ。
暖と寒という相反する要素が織り交ざるこの屋上で一人の生者が一人の死者を思っていた。
サイドポニーの結んだ茶色の髪を風に靡かせている少女――生者の名前は高町なのはという。

「……うぅ……ぁあ……アリサ、ちゃん」

なのはの心をこれほどまでに揺るがせる相手――アリサ・バニングスという死者の存在だ。
つい先程行われた放送はなのはにとって耐え難いものだった。
名前を呼ばれた死者13人の内、約半数に当たる6人が知り合いの名前だったからだ。

エリオ・モンディアル――機動六課の新人フォワードの一人。若き騎士はこの場でどのような最期を遂げたのだろうか。
クロノ・ハラオウン――付き合いも長いフェイトの義兄。彼のような優秀な魔導師でさえあっさりと死んでしまった。
シグナム――機動六課の同僚にしてヴォルケンリッターのリーダー。たびたび模擬戦に誘われたが、案外そういう時間は楽しかった。
高町なのは――この地で出会う事が無かったもう一人の自分。いったい彼女は何を想って死んでいったのだろうか。
ティアナ・ランスター――機動六課の新人フォワードの一人。精神的にも成長して執務官を目指していた彼女も儚く散っていった。
ディエチ――戦闘機人更生組の一人。付き合いはそれほどでもないにしろ同じ砲撃手として感じる事はあった。

そして10年以上にも渡る交友関係にある親友アリサ・バニングスの二度目の死。

都合7人にも及ぶ死者の名前がなのはの胸に重くのしかかってくる。
もしも自分がもう少し上手く立ち回っていたら救えた命があったかもしれない。
そう思えば思うほど自分という存在がひどく小さく情けなく思う。
志を同じくする仲間は見つかったが、それで誰も救えなければ意味がない。

「……みんな……アリサちゃん」

平行世界から来た別の人という可能性があると金居は言ったが、それでも知り合いは知り合いだ。
理屈ではなく本能が悲しみを否応なく運んでくる。
それに出会っていない6人は分からないが、アリサだけは違う。
自分の目の前で殺された親友は紛れもなく自分の知っているアリサ・バニングスだった。
それは確信できる。

273 : ◆RsQVcxRr96 :2008/11/20(木) 01:07:40 ID:2edmxx9a

「……もう、会えないんだよね」

悲しみに耐えきれずに不意になのはは視線を下に落とす。
すると視界に入った自分の手に握られている物が目に入った。
それは何の飾り気もない白いヘアバンドだった。
放送を聞く前に調べていたデイパックに入っていた物だ。
つい勢いで持ってきてしまって手持無沙汰だからかずっと握ったままだった。
だが、そのヘアバンドは10年前から見慣れたなじみの代物だった。

月村すずか。
なのはにとってアリサ・バニングスと同じ月日を過ごしてきた親友だ。
アリサもすずかも魔法世界と関わりが深くなったなのはにとっては相も変わらぬ親友である。

「そういえば、私達の始まりも、このヘアバンドだったよね」

なのはは昔の事を思い出していた。
あれは小学1年生の頃だった。
あの頃のアリサは心が弱かったが故に我儘な自信家で、すずかは気が弱いが故にはっきりと物を言えない少女だった。
そんなある日の出来事だった。
アリサがすずかをからかって大事なヘアバンドを取ったのだ。
すずかは返してもらおうと訴えたが、アリサは調子に乗って返そうとはしなかった。
あの時自分が何を考えて動いたのかよくは覚えていない。
だけど何か思う事があって――自分はアリサの頬を力一杯叩いた。
でもその時言った言葉は今でも覚えている。

――痛い? でも大事なものを取られちゃった人の心は、もっともっと痛いんだよ。

それから二人で大喧嘩になって、すずかが止めに入って、それからだった。
3人でよく話すようになって、気づいたら親友と呼べる関係になっていた。
だが、もうその3人が揃う事はあり得ない。

「大事なものを取られちゃった人の心は、もっともっと痛いんだよ……か。ホント、胸が、痛いな」

なぜ今そのような事を思い出したか。
ヘアバンドの事もあるが、もう一つは今いる場所だ。
学校の屋上、ここは聖祥大付属小学校のそれと瓜二つだった。
校内の様子も所々違うものの似ている部分が多く見られた。
だからだろう。
ふと昔の事を思い出してしまう。
もう二度と見る事が出来ないからこそ、望む心は強くなる。

「でも、だから皆を生き返らせるっていうのは……違うよね。そんな事をしても誰も喜ばない」

死とは永遠の離別。
確かにもう一度会いたい、生きていてほしいという気持ちはある。
でも、だからと言って死んだ人を生き返らせる事は出来ない。
それは自分の手を血に染めるという事で、そんな事をしてまで生き返りたいとは彼らは望まないだろう。
だからこそ自分に出来る事はこうして立ち止まる事ではなく、前を向いて進む事だ。
それが悲しみに暮れていたなのはが出した結果だった。

「元の世界へ戻ったら、すずかちゃんとお話ししなきゃいけないな。アリサちゃんが急にいなくなって、きっと戸惑って――」

そこでなのはの言葉は途切れた。
途切れさせたのはなのは自身だ。
今なのはの様子を見れば、大抵の人は彼女が酷く落ち着きがないと思うだろう。

(そんな……そんな……でも、実際にアリサちゃんは連れて来られて……それにヘアバンドまでここにある……
 それに、私とフェイトちゃんとはやてちゃんとアリサちゃん! 4人もいて、すずかちゃんだけが無事なんて保障どこにもない!)

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>>1
          ̄ ̄ ̄ ̄     /  .∧__∧      ∧__∧      \糞スレを立てる事しかできない白痴。
      ガッキーン       /  ( ゚∀゚ )    ( ゚∀゚ )          /test/read.cgi/anichara/1224027590/">★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

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